説明

アクアポリンの発現を活性化するための活性薬剤としてイナゴマメの抽出物を含む、化粧品組成物および/または医薬組成物

本発明は、アクアポリンの発現を活性化するための活性薬剤として、イナゴマメ(Ceratonia siliqua L.)のペプチド抽出物を、生理学的に適切な媒体中に含む化粧品組成物および/または医薬組成物に関する。本発明の主題はまた、表皮の保湿およびバリア機能を改善するためならびに皮膚再生を刺激するための化粧品組成物における、アクアポリンの発現を活性化するための活性薬剤としてのイナゴマメ(Ceratonia siliqua L.)のペプチド抽出物の使用である。本発明はまた、アクアポリンの活性を調節および/または刺激することを目的とする医薬組成物、特に皮膚科組成物を調製するためのこの新規の活性薬剤の使用に関する。本発明はまた、皮膚および粘膜の乾燥ならびに皮膚の老化の症状発現を予防するまたは闘うための美容処置法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品分野および医薬分野、特に皮膚科分野に属する。本発明は、5kDa未満の分子量を有し、1%未満のポリフェノール含有量を有するペプチドを含有する、アクアポリンの発現を促進するための活性薬剤として、イナゴマメ(Ceratonia siliqua L.)のペプチド抽出物を、生理学的に適切な媒体中に含む化粧品組成物および/または医薬組成物に関する。本発明はまた、表皮の水和およびバリア機能を改善するためならびに皮膚再生を刺激するための化粧品組成物における、アクアポリンの発現を促進するための活性薬剤としてのイナゴマメ(Ceratonia siliqua L.)のペプチド抽出物の使用に関する。活性薬剤は、単独でまたはその他の活性薬剤と組み合わせて使用されてよい。本発明はまた、アクアポリンの活性と闘うおよび/または刺激し、したがって、乾皮症もしくは湿疹などの皮膚または粘膜の乾燥に関わる病的状態ならびにドライマウスおよび目の乾燥の症状を処置するために経口または局所的に投与される、医薬組成物、特に皮膚科組成物の生成のためのかかる新規の活性薬剤の使用に関する。本発明はさらに、皮膚および粘膜の乾燥ならびに皮膚の老化の症状発現を予防するまたは闘うことを目的とする美容処置法(cosmetic treatment method)に関するものであり、処置される領域に、アクアポリンの発現を促進するイナゴマメの抽出物またはイナゴマメの抽出物を含む組成物を適用するステップを含む。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、身体の全表面を覆い、外部環境に対してバリア機能を本質的に提供するいくつかの層(真皮、増殖層および角質層)からなる生命維持に不可欠な器官である。このバリア機能は、角質層の状態および表皮角化細胞の増殖と分化の間のバランスによって特に決まる表皮の質に、特に依存している。皮膚の質および適切な機能は、表皮の異なる層の中の含水量に密接に関連する。したがって、正常な表皮において、増殖層は、約70%の水を含有するが、角質層は、10〜15%しか含有しない。
【0003】
角質層の水和は、真皮からの水の供給、外部環境への水分喪失、および水分子を結合する角質層の能力の3つの要素の結果である。
【0004】
水の分配の調節は、ホルモン(アルドステロン、性ホルモン)、pHまたは浸透圧の変化によって実行される。水および特定の溶質の通過を促進する種々の孔である水チャネルは存在するが、細胞膜は、もともと疎水性であり、したがって水に対して高い透過性はない。
【0005】
アクアポリンは、水、ならびに上皮および内皮において水の輸送を促進するグリセロールおよび尿素などの溶液中の小分子を輸送する、あるクラスの膜貫通型タンパク質である。
【0006】
腎臓などにおける、水または溶質の輸送に関わる上皮内のアクアポリンの主要な機能は、広範に研究されてきた(Deenら、1994)。同様に、アクアポリンは、唾液または涙を産生する外分泌腺において、迅速に同定された。しかし、ヒトの皮膚、特に表皮の増殖層の角化細胞の原形質膜におけるアクアポリン3型すなわちAQP3の発見(SOUGRAT R.ら、J. Invest. Dermatol.、2002)によって、皮膚内への水の調節された流れの重要性が浮き彫りになった。AQP3は、水およびグリセロールを輸送でき、グリセロールは、表面のハイドロリピッドフィルムの形成と角質層の柔軟性および感覚の質の保存の両方において重要な役割を果たす。
【0007】
AQP3の重要性は、マウスにおいて実証された。実際、F遺伝子の不活性化は、低い水分レベル、効果の無いバリア機能、組織再生時間の増加および弾力の減少などの複数の皮膚の欠損を引き起こす(T.Maら、J. Mol. Biol.、2002)。アクアポリン3は、皮膚線維芽細胞において発現し、創傷再生の間、これらの細胞の遊走に関わることが、その後発見された(Cao C.ら、Biochem J.、2006)。一方、アクアポリンは、細胞結合の確立および密着結合型の情報交換を、プラスに調節することによってバリア機能に参加する(Kawedia J.ら、PNAS 104(9)、2007)。
【0008】
角化細胞内のAQP3の水和および含有量は、密接に関連している。したがって、皮膚のAQP3の増加は、表皮の水和を改善する(M. Dumas、J. Drugs Dermatol.、2007年6月)。
【0009】
皮膚の水分喪失は、いくつかの起源、すなわち遺伝性、後天性または環境に関連する起源を有し得る。非常に乾燥した環境において、角質層からの蒸発による水分喪失は顕著であり、細胞間拡散よる補給速度を超えることがある。
【0010】
皮膚が老化する間に、皮膚は乾燥するようになる。したがって、高齢の患者、特に50歳以上の患者において、より低い皮脂分泌、ホルモンの変化または表皮を通る水の流れの減速に関連する乾皮症または粘膜の乾燥の発症がしばしば見られる。次に、皮膚は、ドライスキンの2つの特徴的な症状である掻痒およびツッパリ感を有しやすい。乾燥皮膚を結果としてもたらす後天性の状態の例として、光化学療法誘発性の乾皮症および湿疹が挙げられる。ドライマウスすなわち口腔乾燥症を引き起こす後天性疾患の例として、シェーグレン症候群または頸部放射線療法が挙げられる。最後に、粘膜の乾燥に関わる状態の例として、膣または眼球の乾燥が挙げられる。
【0011】
ドライスキンのための第一の代替処置は、水を結合することができる湿潤剤などの皮膚のバリアを修復することを目的とする局所的生成物を投与することであり、湿潤剤の例としては、NMF(天然保湿因子、フィラグリンのタンパク質分解誘導体)の組成物の中に入る尿素および乳酸、水を保持するための被膜形成剤、または皮膚のバリアを再建することができる薬剤(スクワラン、セラミド、脂肪酸)が、挙げられる。しかし、これらの生成物は、慢性的な脱水を被る皮膚の生物学的欠陥を矯正しない、表面的な作用を有する。
【0012】
この文脈において、その特別な性質の結果として、アクアポリンは、皮膚の水和を改善し、皮膚の乾燥の徴候を減少させるための有望な生物学的標的である。したがって、特許FR2801504は、アジュガツルケスタニカ(Ajuga turkestanica)植物の抽出物を使用することによる皮膚内のAQP3の増加を記載し、結果として皮膚の水和の改善をもたらした。ザクロ抽出物はまた、アクアポリンの活性を刺激し、組織内の水およびグリセロールの輸送を調節する経口または局所的活性薬剤として報告された(FR2874502)。タンパク質、炭水化物およびポリフェノールを同時に含有するイナゴマメの果肉の抽出物全体ならびに皮膚を保湿するためのその使用が、かかる抽出物の作用のメカニズムを示唆することなく、フランス特許2905857において記載された。
【0013】
一方、加水分解によって得られ、植物によって容易に同化される肥料の生成を目的とするイナゴマメ豆タンパク質の抽出物が、すでに開示された(J. Parradoら、Bioresource Technology 99、2008)。開示された抽出物は、低分子量ペプチドが豊富であるが、糖および植物ホルモンもまた豊富である。しかし、植物ホルモンは、植物の成長をモジュレートするポリフェノール化合物であるが、成長、発達、行動または生産などの機能に影響を与える可能性がしばしばあるので、ヒトにおいては内分泌撹乱物質と考えられる。かかる化合物の存在は、化粧品適用または医薬適用を目的とする抽出物において望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】FR2801504
【特許文献2】FR2874502
【特許文献3】フランス特許2905857
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】SOUGRAT R.ら、J. Invest. Dermatol.、2002
【非特許文献2】T.Maら、J. Mol. Biol.、2002
【非特許文献3】Cao C.ら、Biochem J.、2006
【非特許文献4】Kawedia J.ら、PNAS 104(9)、2007
【非特許文献5】M. Dumas、J. Drugs Dermatol.、2007年6月
【非特許文献6】J. Parradoら、Bioresource Technology 99、2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、5kDa未満の分子量を有し、非常に少ないポリフェノール含有量(1%未満)および15%未満の糖含有量を有するペプチドを含有するイナゴマメ豆ペプチド抽出物に関する。この化学組成物は、高度な安全性を有する抽出物を提供し、より高い標的分子活性を結果としてもたらす。このようにして、本発明者らは、本発明の抽出物が、アクアポリン、特にアクアポリン3の発現を促進することを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第一の目的は、アクアポリンの発現のプロモーターとして、ペプチド化合物が5kDa未満の分子量を有するペプチドであること、およびペプチド化合物のポリフェノール含有量が1%未満であることを特徴とする、イナゴマメ(Ceratonia siliqua L.)のペプチド抽出物を提供することである。
【0018】
実際、本発明者らは、イナゴマメのかかるペプチド抽出物が、皮膚に適用される場合、表皮および粘膜の水和ならびにバリア機能を改善し、皮膚再生を刺激することを見出した。これらの性質は、皮膚組織の保護および水ストレスに応じたアポトーシスの減少によって実証された。
【0019】
「皮膚および粘膜の乾燥ならびに皮膚の老化の症状発現を予防し制御することができる活性薬剤」とは、表皮および粘膜の水和ならびにバリア機能を改善するまたは水ストレスを被る細胞もしくは組織内のアポトーシスを減少させることができる任意の物質を意味する。
【0020】
「ペプチド抽出物」とは、大量の水もしくはその他の極性溶媒、またはかかる溶媒の混合物中に溶解されたペプチドに主に代表される化合物の希釈された混合物を意味する。
【0021】
「局所的適用」とは、皮膚または粘膜の表面上に、本発明の活性薬剤または活性薬剤を含有する組成物を適用または塗布する行為を意味する。
【0022】
「生理学的に許容される」とは、本発明の活性薬剤または活性薬剤を含有する組成物が、中毒反応または不耐性を引き起こすことなく、皮膚または粘膜との接触のために適切であることを意味する。
【0023】
「生物学的に活性がある」とは、本発明の活性薬剤に特徴的である活性を、インビボまたはインビトロで有することを意味する。
【0024】
「ペプチド化合物」とは、本発明のペプチド抽出物中に存在するタンパク質およびペプチドの断片を意味する。
【0025】
本発明による特徴的な生物活性は、アクアポリンのタンパク質合成を増加させること(アクアポリンの遺伝子発現の直接的または間接的なモジュレーションによる)またはアクアポリンタンパク質の安定化もしくはメッセンジャーRNA転写物の安定化などのその他の生物学的方法のいずれかによる、アクアポリンの発現を活性化する活性薬剤の能力によってインビトロで決まる。
【0026】
好ましくは、本発明によるアクアポリンは、角化細胞の膜内に存在するアクアポリン3すなわちAQP3である。
【0027】
本発明による活性薬剤は、植物起源のタンパク質から抽出し、続いて、生物学的に活性があるペプチド化合物を放出する、制御された加水分解によって得ることができる。
【0028】
ペプチド抽出物、特に低分子量のペプチド抽出物の使用は、化粧品において多くの利点を有する。出発タンパク質混合物中に前もって存在しなかったペプチド化合物を生成することに加えて、加水分解および精製によって、皮膚化粧品の分野において、より安定性があってより容易に規格化され、アレルギー反応を引き起こさない混合物を得ることが可能になる。
【0029】
植物起源の多数のタンパク質は、それらの構造内に生理活性ペプチドを含有することがある。穏やかな加水分解は、かかるペプチド化合物を放出させる。本発明を実行するために必要ではないが、最初に問題のタンパク質を抽出し、次に加水分解すること、または最初に粗抽出物に加水分解を実行し、次にペプチド化合物を精製することのいずれかが可能である。
【0030】
抽出を実施するために、イナゴマメの種子を使用する(セラトニア(Ceratonia)属の植物)。イナゴマメは、地中海諸国で栽培され、その種子の胚乳画分は、「ローカストビーンガム」という名称で食品産業において使用されている。胚は、種子タンパク質の最も豊かな部分であり、容易に単離できる。
【0031】
当業者にとって既知の任意の抽出または精製方法が、本発明の抽出物の調製のために使用できる。
【0032】
第一のステップにおいて、種子中に含有される胚を粉砕して、粉末または粉を得る。このようにして得られた粉末は、セルラーゼによって前もって処理して、糖、特に不溶性の多糖の除去を促進できる。
【0033】
次に、タンパク質は、従来の変更された方法(Osborne、1924)によって、胚から抽出される。イナゴマメ種子のホモジネートを、ポリビニルポリピロリドン型(PVPP)(0.01〜20%)の不溶性の吸着剤を含有するアルカリ溶液に懸濁し、これはその後の加水分解ステップおよび精製ステップを促進したことが、実際に観察された。特に、フェノール性物質の濃度は、タンパク質と相互作用して、顕著に減少する。次に、タンパク質を、イオン強度を変化させることによって、または媒体を酸性化することによって沈殿でき、可溶性構成成分および核酸を排除する。次に、沈殿物を、例えば、エタノールまたはメタノールなどの有機溶媒によって洗浄し、次に、溶媒を、真空乾燥によって蒸発させる。タンパク質が豊富な沈殿物を、抽出物のより精製された形態を得るために、水または別の溶媒に再度溶解する。
【0034】
抽出はまた、中性または酸性媒体中で、再び、ポリビニルポリピロリドンの存在下で実施できる。濾過ステップ後、次に、沈殿ステップを、塩(塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム)または有機溶媒(アルコール、アセトン)などの従来の沈殿剤を使用して実行する。結果として生じる沈殿物を、水または別の溶媒に再度溶解後、透析によって沈殿剤から分離できる。
【0035】
可溶性の画分は、タンパク質、炭水化物および場合によって脂質を含有し、遠心分離ステップおよび濾過ステップの後に捕集される。次に、この粗溶液を、可溶性ペプチドを生成するために、穏やかな条件下で加水分解する。加水分解は、水による分子の開裂に関わる化学反応と定義され、この反応は、中性、酸性または塩基性媒体において起こり得る。本発明によって、加水分解を、タンパク質分解酵素を用いて、化学的におよび/または有利に実行し、タンパク質分解酵素の例は、植物起源(パパイン、ブロメライン、フィシン)のエンドプロテアーゼを含む。
【0036】
上述と同じ理由で、つまり、ポリフェノール性物質を除去するために、ある量のポリビニルポリピロリドンを、穏やかな加水分解のこの段階で、反応混合物に加えてよい。得られた抽出物を、低分子量ペプチド化合物を選択するために、さらに精製してよい。分取を、限外濾過によっておよび/またはクロマトグラフィー型の方法を用いて、有利に実行できる。
【0037】
この後、水または水含有溶媒の任意の混合物における希釈段階が続く。したがって、本発明による活性薬剤は、水、グリセロール、エタノール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシ化もしくはプロポキシ化ジグリコール、環状ポリオールまたはこれらの溶媒の任意の混合物などの1種または複数の生理学的に許容される溶媒に、有利に溶解される。次に、希釈された活性薬剤は、限外濾過によって滅菌される。
【0038】
この希釈後、乾燥重量2〜5g/kg、ペプチド化合物の濃度1〜10g/l、好ましくは1.5〜3.5g/l、糖濃度0.05〜1g/l、好ましくは0.1〜0.3g/lおよびポリフェノール濃度、乾燥重量に対する1%未満を特徴とする、ペプチド抽出物が得られる。使用される溶媒は、生理学的に許容され、従来から当業者によって使用されており、グリセロール、エタノール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシ化もしくはプロポキシ化ジグリコール、環状ポリオールまたはこれらの溶媒の任意の混合物から選択される。
【0039】
本発明によって得られた抽出物を、当業者によく知られた従来の技術を使用して、その物理化学的な特徴ならびにそのタンパク質ベースおよびペプチドベースの化合物含有量について、質的および量的に分析する。
【0040】
得られた抽出物は、5kDa未満の分子量を有するペプチドからなり、乾燥重量で、糖濃度15%未満およびポリフェノール濃度1%未満を特徴とする。
【0041】
本発明の第二の目的は、生理学的に許容される媒体中に、アクアポリンの発現の活性があるプロモーターとして、本発明によるイナゴマメ豆ペプチド抽出物を、組成物の総重量の0.0001%〜20%の間の範囲の濃度で、好ましくは組成物の総重量の0.05%〜5%の間の範囲の濃度で含む組成物を提供することである。
【0042】
活性薬剤は、リポゾームもしくは化粧品分野において使用される任意のその他のマイクロカプセルなどの化粧品担体または医薬担体中に被包または組み込むか、または粉末状有機ポリマー、タルクおよびベントナイトなどの鉱物基質上に吸着できる。
【0043】
これらの組成物は、特に、水性、含水アルコール性または油性溶液の形態、水中油型もしくは油中水型エマルションまたは多重エマルションで提供でき、皮膚、粘膜、唇および/または角質の付属器への適用のために適切なクリーム、懸濁液、および粉末の形態で提供してもよい。これらの組成物は、多かれ少なかれ流体であってよく、クリーム、ローション、ミルク、セラム、軟膏、ゲル、ペーストまたはムースの形態をとる。これらの組成物はまた、スティックなどの固体形態をとるか、またはエアロゾル形態で皮膚に適用することができる。これらの組成物は、スキンケア製品および/またはスキン用メイクアップとして使用できる。
【0044】
これらの組成物はさらに、適用の対象分野において一般的に使用される任意の添加物、および溶媒、増粘剤、賦形剤、抗酸化剤、着色剤、日焼け止め剤、セルフタンニング剤、顔料、充填剤、保存剤、香料、消臭剤、化粧品活性成分または医薬活性成分、エッセンシャルオイル、ビタミン、必須脂肪酸、界面活性薬剤、被膜形成ポリマー等などの組成物の製剤に必要なアジュバントを含む。
【0045】
全ての場合において、当業者は、これらのアジュバントおよびアジュバントの割合が、本発明による組成物の有利な性質を損なわないように選択されることを確保することになる。これらのアジュバントは、例えば、組成物の総重量の0.01〜20%の間に相当し得る。本発明の組成物がエマルションである場合、脂肪相は、組成物の総重量の5〜80重量%、好ましくは5〜50重量%であり得る。組成物中に使用される乳化剤および共乳化剤は、本分野において従来から使用されているものから選択されることになる。例えば、乳化剤および共乳化剤は、組成物の総重量に基づいて、0.3〜30重量%の範囲の割合で使用できる。
【0046】
本発明によって使用可能な組成物は、経口、非経口または局所的外部の経路を含む、任意の適切な経路によって適用してよく、組成物の製剤は、当業者によって適応させられることになる。
【0047】
有利には、本発明による組成物は、局所的適用に適切な形態で提供される。これらの組成物は、したがって、生理学的に許容される媒体、すなわち、皮膚および角質の付属器に適合性の媒体を含有し、全ての化粧品形態および皮膚科形態を網羅しなければならない。
【0048】
本発明は、一般的に哺乳動物、特にヒトを明らかに対象としている。
【0049】
本発明の活性薬剤は、単独でまたはその他の活性薬剤と組み合わせて使用してよいことが理解される。したがって、本発明による組成物はまた、前記ペプチド抽出物の作用を促進する多様な活性薬剤を含有する。例えば、本発明の組成物は、その他の活性薬剤をグリセロールなどの保湿剤に付随させてよい。この付随は特に有益であり、グリセロール単独での使用と比較した場合、最適な水和効率を提供する。
【0050】
限定することなく、以下の成分もまた、挙げることができる:治癒剤、抗老化剤、抗しわ剤、緩和剤、フリーラジカル捕捉剤、抗UV剤、皮膚の巨大分子合成またはエネルギー代謝を刺激する薬剤、水和剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗炎症剤、麻酔剤、分化、色素沈着または皮膚の色素脱失をモジュレートする薬剤、爪または毛髪の成長を刺激する薬剤。
【0051】
好ましくは、フリーラジカル捕捉剤もしくは抗酸化剤、または皮膚の巨大分子合成を刺激する薬剤、エネルギー代謝を刺激する薬剤、またはメタロプロテイナーゼ阻害剤などの抗しわ活性を有する薬剤を使用することになる。
【0052】
例えば、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10および植物のポリフェノール抽出物すなわちレチノイドから選択される、抗酸化またはフリーラジカル捕捉作用を有するその他の活性成分を追加できる。
【0053】
本発明の組成物はまた、皮膚の巨大分子合成(ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲン)を刺激する、例えばVincienceから「Collaxyl(登録商標)」として販売されているコラーゲンペプチドなどのその他の活性成分を、本発明による活性成分と組み合わせることができる。
【0054】
本発明の第三の目的は、生理学的に許容される媒体中に、医薬品として使用される本発明によるペプチド抽出物を含む医薬組成物を提供することである。本発明による医薬組成物は、アクアポリンの活性が調節されかつ/または刺激されることを可能にする。医薬組成物は、皮膚または粘膜の病的乾燥を予防または処置することを目的としてよい。
【0055】
医薬組成物はまた、湿疹、乾皮症、アトピー性皮膚炎、または口腔、眼球もしくは膣の乾燥などの、皮膚および粘膜におけるアクアポリンの機能障害によって引き起こされる病態を予防または処置することを目的としてよい。
【0056】
本発明のこの実施形態によって、組成物は、医薬使用のため、経口投与に適応させる。したがって、組成物は、錠剤、カプセル剤、硬ゼラチンカプセル剤、チューイングガム剤、そのまま服用できる散剤または即席で液体と混合される散剤、シロップ剤、ゲル剤、および当業者に公知の任意のその他の形態をとることができる。これらの組成物はまた、適用の対象分野において一般的に使用される任意の添加物および溶媒、増粘剤、賦形剤、抗酸化剤、保存剤、その他の医薬活性成分、エッセンシャルオイル、ビタミン、必須脂肪酸等などの、それらの製剤に必要なアジュバントを含む。
【0057】
本発明の第四の目的は、保湿し、バリア機能を改善し、再生する活性薬剤としての、本発明によるイナゴマメ豆ペプチド抽出物(Ceratonia siliqua L.)の化粧品使用である。
【0058】
したがって、本発明のこの目的によって、イナゴマメ豆ペプチド抽出物は、化粧品組成物において、皮膚の水和を改善し、皮膚および粘膜の乾燥を予防または制御するために使用される。
【0059】
本発明のこの同じ目的によって、イナゴマメ豆ペプチド抽出物は、化粧品組成物において、表皮のバリア機能を改善するために使用される。
【0060】
本発明のこの実施形態によって、イナゴマメ豆ペプチド抽出物はまた、化粧品組成物において、全ての種類の外部からの侵襲に対して皮膚および粘膜を保護するために使用できる。
【0061】
「外部からの侵襲」とは、環境によって生成され得る侵襲を意味する。これらは、汚染、紫外線放射、または、界面活性薬剤、保存剤もしくは香料などの刺激性の生成物もまた含み得る。汚染とは、例えばディーゼル粒子、オゾンおよび重金属を原因とする「屋外」汚染と、特にペンキ、接着剤、壁紙(トルエン、スチレン、キシレンもしくはベンズアルデヒドなど)からの溶剤放出、またはさらにタバコの煙が原因であり得る「屋内」汚染の両方を意味する。大気の乾燥もまた、皮膚乾燥の主原因である。
【0062】
イナゴマメ豆ペプチド抽出物は、したがって、日光曝露または乾燥した環境によって皮膚に対して引き起こされる損傷を予防するために、化粧品組成物において活性薬剤として使用できる。
【0063】
皮膚および角質の付属器が患う侵襲はまた、浸透圧における顕著な変動につながり得る、細胞膜全体にわたる電気化学的勾配の不均衡が原因であり得、これは、浸透圧ストレス、したがって、細胞溶解を結果としてもたらし得る。
【0064】
しかし、発明者らは、本発明による活性薬剤が、かかる浸透圧衝撃に対してこれらの細胞を保護するという驚くべき事実を実証した。
【0065】
皮膚はまた、剃毛などの処置によって損傷されることがある。有利には、本発明の目的は、化粧品組成物における、以上に記載された活性薬剤の使用に関するものであり、活性薬剤または活性薬剤を含有する組成物は、剃毛によって皮膚に引き起こされる損傷を予防または処置することを目的とする。
【0066】
本発明のこの実施形態によって、イナゴマメ豆ペプチド抽出物はまた、化粧品組成物において、皮膚再生を刺激するために使用できる。
【0067】
本発明のこの実施形態によって、イナゴマメ豆ペプチド抽出物はまた、化粧品組成物において、予防的におよび/または治癒的に皮膚の老化の症状発現と闘うために、より具体的には光誘発の老化(光老化)と闘うおよび/または予防するために使用できる。老化の皮膚の症状発現とは、しわおよび小じわ、衰えた皮膚、たるんだ皮膚、薄くなった皮膚、弾力および/または皮膚の色合いの欠如、くすんで色あせた皮膚または皮膚の色素沈着斑、毛髪の脱色または爪の染みなどの、老化を原因とする皮膚または角質の付属器の外観における任意の変化を意味するが、例えば、紫外線(UV)への曝露後の皮膚の任意の内部分解などの、変化した外観に体系的に置き換えられない任意の皮膚の内部変化をも意味する。本発明による活性薬剤または活性薬剤を含有する組成物は、特に、皮膚の弾力および張りの喪失と闘うことができる。
【0068】
本発明はまた、皮膚の外観を改善し、皮膚および粘膜の乾燥を予防するまたは闘うための美容処置法に関するものであり、処置される領域に本発明による組成物を適用するステップを含む。
【0069】
本発明はさらに、皮膚の老化および/または光老化の徴候を予防するおよび/または闘うための美容処置法に関するものであり、処置される領域に本発明による組成物を適用するステップを含む。
【0070】
この美容処置法の特定の実施形態はまた、先の記載から明白であろう。本発明のその他の利点および特徴は、非限定的な例証によって与えられる実施例から明白になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0071】
イナゴマメ(Ceratonia siliqua L.)のペプチド抽出物の調製
粉末形態のイナゴマメ豆(Ceratonia siliqua L.)を、水70容に溶解し、pHを、4.5〜5.5の間の値に調整する。
【0072】
不溶性の糖を除去するために、加水分解を、セルラーゼを用いて実施する。この目的のために、2%のCelluclast CL(登録商標)(Novozym)および2%のPolyclar(登録商標)10(ポリビニルピロリドン-PVPP-不溶性)を、反応媒体に加える。次に、反応混合物を、2時間、50℃で加熱し、次に、1時間、80℃で失活させる。炭水化物が豊富な濾過液を、固体の残渣のみを保持するために、濾過ステップを用いて除去する。
【0073】
固体の残渣は、45〜50%の間のタンパク質含有量および20〜30%の間の糖含有量を特徴とする。
【0074】
このようにして得られた乾燥残渣を、2%のPolyclar(登録商標)10の存在下で、水100容に溶解する。混合物を、2M水酸化ナトリウム水溶液によって、8.0〜8.5の間のpHに調整する。
【0075】
タンパク質抽出を改善するために、最初の加水分解を、2%のAlcalase(登録商標)(Novozym)を使用して実行する。加水分解を、55℃での撹拌下、2時間後に達成する。酵素の不活性化を、溶液を、80℃まで2時間加熱することによって実行する。失活させた後で、反応混合物を濾過し、濾過液を捕集する。濾過液は、中間体イナゴマメ豆タンパク質抽出物である。
【0076】
調製のこの段階で、この濾過液のペプチドおよびタンパク質化合物は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(NuPAGE(登録商標)Bis-Tris Pre-cast gels、Invitrogen)を用いて特徴付けられる。この目的のために、濾過液を、70℃で10分間、還元および変性条件下、NuPAGE(登録商標)LDS試料調製用バッファー中で加熱する。抗酸化NuPAGE(登録商標)溶液を、内側容器(陰極)に加えて、電気泳動の間に還元されたタンパク質が再度酸化されるのを防止する。タンパク質遊走を、NuPAGE(登録商標)MES泳動バッファー中で、分子量標準(SeeBlue Plus2)の存在下で実施する。タンパク質染色を、Coomassie(登録商標)Blue R-250を使用して実施する。得られたタンパク質のプロファイルは、濾過液のペプチドおよびタンパク質化合物の分子量が、50〜10kDaの間の範囲であることを示す。
【0077】
次に、中間体イナゴマメ豆タンパク質抽出物を、2%のPolyclar(登録商標)10の存在下で水100容に溶解する。混合物を、1M塩酸の水溶液を使用して、4〜5の間のpH単位まで調整する。
【0078】
次に、タンパク質の加水分解ステップを、エンドプロテアーゼを使用して実行する。この目的のために、2%のブロメラインを、反応媒体に加える。加水分解を、2時間、50℃で撹拌後に達成する。酵素の不活性化を、80℃まで2時間溶液を加熱することによって実行する。
【0079】
このようにして得られた抽出物の精製に続いて、明るい透明な溶液を得るために、空隙率を(0.2μmまで)減少させたSeitz-Orion濾過プレートを使用して、連続的な濾過を行う。この一連の濾過ステップ後に、イナゴマメ豆抽出物は、乾燥重量20〜25g/kg、タンパク質含有量10〜15g/l、糖レベル5〜6g/l、アミノ酸含有量1〜2g/lおよび総ポリフェノール含有量0.5〜1g/lを特徴とする。タンパク質を、特定の比色法(ローリー法)を用いてアッセイする。
【0080】
この抽出物のタンパク質プロファイルを、ゲル電気泳動法によって分析する。上述と同一の条件下で、2つの巨大タンパク質ファミリーが観察され、第一の小規模のファミリーは、25〜20kDaの間の分子量を有するタンパク質に相当し、第二のよりはるかに大規模なファミリーは、5kDa未満の分子量を有するタンパク質に相当する。
【0081】
次に、この抽出物を、接線流濾過ステップによって、分子量が5kDaを超えるタンパク質を排除することによって精製する。その目的のために、イナゴマメ豆抽出物を、加圧下、30-kDa Pellicon(登録商標)2Biomaxカセットを装備したPellicon(登録商標)ホルダーによって汲み上げる。最初の濾過液を回収し、次に、別の5-kDa Pellicon(登録商標)2Biomaxカセットによって再度濾過する。
【0082】
精製が完了したとき、黄色がかったオレンジ色の明るく透明なイナゴマメ豆抽出物が得られる。抽出物は、乾燥重量8〜9g/kg、タンパク質含有量6〜7g/l、糖含有量0.3〜0.5g/lの間および総ポリフェノール含有量0.1g/l未満を特徴とする。
【0083】
次に、希釈段階を、乾燥重量2〜5g/kg、ペプチド化合物濃度1.5〜3.5g/l、糖濃度0.1〜0.3g/l(すなわち、15%未満)およびポリフェノール濃度1%未満を特徴とするペプチド抽出物得るために、水-グリセロール混合物中で実行する。
【0084】
この精製および希釈された抽出物は、本発明のイナゴマメ豆ペプチド抽出物に相当する。抽出物は、ペプチド化合物が5kDa未満の分子量を有するペプチドであり、ポリフェノール含有量が1%未満であるという事実を特徴とする。
【0085】
次に、この溶液を、ChemStationのソフトウエアによって作動するHP1100装置を使用して、高圧液体クロマトグラフィーによって分析する。イナゴマメ抽出物の溶出の間に使用されるカラムは、Nucleosil(登録商標)MPN300-5 C4(125×4mn)である。このカラムは、0.2〜25kDaの範囲の分子量を有するタンパク質を、(適切な勾配溶媒によって)クロマトグラフできる。これらのクロマトグラフィー条件下で、いくつかのペプチド画分を単離した。これらの多様な画分を、質量分析法によって分析して、それらの分子ピークを同定した。アミノ酸組成物もまた判定された。アミノ酸組成物は、酸加水分解およびPICT(イソチオシアン酸フェニル)pre-bypassを使用する高圧液体クロマトグラフィーによる同定後に得られる。
【実施例2】
【0086】
浸透圧衝撃に対する実施例1による活性薬剤の保護効果の評価
この研究の目的は、ソルビトール誘発の浸透圧衝撃を被る正常なヒトの角化細胞に対して、実施例1による活性薬剤の保護効果を判定することである。次に、細胞内状態の評価を、MTT生死判別試験を用いて実施する。
【0087】
プロトコル:
培養中の正常なヒトの角化細胞を、浸透圧衝撃の24時間前および浸透圧衝撃の間、実施例1による活性薬剤0.5%、1%および3%の存在下に置いた。高張培養条件は、250mMソルビトールを培養培地に24時間加えることによって達成される。未処置の対照群を作る。
【0088】
次に、細胞生死判別試験を、MTT技術によって行った。MTT剤(3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を使用して、細胞生存率を評価する。角化細胞を、0.1mg/mlのMTT(3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を含有する溶液中でインキュベートする。この化合物を、生細胞によって吸収し、次に、ミトコンドリア内酵素(コハク酸脱水素酵素)によって代謝して、水媒体中で不溶性の紫色の結晶の形態である、青紫色の化合物ホルマザンにする。
【0089】
ホルマザン結晶を、DMSOに溶解し、試料中の生細胞の数に比例する光学密度(OD)を提供する。次に、光学密度の測定を、それぞれの研究試料に対して実施した(ODは、540nmと解読された)。それから、ODは、酵素活性および生細胞の数に直接的に比例する。
【0090】
結果:
細胞が実施例1による活性薬剤によって処置される場合、未処置の細胞と比較して、得られた結果は、浸透圧衝撃を被った細胞の生存率において、投与量に依存した増加を示す。細胞が実施例1による活性薬剤3%によって処置される場合、増加した生存率は、10%を超える。
【0091】
結論:
実施例1による活性薬剤は、浸透圧衝撃を被る正常なヒトの角化細胞を有効に保護する。
【実施例3】
【0092】
誘発された皮膚の脱水に対する実施例1による活性薬剤の保護効果の評価
この研究の目的は、誘発された皮膚の脱水ストレスを被るエクスビボの表皮培養物に対して、実施例1による活性薬剤の保護効果を判定することである。
【0093】
プロトコル:
ヒトの皮膚の生体組織を、粘着テープを用いて剥奪すること(テープ剥奪)によってそれらの角質層から剥奪し、次に、エクスビボの培養液中に維持し、実施例1による活性薬剤の1%溶液によって24時間処置する。角質層の非存在は、重度の脱水を誘発した。ヘマトキシリン-エオシン(H&E)組織切片および染色によって、皮膚構造の質を評価させる。
【0094】
結果:
皮膚切片の観察は、未処置の皮膚生体組織と比較して、実施例1による活性薬剤によって処置された皮膚の生体組織において、細胞ストレスの徴候の顕著な減少および皮膚構造のより良い保存を示す。一方、基底層からの角化細胞の出現は、実施例1による活性薬剤の再生効果を示す。
【0095】
結論:
実施例1による活性薬剤は、脱水誘発ストレスから皮膚を有効に保護する。さらに、実施例1による活性薬剤は、表皮を再生させる。
【実施例4】
【0096】
クローディンおよびケラチンK10の発現に対する実施例1による活性薬剤の促進効果の実証
この研究の目的は、クローディンおよびケラチンK10の発現に対する実施例1による活性薬剤の影響を判定することである。クローディンは、密着結合として知られる細胞間接着構造の主要な膜貫通型タンパク質であり、細胞間情報伝達および表皮接着における役割を果たす。
【0097】
ケラチンK10は、分化した表皮層(顆粒層)の特異的ケラチンであり、皮膚のバリア機能に関与する。タンパク質の量は、ヒトの皮膚の切片への免疫蛍光法によって評価された。
【0098】
プロトコル:
ヒトの皮膚の試料を、気相/液相界面で培養した。実施例1による活性薬剤の1%溶液を、局所的に適用し、次に、試料を、24時間インキュベートする。
【0099】
次に、これらの皮膚の試料を、ホルムアルデヒドによって固定し、その後、パラフィンに埋め込む。次に、2〜3μmの切片を得る。免疫標識を、これらの切片を洗浄およびインキュベートする多様なステップの後で実行する。
【0100】
クローディン-1の免疫標識を、クローディン-1の特異抗体(クローディン-1抗体:ウサギポリクローナル、参照:AM15098、Abcam、200分の1希釈)を用いて達成し、続いて、二次抗体を蛍光マーカー(Alexa Fluor488ロバ抗ウサギIgG、A21206、Molecular Probes、1000分の1)と結合させる。
【0101】
ケラチン10の免疫標識を、ケラチン10に特異的な抗体(K10抗体:マウスモノクローナル参照:LHP1、Novocastra、50分の1希釈)を使用して達成し、続いて、二次抗体を蛍光ラベル(Alexa Fluor488ロバ抗マウスIgG、A21202、Molecular Probes、1000分の1)と結合させる。
【0102】
次に、皮膚切片を、落射蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse E600顕微鏡)によって検査する。
【0103】
結果:
顕微鏡観察は、クローディン-1タンパク質とケラチンK10の両方について、実施例1による1%の活性薬剤によって処置された皮膚、特に表皮の上層において、より強い蛍光を示す。
【0104】
結論:
実施例1による活性薬剤は、特に表皮の上層において、クローディンの発現を強く刺激する。同様に、実施例1による活性薬剤は、ケラチンK10の発現、より一般的には皮膚のバリア機能を強く刺激する。
【実施例5】
【0105】
アクアポリンの発現に対する実施例1による活性薬剤の刺激効果の実証
この研究の目的は、エクスビボの皮膚の試料におけるアクアポリン3の発現に対する実施例1による活性薬剤の影響を判定することである。
【0106】
プロトコル:
ヒトの皮膚の試料を、気相/液相界面で培養する。実施例1による活性薬剤の1%溶液を、局所的に適用し、次に、試料を、24時間または48時間インキュベートする。
【0107】
次に、これらの皮膚の試料を、ホルムアルデヒドによって固定し、その後、パラフィンに埋め込む。次に、2〜3μmの切片を得る。免疫標識を、これらの切片を洗浄およびインキュベートする多様なステップの後で実行する。免疫標識を、アクアポリン3に特異的なポリクローナル抗体(抗アクアポリン3(C-18):ヤギポリクローナル、sc-9885、Santa Cruz、100分の1希釈)を使用して実施し、続いて、二次抗体を蛍光マーカー(Alexa-fluor488ロバ抗ヤギIgG、Molecular Probes、1000分の1希釈)と結合させる。次に、皮膚切片を、落射蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse E600顕微鏡)によって検査する。
【0108】
顕微鏡観察は、未処置の対照と比較して、実施例1による1%の活性薬剤によって処置された皮膚、特に表皮の上層において、より強い蛍光を示す。
【0109】
結論:
実施例1による活性薬剤は、特に表皮の上層において、アクアポリン3の発現を刺激する。
【実施例6】
【0110】
成人のヒトの表皮の形態に対する実施例1による活性薬剤の効果の実証
この研究の目的は、皮膚構造の質に対する実施例1による活性薬剤の効果を判定するために、成人のヒトの表皮の形態を分析することである。
【0111】
プロトコル:
ヒトの皮膚の生体組織を、気相/液相界面で培養し、実施例1による活性薬剤の1%または3%溶液によって、24時間、局所的に処置する。次に、皮膚生体組織を、パラフィンに埋め込み、厚さ3μmの組織切片を作る。切片を、Superfrost Plusスライド(Menzel Glaser、Thermo Scientific)上に置き、次に、キシレンにおいて脱パラフィンし、一連のアルコール-水溶液において、再度水和する。次に、切片を、50%のヘマトキシリンによって3分間染色し、すすぎ、次に、60%のエオシンによって3分間染色し、水によってすすぐ。次に、切片を脱水し、Eukitt装置に納め、光学顕微鏡法によって検査する。
【0112】
結果:
活性薬剤によって処置された皮膚の組織切片は、角質層がより厚く、より粘着性があることを示す。縦軸に沿ってより良好に配向し、より均一に現れる、基底層細胞のより大きな密度もまた、見ることができる。
【0113】
結論:
実施例1による活性薬剤は、全体としての表皮の形態を改善する。
【0114】
【表1】

【0115】
作業方法:
脂肪相の成分の重量を量り、撹拌下で70℃まで加熱する。B相を調製し、70℃まで加熱する。A相をB相中へ乳化する。D相を、撹拌下、約50℃で加える。40℃より低い温度で活性薬剤を加える(D相)。芳香を付け、室温まで冷却する。
【0116】
【表2】

【0117】
作業方法:
A相の重量を量り、撹拌下で75℃まで加熱する。B相を調製し、75℃まで加熱する。ローター-ステーターを使用して、勢いよく混合することによって、B相をA相中へ乳化する。
【0118】
数分間ホモジナイズする。勢いよく撹拌しながら、氷水浴によって急冷する。C相を、約50℃で加え、40℃で香料(D相)を加える。室温まで冷却し続ける。
【0119】
【表3】

【0120】
作業方法:
必要量の水の中へ個々に成分を組み込み、十分に溶解するまで撹拌する。必要な場合、pHを約5.5まで再調整する。製剤過程の最後に活性成分を組み込む。穏やかな撹拌下で、水溶性のフレグランスによって芳香を付ける。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含有するペプチド化合物が5kDa未満の分子量を有するペプチドであること、およびポリフェノール含有量が1%未満であることを特徴とする、アクアポリンの発現を促進するためのイナゴマメ豆ペプチド抽出物(Ceratonia siliqua L.)。
【請求項2】
水、グリセロール、エタノール、プロパンジオール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、エトキシ化もしくプロポキシ化ジグリコール、環状ポリオールまたはこれらの溶媒の任意の混合物などの1種または複数の生理学的に許容される溶媒中で可溶化されることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド抽出物。
【請求項3】
1.5〜3.5g/lの間のペプチド化合物を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載のペプチド抽出物。
【請求項4】
0.1〜0.3g/lの間の糖を含有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のペプチド抽出物。
【請求項5】
生理学的に許容される媒体中に、アクアポリンの発現を促進するための活性薬剤として、請求項1から4のいずれか一項に記載のペプチド抽出物を、組成物の総重量の0.0001%〜20%の間の範囲の濃度で、好ましくは、組成物の総重量の0.05%〜5%の間の範囲の濃度で含む化粧品組成物。
【請求項6】
局所的適用に適切な形態で提供されることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
治癒剤、抗老化剤、抗しわ剤、緩和剤、フリーラジカル捕捉もしくは抗酸化剤、抗UV剤、保湿剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗炎症剤、麻酔剤、皮膚の巨大分子合成もしくはエネルギー代謝を刺激する薬剤、皮膚分化、色素沈着もしくは色素脱失をモジュレートする薬剤、爪もしくは毛髪の成長を刺激する薬剤、またはメタロプロテイナーゼの阻害剤から選択される、少なくとも1種のその他の活性薬剤をさらに含むことを特徴とする、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
生理学的に許容される媒体中に、医薬品としての使用のための、請求項1から4のいずれか一項に記載のペプチド抽出物を含む医薬組成物。
【請求項9】
湿疹、乾皮症、アトピー性皮膚炎、または口腔、眼球もしくは膣の乾燥などの、皮膚または粘膜の病的乾燥を予防または処置するための、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
保湿し、バリア機能を改善し、再生する活性薬剤としての、請求項1から4のいずれか一項に記載のイナゴマメ豆ペプチド抽出物(Ceratonia siliqua L.)の化粧品使用。
【請求項11】
皮膚および粘膜を外部からの侵襲から保護するための組成物における、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
老化または光老化の症状発現と予防的におよび/または治癒的に闘うための化粧品組成物における、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
しわおよび小じわと予防的におよび/または治癒的に闘うための化粧品組成物における、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
皮膚の弾力および張りの喪失と予防的におよび/または治癒的に闘うための化粧品組成物における、請求項10に記載の使用。
【請求項15】
請求項5から7のいずれか一項に記載の組成物が、処置される皮膚または粘膜へ局所的に適用されることを特徴とする、皮膚の外観を改善し、皮膚および粘膜の乾燥を予防するおよび/または闘うための美容処置法。

【公表番号】特表2013−515704(P2013−515704A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545368(P2012−545368)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000855
【国際公開番号】WO2011/077017
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(511239100)アイエスピー・インヴェストメンツ・インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】