説明

アイエンド用のダンパおよびアイエンドの連結構造

【課題】 本発明は在庫管理コストの低減を図ることができるアイエンド用のダンパおよびアイエンドの連結構造を提供することを技術課題とする。
【解決手段】 コントロールケーブル末端に連結されるアイエンド9とその中に挿入させるピン13aとの間に介在されるアイエンド用のダンパ1であって、円筒状のブッシュコア2と、そのブッシュコア2の外周に固定される弾性を有する円筒状のブッシュ3とからなり、そのブッシュ3が、アイエンド9の操作方向に合わせるための少なくとも2本の中心線8a、8bを有し、それぞれの中心線8a、8bに、アイエンド9との間に空間10を形成するための凹所を有し、アイエンド9への取り付け角度を変えることでブッシュ3の弾性特性を変えることができるアイエンド用のダンパ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアイエンド用のダンパおよび連結構造に関する。さらに詳しくは、自動車の変速機、その操作レバーなどに装着されるアイエンド用のダンパおよびそのダンパを用いたアイエンドの連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特公昭46−24334
【特許文献2】実公平7−44812
【0003】
特許文献1には、ゴムブッシュが開示されている。図8aに示すように、このゴムブッシュ100は、円形状の外筒101と、その外筒101の中心に配置される心棒102と、その心棒102の外周と外筒101の内周の間に配置される弾性ゴム103とからなる。前記心棒102の周壁からは、垂直にそれぞれ反対向きに一対の突起102a、102aが突出している。そして、弾性ゴム103は、その内部に心棒102の突起102a、102aを包み込むように配置されている。その弾性ゴム103の突起102aを被覆した部分はストッパ103aである。そのストッパ103a、103aの外側には略扇状の空所104、104が形成されている。このゴムブッシュ100の機能は、前記ストッパ103aの先端から外筒101の内周までの空所104の距離t1と、扇状の空所104の中心角θ1によって定まる。特許文献1には、他の実施例として、図8b、図8cのゴムブッシュ110、120が開示されている。図8bに示すゴムブッシュ110は心棒102の径を大きくし、更に空所104の距離t2の値を大きくしたもの(t1<t2)である。図8cに示すゴムブッシュ120は空所104の中心角θ2の値を大きくしたものである。
【0004】
図8dを用いて、これらゴムブッシュ100、110、120の撓みの様子を示す。ゴムブッシュ100は、一対のストッパ103a、103aを通る軸線がケーブルの作用線と一致するようにアイエンドに装着する。撓みの初期の段階では、ストッパ103aが空所104の空間に向けて撓む。そのため、弾性ゴム103の撓み量は荷重に応じて直線的に大きくなる(図8dのk1)。次いで、そのまま撓みが進むと、ストッパ103aが外筒101の内周に到達し、急激に傾きが大きくなる(図8dのk2)。グラフに示すように、その傾きが急激に変化する部分は空所104の距離t及び中心角θによって変わる。
【0005】
特許文献2には、プッシュプルコントロールケーブル用ダンパブッシュが開示されている。このものは、自動車の変速機と操作レバーとの連結部分に用いられ、操作レバーの操作フィーリングを向上させる一方、変速機から操作レバーへの振動の伝達防止の役割も担っている。このプッシュプルコントロールケーブル用ダンパブッシュは、金属製のブッシュコアの外周に弾性体を配置して、プッシュプルコントロールケーブルの末端部分に設けられるアイエンドの中央部に形成された開口部に組み込まれる。その際、ケーブルの作用する方向に対応する箇所のアイエンドの内面と弾性体との間に空間が形成される。そして、プッシュプルコントロールケーブルを押しまたは引き操作すると、前記空間がつぶれる方向に操作力が作用するため、そのままプッシュプルコントロールケーブルを操作すると、初めは弾性体が空間を押しつぶしながら、ケーブル操作力が変速機へと伝達され、その後空間が完全につぶれてしまうと、ブッシュコアがアイエンドへ当接するため、操作レバーの操作初期の段階と、その後の操作との間に適度な節度感を得ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のゴムブッシュは、アイエンドの内面と弾性部材の外面との間に形成された空所の大きさにより、そのゴムブッシュの撓み量に応じたバネ定数を変化させている。図8dに示すように、空所を大きくしたり小さくしたりすると、それに応じてバネ定数も大きく、あるいは小さくなり、それぞれのゴムブッシュの弾性特性が変化する。
【0007】
特許文献2のダンパブッシュは、空間をつぶすまでと、つぶした後からの弾性体の撓み量の変化の状態により適度な節度感を得るようにしている。そして、その節度感は、空所あるいは鍔部の形状などの種々の要素により決定されるため、ダンパブッシュは、操作レバーの操作時に要求される節度感あるいは防振性能を満たすために車種毎に専用の部品となる。
【0008】
このようなブッシュの弾性特性は、前記空間あるいはブッシュコアの鍔部の形状や配置等から予測するのが困難であるため、試行錯誤により目的に合った弾性特性を備えるように製作され、また車種毎に必要な弾性特性が異なるため、それに応じた数だけブッシュの種類も必要であり、全て別個の部品として製作しなければならない。そうすると、ブッシュの種類だけ在庫も用意する必要があり、在庫管理コストが大きい。
【0009】
そこで、本発明は在庫管理コストの低減を図ることができるアイエンド用のダンパおよびアイエンドの連結構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のアイエンド用のダンパ(請求項1)は、コントロールケーブル末端に連結されるアイエンドとその中に挿入させるピンとの間に介在されるアイエンド用のダンパであって、円筒状のブッシュコアと、そのブッシュコアの外周に固定される弾性を有する円筒状のブッシュとからなり、そのブッシュが、アイエンドの操作方向に合わせるための少なくとも2本の中心線を有し、それぞれの中心線上に、アイエンドとの間に空間を形成するための凹所を有し、アイエンドへの取り付け角度を変えることでブッシュの弾性特性を変えることができることを特徴としている。
【0011】
このようなアイエンド用のダンパは、互いに直交する2本の前記中心線を備えており、かつ、ブッシュコアおよびブッシュがそれぞれの中心線に対して線対称に構成されているものが好ましい(請求項2)。また、前記ブッシュが、筒状部と、その筒状部の周壁から垂直外向きに、かつ、中心線に対して対称に突出する4個所の支持部を有し、隣接する支持部の間が前記凹所であるもの(請求項3)が好ましい。
【0012】
本発明のアイエンド用のダンパ(請求項4)は、コントロールケーブル末端に連結されるアイエンドとその中に挿入させるピンとの間に介在されるアイエンド用のダンパであって、円筒状のブッシュコアと、そのブッシュコアの外周に固定される弾性を有する円筒状のブッシュとからなり、そのブッシュが、第1支持部と、その第1支持部に対して筒状部の反対側から突出する第2支持部と、前記第1支持部に対して所定の角度の位置から突出する第3支持部と、その第3支持部に対して筒状部の反対側から突出する第4支持部とからなることを特徴としている。
【0013】
このようなアイエンド用のダンパは、前記それぞれの支持部が筒状部の上下に離れて設けられる一対の支持片からなるものが好ましい(請求項5)。また、ダンパを収納する環状部と、その環状部から半径方向外向きに突出するケーブル連結用のロッドとからなるアイエンドと、そのアイエンドの環状内部に、いずれかの中心線を選択的にロッドの軸方向に合わせて嵌合保持される上述のいずれかに記載のダンパとからなるものが好ましい(請求項6)。
【0014】
本発明のアイエンド付きコントロールケーブル(請求項7)は、前記アイエンドのロッドに連結される内索と、その内索を摺動自在に案内する導管と、上述のアイエンドの連結構造と、を有することを特徴としている。また、本発明の車両(請求項8)は、上述のアイエンド付きコントロールケーブルを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアイエンド用のダンパ(請求項1)は、アイエンドに嵌合されると、アイエンドとの間に空間が形成されるので、その空間を利用してダンパを撓ませることができる。そして、アイエンドへのダンパの取り付け角度を変えることにより、操作方向の弾性特性を変えることができるので、1個のダンパを2以上の車種に兼用することができる。それによりダンパの金型が1つで済むため製造コストが低減すると共に、在庫管理も容易になる。
【0016】
このようなアイエンド用のダンパにおいて、互いに直交する2本の前記中心線を備えており、かつ、ブッシュコアおよびブッシュがそれぞれの中心線に対して線対称に構成されている場合(請求項2)は、操作のときに弾性特性が左右対称となるので、横向きの力が生じない。それにより、直進操作性が向上する。さらに押しおよび引きの両方向の弾性特性もほぼ均等にすることができ、プッシュプルコントロールケーブルに適用することができる。
【0017】
また、前記ブッシュが、筒状部と、その筒状部の周壁から垂直外向きに、かつ、中心線に対して対称に突出する4個所の支持部を有し、隣接する支持部の間が前記凹所である場合(請求項3)は、4つの支持部は、ほぼ左右対称にバランスよく筒状部から突出して、アイエンド内面を支えることができるので、アイエンドの支持が安定する。また、第1支持部と第3支持部の間の角度が鋭角で、第3支持部と第2支持部の角度がその補角の鈍角とすると、アイエンドにより荷重が加わる方向を、前記鋭角の中心線あるいは、鈍角の中心線のいずれに配置するかにより、アイエンドからの荷重を支持する態様が異なる。すなわち、鋭角の部分と、鈍角の部分では隣接する支持部の間隔が異なる。そのため、鋭角の中心付近にアイエンドからの荷重の加わる方向を配置すると、ダンパは狭い間隔で配置された支持部により支持されて撓むことになる。一方、鈍角の中心付近に向けてアイエンドからの荷重の加わる方向を配置すると、ダンパは広い間隔で配置された支持部により支持され撓むことができる。狭い間隔で配置された支持部により支持したダンパが撓むのに比べ、広い間隔で配置された支持部により支持したダンパが撓もうとするとする時のほうが撓みの量が大きくなる。また、左右の支持部の角度が大きくなると、圧縮応力が小さくなり、せん断応力が大きくなるので、一層撓み量が増大する。このように、1つのダンパで2種類の撓み特性を得ることができるので、部品の共有化を図ることでき、在庫管理コストを低減できる。
【0018】
本発明のアイエンド用のダンパ(請求項4)は、そのブッシュが、第1支持部と、その第1支持部に対して筒状部の反対側から突出する第2支持部と、前記第1支持部に対して所定の角度の位置から突出する第3支持部と、その第3支持部に対して筒状部の反対側から突出する第4支持部とからなるので、4つの支持部は、ほぼ左右対称にバランスよく筒状部から突出して、アイエンド内面を支えることができるので、アイエンドの支持が安定する。
【0019】
このようなアイエンド用のダンパにおいては、前記それぞれの支持部が筒状部の上下に離れて設けられる一対の支持片からなる場合(請求項5)は、上下の2つの支持片でダンパを支持できるので、アイエンドの安定した支持が可能である。また、ダンパを収納する環状部と、その環状部から半径方向外向きに突出するケーブル連結用のロッドとからなるアイエンドと、そのアイエンドの環状内部に、いずれかの中心線を選択的にロッドの軸方向に合わせて嵌合保持される場合(請求項6)は、支持部がロッドの軸方向に対して対称となるように配置された状態でダンパが環状部に嵌合保持される。そのため、支持部はロッドを中心線として左右対称に配置されると共にロッドに直交する中心線に対して前後対称に配置されるので、4つの支持部で均等に荷重が加わり、支持が安定する。
【0020】
本発明のアイエンド付コントロールケーブルの(請求項7)は、1つのサブアッセンブリとして用いることができる。さらに、本発明の車両(請求項8)は、上述したアイエンド付コントロールケーブルを備えているので、コストダウンになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
つぎに図面を参照しながら本発明のアイエンド用のダンパの実施形態を説明する。図1aは本発明のダンパをアイエンドに取り付けた状態の一実施形態を示す正面図、図1bは本発明のダンパをアイエンドに取り付けた状態の他の実施形態を示す正面図、図2aは図1aのI−I線断面図、図2bは図1aのII−II線断面図、図2cは図2aのIII−III線断面図、図3はダンパの斜面図、図4はダンパの弾性特性を示すグラフ、図5aは比較例のために用いたダンパを示す概略図、図5bは図5aのI−I線断面図、図5cは図5aのダンパを用いた場合の弾性特性を示すグラフ、図6はそのダンパが実際に用いられる様子を示す概略図、図7aはダンパの他の実施例を示す概略断面図、図7bは図7aのI−O−I断面図である。
【0022】
図2および図3に示すコントロールケーブルのアイエンド用のダンパ1は、円筒状のブッシュコア2と、そのブッシュコア2の外周に設けられるブッシュ3とからなる。ブッシュ3はブッシュコア2に焼き付けて、ブッシュコア2に一体に形成される。前記ブッシュコア2は円筒状部材であり、その外周の中ほどから垂直外側に円板状の円盤2aが延びている。なお、ブッシュコア2の材質は、例えばアルミニウム、銅合金または亜鉛が用いられる。
【0023】
前記ブッシュ3は中央の筒状部3aと、その筒状部3aの上下端から外向きに延びる一対の円板状の鍔部3b、3bと、前記筒状部3aの周壁の中央付近から垂直外向きに延びる第1支持部4と、その第1支持部4に対して筒状部3aの反対側から突出する第2支持部5と、前記第1支持部4に対して所定の角度の位置から突出する第3支持部6と、その第3支持部6に対して筒状部3aの反対から突出する第4支持部7とからなる。隣接する支持部の間は凹所になり、ダンパ1をアイエンドに取付けたとき、その凹所がアイエンドの内面とブッシュ3の外面との間の空間となる。なお、ブッシュ3の材質は天然ゴムあるいはクロロプレンである。また、本実施例ではJISの硬度60°のものを用いているが、他の硬度のものも用いることができる。
【0024】
図1aに示すように、前記支持部4、5、6、7の配置される様子は、第1支持部4と第3支持部6で形成される角度が鋭角αであり、第3支持部6と第2支持部5で形成される角度は、その補角の鈍角βである。また、第2支持部5と第4支持部7で形成される角度は前記鋭角αの対頂角である。そして、第4支持部7と第1支持部4で形成される角度は前記鈍角βの対頂角である。このように隣接する支持部同士がなす角度がαとβの2種類あるので、それら支持部の間に形成される空間も2種類となる。なお、鋭角αは10〜80度、好ましくは30〜60度である。そして、鋭角αを2等分する線が第1中心線8aとなり、鈍角βを2等分する線が第2中心線8bとなる。この実施形態では第1中心線8aと第2中心線8bとは直交する。
【0025】
本実施例では、前記支持部4、5、6、7は4個とも同様な形状をしている。図3に示すように、前記支持部4は、筒状部3aから軸方向に離れて設けられる一対の支持片4a、4aからなる。他の支持片も同様である。その支持片は、その先端部分が鍔部3bの外縁を越えて外側にはみ出さない程度に延びており、その先端部分は後述するアイエンドの内面形状に沿う円形状に形成されている。また、そのような間隔を形成するスリットあるいはU字状の溝を形成してもよい。さらに、鍔部3bの上面および下面にはダンパ1をアイエンド9に嵌合する際に、アイエンド9とダンパ1の配置を特定するための目印が設けられている。図3に示すように、前記鋭角αを二等分する第1中心線8a上に第1目印3c、3c(図中の「10」)が設けられている。また鈍角βを二等分する第2中心線8b上に第2目印3d、3d(図中の「06」)が設けられている。なお、支持片の厚みは必要とされるダンパの弾性特性により異なるが、通常は、0.5〜3.0mmで、好ましくは1.0〜2.0mm程度にしている。
【0026】
図1に戻って、ブッシュ3がアイエンド9に嵌合される様子を説明する。図1aに示すアイエンド9は、円筒状部9aと、その円筒状部9aの外周から垂直外側に向かって伸びるコントロールケーブルを係止するためのロッド9bとからなる。そのアイエンド9は、円筒状部9aの開口内部に前記ブッシュ3を配置して、そのブッシュ3に形成された上下の鍔部3bの間で円筒状部9aの上下を挟み込むように保持し、かつ、前記支持部4、5、6、7の先端部分によってアイエンド9の開口部を内面から押さえつけるようにして嵌合保持される。図1aに示す取付状態Aのダンパ1は、前記第1目印3c、3cを結ぶ直線上に沿ってロッド9bを配置している。そのため、ロッド9bの軸方向の押し引き両方の荷重は、鋭角αの第1中心線8aに沿って伝達され、押し方向の荷重は、第1支持部4と第3支持部6により支持され、引き方向の荷重は、第2支持部5と第4支持部7により支持される。
【0027】
一方、図1bに示す取付状態Bのダンパ1は、前記第2目印3d、3dを結ぶ第2中心線8b上にロッド9bを配置している。つまり、取付状態Aのダンパ1を前記図1aに示した配置から略90度回転させた位置でアイエンド9に嵌合させている。そのため、ロッド9bの軸方向の荷重は、鈍角βの第2中心線8bに沿って伝達され、その押し方向の荷重は第1支持部4と第4支持部7により支持され、引き方向の荷重は第2支持部5と第3支持部6により支持される。また、図2aの断面図に示すように、前記ブッシュ3の支持部6、7の間の凹所は、アイエンド9の内面と筒状部3aの外周の間に所定の空間10を形成している。
【0028】
図4に取付状態AおよびBにおけるダンパ1の弾性特性のグラフを示す。グラフの縦軸は荷重の大きさを表し、横軸はその荷重の値に対するダンパの撓み量を示している。取付状態AおよびBの両方のグラフとも、撓みの初期段階の傾きが小さい部分と、傾きが急激に大きくなる部分とから構成されている。取付状態Bでは、支持部に加わる圧縮応力が小さく、せん断応力が大きいので、取付状態Aに比べ同じ荷重時の撓み量が増大する。このように、1つのダンパ1で2種類の撓み特性を得ることができるので、部品の共有化を図ることでき、在庫管理コストを低減できる。
【0029】
図5aに比較に用いたダンパを示す。図5aのダンパ20は、前記ダンパ1とほぼ同様な形状であるので、重複する部分には同じ符号を付してその説明を省略する。そのダンパ20は、ブッシュ3の筒状部3aからそれぞれ反対向きに突出している扇状の支持部20a、20aを備えている。また、前記支持部20a、20aの延びる方向と直交するようにブッシュコア2の中ほどから垂直に小判状の突出部20b、20bがそれぞれ反対向きに突出している。このように形成されたダンパ20をアイエンド9に嵌合すると、支持部20a、20aにより弾力的にアイエンド9の内面は嵌合保持され、前記ブッシュ3の突出部20bと対応する位置の外周面とアイエンド9の内面との間に所定の空間が形成される。なお、ダンパ20のブッシュ3の材質はクロロプレンゴム(CRゴム)などの合成ゴムあるいは天然ゴムが好ましい。
【0030】
図5cは、硬度の異なるダンパ20を用いた場合の弾性特性を示すグラフである。図中の比較例1はダンパ20の硬度を60°としたもの、比較例2は硬度43°としたものである。図5cのグラフに示すように、硬度を変化させることにより、ダンパ20は異なる弾性特性を持つことができる。一方、図4に示すようにダンパ1は取り付け状態を変化させることで、異なる弾性特性を得ることができ、1つの部品に2つの弾性特性を備えている。
【0031】
図6には、このようなダンパ1が実際に用いられる様子を説明する。図6に示すコントロールケーブル配索は車体の室内側操作レバーからエンジン側変速機に向けて伸びる配索であり、操作レバー12と、変速機13と、それら操作レバー12と変速機13との間に配置される変速機のギアの入り切りに関するシフト側コントロールケーブル14と、変速機のギアを選択するセレクト側コントロールケーブル15と、それらコントロールケーブル14、15を室外側と室内側との境界で固定、シールするブラケット16とからなる。なお、前記ダンパ1の中央部に配置されたブッシュコア2の内部には変速機13のピン13aが固定されている。前記コントロールケーブル14、15は、アウターケーシング14a、15aと、そのアウターケーシング14a、15aの内部に摺動自在に配置されるインナーケーブル14b、15bとからなり、そのインナーケーブル14b、15bの変速機側の端部にはインナーケーブル14b、15bに連結されたアイエンド9、9と、そのアイエンド9、9の開口部に保持されるダンパ1、1と、そのダンパ1、1の開口部を貫通して変速機13にケーブル操作を伝達するピン11とが配置されている。前記インナーケーブル14b、15bの室内側の端部には操作レバー12が連結され、操作レバー12を操作するとインナーケーブル14b、15bがアウターケーシング14a、15a内を摺動して変速機13のギアのチェンジや前進、後退またはニュートラルの選択を可能とする。
【0032】
なお、本実施例では、第1支持部4に対して第3支持部6は鋭角αの位置に配置されているが、直角に配置することもできる。その場合は、隣接する支持部がなす角度は全て直角になるので、弾性特性は同様である。また、支持部の形状を先端に向けて次第に細くしたもの、あるいは先端の外表面に軸方向に複数のスリットを形成したものなど、支持部の形状を変化させてダンパ1の弾性特性を変化させることができる。さらに、支持部の形状自体は、ほぼ同一であっても、それらの間の凹所の形状、特に拡がり角度(円弧状に沿った長さ)、あるいは半径方向の深さを変えることによってもダンパの弾性特性を変化させることができる。
【0033】
図7にダンパ1の他の実施例の概略図を示す。図7のダンパ25はダンパ1とほぼ同様であるので、同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略する。そのダンパ25の筒状部3aには、上面から下面まで軸方向に貫通する大きさの異なる2対のスリット状の空間が形成されている。そのため、スリット26とアイエンド9の内面との間には筒状部3aの外側の部分が薄く介在されている。それらスリット26は、筒状部3aの外周に沿うような円弧状に細長く形成され、ブッシュコア2に対して対称に配置されている。そのスリット26のうち、第1中心線8a上に配置されているのが第1スリット26a、26aであり、第2中心線8b上に配置されているのが第2スリット26b、26bである。第1スリット26a、26aは、ほぼ角度αで短く延びており、第2スリット26b、26bは、ほぼ角度βで長く円周方向に延びている。そして、それら隣接する第1スリット26aと第2スリット26bの端部同士の間が支持部4、5、6、7となる。このように構成されたダンパ25は、その第1中心線8aあるいは第2中心線8b上に、アイエンド9のロッド9bの軸方向を揃えるように配置することで、前記ダンパ1と同じように異なる2種類の弾性特性を得ることができる。
【0034】
なお、スリット26の他に、ダンパ25を扇状にくり抜いて大きな空間を形成してもよい。また、小さな孔を多数設けることにより、前記スリット26a、26bに代用することもできる。その場合は、1つの孔の大きさ、あるいは孔の配置される密度により、弾性特性に変化を付けることができる。さらに、空間部分に相当する箇所に軟らかい弾性の材料を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1aは本発明のダンパをアイエンドに取り付けた状態の一実施形態を示す正面図、図1bは本発明のダンパをアイエンドに取り付けた状態の他の実施形態を示す正面図である。
【図2】図2aは図1aのI−I線断面図、図2bは図1aのII−II線断面図、図2cは図2aのIII−III線断面図である。
【図3】図3はダンパの斜面図である。
【図4】図4はダンパの弾性特性を示すグラフである。
【図5】図5aは比較例のために用いたダンパを示す概略図、図5bは図5aのI−I線断面図、図5cは図5aのダンパを用いた場合の弾性特性を示すグラフである。
【図6】図6はそのダンパが実際に用いられる様子を示す概略図である。
【図7】図7aはダンパの他の実施例を示す概略断面図、図7bは図7aのI−O−I断面図である。
【図8】図8aは従来例を示す正面図、図8bは他の従来例を示す正面図、図8cはさらに他の従来例を示す正面図、図8dは従来例のブッシュの弾性特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0036】
1 ダンパ
2 ブッシュコア
2a 円盤
3 ブッシュ
3a 筒状部
3b 鍔部
3c 第1目印
3d 第2目印
4 第1支持部
5 第2支持部
6 第3支持部
7 第4支持部
8a 第1中心線
8b 第2中心線
9 アイエンド
9a 円筒状部
9b ロッド
10 空間
12 操作レバー
13 変速機
13a ピン
14 シフト側コントロールケーブル
14a アウターケーシング
14b インナーケーブル
15 セレクト側コントロールケーブル
15a アウターケーシング
15b インナーケーブル
16 ブラケット
20 ダンパ
20a 支持部
20b 突出部
25 ダンパ
26 スリット
26a 第1スリット
26b 第2スリット
α 鋭角
β 鈍角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントロールケーブル末端に連結されるアイエンドとその中に挿入させるピンとの間に介在されるアイエンド用のダンパであって、
円筒状のブッシュコアと、そのブッシュコアの外周に固定される弾性を有する円筒状のブッシュとからなり、
そのブッシュが、
アイエンドの操作方向に合わせるための少なくとも2本の中心線を有し、それぞれの中心線上に、アイエンドとの間に空間を形成するための凹所を有し、アイエンドへの取り付け角度を変えることでブッシュの弾性特性を変えることができるアイエンド用のダンパ。
【請求項2】
互いに直交する2本の前記中心線を備えており、かつ、ブッシュコアおよびブッシュがそれぞれの中心線に対して線対称に構成されている請求項1記載のアイエンド用のダンパ。
【請求項3】
前記ブッシュが、
筒状部と、
その筒状部の周壁から垂直外向きに、かつ、中心線に対して対称に突出する4個所の支持部を有し、隣接する支持部の間が前記凹所である請求項2記載のアイエンド用のダンパ。
【請求項4】
コントロールケーブル末端に連結されるアイエンドとその中に挿入させるピンとの間に介在されるアイエンド用のダンパであって、
円筒状のブッシュコアと、そのブッシュコアの外周に固定される弾性を有する円筒状のブッシュとからなり、
そのブッシュが、
第1支持部と、
その第1支持部に対して筒状部の反対側から突出する第2支持部と、
前記第1支持部に対して所定の角度の位置から突出する第3支持部と、
その第3支持部に対して筒状部の反対側から突出する第4支持部とからなるアイエンド用のダンパ。
【請求項5】
前記それぞれの支持部が筒状部の上下に離れて設けられる一対の支持片からなる請求項1、2、3または4記載のアイエンド用のダンパ。
【請求項6】
ダンパを収納する環状部と、その環状部から半径方向外向きに突出するケーブル連結用のロッドとからなるアイエンドと、
そのアイエンドの環状内部に、いずれかの中心線を選択的にロッドの軸方向に合わせて嵌合保持される請求項1〜5のいずれかに記載のダンパとからなる、アイエンドの連結構造。
【請求項7】
前記アイエンドのロッドに連結される内索と、その内索を摺動自在に案内する導管と、請求項6記載のアイエンドの連結構造と、を有するアイエンド付きコントロールケーブル。
【請求項8】
請求項7記載のアイエンド付きコントロールケーブルを有する車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−250181(P2006−250181A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64495(P2005−64495)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコ−ポレ−ション (362)
【Fターム(参考)】