説明

アクチュエータ及びこれを使用するための方法

【課題】主連棒が動かなくなった場合にも継続的な動きを妨げないアクチュエータを提供する。
【解決手段】本発明は、主連棒(2)がスライド軸(X)に沿って伸縮自在に引込みポジションと伸長ポジションとの間でスライドするように取り付けられているシリンダ(1)を含む伸縮アクチュエータに関するものである。アクチュエータは、主連棒の中で前記スライド軸に沿って引込みポジションと伸長ポジションとの間でスライドするように取り付けられる補助棒(20)を含み、アクチュエータは主連棒内部で補助棒を引込みポジションに保持するための制御された保持手段(30、31、32、33)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主連棒及び補助棒を有するアクチュエータ及びこれを使用する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
引込みポジションと伸長ポジションとの間でスライド軸に沿ってスライドするように主連棒が取り付けられるシリンダを含むシリンダタイプの伸縮アクチュエータは既知である。
【0003】
例えば、この種のアクチュエータは航空機の着陸脚を展開するために使用される。主連棒がシリンダ内で動かなくなり、アクチュエータがその機能を果たせなくなるばかりでなく、アクチュエータが挿入される機械システムの動きも妨げる危険が(非常に小さいが)存在する。特に、上述の用途において、着陸脚が動かなくなって展開できないと、安全上の問題が生じる。
【0004】
他の分野においては、主連棒の中で前記のスライド軸に沿って引込みポジションと伸長ポジションとの間でスライドするように取り付けられる補助棒を含む伸縮アクチュエータが既知である。この種のアクチュエータはストロークを増すために役立つ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、主連棒が動かなくなった場合にも継続的な動きを妨げないアクチュエータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、引込みポジションと伸長ポジションとの間でスライド軸に沿ってスライドするように主連棒が取り付けられるシリンダを含む伸縮アクチュエータを提供する。この伸縮アクチュエータは、主連棒において引込みポジションと伸長ポジションとの間で伸縮自在に前記スライド軸に沿ってスライドするように取り付けられる補助棒を含む。本発明によれば、アクチュエータは、主連棒内部において補助棒を引込みポジションに保持するための制御された保持手段を含む。
【0007】
従って、主連棒がシリンダ内で適切にスライドする限りは、補助棒は、主連棒内でブロックされたままであり、アクチュエータは従来のアクチュエータと同様に動作する。主連棒が動かなくなったら、アクチュエータが再び自由に伸びて、アクチュエータが挿入されている機械システムの動きをブロックしないように、保持手段が補助棒をリリースするように保持手段を制御すればよい。
【0008】
従って、主連棒及び補助棒を有する先行技術の伸縮アクチュエータと異なり、本発明のアクチュエータの補助棒はアクチュエータのストロークを長くするために使用されるのではなく、主連棒のジャミングを未然に防ぐことができるようにするために使用される。
【0009】
本発明は、添付図面を参照しながら以下の説明を考慮することによって、より良く理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1を参照すると、本発明の特定の実施形態において、アクチュエータはラグ13を支える端壁12によって閉鎖される円筒形キャビティを形成するシリンダ1を含む。主連棒2は、スライド軸Xに沿ってスライドして、ベアリングを構成するシリンダの開放端を通じてシリンダ1からある程度突き出すようにキャビティに取り付けられる。
【0011】
アクチュエータは、シリンダ1に対して相対的に主連棒2のスライドを制御するための制御手段を含む。このスライド制御手段は下記のものを含む:
・主連棒2に固定され、かつシリンダ1のキャビティの壁に形成される溝4と協働して主連棒2がシリンダ1に対して相対的に回転するのを防ぐ、キー3;
・シリンダ1に固定して取り付けられる固定子6及びシリンダ1内部で軸Xの周りを回転するように取り付けられる回転子7を含む電動モーター5;
・軸Xに沿って伸び、シリンダ1内で軸Xの周りを回転するように取り付けられ、カップラ8を通じて回転子7によって回転駆動される、親ネジ9。親ネジ9は、複動軸方向アバットメント11によってシリンダ1に対して相対的に軸方向に保持される;及び
・親ネジ9と主連棒2との間に正転反転可能なねじ接続(reversible helical connection)を確立するように親ネジ9が貫通する主連棒の端壁に形成される相補的ナット10。
【0012】
このようにして、回転子7の回転は親ネジ9を回転駆動し、親ネジの回転は主連棒2を軸方向に移動する。
【0013】
主連棒2は中空であり、キャビティを形成し、その中において、軸Xに沿って主連棒2内部をスライドして、ベアリングを形成する主連棒の開放端から突き出すように補助棒20が取り付けられる。
【0014】
アクチュエータは、補助棒20の伸長方向への主連棒2内での補助棒20のスライドを制動するためのブレーキ手段を含む。主連棒2内で補助棒20を案内するベアリング21も形成するこのブレーキ手段は下記のものを含む:
・主連棒2の内側の雌ねじと協働してドライバ22と主連棒2との間の正転反転可能なねじ接続を構成する外側にねじを有するドライバ22;
・ローラーによって補助棒20上で回転するように取り付けられるブッシング23。ドライバ22自体はローラーによってブッシング23上で回転するように取り付けられ、ドライバ22はブッシング23と補助棒20のアバットメント24に接するローラーベアリングとの間で軸方向に拘束される;
・補助棒20が主連棒2から伸びてドライバ22が主連棒2との間のはす歯接続ゆえに回転するときブッシング23を回転させるドライバ22とブッシング23との間のラチェットタイプのフリーホイール25。これに対して、補助棒20が主連棒2の中に戻るとき、ドライバ22は回転するが、ブッシング23を回転駆動しない;
・補助棒20に対する外部の引張り駆動を受けてブッシング23が摩擦ワッシャ26に押し付けられることによって、ブッシング23が回転するときブッシング23に対して摩擦を生じるようにされた、ブッシング23の自由面に対面する補助棒20によって支えられる摩擦ワッシャ26。
【0015】
補助棒20がまず主連棒2の開放端によって次にベアリング21によって軸方向に案内されることが判るはずである。主連棒2は、まずシリンダ1の開放端によって次にナット10と親ネジ9との間の協働によって軸方向に案内される。最後に、親ネジ9は、一端では複動アバットメント11に挿入されるボールジョイント14によって、また他方の端では補助棒20内部でスライドするように取り付けられる滑りボールジョイント15によって軸方向に案内される。これらの配置によって、シリンダ1内部で主連棒2に滑りベアリングを取り付ける必要がない。
【0016】
補助棒が主連棒2に対して相対的に回転するのを妨げられないことが判るはずである。補助棒20の端部ラグ27及びシリンダ1のラグ13の両方が相互に対して相対的に自由に回転しないまたは多少しか回転できない外部要素に結合されるなら、その必要はない。この場合、補助棒20が主連棒2に対して及びシリンダ1に対して相対的に回転しないようにするのは外部要素である。1つの変形においては、補助棒20と主連棒2との間に内部回転防止手段を備えることが望ましい。
【0017】
最後に、本発明の基本的態様において、アクチュエータは、さらに主連棒2において補助棒20をその引込みポジションに保持するための制御された保持手段を含む。この保持手段は下記のものを含む:
・主連棒2内部で伸びるキャッチ30;
・補助棒20の端部に配置され、キャッチ30と協働するようにされたステップ31;
・半径方向に広がるのを防ぐようにキャッチ30を覆うロッキングポジション(この図に示される通り)とステップ31が通過するときキャッチ30が自由に半径方向に広がるようにするリリースポジションとの間で解除モーター(unlocking motor)33によって戻しバネ34に対抗して軸方向に変位可能なロッキングスリーブ32;
【0018】
このために、解除モーター33は主連棒2に固定される固定子35、及び主連棒2の補完的なネジ山と協働して正転反転可能なねじ接続を構成する回転子36を含む。このようにして、回転子36の回転は回転子36を軸方向に動かす。ロッキングスリーブ32は回転子36の端部で支えられ、自由に回転するようにローラーによって回転子36に取り付けられる。
【0019】
アクチュエータの動作について、特に航空機の着陸脚を展開するために応用される場合について以下で説明する。ここでは、シリンダ1のラグ13は航空機の構造に固定され、補助棒20のラグ27は航空機にヒンジ止めされる着陸脚の支柱に結合されて引込みポジションと展開ポジションとの間で移動可能であると仮定する。
【0020】
図1に示される状況、すなわち主連棒2がシリンダ1内部で引込みポジションにあり、かつ補助棒20が主連棒2内部で引込みポジションにあり、このポジションに保持される状況は、着陸脚がそのベイにおいて引込みポジションにあるときの本発明のアクチュエータの状況に相当する。
【0021】
着陸脚を伸ばすために、その正常な動作においては、駆動モーター5は、まず主連棒2をシリンダ1内部で逆行させるように作動する。このために、主連棒がその引込みポジションから多少逆行できるように、引込みポジションにおいて主連棒2の端とカップラ8との間には間隙j1が設けられる。
【0022】
この逆行は、着陸脚を引込みポジションに保持するキャッチユニットへの負荷を解除して、キャッチユニットのフックを動かし易くするのに役立つ。
【0023】
フックが動かされて着陸脚がリリースされたら、着陸脚が自身の重量の効果によって下降して主連棒2を伸ばすように、駆動モーター5への電極供給がオフに切り替えられる。この動きはナット10と親ネジ9との間のはす歯接続が反転可能であることによって可能となる。1つの形においては、駆動モーター5はオフに切り替えられず、電力供給は、着陸脚の重量が駆動モーター5によって与えられる抵抗力に対抗して主連棒を引っ張るようにするのに十分なほどに減少させられる。この抵抗力は着陸脚が展開される速度を能動的に制御できるようにする。
【0024】
その後着陸脚はその展開ポジションすなわち主連棒2が図2に示される通りその伸長ポジションであるポジションに達する。
【0025】
この種の着陸脚は2本のヒンジ式アームを含むサイドブレイスによって展開ポジションに固定されることが多いことが判るはずである。サイドブレイスのアームのインラインポジションが着陸脚の展開ポジションと一致せず展開ポジションを多少越える極限ポジションと一致するように措置を講じて、着陸脚を安定化するためにロックされるサイドブレイスのポジションがインラインポジションを越えるポジションであるようにするのが一般的やり方である。
【0026】
このような措置は、結局、着陸脚がその引込みポジションからサイドブレイスのアームがインラインである極限ポジションへ動き、その後極限ポジションから展開ポジションへ多少戻り、サイドブレイスがそのインラインポジションを越えてロックポジションへ達することを要求する。
【0027】
図2に示されるアクチュエータの伸長ポジションは展開される着陸脚と合致するので、主連棒の最大伸長ポジション(着陸脚の極限ポジションに合致する)とは合致しない。この図から、ステップ31を支える補助棒20の部分と親ネジ9の滑りボールジョイント15との間に間隙j3があり、この間隙が最大伸長ポジションに対処するのに役立つことが判るだろう。
【0028】
何らかの理由で着陸脚展開中に主連棒2が着陸脚の極限ポジションに該当する最大伸長ポジションで動かなくなった場合、アクチュエータは、着陸脚がその極限ポジションから展開ポジションへ戻るのを妨げることによって、サイドブレイスがロックされるのを妨げて、安全上の問題を構成する。
【0029】
たとえ主連棒2がその最大伸長ポジションで動かなくなってもサイドブレイスをロックできるようにするために、補助棒20のステップ31をキャッチ30のアームの歯状端部に隣接させて、主連棒2内での補助棒20の引込みポジションを形成するために、バネ38が主連棒2に配置される。ただし、バネ38は、バネ38に抵抗して補助棒20が主連棒2の中へ多少(間隙j2で表される)引っ込むことができるようにする。このように引っ込むことができることによって、着陸脚はその極限ポジションから展開ポジションへ短い距離戻ることができ、それによってサイドブレイスをロックすることができる。
【0030】
主連棒2が引込みポジションへ戻るようにするためには、主連棒2が図1に示される引込みポジションに向かって引っ込むように駆動モーター5を反対方向に回転させればよい。
【0031】
何らかの理由で主連棒2が引込みポジションまたは中間ポジションで動かないままであり、着陸脚が展開されるのを妨げる場合、ロッキングスリーブ32をリリースポジションにするように解除モーター33に電力を供給すればよい。キャッチユニットのフックによってリリースされると、着陸脚の重量により補助棒20が引き出されて、ステップ31はキャッチ30を半径方向に広げるので、ステップ31が通過できるようになり、補助棒は保持されないで自由にスライドできるようになる。こうして、主連棒のジャミングは未然に防がれ、着陸脚は再び伸びることができるようになるので、展開されロックされたポジションではないポジションで着陸脚がブロックされるのを防ぐ。
【0032】
補助棒20の伸長はドライバ22を回転させ、ドライバ22の回転はブッシング23を回転させる。ブッシングは着陸脚の重量によって摩擦リング26に押し付けられるので、ブッシングの回転は制動される。この制動は、ドライバ22の回転の制動に、従って補助棒20の伸長の制動に役立つ。この制動は、着陸脚が展開される速度を受動的に制御するのに役立つ。
【0033】
補助棒20は、図3に示される伸長ポジションまで伸びる。上に説明したのと同様に、この伸長ポジションは着陸脚の展開ポジションに合致し、補助棒の最大伸長ポジションではない。従って、この図は、アバットメント24と主連棒2の端との間に間隙j4があり、最大伸長ポジションに対処できるようにすることを示している。
【0034】
このように、この非常展開モードは、駆動モーター5の故障または主連棒2のジャミングの影響を緩和するのに役立つ。
【0035】
試しに、主連棒2が動かなくなっていない場合にも非常モードで着陸脚を展開すると時には有利であるかも知れない。このために、補助棒20をリリースするために解除モーター33に電力を供給する。着陸脚は自身の重量によって下向きに動いて、非常展開モード中と同様に補助棒をその伸長ポジションまで引っ張る。主連棒が補助棒20から摩擦駆動を受けて伸びないように駆動モーター5に電力を供給することによって主連棒2を軸方向にブロックすることが妥当である。その後、主連棒2が図2に示されるポジションまたはバネ38によって可能になるもう少し伸びたポジションに達するまで主連棒2を伸ばすために駆動モーター5に電力が供給される。このポジションにおいては、ステップ31はキャッチ30と再びかみ合う。その後、スリーブ32がバネ34からの駆動を受けてキャッチを被覆するロッキングポジションに戻るように、解除モーター33をオフに切り替えればよい。補助棒20は再び主連棒2に結合されるので、アセンブリを駆動モーター5によって引っ込めることができる。
【0036】
本発明の特定の態様において、アクチュエータにはシリンダ1に対して相対的な補助棒20のポジションを感知する軸方向ポジションセンサ40が装備される。軸方向ポジションセンサ40は、軸Xに沿って伸びかつ補助棒20に固定されるコア41を含み、コアはシリンダ42の中を貫通する。センサは、誘導または線形電圧差動変換器(LVDT)タイプであることが望ましい。
【0037】
アクチュエータが正常モードで使用されるか非常モードで使用されるかに関係なく、センサ40はいつでもシリンダ1に対して相対的な補助棒20のポジションを示すのに役立つ。シリンダ1に対して相対的な主連棒2のポジションを知るためには、駆動モーター5が回転した数を数えればよい。
【0038】
本発明は上述の説明に限定されず、特許請求の範囲によって定義される範囲内の変形を包括する。
【0039】
特に、親ネジ9と主連棒2のナット10との間のはす歯接続は反転可能であると説明されているが、この接続は反転不可能でも良く、この場合主連棒2を伸ばすために駆動モーター5に電力を供給する必要がある。同様に、回転子36と主連棒2との間のはす歯接続は反転可能であると説明されているが、この接続は反転不可能でも良く、この場合、スリーブをロッキングポジションへ戻らせるために解除モーター33に電力を供給することが必要になる。
【0040】
主回転子5はカップラ8を通じて親ネジ9を直接駆動するが、駆動モーターと親ネジとの間に歯車装置を配置することができる。
【0041】
シリンダ内で主連棒をスライドさせる手段及び主連棒内で補助棒を保持する手段に電力が供給されると説明されているが、これらの手段は他のタイプのものでも良く、例えば液圧式とすることができる。
【0042】
図に示される制御された保持手段はキャッチ&ステップシステムを使用するが、制御された保持手段は他のタイプ例えばロッキングフィンガーまたはセグメントを使用するタイプのものでもよい。
【0043】
さらに、主連棒内での補助棒のスライドを制御する手段を装備することもできる。
【0044】
最後に、主連棒2に対して相対的な補助棒20の制動は、図4以下に示されるものなど様々な方法で実現することができる。
【0045】
図4(これ以前の図面と共通の要素の参照番号には100が加えられている)に示される第一の変形においては、ブッシング123はドライバ122によって直接駆動されず、増速歯車130を通じて駆動される。この例においては、歯車装置130は米国特許第2906143号(US−2906143)に示されるタイプの反転可能な減速歯車によって構成されるが、逆に、すなわち減速装置としてではなく増速装置として使用される。
【0046】
増速歯車130は、補助棒120上で回転しながら案内されフリーホイール125を通じてドライバ122によって回転されるインレットリング131を含む。インレット部材131は、歯付きリング134の相対する歯と協働する多少多い数の歯をその外面に持つ変形可能な円形壁133を有するベル132に固定される。歯付きリング134は補助棒120に固定されるので、回転が防止される。
【0047】
ベル132の歯とリング134の歯との間の協働は、ブッシング123に形成される楕円形断面のボールレースの中に受け入れられるボールの効果によって変形して2つの直径方向に相対する部分において歯を協働させる変形可能な円形壁133によってもたらされる。ブッシング123は、このように増速歯車130のアウトレット部材を形成する。歯車装置自体は周知であり、それ自体は本発明の一部を構成しない。この種の歯車装置は非常にコンパクトで軽量の配列を使用し、非常に高い約100程度の速度比を得ることができるようにすることが、判るはずである。
【0048】
このように、補助棒120が主連棒102から伸びるように駆動されるとき、ドライバ122はベル132を駆動するインレット部材131の回転を駆動し、それによってドライバ122の回転速度よりずっと大きい回転速度でブッシング123を回転させる。ブッシング123は軸方向に摩擦ワッシャ126に押し付けられ、これにこすり付けられ、それによって補助棒が伸びる速度の減速に寄与する。
【0049】
逆に、補助棒120が主連棒102の中に引っ込められるとき、ブッシングが補助棒120の引っ込みに対して抵抗しないように、フリーホイール125はドライバ122の回転運動が歯車装置130に従ってブッシング123に伝わるのを防ぐ。
【0050】
歯車装置130は、図1−3に示される実施形態におけるよりずっと速くブッシング123を回転させるのに役立つので、前進に対抗する同じ力を得ることを可能にする一方で、ブッシング123と摩擦ワッシャ126との間の摩擦トルクを減少する。
【0051】
図5は、2つの相違点を除いて上記の変形と非常に似ている。第一の相違点は、フリーホイール125及びインレット部材131が省略されていて、ベル132がドライバ122に直接固定される点にある。従って、主連棒102の中への補助棒120への引込み中、補助棒120の動きに対抗する力があるだろう。ただし、引込み中ブッシング123は摩擦ワッシャ126に押し付けられないので、引込み方向の対抗力は、通常、伸長方向の対抗力より弱いことが判るはずである。
【0052】
第二の相違点は、ドライバ122が補助棒120を案内するベアリングを形成しない点にある。この場合、ベアリング機能は、補助棒120の内部タッピングを構成するネジ山の先端に接するように補助棒120の一端に形成される座面136によってもたらされる。ドライバ122は、このようにして、対抗力を発生させるメカニズムに回転駆動を与える機能を果たすことになる。
【0053】
別の変形が図6に示されている。この図において、図4及び5に示されるものと共通の要素の参照番号にはさらに100が加えられる。この図にはドライバ222、フリーホイール225を通じてドライバと一緒に回転するよう拘束されるインレット部材231を持つ歯車装置230、そのベル232及びその固定歯付きリング234が示されている。歯車装置のアウトレット部材を形成するブッシング223は摩擦ワッシャをこすらず、補助棒220に固定して取り付けられる巻線238に対面して円周に配置される永久磁石237を支える。
【0054】
このようにして、補助棒220が伸びているときにブッシング223が高速で回転駆動されると、回転する永久磁石237は巻線238に電流を誘導するので、ブッシング223に電磁対抗力を発生してその回転を制動するにはこの電流を電気抵抗(図には示されていない)に通せばよい。補助棒220の伸長はこのようにして電磁的に制動される。巻線238が誘導電流を送り込む抵抗を電子的に変動させるように、制動力を電子的に制御することができる。特に、補助棒220が伸びる速度に応じた対抗力を容易に発生させることができる。
【0055】
図7は、2つの相違点を除いて図6と非常に似た変形を示している。第一の相違点は、フリーホイール225及びインレット部材231が省略されて、ベル232がドライバ222に直接固定される点にある。フリーホイールが省略されるので、補助棒が伸びるときもこれが引っ込むときもブッシング223は回転するが、補助棒の引込み中対抗力は必ずしも発生しない。電磁対抗力を排除するためには巻線238が電流を送り込む回路を開けばよい。逆に、電源電流を巻線232に送り込むことによって、補助棒220の引っ込みを助ける駆動電磁力を発生することさえできる。同じ部材が、補助棒220の伸長中のブレーキとしてもこれを引っ込めるためのモーターとしても機能することができる。
【0056】
第二の相違点は、ドライバ222が補助棒220用のガイドベアリングを形成しない点にある。この場合、ベアリング機能は、補助棒220の内部タッピングを構成するねじ山先端に接するように補助棒220の一端に作られる座面236によってもたらされる。このようにして、ドライバ222はここでは対抗力を発生させるためのメカニズムに回転駆動を与える機能のためにのみ使用される。
【0057】
別の変形が図8に示されており、この図において、図6及び7に示されるものと共通の要素の参照番号にはさらに100が加えられる。図には、ドライバ322、フリーホイール325によってドライバと一緒に回転するよう拘束されるインレット部材331を有する歯車装置330、そのベル332及びその固定歯付きリング334が示されている。歯車装置のアウトレット部材を形成するブッシング323は、強磁性体のスリーブの形をとるジョー328の相補的段と協働する段327をその端に有する。ジョー328は、補助棒320に対して固定して取り付けられる電磁石338からの駆動を受けて軸方向に変位可能なので、補助棒320に対して固定して取り付けられる制動ワッシャ326を締め付ける。
【0058】
このようにして、補助棒320が伸びているときブッシング323が高速で回転駆動されると、ジョー328は同じ速度で回転する。ジョー328が摩擦ワッシャをこすって対抗力が発生するようにジョー328を摩擦ワッシャ326に引き込むには、電磁石338に電力を供給すればよい。この制動力は、ジョー328が摩擦ワッシャ326に引き付けられる力を増減するように電磁石338に送られる電源電流を電子的に変動させることによって、電子的に制御することができる。特に、補助棒320が伸びる速度に応じた対抗力を発生させるのは容易である。
【0059】
補助棒320が主連棒302の中に引っ込むとき、フリーホイールはブッシング323が回転するのを防ぐので、ジョー328が回転するのを防ぎ、それによって、電磁石338に電力が供給され続けても、ジョー328と摩擦ワッシャ326との間の摩擦を排除する。
【0060】
図9は、2つの相違点を除いて図8に示されるものと非常に似ている変形を示している。第一の相違点は、フリーホイール325及びインレット部材331が省略されて、ベル332がドライバ322に直接固定される点にある。フリーホイールが省略されるので、補助棒が伸びるときもこれが引っ込むときもブッシング323は回転するが、補助棒の引込み中対抗力は必ずしも発生しない。ジョーが摩擦ワッシャ326に引き付けられないようにし、従って対抗力を発生できないようにするためには、電磁石338への電力供給を止めればよい。
【0061】
第二の相違点は、ドライバ322が補助棒320用のガイドベアリングを形成しない点にある。ベアリング機能は、この場合、補助棒320の内部タッピングを構成するネジ山先端に接するように捕縄棒320の一端に形成される座面336によってもたらされる。従って、ここでは、ドライバ322は、対抗力を発生させるためのメカニズムに回転駆動を与える機能のためにのみ使用される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、主連棒を伸長するための制御された手段及び主連棒内での補助棒のスライドを制動するためのブレーキ手段を組み込む本発明の特定の実施形態を構成するアクチュエータの断面図であり、主連棒及び補助棒が引込みポジションのときのアクチュエータが示されている。
【図2】図2は、主連棒が伸長ポジションであり補助棒が引込みポジションであるときの図1と同様の図である。
【図3】図3は主連棒が引込みポジションであり補助棒が伸長ポジションであるときの図1と同様の図である。
【図4】図4は、1の変形した実施形態における主連棒内での補助棒のスライドを制動するためのブレーキ手段の部分断面図である。
【図5】図5は、別の変形した実施形態におけるブレーキ手段の部分断面図である。
【図6】図6は、別の特定の実施形態における主連棒内での補助棒のスライドを制動するためのブレーキ手段の部分断面図である。
【図7】図7は、変形した実施形態におけるブレーキ手段の部分断面図である。
【図8】図8は、さらに別の実施形態における主連棒内での補助棒のスライドを制動するための手段の部分断面図である。
【図9】図9は、変形した実施形態におけるブレーク手段の部分断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド軸(X)に沿って引込みポジションと伸長ポジションとの間で伸縮自在にスライドするように主連棒(2)が取り付けられるシリンダ(1)を含む伸縮アクチュエータであって、
前記主連棒は、前記スライド軸に沿って引込みポジションと伸長ポジションとの間で伸縮自在にスライドするように取り付けられる補助棒(20)を含み、前記主連棒内部に前記補助棒を前記引っ込みポジションに保持する、制御された保持手段(30、31、32、33)を含むことを特徴とする、アクチュエータ。
【請求項2】
前記制御された保持手段が、
前記主連棒によって支えられるキャッチ(30)と、
前記キャッチと協働するように前記補助棒によって支えられるステップ(31)と、
前記主連棒(2)によって支えられ、かつ前記補助棒のステップが通過する効果によってスリーブが前記キャッチを半径方向に自由に変形できるようにするリリースポジションと前記キャッチが半径方向に変形するのをスリーブが防ぐロッキングポジションとの間で軸方向に変位可能な、ロック可能なスリーブ(32)であって、
前記キャッチが前記ステップと協働して、前記補助棒の引込みポジションを画定する、スリーブと、
を含む、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記制御された保持手段が、前記補助棒がその引込みポジションを越えて多少前記主連棒(2)の中に引っ込めるようにしながら前記制御された保持手段の引込み可能な軸方向アバットメント(30)に押し付けられた前記補助棒(20)を保持して前記補助棒(20)の前記引込みポジションを画定するようにされた弾性部材(38)を含む、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記主連棒における伸長方向への前記補助棒のスライドを制動するスライディングブレーキ手段(22、23、25)を含む、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記ブレーキ手段が、
前記補助棒(20、120)が前記主連棒の中でスライドするときドライバが回転するようにその軸として前記スライド軸(X)を有するねじ接続を通じて前記主連棒と協働するドライバ(22、122)と、
少なくとも前記補助棒が前記主連棒から伸びているとき前記ドライバによって回転駆動されると前記補助棒上で前記スライド軸の周りを回転するように取り付けられるブッシング(23、123)と、
前記補助棒に取り付けられかつ前記ドライバによって回転駆動されるとき前記ブッシングがこする摩擦部材(26、126)と、
を含む、請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記ブレーキ手段が、
前記補助棒(220)が前記主連棒の中でスライドするときドライバが回転するようにその軸として前記スライド軸(X)を有するねじ接続を通じて前記主連棒と協働するドライバ(222)と、
少なくとも前記補助棒が前記主連棒から伸びているとき前記ドライバによって回転駆動されると前記補助棒上で前記スライド軸の周りを回転するように取り付けられるブッシング(223)であって、永久磁石(237)を支える、ブッシングと、
前記補助棒に固定して取り付けられる巻線(238)であって、前記ブッシングが前記ドライバによって回転駆動されるとき前記ブッシングによって支えられる前記永久磁石と電磁的に相互作用する、巻線と、
を含む、請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記ブレーキ手段が、
前記補助棒(320)が前記主連棒の中でスライドするときドライバが回転するようにその軸として前記スライド軸(X)を有するねじ接続を通じて前記主連棒(302)と協働するドライバ(322)と、
少なくとも前記補助棒が前記主連棒から伸びているとき前記ドライバによって回転駆動されると前記補助棒上で前記スライド軸の周りを回転するように取り付けられるブッシング(323)と、
前記ブッシング上で軸方向に移動するように取り付けられるジョー(328)と、
前記ブッシングが前記ドライバによって回転駆動されるとき前記ジョーが前記補助棒に固定して取り付けられる摩擦部材(326)をこするように、選択的に前記ジョーを引き込むように前記補助棒に固定して取り付けられる電磁石(338)と、
を含む、請求項4に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記ブレーキ手段が、さらに前記ブッシングが前記ドライバより速く回転するように前記ドライバと前記ブッシングとの間に配置される回転速度増加歯車(130、230、330)を含む、請求項5〜7のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記ドライバ(22)が前記主連棒(2)における前記補助棒(20)用のベアリングを形成する、請求項5〜7のいずれか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項10】
前記シリンダにおける前記主連棒のスライドを制御する、制御されたスライド手段(5、8、9、10)を含む、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項11】
前記制御されたスライド手段が、
モーター部材(5)と、
前記スライド軸に沿って伸びかつ前記モーター部材によって回転駆動されるように前記シリンダ(1)に回転可能に取り付けられる親ネジ(9)と、
前記主連棒(2)に固定されかつ前記親ねじと協働するナット(10)と、
前記シリンダに対して相対的に前記主連棒が回転するのを防ぐ、回転防止手段(3、4)と、
を含む、請求項10に記載のアクチュエータ。
【請求項12】
前記親ネジ(9)の一端が前記シリンダに取り付けられる第一のボールジョイント(14)によって案内され、別の端が前記補助棒(20)にスライド可能に取り付けられる第二のボールジョイント(15)によって案内される、請求項11に記載のアクチュエータ。
【請求項13】
前記親ネジ(9)が複動軸方向アバットメント(11)によって前記シリンダ(1)に対して相対的に軸方向に動くのを妨げられる、請求項11に記載のアクチュエータ。
【請求項14】
前記シリンダ(1)に対して相対的な前記補助棒(20)の変位を感知するセンサ(40)を含む、請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のアクチュエータを使用する方法であって、
前記保持手段が前記主連棒内部において前記補助棒を前記引込みポジションに保持するように制御される正常モードで、あるいは
少なくとも前記主連棒が前記シリンダ内で動かなくなる状況において、前記保持手段が前記補助棒を前記引っ込みポジションに保持するのをやめるよう制御される非常モードで、
アクチュエータを動作させるステップを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−170668(P2007−170668A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−344119(P2006−344119)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(591131361)メシエ−ブガッティ (64)
【氏名又は名称原語表記】MESSIER BUGATTI
【Fターム(参考)】