説明

アクセスゲートウェイ装置の制御方法及び通信システム

【課題】制御プレーンとユーザプレーンを分離したアクセスゲートウェイ装置に最適な冗長化構成を提供する。
【解決手段】複数のネットワークの間で通信経路を確立してデータの転送を行うアクセスゲートウェイ装置は、複数のネットワークから制御信号を受信して、通信経路を確立してデータの転送用情報を決定する制御計算機と、制御計算機から転送用情報を受信して転送用情報の通信経路によってデータ転送を行う転送用計算機とを含み、転送用計算機は、データ転送を実行する複数の第1の転送用計算機と、複数の第1の転送用計算機のいずれかに障害が発生したときに、障害が発生した第1の転送用計算機の処理を引き継ぐ第2の転送用計算機とを有し、制御計算機は、複数のネットワークから受信した制御信号を処理する第1の制御計算機と、第1の制御計算機に障害が発生したときに、当該第1の制御計算機の処理を引き継ぐ第2の制御計算機を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークシステムにおいて、ユーザのアクセス制御を行うアクセスゲートウェイ装置に関する。特に、主に制御信号を処理する制御用アクセスゲートウェイ装置(C−AGW装置)と、主にユーザパケット転送を処理する複数のユーザ用アクセスゲートウェイ装置(U−AGW装置)から構成されるアクセスゲートウェイ装置における冗長化制御と呼救済方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロードバンドインターネットサービスの普及や第三世代携帯端末の普及によって、日時を問わず数多くの利用者がさまざまなサービスを利用している。一方、サービス提供者となるキャリアは年々増加する加入者を収容可能としかつ増大するデータアクセス回線に対してもサービス停止なく対応可能なアクセスネットワークシステムの構築が重要となっている。移動体無線アクセス通信の分野においても、セッション数の増大と無線通信帯域の向上に伴って、無線基地局(BS)を収容するアクセスゲートウェイ装置の処理能力の大幅な向上が求められている。このようなアクセスゲートウェイ装置としては、例えば、非特許文献1に記載されるものが知られている。
【非特許文献1】3rd Generation Partnership Project 2、「Basic IP Service for Converged Access Network Specification」、2007年12月19日、第4.4節及び第4.6節
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のような背景を鑑みて、第三世代移動体通信の標準化団体である3GPP2(3rd Generation Partnership Project 2) のUMB/CAN(Ultra Mobile Broadband/ Converged Access Network)等の無線アクセスネットワークにおいて、制御メッセージを扱う制御プレーンとユーザデータを扱うユーザプレーンの分離が進められ、上記非特許文献1の4.4節、4.6節には、アクセスゲートウェイ装置(AGW)でデータ(ユーザデータ)経路とシグナリング(制御信号)経路を分離することが開示されている。
【0004】
また、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)システムのアクセスゲートウェイであるアクセスサービスゲートウェイ(ASN−GW)においても「WiMAX Forum NWG_R1_V1.2-Stage-2-Part1」の第6.3.5節に、制御プレーンとユーザデータを扱うユーザプレーンの分離に関して開示されている。
【0005】
このWiMAXにおけるネットワークシステムの構成は、例えば、図28に示す構成が知られている。図28に示すように、WiMAXにおけるネットワークシステムは、携帯端末(図中MS:Mobile Station)8と、携帯端末8と通信を行う複数の基地局(BS:Base Station)7a、7b、7cと、認証装置2及びホームエージェント(HA)3を備えたコアネットワーク1と、基地局7a〜7cとコアネットワーク1との間で制御信号とユーザデータの転送を行うアクセスゲートウェイ装置(AGW:Access Gate Way)4xと、を備える。
【0006】
アクセスゲートウェイ装置4xは、基地局7a〜7cとコアネットワーク1との間で制御信号(シグナリング)を処理する制御信号用アクセスゲートウェイ(C−AGW)5と、基地局7a〜7cとコアネットワーク1のホームエージェント3との間でユーザデータを転送するユーザデータ用アクセスゲートウェイ(U−AGW)6を分離して備える。
【0007】
上記図28の構成において携帯端末8の接続シーケンスの一例は、図29で示すようになる。図29は図28のWiMAXにおける接続シーケンス図で、縦軸は時間を示し、横軸は各装置を示す。なお、以下の説明では基地局7a〜7cの総称を基地局7とする。
【0008】
まず、ステップS1では、携帯端末8が初期レンジングを基地局7との間で行ってから、ステップS2で携帯端末8が基地局7を介してアクセスゲートウェイ装置4xのC−AGW5に通信速度(伝送容量)や変調方式の要求を行い、C−AGW5が基地局7の通信状態などに応じて通信速度を携帯端末8へ割り当てる能力交渉(Basic Capabilities Negotiation)を実行する。
【0009】
次に、基地局7は携帯端末8からの接続要求を契機に、所定のID(MSID:Mobile Station ID及びBSID:Base Station ID)によりアクセスゲートウェイ装置4xのC−AGW5に対して接続要求を行い(S3)、C−AGW5は携帯端末8からの接続要求を認証装置2に問い合わせて、認証を実施する(S4)。認証が完了すると、C−AGW5は携帯端末8のエンドポイントまでのデータパスについてホームエージェント3とおよび基地局7との間でネゴシエーションを実施する(S5、S6)。基地局7との間のデータパス確立にはBSIDとトンネルエンドポイント(TunnelEndPoint)を指定してデータパスの交渉を開始する。C−AGW5では、トンネルエンドポイントにU−AGW6のアドレスを設定することで、基地局7との間のユーザデータの終端ゲートウェイ装置を指定することができる。また、C−AGW5はホームエージェント3との間でP-MIP(Proxy Mobile IP)接続交渉を行って、ユーザデータの転送経路(MIPトンネル)を決定する。このとき、P-MIPの制御信号はU−AGW6を経由して折衝することにより、ホームエージェント3との間のユーザデータの終端ゲートウェイ装置をU−AGW6にすることができる。そして、ステップS7では、C−AGW5が上記決定した転送経路(データパス)をU−AGW6に通知する。U−AGW6は、C−AGW5から通知されたデータパスによって、携帯端末8及び基地局7とホームエージェント3の間でユーザデータの転送を実行する(S8)。U−AGW6は、図29で示すように、基地局7との間にGRE(Generic Routing Encapsulation)トンネルを設定し、また、U−AGW6は、ホームエージェント3との間にMIPトンネルを設定してユーザデータの転送を実行する。
【0010】
上記図28、図29のWiMAXでは、アクセスゲートウェイ装置4xで制御信号を扱う制御プレーンとユーザデータを扱うユーザプレーンを分離し、C−AGW5とU−AGW6に分離した例である。上記のように、1つのアクセスゲートウェイ装置4x内に制御プレーンとユーザプレーンが共存している場合、アクセスゲートウェイ装置4xのプロセッサの処理能力や物理メモリ量に依存して、パケット転送速度やセッション確立時間や最大セッション数が変化する。これを解決するため、図28で示したように制御プレーンとユーザプレーンの分離を行うことによって、制御プレーンを扱う装置(C−AGW)は、より複雑な制御が可能となると共にセッション数の増加にも対応可能となる。また、ユーザプレーン(U−AGW6)はパケット転送だけに処理を集約することができ、煩雑な制御信号がない分、装置のリソースをユーザデータの転送に割り当てることができ、ユーザデータの転送速度を向上させることができる。
【0011】
また、今後のネットワークシステムでは、アクセスゲートウェイ装置の障害によるサービス停止時間(ダウンタイム)を最小限に抑える要求が大きい(特にVoIPサービスなど)。サービスの停止時間を短縮するため、アクセスゲートウェイ装置では様々な冗長構成やセッション救済制御が研究されている。例えば、上記図28に示したアクセスゲートウェイ装置の冗長化構成としては図31、図32、図33に示すアクセスゲートウェイ装置が考えられる。
【0012】
例えば、図31は、N+1個のアクセスゲートウェイ装置で冗長化を図る場合のブロック図である。図31において、複数(N+1個)のアクセスゲートウェイ装置10、14、20を備えて、複数のアクセスゲートウェイ装置10、14を現用系(Active)として稼動させ、1つのアクセスゲートウェイ装置20を待機系として稼動させることが考えられる。なお、図31では、アクセスゲートウェイ装置10、14の2つを示すが、N個のアクセスゲートウェイ装置が存在する例を示しており、1番目のアクセスゲートウェイ装置10のIPアドレスが#1で、N番目のアクセスゲートウェイ装置14のIPアドレスが#Nとなる。現用系のアクセスゲートウェイ装置10、14は、制御信号を処理する制御信号処理部11、15と、ユーザデータを処理するパケット転送処理部13、17と、携帯端末とホームエージェントのセッション情報を格納するセッション情報12、16を有する。なお、セッション情報12、16は、制御信号処理部11,15のメモリに格納することができる。
【0013】
待機系のアクセスゲートウェイ装置20は、現用系と同様に、制御信号を処理する制御信号処理部21と、ユーザデータを処理するパケット転送処理部27と、携帯端末とホームエージェントのセッション情報を格納するN個のセッション情報22〜26を有する。なお、図中のセッション情報は22〜26であるが、N個のセッション情報があるものとする。
【0014】
N個の現用系のアクセスゲートウェイ装置10、14は、各装置のセッション情報12、16を所定の周期毎に待機系のアクセスゲートウェイ装置20に送信する。待機系のアクセスゲートウェイ装置20は、受信したセッション情報22〜26をそれぞれ保持する。なお、待機系のアクセスゲートウェイ装置20が保持するセッション情報22〜26は、最新のセッション情報を保持すればよい。そして、待機系のアクセスゲートウェイ装置20は、N個の現用系のアクセスゲートウェイ装置10、14の障害監視を実行し、障害を検知したときには障害が発生したアクセスゲートウェイ装置から受信して保持しておいたセッション情報とIPアドレスを引き継いで現用系に遷移する。
【0015】
図31のようにN個の現用系と一つの待機系を有する構成では、一対の制御プレーンとユーザプレーンを備えるアクセスゲートウェイ装置をN+1個設けて、N個の現用系のアクセスゲートウェイ装置の呼制御情報の救済を一つの待機系で行う。なお、以下ではN+1個のアクセスゲートウェイ装置による冗長化をN+1冗長化という。
【0016】
次に、図32は、1:1のアクセスゲートウェイ装置の構成を示すブロック図である。に示すアクセスゲートウェイ装置の冗長化構成では、一つの現用系のアクセスゲートウェイ装置30に対して一つの待機系のアクセスゲートウェイ装置35を備える。現用系のアクセスゲートウェイ装置30は、所定の周期毎にセッション情報32を待機系のアクセスゲートウェイ装置35へ送信し、待機系のアクセスゲートウェイ装置35は最新のセッション情報37を保持する。そして、待機系のアクセスゲートウェイ装置35は、現用系のアクセスゲートウェイ装置30の障害監視を実行し、障害を検知したときには現用系のアクセスゲートウェイ装置30から受信して保持しておいたセッション情報37とIPアドレスを引き継いで現用系に遷移する。
【0017】
図32に示したように、一つの現用系を一つの待機系で救済する冗長化構成を、以下の説明では、1対1(Active/Standby)冗長化構成とする。
【0018】
次に、図33に示すアクセスゲートウェイ装置の冗長化構成では、2つの現用系のアクセスゲートウェイ装置40、45が相互に障害監視を実行し、一方の現用系に障害が発生した場合には、他方の現用系が引き継ぐ構成を示す。
【0019】
アクセスゲートウェイ装置40は、セッション情報42を所定の周期毎に他方の現用系となるアクセスゲートウェイ装置45に送信し、また、アクセスゲートウェイ装置45から所定の周期毎に受信したセッション情報43を保持する。アクセスゲートウェイ装置45も、アクセスゲートウェイ装置40と同様に、セッション情報48を所定の周期毎に他方の現用系となるアクセスゲートウェイ装置40に送信し、また、アクセスゲートウェイ装置40から所定の周期毎に受信したセッション情報47を保持する。
【0020】
そして、2つの現用系のアクセスゲートウェイ装置40、45は、相互に障害監視を実行し、障害の発生を検知した場合には、自装置に保持した他方の現用系のセッション情報とIPアドレスを引き継いで、2つのセッション情報と2つのIPアドレスによって処理を継続する。
【0021】
図33に示したように、2つの現用系で相互に障害監視を実行して呼制御情報を救済する冗長化構成を、以下の説明では、1対1(Active/Active)冗長化構成とする。
【0022】
一対の制御プレーンとユーザプレーンを備えたアクセスゲートウェイ装置による冗長化構成としては、図31〜図33で示したように、N+1個冗長化構成、1対1(Active/Standby)冗長化構成または1対1(Active/Active)冗長化構成を想定することができる。
【0023】
ここで、上記のようなアクセスゲートウェイ装置を用いて冗長化を行う場合の問題点は、次のとおりである。
【0024】
N+1個冗長化構成では、待機系のアクセスゲートウェイ装置20が、障害監視を実行する現用系のアクセスゲートウェイ装置10、14の全てのセッション情報22〜26を保持するため、これらのセッション情報22〜26を格納するためのメモリ容量を大きくする必要があり、装置のコストが上昇するという問題があった。特に、アクセスゲートウェイ装置10、14のセッション数が多い場合には、セッション数の多さに応じてメモリ容量を増やす必要があった。
【0025】
さらに、待機系のアクセスゲートウェイ装置20は、現用系の障害発生時に保持していたセッション情報を有効化してからユーザプレーンに転送経路の通知を行い、転送経路の設定が完了するまではユーザデータの転送を行うことができない。このため、待機系のアクセスゲートウェイ装置20が障害の発生から待機系で転送処理が可能となるまでに時間が必要となる。この時間(ダウンタイム)に数秒を要する場合では、アクセスゲートウェイ装置20で電話(VoIP)などの音声サービスを提供すると、音声のとぎれが発生してサービスの品質が低下する、という問題が発生する。
【0026】
また、一つの待機系でN個の現用系のセッション情報を保持する構成となっているため、現用系と待機系からのトラフィックが大きくなり、ユーザデータを転送するための通信帯域が狭くなり、ユーザデータの転送能力が低下するという問題があった。とくに、セッション数が多いネットワークシステムでは、セッション情報の量も大きくなるため、セッション情報の転送によってユーザデータの転送能力が低下することなる。
【0027】
一方、一対の制御プレーンとユーザプレーンを一つの装置に備えるアクセスゲートウェイ装置で1対1(Active/Standby)冗長化構成を行う場合では、待機系の設備のコストが増大することになり、導入費用が高価になるという問題があった。
【0028】
また、一対の制御プレーンとユーザプレーンを一つの装置に備えるアクセスゲートウェイ装置で1対1(Active/Active)冗長化構成を行う場合では、障害が発生した現用系を引き継ぐ他方の現用系は、2つの現用系を実行するために高い処理能力が要求される。このため、設備のコストが増大することになり、導入費用が高価になるという問題があった。
【0029】
このように、一対の制御プレーンとユーザプレーンを一つの装置に備えるアクセスゲートウェイ装置では、装置のコストの増大を抑制しながら障害発生時のダウンタイムを縮小するのが難しいという問題があった。さらに、装置のコストを抑制しながらダウンタイムを縮小し、かつ、ユーザデータの増大に応じてユーザプレーンを増強するのが難しいという問題があった。
【0030】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、制御プレーンとユーザプレーンを分離したアクセスゲートウェイ装置に最適な冗長化構成を提供し、装置のコストを抑制しながら障害発生時のダウンタイムを縮小し、ユーザデータの増大に応じてユーザプレーンの増強を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、第1のネットワークと第2のネットワークとの間で通信経路を確立してデータの転送を行うアクセスゲートウェイ装置の制御方法であって、前記アクセスゲートウェイ装置は、前記第1のネットワークと第2のネットワークから制御信号を受信して、通信経路を確立してデータの転送用情報を決定する制御計算機と、前記制御計算機から前記転送用情報を受信して、前記第1のネットワークと第2のネットワークの間で前記転送用情報に含まれる通信経路によってデータの転送を行う転送用計算機と、を含み、前記転送用計算機は、前記データの転送を実行する複数の第1の転送用計算機と、前記複数の第1の転送用計算機のいずれかに障害が発生したときに、当該障害が発生した第1の転送用計算機の処理を引き継ぐ第2の転送用計算機とを有し、前記制御計算機が、前記複数の第1の転送用計算機のそれぞれに前記決定した通信経路を含む情報をセッション情報として通知する手順と、前記制御計算機が、前記セッション情報を前記複数の第1の転送用計算機の識別子毎にセッション情報格納部へ格納する手順と、前記制御計算機が、前記複数の第1の転送用計算機のうちのいずれかに障害が発生したことを検知する手順と、前記制御計算機が、前記第1の転送用計算機の障害発生を検知したときには、障害が発生した第1の転送用計算機の識別子とアドレスを取得し、当該第1の転送用計算機に設定されたセッション情報を前記セッション情報格納部から取得し、前記第2の転送用計算機に前記取得した識別子とアドレス及びセッション情報を通知する手順と、前記第2の転送用計算機が、記制御計算機から受信した前記識別子とアドレス及びセッション情報を当該第2の転送用計算機に設定し、前記データの転送を引き継ぐ手順と、を含む。
【0032】
また、前記制御計算機は、前記第1のネットワークと第2のネットワークから制御信号を受信して、通信経路を確立してデータの転送用情報を決定する第1の制御計算機と、前記第1の制御計算機に障害が発生したときに、当該障害が発生した第1の制御計算機の処理を引き継ぐ第2の制御計算を有し、前記第2の制御計算機が、前記第1の制御計算機に障害が発生したことを検知する手順と、所定の周期で前記第1の制御計算機のセッション情報を前記第2の制御計算機へ複写する手順と、前記第2の制御計算機が前記第1の制御計算機の障害発生を検知したときには、障害が発生した第1の制御用計算機の識別子とアドレスを取得し、当該第2の制御計算機に前記取得した識別子とアドレスを設定し、前記写したセッション情報に基づいて前記第1の制御計算機の処理を引き継ぐ手順と、をさらに含む。
【発明の効果】
【0033】
したがって、本発明は、制御信号を処理する制御計算機を1:1の冗長化で構成し、データ転送を行う転送用計算機をN+1(またはN+M)で構成し、現用系の転送用計算機を待機系に引き継ぐ際には、制御計算機か待機系の転送用計算機にセッション情報を送信することで迅速に障害の復旧を行うことができる。また、制御計算機を1:1の冗長化とし、転送用計算機をN+1(またはN+M)の冗長化構成とすることで、計算機の台数を必要最低限に抑制して、通信システムの導入コスト及び維持コストを削減できる。また、セッション数や転送するデータ量が増えた場合には現用系の転送用計算機を追加することで対処が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0035】
図1は、本発明の第1の実施形態を示し、無線ネットワークシステムの一例を示すブロック図である。本実施形態の無線ネットワークとしては、例えば、上記従来例に示したWiMAXを採用した例を示す。
【0036】
図1において、携帯端末(図中MS:Mobile Station)8と、携帯端末8と通信を行う複数の基地局(BS:Base Station)7a、7b、7cと、認証装置2及びホームエージェント(HA)3を備えてアクセスゲートウェイ装置4と通信を行うコアネットワーク1と、各基地7a〜7c及びコアネットワーク1とアクセスゲートウェイ装置4を接続するルータ400を備え、アクセスゲートウェイ装置(AGW:Access Gate Way)4が基地局7a〜7cとコアネットワーク1との間で制御信号とユーザデータ(データパケット)の転送を行う。
【0037】
アクセスゲートウェイ装置4は、基地局7a〜7cとコアネットワーク1との間で制御信号(シグナリング)を処理する複数の制御信号用アクセスゲートウェイ(以下、C−AGWまたは制御プレーンとする)5a、5bと、基地局7a〜7cとコアネットワーク1のホームエージェント3との間でユーザデータを転送する複数のユーザデータ用アクセスゲートウェイ(以下、U−AGWまたはユーザプレーンとする)6a、6b、6cを分離して備える。そして、各C−AGW5a、5bと各U−AGW6a、6b、6cはスイッチ9に接続される。スイッチ9はルータ400を介してコアネットワーク1に接続されて、アクセスゲートウェイ装置4とコアネットワーク1との間で制御信号とユーザデータを転送する。なお、携帯端末8及び基地局7を第1のネットワークと、コアネットワークを第2のネットワークとすると、アクセスゲートウェイ装置4は制御信号によって第1のネットワークと第2のネットワーク間で通信状態の調停と通信経路の決定をC−AGW5で行い、U−AGW6は決定した通信経路でユーザデータの転送を行うものである。
【0038】
制御信号の処理と、現用系のC−AGWの監視と、U−AGWの監視を行うC−AGWは、通常時に制御信号の処理を行う現用系(Active)のC−AGW5aと、現用系のC−AGW5aに障害が発生したときに現用系C−AGWaの処理を引き継ぐ待機系(Standby)のC−AGW5bとから構成される。なお、以下の説明では、現用系のC−AGW5aと待機系のC−AGW5bの総称をC−AGW5(制御プレーン)とする。
【0039】
ユーザデータの処理を行うU−AGWは、通常時に制御信号の処理を行う現用系(Active)のU−AGW6a、6bと、現用系のU−AGW6aまたは6bの何れかに障害が発生したときにユーザデータの処理を引き継ぐ待機系(Standby)のU−AGW6cとから構成される。なお、以下の説明では、現用系のU−AGW6a、6bと待機系のU−AGW6cの総称をU−AGW6(ユーザプレーン)とする。また、基地局7a〜7cの総称を基地局7とする。
【0040】
本発明のアクセスゲートウェイ装置4では、制御信号の処理を行うC−AGW5を現用系C−AGW5aと待機系C−AGW5bにより1:1の冗長化を行い、現用系C−AGW5aが現用系のU−AGW6a、6bのセッション情報を管理する。さらに、ユーザデータの転送処理を行うU−AGW6をN個の現用系U−AGWと、1つの待機系U−AGW6cによりN+1の冗長化を行うものである。なお、現用系のU−AGW6に対するセッションの割り当ては、現用系のC−AGW5aの制御信号処理プログラム70がセッション数などに応じて現用系のU−AGW6a、6bに割り当てるセッションを決定し、現用系のU−AGW6a、6bに通知する。例えば、現用系のC−AGW5aは、現用系のU−AGW6aと6bで転送を行うセッション数がほぼ等しくなるようにセッションの割り当てを行うことができる。あるいは、現用系のU−AGW6aと6bが転送するデータ量が予め設定したしきい値を超えないように現用系のC−AGW5aがセッションの割り当てを行うことができる。
【0041】
<C−AGWの構成>
次に、C−AGW5の構成について以下に説明する。図2は、C−AGW5の構成を示すブロック図である。現用系のC−AGW5aと待機系のC−AGW5bは同一の構成であり、正常時では機能させるプログラムが異なる。
【0042】
図2において、C−AGW5は、演算処理を行うCPU(プロセッサ)51と、プログラムなどを格納するROM(不揮発性メモリ)50と、ROM50からロードしたプログラムやCPU51が利用するデータを一時的に保持するRAM(揮発性メモリ)52と、スイッチ9に接続されて通信を制御する通信(IP)インターフェース53と、管理コンソール(図示省略)等から設定情報等を受け付けるユーザーインターフェース54と、上記各部を接続する内部ネットワーク53(または内部バス)を備えた計算機(制御計算機)で構成される。
【0043】
ROM50には、携帯端末8や基地局7及びコアネットワーク1からの制御信号を処理し、ユーザデータの転送経路を決定する制御信号処理プログラム70と、現用系のC−AGW5aを監視するC−AGW監視処理プログラム76と、現用系のU−AGW6を監視するU−AGW監視処理プログラム75を格納する。
【0044】
RAM52には、CPU51が実行するプログラムをロードし、さらに、現用系のU−AGW6a、6b毎にセッション情報71を格納する。なお、一般的に無線ネットワークでは、無線帯域の有効利用を図るため、端末の接続状態に対してアクセスゲートウェイ上で管理するセッション情報は大きく2つに大別される。移動端末が通信可能である状態または通信中の状態のセッション情報をアクティブセッション情報と定義し、この時のアクセスゲートウェイは、基地局およびHAとの間に転送経路(データパス)を確立している状態である。一方、移動端末が省電力状態または長時間無通信である場合の状態のセッション情報をアイドルセッション情報と定義し、この時のアクセスゲートウェイは、HAとの間のみ転送経路を確立している状態である。アイドル状態である最中にHAより移動端末宛てのユーザパケットを受信した場合、アクセスゲートウェイは無線ネットワーク特有のPaging機能を利用して、移動端末をアクティブ状態に遷移させ、基地局との間に再度転送経路を確立する。
【0045】
C−AGW5では、U−AGW毎のセッション情報71を、移動端末の通信状態に応じて区分けして格納する。例えば、通信を実行しているセッション情報をアクティブ情報711として記憶し、通信を休止(または携帯端末8の省電力モード)しているセッション情報をアイドル情報712として記憶し、通信状態に応じてセッション情報を区分けする。
【0046】
現用系のC−AGW5aは、制御信号処理プログラム70とU−AGW監視処理プログラム75をRAM52にロードしてCPU51で実行する。待機系のC−AGW5bは、C−AGW監視処理プログラム76をRAM52にロードしてCPU51で実行する。そして、待機系のC−AGW5bのC−AGW監視処理プログラム76が現用系のC−AGW5aの障害を検知すると、後述するように制御信号処理プログラム70とU−AGW監視処理プログラム75を起動し、現用系のC−AGW5aから取得しておいたセッション情報71に基づいて現用系の処理を引き継ぐ。なお、障害の検知は、公知の手法を用いればよく、例えば、待機系のC−AGW5bの監視処理プログラム76は所定の監視周期でWatchDoc要求を現用系のC−AGW5aに送信して現用系のC−AGW5aからのWatchDoc応答を監視し、所定の障害判定時間が経過してもWatchDoc応答がない場合に現用系のC−AGW5aの障害発生を判定する。そして、待機系のC−AGW5bのC−AGW監視処理プログラム76は、現用系のC−AGW5aから処理の引き継ぎを実行する。
【0047】
制御信号処理プログラム70の処理内容は、上記課題に示した図29の処理と同様であり、携帯端末8からの接続要求に応じて認証装置2で認証を行い、ホームエージェント3との間でP-MIP(Proxy Mobile IP)の接続交渉を行って、ユーザデータの転送経路(MIPトンネル)を決定する。また、基地局7との間でデータパス設定交渉を行って、ユーザデータの転送経路(GREトンネル)を決定する。そして、制御信号処理プログラム70は、決定した転送経路(データパス)をU−AGW6に通知する。また、制御信号処理プログラム70は、基地局7およびホームエージェント3間で設定したデータパス情報を含むセッション情報71をRAM52に格納する。また、制御信号処理プログラム70は、待機系のC−AGW5bに対してU−AGW毎のセッション情報71を送信し、セッション情報71の複製を待機系のC−AGW5bに格納させる。この処理は現用系のC−AGW5aの制御信号処理プログラム70と、待機系のC−AGW5bのC−AGW監視処理プログラム76で行うことができ、現用系のC−AGW5aの制御信号処理プログラム70が所定の更新周期でセッション情報71を送信し、待機系のC−AGW5bのC−AGW監視処理プログラム76がセッション情報71を受信して、複製をRAM52へ格納しておく。
【0048】
現用系のU−AGW6a、6bは、現用系のC−AGW5aから通知された転送用情報(データパス)によって、携帯端末8及び基地局7とホームエージェント3の間でユーザデータの転送を実行する。
【0049】
現用系のC−AGW5aで実行されるU−AGW監視処理プログラム75は、現用系のU−AGW6a、6bを監視して、障害を検知した場合には待機系のU−AGW6cに障害が発生した現用系のU−AGW6a、6bの処理を引き継ぐように指令する。なお、U−AGW監視処理プログラム75は、上記C−AGW監視処理プログラム76と同様にWatchDoc要求に対するWatchDoc応答の有無に基づいて現用系のU−AGW6の障害を検知する。
【0050】
<U−AGWの構成>
次に、ユーザデータの転送を行うU−AGW6の構成について以下に説明する。図3は、U−AGW6の構成を示すブロック図である。現用系のU−AGW6a、6bと待機系のU−AGW6cは同一の構成であり、正常時では機能させるプログラムが異なる。
【0051】
図3において、U−AGW6は、演算処理を行うCPU(プロセッサ)61と、プログラムなどを格納するROM(不揮発性メモリ)60と、ROM60からロードしたプログラムやCPU61が利用するデータを一時的に保持するRAM(揮発性メモリ)62と、スイッチ9に接続されて通信を制御する通信(IP)インターフェース63と、上記各部を接続する内部ネットワーク63(または内部バス)を備えた計算機(転送用計算機)で構成される。
【0052】
ROM60には、携帯端末8や基地局7及びコアネットワーク1からのユーザデータを指定された転送経路で転送するパケット転送プログラム65と、現用系のC−AGW5aから引き継ぎの指令を受信してパケット転送プログラム65を起動する引き継ぎ処理部67を格納する。
【0053】
RAM62には、CPU61が実行するプログラムをロードし、さらに、現用系のC−AGW5aから受信したユーザデータの転送経路(セッション情報)を転送用情報66として格納する。なお、転送用情報66では、通信中のセッション情報をアクティブ情報661として保持し、通信が休止中のセッション情報をアイドル情報662として保持する。
【0054】
パケット転送プログラム65は、現用系のC−AGW5aから受信した転送用情報66で指定された転送経路で、携帯端末8とホームエージェント3との間でユーザデータ(パケット)を転送する。
【0055】
引き継ぎ処理部67は、現用系のC−AGW5aからユーザデータの転送処理を引き継ぐユーザプレーンの識別子とIPアドレス及びセッション情報71(アクティブ情報711及びアイドル情報712を含む)を受信し、待機系のU−AGW6cに引き継ぎ元の識別子とIPアドレスを設定する。そして、引き継ぎ処理部67は、セッション情報71から転送用情報66を設定し、パケット転送プログラム65を起動する。パケット転送プログラム65は転送用情報66に従ってユーザデータの転送を実施する。
【0056】
現用系のU−AGW6は、上記図29で示したように、基地局7とアクセスゲートウェイ装置4の間にGRE(Generic Routing Encapsulation)トンネルを設定し、また、U−AGW6a、6bは、ホームエージェント3とアクセスゲートウェイ装置4の間にMIPトンネルを設定してユーザデータの転送を実行する。
【0057】
そして、現用系のU−AGW6a、6bの何れかに障害が発生すると、待機系のU−AGW6cは現用系のC−AGW5aから引き継ぐべき現用系のU−AGWの転送用情報66とIPアドレスを受信し、障害の発生した現用系のU−AGWの処理を引き継ぐ。
【0058】
<アクセスゲートウェイ装置内の処理の流れ>
図4は、上記図2、図3に示したC−AGW5とU−AGW6の機能要素の関係を示すブロック図である。図4は、C−AGW5とU−AGW6が正常に稼動している状態を示す。
【0059】
現用系のC−AGW5aでは、制御信号処理プログラム70と、U−AGW監視処理プログラム75が実行され、待機系のC−AGW5bではC−AGW監視処理プログラム76が実行される。現用系のC−AGW5aにはIPアドレスAが設定され、ルータ400を介して基地局7やホームエージェント3と制御信号の処理を行う。
【0060】
U−AGW6は、現用系にN台のU−AGW6(U−AGW6aが現用系の1台目とし、U−AGW6bが現用系のN台目とする)が現用系のU−AGWとして稼動しているものとし、1台の待機系のU−AGW6cが待機する。現用系のU−AGW6aにはIPアドレスBが設定され、現用系のU−AGW6bにはIPアドレスBが設定される。そして、現用系のU−AGW6a、6bでは、パケット転送プログラム65がそれぞれ稼動しており、ルータ400を介して基地局7やホームエージェント3との間でユーザデータの転送処理を行う。
【0061】
現用系のC−AGW5aの制御信号処理プログラム70は、上述した制御信号の処理を行って、現用系のU−AGW6のそれぞれに転送用情報66を通知し、現用系のU−AGW6のそれぞれのセッション情報71−1〜Nを、アクティブ情報711−1〜Nとアイドル情報712−1〜Nに分けてRAM52へ格納する。そして、制御信号処理プログラム70は、RAM52に格納したU−AGW6毎のセッション情報71−1〜Nを所定の更新周期毎に待機系のC−AGW5bへ送信し、待機系のC−AGW5bではセッション情報71a−1〜Nの複製をRAM52に格納する。なお待機系のC−AGW5bがRAM52には、複写したセッション情報71a−1〜Nとして、アクティブ情報711a−1〜Nとアイドル情報712a−1〜Nを含む。なお、アクティブ情報711−1〜Nの総称はアクティブ情報711とし、アイドル情報712−1〜Nの総称はアイドル情報712とする。
【0062】
上記構成により、待機系のC−AGW5bは、N台分のユーザプレーンのセッション情報71−1〜Nの複製71a−1〜Nを保持することになる。そして、現用系のC−AGW5aは、所定の更新周期でセッション情報71を待機系のC−AGW5bへ送信し、セッション情報の複製71a−1〜Nを最新の情報に更新する。このように制御プレーンでは、1:1の冗長化を行い、セッション情報のミラーリングを行うことにより、制御プレーンのリソースを効率よく利用することができる。また、セッション情報のミラーリングを行っておくことで、複製されたセッション情報71aにより、待機系のC−AGW5bは現用系のC−AGW5aの障害発生から短時間で処理を引き継ぐことができ、音声サービスなどを行うネットワークに使用することができる。
【0063】
また、制御プレーンではユーザデータの転送を行わないので、セッション数が増大してもパケット転送のスループットに影響を与えることなく制御信号の処理を実施することができる。
【0064】
一方、ユーザプレーンでは、N+1の冗長化を行って転送情報の複写は制御プレーンで行うようにしたため、ユーザデータの転送を効率よく行うことができる。
【0065】
図5a〜図5cは、セッション情報71の詳細を示す説明図である。図5aは、セッション情報71の一例を示す説明図である。図5bは、セッション情報71を構成するアクティブ情報711の一例を示す説明図である。図5cは、セッション情報71を構成するアイドル情報712の一例を示す説明図である。
【0066】
図5aで示すように、セッション情報71は、U−AGW6毎の主要な情報(接続に関する制御情報)と、U−AGW6毎のアクティブ情報711を指し示すポインタと、U−AGW6毎のアイドル情報712を示すポインタとから構成される。なお、各ポインタは、C−AGW5aのRAM52上のアドレスを格納する。
【0067】
図5aにおいて、セッション情報71は、C−AGW5aが管理するU−AGW6の識別子を格納するUAGW_ID101と、識別子で指定されたU−AGW6が現用系(Active)または待機系(Standby)のいずれであるかを格納するU−AGW_Status102と、U−AGW6に設定されたIPアドレスを格納するU−AGW_IPアドレス103と、U−AGW6が処理するセッション数の内、通信中のセッション数を格納するActiveセッション数104と、U−AGW6が処理するセッション数の内、休止中のセッション数を格納するIdleセッション数105と、U−AGW6毎のアクティブ情報711の格納先を指し示すポインタ106と、U−AGW6毎のアイドル情報712の格納先を示すポインタ107とからひとつのエントリが構成される。
【0068】
図5bは、セッション情報71のポインタ106で指定されるアクティブ情報711の一例を示す。アクティブ情報711は、ユーザデータを転送する携帯端末8の識別子を格納するMSID110と、携帯端末8のIPアドレスを格納するMSIPアドレス111と、GREトンネル情報を指し示すポインタを格納するGREトンネル情報ポインタ112と、MIPトンネル情報を指し示すポインタを格納するMIPトンネル情報ポインタ113と、携帯端末8に対する課金情報を格納する課金情報ポインタ114と、携帯端末8の通信状態である「Active」を格納するMS_Status115と、携帯端末8の認証情報を指し示すポインタ116と、セッションライフタイム117からひとつのエントリが構成される。
【0069】
上記アクティブ情報711のうち、MSID110〜MS_Status115の情報がU−AGW6に通知される転送用情報66を構成する。
【0070】
図5cは、セッション情報71のポインタ(アイドルセッション情報ポインタ)107で指定されるアイドル情報712の一例を示す。アイドル情報712では、MS_Status115が「Idle」となっている点がアクティブ情報711と異なり、その他の要素はアクティブ情報711と同様である。
【0071】
図6は、U−AGW6がRAM62に保持する転送用情報66の一例を示す説明図である。転送用情報66は、ユーザデータを転送する携帯端末8の識別子を格納するMSID120と、携帯端末8のIPアドレスを格納するMSIPアドレス121と、GREトンネル情報を指し示すポインタを格納するGREトンネル情報ポインタ122と、MIPトンネル情報を指し示すポインタを格納するMIPトンネル情報ポインタ123と、携帯端末8に対する課金情報を格納する課金情報ポインタ124と、携帯端末8の通信状態を格納するMS_Status125からひとつのエントリが構成される。
【0072】
転送用情報66は、上記図5b、図5cのアクティブ情報711とアイドル情報712の転送用情報を格納可能な形式で構成される。転送用情報66は各U−AGW6がそれぞれ保持し、現用系のC−AGW5aから指示された通信先(MSID120)と経路に関する情報で構成される。
【0073】
<制御プレーンのフェイルオーバ>
図7は、現用系のC−AGW5aの稼動中に障害が発生したときの引き継ぎ処理の一例を示すシーケンス図である。図7では、縦軸を時間とし、横軸は基地局7またはホームエージェント3とルータ400と現用系のC−AGW5aと待機系のC−AGW5bと現用系のU−AGW6の各装置を示す。
【0074】
まず、現用系のC−AGW5aは、制御信号処理プログラム70のミラーリング処理(F1)により所定の更新周期(ミラーリングタイマの周期)が経過する度にセッション情報71を待機系のC−AGW5bへ複写するミラーリング要求を発行し、待機系のC−AGW5bは受信したセッション情報71を複製としてRAM52に格納する(S9)。
【0075】
ルータ400を介した基地局7とホームエージェント3の間のユーザデータ(ユーザパケット)の転送は、現用系のU−AGW6で処理が行われる(S10)。また、ルータ400を介して基地局7またはホームエージェント3からの制御信号は、現用系のC−AGW5aで上述したような処理が行われる(S11)。
【0076】
待機系のC−AGW5bでは、C−AGW監視処理プログラム76によりWatchDoc処理(F3)が行われ、所定の監視周期(WatchDocタイマの周期)毎に現用系のC−AGW5aにWatchDoc要求が送信される(S12)。WatchDoc要求を受信した現用系のC−AGW5aは、所定の電文をWatchDoc応答として返信する(S13)。現用系のC−AGW5aが正常に稼動していれば、上記の流れで各処理が繰り返される。
【0077】
一方、現用系のC−AGW5aに障害が発生すると(S14)、待機系のC−AGW5bがWatchDoc要求を送信してから所定の障害判定時間(Replyタイマの周期内)を超えても現用系のC−AGW5aがWatchDoc応答を返信しない。待機系のC−AGW5bは、所定回数までWatchDoc要求を障害判定時間毎に送信する(S15a、S15b)。所定回数のWatchDoc要求を送信しても現用系のC−AGW5aからWatchDoc応答を受信できない場合、待機系のC−AGW5bは、現用系のC−AGW5aに障害が発生したと判定し、引き継ぎ処理(F4)を開始する。
【0078】
待機系のC−AGW5bは、現用系のC−AGW5aに設定されていたIPアドレス(=A)を引き継いだ後、Gratuitous ARPをルータ400に送信する(S16)。これによってルータ400は、IPアドレス(=A)の転送先を待機系のC−AGW5bに変更することができる。その後、待機系のC−AGW5bは、制御信号処理プログラム70とU−AGW監視処理プログラム75を起動して、制御信号の処理とU−AGW6の監視を開始する。
【0079】
待機系のC−AGW5bに制御信号処理が引き継がれた後、ルータ400を介して基地局7またはホームエージェント3から受信した制御信号は待機系のC−AGW5bで処理が行われる。一方、ユーザデータの転送は、現用系のC−AGW5aに障害が発生する以前と同様に、基地局7またはホームエージェント3とルータ400及び現用系のU−AGW6で実施される。
【0080】
以上の処理により、現用系のC−AGW5aに障害が発生すると待機系のC−AGW5bで制御信号の処理を引き継ぐ呼救済処理が完了する。
【0081】
上記図7に示した各処理F1〜F4の詳細について以下に説明する。
【0082】
図8は、現用系のC−AGW5aの制御信号処理プログラム70で行われるミラーリング処理(セッション情報71の転送処理)の詳細を示すフローチャートである。
【0083】
まず、ステップS200では、ミラーリングタイマが所定の更新周期になったか否かを判定し、所定の更新周期になっていればステップS201へ進む。
【0084】
ステップS201では、現用系のC−AGW5aがセッション情報71を待機系のC−AGW5bへ複写するミラーリング要求のメッセージを送信するための送信バッファをRAM52に設定する。
【0085】
ステップS202では、現用系のC−AGW5aがセッション情報71の内容を取得してステップS203〜S206の処理を繰り返してメッセージを生成する。ステップS203では、図5aで示したセッション情報71のU−AGW_ID101にU−AGW6の識別子を格納した送信対象のエントリがなくなるまでステップS204〜S206の処理を繰り返す。セッション情報71に送信対象のエントリが残っていれば、ステップS204に進んでメッセージの生成を行う。一方、セッション情報71のU−AGW_ID101に送信対象のエントリが残っていなければステップS207へ進む。
【0086】
ステップS204では、現用系のC−AGW5aが、図5aに示したセッション情報71のうち、U−AGW_ID101〜アイドルセッション数105の値を送信バッファに複写する。ステップS205では、現用系のC−AGW5aがセッション情報71のアクティブセッション情報ポインタ106で特定されるアクティブ情報711を送信バッファに複写する。ステップS206では、現用系のC−AGW5aがセッション情報71のアイドルセッション情報ポインタ107で特定されるアイドル情報712を送信バッファに複写する。
【0087】
セッション情報71の全てのエントリについてメッセージの生成が完了すると、ステップS207に進んで現用系のC−AGW5aは送信バッファの内容を待機系のC−AGW5bに送信する。現用系のC−AGW5aでは、ミラーリングタイマをリセットして、次回の送信に備える。
【0088】
上記処理により、現用系のC−AGW5aは所定の更新周期毎にセッション情報71を待機系のC−AGW5bに送信する。
【0089】
図9は、待機系のC−AGW5bで実行されるC−AGW監視処理プログラム76が、現用系のC−AGW5aからミラーリング要求のメッセージを受信したときに実行される処理の詳細を示すフローチャートである。
【0090】
待機系のC−AGW5bは、現用系のC−AGW5aからセッション情報71のメッセージを受信すると、RAM52に格納するセッション情報71a−1〜N(図4参照)を更新する。まず、ステップS210では、受信したメッセージの全てのU−AGW_IDについてRAM52への設定が完了していなければステップS211に進んで、次のU−AGW_IDをRAM52のセッション情報71a−1〜Nに設定する。一方、受信したメッセージの全てのU−AGW_IDについてRAM52への設定が完了していれば処理を終了する。
【0091】
ステップS211では受信したメッセージから、図5aに示したセッション情報71のうちU−AGW_ID101〜アイドルセッション数105の値を読み込んで、RAM52のセッション情報71a−1〜Nの値を更新する。
【0092】
ステップS212では受信したメッセージから、図5bに示したアクティブ情報711を読み込んで、アクティブ情報711a−1〜Nを更新する。そして、ステップS213では、アクティブ情報711a−1〜NのRAM52のアドレスを、セッション情報71a−1〜Nのアクティブセッション情報ポインタ106に設定する。
【0093】
ステップS214では受信したメッセージから、図5cに示したアイドル情報712を読み込んで、アイドル情報712a−1〜Nを更新する。そして、ステップS215では、アイドル情報712a−1〜NのRAM52のアドレスを、セッション情報71a−1〜Nのアイドルセッション情報ポインタ107に設定する。
【0094】
以上の処理によって、現用系のC−AGW5aから送られたメッセージから待機系のC−AGW5bは、RAM52上のセッション情報71a−1〜Nを更新して、現用系のC−AGW5aのセッション情報71−1〜Nの複製を保持する。
【0095】
図10は、待機系のC−AGW5bのC−AGW監視処理プログラム76によって実行されるWatchDoc処理F3の詳細を示すフローチャートである。
【0096】
ステップS220では、WatchDocタイマが所定の監視周期までカウントしたか否かを判定し、所定の監視周期が経過していればステップS221へ進む。
【0097】
ステップS221では、待機系のC−AGW5bが現用系のC−AGW5aにWatchDoc要求を送信する。ステップS222では、待機系のC−AGW5bが現用系のC−AGW5aからのWatchDoc応答待ちの処理を開始する。
【0098】
ステップS223では、待機系のC−AGW5bが現用系のC−AGW5aからWatchDoc応答を受信したか否かを判定し、受信していなければステップS224へ進む一方、受信していればステップS227に進む。
【0099】
ステップS227では、待機系のC−AGW5bがWatchDoc応答を受信したので、現用系のC−AGW5aが正常に稼動していると判定してWatchDocタイマをリセットして所定の監視周期のカウントを再開する。
【0100】
一方、ステップS224では、WatchDoc応答待ちとなってからの時間をカウントするReplyタイマの値が、所定の障害判定時間となったか否かを判定する。Replyタイマの値が所定の障害判定時間になっていなければステップS223に戻ってWatchDoc応答を待つ。一方、Replyタイマの値が、所定の障害判定時間を経過していればステップS225に進む。
【0101】
ステップS225では、待機系のC−AGW5bが、WatchDoc応答を受信せずにWatchDoc要求を再送した回数を示すリトライ回数に1を加算する。そして、待機系のC−AGW5bは、リトライ回数が所定回数に到達したか否かを判定する。リトライ回数が所定回数に到達していなければステップS221へ戻ってWatchDoc要求を再送する。一方、リトライ回数が所定回数に到達していればステップS226に進んで、監視対象の現用系のC−AGW5aに障害が発生したと判定する。そして、待機系のC−AGW5bは、現用系のC−AGW5aを引き継ぐ呼救済処理を実施する。
【0102】
上記処理によって、待機系のC−AGW5bは、所定の監視周期でWatchDoc要求を送信し、現用系のC−AGW5aからWatchDoc応答を受信できない場合には、所定の障害判定周期ごとにWatchDoc要求を再送し、再送回数が所定回数に到達すると現用系のC−AGW5aの障害の発生を検知することができる。
【0103】
図11は、待機系のC−AGW5bのC−AGW監視処理プログラム76によって実行される呼救済処理F4の詳細を示すフローチャートである。
【0104】
待機系のC−AGW5bのC−AGW監視処理プログラム76は、現用系のC−AGW5aの障害発生を検知すると、まず、ステップS230で現用系のC−AGW5aのIPアドレスを引き継ぐ。次に、待機系のC−AGW5bはステップS231で制御信号処理プログラム70を起動する。
【0105】
ステップS232では、待機系のC−AGW5bがルータ400にGratuitous ARPを送信し、引き継いだIPアドレス(=A)の転送先を待機系のC−AGW5bに変更する。次に、待機系のC−AGW5bは制御信号処理プログラム70とU−AGW監視処理プログラム75を起動して、制御信号の処理とU−AGW6の監視を実行する。
【0106】
<ユーザプレーンのフェイルオーバ>
図12は、現用系のU−AGW6aの稼動中に障害が発生したときの引き継ぎ処理の一例を示すシーケンス図である。図12では、縦軸を時間とし、横軸は基地局7またはホームエージェント3とルータ400と現用系のC−AGW5aと現用系のU−AGW6aと待機系のU−AGW6cの各装置を示す。なお、図示はしないが、現用系のC−AGW5aと現用系のU−AGW6bの間でも以下に説明する処理が実行される。
【0107】
ルータ400を介した基地局7とホームエージェント3の間のユーザデータ(データパケット)の転送は、現用系のU−AGW6aで転送処理が行われる(S20)。また、ルータ400を介して基地局7またはホームエージェント3からの制御信号は、現用系のC−AGW5aで上述したような処理が行われる(S21)。
【0108】
現用系のC−AGW5aは、U−AGW監視処理プログラム75によりWatchDoc処理(F3)を行い、所定の監視周期(WatchDocタイマの周期)毎に現用系のU−AGW6aにWatchDoc要求を送信する。U−AGW監視処理プログラム75が現用系のU−AGW6に対して実行するWatchDoc処理は、上記図7及び図10に示したC−AGW監視処理プログラム76と同様であり、現用系のC−AGW5aは、所定の監視周期でWatchDoc要求を現用系のU−AGW6a、6bに送信し、現用系のU−AGW6a、6bからWatchDoc応答を受信できない場合には、所定の障害判定周期ごとにWatchDoc要求を再送し、再送回数が所定回数に到達すると現用系のU−AGW6aまたはU−AGW6bの障害の発生を検知するものである。U−AGW監視処理プログラム75のWatchDoc処理については、C−AGW監視処理プログラム76と同様であるので重複した説明を省略する。
【0109】
次に、現用系のC−AGW5aが現用系のU−AGW6aに対するWatchDoc処理の結果、U−AGW6aに障害が発生したことを検知する(S23)。
【0110】
現用系のC−AGW5aは、U−AGW6の引き継ぎ処理を開始する(F5)。この引き継ぎ処理は、現用系のC−AGW5aが、障害の発生した現用系のU−AGW6aの識別子とIPアドレスを取得し、この識別子に対応する全てのセッション情報71(アクティブ情報711及びアイドル情報712)を選択する。そして、現用系のC−AGW5aが待機系のU−AGW6cに対して、上記取得したU−AGW6aの識別子とIPアドレスと、選択した全てのセッション情報71を含むアクティブ要求を送信する(S24)。
【0111】
アクティブ要求を受信した待機系のU−AGW6cは、引き継ぎ処理部67が障害の発生した現用系U−AGW6の引き継ぎ処理を開始する(F6)。待機系のU−AGW6cは、アクティブ要求に含まれる識別子とIPアドレスを取得して自身に設定する。また、待機系のU−AGW6cは、アクティブ要求に含まれるセッション情報71を取得して転送用情報66に設定する。
【0112】
待機系のU−AGW6cの引き継ぎ処理部67は、現用系のC−AGW5aから受信したアクティブ要求に対するアクティブ応答を現用系のC−AGW5aに返信する(S25)。次に、待機系のU−AGW6cは、アクティブ要求に含まれるIPアドレス(障害が発生した現用系のU−AGW6aのIPアドレス)を自身に設定した後、Gratuitous ARPをルータ400に送信することで引き継いだIPアドレス=Bの転送先を待機系のU−AGW6cに変更する。(S26)。
【0113】
そして、待機系のU−AGW6cの引き継ぎ処理部67は、パケット転送プログラム65を起動してユーザデータの転送処理を開始する(S27)。
【0114】
以上のように、現用系のC−AGW5aは現用系のU−AGW6を監視し、現用系のU−AGW6のいずれかに障害の発生を検知したときには、障害が発生したU−AGW6の識別子とIPアドレス及びセッション情報71を含めたアクティブ要求を待機系のU−AGW6cに送信し、待機系のU−AGW6cにパケット転送処理を引き継がせる。
【0115】
次に、上記図12のF5で行われる現用系のC−AGW5aのU−AGW6の引き継ぎ処理について説明する。
【0116】
図13は、現用系のC−AGW5aのU−AGW監視処理プログラム75が実行するU−AGW6の引き継ぎ処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、上記図10で示したように、U−AGW監視処理プログラム75がWatchDoc処理で現用系のU−AGW6の障害を検知したときに実行される。
【0117】
ステップS235では、現用系のC−AGW5aは待機系のU−AGW6cを起動させるためのアクティブ要求のメッセージを送信するための送信バッファをRAM52に設定する。
【0118】
ステップS236では、現用系のC−AGW5aが障害の発生した現用系のU−AGW6の識別子とIPアドレスを取得し、この識別子に対応するセッション情報71を取得する。
【0119】
ステップS237では、障害が発生したU−AGW6の識別子とIPアドレスを送信バッファに設定する。
【0120】
ステップS238では、現用系のC−AGW5aがセッション情報71とセッション情報71のアクティブセッション情報ポインタ106で特定されるアクティブ情報711を取得し、このセッション情報71とアクティブ情報711のうち転送用情報をステップS239で送信バッファに複写する。
【0121】
ステップS240では、現用系のC−AGW5aがセッション情報71のアイドルセッション情報ポインタ107で特定されるアイドル情報712を取得し、ステップS241で、このアイドル情報712のうち転送用情報を送信バッファに複写する。
【0122】
そして、現用系のC−AGW5aは、ステップS242で送信バッファの内容を待機系のU−AGW6cに送信する。
【0123】
上記処理により、現用系のC−AGW5aは障害が発生した現用系のU−AGW6の識別子や転送用情報を含むアクティブ要求を待機系のU−AGW6cに送信する。
【0124】
次に、上記図12のF6で行われる待機系のU−AGW6cにおけるU−AGW6の引き継ぎ処理について説明する。
【0125】
図14は、待機系のU−AGW6cで行われるU−AGW6の引き継ぎ処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、現用系のC−AGW5aからアクティブ要求を受信したときに実行されるもので、引き継ぎ処理部67が処理の主体となる。
【0126】
待機系のU−AGW6cは、ステップS250で現用系のC−AGW5aからのアクティブ要求に含まれるIPアドレスを取得する。
【0127】
次に、ステップS251で待機系のU−AGW6cは、現用系のC−AGW5aから受信したメッセージに含まれるセッション情報71を転送用情報としてRAM62に設定する。
【0128】
ステップS252では、待機系のU−AGW6cがパケット転送プログラム65を起動してアクティブにする。
【0129】
そして、ステップS253では、待機系のU−AGW6cがアクティブ応答を現用系のC−AGW5aに返信する。
【0130】
ステップS254では、待機系のU−AGW6cが、アクティブ要求に含まれるIPアドレスを自身に設定する。次に、待機系のU−AGW6cは引き継いだIPアドレスに対してルータ400が認識している転送先を待機系のU−AGW6cに変更するため、Gratuitous ARPをルータ400に送信する。
【0131】
そして、待機系のU−AGW6cは、起動したパケット転送プログラム65によりユーザデータの転送処理を開始する。
【0132】
以上の処理により、待機系のU−AGW6cは現用系のC−AGW5aからのアクティブ要求を受け付けて、障害が発生した現用系のU−AGW6の処理を引き継ぐ。
【0133】
以上のように、本発明の第1の実施形態によれば、制御プレーンでは1:1の冗長化とし、ユーザプレーンではN+1の冗長化とする。制御プレーンでは、N台分のユーザプレーンのセッション情報71−1〜Nの複製71a−1〜Nを保持することになる。そして、制御プレーンでは、所定の更新周期で現用系のセッション情報71を待機系の複製71a−1〜Nを最新の情報に更新する。制御プレーンでは、全てのユーザプレーンのセッション情報のミラーリングを行っておくことで、複製されたセッション情報71aにより、待機系の制御プレーンは現用系の障害発生から短時間で処理を引き継ぐことができ、音声サービスなどを行うネットワークに使用することができる。そして、制御プレーンはユーザデータの転送を行わないので、セッション数が増大してもパケット転送のスループットに影響を与えることなく制御信号の処理を行うことができる。
【0134】
ユーザプレーンでは、N+1の冗長化を行って転送情報の複写は制御プレーンで行うようにしたため、ユーザデータの転送に特化することでユーザデータのスループットを確保できる。また、セッション数が増大した場合には、ユーザプレーンの現用系の台数を増やすことで容易に対処することができる。
【0135】
また、ユーザプレーンの待機系のU−AGW6cは、正常時には処理を行う必要がないので、コールドスタンバイとしてもよい。この場合、待機系のU−AGW6cの消費電力を抑制することができる。
【0136】
なお、上記では、現用系の制御プレーンの監視や現用系のユーザプレーンの監視にwatchDoc処理を用いた例を示したが、公知または周知の障害監視手法を用いれば良く、例えば、現用系のハートビートを検出して障害の発生を判定するようにしてもよい。
【0137】
<第2実施形態>
図15は、本発明の第2の実施形態を示すシーケンス図である。第2の実施形態では、現用系のU−AGW6から待機系のU−AGW6cに処理を引き継ぐときに、アクティブ情報711を転送用情報66に反映させてユーザデータの転送を復旧してから、アイドル情報712を転送用情報66に反映させるようにしたものである。その他の構成は前記第1実施形態と同様である。
【0138】
図15は、現用系のU−AGW6aの稼動中に障害が発生したときの引き継ぎ処理の一例を示すシーケンス図である。図15では、縦軸を時間とし、横軸は基地局7またはホームエージェント3とルータ400と現用系のC−AGW5aと現用系のU−AGW6aと待機系のU−AGW6cの各装置を示す。なお、図示はしないが、現用系のC−AGW5aと現用系のU−AGW6bの間でも以下に説明する処理が実行される。
【0139】
図12と同様に、ルータ400を介した基地局7とホームエージェント3の間のユーザデータの転送は、現用系のU−AGW6aで処理が行われる(S30)。また、ルータ400を介して基地局7またはホームエージェント3からの制御信号は、現用系のC−AGW5aで上述したような処理が行われる(S31)。
【0140】
図12と同様に、現用系のC−AGW5aは、U−AGW監視処理プログラム75によりWatchDoc処理(F3)を行い、現用系のU−AGW6の監視を行う(S32)。
【0141】
次に、現用系のC−AGW5aの現用系のU−AGW6aに対するWatchDoc処理の結果、U−AGW6aに障害が発生したことを検知する(S33)。
【0142】
現用系のC−AGW5aは、U−AGW6の引き継ぎ処理を開始する(F7)。この引き継ぎ処理は、現用系のC−AGW5aが、障害の発生した現用系のU−AGW6aの識別子とIPアドレスを取得し、この識別子に対応するアクティブ情報711を選択する。
【0143】
そして、現用系のC−AGW5aが待機系のU−AGW6cに対して、上記取得したU−AGW6aの識別子とIPアドレスと、選択したアクティブ情報711を含むアクティブ要求を送信する(S34)。このアクティブ要求を送信する処理は、第1の引き継ぎ処理となる。
【0144】
ここで、前記第1実施形態では、アクティブ情報711にアイドル情報712を加えた全てのセッション情報71を送信したのに対し、第2実施形態では、セッション情報71のうちアクティブ情報711のみを送信する点が特徴である。これは、図2の説明で上述した通り無線ネットワークのセッション状態に着目した内容であり、アクティブ情報711は移動端末8がアクティブ状態(通信中または通信可能状態)のセッション情報であるため、即時に呼救済を行う重要性が大きいためである。一方、アイドル情報712は移動端末8がアイドル状態(省電力モードまたは無通信状態)のセッション情報であるため、引き継ぎ優先度を下げることが可能である。
【0145】
アクティブ要求を受信した待機系のU−AGW6cは、U−AGW6の引き継ぎ処理を開始する(F6)。まず、受信したアクティブ要求のメッセージからアクティブ情報711を抽出し、転送用情報66に設定する。
【0146】
待機系のU−AGW6cは、受信したアクティブ要求に対するアクティブ応答を現用系のC−AGW5aに返信する(S35)。次に、待機系のU−AGW6cは、アクティブ要求に含まれるIPアドレス(障害が発生した現用系のU−AGW6aのIPアドレス)を自身に設定する。次に、待機系のU−AGW6cは引き継いだIPアドレスに対してルータ400が認識している転送先を待機系のU−AGW6cに変更するため、Gratuitous ARPをルータ400に送信する。(S36)。 そして、待機系のU−AGW6cは、パケット転送プログラム65を起動してユーザデータの転送処理を開始する(S37)。なお、ホームエージェント3基地局7からの制御信号はルータ400を介して現用系のC−AGW5aに送信され所定の制御信号処理が行われる(S38)。
【0147】
すなわち、待機系のU−AGW6cは、基地局7や携帯端末8あるいはホームエージェント3が転送を要求したユーザデータを転送するため、アクティブ情報711を転送用情報66に反映させておくことで、現用系のU−AGW6aを引き継いだ待機系のU−AGW6cは、極めて短時間でユーザデータの転送を可能にする。
【0148】
その後、現用系のC−AGW5aは、まだ転送していないアイドル情報712を送信するため、現用系のC−AGW5aは、セッション生成要求のメッセージにアイドル情報712を設定して送信するセッション生成要求処理(F8)を実行する。このセッション生成要求処理(F8)は、第2の引き継ぎ処理となる。そして、現用系のC−AGW5aは、生成したセッション生成要求を、現用系の処理を引き継いで稼動を開始した待機系のU−AGW6cに対して送信する(S39)。
【0149】
セッション生成要求を受信した待機系のU−AGW6cの引き継ぎ処理部67は、セッション生成要求のメッセージに含まれるアイドル情報712を抽出し、転送用情報66に反映させるセッション生成処理F9を実行する。これにより、待機系のU−AGW6cは、アクティブ情報711でユーザデータの転送を再開した後、アイドル情報712を転送用情報66に反映させて処理を引き継いだ現用系の全てのセッション情報71を転送用情報66に反映させることができる。
【0150】
そして、待機系のU−AGW6cは、現用系のC−AGW5aに対してセッション生成要求が完了したことを示すセッション生成応答を返信する(S40)。
【0151】
以上のように、セッション情報71を、ユーザプレーンに設定する情報(アクティブ情報711とアイドル情報712)と、ユーザプレーンを管理する情報(図5aのU−AGW_ID101〜アイドルセッション数105)に分離しておき、さらに、ユーザプレーンに設定する情報をアクティブ情報711とアイドル情報712に分離する。そして、待機系のユーザプレーンが現用系のユーザプレーンを引き継ぐ際には、まず、第1回目の引き継ぎ処理で待機系のユーザプレーンにアクティブ情報711を転送用情報66に反映させることで、携帯端末8とホームエージェント3が必要とするユーザデータの転送を迅速に復旧することができる。その後、待機系のユーザプレーンでユーザデータの転送を再開した後に、第2回目の引き継ぎ処理で、アイドル情報712を待機系のユーザプレーンの転送用情報66に反映させれば、全てのセッションについてユーザデータの転送が可能となる。
【0152】
次に、上記図15のF7〜F9で行われる各処理の詳細について説明する。なお、図15のwatchhDoc処理(F3)、待機系のU−AGW6cの引き継ぎ処理(F6)については、前記第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0153】
図16は、上記図15に示した現用系のC−AGW5aのU−AGW監視処理プログラム75が実行するU−AGW6の第1の引き継ぎ処理(F7)の一例を示すフローチャートである。この処理は、上記図10で示したように、U−AGW監視処理プログラム75がWatchDoc処理で現用系のU−AGW6の障害を検知したときに実行される。
【0154】
ステップS260では、現用系のC−AGW5aは待機系のU−AGW6cを起動させるためのアクティブ要求のメッセージを送信するための送信バッファをRAM52に設定する。
【0155】
ステップS261では、現用系のC−AGW5aが障害の発生した現用系のU−AGW6の識別子とIPアドレスを取得し、この識別子に対応するセッション情報71を取得する。
【0156】
ステップS262では、障害が発生したU−AGW6の識別子とIPアドレスを送信バッファに設定する。
【0157】
ステップS263では、現用系のC−AGW5aがセッション情報71のアクティブセッション情報ポインタ106で特定されるアクティブ情報711を取得し、このアクティブ情報711のうち予め設定された転送用情報をステップS264で送信バッファに複写する。
【0158】
そして、現用系のC−AGW5aは、ステップS265で送信バッファの内容をアクティブ要求として待機系のU−AGW6cに送信する。
【0159】
上記処理により、第1の引き継ぎ処理では、現用系のC−AGW5aは障害が発生した現用系のU−AGW6の識別子とIPアドレス及びアクティブ情報711を含むアクティブ要求を待機系のU−AGW6cに送信する。待機系のU−AGW6cでは、通信中のセッション情報を示すアクティブ情報711のみで、ユーザデータの転送を引き継ぐ。
【0160】
図17は、現用系のC−AGW5aのU−AGW監視処理プログラム75が実行するU−AGW6の第2の引き継ぎ処理(セッション生成要求処理:F8)の一例を示すフローチャートである。この処理は、上記図15で示したように、図16の第1の引き継ぎ処理が完了してから所定時間を経過した後に実行されるものである。または、待機系のU−AGW6cからアクティブ応答を受信した時点で実行することでもよい。 ステップS270では、現用系のC−AGW5aは待機系のU−AGW6cに残りのアイドル情報712を反映させるためのセッション生成要求のメッセージを送信するための送信バッファをRAM52に設定する。
【0161】
ステップS271では、現用系のC−AGW5aが障害の発生した現用系のU−AGW6の識別子とIPアドレスを取得し、この識別子に対応するセッション情報71を取得する。
【0162】
ステップS272では、障害が発生したU−AGW6の識別子とIPアドレスを送信バッファに設定する。
【0163】
ステップS273では、現用系のC−AGW5aがセッション情報71のアイドルセッション情報ポインタ107で特定されるアイドル情報712を取得し、このアイドル情報711のうち所定の転送用情報を送信バッファに複写する。
【0164】
そして、現用系のC−AGW5aは、ステップS274で送信バッファの内容をセッション生成要求として待機系のU−AGW6cに送信する。
【0165】
上記処理により、第1の引き継ぎ処理では、現用系のC−AGW5aは障害が発生した現用系のU−AGW6の識別子とIPアドレス及びアクティブ情報711を含むアクティブ要求を待機系のU−AGW6cに送信する。
【0166】
図18は、待機系のU−AGW6cの引き継ぎ処理部67が現用系のC−AGW5aからセッション生成要求を受信したときに実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【0167】
ステップS375では、待機系のU−AGW6cが受信したセッション生成要求からアイドル情報712を抽出し、転送用情報66に加える。次に待機系のU−AGW6cは、アイドル情報71処理を終了する。
【0168】
以上の第2の引き継ぎ処理により、待機系のU−AGW6cがユーザデータの転送を開始した後に、アイドル情報712を転送用情報66に追加することで、障害が発生したユーザプレーンの全てのセッション情報71を待機系のU−AGW6cに複写する。
【0169】
このように、待機系のユーザプレーンでは、パケット転送プログラム65を起動してから、アクティブ情報711のみを転送用情報66に反映させてユーザデータの転送を開始する。このため、アイドル情報712を転送用情報66に反映させる時間が不要となってユーザプレーンのダウンタイムを短縮できるのである。そして、待機系のユーザプレーンが現用系の処理を引き継いで稼動を開始した後に、アイドル状態となっているセッション(アイドル情報712)について、現用系の制御プレーンがセッション生成要求を発行し、待機系のユーザプレーンの転送用情報66に補充することで、全てのセッション情報71を待機系のユーザプレーンに復元して信頼性を確保する。
【0170】
<第3実施形態>
図19は、第3の実施形態を示し、制御プレーンとユーザプレーンの機能要素の関係を示すブロック図である。図19は、前記第1実施形態に示した現用系のC−AGW5aに、ユーザデータの転送を行うパケット転送プログラム77を稼動可能にしたもので、その他の構成は前記第1実施形態と同様である。
【0171】
現用系のC−AGW5aには、U−AGW6のパケット転送プログラム65と同様のパケット転送プログラム77がROM50に格納される。そして、現用系のC−AGW5aが現用系のU−AGW6に障害が発生したときには、U−AGW監視処理プログラム75がパケット転送プログラム77を起動する。そして、現用系のC−AGW5aのパケット転送プログラム77は障害が発生した現用系のU−AGW6に代わって引き継ぎ処理が完了するまでユーザデータの転送を実行する。
【0172】
そして、現用系のU−AGW6から待機系のU−AGW6cに処理の引き継ぎが完了すると、U−AGW6監視処理プログラム75は、待機系のU−AGW6cのパケット転送プログラム65に、現用系のC−AGW5aで稼動するパケット転送プログラム77の処理を引き継がせてからパケット転送プログラム77を終了させる。
【0173】
この処理の流れを図20を参照しながら以下に説明する。図20は、現用系のU−AGW6aの稼動中に障害が発生したときの引き継ぎ処理の一例を示すシーケンス図である。図20は、縦軸を時間とし、横軸は基地局7またはホームエージェント3と、ルータ400と、現用系のC−AGW5aと、現用系のU−AGW6aと、待機系のU−AGW6cの各装置を示す。なお、図示はしないが、現用系のC−AGW5aと現用系のU−AGW6bの間でも以下に説明する処理が実行される。
【0174】
図20において、ステップS50〜S52は前記第1実施形態の図12に示したS20〜S23と同一であり、現用系のU−AGW6が基地局7またはホームエージェント3とユーザデータの転送を行って、現用系のC−AGW5aが制御信号の処理を実行する。現用系のC−AGW5aでは、所定の監視周期でwatchhDoc処理が行われる。図20の例では、現用系のU−AGW6aに障害が発生したことを現用系のC−AGW5aが検知して、U−AGW6の引き継ぎ処理(F10)を開始する。
【0175】
現用系のC−AGW5aは、パケット転送プログラム77を起動してアクティブにし、障害が発生した現用系のU−AGW6aの識別子とIPアドレスと、識別子に対応するセッション情報71を取得する。そして、現用系のC−AGW5aは、取得したIPアドレスを自身に割り当てて、障害が発生した現用系のU−AGW6aのIPアドレスについてGratuitous ARPをルータ400に送信することでルータ400が認識しているユーザパケットの転送先をC−AGW5aに変更する。(S54)。その後、現用系のC−AGW5aはパケット転送プログラム77と上記識別子に対応するセッション情報71で現用系のU−AGW6aに代わってユーザデータの転送を実行する(S55)
現用系のC−AGW5aは、障害の発生した現用系のU−AGW6aの識別子に対応する全てのセッション情報71(アクティブ情報711及びアイドル情報712を含む)を取得する。そして、現用系のC−AGW5aが待機系のU−AGW6cに対して、上記取得したU−AGW6aの識別子とIPアドレスと、全てのセッション情報71を含むアクティブ要求を送信する(S56)。
【0176】
アクティブ要求を受信した待機系のU−AGW6cは、U−AGW6の引き継ぎ処理を開始する(F6)。待機系のU−AGW6cは、アクティブ要求に含まれる識別子とIPアドレスを取得して自身に設定する。また、待機系のU−AGW6cは、アクティブ要求に含まれる全てのセッション情報71を取得して転送情報66に設定する。
【0177】
待機系のU−AGW6cは、受信したアクティブ要求に対するアクティブ応答を現用系のC−AGW5aに返信する(S57)。上記処理に並行して待機系のU−AGW6cは、アクティブ要求に含まれるIPアドレス(障害が発生した現用系のU−AGW6aのIPアドレス)を自身に設定した後、引き継いだIPアドレスに対してルータ400が認識している転送先を待機系のU−AGW6cに変更するため、Gratuitous ARPをルータ400に送信する(S58)。
【0178】
アクティブ応答を受信した現用系のC−AGW5aaは、障害が発生した現用系のU−AGW6aのIPアドレスについて割り当てを解除し、パケット転送プログラム77を終了させる。
【0179】
そして、待機系のU−AGW6cは、パケット転送プログラム65を起動してユーザデータの転送処理を開始する(S59)。現用系のC−AGW5aは、代理のユーザデータの転送が終了したので、制御信号の処理に専念する(S60)。
【0180】
以上のように、現用系のC−AGW5aは現用系のU−AGW6を監視し、現用系のU−AGW6のいずれかに障害の発生を検知したときには、障害が発生したU−AGW6のユーザデータの転送を代理で実行する。現用系のC−AGW5aは、自身でユーザデータの転送を代理している間に待機系のU−AGW6cに現用系のU−AGW6aを引き継がせる。そして、現用系のC−AGW5aは、待機系のU−AGW6cが障害の発生したU−AGW6aの処理を引き継ぐとパケット転送プログラム77を終了させて通常の制御信号処理を行う。
【0181】
次に、上記図20のF10で行われる処理の詳細について説明する。なお、図20のwatchhDoc処理(F3)、待機系のU−AGW6cの引き継ぎ処理(F6)については、前記第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0182】
図21は、上記図20に示した現用系のC−AGW5aのU−AGW監視処理プログラム75が実行するU−AGW6の引き継ぎ処理(F10)の一例を示すフローチャートである。この処理は、上記図10で示したように、U−AGW監視処理プログラム75がWatchDoc処理で現用系のU−AGW6の障害を検知したときに実行される。
【0183】
ステップS280では、障害が発生した現用系のU−AGW6aの識別子とIPアドレスを取得し、識別子に対応するセッション情報71を取得する。そして、障害が発生したU−AGW6aのIPアドレスを現用系のC−AGW5aに追加で割り当てる。
【0184】
ステップS281では、現用系のC−AGW5aがパケット転送プログラム77を起動してアクティブにする。
【0185】
ステップS282では現用系のC−AGW5aが、上記取得したIPアドレスを自身に割り当てて、障害が発生した現用系のU−AGW6aのIPアドレスについてGratuitous ARPをルータ400に送信する。(S54)。現用系のC−AGW5aはパケット転送プログラム77と上記識別子に対応するセッション情報71で現用系のU−AGW6aに代わってユーザデータの転送を実行する(S55)。
【0186】
そして、現用系のC−AGW5aは、ステップS283で、前記第1実施形態の図12で示した引き継ぎ処理を実行し、アクティブ要求を生成して待機系のU−AGW6cに送信する。
【0187】
ステップS284では、現用系のC−AGW5aが待機系のU−AGW6cからアクティブ応答を受信するまで待機する。アクティブ応答を受信すると、現用系のC−AGW5aは、ステップS285で、ユーザプレーンの代理でユーザデータの転送を行っていたパケット転送プログラム77を無効化(または停止)して処理を終了する。
【0188】
上記処理により、ユーザプレーンの現用系から待機系へ処理の引き継ぎが完了するまでの期間で、制御プレーンの現用系がユーザデータの転送を代理するので、ユーザデータの転送が停止するダウンタイムをさらに短縮することが可能となる。したがって、本発明のアクセスゲートウェイ装置4を音声の品質を保証する必要のあるVoIPなどの音声サービスを含むネットワークに適用することが可能となる。また、大容量セッションを扱うアクセスゲートウェイ装置に適用することで、引き継ぎするセッション情報量に依存せず、呼救済を実施可能となる。
【0189】
<第4実施形態>
図22は、第4の実施形態を示し、前記第1実施形態のユーザプレーンの各現用系のアクティブ情報711の内容を、待機系のU−AGW6cに保持するようにしたもので、その他の構成は前記第1実施形態と同様である。
【0190】
図22は、C−AGW5とU−AGW6の機能要素の関係を示すブロック図である。図22において、C−AGW5は前記第1実施形態と同様の構成であり、待機系のU−AGW6cが、現用系のU−AGW6毎の転送用情報66−1〜Nを保持する点が前記第1実施形態と相違する。また、各現用系のU−AGW6のパケット転送プログラム65は、所定の更新周期になると転送用情報66を待機系のU−AGW6cに送信し、待機系のU−AGW6cは受信した転送用情報で転送用情報66−1〜Nを更新する。
【0191】
待機系のU−AGW6cは、現用系のU−AGW6に障害が発生した通知を現用系のC−AGW5aから受信すると、転送用情報66−1〜Nのうち障害が発生した現用系のU−AGW6の転送用情報66以外を削除して、パケット転送プログラム65を起動してユーザデータの転送処理を引き継ぐ。
【0192】
上記図22に示したアクセスゲートウェイ装置4で行われる現用系のU−AGW6の引き継ぎ処理について以下に説明する。図23は、現用系のU−AGW6aの稼動中に障害が発生したときの引き継ぎ処理の一例を示すシーケンス図である。図23は、縦軸を時間とし、横軸は基地局7またはホームエージェント3と、ルータ400と、現用系のC−AGW5aと、現用系のU−AGW6aと、待機系のU−AGW6cの各装置を示す。なお、図示はしないが、現用系のC−AGW5aと現用系のU−AGW6bの間でも以下に説明する処理が実行される。
【0193】
図23において、ステップS70では、現用系のU−AGW6aがミラーリング処理を実行し、現用系のU−AGW6aが所定の更新周期になる度に待機系のU−AGW6cへミラーリング要求を発行して、転送用情報66のうちアクティブ情報711について待機系のU−AGW6cに複写する。待機系のU−AGW6cは、現用系のU−AGW6aからのミラーリング要求を受け付けて、現用系のU−AGW6毎に転送用情報66のアクティブ情報711を更新して格納する(F12)。
【0194】
ステップS71〜S73は前記第1実施形態の図12に示したS20〜S23と同一であり、現用系のU−AGW6が基地局7またはホームエージェント3とユーザデータの転送を行って、現用系のC−AGW5aが制御信号の処理を実行する。現用系のC−AGW5aでは、所定の監視周期でwatchhDoc処理が行われる。図23の例では、現用系のU−AGW6aに障害が発生したことを現用系のC−AGW5aが検知して(S74)、U−AGW6の引き継ぎ処理(F13)を開始する。
【0195】
この引き継ぎ処理は、現用系のC−AGW5aが、障害の発生した現用系のU−AGW6aの識別子とIPアドレスを取得する。そして、現用系のC−AGW5aが待機系のU−AGW6cに対して、上記取得したU−AGW6aの識別子とIPアドレスを含むアクティブ要求を送信する(S75)。
【0196】
アクティブ要求を受信した待機系のU−AGW6cは、U−AGW6の引き継ぎ処理を開始する(F14)。待機系のU−AGW6cは、アクティブ要求に含まれる識別子とIPアドレスを取得して自身に設定する。また、待機系のU−AGW6cは、アクティブ要求に含まれる識別子に対応する転送用情報66−1〜Nのひとつを選択し、選択した転送用情報66のアクティブ情報711以外を削除する。
【0197】
待機系のU−AGW6cは、受信したアクティブ要求に対するアクティブ応答を現用系のC−AGW5aに返信する(S76)。次に、待機系のU−AGW6cは、アクティブ要求に含まれるIPアドレス(障害が発生した現用系のU−AGW6aのIPアドレス)を自身に設定し、対向するルータ400に対してGratuitous ARPを送信し、引き継ぎIPアドレスの転送先を変更する(S77)。
【0198】
そして、待機系のU−AGW6cは、パケット転送プログラム65を起動し、転送用情報66−1〜Nのうちアクティブ情報711のみに基づいてユーザデータの転送処理を開始する(S78)。
【0199】
この場合も、待機系のU−AGW6cは、基地局7や携帯端末8あるいはホームエージェント3が転送を要求したユーザデータを迅速に転送するため、アクティブ情報711のみを優先して転送用情報66に反映させておくことで、現用系のU−AGW6aを引き継いだ待機系のU−AGW6cは、極めて短時間でユーザデータの転送を再開できる。
【0200】
その後、現用系のC−AGW5aは、まだ転送していないアイドル情報712を送信するため、現用系のC−AGW5aは、セッション生成要求のメッセージにアイドル情報712を設定して送信するセッション生成要求処理(F8)を実行する。そして、現用系のC−AGW5aは、生成したセッション生成要求を、現用系の処理を引き継いで稼動を開始した待機系のU−AGW6cに対して送信する(S79)。
【0201】
セッション生成要求を受信した待機系のU−AGW6cは、セッション生成要求のメッセージに含まれるアイドル情報712を抽出し、転送用情報66に反映させるセッション生成処理(F9)を実行する。これにより、待機系のU−AGW6cは、アクティブ情報711でユーザデータの転送を再開した後、アイドル情報712を転送用情報66に反映させて処理を引き継いだ現用系の全てのセッション情報71を転送用情報66に反映させることができる。
【0202】
そして、待機系のU−AGW6cは、現用系のC−AGW5aに対してセッション生成要求が完了したことを示すセッション生成応答を返信する(S80)。
【0203】
以上のように、セッション情報71のうちユーザプレーンに設定する情報(アクティブ情報711とアイドル情報712)と、ユーザプレーンを管理する情報(図5aのU−AGW_ID101〜アイドルセッション数105)に分離しておき、さらに、ユーザプレーンに設定する情報をアクティブ情報711とアイドル情報712に分離する。そして、待機系のユーザプレーンが現用系のユーザプレーンを引き継ぐ際には、まず、待機系のユーザプレーンにアクティブ情報711を転送用情報66に反映させることで、携帯端末8とホームエージェント3が必要とするユーザデータの転送処理を迅速に復旧することができる。その後、待機系のユーザプレーンでユーザデータの転送処理を再開した後に、アイドル情報712を待機系のユーザプレーンの転送用情報66に反映させれば、全てのセッションについてユーザデータの転送が可能となる。
【0204】
次に、上記図23で行われる各処理の詳細について説明する。なお、図23のwatchhDoc処理(F3)、セッション生成要求のメッセージにアイドル情報712を設定して送信する処理(F8)、セッション生成要求を待機系のU−AGW6cに反映させる処理(F9)については、前記第1及び第2実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0205】
図24は、上記図23の現用系のU−AGW6aのパケット転送プログラム65で行われる転送用情報66のミラーリング処理(F11)の一例を示すフローチャートである。
【0206】
まず、ステップS290では、現用系のU−AGW6aのミラーリングタイマが所定の更新周期になったか否かを判定し、所定の更新周期になっていればステップS201へ進む。
【0207】
ステップS291では、現用系のU−AGW6aは、転送用情報66のうちアクティブ情報711のみを待機系のU−AGW6cへ複写するミラーリング要求のメッセージを送信するための送信バッファをRAM62に設定する。
【0208】
ステップS292では、現用系のU−AGW6aは、自身の識別子を取得して送信バッファに設定する。次に、ステップS293では、現用系のU−AGW6aが転送用情報66のうちアクティブ情報711のみを取得してステップS294〜S296の処理を繰り返してミラーリング要求のメッセージを生成する。
【0209】
ステップS294では、図6で示した転送用情報66のMSID120の識別子を格納した送信対象のエントリがなくなるまでステップS294〜S296の処理を繰り返す。転送用情報66に送信対象のエントリが残っていれば、ステップS295に進んでMS_Status125がアクティブであるかを判定する。MS_Status125がアクティブであれば、ステップS296で当該エントリ(またはレコード)を送信バッファに複写する。一方、MS_Status125がアイドルであれば、ステップS294に戻って処理を繰り返す。
【0210】
ステップS294で全てのエントリについて処理が完了すると、ステップS297で送信バッファの内容をミラーリング要求として待機系のU−AGW6cに送信する。次に、現用系のU−AGW6aは、ミラーリングタイマをリセットして、次回の送信に備える。
【0211】
上記処理により、現用系のU−AGW6aは所定の更新周期毎に転送用情報66のうちアクティブ情報711のみを待機系のU−AGW6aに送信する。
【0212】
次に、上記図23の待機系のU−AGW6cで行われる転送用情報66−1〜Nの更新処理について説明する。
【0213】
図25は、待機系のU−AGW6cで現用系のU−AGW6毎に転送用情報66−1〜Nのアクティブ情報711を更新する処理(F12)の一例を示すフローチャートである。この処理は、待機系のU−AGW6cで現用系のU−AGW6aからミラーリング要求を受信する度に実行されるものである。
【0214】
待機系のU−AGW6cは、まず、ステップS300で受信したミラーリング要求からU−AGW6の識別子を抽出する。ステップS301では、受信したミラーリング要求のメッセージに含まれる全ての転送用情報を読み込んだか否かを判定する。全ての転送用情報を読み込んでいなければステップS302へ進んで、対象となる転送用情報をU−AGW6の識別子に対応する転送用情報66−1〜Nに設定する。一方、全ての転送用情報を読み込んでいれば処理を終了する。
【0215】
以上の処理により、ミラーリング要求のメッセージに含まれるアクティブ情報711で、待機系のU−AGW6cが保持するU−AGW6の識別子毎の転送用情報66−1〜Nが更新される。
【0216】
次に、上記図23の現用系のU−AGW6aのU−AGW監視処理プログラム75で行われる第1の引き継ぎ処理であるアクティブ要求送信処理(F13)について説明する。
【0217】
図26は、上記図23に示した現用系のC−AGW5aのU−AGW監視処理プログラム75が実行するU−AGW6の第1の引き継ぎ処理(F13)の一例を示すフローチャートである。この処理は、上記図10で示したように、U−AGW監視処理プログラム75がWatchDoc処理で現用系のU−AGW6の障害を検知したときに実行される。
【0218】
ステップS310では、現用系のC−AGW5aは待機系のU−AGW6cを起動させるためのアクティブ要求のメッセージを送信するための送信バッファをRAM52に設定する。
【0219】
ステップS311では、現用系のC−AGW5aが障害の発生した現用系のU−AGW6の識別子とIPアドレスを取得する。
【0220】
ステップS312では、障害が発生したU−AGW6の識別子とIPアドレスを送信バッファに設定する。
【0221】
ステップS313では、現用系のC−AGW5aが送信バッファの内容をアクティブ要求として待機系のU−AGW6cに送信する。
【0222】
上記処理により、第1の引き継ぎ処理では、現用系のC−AGW5aは障害が発生した現用系のU−AGW6の識別子とIPアドレスを含むアクティブ要求を待機系のU−AGW6cに送信する。待機系のU−AGW6cでは、アクティブ要求に含まれる識別子に対応するU−AGW6の転送用情報66−1〜Nのうち、通信中のセッション情報を示すアクティブ情報711のみで、ユーザデータの転送を引き継ぐ。
【0223】
図27は、上記図23に示した待機系のU−AGW6cの引き継ぎ処理部67が実行するU−AGW6の第1の引き継ぎ処理(F14)の一例を示すフローチャートである。この処理は、上記図10で示したように、現用系のC−AGW5aからアクティブ要求を受信したときに実行される。
【0224】
待機系のU−AGW6cは、ステップS320で現用系のC−AGW5aからのアクティブ要求に含まれる障害が発生した現用系のU−AGW6のIPアドレスを取得する。
【0225】
次に、ステップS321で待機系のU−AGW6cは、障害が発生した現用系のU−AGWの識別子を、現用系のC−AGW5aから受信したメッセージから取得する。
【0226】
ステップS322では、待機系のU−AGW6cは、障害が発生した現用系のU−AGW6以外の転送用情報66−1〜Nを削除する。これにより、待機系のU−AGW6cはRAM62の領域をユーザデータの転送用に確保できる。
【0227】
次に、待機系のU−AGW6cは、がパケット転送プログラム65を起動してアクティブにする。
【0228】
そして、ステップS324では、待機系のU−AGW6cがアクティブ応答を現用系のC−AGW5aに返信する。
【0229】
ステップS325では、待機系のU−AGW6cが、アクティブ要求に含まれるIPアドレスについてGratuitous ARPをルータ400に送信し、ユーザパケットの転送先を変更し、待機系のU−AGW6cは現用系のU−AGW6aのIPアドレス=Bを自身に設定する。
【0230】
そして、待機系のU−AGW6cは、起動したパケット転送プログラム65によりユーザデータの転送処理を開始する。
【0231】
以上の処理により、待機系のU−AGW6cは現用系のC−AGW5aからのアクティブ要求を受け付けて、障害が発生した現用系のU−AGW6の処理を引き継ぐ。
【0232】
本第4実施形態では、ユーザプレーンの現用系から待機系に転送用情報のうちアクティブ情報711のみを複写し、現用系のU−AGW6に障害が発生したときには、待機系で保持していた複数の転送用情報66−1〜Nのうち障害が発生した現用系のU−AGW6以外の転送用情報を削除する。そして、待機系のユーザプレーンは、障害が発生したユーザプレーンのアクティブ情報711のみが残り、このアクティブ情報711のみによってユーザデータの転送処理を引き継ぐ。
【0233】
このように、待機系のユーザプレーンでは、パケット転送プログラム65を起動してから、既に取得しておいたアクティブ情報711のみでユーザデータの転送を開始する。このため、障害が発生した時点からアクティブ情報711を待機系のユーザプレーンへ転送する時間が不要となって、ユーザプレーンのダウンタイムを短縮できるのである。そして、待機系のユーザプレーンが現用系の処理を引き継いで稼動を開始した後に、アイドル状態となっているセッション(アイドル情報712)について、現用系の制御プレーンがセッション生成要求を発行し、待機系のユーザプレーンの転送用情報66に補充することで、全てのセッション情報71を待機系のユーザプレーンに復元して信頼性を確保する。
【0234】
なお、上記各実施形態においては、WiMAX ASN-GWに本発明を適用する例を述べたが、本発明のアクセスゲートウェイ装置4は、例えば、3GPP2 UMBシステムや3GPP LTE(3rd Generation Partnership Project Long Term Evolution)のようなネットワークシステムに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0235】
以上のように、高速かつ大量の情報を送受信するネットワークシステム及びゲートウェイ装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0236】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、無線ネットワークシステムの一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示し、制御プレーンのC−AGW5の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示し、ユーザプレーンのU−AGW6の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態を示し、制御プレーンとユーザプレーンの機能要素の関係を示すブロック図である。
【図5a】本発明の第1の実施形態を示し、セッション情報の一例を示す説明図である。
【図5b】本発明の第1の実施形態を示し、セッション情報を構成するアクティブ情報711の一例を示す説明図である。
【図5c】本発明の第1の実施形態を示し、セッション情報を構成するアイドル情報712の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態を示し、ユーザプレーンがRAMに保持する転送用情報の一例を示す説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態を示し、現用系の制御プレーンの稼動中に障害が発生したときの引き継ぎ処理の一例を示すシーケンス図である。
【図8】本発明の第1の実施形態を示し、現用系の制御プレーンの制御信号処理プログラムで行われるミラーリング処理の詳細を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第1の実施形態を示し、待機系の制御プレーンで実行されるC−AGW監視処理プログラムが、現用系の制御プレーンからミラーリング要求を受信したときに実行される処理の詳細を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第1の実施形態を示し、待機系の制御プレーンのC−AGW監視処理プログラムによって実行されるWatchDoc処理の詳細を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第1の実施形態を示し、待機系の制御プレーンのC−AGW監視処理プログラムによって実行される呼救済処理の詳細を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第1の実施形態を示し、現用系のユーザプレーンの稼動中に障害が発生したときの引き継ぎ処理の一例を示すシーケンス図である。
【図13】本発明の第1の実施形態を示し、現用系の制御プレーンのU−AGW監視処理プログラムが実行するユーザプレーンの引き継ぎ処理の一例を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第1の実施形態を示し、待機系のユーザプレーンで行われるユーザプレーンの引き継ぎ処理の一例を示すフローチャートである
【図15】本発明の第2の実施形態を示し、現用系のユーザプレーンの稼動中に障害が発生したときの引き継ぎ処理の一例を示すシーケンス図である。
【図16】本発明の第2の実施形態を示し、図15に示した現用系の制御プレーンのU−AGW監視処理プログラムが実行するユーザプレーンの第1の引き継ぎ処理(F7)の一例を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第2の実施形態を示し、現用系の制御プレーンのU−AGW監視処理プログラムが実行するユーザプレーンの第2の引き継ぎ処理(セッション生成要求処理:F8)の一例を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第2の実施形態を示し、待機系のユーザプレーンが現用系の制御プレーンからセッション生成要求を受信したときに実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【図19】本発明の第3の実施形態を示し、制御プレーンとユーザプレーンの機能要素の関係を示すブロック図である。
【図20】本発明の第3の実施形態を示し、現用系のユーザプレーンの稼動中に障害が発生したときの引き継ぎ処理の一例を示すシーケンス図である。
【図21】本発明の第3の実施形態を示し、上記図20に示した現用系の制御プレーンのU−AGW監視処理プログラムが実行するユーザプレーンの引き継ぎ処理(F10)の一例を示すフローチャートである。
【図22】本発明の第4の実施形態を示し、制御プレーンとユーザプレーンの機能要素の関係を示すブロック図である。
【図23】本発明の第4の実施形態を示し、現用系のユーザプレーンの稼動中に障害が発生したときの引き継ぎ処理の一例を示すシーケンス図である。
【図24】本発明の第4の実施形態を示し、上記図23の現用系のユーザプレーンのパケット転送プログラムで行われる転送用情報のミラーリング処理の一例を示すフローチャートである。
【図25】本発明の第4の実施形態を示し、待機系のユーザプレーンで現用系のユーザプレーン6毎に転送用情報のアクティブ情報を更新する処理(F12)の一例を示すフローチャートである
【図26】本発明の第4の実施形態を示し、上記図23に示した現用系の制御プレーンのU−AGW監視処理プログラムが実行するユーザプレーンの第1の引き継ぎ処理(F13)の一例を示すフローチャートである。
【図27】本発明の第4の実施形態を示し、上記図23に示した待機系のユーザプレーンが実行するユーザプレーンの第1の引き継ぎ処理(F14)の一例を示すフローチャートである。
【図28】従来例を示し、WiMAXを適用するネットワークシステムのブロック図である。
【図29】従来例を示し、図28のWiMAXにおける接続シーケンス図である。
【図30】ユーザプレーンを複数設置した場合のブロック図である。
【図31】N+1個のアクセスゲートウェイ装置で冗長化を図る場合のブロック図である。
【図32】1:1のアクセスゲートウェイ装置の冗長化構成を示すブロック図である。
【図33】1:1のアクセスゲートウェイ装置の冗長化構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0237】
1 コアネットワーク
2 認証装置
3 ホームエージェント
4 アクセスゲートウェイ装置
5 制御プレーン(C−AGW)
6 ユーザプレーン(U−AGW)
7a、7b、7c 基地局
8 携帯端末
9 スイッチ
70 制御信号処理プログラム
71 セッション情報
711 アクティブ情報
712 アイドル情報
75 U−AGW監視処理プログラム
76 C−AGW監視処理プログラム
400 ルータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のネットワークと第2のネットワークに接続されたルータと、
前記ルータに接続されて前記第1のネットワークと第2のネットワークとの間で通信経路を確立してデータの転送を行うアクセスゲートウェイ装置と、を備えた通信システムであって、
前記アクセスゲートウェイ装置は、
前記第1のネットワークと第2のネットワークから制御信号を受信して、通信経路を確立してデータの転送用情報を決定する制御計算機と、
前記制御計算機から前記転送用情報を受信して、前記第1のネットワークと第2のネットワークの間で前記転送用情報に含まれる通信経路によってデータの転送を行う転送用計算機と、を含み、
前記転送用計算機は、
前記データの転送を実行する複数の第1の転送用計算機と、前記複数の第1の転送用計算機のいずれかに障害が発生したときに、当該障害が発生した第1の転送用計算機の処理を引き継ぐ第2の転送用計算機とを有し、
前記制御計算機は、
前記複数の第1の転送用計算機のそれぞれに前記決定した通信経路を含む情報をセッション情報として通知するセッション情報通知部と、
前記セッション情報を前記複数の第1の転送用計算機の識別子毎に格納するセッション情報格納部と、
前記複数の第1の転送用計算機のうちのいずれかに障害が発生したことを検知する第1の障害監視部と、
前記第1の障害監視部が前記第1の転送用計算機の障害発生を検知したときには、障害が発生した第1の転送用計算機の識別子とアドレスを取得し、当該第1の転送用計算機に設定されたセッション情報を前記セッション情報格納部から取得し、前記第2の転送用計算機に前記取得した識別子とアドレス及びセッション情報を通知する第1の切替制御部と、を有し、
前記第2の転送用計算機は、
前記制御計算機から受信した前記識別子とアドレス及びセッション情報を当該第2の転送用計算機に設定し、前記データの転送を引き継ぐ引き継ぎ処理部を有し、
前記制御計算機は、
前記第1のネットワークと第2のネットワークから制御信号を受信して、通信経路を確立してデータの転送用情報を決定する第1の制御計算機と、前記第1の制御計算機に障害が発生したときに、当該障害が発生した第1の制御計算機の処理を引き継ぐ第2の制御計算機を有し、
前記第2の制御計算機は、
前記第1の制御計算機に障害が発生したことを検知する第2の障害監視部と、
所定の周期で前記第1の制御計算機からセッション情報を複写するセッション情報複製部と、
前記第2の障害監視部が前記第1の制御計算機の障害発生を検知したときには、障害が発生した第1の制御用計算機の識別子とアドレスを取得し、当該第2の制御計算機に前記取得した識別子とアドレスを設定し、前記セッション情報複製部が複写したセッション情報に基づいて前記第1の制御計算機の処理を引き継ぐ第2の切替制御部を有することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の通信システムであって、
前記セッション情報格納部は、
前記セッション情報を、通信中のセッション情報をアクティブ情報として前記第1の転送用計算機毎に格納し、通信を休止中のセッション情報をアイドル情報として第1の転送用計算機毎に格納し、
前記第1の切替制御部は、
前記第1の障害監視部が前記第1の転送用計算機の障害発生を検知したときには、障害が発生した第1の転送用計算機の識別子とアドレスを取得し、当該第1の転送用計算機に設定されたアクティブ情報を前記セッション情報格納部から取得し、前記第2の転送用計算機に前記取得した識別子とアドレス及びアクティブ情報を通知し、
前記第2の転送用計算機がデータの転送を引き継いだ後に、障害が発生した前記第1の転送用計算機に設定されたアイドル情報を前記第2の転送用計算機に通知し、
前記引き継ぎ処理部は、
前記制御計算機から受信した識別子とアドレス及びアクティブ情報からデータの転送を引き継いだ後に、前記制御計算機から受信したアクティブ情報を当該第2の転送用計算機に設定することを特徴とする通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の通信システムであって、
前記第1の切替制御部は、
前記データの転送を代理で実行するデータ転送代理部を有し、
前記第1の障害監視部が前記第1の転送用計算機の障害発生を検知したときには、障害が発生した第1の転送用計算機の識別子とアドレスを当該制御計算機に設定し、前記障害が発生した第1の転送用計算機に設定されたセッション情報を前記セッション情報格納部から取得して前記データ転送代理部でデータの転送を開始した後に、前記第2の転送用計算機に前記取得した識別子とアドレス及びセッション情報を通知し、前記第2の転送用計算機が前記第1の転送用計算機の処理を引き継いだ後に前記データ転送代理部を停止させることを特徴とする通信システム。
【請求項4】
請求項1に記載の通信システムであって、
前記第1の転送用計算機は、
前記制御計算機から受信したセッション情報を通信中のセッション情報をアクティブ情報として保持し、通信が休止中のセッション情報をアイドル情報として保持し、所定の周期となる度に前記アクティブ情報を前記第2の転送用計算機へ送信し、
前記第2の転送用計算機は、
前記第1の転送用計算機から受信したアクティブ情報を前記複数の第1の転送用計算機ごとに保持し、
前記第1の切替制御部は、
前記第1の障害監視部が前記第1の転送用計算機の障害発生を検知したときには、障害が発生した第1の転送用計算機の識別子とアドレスを取得し、当該第1の転送用計算機に設定されたアイドル情報を前記セッション情報格納部から取得し、前記第2の転送用計算機に前記取得した識別子とアドレスを通知し、前記第2の転送用計算機が前記障害の発生した第1の転送用計算機の処理を引き継いだ後に、前記第1の転送用計算機に設定されたアイドル情報を通知し、
前記第2の転送用計算機は、
前記第1の切替制御部から受信した識別子とアドレスを当該第1の転送用計算機に設定し、前記識別子に対応するアクティブ情報を取得して前記第1の転送用計算機のデータの転送を引き継いだ後に、前記第1の切替制御部から受信したアイドル情報を保持することを特徴とする通信システム。
【請求項5】
第1のネットワークと第2のネットワークとの間で通信経路を確立してデータの転送を行うアクセスゲートウェイ装置の制御方法であって、
前記アクセスゲートウェイ装置は、
前記第1のネットワークと第2のネットワークから制御信号を受信して、通信経路を確立してデータの転送用情報を決定する制御計算機と、
前記制御計算機から前記転送用情報を受信して、前記第1のネットワークと第2のネットワークの間で前記転送用情報に含まれる通信経路によってデータの転送を行う転送用計算機と、を含み、
前記制御計算機は、
前記第1のネットワークと第2のネットワークから制御信号を受信して、通信経路を確立してデータの転送用情報を決定する第1の制御計算機と、前記第1の制御計算機に障害が発生したときに、当該障害が発生した第1の制御計算機の処理を引き継ぐ第2の制御計算機を有し、
前記転送用計算機は、
前記データの転送を実行する複数の第1の転送用計算機と、前記複数の第1の転送用計算機のいずれかに障害が発生したときに、当該障害が発生した第1の転送用計算機の処理を引き継ぐ第2の転送用計算機とを有し、
前記制御計算機が、前記複数の第1の転送用計算機のそれぞれに前記決定した通信経路を含む情報をセッション情報として通知する手順と、
前記制御計算機が、前記セッション情報を前記複数の第1の転送用計算機の識別子毎にセッション情報格納部へ格納する手順と、
前記制御計算機が、前記複数の第1の転送用計算機のうちのいずれかに障害が発生したことを検知する手順と、
前記制御計算機が、前記第1の転送用計算機の障害発生を検知したときには、障害が発生した第1の転送用計算機の識別子とアドレスを取得し、当該第1の転送用計算機に設定されたセッション情報を前記セッション情報格納部から取得し、前記第2の転送用計算機に前記取得した識別子とアドレス及びセッション情報を通知する手順と、
前記第2の転送用計算機が、記制御計算機から受信した前記識別子とアドレス及びセッション情報を当該第2の転送用計算機に設定し、前記データの転送を引き継ぐ手順と、
前記第2の制御計算機が、前記第1の制御計算機に障害が発生したことを検知する手順と、
所定の周期で前記第1の制御計算機のセッション情報を前記第2の制御計算機へ複写する手順と、
前記第2の制御計算機が前記第1の制御計算機の障害発生を検知したときには、障害が発生した第1の制御用計算機の識別子とアドレスを取得し、当該第2の制御計算機に前記取得した識別子とアドレスを設定し、前記写したセッション情報に基づいて前記第1の制御計算機の処理を引き継ぐ手順と、
をさらに含むことを特徴とするアクセスゲートウェイ装置の制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載のアクセスゲートウェイ装置の制御方法であって、
前記セッション情報格納部は、
前記セッション情報を、通信中のセッション情報をアクティブ情報として前記第1の転送用計算機毎に格納し、通信が休止中のセッション情報をアイドル情報として前記第1の転送用計算機毎に格納し、
前記制御計算機は、前記第1の転送用計算機の障害発生を検知したときには、障害が発生した第1の転送用計算機の識別子とアドレスを取得し、当該第1の転送用計算機に設定されたアクティブ情報を前記セッション情報格納部から取得し、前記第2の転送用計算機に前記取得した識別子とアドレス及びアクティブ情報を通知する手順と、
前記第2の転送用計算機は、前記制御計算機から受信した識別子とアドレス及びアクティブ情報を当該第2の転送用計算機に設定してデータの転送を引き継ぐ手順と、
前記制御計算機は、前記第2の転送用計算機がデータの転送を引き継いだ後に、障害が発生した前記第1の転送用計算機に設定されたアイドル情報を前記第2の転送用計算機に通知する手順と、
前記第2の転送用計算機は、前記制御計算機から受信したアクティブ情報を当該第2の転送用計算機に設定する手順と、
をさらに含むことを特徴とするアクセスゲートウェイ装置の制御方法。
【請求項7】
請求項5に記載のアクセスゲートウェイ装置の制御方法であって、
前記制御計算機が、前記第1の転送用計算機の障害発生を検知したときには、障害が発生した第1の転送用計算機の識別子とアドレスを当該制御計算機に設定し、前記障害が発生した第1の転送用計算機に設定されたセッション情報を前記セッション情報格納部から取得して前記第1の転送用計算機に代わってデータの転送を開始する手順と、
前記制御計算機が、前記第2の転送用計算機に前記取得した識別子とアドレス及びセッション情報を通知する手順と、
前記第2の転送用計算機が、前記制御計算機から受信した識別子とアドレス及びセッションで前記第1の転送用計算機の処理を引き継ぐ手順と、
前記制御計算機が、前記第2の転送用計算機が前記第1の転送用計算機の処理を引き継いだ後に前記データの転送を停止する手順と、
をさらに含むことを特徴とするアクセスゲートウェイ装置の制御方法。
【請求項8】
請求項5に記載のアクセスゲートウェイ装置の制御方法であって、
前記第1の転送用計算機が、前記制御計算機から受信したセッション情報を通信中のセッション情報をアクティブ情報として保持し、通信が休止中のセッション情報をアイドル情報として保持し、所定の周期となる度に前記アクティブ情報を前記第2の転送用計算機へ送信する手順と、
前記第2の転送用計算機が、前記第1の転送用計算機から受信したアクティブ情報を前記複数の第1の転送用計算機ごとに保持する手順と、
前記制御計算機が、前記第1の転送用計算機の障害発生を検知したときには、障害が発生した第1の転送用計算機の識別子とアドレスを取得し、前記取得した識別子とアドレスを前記第2の転送用計算機に通知する手順と、
前記第2の転送用計算機が、前記制御計算機から受信した識別子とアドレスを当該第2の転送用計算機に設定し、前記保持したアクティブ情報から前記識別子に対応するアクティブ情報を取得して前記第1の転送用計算機のデータの転送を引き継ぐ手順と、
前記制御計算機が、前記第2の転送用計算機が前記障害の発生した第1の転送用計算機の処理を引き継いだ後に、前記第1の転送用計算機に設定されたアイドル情報を前記第2の転送用計算機に通知する手順と、
前記第2の転送用計算機は、前記制御計算機から受信したアイドル情報を保持する手順と、
をさらに含むことを特徴とするアクセスゲートウェイ装置の制御方法。
【請求項9】
第1のネットワークと第2のネットワークとの間で通信経路を確立してデータの転送を行うアクセスゲートウェイ装置であって、
前記第1のネットワークと第2のネットワークから制御信号を受信して、通信経路を確立してデータの転送用情報を決定する制御計算機と、
前記制御計算機から前記転送用情報を受信して、前記第1のネットワークと第2のネットワークの間で前記転送用情報に含まれる通信経路によってデータの転送を行う転送用計算機と、を含み、
前記転送用計算機は、
前記データの転送を実行する複数の第1の転送用計算機と、前記複数の第1の転送用計算機のいずれかに障害が発生したときに、当該障害が発生した第1の転送用計算機の処理を引き継ぐ第2の転送用計算機とを有し、
前記制御計算機は、
前記複数の第1の転送用計算機のそれぞれに前記決定した通信経路を含む情報をセッション情報として通知するセッション情報通知部と、
前記セッション情報を前記複数の第1の転送用計算機の識別子毎に格納するセッション情報格納部と、
前記複数の第1の転送用計算機のうちのいずれかに障害が発生したことを検知する第1の障害監視部と、
前記第1の障害監視部が前記第1の転送用計算機の障害発生を検知したときには、障害が発生した第1の転送用計算機の識別子とアドレスを取得し、当該第1の転送用計算機に設定されたセッション情報を前記セッション情報格納部から取得し、前記第2の転送用計算機に前記取得した識別子とアドレス及びセッション情報を通知する第1の切替制御部と、を有し、
前記第2の転送用計算機は、
前記制御計算機から受信した前記識別子とアドレス及びセッション情報を当該第2の転送用計算機に設定し、前記データの転送を引き継ぐ引き継ぎ処理部を有し、
前記制御計算機は、
前記第1のネットワークと第2のネットワークから制御信号を受信して、通信経路を確立してデータの転送用情報を決定する第1の制御計算機と、前記第1の制御計算機に障害が発生したときに、当該障害が発生した第1の制御計算機の処理を引き継ぐ第2の制御計算機を有し、
前記第2の制御計算機は、
前記第1の制御計算機に障害が発生したことを検知する第2の障害監視部と、
所定の周期で前記第1の制御計算機からセッション情報を複写するセッション情報複製部と、
前記第2の障害監視部が前記第1の制御計算機の障害発生を検知したときには、障害が発生した第1の制御用計算機の識別子とアドレスを取得し、当該第2の制御計算機に前記取得した識別子とアドレスを設定し、前記セッション情報複製部が複写したセッション情報に基づいて前記第1の制御計算機の処理を引き継ぐ第2の切替制御部を有することを特徴とするアクセスゲートウェイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2010−63022(P2010−63022A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228938(P2008−228938)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000153465)株式会社日立コミュニケーションテクノロジー (770)
【Fターム(参考)】