説明

アキシャルギャップ型回転電機のステータコイル

【課題】高導体占有率を達成でき、製作性に優れ、かつ、絶縁信頼性の高いアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルを提供することを課題とする。
【解決手段】アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルは、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイル1であって、導電体からなる複数の第1コイルピース3と、導電体からなる複数の第2コイルピース4と、前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースを周方向に配列して係止する凹部7,7a,8,8aを表裏に形成した円環状のベース部材2と、を備え、前記第1コイルピースおよび第2コイルピースが前記ベース部材の表裏に形成された凹部に配設されると共に、第1コイルピースの第1接合部と第2接合部および第1コイルピースの接合部のそれぞれが表裏で対向するものとを接続して所定コイルループを形成する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に使用されるステータコイルに係り、特に、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アキシャルギャップ型の回転電機に使用されるステータが多数提案されている。例えば、特許文献1には、絶縁部材上にプリント回路により構成された単相の電機子コイルが開示されている。この電機子コイルは、2組のハーフターン導体からなり、このハーフターン導体が内外周部をプリント基板で用いられているスルーホール技術で接続されている構成を備えている。
【0003】
また、他の例として、特許文献2には、絶縁基板の両面に、それぞれ所定形状の半コイルを放射状に形成してなる円板状の単位コイルで構成されているものが開示されている。そして、この単位コイルでは、絶縁基板の内外周に突出している両側の半コイルの耳部どうしを接続して1ターンのコイルを形成している。また、この単コイルは複数組積層され、各半コイルの耳部は異なる円周上に位置するよう少なくとも2種類の長さに異ならせている点についても開示されている。
【0004】
さらに、他の例として、特許文献3に記載のステータコイルでは、保持する樹脂基板に回路パターンを施し、さらに凹部を設け、その凹部にステータコイルをはめ込むことによりステータコイルの位置決めと固定および結線が同時に行われるように構成されている。
【0005】
そして、他の例として、特許文献4に記載の回転電機では、電磁コイルが導電性を有しかつ互いに導通すべき先端同士を接合した複数本の導電バーからなるアキシャルギャップ型の回転電機の構成が示されている。この回転電機は、電磁コイルを導体バーにより構成することで、通常の電磁コイルを鉄心に巻回する際の巻線工程を簡略化させ生産性の向上を図ることができることが示されている。
【0006】
なお、その他の例として、特許文献5に記載の回転電機について、図12を参照して説明する。図12は、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルに用いられるコイル部分の接続構造を模式的に示す斜視図である。図12に示すように、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイル100は、円環(リング)状のコイルプレート101と、このコイルプレート101の例えば内周側に配置される給電システム(図示せず)との接続を行うコイルバスバー(図示せず)を備えている。そして、コイルプレート101は、配線パターン102を備える第1コイルプレート要素101Aと、配線パターン103を備える第2コイルプレート要素101Bとを、その配線パターン102と配線パターン103とが周方向において反対向きとなるように互いに対面させ、かつ、対面している配線パターン102,103同士が離間するようにスペース110を形成した状態でその外周縁側と内周縁側とを接合して形成されている。
【0007】
配線パターン102が形成されている環状領域には、全域にわたって多数の折れ線状コイルセグメント104aが形成されている。折れ線状コイルセグメント104a全体でコイル束となっている。折れ線状コイルセグメント104aの各々は、外周縁支持部材151と内周縁支持部材152に支持さている。隣接する折れ線状コイルセグメント104aの間にはスリット105が形成されている。
【0008】
なお、折れ線状コイルセグメント104aの周方向幅は、外周側では太く、内周側では細くなってスリット105を形成するようにしている。また、折れ線状コイルセグメント104aは、中央側に配置された中心方向直線部101cと、外周縁支持部材151に支持されかつ傾斜方向に折れ曲がる斜め方向部101bと、内周縁支持部材152に支持されかつ傾斜方向に折り曲がる斜め方向部接合部101dとを備えている(詳細は引用文献5の図13参照)。そして、折れ線状コイルセグメント104aの一部に端子部分を形成し、その端子部分をバスバー等により接続し、一方を給電入力端子120とし、他方を給電出力端子121とすれば、両コイルループ要素が直列に接続された状態のU相コイルループが実現する。
【0009】
なお、ここでは、U相コイルループの状態のみを示し、V相コイルループおよびW相コイルループについてはU相コイルループと同形状および同構成で配線関係のみが異なるので簡単にするために説明を省略する。
【特許文献1】米国特許第3159764号明細書
【特許文献2】特開昭51−104501号公報
【特許文献3】実用新案登録第2567587号公報
【特許文献4】特開2006−288074号公報
【特許文献5】特開2008−61357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルの構成では、以下に示すような問題点あるいは改良すべき点が存在していた。
特許文献1で示すコイルリングの構成であると、導体断面積を広くとることができないため、大電流を流すことができない。また、周方向にのみコイルループを形成するように構成されているため、相数およびターン数の変更などの設計変更に対してプリントパターンをその都度変更しなければならない。
【0011】
特許文献2の構成では、ターン数分のコイルを積層方向に設けているためパターンコイルのループ形成のためには、内外周をカットする工程(トリミング)が必要となり、このカット工程による切り屑が隙間に入り込んでしまうコンタミネーションが発生し絶縁信頼性を確保できないおそれが生じる。そのため、特許文献2の構成では、絶縁空間を小さくできず、ステータコイル断面において絶縁部材を除いたコイルの占有空間(体積)の割合を示す占積率を高めることができない。
【0012】
特許文献3の構成では、単位コイルごとにループが予め形成されたパターンコイルを、保持部材の凹部に嵌め込む構成を採用するときに、特許文献1と同様に相数およびターン数の変更などの設計変更に対する柔軟性にかけ、また、本質的に集中巻の構成しかとることができないため、高出力用途では回転ムラやトルク変動の問題が生じやすい。
【0013】
特許文献4の構成では、個片化された導体バーを配列して所要のコイルパターンを形成する場合は、特許文献2のような内外周をカットするカット工程は不要となるが、各々のバーの組付およびターンを形成するための溶接工程が煩雑となり製作性が低下する。
【0014】
特許文献5の構成は、特許文献1〜4に比較して大電流を流すことができる点では優れているが、その大電流を流すことを維持し、さらに、製造の容易性や絶縁の信頼性を向上させる構成が要望されていた。また、パターンコイルのループ形成のためには、内外周をカットする工程(トリミング)が必要となり、このカット工程による切り屑が隙間に入り込んでしまうコンタミネーションが発生するので絶縁信頼性の確保が要望されていた。
【0015】
そこで、本発明では、前記した問題点および要望に鑑み創案されたものであり、高導体占有率を達成でき、製作性に優れ、かつ、絶縁信頼性の高いアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため、請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルは、導電体からなる複数の第1コイルピースと、導電体からなる複数の第2コイルピースと、前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースを周方向に配列して係止する凹部を表裏に形成した円環状のベース部材と、を備え、前記第1コイルピースは、長尺状の中間部と、前記中間部の一端および他端にそれぞれ周方向に所定角度を有するように曲折された第1曲折部および第2曲折部と、前記第1曲折部の先端に形成した第1接合部と、前記第2曲折部の先端に形成した第2接合部とを有し、前記第2コイルピースは、長尺状の中間部と、前記中間部の一端および他端にそれぞれ周方向に所定角度を有するように曲折された第1曲折部および第2曲折部と、前記第1曲折部または前記第2曲折部の一方の先端に形成された給電端子接続部と、前記第1曲折部または前記第2曲折部の他方の先端に形成された接合部とを有し、前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースが前記ベース部材の表裏に形成された凹部に配設されると共に、前記第1接合部、前記第2接合部および前記接合部のそれぞれが表裏で対向する前記第1接合部、前記第2接合部および前記接合部を接続して所定コイルループを形成する構成とした。
【0017】
かかる構成によれば、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルは、ベース部材の表裏に形成した凹部に第1コイルピースおよび第2コイルピースを配設して、それぞれの第1接合部、第2接合部および接合部について表裏で対向するものを接続して所定のコイルループを形成すると、導体(第1、第2コイルピース)間の絶縁信頼性を高め、かつ、製作性を高めることができる。また、ベース部材の積層方向においてコイルのターン数を増やす構成とすることができるため、第1コイルピースおよび第2コイルピースと、ベース部材とにおける絶縁箇所についても、従来の周方向にコイルのターン数を増やす図12の構成と比較して大きく削減することができる。そして、第1コイルピースおよび第2コイルピースをベース部材に配設する構成であるため、両コイルピースをプレス等による機械加工により製造でき、かつ、ステータコイルのターン数を変更するような場合には、ベース部材に第1コイルピースおよび第2コイルピースが配設されたコイルユニットの枚数を加算あるいは減算する構成とすれば、対応可能となる。
【0018】
また、請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおいて、前記給電端子接続部は、前記ベース部材の表裏の一面において周方向に隣り合う当該給電端子接続部同士が接続され、前記ベース部材の表裏の他面において前記コイルループに給電を行う給電端子に接続される構成とする。
【0019】
かかる構成によれば、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルは、給電端子接続部がベース部材の内縁側に配設されていれば、そのベース部材の中央側に位置する給電端子と接続され、また、外縁側に配設されていれば、ベース部材の外周側に位置する給電端子と接続されて、形成されているコイルループに電力を供給する。
【0020】
さらに、請求項1記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおいて、前記ベース部材は、前記第1コイルピースの第1接合部および第2接合部に対応する前記凹部の位置と、前記第2コイルピースの接合部に対応する前記凹部の位置に、それぞれ貫通孔を有し、前記第1接合部、前記第2接合部及び前記接合部は、前記第1接合部、前記第2接合部および前記接合部のそれぞれが前記貫通孔を介して対面して接続する層間接続部を有する構成とした。
【0021】
かかる構成によれば、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルは、ベース部材の凹部に第1コイルピースあるいは第2コイルピースを配設すると、貫通孔を介して対面する第1接合部、第2接合部、接合部にそれぞれ形成されている層間接続部により互いに接合させることが容易にできる。
【0022】
また、請求項1記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおいて、前記ベース部材は、前記第1コイルピースの第1接合部および第2接合部に対応する前記凹部の位置と、前記第2コイルピースの接合部に対応する前記凹部の位置に、それぞれ貫通孔を有し、前記凹部に配設された前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースは、前記第1接合部、前記第2接合部および前記接合部がそれぞれ対面方向にある同士を、前記貫通孔を介して層間接続部材により接続された構成とした。
【0023】
かかる構成によれば、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルは、貫通孔を介して対面方向にあるそれぞれの第1接合部、第2接合部、接合部について層間接続部材により接続しているため、対面方向にある第1接続部、第2接続部、接合部以外の部分を絶縁した状態(電気的に導通可能な状態にしなければならない部分以外)であっても層間接続部材により接続することが可能となる。
【0024】
また、請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおいて、前記ベース部材は、前記第1コイルピースの第1接合部および第2接合部に対応する前記凹部の位置と、前記第2コイルピースの接合部に対応する前記凹部の位置に、それぞれ貫通孔を有し、前記凹部に配設された前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースは、前記第1接合部、前記第2接合部および前記接合部がそれぞれ対面方向にある同士を超音波接合させた構成とした。
【0025】
かかる構成によれば、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルは、第1接合部、第2接合部、接合部がそれぞれ貫通孔を介して対面する同士を超音波接合した構成にすることで、部品点数の削減および接続部の信頼性や生産性の向上を図る事ができる。
【0026】
そして、さらに、請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおいて、前記ベース部材は、前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースの前記中間部が、回転軸中心から径方向に放射状に配置されるように前記凹部が形成されると共に、周方向に所定の間隔を有するように形成され、かつ、前記第2コイルピースの給電端子接続部の係止する位置が、前記第1コイルピースの第1接合部または第2接合部の係止する位置より、円環状の前記ベース部材の内周側または外周側に向かって径方向に突出するように前記凹部が形成された構成とした。
【0027】
かかる構成により、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルは、給電端子接続部が第1コイルピースの第1接合部あるいは第2接合部より内周側または外周側に突出しているので、外部から接続される給電端子との接続作業を容易にする。
【0028】
また、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおいて、前記ベース部材は、周方向における前記凹部間に、強磁性体からなる磁束伝達部材を配設する磁束伝達部材用貫通穴を備える構成とした。
【0029】
かかる構成により、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルは、ベース部材の磁束伝達部材用貫通穴に強磁性体からなる磁束伝達部材を配設することで、積層によりステータコイルの厚さが増加しても、ステータコイルの厚さが増加した分に応じて磁束伝達部材の厚さを増やす事で、実質的に磁束量の低下を招く事は無くなり、出力低下を生じる事はない。
【0030】
さらに、請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおいて、前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースは、プレス加工で打ち抜いて形成されて板厚より板幅が幅広に形成された構成とした。また、前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースは、導電体により形成され、その導電体を銅、銅合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金のいずれかとする構成とした。
【0031】
かかる構成により、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルは、第1コイルピースおよび第2コイルピースをプレス機等の汎用の工作機械を用いて、形状精度の高い製品を容易に得ることができ、導体の接続後にカットするような工程を必要としない為、金属粉等によるコンタミネーションを起こすことがない。また、第1コイルピースおよび第2コイルピースは、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金で形成することができるので、多くの部材の種類から選択することができる。
【0032】
また、前記したアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおいて、前記ベース部材は、その一面側に前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースを配設するための前記凹部としての一面側凹部を備えると共に、その他面側に前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースを配設するための前記凹部としての他面側凹部を備え、かつ、前記一面側凹部は、前記他面側凹部に対して、前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースの中間部が表裏対向方向で一致する位置に形成する構成とした。
【0033】
かかる構成により、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルは、第1コイルピースおよび第2コイルピースの中間部が表裏対向方向で一致する位置に一面側凹部および他面側凹部が形成されているので、周方向に多数の第1コイルピースおよび第2コイルピースを配設することができる。
【0034】
さらに、前記したアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルは、前記一面側凹部と前記他面側凹部とは、前記第1曲折部および第2曲折部を表裏対向方向において互いに反転した状態で配設できるように前記ベース部材に形成された構成とした。
【0035】
かかる構成により、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルは、一面側凹部および他面側凹部に配設される第1コイルピースおよび第2コイルピースを、表裏において別形状のものとすることなく、同一形状に形成することができる。
【0036】
そして、前記したアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおいて、前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースが前記凹部に係止されたベース部材を複数枚積層して構成しても構わない。
かかる構成により、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルは、ベース部材を積層することでターン数を増やすことができる。
【0037】
また、前記したアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおいて、前記ベース部材を複数積層したときの前記給電端子接続部は、前記コイルループに給電する給電端子に接続するものと、積層される異なるベース部材の給電端子接続部に接続されるものと、周方向に隣り合う給電端子接続部同士で接続されるものと、からなる構成とした。
【0038】
かかる構成により、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルは、ベース部材に第1及び第2コイルピースが配設されたコイルユニットを積層したときに所定のコイルループを形成してターン数を増やすことができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係るアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルによれば、以下に示すような効果を奏する。
アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルは、第1コイルピースと第2コイルピースをベース部材に配設することで全体の構成を組み立てることができるので、組み付け作業性を向上することができる。
【0040】
また、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルは、ベース部材の積層方向においてコイルのターン数を増やすことができるため、第1コイルピースおよび第2コイルピースと、ベース部材とにおける絶縁箇所についても、従来の周方向にコイルのターン数を増やす構成のものと比較して大きく削減でき、かつ、絶縁信頼性を向上することができる。
【0041】
さらに、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルは、ベース部材に第1コイルピースおよび第2コイルピースを配設する構成であるため、コイルのターン数あるいは相数の変更に対する設計自由度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、適宜、図面を参照しながら説明する。図1は、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルの全体について一部省略して模式的に示す斜視図、図2は、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおけるベース部材、第1コイルピース、第2コイルピースおよび磁束伝達部材の関係を示す一部を省略して断面にして模式的に示す分解斜視図、図3(a)はアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルに用いられる第1コイルピースを示す平面図および側面図、図3(b)は本発明に係るアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルに用いられる第2コイルピースを示す平面図および側面図である。なお、この実施の形態では、ステータコイル1が3層(ベース部材が3枚)を1ユニットとした場合の構成として説明するが、ステータコイル1の最小単位は、1層(ベース部材が1枚)であり、その積層数は限定されるものではない。
【0043】
図1に示すように、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイル1は、円環状のベース部材2と、この円環状のベース部材2に配設される第1コイルピース3および第2コイルピース4とを主な構成として備えている。このステータコイル1は、ここでは、第1コイルピース3および第2コイルピース4のそれぞれの間に磁束伝達部材6が配設されている。なお、このステータコイル1は、図示しないロータと対面した状態で配置され、第2コイルピース4の後記する給電端子接続部4eに外部から接続されるバスバー(給電端子)51等の端子部材50を介して、ベース部材2の中央に配置される図示しない給電システムと接続された状態で、例えば、車両の車輪の所定位置に設置して使用される。
【0044】
図2および図3に示すように、第1コイルピース3は、長尺状に形成された中間部3aと、この中間部3aの一端側に連続して周方向の一方向に曲折して形成された第1曲折部3bと、中間部3aの他端側に連続して周方向の他方向に曲折して形成された第2曲折部3cと、第1曲折部3bの先端に形成された第1接合部3dと、第2曲折部3cの先端に形成された第2接合部3eとを備えている。そして、この第1コイルピース3は、ここでは、アルミニウム合金(またはアルミニウム)で形成されており、第1接合部3dの板厚方向に接合貫通孔3fが形成され、かつ、第2接合部3eの板厚方向に接合貫通孔3gが形成されている。
【0045】
図3(a)に示すように、第1コイルピース3は、板厚よりも板幅が広くなるように形成されている。第1コイルピース3は、その中間部3aがベース部材2の中心(回転中心)から径方向に放射状に配置されるように直線状に形成されている。そして、第1コイルピース3は、その第1曲折部3bおよび第2曲折部3cが、互いに周方向において反対側に所定角度で折り曲がった状態に形成されている。なお、第1コイルピース3の第1曲折部3bおよび第2曲折部3cのそれぞれの折り曲げ角度は、図6に示すように、表裏で接合された状態になったときに、角度θになるように設定されている。つまり、ステータコイル1と対で使用される図示しないロータのS極およびN極の磁極が周方向に占める位相角と一致するように角度θが設定されている。
【0046】
図3(a)に示すように、第1コイルピース3の第1接合部3dおよび第2接合部3eは、それぞれ第1曲折部3bおよび第2曲折部3cの先端が円板状に形成されている。そして、第1コイルピース3の第1接合部3dおよび第2接合部3eは、円板状の中央部分に板厚方向に接合貫通孔3f,3gがそれぞれ設けられ、ベース部材2の他面側に配設される第1コイルピース3の第1接合部3dおよび第2接合部3eあるいは後記する第2コイルピース4の接合部4dと接合ピン5により接合できるように構成されている。
【0047】
また、図2および図3(b)に示すように、第2コイルピース4は、長尺状に形成された中間部4aと、この中間部4aの一端側に連続して周方向の一方向に曲折して形成された第1曲折部4bと、中間部4aの他端側に連続して周方向の他方向に曲折して形成された第2曲折部4cと、第1曲折部4bの先端に形成された接合部4dと、第2曲折部4cの先端に直線部4hを介して形成された給電端子接続部4eとを備えている。そして、この第2コイルピース4は、ここでは、アルミニウム合金(またはアルミニウム)で形成されており、接合部4dの板厚方向に接合貫通孔4fが形成され、かつ、給電端子接続部4eの板厚方向に給電端子となるバスバー51と接続するための接合貫通孔4gが形成されている。
【0048】
図3(b)に示すように、第2コイルピース4は、板厚よりも板幅が広くなるように形成されている。この第2コイルピース4は、その中間部4aがベース部材2の中心(回転中心)から径方向に放射状に配置されるように直線状に形成されている。そして、第2コイルピース4は、その第1曲折部4bおよび第2曲折部4cが、互いに周方向において反対側に所定角度で折り曲がった状態に形成されている。なお、第2コイルピース4の第1曲折部4bおよび第2曲折部4cのそれぞれの折り曲げ角度は、図6に示すように、表裏で接合された状態になったときに、角度θになるように設定されている。つまり、ステータコイル1と対で使用される図示しないロータのS極およびN極の磁極曲面が周方向に占める位相角と一致するように角度θが設定されている。
【0049】
また、第2コイルピース4の給電端子接続部4eは、ベース部材2に配設されたときに、第1コイルピース3の第2接合部3eの位置より内周側に向かって突出する位置になるように形成されている。また、給電端子接続部4eは、ここでは、第1コイルピース3の第2接合部3eと比較すると大径となるように形成されている。
図3(a)、(b)に示すように、第1コイルピース3および第2コイルピース4は、一個のピースとしての構成であるため、例えば、プレス加工(ノッチングプレス、タレットパンチ、サーボプレス、チャージプレス、ファインブランキング等のプレス加工)により製造することができるため、ステータコイル1を製造するときに組み立てる最中において切断作業を必要としないため、コンタミネーションの原因がない。
【0050】
ベース部材2は、図1および図2に示すように、円環板状で合成樹脂等の絶縁体から形成されており、一面(表面)側の円周方向に沿って形成された凹部である一面側第1凹部7と、一面側第2凹部8と、磁束伝達部材用貫通穴9と、を備え、他面(裏面)側の円周方向に沿って形成された凹部である他面側第1凹部7Aと、他面側第2凹部8Aと、を主に備えている。そして、このベース部材2は、その内周縁側および外周縁側に周方向に所定間隔で、ガイド用位置決め穴10および積層用ボルト穴11が形成されている。
【0051】
図1、図2および図4に示すように、ベース部材2の一面側第1凹部7および一面側第2凹部8は、第1コイルピース3および第2コイルピース4を配設するためのものであり、周方向に一定間隔で形成されている。そして、図1に示すように、ベース部材2は、一面側において、一面側第2凹部8を、ここでは、所定箇所に6箇所形成しており、残りは全て一面側第1凹部7となるように構成されている。
【0052】
図2に示すように、一面側第1凹部7および一面側第2凹部8は、ベース部材2の板厚方向に形成されており、板厚中央の部分を底面として第1コイルピース3および第2コイルピース4の形状に対応する凹形状に形成されている。そして、一面側第1凹部7および一面側第2凹部8は、接続に必要な箇所には貫通穴が形成されており、ここでは、第1コイルピース3の第1接合部3dの接合貫通孔3fおよび第2接合部3eの接合貫通孔3gに対面する位置と、第2コイルピース4の接合部4dの接合貫通孔4fに対面する位置とに、それぞれ貫通孔7f,7g,8fが形成されている。
【0053】
一面側第1凹部7は、第1コイルピース3の中間部3aに対応してベース部材2の中心(回転中心)から放射状の直線となるように形成された中央凹部7aと、この中央凹部7aの一端側および他端側に連続して、第1コイルピース3の第1曲折部3bおよび第2曲折部3cを嵌合するように凹状に形成された第1曲折凹部7bおよび第2曲折凹部7cと、この第1曲折凹部7bおよび第2曲折凹部7cの先端側にそれぞれ、第1コイルピース3の第1接合部3dおよび第2接合部3eを嵌合するように凹状に形成した第1接合凹部7dおよび第2接合凹部7eとを備えている。そして、一面側第1凹部7の第1接合凹部7dおよび第2接合凹部7eにおいて、第1コイルピース3の第1接合部3dおよび第2接合部3eに形成した接合貫通孔3f,3gに連通する位置に貫通孔7f,7gが形成されている。
【0054】
一面側第2凹部8は、第2コイルピース4の中間部4aに対応してベース部材2の中心(回転中心)から放射状の直線となるように形成された中央凹部8aと、この中央凹部8aの一端側および他端側に連続して、第2コイルピース4の第1曲折部4bおよび第2曲折部4cを嵌合するように凹状に形成した第1曲折凹部8bおよび第2曲折凹部8cと、この第1曲折凹部8bおよび第2曲折凹部8cの先端側にそれぞれ、第2コイルピース4の接合部4dおよび給電端子接続部4eを嵌合するように凹状に形成した接合凹部8dおよび給電端子用凹部8eとを備えている。そして、一面側第2凹部8は、その接合凹部8dにおいて、第2コイルピース4の接合部4dに形成した接合貫通孔4fに連通する位置に貫通孔8fが形成されている。
【0055】
なお、ベース部材2は、ここでは、一面側第1凹部7および一面側第2凹部8と、他面側第1凹部7Aおよび他面側第2凹部8Aとは、同じ構成であるため、その説明を省略する。また、一面側第1凹部7および一面側第2凹部8と、他面側第1凹部7Aおよび他面側第2凹部8Aとの表裏における位置関係は、次のようになっている。すなわち、ベース部材2では、第1コイルピース3と第2コイルピース4のそれぞれの中間部3a、4aが表裏対向方向となるように表裏で一致した位置になるように配置されている(図6参照)。
【0056】
そして、第1曲折部3bと第2曲折部3cが表裏において周方向において反対向きになるように、一面側第1凹部7および他面側第1凹部7Aが配置されると共に、第1曲折部4bと第2曲折部4cが表裏において周方向において反対向きになるように、一面側第2凹部8および他面側第2凹部8Aが配置されている。ここでは、U相、V相、W相の三相を使用するため、一面側に配置された第1コイルピース3の第1接合部3dが、中間部3aを基準に周方向左において他面側に配置された3つ隣りの第1コイルピース3の第1接合部3dと対面方向となるように第1接合凹部7dが形成されている。
【0057】
また、一面側に配置された第1コイルピース3の第2接合部3eが、中間部3aを基準に周方向右において他面側に配置された3つ隣りの第1コイルピース3の第2接合部3eと対面方向となるように第2接合凹部7eが形成されている。なお、一面側第1凹部7および他面側第2凹部8Aの第1曲折凹部7b、8bおよび第2曲折凹部7c、8cの曲折角度は、すでに第1コイルピース3および第2コイルピース4の構成で説明した理由と同じ理由で設定される。
【0058】
ステータコイル1では、ベース部材2に第1コイルピース3および第2コイルピース4を配設した状態で、貫通孔7f,7g,8fを介して表裏で対面方向に位置する第1接合部3d,第2接合部3e,接合部4dを、層間接続部材である接合ピン5により接合している。なお、ここでいう層とはベース部材の片面(一面あるいは他面)を指している。
接合ピン5は、第1コイルピース3の第1接合部3dおよび第2接合部3eと、第2コイルピース4の接合部4dとにおいて、表裏対向方向に位置するもの同士を接合するためのものである。この接合ピン5は、第1接合部3d,第2接合部3e,接合部4dのそれぞれの接合貫通孔3f,3g,4fに嵌合する円柱形状に形成されており、第1コイルピース3および第2コイルピース4と同質の素材で形成されている。
【0059】
例えば、第1コイルピース3および第2コイルピース4がアルミニウム合金で形成されている場合は、同質のアルミニウム合金で形成されることが望ましい。ベース部材2の一面側第1凹部7、一面側第2凹部8、他面側第1凹部7Aおよび他面側第2凹部8Aにそれぞれ第1コイルピース3および第2コイルピース4を配置した状態で、後記する接合装置40により操作されて、貫通孔7f,7g,8fを介して対面する第1接合部3d、第2接合部3e、接合部4d同士を接合するように設置されている。
【0060】
ここで使用される接合ピン5は、例えば、図5に示すような接合装置40により第1接合部3d,第2接合部3e、接合部4dに接合するように取り付けられる。図5はアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおける第1コイルピースの第1接合部および第2接合部または第2コイルピースの接合部を、接合装置により接合する状態を模式的に示す断面図である。
【0061】
接合装置40は、一方側ガイドプレート46と、他方側ガイドプレート47からなるガイドプレート48と、このガイドプレート48で挟持されてガイドされている第1コイルピース3および第2コイルピース4を配設したベース部材2において接合ピン5を設置するプレス部41とを備えている。
【0062】
ガイドプレート48は、その一方側ガイドプレート46に接合ピン5を設置する位置に貫通してピン嵌合用穴46aが形成されている。
プレス部41は、一方側ガイドプレート46のピン嵌合用穴46aに挿入する筒形状のプレスハンマガイド42と、このプレスハンマガイド42の内壁面に沿って接合ピン5を押し込み設置するプレスハンマ43と、このプレスハンマ43を支持する支持バネ44と、プレスハンマ43を支持バネ44の弾性力に抗して押動させる押圧部45とを備えている。
【0063】
前記した接合装置40を使用して接合ピン5により接合作業を行う場合は、次のようにする。はじめに、第1コイルピース3および第2コイルピース4を配設したベース部材2を一方側ガイドプレート46と他方側ガイドプレート47の間に固定してガイドプレート48によりガイドする。
次に、ガイドプレート48によりガイドされたベース部材2に対してプレス部41のプレスハンマガイド42を一方側ガイドプレート46のピン嵌合用穴46aに挿入する。プレスハンマガイド42が挿入されると、プレスハンマガイド42の肉厚部分が第1接合部3dの上面に当接した状態となり、かつ、プレスハンマ43の先端面が接合ピン5の一端面に当接した状態となる。
【0064】
そして、押圧部45によりプレスハンマ43を押圧することで、プレスハンマ43を支持バネ44の弾性力に抗して押動して接合ピン5を押圧する。そうすると、接合ピン5は、その一端側が押されて接合貫通孔3f、3fに嵌合すると共に、プレスハンマ43と当接している部分が押し潰されて、第1接合部3dに対向方向にある(対面している)第1接合部3d同士が、かしめられて接合される。このような操作をベース部材2の内周側および外周側に順次行うことで、接合ピン5により第1接合部3d、第2接合部3e、接合部4dがそれぞれ対向方向(対面)に配置された第1接合部3d、第2接合部3e、接合部4dと接合される。
【0065】
図2に示すように、磁束伝達部材6は、鉄系等の広くコア材として利用されるものを適用することができるが、電気エネルギーと磁気エネルギーの変換効率が高く、磁束伝達効率を向上させるために一方向のみに磁化しやすくなるようにした方向性電磁鋼板を使用することが望ましい。この磁束伝達部材6は、平面視において扇形状に形成されており、第1コイルピース3の中間部3aおよび第2コイルピース4の中間部4aの板幅より広い部分を備えるように形成されている。なお、磁束伝達部材6は図示しない絶縁カラーを介してベース部材2の磁束伝達部材用貫通穴9へ嵌め込まれている。また、磁束伝達部材6は図示しないリターンパス(磁束の戻り磁路)と一体のスロットコア(図示せず)で構成され、積層されたステータコイル1と共にケースにボルト締めで固定される構成とすることもできる。
【0066】
ベース部材2に第1コイルピース3、第2コイルピース4、磁束伝達部材6が配設され所定位置を接合ピン5により接続された状態になると、外部との接続を確保するように、例えば、図1に示すような、端子部材50が接続される。図1に示すように、端子部材50は、第2コイルピース4の給電端子接続部4eにボルト54を介してバスバー51、52で挟み込んだ状態でターミナルブロック53に接続し、ターミナルカバー55により覆うように設置される。なお、各ベース部材2,2,2において対面する部分が接触しないように、図示しない絶縁シートが設置されている。
【0067】
そして、中段のベース部材2の一面側と、上段のベース部材2の他面側とに配置された給電端子接続部4eは、円環状に形成されたコネクトワッシャ(図示せず)を介して互いに接続されるように構成されている。同様に、中段のベース部材2の他面側と、下段のベース部材2の一面側とに配置された給電端子接続部4eは、円環状に形成されたコネクトワッシャ(図示せず)を介して互いに接続されるように構成されている。
【0068】
第2コイルピース4は、ベース部材2について3つを1ユニットとして使用する場合には、一つのベース部材2おいて、その給電端子接続部4eを一面側に2つ、他面側に2つ、それぞれU相、V相、W相において備えることになる。つまり、一つのベース部材2には、給電端子接続部4eは、U相、V相、W相の全部で一面側に6つ、裏面側に6つを配置することになる。そして、例えば、U相において、給電端子接続部4eは、一面側または他面側の一方に配置された隣り合うもの同士を接続し、一面側または他面側の他方に配置された隣り合うもののそれぞれが入力用と出力用として使用されることになる。
【0069】
ここでは、図6に示すように、ベース部材2を3枚使用して1ユニットにして説明しているので、例えば、下段に配置されたベース部材2の他面側に配設された給電端子接続部4e,4eをそれぞれ入力用および出力用として使用した場合の接続関係を示すと以下のようになる。つまり、図6に示すように、下段のベース部材2の一面側の給電端子接続部4e,4eと、中段のベース部材2の他面側の給電端子接続部4e,4eとをコネクトワッシャ(図示せず)により接続状態とし、また、中段のベース部材2の一面側の給電端子接続部4e,4eと上段のベース部材2の他面側の給電端子接続部4e,4eとをコネクトワッシャ(図示せず)により接続状態とする。
【0070】
そして、上段のベース部材2の一面側の周方向に隣り合う給電端子接続部4e,4e同士をバスバー51(図1参照)により接続状態として所定のコイルループを形成するようにしている。なお、下段、中段、上段のベース部材2において対面する第1コイルピース3および第2コイルピース4(給電端子接続部4eの部分は除く)は図示しない絶縁シートにより絶縁状態である。また、それぞれのベース部材2の一面側および他面側に位置する給電端子接続部4e、4eの関係は、絶縁された状態になっている。
【0071】
そして、図6に示すように、ステータコイル1のコイルループは、下段、中段、上段のベース部材2に配設された第1コイルピース3と第2コイルピース4との接続状態により以下のように形成される。なお、ここでは、U相だけの電流の流れを模式的に示している。すなわち、下段のベース部材2において他面側で左側の入力用の給電端子接続部4eから給電されると、右回りに下段のベース部材2の一面側および他面側の第1コイルピース3および第2コイルピース4を経由して電流が流れる。そして、右回りして下段のベース部材2の一面側で左側に配置された給電端子接続部4eまで電流の流れが来ると、中段のベース部材2の他面側で左側に配置された給電端子接続部4eに移行して、中段のベース部材2の一面側および他面側の第1コイルピース3および第2コイルピース4を経由して右回りに電流が流れる。
【0072】
そして、中段のベース部材2から上段のベース部材2に移行して同様にして電流が流れ、上段のベース部材2に配設された第1コイルピース3および第2コイルピース4を介して右回りしてベース部材2の一面側に配設された給電端子接続部4eに来る。そうすると、周方向に隣り合う右側の給電端子接続部4eに電流は流れ、今度は、上段のベース部材2において左回りなるように第1コイルピース3および第2コイルピース4に流れる。さらに、ベース部材2の上段において左回りをして上段のベース部材2の他面側で右側の給電端子接続部4eに来た電流は、中段に移行して中段で上段と同様に左回りして給電端子接続部4eを介して下段に移行する。そして、ベース部材2の下段に移行した電流は、左回りをしてベース部材2の他面側で右側の給電端子接続部4eまで来て出力されるように流れる。
【0073】
電流の流れについて図6を参照して説明したように、ステータコイル1は、ここでは、下段の左側となる給電端子接続部4eの一つから入力された電流が、ベース部材2の下段、中段、上段において、右回りして、次いで、ベース部材2の上段において左回りし中段、下段においてそれぞれ左回りして、ベース部材2の下段の右側となる給電端子接続部4eから出力される流れになるコイルループを形成している。
【0074】
なお、ステータコイル1は、ベース部材2に第1コイルピース3および第2コイルピース4を配設して接合ピン5により、対向方向に位置する第1接合部3d,第2接合部3e、接合部4dを接合して、かつ、給電端子接続部4eを前記したように接続した状態とする。そして、ステータコイル1は、図示しない絶縁シートを介して三つ(3枚)のベース部材2を重ねて(積層して)ベース部材2の外周縁および内周縁に周方向に所定間隔で形成されているガイド用位置決め穴10に位置決めピン10Aを挿入して、積層用ボルト穴11にボルトBとナットNにより締め付けた状態とする。そして、給電端子接続部4eをそれぞれ接続する場合には、ここでは、図1に示すように、バスバー51により外部からの給電の出入力、バスバー52により隣合うものの接続、あるいは図示しないコネクトワッシャにより接続することで、ベース部材2間における接続を行っている。
【0075】
本発明の実施形態に係るステータコイル1の作用について、図1および図6を参照して説明する。ステータコイル1の給電端子に接続された給電端子接続部4eにそれぞれ交流電流が供給されると、U相、V相、およびW相の3相(図6ではU相のみ記載)のコイルループに通電される。
そして、各相の第1コイルピース3および第2コイルピース4における周方向において、同位相の中間部3a,4aでは電流は同じ方向(外周方向または内周方向)に流れて、電流による磁束の向きも一致し、磁界が相互に強めあうように合成される。
【0076】
また、第1コイルピース3および第2コイルピース4に隣り合う位置には、磁束伝達部材6が設置されているので、磁束は磁束伝達部材6を通って磁束ループが形成され図示しないロータに伝達される。
さらに、ベース部材2に形成された磁束伝達部材用貫通穴9に磁束伝達部材6を挿入していることで、ステータコイル1の剛性を向上させることができる。
そして、磁束伝達部材6を介して図示しないロータへ磁束を伝えるため、第1コイルピース3および第2コイルピース4(導体)に生じる渦電流損を著しく低減することができる。
【0077】
なお、このように形成されたステータコイル1では、図7に示すように、アルミニウム(またはアルミニウム合金)または銅(または銅合金)を用いて第1コイルピース3および第2コイルピース4を作成した場合において、抵抗値とボリューム、重量、線材費との関係について、図7を参照して次に説明する。図7は、アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおける第1コイルピースおよび第2コイルピースの素材を、銅を基準にした場合のアルミニウムに対して抵抗値とボリューム、重量、線材費との関係を示すグラフ図である(なお、図7において説明している素材は純アルミニウムおよび純銅の例をしめしている)。
【0078】
図7に示すように、銅で製造した第1コイルピース3および第2コイルピース4の抵抗値を100%であるときに、アルミニウムのボリュームと、アルミニウムの重量と、アルミニウムの線材費とを比較すると、例えば、銅の抵抗値が100%の値のときには、アルミニムのボリュームを見てみると銅に対して170%になっており、形状が大きくなることを示している。また、そのときのアルミニウムの重量は、銅に対してほぼ半分の50%になることを示し、さらに、線材費においては、銅に対して20%しかかからず安くなることを示している。したがって、ステータコイル1は、製造するときに、材料の選択の範囲が広がることをここでは示している。そのため、ステータコイル1は、設置できる場所の広さ、コスト等を配慮して第1コイルピース3および第2コイルピース4の材料を選定してより商品のニーズに対応した構成として提供することが可能となる。
【0079】
なお、特許文献1などに見られるような周方向にターン数を増やす構成では、ターン数が増えれば増えるほど周方向の導体幅が小さくなるため、強度的にアルミニウムは使えない。すなわち、従来の構成でアルミを用いた場合、線材の強度面の問題から巻線作業又は巻線形成、及び、形状保持が困難となり、さらには、アルミの酸化皮膜が強固な為、端部の接続処理が困難になることから、アルミ導体の利用はほとんどおこなわれていない。このような従来の構成に対して、本発明の構成では強度面の配慮がしやすいピース形状としていることで、導体材料の選択自由度を向上させている。また、コイルピース同士の接続にはカシメや超音波接合等種々の接続手法により行う為、酸化被膜も問題にはならないことからアルミ材の使用が可能となる。
【0080】
また、以上のように説明したステータコイル1では、図8に示すように、従来の周方向にターン数を増やす構成と比較してみると次のようなことが分かる。図8(a)は本発明のステータコイルの構成においてコイルの所定占有空間を模式的に表わす模式図、(b)は従来のステータコイルの構成においてコイルの所定占有空間を模式的に表わす模式図である。
【0081】
図8(a)、(b)に示すように、従来の構成と同じコイルの占有空間(体積)の部分で本願の構成と比較すると、必要な絶縁部分ibは、(a)では、2箇所であればよいのに対して、(b)では、6箇所となる。また、図8(b)では、絶縁部分ibの設置部分におけるアスペクト比も大きくなることから、絶縁部分ibの形成作業面においても、(a)の構成が優れていることが分かる。さらに、図8(a)の構成では、コイルの左右に配置される磁束伝達部材6を肉厚に形成できるため(a)の構成である方が、磁束量においても(b)と比較して大きくとることができる。
【0082】
ちなみに、図8(a)の構成では、積層方向にコイルを配置しているため、周方向にコイルを配置している(b)の構成に対して、図8に示す占有空間における絶縁部分ibの割合では、(a)の構成では19.7%であるのに対して、(b)の構成では35.8%の割合となる。したがって、図8(a)の構成の絶縁部分ibが、(b)の構成より、ほぼ半分の削減を行うことが可能であるので、図8(a)の構成において、コイル占有空間の割合を増加することができる。
【0083】
なお、図8(a)において、磁束伝達部材6の両端からの距離をHpとし、積層されたコイルの高さをVsとし、そのHpとVsで占有される空間において導体部の占有割合を一致させた状態として比較したときには、コイルのターン数(T)は、(a)の構成では影響がない(Hcn=Hp−Hfn−2・a)。これに対して、図8(b)において、左右端の磁束伝達部材からの距離をHpとし、積層方向のコイルの上下端までの距離をVsとした構成では、コイルのターン数(T)に影響が発生してしまう(Hco=2・{Hp−(T/2)・Hfo−T・a}/T)。
また、図8(a)の構成における磁束伝達部材6の厚みが、コイルのターン数(T)に影響がなく(Hfntotal=Hp−Hcn−2・a)、図8(b)の構成では影響がある(Hfototal=Hp−T・(Hco/2+a))。
【0084】
そして、コイルの積層方向の厚み(変動)に対しては、図8(a)の構成では、コイルのターン数(T)に影響があり(Vcn=(Vs−(T−1)・b)/Tが)、図8(b)の構成ではコイルのターン数(T)に影響がない(Vco=(Vs−b)/2)。
なお、図8(a)において、Hcnはコイルの幅、Vcnはコイルの高さ(厚み)、bは積層方向におけるコイルの絶縁部材の幅、aは絶縁部分ibの形成幅、Hfnは特定面内における磁束伝達部材の幅である。また、図8(b)において、Hcoはコイルの幅、Vcoはコイルの高さ(厚み)、bは積層方向におけるコイルの絶縁部材の幅、aは絶縁部分ibの形成幅、Hfoは特定面内における磁束伝達部材の一つの幅である。
【0085】
以上のように、図1から図8において説明したように、ステータコイル1では、ベース部材2の積層方向においてコイルのターン数を増やすことができるため、第1コイルピース3および第2コイルピース4と、ベース部材2とにおける絶縁箇所についても、従来の周方向にコイルのターン数を増やす構成のものと比較して大きく削減でき、かつ、絶縁信頼性を向上することができる。
【0086】
[コイルピースの変形例]
なお、ステータコイル1において、第1コイルピース3および第2コイルピース4は、図9に示すような構成であっても構わない。図9(a)、(b)、(c)は、それぞれステータコイルに使用される第1コイルピースの他の構成を示す平面図および側面図である。なお、図3においてすでに説明した構成は同じ符号を付して説明を省略する。
【0087】
図9(a)に示すように、第1コイルピース13は、長尺状の中間部3aと、この中間部3aの一端と他端に連続して形成された第1曲折部3bおよび第2曲折部3cと、第1曲折部3bの先端に形成された第1接合部13dと、第2曲折部3cの先端に形成された第2接合部13eとを備えている。この第1コイルピース13の第1接合部13dおよび第2接合部13eは、それぞれ第1曲折部3bまたは第2曲折部3cと同等の幅および厚みで先端が円弧状に形成されている。そして、それぞれ接合貫通孔3f,3gが形成されている。この第1コイルピース13は、第1接合部13dおよび第2接合部13eに、第1曲折部3bまたは第2曲折部3cに対して幅が大きく変わるところがないので、応力集中を発生する部位がなく強度が高い。
【0088】
図9(b)に示すように、第1コイルピース23は、第1接合部23dおよび第2接合部23eの板厚を厚く構成しているところが、(a)と異なる構成である。その他の構成は、(a)の構成と同等である。この第1コイルピース23では、第1接合部23dおよび第2接合部23eの厚みを大きくしたので強度がより高くなる。
【0089】
図9(c)に示すように、第1コイルピース33は、層間接続部として第1接合部33dに凹嵌合部33fおよび凸嵌合部33hを表裏に備え、また、層間接続部として第2接合部33eに凹嵌合部33gおよび凸嵌合部33iを表裏に備えている。第1接合部33dの凸嵌合部33hまたは第2接合部33eの凸嵌合部33iは、図9(a)に示される扁平状の第1コイルピース13の第1接合部13dの接合貫通孔3f、および、第2接合部13eの接合貫通孔3gに嵌合され電気的に接合できるように形成されている。第1コイルピース33は、凸嵌合部33h、33iとを有することにより、接合ピン5を必要とせず、部品点数の削減ができる。
【0090】
また、第1コイルピース33を使用する場合には、図示してはいないが、第2コイルピース4の接合部4dについても層間接続部として、図9(c)で示す、第1コイルピース33の第1接合部33dと同じ構成であるものを使用すると接続作業が容易となる。
【0091】
なお、第1コイルピース33は、接合ピン5を必要としないが、図2、図9(a)、(b)で示す第1コイルピース3,13,23(あるいは第2コイルピース4の接合部)に凸嵌合部33h,33iにより接合させるように使用され、他の構成のものと組み合わせて使用されることになる。
【0092】
そして、図9では、第1コイルピース13,23,33の構成について説明したが、第2コイルピース4の接合部4dを、第1コイルピース13,23,33の第1接合部13d,23d,33dと同等の形状にしても構わない。これらの第1コイルピース3,13,23および第2コイルピース4を使用する場合には、同種類のタイプごとに使用することもできるが、異種類のタイプを用いることもできる。
【0093】
[ベース部材の変形例]
また、図1から図6までを参照して説明したベース部材2の構成についても、例えば、図10に示すような構成であっても構わない。図10は、ベース部材の他の構成について一部を省略して断面にして模式的に示す斜視図である。なお、ベース部材22の両面において同じ構成には同じ符号を付している。また、第2コイルピース用の凹部については給電端子用凹部の構成がことなるのみでその他の構成については第1コイルピース用の凹部と同等であるため、ここでは説明を省略している。
【0094】
図10に示すように、ベース部材22は、図1の構成と一面側および他面側における第1コイルピース3および第2コイルピース4に対するそれぞれの凹部7,7A,8,8Aの配置は同じ構成であり、異なる部分として第1コイルピース3あるいは第2コイルピース4の隣り合う位置に配置される磁束伝達部材6に対する仕切りとなる側壁がないことである。
【0095】
つまり、ベース部材22は、円環板状に形成されており、その一面側において外縁側エリア22Aと、中央エリア22Bと、内縁側エリア22Cとにそれぞれ周方向に一面側第1接合凹部22dと、一面側中央支持部22aと、一面側第2接合凹部22eと、を備えている。そして、ベース部材22は、一面側と他面側とで周方向にその他面側において、外縁側エリア22Aと、中央エリア22Bと、内縁側エリア22Cとにそれぞれ周方向に他面側第1接合凹部22dと、他面側中央支持部22aと、他面側第2接合凹部22eと、を備えている。
【0096】
第1コイルピース3用の凹部である一面側第1接合凹部22dは、第1コイルピース3の第1曲折部3bの全部または一部と、第1コイルピース3の第1接合部3dを嵌合するように凹状に形成されている。そして、一面側第1接合凹部22dは、第1コイルピース3の第1接合部3dに形成した接合貫通孔3fに連通するように貫通孔22fが形成されている。
【0097】
一面側中央支持部22aは、ベース部材22の一面側の上面よりも低くなるように形成されており第1コイルピース3の中間部3aを載置する平面に形成されている。また、一面側中央支持部22aの一端と他端には、第1コイルピース3の第1曲折部3bおよび第2曲折部3cの一部または全部を載置する第1載置面22bおよび第2載置面22cとをそれぞれ備えている。なお、この一面側中央支持部22aの周方向に隣り合う位置には、一定間隔で磁束伝達部材6を配置する伝達部材用穴19が形成されている。したがって、中央エリア22Bでは、周方向に伝達部材用穴19と一面側中央支持部22aの平面部分が交互に形成されている状態となっている。
【0098】
一面側第2接合凹部22eは、第1コイルピース3の第2曲折部3cの全部または一部と、第1コイルピース3の第2接合部3eを嵌合するように凹状に形成されている。そして、一面側第2接合凹部22eは、第1コイルピース3の第2接合部3eに形成した接合貫通孔3gに連通するように貫通孔22gが形成されている。
【0099】
なお、一面側第2接合凹部については、内縁側エリア22Cにおける形状が第2コイルピース4の給電端子接続部4eに対応して形成されている以外は、一面側第1接合凹部22dと同等である。
【0100】
また、図10で説明したベース部材22に使用される第1コイルピース3および第2コイルピース4は、隣り合う第1コイルピース3または第2コイルピース4に対して絶縁性を確保するために、表面に絶縁材料を塗布あるいは設けた構成として使用されることになる。
【0101】
[ベース部材の他の変形例]
さらに、図11に示すように、ベース部材における第2コイルピース4の配置としてもかまわない。図11はアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおけるベース部材の他の構成について一部を省略して模式的に示す平面図である。ベース部材2Aは、給電端子接続部4eの配置を、内縁側ではなく、外縁側に配置するように構成している。したがって、ベース部材2Aでは、すでに説明したベース部材2の内縁側の第2接合凹部7eが外縁側として配置され、第1接合凹部7d、接合凹部8dが内縁側として配置される構成としている。
【0102】
また、図示していないが、第1コイルピース3(13,23,33)の第1接合部3dおよび第2接合部3e、第2コイルピース4の接合部4dについて、それぞれが対面して当接した状態において超音波接合装置(図示せず)により超音波接合することで接合させるようにしても構わない。接合部分が超音波接合であることにより、接合操作が迅速にでき、かつ接合面積が小さくて済む。
【0103】
以上のように説明したステータコイル1は、ベース部材2に第1コイルピース3あるいは第2コイルピース4が板厚を積層方向になるように配設されたコイルユニットを積層することでターン数を増やすように構成されているため、製造工程を容易にし、かつ、周方向にターン数を増やす構成では使用することができなかったアルミニウム合金(またはアルミニウム)を素材として用いることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明に係るアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルの全体について一部を省略して模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明に係るアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおけるベース部材、第1コイルピース、第2コイルピースおよび磁束伝達部材の関係を示す一部を省略して断面にして模式的に示す分解斜視図である。
【図3】(a)は本発明に係るアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルに用いられる第1コイルピースを示す平面図および側面図、(b)は本発明に係るアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルに用いられる第2コイルピースを示す平面図および側面図である。
【図4】本発明に係るアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルに用いられるベース部材の一部を模式的に示す平面図である。
【図5】本発明に係るアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおける第1コイルピースの第1接合部および第2接合部または第2コイルピースの接合部を、接合装置により接合する状態を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明に係るアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおけるコイルループの状態を模式的に示す斜視図である。
【図7】本発明に係るアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおける第1コイルピースおよび第2コイルピースの素材を、銅としたときを基準にした場合のアルミニウムに対して抵抗値とボリューム、重量、線材費との関係を示すグラフ図である。
【図8】(a)は本発明のステータコイルの構成においてコイルの所定占有空間を模式的に表わす模式図、(b)は従来のステータコイルの構成においてコイルの所定占有空間を模式的に表わす模式図である。
【図9】(a)、(b)、(c)は、それぞれステータコイルに使用される第1コイルピースの他の構成を示す平面図および側面図である。
【図10】本発明のベース部材の他の構成について一部を省略して断面にして模式的に示す斜視図である。
【図11】アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルにおけるベース部材の他の構成について一部を省略して模式的に示す平面図である。
【図12】従来のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイルに用いられるコイル部分の接続構造を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0105】
1 ステータコイル(アキシャルギャップ型回転電機のステータコイル)
2 ベース部材
3 第1コイルピース
3a 中間部
3b 第1曲折部
3c 第2曲折部
3d 第1接合部
3e 第2接合部
3f 接合貫通孔
3g 接合貫通孔
4 第2コイルピース
4a 中間部
4b 第1曲折部
4c 第2曲折部
4d 接合部
4e 給電端子接続部
4f 接合貫通孔
4g 接合貫通孔
4h 直線部
5 接合ピン(層間接合部材)
6 磁束伝達部材
7 一面側第1凹部(凹部:一面側凹部)
7A 他面側第1凹部(凹部:他面側凹部)
7a 中央凹部
7b 第1曲折凹部
7c 第2曲折凹部
7d 第1接合凹部
7e 第2接合凹部
7f 貫通孔
8 一面側第2凹部(凹部:一面側凹部)
8A 他面側第2凹部(凹部:他面側凹部)
8a 中央凹部
8b 第1曲折凹部
8c 第2曲折凹部
8d 接合凹部
8e 給電端子用凹部
8f 貫通孔
9 磁束伝達部材用貫通穴
10 ガイド用位置決め穴
10A 位置決めピン
11 積層用ボルト穴
19 伝達部材用穴
33f 凹嵌合部(層間接続部)
33g 凹嵌合部(層間接続部)
33h 凸嵌合部(層間接続部)
33i 凸嵌合部(層間接続部)
40 接合装置
41 プレス部
42 プレスハンマガイド
43 プレスハンマ
44 支持バネ
45 押圧部
46 一方側ガイドプレート
46a ピン嵌合用穴
47 他方側ガイドプレート
48 ガイドプレート
50 端子部材
51 バスバー(給電端子)
52 バスバー(給電端子)
53 ターミナルブロック
54 ボルト
55 ターミナルカバー
B ボルト
N ナット
ib 絶縁部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アキシャルギャップ型回転電機のステータコイルであって、
導電体からなる複数の第1コイルピースと、
導電体からなる複数の第2コイルピースと、
前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースを周方向に配列して係止する凹部を表裏に形成した円環状のベース部材と、を備え、
前記第1コイルピースは、長尺状の中間部と、前記中間部の一端および他端にそれぞれ周方向に所定角度を有するように曲折された第1曲折部および第2曲折部と、前記第1曲折部の先端に形成した第1接合部と、前記第2曲折部の先端に形成した第2接合部とを有し、
前記第2コイルピースは、長尺状の中間部と、前記中間部の一端および他端にそれぞれ周方向に所定角度を有するように曲折された第1曲折部および第2曲折部と、前記第1曲折部または前記第2曲折部の一方の先端に形成された給電端子接続部と、前記第1曲折部または前記第2曲折部の他方の先端に形成された接合部とを有し、
前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースが前記ベース部材の表裏に形成された凹部に配設されると共に、前記第1接合部、前記第2接合部および前記接合部のそれぞれが表裏で対向する前記第1接合部、前記第2接合部および前記接合部を接続して所定コイルループを形成することを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機のステータコイル。
【請求項2】
前記給電端子接続部は、前記ベース部材の表裏の一面において周方向に隣り合う当該給電端子接続部同士が接続され、前記ベース部材の表裏の他面において前記コイルループに給電を行う給電端子に接続されることを特徴とする請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイル。
【請求項3】
前記ベース部材は、前記第1コイルピースの第1接合部および第2接合部に対応する前記凹部の位置と、前記第2コイルピースの接合部に対応する前記凹部の位置に、それぞれ貫通孔を有し、
前記第1接合部、前記第2接合部および前記接合部は、前記第1接合部、前記第2接合部および前記接合部のそれぞれが前記貫通孔を介して対面して接続される層間接続部を有することを特徴とする請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイル。
【請求項4】
前記ベース部材は、前記第1コイルピースの第1接合部および第2接合部に対応する前記凹部の位置と、前記第2コイルピースの接合部に対応する前記凹部の位置に、それぞれ貫通孔を有し、
前記凹部に配設された前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースは、前記第1接合部、前記第2接合部および前記接合部がそれぞれ対面方向にある同士を、前記貫通孔を介して層間接続部材により接続された構成であることを特徴とする請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイル。
【請求項5】
前記ベース部材は、前記第1コイルピースの第1接合部および第2接合部に対応する前記凹部の位置と、前記第2コイルピースの接合部に対応する前記凹部の位置に、それぞれ貫通孔を有し、
前記凹部に配設された前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースは、前記第1接合部、前記第2接合部および前記接合部がそれぞれ対面方向にある同士を超音波接合させた構成であることを特徴とする請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイル。
【請求項6】
前記ベース部材は、前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースの前記中間部が、回転軸中心から径方向に放射状に配置されるように前記凹部が形成されると共に、周方向に所定の間隔を有するように形成され、かつ、前記第2コイルピースの給電端子接続部の係止する位置が、前記第1コイルピースの第1接合部または第2接合部の係止する位置より、円環状の前記ベース部材の内周側または外周側に向かって径方向に突出するように前記凹部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイル。
【請求項7】
前記ベース部材は、周方向における前記凹部間に、強磁性体からなる磁束伝達部材を配設する磁束伝達部材用貫通穴を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイル。
【請求項8】
前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースは、プレス加工で打ち抜いて形成されて板厚より板幅が幅広に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイル。
【請求項9】
前記導電体は、銅、銅合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイル。
【請求項10】
前記ベース部材は、その一面側に前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースを配設するための前記凹部としての一面側凹部を備えると共に、その他面側に前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースを配設するための前記凹部としての他面側凹部を備え、かつ、前記一面側凹部は、前記他面側凹部に対して、前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースの中間部が表裏対向方向で一致する位置に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイル。
【請求項11】
前記一面側凹部と前記他面側凹部とは、前記第1曲折部および第2曲折部を表裏対向方向において互いに反転した状態で配設できるように前記ベース部材に形成されたことを特徴とする請求項10に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイル。
【請求項12】
前記第1コイルピースおよび前記第2コイルピースが前記凹部に係止されたベース部材を複数枚積層して構成することを特徴とする請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイル。
【請求項13】
前記ベース部材を複数積層したときの前記給電端子接続部は、
前記コイルループに給電する給電端子に接続するものと、
積層される異なるベース部材の給電端子接続部に接続されるものと、
周方向に隣り合う給電端子接続部同士で接続されるものと、からなることを特徴とする請求項12に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−142035(P2010−142035A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316520(P2008−316520)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】