説明

アクティブマトリクス型液晶表示装置及びその駆動方法

【課題】 演算量を比較的少なくしながらも水平クロストークを抑制することができるアクティブマトリクス型液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 表示すべき映像データを1画面分毎取得し、この取得した映像データに基づいて各走査ラインのオン期間を調整する。例えば、電圧印加時に黒を表示するノーマリホワイトモードの場合に、輝度値の総和が暗い走査ラインほど、オン期間Tonが長くなるように前記オン期間を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査ラインを順次走査するアクティブマトリクス型液晶表示装置及びその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリクス型液晶表示装置が開発されている。
【0003】
アクティブマトリクス型液晶表示装置は、複数の走査ライン(ゲートライン)及び信号ライン(ソースライン)がそれぞれ直交して配設され、各交点近傍に表示画素が形成されている。各表示画素は、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)を介して信号ライン及び走査ラインに接続された画素電極と共通電極との間に液晶が充填された画素容量(液晶容量)を有している。
【0004】
そして、走査ドライバ(ゲートドライバ)によって各走査ラインに走査信号(ゲートパルス信号)が順次印加されて選択状態(高電位状態)となると、対応する表示画素のTFTがオン動作する。そして、信号ドライバ(ソースドライバ)によって各信号ラインに印加された表示信号電圧がTFTを介して画素電極に印加されることにより、この表示信号電圧と共通電極に印加されているコモン電圧Vcomとの差電圧が対応する液晶容量に印加、充電され、液晶分子の配向状態が制御されることで、所望の画像が表示パネルに表示される。
【0005】
しかし、このようなアクティブマトリクス型液晶表示装置では、例えば、電圧印加時に黒を表示し電圧無印加時に白を表示するノーマリホワイトモードとした場合、図12(a)に示すように、グレー表示(中間階調表示)の背景領域200に対して黒ウインド201を表示しようとしたときに、図12(b)に示すように、この黒ウインド201の左右方向(走査ラインにそった方向)に位置する背景領域200aが本来の中間階調よりも白寄りになる水平クロストーク(横クロストーク)が発生することが知られている。
【0006】
また、例えば、電圧印加時に白を表示し電圧無印加時に黒を表示するノーマリブラックモードとして用いる場合、図13(a)に示すように、グレー表示(中間階調表示)の背景領域300に対して白ウインド301を表示しようとしたときに、図13(b)に示すように、この白ウインド301の左右方向(走査ラインにそった方向)に位置する背景領域300aが本来の中間階調よりも黒寄りになる水平クロストーク(横クロストーク)が発生することが知られている。
【0007】
そこで、従来よりこの水平クロストークを抑制する技術として、画素毎に入力映像信号を補正してこの補正データを画素に書き込むことが提案されている(特許文献1)。
【0008】
【特許文献1】特開2002−123209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述の従来技術においては、画素毎に入力映像信号を補正するため、近年の高解像度化に伴って所定時間内に実行される補正のための演算量が増大しこのための負加が増大していることが問題となっている。
【0010】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、演算量を比較的少なくしながらも水平クロストークを抑制することができるアクティブマトリクス型液晶表示装置及びその駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、請求項1に記載の発明にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置は、複数の走査ラインを順次走査するアクティブマトリクス型液晶表示装置であって、映像データを取得する映像データ取得部と、前記映像データ取得部により取得された映像データに基づいて走査ラインのスキャン速度を調整するスキャン速度調整部と、を備えたことを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置は、請求項1に記載のアクティブマトリクス型液晶表示装置において、前記スキャン速度調整部は、当該走査ラインに対応する映像データにおける輝度値の総和に基づいて当該走査ラインのスキャン速度を調整することを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置は、請求項2に記載のアクティブマトリクス型液晶表示装置において、前記スキャン速度調整部は、電圧印加時に黒を表示するノーマリホワイトモードの場合に、輝度値の総和が暗い走査ラインほど、スキャン速度が遅くなるように前記スキャン速度を調整することを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置は、請求項2に記載のアクティブマトリクス型液晶表示装置において、前記スキャン速度調整部は、電圧印加時に白を表示するノーマリブラックモードの場合に、輝度値の総和が明るい走査ラインほど、スキャン速度が遅くなるように前記スキャン速度を調整することを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置は、複数の走査ラインを順次走査するアクティブマトリクス型液晶表示装置であって、映像データを取得する映像データ取得部と、前記映像データ取得部により取得された映像データに基づいて各走査ラインのオン期間を調整するオン期間調整部と、を備えたことを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置は、請求項5に記載のアクティブマトリクス型液晶表示装置において、前記オン期間調整部は、当該走査ラインに対応する映像データにおける輝度値の総和に基づいて当該走査ラインのオン期間を調整することを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置は、請求項6に記載のアクティブマトリクス型液晶表示装置において、前記オン期間調整部は、電圧印加時に黒を表示するノーマリホワイトモードの場合に、輝度値の総和が暗い走査ラインほど、オン期間が長くなるように前記オン期間を調整することを特徴とする。
また、請求項8に記載の発明にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置は、請求項6に記載のアクティブマトリクス型液晶表示装置において、前記オン期間調整部は、電圧印加時に白を表示するノーマリブラックモードの場合に、輝度値の総和が明るい走査ラインほど、オン期間が長くなるように前記オン期間を調整することを特徴とする。
【0012】
また、請求項9に記載の発明にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置の駆動方法は、複数の走査ラインを順次走査するアクティブマトリクス型液晶表示装置の駆動方法であって、取得した映像データに基づいて走査ラインのスキャン速度を調整することを特徴とするアクティブマトリクス型液晶表示装置の駆動方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、演算量を比較的少なくしながらも水平クロストークを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のアクティブマトリクス型液晶表示装置の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
本発明に係るアクティブマトリクス型液晶表示装置1の概略全体構成は、図1に示すように、液晶パネル10と、走査ライン駆動回路11と、信号ライン駆動回路12とを備えている。
【0016】
液晶パネル10は、図2に示すように、マトリクス基板13と対向基板14とが所定の間隔を隔てて互いに平行となるようにシール材15により接着されるとともに、マトリクス基板13と対向基板14との間に液晶LCが充填されている。
【0017】
マトリクス基板13には、図3(a)に示すように、対向基板14との対向面側の表示領域Daに、互いに平行な複数の信号ラインS(i)と、互いに平行でかつ信号ラインS(i)に交差する複数の走査ラインG(j)とが設けられている。そして、隣接する2本の走査ラインと隣接する2本の信号ラインとで囲まれた各部分には、画素電極P(i,j)とスイッチング素子としてのTFT(i,j)が設けられている。なお、TFT(i,j)は、そのゲート電極がゲート信号線G(j)に、ドレイン電極が信号ラインS(i)に、ソース電極が画素電極P(i,j)に接続されている。ここで、i=1,2,・・・,m、j=1,2,・・・,n。
【0018】
また、対向基板14には、図3(b)に示すように、マトリクス基板13との対向面側の表示領域Daに、共通電極20が設けられている。そして、対向基板14は、共通電極20が少なくとも各画素電極P(i,j)に対向するように、マトリクス基板13に対して対向配置されている。
【0019】
つまり、液晶パネル10は、画素電極P(i,j)とそれに対向する共通電極20とで液晶LCを挟持し、各画素電極P(i,j)単位で、各表示画素を構成している。そして、各表示画素では、画素電極P(i,j)の電位とそれに対向する共通電極20の電位との差分からなる電圧が液晶LCに印加されるとともに、印加された電圧に応じて液晶LCの配向状態が変化し、これによって表示輝度の調整が可能となるように構成されている。
【0020】
走査ライン駆動回路11は、液晶パネル10に設けられた各走査ラインG(j)に対して、走査信号としてのハイレベルまたはローレベルの電圧を出力するためのものである。
【0021】
走査ライン駆動回路11は、信号ライン駆動回路12から入力されるゲートスタートパルス信号GSP、第1ゲートクロック信号GCK1、及び第2ゲートクロック信号GCK2に基づいて、各走査ラインG(j)に走査信号を出力する。なお、第1ゲートクロック信号GCK1と第2ゲートクロック信号GCK2とは互いに逆位相の矩形信号である。
【0022】
走査ライン駆動回路11の主要部における概略構成は、図4に示すように、例えば走査ライン数分(n段)の保持回路101、102、103、104、・・・が直列に配置されて構成される。そして、それぞれの保持回路は、入力端子INと、出力端子OUTと、リセット端子RSTと、クロック信号入力端子CKと、高電位電源入力端子Thと、低電位電源入力端子Tlとを有している。そして、1段目の保持回路101の入力端子INには1段目の入力信号としてゲートスタートパルス信号GSPが供給される。また、2段目以後の保持回路の入力端子INには前段の保持回路の出力信号が供給される。また、各保持回路のリセット端子RSTには次段の保持回路の出力信号が供給される。なお、最終段(例えばn段目)の保持回路(図示せず)のリセット端子RSTには、別途リセット信号ENDが供給される構成としてもよいし、1段目の保持回路101の出力信号が供給される構成としてもよい。
【0023】
さらに、奇数段目の保持回路のクロック信号入力端子CKには、第1ゲートクロック信号GCK1が供給され、偶数段目の保持回路のクロック信号入力端子CKには、第1ゲートクロック信号GCK1に対して逆位相となっている第2ゲートクロック信号GCK2が供給される。また、各保持回路の高電位電源入力端子Thには所定の高電圧Vhが供給され、各保持回路の低電位電源入力端子Tlには所定の低電圧Vlが供給される。
【0024】
各保持回路101、102、103、104、・・・は、図5に示すように、それぞれ、6個のMOS型電界効果トランジスタ(以下、MOSトランジスタと記す)T11〜T16と、コンデンサCとを有している。
【0025】
このような走査ライン駆動回路11は、図6に示すように、ゲートスタートパルス信号GSPに応じて当該フレームでの走査を開始するとともに、第1ゲートクロック信号GCK1及び第2ゲートクロック信号GCK2に応じて、所定の期間だけローレベル電圧Vglからハイレベル電圧Vghに切り換えるといった電圧出力を、最前段の走査ラインG(1)から順に最後段の走査ラインG(n)まで、走査ライン毎に行う。
【0026】
つまり、走査ライン駆動回路11は、走査ラインG(j)毎に、当該走査ラインG(j)に対応するTFT(i,j)を順次オン状態にし、このときに信号ラインS(i)に出力されているデータ電位を対応する画素電極P(i,j)に書き込む。
【0027】
なお、各走査ラインでは、第1ゲートクロック信号GCK1及び第2ゲートクロック信号GCK2における各クロック間隔Pwが調整されることによって、ハイレベル電圧Vghに維持される期間としてのオン期間Tonが可変可能に構成されている。例えば、図6では、走査ラインG(1)〜G(5)と走査ラインG(6)〜G(9)との間でオン期間Tonが異なるように、第1ゲートクロック信号GCK1及び第2ゲートクロック信号GCK2における各クロック間隔Pwが調整されている。
【0028】
信号ライン駆動回路12は、外部回路から入力される水平同期信号HS、垂直同期信号VS、映像データDATA、クロック信号CLKに基づいて、液晶パネル10に設けられた各信号ラインS(i)に対して、各信号ラインS(i)に対応するデータ電位(データ信号)を、所定のタイミングで出力するものである。
【0029】
また、信号ライン駆動回路12は、走査ライン駆動回路11に対して上述したゲートスタートパルス信号GSP、第1ゲートクロック信号GCK1、及び第2ゲートクロック信号GCK2を出力する。さらに、信号ライン駆動回路12は、共通電極20に対して第1ゲートクロック信号GCK1及び第2ゲートクロック信号GCK2に同期した矩形信号としての共通電位Vcomを出力する。
【0030】
信号ライン駆動回路12の機能ブロック構成は、図7に示すように、制御部21、サンプリングメモリ22、ホールドメモリ23、レベルシフタ24、DA変換回路(DAC)25、及び出力回路26からなる。
【0031】
サンプリングメモリ22は、クロック信号CLKに同期して、走査ライン一本分の画素に対応する映像データを取り込むためのものであり、信号ラインS(i)の数と同数のデータ格納領域を備えている。つまり、サンプリングメモリ22は、走査ライン毎に当該走査ラインに対応した映像データを取り込むとともに、当該取り込んだ映像データのそれぞれを、対応する信号ラインS(i)のデータ格納領域に格納する。
【0032】
サンプリングメモリ22が取り込んだ一水平期間分の映像データは、後段のホールドメモリ23からの要求にしたがって、サンプリングメモリ22からホールドメモリ23に転送される。ホールドメモリ23に映像データが転送されると、サンプリングメモリ22は、次の一水平期間分の映像データとして次の行の走査ラインに対応した映像データの取り込み状態に移る。
【0033】
ホールドメモリ23は、水平同期信号HSに基づいて、サンプリングメモリ22から一水平期間分の映像データを順次取得する。なお、ホールドメモリ23は、複数の走査ライン分(複数の水平期間分)、更には、複数のフレーム分(複数の画面分)に対応した映像データを蓄積することが可能なメモリ領域を有する。
【0034】
そして、ホールドメモリ23は、取得した映像データを、第1ゲートクロック信号GCK1及び第2ゲートクロック信号GCK2に基づいて、後段のレベルシフタ24に出力する。この際、ホールドメモリ23は、先入れ先出し処理となるように映像データを出力する。つまり、ホールドメモリ23は、対応する走査ラインG(j)がオン期間Tonのときに当該走査ラインG(j)に対応する映像データが信号ラインS(i)に出力されるように、映像データを一時的に蓄積して出力タイミングを調整している。
【0035】
レベルシフタ24は、次段のDA変換回路25に適合させるため、入力信号のレベルを昇圧等により変換して出力する。
【0036】
DA変換回路25は、制御部21から出力される極性信号REVに応じて、レベルシフタ24にてレベル変換されたデジタル形式の映像データをアナログ電圧に変換する。極性信号REVがハイ状態Vshであるとき、DA変換回路25は、レベルシフタ24から出力された映像データを正極性としてD/A変換する。一方、極性信号REVがロー状態Vslであるとき、DA変換回路25は、レベルシフタ24から出力された映像データを負極性としてD/A変換する。つまり、DA変換回路25は、極性信号REVがハイ状態Vshであるときは、液晶に印加される電圧が正極性となるように映像データをD/A変換し、極性信号REVがロー状態Vslであるときは、液晶に印加される電圧が負極性となるように映像データをD/A変換する。そして、DA変換回路25は、D/A変換したアナログ電圧を後段の出力回路26に出力する。
【0037】
出力回路26は、DA変換回路25から出力される電圧をデータ電位(データ信号)として、液晶パネル10の信号ラインS(i)に印加するものであり、バッファ回路として機能する。例えば差動増幅回路を用いたボルテージフォロア回路として構成されている。
【0038】
制御部21は、駆動タイミング調整用信号発生部30、共通電極駆動部31、極性信号発生部32を備えている。なお、制御部21には、外部から水平同期信号HS、垂直同期信号VS、クロック信号CLKが入力される。
【0039】
駆動タイミング調整用信号発生部30は、詳細は後述するが、映像データDATAとともに外部から入力されてくる水平同期信号HS、垂直同期信号VS、及びクロック信号CLKに基づいて、ゲートスタートパルス信号GSP、第1ゲートクロック信号GCK1、及び第2ゲートクロック信号GCK2を生成し、走査ライン駆動回路11などに出力するためのものである。
【0040】
共通電極駆動部31は、共通電極20に共通電位Vcomを供給するためのものである。具体的には、図8に示すように、共通電極駆動部31は、第1ゲートクロック信号GCK1及び第2ゲートクロック信号GCK2に同期して電位が切り替わるように共通電位Vcomを生成して、共通電極20へ供給する。ここで、共通電位Vcomは、ローレベル電位Vclとハイレベル電位Vchとからなる矩形信号である。また、共通電位Vcomは、フレーム毎に位相が反転するように供給される。
【0041】
極性信号発生部32は、DA変換回路25がD/A変換を行うときに、液晶LCに印加する電圧の極性を正極性とするか、負極性とするかを表す極性信号REVを発生するためのものである。ここでは、極性信号REVは、その電位がハイレベル電位Vshであるときに正極性を、ローレベル電位Vslであるときに負極性を示す。具体的には、図8に示すように、極性信号発生部32は第1ゲートクロック信号GCK1及び第2ゲートクロック信号GCK2に同期して極性が反転するように、極性信号REVを生成し、DA変換回路25へ出力する。そして、極性信号発生部32は、共通電位Vcomの電位変化に対応するように極性を反転させる。
【0042】
つまり、共通電極駆動部31及び極性信号発生部32は、液晶へ印加可能な最大電圧を、信号ラインS(i)に出力される映像データとしてのデータ電位を小さく設定しながらも大きくすることが可能なように、また、各走査ラインG(j)のオン期間Tonと同期が取れるように、共通電位Vcomまたは極性信号REVを出力する。
【0043】
以下、駆動タイミング調整用信号発生部30の動作について図9に示すフローチャートに基づいて詳述する。駆動タイミング調整用信号発生部30は、水平同期信号HS、垂直同期信号VS、及びクロック信号CLKに基づいて、外部から入力されてくる映像データDATAを例えば1画面分取得する(SA1)。
【0044】
そして、取得した当該1画面分の映像データの画像評価を行い、当該評価結果に基づいて第1ゲートクロック信号GCK1及び第2ゲートクロック信号GCK2を生成する。
【0045】
具体的には、取得した1画面分の映像データが、水平クロストークが視認されやすい映像データか否かの判定を行う(SA2)。この判定は、例えば、取得した1画面分の映像データが、予め登録されている複数のサンプル画像の何れかに合致するか否かによって判定することができる。サンプル画像は、例えばウインド形状やこのウインド内の階調値、更にはウインドの背景領域における階調値などから構成され、水平クロストークの発生しやすい条件が登録されている。
【0046】
取得した1画面分の映像データが、予め登録されている複数のサンプル画像の何れかに合致し、水平クロストークが視認されやすい映像データであった場合には(SA2/Y)、表示画面1行分、つまり走査ラインG(j)1本分に対応する映像データ毎に、当該走査ラインG(j)1本分に対応する映像データの輝度値の総和Yaを算出する(SA3)。
【0047】
ここで、駆動タイミング調整用信号発生部30には、各輝度値の総和Yaに対応させた第1ゲートクロック信号GCK1及び第2ゲートクロック信号GCK2のクロック間隔Pwが予め内部メモリに記憶されている。そして、駆動タイミング調整用信号発生部30は、算出した輝度値の総和Yaに対応するクロック間隔Pwを内部メモリから読み出し、このクロック間隔Pwが当該映像データを書き込む際のオン期間Tonとなるように、第1ゲートクロック信号GCK1及び第2ゲートクロック信号GCK2を生成し、上述したような各部に1走査分出力する(SA4)。第1ゲートクロック信号GCK1と第2ゲートクロック信号GCK2とは互いに逆位相の矩形信号となるように生成される。
【0048】
上述の輝度値の総和Yaの算出は、上段側の走査ラインG(j)に対応する映像データから順に行われ、これら映像データに対応するように第1ゲートクロック信号GCK1及び第2ゲートクロック信号GCK2が出力される。即ち上述したステップSA3−SA4の処理が上段側の走査ラインG(1)から下段側の走査ラインG(n)に対応する映像データまで順に実施され、1画面分(1フィールド分)の映像データに対して上述したステップSA3−SA4の処理が終了すると(SA5)ステップSA1に戻る。
【0049】
つまり、取得した1画面分の映像データが、予め登録されている複数のサンプル画像の何れかに合致し、水平クロストークが視認されやすい映像データであった場合には、表示画面1行分の映像データに基づいて当該映像データが書き込まれる走査ラインのオン期間Tonが設定されるように構成されている。換言すると、取得した1画面分の映像データに基づいて走査ライン毎にスキャン速度が可変調整されるように構成されている。このとき、オン期間Tonが長くなるほどスキャン速度は遅く、オン期間Tonが短くなるほどスキャン速度は速いことになる。
【0050】
一方、取得した1画面分の映像データが、予め登録されている複数のサンプル画像の何れにも合致せず、水平クロストークが視認されにくい映像データであった場合には(SA2/N)、予め定められているクロック間隔Pwを取得する。そして、各走査ラインでのオン期間Tonがこのクロック間隔Pwで共通となるように第1ゲートクロック信号GCK1及び第2ゲートクロック信号GCK2を生成するとともに、上述したような各部に1画面分(1フィールド分)出力し(SA6)、ステップSA1に戻る。
【0051】
なお、取得した1画面分の映像データに対する1発目の第1ゲートクロック信号GCK1及び第2ゲートクロック信号GCK2を出力する際には、当該画面の表示開始タイミングとしてゲートスタートパルス信号GSPを生成し、1発目の第1ゲートクロック信号GCK1及び第2ゲートクロック信号GCK2と同時にこれをホールドメモリ23に出力する構成とすることが好ましい。これにより、ホールドメモリ23が出力する映像データと、当該画像評価を行った映像データとの同期を得ることができる。
【0052】
ところで、当該アクティブマトリクス型液晶表示装置1を、例えば、電圧印加時に黒を表示し電圧無印加時に白を表示するノーマリホワイトモードとして用いる場合には、図10(a)に示すように、輝度値の総和Yaが暗い領域(走査ライン)ほど、クロック間隔Pwが長くなるように設定する。これにより、輝度値の総和Yaが暗い領域(走査ライン)ほど、オン期間Tonが長くなるため、データ電位を各画素に目標書き込み電位まで十分に書き込むことができる。よって、グレー表示(中間階調表示)の背景領域200に対して黒ウインド201を表示しようとしたときに、この黒ウインド201の左右方向(走査ラインにそった方向)に位置する背景領域200aが本来の中間階調よりも白寄りになってしまうことを防止できる。
【0053】
また、当該アクティブマトリクス型液晶表示装置1を、例えば、電圧印加時に白を表示し電圧無印加時に黒を表示するノーマリブラックモードとして用いる場合には、図10(b)に示すように、輝度値の総和Yaが明るい領域(走査ライン)ほど、クロック間隔Pwが長くなるように設定する。これにより、輝度値の総和Yaが明るい領域(走査ライン)ほど、オン期間Tonが長くなるため、データ電位を各画素に目標書き込み電位まで十分に書き込むことができる。よって、グレー表示(中間階調表示)の背景領域300に対して白ウインド301を表示しようとしたときに、この白ウインド301の左右方向(走査ラインにそった方向)に位置する背景領域300aが本来の中間階調よりも黒寄りになってしまうことを防止できる。
【0054】
このように、本実施の形態のアクティブマトリクス型液晶表示装置1は、当該アクティブマトリクス型液晶表示装置1に表示される映像に基づいて走査ラインのスキャン速度を可変させることで、水平クロストークの発生を防止している。また、映像データそのものを補正することなく各走査ラインのオン期間を可変させているので、比較的少ない演算量で水平クロストークの発生を防止することができる。
【0055】
また、本願発明では、データ電位の書き込み不足が発生しやすい構成のアクティブマトリクス型液晶表示装置1ほどその効果を顕著に得ることができる。例えば、アクティブマトリクス型液晶表示装置1の解像度(画素数)が多くなり、各走査ラインに割り当てられるオン期間が比較的短くなるような場合や、アクティブマトリクス型液晶表示装置1の画面サイズが物理的に大きくなり、走査ラインや信号ラインでの各波形が比較的なまってしまうような場合に水平クロストークの抑制効果が大きくなる。
【0056】
なお、上述の実施の形態では、各走査ラインが順次オン期間Tonになる際に、図6に示したように、オン期間の開始タイミングが前段側の走査ラインのオン期間の修了タイミングの影響を受けてしまう場合について説明したが、図11に示すように、オン期間Tonの開始タイミングをフレーム期間に対して予め定められたタイミングとし、オン期間Tonの終了タイミングを映像データ基づいて可変することで各走査ラインのオン期間Tonを設定する構成としてもよい。このように構成すれば、フレーム周期を一定に保ちやすくなり好ましい。
【0057】
また、上述の実施の形態では、映像データの輝度値の総和を算出し、これに基づいてオン期間Tonまたはスキャン速度を設定する構成について説明したが、走査ラインに対応させて、平均輝度や、他の走査ラインと間の輝度に対する標準偏差を算出し、これらに基づいてオン期間Tonまたはスキャン速度を設定する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】アクティブマトリクス型液晶表示装置の概略構成図
【図2】液晶パネルの概略断面構成図
【図3】表示領域の説明図であり、(a)はマトリクス基板の平面図、(b)は対向基板の平面図
【図4】走査ライン駆動回路の概略構成図
【図5】保持回路の概略構成図
【図6】各走査ライン信号のタイミングチャート
【図7】信号ライン駆動回路の概略構成図
【図8】共通電位及び極性信号のタイミングチャート
【図9】駆動タイミング調整用信号発生部の動作を説明するためのフローチャート
【図10】輝度値の総和Yaとクロック間隔との関係の説明図であり、(a)はノーマリホワイトモード、(b)はノーマリブラックモード
【図11】別実施形態における各走査ライン信号のタイミングチャート
【図12】ノーマリホワイトモードにおける水平クロストークを説明するための図
【図13】ノーマリブラックモードにおける水平クロストークを説明するための図
【符号の説明】
【0059】
1:アクティブマトリクス型表示装置
10:液晶パネル
11:走査ライン駆動回路
12:信号ライン駆動回路
21:制御部
30:駆動タイミング調整用信号発生部
GSP:ゲートスタートパルス信号
GCK1:第1ゲートクロック信号
GCK2:第2ゲートクロック信号
S(i):信号ライン(i=1,2,3,・・・,m)
G(j):走査ライン(j=1,2,3,・・・,n)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査ラインを順次走査するアクティブマトリクス型液晶表示装置であって、
映像データを取得する映像データ取得部と、
前記映像データ取得部により取得された映像データに基づいて走査ラインのスキャン速度を調整するスキャン速度調整部と、を備えたことを特徴とするアクティブマトリクス型液晶表示装置。
【請求項2】
前記スキャン速度調整部は、当該走査ラインに対応する映像データにおける輝度値の総和に基づいて当該走査ラインのスキャン速度を調整することを特徴とする請求項1記載のアクティブマトリクス型液晶表示装置。
【請求項3】
前記スキャン速度調整部は、電圧印加時に黒を表示するノーマリホワイトモードの場合に、輝度値の総和が暗い走査ラインほど、スキャン速度が遅くなるように前記スキャン速度を調整することを特徴とする請求項2記載のアクティブマトリクス型液晶表示装置。
【請求項4】
前記スキャン速度調整部は、電圧印加時に白を表示するノーマリブラックモードの場合に、輝度値の総和が明るい走査ラインほど、スキャン速度が遅くなるように前記スキャン速度を調整することを特徴とする請求項2記載のアクティブマトリクス型液晶表示装置。
【請求項5】
複数の走査ラインを順次走査するアクティブマトリクス型液晶表示装置であって、
映像データを取得する映像データ取得部と、
前記映像データ取得部により取得された映像データに基づいて各走査ラインのオン期間を調整するオン期間調整部と、を備えたことを特徴とするアクティブマトリクス型液晶表示装置。
【請求項6】
前記オン期間調整部は、当該走査ラインに対応する映像データにおける輝度値の総和に基づいて当該走査ラインのオン期間を調整することを特徴とする請求項5記載のアクティブマトリクス型液晶表示装置。
【請求項7】
前記オン期間調整部は、電圧印加時に黒を表示するノーマリホワイトモードの場合に、輝度値の総和が暗い走査ラインほど、オン期間が長くなるように前記オン期間を調整することを特徴とする請求項6記載のアクティブマトリクス型液晶表示装置。
【請求項8】
前記オン期間調整部は、電圧印加時に白を表示するノーマリブラックモードの場合に、輝度値の総和が明るい走査ラインほど、オン期間が長くなるように前記オン期間を調整することを特徴とする請求項6記載のアクティブマトリクス型液晶表示装置。
【請求項9】
複数の走査ラインを順次走査するアクティブマトリクス型液晶表示装置の駆動方法であって、
取得した映像データに基づいて走査ラインのスキャン速度を調整することを特徴とするアクティブマトリクス型液晶表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−128414(P2009−128414A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300448(P2007−300448)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】