説明

めっき用触媒液、めっき方法、金属膜を有する積層体の製造方法

【課題】本発明は、環境負荷が小さく、被めっき体の表面を荒らさず、めっき触媒の付着量の制御がしやすく、かつ、引火の危険性が少ない安全性に優れるめっき用触媒液、このめっき用触媒を用いためっき方法を提供することを目的とする。
【解決手段】パラジウム化合物と、水と、可燃性液体成分としては水溶性可燃性液体と、を含むめっき用触媒液であって、触媒液の引火点が40℃以上であり、触媒液中における前記水溶性可燃性液体の含有量が0.1〜40質量%である、めっき用触媒液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき用触媒液、めっき用触媒液を用いためっき方法、および、めっき用触媒液を用いた金属膜を有する積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機能的または装飾的な目的で、材料表面上に金属めっき膜を形成する技術が様々な分野において活用されている。例えば、自動車部品などの樹脂成形体に高級感や美観を付与するため、銅、ニッケルなどの金属めっきが施されている。その他、絶縁体フィルム上に金属めっき膜を形成させ、その後所望のパターン状の金属膜を得る技術が電子部品や半導体素子の作製において広く活用されている。具体例としては、電子機器などに利用されるプリント配線板や、プラズマディスプレイに使用される電磁波シールドフィルムなどが挙げられる。
【0003】
このようなパターン状の金属膜を有する材料の作製方法としては、「サブトラクティブ法」や「セミアディティブ法」などが挙げられる。
サブトラクティブ法とは、まず、基板表面に形成された金属膜上に、活性光線の照射により感光する感光層を設ける。次に、この感光層を像様露光し、その後現像してパターン状のレジスト像を形成する。さらにその後、レジスト像がない領域の金属膜をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジスト像を剥離する方法である。
一方、セミアディティブ法では、まず、絶縁性樹脂フィルムなどの基板表面に何らかの方法で給電層を設ける。次に、この給電層の上に活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層に像様露光し、現像してパターン状のレジスト像を形成する。その後、給電層に電気を流して電気めっきを行い、非レジスト存在部に金属配線を形成した後、非金属配線部の給電層をエッチング処理して金属パターンを形成する方法である。この手法で形成される給電層は、めっき用触媒液などを利用しためっき法などによって形成される。この方法においては、エッチングされる金属量が大幅に低減されるため、サブトラクティブ法のような配線側面の過剰エッチングが抑制でき、微細配線形成に有利である。
【0004】
しかしながら、これらの方法で作製した金属パターンは、基板表面に凹凸を設けることにより生じるアンカー効果により、基板と金属膜との間の密着性が発現している。そのため、金属パターンと基板との界面部の凹凸に起因して、金属配線として使用する際の高周波特性が悪くなるという問題点があった。また、基板表面に凹凸化処理するためには、クロム酸などの強酸で基板表面を処理することが必要であり、工程が煩雑となると共に、廃液の処理など環境面での問題があった。
【0005】
このような問題に対して、基板表面が平滑なまま金属配線との強い密着を発現する方法が考案されている(非特許文献1)。具体的には、基板表面にプラズマ処理を行い、基板表面上に重合開始基を導入し、その重合開始基からモノマーを重合させて、基板表面に極性基を有する表面グラフトポリマーを生成させるという表面処理である。この方法によれば、基板表面を粗面化することなく、基板と金属膜との密着性を向上させることが可能となる。一方で、この方法の場合、グラフトポリマーが極性基を有するため、温度や湿度変化により水分の吸収や脱離が生じ易く、その結果、形成された金属膜や基板が変形してしまうという問題を有していた。さらには、このような極性基を有するグラフトポリマーで修飾された基板を用いて金属配線基板などを作製した場合、吸水による電気配線の製造工程での故障や、電気配線自体の電気的故障などが引き起こされるという問題を有していた。
このような問題を回避する方法としては、例えば、疎水基板上に触媒吸着性の疎水パターン樹脂層を形成させ、配線基板として用いることが好ましい。この場合、めっき用触媒液が触媒吸着性の疎水パターン樹脂層にある程度浸透する必要がある。
【0006】
そこで、被めっき体の疎水性および表面平坦性を維持したまま、めっき特性を向上させる方法として、非水系めっき用触媒液を使用することが提案されている(特許文献1)。特許文献1では、めっき用触媒液として、低級アルコール類と非プロトン極性化合物からなる混合溶液中で、金属の塩または錯体を還元することで得られる還元金属コロイド分散液を使用することが開示されている。
【0007】
【非特許文献1】Advanced Materials 2000年 20号 1481−1494
【特許文献1】特開平1−315334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されているような非水系の溶媒からなるめっき用触媒液は、含水の引火性液体であるため、引火危険性が高く、貯蔵や取り扱いに関して所定の要件を満たす設備が必要となる。特に、工業的に大量生産を実施する場合は、莫大な設備投資が必要となり、経済性の観点から好ましくない。また、危険物を大量に使用することは、環境負荷が高く、さらには作業者の作業安全上の観点からも好ましくない。
また、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、特許文献1に記載されるような非水系のめっき用触媒液を用いると、疎水性の被めっき体に付着されるめっき付着量の制御が困難となる場合があることを見出した。そのため、パターン状のめっき膜を得る際に、不必要な部分にもめっき触媒が付着され、所望のパターン形成ができないという問題が生じる。
さらに、上述のセミアディティブ法による配線形成において、特許文献1に記載されるような非水系のめっき用触媒液を給電層の作製などに用いた場合も、めっき付着量の制御が困難であった。その結果、金属エッチングにより給電層などを除去する際、被めっき体に付着した触媒または金属の残渣を除去する事が困難となる場合があることも見出した。そのため、パターン状のめっき膜を得る際に、配線と配線との間に金属が残留し、結果として絶縁抵抗が低下し、所望の電気特性が得られないという問題が生じる。
【0009】
そこで、本発明は、上記実情に鑑みて、環境負荷が小さく、被めっき体の表面を荒らさず、めっき触媒の付着量の制御がしやすく、かつ、引火の危険性が少ない安全性に優れるめっき用触媒液、このめっき用触媒を用いためっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行った結果、下記の<1>〜<12>の構成により解決されることを見出した。
<1> パラジウム化合物と、水と、可燃性液体成分としては水溶性可燃性液体と、を含むめっき用触媒液であって、触媒液の引火点が40℃以上であり、触媒液中における前記水溶性可燃性液体の含有量が0.1〜40質量%である、めっき用触媒液。
<2> 前記水溶性可燃性液体が、1級または2級の水酸基を有しない水溶性有機溶媒である<1>に記載のめっき用触媒液。
<3> さらに、酸を含む<1>または<2>に記載のめっき用触媒液。
<4> 被めっき体が、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有する疎水性樹脂である、<1>〜<3>のいずれかに記載のめっき用触媒液。
<5> 前記疎水性樹脂が、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマーを含む感光性樹脂組成物の硬化物である<4>に記載のめっき用触媒液。
<6> 前記ポリマーが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位、および一般式(2)で表される繰り返し単位を含む共重合体である<5>に記載のめっき用触媒液。
【0011】
【化1】

【0012】
(一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。ZおよびYは、それぞれ独立に、単結合、または、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。Lは、置換または無置換の二価の有機基を表す。
一般式(2)中、Rは、水素原子、または、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。Xは、単結合、または、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。Lは、置換または無置換の二価の有機基を表す。)
【0013】
<7> <1>〜<3>のいずれかに記載のめっき用触媒液を被めっき体に接触させて、めっき触媒またはその前駆体を被めっき体に付与する触媒付与工程と、
前記触媒付与工程で得られた被めっき体に対して、めっき処理を施すめっき工程とを備える、めっき方法。
<8> 前記被めっき体が、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有する疎水性樹脂である、<7>に記載のめっき方法。
<9> 前記疎水性樹脂が、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマーを含む感光性樹脂組成物の硬化物である<8>に記載のめっき方法。
<10> 前記ポリマーが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位、および一般式(2)で表される繰り返し単位を含む共重合体である<9>に記載のめっき方法。
【0014】
【化2】

【0015】
(一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。ZおよびYは、それぞれ独立に、単結合、または、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。Lは、置換または無置換の二価の有機基を表す。
一般式(2)中、Rは、水素原子、または、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。Xは、単結合、または、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。Lは、置換または無置換の二価の有機基を表す。)
【0016】
<11> めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマーを含む感光性樹脂組成物を基板上に塗布して、感光性樹脂組成物層を形成する塗布工程と、
前記感光性樹脂組成物層を、パターン状に露光して硬化層を形成する露光工程と、
前記露光工程での前記感光性樹脂組成物層の未露光部分を除去する現像工程と、
前記現像工程で得られたパターン状の硬化層に、<1>〜<3>に記載のめっき用触媒液を接触させ、めっき触媒またはその前駆体を前記硬化層に付与する触媒付与工程と、
前記触媒付与工程でめっき触媒またはその前駆体が付与された硬化層に対してめっき処理を施すめっき工程とを備える、金属膜を有する積層体の製造方法。
<12> 前記めっき工程のめっき処理が、無電解めっき処理を施し、前記無電解めっき処理の後に、さらに電気めっき処理を施すめっき処理である<11>に記載の金属膜を有する積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業安全性が高く、環境負荷が小さく、被めっき体の表面を荒らさず、めっき触媒の付着量の制御性に優れ、その結果として配線形成性に優れ、消防法による四類非危険物に該当するめっき用触媒液、このめっき用触媒を用いためっき方法を提供することができる。
なかでも、めっき用触媒が酸を含む場合は、めっき用触媒の保存安定性がより向上する。また、1級または2級の水酸基を有しない水溶性有機溶媒を使用すると、めっき用触媒液の長期保存安定性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明のめっき用触媒液、このめっき用触媒液を用いためっき方法、さらにこのめっき用触媒液を用いた金属膜を有する積層体の製造方法について説明する。
まず、めっき用触媒液、および触媒液が使用される被めっき体について説明する。
【0019】
<めっき用触媒液>
本発明のめっき用触媒液は、パラジウム化合物と、水と、可燃性液体成分としては水溶性可燃性液体とを含み、触媒液の引火点が40℃以上であり、水溶性可燃性液体の含有量が触媒液全量に対して、0.1〜40質量%である。
まず、めっき用触媒液で使用される各材料について詳述する。
【0020】
<パラジウム化合物>
本発明のめっき用触媒液は、パラジウム化合物を含有する。このパラジウム化合物は、めっき処理時に活性核となり金属を析出させる役割を果たす、めっき触媒(パラジウム)またはその前駆体(パラジウムイオン)として作用する。パラジウム化合物としては、パラジウムを含み、めっき処理の際に核として作用すれば、特に限定されない。例えば、パラジウム(II)塩、パラジウム(0)錯体、パラジウムコロイドなどが挙げられる。
【0021】
パラジウム(II)塩としては、例えば、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、臭化パラジウム、炭酸パラジウム、硫酸パラジウム、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(エチレンジアミン)パラジウム(II)塩化物などが挙げられる。なかでも、取り扱いやすさと溶解性の点で、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、硫酸パラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)が好ましい。
パラジウム錯体としては、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム錯体、ジパラジウムトリスベンジリデンアセトン錯体などが挙げられる。
パラジウムコロイドは、パラジウム(0)から構成される粒子で、その大きさは特に制限されないが、液中での安定性の観点から、5〜300nmが好ましく、10〜100nmがより好ましい。パラジウムコロイドは、必要に応じて、他の金属を含んでいてもよく、他の金属としては、例えば、スズなどが挙げられる。パラジウムコロイドとしては、例えば、スズ−パラジウムコロイドなどが挙げられる。なお、パラジウムコロイドは、公知の方法で合成してもよいし、市販品を使用してもよい。例えば、荷電を持った界面活性剤または荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、パラジウムイオンを還元することによりパラジウムコロイドを作製することができる。
【0022】
めっき用触媒液中でのパラジウム化合物の含有量は、触媒液全量に対して、0.001〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましく、さらに0.10〜1質量%が好ましい。含有量が少なすぎると後述するめっきの析出がしにくくなり、含有量が多すぎると、後述するパターンめっき性、エッチング残渣除去性が損なわれることがある。
【0023】
<水溶性可燃性液体>
本発明のめっき用触媒液には、可燃性液体成分としては水溶性可燃性液体が含まれる。本発明のめっき用触媒液に使用される水溶性可燃性液体としては、水と任意の割合で混合することができる可燃性溶媒であれば、特に限定されない。例えば、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミン系溶媒、チオール系溶媒、ハロゲン系溶媒などの水溶性の有機溶媒が挙げられる。
【0024】
ケトン系溶媒としては、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、γ−ブチロラクトン、ヒドロキシアセトンなどが挙げられる。
エステル系溶媒としては、酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリコール酸メチル、グリコール酸エチルなどが挙げられる。
アルコール系溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、3−アセチル−1−プロパノール、2−(アリルオキシ)エタノール、2−アミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、(±)−2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−ジメチルアミノエタノール、2,3−エポキシ−1−プロパノール、エチレングリコール、2−フルオロエタノール、ジアセトンアルコール、2−メチルシクロヘキサノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、グリセリン、2,2',2''−ニトリロトリエタノール、2−ピリジンメタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エタノール、2,3−ブタンジオール、2−ブトキシエタノール、2,2'−チオジエタノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、ジグリセリン、2,2'−メチルイミノジエタノール、1,2−ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0025】
エーテル系溶媒としては、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]エーテル、1、2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール、2−エトキシエタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−イソブトキシエタノール、2−(2−イソブトキシエトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシ酢酸、2−メトキシエタノールなどが挙げられる。
グリコール系溶媒としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられる。
アミン系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
チオール系溶媒としては、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノールなどが挙げられる。
ハロゲン系溶媒としては、3−ブロモベンジルアルコール、2−クロロエタノール、3−クロロ−1,2−プロパンジオールなどが挙げられる。
【0026】
その他にも、水溶性有機溶媒として、以下の表にあげられる溶媒を使用することができる。
【0027】
【表1】

【0028】
本発明の水溶性可燃性液体の沸点は、後述する被めっき体から水溶性可燃性液体を除去することがより容易である点と、溶媒の蒸散による触媒液組成の安定性を維持するという双方の観点から、80〜200℃が好ましく、100〜200℃がより好ましい。このような水溶性可燃性液体としては、例えば、1−アセトキシ−2−メトキシエタン(沸点:145℃)、ビス(2−エトキシエチル)エーテル(沸点:188℃)、ビス(2−メトキシエチル)エーテル(沸点:162℃)などが好ましく挙げられる。
【0029】
本発明のめっき用触媒液中の水溶性可燃性液体の含有量は、後述する被めっき体への浸透性などの観点から、触媒液全量に対して、0.1〜40質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましい。
【0030】
本発明の水溶性可燃性液体の好ましい実施形態の一つとしては、1級または2級の水酸基を有しない水溶性有機溶媒が好ましい。このような1級または2級の水酸基を有しない水溶性有機溶媒(なかでも、好ましくは1級または2級の水酸基を有しないエーテル系溶媒)を使用すると、溶液の変色などがより抑制され、めっき用触媒の保存安定性がより良好なものとなる。1級または2級の水酸基を有する水溶性有機溶媒を使用すると、長期保存中に、水酸基がパラジウム化合物により酸化反応を受け、ケトン基、アルデヒド基、カルボン酸基などに変性してしまい、溶液の変色が起こると推測される。
1級または2級の水酸基を有しない水溶性有機溶媒としては、例えば、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、1−アセトキシ−2−メトキシエタン、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、1−アミノ−4−メチルピペラジンなどが挙げられる。
なかでも、酸化懸念の少ない、3級アルコールも含まれないことが、触媒液としての液保存性の観点で好ましく、酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、1−アセトキシ−2−メトキシエタン、ビス(2−エトキシエチル)エーテル(別称:ジエチレングリコールジエチルエーテル)、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル(別称:ジエチレングリコールジメチルエーテル)などが好ましい。
【0031】
本発明で用いられる水溶性可燃性液体を含むめっき用触媒液の引火点は、40℃以上となる。めっき用触媒液中で使用される水溶性可燃性液体としては、引火点が30℃以上のものを選択することが好ましく、40℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。上記範囲であると、めっき用触媒液の引火点がより高くなり、作業安全性がより向上する。
【0032】
<水>
本発明のめっき用触媒液は、水を含有する。めっき用触媒液が水を含有することにより、疎水性の被めっき体へのめっき触媒またはその前駆体の浸透速度などが好ましい範囲に制御される。使用される水は、不純物を含まないことが好ましく、RO水や脱イオン水、蒸留水、精製水などを用いるのが好ましく、脱イオン水や蒸留水がより好ましい。
【0033】
本発明のめっき用触媒液中の水の含有量は、適宜最適な量が選択されるが、触媒液の取り扱いやすさなどの点から、触媒液全量に対して、35〜99.899質量%が好ましく、35〜95質量%がより好ましい。
【0034】
上述の構成成分を含む本発明のめっき用触媒液は、引火性が低く、安全性の高い触媒液となる。ここでいう安全性の高い触媒液とは、触媒液の1気圧における引火点が40℃以上、燃焼点が60℃以上であり、可燃性液体の含有量が触媒液全量に対して40質量%以下であるものなどが挙げられる。
【0035】
本発明のめっき用触媒液の引火点は、JIS−K2265に準拠するダク密閉式によって得られた測定値を意味する。
【0036】
本発明のめっき用触媒液は、60℃以上の燃焼点を示すことが好ましい。燃焼点は、可燃性の液体または固体に小さい火を近づけたとき燃焼が継続して起こる最低の温度といい、通常、引火点より20℃以上高くなる。
なお、燃焼点の測定方法としては、ダク密閉式(JIS−K2265)で測定することにより求めることができる。
【0037】
<酸>
本発明のめっき用触媒液は、さらに酸を含有していてもよい。めっき用触媒液が酸を含有すると、上記のパラジウム化合物の液への溶解性がより向上し、さらに保存安定性が飛躍的に向上する。
酸としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸などが挙げられる。なかでも、パラジウム化合物の溶解性および液の安定性がより優れる点で、硝酸、塩酸、硫酸が好ましい。酸としては、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本発明のめっき用触媒液中の酸の含有量は、触媒液全量に対して、1〜40質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。含有量が多すぎると、めっき析出が均一に起こらない場合がある。含有量が少なすぎると、酸による効果、すなわち溶解性が向上しない、液の安定性が悪いなどの問題が生じることがある。
【0039】
上述のめっき用触媒液は、発明の効果を損なわない範囲において、目的に応じて他の添加剤を含有してもよい。他の添加剤としては、例えば、膨潤剤(ケトン、アルデヒド、エーテル、エステル類などの有機化合物など)や界面活性剤(アニオン性、カチオン性、双性、ノニオン性の、低分子または高分子界面活性剤など)などが挙げられる。この際、膨潤剤として有機化合物を用いる場合は、本発明の効果を損なわない範囲のものを選択する事が好ましい。
【0040】
<被めっき体>
本発明のめっき用触媒液の被めっき体としては、特に限定されないが、好ましくは疎水性樹脂が挙げられ、具体的には、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基(以後、適宜、相互作用性基とも称する)を有する疎水性樹脂が挙げられる。被めっき体であるこの疎水性樹脂の具体的な形状については、特に限定されず、使用目的に応じて適宜最適な形状が選択され、相互作用性基を有する疎水性樹脂からなるプレート、フィルムでもよく、基板上に相互作用性基を有する疎水性樹脂を塗布した形状でもよい。
疎水性樹脂とは、水との親和性が低く、水をはじく性質を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、液晶ポリマー、ポリカーボネート、ABS、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0041】
相互作用性基は、めっき触媒またはその前駆体、より具体的には、パラジウム化合物から供給される金属パラジウムやパラジウムイオンと相互作用する官能基である。
相互作用性基としては、非解離性官能基であることが好ましい。非解離性官能基とは、官能基が解離によりプロトンを生成しない官能基を意味する。このような官能基は、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する機能はあっても、解離性の極性基(親水性基)のように高い吸水性、親水性を有するものではない。そのため、この官能基を有するポリマーにより形成される樹脂塗膜は、アルカリ現像液などの浸透し難い疎水性の塗膜を形成することが可能となる。
【0042】
相互作用性基として具体的には、金属イオンと配位形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などが好ましい。より具体的には、イミド基、ピリジン基、3級のアミノ基、アンモニウム基、ピロリドン基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリミジン基、ピラジン基、ナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン基構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基、フェノール性水酸基、水酸基、カーボネート基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基、N−ヒドロキシ構造を含む基などの含酸素官能基、チオフェン基、チオール基、チオシアヌール酸基、ベンズチアゾール基、メルカプトトリアジン基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基、ホスフォート基、ホスフォロアミド基、ホスフィン基などの含リン官能基、塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基、および不飽和エチレン基などが挙げられる。また、隣接する原子または原子団との関係により非解離性を示す態様であれば、イミダゾール基、ウレア基、チオウレア基を用いてもよい。
なかでも、極性が高く、めっき触媒またはその前駆体などへの吸着能が高いことから、エーテル基(より具体的には、−O−(CH−O−(nは1〜5の整数)で表される構造)、またはシアノ基が特に好ましく、シアノ基がさらに好ましい。
さらに、錯形成能を有する化合物を官能基の代わりに付与してもよく、例えば、包接化合物、シクロデキストリンやクラウンエーテルなどが挙げられる。
【0043】
また、相互作用性基としては、アルキルシアノ基であることがさらに好ましい。これは、芳香族シアノ基は、芳香環に電子を吸引されており、めっき触媒またはその前駆体などへの吸着性として重要な不対電子の供与性が低めになるが、アルキルシアノ基はこの芳香環が結合していないため、めっき触媒またはその前駆体などへの吸着性の点で好ましい。
【0044】
相互作用性基を有する疎水性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、1000以上70万以下が好ましく、さらに好ましくは2000以上30万以下である。特に、重合感度の観点から、20000以上であることが好ましい。
また、重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、さらに好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下がさらに好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0045】
<感光性樹脂組成物>
本発明の相互作用性基を有する疎水性樹脂として好ましくは、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマーを含む感光性樹脂組成物の硬化物が挙げられる。
感光性樹脂組成物の硬化物とは、紫外線、電子線等のエネルギー線照射により感光性樹脂組成物を硬化させたものである。紫外線等のエネルギー線照射により硬化は常法により行うことができる。例えば、紫外線を照射する場合、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、紫外線発光レーザー(エキシマーレーザー等)等の紫外線発生装置を用いればよい。具体的な条件は、後述する金属膜を有する積層体の製造方法中の露光工程で実施される露光条件などが挙げられる。
【0046】
後述するように感光性樹脂組成物が溶剤を含む場合は、基板上に感光性樹脂組成物を塗布して塗布膜を形成し、必要に応じて乾燥工程を設けて溶剤を除去し、上記のエネルギー線照射を行い、所望の硬化物を得る。なお、その際、基板としては、後述するように、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマーが直接化学結合した状態を形成しうる機能を有する基板が好ましい。
以下に、感光性樹脂組成物に含まれる各構成成分について詳述する。
【0047】
<めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマー>
上記感光性樹脂組成物は、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基(以後、適宜、相互作用性基とも称する)と重合性基とを有するポリマー(以後、適宜、特定重合性ポリマーとも称する)を含有する。重合性基を含有することにより、ポリマー同士の結合、およびポリマーと基板との結合(グラフト重合)を形成し得る。
【0048】
相互作用性基は、めっき触媒またはその前駆体、より具体的には、パラジウム化合物から供給される金属パラジウムやパラジウムイオンと相互作用する官能基である。相互作用性基は、上記疎水性樹脂で説明したものと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0049】
特定重合性化合物が有する重合性基は、エネルギー付与により、重合性基および相互作用性基を有するポリマー同士、または、重合性基および相互作用性基を有するポリマーと後述する基板とを結合させる官能基であり、具体的には、ビニル基、ビニルオキシ基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、オキセタン基、エポキシ基、イソシアネート基、活性水素を含む官能基、アゾ化合物における活性基などが挙げられる。
【0050】
本発明に用いられる特定重合性ポリマーとしては、相互作用性基を有するモノマーを用いて得られるホモポリマーやコポリマーに、重合性基としてビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)を導入したポリマーであることが好ましく、この重合性基および相互作用性基を有するポリマーは、少なくとも主鎖末端または側鎖に重合性基を有するものであり、側鎖に重合性基を有するものが好ましい。
なお、本明細書では、「アクリル、メタクリル」の双方あるいはいずれかを指す場合、「(メタ)アクリル」と表記することがある。
【0051】
また、特定重合性ポリマーを得る際に、吸水性を低下させるため、また、疎水性を向上させるために、上記相互作用性基を有するモノマー以外に他のモノマーを用いてもよい。他のモノマーとしては、一般的な重合性モノマーを用いてよく、ジエン系モノマー、アクリル系モノマーなどが挙げられる。なかでも、無置換のアルキルのアクリル系モノマーが好ましい。具体的には、ターシャリーブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどが好ましく使用できる。
【0052】
特定重合性ポリマーにおいて、相互作用性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位は、めっき触媒またはその前駆体との相互作用形成性の観点から、ポリマーを構成する全繰り返し単位(100モル%)に対して、30〜90モル%の範囲で含有されることが好ましく、40〜80モル%の範囲で含有されることがより好ましい。
【0053】
特定重合性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、1000以上70万以下が好ましく、さらに好ましくは2000以上30万以下である。特に、重合感度の観点から、20000以上であることが好ましい。
また、重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、さらに好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下がさらに好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0054】
本発明において、特定重合性ポリマーの好ましい例の一つとして、以下の一般式(1)で表される繰り返し単位、および一般式(2)で表される繰り返し単位を含む共重合体(以後、シアノ基含有重合性ポリマーとも称する)が挙げられる。
【0055】
【化3】

(一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。ZおよびYは、それぞれ独立に、単結合、または、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。Lは、置換または無置換の二価の有機基を表す。
一般式(2)中、Rは、水素原子、または、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。Xは、単結合、または、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。Lは、置換または無置換の二価の有機基を表す。)
【0056】
一般式(1)中のR〜R、および、一般式(2)中のRは、水素原子、または、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩酸原子、臭素原子、フッ素原子などで置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。
なお、Rとしては、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシ若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
【0057】
一般式(1)中のY、Z、および、一般式(2)中のXは、単結合、または、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。この二価の有機基としては、例えば、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、エステル基、アミド基、エーテル基、または、これらを組み合わせた基が挙げられる。
置換または無置換の脂肪族炭化水素基としては、メトキシ基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、またはこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子などで置換されたものが好ましい。
置換または無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニル基、または、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子などで置換されたフェニル基が好ましい。なかでも、−(CH−(nは1〜3の整数)が好ましく、さらに好ましくは−CH−である。
【0058】
一般式(1)中のLは、置換または無置換の二価の有機基を表す。Lで表される有機基は、上述の一般式(1)中のY、Zで表される有機基と同義である。
は、ウレタン結合またはウレア結合を有する二価の有機基であることが好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基であることがより好ましい。なかでも、総炭素数1〜9であるものが好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換または無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
より具体的には、Lの構造は、下記の一般式(1−1)、または、一般式(1−2)で表される構造であることが好ましい。
【0059】
【化4】

【0060】
上記一般式(1−1)および一般式(1−2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子、水素原子、および酸素原子からなる群より選択される2つ以上の原子を用いて形成される二価の有機基である。好ましい例としては、置換または無置換の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、エチレンオキシド基、ジエチレンオキシド基、トリエチレンオキシド基、テトラエチレンオキシド基、ジプロピレンオキシド基、トリプロピレンオキシド基、テトラプロピレンオキシド基などが挙げられる。
【0061】
一般式(2)中、Lは、置換または無置換の二価の有機基を表す。Lで表される有機基は、上述の一般式(2)中のXで表される有機基と同義である。
なかでも、Lは、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、または、これらを組み合わせた基であることが好ましい。このアルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、さらに、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。なかでも、Lは、総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換または無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、および、これらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子などで置換されたもの、さらには、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0062】
本発明においてシアノ基含有重合性モノマーとしては、一般式(1)で表される繰り返し単位が、下記一般式(3)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0063】
【化5】

【0064】
上記一般式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。Zは、単結合、または、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。Wは、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子、またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。Lは、置換または無置換の二価の有機基を表す。
【0065】
一般式(3)におけるRおよびRは、上記一般式(1)中のRおよびRと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(3)におけるZは、上記一般式(1)中のZと同義であり、好ましい例も同様である。また、一般式(3)におけるLは、上記一般式(1)中のLと同義であり、好ましい例も同様である。
【0066】
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーとしては、上記一般式(3)で表される繰り返し単位が、下記一般式(4)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0067】
【化6】

【0068】
一般式(4)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。VおよびWは、それぞれ独立に、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子、またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。Lは、置換または無置換の二価の有機基を表す。
【0069】
一般式(4)におけるRおよびRは、上記一般式(1)におけるRおよびRと同義であり、好ましい例も同様である。一般式(4)におけるLは、上記一般式(1)におけるLと同義であり、好ましい例も同様である。
【0070】
上記一般式(3)および(4)において、Wは、酸素原子であることが好ましい。
また、一般式(3)および一般式(4)において、Lは、無置換のアルキレン基、または、ウレタン結合若しくはウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、これらの中でも、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
【0071】
また、本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーとしては、一般式(2)で表される繰り返し単位が、下記一般式(5)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0072】
【化7】

【0073】
一般式(5)中、Rは、水素原子、または、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。Uは、酸素原子、またはNR’(ここでR’は、水素原子、またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、または炭素数1〜5の無置換のアルキル基を表す)を表す。Lは、置換または無置換の二価の有機基を表す。
【0074】
一般式(5)におけるRは、上述の一般式(1)におけるRおよびRと同義であり、水素原子であることが好ましい。
【0075】
一般式(5)におけるLは、上述の一般式(2)におけるLと同義であり、直鎖、分岐、もしくは環状のアルキレン基、芳香族基、またはこれらを組み合わせた基であることが好ましい。
特に、一般式(5)においては、L中のシアノ基との連結部位が、直鎖、分岐、または環状のアルキレン基を有する二価の有機基であるものが好ましく挙げられ、なかでも、この二価の有機基が総炭素数1〜10であるものがより好ましい。
また、別の好ましい態様としては、一般式(5)におけるL中のシアノ基との連結部位が、芳香族基を有する二価の有機基であるものが挙げられ、なかでも、二価の有機基が、総炭素数6〜15であるものがより好ましい。
【0076】
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーを合成する際の重合反応の種類としては、特に限定されず、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合が挙げられる。反応制御の観点から、ラジカル重合、カチオン重合を用いることが好ましい。合成法の詳細は、国際公開2008−050715号パンフレットの段落番号[0196]〜[0243]に記載されている。
【0077】
上述のシアノ基含有重合性ポリマーは、共重合成分全体に対し、重合性基を有する繰り返し単位、シアノ基を有する繰り返し単位の割合が以下の範囲であることが好ましい。
即ち、重合性基を有する繰り返し単位の含有量が、共重合成分全体(100モル%)に対して、5〜50モル%が好ましく、5〜40モル%がより好ましい。含有量が少なすぎると、反応性(硬化性、重合性)が落ちる場合があり、含有量が多すぎるとゲル化しやすくなり、合成がしにくくなる場合がある。
また、シアノ基を有する繰り返し単位の含有量は、めっき触媒に対する吸着性の観点から、共重合性成分全体(100モル%)に対して、5〜95モル%が好ましく、10〜95モル%がより好ましく、50〜95モル%が好ましい。
【0078】
上述のシアノ基含有重合性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、1000以上70万以下が好ましく、より好ましくは2000以上20万以下である。特に、重合感度の観点から、20000以上であることが好ましい。
また、シアノ基含有重合性ポリマーの重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、より好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下が更に好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0079】
なお、これらのシアノ基含有重合性ポリマーの具体例は、国際公開2008−050715号パンフレットの段落番号[0246]〜[0252]に記載のポリマーを挙げることができる。
【0080】
上述のシアノ基含有重合性ポリマーなどの特定重合性ポリマーは、本発明の効果を損なわない範囲で、極性基を有していてもよい。
【0081】
感光性樹脂組成物中における特定重合性ポリマーの含有量は、特に限定されないが、取り扱いやすさなどの点で、組成物全量に対して、2〜50質量%であることが好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0082】
<溶剤>
感光性樹脂組成物は、溶剤を含有していてもよい。
溶剤としては、組成物の主成分である上述の特定重合性ポリマーが溶解可能ならば特に制限されない。
溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤、酢酸などの酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルなどのニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート系溶剤などが挙げられる。
【0083】
なかでも、特定重合性ポリマーとして、上述のシアノ基含有重合性ポリマーを用いる場合は、アミド系溶剤、ケトン系溶剤、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤が好ましく、具体的には、アセトン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネートなどが好ましい。
また、感光性樹脂組成物を塗布する場合は、取り扱い容易性の観点から、沸点が50〜150℃の溶剤が好ましい。なお、これらの溶剤は単一で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0084】
感光性樹脂組成物を、基板上に塗布する場合、基板や基板上の重合開始層や密着補助層の吸溶媒率が5〜25%となる溶剤を選択することができる。この吸溶媒率は、基板や、重合開始層を有する基板を溶剤中に浸漬し、1000分後に引き上げた場合の質量の変化から求めることができる。
また、感光性樹脂組成物を、基板上に塗布する場合、基板の膨潤率が10〜45%となる溶剤を選択してもよい。この膨潤率は、基板や、重合開始層または密着補助層を有する基板を溶媒中に浸漬し、1000分後に引き上げた場合の厚さの変化から求めることができる。
【0085】
<添加剤>
感光性樹脂組成物は、必要に応じて、各種添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、界面活性剤、可塑剤、重合禁止剤、ゴム成分、難燃化剤、希釈剤やチキソトロピー化剤、顔料、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤などが挙げられる。より具体的には、国際公開2008−050715号パンフレットの段落番号[0125]〜[0127]に記載の界面活性剤、可塑剤、重合禁止剤などが挙げられる。
【0086】
<めっき方法>
次に、上述のめっき用触媒液を使用しためっき方法について説明する。本発明のめっき方法は、特に限定されないが、以下の工程を備えるめっき方法が好ましい。
(1)上述のめっき用触媒液を被めっき体に接触させて、めっき触媒またはその前駆体を被めっき体に付与する触媒付与工程
(2)上記触媒付与工程で得られた被めっき体に対してめっき処理を施すめっき工程
以下に、各工程について詳述する。
【0087】
<触媒付与工程>
触媒付与工程は、上述のめっき用触媒液を被めっき体に接触させて、パラジウム化合物から得られるパラジウム(めっき触媒)やパラジウムイオン(前駆体)を被めっき体に付与する工程である。この工程によって、めっき用触媒液が被めっき体中に浸透し、めっき処理の際に核として作用するめっき触媒またはその前駆体が被めっき体中に付与(吸着)される。
【0088】
めっき用触媒液としては、上述の通り、パラジウム化合物と、水と、可燃性液体成分としては水溶性可燃性液体とを含む液が使用される。また、被めっき体としては、上述の通り、相互作用性基を有する疎水性樹脂(好ましくは、基板状)、または、基板と相互作用性基を有する疎水性樹脂からなる層とを有する積層体が好ましく使用される。
疎水性の被めっき体(相互作用性基を有する疎水性樹脂)に対して本発明のめっき用触媒液を使用すると、めっき触媒として作用するパラジウムの付着量の制御がより容易となる。
つまり、従来の非水系の溶媒からなるめっき用触媒液の場合、疎水性の被めっき体へのめっき用触媒液の浸透性やめっき触媒の付与性などが高すぎて、付着量の制御が困難であった。そのため、結果として本来めっき触媒を付着させるべきでない被めっき体の領域上に、めっき触媒が付着するという問題があった。また、めっき触媒を利用した無電解めっきにより金属膜(例えば、給電層)を形成し、その後、配線を形成するために不要な金属膜をエッチングする際に、被めっき体からめっき触媒を含む金属の残渣を取り除くのが困難になるなど、必要以上のめっき触媒が付与される場合があり、電子部材などへの応用の観点から好ましくなかった。
一方、本発明のめっき用触媒液の場合、疎水性の被めっき体へめっき用触媒が緩やかに浸透するため、付着量の制御がしやすく、例えば、めっき用触媒液と被めっき体との接触時間などを制御することにより所望のめっき触媒の付着量を実現できる。また、本発明のめっき用触媒では、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有しない被めっき体に対しては、触媒の付与(吸着)の進行が遅い。そのため、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有しない被めっき体と、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有する被めっき体との間で、極めて良好なパターンめっきを行うことが可能となる。
さらには、含水の触媒液であるため、触媒液が非めっき体の内部まで速やかに浸透する事がなく、触媒を非めっき体の表層の数十nmの領域に効率よく吸着させる事ができる。これにより、セミアディティブ法などにおいて、被めっき体からめっき触媒を含む金属の残渣を容易に取り除くことが可能となる。
【0089】
めっき用触媒液と被めっき体との接触方法としては、特に制限されないが、被めっき体表面にめっき用触媒液を塗布する方法や、または、めっき用触媒液中に被めっき体を浸漬させる方法などが挙げられる。
【0090】
なお、所望により基板の両面に上述の感光性樹脂組成物の硬化物膜が形成される場合には、その両面に存在する硬化物層に対して同時にめっき用触媒液に接触させるために、浸漬法を用いることが好ましい。ここで、浸漬の際には、触媒が接触する表面付近の触媒濃度を一定に保つ上で、攪拌または揺動を加えながら浸漬することが好ましい。
【0091】
被めっき体として上述の相互作用性基を有する特定重合性ポリマーを含む感光性樹脂組成物の硬化物を使用した場合、硬化物中の相互作用性基(例えば、シアノ基)に、ファンデルワールス力などの分子間力による相互作用や、孤立電子対による配位結合などの相互作用を利用して、めっき触媒(パラジウムなど)を効率よく吸着させることができる。
【0092】
めっき用触媒液と被めっき体との接触時間は、使用される被めっき体の種類やめっき用触媒液の構成材料により、適宜最適な条件が選択される。なかでも、生産性や作業性の観点から、30秒〜1時間程度であることが好ましく、1分〜30分程度であることがより好ましい。
【0093】
上述のように本発明のめっき用触媒を使用すると、被めっき体中への余分なめっき触媒の付着を抑えることができる。より具体的には、被めっき体中でのめっき触媒であるパラジウムの付着量(吸着量)は、1〜100mg/mが好ましく、5〜50mg/mがより好ましく、5〜30mg/mがさらに好ましい。付着量が多すぎると、被めっき体をプリント配線基板などに使用した場合に、絶縁性能が低下したり、サブトラクティブ法やセミアディティブ法などの金属エッチングを用いた配線形成時に触媒金属の除去が困難となる場合がある。付着量が少なすぎると、後述するめっき膜の析出がうまく生じない場合がある。
なお、めっき触媒であるパラジウムの付着量(吸着量)の測定は、ある一定面積の被めっき体にめっき触媒を吸着させ、質量分析装置(ICP−MS)によってパラジウム濃度を定量化し、当該面積における吸着量を面積で除することにより、ミリグラム/平方メートル(mg/m)に換算することで測定することができる。
【0094】
上記の触媒付与工程後、必要に応じて、被めっき体に付着した余分なめっき触媒を除去するために、被めっき体を洗浄する工程(洗浄工程)を設けてもよい。
洗浄に使用される液としては、後述する工程に影響を及ぼさない溶液であれば特に制限はされないが、除去効率の観点からは、水を主成分とする溶剤に、有機溶剤を0.5〜40質量%含有する洗浄液を用いることがより好ましい。
【0095】
<めっき工程>
めっき工程は、上記触媒付与工程で得られた被めっき体に対してめっき処理を施す工程である。めっき処理を施すことにより、被めっき体上にめっき膜(金属膜)が形成される。形成されるめっき膜は、優れた導電性、被めっき体との密着性を有する。
本工程で行われるめっきの種類は、無電解めっき、電気めっきなどが挙げられ、めっき触媒またはその前駆体の機能によって適宜選択することができる。なかでも、被めっき体中に発現するハイブリッド構造の形成性および密着性向上の点で、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき膜を得るために、無電解めっきの後に、さらに電気めっきを行うこともできる。
【0096】
<無電解めっき>
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶解させた溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、めっき触媒が付与された被めっき体を、水洗いして余分なめっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行う。使用される無電解めっき浴としては、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
また、めっき触媒前駆体が付与された被めっき体を、めっき触媒前駆体が被めっき体に吸着または含浸された状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、被めっき体を水洗いして余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、被めっき体を無電解めっき浴中へ浸漬させる。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元と、これに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としては、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
なお、めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液である。液全体に対する還元剤の濃度が0.1質量%〜50質量%の範囲にあることが一般的であり、1質量%〜30質量%の範囲にあることが好ましい。使用可能な還元剤の例としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミノボランなどのホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などが挙げられる。
【0097】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、溶媒の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれる。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
【0098】
このめっき浴に用いられる溶媒には、吸水性が低く、疎水性の高い被めっき体に対して、親和性の高い有機溶媒を含有させることが好ましい。有機溶媒の種類の選択や、含有量は、被めっき体の物性に応じて調整すればよい。
めっき浴に用いられる有機溶媒としては、水に可溶な溶媒が好ましく、本発明で掲げた触媒液を構成する水溶性引火性液体を用いることが出来る。更に、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類なども好ましく用いられる。
【0099】
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムなどが知られており、なかでも、導電性の観点から、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加剤が選択される。例えば、銅の無電解めっきの浴には、銅塩としてCuSO、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定化剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤、トリアルカノールアミンなどが含まれる。
また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムなどが含まれる。
また、パラジウムの無電解めっき浴には、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれる。
これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
めっき液は、市販品を用いてもよく、例えば、上村工業(株)製:スルカップPGT、奥野製薬(株)製:ATSアドカッパーIWなどが挙げられる。
【0100】
無電解めっきによって形成されるめっき膜の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、またはめっき浴の温度などにより制御することができる。導電性の観点からは、膜厚は0.1μm以上であることが好ましく、0.1〜1μmがより好ましい。ただし、無電解めっきによるめっき膜の導通層(給電層)としてさらに後述する電気めっきを行う場合は、少なくとも0.1μm以上の膜が均一に付与されていればよい。
また、めっき浴への浸漬時間は、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0101】
以上のようにして得られた無電解めっきによるめっき膜は、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により、被めっき体中、特にその表面近傍にめっき触媒やめっき金属からなる微粒子が高密度で分散していること、またさらに被めっき体上にめっき金属が析出していることが確認される。被めっき体とめっき膜との界面は、被めっき体と微粒子とのハイブリッド状態であるため、被めっき体(有機成分)と無機物(触媒金属またはめっき金属)との界面が平滑(例えば、1mmの領域でRaが100nm以下)であっても、密着性が良好となる。
【0102】
<電気めっき>
本工程においては、触媒付与工程で付与されためっき触媒またはその前駆体が電極として機能を有する場合、めっき触媒またはその前駆体が付与された被めっき体に対して、電気めっきを行うことができる。
また、上述の無電解めっきの後、形成されためっき膜を電極とし、さらに、電気めっきを行ってもよい。これにより被めっき体との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たな任意の厚みをもつめっき膜を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電気めっきを行うことで、めっき膜を目的に応じた厚みに形成することができる。これにより、本発明の金属膜(めっき膜)を種々の応用に適用するのに好適である。
【0103】
電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気めっきに用いられる金属の例としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられる。導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0104】
電気めっきにより得られるめっき膜(金属膜)の膜厚は、めっき浴中に含まれる金属濃度、または、電流密度などを調整することで制御することができる。なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点からは、0.5μm以上であることが好ましく、1〜100μmがより好ましい。しかしながら、配線の厚みは配線の線幅が狭くなる、すなわち微細化するほどアスペクト比を維持するために薄くなる。従って、電気めっきによって形成する膜厚は上記に限定されず、任意に設定する事ができる。
【0105】
本発明において、上述のめっき触媒またはその前駆体に由来する金属や金属塩、および/または、無電解めっきにより被めっき体中に析出した金属が、被めっき体中でフラクタル状の微細構造体として形成されることによって、めっき膜と被めっき体との密着性をさらに向上させることができる。
被めっき体中に存在する金属量は、被めっき体断面を金属顕微鏡にて写真撮影したとき、被めっき体の最表面から深さ0.5μmまでの領域に占める金属の割合が5〜50面積%であり、被めっき体とめっき膜との界面の算術平均粗さRa(ISO 4288(1996))が0.01〜0.5μmであり、このような平滑な界面であっても、被めっき体と金属膜との強い密着性が発現される。
【0106】
上記工程により得られる金属膜(めっき膜)を備える被めっき体は、被めっき体と金属膜との密着性に優れ、種々の用途に使用することができる。例えば、電磁波防止膜、コーティング膜、2層CCL材料、電気配線用材料などが挙げられる。
また、得られためっき膜は、パターン状にエッチングすることで、金属パターンとすることもできる。
【0107】
<金属膜を有する積層体の製造方法>
次に、上述のめっき用触媒液を使用した、金属膜を有する積層体の製造方法について説明する。本発明の金属膜を有する積層体の製造方法は、特に限定されないが、主に以下の工程を有する製造方法が好ましい。
(1)めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマーを含む感光性樹脂組成物を用いて、基板上に感光性樹脂組成物層を形成する層形成工程
(2)上記感光性樹脂組成物層をパターン状に露光して、露光部において硬化層を形成する露光工程と、
(3)露光工程での上記感光性樹脂組成物層の未露光部分を除去する現像工程と、
(4)現像工程で得られたパターン状の硬化層に、上述のめっき用触媒液を接触させ、めっき触媒またはその前駆体を硬化層に付与する触媒付与工程と、
(5)触媒付与工程でめっき触媒またはその前駆体が付与された硬化層に対してめっき処理を施すめっき工程
以下、各工程について詳述する。
【0108】
<層形成工程>
層形成工程は、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマーを含む感光性樹脂組成物を用いて、基板上に感光性樹脂組成物層を形成する工程である。より具体的には、感光性樹脂組成物を基板上に塗布、または基板を感光性樹脂組成物中に浸漬させ、基板上に感光性樹脂組成物層を作製する工程である。
使用される、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマー(特定重合性ポリマー)、および感光性樹脂組成物は、上述に記載のポリマーおよび材料が使用される。
以下に、使用される基板について説明する。
【0109】
<基板>
基板は、その表面が、特定重合性ポリマーが直接化学結合した状態を形成しうる機能を有していてもよく、例えば、基板自体がそのような表面特性を有するものであってもよく、また、基板上に別途中間層を設け、その中間層がこのような特性を有するものであってもよい。
【0110】
本発明で使用される基板としては、寸度的に安定な板状物であることが好ましい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅など)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ABS、NBR、アクリルポリマー、オレフィンポリマー、ポリエステル系樹脂など)、上記の如き金属がラミネートもしくは蒸着された紙またはプラスチックフィルム、ガラスクロス含浸エポキシやポリイミドフィルム、多層配線板に用いられる層間絶縁膜(成分としてはガラスフィラー含有エポキシやポリイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー)などが挙げられる。更に基板としてはガラスやセラミックなどの無機材料からなる基板を用いてもよい。
これらの基板は寸法安定性や物理特性を向上させる観点でシリカなどの無機充填物を混合したものであってもよく、なかでもエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、または液晶ポリマーからなる樹脂を含む基板が好ましい。
これらの基板表面が、特定重合性ポリマーが直接化学結合した状態を形成しうる機能を有している場合には、後述の中間層(密着補助層)などは必要ない。
【0111】
本発明で使用される基板としては、特開2005−281350号公報の段落番号[0028]〜[0088]に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドを含む基板を用いることもできる。
【0112】
本発明で使用される基板としては、絶縁性樹脂からなる基板、または、絶縁性樹脂からなる層を表面上に有する基板などを用いてもよい。このような基板を用いれば、得られる金属膜を有する基板を、半導体パッケージや、各種電気配線基板などに好適に用いることができる。
【0113】
絶縁性樹脂からなる基板、絶縁性樹脂からなる層を得る場合には、公知の絶縁性樹脂組成物が用いられる。この絶縁性樹脂組成物には、主成分たる樹脂に加え、目的に応じて種々の添加物を併用することができる。例えば、絶縁層の強度を高める目的で、多官能のアクリレートモノマーを添加する、絶縁体層の強度を高め、電気特性を改良する目的で、無機、または有機の粒子を添加する、などの手段をとることもできる。
なお、本発明における「絶縁性樹脂」とは、公知の絶縁膜や絶縁層に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂であることを意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
【0114】
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、またそれらの混合物でもよく、例えば、特開2007−144820号公報の段落番号[0014]〜[0019]に記載されるエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミドなどを使用することができる。また、国際公開第2008−050715号パンフレットの段落番号[0066]〜[0073]に記載の絶縁性樹脂を使用することもできる。
【0115】
上述の基板は、半導体パッケージ、各種電気配線基板などへの用途を考慮すると、表面凹凸が500nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下、最も好ましくは20nm以下である。下限値は小さいほど好ましく、0nmである。この基板の表面凹凸(中間層や密着補助層が設けられる場合はその層の表面凹凸)が小さくなるほど、得られる金属パターン材料を配線などに適用した場合に、高周波送電時の電気損失が少なくなり好ましい。
【0116】
なお、基板と感光性樹脂組成物の硬化層との密着性を向上させるために、基板上に以下に示す密着補助層を設けることもできる。
【0117】
<密着補助層>
密着補助層としては、基板との密着性が良好な樹脂組成物、及び、感光性樹脂組成物により形成される樹脂膜と相互作用を形成しえる活性点を発生させる活性種(化合物)を用いて形成されることが好ましい。なお、樹脂組成物を構成する樹脂が、金属イオン吸着能を有する樹脂膜と相互作用を形成しえる活性点を発生させる部位を有する場合には、活性種(化合物)を別途添加する必要はない。
【0118】
密着補助層としては、例えば、基板が、多層積層板、ビルドアップ基板、フレキシブル基板の材料として用いられてきた公知の絶縁樹脂からなる場合には、この基板との密着性の観点から、絶縁樹脂組成物(例えば、上記絶縁性樹脂)を用いることが好ましい。
【0119】
密着補助層を形成する際に使用される絶縁樹脂組成物は、基板を構成する電気的絶縁性の樹脂と同じものを含んでいてもよく、異なっていてもよい。なかでも、ガラス転移点や弾性率、線膨張係数といった熱物性が近いものを使用することが好ましい。具体的には、例えば、基板を構成する絶縁樹脂と同じ種類の絶縁樹脂を使用することが密着の点で好ましい。
また、これ以外の成分として、密着補助層の強度を高める、また、電気特性を改良するために、無機もしくは有機の粒子を添加してもよい。
【0120】
密着補助層に使用される絶縁樹脂とは、公知の絶縁膜に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂を意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
絶縁樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、またはそれらの混合物でもよく、例えば、熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミドなどが挙げられる。
【0121】
また、密着補助層に用いられる絶縁樹脂としては、感光性樹脂組成物と相互作用を形成しえる活性点を発生させる骨格を有する樹脂を用いることもできる。例えば、特開2005−307140号公報の段落番号[0018]〜[0078]に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドが用いられる。
【0122】
密着補助層は、本発明の効果を損なわない限りにおいては、目的に応じて、種々の化合物を添加することができる。
具体的には、例えば、加熱時に応力を緩和させることができる、ゴム、SBSラテックスのような物質、膜性改良のためのバインダー、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤などが挙げられる。
【0123】
密着補助層には、樹脂被膜の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などを挙げることができる。
【0124】
さらに、密着補助層には、必要に応じて、一般の配線板用樹脂材料に用いられる充填剤、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラーを一種または二種以上配合してもよい。中でも、充填剤としては、シリカを用いることが好ましい。
また、密着補助層には、必要に応じて、着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などの各種添加剤を1種または2種以上含有してもよい。
【0125】
これらの材料を添加する場合は、いずれも、主成分となる樹脂に対して、0〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0〜80質量%の範囲で添加される。密着補助層と隣接する基板とが、熱や電気に対して同じ、もしくは近い物性値を示す場合には、これら添加物は必ずしも添加する必要はない。添加物を、樹脂に対して200質量%を超える範囲で用いる場合には、樹脂自体が本来有する強度などの特性が低下する懸念がある。
【0126】
密着補助層には、上記のように、感光性樹脂組成物と相互作用を形成しえる活性点を発生させる活性種(化合物)が用いられることが好ましい。この活性点を発生させるためには、何らかのエネルギーを付与すればよく、好ましくは、光(紫外線、可視光線、X線など)、プラズマ(酸素、窒素、二酸化炭素、アルゴンなど)、熱、電気、などが用いられる。さらに、酸化性の液体(過マンガン酸カリウム溶液)などによって表面を化学的に分解することで活性点を発生させてもよい。
活性種の例としては、熱重合開始剤、光重合開始剤など重合開始剤が挙げられる。ここで、密着補助層に含有される重合開始剤の量は、密着補助層全量に対して、0.1〜50質量%が好ましく、1.0〜30質量%がより好ましい。
【0127】
密着補助層の厚みは、一般に、0.1〜10μmが好ましく、0.2〜5μmであることがより好ましい。上記範囲内であれば、感光性樹脂組成物の硬化物層との十分な密着性が得られる。また、一般の接着剤を用いるのに比較して薄層でありながら、その接着剤による層と同様の密着性が達成される。その結果、全体の厚みが薄く、かつ、密着性に優れた金属膜を有する積層体を得ることができる。
【0128】
密着補助層の表面は、形成されるめっき膜(金属膜)の物性を向上させる観点から、JIS B 0601(1994年)、10点平均高さ法で測定した表面粗さRzが3μm以下であるものが好ましく、Rzが1μm以下であることがより好ましい。Rzが上記範囲内であれば、回路が極めて微細(例えば、ライン/スペースの値が25/25μm以下の回路パターン)プリント配線版を製造する際に、好適に用いられる。
【0129】
密着補助層は、基板上に、塗布法、転写法、印刷法など工程の層形成方法を適用して形成される。
また、密着補助層は所望により、印刷法(例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、インプリント法など)や現像法(例えば、湿式エッチング、乾式エッチング、アブレーション、光による硬化・可塑化(ネガ型/ポジ型)など)などでパターン化してもよい。
【0130】
また、密着補助層は基板上に形成後、何らかのエネルギーを与えて硬化処理工程をおこなってもよい。与えるエネルギーとしては、光、熱、圧力、電子線などが挙げられるが、本実施形態においては熱または光が一般的であり、熱の場合は、100〜300℃の熱を5〜120分加えることが好ましい。
また、加熱硬化の条件は、基板の材料の種類、密着補助層を構成する樹脂組成物の種類などで異なり、これらの素材の硬化温度にもよるが、120〜220℃で20〜120分の範囲で選択されることが好ましい。
この硬化処理工程は密着補助層の形成後すぐに行ってもよく、密着補助層形成後に5〜10分程度の予備硬化処理を行っておけば、密着補助層形成後に行われる他の全ての各工程を行ったあとに実施してもよい。
【0131】
密着補助層の形成後、その表面に形成される感光性樹脂組成物の硬化膜との密着性向上の目的で、乾式および/または湿式法により表面を粗化してもよい。乾式粗化法としては、バフ、サンドブラスト、などの機械的研磨や、プラズマエッチングなどが挙げられる。一方、湿式粗化法としては、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸、などの酸化剤や、強塩基や樹脂膨順溶剤を用いる方法などの化学薬品処理が挙げられる。
【0132】
なお、上記密着補助層には、後述する感光性樹脂組成物の硬化層と比較して、めっき触媒またはその前駆体が付着しにくい。そのため、密着補助層と光性樹脂組成物の硬化層との間では、めっき触媒またはその前駆体の付着のしやすさが大きく異なる、つまり、めっき触媒の付着選択性がある。その結果、主に感光性樹脂組成物の硬化層にめっき触媒が付着し、より良好なパターンめっきを行うことが可能となる。
【0133】
(膜形成方法)
上述のように基板上に感光性樹脂組成物層を作製する方法としては、特に限定されず、感光性樹脂組成物を基板上に塗布する方法、基板を感光性樹脂組成物中に浸漬する方法などが挙げられ、層厚が制御しやすい点で、塗布方法が好ましい。
【0134】
上述の基板上に感光性樹脂組成物を塗布する方法は、特に限定されず、例えば、ブレードコート法、ロッドコート法、スクイズコート法、リバースロールコート法、トランスファコールコート法、スピンコート法、バーコート法、エアーナイフ法、グラビア印刷法、スプレーコート法、など公知の塗布方法が挙げられる。
【0135】
塗布後に感光性樹脂組成物層中の溶媒を除去するために、必要に応じて、感光性樹脂組成物層を加熱する工程を設けてもよい。乾燥温度や時間は、適宜選択されるが、生産効率、取り扱い性の点から、100〜200℃で10分〜1時間乾燥させることが好ましい。
【0136】
上記工程により得られる感光性樹脂組成物層の層厚は、適宜選択されるが、プリント配線基板などの電子部材への応用の観点から、0.1〜10μmが好ましく、0.2〜5μmがより好ましい。
【0137】
<露光工程>
露光工程は、塗布工程で得られた感光性樹脂組成物層を、パターン状に露光して硬化層を形成する工程である。露光処理を施すことにより、感光性樹脂組成物層中で樹脂同士の架橋反応や、基板との共有結合が形成され、硬化膜が得られる。
【0138】
露光による基板上での感光性樹脂組成物の硬化層の形成は、一般的な表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いることが好ましい。グラフト重合とは、高分子化合物鎖中上に活性種を与え、これによって重合を開始する別の単量体を更に重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法である。
本発明に適用される表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発光、p135には表面グラフト重合法として光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。また、吸着技術便覧、NTS(株)、竹内監修、1999.2発光、p203、p695には、γ線、電子線などの放射線照射グラフト重合法が記載されている。
光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報および特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
【0139】
感光性樹脂組成物の硬化層を形成する際には、上記の表面グラフト法以外にも、高分子化合物鎖の末端に、トリアルコキシシリル基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基などの反応性官能基を付与し、これと基板表面に存在する官能基とのカップリング反応により結合させる方法を適用することもできる。
これらの方法の中でも、より多くのグラフトポリマーを生成する観点からは、光グラフト重合法、特に、UV光により光グラフト重合法を用いて特定重合性ポリマーが基板に化学結合してなる感光性樹脂組成物の硬化層を形成することが好ましい。
【0140】
パターン状の露光手段としては、一般にマスクを介したパターン状の露光手段が用いられるが、各種レーザーなどにより走査露光を用いてもよい。
露光光源としては、適宜選択され、UVランプ、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯などが挙げられる。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
なかでも、赤外線レーザーによる走査露光、マスクを介して行われるキセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが好ましい。
【0141】
露光時間は、使用される感光性樹脂組成物の種類などにより適宜選択されるが、作業性などの観点から、5秒〜30分が好ましい。
また、露光パワーは、基板とのグラフト反応を容易に進行させる点から、10〜5000mJ/cmが好ましく、50〜3000mJ/cmがより好ましい。
【0142】
感光性樹脂組成物層を露光・硬化して得られる硬化層は、塗布ムラによる表面凹凸が解消し、表面が極めて平滑となる。このような平滑面を有する硬化層であっても、相互作用性基の機能により、めっき触媒であるパラジウムと強固、かつ不可逆的な配位結合性の相互作用が形成されるため、ここに吸着されるめっき触媒を起点とするめっきを行って形成される金属膜との良好な密着性も達成できる。
【0143】
<現像工程>
現像工程は、露光工程での感光性樹脂組成物層の未露光部分、つまり、感光性樹脂組成物層の未硬化部分を、現像液などによって除去する工程である。未硬化部分を現像で除去することでパターン状の硬化層が形成される。
【0144】
現像の方法は、感光性樹脂組成物層の未硬化部分を除去することができれば特に制限されず、使用される感光性樹脂組成物によって適宜最適な方法が選択される。例えば、高アルカリ性溶液(pH:13.0〜13.8)現像液として用いる方法が挙げられる。高アルカリ性現像液を用いて現像する場合は、露光工程で得られた感光性樹脂組成物層の未硬化部分を有する基板を溶液中に浸漬させる方法や、その基板上に現像液を塗布する方法などが挙げられるが、浸漬する方法が好ましい。浸漬する方法の場合、浸漬時間としては生産性・作業性などの観点から、1分から30分程度が好ましい。
また、他の方法としては、感光性樹脂組成物が溶解する溶媒を現像液とし、それに浸漬する方法が挙げられる。
【0145】
<触媒付与工程>
触媒付与工程は、現像工程で得られた硬化層に、上述のめっき用触媒液を接触させ、パラジウム化合物から得られるめっき触媒またはその前駆体を硬化層に付与する工程である。この工程によって、めっき用触媒液が硬化層中に浸透し、めっき処理の際に核として作用するパラジウムやパラジウムイオンが硬化層中に付与(吸着)される。
本工程は、上述しためっき方法における触媒付与工程と同じめっき用触媒液が使用され、同じ方法が実施される。そのため、ここでは本工程の説明を省略する。
【0146】
<めっき工程>
めっき工程は、触媒付与工程でめっき触媒またはその前駆体が付与された硬化層に対してめっき処理を施し、めっき膜(金属膜)を形成させる工程である。つまり、めっき触媒が付与された硬化層を有する基板にさらにめっき処理を行うことで、金属膜を有する積層体を得ることができる。パターン状の金属膜を得る場合は、基板全面に金属膜を形成して部分的にエッチングしてもよいし、予め硬化層をパターン状に形成した上でめっき処理を行ってもよい。
本工程では、上述のめっき方法におけるめっき工程と同じく無電解めっき、または電気めっきを実施する。無電解めっき、および電気めっきの方法は、上述の通りであり、ここでは説明は省略する。
【0147】
上述の工程によって、金属膜を有する基板(積層体)を得ることができる。より具体的には、基板と、基板上に形成される感光性樹脂組成物の硬化層と、硬化層上に形成される金属膜とを有する積層体が得られる。なお、使用される基板は、基板とその上に形成される密着補助層とを備える積層構造であってもよい。また、これらの工程を基板の表面に施すことによって、両面に金属層が形成された金属膜を有する積層体を得ることができる。
得られた金属膜を有する積層体は、基板表面に形成された硬化層の平坦性に優れ、かつ、金属層の密着力も良好であることから、例えば、電磁波防止膜、コーティング膜、2層CCL材料、電気配線材料などの種々の用途に適用することができ、特に、金属膜と硬化層との界面における平坦性が改良されたことから、高周伝送を確保する必要がある用途に好適に用いていることができる。
【0148】
本発明の金属膜を有する積層体の好ましい実施態様としては、表面の凹凸(上記感光性樹脂組成物の硬化層が設けられる場合はその層の表面)が500nm以下(より好ましくは100nm以下、最も好ましくは0である)の基板上に、金属膜(めっき膜)を設けたものが好ましい。また、基板と金属パターンとの密着性が、0.2kN/m以上(より好ましくは0.5kN/m以上)であること好ましい。
【0149】
なお、基板表面の凹凸は、基板を基板表面に対して垂直に切断し、その断面をSEMにより観察することにより測定した値であり、JIS B0633−2001に準じて算術平均粗さRaを測定した。
また、密着性の値は、めっき膜(金属パターン)の表面に、銅板(厚さ:0.1mm)をエポキシ系接着剤(アラルダイト、チバガイギー製)で接着し、140℃で4時間乾燥した後、JIS C 6481に基づき90度剥離実験を行うか、または、めっき膜自体の端部を直接削り取り、JIS C 6481に基づき90度剥離実験を行って得られた値である。
本発明の金属膜を有する積層体の製造方法によれば、選択的に効率よくめっき触媒が付着した高精細のパターンが形成されることで、高精細で基板との密着性に優れた金属膜パターンを有する積層体を得ることができる。
このように得られた金属膜を有する積層体は、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、アンテナ、多層配線基板、マザーボード、など種々の用途で使用されるフレキシブルプリント配線基板の製造に有用である。
【実施例】
【0150】
実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によりなんら制限されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」「部」は質量基準である。
【0151】
(めっき用触媒液の調製)
水に対して、以下に示す水溶性可燃性液体、酢酸パラジウム(和光純薬社製)、硝酸(和光純薬社製)を所定量加え、飽和溶解を実現するために26℃にて1週間攪拌し、以下の表1に示す実施例1〜18のめっき用触媒液を調製した。
なお、水溶性可燃性液体としては、ジエチレングリコールジエチルエーテル(和光純薬社製)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(和光純薬社製)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬社製)を使用した。なお、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルは水酸基を有しない水溶性有機溶媒に該当する。
【0152】
【表2】

【0153】
調製した実施例1〜18の各めっき用触媒液の、触媒溶解性、触媒安定性について検討した。表2に、それぞれの触媒液の結果について示す。
なお、表2中の触媒溶解性は、めっき用触媒液の調製時、溶液中の酢酸パラジウムが26℃にて3日攪拌した際に溶解して、目視により透明溶液となり実質的に溶解した場合を○、3日を超えて1週間以内に一部溶解した場合を△、1週間を超えても全く溶解しない場合を×とした。
触媒安定性については、25℃で1日以内に溶液の色が黒色に変化した場合を×、1日を超えて3日以内に変化した場合を△、1週間を超えても変化しない場合を○とした。なお、溶液の黒色変化は、溶解したパラジウム触媒が変性したためと推測される。
【0154】
また、調製した実施例1〜18の各めっき用触媒液の引火点を、JIS−K2265に準拠したダク密閉式によって測定した。得られた結果を、表2に示す。なお、以下の表2中の引火点「80℃<」は、引火点が80℃を超えることを意味する。
【0155】
【表3】

【0156】
表2より、各めっき用触媒液において、良好な触媒溶解性および触媒安定性を示すことが確認された。特に、硝酸を含むめっき用触媒液(実施例3〜6、実施例9〜12、実施例15〜18)の場合、優れた触媒溶解性を示した。また、水酸基を含まない水溶性有機溶媒(実施例7〜18)においては、優れた触媒安定性を示した。
また、表1に示す各めっき用触媒液の引火点は、40℃以上の引火点を示した。
【0157】
<金属膜を有する積層体の作製>
(基板の作製)
ガラスエポキシ基板上に、層間絶縁膜GX−13(ABF、味の素(株)製)をラミネートしたものを用意した。この層間絶縁膜の膜厚は40μmであり、表面凹凸(Rz)は0.6μmであった。
【0158】
(密着補助層1の形成)
JER806(ビスフェノールF型エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン製)11.9質量部、LA7052(フェノライト、硬化剤:大日本インキ化学工業)4.7質量部、YP50−35EK(フェノキシ樹脂、東都化成製)21.7質量部、シクロヘキサノン61.6質量部、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール(硬化促進剤)0.1質量部を混合した混合溶液を、ろ布(メッシュ#200)にて濾過し、塗布液を調製した。
この塗布液を、上記の層間絶縁膜上にスピンコータにて塗布し、その後、170℃で60分間乾燥して硬化させ、密着補助層1が形成された基板A1を得た。硬化した膜(中間層)の厚みは、0.5μmであった。この基板A1の表面凹凸(Ra)は、0.12μmであった。
【0159】
[感光性樹脂組成物の硬化層]
(重合性基および相互作用性基を有するポリマーAの合成)
まず、下記のようにして、重合性基および相互作用性基を有するポリマーAを合成した。500mLの3つ口フラスコにエチレングリコールジアセテート20mL、ヒドロキシエチルアクリレート7.43g、シアノエチルアクリレート32.08gをいれ、80℃に昇温し、その中に、V−601(0.737g)およびエチレングリコールジアセテート20mLの混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間反応させた。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.32g、U−600(日東化成製)1.04g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)21.87g、およびエチレングリコールジアセテート22gを加え、55℃で6時間反応を行った。その後、反応液にメタノール4.1gを加え、さらに1.5時間反応を行った。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、相互作用性基としてニトリル基を有する特定重合性ポリマーであるポリマーAを得た。重合性基を含有する繰り返し単位:ニトリル基を含有する繰り返し単位=22:78(モル比)であった。また、分子量はポリスチレン換算で、Mw=8.2万(Mw/Mn=3.4)であった。
【0160】
(塗布溶液の調製)
上記のポリマーA10質量部とアセトニトリル90質量部とを混合攪拌し、固形分10質量%の塗布溶液を調製した。
【0161】
(膜形成工程および露光工程:感光性樹脂組成物層の硬化)
調製された塗布溶液を、前記基板A1の樹脂層上に、厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、80℃にて30分乾燥した。その後、三永電機製のUV露光機(型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、1.5mW/cmの照射パワー(ウシオ電機製紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワーを測定)にて、光透過部は石英製であり、マスク部(非露光部)はクロムによって蒸着されたマスクを介して、660秒間照射して、ライン/スペース=12.5/12.5μmのパターン状の露光を行い、基板A1の絶縁樹脂層上に、パターン状にポリマーAにより形成された硬化層を形成した。ここで、積算露光量は500mJ/cmであった。
別途、マスクを介さずに全面を露光したポリマーAにより形成された硬化層も上記と同様の露光量にて作製した。
【0162】
その後、攪拌した状態のアセトニトリル中に硬化層が形成された基板を5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。これにより、パターン状に硬化層を有する基板A2および全面に硬化層を有する基板A3を得た。
【0163】
(硬化層の物性測定)
得られた基板A2上のパターン状の硬化層、および基板A3上の全面の硬化層の物性について、前述の測定方法で測定した。結果は、両者とも以下の通りであった。
・25℃−50%相対湿度環境下における飽和吸水率:1.2質量%
・25℃−95%相対湿度環境下における飽和吸水率:3.4質量%
【0164】
(触媒付与工程)
上記の実施例1〜18で調製しためっき用触媒液に、パターン状に硬化層を有する基板A2または全面に硬化層を有する基板A3を5分間浸漬した後、水で洗浄を行った。硬化層には触媒が付与され、例えば、例17で調製しためっき用触媒を使用した場合、基板A2および基板A3ともに触媒の付与量(パラジウム付着量)は30mg/mであった。
【0165】
(めっき工程:無電解めっき)
上記のようにして、めっき触媒が付与されたパターン状に硬化層を有する基板A2に対し、上村工業(株)製スルカップPGTを用い、下記組成の無電解めっき浴を用い、無電解めっき温度26℃で30分間、無電解めっきを行った。得られた無電解銅めっき膜の厚みは、各サンプルにおいて0.5μmであった。
無電解めっき液の原料は以下の通りである。
蒸留水 79.2質量%
PGT−A 9.0質量%
PGT−B 6.0質量%
PGT−C 3.5質量%
ホルマリン(和光純薬:ホルムアルデヒド液) 2.3質量%
【0166】
パターン状に硬化層を有する基板A2を用いて得られた金属パターンを光学顕微鏡(カラー3Dレーザー顕微鏡VK−9700(キーエンス株式会社製))で観察したところ、ライン/スペース=13/12μmの銅パターンが欠陥なく形成されたことを確認した。
【0167】
(表面粗さ評価)
硬化層と金属膜(めっき膜)界面の断面SEM写真(倍率:10000倍)を用い、JIS B0633−2001に準拠して、界面の算術平均粗さRa(μm)を測定した。結果を以下の表3に示す。
【0168】
(密着性評価)
密着性評価用のサンプル作製としては、上記の通り、マスクを介したパターン露光をせずに、全面を露光して得られた全面に硬化層を有する基板A3を使用した。この基板A3と、上記と同様の方法で実施例1〜18の各めっき用触媒液とを用いて、無電解めっきまで実施した。
次に、無電解銅めっき膜を給電層として、下記組成の電気めっき浴を用い、3A/dmの条件で、電気めっきを20分間行った。得られた電気銅めっき膜の厚みは、各サンプルとも12μmであった。
電気めっき浴の組成
硫酸銅 38g
硫酸 95g
塩酸 1mL
カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
水 500g
【0169】
得られた銅めっき付きの基板を、170℃にて1時間加熱処理した。
得られためっき膜を引張試験機((株)エー・アンド・デー製、RTM−100)を用いて、5mm幅について、引張強度10mm/minにて、90°ピール強度の測定を行った。各サンプルについての結果を、表3に示す。
【0170】
(エッチングによる金属残渣除去性の評価)
金属残渣除去性評価用のサンプル作製では、上記の通り、マスクを介したパターン露光をせずに、全面を露光して得られた全面に硬化層を有する基板A3を用いた。この基板A3を用いて、上記と同様の方法で実施例1〜18の各めっき用触媒液を使用して、無電解めっきまで実施した。さらに、その後、公知のセミアディティブ法を用いて、JPCA BU−01 2007に記載の櫛型配線パターンを形成した。
その過程において、電気めっきレジストを現像剥離後に、硫酸−過酸化水素のエッチング液で30秒フラッシュエッチングを行い、無電解銅めっきを除去することで配線基板を得た。その後、抵抗計R8340A(エーディーシー社製)を用い、櫛型配線のパッド間のDC絶縁抵抗を測定した。実施例1のめっき用触媒液を用いた場合の得られた抵抗値は、3.0×1011Ωであり、良好な抵抗値を示した。また、実施例2〜18の他のめっき用触媒液を使用した場合も、それぞれ3.0×1011Ω程度の良好な抵抗値を示した。
一方、めっき用触媒液として、硝酸パラジウム(0.05質量%)を溶解させたアセトン溶液を使用して、上記と同様の方法により、配線基板を作製した。得られた抵抗値は、2.0×10Ωであった。DC絶縁抵抗値としては、実用的な観点から、1010Ω以上が良好とされ、10Ω未満ではその使用が制限される。上記のように、本発明のめっき用触媒液を使用した場合は、良好な絶縁抵抗性を示すことが確認された。
【0171】
【表4】

【0172】
表3において、めっき析出性は、実施例での条件にて全面に均一にめっき金属が析出する時間が30分以内の場合を○、30分を超えて1時間以内の場合を△、1時間を超えても均一なめっき膜が析出しない場合を×とした。
また、パターンめっき性は、無電解めっきを2時間実施しても基板A2上の非パターン領域(パターン状に硬化層がない領域)に析出が見られない場合を○、30分の実施では析出が見られないが、2時間では析出が認められる場合を△、30分の実施で析出が見られる場合を×とした。
また、保存安定性は、実施例1〜18のめっき用触媒液を25℃で1ヵ月間保管した後、上記と同様の工程でめっき膜の作製を行った際に、上記のめっき析出性およびパターンめっき性の判断基準に変化が無い場合のめっき膜が得られた場合を○、めっき析出性またはパターンめっき性の何れかが劣化した場合を△、双方とも劣化した場合を×とした。
なお、実用的な観点からは、上記項目において「×」が含まれていないことを必要とされる。
【0173】
表3の結果より、各種めっき用触媒液において、良好なめっき析出性、パターンめっき性、保存安定性が確認された。特に、1級または2級の水酸基を有しない水溶性有機溶媒を使用した実施例7〜18においては、優れた保存安定性を示した。
パターンめっき性が良好である点より、硬化層がない非パターン領域にはめっき触媒がほとんど付与されていないことが確認された。つまり、本発明のめっき用触媒液が、被めっき体に対するめっき触媒付与において優れた選択性・制御性を有することが示された。さらに、セミアディティブ法において、本発明のめっき用触媒を使用した場合は、配線間の抵抗値が高く、この方法に好適に使用できることが示された。
また、各種めっき用触媒液において、硬化層と金属膜(めっき膜)界面の表面粗さRaも小さく、金属膜の密着強度も良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム化合物と、水と、可燃性液体成分としては水溶性可燃性液体とを含むめっき用触媒液であって、触媒液の引火点が40℃以上であり、触媒液中における前記水溶性可燃性液体の含有量が0.1〜40質量%である、めっき用触媒液。
【請求項2】
前記水溶性可燃性液体が、1級または2級の水酸基を有しない水溶性有機溶媒である請求項1に記載のめっき用触媒液。
【請求項3】
さらに、酸を含む請求項1または2に記載のめっき用触媒液。
【請求項4】
被めっき体が、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有する疎水性樹脂である、請求項1〜3のいずれかに記載のめっき用触媒液。
【請求項5】
前記疎水性樹脂が、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマーを含む感光性樹脂組成物の硬化物である請求項4に記載のめっき用触媒液。
【請求項6】
前記ポリマーが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位、および一般式(2)で表される繰り返し単位を含む共重合体である請求項5に記載のめっき用触媒液。
【化1】

(一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。ZおよびYは、それぞれ独立に、単結合、または、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。Lは、置換または無置換の二価の有機基を表す。
一般式(2)中、Rは、水素原子、または、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。Xは、単結合、または、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。Lは、置換または無置換の二価の有機基を表す。)
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載のめっき用触媒液を被めっき体に接触させて、めっき触媒またはその前駆体を被めっき体に付与する触媒付与工程と、
前記触媒付与工程で得られた被めっき体に対して、めっき処理を施すめっき工程とを備える、めっき方法。
【請求項8】
前記被めっき体が、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有する疎水性樹脂である、請求項7に記載のめっき方法。
【請求項9】
前記疎水性樹脂が、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマーを含む感光性樹脂組成物の硬化物である請求項8に記載のめっき方法。
【請求項10】
前記ポリマーが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位、および一般式(2)で表される繰り返し単位を含む共重合体である請求項9に記載のめっき方法。
【化2】

(一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。ZおよびYは、それぞれ独立に、単結合、または、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。Lは、置換または無置換の二価の有機基を表す。
一般式(2)中、Rは、水素原子、または、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。Xは、単結合、または、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。Lは、置換または無置換の二価の有機基を表す。)
【請求項11】
めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基と重合性基とを有するポリマーを含む感光性樹脂組成物を基板上に塗布して、感光性樹脂組成物層を形成する塗布工程と、
前記感光性樹脂組成物層を、パターン状に露光して硬化層を形成する露光工程と、
前記露光工程での前記感光性樹脂組成物層の未露光部分を除去する現像工程と、
前記現像工程で得られたパターン状の硬化層に、請求項1〜3に記載のめっき用触媒液を接触させ、めっき触媒またはその前駆体を前記硬化層に付与する触媒付与工程と、
前記触媒付与工程でめっき触媒またはその前駆体が付与された硬化層に対してめっき処理を施すめっき工程とを備える、金属膜を有する積層体の製造方法。
【請求項12】
前記めっき工程のめっき処理が、無電解めっき処理を施し、前記無電解めっき処理の後に、さらに電気めっき処理を施すめっき処理である、請求項11に記載の金属膜を有する積層体の製造方法。

【公開番号】特開2010−138475(P2010−138475A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318600(P2008−318600)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】