説明

ひずみ測定装置およびひずみ測定方法

【課題】本発明は、分解能を維持しつつ測定範囲をより広げ得るひずみ測定装置およびひずみ測定方法を提供する。
【解決手段】本発明では、複数のマークMを備える試験体SMに外力を作用させる前後における試験体SMの画像が、外力作用前画像および外力作用後画像として第1カメラ装置11によって得られ、追跡マークMcとされる、前記複数のマークMのうちの1つのマークMの位置および所定の基準位置の間の基準距離と、前記外力作用前画像における追跡マークMcの位置と、前記外力作用後画像における追跡マークMcの位置とに基づいて、試験体SMの伸縮率が求められる。ここで、追跡マークMcが外力作用後画像での所定の端部領域内に位置する場合には、複数のマークMのうちの前記追跡マークMcと異なって前記端部領域外に位置するマークMを新たな追跡マークMcとするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象である材料(試験体、被検体)のひずみ(変形)を測定するひずみ測定装置およびひずみ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
材料は、種々の観点から評価されるが、その一つに、例えば、引張試験によるひずみ測定がある。このひずみ測定に関し、例えば、特許文献1や特許文献2に開示の技術がある。
【0003】
この特許文献1に開示のビデオ式非接触伸び計は、2つの標線マークが付された試験片をカメラで撮像して得られる画像データから、各標線マークの刻々の移動量を求めて、その標線マーク間の試験片の伸びを計測するビデオ式非接触伸び計であって、カメラによって撮像される2つの標線マークの間隔がカメラ視野を越えない範囲において、常に、カメラ視野内に2つの標線マークが入るように、カメラの位置を制御する1つの駆動機構を設けたものである。
【0004】
また、前記特許文献2に開示のビデオ式非接触伸び計は、試料表面に付された2箇所のマークをビデオカメラによって撮像して得られる映像信号から、各マークを識別してその各移動量を刻々と計測し、その各移動量の差から各マーク間の刻々の伸びを求める演算手段を備えた伸び計であって、視野の大きさが互いに異なる少なくとも2台のビデオカメラを備えるとともに、予め設定された基準に従い、各ビデオカメラからの各映像信号のうちの一つを選択して上記演算手段による演算に供する選択手段を備え、この選択手段は、試料の伸びの進行に伴って、視野の狭いビデオカメラの映像信号から順次に切り換えて上記演算手段に供給するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−237215号公報
【特許文献2】特開平10−221025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1に開示のビデオ式非接触伸び計は、カメラ視野内に常に2つの標線マークが入るように、伸び方向に沿ってカメラの位置が制御されるものである。このため、この特許文献1に開示のビデオ式非接触伸び計は、標線マークの少なくとも一方がカメラの視野から外れてしまうと、試験片の伸びを計測することができず、測定範囲は、カメラの視野を越えることができない。したがって、この特許文献2に開示の技術によって測定範囲を広げるためには、視野の広いカメラを用いる必要が生じ、この結果、相対的に分解能が低下してしまう。
【0007】
この点、前記特許文献2に開示のビデオ式非接触伸び計は、相対的に視野の狭いカメラと、相対的に視野の広いカメラとを、試験片の伸びの進行に伴って切り換えることによって、広い測定範囲に亘る計測を実現している。しかしながら、この特許文献2に開示のビデオ式非接触伸び計は、前記視野の狭いカメラから前記視野の広いカメラに切り換えられると、分解能がステップ状に低下してしまい、比較的広い測定範囲全体に亘って高精度に測定することができない。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、分解能を維持しつつ測定範囲をより広げることができるひずみ測定装置およびひずみ測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかるひずみ測定装置は、複数のマークを備える、測定対象の試験体を撮影する撮影部と、前記試験体に外力を作用させる前後における前記試験体の画像を、外力作用前画像および外力作用後画像として前記撮影部によって取得する画像取得部と、追跡マークとされる、前記複数のマークのうちの1つのマークの位置および所定の基準位置の間の基準距離と、前記外力作用前画像における前記追跡マークの位置と、前記外力作用後画像における前記追跡マークの位置とに基づいて、前記試験体の伸縮率を求める演算処理部とを備え、前記演算処理部は、前記追跡マークが前記外力作用後画像における所定の端部領域内に位置する場合には、前記複数のマークのうちの前記追跡マークと異なるとともに前記端部領域外に位置するマークを新たな追跡マークとする切換更新処理を行うことを特徴とする。
【0010】
そして、本発明の他の一態様にかかるひずみ測定方法は、複数のマークを備える、測定対象の試験体に外力を作用させる前後における前記試験体の画像を、外力作用前画像および外力作用後画像として撮影部によって取得する画像取得工程と、追跡マークとされる、前記複数のマークのうちの1つのマークの位置および所定の基準位置の間の基準距離と、前記外力作用前画像における前記追跡マークの位置と、前記外力作用後画像における前記追跡マークの位置とに基づいて、前記試験体の伸縮率を求める演算処理工程とを備え、前記演算処理工程は、前記追跡マークが前記外力作用後画像における所定の端部領域内に位置する場合には、前記複数のマークのうちの前記追跡マークと異なるとともに前記端部領域外に位置するマークを新たな追跡マークとする切換更新処理工程を含むことを特徴とする。
【0011】
このような構成のひずみ測定装置およびひずみ測定方法では、複数のマークを備える試験体が撮影部によって撮影され、追跡マークの位置および所定の基準位置の間の基準距離と、試験体に外力を作用させる前後に取得された各画像における追跡マークの各位置とに基づいて試験体の伸縮率が求められる。そして、この試験体の伸縮率を求める際に、前記外力の作用に伴って追跡マークが撮影部の視野における端部領域内に位置すると、端部領域外に位置する別のマークが新たな追跡マークとされ、切換更新処理が行われる。したがって、このような構成のひずみ測定装置およびひずみ測定方法は、前記追跡マークを撮影部が撮影している限り試験体の伸縮率を測定することができるので、撮影部の視野、すなわち、分解能を維持しつつ測定範囲をより広げることができる。
【0012】
また、他の一態様では、上述のひずみ測定装置において、前記撮影部は、前記追跡マークを撮影する第1のカメラ装置と、前記所定の基準位置とするために前記複数のマークのうちの前記追跡マークと異なるマークを基準マークとして撮影する第2のカメラ装置とを備え、前記画像取得部は、前記試験体に外力を作用させる前後における前記試験体の画像を、前記外力作用前画像および前記外力作用後画像として前記第1のカメラ装置によって取得するとともに、前記試験体に外力を作用させる前後における前記試験体の画像を、外力作用前基準画像および外力作用後基準画像として前記第2のカメラ装置によって取得し、前記演算処理部は、前記基準距離となる前記追跡マークおよび前記基準マークの間の距離と、前記外力作用前基準画像における前記基準マークの位置および前記外力作用後基準画像における前記基準マークの位置と、前記外力作用前画像における前記追跡マークの位置および前記外力作用後画像における前記追跡マークの位置とに基づいて、前記試験体の伸縮率を求めることを特徴とする。
【0013】
このような構成では、複数のマークのうちの1つのマークを所定の基準位置として利用することができるひずみ測定装置が提供される。
【0014】
また、他の一態様では、上述のひずみ測定装置において、前記撮影部は、前記追跡マーク、および、前記所定の基準位置とするために、前記追跡マークと異なるマークを基準マークとして撮影する1個のカメラ装置を備え、前記画像取得部は、前記試験体に外力を作用させる前後における前記試験体の画像を、前記外力作用前画像および前記外力作用後画像として前記カメラ装置によって取得し、前記演算処理部は、前記基準距離となる前記追跡マークおよび前記基準マークの間の距離と、前記外力作用前基準画像における前記基準マークの位置および前記外力作用後基準画像における前記基準マークの位置と、前記外力作用前画像における前記追跡マークの位置および前記外力作用後画像における前記追跡マークの位置とに基づいて、前記試験体の伸縮率を求めることを特徴とする。
【0015】
このような構成では、1個のカメラ装置で、分解能を維持しつつ測定範囲をより広げることができるひずみ測定装置が提供される。
【0016】
また、他の一態様では、これら上述のひずみ測定装置において、前記演算処理部は、前記外力作用前画像における前記追跡マークの位置および前記外力作用後画像における前記追跡マークの位置に基づいて、前記追跡マークの移動量を追跡マーク移動量として求める第1の移動量演算処理部と、前記外力作用前基準画像における前記基準マークの位置および前記外力作用後基準画像における前記基準マークの位置に基づいて、前記基準マークの移動量を基準マーク移動量として求める第2の移動量演算処理部と、前記基準マーク移動量および追跡マーク移動量に基づいて、前記試験体に前記外力を作用させた前後における前記試験体の伸び量を求める伸び量演算処理部と、前記試験体に前記外力を作用させる前における前記基準マークと前記追跡マークとの間の距離および前記試験体の伸び量に基づいて、前記試験体の伸縮率を求める伸縮率演算処理部とを備えることを特徴とする。
【0017】
このような構成では、試験体の絶対的な伸び量を求めることなく、試験体の相対的な伸び量に基づいて前記試験体の伸縮率を求めることができるひずみ測定装置が提供される。
【0018】
また、他の一態様では、上述のひずみ測定装置において、前記第1の移動量演算処理部は、前記外力作用前画像における前記追跡マークに対応するマークを前記外力作用後画像から探索し、この探索したマークを前記外力作用後画像における前記追跡マークとし、前記第2の移動量演算処理部は、前記外力作用前基準画像における前記基準マークに対応するマークを前記外力作用後基準画像から探索し、この探索したマークを前記外力作用後基準画像における前記基準マークとすることを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、外力作用後基準画像における基準マークを、外力作用前基準画像における基準マークに対応するマークを外力作用後基準画像から探索することによって見つけるとともに、外力作用後画像における追跡マークを、外力作用前画像における追跡マークに対応するマークを外力作用後画像から探索することによって見つけることができる。
【0020】
また、他の一態様では、これら上述のひずみ測定装置において、前記演算処理部は、さらに、前記追跡マークが前記外力作用後画像における所定の端部領域内に位置するか否かを判定する判定処理部と、前記判定処理部の判定の結果、前記追跡マークが前記外力作用後画像における所定の端部領域内に位置する場合には、前記複数のマークのうちの前記基準マークおよび追跡マークと異なるとともに前記端部領域外に位置するマークを新たな追跡マークとする切換更新処理を行う切換処理部と、前記基準マークと前記新たな追跡マークとの間の距離を求める距離演算処理部とを備えることを特徴とする。
【0021】
このような構成では、追跡マークが新たなマークに更新されたとしても、基準マークと新たな追跡マークとの間の距離を求めることによって、試験体の絶対的な伸び量を求めることなく、試験体の相対的な伸び量に基づいて前記試験体の伸縮率を求めることができるひずみ測定装置が提供される。
【0022】
また、他の一態様では、上述のひずみ測定装置において、前記撮影部は、前記追跡マークを撮影する1個のカメラ装置を備え、前記基準距離を予め記憶する基準距離記憶部をさらに備えることを特徴とする。
【0023】
このような構成では、1個のカメラ装置で、分解能を維持しつつ測定範囲をより広げることができるひずみ測定装置が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかるひずみ測定装置およびひずみ測定方法は、分解能を維持しつつ測定範囲をより広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態におけるひずみ測定装置の構成を示す図である。
【図2】実施形態におけるひずみ測定装置の動作を示すフローチャート(その1)である。
【図3】実施形態におけるひずみ測定装置の動作を示すフローチャート(その2)である。
【図4】実施形態のひずみ測定装置における、試験体の伸縮率を求める演算手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。また、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0027】
図1は、実施形態におけるひずみ測定装置の構成を示す図である。本実施形態のひずみ測定装置Sは、試験体SMに生じたひずみを測定する装置であり、例えば、図1に示すように、複数、本実施形態では2個の第1および第2カメラ装置11、12と、画像演算処理部13と、入力部14と、出力部15とを備えて構成される。
【0028】
試験体(測定対象物、被検体、試験片)SMは、測定対象であり、任意の材料であってよい。試験体SMは、例えば、金属材料、プラスチック等の樹脂材料、生体材料(検体)、半導体材料、あるいは脆性破壊が生じない範囲でのセラミック材料等であってよい。
【0029】
試験体SMに生じるひずみは、試験体SMに所定の外力を作用させることによって与えられる。例えば、引張試験では、試験体SMは、周知の引張試験機(不図示)における、試験体SMを固定するためのチャック(つかみ具)によってクランプされ、前記引張試験機によって試験体SMに外力が作用され、試験体SMにひずみが与えられる。
【0030】
そして、試験体SMには、試験体SMに生じたひずみを測定するために、任意の形状を持った複数のマーク(しるし、目印)Mが設けられる。第1および第2カメラ装置11、12を備えて構成される場合には、複数のマークMは、その1個を基準マークMsとするとともに、残余のマークMを追跡マークMcとするために、3個以上であることが好ましい。基準マークMsおよび追跡マークMcについては、後述する。本実施形態では、図1に示すように、5個の円形形状のマークM1、M2、M3、M4、M5(Mn;n=1、2、3、4、5)が試験体SMの表面に設けられる。これらマークMは、図1に示す例では、前記引張試験機によって試験体SMが引っ張られる引張り方向に略沿って所定の距離だけ離間して配置されている。前記所定の距離は、等間隔であっても不等間隔であってもよい。なお、図1に示す例では、これらマークMは、引張り方向に沿って一方端から他方端へマークM1、マークM2、マークM3、マークM4およびマークM5の順で配列されている。マークMは、試験体SMにおける伸び等のひずみに、ひずみ測定に充分な程度で追従することができるように試験体SMの表面に設けられる。マークMは、例えば、印刷によって、あるいはインク等を用いた手書きによって描かれる。
【0031】
なお、本実施形態では、マークMは、円形形状であるが、これに限定されるものではなく、例えば多角形形状や不定形形状等の任意の形状であってよい。上記マークMは、例えば、鋼板の金属素地やスプレー塗料を無作為に吹き付けたようなものであってもよい。また、これら複数のマークMは、互いに同形であることが好ましい。
【0032】
入力部14は、画像演算処理部13に接続され、ひずみ測定装置Sに測定開始指示等の各種コマンドや、例えば試験体SMの属性データ等の各種データをひずみ測定装置Sに入力する機器であり、例えば、キーボードやマウス等である。出力部15は、画像演算処理部13に接続され、入力部14から入力されたコマンドやデータおよびひずみ測定装置Sの測定結果(移動量、伸び量および伸縮率等)等を出力する機器であり、例えばCRTディスプレイ、LCD、有機ELディスプレイ又はプラズマディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印字装置等である。
【0033】
第1および第2カメラ装置11、12は、それぞれ、試験体SMをモニタ(観察、監視)するために、試験体SMを被写体として撮影する装置であり、例えば、撮影光学系と、撮像素子と、画像生成部とを備えて構成される。前記撮影光学系は、試験体SMの光学像(光像)を前記撮像素子の受光面に結像するための光学系である。前記撮像素子は、前記撮影光学系によって受光面上に形成された試験体SMの光学像を光電変換して前記光学像における光量に応じた信号(各画素単位で受光された信号の信号列)を生成し、この信号を前記画像生成部へ出力する回路であり、例えば、CCD型やCMOS型のイメージセンサ等である。前記画像生成部は、前記撮像素子で得られた前記信号に、例えば黒レベル補正処理、画素補間処理、シェーディング補正処理等の周知の画像処理を施すことによってディジタルの画像信号を生成し、画像演算処理部13へ出力する回路である。第1および第2カメラ装置11、12は、それぞれ、モノクロカメラであっても、カラーカメラであってもよく、また、静止画を生成するディジタルスチルカメラであっても、動画を生成するディジタルビデオカメラであってもよい。
【0034】
そして、第1および第2カメラ装置11、12は、それぞれ、前記複数のマークMが設けられた試験体SMの部分であって互いに異なる各部分を撮影することができるように配置される。このように所定の距離だけ離間するように第1および第2カメラ装置11、12が配置されることによって、第1カメラ装置11は、前記複数のマークMのうちの或るマーク(追跡マーク)Mcを含む所定範囲の領域部分を撮影することができ、第2カメラ装置12は、前記複数のマークMのうちの前記追跡マーク(前記或るマーク)Mcと異なる他のマーク(基準マーク)Ms(≠Mc)を含む所定範囲の領域部分を撮影することができる。図1に示す例では、第1カメラ装置11は、追跡マークMcとして、前記複数のマークMのうちの一方端に位置するマークM1を含む略円形範囲の領域部分を撮影しており、第2カメラ装置12は、基準マークMsとして、前記複数のマークMのうちの他方端に位置するマークM5を含む略円形範囲の領域部分を撮影している。基準マークMsは、試験体SMの伸び量を求める場合に、所定の基準位置を規定(定義)するために用いられるマークであり、追跡マークMcは、試験体SMの伸び量を求める場合に、前記基準マーク(基準位置)Msからの距離lscを求めるために用いられるマークである。そして、本実施形態では、追跡マークMcは、所定の条件を満たした場合に、他のマークに切り替えられる。
【0035】
画像演算処理部13は、第1および第2カメラ装置11、12で得られた画像信号に基づいて試験体SMのひずみを求める回路であり、例えば、マイクロプロセッサ、記憶素子およびその周辺回路を備えたマイクロコンピュータ等によって構成される。そして、画像演算処理部13は、本実施形態では、図1に示すように、機能的に、第1および第2画像取得制御部21、22と、第1および第2移動量演算処理部23、24と、伸び量演算処理部25と、伸縮率演算処理部26と、判定処理部27と、切換処理部28と、距離演算処理部29とを備えて構成される。これら第1および第2画像取得制御部21、22、第1および第2移動量演算処理部23、24、伸び量演算処理部25、伸縮率演算処理部26、判定処理部27、切換処理部28および距離演算処理部29は、例えば、第1および第2カメラ装置11、12で得られた画像信号に基づいて試験体SMのひずみを演算するひずみ測定プログラムの実行によって前記マイクロコンピュータに機能的に構成される。
【0036】
なお、このようなひずみ測定プログラムが前記マイクロコンピュータに格納されていない場合には、これを記録した例えばフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体から例えばフレキシブルディスクドライブ装置やCD−ROMドライブ装置等の外部記憶装置を介して前記マイクロコンピュータにインストールされるようにひずみ測定装置Sが構成されてもよく、また、このひずみ測定プログラムを管理するサーバコンピュータから通信網および通信インターフェース装置(ネットワークカード等)を介してひずみ測定プログラムがダウンロードされるように、ひずみ測定装置Sが構成されてもよい。
【0037】
そして、第1および第2画像取得制御部21、22は、試験体SMに外力を作用させる前後における試験体SMの画像を、測定対象の試験体SMを撮影する撮影部の一例としての第1および第2カメラ装置11、12によって取得するものである。より具体的には、第1画像取得制御部21は、試験体SMに外力を作用させる前後における試験体SMの画像を外力作用前画像および外力作用後画像として第1カメラ装置11によって取得し、これら外力作用前画像および外力作用後画像を第1移動量演算処理部23へ出力するものである。第2画像取得制御部22は、試験体SMに外力を作用させる前後における試験体SMの画像を外力作用前基準画像および外力作用後基準画像として第2カメラ装置12によって第1画像取得制御部21の画像取得動作と同期して取得し、これら外力作用前基準画像および外力作用後基準画像を第2移動量演算処理部24へ出力するものである。したがって、第1および第2カメラ装置11、12は、これら外力作用前画像および外力作用前基準画像が互いに同期した画像となるように、すなわち、互いに同じタイミングで試験体SMを撮影して前記互いに同じタイミングでのこれら各画像を生成するように制御されるとともに、外力作用後画像および外力作用後基準画像が互いに同期した画像となるように、すなわち、互いに同じタイミングで試験体SMを撮影して前記互いに同じタイミングでのこれら各画像を生成するように制御される。
【0038】
より具体的には、例えば、第1および第2画像取得制御部21、22は、測定開始コマンドを入力部14から受け付けると、第1カメラ装置11に試験体SMを撮影させ、外力作用前画像として第1カメラ装置11から試験体SMの画像信号を取得するとともに、同期して、第2カメラ装置12に試験体SMを撮影させ、外力作用前基準画像として第2カメラ装置12から試験体SMの画像信号を取得し、続いて、前記引張試験機によって試験体SMに外力を作用させた後に、第1カメラ装置11に試験体SMを撮影させ、外力作用後画像として第1カメラ装置11から試験体SMの画像信号を取得するとともに、同期して、第2カメラ装置12に試験体SMを撮影させ、外力作用後基準画像として第2カメラ装置12から試験体SMの画像信号を取得する。なお、第1および第2カメラ装置11、12がディジタルビデオカメラである場合には、前記引張試験機によって試験体SMに外力を作用させる前に撮影された動画像のうちの適宜なフレームが外力作用前画像および外力作用前基準画像とされ、前記引張試験機によって試験体SMに外力を作用させた後に撮影された動画像のうちの適宜なフレームが外力作用後画像および外力作用後基準画像とされればよい。
【0039】
また例えば、第1および第2画像取得制御部21、22は、測定開始コマンドを入力部14から受け付けると、第1カメラ装置11に試験体SMを撮影させ、外力作用前画像として第1カメラ装置11から試験体SMの画像信号を取得するとともに、同期して、第2カメラ装置12に試験体SMを撮影させ、外力作用前基準画像として第2カメラ装置12から試験体SMの画像信号を取得し、続いて、前記引張試験機によって試験体SMに外力を作用させつつ、所定の時間間隔で第1カメラ装置11に試験体SMを撮影させ、第1カメラ装置11から試験体SMの画像信号を連続的に取得するとともに、同期して、前記時間間隔で第2カメラ装置12に試験体SMを撮影させ、第2カメラ装置12から試験体SMの画像信号を連続的に取得する。この場合において、或る時刻に撮影された試験体SMの各画像は、前記或る時刻の1つ前のタイミングで撮影された試験体SMの画像に対し、外力作用後画像および外力作用後基準画像となり、そして、前記或る時刻の1つ後のタイミングで撮影された試験体SMの各画像に対し、外力作用前画像および外力作用前基準画像となる。なお、第1および第2カメラ装置11、12がディジタルビデオカメラである場合には、第1および第2カメラ装置11、12によって撮影された試験体SMの動画像のうち、前記時間間隔でフレームを選択し、前記或る時刻に撮影された試験体SMの画像とされればよい。
【0040】
第1移動量演算処理部23は、外力作用前画像における複数のマークMのうちの追跡マークMcの位置および外力作用後画像における追跡マークMcの位置に基づいて、追跡マークMcの移動量を求め、この求めた追跡マークMcの移動量を伸び量演算処理部25へ出力するものである。より具体的には、第1移動量演算処理部23は、外力作用前画像における追跡マークMc(本実施形態ではマークM1〜マークM4のいずれかのマーク、上記例ではマークM1)に対応するマーク(対応追跡マークMAc(この例ではマークM1))を外力作用後画像から、外力作用後画像における追跡マークMcとして探索処理によって探索し、外力作用前画像における追跡マークMcの位置(位置座標)およびこの探索した外力作用後画像における、追跡マークMcとしての対応追跡マークMAcの位置(位置座標)から、追跡マークMcの移動量を求め、この求めた追跡マークMcの移動量を伸び量演算処理部25へ出力する。この探索処理は、これら外力作用前画像と外力作用後画像との間における互いに対応する点を探索する周知の対応点探索法を用いて行われる。より具体的には、これら外力作用前画像および外力作用後画像のうちの一方が基準画像とされるとともに他方が参照画像とされ、基準画像における追跡マークMcに対応する参照画像のパターンが対応探索法によって探索される。すなわち、基準画像と参照画像との相関演算によって、基準画像における追跡マークMcに対応する参照画像のパターンが対応追跡マークMAcとして探索される。
【0041】
同様に、第2移動量演算処理部24は、外力作用前基準画像における複数のマークMのうちの追跡マークMcと異なる基準マークMs(本実施形態ではマークM5)の位置および外力作用後基準画像における基準マークMsの位置とに基づいて、基準マークMsの移動量を求め、この求めた基準マークMsの移動量を伸び量演算処理部25へ出力するものである。より具体的には、第2移動量演算処理部24は、外力作用前基準画像における基準マークMs(上記例ではマークM5)に対応するマーク(対応基準マークMAs(この例ではマークM5))を外力作用後基準画像から、外力作用後基準画像における基準マークMsとして探索処理によって探索し、外力作用前基準画像における基準マークMsの位置(位置座標)およびこの探索した外力作用後基準画像における、基準マークMsとしての対応基準マークMAsの位置(位置座標)から、基準マークMsの移動量を求め、この求めた基準マークMsの移動量を伸び量演算処理部25へ出力する。
【0042】
伸び量演算処理部25は、追跡マークMcの移動量および基準マークMsの移動量に基づいて、試験体SMに外力を作用させる前後における試験体SMの伸び量を求め、この求めた伸び量を伸縮率演算処理部26へ出力するものである。伸縮率演算処理部26は、試験体SMの伸び量に基づいて、試験体SMに外力を作用させる前後における試験体SMの伸縮率を求め、この求めた伸縮率を出力部15へ出力するものである。
【0043】
ここで、伸縮率εは、試験体SMに設けられた追跡マークMcと基準マークMsとの間における外力作用前での距離を基準長BLscとし、外力作用後におけるこれら追跡マークMcと基準マークMsとの間の距離を伸縮長ELscとすると、次式1によって与えられる。
ε=(ELsc−BLsc)/BLsc ・・・(1)
ここで、外力作用前後における追跡マークMcの移動量を△DLcとし、外力作用前後における基準マークMsの移動量を△DLsとすると、次式2が成り立つ。
ELsc=△DLc+BLsc+△DLs ・・・(2)
よって、式1は、式2によって次式3になる。
ε=(△DLc+△DLs)/BLsc ・・・(3)
本実施形態では、上述したように、第1移動量演算処理部23によって前記移動量△DLcが求められ、第2移動量演算処理部24によって前記移動量△DLsが求められ、伸び量演算処理部25によって伸び量(△DLc+△DLs)が求められ、そして、伸縮率演算処理部26によって前記式3を用いて伸縮率εが求められる。
【0044】
また、判定処理部27は、追跡マークMcが外力作用後画像における所定の端部領域内に位置するか否かを判定し、追跡マークMcが外力作用後画像における前記端部領域内に位置する場合には、その旨を切換処理部28へ出力するものである。前記所定の端部領域は、試験体SMに外力を作用させた場合に追跡マークMcの移動方向側における、外力作用後画像(追跡マークMcを撮影する第1カメラ装置11の視野)に適宜に設定され、例えば、外力作用後画像の1/2の領域や1/3の領域や1/5の領域や1/10の領域等に設定される。このような端部領域ERは、例えば、後述の図4に一点鎖線によって示す、第1カメラ装置11の視野の一方端部における矩形領域である。
【0045】
切換処理部28は、判定処理部27の判定の結果、追跡マークMcが外力作用後画像における前記端部領域内に位置する場合には、複数のマークMnのうちの現行の追跡マークMcおよび基準マークMs(上記例ではマークM1およびマークM5)と異なるとともに前記端部領域外に位置するマークM(例えばマークM2)を新たな追跡マークMcとする切換更新処理を行い、この新たな追跡マークMc(この例ではマークM2)を距離演算処理部29へ出力するものである。
【0046】
距離演算処理部29は、基準マークMs(上述の例ではマークM5)とこの新たな追跡マークMc(上述の例ではマークM2)との間の距離を求めるものである。
【0047】
次に、本実施形態におけるひずみ測定装置の動作について説明する。図2および図3は、実施形態におけるひずみ測定装置の動作を示すフローチャートである。図4は、実施形態のひずみ測定装置における、試験体の伸縮率を求める演算手法を説明するための図である。
【0048】
ひずみ測定の準備として、まず、試験体SMに複数のマークM、本実施形態では上述したように図1に示す5個の円形形状のM1〜M5が試験体SMの表面に設けられる。
【0049】
なお、追跡マークMcとして用いられるマークM1ないしマークM4は、図1に示すように、本実施形態では基準マークMsとして用いられるマークM5と同様な円形形状であるが、図4では、識別可能とするために、便宜上、互いに異なる形状で図示されており、マークM1は、○で図示され、マークM2は、△で図示され、そして、マークM3は、◇で図示されている。そして、図4には、初期の時刻t0、外力を作用させた場合の時刻t1(>t0)およびさらに外力を作用させた場合の時刻t2(>t1)でのマークM1ないしマークM3も図示されている。すなわち、マークM1は、時刻t0では●で図示され、時刻t1および時刻t2では破線の○で図示され、外力の作用によるマークM1の遷移の様子が各時刻での図示○を“→”で結ぶことによって図示されている。同様に、マークM2は、時刻t0では▲で図示され、時刻t1および時刻t2では破線の△で図示され、外力の作用によるマークM2の遷移の様子が各時刻での図示△を“→”で結ぶことによって図示されている。また同様に、マークM3は、時刻t0では◆で図示され、時刻t1および時刻t2では破線の◇で図示され、外力の作用によるマークM3の遷移の様子が各時刻での図示◇を“→”で結ぶことによって図示されている。また、図4では、マークM4は、図示を省略されている。
【0050】
そして、図2において、外力を試験体SMに作用させる前における所望のマークMの初期位置を求めるために、画像演算処理部13によって、第1カメラ装置11から外力作用前画像A1が取得され、この取得された外力作用前画像A1から追跡マークMc(上記例ではマークM1)が見つけられ、追跡マークMcの位置が求められるとともに(ステップS11−1)、第2カメラ装置12から外力作用前基準画像A2が取得され、この取得された外力作用前基準画像A2から基準マークMs(上記例ではマークM5)が見つけられ、基準マークMsの位置が求められる(ステップS11−2)。
【0051】
より具体的には、試験体SMの外力作用前画像A1および外力作用前基準画像A2を、例えばマークMの形状のパターン認識等の画像処理によって追跡マークMcおよび基準マークMsをそれぞれ見つけ、これら見つけた追跡マークMcおよび基準マークMsの各位置がそれぞれ求められる。外力作用前画像A1に複数のマークMを見つけた場合には、前記端部領域外に位置する適宜なマークMが追跡マークMcとして選択される。追跡マークMcおよび基準マークMsの各位置は、例えば、画像(撮像素子の受光面)における所定の位置(例えば四隅の点のうちの一つの点や光軸と交差する点等)を座標原点にxy座標系が予め設定され、このxy座標系のx座標値およびy座標値によって表される。なお、マークMに対応する光学像が撮像素子の1つの画素によって受光され、マークMに対応する画像が前記1つの画素による画像信号によって形成される場合には、マークMの位置は、その画素の位置によって表され、マークMに対応する光学像が撮像素子の複数の画素によって受光され、マークMに対応する画像が前記複数の画素による画像信号によって形成される場合には、マークMの位置は、マークMの所定の代表点(例えば中心点、外接円の中心点および重心点等)によって代表され、その代表点に対応する画素の位置によって表される。なお、伸縮率εは、上述したように所定の比で表されるので、距離は、実寸法によって表されてもよいが、所定の長さを基準とした相対的な長さであってよい。例えば、前記距離は、前記撮像素子の画素の個数等によって表すことも可能である。
【0052】
続いて、引張試験機によって試験体SMに引張加重が外力として加えられ、試験体SMに外力が作用される。
【0053】
そして、外力を試験体SMに作用させた後における追跡マークMcおよび基準マークMsの移動先の各位置をそれぞれ求めるために、第1画像取得制御部21によって第1カメラ装置11から外力作用後画像B1が取得され、第1移動量演算処理部23によって、この取得された外力作用後画像B1から追跡マークMcが見つけられ、追跡マークMcの位置が求められるとともに(ステップS12−1)、第2画像取得制御部22によって第2カメラ装置12から外力作用前基準画像B2が取得され、第2移動量演算処理部24によって、この取得された外力作用前基準画像B2から基準マークMsが見つけられ、基準マークMsの位置が求められる(ステップS12−2)。この外力作用後画像B1および外力作用後基準画像B2のそれぞれから追跡マークMcおよび基準マークMsを見つける処理では、上述したように、対応点探索法によって実行される。すなわち、本実施形態では、外力作用前画像A1における追跡マークMcに対応する対応追跡マークMAcは、外力作用後画像B1から、外力作用後画像B1における追跡マークMcとして対応点探索法によって探索され、外力作用前基準画像A2における基準マークMsに対応する対応基準マークMAsは、外力作用後基準画像B2から、外力作用後基準画像B2における基準マークMsとして対応点探索法によって探索される。
【0054】
ここで、ステップS12−1の後に、ステップS20が実行され、そしてこの後にステップS13−1が実行され、一方、ステップS12−2の後に、ステップS13−2が実行される。
【0055】
このステップS13−1では、第1移動量演算処理部23によって、外力作用前画像A1における追跡マークMcの位置と、外力作用後画像B1における、ステップS12−1で探索された追跡マークMc(対応追跡マークMAc)の位置とから、追跡マークMcの移動量が求められる。また、このステップS13−2では、第2移動量演算処理部24によって、外力作用前基準画像A2における基準マークMsの位置と、外力作用後基準画像B2における、ステップS12−2で探索された基準マークMs(対応基準マークMAs)の位置とから、基準マークMsの移動量が求められる。
【0056】
続いて、伸び量演算処理部25によって、追跡マークMcの移動量△DLcと、基準マークMsの移動量△DLsとから、試験体SMに外力を作用させる前後における試験体SMの伸び量(△DLc+△DLs)が求められる(ステップS14)。
【0057】
そして、伸縮率演算処理部26によって、試験体SMの伸び量(△DLc+△DLs)に基づいて、試験体SMに外力を作用させる前後における試験体SMの伸縮率εが前記式3によって求められ、この求められた伸縮率εが出力部15へ出力される(ステップS15)。
【0058】
ここで、追跡マークMcと基準マークMsとの間における外力作用前での距離である基準長BLscは、一番最初の初期では、第1および第2カメラ装置11、12間の距離BL0、例えば第1カメラ装置11の光軸と第2カメラ装置12の光軸との間の距離BL0が予めひずみ測定装置Sに与えられ、この第1および第2カメラ装置11、12間の距離BL0と、ステップS11−1で求められた追跡マークMcの初期位置と、ステップS11−2で求められた基準マークMsの初期位置とに基づいて求められる距離で与えられ、後述の処理によって追跡マークMcが新たな追跡マークMcに切り換わった後では、後述する距離で与えられる。
【0059】
そして、引き続き、試験体SMのひずみを測定する場合には、ステップS15の処理を実行した後に、本処理における外力作用後画像B1および外力作用後基準画像B2が次の処理において外力作用前画像A1および外力作用前基準画像A2として扱われ、処理がステップS12−1およびステップS12−2へ戻される。なお、この場合において、次の処理においても前記外力作用前画像A1および外力作用前基準画像A2をそのまま外力作用前画像および外力作用前基準画像として用い、外力作用後画像および外力作用後基準画像だけを新たに取り込んで外力作用後画像C1および外力作用後基準画像C2として更新してもよい。
【0060】
一方、前記ステップS20では、判定処理部27によって、追跡マークMcが外力作用後画像における所定の端部領域(上記例では端部領域ER)内に位置するか否かが判定される。この判定の結果、追跡マークMcが外力作用後画像における端部領域ER内に位置する場合(YES)には、その旨が切換処理部28へ出力され、ステップS21が実行される。一方、前記判定の結果、追跡マークMcが外力作用後画像における端部領域内に位置しない場合(NO)には、上述のステップS13−2が実行される。
【0061】
図3において、ステップS21では、切換処理部28によって、まず、第1カメラ装置11の視野内(外力作用後画像内)に、2個以上のマークM、すなわち、現行の追跡マークMcの他のマークMが存在するか否かが判定される。この判定は、例えば、端部領域外の領域の画像に対し、マークMの形状のパターン認識等の画像処理によってマークMを探索する処理を行うことによって実行される。この判定の結果、第1カメラ装置11の視野内に2個以上のマークMが存在しない場合(NO)には、上述のステップS13−2が実行される。一方、前記判定の結果、第1カメラ装置11の視野内に2個以上のマークMが存在する場合(YES)には、ステップS22が実行される。
【0062】
なお、以下のステップS22ないしステップS26の説明において、説明の便宜上、現行の追跡マークMc(現在用いられている追跡マークMc)は、Mkと表記され、新たな追跡マークMc(切り替え先の追跡マークMc)は、Mmと表記される。
【0063】
このステップS22では、距離演算処理部29によって、追跡マークMc(=Mk)の移動量から追跡マークMcの伸縮率ε(=ε)が求められる。より具体的には、距離演算処理部29は、外力作用前画像A1における追跡マークMkの位置、外力作用後画像B1における前記追跡マークMkに対応する対応追跡マークMAkの位置とに基づいて移動量△DLkを求め、この求めた移動量△DLkと、外力作用前における基準マークMsおよび追跡マークMk間の距離BLskとに基づいて伸縮率ε(=△DLk/BLsk)を求める。
【0064】
続いて、距離演算処理部29によって、ステップS21で探索されたマークMのうちの現行の追跡マークMkではない他のマークMが新たな追跡マークMm(この例ではマークM2)とされ、外力作用後における追跡マークMk(この例ではマークM1)と新たな追跡マークMm(この例ではマークM2)との間の距離lが、外力作用後画像B1における追跡マークMkの位置と外力作用後画像B1における新たな追跡マークMmの位置とに基づいて求められる(ステップS23)。
【0065】
続いて、距離演算処理部29によって、外力作用前における追跡マークMkと新たな追跡マークMmとの間の距離l0が、ステップS22で求めた伸縮率εとステップS23で求めた外力作用後における追跡マークMkと新たな追跡マークMmとの間の距離1とに基づいて、次式4によって求められる(ステップS24)。
l0=l−ε×l ・・・(4)
続いて、距離演算処理部29によって、外力作用前における基準マークMsと新たな追跡マークMmとの間の距離Lsmが、ステップS24で求めた、外力作用前における追跡マークMkと新たな追跡マークMmとの間の距離l0と、外力作用前における基準マークMsと追跡マークMk(更新前(外力作用前)の追跡マークMc、この例ではマークM1)との間の距離Lskとに基づいて、次式5によって求められる(ステップS25)。
Lsm=Lsk−l0=Lsk−(l−ε×l) ・・・(5)
このようなステップS22ないしステップS25の各処理を実行することによって、距離演算処理部29は、基準マークMsとこの新たな追跡マークMmとの間の距離Lsmを求めるものである。
【0066】
そして、切換処理部28は、次式6および式7に示すように、追跡マークMc(=Mk)を新たな追跡マークMc(=Mm)に変更し、外力作用前における追跡マークMcと基準マークMsとの間における距離である基準長BLscをステップS25で求めたLsmに置き換え(ステップS26)、その後、処理がステップS12−2に戻され、ステップS12−2が実行される。
Mc ← Mm ・・・(6)
BLsc ← Lsm ・・・(7)
以上の動作を図4を用いてより具体的に以下に説明する。図4では、引張試験開始後の最初の時刻t0では、第1カメラ装置11は、追跡マークMcとしてマークM1(;t0の●)を撮影しており、図4に破線で示す右側の矩形の画像が得られ、そして、第2カメラ装置12は、基準マークMsとしてマークM5(;●)を撮影しており、図4に破線で示す左側の矩形の画像が得られている。この時刻t0では、第1カメラ装置11によって得られる画像には、マークM1のみが撮影され、マークM2ないしマークM4は、撮影されていない。
【0067】
したがって、この場合では、ステップS11(S11−1、S11−2)およびステップS12(S12−1、S12−2)の各処理が実行され、続いて、ステップS20では、マークM1(追跡マークMc)が端部領域ER内にないと判定されるので、ステップS13(S13−1、S13−2)の各処理が実行され、続いて、ステップS14およびステップS15の各処理が実行される。ステップS15では、マークM5の移動量△DL5と、マークM1の移動量△DL1と、外力作用前におけるマークM5およびマークM1間の距離L51(基準長BL51)とに基づいて、時刻t0での伸縮率εt0(=(△DL5+△DL1)/BL51)が求められる。ここで、外力作用前におけるマークM5およびマークM1間の距離L51は、第1カメラ装置11と第2カメラ装置12との間の距離BL0と、ステップS11で求めたマークM1の位置およびマークM5の位置とに基づいて求められる。
【0068】
そして、引張試験が続けられて、次の時刻t1(>t0)では、第1カメラ装置11は、追跡マークMcとしてマークM1(;t1の破線の○)を撮影しているともにマークM2(t1の破線の△)も撮影しており、図4に破線で示す右側の矩形の画像が得られ、そして、第2カメラ装置12は、基準マークMsとしてマークM5(;●)を撮影しており、図4に破線で示す左側の矩形の画像が得られている。この時刻t1では、第1カメラ装置11によって得られる画像には、マークM1およびマークM2が撮影され、マークM3およびマークM4は、撮影されていない。
【0069】
したがって、この場合では、上述の処理におけるステップS15に続いて、ステップS12(S12−1、S12−2)の処理が実行され、続いて、ステップS20では、マークM1(追跡マークMc)が端部領域ER内にあると判定されるので、ステップS21ないしステップS26の各処理が実行される。
【0070】
すなわち、ステップS21では、外力作用後画像に2個のマークM1、M2が存在すると判定され、ステップS22では、マークM1の移動量△DL1と外力作用前におけるマークM5およびマークM1間の距離L51(=BL51)とに基づいて伸縮率εが求められ、ステップS23では、マークM1ではないマークM2が新たな追跡マークMcとされ、外力作用後におけるマークM1と新たな追跡マークMcとしてのマークM2との間の距離lが、外力作用後画像におけるマークM1の位置と外力作用後画像における新たな追跡マークMsとしてのマークM2の位置とに基づいて求められ、ステップS24では、前記伸縮率εと前記距離lとに基づいて、外力作用前におけるマークM1と新たな追跡マークMcとしてのマークM2との間の距離l0(=l−ε×l)が求められ、ステップS25では、前記距離l0と、外力作用前におけるマークM5およびマークM1(更新前(外力作用前)の追跡マークMc)間の距離L51とに基づいて、外力作用前におけるマークM5と新たな追跡マークMcとしてのマークM2との間の距離L52(=L51−l0)が求められ、ステップS26では、追跡マークMcがマークM1からマークM2へ変更され、外力作用前における基準マークMsと追跡マークMcとの間における距離である基準長BLcsが、外力作用前におけるマークM5と新たな追跡マークMcとしてのマークM2との間における距離L52で更新される。
【0071】
そして、この間も引張試験が続けられており、次の時刻t2(>t1)では、第1カメラ装置11は、追跡マークMcとしてマークM2(;t2の破線の△)を撮影しており、図4に破線で示す右側の矩形の画像が得られており、そして、第2カメラ装置12は、基準マークMsとしてマークM5(;●)を撮影しており、図4に破線で示す左側の矩形の画像が得られている。この時刻t2では、第1カメラ装置11によって得られる画像には、マークM2のみが撮影され、マークM1、マークM3およびマークM4は、撮影されていない。
【0072】
したがって、この場合では、ステップS12(S12−1、S12−2)の処理が実行され、続いて、ステップS20では、マークM2(追跡マークMc)が端部領域ER内にないと判定されるので、ステップS13(S13−1、S13−2)の各処理が実行され、続いて、ステップS14およびステップS15の各処理が実行される。ステップS15では、マークM5の移動量△DL5と、マークM2の移動量△DL2と、外力作用前におけるマークM5およびマークM2間の距離L52(基準長BL52)とに基づいて、時刻t2での伸縮率εt2(=(△DL5+△DL2)/BL52)が求められる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態のひずみ測定装置Sは、試験体SMに3個以上の複数のマークMを備える試験体SMが第1および第2カメラ装置11、12によって撮影され、試験体SMに外力を作用させる前後に取得された各画像A1、B1;A2、B2における追跡マークMcの位置と基準マークMsの位置から試験体SMの伸縮率εが求められる。そして、この試験体SMの伸縮率εを求める際に、前記外力の作用に伴って追跡マークMcが第1カメラ装置11の視野(第1カメラ装置11によって撮影された画像)における端部領域ER内に位置すると、端部領域ER外に位置する別のマークMが新たな追跡マークMcとされ、切換更新処理が行われる。したがって、このような構成のひずみ測定装置Sは、追跡マークMcを第1カメラ装置11が撮影している限り試験体SMの伸縮率εを測定することができるので、第1および第2カメラ装置11、12の視野、すなわち、分解能を維持しつつ測定範囲をより広げることができる。
【0074】
なお、図2および図3に示すステップS20ないしステップS26のマークを切り換える各処理は、上述の実施形態では、第1カメラ装置11によって撮影された画像に対してのみ実行したが、第2カメラ装置12によって撮影された画像に対しても実行してもよい。この場合では、図2に示すステップS12−2とステップS13−2との間に、ステップS20と同様の処理が挿入され、その後、図3に示すステップS21ないしステップS26の各処理と同様の各処理が実行される。
【0075】
また、上述の実施形態では、ひずみ測定装置Sは、複数のマークMを備える試験体SMを撮影する撮影部の一例として、複数、この例では第1および第2カメラ装置11、12を備えて構成されたが、追跡マークMcを撮影する1個の第1カメラ装置11を備えて構成されてもよい。この場合には、追跡マークMcと基準マークMsとの間における外力作用前での距離である基準長BLscに関し、一番最初の初期の基準長BLscとして、所定の基準位置と最初に第1カメラによって撮影されるべき追跡マークMcとの距離が例えばユーザ等によって例えばノギス等の測長器を用いて予め測定され、この予め測定された前記距離が測定開始前に予めひずみ測定装置Sに入力される。ひずみ測定装置Sの画像演算処理部13は、追跡マークMcと基準マークMsとの間における外力作用前での距離である基準長BLscに関し、一番最初の初期の基準長BLscとしての前記距離を記憶する基準距離記憶部(不図示)を機能的にさらに備えて構成される。このような構成では、1個の第1カメラ装置11を備えて比較的簡易にひずみ測定装置Sが構成され、そして、このような構成によっても、ひずみ測定装置Sは、分解能を維持しつつ測定範囲をより広げることができる。このような構成のひずみ測定装置Sは、試験体SMの他端部が固定されるとともにその一方端に外力を作用させるような例えば単軸引っ張り試験等に好適に用いられ、試験体SMの引っ張り中心(不動点)を除く箇所の追跡マークMcを観察することができるように配置される。
【0076】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0077】
S ひずみ測定装置
M(M1、M2、M3、M4、M5) マーク
ER 端部領域
11 第1カメラ装置
12 第2カメラ装置
13 画像演算処理部
21 第1画像取得制御部
22 第2画像取得制御部
23 第1移動量演算処理部
24 第2移動量演算処理部
25 伸び量演算処理部
26 伸縮率演算処理部
27 判定処理部
28 切換処理部
29 距離演算処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマークを備える、測定対象の試験体を撮影する撮影部と、
前記試験体に外力を作用させる前後における前記試験体の画像を、外力作用前画像および外力作用後画像として前記撮影部によって取得する画像取得部と、
追跡マークとされる、前記複数のマークのうちの1つのマークの位置および所定の基準位置の間の基準距離と、前記外力作用前画像における前記追跡マークの位置と、前記外力作用後画像における前記追跡マークの位置とに基づいて、前記試験体の伸縮率を求める演算処理部とを備え、
前記演算処理部は、前記追跡マークが前記外力作用後画像における所定の端部領域内に位置する場合には、前記複数のマークのうちの前記追跡マークと異なるとともに前記端部領域外に位置するマークを新たな追跡マークとする切換更新処理を行うこと
を特徴とするひずみ測定装置。
【請求項2】
前記撮影部は、前記追跡マークを撮影する第1のカメラ装置と、前記所定の基準位置とするために前記複数のマークのうちの前記追跡マークと異なるマークを基準マークとして撮影する第2のカメラ装置とを備え、
前記画像取得部は、前記試験体に外力を作用させる前後における前記試験体の画像を、前記外力作用前画像および前記外力作用後画像として前記第1のカメラ装置によって取得するとともに、前記試験体に外力を作用させる前後における前記試験体の画像を、外力作用前基準画像および外力作用後基準画像として前記第2のカメラ装置によって取得し、
前記演算処理部は、前記基準距離となる前記追跡マークおよび前記基準マークの間の距離と、前記外力作用前基準画像における前記基準マークの位置および前記外力作用後基準画像における前記基準マークの位置と、前記外力作用前画像における前記追跡マークの位置および前記外力作用後画像における前記追跡マークの位置とに基づいて、前記試験体の伸縮率を求めること
を特徴とする請求項1に記載のひずみ測定装置。
【請求項3】
前記撮影部は、前記追跡マークおよび、前記所定の基準位置とするために、前記追跡マークと異なるマークを基準マークとして撮影する1個のカメラ装置を備え、
前記画像取得部は、前記試験体に外力を作用させる前後における前記試験体の画像を、前記外力作用前画像および前記外力作用後画像として前記カメラ装置によって取得し、
前記演算処理部は、前記基準距離となる前記追跡マークおよび前記基準マークの間の距離と、前記外力作用前基準画像における前記基準マークの位置および前記外力作用後基準画像における前記基準マークの位置と、前記外力作用前画像における前記追跡マークの位置および前記外力作用後画像における前記追跡マークの位置とに基づいて、前記試験体の伸縮率を求めること
を特徴とする請求項1に記載のひずみ測定装置。
【請求項4】
前記演算処理部は、
前記外力作用前画像における前記追跡マークの位置および前記外力作用後画像における前記追跡マークの位置に基づいて、前記追跡マークの移動量を追跡マーク移動量として求める第1の移動量演算処理部と、
前記外力作用前基準画像における前記基準マークの位置および前記外力作用後基準画像における前記基準マークの位置に基づいて、前記基準マークの移動量を基準マーク移動量として求める第2の移動量演算処理部と、
前記基準マーク移動量および追跡マーク移動量に基づいて、前記試験体に前記外力を作用させた前後における前記試験体の伸び量を求める伸び量演算処理部と、
前記試験体に前記外力を作用させる前における前記基準マークと前記追跡マークとの間の距離および前記試験体の伸び量に基づいて、前記試験体の伸縮率を求める伸縮率演算処理部とを備えること
を特徴とする請求項2または請求項3に記載のひずみ測定装置。
【請求項5】
前記第1の移動量演算処理部は、前記外力作用前画像における前記追跡マークに対応するマークを前記外力作用後画像から探索し、この探索したマークを前記外力作用後画像における前記追跡マークとし、
前記第2の移動量演算処理部は、前記外力作用前基準画像における前記基準マークに対応するマークを前記外力作用後基準画像から探索し、この探索したマークを前記外力作用後基準画像における前記基準マークとすること
を特徴とする請求項4に記載のひずみ測定装置。
【請求項6】
前記演算処理部は、さらに、
前記追跡マークが前記外力作用後画像における所定の端部領域内に位置するか否かを判定する判定処理部と、
前記判定処理部の判定の結果、前記追跡マークが前記外力作用後画像における所定の端部領域内に位置する場合には、前記複数のマークのうちの前記基準マークおよび追跡マークと異なるとともに前記端部領域外に位置するマークを新たな追跡マークとする切換更新処理を行う切換処理部と、
前記基準マークと前記新たな追跡マークとの間の距離を求める距離演算処理部とを備えること
を特徴とする請求項4または請求項5に記載のひずみ測定装置。
【請求項7】
前記撮影部は、前記追跡マークを撮影する1個のカメラ装置を備え、
前記基準距離を予め記憶する基準距離記憶部をさらに備えること
を特徴とする請求項1に記載のひずみ測定装置。
【請求項8】
複数のマークを備える、測定対象の試験体に外力を作用させる前後における前記試験体の画像を、外力作用前画像および外力作用後画像として撮影部によって取得する画像取得工程と、
追跡マークとされる、前記複数のマークのうちの1つのマークの位置および所定の基準位置の間の基準距離と、前記外力作用前画像における前記追跡マークの位置と、前記外力作用後画像における前記追跡マークの位置とに基づいて、前記試験体の伸縮率を求める演算処理工程とを備え、
前記演算処理工程は、前記追跡マークが前記外力作用後画像における所定の端部領域内に位置する場合には、前記複数のマークのうちの前記追跡マークと異なるとともに前記端部領域外に位置するマークを新たな追跡マークとする切換更新処理工程を含むこと
を特徴とするひずみ測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−137391(P2012−137391A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290195(P2010−290195)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000130259)株式会社コベルコ科研 (174)
【Fターム(参考)】