説明

アクセルの誤操作対策装置

【課題】アクセルをブレーキと間違えて操作したときに、スロットルを戻して減速するとともに、確実に車両に制動をかけ、確実に事故を防止または軽減することができるアクセルの誤操作対策装置を提供する。
【解決手段】アクセルペダル1の踏み込み入力をスロットルに伝達する第1の伝達手段3と、アクセルペダル1を所定以上に踏み込んだときに、上記第1の伝達手段3による伝達を解除してスロットルを戻す解除手段4と、上記解除手段4の解除動作点を超えたアクセルペダル1の踏み込み入力を、ブレーキペダル2に伝達してブレーキを動作させる第2の伝達手段5とを備えたことにより、アクセルをブレーキと間違えて操作したときに、スロットルを戻して減速するとともに、確実に車両に制動をかけ、確実に事故を防止または軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキとアクセルを間違えて操作してしまうことによる事故を防止または軽減しうるアクセルの誤操作対策装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキとアクセルを間違えて操作してしまうと、運転者は減速または停止するつもりであるところ車両は急加速してしまい、容易に事故に至ってしまう。このような、アクセルの誤操作による事故は、昔からあり、その対策を行ったものとして、例えば下記の特許文献1のような技術が開示されている。この特許文献1の装置は、アクセルペダルをブレーキペダルと間違えて突発的に踏み込んだとき、アクセルを不作動状態に制御するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−253054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置では、アクセルをブレーキと間違えて操作したときに、アクセルを不作動状態に制御するに留まる。したがって、スロットルを戻すことによる減速はされるものの、ブレーキによって制動をかけるには至らない。このため、いくらこの装置が作動したとしても車両は惰性で動くのであり、その間、誤操作を行って運転者はパニック状態になることが多く、惰性で移動する間に起こる事故を防止することができないという重大な欠陥がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、アクセルをブレーキと間違えて操作したときに、スロットルを戻して減速するとともに、確実に車両に制動をかけ、確実に事故を防止または軽減することができるアクセルの誤操作対策装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明のアクセルの誤操作対策装置は、アクセルペダルの踏み込み入力をスロットルに伝達する第1の伝達手段と、
アクセルペダルを所定以上に踏み込んだときに、上記第1の伝達手段による伝達を解除してスロットルを戻す解除手段と、
上記解除手段の解除動作点を超えたアクセルペダルの踏み込み入力を、ブレーキペダルに伝達してブレーキを動作させる第2の伝達手段とを備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアクセルの誤操作対策装置によれば、アクセルペダルを所定以上に踏み込んだときに、上記第1の伝達手段による伝達を解除してスロットルを戻す解除手段を備えていることから、アクセルをブレーキと間違えて操作すると、スロットルが戻って車両は減速される。さらに、上記解除手段の解除動作点を超えたアクセルペダルの踏み込み入力を、ブレーキペダルに伝達してブレーキを動作させる第2の伝達手段を備えているため、上記減速に加えて、車両にはブレーキによる制動がかかる。このように、本発明では、アクセルをブレーキと間違えて操作したときに、スロットルを戻して減速するとともに、確実に車両に制動をかけ、確実に事故を防止または軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態のアクセルの誤操作対策装置を側面から見た図である。
【図2】上記第1実施形態を正面から見た図である。
【図3】上記第1実施形態においてアクセルを踏み込んだ状態である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のアクセルの誤操作対策装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の第1実施形態のアクセルの誤操作対策装置を側面から見た状態を示し、図2は、同じものを正面(運転者側)から見た状態である。
【0011】
この装置は、乗用車等の車両におけるアクセルペダル1とブレーキペダル2にわたって設けられるものであり、アクセルペダル1の踏み込み入力をスロットル(図示せず)に伝達する第1の伝達手段3と、アクセルペダル1を所定以上に踏み込んだときに、上記第1の伝達手段3による伝達を解除してスロットルを戻す解除手段4と、上記解除手段4の解除動作点を超えたアクセルペダル1の踏み込み入力を、ブレーキペダル2に伝達してブレーキを動作させる第2の伝達手段5とを備えている。
【0012】
以下により詳しく説明する。
【0013】
上記アクセルペダル1は、車両の壁面に固定されたペダル支持板10に対してアクセルペダル軸11によって軸支されている。アクセルペダル1は、踏み込み面12を踏み込むことにより、アクセルペダル軸11を軸として奥側に向かって回動する。
【0014】
上記アクセルペダル1の側面には、アクセルペダル1の踏み込み入力を第1の伝達手段3に伝達するとともに、解除手段4によって解除動作を行うための爪部材13が取り付けられている(図2では爪部材13は隠れて見えない)。上記爪部材13は、アクセルペダル1奥側の軸14に軸支されていて手前側が上下回動可能に取り付けられている。また、上下回動可能な爪部材13の手前側は、コイルバネ等の付勢部材15で上向きに付勢されている。この爪部材13の上側には、第1の伝達手段3を構成するワイヤー引き部材20の下端に係脱可能に係合する係合部16が形成されている。また、上記爪部材13には、解除手段4による解除動作を行うための解除ローラ17が設けられている。
【0015】
上記第1の伝達手段3は、ワイヤー引き部材20と、アクセルワイヤー21(図2にはアクセルワイヤーを示していない)とを含んで構成されている。上記ワイヤー引き部材20は、アクセルペダル1の側面に設けられた軸22に軸支され、この軸22を中心として前後に回動しうるように取り付けられている。ワイヤー引き部材20の下端部には、上記爪部材13の係合部16に対して係脱可能に係合する被係合部23が形成されている。さらに、アクセルペダル1の側面には、ワイヤー引き部材20の手前側の端部に当接する当接ピン19が固定されている。ワイヤー引き部材20の上端部には、アクセルワイヤー21を取り付ける取付穴24が形成されている。
【0016】
このような構造により、アクセルペダル1の踏み込み面12を踏み込むと、アクセルペダル1は、アクセルペダル軸11を軸として奥側に向かって回動する。このとき、軸22に軸支されたワイヤー引き部材20は、下端部の被係合部23が爪部材13の係合部16に係合されるとともに、当接ピン19が軸22よりも上側に当接している。この状態では、アクセルペダル1に対してワイヤー引き部材20が固定されるため、アクセルペダル1が奥側に向かって回動すると、ワイヤー引き部材20は、アクセルペダル1の回動に連れて回動してその上端側が後方に回動し、アクセルワイヤー21を引っ張る。アクセルワイヤー21が引っ張られると、図示しないスロットルが開くようになっていて、アクセルペダル1の踏み込み入力がスロットル(図示せず)に伝達される。
【0017】
上記解除手段4は、車両側に取り付けられた解除部材27(図2では解除部材27は隠れて見えない)を含んで構成されている。上記解除部材27は、車両の壁面に取り付けられた取付板28に軸29を介して固定されている。解除部材27は、軸29を締め付ける図示しない締付部材を緩めることにより、角度調節が可能となっているが、使用するときは回動させないで角度を固定した状態で使用する。
【0018】
図3は、アクセルペダル1の踏み込み面12を一定以上踏み込んだ状態を示す。
【0019】
上記のような構造により、アクセルペダル1の踏み込み面12を一定以上踏み込んで、アクセルペダル1が奥側に向かって一定以上回動したときに、解除部材27の下端部前面が爪部材13の解除ローラ17に当たり、付勢部材15の付勢力に抗して爪部材13を下向きに押し下げる。これにより、爪部材13の係合部16とワイヤー引き部材20の被係合部23との係合が解除される。それまでアクセルワイヤー21を引っ張るように後方に回動していたワイヤー引き部材20は、上記係合の解除により、アクセルワイヤー21に引っ張られて軸22を中心としてアクセルワイヤー21を戻す方向に回動する。このように、アクセルペダル1を所定以上に踏み込んだときに、上記第1の伝達手段3による伝達を解除してスロットルが戻される。
【0020】
上記第2の伝達手段5は、回動部材33と連動アーム35(図1には示していない)を含んで構成されている。上記回動部材33は、車体の壁面に取り付けられた固定部材31に対して軸32を介して前後回動可能に軸支されている。上記回動部材33は、アクセルペダル1の下端部後ろ側に形成された切欠部18内に当接するように配置され、アクセルペダル1の踏み込みにより後方に向かって回動するようになっている。
【0021】
上記連動アーム35は、上記回動部材33の回動動作を受けて動作するアクセルアーム36と、上記アクセルアーム36の動作に連動してブレーキペダル2を操作するためのブレーキアーム38と、アクセルアーム36とブレーキペダル2を連結して連動させる連動軸37とを含んで構成されている。上記連動軸37は、軸受け34に軸支されるとともに、図示しないコイルスプリング等の付勢部材によって前方向(図2において紙面に向かって手前方向である)に付勢されている。上記アクセルアーム36の下端近傍前面には、回動部材33の回動側が当接している。一方、ブレーキアーム38の下端部は、ブレーキペダル2の踏み込み面上に位置している。
【0022】
このような構造により、上記解除手段4による爪部材13とワイヤー引き部材20の係合が解除されたのち、さらにアクセルペダル1を踏み込むと、アクセルペダル1の切欠部18が回動部材33を上から押して後方へ回動させる。回動部材33の回動動作は、連動アーム35のアクセルアーム36に伝達されてアクセルアーム36が後方へ回動する。このアクセルアーム36の回動動作により、連動軸37で連結されたブレーキアーム38が連動して回動する。ブレーキアーム38が後方に回動すると、ブレーキアーム38の下端部がブレーキペダル2の踏み込み面を踏み込む動作となり、ブレーキが作動する。このようにして、上記解除手段4の解除動作点を超えたアクセルペダル1の踏み込み入力が、ブレーキペダル2に伝達してブレーキを動作する。
【0023】
このように、アクセルペダル1を一定以上踏み込むと、爪部材13がワイヤー引き部材20から外れ、ワイヤー引き部材20が戻るとともに、回動部材33が回動動作をする。すると、連動アーム35が回動し、ブレーキアーム38がブレーキペダル2を動作させて車両に制動をかけるのである。
【0024】
このように、本実施形態によれば、アクセルペダル1を所定以上に踏み込んだときに、上記第1の伝達手段3による伝達を解除してスロットルを戻す解除手段4を備えていることから、アクセルをブレーキと間違えて操作すると、スロットルが戻って車両は減速される。さらに、上記解除手段4の解除動作点を超えたアクセルペダル1の踏み込み入力を、ブレーキペダル2に伝達してブレーキを動作させる第2の伝達手段5を備えているため、上記減速に加えて、車両にはブレーキによる制動がかかる。このように、アクセルをブレーキと間違えて操作したときに、スロットルを戻して減速するとともに、確実に車両に制動をかけ、確実に事故を防止または軽減することができる。
【0025】
なお、上記実施形態では、アクセルペダル1の踏み込み入力をアクセルワイヤー21でスロットルに伝達する方式を例示したが、これに限定するものではなく、アクセルペダル1の踏み込み入力を電気信号で伝達してスロットルの開度を制御する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1:アクセルペダル
2:ブレーキペダル
3:第1の伝達手段
4:解除手段
5:第2の伝達手段
10:ペダル支持板
11:アクセルペダル軸
12:踏み込み面
13:爪部材
14:軸
15:付勢部材
16:係合部
17:解除ローラ
18:切欠部
19:当接ピン
20:ワイヤー引き部材
21:アクセルワイヤー
22:軸
23:被係合部
24:取付穴
27:解除部材
28:取付板
29:軸
31:固定部材
32:軸
33:回動部材
34:軸受け
35:連動アーム
36:アクセルアーム
37:連動軸
38:ブレーキアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルペダルの踏み込み入力をスロットルに伝達する第1の伝達手段と、
アクセルペダルを所定以上に踏み込んだときに、上記第1の伝達手段による伝達を解除してスロットルを戻す解除手段と、
上記解除手段の解除動作点を超えたアクセルペダルの踏み込み入力を、ブレーキペダルに伝達してブレーキを動作させる第2の伝達手段とを備えたことを特徴とするアクセルの誤操作対策装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−150743(P2012−150743A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10422(P2011−10422)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(500306756)
【Fターム(参考)】