説明

アクティブマトリクス型ディスプレイ装置及びこれを備える電子機器

【課題】電圧検知素子の特性によらないメモリ回路内蔵画素を有するディスプレイ装置等を提供する。
【解決手段】各画素100は、表示素子Clcの電圧状態を記憶するキャパシタC11と、表示素子とキャパシタとの間に接続され、サンプリング期間中にオンするスイッチング素子Q12と、キャパシタとスイッチング素子との間に現れる電圧を検知する電圧検知回路Q13とを有する。ディスプレイ装置は、電圧検知回路Q13に接続されていない側のキャパシタC11の端子に接続され、サンプリング期間に、表示素子Clcの電圧状態の変動範囲内にある所定電圧をキャパシタへ印加する第1のキャパシタ電圧源20及び/又はスイッチング素子Q12に接続されていない側の表示素子Clcの端子に接続され、サンプリング期間に、表示素子の電圧状態の変動範囲内にある所定電圧を表示素子へ印加する第2のキャパシタ電圧源40を更に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、行及び列のマトリクス状に配置された複数の画素を有するアクティブマトリクス型ディスプレイ装置及びこれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアクティブマトリクス型ディスプレイ装置では、動画又は静止画のいずれの表示モードでも同じようにドライバによって画素へデータが書き込まれていた。この場合に、静止画が表示されている間は常に、同じデータが画素に書き込まれる。そこで、各画素にメモリを設け、静止画表示時には、メモリに記憶されたデータを画素に書き込むことで、ドライバの駆動を停止し、消費電力を削減することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この技術は、一般にMIP(Memory in Pixel)技術として知られている。
【0003】
一般的に、MIP技術では、各画素のメモリに記憶されたデータを保持するために、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)が用いられる。SRAMがトランジスタによる順序回路で構成される一方、DRAMはトランジスタ及びキャパシタ各1つずつで構成されるので、回路面積の縮小化及び画素ピッチの狭小化の点で、DRAMの方が有利である。しかし、DRAMは、キャパシタに蓄えられた微小電荷を保持するためにリフレッシュ動作を要する。DRAMを用いた画素回路の例は、例えば、国際公開第2004/090854(A1)号パンフレット(特許文献2)に記載されている。
【0004】
図1は、DRAMの一般的な回路構成を表す。DRAMは、1つのトランジスタQ1及び1つのキャパシタC1を有する。トランジスタQ1のソース端子にはビット線11が接続され、ゲート端子にはワード線12が接続されている。キャパシタC1の一方の端子はトランジスタQ1のドレイン端子に接続され、他方の端子は接地されている。書込動作において、最初に、トランジスタQ1は、ワード線12を介してゲートに電圧を印加されることでオンする。続いて、2進データ“1”に相当する電圧がビット線11に供給されることにより、トランジスタQ1を介してキャパシタC1に電荷が蓄えられる。このようにキャパシタC1の充放電を利用して、DRAMは“1”又は“0”で表されるデータを記憶する1ビットメモリとして機能することができる。
【0005】
実際の使用においては、トランジスタQ1のドレイン端子とキャパシタC1との間の接続点には、更なるトランジスタQ2(図示せず。)のゲート端子が接続される。このトランジスタQ2は、トランジスタQ2のゲート端子に接続された側のキャパシタC1の端子にある電圧が所定値以上であるかどうかを検出するための電圧検知素子として働く。トランジスタQ1がワード線12を介してオンにされると、キャパシタC1にはビット線11を介して入力電圧Vinが印加される。このとき、トランジスタQ2のゲート端子には入力電圧Vinに等しい電圧Vが印加され、これによってトランジスタQ2はオンする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−328351号公報
【特許文献2】国際公開第2004/090854(A1)パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述したような従来のDRAM回路を用いた場合には、電圧検知のための電圧値が、電圧検知素子として用いられる素子の特性によって決まる閾値電圧によって制限されるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題を鑑み、電圧検知に用いられる素子の特性によらずに安定して動作可能なメモリ回路内蔵画素を有するアクティブマトリクス型ディスプレイ装置及びこれを備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のアクティブマトリクス型ディスプレイ装置は、行及び列のマトリクス状に配置された複数の画素を有するアクティブマトリクス型ディスプレイ装置であって、前記複数の画素の夫々は、表示素子と、前記表示素子の電圧状態がハイ又はローのいずれであるかを記憶するキャパシタと、前記表示素子と前記キャパシタとの間に接続され、前記表示素子の電圧状態が記憶されるサンプリング期間中にオンするスイッチング素子と、前記キャパシタと前記スイッチング素子との間に現れる電圧を検知する電圧検知回路とを有し、当該ディスプレイ装置は、前記電圧検知回路に接続されていない側の前記キャパシタの端子に接続され、前記サンプリング期間に、前記表示素子の電圧状態の変動範囲内にある所定電圧を前記キャパシタへ印加する第1のキャパシタ電圧源、及び/又は前記スイッチング素子に接続されていない側の前記表示素子の端子に接続され、前記サンプリング期間に、前記表示素子の電圧状態の変動範囲内にある所定電圧を前記表示素子へ印加する第2のキャパシタ電圧源を更に有する。
【0010】
このように、メモリ回路に用いられるキャパシタの、表示素子の一方の端子に接続される側とは反対の端子、及び/又は表示素子の他方の端子に所定電圧を印加することで、電圧検知回路の特性によらずに安定して動作可能なメモリ回路内蔵画素を有するアクティブマトリクス型ディスプレイ装置が提供される。
【0011】
本発明のアクティブマトリクス型ディスプレイ装置は、前記複数の画素へソースラインを介してデータを供給するソースドライバを更に有し、前記ソースドライバは前記第1のキャパシタ電圧源として動作し、前記キャパシタは前記ソースラインを介して前記ソースドライバへ接続される。また、前記第2のキャパシタ電圧源は、前記複数の画素へコモン電極ラインを介して接続されるコモンドライバであっても良い。
【0012】
このように、既存の構成を利用することで、専用の電圧源回路及びラインを設けることがなく、装置規模は維持される。
【0013】
前記電圧検知回路は、n形トランジスタ若しくはp形トランジスタ、又はインバータ回路、又は差動増幅回路である。
【0014】
このように、制御端子に印加される電圧に応じて動作する回路であれば、用途や使用に応じて、いずれの回路が電圧検知回路として用いられても良い。
【0015】
また、本発明のアクティブマトリクス型ディスプレイ装置は、画素に含まれる表示素子として液晶セルを用いる液晶ディスプレイ装置又は有機ELを用いるOLEDディスプレイ装置であっても良い。
【0016】
更に、本発明のアクティブマトリクス型ディスプレイ装置は、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、携帯オーディオプレーヤ及び携帯ゲーム機のような、電力消費が制限されるバッテリー駆動の携帯機器や、ポスターのように広告宣伝を表示するモニター等の電子機器に組み込まれて使用され得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、電圧検知に用いられる素子の特性によらずに安定して動作可能なメモリ回路内蔵画素を有するアクティブマトリクス型ディスプレイ装置及びこれを備える電子機器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一般的なDRAMの構成を表す。
【図2】本発明の一実施例に従うアクティブマトリクス型ディスプレイ装置の構成を表す。
【図3】本発明の一実施例に従う画素回路の例を表す。
【図4】図3に表される画素回路の動作の一例を表すタイミングチャートである。
【図5】n形トランジスタの電圧−抵抗特性を示す。
【図6】本発明の一実施例に従うソースドライバの構成を表す。
【図7】図3に表される画素回路の動作の他の例を表すタイミングチャートである。
【図8】本発明の一実施例に従う画素回路で用いられる電圧検知回路の例を示す。
【図9】本発明の一実施例に従うアクティブマトリクス型ディスプレイ装置を備えた電子機器の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0020】
図2は、本発明の一実施例に従うアクティブマトリクス型ディスプレイ装置の構成を表す。図2のディスプレイ装置1は、ディスプレイ部10と、ソースドライバ20と、ゲートドライバ30と、コモンドライバ40と、コントローラ50とを有する。
【0021】
ディスプレイ部10は、行及び列のマトリクス状に配置された複数の画素100を有する。ソースドライバ20は、ソースラインS〜Sを介して各画素へ接続され、画素へアナログ又はデジタルで画像データを供給する。ゲートドライバ30は、ゲートラインG〜Gを介して各画素のオン/オフを制御する。コモンドライバ40は、コモン電極ラインCOM〜COMを介して各画素へ接続され、各画素の駆動状態に従ってコモン電極ラインの電位を変化させる。コントローラ50は、ソースドライバ20、ゲートドライバ30及びコモンドライバ40を同期させ、それらの動作を制御する。
【0022】
各画素100は、ディスプレイ部10において、ソースラインS〜S及びゲートラインG〜Gの交差領域に位置し、表示素子(例えば、液晶セル又は有機EL等。)及び対応する画素内メモリを少なくとも各1つずつ有する。静止画像表示モードでは、各画素は、ソースラインS〜Sを介して伝送されるデータに代えて、内蔵されるメモリに記憶されたデータに基づき動作する。従って、静止画像表示モードでは、ソースドライバ20を停止させることが可能であり、一方、ディスプレイ部10は連続的に静止画を表示することができる。
【0023】
図3は、本発明の一実施例に従うアクティブマトリクス型ディスプレイ装置の画素回路の例を表す。
【0024】
図3の画素100は、例えば液晶セルのような表示素子Clc及び保持キャパシタCを有する画素容量Cpixと、第1のトランジスタQ11とを有する。表示素子Clcの一方の端子はコモン電極ラインCOMに接続され、他方の端子は、第1のトランジスタQ11を介してソースラインSに接続されている。第1のトランジスタQ11のゲート端子はゲートラインGに接続されている。保持キャパシタCの一方の端子は保持容量ラインLcsに接続され、他方の端子は、表示素子Clcと同じく、第1のトランジスタQ11を介してソースラインSに接続されている。代替的に、保持キャパシタCは、保持容量ラインLcsではなく、コモン電極ラインCOM又は次の行のゲートラインG(i−1)へ接続されても良い。ゲートドライバ30によってゲートラインGを介して第1のトランジスタQ11がオンされると、ソースラインSの電圧が表示素子Clcに印加され、表示素子Clcは光を放射する(すなわち、液晶セルの場合には、光を通すよう偏向する。)。なお、図3で、表示画素Clcは、例えば液晶セルのような容量性素子として表されているが、OLED(Organic Light-Emitting Diode)のような自発光ダイオードであっても良い。
【0025】
画素100は、更に、第2、第3及び第4のトランジスタQ12、Q13、Q14と、サンプリングキャパシタC11とを有する。サンプリングキャパシタC11の一方の端子はソースラインSに接続され、他方の端子は、第2のトランジスタQ12を介して、表示素子Clcと第1のトランジスタQ11との間の接続点に接続されている。第2のトランジスタQ12のゲート端子はサンプリングラインLsamに接続されている。第3のトランジスタQ13及び第4のトランジスタQ14は直列に接続されて、表示素子Clcと第1のトランジスタQ11との間の接続点とソースラインSとの間に挿入されている。第3のトランジスタのゲート端子は、サンプリングキャパシタC11と第2のトランジスタQ12との間の接続点に接続されている。第4のトランジスタQ14のゲート端子は、リフレッシュラインLrefに接続されている。サンプリングキャパシタC11並びに第2及び第3のトランジスタQ12、Q13はDRAMを構成しており、中でも第3のトランジスタQ13は電圧検知素子に相当する。
【0026】
ここで、本実施例に従うディスプレイ装置がノーマリーブラックの液晶ディスプレイであるとする。このような装置において、以下、白表示時の反転駆動を例として、図3に表される画素回路の動作を説明する。
【0027】
図4は、図3に表される画素回路の動作の一例を表すタイミングチャートである。
【0028】
初期状態(〜T11)で、第1のトランジスタQ11を介してソースSに接続された側の画素容量Cpixの端子の電圧(以下、「画素電圧」と称する。)Vpixはハイ(例えば、5ボルト(V)。)であり、一方、画素容量Cpixの他方の端子、すなわち、コモン電極ラインCOMの電位はコモンドライバ40によってロー(例えば、0V。)に駆動されている。このとき、第1、第2、第3及び第4のトランジスタQ11〜Q14はオフ状態である。
【0029】
時間T11で、現在の画素電圧Vpixをサンプリングするために、コントローラ50によってサンプリングラインLsamがハイに駆動される。このとき、第2のトランジスタQ12はオンする。よって、第2のトランジスタQ12とサンプリングキャパシタC11との間に現れる電圧(以下、「サンプリング電圧」と称する。)Vは、ハイに相当する電圧(=5V)を示す。その後、時間T12でサンプリングラインLsamがローに駆動されたとしても、キャパシタC11によって、サンプリング電圧Vはハイのまま保持される。
【0030】
また、サンプリングラインLsamがハイであるサンプリング期間T11〜T12の間、ソースドライバ20によって、ソースラインSには、ハイに相当する電圧からローに相当する電圧の間にある所定の中間電圧Vmid(例えば、1.25V。)が供給される。
【0031】
続いて、期間T13〜T14の間、画素容量Cpixをプリチャージするために、ゲートラインGがゲートドライバ30によってハイに駆動され、同時に、ソースラインSがソースドライバ20によってハイに駆動される。このとき、第1のトランジスタQ11はオンし、画素容量CpixをソースラインSと接続する。また、プリチャージ期間の開始時T13に、コモン電極ラインCOMはコモンドライバ40によってハイに駆動される。
【0032】
プリチャージ期間T13〜T14の終了後、時間T15で、コントローラ50によってリフレッシュラインLrefがハイに駆動される。このとき、第4のトランジスタQ14はオンする。よって、第3のトランジスタQ13のソース端子はソースラインSと接続される。プリチャージ期間T13〜T14が終了すると、ソースドライバ20によってソースラインSはロー(=0V)に駆動され、よって、第3のトランジスタQ13のソース端子の電圧は同じくロー(=0V)である。また、第3のトランジスタQ13のゲート端子には、サンプリング期間T11〜T12の間にソースラインSに中間電圧Vmidが存在していたことにより、サンプリング電圧V=Vpix−Vmidが現れる。よって、第3のトランジスタQ13はオンする。これにより、画素容量Cpixは、第3のトランジスタQ13及び第4のトランジスタQ14を介してソースラインSと接続され、画素電圧Vpixはロー(=0V)となる。その後、時間T16で、リフレッシュラインLrefは再びローに駆動される。
【0033】
最終的に、画素電圧Vpix及びコモン電圧Vcomは、夫々初期状態から反転されて、ハイ/ローが入れ替わる。
【0034】
この状態で、次のサンプリングタイミングT21で、現在の画素電圧Vpixをサンプリングするために、コントローラ50によってサンプリングラインLsamがハイに駆動される。このとき、第2のトランジスタQ12はオンする。よって、第2のトランジスタQ12とサンプリングキャパシタC11との間に現れるサンプリング電圧Vは、画素容量Cpixに接続されてロー(=0V)を示す。その後、時間T22で、サンプリングラインLsamはローに駆動される。
【0035】
また、サンプリングラインLsamがハイであるサンプリング期間T21〜T22の間、ソースドライバ20によって、ソースラインSには、ハイに相当する電圧からローに相当する電圧の間にある所定の中間電位Vmid(例えば、1.25ボルト。)が供給される。
【0036】
続いて、期間T23〜T24の間、画素容量Cpixをプリチャージするために、ゲートラインGがゲートドライバ30によってハイに駆動され、同時に、ソースラインSがソースドライバ20によってハイに駆動される。このとき、第1のトランジスタQ11はオンし、画素容量CpixをソースラインSと接続する。よって、画素電圧Vpixはハイとなる。また、プリチャージ期間の開始時T23に、コモン電極ラインCOMはコモンドライバ40によってローに駆動される。
【0037】
プリチャージ期間T23〜T24の終了後、時間T25で、コントローラ50によってリフレッシュラインLrefがハイに駆動される。このとき、第4のトランジスタQ14はオンする。よって、第3のトランジスタQ13のソース端子はソースラインSと接続される。プリチャージ期間T13〜T14が終了すると、ソースドライバ20によってソースラインSはロー(=0V)に駆動され、よって、第3のトランジスタQ13のソース端子の電圧は同じくロー(=0V)である。また、第3のトランジスタQ13のゲート端子には、サンプリング期間T21〜T22の間にソースラインSに中間電圧Vmidが存在していたことにより、サンプリング電圧V=Vpix−Vmid<0Vが現れる。よって、第3のトランジスタQ13はオフしたままである。その後、時間T26で、リフレッシュラインLrefはローにされる。
【0038】
最終的に、画素電圧Vpix及びコモン電圧Vcomは、夫々再び反転されて、ハイ/ローが入れ替わり、初期状態に戻る。
【0039】
このように、本発明の一実施例に従う画素回路では、サンプリング期間中に、サンプリングキャパシタC11の、画素容量Cpixに接続される側とは反対の端子に、ソースラインSを介して、ハイに相当する電圧からローに相当する電圧の間にある所定の中間電圧Vmidが印加される。以下、サンプリング期間中に所定の中間電位Vmidが印加される必要性について説明する。
【0040】
サンプリング期間の前、すなわち、画素容量CpixがサンプリングキャパシタC11と接続される前の回路全体の電荷Qは:
=Cpix(Vpix−Vcom)+C11(V−VSi
と表される。なお、VSiはソースラインSの電圧である。
【0041】
次に、サンプリング期間中、すなわち、第2のトランジスタQ12がオンしたことにより画素容量CpixがサンプリングキャパシタC11と接続された場合の回路全体の電荷Qは:
=Cpix(V−Vcom)+C11(V−VSi
と表される。なお、Vは画素容量CpixとサンプリングキャパシタC11との間に現れる電圧である(この場合、V=Vpix=V)。
【0042】
ここで、電荷保存の法則よりQ=Qであるから、電圧Vは:
=(Vpix+V・C11/Cpix)/(1+C11/Cpix
と求まる。一般に、C11/Cpix〜0と考えることができるから、最終的に、電圧Vは:
=Vpix
となる。よって、サンプリング期間中にサンプリングキャパシタC11に蓄積される電荷Qは:
=C11(Vpix−VSi)=C11(Vpix−Vmid
となる。この電荷は、サンプリング期間の終了後に第2のトランジスタQ12がオフするため、サンプリングC11に保持される。
【0043】
その後、リフレッシュ期間に、第2のトランジスタQ12はオフしたままであるが、ソースラインSの電圧VSiが0Vに変化する。このときのサンプリング電圧VをVとすると、電荷保存の法則により:
=C11(Vpix−Vmid)=C11(V−0)
が成立する。従って、電圧Vは:
=Vpix−Vmid
である。このように、リフレッシュ期間中のサンプリング電圧Vは、サンプリング期間中にソースラインSを介して印加された所定の中間電圧Vmidの分だけ下にシフトする。
【0044】
図5は、n形トランジスタの電圧−抵抗特性を示す。図5(a)の電圧−抵抗特性曲線501は、所定の閾値電圧Vth(通常、約0.6ボルト。)を有する抵抗がハイからロー又はローからハイに変化することを示す。このように、トランジスタのオン/オフ切替は、閾値電圧Vthを境にして如何なる傾きも有さずに生ずることが理想的である。しかし、実際には、トランジスタの電圧−抵抗特性は、図5(b)で曲線502及び503によって示されるように、オン/オフ切替の際になだらかに変化する。更に、トランジスタは、素子間及びロット間で、例えば、異なる曲線502及び503で表されるように、異なる電圧−抵抗特性を有する。このようなn形トランジスタは、特に、本発明の一実施例に従う画素回路で第3のトランジスタQ13として用いられる場合には、図5(b)の電圧−抵抗特性曲線503のように、ロー(Low)側での動作が不安定である。このように、検知電圧素子によって検知される電圧は、検知電圧素子として用いられるトランジスタの特性によって決まる閾値電圧によって制限される。しかし、このような問題は、図5(c)で曲線504及び505によって示されるように、トランジスタのゲート端子に印加される検知電圧の変化範囲の中心をシフトさせることによって、解消され得る。
【0045】
このように、本発明の一実施例に従う画素回路は、サンプリング期間中に、サンプリングキャパシタC11の、画素容量Cpixに接続される側とは反対の端子に、ソースラインSを介して、所定の中間電位Vmidが与えられることによって、電圧検知素子として用いられる第3のトランジスタQ13の閾値電圧に制限されずに安定して動作することができる。
【0046】
図6は、本発明の一実施例に従うソースドライバの構成を表す。
【0047】
ソースドライバ20は、制御部21、レジスタ部22、デジタル−アナログ変換部(D/A)23、及びバッファリング/増幅部24を有する。制御部21は、外部の又は内蔵する記憶装置に記憶されたプログラム25に従って、ソースドライバ20の各部の動作を制御することができる。レジスタ部22は、ディスプレイ装置本体のコントローラ(図示せず。)から供給されるデジタル画像データを一時的に格納することができる。D/A23は、レジスタ部22から出力されるデジタルデータ信号をアナログデータ信号に変換することができる。バッファリング/増幅部24は、D/A23から出力されるアナログデータ信号又はレジスタ部22から直接出力されるデジタルデータ信号に対してバッファリング及び増幅を行い、ソースラインS〜Sを介してディスプレイ部の各画素へ供給することができる。また、D/A23は、画素回路のサンプリング期間中に、制御部21からの信号に応答して、ソースラインSへ所定の中間電圧Vmidを供給するよう動作する。
【0048】
このように、本実施例で用いられるソースドライバ20は、画素内で表示素子の電圧状態がハイ又はローのいずれであるかを記憶するキャパシタC11の、表示素子に接続されない側の端子に接続され、サンプリング期間T11〜T12に、表示素子の電圧状態の変動範囲内にある所定電圧VmidをキャパシタC11へ印加する第1のキャパシタ電圧源として動作することができる。
【0049】
代替的に、ソースドライバ20及びソースラインSとは別に、キャパシタC11へ所定の中間電圧Vmidを供給するための専用のキャパシタ電圧源及び専用のラインが設けられても良い。これは、ソースドライバの仕様を変更することができない場合に有利である。
【0050】
図7は、図3に表される画素回路の動作の他の例を表すタイミングチャートである。
【0051】
図7に表される例は、サンプリング期間中に中間電位VmidがソースラインSではなくコモン電極ラインCOMに適用される点で、図4に表される例と異なる。また、本例で、中間電位Vmidは負の大きさを有する。
【0052】
サンプリング期間の前、すなわち、画素容量CpixがサンプリングキャパシタC11と接続される前の回路全体の電荷Qは:
=Cpix(Vpix−Vcom)+C11(V−VSi
と表される。なお、VSiはソースラインSの電圧である。
【0053】
次に、サンプリング期間中、すなわち、第2のトランジスタQ12がオンしたことにより画素容量CpixがサンプリングキャパシタC11と接続された場合の回路全体の電荷Qは:
=Cpix(V−Vcom−Vmid)+C11(V−VSi
と表される。なお、Vは画素容量CpixとサンプリングキャパシタC11との間に現れる電圧である(この場合、V=Vpix=V)。
【0054】
ここで、電荷保存の法則よりQ=Qであるから、電圧Vは:
=(Vpix+Vmid+V・C11/Cpix)/(1+C11/Cpix
と求まる。一般に、C11/Cpix〜0と考えることができるから、最終的に、電圧Vは:
=Vpix+Vmid
となる。よって、サンプリング期間中にサンプリングキャパシタC11に蓄積される電荷Qは:
=C11(Vpix+Vmid−VSi
となる。この電荷は、サンプリング期間の終了後に第2のトランジスタQ12がオフするため、サンプリングC11に保持される。
【0055】
その後、リフレッシュ期間に、第2のトランジスタQ12はオフしたままであるが、ソースラインSの電圧VSiが0Vに変化する。このときのサンプリング電圧VをVとすると、電荷保存の法則により:
=C11(Vpix+Vmid−VSi)=C11(V−0)
が成立する。従って、電圧Vは:
=Vpix+Vmid
である。このように、リフレッシュ期間中のサンプリング電圧Vは、サンプリング期間中にコモンドライバ40によってコモン電極ラインCOMを介して印加された所定の中間電圧Vmidの分だけ上にシフトする。しかし、本例で中間電位Vmidは負の大きさを有しており、実際には、サンプリング電圧Vは中間電圧Vmidの分だけ下にシフトする。これにより、本発明の一実施例に従う画素回路は、図5を参照して上述されたように、電圧検知素子として用いられる第3のトランジスタQ13の閾値電圧に制限されずに安定して動作することができる。
【0056】
このように、本実施例で用いられるコモンドライバ40は、画素内で表示素子の電圧状態がハイ又はローのいずれであるかを記憶するキャパシタC11に接続されていない側の表示素子Clcの端子に接続され、サンプリング期間T11〜T12に、表示素子の電圧状態の変動範囲内にある所定電圧Vmidを表示素子Clcへ印加する第2のキャパシタ電圧源として動作することができる。
【0057】
代替的に、コモンドライバ40及びコモン電極ラインCOMとは別に、表示素子Clcへ所定の中間電圧Vmidを供給するための専用のキャパシタ電圧源及び専用のラインが設けられても良い。これは、コモンドライバの仕様を変更することができない場合に有利である。
【0058】
以上説明してきた実施例では、電圧検知素子としてn形トランジスタが用いられた。しかし、当然p形トランジスタが用いられて良く、あるいは、電圧検知素子に代えて、以下のような回路が用いられても良い。
【0059】
図8は、本発明の一実施例に従う画素回路で用いられる電圧検知回路の例を示す。図8には、理解を容易にするため、画素回路内に形成されるDRAM回路及びその出力に接続された電圧検知回路のみが示される。
【0060】
図8(a)は、図3に表される画素回路において、電圧検知素子としての第3のトランジスタQ13に代えて、電圧検知回路として、p形トランジスタ及びn形トランジスタから成るインバータ回路71が用いられる場合を示す。インバータ回路71の出力Outは、表示素子Clcと第1のトランジスタQ11との間の接続点に接続されている。
【0061】
図8(b)は、図3に表される画素回路において、電圧検知素子としての第3のトランジスタQ13に代えて、電圧検知回路として、カレントミラー回路及び定電流回路を用いた差動増幅回路72が用いられる場合を示す。差動増幅回路72の出力Outは、表示素子Clcと第1のトランジスタQ11との間の接続点に接続されている。
【0062】
いずれの電圧検知回路71、72も、サンプリング期間中にソースラインS又はコモン電極ラインCOMを介して所定の中間電位Vmidが適用されることによって、検知電圧の変化範囲の中心をシフトさせられる。
【0063】
図9は、本発明の一実施例に従うアクティブマトリクス型ディスプレイ装置を備えた電子機器の例である。
【0064】
図9の電子機器200は、ラップトップ型PCとして表されているが、例えば、携帯電話、ポータブルデジタルアシスタント(PDA)、カーナビゲーション装置又はポータブルゲーム機のような他の電子機器であっても良い。電子機器200は、画像等を表示可能なディスプレイモジュールを備えたディスプレイ装置1を有する。
【0065】
以上、発明を実施するための最良の形態について説明を行ったが、本発明は、この最良の形態で述べた実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を損なわない範囲で変更することが可能である。
【0066】
例えば、上記実施例は、電圧検知回路の検知電圧の変化範囲の中心をシフトするためにソースラインS又はコモン電極ラインCOMのいずれか一方に中間電位Vmidが適用される動作の例に関して説明されたが、これらの動作を組み合わせて具現化されることも可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 アクティブマトリクス型ディスプレイ装置
10 ディスプレイ部
20 ソースドライバ
21 制御部
22 レジスタ部
23 デジタル−アナログ変換部
24 バッファリング/増幅部
25 プログラム
30 ゲートドライバ
40 コモンドライバ
50 コントローラ
100 画素
200 電子機器
C11 サンプリングコンデンサ
lc 表示素子
pix 画素容量
〜G、G ゲートライン
ref リフレッシュライン
sam サンプリングライン
Q11〜Q14 トランジスタ
〜S、S ソースライン
com コモン電圧
pix 画素電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
行及び列のマトリクス状に配置された複数の画素を有するアクティブマトリクス型ディスプレイ装置であって、
前記複数の画素の夫々は、
表示素子と、
前記表示素子の電圧状態がハイ又はローのいずれであるかを記憶するキャパシタと、
前記表示素子と前記キャパシタとの間に接続され、前記表示素子の電圧状態が記憶されるサンプリング期間中にオンするスイッチング素子と、
前記キャパシタと前記スイッチング素子との間に現れる電圧を検知する電圧検知回路とを有し、
当該ディスプレイ装置は、
前記電圧検知回路に接続されていない側の前記キャパシタの端子に接続され、前記サンプリング期間に、前記表示素子の電圧状態の変動範囲内にある所定電圧を前記キャパシタへ印加する第1のキャパシタ電圧源、及び/又は
前記スイッチング素子に接続されていない側の前記表示素子の端子に接続され、前記サンプリング期間に、前記表示素子の電圧状態の変動範囲内にある所定電圧を前記表示素子へ印加する第2のキャパシタ電圧源を更に有する、アクティブマトリクス型ディスプレイ装置。
【請求項2】
前記複数の画素へソースラインを介してデータを供給するソースドライバを更に有し、
前記ソースドライバは前記第1のキャパシタ電圧源として動作し、
前記キャパシタは前記ソースラインを介して前記ソースドライバへ接続される、請求項1記載のアクティブマトリクス型ディスプレイ装置。
【請求項3】
前記第2のキャパシタ電圧源は、前記複数の画素へコモン電極ラインを介して接続されるコモンドライバである、請求項1記載のアクティブマトリクス型ディスプレイ装置。
【請求項4】
前記電圧検知回路は、n形トランジスタ又はp形トランジスタである、請求項1乃至3のうちいずれか一項記載のアクティブマトリクス型ディスプレイ装置。
【請求項5】
前記電圧検知回路は、インバータ回路である、請求項1乃至3のうちいずれか一項記載のアクティブマトリクス型ディスプレイ装置。
【請求項6】
前記電圧検知回路は、差動増幅回路である、請求項1乃至3のうちいずれか一項記載のアクティブマトリクス型ディスプレイ装置。
【請求項7】
液晶ディスプレイ装置である請求項1乃至6のうちいずれか一項記載のアクティブマトリクス型ディスプレイ装置。
【請求項8】
OLEDディスプレイ装置である請求項1乃至6のうちいずれか一項記載のアクティブマトリクス型ディスプレイ装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちいずれか一項記載のアクティブマトリクス型ディスプレイ装置を備える電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−160376(P2010−160376A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3172(P2009−3172)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(503002765)統寶光電股▲ふん▼有限公司 (37)
【Fターム(参考)】