説明

より高い剛性を提供可能な緩衝装置

マニュアル操作装置(28)の移動に対する作用に抗する緩衝装置であって、前記緩衝装置は、磁性流体を含む少なくとも一つのチャンバーと、磁性流体においてその見掛けの粘性を変えるため、可変磁界を発生する1つまたは2つの手段(6.1、6.2)と、自在に並進運動し、磁性流体をせん断可能であり、前記マニュアル操作装置(28)に機械的に連結するように設計された、一つの部品(4)と、を有し、前記可動部品(4)は、孔、および/または凹部、および/または突起を有する、長手方向軸(Y)のブレードを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性流体緩衝装置、より一般的には、磁界の変調により磁性流体の見掛けの粘性を変更することで、動作に対する抵抗を生じることが可能な装置に関し、本システムは、タッチセンサーまたは触覚シミュレーションシステムで、反応がコマンドの実行を反映するマニュアル動作システムの動作に抗するために用いることができる。
【背景技術】
【0002】
例えば、バーチャルリアリティで用いられるマンマシンインターフェースは、2つの相対する特性を有する必要があり、第一は、自由な移動をシミュレートするために、無負荷時に、できるだけ容易に動作することが可能である必要があり、第二は、例えば固体または仮想壁をシミュレートするために、高い剛性を有することが可能である必要がある。
【0003】
例えば、抗力を生じるために、既知のタイプの標準的な電磁モータを利用可能であることが知られている。エネルギーを生じ得るそのようなシステム(完全に能動的なシステム)の剛性は、常に、安定性を制限するファクターである。
【0004】
セミアクティブダンパーは、コントロールシステムを通じて、ダンピング係数が適用負荷の関数として制御可能な、エネルギーの吸収のみが可能なシステムである。あるインターフェースは、大きさがデメリットの回転セミアクティブブレーキを用いる。他のインターフェースは、セミアクティブダンパーを用いるが、無負荷でのこれらのシステムの力は、大抵大き過ぎる。
【0005】
特許文献1は、釣りのシミュレーションゲームにおいて、リールを操作する釣り人に、または、自転車のペダルを漕ぐサイクリストに感知される反力を生じる装置を開示している。
【0006】
この装置は、磁性流体を含んだスポンジが適合されたUの字の2本の脚により区画された空隙を、自在に並進運動する、プレートを用いている。
【0007】
移動プレートは、並進移動中に、スポンジと擦れる。空隙の磁界を変更することにより、スポンジに含まれる磁性流体の見掛けの粘性が変化し、前進動作に対するプレートの抵抗が変化する。
【0008】
このシステムは、スポンジへのプレートの連続摩擦により、寿命がある。また、この構造は、接触面積が小さいため、特に、プレートへの磁性流体の限られた作用により、限られた緩衝のみ発生可能である。従って、このシステムは、様々な状況において、効果的な緩衝を生じるために利用され難いが、サイズは許容範囲である。大きな量の緩衝が要求される場合、磁性流体で生じるせん断力が所望の緩衝を生じるのに十分であるように、大きなプレートが要求される。その結果、利用が制限される大きな緩衝装置が必要となる。
【0009】
特許文献2は、自動車のステアリングシステムにおける振動を回避する装置を開示している。このシステムは、ステアリングコラムに挿入され、磁性流体で満たされたハウジングと、ステアリングシャフトの上部に対して固定されて動くローター、およびハウジング内で磁界を発生する電気コイルを含んでいる。このローターは、ステアリング軸と一致する軸を備えたディスクから形成され、このディスクは、軸方向の孔と、周囲に歯を有している。歯および孔は、磁性流体において、通常およびせん断力を生じ、これが、回転および軸方向における振動を低減可能である。このシステムは、大きさのデメリットを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US 2007/0013655
【特許文献2】US 2004/0084887
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的の一つは、大きな緩衝力を提供可能である磁性流体を備え、小型であり、長寿命の緩衝装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的は、磁性流体を含んだチャンバーと、磁性流体において軸に沿って並進運動可能な少なくとも一つのブレードとを有し、磁界の適用により粘性が増す場合に、移動に対する磁性流体の抵抗を増すために、このブレードのより大きな面が、リブおよび/または貫通孔を有する装置を利用することにより実現される。
【0013】
言い換えれば、ブレードは、装置のスケールでは、滑らかではなく、突出したまたは凹んだレリーフを2つのより大きな面の一方または双方に有する。このため、磁界が適用される場合、磁性流体に含まれ、磁界の適用中に生じる磁性粒子鎖は、レリーフに達し、それらの移動に対して障害となり、および/または、ブレードは孔を有し、この場合、粒子鎖はブレードを通じて孔の中に生じ、ブレードの移動に対する障害となる。
【0014】
このようにして、装置は、より小さいサイズで、より一層の緩衝を提供する。
【0015】
この装置は、無負荷での力を許容範囲としながら、高い抵抗力を生じることができる。第一に、磁性流体に基づく線形制動の利用は、抵抗力を増加することができる。第二に、制動は機械的エネルギーのみを消費するため、システムにおいて安定した反応が得られる。
【0016】
磁性流体は、薄いブレードと共に、せん断力で用いられ、高い抵抗を維持しつつ、システムのサイズを低減することができる。
【0017】
本発明の主な課題は、マニュアル操作装置の移動に対する作用に抗する緩衝装置であって、前記緩衝装置は、磁性流体を含む少なくとも一つのチャンバーと、磁性流体においてその見掛けの粘性を変えるため、可変磁界を発生する2つの手段と、自在に並進運動し、磁性流体をせん断可能であり、前記マニュアル操作装置に機械的に連結するように設計された、少なくとも一つの部品と、を有し、前記部品は、孔、および/または凹部、および/または突起を有する、少なくとも一つの長手方向軸のブレードを有する。
【0018】
ブレードは、非磁性材料で作られてもよく、この場合、平行なスリット、および/または孔を有してもよい。
【0019】
一変形実施形態では、前記ブレードは、磁性材料で作られ、孔、および/または凹部、および/または突起が形成されたコアと、側端の両面に非磁性材料で作られた長細片とを有する。
【0020】
他の変形実施形態では、前記ブレードは、一つのコアと、前記コアの各面をカバーし、スリットが形成された、非磁性材料の2つのプレートとを有する。この変形実施形態で、擦過現象が生じる。
【0021】
複数の平行なブレードを有する可動部品を有することも可能であり、同等のサイズとしてはより高い緩衝力を生じる。
【0022】
一実施形態では、装置は、空隙が磁性流体で満たされた前記チャンバーを形成する、磁界発生手段を有し、前記空隙が、その長手方向端のそれぞれに、ブレードが通過する開口を有し、ブレードが、その長手方向軸に沿って動く。
【0023】
磁界発生手段は、例えば、互いに対向するE形状のコアを有し、E形状の極の中央脚の端部が互いに対向し、空隙および中央脚に取り付けられたコイルを区画する。
【0024】
例えば、この装置は、操作装置と、その各端が、空隙の入り口および操作装置の周囲で磁界発生手段に密封状態で固定された、2つのフレキシブル膜とを有する。密封のためのフレキシブル膜の利用は、緩衝品質を低減する摩擦抵抗力の増加を防ぐ。
【0025】
他の実施形態では、緩衝装置は、磁性流体で満たされた2つのチャンバーを形成する空隙をそれぞれ規定する、2つの磁界発生手段を有し、前記空隙には、長手方向の一端に、一つの開口が備えられ、前記磁界発生手段が互いに距離を置いて配置され、前記空隙の前記開口が互いに対向し、前記ブレードの長手方向端が各空隙に嵌り、前記ブレードがその軸に沿って動く。
【0026】
長手方向軸に沿って移動するブレードを備え、それぞれがブレードの一端に作用する、2つの緩衝手段の利用は、安定した力をブレードおよび一定表面領域に働かせることが可能である。実際に、空隙内の表面と、磁性流体のせん断は、常に等しい。
【0027】
装置は、前記開口および前記操作装置を囲み、組立品を密封するフレキシブル膜を有し、前記マニュアル操作装置が、前記ブレードの略中央に、長手方向軸に垂直に固定される。
【0028】
前記操作装置は、2つの部品で作られ、一方の部品が前記ブレードに固定され、他方の部品が前記ブレードに固定された前記部品に固定され、前記膜が前記2つの部品の間に取り付けられるのが好ましい。
【0029】
前記空隙は、各ブレードに対して一つの空隙が存在し、一つのブレードが各空隙で用いられるように、磁性プレートにより分割されることが想定可能である。
【0030】
本発明の他の課題は、本発明の緩衝装置と、前記磁界発生手段に対する電力供給源と、この部品または前記操作装置の動作を表す運動学的または動的振幅の少なくとも一つのセンサーと、制御装置と、を有し、前記センサーが、前記磁界発生手段に接続された前記制御装置に接続され、前記組立品は、前記磁性流体の見掛けの粘性が、前記操作装置の動作中に変化する、緩衝システムである。前記少なくとも一つのセンサーは、加速度、速度、および/または変位センサーであってもよい。
【0031】
本発明の他の課題は、本発明のシステムを有する、触覚型インターフェースシミュレーションシステムである。
【0032】
本発明は、以下の説明及び添付図面を読むことにより、よりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の緩衝装置の一実施形態の、フレキシブル膜を示さない斜視図である。
【図2A】図1で部分的に示された装置において用いられるブレードの一実施形態の透視図である。
【図2B】図2Aのブレードの拡大平面図である。
【図3】本発明の装置用のブレードの他の実施例の分解図である。
【図4】本発明の装置用のブレードの他の実施例の分解図である。
【図5A】図1の緩衝装置における磁界発生手段の部分斜視図である。
【図5B】図1の緩衝装置における磁界発生手段の部分斜視図である。
【図6】図5A及び図5Bにおける磁界発生手段の側面図である。
【図7】図1における全装置の正面図である。
【図8】本発明の他の実施形態の上面図である。
【図9】2つのブレードを用いることができる特有の組立品の側面斜視図である。
【図10】リアルタイムで動作する緩衝システムの図表示である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本アプリケーションでは、マニュアル操作装置は、手により動かされる装置に限定されず、他の部位、例えば足により動作可能な装置をも含む。
【0035】
図1は、非磁性材料、例えばブラスで作られた単一ブレードから形成され、2つのより大きい表面に平行なブレードの正中面Pにおいて移動可能な、自在に動く部品を含む、本発明による磁性流体を備えた緩衝装置2の一実施形態を示す。
【0036】
このアプリケーションの目的に対し、“ブレード”は、厚さより相対的に大きい長さおよび幅を備え、正中面Pに対する法線方向において柔軟性を有する部品を意味する。
【0037】
図示例では、ブレード4は、ブレード4のより大きい寸法に沿ったY軸に沿って移動可能である。
【0038】
ブレード4は、Y軸に沿って第一端4.1および第二端4.2を有し、これらの端それぞれは、磁界発生手段6.1および6.2の空隙に配置される。
【0039】
本発明によれば、ブレードは、後述説明で詳細に記述する、突起および/または凹型レリーフおよび/または孔を有する。
【0040】
ここで、磁界発生手段6.1を説明する。手段6.2は、同等であり、詳細な説明は行わない。
【0041】
特に図5A、5Bおよび6に示す磁界発生手段6.1は、ブレード4が移動可能な磁性流体を含む空隙を区画する。
【0042】
磁性流体は、キャリア液、例えばミネラル、または合成オイルまたは水における、高精度強磁性体粒子のサスペンションである。
【0043】
特に図示例において、磁界発生手段6.1は、強磁性体、例えば軟鉄、フェライト、または高透磁率を備えた合金で作られ、E形状の、2つの極12と、2つのコイル14とを有する。各コイル14は、Eの中央バー12.1の周囲に配置される。2つの極12は、バーが互いに対向するように配置されている。中央バーの長さは、端部バー12.2の長さよりも短く、中央バーがそれぞれの端部を対向させることにより、空隙を区画する。
【0044】
例えば、この空隙の厚さは、1mmであってもよい。
【0045】
また、緩衝装置2は、空隙における密封システムを有し、磁性流体を収容する。
【0046】
図示例において、密封システムは、Y軸に沿うUの中央バー12.1に挿通される、2つのU形状部品16を有し、これらの部品16は、例えば、接着され、または強固に適合され、磁界発生手段6.1において、装置の側面の密封を実現する。
【0047】
また、2つの中央バーに重なり、ブレードの経路を有する、U形状部品16を、ただ一つ用いることも想定可能である。
【0048】
各U形状部品16は、Uの底部に溝18を有し、Uの凹部まで延び、この溝は、極の中央バーの幅とほぼ等しい幅と、空隙の深さの半分に等しい深さを有する。
【0049】
U形状部品16は、2つの溝が互いに対向し、Y軸に沿って、Uの中央凹部により区画されるチャンバー22に向かう矩形断面チャネル20を区画するように配置される。図6は、この経路20の一端を示している。
【0050】
ブレードは、チャネル20を通過する。
【0051】
本発明では、ブレードをガイド可能などのような密封システムでも利用可能なことは、明白である。
【0052】
この経路20は、後述するように、ブレード4の通過を可能とする。
【0053】
また、密封システムは、Y軸に沿った経路20の反対側のチャンバー22の一端22.1を密封状態で閉じる、プレート24を有する。例えば、このプレートは、接着されてもよい。
【0054】
図示例において、プレート24は、2つの凹部と、チャンバー22の端22.1を閉じる中央リブとを有する。2つの凹部は、磁気コアEの中央バーを囲むコイルの端部に必要な場所を形成可能である。中央リブは、U形状部品16と接し、コイルとぶつかることなく密封する。
【0055】
U形状部品16およびプレート24は、非磁性材料、例えばPlexiglas(登録商標)で作られている。
【0056】
2つの磁気発生手段6.1、6.2は、フレーム26に取り付けることにより、互いに関連して固定され、経路20が互いに対向する。
【0057】
ブレードは、磁気発生手段6.1、6.2にはめ込まれ、特に、ブレードは、経路20を通過し、ブレードの長手方向端部は、チャンバー22に収容される。
【0058】
E形状コアは、互いに対向し、空隙を形成するためにUの一方の足が短い、2つのU形状部品で置き替えも可能である。
【0059】
また、緩衝装置2は、操作装置28を有し、これを通じて、オペレータにより適用される力がブレードに伝達され、これを通じて、ブレードが、オペレータにより感知される緩衝力を適用する。
【0060】
図示例では、この装置28は、ブレード4の中央部に、ブレード4のY軸に垂直に固定された、ロッドにより形成されている。
【0061】
また、2つの磁気発生手段6.1、6.2と操作装置との間も密封され、磁性流体の漏れを防いでいる。
【0062】
この密閉は、2つの磁気発生手段6.1、6.2および操作装置28に対して密閉状態で固定された、巻き戻しフレキシブル膜30により行われるのが好ましい。
【0063】
膜が作られる材料は、例えばニトリル等、磁性流体と相溶性を有して選択される。
【0064】
例えば、この膜は、管状の形状で、各端が経路20の周囲、例えばU形状部品16に固定され、その周囲に、機器28が貫通する開口32を有する。膜は、例えば接着により、U形状部品16に固定される。
【0065】
これを実現するために、操作装置は2つの部品28.1、28.2から成り、第一の部品28.1はブレードに固定され、第二の部品28.2は第一の部品にネジ込まれ、開口32の輪郭は、操作装置の2つの部品28.1、28.2の間に取り付けられる。
【0066】
フレキシブル膜は、ブレード4が移動可能な状態で、装置を密封する。この配置は、派生摩擦力を生じず、緩衝強度も無負荷動作も妨げることがない。
【0067】
操作装置の各側に対称配置された2つの磁界発生手段の利用は、移動時のブレードと磁性流体との間に一定の相互作用表面領域を維持する利点がある。
【0068】
また、2つの磁界発生器の利用は、座屈の危険性を低減するため、ブレードでの力の分配手段を提供する。プレート(またはビーム)の座屈は、断面の圧縮応力および圧縮長に依存する。2つの磁界発生器の利用は、ブレード動作時に、(操作装置の位置に関する)一方が圧縮状態の場合、他方は伸張状態であることを意味する。したがって、全圧縮応力が制限され、座屈の危険性が低減される。
【0069】
ブレードに捻りストレスを与えないように、操作装置ガイド手段を提供することが可能である。しかしながら、一般に、操作装置は、利用者には直接関係しないことに留意されたい。
【0070】
この緩衝装置は、以下のように組み立てられる。
【0071】
第一のステップは、2つの部品24の一方を除く、2つの磁界発生手段の組み込みである。続いて、ブレードと、操作装置の第一の部品が取り付けられる。次のステップは、膜および操作装置の第二の部品の取り付けである。液体システムMRが、部品24の未装着による開口を通じて充填され、装置は閉じられる。最後に、2つの磁界発生システムは、フレームに固定される。
【0072】
図2A〜4は、本発明によるブレードの実施例を示す。
【0073】
図2Aは、非磁性材料で作られたブレードが、一方から他方へブレードを通るスリット8を有する、実施例を示す。この図示例では、スリット8は、Y軸に垂直であるが、Y軸に平行な溝、または、XおよびY軸から傾く溝を有するブレードは、本発明の範囲内である。
【0074】
図2Bは、拡大したスリットを示している。例えば、スリットは、幅Lが0.25mm、長さlが7mmであってもよい。
【0075】
スリットは、移動方向に垂直、すなわち、上述した例におけるプレートの長手方向軸に垂直であるのが好ましく、この場合、磁性流体のせん断がより効果的である。しかしながら、斜めのスリット、および/または、他の形状、例えば円形の孔を備えたブレードは、本発明の範囲内である。
【0076】
図示例では、ブレード4は、その中央部にスリットを有するが、図7に示す実施形態では、磁界発生手段6.1、6.2により磁性流体の見掛けの粘性が変更されるレベルにおいて、スリットは、ブレードの端部4.1、4.2にのみ存在することもできる。
【0077】
また、スリットは、ブレードの全幅または全長にわたり、一直線でなく、または、連続的でなくてもよい。
【0078】
また、ブレードが、スリットの代わりに、円形または楕円断面で、一端から他端までブレードを通る孔を有し、これらの孔を、ブレード上で一直線に、またはランダムに配置することもできる。孔の直径の下限は、最小粒子サイズの関数として選択され、最小サイズは、略100μmであり、孔の最大サイズは、プレートの幅に依存し、上述したケースでは、数ミリメータのオーダーである。
【0079】
スリットおよび/または孔の大きさおよび密度は、ブレードの最大緩衝力と機械的動作との間で妥協を成すことで決定される。ブレードは、スリットが多すぎる場合、弱くなる。
【0080】
ブレード4の厚さは、経路20の幅よりも小さい。図示例では、ブレード4は、ブレードが磁界発生手段にある場合、極に接触しない。
【0081】
非磁性ブレードは、例えば、ブラス、アルミニウムまたは雲母から作られてもよい。
【0082】
図3は、磁性材料で作られるボディを作るために用いることができる、本発明によるブレードの他の実施例104を示す。
【0083】
ブレード104は、図2Aに示す磁性材料で作られるブレード104と同様の、スリットおよび/またはリブを備えたブレードの形態のコア106と、コア106に付加され、コア106のより大きなエッジを縁取る、非磁性材料で作られるロッド108とを有する。このブレードの全体の厚さは、経路20の幅と略等しく、付加した長細片108により、X軸に沿って移動する間、経路の壁によってガイドされる。
【0084】
コア106は、軟鉄、鋼、フェライト、または高透磁率を備えた合金で作られてもよく、長細片108は、ブラス、アルミニウム、雲母、またはMR流体と相溶性のプラスティック材料で作られてもよい。
【0085】
長細片は、ブレードが磁界発生手段にある場合、極と接する。
【0086】
図4は、本発明による、溝を有するブレード204の他の実施例を示す。
【0087】
ブレード204は、磁性材料で作られたコア206と、スリットを備え、コアの2つの面に付加される、2つの非磁性プレート208とを有し、これにより、ブレードの表面に溝が形成される。長細片210は、コアに付加され、コア206の最長エッジを縁取る。この組立品の厚さは、ブレードをガイドする空隙の幅に応じる。
【0088】
長細片210は、磁性コア206と、スリットが形成された非磁性プレート208との間に空間を作る。磁性流体は、磁界がゼロの場合、この空間を自由に循環する。これにより、無負荷での力が低減される。
【0089】
このようなブレードの利用は、スリットが形成されたブレード208により、擦過現象を生じることで、流体せん断を生じ、本発明による緩衝装置により適用可能な最大抵抗を増加する。スリットが形成された非磁性ブレードは、磁極と接する。ブレードの移動中、擦過現象に応じて、非磁性プレートの歯が通過する磁極における鎖が切断される。
【0090】
また、ブレード208が極に接するため、ブレード204と極との間の摩擦抵抗が増加し、この摩擦抵抗が、擦過現象の発生と磁性コアの利用とを可能とし、最大力を大幅に増加する。
【0091】
ブレードを、組立品の代わりに、一体成型とすることが想定できる。特に、図4におけるブレードでは、ブレードの表面に、機械加工またはエッチングにより、溝を形成することが想定できる。この場合、ブレードは、全体が、非磁性材料で作られる。
【0092】
また、例えば、様々な形状のリブ、または段差等の突起を備えたブレードを作ることもできる。
【0093】
本発明による緩衝装置は、磁性流体の見掛けの粘性を十分に得るためにコイルに必要な電流を生じることが可能な、電子システムに関連する。また、この装置は、リアルタイムで作動し、これを実現するために、力、および/または位置、および/または動きセンサーに関連する。
【0094】
本発明による緩衝装置は、マンマシンインターフェースでの力をシミュレートするため、油圧ブレークまたは他のタイプの回路の反応をシミュレートするため、ボディビルディング装置、ゲーム用ジョイスティック、バーチャルリアリティまたは(例えば外科手術または劣悪環境における)遠隔操作での触覚装置における力をシミュレートするために、利用可能である。これを実現するために、装置は、可動部品またはマニュアル操作装置の動きを表す運動学的または動的振幅の一つ以上のセンサーを有する緩衝システムに一体化される。センサーは一つで十分であり、モデルから事前に決定可能であるが、第二のセンサーは、シミュレーションの精度を改善するために有用である。センサーは、操作装置またはブレードに直接配置される。
【0095】
センサーによる行われる時間計測と、一つ以上のアナログ−デジタル変換器から開始し、制御装置700(図10)は、リアルタイムで電流密度を決定し、手段6.1、6.2に、マニュアル操作装置における反応に適用される力に適応される磁界の発生を可能とする。磁界は、制御装置のメモリに事前に記録されたセンサーデータおよび動的反応の数学モデルから算出され、シミュレートされる。
【0096】
制御装置700は、一般に、一つまたは複数のアナログ−デジタル変換器を備えたDSP(digital signal processor)またはその他の、リアルタイムコンピュータ710と、コンピュータ710に記憶された機械動作の動的モデルに基づいて、デジタル−アナログ変換器を通じて磁界発生手段に対して適用される電流を決定するメモリと、場合により、パワーアンプ720とを有する。
【0097】
また、制御装置は、パワーアンプ720を有してもよい。
【0098】
ここで、図10を参照しながら、本発明の緩衝装置の操作の一般的な説明を行う。
【0099】
マニュアル操作装置28が動かされると、ブレード4がY軸に沿って動き、センサー610は、この移動の少なくとも一つの物理的振幅特性の時間の変化を計測し、計測された時間依存変化は、制御装置700のコンピュータ710に転送される。制御装置は、電流強度値の時間履歴をリアルタイムで計測し、場合によっては、アンプ720を通じて、シミュレータ600の磁界発生装置に送られる。そして、磁性流体の見掛けの粘性が動作中に変化し、ブレードは、磁性流体をせん断し、ブレード4を通じて、反応が操作装置に転送される。
【0100】
スリットの存在は、粒子鎖がブレードを通過することを可能とする。ブレードは、動くために、せん断により、鎖を切断する必要があり、滑らかなブレードの場合よりも、移動抵抗をより高くする。
【0101】
図8は、本発明による他の実施形態を示す。
【0102】
この第二の実施形態によれば、ブレードは、長手方向の軸Yに沿ってスライドし、装置は、一つの磁界発生手段6のみを有する。
【0103】
装置は、装置の全長にわたって伸びる空隙を有し、この空隙は、2つの長手方向開口端を備え、ブレード4は、一方から他方へ装置を貫通し、また一部分が空隙の2つの長手方向開口端を貫通する。
【0104】
図示例では、ブレードは、その各端に装置28を有し、膜30の一端が第一の実施形態と同様にブレードに取り付けられ、他端が空隙の開口端に取り付けられ、これにより、密封状態の封止を行う。
【0105】
磁界発生手段の構造は、第一の実施形態における手段6.1、6.2と同一であり、詳細な記述は行わない。
【0106】
可動部品は、一つ以上のブレードを有してもよく、平行に配置された複数のブレードで形成されてもよい。
【0107】
これを実現するために、空隙は、多数の経路を有し、それぞれが可動部品のブレードを含むように設計される。
【0108】
図9は、このような空隙の区画の実施例を示す。
【0109】
この例では、磁気プレート34が、U形状部品16の間に挿入され、経路20を、同じ大きさでそれぞれがブレードを含むことが可能な、2つの経路20.1、20.2に分割する。
【0110】
U形状部品は、例えば、フライス加工、すなわち、対向する面において、例えば、ブレード34の厚さの半分に等しい、材料のわずかな除去を施し、固定ブレード34が挿入され、密封を保つ位置で保持されてもよい。
【0111】
磁性ブレードは、U形状部品16により、極から分離される。
【0112】
プレート34は、流体とこのプレートとの間における作用が、流体と磁極との間における作用と厳密に同じであるように、磁性であるのが好ましい。
【0113】
図9の構造は、空隙を、2つの異なる空隙に分割可能であり、非磁性ブレードが、各空隙でスライド可能である。従って、有効せん断領域は、装置の全体サイズ、または電気消費量を増すことなく、2倍となる。このようにして、得られる緩衝力が増大される。
【0114】
このように、この装置は、磁性ブレードの各対の間で、U形状部品を横切る多数のブレードから形成される、可動部品を有する。
【0115】
図2A〜4に示されるブレードは、多数のブレードを備えたこの可動部品を作るのに特に適している。
【0116】
一つの変形実施形態では、従来のコイルを、システムの全体サイズをさらに低減する、薄膜、例えばPCB(Printed Circuit Board)タイプまたはシリコン層上のコイルで置き代えることができる。
【0117】
本発明は、無負荷時の低い力を維持し、せん断での磁性流体の作用および/またはレリーフの存在により、高い緩衝レベルを提供する。
【0118】
ブレードが、非磁性材料で作られている場合、極との接触がシステムの動作を変えることがないため、ガイドは無用である。ガイドがないことは、装置を簡単にし、小型化を容易にする。
【0119】
図7で示される装置において、複数の平行なブレードを備えた可動部品を用いることが可能であることは明らかである。
【0120】
外部環境とのインターフェースとして作用するマニュアル操作装置28は、上述したものよりもより複雑であってもよく、特に、複数の部品で作られてもよく、例えば、結合ロッド型機構または他の複雑な機械システムの型の一部を形成してもよい。
【0121】
また、磁気発生手段の特有の実施形態は、例として示されているだけであり、限定されるものではなく、本発明の範囲内である限り変更可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニュアル操作装置(28)の移動に対する作用に抗する緩衝装置であって、
前記緩衝装置は、
磁性流体を含む少なくとも一つのチャンバーと、
磁性流体においてその見掛けの粘性を変えるため、可変磁界を発生する2つの手段(6.1、6.2)と、
自在に並進運動し、磁性流体をせん断可能であり、前記マニュアル操作装置(28)に機械的に連結するように設計された、少なくとも一つの部品(4、104、204)と、
を有し、
前記部品(4、104、204)は、孔、および/または凹部、および/または突起を有する、少なくとも一つの長手方向軸(Y)のブレードを有し、
前記2つの磁界発生手段(6.1、6.2)は、磁性流体で満たされた2つのチャンバーを形成する空隙をそれぞれ規定し、
前記空隙には、長手方向の一端に、一つの開口(20)が備えられ、
前記2つの磁界発生手段(6.1、6.2)が互いに距離を置いて配置され、
前記空隙の前記開口(20)が互いに対向し、前記ブレード(4)の長手方向端が各空隙に嵌り、前記ブレード(4)がその軸(Y)に沿って動く、
緩衝装置。
【請求項2】
前記ブレード(4、104)が、平行なスリットを有する、
請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項3】
前記スリットが、前記ブレードの動作方向に対して垂直である、
請求項2に記載の緩衝装置。
【請求項4】
前記ブレード(4)が、非磁性材料で作られる、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の緩衝装置。
【請求項5】
前記ブレード(104)が、磁性材料で作られ、孔、および/または凹部、および/または突起が形成されたコア(106)と、側端の両面に非磁性材料で作られた長細片(108)とを有する、
請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項6】
前記ブレード(4)が、磁性または非磁性材料で作られた一つのコア(106)と、前記コア(106)の各面をカバーし、スリットが形成された、非磁性材料で作られた2つのプレート(208)とを有する、
請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項7】
前記可動部品が、複数の平行なブレードを有する、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の緩衝装置。
【請求項8】
前記開口(20)および前記操作装置(28)を囲み、組立品を密封するフレキシブル膜(30)を有し、前記マニュアル操作装置(28)が、前記ブレード(4)の略中央に、長手方向軸(Y)に垂直に固定される、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の緩衝装置。
【請求項9】
前記操作装置(28)が、2つの部品(28.1、28.2)で作られ、一方の部品(28.2)が前記ブレードに固定され、他方の部品(28.1)が前記ブレードに固定された前記部品(28.2)に固定され、前記膜(30)が前記2つの部品(28.1、28.2)の間に取り付けられる、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の緩衝装置。
【請求項10】
請求項7の緩衝装置であって、少なくとも一つの前記空隙が、各ブレードに対して一つの空隙が存在し、一つのブレードが各空隙で用いられるように、磁性プレートにより分割される、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の緩衝装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の緩衝装置と、
前記磁界発生手段に対する電力供給源と、
この部品または前記操作装置の動作を表す運動学的または動的振幅の少なくとも一つのセンサーと、
制御装置と、
を有し、
前記センサーが、前記磁界発生手段に接続された前記制御装置に接続され、
前記組立品は、前記磁性流体の見掛けの粘性が、前記操作装置の動作中に変化する、
緩衝システム。
【請求項12】
前記少なくとも一つのセンサーが、変位、速度、および/または加速度センサーである、
請求項11に記載の緩衝システム。
【請求項13】
請求項11または12に記載のシステムを有する、
触覚型インターフェースシミュレーションシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−501284(P2011−501284A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529347(P2010−529347)
【出願日】平成20年10月13日(2008.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063697
【国際公開番号】WO2009/050135
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【出願人】(500531141)セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク (84)
【Fターム(参考)】