アグリコシル抗CD154(CD40リガンド)抗体およびその使用
本発明は、アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体に関し、該抗体のFc部分のCH2ドメインにおける保存されたN連結部位における修飾を特徴としている。本発明はまた、このようなアグリコシル抗CD154抗体またはその抗体誘導体を用いた免疫応答関連疾患の処置および望ましくない免疫応答の阻害に関する。特に本発明は、CD154を認識するアグリコシル抗CD154抗体を提供する。より詳細には、本発明はヒト化アグリコシル化抗CD154抗体、すなわち「アグリコシルhu5c8」、およびマウスアグリコシル化抗CD154抗体、すなわち「アグリコシルmuMR1」を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明はCD154およびCD40分子の相互作用をブロックするアグリコシル抗CD154抗体またはその抗体誘導体に関する。さらにまた、本発明はアグリコシル抗CD154抗体および抗体誘導体を産生するための方法を提供する。本発明の抗体および抗体誘導体は望ましくない免疫応答が関与し、そしてCD154−CD40相互作用により媒介される疾患の治療および防止において有用である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
体液性および細胞媒介性の免疫の発生は抗原提示細胞(APC)およびエフェクターT細胞との活性化ヘルパーT細胞の相互作用により調整されている。ヘルパーT細胞の活性化は抗原特異性T細胞レセプター(TCR)とその同属体ペプチドMHCリガンドとの相互作用に依存しているのみならず、多くの細胞接着および同時刺激分子による協調的な結合および活性化を必要とする[Salazar−Fontana,2001]。
【0003】
重要な同時刺激分子はCD154(CD40リガンド、CD40L、gp39、T−BAM、T細胞活性化分子、TRAPとしても知られている)、すなわちCD4+T細胞の表面において活性化依存性の一時的に制限される態様において発現されるII型膜貫通タンパク質である。CD154はまた一部のCD8+T細胞、好塩基球、肥満細胞、好酸球、ナチュラルキラー細胞、B細胞、マクロファージ、樹状細胞および血小板上においても活性化後に発現される。
【0004】
CD154のカウンターレセプターであるCD40はAPCを含む多くの細胞型の表面上で構成的に広範に発現されるI型膜タンパク質である[Foy,1996]。
【0005】
CD154によるCD40を介したシグナリングはCD40レセプター担持細胞の活性化および旨適CD4+T細胞プライミングをもたらす事象のカスケードを開始させる。より詳しくは、CD154およびCD40の同属体相互作用はB細胞の抗体分泌細胞およびメモリーB細胞への分化を促進する[Burkly,2001]。さらに、CD154−CD4相互作用はマクロファージおよび樹状細胞の活性化およびナチュラルキラー細胞および細胞毒性Tリンパ球の発生を介して細胞媒介免疫を促進する[Burkly,2001]。
【0006】
体液性および細胞媒介性の免疫応答の両方の機能の調節におけるCD154の重要な役割は治療的免疫モジュレーションのためのこの経路の阻害剤の使用に関する関心を大いに高めた[米国特許5,474,771]。抗CD154抗体自体は他の治療用タンパク質または遺伝子療法、アレルゲン、自己免疫および移植に対する免疫応答の種々のモデルにおいて有益であることがわかっている[米国特許5,474,771;Burkly,2001]。
【0007】
CD40−CD154相互作用は幾つかの実験的に誘導された自己免疫疾患、例えばコラーゲン誘導関節炎、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、卵巣炎、結腸炎、薬剤誘導性ループス腎炎において重要であることがわかっている。特に、これらのモデルのすべてにおける疾患の誘導は抗原投与の時点においてCD154拮抗剤によりブロックできることがわかっている[Burkly,2001]。
【0008】
抗CD154拮抗剤を用いた疾患のブロックはまた自発的自己免疫疾患、例えばインスリン依存性糖尿病およびループス腎炎の動物モデルにおいて、並びに、移植片対宿主疾患、移植臓器、肺線維症およびアテローム性動脈硬化症のモデルにおいても観察されている[Burkly,2001]。
【0009】
グリコシル化抗CD154抗体は幾つかの免疫応答関連の疾患の防止および治療のために有用であることが解っているが、一部の被験体においては、これらを用いた治療が場合によっては血栓塞栓性の活性により合併症を起こす場合がある[Biogen Press Release,2001;IDEC Press Release,2001]。この副作用の機序は不明であるが、血小板上のFcgRIIaおよびCD154の抗CD154抗体またはその凝集物による結合が関わっており、これが不適切な血小板活性をもたらすと考えられる。他のFcγレセプターおよび補体への結合もまたこの作用を強化する。すなわち、エフェクターレセプターに結合しない抗CD154抗体はより安全であり、そして/または治療用途のためにより効果的である。
【0010】
抗CD154抗体が免疫機能を阻害する機序は単にCD154に結合してCD40との相互作用をブロックすることよりもさらに複雑であり、そして実際、エフェクター経路による寄与が関与すると考えられる。例えば、抗体抗原結合はFcγまたは補体成分へのFcドメインの結合を介して活性化T細胞の欠失を誘導する。或は、CD154への抗体の結合はFcγレセプター担持細胞上の抗体の細胞表面スカフォールドの形成により増強される。さらに、抗体のその作用部位への接近はFcγレセプター結合相互作用により促進される。
【0011】
抗CD154抗体を含むグリコシル化抗体においては、Fc二量体のCH2ドメインの保存されたN連結部位に結合したグリカンはCH2ドメイン間に封入され、糖残基は対向するCH2ドメイン上の特定のアミノ酸残基と連絡している[Jeffries,1998]。種々のグリコシル化抗体を用いたインビトロの試験ではCH2グリカンの除去により、Fcレセプターおよび補体タンパク質C1Qへの抗体の結合が大きく提言されるようにFc構造が改変されることがわかった[Nose,1983;Leatherbarrow,1985;Tao,1989;Lund,1990;Dorai,1991;Hand,1992;Leader,1991;Pound,1993;Boyd,1995]。インビボの試験ではアグリコシル抗体のエフェクター機能の低下が確認された。例えばアグリコシル抗CD8抗体はマウスにおいてCD8担持細胞を枯渇させることができず[Isaacs,1992]、そして、アグリコシル抗CD3抗体はマウスおよびヒトにおいてサイトカイン放出症候群を誘導しない[Boyd,1995;Friend,1999]。
【0012】
CH2ドメインにおけるグリカンの除去はエフェクター機能に対して顕著な作用を有すると考えられるが、抗体の他の機能および物理的特性は未改変のままである。特に、グリカンの除去は血清中半減期および抗原への結合に対して殆ど乃至は全く影響しない[Nose,1983;Tao,1989;Dorai,1991;Hand,1992;Hobbs,1992]。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明において、抗CD154抗体の作用機序に関与するFcエフェクター機能は、Fc二量体のCH2ドメインにおける保存されたN連結部位の修飾によりFcエフェクター機能が低減されて「アグリコシル」の抗CD154抗体となっている抗CD154抗体の使用を介して解明される。このような修飾の例はFc二量体のCH2ドメインにおける保存されたN連結部位の突然変異、CH2ドメインにおけるN連結部位に結合したグリカンの除去およびグリコシル化の防止を包含する。
【0014】
抗CD154抗体の阻害の機序がそのFcエフェクター相互作用に依存しているかどうかを調べるために、抗CD154抗体およびそのアグリコシルの対応物を、CD154−CD40相互作用のブロッキングを介した幾つかの疾患の阻害の能力に関して比較した。本明細書において報告した結果は抗CD154抗体のアグリコシル化された形態が抗CD154抗体のグリコシル化された形態と等しく保護的であることを明らかにしている。
【0015】
本発明のアグリコシル抗CD154抗体は減衰したエフェクター機能を特徴としているため、これらの抗体は特に望ましくない血栓塞栓性の活性の危険性が存在する被験体における使用のために望ましい。さらにまた、アグリコシル抗CD154抗体の減衰したFcエフェクター機能は抗CD154抗体治療の他の潜在的副作用、例えば活性化T細胞および単球/マクロファージのCD154またはFc依存性の活性化を発現するように誘導された細胞の他の集団の欠失を低減または排除する。
【0016】
特に本発明はCD154を認識するアグリコシル抗CD154抗体を提供する。より詳しくは、本発明はヒト化アグリコシル化抗CD154抗体、すなわち「アグリコシルhu5c8」、および、マウスアグリコシル化抗CD154抗体、すなわち「アグリコシルmuMR1」を提供する。
【0017】
本発明の1つの実施形態において、アグリコシルhu5c8抗体は2003年1月14日にAmerican Type Culture Collection(ATCC),10801 University Blvd.,Manassas,Virginiaに受託(受託番号PTA−4931)されているNS0アグリコシルhu5c8細胞株から産生され、そしてアグリコシルMR1抗体は2003年1月14日にATCCに受託(受託番号PTA−4934)されているNS0アグリコシルマウスMR1細胞株から産生される。
【0018】
本発明の1つの実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体はCD154とCD40との間の相互作用を阻害することができる。
【0019】
本発明の別の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体はCD40担持細胞の活性化を直接または間接的にブロックする態様においてCD154と会合することができる。
【0020】
本発明はまたアグリコシル抗CD154抗体またはその抗体誘導体を被験体に投与することを含む被験体における免疫応答を阻害する方法を提供し、ここで抗体または抗体誘導体は被験体における免疫細胞の活性化を阻害するために有効な量で投与される。
【0021】
本発明はまたアグリコシル抗CD154抗体またはその抗体誘導体を被験体に投与することを含む免疫応答依存性の状態または疾患を被験体において治療または防止する方法を提供し、抗体または抗体誘導体は、被験体における免疫細胞の活性化を阻害し、これにより免疫応答依存性の状態または疾患を治療または防止するのに有効な量で投与される。
【0022】
(発明の詳細な説明)
本明細書に記載した本発明をより理解するために、以下の詳細な説明を記載する。特段の記載が無い限り、本明細書において使用する全ての技術的および専門的な用語は本発明が関係する技術分野の当業者が一般的に理解している意味と同様の意味を有する。例示される方法および材料を以下に記載するが、本明細書に記載するものと同様または同等の方法および材料もまた本発明の実施において使用でき、そして当業者には明らかなものである。
【0023】
本明細書全体を通じて、種々の出版物および参考文献を括弧内で示す。これらの出版物および参考文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、これにより本発明が関係する技術分野をより詳細に説明するものとする。これらの参考文献の目録的引用は本文中に記載するか、または、実験の説明の項目の後に番号により列挙する。矛盾がある場合は、本明細書を優先する。材料、方法および実施例は説明のためのものであり、限定を意図しない。
【0024】
当業者の知る組み換えDNA技術の一般的原理を説明する標準的な参考書は、Ausubel et al.,Current Protocols In Molecular Biology, John Wiley&Sons, New York (1998 and Supplements to 2001); Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Plainview, New York,(1989); Kaufman et al.,Eds.,Handbook of Molecular and Cellular Methods in Biology and Medicine, CRC Press, Boca Raton(1995); McPherson, Ed.,Directed Mutagenesis:A Practical Approach, IRL Press, Oxford (1991)を包含する。
【0025】
当業者の知る免疫学の一般的原理を説明する標準的な参考書は、Harlow and Lane, Antibodies:A Laboratory Manual, 2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.(1999);Roitt et al.,Immunology, 3rd Ed.,Mosby−Year Book Europe Limited, London(1993)を包含する。当業者の知る医学生理学および薬理学の一般的原理を説明する標準的な参考書は、Fauci et al.,Eds.,Harrison’s Principles Of Internal Medicine,14th Ed.,McGraw−Hill Companies,Inc.(1998)を包含する。
【0026】
本発明の試薬および方法は免疫応答を阻害するため、および、免疫応答により誘導される疾患および状態、例えば自己免疫疾患、アレルギー、移植片拒絶反応、炎症、移植片対宿主疾患、線維症およびアテローム性動脈硬化症を治療するためのアグリコシル抗体またはその抗体誘導体の使用を意図している。
【0027】
より詳しくは、治療、特にヒトの治療のために使用されるアグリコシル抗CD154抗体はヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ポリクローナル抗体および多量体抗体を包含する。
【0028】
(抗体)
抗体は身体内の外来性分子の存在に応答して脊椎動物の免疫系の体液性の作動により産生される約MW150kDの糖タンパク質である。機能的抗体または抗体誘導体はインビトロおよびインビボでその特異的抗原を認識して結合することが可能であり、そして、いずれかのその後の抗体結合関連の作用、例えば直接の細胞毒性、補体依存性の細胞毒性(CDC))、抗体依存性の細胞毒性(ADCC)および抗体の産生を開始させる。
【0029】
抗原に結合することにより、抗体は感染微生物または他の抗原含有の実体、例えば癌細胞の中和、破壊および排除に寄与する免疫系の多くのエフェクター系1つ以上を活性化させる。
【0030】
天然に存在する抗体は単一の種から誘導されるが、操作された抗体および抗体フラグメントは1種より多い動物から誘導される場合があり、例えばキメラ抗体が挙げられる。今日までマウス(マウス)/ヒトキメラおよびマウス/非ヒト霊長類抗体が作製されているが、他の種の組み合わせも可能である。
【0031】
1つの実施形態において、本発明のアグリコシル抗CD154抗体はキメラ抗体である。典型的には、キメラ抗体は他の種(典型的にはヒト)の定常領域に融合したある種(典型的にはマウス)の相補性決定領域(CDR)およびフレーム枠残基の両方を含む重鎖および/または軽鎖の可変領域を含む。これらのキメラマウス/ヒト抗体は約75%のヒトおよび25%のマウスアミノ酸配列をそれぞれ含んでいる。ヒト配列は抗体の定常領域を表し、マウス配列は抗体の可変領域を表す(そしてこれにより抗原結合部位を含む)。
【0032】
このようなキメラの使用の根拠は、マウス抗体の抗原特異性を保持するがマウス抗体の免疫原性を低下させる(マウス抗体はマウス以外の種においてはそれに対する免疫応答を誘発する)ことであり、これにより、ヒトの治療におけるキメラの使用が可能となる。
【0033】
別の特定の実施形態においては本発明のアグリコシル抗CD154抗体は1つの抗体のフレーム枠領域および別の抗体のCDR領域を含むキメラ抗体を包含する。
【0034】
より特定の実施形態においては、本発明のアグリコシル抗CD154抗体は異なるヒト抗体のCDR領域を含むキメラ抗体を包含する。
【0035】
別の特定の実施形態においては、本発明のアグリコシル抗CD154抗体は、少なくとも2つの異なるヒト抗体のCDR領域を含むキメラ抗体を包含する。
【0036】
上記のキメラ抗体の全てを製造する方法は当該分野でよく知られている[米国特許5,807,715;Morrison,1984;Sharon,1984;Takeda,1985]。
【0037】
本発明の別の実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体はまた霊長類化、ヒト化および完全ヒト化の抗体を包含する。霊長類化およびヒト化抗体は典型的には通常はさらにヒト定常領域を含む非ヒト霊長類またはヒトの抗体V領域フレーム枠に移植されたマウス抗体に由来する重鎖および/または軽鎖のCDRを包含する[Riechmann,1988;Co,1991;米国特許6,054,297;5,821,337;5,770,196;5,766,886;5,821,123;5,869,619;6,180,377;6,013,256;5,693,761;および6,180,370]。
【0038】
(1.ヒト化抗体)
ヒト化抗体は組み換えDNA技術により産生された抗体であり、それにおいては、抗原結合に必要とされないヒト免疫グロブリンの軽鎖または重鎖のアミノ酸の一部または全て(例えば定常領域および可変ドメインのフレーム枠領域)を用いて同属体非ヒト抗体の軽鎖または重鎖の相当するアミノ酸を代替する。例えば、ある抗原に対するマウス抗体のヒト化バージョンはその重鎖および軽鎖の両方の上に(1)ヒト抗体の定常領域;(2)ヒト抗体の可変ドメインのフレーム枠領域;および(3)マウス抗体のCDRを有する。必要に応じて、抗原に対するヒト化抗体の結合親和性が温存されるようにヒトフレーム枠領域の残基1つ以上をマウス抗体の相当する位置における残基に変更することができる。この変更は「復帰突然変異」と称される場合がある。ヒト化抗体は一般的にはかなり少ない非ヒト成分を含有することからキメラヒト抗体と比較してヒトにおいて免疫応答を示す可能性は低い。ヒト化抗体を製造する方法は抗体の分野でよく知られている[欧州特許239400;Jones,1986;Riechmann,1988;Verhoeyen,1988;Queen,1989;Orlandi,1989;米国特許6,180,370]。
【0039】
本発明の1つの実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト抗体へのマウス(または他の非ヒト)CDRの移植により作製される。より詳細には、これは以下の通り、すなわち、(1)重鎖および軽鎖の可変ドメインをコードするcDNAをハイブリドーマから単離する;(2)CDRを含む可変ドメインのDNA配列を配列決定により調べる;(3)CDRをコードするDNAを部位指向性の突然変異誘発によりヒト抗体の重鎖または軽鎖の可変ドメインのコーディング配列の相当する領域に転移させる;および(4)所望のアイソタイプのヒト定常領域の遺伝子セグメント(例えばCHにはl、およびCLにはk)を付加することにより達成される。最後に、ヒト化重鎖および軽鎖の遺伝子を哺乳類宿主細胞(例えばCHOまたはNS0細胞)において同時発現することにより、可溶性のヒト化抗体が製造される。
【0040】
場合によりヒトフレーム枠へのCDRの直接の転移では得られる抗体の抗原結合親和性の損失が起こる。これは、一部の同属態抗体においてフレーム枠領域内の特定のアミノ酸がCDRと相互作用し、これにより抗体の全体的抗原結合親和性に影響するためである。このような場合は、同属体抗体の抗原結合活性を保持するためにはアクセプター抗体のフレーム枠領域内に「復帰突然変異」を導入することが重要である。復帰突然変異を起こすための一般的方法は当該分野でよく知られている[Queen,1989;Co,1991;PCT特許出願WO90/07861;Tempest,1991]。
【0041】
(2.ヒト抗体)
本発明の1つの実施形態において、抗体および抗体誘導体は完全ヒトアグリコシル抗CD154抗体である。
【0042】
本発明のより特定の実施形態において、完全ヒト抗体はインビトロプライミングヒト脾細胞[Boerner,1991]またはファージディスプレイ抗体ライブラリ[米国特許6,300,064]を用いて製造する。
【0043】
本発明のより特定の実施形態においては、完全ヒト抗体はレパートリークローニングにより製造する[Persson,1991;Huang and Stoller,1991]。さらに米国特許5,798,230はヒトB細胞由来のヒトモノクローナル抗体の製造を記載しており、そこにおいては、不朽化に必要なタンパク質であるエプスタイン・バーウィルス核抗原2(EBNA2)を発現するエプスタイン・バーウィルスまたはその誘導体で感染させることによりヒト抗体産生B細胞を不朽化している。EBNA2機能はその後シャットオフされ、これにより抗体の産生が増大する。
【0044】
完全ヒト抗体を産生するための他の方法では、非再配列ヒト抗体の重鎖および軽鎖遺伝子に関して不活性化された内因性Ig遺伝子座を有し、そしてトランスジェニックである非ヒト動物を使用する。このようなトランスジェニックな動物は活性化T細胞またはD1.1タンパク質で免疫化することができ[米国特許5,474,771;米国特許6,331,433;米国特許6455,044]、そして、ハイブリドーマはそれらが由来するB細胞から作製できる。これらの方法の詳細は当該分野で報告されている。例えば、ヒトIgミニ遺伝子座を含有するトランスジェニックマウスに関する種々のGenPharm/Mederax(Palo Alto,CA)出版物/特許、例えば米国特許5,789,650;XENOMOUSE(登録商標)マウスに関する種々のAbgenix(Fremont,CA)出版物/特許、例えば米国特許6,075,181、6,150,584および6,162,963;Green,1997;Mendez,1997;および「トランソミック」マウスに関する種々のKirin(Japan)出版物/特許、例えば欧州特許843961およびTomizuka,1997を参照できる。
【0045】
(脱グリコシル化抗体の作製)
現在、mAbのFc部分の他の価値ある属性を保持しつつそのエフェクター機能を低減するためには2通りの方法がある。抗体を修飾するための1つの方法はエフェクター結合相互作用に関与するmAbの表面上のアミノ酸を突然変異させることである[欧州特許239400;Jefferies,1998]。突然変異の幾つかの組み合わせはエフェクター機能の十分な低減をもたらすが、試験されている表面突然変異体抗体はこれまで残余活性を保持していると考えられている。この方法に関する他の問題点はmAbの表面上のアミノ酸の変化が免疫原性を誘発する可能性がある点である。
【0046】
本発明は低減されたエフェクター機能を有するアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体に関し、これは該抗体のFc部分のCH2ドメインにおける保存されたN連結部位における修飾を特徴とする。
【0047】
本発明の1つの実施形態において、修飾は重鎖グリコシル化部位における突然変異を含み、これによりその部位におけるグリコシル化を防止する。すなわち、本発明の1つの好ましい実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体は重鎖グリコシル化部位の突然変異により、すなわちN298Q(EUKabatナンバリングを用いればN297)の突然変異により製造し、適切な宿主細胞中で発現させる。例えば、この突然変異はAmersham−Pharmacia Biotech(Pitscataway)より入手可能なユニーク部位突然変異誘発キットに関する製造元の推奨プロトコルに従って行える。突然変異した抗体は宿主細胞(例えばNS0またはCHO細胞)内で安定に発現させ、次に精製する。一例として精製はプロテインAおよびゲル濾過クロマトグラフィーを用いて実施できる。当業者の知る通り、別の発現および精製の方法も使用してよい。
【0048】
本発明の別の実施形態においてはアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体は低減されたエフェクター機能を有し、ここで該抗体または抗体誘導体のFc部分のCH2ドメインにおける保存されたN連結部位における修飾はCH2ドメイングリカンの除去、すなわち脱グリコシル化を含む。これらのアグリコシル抗CD154抗体は従来の方法で作製してよく、そして次に酵素的に脱グリコシル化する。抗体の酵素的脱グリコシル化の方法は当該分野でよく知られている[Williams,1973;Winkelhake&Nicolson,1976]。
【0049】
本発明の別の実施形態においては、グリコシル化阻害剤ツニカマイシンを使用して脱グリコシル化を行ってよい[Nose&Wigzell,1983]。すなわち、修飾は該抗体のFc部分のCH2ドメインにおける保存されたN連結部位におけるグリコシル化の防止である。
【0050】
本発明の他の実施形態においては、組み換えCD154ポリペプチド(またはそのポリペプチドを含有する細胞または細胞膜)を抗原として使用することにより抗CD154抗体または抗体誘導体を作製し、それを次に脱グリコシル化してよい。抗原は抗体産生を増大させるためにアジュバントと混合するか、または、ハプテンに連結してよい。
【0051】
本発明のアグリコシル抗体または抗体誘導体の修飾が部位指向性突然変異によるか、または上記した酵素的脱グリコシル化方法によるかに関わらず、抗体の作製の基本は当業者の知るとおりである。例えば非ヒト哺乳類の免疫化のためのプロトコルは当該分野で確立されている[Harlow,1998;Coligan,2001;Zola,2000]。
【0052】
免疫化の後、本発明の抗体または抗体誘導体はいずれかの従来の技術を用いて製造することができる。例えばHoward,2000;Harlow,1998;Davis,1995;Delves,1997;Kenney,1997を参照できる。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態においては、宿主細胞は例えば(1)細菌細胞、例えばE.coli、カウロバクター・クレセンタス、ストレプトマイセス種およびマウスチフス菌;(2)酵母細胞、例えばサッカロマイセス・セレビシアエ、シキゾサッカロマイセス・ポンベ、ピチア・パストリス、ピチア・メタノリカ;(3)昆虫細胞株、例えばSpodoptera frugiperda、例えばSf9およびSf21細胞株、およびexpressSFTM細胞(Protein Sciences Corp.,Meriden,CT,USA)−ショウジョウバエS2細胞およびFigh Five(登録商標)Cells(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)のTrichoplusia;または(4)哺乳類細胞であってよい。典型的な哺乳類細胞はCOS1およびCOS7細胞、チャイニーズハムスター卵(CHO)細胞、NS0ミエローマ細胞、NIH3T3細胞、293細胞、HEPG2細胞、HeLa細胞、L細胞、HeLa、MDCK、HEK293、WI38、ネズムES細胞株(例えば系統129/SV、C57/BL6、DBA−1、129/SVJ由来のもの)、K562、Jurkat細胞およびBW5147を包含する。他の有用な哺乳類細胞株はよく知られており、American Type Culture Collection(ATCC,Manassas,VA,USA)およびNational Institute of General Medical Sciences(NIGMS)Human Genetic Cell Repository at the Coriell Cell Repositories(Camden,NJ.USA)から入手可能である。これらの細胞型は代表例であるのみであり、網羅的列挙ではない。
【0054】
本発明の別の実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体を無細胞翻訳により製造する。
【0055】
本発明の別の実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体は大規模産生を容易にするために抗体発現細胞を含有するバイオリアクター内で製造する。
【0056】
本発明の別の実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体はアグリコシル抗CD154抗体の大規模産生を容易にするために乳汁中で抗体を発現するトランスジェニック哺乳類(例えばヤギ、ウシまたはヒツジ)において製造する[米国特許5,827,690;Pollock,1999]。
【0057】
上記した通り、本発明のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体は原核細胞および真核細胞において製造できる。すなわち本発明は本発明の抗体を発現する細胞、例えば本発明の抗体を発現するように組み換えにより修飾されたハイブリドーマ細胞、B細胞、プラズマ細胞並びに宿主細胞を提供する。
【0058】
一部上記したその他の問題点のうち、宿主細胞株は所望の態様で発現されたCD154タンパク質をプロセシングする能力があるものを選択してよい。アグリコシル化のほかに、このようなポリペプチドの翻訳後修飾としては、例えばアセチル化、カルボキシル化、ホスホリル化、脂質化およびアシル化が挙げられ、そしてこれらの翻訳後修飾の1つ以上を有するアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体を提供することは本発明の特徴である。
【0059】
(抗体の修飾)
投与された場合に、抗体はしばしば循環系から急速に排除され、従って比較的短命な薬理学的活性を示す場合がある。その結果、抗体投与の治療効果を持続するためには比較的大用量の抗体の頻繁な注射が必要となる場合がある。
【0060】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体はインビボで抗体の一体性および持続性を増大させるために修飾(すなわち他の分子に結合)してよい。例えば、本発明のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体は安定性を増大させる部分が含まれるように修飾することにより抗体の血清中半減期を延長させてよい。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体は、全て相当する未修飾タンパク質よりも静脈内注射後に血中半減期を実質的に延長することがわかっている水溶性重合体、例えばポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはポリプロリン等の共有結合により修飾される[Abuchowski,1981;Anderson,1992;Newmark 1982;Katre,1987]。
【0062】
抗体の修飾はまた、水溶液中のタンパク質の溶解度を増大させ、凝集を排除し、タンパク質の物理的および化学的安定性を増大させ、そして、タンパク質の免疫原性および抗原性を大きく低下させる。その結果、未修飾のタンパク質よりも低頻度または低用量におけるそのような重合体タンパク質付加物の投与により所望のインビボの生物学的活性が達成されるのである。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体は検出可能なマーカー、例えば放射性同位体、酵素、色素またはビオチンにより標識することにより修飾する。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体は治療薬、例えば放射性同位体または放射性核種(例えば111Inまたは90Y)、毒素部分(例えば破傷風トキソイドまたはリシン)、トキソイドまたは化学療法剤と結合体化することにより修飾する[米国特許6,307,026]。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態においてはアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体は画像化剤に結合体化することにより修飾する。画像化剤は単離または検出が容易になるように例えば標識部分(例えばビオチン、蛍光部分、放射性部分、ヒスチジンタグまたは他のペプチドタグ)を含んでよい。
【0066】
(抗体誘導体)
本発明はまたアグリコシル抗CD154抗体誘導体に関する。アグリコシル抗CD154抗体に関して上記した全ての方法および試薬は本発明のアグリコシル抗CD154抗体誘導体の製造のために使用してよい。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体誘導体はヘテロメリックの抗体複合体および抗体融合物、例えば二重特異性の抗体、ヘミ二量体の抗体、多価の抗体(すなわち4価抗体)および一重鎖の抗体を包含する。ヘミ二量体抗体はFc部分および1つのFab部分よりなる。一重鎖抗体は一重タンパク質鎖中のタンパク質スペーサーにより連結された可変領域よりなる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態においては、本発明のアグリコシル抗CD154抗体誘導体は1つ以上の免疫グロブリンの軽鎖および/または重鎖を含有するタンパク質を包含し、これらの鎖の単量体およびホモまたはヘテロ多量体(例えば二量体または三量体)が挙げられ、その場合、これらの鎖は場合によりジスルフィド結合するか、または他の態様で交差結合している。これらの抗体誘導体は抗原1つ以上に結合することができる。
【0069】
別の実施形態によれば、本発明はFab、Fab’、F(ab’)2およびF(v)抗体フラグメントのような全抗体のアグリコシル化抗原結合フラグメントを包含する。さらに別の実施形態においては、本発明はFab、Fab’、F(ab’)2およびF(v)抗体フラグメントのような全抗体の抗原結合フラグメントを包含する。
【0070】
(細胞株)
本発明はまた本発明のアグリコシル抗CD154抗体を産生する細胞株を提供する。アグリコシルhu5c8抗体を産生するこのような細胞株の1つは特許手続きの目的のための微生物の受託の国際認識のためのブタペスト条約の条項の下、2003年1月14日にATCC,10801 University Blvd.,Manassas,Virginia,20110−2209,USAに受託されており、受託番号PTA−4931で登録されている。キメラマウスアグリコシルmu5c8抗体を産生する第2のこのような細胞株は特許手続きの目的のための微生物の受託の国際認識のためのブタペスト条約の条項の下、2003年1月14日にATCC,10801 University Blvd.,Manassas,Virginia,20110−2209,USAに受託されており、受託番号PTA−4934で登録されている。
【0071】
(治療方法)
本発明の1つの実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体またはその抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は被験体における免疫応答を阻害することが可能である。抗体、抗体誘導体または薬学的組成物は有効阻害量で被験体に投与する。
【0072】
抗体、抗体誘導体または薬学的組成物の「有効阻害量」とは、それを投与する被験体におけるCD154−CD40相互作用を阻害するために有効であるいずれかの量である。「阻害量」を決定する方法は当該分野でよく知られており、例えば関与する被験体の型、被験体の体格および送達する治療薬などのような要因により異なる。
【0073】
本発明の特定の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はCD154タンパク質分子に結合することができる。
【0074】
本発明の特定の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8により特異的に結合されるCD154タンパク質に結合することができる。
【0075】
本発明の特定の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8により特異的に結合されるCD154エピトープに結合することができ、ここでアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体はN298Q(EUKabatナンバリングを用いればN297)の突然変異を特徴としている。
【0076】
本発明の特定の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はエフェクターレセプターに結合しない。本発明のより特定の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8により特異的に結合されるCD154タンパク質に結合することができ、ここでアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体または薬学的組成物はエフェクターレセプターに結合しない。
【0077】
本発明の特定の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は血栓症を誘発しない。本発明のより特定の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8により特異的に結合されるCD154タンパク質に結合することができ、ここでアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体または薬学的組成物は血栓症を誘発しない。
【0078】
本発明の別の特定の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はCD154−CD40相互作用を阻害することにより免疫応答を阻害することができる。
【0079】
本発明の1つの実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は炎症を阻害することができる。本発明の目的のためには、炎症応答は浮腫および貪食性白血球の遊走を伴った毛細血管の拡張の結果としての発赤、むくみ、灼熱感および疼痛を特徴とする。炎症応答の一例には、関節炎、接触性皮膚炎、IgE亢進症候群、炎症性腸疾患、アレルギー性喘息および特発性炎症性疾患が包含される[Gallin,1989]。関節炎の一例は関節リューマチ、非リューマチ様炎症性関節炎、ライム病に関連する関節炎および炎症性骨関節炎を包含する。特発性炎症性疾患の一例は乾癬および全身性狼瘡を包含する。
【0080】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は移植された臓器の被験体による拒絶反応を阻害することができる。
【0081】
本発明のより特定の実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は移植された心臓、腎臓、肝臓、皮膚、膵島細胞または骨髄の被験体による拒絶反応を阻害することができる。
【0082】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は被験体における移植片対宿主疾患を阻害することができる。
【0083】
本発明の1つの実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は被験体におけるアレルギー応答、例えば枯草熱またはペニシリンまたは他の薬剤に対するアレルギーを阻害することができる。
【0084】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は自己免疫疾患に罹患した被験体における自己免疫応答を阻害することができる。自己免疫疾患の例は関節リューマチ、重症筋無力症、全身エリテマトーデス、グレーブス病、特発性血小板減少症、紫斑病、溶血性貧血、真性糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、多発性硬化症、乾癬、薬剤誘導性の自己免疫疾患、例えば薬剤誘導性の狼瘡を包含する。
【0085】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は感染性疾患から誘導される自己免疫応答に罹患した被験体における自己免疫応答を阻害することが可能である。
【0086】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はライター症候群、脊椎関節炎、ライム病、HIV感染症、梅毒または結核から誘導される自己免疫応答に罹患した被験体における自己免疫応答を阻害することができる。
【0087】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は被験体における線維症を阻害することができる。
【0088】
線維症のいくつかの例は肺線維症または線維性疾患を包含する。肺線維症の一例は成人呼吸窮迫症候群に二次的な肺線維症、薬剤誘導性肺線維症、特発性肺線維症および過敏性肺炎を包含する。線維性疾患の一例はC型肝炎、B型肝炎、肝硬変、毒物発作に二次的な肝硬変、ウィルス感染に二次的な肝硬変および自己免疫疾患に二次的な肝硬変を包含する。
【0089】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は胃腸疾患を阻害することができる。胃腸疾患の一例は食道運動不全、炎症性腸疾患および硬皮症を包含する。
【0090】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は脈菅疾患を阻害することができる。脈菅疾患の一例はアテローム性動脈硬化症または再灌流傷害を包含する。
【0091】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はT細胞癌、例えばT細胞白血病またはリンパ腫に罹患した被験体におけるT細胞腫瘍の増殖を阻害することができる。このようなアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体または薬学的組成物はそのような被験体におけるT細胞腫瘍の増殖を阻害するために有効な量で被験体に投与してよい。
【0092】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はHTLVIウィルスによる被験体のT細胞のウィルス感染を阻害することができる。このようなアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体または薬学的組成物はそのような被験体におけるウィルス感染を阻害するために有効な量で被験体に投与してよい。
【0093】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8により特異的に認識されるタンパク質を発現する被験体における腫瘍細胞または新生物細胞を画像化することができる。被験体における腫瘍細胞または新生物細胞を画像化するための方法は、以下の工程、すなわち、抗体または抗体誘導体と腫瘍細胞または新生物細胞表面上のタンパク質との間の複合体の形成を可能にする条件下でアグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または薬学的組成物の有効量を被験体に投与すること;および、形成された抗体/タンパク質複合体または抗体誘導体/複合体のいずれかを画像化することにより被験体における腫瘍細胞または新生物細胞のいずれかを画像化すること;
を含む。
【0094】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8により特異的に認識されるタンパク質を発現する被験体における腫瘍細胞または新生物細胞の存在を検出することができる。被験体における腫瘍細胞または新生物細胞の存在を検出するための1つのこのような方法は、以下の工程、すなわち:抗体または抗体誘導体とタンパク質との間の複合体の形成を可能にする条件下でアグリコシル抗体、抗体誘導体または薬学的組成物の有効量を被験体に投与すること;未結合の画像化剤を被験体から除去すること;および、形成された抗体/タンパク質複合体または抗体誘導体/複合体のいずれかの存在を検出すること、ただし該複合体の存在は被験体における腫瘍細胞または新生物細胞の存在を示すものであることを含む。
【0095】
(薬学的組成物)
本発明は本明細書に開示したアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物を提供する。
【0096】
本発明の1つの実施形態において、薬学的組成物はアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体1つ以上を含む。
【0097】
本発明の別の実施形態において、薬学的組成物はさらに薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、送達ベヒクル、緩衝剤または安定化剤を含んでよい。
【0098】
本発明のより特定の実施形態においては製薬上許容しうるキャリアはリン酸塩緩衝食塩水、生理食塩水、水、クエン酸/スクロース/Tween処方およびエマルジョン−例えば油/水エマルジョンである。
【0099】
本発明の1つの実施形態において薬学的組成物はタンパク質に対する宿主の免疫応答を低減または防止できるようにマイクロカプセル化装置内において送達してよい。抗体または抗体誘導体はまたリポソームのような膜内にマイクロカプセル化して送達してもよい。
【0100】
本発明の1つの実施形態において、薬学的組成物は滅菌された注射可能な製剤、例えば滅菌された注射可能な水性または油性の懸濁液の形態であってよい。このような懸濁液は適当な分散剤、水和剤および懸濁剤を用いながら当該分野で知られた技術に従って製剤してよい。
【0101】
本発明の1つの実施形態において、薬学的組成物は、経口的、局所的または静脈内で送達され得る。
【0102】
本発明のより特定の実施形態において、経口投与のためには、薬学的組成物は適当なカプセル、錠剤、水性の懸濁液または溶液に製剤する。経口投与用の組成物の固体形態は適当なキャリアまたは賦形剤、例えばコーンスターチ、ゼラチン、乳糖、アカシア、スクロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸ジカルシウム、炭酸カルシウム、塩化ナトリウムまたはアルギン酸を含有できる。使用できる錠剤崩壊剤は、例えば、微結晶セルロース、コーンスターチ、ナトリウム澱粉グリコレートおよびアリギン酸を包含する。使用できる錠剤バインダーはアカシア、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン(PovidoneTM)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクロース、澱粉およびエチルセルロースを包含する。使用できる潤滑剤はステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリコーン液、タルク、ワックス、油類およびコロイド状シリカを包含する。
【0103】
本発明のより特定の実施形態においては、局所適用のためには、薬学的組成物は適当な軟膏に製剤してよい。局所用途の組成物の製剤の一例は、活性成分および種々の補助剤およびベヒクルを含有するドロップ剤、チンキ剤、ローション、クリーム、溶液および軟膏を包含する。
【0104】
本発明の1つの実施形態においては、局所用の半固体の軟膏製剤は典型的には医薬品用クリーム基剤のようなキャリア中、約1〜20%、例えば5〜10%の活性成分の濃度を有する。
【0105】
本発明の1つの実施形態においては、吸入用の薬学的組成物および経皮組成物もまた用意に製造できる。
【0106】
本発明の1つの実施形態において、水および他の水性のベヒクル中に製造された経口投与用の薬学的組成物の液体製剤は種々の懸濁剤、例えばメチルセルロース、アルギネート、トラガカント、ペクチン、ケルギン、カラギーナン、アカシア、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールを含有できる。本発明の薬学的組成物の液体製剤もまた、活性化合物と共に水和剤、甘味料および着色料およびフレーバー剤を含有する溶液、乳液、シロップおよびエリキシルを包含する。薬学的組成物の種々の液体および粉末の製剤は治療すべき哺乳類の肺内への吸入のための従来の方法により製造できる。
【0107】
本発明の1つの実施形態において、注射のための薬学的組成物の液体製剤は、種々のキャリア、例えば植物油、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、ポリオール、すなわちグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等を含むことができる。いくつかの実施形態においては、組成物はクエン酸塩/スクロース/ツイーンキャリアを含む。静脈内注射のためには組成物の水溶性の形態を点滴により投与することができ、これにより抗カビ剤および生理学的に許容される賦形剤を含有する医薬品製剤を注入できる。生理学的に許容される賦形剤は例えば5%デキストロース、0.9%食塩水、リンゲル溶液または他の適当な賦形剤を含むことができる。組成物の適当な不溶性形態は、水性の基剤または製薬上許容しうる油性基剤、例えば長鎖脂肪酸、例えばオレイン酸エチル中の懸濁液として製造し、投与することができる。
【0108】
本発明の1つの実施形態において、薬学的組成物は製薬上許容しうるキャリア中、アグリコシル抗CD154抗体またはその抗体誘導体約0.1〜90重量%(例えば1〜20%、または1〜10%)服務。
【0109】
本発明の1つの実施形態において、各薬学的組成物中の抗体または抗体誘導体の旨適パーセントは、製剤自体、および、特定の病態および関連する治療方法において望まれる治療効果により変動する。医薬品製剤は当該分野でよく知られている[Gennaro,2000;Ansel,1999;Kibbe,2000]。医学分野の当業者の知る従来の方法を用いて被験体に薬学的組成物を投与できる。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態においては、薬学的組成物はさらに免疫抑制性または免疫調節性の化合物を含む。例えば、このような免疫抑制性または免疫調節性の化合物は以下のもの、すなわち:CD28を介したT細胞同時刺激シグナリングを中断させる薬剤、カルシニューリンシグナリングを中断させる薬剤、コルチコステロイド、抗増殖剤およびCD45、CD2、IL2R、CD4、CD8およびRANK FcR、B7、CTLA4、TNF、LTβおよびVLA−4等を含む免疫細胞の表面上に発現されるタンパク質に特異的に結合する抗体のうちの1つであってよい。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態においては、免疫抑制性または免疫調節性の化合物はタクロリムス、シロリムス、マイコフェノレートモフェチル、ミゾルビン、デオキシスペルグアリン、ブレキナールナトリウム、レフルノミド、ラパマイシンおよびアザスピランである。
【0112】
本発明の他の実施形態において、抗体、抗体誘導体またはこれらを含む薬学的組成物は容器、パッケージディスペンサー内に単独で含まれるか、または、投与のためのラベルおよび使用上の注意を伴ったキットの一部であってよい。
【0113】
(投与および送達経路)
本発明のアグリコシル抗CD154抗体またはその抗体誘導体および薬学的組成物は医学的に受容可能ないずれかの態様において被験体に投与してよい。本発明の目的のためには、「投与」とは当業者の知る抗体、抗体誘導体または薬学的組成物を投与する標準的な方法のいずれかを意味し、そして本明細書に記載した例に限定されない。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物は、注射により静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、骨髄内、脳室内、硬膜内、動脈内、脈菅内、関節内、滑液内、肋骨内、髄腔内注射、肝臓内、脊椎内、腫瘍内、頭蓋内、経腸、肺内、経粘膜、子宮内、舌下または局所的に炎症または腫瘍生育の部位において、標準的な方法を用いることにより被験体に投与される。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物は経口、経鼻、眼内、直腸内および局所的経路により被験体に投与してよい。
【0116】
より特定の実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物はカプセル、錠剤、水性の懸濁液または溶液の形態で被験体に投与してよい。
【0117】
より特定の実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物はクリーム、軟膏等の適用により局所的に被験体に投与してよい。
【0118】
本発明の他の実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物は、ネブライザー、乾燥粉末吸入器または計量用量吸入器の使用を介した吸入により投与してよい。
【0119】
本発明のさらなる実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物は、手術中に直接適用される腐食性インプラントのデポ注射のような手段により、または、被験体への注入ポンプまたは生態分解性除放性インプラントの移植により、除放性投与により被験体に投与してよい。
【0120】
より特定の実施形態においては、本発明のアグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物は、1,3または6ヶ月のデポ注射または生態分解性の材料および方法を用いることによるなどして、注射デポ経路の投与により被験体に投与してよい。
【0121】
より特定の実施形態においては、本発明のアグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物は、抗体、抗体誘導体または薬学的組成物を含有する経皮パッチを被験体の皮膚に適用すること、および、パッチあたり一般的に1〜5時間、パッチを被験体の皮膚と接触させたままにすることにより、被験体に投与してよい。
【0122】
本発明の他の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物は医学的に受容可能ないずれかの体重あたり用量およびいずれかの投与頻度において被験体に投与してよい。許容される用量は被験体のkg体重あたり約0.01〜200mgの範囲である。
【0123】
さらなる実施形態においては、本発明のアグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物は毎日〜一箇月おきの範囲の時間間隔において反復して被験体に投与してよい。
【0124】
本発明の1つの実施形態においては、のアグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物は合計の所望の一日当たり用量を達成するために所望により一日当たり複数回投与において投与することができる。治療方法の有効性は疾患の知られた兆候または症状について被験体をモニタリングすることにより評価できる。
【0125】
本発明の全ての実施形態について、所望の作用をもたらすために有効な本発明のアグリコシル抗CD154抗体、その抗体誘導体および薬学的組成物の用量および投与比率は、種々の要因、例えば治療すべき疾患の性質、患者の体格、治療の目標、使用する特定の薬学的組成物および担当医師の判断により異なる。
【0126】
本発明のアグリコシル抗CD154抗体、その抗体誘導体および薬学的組成物は特定の適応症に対する単回用量として、例えば短時間被験体が曝露される抗原、例えば治療の単一日において投与される外因性抗原への免疫応答を防止するために投与してよい。このような治療の例は、治療薬、例えば抗原性の医薬品、アレルゲンまたは血液製剤または遺伝子療法ベクターと共に本発明の抗体または抗体誘導体を同時投与することを包含する。抗原が慢性的に存在するような適応症の場合、例えば移植された組織または慢性的に投与された抗原性の医薬品への免疫応答を制御する場合には、本発明の抗体、抗体誘導体または薬学的組成物は数日または数週間乃至は被験体の生涯の範囲の、医療上指示される長期に渡る時間間隔で投与する。
【0127】
本発明の1つの実施形態において、上記した方法により治療できる被験体は動物である。好ましくは、動物は哺乳類である。治療してよい哺乳類の例は、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(例えばラット、マウス、ハムスターおよびモルモット)、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌおよびネコを包含する。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0128】
本発明は以下の実施例に基づいてさらに良好に理解される。しかしながら、当業者の知るとおり記載した特定の方法および結果はその後に記載する本発明の実施形態においてより詳細に説明するとおり、本発明の説明を目的とするのみである。
【0129】
(実験の詳細)
【実施例】
【0130】
以下の実施例は本発明の方法および生成物を説明する。当業者の知る分子生物学の分野において通常遭遇する記載した条件およびパラメーターの適当な変更および適合は本発明の精神および範囲に包含される。
【0131】
(実施例1:アグリコシルhu5c8抗体の作製および評価)
(アグリコシルhu5c8mAbの発現および特性化)
hu5c8mAbのエフェクター機能を低減するために、重鎖CH2ドメイン内のカノニカルなN連結Asn部位をGln残基に変更することによりアグリコシル型を作製した。
【0132】
競合的結合試験によれば、細胞表面CD154に結合するアグリコシルhu5c8mAbの能力はグリコシル化hu5c8mAbと比較して改変されていなかった(図1)。
【0133】
エフェクター機能の低減は架橋形成試験フォーマットを用いてインビトロで測定した。FcγRIへのアグリコシルhu5c8の相対的結合はグリコシル化hu5c8mAbと比較して25倍減少していた(図2A)。FcγRIIIへのアグリコシルhu5c8mAbの残存結合は5mg/mlの濃度までは観察されなかったが、正常なグリコシル化hu5c8mAbは同じ試験フォーマットにおいて50ng/mlのEC50を示した(図2B)。
【0134】
(カニクイザルにおけるアグリコシルhu5c8mAbの薬物動態)
2つの独立した試験から得られたhu5c8mAbおよびアグリコシルhu5c8mAbの単回20mg/kg投与の後の血清中濃度vs時間の特徴を一次消失速度定数を用いた2コンパートメントモデルを用いた薬物動態試験に付した(WinNolin Professional Software v3.1,Pharsight Corp.,Cary,NC)。図3は薬物動態の特徴を示し、そして表1はhu5c8mAbおよびアグリコシルhu5c8mAbの平均の薬物動態パラメーターを示す。hu5c8mAbのクリアランスおよび分布容量はアグリコシルhu5c8mAbよりも僅かに高値であった。
【0135】
【表1】
(方法−実施例1)
(1.抗体の作製)
hu5c8mAbの選択、クローニングおよびヒト化は以前に記載されている通りである。Lederman,1992およびKarpusas,2001をそれぞれ参照できる。hu5c8mAbハイブリドーマはATCC(HB10916)より入手可能である。重鎖グリコシル化部位突然変異N298Q(EUナンバリングを用いればN297)は製造元の推奨するプロトコルに従ってAmersham−Pharmacia Biotech(Piscataway,NJ,USA)より入手したキットを用いたユニーク部位排除突然変異誘発によりグリコシル化hu5c8mAbにおいて行った。得られたアグリコシルhu5c8はNS0ミエローマ細胞において安定に発現され、そして、プロテインAおよびゲル濾過クロマトグラフィーにより精製した。アグリコシルhu5c8抗体を産生する細胞株はATCCより入手可能である(PTA−4931)。SDS−PAGEおよび分析用ゲル濾過クロマトグラフィーによれば、タンパク質は予測されたジスルフィド結合4量体を形成していた。
【0136】
(2.CD154結合試験)
FACS系の競合的結合試験は、huCD154+D1.1細胞(Dr.Leonard Chess,Columbia Universityより寄贈、ATCC(CRL−10915)からも入手可能)に対して行った。細胞表面CD154へのビオチニル化hu5c8mAb0.1mg/mlの結合をhu5c8mAbおよびアグリコシルhu5c8mAbの滴定試料により競合させた。細胞結合ビオチニル化hu5c8mAbはストレプトアビジン−フィコエリスリン(PE)(BD−PharMingen San Diego,CA,USA)を用いて検出した。相対結合親和性は4パラメーター曲線フィットのIC50値から推定した。
【0137】
(3.CD154−FcγR結合試験)
FcγR結合親和性は抗原とFcγR担持細胞との間の「架橋」を形成する抗体の能力に基づいた試験を用いて測定した(下記参照)。FcγRI(CD64)結合試験はPBS中1mg/mlの組み換え可溶性ヒトCD154(Biogen,Karpusas,1995)と共に4℃で一夜Maxisorb ELISAプレート(Nalge−Nunc Rochester,NY,USA)をコーティングし、次にPBS中1%BSAでブロッキングすることにより実施した。次にhu5c8mAb(グリコシル化またはアグリコシル)の滴定試料を37℃で30分間CD154に結合させ、プレートを洗浄し、そして蛍光標識U937(CD64+)細胞の結合を測定した。U937細胞は10%FBS、10mMHEPES、L−グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシン、スプリット比1:2のRPMI培地中に生育させ、FcγRI発現を増大させるためにIFNγ1000単位/mlを用いて試験1日前に活性化させた。
【0138】
FcγRIII(CD16)結合試験は96穴の組織培養プレート(Corning Life Sciences Acton,MA,USA)中に生育させたCD154発現チャイニーズハムスター卵(CHO)細胞(Biogen)の単層を用いて実施し、その際、CD16(寄贈元:Dana Farber Institute,Boston,MA,USA)でトランスフェクトした蛍光標識Jurkat細胞のmAb依存性結合を測定した。CHO−CD154+細胞は1x105個/mlで96穴プレートに播種し、10%透析FBS、100nMメトトレキセート、L−グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有するα−MEM中でコンフルエントとなるまで生育させた(全試薬ともGibco−BRL Rockville,MD,USA)。10%FBS、400mg/mlゲネチシン、10mMHEPS、ピルビン酸ナトリウム、L−グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシン添加RPMI中に生育させたCD16+Jurkat細胞は試験実施前1日に1:2のレシオでスプリットした(全試薬ともGibco−BRL)。
【0139】
FcγRIおよびFcγRIIIレセプターの両方に関する試験において、Fcレセプター担持細胞は37℃で20分間、2‘,7’−ビス−(2−カルボキシエチル)−5−(および−6)−カルボキシフルオレセインアセトキシメチルエステル(BCECF−AM)(Molecular Probes Eugene,OR,USA)で標識した。過剰なBCECF−AMを除去するために洗浄した後、標識細胞1x105個を37℃で30分間試験においてインキュベートした。未結合のFcγR+細胞は数回洗浄することにより除去し、そしてプレートは励起波長485nmおよび発光波長530nmでCytofluor2350蛍光マイクロプレートリーダー(Millipore Corporation Bedford,MA,USA)上で読み取った。
【0140】
(実施例2:アグリコシルhu5c8抗体は一次および二次体液性応答を阻害する)
(カニクイザルにおける破傷風トキソイド(TT)への一次体液性応答の阻害)
実施例1の通り製造した各アグリコシルhu5c8mAbおよびグリコシル化hu5c8mAbの各々の単回20mg/kg用量がTTに対する一次抗体応答を阻害する能力を個別の試験において評価した。アグリコシルhu5c8mAbまたはグリコシル化hu5c8mAbの投与は、食塩水投与対照群と比較して全体的一次免疫応答をそれぞれ70%および77%低下させた(EAUC)。図4はグラフ形式の第42日までのTT抗体力価を示しており、アグリコシルhu5c8mAbがその低減されたFcγR結合能力にも関わらずグリコシル化hu5c8mAbと同等の程度まで一次体液性応答を阻害したことを明らかにしている。
【0141】
ヒト化mAbの免疫原性はこの非ヒト霊長類モデルにおけるその薬効のもう1つの尺度である。アグリコシルhu5c8mAbの単回20mg/kg用量を投与した4匹のうち3匹は血清中から薬剤が消失したすぐ後である概ね第82日において抗hu5c8抗体の低力価を示し、アグリコシルmAbが存在していた一方で体液性の応答を阻害したことと合致していた(データ示さず)。
【0142】
一次応答阻害のさらに別の尺度として、鼡径部リンパ節生検によれば、アグリコシルhu5c8mAb投与動物における胚中心(GC)の存在は対照と比較して大きく低減していた。投与動物においては、GCは希少で小型であり、皮質の20%未満を占有するのみであった。対照動物は中等度乃至は顕著に反応性の二次卵胞を有する複数のGCを有していた。中等度〜重度のリンパ節低形成が観察されたことは、グリコシル化hu5c8mAbで以前に観察された結果と合致していた(データ示さず)。
【0143】
カニクイザルへのグリコシル化またはアグリコシルhu5c8mAbの単回20mg/kg投与後の血液学的パラメーターには肉視的変化は観察されず、そして、リンパ球の総数には有意な変化は無かった。さらにまた、CD4/CD8T細胞比は一定のままであり、広範なCD4+T細胞の枯渇は起こらなかったことを示している(データ示さず)。
【0144】
(カニクイザルにおける破傷風トキソイド(TT)に対する二次体液性応答の阻害)
アグリコシルhu5c8mAbの単回20mg/kg用量が二次免疫応答を阻害する能力について、アグリコシルhu5c8mAb試験の以前に記載した段階において正常な一次応答を示した8匹の食塩水対照動物に対し二次TT攻撃を行うことにより評価した。二次TT攻撃の前に、これらの動物4匹にアグリコシルhu5c8mAb20mg/kgを投与し(群1B),そして4匹に食塩水を投与した(群1A)。
【0145】
二次免疫応答は一次免疫応答よりも早期に発生し、より高い強度であることを特徴とする。個体別の動物について一次応答と比較した場合の二次応答の強度(EAUC二次/EAUC一次)を計算した(表2)。図5は全体的な一次および二次の個体別免疫応答を示す。動物個体内で免疫応答の程度にかなりの変動があることに留意しなければならない。平均して食塩水対照群(群1A)における二次TT攻撃はこの抗原へのその一次応答よりも6.5倍高値の全体的抗体応答をもたらしたのに対し、アグリコシルhu5c8mAbを投与した動物(群1B)は平均してその一次応答よりも僅か2.0倍高値の全体的二次抗体応答を示したのみであった。従って、アグリコシルhu5c8mAbの投与は食塩水対照群と比較して二次抗体応答の強度の70%低減をもたらした。
【0146】
【表2】
(方法−実施例2)
(1.TTに対する体液性免疫応答)
2つの独立した試験を実施例1に記載した同じサルを用いながらカニクイザルにおいて実施した。各試験から得た血清試料をあわせ、免疫表現型タイピングのための全血を周囲温度に維持し、分析は採血日に実施した。
【0147】
本アグリコシルhu5c8mAb試験では2投与群を用いた。雄4匹および雌4匹よりなる群1には第1日に食塩水を与え、未投与対照群とした。雄2匹および雌2匹よりなる群2には第1日に静脈内投与によりアグリコシルhu5c8mAb単回20mg/kg用量を与えた(上記)。投与後4時間に、全動物に吸着TTの5Lf(凝集閾値用量)の筋肉内(IM)投与を行った。血液は第1日の投与の前後と投与後190日までの所定の日に採取した。リンパ節の生検試料を第15日に採取した。
【0148】
グリコシル化hu5c8mAb試験では雌3匹を各々含む5投与群を使用した。第1日において、群1には食塩水(未投与対照)を、そして群2〜5にはATCCより入手可能(CRL−10915)なグリコシル化hu5c8mAbをそれぞれ単回投与で0.2、1、5または20mg/kg与えた。投与後4時間に、全ての動物に吸着TT5Lfの単回IM注射を行った。第1日の投与の前後および投与後42日までの所定の日に全群から採血した。これらの2つの独立した試験の比較が可能となるように、一部の血清試料を抗TTELISAにおいて平行して分析した。
【0149】
上記したアグリコシル試験において一次TT攻撃の230日後に対照群1を2群に分割した。群1Aを未投与対照群年、群1Bにはアグリコシルhu5c8mAbを投与することにより二次免疫応答を阻害するその能力を評価した。動物への投与は以下の通り、すなわち群1Bにはアグリコシルhu5c8mAbの単回20mg/kg用量を筋肉内で第1日に投与した。群1Aには第1日にリン酸塩緩衝食塩水を等しい容量で静脈内投与した。投与後4時間に全動物に吸着TT5LfをIM投与した。第1日の投与の前後および投与後85日までの所定の日に採血した。
【0150】
(2.免疫応答の評価)
免疫応答はノンコンパートメント分析を用いて評価した。計算した免疫パラメーターには最大抗体力価値(Emax)、この最大値に到達するまでの時間(tmax)、および抗原投与から最終サンプリング時点までの投与抗原に対する全体的抗体応答(EAUC(0−last))が包含された。薬物動態分析は一次消失速度定数において2コンパートメントモデルを用いて行った(WinNolin Professional Software v3.1,Pharsight Corp.,Cary,NC,USA)。測定した薬物動態パラメーターには最大血清中濃度(Cmax)、全身クリアランス速度(Cl)、定常状態における分布容量(Vss)および抗体の終末期半減期(t1/2)が包含された。統計学的分析、例えば算術平均、標準偏差および幾何平均はMicrosoft Excelのバージョン5.0ソフトウエア(Microsoft Corp.,Rsdmond,WA,USA)を用いて行った。
【0151】
(3.カニクイザルの免疫表現型タイピング)
リンパ球の免疫表現型タイピングをFACS分析に従って2色全血染色プロトコルを用いて行った。慨すれば、EDTA投与全血液100μlを以下の標識mAbの組み合わせの1つ、すなわち、CD20−FITCクローン2H7(BD−Pharmingen San Diego,CA,USA)およびCD2−PEクローンRPA−2.10(BD−Pharmingen)、CD−FITCクローンSP−34(BD−Pharmingen)およびCD4−PEクローンOKT4(Ortho Diagnostic Systems Raritan,NJ,USA)またはCD3−FITCおよびCD8−PEクローンDK−25(Dako Corporation Carpinteria,CA,USA)を用いて、室温で20分間インキュベートした。赤血球を、1xFACS溶血溶液2mlを用いて溶血させた(Becton−Dickinson Franklin Lakes,NJ,USA)。リンパ球を1%パラホルムアルデヒドで固定し、Cellquestソフトウエアを装着したFACScanを用いて分析した(Becton−Dickinson)。総リンパ球数はCD2およびCD20陽性細胞の全てを合算することにより求めた。B細胞はCD20陽性細胞として識別した。T細胞のサブセットはCD3およびCD4またはCD3およびCD8について二重陽性として識別した。総リンパ球、B細胞、CD4+T細胞およびCD8+T細胞はリンパ球分析ゲート内での陽性細胞のパーセントとして表示した。CD4/CD8比は各データセットについて計算した。
【0152】
(4.hu5c8mAb薬物動態に関するELISA)
ELISAプレート(Nalge−Nunc Rochester,NY,USA)を4℃で一夜PBS中組み換え可溶性ヒトCD154(Biogen,Karpusas1995も参照)5μg/mlでコーティングし、2%ロバ血清でブロッキングした(Jackson ImmunoResearch Laboratories West Grove,PA,USA−カタログ番号017−000−121)。血清の連続希釈および8〜500ng/mlのhu5c8mAbの標準曲線を室温で1時間インキュベートする間に捕獲した。結合hu5c8mAbはロバ抗ヒトIgGセイヨウワサビパーオキシダーゼ(HRP)(Jackson ImmunResearch Laboratories West Grove,PA,USA)を用いて検出し、その後3,3‘,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質キット(Pierce Biotechnology Rockland,IL,USA)を用いて発色させた。プレートをSpectromaxプレートリーダー(Molecular Devices Sunnycale,CA,USA)を用いて450nmで読み取った。Softmax Pro Software(Molecular Devices)を用いて標準物質の4パラメーター曲線フィットの直線部分に希釈血清を逆フィットさせた。
【0153】
(5.抗hu5c8抗体応答を測定するためのELISA)
ELISAプレート(Corning−Costar)は4℃で一夜pH9.6の重炭酸塩緩衝液中アグリコシルhu5c8mAb(上記)1μg/mlでコーティングし、1%BSAでブロッキングした。カニクイザルの血清の連続希釈物を室温で1.5時間インキュベートした。結合した抗hu5c8mAbをビオチニル化hu5c8mAb100ng/ml、次いでストレプトアビジン−HRP(Pierce Biotechnology)を用いて検出し、そしてTMB基質キット(Pierce Biotechnology)を用いて発色させた。プレートをSpectromaxプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて450nmで読み取った。抗体価は予備採血の値を超えて>0.100のO.D.単位を与えた最高希釈度の逆数として定義した。
【0154】
(6.抗TT応答に関するELISA)
ELISAプレート(Corning−Costar)は4℃で一夜pH9.6の重炭酸塩緩衝液中TT(Massachusetts Public Health Biologic Laboraories Boston, MA,USA)5μg/mlでコーティングした。連続希釈したカニクイザル血清を室温で2時間ブロッキングされたプレートに添加した。結合した抗TT抗体はウサギ抗サルIgG−HRP(Cappel−Organon Teknika Durham,NC,USA)を用いて検出し、そしてTMB基質キット(Pierce Biotechnology)を用いて発色させた。プレートはSpectromaxプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて450nmで読み取った。SoftmaxProソフトウエア(Molecular Devices)を用いて各連続希釈血清試料について4パラメーター曲線フィットを作製した。抗体力価は予備採血の値を超えて0.100のOD単位を与えた希釈度の逆数として定義した。
【0155】
(7.血液学的検査)
カリウムEDTA抗凝固血液試料を以下の血液学的パラメーター、すなわち、総白血球数、赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、平均血球容量、平均血球ヘモグロビン、平均血球ヘモグロビン濃度、血小板数および血液スミア評価(分画を含む)に関して毎月採取して分析した。
【0156】
(8.リンパ節の生検)
鼡径部リンパ節をアグリコシルhu5c8mAb一次TT応答試験の第15日に全動物より採取した。リンパ節組織をトリミングし、パラフィン包埋し、切片化し、そしてスライドガラス上に搭載した。スライドをヘマトキシリンエオシン染色した。スライドを目視により分析して胚中心の存在を調べ、そして胚中心の出現頻度と大きさに基づいて定量的に調べた。
【0157】
(実施例3:アグリコシルmuMR1抗体によるループス腎炎の阻害)
全身エリテマトーデス(SLE)は自発的に生じる自己免疫疾患であり、雌性に多く、種々の病原性抗核自己抗体の産生を特徴とする。ループス腎炎においては、腎の損傷は腎糸球体内に付着し補体カスケードを活性化し、糸球体腎炎を起こす免疫複合体の形成を含む細胞性および体液性の免疫機序の両方により媒介される。抗核自己抗体の産生はヒトおよびマウスSLEの両方において自己免疫Th細胞およびB細胞の特定集団間の同属体相互作用により駆動されることがすでにわかっている〔Kalled et al.,1998〕。
【0158】
以前の試験によれば、確立されたループス腎炎を有する(SWRxNZB)F1(SNF1)マウスについて、5.5ヶ月齢から開始した抗CD154mAbハムスターMR1(haMR1)の長期投与は生存を延長し、重度の腎炎の発生率を低下させることがわかっている。
【0159】
本実施例においては、本モデルにおける2種のマウスキメラMR1mAbの薬効を説明する。マウスキメラMR1(muMR1)はマウスIgG2a重鎖およびカッパ軽鎖定常ドメインに融合した元のハムスター重鎖および軽鎖の可変ドメインよりなる。muMR1のアグリコシル型はIgG2aFcのCH2ドメインにおけるN連結グリコシル化部位の突然変異により作製した。これらの2抗体を用いながら、抗CD154mAbの力価に対するFcグリコシル化の役割をループス腎炎において評価した。
【0160】
本実施例の結果によれば、キメラmAb、muMR1およびアグリコシルmuMR1の両方とも自己抗体応答を阻害する能力を保持していたことがわかった。特に、野生型の親ハムスターMR1と同様、両方のマウス化抗体は、マウスIgG2a対照mAbを投与したマウスと比較して、それらを投与したマウスにおいて、腎炎症、線維症、硬化症および血管炎を低減する能力を保有していた。
【0161】
(muMR1およびアグリコシルmuMR1の薬物動態)
muMR1およびアグリコシルmuMR1抗体の薬物動態の分析によれば、両方の抗体はBALB/cマウスの血清中で同様の速度論的特徴を示したことがわかる(図6)。特に正常マウスにおけるこれらのキメラ分子の半減期は〜9日と推定され、ハムスターMR1と同様である(データ示さず)。
【0162】
(自己抗体応答の分析)
muMR1またはアグリコシルmuMR1の投与により対照動物と比較してdsDNAおよびssDNAの両方に対する自己抗体応答は大きく低減した(図AおよびB)。
【0163】
(組織学的分析)
腎の組織学的分析によれば、5アイソタイプの対照動物のうち3種が評点方法において概説する多くの特徴を有する重度で末期の腎症を有していた。投与群の動物は僅かな例外を除いて明らかに重症度の低い疾患を有していた。野生型(n=11)およびアグリコシル(n=12)形態のmuMR1を投与した動物の間の差は、野生型の複合疾患評点が僅かに低値であったものの、最小であった。図8は腎に関する群の複合組織評点を示す。アグリコシルmuMR1を投与した動物のうち、大部分は軽度で早期の糸球体の変化を示し、尿細管−間質の有意な変化は殆ど或は全く無かった。muMR1を投与した全動物(n=11)とも軽度で早期の変化を示し、有意な尿細管−間質の変化は無かった。これらの結果から、muMR1およびアグリコシルmuMR1は両方ともループス腎炎に特徴的な組織学的変化の防止において有効であることが明らかである。
【0164】
BおよびT細胞の領域におけるリンパ系拡大の程度は投与動物の各脾臓に関する組織学的検討により評価した。二次卵胞の識別は、凍結切片調製に伴う人為的要素により困難であった。脾リンパ系領域拡大と腎疾患評点との間には見かけ上の相関は無かった。しかしながら、動脈周囲リンパ球鞘(PALS)の拡大の程度はmuMR1を投与した動物と比較してアイソタイプの対照群およびアグリコシルmuMR1投与動物において顕著に高値であるように観察された(データ示さず)。
【0165】
(腎機能の分析)
腎機能を分析するために、タンパク質尿(PU)の程度、ならびに、血清中クレアチニンおよび血中尿素態窒素(BUN)の測定を各動物について行った。キメラmuMR1mAbの両方とも、尿中のタンパク質の含量で測定した場合に、SBF1動物において重度の腎炎の発症時期を遅延させた。対照群動物と比較して、抗CD154投与マウスは6〜9ヶ月の時点ではより低値のPU値を有していた(図9)。しかしながら、〜10ヶ月齢においては、全群とも腎障害を示すPU値を有していた(図9)。これらの結果は抗CD154投与がタンパク質尿の発症時期を遅延させることを示唆している。
【0166】
図10はSNF1マウスの血清中のクレアチニン濃度を示しており、図11はSNF1マウスの血清中のBUNの濃度を示している。対照群の動物は7.25〜10.5ヵ月齢の範囲では上昇した血清中のクレアチニンおよびBUN濃度を有していた。これとは対照的に、グリコシル化muMR1を投与したマウスは試験期間全体を通じて安定しており、血清中クレアチニンおよびBUNのいずれも、殆ど上昇または下降することは無かった。アグリコシルmuMR1投与動物は〜9ヶ月齢まで正常濃度の血清中クレアチニンを維持していたが、その後僅かな上昇が観察された。同様に、この群のBUN濃度は11ヶ月齢時では上昇していた。
【0167】
(生存性の試験)
抗CD154mAb投与はSNF1マウスの生存を延長した。11ヶ月齢において、投与マウスの90%超が生存していたのに対し、対照群では56%であった。14ヶ月までに、全対照マウスは死亡したのに対し、muMR1およびアグリコシルmuMR1マウスのそれぞれ86%および75%がなお生存していた(データ示さず)。
【0168】
総括すれば、これらの実験はmuMR1またはアグリコシルmuMR1のいずれかを用いた腎炎SNF1マウスの長期治療により生存が延長され、自己抗体産生が低減され、そして、腎症の発症が遅延することを示している。グリコシル化およびアグリコシルのmuMR1を用いた場合に達成された結果が僅かに異なることは、ループスにおける抗CD154mAbの薬効に対するFcグリコシル化の役割が僅かにあることを示している。すなわち、アグリコシル抗CD154mAbはループス腎炎に対する効果的な治療法である。
【0169】
(方法−実施例3)
(1.マウス)
BALB/c、SWRおよびNZBマウスはJackson Laboratory (Bar Harbor,ME)より購入した。(SWRxNZB)F1(SNF1)ハイブリッドは従来のバリア条件下でBiogenにおける動物施設において高配した。雌性SNF1マウスを全ループス試験において使用した。BALB/cマウスを薬物動態(PK)試験に使用した。
【0170】
(2.抗体)
アルメニアンハムスター抗マウスCD154mAbを産生するMR1ハイブリドーマ(ATCC#CRL−2580)はAmerican Type Culture Collection(Rockville,MD)より購入した。
【0171】
(3.処置プロトコル)
全注射とも腹腔内経路にて行った。ループス試験ではPI.17muIgG2aを与えたSNF1マウスの対照群およびキメラ抗CD154mAbを単回投与した投与SNF1群を設けた。週当たり1回のmAb500μgの単回投与を最初の6週間行い、その後、動物が死亡するか、試験の終了時まで、突当り500μgを単回注射した。試験は動物が〜5.5ヶ月齢になった時点で開始し、血清試料は毎月採取した。PK試験のためには、BALB/cマウスにはmuMR1またはアグリコシルmuMR1の単回100μg用量を与え、血液試料は4時間後、および、第1、2、4、7、9、11および14日に採取した。
【0172】
(4.ELISA試験)
血清中のキメラMR1mAbを検出するためにNUNCのMaxisorpプレートを4℃で一夜、5μg/mlの組み換え可溶性マウスCD154でコーティングした。翌日プレートをブロッキングし、希釈した血清を添加し、その後セイヨウワサビパーオキシダーゼ結合体化抗マウスIgG2a(Southern Biotech)を添加し、TMB基質で発色させた。2N硫酸で反応を停止し、そしてプレートをSpectramaxプレートリーダー上で450nmで読み取った(Molecular Devices,CA)。抗1本鎖DNA(ssDNA)および抗2本鎖(dsDNA)のELISAをNUNCMaxiSorpプレートを用いて実施した。プレートは10μg/mlメチル化BSA(Calbiochem Corp,La Jolla,CA)で4℃一夜、次に5μg/mlのI等級ウシ胸腺DNA(SIGMA,St.Louis,MO)で25℃2時間コーティングした。ウシ胸腺DNAは超音波処理により除去し、次いでSIヌクレアーゼにより消化した後に使用した。抗ssDNA試験のためにはDNAを10分間煮沸し、氷上冷却した後に使用した。ブロッキングの後、血清試料を連続希釈したものを添加し、2時間室温でインキュベートした。自己抗体をヤギ抗マウスIgGアルカリホスファターゼ(SIGMA,ST.LOUIS,MO)で検出し、1Mジエタノールアミン緩衝益虫p−ニトロフェニルホスフェート(SIGMA,ST.LOUIS,MO)を用いて発色させた。プレートを405nmで読み取り、そしてssおよびdsDNAの両方に特異的な抗DNAmAb205およびmAb5c6の既知量を用いて標準曲線を得た。抗DNA力価はバックグラウンドを超える0.1OD単位における逆数希釈地として定義した。
【0173】
(5.組織学)
腎および脾の低温調製切片およびホルマリン固定パラフィン包埋組織を炎症の浸潤についてヘマトキシリン−エオシン(H&E)染色した。腎はさらにMasson Trichromeで線維症について染色し、そして、過ヨウ素酸シッフ染色(PAS)により基底膜肥厚について調べた。染色された組織の切片を獣医組織学専門家により評点した。ループス腎炎の組織病理学的等級付けに関する全体的評点は糸球体、間質および尿細管の変化に基づいて行った。等級0〜4+は検査する構造体(例えば糸球体、血管等)のパーセント関与に基づいて行い、以下の通り、すなわち:0は有意な患部無し;1+は罹患した構造物1%〜30%;2+は罹患した構造物30%〜60%;3+はある程度まで罹患した構造物60%超;4+は重度に罹患した構造物60%超とした。
【0174】
(6.尿および血清の分析)
各マウスの尿をAlbustix(Bayer Corp.,Tarrytown,NY)を用いて毎週モニタリングすることにより、タンパク質尿(PU)を測定した。タンパク質尿の程度は以下の通り、すなわち0.5+は15〜30mg/dl;1+は30mg/dl;2+は100mg/dl;3+は300mg/dl;4+は2000mg/dl超とした。クレアチニンおよび血中尿素態窒素(BUN)は試験期間を通じて間歇的にCOBAS Chemistry Analyzerで上で血清中値を測定し、PU以外に腎機能の尺度とした。
【0175】
(実施例4:実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)のアグリコシルmuMR1抗体による阻害)
免疫化の時点におけるCD40リガンドのブロックはEAEの発症を阻害することがわかっている[Samoilova、1997]。本実施例においては、muMR1およびアグリコシルmuMR1抗体のEAE阻害能力について分析した。本実施例はまた、抗CD154mAbによるEAEの阻害が能動的阻害機序に関連しているかどうか、そして、どの程度まで抗体のFc依存性相互作用に依存した機序により媒介されているかを調べるものである。
【0176】
本実施例の結果によれば、アグリコシルmuMR1mAbは、臨床疾患の発症のブロッキングにおいて、野生型のグリコシル化ハムスターMR1mAbと同様に有効なEAEの阻害剤であることを示している。より典型的には、全てのMR1mAbは、平均最大臨床評点および平均疾患重症度で評価すれば、ハムスターMR1投与群の1匹のマウスを除き、完全に疾患の発症を阻害した。これらの結果は、抗CD154mAbによるEAEに対抗した保護の根幹である機序にはT調節の誘導は関与していない可能性を示唆している。さらにまた、mAbのFc依存性エフェクター機能は臨床効果に関しては主要な役割を果たしていないが、EAEの自己免疫セッティングにおける阻害の根幹機序には寄与していると考えられる。
【0177】
(グリコシル化muMR1による臨床EARの阻害)
図12はアイソタイプの対照P1.17を投与したマウスと比較した場合にmuMR1を投与したマウスは一次ペプチド免疫化の後に疾患の兆候を発症しなかったことを示している。muMR1投与マウスはまた、80日のフォローアップ期間に臨床兆候を発症しなかった(データ示さず)。完全フロインドアジュバント中に入荷したPLP139−151でマウスを再免疫化した場合、P1.17投与動物においては臨床兆候の重症度が増大した。第0、2および4日にmuMR1を投与していたマウスは、再攻撃後にEAEを発症し、その重症度はP1.17投与マウスにおけるEAEの第1期と等しかった。これらの結果は抗CD154mAb投与が能動的阻害をもたらさないことを示している。本発明者等はさらにまた、EAE誘導とmuMR1投与後1〜3週のマウスから収集した20x106個の脾細胞の転移によりネイティブのレシピエントマウスがその後の能動的EAE誘導に対して耐性となりえるかどうかを調べた。そうではなかった(データ示さず)。
【0178】
(アグリコシルmuMR1による臨床EAEの阻害)
図13および表3はmuMR1およびアグリコシルmuMR1mAbは対照のIgP1.17と比較して200μgの3投薬として投与した場合に全フォローアップ期間にわたりEAEの臨床兆候の阻害において有効であったことを示している。この点に関し、muMR1およびアグリコシルmuMR1抗体はハムスターMR1と等しく有効であった(データ示さず)。これらの抗体をより低用量で投与したところ、EAEの阻害能力に関しては抗体間には大きな差は観察されなかった。
【0179】
(CNS炎症浸潤の阻害)
抗体が中枢神経系(CNS)内における炎症浸潤の阻害において差があるかどうかを調べるために、異なる量の抗体(muMR1およびアグリコシルmuMR1、または3投薬の200μgおよびP1.17対照Ig)を投与した4〜5匹のマウスの個別の群を、アイソタイプ対照抗体を投与したマウスにおける疾患の活動性のピーク時において第16日に屠殺した。
【0180】
【表3】
表4に示すとおり、抗体は疾患の発症の早期の段階においてCNS内の炎症性浸潤の発生を阻害するその能力に関して差が無かった。マウスがEAEの兆候の非存在下において臨床未満の活動性を発生させたかどうかは不明であったため、群あたり6〜14匹のマウスのCNS組織を本試験狩猟時において分析した(第58日)。
【0181】
200μgのmuMR1を投与したマウスとは対照的に、p1.17投与マウスおよび200μgのaglyMR1投与マウスは共に小脳に優先的に局在化した軽度の炎症性浸潤(表5)の徴候を示していた。しかしながら、より低用量の抗体の投与ではaglyMR1は同様であるか、そうでない場合でもそのグリコシル型よりも幾分保護性が高値であるのみであった。これらの結果は両方の抗体が臨床EAEの発症を等しく阻害することを示している。
【0182】
(方法−実施例4)
(1.EAEの誘導)
雌性SJLマウス(10〜12週齢、Harlan)を完全フロイントアジュバント(Difco,Detroit,MI)中に入荷したPLP139−151の50μgで皮下免疫化した。3日後、マウスに109熱殺傷百日咳菌(RIVM,Bilthoven,The Netherlands)を静脈内注射した。EAEの発症は体重および無能力評点を毎日評価することによりモニタリングした。この評点は0:無症状、0.5:尾部緊張の部分的な消失、1:尾部緊張の完全な消失、2:四肢の脆弱化、2.5:部分的麻痺、3:後肢の完全な麻痺、3.5:横隔膜および後肢の完全な麻痺、失禁、4:瀕死〜5:EAEによる死亡、の範囲とした。
【0183】
【表4】
【0184】
【表5】
(2.抗体の作製)
ハムスター抗マウスCD154mAbMR1の重鎖および軽鎖の可変ドメインをハイブリドーマ由来の全RNAからRT−PCRによりクローニングした。ハムスター/マウスキメラmAbに対する発現ベクターは、マウスIgG2aまたはマウスカッパ定常領域cDNA(抗ヒトCD154mAb由来の重鎖および軽鎖の完全長cDNAクローンから誘導、すなわちグリコシル化hu5c8)から標準的組み換えDNA技術を用いたそれぞれ重鎖および軽鎖の可変ドメイン上に操作することにより構築した。muMR1と命名された一過性に発現されたキメラMR1mAbはフローサイトメトリーおよび免疫沈降によればハムスターmAbのCD154結合特性を反復することが明らかになった。
【0185】
aglyMR1と命名されたアグリコシルキメラMR1は重鎖の部位指向性突然変異誘発によりFcのN連結グリコシル化部位(KabatEU命名法ではN297)におけるアスパラギン残基をグルタミン残基に変えることにより構築した。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖および選択マーカーとしてのグルタミン合成酵素遺伝子に対するCMV−IEプロモーター駆動直列転写カセットを含有する安定な発現ベクターはmuMR1およびアグリmuMR1IgG2aカッパmAbの両方について構築した。発現ベクターをNS0細胞にトランスフェクトし、そして安定なクローンをグルタミン非含有培地中で選択することにより単離した。
【0186】
muMR1およびaglyMR1をバイオリアクター細胞上澄みからプロテインAセファロース上でアフィニティー精製し、その後セファクリル300上のサイズエクスクルージョンクロマトグラフィーにより凝集物を除去した。クロマトグラフィー樹脂はAmersham Pharmacia Biotech(Piscataway,NJ)から購入した。mAbはSDS−PAGEによれば>95%純度であることがわかり、内毒素分析によればこれらの試薬がインビボの使用に安全であることが確認された。muMR1およびaglyMR1は細胞表面muCD154インビトロ試験について同様の相対的親和性、および、BALB/cマウスにおいて同様のインビボ薬物動態半減期を有することが解った(データ示さず)。マウスIgG2aアイソタイプ対照mAb、P1.17(ATCC#TIB−10)はBiogenと契約しているProtos Immunoresearch(Burlingame,CA)において腹水からプロテインA精製した。
【0187】
(3.抗CD154抗体の送達)
第0、2および4日に各マウスに200μlのPBSを腹腔内投与し、その際にそれらが下記成分、すなわち、群1=PBS(対照);群2=200μgmuMR1;群3=200μgハムスターIg(Ig対照);群4=200μgマウス化MR1;群5=200μgP1.17IgG2a対照;群6=200μgアグリコシルmuMR1を含有するようにした。
【0188】
いくつかの実験においては、マウスを完全フロイントアジュバント中に入荷した50μgのPLP139−151で第80日に再免疫化した。
【0189】
(4.疾患の評価)
56日間の期間を通じてマウスは毎日体重測定し、以下の評点体系、すなわち、0=症状無し;0.5=尾部緊張の部分的な消失、1:尾部緊張の完全な消失、2:四肢の脆弱化、2.5:部分的麻痺、3:後肢の完全な麻痺、3.5:横隔膜および後肢の完全な麻痺、失禁、4:瀕死〜5:EAEによる死亡、に従って臨床活動性をモニタリングした。
【0190】
(5.組織学)
各個体マウスの脳組織および脊髄を10%ホルマリン中に固定し、パラフィン包埋した。各個体マウスから、100μm離れた3〜6個の脊髄切片(4μm)および6個の脳切片(各々小脳、大脳、脳幹およびくも膜下腔を含む)のヘマトキシリン染色後の炎症性浸潤の範囲について分析した。
【0191】
各個体切片を以下の尺度、すなわち、0=浸潤無し;1=散発性の軽度の血管周囲の浸潤(切片あたり炎症患部2個未満);2=複数病巣、軽度の血管周囲浸潤;4=複数病巣、重度の血管周囲浸潤と実質への拡張、に従って評点した。全ての切片の平均に基づいて、マウスを浸潤無し、散発性、中等度または重度に分類した。
【0192】
(6.統計学的分析)
結果は一元配置分散分析、次いでLSD試験を用いたpost−hoc分析に付した。P値<0.05を有意とみなした。
【0193】
(実施例5:アグリコシルhu5c8抗体は島細胞移植片を阻害する)
以前の試験によれば、グリコシル化hu5c8の20mg/kgの誘導/維持投与用法で治療されたアカゲザルは腎同種異系移植片機能を維持し、6ヶ月の投与期間中に拒絶エピソードを示したものは無かったが、腎同種異系移植片を移植された未投与のサルは8日以内にもその移植片を拒絶した[Kirk,1999]。Kirkの研究グループによる関連の試験においては、アグリコシルhu5c8は移植片拒絶反応の治療のためには有効ではなかった。
【0194】
Kirkの所見とは全く対照的に、本発明の結果はhu5c8mAbのアグリコシル化形態が実際に他のセッティングにおいて移植片拒絶反応の治療に有効であることを示している。
【0195】
(アカゲザルにおける島細胞同種異系移植片の移植)
以前にグリコシル化hu5c8は島細胞の移植を可能とし、同種異系移植片の生存を維持したことが明らかにされている[Kenyon,1999]。
【0196】
20mg/kgの誘導/維持用法で投与されたアカゲザル4匹は移植後>213、>255、>269および>314日間インスリン非依存性を達成した。この試験の結果によれば、第11〜14日までの持続性の高血糖症およびc−ペプチド産生の欠如(内因性インスリン生成の産物)から明らかな通り、島細胞同種異系移植片を移植された未投与の対照サルは第8日までに急性の拒絶反応を示した(データ示さず)。
【0197】
未処置の対照動物とは対照的に、図14はアグリコシルhu5c8の誘導/維持用法により投与したアカゲザル2匹のうちの1匹の良好な治療結果を示している(上記)。両方のサルとも、サルにインスリンを投与しアグリコシルhu5c8投与を継続した場合には、高血糖症および第7日の初期拒絶を示したが、2匹のサルのうち1匹は第28日(白菱形)においてc−ペプチドの存在により測定される同種異系移植片の部分的機能を示しており、そして第45日まで維持された。
【0198】
これらの結果は、アグリコシル化抗CD154mAbは移植片の定着における治療用法において有用であることを示している。しかしながら、移植中の免疫応答は強力な応答であり、すなわち体液性、細胞性および炎症性の免疫応答を含んでいるため、アグリコシル抗CD154抗体は免疫抑制性または免疫調節性の化合物と組み合わせて送達されれば最も効果的であると考えられる。例えば、CD28を介したT細胞の同時刺激シグナリングを妨害する薬剤;カルシニューリンシグナリングを妨害する薬剤、コルチコステロイド、抗増殖剤、または、例えばCD45、CD2、IL2R、CD4、CD8およびRANKFcR、B7、CTLA4、TNF、LTβおよびVLA−4を含む免疫細胞の表面上で発現されるタンパク質に特異的に結合する他の抗体が挙げられる。
【0199】
(方法−実施例5)
(1.島細胞同種異系移植片の移植)
これらの試験は以前に記載されている通り実施した[Kenyon,1999]。慨すれば、アカゲザルの同種異系活性ドナー−レシピエント対を陽性混合リンパ球培養反応性に基づいて選択した。第0日に、レシピエントを全膵臓摘出し、門脈内同種異系島細胞移植を行った。
【0200】
(2.抗体処置)
投薬は第−1、0、3、10および18日における20mg/kgよりなる導入期および第28日から開始する1ヶ月当たり単回20mg/kg投薬よりなる維持期により行った。
【0201】
(3.移植片機能の評価)
島細胞移植片の機能を空腹時および食後の血中グルコース濃度を通して毎日モニタリングした。島細胞の障害(一次非機能または急性の拒絶)は空腹時および促進時のc−ペプチドの産生(内因性インスリン産物)の非存在として定義した。一次非機能は移植直後の期間において移植組織が機能不能であることとして定義し、そして、持続性の高血糖症および不安定な血糖制御を特徴とした。急性拒絶のエピソードは空腹時グルコース>100mg/dLおよび食後血中グルコース>150〜175mg/dLと定義した。全体的な移植片機能は正常な血中グルコース濃度を維持するために必要な外因性インスリンの量をモニタリングすることにより評価した。
【0202】
(実施例6:抗CD154媒介T細胞同種異系反応性を阻害するためのアグリコシル化hu5c8(抗CD154)抗体の使用)
T細胞に対するCD154ターゲティングモノクローナル抗体はインビトロ並びにインビボの同種異系反応性を部分的に阻害することがわかっている。しかしながら抗CD154mAbの阻害活性が刺激性CD40−CD154相互作用の遮断に依存するか、或はCD154を介した阻害シグナルの直接の送達に依存しているかどうかは不明である。
【0203】
インビトロのヒトT細胞同種異系反応性に対するCD154の刺激(すなわちCD154を介した阻害シグナルの直接の送達)とは逆に刺激性CD40−CD154相互作用の遮断の作用を評価するために、未分画のPBMC、または、精製されたCD4+T細胞を、可溶性または培養ウェルに固定化されたヒト化抗CD154mAb(hu5c8、Biogen Inc.,MA,USA)の存在下、同種異系HLAミスマッチ刺激スティミュレーター細胞(CD40陽性細胞)と共に培養した。大部分のブロッキング実験は低減されたFcエフェクター機能を有し、従ってCD154に交差結合する能力が低下している可溶性抗CD154(アグリコシル化hu5c8)の遺伝子操作された変異体を用いて実施した。本実験に使用したアグリコシル化hu5c8は本出願全体を通して記載したアグリコシルhu5c8mAbと同様である。例えば上記の実施例1、15および83を参照できる。可溶性でありがコーティングされていない抗CD154抗体は一次混合リンパ球培養物(MLC)において同種異系T細胞増殖を阻害した(40±23%vs3±18%阻害、n=4)。同様に、二次MLC(n=5実験)における同種異系特異的Tリンパ球の増殖はCD154遮断(可溶性抗体使用)を用いてプライミングすることにより阻害されたのに対し、CD154刺激(コーティングされた抗体)により増大した。さらにまた、コーティングされた抗CD154抗体による刺激は同種異系特異的CTLエフェクターの生成を強力に増強したのに対し、CTLはCD154遮断による影響を受けなかった。
【0204】
抗CD154の刺激活性がB7−CD28同時刺激相互作用を必要としたかどうかを調べるために、CD28へのB7分子の結合を防止する分子であるCTLA4−Igの存在下にMLCを実施した。CTLA4−Igの存在下のプライミングは一次および二次MLCにおいて、それぞれ75±14%(n=3)および64±28%(n=6)、同種異系特異的Tリンパ球の増殖を低減し、そして48±23%(n=2)CTL生成を阻害した。コーティングされた抗CD154抗体のシグナリングは一次(58±0.6%、n=2)および二次(61±49%、n=6)MLCの両方において同種異系特異的T細胞の残存CD28依存性増殖を有意に増大させたが、CTLA4−Ig誘導阻害を完全には排除しなかった。しかしながら、CTLの生成に対するCTLA4−Igの阻害作用はCD154刺激により排除された(コーティング抗CD154抗体媒介)。同種異系反応性T細胞上のCD25、HLA−DRおよびCD95の発現はCTLA4−Igの存在下または非存在下において対照培養と比較した場合にCD154の刺激により強力に増大した(n=2)。
【0205】
本発明者等のデータは抗CD154抗体が培養プレートに固定化されればT細胞の同種異系反応性をブロックするのではなくむしろ増強できることを示している。可溶性アグリコシル化hu5c8mAbによるCD154の遮蔽はインビトロのT細胞の活性化を増強できず、従って、インビボで好都合であり、そして、これらの所見に基づけば、インビボの同種異系T細胞応答を低減するために移植実験モデルにおいて、または、他の同時刺激経路をブロックする分子と組み合わせた場合に、有効であると考えられる。
【0206】
当業者の知るとおり、本発明の精神から外れることなく本発明の好ましい実施形態に対して多くの変更や改造が可能である。このような変形例は全て本発明の範囲内に包含されるものとする。
【0207】
【表6】
【0208】
【表7】
【0209】
【表8】
【0210】
【表9】
【図面の簡単な説明】
【0211】
【図1】図1はアグリコシルhu5c8モノクローナル抗体(mAb)およびグリコシル化hu5c8mAbが同じ相対的親和性でヒトCD154に結合することを示している。ビオチニル化hu5c8mAbの細胞表面CD154への結合を未標識のグリコシル化hu5c8mAbまたはアグリコシルhu5c8mAbの滴定試料により競合させた。ストレプトアビジン−PEで検出したビオチニル化抗体の平均蛍光強度を未標識抗体の濃度に対してプロットした。4パラメーターの曲線フィットをまとめて示した。
【図2】図2はアグリコシルhu5c8mAbが損なわれたFcR結合能力を有することを示している。抗CD154抗体、すなわちアグリコシルhu5c8mAbがhuCD154とFcγRI+細胞との間(a)またはhuCD154+CHO細胞とFcγRIII+細胞との間(b)に架橋を形成する能力を評価した。グリコシル化hu5c8mAbまたはアグリコシルhu5c8mAbを予めCD154に結合させたものが入ったマイクロプレートに蛍光標識FcγR+細胞を添加した。結合FcγR+細胞は励起/発光スペクトル485/530nmを用いて各ウェル中の相対蛍光単位(RFU)を測定することにより検出した。
【図3】図3はグリコシル化hu5c8mAbおよびアグリコシルhu5c8mAbがカニクイザルにおいて同様の結成中半減期を有することを示している。グリコシル化hu5c8mAbおよびアグリコシルhu5c8mAbの濃度は単回20mg/kg静脈内投与の後のカニクイザルの血清中において測定した。各投与群の平均血清中濃度±標準偏差(SD)で示す。
【図4】図4はグリコシル化hu5c8mAbおよびアグリコシルhu5c8mAbが破傷風トキソイド(TT)に対する一次免疫応答を阻害することを示している。グリコシル化hu5c8mAb試験(黒丸)およびアグリコシルhu5c8mAb(白丸)におけるmAb投与群および生理食塩水対照群のカニクイザルに関する結果を示す。
【図5】図5はアグリコシルhu5c8mAbがTTに対する二次免疫応答を阻害することを示している。個々のカニクイザルのTTに対する一次(黒バー)および二次(白バー)の全体的抗体応答(EAUC)を示す。群1Aの動物には一次および二次TT攻撃の両方の前に生理食塩水を投与した。群1Bの動物には一次TT攻撃の前には生理食塩水、二次TT攻撃の前にはアグリコシルhu5c8mAbを投与した。
【図6】図6はBALB/cマウスにおけるグリコシル化マウスキメラMR1(muMR1)およびアグリコシルmuMR1抗体の薬物動態を示す。グリコシル化muMR1抗体(ひし形)およびアグリコシルmuMR1抗体(四角)に関する結果を示す。
【図7】図7(AおよびB)はアグリコシル抗CD154抗体がSNF1マウスにおいて1本鎖(A)および2本鎖(B)DNAに対する自己抗体応答を低減させることを示す。muMR1抗体(ひし形)およびアグリコシルmuMR1抗体(四角)に関する結果を示す。対照のmuIgG2a抗体は三角で示す。
【図8】図8はアグリコシル抗CD154抗体がSNF1マウスにおいて糸球体腎炎の発症を低減することを示している。複合組織学的評点をmuIgG2a(対照)、muMR1およびアグリコシルmuMR1投与マウスについて記載する。
【図9】図9はアグリコシル抗CD154抗体がSNF1マウスにおいて糸球体腎炎の発症時期を遅延させることを示す。muMR1抗体(ひし形)およびアグリコシルmuMR1抗体(四角)に関する結果を示す。対照のmuIgG2a抗体は三角で示す。
【図10】図10はアグリコシル抗CD154抗体がSNF1マウスにおける血清中クレアチニンの増大を防止することを示している。muMR1抗体(ひし形)およびアグリコシルmuMR1抗体(四角)に関する結果を示す。対照のmuIgG2a抗体は三角で示す。
【図11】図11はアグリコシル抗CD154抗体がSNF1マウスにおいて上昇した血中尿素態窒素(BUN)の発症時期を遅延させることを示している。muMR1抗体(ひし形)およびアグリコシルmuMR1抗体(四角)に関する結果を示す。対照のmuIgG2a抗体は三角で示す。
【図12】図12はアイソタイプの対照P1.17抗体を投与したマウスと比較した場合に、muMR1抗体を投与したマウスが実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)の症状を発症しなかったことを示している。muMR1抗体(白丸)およびP1.17対照抗体(黒丸)に関する結果を示す。
【図13】図13は、アグリコシルmuMR1抗体を投与したマウスにおいてアグリコシルmuMR1抗体がmuMR1抗体と同様にEAE臨床兆候の阻害において有効であったことを示している。結果は無能力評点(平均+平均の標準誤差−SEM)および疾患の誘導後の日数に関連付けた初期体重の%(平均+SEM)として示した。P1.17は対照Igである。
【図14】図14は同種異系島細胞移植の後のアカゲザルにおける絶食時の血中グルコース(FBG)を示す。急性の拒絶反応はFBG>100mg/dlと定義した。アグリコシルhu5c8mAb(破線)およびグリコシル化hu5c8mAb(実線)を投与した動物を示す。
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明はCD154およびCD40分子の相互作用をブロックするアグリコシル抗CD154抗体またはその抗体誘導体に関する。さらにまた、本発明はアグリコシル抗CD154抗体および抗体誘導体を産生するための方法を提供する。本発明の抗体および抗体誘導体は望ましくない免疫応答が関与し、そしてCD154−CD40相互作用により媒介される疾患の治療および防止において有用である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
体液性および細胞媒介性の免疫の発生は抗原提示細胞(APC)およびエフェクターT細胞との活性化ヘルパーT細胞の相互作用により調整されている。ヘルパーT細胞の活性化は抗原特異性T細胞レセプター(TCR)とその同属体ペプチドMHCリガンドとの相互作用に依存しているのみならず、多くの細胞接着および同時刺激分子による協調的な結合および活性化を必要とする[Salazar−Fontana,2001]。
【0003】
重要な同時刺激分子はCD154(CD40リガンド、CD40L、gp39、T−BAM、T細胞活性化分子、TRAPとしても知られている)、すなわちCD4+T細胞の表面において活性化依存性の一時的に制限される態様において発現されるII型膜貫通タンパク質である。CD154はまた一部のCD8+T細胞、好塩基球、肥満細胞、好酸球、ナチュラルキラー細胞、B細胞、マクロファージ、樹状細胞および血小板上においても活性化後に発現される。
【0004】
CD154のカウンターレセプターであるCD40はAPCを含む多くの細胞型の表面上で構成的に広範に発現されるI型膜タンパク質である[Foy,1996]。
【0005】
CD154によるCD40を介したシグナリングはCD40レセプター担持細胞の活性化および旨適CD4+T細胞プライミングをもたらす事象のカスケードを開始させる。より詳しくは、CD154およびCD40の同属体相互作用はB細胞の抗体分泌細胞およびメモリーB細胞への分化を促進する[Burkly,2001]。さらに、CD154−CD4相互作用はマクロファージおよび樹状細胞の活性化およびナチュラルキラー細胞および細胞毒性Tリンパ球の発生を介して細胞媒介免疫を促進する[Burkly,2001]。
【0006】
体液性および細胞媒介性の免疫応答の両方の機能の調節におけるCD154の重要な役割は治療的免疫モジュレーションのためのこの経路の阻害剤の使用に関する関心を大いに高めた[米国特許5,474,771]。抗CD154抗体自体は他の治療用タンパク質または遺伝子療法、アレルゲン、自己免疫および移植に対する免疫応答の種々のモデルにおいて有益であることがわかっている[米国特許5,474,771;Burkly,2001]。
【0007】
CD40−CD154相互作用は幾つかの実験的に誘導された自己免疫疾患、例えばコラーゲン誘導関節炎、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、卵巣炎、結腸炎、薬剤誘導性ループス腎炎において重要であることがわかっている。特に、これらのモデルのすべてにおける疾患の誘導は抗原投与の時点においてCD154拮抗剤によりブロックできることがわかっている[Burkly,2001]。
【0008】
抗CD154拮抗剤を用いた疾患のブロックはまた自発的自己免疫疾患、例えばインスリン依存性糖尿病およびループス腎炎の動物モデルにおいて、並びに、移植片対宿主疾患、移植臓器、肺線維症およびアテローム性動脈硬化症のモデルにおいても観察されている[Burkly,2001]。
【0009】
グリコシル化抗CD154抗体は幾つかの免疫応答関連の疾患の防止および治療のために有用であることが解っているが、一部の被験体においては、これらを用いた治療が場合によっては血栓塞栓性の活性により合併症を起こす場合がある[Biogen Press Release,2001;IDEC Press Release,2001]。この副作用の機序は不明であるが、血小板上のFcgRIIaおよびCD154の抗CD154抗体またはその凝集物による結合が関わっており、これが不適切な血小板活性をもたらすと考えられる。他のFcγレセプターおよび補体への結合もまたこの作用を強化する。すなわち、エフェクターレセプターに結合しない抗CD154抗体はより安全であり、そして/または治療用途のためにより効果的である。
【0010】
抗CD154抗体が免疫機能を阻害する機序は単にCD154に結合してCD40との相互作用をブロックすることよりもさらに複雑であり、そして実際、エフェクター経路による寄与が関与すると考えられる。例えば、抗体抗原結合はFcγまたは補体成分へのFcドメインの結合を介して活性化T細胞の欠失を誘導する。或は、CD154への抗体の結合はFcγレセプター担持細胞上の抗体の細胞表面スカフォールドの形成により増強される。さらに、抗体のその作用部位への接近はFcγレセプター結合相互作用により促進される。
【0011】
抗CD154抗体を含むグリコシル化抗体においては、Fc二量体のCH2ドメインの保存されたN連結部位に結合したグリカンはCH2ドメイン間に封入され、糖残基は対向するCH2ドメイン上の特定のアミノ酸残基と連絡している[Jeffries,1998]。種々のグリコシル化抗体を用いたインビトロの試験ではCH2グリカンの除去により、Fcレセプターおよび補体タンパク質C1Qへの抗体の結合が大きく提言されるようにFc構造が改変されることがわかった[Nose,1983;Leatherbarrow,1985;Tao,1989;Lund,1990;Dorai,1991;Hand,1992;Leader,1991;Pound,1993;Boyd,1995]。インビボの試験ではアグリコシル抗体のエフェクター機能の低下が確認された。例えばアグリコシル抗CD8抗体はマウスにおいてCD8担持細胞を枯渇させることができず[Isaacs,1992]、そして、アグリコシル抗CD3抗体はマウスおよびヒトにおいてサイトカイン放出症候群を誘導しない[Boyd,1995;Friend,1999]。
【0012】
CH2ドメインにおけるグリカンの除去はエフェクター機能に対して顕著な作用を有すると考えられるが、抗体の他の機能および物理的特性は未改変のままである。特に、グリカンの除去は血清中半減期および抗原への結合に対して殆ど乃至は全く影響しない[Nose,1983;Tao,1989;Dorai,1991;Hand,1992;Hobbs,1992]。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明において、抗CD154抗体の作用機序に関与するFcエフェクター機能は、Fc二量体のCH2ドメインにおける保存されたN連結部位の修飾によりFcエフェクター機能が低減されて「アグリコシル」の抗CD154抗体となっている抗CD154抗体の使用を介して解明される。このような修飾の例はFc二量体のCH2ドメインにおける保存されたN連結部位の突然変異、CH2ドメインにおけるN連結部位に結合したグリカンの除去およびグリコシル化の防止を包含する。
【0014】
抗CD154抗体の阻害の機序がそのFcエフェクター相互作用に依存しているかどうかを調べるために、抗CD154抗体およびそのアグリコシルの対応物を、CD154−CD40相互作用のブロッキングを介した幾つかの疾患の阻害の能力に関して比較した。本明細書において報告した結果は抗CD154抗体のアグリコシル化された形態が抗CD154抗体のグリコシル化された形態と等しく保護的であることを明らかにしている。
【0015】
本発明のアグリコシル抗CD154抗体は減衰したエフェクター機能を特徴としているため、これらの抗体は特に望ましくない血栓塞栓性の活性の危険性が存在する被験体における使用のために望ましい。さらにまた、アグリコシル抗CD154抗体の減衰したFcエフェクター機能は抗CD154抗体治療の他の潜在的副作用、例えば活性化T細胞および単球/マクロファージのCD154またはFc依存性の活性化を発現するように誘導された細胞の他の集団の欠失を低減または排除する。
【0016】
特に本発明はCD154を認識するアグリコシル抗CD154抗体を提供する。より詳しくは、本発明はヒト化アグリコシル化抗CD154抗体、すなわち「アグリコシルhu5c8」、および、マウスアグリコシル化抗CD154抗体、すなわち「アグリコシルmuMR1」を提供する。
【0017】
本発明の1つの実施形態において、アグリコシルhu5c8抗体は2003年1月14日にAmerican Type Culture Collection(ATCC),10801 University Blvd.,Manassas,Virginiaに受託(受託番号PTA−4931)されているNS0アグリコシルhu5c8細胞株から産生され、そしてアグリコシルMR1抗体は2003年1月14日にATCCに受託(受託番号PTA−4934)されているNS0アグリコシルマウスMR1細胞株から産生される。
【0018】
本発明の1つの実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体はCD154とCD40との間の相互作用を阻害することができる。
【0019】
本発明の別の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体はCD40担持細胞の活性化を直接または間接的にブロックする態様においてCD154と会合することができる。
【0020】
本発明はまたアグリコシル抗CD154抗体またはその抗体誘導体を被験体に投与することを含む被験体における免疫応答を阻害する方法を提供し、ここで抗体または抗体誘導体は被験体における免疫細胞の活性化を阻害するために有効な量で投与される。
【0021】
本発明はまたアグリコシル抗CD154抗体またはその抗体誘導体を被験体に投与することを含む免疫応答依存性の状態または疾患を被験体において治療または防止する方法を提供し、抗体または抗体誘導体は、被験体における免疫細胞の活性化を阻害し、これにより免疫応答依存性の状態または疾患を治療または防止するのに有効な量で投与される。
【0022】
(発明の詳細な説明)
本明細書に記載した本発明をより理解するために、以下の詳細な説明を記載する。特段の記載が無い限り、本明細書において使用する全ての技術的および専門的な用語は本発明が関係する技術分野の当業者が一般的に理解している意味と同様の意味を有する。例示される方法および材料を以下に記載するが、本明細書に記載するものと同様または同等の方法および材料もまた本発明の実施において使用でき、そして当業者には明らかなものである。
【0023】
本明細書全体を通じて、種々の出版物および参考文献を括弧内で示す。これらの出版物および参考文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、これにより本発明が関係する技術分野をより詳細に説明するものとする。これらの参考文献の目録的引用は本文中に記載するか、または、実験の説明の項目の後に番号により列挙する。矛盾がある場合は、本明細書を優先する。材料、方法および実施例は説明のためのものであり、限定を意図しない。
【0024】
当業者の知る組み換えDNA技術の一般的原理を説明する標準的な参考書は、Ausubel et al.,Current Protocols In Molecular Biology, John Wiley&Sons, New York (1998 and Supplements to 2001); Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Plainview, New York,(1989); Kaufman et al.,Eds.,Handbook of Molecular and Cellular Methods in Biology and Medicine, CRC Press, Boca Raton(1995); McPherson, Ed.,Directed Mutagenesis:A Practical Approach, IRL Press, Oxford (1991)を包含する。
【0025】
当業者の知る免疫学の一般的原理を説明する標準的な参考書は、Harlow and Lane, Antibodies:A Laboratory Manual, 2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.(1999);Roitt et al.,Immunology, 3rd Ed.,Mosby−Year Book Europe Limited, London(1993)を包含する。当業者の知る医学生理学および薬理学の一般的原理を説明する標準的な参考書は、Fauci et al.,Eds.,Harrison’s Principles Of Internal Medicine,14th Ed.,McGraw−Hill Companies,Inc.(1998)を包含する。
【0026】
本発明の試薬および方法は免疫応答を阻害するため、および、免疫応答により誘導される疾患および状態、例えば自己免疫疾患、アレルギー、移植片拒絶反応、炎症、移植片対宿主疾患、線維症およびアテローム性動脈硬化症を治療するためのアグリコシル抗体またはその抗体誘導体の使用を意図している。
【0027】
より詳しくは、治療、特にヒトの治療のために使用されるアグリコシル抗CD154抗体はヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ポリクローナル抗体および多量体抗体を包含する。
【0028】
(抗体)
抗体は身体内の外来性分子の存在に応答して脊椎動物の免疫系の体液性の作動により産生される約MW150kDの糖タンパク質である。機能的抗体または抗体誘導体はインビトロおよびインビボでその特異的抗原を認識して結合することが可能であり、そして、いずれかのその後の抗体結合関連の作用、例えば直接の細胞毒性、補体依存性の細胞毒性(CDC))、抗体依存性の細胞毒性(ADCC)および抗体の産生を開始させる。
【0029】
抗原に結合することにより、抗体は感染微生物または他の抗原含有の実体、例えば癌細胞の中和、破壊および排除に寄与する免疫系の多くのエフェクター系1つ以上を活性化させる。
【0030】
天然に存在する抗体は単一の種から誘導されるが、操作された抗体および抗体フラグメントは1種より多い動物から誘導される場合があり、例えばキメラ抗体が挙げられる。今日までマウス(マウス)/ヒトキメラおよびマウス/非ヒト霊長類抗体が作製されているが、他の種の組み合わせも可能である。
【0031】
1つの実施形態において、本発明のアグリコシル抗CD154抗体はキメラ抗体である。典型的には、キメラ抗体は他の種(典型的にはヒト)の定常領域に融合したある種(典型的にはマウス)の相補性決定領域(CDR)およびフレーム枠残基の両方を含む重鎖および/または軽鎖の可変領域を含む。これらのキメラマウス/ヒト抗体は約75%のヒトおよび25%のマウスアミノ酸配列をそれぞれ含んでいる。ヒト配列は抗体の定常領域を表し、マウス配列は抗体の可変領域を表す(そしてこれにより抗原結合部位を含む)。
【0032】
このようなキメラの使用の根拠は、マウス抗体の抗原特異性を保持するがマウス抗体の免疫原性を低下させる(マウス抗体はマウス以外の種においてはそれに対する免疫応答を誘発する)ことであり、これにより、ヒトの治療におけるキメラの使用が可能となる。
【0033】
別の特定の実施形態においては本発明のアグリコシル抗CD154抗体は1つの抗体のフレーム枠領域および別の抗体のCDR領域を含むキメラ抗体を包含する。
【0034】
より特定の実施形態においては、本発明のアグリコシル抗CD154抗体は異なるヒト抗体のCDR領域を含むキメラ抗体を包含する。
【0035】
別の特定の実施形態においては、本発明のアグリコシル抗CD154抗体は、少なくとも2つの異なるヒト抗体のCDR領域を含むキメラ抗体を包含する。
【0036】
上記のキメラ抗体の全てを製造する方法は当該分野でよく知られている[米国特許5,807,715;Morrison,1984;Sharon,1984;Takeda,1985]。
【0037】
本発明の別の実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体はまた霊長類化、ヒト化および完全ヒト化の抗体を包含する。霊長類化およびヒト化抗体は典型的には通常はさらにヒト定常領域を含む非ヒト霊長類またはヒトの抗体V領域フレーム枠に移植されたマウス抗体に由来する重鎖および/または軽鎖のCDRを包含する[Riechmann,1988;Co,1991;米国特許6,054,297;5,821,337;5,770,196;5,766,886;5,821,123;5,869,619;6,180,377;6,013,256;5,693,761;および6,180,370]。
【0038】
(1.ヒト化抗体)
ヒト化抗体は組み換えDNA技術により産生された抗体であり、それにおいては、抗原結合に必要とされないヒト免疫グロブリンの軽鎖または重鎖のアミノ酸の一部または全て(例えば定常領域および可変ドメインのフレーム枠領域)を用いて同属体非ヒト抗体の軽鎖または重鎖の相当するアミノ酸を代替する。例えば、ある抗原に対するマウス抗体のヒト化バージョンはその重鎖および軽鎖の両方の上に(1)ヒト抗体の定常領域;(2)ヒト抗体の可変ドメインのフレーム枠領域;および(3)マウス抗体のCDRを有する。必要に応じて、抗原に対するヒト化抗体の結合親和性が温存されるようにヒトフレーム枠領域の残基1つ以上をマウス抗体の相当する位置における残基に変更することができる。この変更は「復帰突然変異」と称される場合がある。ヒト化抗体は一般的にはかなり少ない非ヒト成分を含有することからキメラヒト抗体と比較してヒトにおいて免疫応答を示す可能性は低い。ヒト化抗体を製造する方法は抗体の分野でよく知られている[欧州特許239400;Jones,1986;Riechmann,1988;Verhoeyen,1988;Queen,1989;Orlandi,1989;米国特許6,180,370]。
【0039】
本発明の1つの実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト抗体へのマウス(または他の非ヒト)CDRの移植により作製される。より詳細には、これは以下の通り、すなわち、(1)重鎖および軽鎖の可変ドメインをコードするcDNAをハイブリドーマから単離する;(2)CDRを含む可変ドメインのDNA配列を配列決定により調べる;(3)CDRをコードするDNAを部位指向性の突然変異誘発によりヒト抗体の重鎖または軽鎖の可変ドメインのコーディング配列の相当する領域に転移させる;および(4)所望のアイソタイプのヒト定常領域の遺伝子セグメント(例えばCHにはl、およびCLにはk)を付加することにより達成される。最後に、ヒト化重鎖および軽鎖の遺伝子を哺乳類宿主細胞(例えばCHOまたはNS0細胞)において同時発現することにより、可溶性のヒト化抗体が製造される。
【0040】
場合によりヒトフレーム枠へのCDRの直接の転移では得られる抗体の抗原結合親和性の損失が起こる。これは、一部の同属態抗体においてフレーム枠領域内の特定のアミノ酸がCDRと相互作用し、これにより抗体の全体的抗原結合親和性に影響するためである。このような場合は、同属体抗体の抗原結合活性を保持するためにはアクセプター抗体のフレーム枠領域内に「復帰突然変異」を導入することが重要である。復帰突然変異を起こすための一般的方法は当該分野でよく知られている[Queen,1989;Co,1991;PCT特許出願WO90/07861;Tempest,1991]。
【0041】
(2.ヒト抗体)
本発明の1つの実施形態において、抗体および抗体誘導体は完全ヒトアグリコシル抗CD154抗体である。
【0042】
本発明のより特定の実施形態において、完全ヒト抗体はインビトロプライミングヒト脾細胞[Boerner,1991]またはファージディスプレイ抗体ライブラリ[米国特許6,300,064]を用いて製造する。
【0043】
本発明のより特定の実施形態においては、完全ヒト抗体はレパートリークローニングにより製造する[Persson,1991;Huang and Stoller,1991]。さらに米国特許5,798,230はヒトB細胞由来のヒトモノクローナル抗体の製造を記載しており、そこにおいては、不朽化に必要なタンパク質であるエプスタイン・バーウィルス核抗原2(EBNA2)を発現するエプスタイン・バーウィルスまたはその誘導体で感染させることによりヒト抗体産生B細胞を不朽化している。EBNA2機能はその後シャットオフされ、これにより抗体の産生が増大する。
【0044】
完全ヒト抗体を産生するための他の方法では、非再配列ヒト抗体の重鎖および軽鎖遺伝子に関して不活性化された内因性Ig遺伝子座を有し、そしてトランスジェニックである非ヒト動物を使用する。このようなトランスジェニックな動物は活性化T細胞またはD1.1タンパク質で免疫化することができ[米国特許5,474,771;米国特許6,331,433;米国特許6455,044]、そして、ハイブリドーマはそれらが由来するB細胞から作製できる。これらの方法の詳細は当該分野で報告されている。例えば、ヒトIgミニ遺伝子座を含有するトランスジェニックマウスに関する種々のGenPharm/Mederax(Palo Alto,CA)出版物/特許、例えば米国特許5,789,650;XENOMOUSE(登録商標)マウスに関する種々のAbgenix(Fremont,CA)出版物/特許、例えば米国特許6,075,181、6,150,584および6,162,963;Green,1997;Mendez,1997;および「トランソミック」マウスに関する種々のKirin(Japan)出版物/特許、例えば欧州特許843961およびTomizuka,1997を参照できる。
【0045】
(脱グリコシル化抗体の作製)
現在、mAbのFc部分の他の価値ある属性を保持しつつそのエフェクター機能を低減するためには2通りの方法がある。抗体を修飾するための1つの方法はエフェクター結合相互作用に関与するmAbの表面上のアミノ酸を突然変異させることである[欧州特許239400;Jefferies,1998]。突然変異の幾つかの組み合わせはエフェクター機能の十分な低減をもたらすが、試験されている表面突然変異体抗体はこれまで残余活性を保持していると考えられている。この方法に関する他の問題点はmAbの表面上のアミノ酸の変化が免疫原性を誘発する可能性がある点である。
【0046】
本発明は低減されたエフェクター機能を有するアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体に関し、これは該抗体のFc部分のCH2ドメインにおける保存されたN連結部位における修飾を特徴とする。
【0047】
本発明の1つの実施形態において、修飾は重鎖グリコシル化部位における突然変異を含み、これによりその部位におけるグリコシル化を防止する。すなわち、本発明の1つの好ましい実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体は重鎖グリコシル化部位の突然変異により、すなわちN298Q(EUKabatナンバリングを用いればN297)の突然変異により製造し、適切な宿主細胞中で発現させる。例えば、この突然変異はAmersham−Pharmacia Biotech(Pitscataway)より入手可能なユニーク部位突然変異誘発キットに関する製造元の推奨プロトコルに従って行える。突然変異した抗体は宿主細胞(例えばNS0またはCHO細胞)内で安定に発現させ、次に精製する。一例として精製はプロテインAおよびゲル濾過クロマトグラフィーを用いて実施できる。当業者の知る通り、別の発現および精製の方法も使用してよい。
【0048】
本発明の別の実施形態においてはアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体は低減されたエフェクター機能を有し、ここで該抗体または抗体誘導体のFc部分のCH2ドメインにおける保存されたN連結部位における修飾はCH2ドメイングリカンの除去、すなわち脱グリコシル化を含む。これらのアグリコシル抗CD154抗体は従来の方法で作製してよく、そして次に酵素的に脱グリコシル化する。抗体の酵素的脱グリコシル化の方法は当該分野でよく知られている[Williams,1973;Winkelhake&Nicolson,1976]。
【0049】
本発明の別の実施形態においては、グリコシル化阻害剤ツニカマイシンを使用して脱グリコシル化を行ってよい[Nose&Wigzell,1983]。すなわち、修飾は該抗体のFc部分のCH2ドメインにおける保存されたN連結部位におけるグリコシル化の防止である。
【0050】
本発明の他の実施形態においては、組み換えCD154ポリペプチド(またはそのポリペプチドを含有する細胞または細胞膜)を抗原として使用することにより抗CD154抗体または抗体誘導体を作製し、それを次に脱グリコシル化してよい。抗原は抗体産生を増大させるためにアジュバントと混合するか、または、ハプテンに連結してよい。
【0051】
本発明のアグリコシル抗体または抗体誘導体の修飾が部位指向性突然変異によるか、または上記した酵素的脱グリコシル化方法によるかに関わらず、抗体の作製の基本は当業者の知るとおりである。例えば非ヒト哺乳類の免疫化のためのプロトコルは当該分野で確立されている[Harlow,1998;Coligan,2001;Zola,2000]。
【0052】
免疫化の後、本発明の抗体または抗体誘導体はいずれかの従来の技術を用いて製造することができる。例えばHoward,2000;Harlow,1998;Davis,1995;Delves,1997;Kenney,1997を参照できる。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態においては、宿主細胞は例えば(1)細菌細胞、例えばE.coli、カウロバクター・クレセンタス、ストレプトマイセス種およびマウスチフス菌;(2)酵母細胞、例えばサッカロマイセス・セレビシアエ、シキゾサッカロマイセス・ポンベ、ピチア・パストリス、ピチア・メタノリカ;(3)昆虫細胞株、例えばSpodoptera frugiperda、例えばSf9およびSf21細胞株、およびexpressSFTM細胞(Protein Sciences Corp.,Meriden,CT,USA)−ショウジョウバエS2細胞およびFigh Five(登録商標)Cells(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)のTrichoplusia;または(4)哺乳類細胞であってよい。典型的な哺乳類細胞はCOS1およびCOS7細胞、チャイニーズハムスター卵(CHO)細胞、NS0ミエローマ細胞、NIH3T3細胞、293細胞、HEPG2細胞、HeLa細胞、L細胞、HeLa、MDCK、HEK293、WI38、ネズムES細胞株(例えば系統129/SV、C57/BL6、DBA−1、129/SVJ由来のもの)、K562、Jurkat細胞およびBW5147を包含する。他の有用な哺乳類細胞株はよく知られており、American Type Culture Collection(ATCC,Manassas,VA,USA)およびNational Institute of General Medical Sciences(NIGMS)Human Genetic Cell Repository at the Coriell Cell Repositories(Camden,NJ.USA)から入手可能である。これらの細胞型は代表例であるのみであり、網羅的列挙ではない。
【0054】
本発明の別の実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体を無細胞翻訳により製造する。
【0055】
本発明の別の実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体は大規模産生を容易にするために抗体発現細胞を含有するバイオリアクター内で製造する。
【0056】
本発明の別の実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体はアグリコシル抗CD154抗体の大規模産生を容易にするために乳汁中で抗体を発現するトランスジェニック哺乳類(例えばヤギ、ウシまたはヒツジ)において製造する[米国特許5,827,690;Pollock,1999]。
【0057】
上記した通り、本発明のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体は原核細胞および真核細胞において製造できる。すなわち本発明は本発明の抗体を発現する細胞、例えば本発明の抗体を発現するように組み換えにより修飾されたハイブリドーマ細胞、B細胞、プラズマ細胞並びに宿主細胞を提供する。
【0058】
一部上記したその他の問題点のうち、宿主細胞株は所望の態様で発現されたCD154タンパク質をプロセシングする能力があるものを選択してよい。アグリコシル化のほかに、このようなポリペプチドの翻訳後修飾としては、例えばアセチル化、カルボキシル化、ホスホリル化、脂質化およびアシル化が挙げられ、そしてこれらの翻訳後修飾の1つ以上を有するアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体を提供することは本発明の特徴である。
【0059】
(抗体の修飾)
投与された場合に、抗体はしばしば循環系から急速に排除され、従って比較的短命な薬理学的活性を示す場合がある。その結果、抗体投与の治療効果を持続するためには比較的大用量の抗体の頻繁な注射が必要となる場合がある。
【0060】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体はインビボで抗体の一体性および持続性を増大させるために修飾(すなわち他の分子に結合)してよい。例えば、本発明のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体は安定性を増大させる部分が含まれるように修飾することにより抗体の血清中半減期を延長させてよい。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体は、全て相当する未修飾タンパク質よりも静脈内注射後に血中半減期を実質的に延長することがわかっている水溶性重合体、例えばポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはポリプロリン等の共有結合により修飾される[Abuchowski,1981;Anderson,1992;Newmark 1982;Katre,1987]。
【0062】
抗体の修飾はまた、水溶液中のタンパク質の溶解度を増大させ、凝集を排除し、タンパク質の物理的および化学的安定性を増大させ、そして、タンパク質の免疫原性および抗原性を大きく低下させる。その結果、未修飾のタンパク質よりも低頻度または低用量におけるそのような重合体タンパク質付加物の投与により所望のインビボの生物学的活性が達成されるのである。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体は検出可能なマーカー、例えば放射性同位体、酵素、色素またはビオチンにより標識することにより修飾する。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体は治療薬、例えば放射性同位体または放射性核種(例えば111Inまたは90Y)、毒素部分(例えば破傷風トキソイドまたはリシン)、トキソイドまたは化学療法剤と結合体化することにより修飾する[米国特許6,307,026]。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態においてはアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体は画像化剤に結合体化することにより修飾する。画像化剤は単離または検出が容易になるように例えば標識部分(例えばビオチン、蛍光部分、放射性部分、ヒスチジンタグまたは他のペプチドタグ)を含んでよい。
【0066】
(抗体誘導体)
本発明はまたアグリコシル抗CD154抗体誘導体に関する。アグリコシル抗CD154抗体に関して上記した全ての方法および試薬は本発明のアグリコシル抗CD154抗体誘導体の製造のために使用してよい。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体誘導体はヘテロメリックの抗体複合体および抗体融合物、例えば二重特異性の抗体、ヘミ二量体の抗体、多価の抗体(すなわち4価抗体)および一重鎖の抗体を包含する。ヘミ二量体抗体はFc部分および1つのFab部分よりなる。一重鎖抗体は一重タンパク質鎖中のタンパク質スペーサーにより連結された可変領域よりなる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態においては、本発明のアグリコシル抗CD154抗体誘導体は1つ以上の免疫グロブリンの軽鎖および/または重鎖を含有するタンパク質を包含し、これらの鎖の単量体およびホモまたはヘテロ多量体(例えば二量体または三量体)が挙げられ、その場合、これらの鎖は場合によりジスルフィド結合するか、または他の態様で交差結合している。これらの抗体誘導体は抗原1つ以上に結合することができる。
【0069】
別の実施形態によれば、本発明はFab、Fab’、F(ab’)2およびF(v)抗体フラグメントのような全抗体のアグリコシル化抗原結合フラグメントを包含する。さらに別の実施形態においては、本発明はFab、Fab’、F(ab’)2およびF(v)抗体フラグメントのような全抗体の抗原結合フラグメントを包含する。
【0070】
(細胞株)
本発明はまた本発明のアグリコシル抗CD154抗体を産生する細胞株を提供する。アグリコシルhu5c8抗体を産生するこのような細胞株の1つは特許手続きの目的のための微生物の受託の国際認識のためのブタペスト条約の条項の下、2003年1月14日にATCC,10801 University Blvd.,Manassas,Virginia,20110−2209,USAに受託されており、受託番号PTA−4931で登録されている。キメラマウスアグリコシルmu5c8抗体を産生する第2のこのような細胞株は特許手続きの目的のための微生物の受託の国際認識のためのブタペスト条約の条項の下、2003年1月14日にATCC,10801 University Blvd.,Manassas,Virginia,20110−2209,USAに受託されており、受託番号PTA−4934で登録されている。
【0071】
(治療方法)
本発明の1つの実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体またはその抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は被験体における免疫応答を阻害することが可能である。抗体、抗体誘導体または薬学的組成物は有効阻害量で被験体に投与する。
【0072】
抗体、抗体誘導体または薬学的組成物の「有効阻害量」とは、それを投与する被験体におけるCD154−CD40相互作用を阻害するために有効であるいずれかの量である。「阻害量」を決定する方法は当該分野でよく知られており、例えば関与する被験体の型、被験体の体格および送達する治療薬などのような要因により異なる。
【0073】
本発明の特定の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はCD154タンパク質分子に結合することができる。
【0074】
本発明の特定の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8により特異的に結合されるCD154タンパク質に結合することができる。
【0075】
本発明の特定の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8により特異的に結合されるCD154エピトープに結合することができ、ここでアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体はN298Q(EUKabatナンバリングを用いればN297)の突然変異を特徴としている。
【0076】
本発明の特定の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はエフェクターレセプターに結合しない。本発明のより特定の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8により特異的に結合されるCD154タンパク質に結合することができ、ここでアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体または薬学的組成物はエフェクターレセプターに結合しない。
【0077】
本発明の特定の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は血栓症を誘発しない。本発明のより特定の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8により特異的に結合されるCD154タンパク質に結合することができ、ここでアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体または薬学的組成物は血栓症を誘発しない。
【0078】
本発明の別の特定の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はCD154−CD40相互作用を阻害することにより免疫応答を阻害することができる。
【0079】
本発明の1つの実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は炎症を阻害することができる。本発明の目的のためには、炎症応答は浮腫および貪食性白血球の遊走を伴った毛細血管の拡張の結果としての発赤、むくみ、灼熱感および疼痛を特徴とする。炎症応答の一例には、関節炎、接触性皮膚炎、IgE亢進症候群、炎症性腸疾患、アレルギー性喘息および特発性炎症性疾患が包含される[Gallin,1989]。関節炎の一例は関節リューマチ、非リューマチ様炎症性関節炎、ライム病に関連する関節炎および炎症性骨関節炎を包含する。特発性炎症性疾患の一例は乾癬および全身性狼瘡を包含する。
【0080】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は移植された臓器の被験体による拒絶反応を阻害することができる。
【0081】
本発明のより特定の実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は移植された心臓、腎臓、肝臓、皮膚、膵島細胞または骨髄の被験体による拒絶反応を阻害することができる。
【0082】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は被験体における移植片対宿主疾患を阻害することができる。
【0083】
本発明の1つの実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は被験体におけるアレルギー応答、例えば枯草熱またはペニシリンまたは他の薬剤に対するアレルギーを阻害することができる。
【0084】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は自己免疫疾患に罹患した被験体における自己免疫応答を阻害することができる。自己免疫疾患の例は関節リューマチ、重症筋無力症、全身エリテマトーデス、グレーブス病、特発性血小板減少症、紫斑病、溶血性貧血、真性糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、多発性硬化症、乾癬、薬剤誘導性の自己免疫疾患、例えば薬剤誘導性の狼瘡を包含する。
【0085】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は感染性疾患から誘導される自己免疫応答に罹患した被験体における自己免疫応答を阻害することが可能である。
【0086】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はライター症候群、脊椎関節炎、ライム病、HIV感染症、梅毒または結核から誘導される自己免疫応答に罹患した被験体における自己免疫応答を阻害することができる。
【0087】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は被験体における線維症を阻害することができる。
【0088】
線維症のいくつかの例は肺線維症または線維性疾患を包含する。肺線維症の一例は成人呼吸窮迫症候群に二次的な肺線維症、薬剤誘導性肺線維症、特発性肺線維症および過敏性肺炎を包含する。線維性疾患の一例はC型肝炎、B型肝炎、肝硬変、毒物発作に二次的な肝硬変、ウィルス感染に二次的な肝硬変および自己免疫疾患に二次的な肝硬変を包含する。
【0089】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は胃腸疾患を阻害することができる。胃腸疾患の一例は食道運動不全、炎症性腸疾患および硬皮症を包含する。
【0090】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物は脈菅疾患を阻害することができる。脈菅疾患の一例はアテローム性動脈硬化症または再灌流傷害を包含する。
【0091】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はT細胞癌、例えばT細胞白血病またはリンパ腫に罹患した被験体におけるT細胞腫瘍の増殖を阻害することができる。このようなアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体または薬学的組成物はそのような被験体におけるT細胞腫瘍の増殖を阻害するために有効な量で被験体に投与してよい。
【0092】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はHTLVIウィルスによる被験体のT細胞のウィルス感染を阻害することができる。このようなアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体または薬学的組成物はそのような被験体におけるウィルス感染を阻害するために有効な量で被験体に投与してよい。
【0093】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8により特異的に認識されるタンパク質を発現する被験体における腫瘍細胞または新生物細胞を画像化することができる。被験体における腫瘍細胞または新生物細胞を画像化するための方法は、以下の工程、すなわち、抗体または抗体誘導体と腫瘍細胞または新生物細胞表面上のタンパク質との間の複合体の形成を可能にする条件下でアグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または薬学的組成物の有効量を被験体に投与すること;および、形成された抗体/タンパク質複合体または抗体誘導体/複合体のいずれかを画像化することにより被験体における腫瘍細胞または新生物細胞のいずれかを画像化すること;
を含む。
【0094】
本発明の1つの実施形態においては、アグリコシル抗体、抗体誘導体または抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物はATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8により特異的に認識されるタンパク質を発現する被験体における腫瘍細胞または新生物細胞の存在を検出することができる。被験体における腫瘍細胞または新生物細胞の存在を検出するための1つのこのような方法は、以下の工程、すなわち:抗体または抗体誘導体とタンパク質との間の複合体の形成を可能にする条件下でアグリコシル抗体、抗体誘導体または薬学的組成物の有効量を被験体に投与すること;未結合の画像化剤を被験体から除去すること;および、形成された抗体/タンパク質複合体または抗体誘導体/複合体のいずれかの存在を検出すること、ただし該複合体の存在は被験体における腫瘍細胞または新生物細胞の存在を示すものであることを含む。
【0095】
(薬学的組成物)
本発明は本明細書に開示したアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体を含む薬学的組成物を提供する。
【0096】
本発明の1つの実施形態において、薬学的組成物はアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体1つ以上を含む。
【0097】
本発明の別の実施形態において、薬学的組成物はさらに薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、送達ベヒクル、緩衝剤または安定化剤を含んでよい。
【0098】
本発明のより特定の実施形態においては製薬上許容しうるキャリアはリン酸塩緩衝食塩水、生理食塩水、水、クエン酸/スクロース/Tween処方およびエマルジョン−例えば油/水エマルジョンである。
【0099】
本発明の1つの実施形態において薬学的組成物はタンパク質に対する宿主の免疫応答を低減または防止できるようにマイクロカプセル化装置内において送達してよい。抗体または抗体誘導体はまたリポソームのような膜内にマイクロカプセル化して送達してもよい。
【0100】
本発明の1つの実施形態において、薬学的組成物は滅菌された注射可能な製剤、例えば滅菌された注射可能な水性または油性の懸濁液の形態であってよい。このような懸濁液は適当な分散剤、水和剤および懸濁剤を用いながら当該分野で知られた技術に従って製剤してよい。
【0101】
本発明の1つの実施形態において、薬学的組成物は、経口的、局所的または静脈内で送達され得る。
【0102】
本発明のより特定の実施形態において、経口投与のためには、薬学的組成物は適当なカプセル、錠剤、水性の懸濁液または溶液に製剤する。経口投与用の組成物の固体形態は適当なキャリアまたは賦形剤、例えばコーンスターチ、ゼラチン、乳糖、アカシア、スクロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸ジカルシウム、炭酸カルシウム、塩化ナトリウムまたはアルギン酸を含有できる。使用できる錠剤崩壊剤は、例えば、微結晶セルロース、コーンスターチ、ナトリウム澱粉グリコレートおよびアリギン酸を包含する。使用できる錠剤バインダーはアカシア、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン(PovidoneTM)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクロース、澱粉およびエチルセルロースを包含する。使用できる潤滑剤はステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリコーン液、タルク、ワックス、油類およびコロイド状シリカを包含する。
【0103】
本発明のより特定の実施形態においては、局所適用のためには、薬学的組成物は適当な軟膏に製剤してよい。局所用途の組成物の製剤の一例は、活性成分および種々の補助剤およびベヒクルを含有するドロップ剤、チンキ剤、ローション、クリーム、溶液および軟膏を包含する。
【0104】
本発明の1つの実施形態においては、局所用の半固体の軟膏製剤は典型的には医薬品用クリーム基剤のようなキャリア中、約1〜20%、例えば5〜10%の活性成分の濃度を有する。
【0105】
本発明の1つの実施形態においては、吸入用の薬学的組成物および経皮組成物もまた用意に製造できる。
【0106】
本発明の1つの実施形態において、水および他の水性のベヒクル中に製造された経口投与用の薬学的組成物の液体製剤は種々の懸濁剤、例えばメチルセルロース、アルギネート、トラガカント、ペクチン、ケルギン、カラギーナン、アカシア、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールを含有できる。本発明の薬学的組成物の液体製剤もまた、活性化合物と共に水和剤、甘味料および着色料およびフレーバー剤を含有する溶液、乳液、シロップおよびエリキシルを包含する。薬学的組成物の種々の液体および粉末の製剤は治療すべき哺乳類の肺内への吸入のための従来の方法により製造できる。
【0107】
本発明の1つの実施形態において、注射のための薬学的組成物の液体製剤は、種々のキャリア、例えば植物油、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、ポリオール、すなわちグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等を含むことができる。いくつかの実施形態においては、組成物はクエン酸塩/スクロース/ツイーンキャリアを含む。静脈内注射のためには組成物の水溶性の形態を点滴により投与することができ、これにより抗カビ剤および生理学的に許容される賦形剤を含有する医薬品製剤を注入できる。生理学的に許容される賦形剤は例えば5%デキストロース、0.9%食塩水、リンゲル溶液または他の適当な賦形剤を含むことができる。組成物の適当な不溶性形態は、水性の基剤または製薬上許容しうる油性基剤、例えば長鎖脂肪酸、例えばオレイン酸エチル中の懸濁液として製造し、投与することができる。
【0108】
本発明の1つの実施形態において、薬学的組成物は製薬上許容しうるキャリア中、アグリコシル抗CD154抗体またはその抗体誘導体約0.1〜90重量%(例えば1〜20%、または1〜10%)服務。
【0109】
本発明の1つの実施形態において、各薬学的組成物中の抗体または抗体誘導体の旨適パーセントは、製剤自体、および、特定の病態および関連する治療方法において望まれる治療効果により変動する。医薬品製剤は当該分野でよく知られている[Gennaro,2000;Ansel,1999;Kibbe,2000]。医学分野の当業者の知る従来の方法を用いて被験体に薬学的組成物を投与できる。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態においては、薬学的組成物はさらに免疫抑制性または免疫調節性の化合物を含む。例えば、このような免疫抑制性または免疫調節性の化合物は以下のもの、すなわち:CD28を介したT細胞同時刺激シグナリングを中断させる薬剤、カルシニューリンシグナリングを中断させる薬剤、コルチコステロイド、抗増殖剤およびCD45、CD2、IL2R、CD4、CD8およびRANK FcR、B7、CTLA4、TNF、LTβおよびVLA−4等を含む免疫細胞の表面上に発現されるタンパク質に特異的に結合する抗体のうちの1つであってよい。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態においては、免疫抑制性または免疫調節性の化合物はタクロリムス、シロリムス、マイコフェノレートモフェチル、ミゾルビン、デオキシスペルグアリン、ブレキナールナトリウム、レフルノミド、ラパマイシンおよびアザスピランである。
【0112】
本発明の他の実施形態において、抗体、抗体誘導体またはこれらを含む薬学的組成物は容器、パッケージディスペンサー内に単独で含まれるか、または、投与のためのラベルおよび使用上の注意を伴ったキットの一部であってよい。
【0113】
(投与および送達経路)
本発明のアグリコシル抗CD154抗体またはその抗体誘導体および薬学的組成物は医学的に受容可能ないずれかの態様において被験体に投与してよい。本発明の目的のためには、「投与」とは当業者の知る抗体、抗体誘導体または薬学的組成物を投与する標準的な方法のいずれかを意味し、そして本明細書に記載した例に限定されない。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物は、注射により静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、骨髄内、脳室内、硬膜内、動脈内、脈菅内、関節内、滑液内、肋骨内、髄腔内注射、肝臓内、脊椎内、腫瘍内、頭蓋内、経腸、肺内、経粘膜、子宮内、舌下または局所的に炎症または腫瘍生育の部位において、標準的な方法を用いることにより被験体に投与される。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物は経口、経鼻、眼内、直腸内および局所的経路により被験体に投与してよい。
【0116】
より特定の実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物はカプセル、錠剤、水性の懸濁液または溶液の形態で被験体に投与してよい。
【0117】
より特定の実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物はクリーム、軟膏等の適用により局所的に被験体に投与してよい。
【0118】
本発明の他の実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物は、ネブライザー、乾燥粉末吸入器または計量用量吸入器の使用を介した吸入により投与してよい。
【0119】
本発明のさらなる実施形態においては、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物は、手術中に直接適用される腐食性インプラントのデポ注射のような手段により、または、被験体への注入ポンプまたは生態分解性除放性インプラントの移植により、除放性投与により被験体に投与してよい。
【0120】
より特定の実施形態においては、本発明のアグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物は、1,3または6ヶ月のデポ注射または生態分解性の材料および方法を用いることによるなどして、注射デポ経路の投与により被験体に投与してよい。
【0121】
より特定の実施形態においては、本発明のアグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物は、抗体、抗体誘導体または薬学的組成物を含有する経皮パッチを被験体の皮膚に適用すること、および、パッチあたり一般的に1〜5時間、パッチを被験体の皮膚と接触させたままにすることにより、被験体に投与してよい。
【0122】
本発明の他の実施形態において、アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物は医学的に受容可能ないずれかの体重あたり用量およびいずれかの投与頻度において被験体に投与してよい。許容される用量は被験体のkg体重あたり約0.01〜200mgの範囲である。
【0123】
さらなる実施形態においては、本発明のアグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物は毎日〜一箇月おきの範囲の時間間隔において反復して被験体に投与してよい。
【0124】
本発明の1つの実施形態においては、のアグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体および薬学的組成物は合計の所望の一日当たり用量を達成するために所望により一日当たり複数回投与において投与することができる。治療方法の有効性は疾患の知られた兆候または症状について被験体をモニタリングすることにより評価できる。
【0125】
本発明の全ての実施形態について、所望の作用をもたらすために有効な本発明のアグリコシル抗CD154抗体、その抗体誘導体および薬学的組成物の用量および投与比率は、種々の要因、例えば治療すべき疾患の性質、患者の体格、治療の目標、使用する特定の薬学的組成物および担当医師の判断により異なる。
【0126】
本発明のアグリコシル抗CD154抗体、その抗体誘導体および薬学的組成物は特定の適応症に対する単回用量として、例えば短時間被験体が曝露される抗原、例えば治療の単一日において投与される外因性抗原への免疫応答を防止するために投与してよい。このような治療の例は、治療薬、例えば抗原性の医薬品、アレルゲンまたは血液製剤または遺伝子療法ベクターと共に本発明の抗体または抗体誘導体を同時投与することを包含する。抗原が慢性的に存在するような適応症の場合、例えば移植された組織または慢性的に投与された抗原性の医薬品への免疫応答を制御する場合には、本発明の抗体、抗体誘導体または薬学的組成物は数日または数週間乃至は被験体の生涯の範囲の、医療上指示される長期に渡る時間間隔で投与する。
【0127】
本発明の1つの実施形態において、上記した方法により治療できる被験体は動物である。好ましくは、動物は哺乳類である。治療してよい哺乳類の例は、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(例えばラット、マウス、ハムスターおよびモルモット)、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌおよびネコを包含する。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0128】
本発明は以下の実施例に基づいてさらに良好に理解される。しかしながら、当業者の知るとおり記載した特定の方法および結果はその後に記載する本発明の実施形態においてより詳細に説明するとおり、本発明の説明を目的とするのみである。
【0129】
(実験の詳細)
【実施例】
【0130】
以下の実施例は本発明の方法および生成物を説明する。当業者の知る分子生物学の分野において通常遭遇する記載した条件およびパラメーターの適当な変更および適合は本発明の精神および範囲に包含される。
【0131】
(実施例1:アグリコシルhu5c8抗体の作製および評価)
(アグリコシルhu5c8mAbの発現および特性化)
hu5c8mAbのエフェクター機能を低減するために、重鎖CH2ドメイン内のカノニカルなN連結Asn部位をGln残基に変更することによりアグリコシル型を作製した。
【0132】
競合的結合試験によれば、細胞表面CD154に結合するアグリコシルhu5c8mAbの能力はグリコシル化hu5c8mAbと比較して改変されていなかった(図1)。
【0133】
エフェクター機能の低減は架橋形成試験フォーマットを用いてインビトロで測定した。FcγRIへのアグリコシルhu5c8の相対的結合はグリコシル化hu5c8mAbと比較して25倍減少していた(図2A)。FcγRIIIへのアグリコシルhu5c8mAbの残存結合は5mg/mlの濃度までは観察されなかったが、正常なグリコシル化hu5c8mAbは同じ試験フォーマットにおいて50ng/mlのEC50を示した(図2B)。
【0134】
(カニクイザルにおけるアグリコシルhu5c8mAbの薬物動態)
2つの独立した試験から得られたhu5c8mAbおよびアグリコシルhu5c8mAbの単回20mg/kg投与の後の血清中濃度vs時間の特徴を一次消失速度定数を用いた2コンパートメントモデルを用いた薬物動態試験に付した(WinNolin Professional Software v3.1,Pharsight Corp.,Cary,NC)。図3は薬物動態の特徴を示し、そして表1はhu5c8mAbおよびアグリコシルhu5c8mAbの平均の薬物動態パラメーターを示す。hu5c8mAbのクリアランスおよび分布容量はアグリコシルhu5c8mAbよりも僅かに高値であった。
【0135】
【表1】
(方法−実施例1)
(1.抗体の作製)
hu5c8mAbの選択、クローニングおよびヒト化は以前に記載されている通りである。Lederman,1992およびKarpusas,2001をそれぞれ参照できる。hu5c8mAbハイブリドーマはATCC(HB10916)より入手可能である。重鎖グリコシル化部位突然変異N298Q(EUナンバリングを用いればN297)は製造元の推奨するプロトコルに従ってAmersham−Pharmacia Biotech(Piscataway,NJ,USA)より入手したキットを用いたユニーク部位排除突然変異誘発によりグリコシル化hu5c8mAbにおいて行った。得られたアグリコシルhu5c8はNS0ミエローマ細胞において安定に発現され、そして、プロテインAおよびゲル濾過クロマトグラフィーにより精製した。アグリコシルhu5c8抗体を産生する細胞株はATCCより入手可能である(PTA−4931)。SDS−PAGEおよび分析用ゲル濾過クロマトグラフィーによれば、タンパク質は予測されたジスルフィド結合4量体を形成していた。
【0136】
(2.CD154結合試験)
FACS系の競合的結合試験は、huCD154+D1.1細胞(Dr.Leonard Chess,Columbia Universityより寄贈、ATCC(CRL−10915)からも入手可能)に対して行った。細胞表面CD154へのビオチニル化hu5c8mAb0.1mg/mlの結合をhu5c8mAbおよびアグリコシルhu5c8mAbの滴定試料により競合させた。細胞結合ビオチニル化hu5c8mAbはストレプトアビジン−フィコエリスリン(PE)(BD−PharMingen San Diego,CA,USA)を用いて検出した。相対結合親和性は4パラメーター曲線フィットのIC50値から推定した。
【0137】
(3.CD154−FcγR結合試験)
FcγR結合親和性は抗原とFcγR担持細胞との間の「架橋」を形成する抗体の能力に基づいた試験を用いて測定した(下記参照)。FcγRI(CD64)結合試験はPBS中1mg/mlの組み換え可溶性ヒトCD154(Biogen,Karpusas,1995)と共に4℃で一夜Maxisorb ELISAプレート(Nalge−Nunc Rochester,NY,USA)をコーティングし、次にPBS中1%BSAでブロッキングすることにより実施した。次にhu5c8mAb(グリコシル化またはアグリコシル)の滴定試料を37℃で30分間CD154に結合させ、プレートを洗浄し、そして蛍光標識U937(CD64+)細胞の結合を測定した。U937細胞は10%FBS、10mMHEPES、L−グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシン、スプリット比1:2のRPMI培地中に生育させ、FcγRI発現を増大させるためにIFNγ1000単位/mlを用いて試験1日前に活性化させた。
【0138】
FcγRIII(CD16)結合試験は96穴の組織培養プレート(Corning Life Sciences Acton,MA,USA)中に生育させたCD154発現チャイニーズハムスター卵(CHO)細胞(Biogen)の単層を用いて実施し、その際、CD16(寄贈元:Dana Farber Institute,Boston,MA,USA)でトランスフェクトした蛍光標識Jurkat細胞のmAb依存性結合を測定した。CHO−CD154+細胞は1x105個/mlで96穴プレートに播種し、10%透析FBS、100nMメトトレキセート、L−グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有するα−MEM中でコンフルエントとなるまで生育させた(全試薬ともGibco−BRL Rockville,MD,USA)。10%FBS、400mg/mlゲネチシン、10mMHEPS、ピルビン酸ナトリウム、L−グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシン添加RPMI中に生育させたCD16+Jurkat細胞は試験実施前1日に1:2のレシオでスプリットした(全試薬ともGibco−BRL)。
【0139】
FcγRIおよびFcγRIIIレセプターの両方に関する試験において、Fcレセプター担持細胞は37℃で20分間、2‘,7’−ビス−(2−カルボキシエチル)−5−(および−6)−カルボキシフルオレセインアセトキシメチルエステル(BCECF−AM)(Molecular Probes Eugene,OR,USA)で標識した。過剰なBCECF−AMを除去するために洗浄した後、標識細胞1x105個を37℃で30分間試験においてインキュベートした。未結合のFcγR+細胞は数回洗浄することにより除去し、そしてプレートは励起波長485nmおよび発光波長530nmでCytofluor2350蛍光マイクロプレートリーダー(Millipore Corporation Bedford,MA,USA)上で読み取った。
【0140】
(実施例2:アグリコシルhu5c8抗体は一次および二次体液性応答を阻害する)
(カニクイザルにおける破傷風トキソイド(TT)への一次体液性応答の阻害)
実施例1の通り製造した各アグリコシルhu5c8mAbおよびグリコシル化hu5c8mAbの各々の単回20mg/kg用量がTTに対する一次抗体応答を阻害する能力を個別の試験において評価した。アグリコシルhu5c8mAbまたはグリコシル化hu5c8mAbの投与は、食塩水投与対照群と比較して全体的一次免疫応答をそれぞれ70%および77%低下させた(EAUC)。図4はグラフ形式の第42日までのTT抗体力価を示しており、アグリコシルhu5c8mAbがその低減されたFcγR結合能力にも関わらずグリコシル化hu5c8mAbと同等の程度まで一次体液性応答を阻害したことを明らかにしている。
【0141】
ヒト化mAbの免疫原性はこの非ヒト霊長類モデルにおけるその薬効のもう1つの尺度である。アグリコシルhu5c8mAbの単回20mg/kg用量を投与した4匹のうち3匹は血清中から薬剤が消失したすぐ後である概ね第82日において抗hu5c8抗体の低力価を示し、アグリコシルmAbが存在していた一方で体液性の応答を阻害したことと合致していた(データ示さず)。
【0142】
一次応答阻害のさらに別の尺度として、鼡径部リンパ節生検によれば、アグリコシルhu5c8mAb投与動物における胚中心(GC)の存在は対照と比較して大きく低減していた。投与動物においては、GCは希少で小型であり、皮質の20%未満を占有するのみであった。対照動物は中等度乃至は顕著に反応性の二次卵胞を有する複数のGCを有していた。中等度〜重度のリンパ節低形成が観察されたことは、グリコシル化hu5c8mAbで以前に観察された結果と合致していた(データ示さず)。
【0143】
カニクイザルへのグリコシル化またはアグリコシルhu5c8mAbの単回20mg/kg投与後の血液学的パラメーターには肉視的変化は観察されず、そして、リンパ球の総数には有意な変化は無かった。さらにまた、CD4/CD8T細胞比は一定のままであり、広範なCD4+T細胞の枯渇は起こらなかったことを示している(データ示さず)。
【0144】
(カニクイザルにおける破傷風トキソイド(TT)に対する二次体液性応答の阻害)
アグリコシルhu5c8mAbの単回20mg/kg用量が二次免疫応答を阻害する能力について、アグリコシルhu5c8mAb試験の以前に記載した段階において正常な一次応答を示した8匹の食塩水対照動物に対し二次TT攻撃を行うことにより評価した。二次TT攻撃の前に、これらの動物4匹にアグリコシルhu5c8mAb20mg/kgを投与し(群1B),そして4匹に食塩水を投与した(群1A)。
【0145】
二次免疫応答は一次免疫応答よりも早期に発生し、より高い強度であることを特徴とする。個体別の動物について一次応答と比較した場合の二次応答の強度(EAUC二次/EAUC一次)を計算した(表2)。図5は全体的な一次および二次の個体別免疫応答を示す。動物個体内で免疫応答の程度にかなりの変動があることに留意しなければならない。平均して食塩水対照群(群1A)における二次TT攻撃はこの抗原へのその一次応答よりも6.5倍高値の全体的抗体応答をもたらしたのに対し、アグリコシルhu5c8mAbを投与した動物(群1B)は平均してその一次応答よりも僅か2.0倍高値の全体的二次抗体応答を示したのみであった。従って、アグリコシルhu5c8mAbの投与は食塩水対照群と比較して二次抗体応答の強度の70%低減をもたらした。
【0146】
【表2】
(方法−実施例2)
(1.TTに対する体液性免疫応答)
2つの独立した試験を実施例1に記載した同じサルを用いながらカニクイザルにおいて実施した。各試験から得た血清試料をあわせ、免疫表現型タイピングのための全血を周囲温度に維持し、分析は採血日に実施した。
【0147】
本アグリコシルhu5c8mAb試験では2投与群を用いた。雄4匹および雌4匹よりなる群1には第1日に食塩水を与え、未投与対照群とした。雄2匹および雌2匹よりなる群2には第1日に静脈内投与によりアグリコシルhu5c8mAb単回20mg/kg用量を与えた(上記)。投与後4時間に、全動物に吸着TTの5Lf(凝集閾値用量)の筋肉内(IM)投与を行った。血液は第1日の投与の前後と投与後190日までの所定の日に採取した。リンパ節の生検試料を第15日に採取した。
【0148】
グリコシル化hu5c8mAb試験では雌3匹を各々含む5投与群を使用した。第1日において、群1には食塩水(未投与対照)を、そして群2〜5にはATCCより入手可能(CRL−10915)なグリコシル化hu5c8mAbをそれぞれ単回投与で0.2、1、5または20mg/kg与えた。投与後4時間に、全ての動物に吸着TT5Lfの単回IM注射を行った。第1日の投与の前後および投与後42日までの所定の日に全群から採血した。これらの2つの独立した試験の比較が可能となるように、一部の血清試料を抗TTELISAにおいて平行して分析した。
【0149】
上記したアグリコシル試験において一次TT攻撃の230日後に対照群1を2群に分割した。群1Aを未投与対照群年、群1Bにはアグリコシルhu5c8mAbを投与することにより二次免疫応答を阻害するその能力を評価した。動物への投与は以下の通り、すなわち群1Bにはアグリコシルhu5c8mAbの単回20mg/kg用量を筋肉内で第1日に投与した。群1Aには第1日にリン酸塩緩衝食塩水を等しい容量で静脈内投与した。投与後4時間に全動物に吸着TT5LfをIM投与した。第1日の投与の前後および投与後85日までの所定の日に採血した。
【0150】
(2.免疫応答の評価)
免疫応答はノンコンパートメント分析を用いて評価した。計算した免疫パラメーターには最大抗体力価値(Emax)、この最大値に到達するまでの時間(tmax)、および抗原投与から最終サンプリング時点までの投与抗原に対する全体的抗体応答(EAUC(0−last))が包含された。薬物動態分析は一次消失速度定数において2コンパートメントモデルを用いて行った(WinNolin Professional Software v3.1,Pharsight Corp.,Cary,NC,USA)。測定した薬物動態パラメーターには最大血清中濃度(Cmax)、全身クリアランス速度(Cl)、定常状態における分布容量(Vss)および抗体の終末期半減期(t1/2)が包含された。統計学的分析、例えば算術平均、標準偏差および幾何平均はMicrosoft Excelのバージョン5.0ソフトウエア(Microsoft Corp.,Rsdmond,WA,USA)を用いて行った。
【0151】
(3.カニクイザルの免疫表現型タイピング)
リンパ球の免疫表現型タイピングをFACS分析に従って2色全血染色プロトコルを用いて行った。慨すれば、EDTA投与全血液100μlを以下の標識mAbの組み合わせの1つ、すなわち、CD20−FITCクローン2H7(BD−Pharmingen San Diego,CA,USA)およびCD2−PEクローンRPA−2.10(BD−Pharmingen)、CD−FITCクローンSP−34(BD−Pharmingen)およびCD4−PEクローンOKT4(Ortho Diagnostic Systems Raritan,NJ,USA)またはCD3−FITCおよびCD8−PEクローンDK−25(Dako Corporation Carpinteria,CA,USA)を用いて、室温で20分間インキュベートした。赤血球を、1xFACS溶血溶液2mlを用いて溶血させた(Becton−Dickinson Franklin Lakes,NJ,USA)。リンパ球を1%パラホルムアルデヒドで固定し、Cellquestソフトウエアを装着したFACScanを用いて分析した(Becton−Dickinson)。総リンパ球数はCD2およびCD20陽性細胞の全てを合算することにより求めた。B細胞はCD20陽性細胞として識別した。T細胞のサブセットはCD3およびCD4またはCD3およびCD8について二重陽性として識別した。総リンパ球、B細胞、CD4+T細胞およびCD8+T細胞はリンパ球分析ゲート内での陽性細胞のパーセントとして表示した。CD4/CD8比は各データセットについて計算した。
【0152】
(4.hu5c8mAb薬物動態に関するELISA)
ELISAプレート(Nalge−Nunc Rochester,NY,USA)を4℃で一夜PBS中組み換え可溶性ヒトCD154(Biogen,Karpusas1995も参照)5μg/mlでコーティングし、2%ロバ血清でブロッキングした(Jackson ImmunoResearch Laboratories West Grove,PA,USA−カタログ番号017−000−121)。血清の連続希釈および8〜500ng/mlのhu5c8mAbの標準曲線を室温で1時間インキュベートする間に捕獲した。結合hu5c8mAbはロバ抗ヒトIgGセイヨウワサビパーオキシダーゼ(HRP)(Jackson ImmunResearch Laboratories West Grove,PA,USA)を用いて検出し、その後3,3‘,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質キット(Pierce Biotechnology Rockland,IL,USA)を用いて発色させた。プレートをSpectromaxプレートリーダー(Molecular Devices Sunnycale,CA,USA)を用いて450nmで読み取った。Softmax Pro Software(Molecular Devices)を用いて標準物質の4パラメーター曲線フィットの直線部分に希釈血清を逆フィットさせた。
【0153】
(5.抗hu5c8抗体応答を測定するためのELISA)
ELISAプレート(Corning−Costar)は4℃で一夜pH9.6の重炭酸塩緩衝液中アグリコシルhu5c8mAb(上記)1μg/mlでコーティングし、1%BSAでブロッキングした。カニクイザルの血清の連続希釈物を室温で1.5時間インキュベートした。結合した抗hu5c8mAbをビオチニル化hu5c8mAb100ng/ml、次いでストレプトアビジン−HRP(Pierce Biotechnology)を用いて検出し、そしてTMB基質キット(Pierce Biotechnology)を用いて発色させた。プレートをSpectromaxプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて450nmで読み取った。抗体価は予備採血の値を超えて>0.100のO.D.単位を与えた最高希釈度の逆数として定義した。
【0154】
(6.抗TT応答に関するELISA)
ELISAプレート(Corning−Costar)は4℃で一夜pH9.6の重炭酸塩緩衝液中TT(Massachusetts Public Health Biologic Laboraories Boston, MA,USA)5μg/mlでコーティングした。連続希釈したカニクイザル血清を室温で2時間ブロッキングされたプレートに添加した。結合した抗TT抗体はウサギ抗サルIgG−HRP(Cappel−Organon Teknika Durham,NC,USA)を用いて検出し、そしてTMB基質キット(Pierce Biotechnology)を用いて発色させた。プレートはSpectromaxプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて450nmで読み取った。SoftmaxProソフトウエア(Molecular Devices)を用いて各連続希釈血清試料について4パラメーター曲線フィットを作製した。抗体力価は予備採血の値を超えて0.100のOD単位を与えた希釈度の逆数として定義した。
【0155】
(7.血液学的検査)
カリウムEDTA抗凝固血液試料を以下の血液学的パラメーター、すなわち、総白血球数、赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、平均血球容量、平均血球ヘモグロビン、平均血球ヘモグロビン濃度、血小板数および血液スミア評価(分画を含む)に関して毎月採取して分析した。
【0156】
(8.リンパ節の生検)
鼡径部リンパ節をアグリコシルhu5c8mAb一次TT応答試験の第15日に全動物より採取した。リンパ節組織をトリミングし、パラフィン包埋し、切片化し、そしてスライドガラス上に搭載した。スライドをヘマトキシリンエオシン染色した。スライドを目視により分析して胚中心の存在を調べ、そして胚中心の出現頻度と大きさに基づいて定量的に調べた。
【0157】
(実施例3:アグリコシルmuMR1抗体によるループス腎炎の阻害)
全身エリテマトーデス(SLE)は自発的に生じる自己免疫疾患であり、雌性に多く、種々の病原性抗核自己抗体の産生を特徴とする。ループス腎炎においては、腎の損傷は腎糸球体内に付着し補体カスケードを活性化し、糸球体腎炎を起こす免疫複合体の形成を含む細胞性および体液性の免疫機序の両方により媒介される。抗核自己抗体の産生はヒトおよびマウスSLEの両方において自己免疫Th細胞およびB細胞の特定集団間の同属体相互作用により駆動されることがすでにわかっている〔Kalled et al.,1998〕。
【0158】
以前の試験によれば、確立されたループス腎炎を有する(SWRxNZB)F1(SNF1)マウスについて、5.5ヶ月齢から開始した抗CD154mAbハムスターMR1(haMR1)の長期投与は生存を延長し、重度の腎炎の発生率を低下させることがわかっている。
【0159】
本実施例においては、本モデルにおける2種のマウスキメラMR1mAbの薬効を説明する。マウスキメラMR1(muMR1)はマウスIgG2a重鎖およびカッパ軽鎖定常ドメインに融合した元のハムスター重鎖および軽鎖の可変ドメインよりなる。muMR1のアグリコシル型はIgG2aFcのCH2ドメインにおけるN連結グリコシル化部位の突然変異により作製した。これらの2抗体を用いながら、抗CD154mAbの力価に対するFcグリコシル化の役割をループス腎炎において評価した。
【0160】
本実施例の結果によれば、キメラmAb、muMR1およびアグリコシルmuMR1の両方とも自己抗体応答を阻害する能力を保持していたことがわかった。特に、野生型の親ハムスターMR1と同様、両方のマウス化抗体は、マウスIgG2a対照mAbを投与したマウスと比較して、それらを投与したマウスにおいて、腎炎症、線維症、硬化症および血管炎を低減する能力を保有していた。
【0161】
(muMR1およびアグリコシルmuMR1の薬物動態)
muMR1およびアグリコシルmuMR1抗体の薬物動態の分析によれば、両方の抗体はBALB/cマウスの血清中で同様の速度論的特徴を示したことがわかる(図6)。特に正常マウスにおけるこれらのキメラ分子の半減期は〜9日と推定され、ハムスターMR1と同様である(データ示さず)。
【0162】
(自己抗体応答の分析)
muMR1またはアグリコシルmuMR1の投与により対照動物と比較してdsDNAおよびssDNAの両方に対する自己抗体応答は大きく低減した(図AおよびB)。
【0163】
(組織学的分析)
腎の組織学的分析によれば、5アイソタイプの対照動物のうち3種が評点方法において概説する多くの特徴を有する重度で末期の腎症を有していた。投与群の動物は僅かな例外を除いて明らかに重症度の低い疾患を有していた。野生型(n=11)およびアグリコシル(n=12)形態のmuMR1を投与した動物の間の差は、野生型の複合疾患評点が僅かに低値であったものの、最小であった。図8は腎に関する群の複合組織評点を示す。アグリコシルmuMR1を投与した動物のうち、大部分は軽度で早期の糸球体の変化を示し、尿細管−間質の有意な変化は殆ど或は全く無かった。muMR1を投与した全動物(n=11)とも軽度で早期の変化を示し、有意な尿細管−間質の変化は無かった。これらの結果から、muMR1およびアグリコシルmuMR1は両方ともループス腎炎に特徴的な組織学的変化の防止において有効であることが明らかである。
【0164】
BおよびT細胞の領域におけるリンパ系拡大の程度は投与動物の各脾臓に関する組織学的検討により評価した。二次卵胞の識別は、凍結切片調製に伴う人為的要素により困難であった。脾リンパ系領域拡大と腎疾患評点との間には見かけ上の相関は無かった。しかしながら、動脈周囲リンパ球鞘(PALS)の拡大の程度はmuMR1を投与した動物と比較してアイソタイプの対照群およびアグリコシルmuMR1投与動物において顕著に高値であるように観察された(データ示さず)。
【0165】
(腎機能の分析)
腎機能を分析するために、タンパク質尿(PU)の程度、ならびに、血清中クレアチニンおよび血中尿素態窒素(BUN)の測定を各動物について行った。キメラmuMR1mAbの両方とも、尿中のタンパク質の含量で測定した場合に、SBF1動物において重度の腎炎の発症時期を遅延させた。対照群動物と比較して、抗CD154投与マウスは6〜9ヶ月の時点ではより低値のPU値を有していた(図9)。しかしながら、〜10ヶ月齢においては、全群とも腎障害を示すPU値を有していた(図9)。これらの結果は抗CD154投与がタンパク質尿の発症時期を遅延させることを示唆している。
【0166】
図10はSNF1マウスの血清中のクレアチニン濃度を示しており、図11はSNF1マウスの血清中のBUNの濃度を示している。対照群の動物は7.25〜10.5ヵ月齢の範囲では上昇した血清中のクレアチニンおよびBUN濃度を有していた。これとは対照的に、グリコシル化muMR1を投与したマウスは試験期間全体を通じて安定しており、血清中クレアチニンおよびBUNのいずれも、殆ど上昇または下降することは無かった。アグリコシルmuMR1投与動物は〜9ヶ月齢まで正常濃度の血清中クレアチニンを維持していたが、その後僅かな上昇が観察された。同様に、この群のBUN濃度は11ヶ月齢時では上昇していた。
【0167】
(生存性の試験)
抗CD154mAb投与はSNF1マウスの生存を延長した。11ヶ月齢において、投与マウスの90%超が生存していたのに対し、対照群では56%であった。14ヶ月までに、全対照マウスは死亡したのに対し、muMR1およびアグリコシルmuMR1マウスのそれぞれ86%および75%がなお生存していた(データ示さず)。
【0168】
総括すれば、これらの実験はmuMR1またはアグリコシルmuMR1のいずれかを用いた腎炎SNF1マウスの長期治療により生存が延長され、自己抗体産生が低減され、そして、腎症の発症が遅延することを示している。グリコシル化およびアグリコシルのmuMR1を用いた場合に達成された結果が僅かに異なることは、ループスにおける抗CD154mAbの薬効に対するFcグリコシル化の役割が僅かにあることを示している。すなわち、アグリコシル抗CD154mAbはループス腎炎に対する効果的な治療法である。
【0169】
(方法−実施例3)
(1.マウス)
BALB/c、SWRおよびNZBマウスはJackson Laboratory (Bar Harbor,ME)より購入した。(SWRxNZB)F1(SNF1)ハイブリッドは従来のバリア条件下でBiogenにおける動物施設において高配した。雌性SNF1マウスを全ループス試験において使用した。BALB/cマウスを薬物動態(PK)試験に使用した。
【0170】
(2.抗体)
アルメニアンハムスター抗マウスCD154mAbを産生するMR1ハイブリドーマ(ATCC#CRL−2580)はAmerican Type Culture Collection(Rockville,MD)より購入した。
【0171】
(3.処置プロトコル)
全注射とも腹腔内経路にて行った。ループス試験ではPI.17muIgG2aを与えたSNF1マウスの対照群およびキメラ抗CD154mAbを単回投与した投与SNF1群を設けた。週当たり1回のmAb500μgの単回投与を最初の6週間行い、その後、動物が死亡するか、試験の終了時まで、突当り500μgを単回注射した。試験は動物が〜5.5ヶ月齢になった時点で開始し、血清試料は毎月採取した。PK試験のためには、BALB/cマウスにはmuMR1またはアグリコシルmuMR1の単回100μg用量を与え、血液試料は4時間後、および、第1、2、4、7、9、11および14日に採取した。
【0172】
(4.ELISA試験)
血清中のキメラMR1mAbを検出するためにNUNCのMaxisorpプレートを4℃で一夜、5μg/mlの組み換え可溶性マウスCD154でコーティングした。翌日プレートをブロッキングし、希釈した血清を添加し、その後セイヨウワサビパーオキシダーゼ結合体化抗マウスIgG2a(Southern Biotech)を添加し、TMB基質で発色させた。2N硫酸で反応を停止し、そしてプレートをSpectramaxプレートリーダー上で450nmで読み取った(Molecular Devices,CA)。抗1本鎖DNA(ssDNA)および抗2本鎖(dsDNA)のELISAをNUNCMaxiSorpプレートを用いて実施した。プレートは10μg/mlメチル化BSA(Calbiochem Corp,La Jolla,CA)で4℃一夜、次に5μg/mlのI等級ウシ胸腺DNA(SIGMA,St.Louis,MO)で25℃2時間コーティングした。ウシ胸腺DNAは超音波処理により除去し、次いでSIヌクレアーゼにより消化した後に使用した。抗ssDNA試験のためにはDNAを10分間煮沸し、氷上冷却した後に使用した。ブロッキングの後、血清試料を連続希釈したものを添加し、2時間室温でインキュベートした。自己抗体をヤギ抗マウスIgGアルカリホスファターゼ(SIGMA,ST.LOUIS,MO)で検出し、1Mジエタノールアミン緩衝益虫p−ニトロフェニルホスフェート(SIGMA,ST.LOUIS,MO)を用いて発色させた。プレートを405nmで読み取り、そしてssおよびdsDNAの両方に特異的な抗DNAmAb205およびmAb5c6の既知量を用いて標準曲線を得た。抗DNA力価はバックグラウンドを超える0.1OD単位における逆数希釈地として定義した。
【0173】
(5.組織学)
腎および脾の低温調製切片およびホルマリン固定パラフィン包埋組織を炎症の浸潤についてヘマトキシリン−エオシン(H&E)染色した。腎はさらにMasson Trichromeで線維症について染色し、そして、過ヨウ素酸シッフ染色(PAS)により基底膜肥厚について調べた。染色された組織の切片を獣医組織学専門家により評点した。ループス腎炎の組織病理学的等級付けに関する全体的評点は糸球体、間質および尿細管の変化に基づいて行った。等級0〜4+は検査する構造体(例えば糸球体、血管等)のパーセント関与に基づいて行い、以下の通り、すなわち:0は有意な患部無し;1+は罹患した構造物1%〜30%;2+は罹患した構造物30%〜60%;3+はある程度まで罹患した構造物60%超;4+は重度に罹患した構造物60%超とした。
【0174】
(6.尿および血清の分析)
各マウスの尿をAlbustix(Bayer Corp.,Tarrytown,NY)を用いて毎週モニタリングすることにより、タンパク質尿(PU)を測定した。タンパク質尿の程度は以下の通り、すなわち0.5+は15〜30mg/dl;1+は30mg/dl;2+は100mg/dl;3+は300mg/dl;4+は2000mg/dl超とした。クレアチニンおよび血中尿素態窒素(BUN)は試験期間を通じて間歇的にCOBAS Chemistry Analyzerで上で血清中値を測定し、PU以外に腎機能の尺度とした。
【0175】
(実施例4:実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)のアグリコシルmuMR1抗体による阻害)
免疫化の時点におけるCD40リガンドのブロックはEAEの発症を阻害することがわかっている[Samoilova、1997]。本実施例においては、muMR1およびアグリコシルmuMR1抗体のEAE阻害能力について分析した。本実施例はまた、抗CD154mAbによるEAEの阻害が能動的阻害機序に関連しているかどうか、そして、どの程度まで抗体のFc依存性相互作用に依存した機序により媒介されているかを調べるものである。
【0176】
本実施例の結果によれば、アグリコシルmuMR1mAbは、臨床疾患の発症のブロッキングにおいて、野生型のグリコシル化ハムスターMR1mAbと同様に有効なEAEの阻害剤であることを示している。より典型的には、全てのMR1mAbは、平均最大臨床評点および平均疾患重症度で評価すれば、ハムスターMR1投与群の1匹のマウスを除き、完全に疾患の発症を阻害した。これらの結果は、抗CD154mAbによるEAEに対抗した保護の根幹である機序にはT調節の誘導は関与していない可能性を示唆している。さらにまた、mAbのFc依存性エフェクター機能は臨床効果に関しては主要な役割を果たしていないが、EAEの自己免疫セッティングにおける阻害の根幹機序には寄与していると考えられる。
【0177】
(グリコシル化muMR1による臨床EARの阻害)
図12はアイソタイプの対照P1.17を投与したマウスと比較した場合にmuMR1を投与したマウスは一次ペプチド免疫化の後に疾患の兆候を発症しなかったことを示している。muMR1投与マウスはまた、80日のフォローアップ期間に臨床兆候を発症しなかった(データ示さず)。完全フロインドアジュバント中に入荷したPLP139−151でマウスを再免疫化した場合、P1.17投与動物においては臨床兆候の重症度が増大した。第0、2および4日にmuMR1を投与していたマウスは、再攻撃後にEAEを発症し、その重症度はP1.17投与マウスにおけるEAEの第1期と等しかった。これらの結果は抗CD154mAb投与が能動的阻害をもたらさないことを示している。本発明者等はさらにまた、EAE誘導とmuMR1投与後1〜3週のマウスから収集した20x106個の脾細胞の転移によりネイティブのレシピエントマウスがその後の能動的EAE誘導に対して耐性となりえるかどうかを調べた。そうではなかった(データ示さず)。
【0178】
(アグリコシルmuMR1による臨床EAEの阻害)
図13および表3はmuMR1およびアグリコシルmuMR1mAbは対照のIgP1.17と比較して200μgの3投薬として投与した場合に全フォローアップ期間にわたりEAEの臨床兆候の阻害において有効であったことを示している。この点に関し、muMR1およびアグリコシルmuMR1抗体はハムスターMR1と等しく有効であった(データ示さず)。これらの抗体をより低用量で投与したところ、EAEの阻害能力に関しては抗体間には大きな差は観察されなかった。
【0179】
(CNS炎症浸潤の阻害)
抗体が中枢神経系(CNS)内における炎症浸潤の阻害において差があるかどうかを調べるために、異なる量の抗体(muMR1およびアグリコシルmuMR1、または3投薬の200μgおよびP1.17対照Ig)を投与した4〜5匹のマウスの個別の群を、アイソタイプ対照抗体を投与したマウスにおける疾患の活動性のピーク時において第16日に屠殺した。
【0180】
【表3】
表4に示すとおり、抗体は疾患の発症の早期の段階においてCNS内の炎症性浸潤の発生を阻害するその能力に関して差が無かった。マウスがEAEの兆候の非存在下において臨床未満の活動性を発生させたかどうかは不明であったため、群あたり6〜14匹のマウスのCNS組織を本試験狩猟時において分析した(第58日)。
【0181】
200μgのmuMR1を投与したマウスとは対照的に、p1.17投与マウスおよび200μgのaglyMR1投与マウスは共に小脳に優先的に局在化した軽度の炎症性浸潤(表5)の徴候を示していた。しかしながら、より低用量の抗体の投与ではaglyMR1は同様であるか、そうでない場合でもそのグリコシル型よりも幾分保護性が高値であるのみであった。これらの結果は両方の抗体が臨床EAEの発症を等しく阻害することを示している。
【0182】
(方法−実施例4)
(1.EAEの誘導)
雌性SJLマウス(10〜12週齢、Harlan)を完全フロイントアジュバント(Difco,Detroit,MI)中に入荷したPLP139−151の50μgで皮下免疫化した。3日後、マウスに109熱殺傷百日咳菌(RIVM,Bilthoven,The Netherlands)を静脈内注射した。EAEの発症は体重および無能力評点を毎日評価することによりモニタリングした。この評点は0:無症状、0.5:尾部緊張の部分的な消失、1:尾部緊張の完全な消失、2:四肢の脆弱化、2.5:部分的麻痺、3:後肢の完全な麻痺、3.5:横隔膜および後肢の完全な麻痺、失禁、4:瀕死〜5:EAEによる死亡、の範囲とした。
【0183】
【表4】
【0184】
【表5】
(2.抗体の作製)
ハムスター抗マウスCD154mAbMR1の重鎖および軽鎖の可変ドメインをハイブリドーマ由来の全RNAからRT−PCRによりクローニングした。ハムスター/マウスキメラmAbに対する発現ベクターは、マウスIgG2aまたはマウスカッパ定常領域cDNA(抗ヒトCD154mAb由来の重鎖および軽鎖の完全長cDNAクローンから誘導、すなわちグリコシル化hu5c8)から標準的組み換えDNA技術を用いたそれぞれ重鎖および軽鎖の可変ドメイン上に操作することにより構築した。muMR1と命名された一過性に発現されたキメラMR1mAbはフローサイトメトリーおよび免疫沈降によればハムスターmAbのCD154結合特性を反復することが明らかになった。
【0185】
aglyMR1と命名されたアグリコシルキメラMR1は重鎖の部位指向性突然変異誘発によりFcのN連結グリコシル化部位(KabatEU命名法ではN297)におけるアスパラギン残基をグルタミン残基に変えることにより構築した。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖および選択マーカーとしてのグルタミン合成酵素遺伝子に対するCMV−IEプロモーター駆動直列転写カセットを含有する安定な発現ベクターはmuMR1およびアグリmuMR1IgG2aカッパmAbの両方について構築した。発現ベクターをNS0細胞にトランスフェクトし、そして安定なクローンをグルタミン非含有培地中で選択することにより単離した。
【0186】
muMR1およびaglyMR1をバイオリアクター細胞上澄みからプロテインAセファロース上でアフィニティー精製し、その後セファクリル300上のサイズエクスクルージョンクロマトグラフィーにより凝集物を除去した。クロマトグラフィー樹脂はAmersham Pharmacia Biotech(Piscataway,NJ)から購入した。mAbはSDS−PAGEによれば>95%純度であることがわかり、内毒素分析によればこれらの試薬がインビボの使用に安全であることが確認された。muMR1およびaglyMR1は細胞表面muCD154インビトロ試験について同様の相対的親和性、および、BALB/cマウスにおいて同様のインビボ薬物動態半減期を有することが解った(データ示さず)。マウスIgG2aアイソタイプ対照mAb、P1.17(ATCC#TIB−10)はBiogenと契約しているProtos Immunoresearch(Burlingame,CA)において腹水からプロテインA精製した。
【0187】
(3.抗CD154抗体の送達)
第0、2および4日に各マウスに200μlのPBSを腹腔内投与し、その際にそれらが下記成分、すなわち、群1=PBS(対照);群2=200μgmuMR1;群3=200μgハムスターIg(Ig対照);群4=200μgマウス化MR1;群5=200μgP1.17IgG2a対照;群6=200μgアグリコシルmuMR1を含有するようにした。
【0188】
いくつかの実験においては、マウスを完全フロイントアジュバント中に入荷した50μgのPLP139−151で第80日に再免疫化した。
【0189】
(4.疾患の評価)
56日間の期間を通じてマウスは毎日体重測定し、以下の評点体系、すなわち、0=症状無し;0.5=尾部緊張の部分的な消失、1:尾部緊張の完全な消失、2:四肢の脆弱化、2.5:部分的麻痺、3:後肢の完全な麻痺、3.5:横隔膜および後肢の完全な麻痺、失禁、4:瀕死〜5:EAEによる死亡、に従って臨床活動性をモニタリングした。
【0190】
(5.組織学)
各個体マウスの脳組織および脊髄を10%ホルマリン中に固定し、パラフィン包埋した。各個体マウスから、100μm離れた3〜6個の脊髄切片(4μm)および6個の脳切片(各々小脳、大脳、脳幹およびくも膜下腔を含む)のヘマトキシリン染色後の炎症性浸潤の範囲について分析した。
【0191】
各個体切片を以下の尺度、すなわち、0=浸潤無し;1=散発性の軽度の血管周囲の浸潤(切片あたり炎症患部2個未満);2=複数病巣、軽度の血管周囲浸潤;4=複数病巣、重度の血管周囲浸潤と実質への拡張、に従って評点した。全ての切片の平均に基づいて、マウスを浸潤無し、散発性、中等度または重度に分類した。
【0192】
(6.統計学的分析)
結果は一元配置分散分析、次いでLSD試験を用いたpost−hoc分析に付した。P値<0.05を有意とみなした。
【0193】
(実施例5:アグリコシルhu5c8抗体は島細胞移植片を阻害する)
以前の試験によれば、グリコシル化hu5c8の20mg/kgの誘導/維持投与用法で治療されたアカゲザルは腎同種異系移植片機能を維持し、6ヶ月の投与期間中に拒絶エピソードを示したものは無かったが、腎同種異系移植片を移植された未投与のサルは8日以内にもその移植片を拒絶した[Kirk,1999]。Kirkの研究グループによる関連の試験においては、アグリコシルhu5c8は移植片拒絶反応の治療のためには有効ではなかった。
【0194】
Kirkの所見とは全く対照的に、本発明の結果はhu5c8mAbのアグリコシル化形態が実際に他のセッティングにおいて移植片拒絶反応の治療に有効であることを示している。
【0195】
(アカゲザルにおける島細胞同種異系移植片の移植)
以前にグリコシル化hu5c8は島細胞の移植を可能とし、同種異系移植片の生存を維持したことが明らかにされている[Kenyon,1999]。
【0196】
20mg/kgの誘導/維持用法で投与されたアカゲザル4匹は移植後>213、>255、>269および>314日間インスリン非依存性を達成した。この試験の結果によれば、第11〜14日までの持続性の高血糖症およびc−ペプチド産生の欠如(内因性インスリン生成の産物)から明らかな通り、島細胞同種異系移植片を移植された未投与の対照サルは第8日までに急性の拒絶反応を示した(データ示さず)。
【0197】
未処置の対照動物とは対照的に、図14はアグリコシルhu5c8の誘導/維持用法により投与したアカゲザル2匹のうちの1匹の良好な治療結果を示している(上記)。両方のサルとも、サルにインスリンを投与しアグリコシルhu5c8投与を継続した場合には、高血糖症および第7日の初期拒絶を示したが、2匹のサルのうち1匹は第28日(白菱形)においてc−ペプチドの存在により測定される同種異系移植片の部分的機能を示しており、そして第45日まで維持された。
【0198】
これらの結果は、アグリコシル化抗CD154mAbは移植片の定着における治療用法において有用であることを示している。しかしながら、移植中の免疫応答は強力な応答であり、すなわち体液性、細胞性および炎症性の免疫応答を含んでいるため、アグリコシル抗CD154抗体は免疫抑制性または免疫調節性の化合物と組み合わせて送達されれば最も効果的であると考えられる。例えば、CD28を介したT細胞の同時刺激シグナリングを妨害する薬剤;カルシニューリンシグナリングを妨害する薬剤、コルチコステロイド、抗増殖剤、または、例えばCD45、CD2、IL2R、CD4、CD8およびRANKFcR、B7、CTLA4、TNF、LTβおよびVLA−4を含む免疫細胞の表面上で発現されるタンパク質に特異的に結合する他の抗体が挙げられる。
【0199】
(方法−実施例5)
(1.島細胞同種異系移植片の移植)
これらの試験は以前に記載されている通り実施した[Kenyon,1999]。慨すれば、アカゲザルの同種異系活性ドナー−レシピエント対を陽性混合リンパ球培養反応性に基づいて選択した。第0日に、レシピエントを全膵臓摘出し、門脈内同種異系島細胞移植を行った。
【0200】
(2.抗体処置)
投薬は第−1、0、3、10および18日における20mg/kgよりなる導入期および第28日から開始する1ヶ月当たり単回20mg/kg投薬よりなる維持期により行った。
【0201】
(3.移植片機能の評価)
島細胞移植片の機能を空腹時および食後の血中グルコース濃度を通して毎日モニタリングした。島細胞の障害(一次非機能または急性の拒絶)は空腹時および促進時のc−ペプチドの産生(内因性インスリン産物)の非存在として定義した。一次非機能は移植直後の期間において移植組織が機能不能であることとして定義し、そして、持続性の高血糖症および不安定な血糖制御を特徴とした。急性拒絶のエピソードは空腹時グルコース>100mg/dLおよび食後血中グルコース>150〜175mg/dLと定義した。全体的な移植片機能は正常な血中グルコース濃度を維持するために必要な外因性インスリンの量をモニタリングすることにより評価した。
【0202】
(実施例6:抗CD154媒介T細胞同種異系反応性を阻害するためのアグリコシル化hu5c8(抗CD154)抗体の使用)
T細胞に対するCD154ターゲティングモノクローナル抗体はインビトロ並びにインビボの同種異系反応性を部分的に阻害することがわかっている。しかしながら抗CD154mAbの阻害活性が刺激性CD40−CD154相互作用の遮断に依存するか、或はCD154を介した阻害シグナルの直接の送達に依存しているかどうかは不明である。
【0203】
インビトロのヒトT細胞同種異系反応性に対するCD154の刺激(すなわちCD154を介した阻害シグナルの直接の送達)とは逆に刺激性CD40−CD154相互作用の遮断の作用を評価するために、未分画のPBMC、または、精製されたCD4+T細胞を、可溶性または培養ウェルに固定化されたヒト化抗CD154mAb(hu5c8、Biogen Inc.,MA,USA)の存在下、同種異系HLAミスマッチ刺激スティミュレーター細胞(CD40陽性細胞)と共に培養した。大部分のブロッキング実験は低減されたFcエフェクター機能を有し、従ってCD154に交差結合する能力が低下している可溶性抗CD154(アグリコシル化hu5c8)の遺伝子操作された変異体を用いて実施した。本実験に使用したアグリコシル化hu5c8は本出願全体を通して記載したアグリコシルhu5c8mAbと同様である。例えば上記の実施例1、15および83を参照できる。可溶性でありがコーティングされていない抗CD154抗体は一次混合リンパ球培養物(MLC)において同種異系T細胞増殖を阻害した(40±23%vs3±18%阻害、n=4)。同様に、二次MLC(n=5実験)における同種異系特異的Tリンパ球の増殖はCD154遮断(可溶性抗体使用)を用いてプライミングすることにより阻害されたのに対し、CD154刺激(コーティングされた抗体)により増大した。さらにまた、コーティングされた抗CD154抗体による刺激は同種異系特異的CTLエフェクターの生成を強力に増強したのに対し、CTLはCD154遮断による影響を受けなかった。
【0204】
抗CD154の刺激活性がB7−CD28同時刺激相互作用を必要としたかどうかを調べるために、CD28へのB7分子の結合を防止する分子であるCTLA4−Igの存在下にMLCを実施した。CTLA4−Igの存在下のプライミングは一次および二次MLCにおいて、それぞれ75±14%(n=3)および64±28%(n=6)、同種異系特異的Tリンパ球の増殖を低減し、そして48±23%(n=2)CTL生成を阻害した。コーティングされた抗CD154抗体のシグナリングは一次(58±0.6%、n=2)および二次(61±49%、n=6)MLCの両方において同種異系特異的T細胞の残存CD28依存性増殖を有意に増大させたが、CTLA4−Ig誘導阻害を完全には排除しなかった。しかしながら、CTLの生成に対するCTLA4−Igの阻害作用はCD154刺激により排除された(コーティング抗CD154抗体媒介)。同種異系反応性T細胞上のCD25、HLA−DRおよびCD95の発現はCTLA4−Igの存在下または非存在下において対照培養と比較した場合にCD154の刺激により強力に増大した(n=2)。
【0205】
本発明者等のデータは抗CD154抗体が培養プレートに固定化されればT細胞の同種異系反応性をブロックするのではなくむしろ増強できることを示している。可溶性アグリコシル化hu5c8mAbによるCD154の遮蔽はインビトロのT細胞の活性化を増強できず、従って、インビボで好都合であり、そして、これらの所見に基づけば、インビボの同種異系T細胞応答を低減するために移植実験モデルにおいて、または、他の同時刺激経路をブロックする分子と組み合わせた場合に、有効であると考えられる。
【0206】
当業者の知るとおり、本発明の精神から外れることなく本発明の好ましい実施形態に対して多くの変更や改造が可能である。このような変形例は全て本発明の範囲内に包含されるものとする。
【0207】
【表6】
【0208】
【表7】
【0209】
【表8】
【0210】
【表9】
【図面の簡単な説明】
【0211】
【図1】図1はアグリコシルhu5c8モノクローナル抗体(mAb)およびグリコシル化hu5c8mAbが同じ相対的親和性でヒトCD154に結合することを示している。ビオチニル化hu5c8mAbの細胞表面CD154への結合を未標識のグリコシル化hu5c8mAbまたはアグリコシルhu5c8mAbの滴定試料により競合させた。ストレプトアビジン−PEで検出したビオチニル化抗体の平均蛍光強度を未標識抗体の濃度に対してプロットした。4パラメーターの曲線フィットをまとめて示した。
【図2】図2はアグリコシルhu5c8mAbが損なわれたFcR結合能力を有することを示している。抗CD154抗体、すなわちアグリコシルhu5c8mAbがhuCD154とFcγRI+細胞との間(a)またはhuCD154+CHO細胞とFcγRIII+細胞との間(b)に架橋を形成する能力を評価した。グリコシル化hu5c8mAbまたはアグリコシルhu5c8mAbを予めCD154に結合させたものが入ったマイクロプレートに蛍光標識FcγR+細胞を添加した。結合FcγR+細胞は励起/発光スペクトル485/530nmを用いて各ウェル中の相対蛍光単位(RFU)を測定することにより検出した。
【図3】図3はグリコシル化hu5c8mAbおよびアグリコシルhu5c8mAbがカニクイザルにおいて同様の結成中半減期を有することを示している。グリコシル化hu5c8mAbおよびアグリコシルhu5c8mAbの濃度は単回20mg/kg静脈内投与の後のカニクイザルの血清中において測定した。各投与群の平均血清中濃度±標準偏差(SD)で示す。
【図4】図4はグリコシル化hu5c8mAbおよびアグリコシルhu5c8mAbが破傷風トキソイド(TT)に対する一次免疫応答を阻害することを示している。グリコシル化hu5c8mAb試験(黒丸)およびアグリコシルhu5c8mAb(白丸)におけるmAb投与群および生理食塩水対照群のカニクイザルに関する結果を示す。
【図5】図5はアグリコシルhu5c8mAbがTTに対する二次免疫応答を阻害することを示している。個々のカニクイザルのTTに対する一次(黒バー)および二次(白バー)の全体的抗体応答(EAUC)を示す。群1Aの動物には一次および二次TT攻撃の両方の前に生理食塩水を投与した。群1Bの動物には一次TT攻撃の前には生理食塩水、二次TT攻撃の前にはアグリコシルhu5c8mAbを投与した。
【図6】図6はBALB/cマウスにおけるグリコシル化マウスキメラMR1(muMR1)およびアグリコシルmuMR1抗体の薬物動態を示す。グリコシル化muMR1抗体(ひし形)およびアグリコシルmuMR1抗体(四角)に関する結果を示す。
【図7】図7(AおよびB)はアグリコシル抗CD154抗体がSNF1マウスにおいて1本鎖(A)および2本鎖(B)DNAに対する自己抗体応答を低減させることを示す。muMR1抗体(ひし形)およびアグリコシルmuMR1抗体(四角)に関する結果を示す。対照のmuIgG2a抗体は三角で示す。
【図8】図8はアグリコシル抗CD154抗体がSNF1マウスにおいて糸球体腎炎の発症を低減することを示している。複合組織学的評点をmuIgG2a(対照)、muMR1およびアグリコシルmuMR1投与マウスについて記載する。
【図9】図9はアグリコシル抗CD154抗体がSNF1マウスにおいて糸球体腎炎の発症時期を遅延させることを示す。muMR1抗体(ひし形)およびアグリコシルmuMR1抗体(四角)に関する結果を示す。対照のmuIgG2a抗体は三角で示す。
【図10】図10はアグリコシル抗CD154抗体がSNF1マウスにおける血清中クレアチニンの増大を防止することを示している。muMR1抗体(ひし形)およびアグリコシルmuMR1抗体(四角)に関する結果を示す。対照のmuIgG2a抗体は三角で示す。
【図11】図11はアグリコシル抗CD154抗体がSNF1マウスにおいて上昇した血中尿素態窒素(BUN)の発症時期を遅延させることを示している。muMR1抗体(ひし形)およびアグリコシルmuMR1抗体(四角)に関する結果を示す。対照のmuIgG2a抗体は三角で示す。
【図12】図12はアイソタイプの対照P1.17抗体を投与したマウスと比較した場合に、muMR1抗体を投与したマウスが実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)の症状を発症しなかったことを示している。muMR1抗体(白丸)およびP1.17対照抗体(黒丸)に関する結果を示す。
【図13】図13は、アグリコシルmuMR1抗体を投与したマウスにおいてアグリコシルmuMR1抗体がmuMR1抗体と同様にEAE臨床兆候の阻害において有効であったことを示している。結果は無能力評点(平均+平均の標準誤差−SEM)および疾患の誘導後の日数に関連付けた初期体重の%(平均+SEM)として示した。P1.17は対照Igである。
【図14】図14は同種異系島細胞移植の後のアカゲザルにおける絶食時の血中グルコース(FBG)を示す。急性の拒絶反応はFBG>100mg/dlと定義した。アグリコシルhu5c8mAb(破線)およびグリコシル化hu5c8mAb(実線)を投与した動物を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体であって、該抗体のFc部分のCH2ドメインにおける保存されたN連結部位での修飾により特徴付けられる、アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項2】
前記修飾が、重鎖グリコシル化部位における突然変異を含み、該突然変異が、該部位におけるグリコシル化を防止する、請求項1に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項3】
前記修飾が、N298Q(EU Kabatナンバリングを使用してN297)の突然変異を含む、請求項2に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項4】
前記修飾が、前記CH2ドメイングリカンの除去を含む、請求項1に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項5】
前記修飾が、前記CH2ドメインにおけるグリコシル化の防止を含む、請求項1に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項6】
前記アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体が、エフェクターレセプターに結合しない、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項7】
前記アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体が、血栓を引き起こさない、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項8】
前記抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、マウス抗体、キメラ抗体、霊長類化抗体、ヒト化抗体、および完全ヒト抗体からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項9】
前記抗体が、多量体抗体、ヘテロ二量体抗体、ヘミ二量体抗体、4価抗体、二重特異性抗体、Fab抗体フラグメント、Fab’ 抗体フラグメント、Fab’2抗体フラグメント、F(v)抗体フラグメントおよび単鎖抗体またはその誘導体からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項10】
前記抗体が、ATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項11】
前記抗体または抗体誘導体が、検出可能なマーカーで標識されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項12】
前記検出可能なマーカーが、放射性同位体、酵素、色素またはビオチンである、請求項11に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項13】
前記抗体または抗体誘導体が、治療剤に結合体化されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項14】
前記治療剤が、放射性同位体、放射性核種、毒素、トキソイドまたは化学療法剤である、請求項13に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項15】
前記抗体または抗体誘導体が、画像化剤に結合体化されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項16】
前記画像化剤が、標識部分である、請求項15に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項17】
前記画像化剤が、ビオチン、蛍光部分、放射性部分、ヒスチジンタグまたはペプチドタグである、請求項15に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項18】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体を含有する薬学的組成物。
【請求項19】
薬学的に受容可能なキャリアをさらに含有する、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
免疫抑制性化合物または免疫調節性化合物をさらに含有する、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体を産生する細胞株。
【請求項22】
前記細胞株が、アグリコシルhu5c8(ATCC受託番号PTA−4931)を産生する、請求項21記載の細胞株。
【請求項23】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体またはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または、該抗体または抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によって、該被験体における免疫応答を阻害するための方法。
【請求項24】
前記アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または薬学的組成物が、CD40へのCD154の結合を阻害する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または薬学的組成物が、ATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8により特異的に認識されるタンパク質に特異的に結合することができる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または薬学的組成物が、アグリコシルhu5c8(ATCC受託番号PTA−4931)が特異的に結合するエピトープに特異的に結合する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の、有効阻害量を被験体に投与する工程によって該被験体における炎症応答を阻害するための方法。
【請求項28】
前記炎症応答が、関節炎、接触性皮膚炎、高IgE症候群、炎症性腸疾患、アレルギー性喘息および特発性炎症性疾患からなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記関節炎が、関節リューマチ、非リューマチ様炎症性関節炎、ライム病に関連する関節炎および炎症性変形性関節症からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記特発性炎症性疾患が、乾癬および全身性狼瘡からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の、有効阻害量を被験体に投与する工程によって該被験体における移植拒絶を阻害するための方法。
【請求項32】
前記移植拒絶が、移植された、心臓、腎臓、肝臓、皮膚、膵臓島細胞または骨髄を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によって該被験体における移植片対宿主疾患を阻害するための方法。
【請求項34】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によって該被験体におけるアレルギー応答を阻害するための方法。
【請求項35】
前記アレルギー応答が、枯草熱またはペニシリンまたは他の薬剤に対するアレルギーからなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によって該被験体における自己免疫応答を阻害するための方法。
【請求項37】
前記自己免疫応答が、感染性疾患から由来する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記自己免疫応答が、ライター症候群、脊椎関節炎、ライム病、HIV感染症、梅毒または結核から由来する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記自己免疫応答が、関節リューマチ、重症筋無力症、全身エリテマトーデス、グレーブス病、特発性血小板減少症、紫斑病、溶血性貧血、真性糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、多発性硬化症、乾癬、薬剤誘導性自己免疫疾患、および薬剤誘導性狼瘡からなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によって該被験体における線維症を阻害するための方法。
【請求項41】
前記線維症が、肺線維症および線維性疾患からなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記肺線維症が、成人呼吸窮迫症候群に二次的な肺線維症、薬剤誘導性肺線維症、特発性肺線維症および過敏性肺炎からなる群より選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記線維性疾患が、C型肝炎、B型肝炎、肝硬変、毒物発作に二次的な肝硬変、ウィルス感染に二次的な肝硬変および自己免疫疾患に二次的な肝硬変からなる群より選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によってHTLV Iウィルスによる該被験体のT細胞のウィルス感染を阻害するための方法。
【請求項45】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によって該被験体における胃腸疾患を阻害するための方法。
【請求項46】
前記胃腸疾患が、食道運動不全、炎症性腸疾患および硬皮症からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によって該被験体における脈菅疾患を阻害するための方法。
【請求項48】
前記脈菅疾患が、アテローム性動脈硬化症または再灌流傷害からなる群より選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によって、T細胞癌に罹患した該被験体におけるT細胞腫瘍細胞の増殖を阻害するための方法。
【請求項50】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によってHTLV Iによる該被験体のT細胞のウィルス感染を阻害するための方法。
【請求項51】
前記アグリコシル抗CD154抗体またはアグリコシル抗CD154抗体誘導体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、マウス抗体、キメラ抗体、霊長類化抗体、ヒト化抗体および完全ヒト抗体からなる群より選択される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記アグリコシル抗CD154抗体またはアグリコシル抗CD154抗体誘導体が、多量体抗体、ヘテロ二量体抗体、ヘミ二量体抗体、4価抗体、二重特異性抗体、Fab抗体フラグメント、Fab’抗体フラグメント、Fab’2抗体フラグメント、F(v)抗体フラグメント、および単鎖抗体またはその誘導体からなる群より選択される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記アグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、医学的に受容可能であるいずれかの様式で前記被験体に投与される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記アグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、髄内注射、脳室内注射、硬膜内注射、動脈内注射、脈菅内注射、関節内注射、滑液内注射、胸骨内注射、髄腔内注射、肝臓内注射、脊椎内注射、腫瘍内注射、頭蓋内注射、経腸注射、肺内注射、経粘膜注射、子宮内注射、舌下注射または炎症または腫瘍生育の部位での局所的注射によって前記被験体に投与される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記アグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、経口経路、経鼻経路、眼内経路、直腸内経路および局所的経路からなる群より選択される経路により前記被験体に投与される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記アグリコシル抗CD154抗体、アグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、カプセル剤、錠剤、水性の懸濁液または溶液の形態で経口的に前記被験体に投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記アグリコシル抗CD154抗体、アグリコシル抗CD154抗体誘導体または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、クリーム、軟膏などの適用により局所的に前記被験体に投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記アグリコシル抗CD154抗体、アグリコシル抗CD154抗体誘導体または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、ネブライザー、乾燥粉末吸入器または計量用量吸入器の使用を介した吸入により前記被験体に投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記アグリコシル抗CD154抗体、アグリコシル抗CD154抗体誘導体または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、除放性投与により前記被験体に投与される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記アグリコシル抗CD154抗体、アグリコシル抗CD154抗体誘導体または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、治療剤と一緒に前記被験体に投与される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記アグリコシル抗CD154抗体、アグリコシル抗CD154抗体誘導体または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、一日当たり複数回投与において前記被験体に投与される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記アグリコシル抗CD154抗体、アグリコシル抗CD154抗体誘導体または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、毎日〜1ヶ月おきの範囲の間隔で反復して前記被験体に投与される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記アグリコシル抗CD154抗体、アグリコシル抗CD154抗体誘導体または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、数日または数週間〜被験体の生涯の範囲で医学的に指示されるような長さの間隔で前記被験体に投与される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記アグリコシル抗CD154抗体、アグリコシル抗CD154抗体誘導体または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、免疫調節性化合物または免疫抑制性化合物と一緒に前記被験体に投与される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
請求項64に記載の方法であって、前記免疫調節性化合物または免疫抑制性化合物が、以下:
(a)CD28を介したT細胞同時刺激シグナリングを中断させる薬剤;
(b)カルシニューリンシグナリングを中断させる薬剤;
(c)コルチコステロイド;
(d)抗増殖剤;および、
(e)CD45、CD2、IL2R、CD4、CD8およびRANK FcR、B7、CTLA4、TNF、LTβおよびVLA−4が挙げられるが、これらに限定されない、免疫細胞の表面上に発現されるタンパク質に特異的に結合する抗体;
からなる群より選択される、方法。
【請求項66】
前記免疫抑制性化合物または免疫調節性化合物が、タクロリムス、シロリムス、マイコフェノレートモフェチル、ミゾルビン、デオキシスペルグアリン、ブレキナールナトリウム、レフルノミド、ラパマイシンおよびアザスピランからなる群より選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
ATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8により特異的に認識されるタンパク質を発現する、被験体における腫瘍細胞または新生物細胞を画像化するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)該抗体または抗体誘導体と、該腫瘍細胞または新生物細胞の表面上のタンパク質との間の複合体形成を可能にする条件下で請求項18に記載の薬学的組成物の有効量を該被験体に投与する工程;および
(b)任意の形成された、抗体/タンパク質複合体または抗体誘導体/複合体を画像化することにより、該被験体における任意の腫瘍細胞または新生物細胞を画像化する工程;
を包含する方法。
【請求項68】
ATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8により特異的に認識されるタンパク質を発現する被験体における腫瘍細胞または新生物細胞の存在を検出するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)該抗体または抗体誘導体と該タンパク質との間の複合体形成を可能にする条件下で請求項18に記載の薬学的組成物の有効量を該被験体に投与する工程;
(b)いかなる未結合の画像化剤を該被験体から除去する工程;および
(c)任意の形成された、抗体/タンパク質複合体または抗体誘導体/複合体の存在を検出する工程であって、このような複合体の存在は該被験体における腫瘍細胞または新生物細胞の存在を示す、工程;
を包含する方法。
【請求項1】
アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体であって、該抗体のFc部分のCH2ドメインにおける保存されたN連結部位での修飾により特徴付けられる、アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項2】
前記修飾が、重鎖グリコシル化部位における突然変異を含み、該突然変異が、該部位におけるグリコシル化を防止する、請求項1に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項3】
前記修飾が、N298Q(EU Kabatナンバリングを使用してN297)の突然変異を含む、請求項2に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項4】
前記修飾が、前記CH2ドメイングリカンの除去を含む、請求項1に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項5】
前記修飾が、前記CH2ドメインにおけるグリコシル化の防止を含む、請求項1に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項6】
前記アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体が、エフェクターレセプターに結合しない、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項7】
前記アグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体が、血栓を引き起こさない、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項8】
前記抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、マウス抗体、キメラ抗体、霊長類化抗体、ヒト化抗体、および完全ヒト抗体からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項9】
前記抗体が、多量体抗体、ヘテロ二量体抗体、ヘミ二量体抗体、4価抗体、二重特異性抗体、Fab抗体フラグメント、Fab’ 抗体フラグメント、Fab’2抗体フラグメント、F(v)抗体フラグメントおよび単鎖抗体またはその誘導体からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項10】
前記抗体が、ATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項11】
前記抗体または抗体誘導体が、検出可能なマーカーで標識されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項12】
前記検出可能なマーカーが、放射性同位体、酵素、色素またはビオチンである、請求項11に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項13】
前記抗体または抗体誘導体が、治療剤に結合体化されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項14】
前記治療剤が、放射性同位体、放射性核種、毒素、トキソイドまたは化学療法剤である、請求項13に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項15】
前記抗体または抗体誘導体が、画像化剤に結合体化されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項16】
前記画像化剤が、標識部分である、請求項15に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項17】
前記画像化剤が、ビオチン、蛍光部分、放射性部分、ヒスチジンタグまたはペプチドタグである、請求項15に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体。
【請求項18】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体を含有する薬学的組成物。
【請求項19】
薬学的に受容可能なキャリアをさらに含有する、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
免疫抑制性化合物または免疫調節性化合物をさらに含有する、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体または抗体誘導体を産生する細胞株。
【請求項22】
前記細胞株が、アグリコシルhu5c8(ATCC受託番号PTA−4931)を産生する、請求項21記載の細胞株。
【請求項23】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体またはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または、該抗体または抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によって、該被験体における免疫応答を阻害するための方法。
【請求項24】
前記アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または薬学的組成物が、CD40へのCD154の結合を阻害する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または薬学的組成物が、ATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8により特異的に認識されるタンパク質に特異的に結合することができる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記アグリコシル抗CD154抗体、抗体誘導体または薬学的組成物が、アグリコシルhu5c8(ATCC受託番号PTA−4931)が特異的に結合するエピトープに特異的に結合する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の、有効阻害量を被験体に投与する工程によって該被験体における炎症応答を阻害するための方法。
【請求項28】
前記炎症応答が、関節炎、接触性皮膚炎、高IgE症候群、炎症性腸疾患、アレルギー性喘息および特発性炎症性疾患からなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記関節炎が、関節リューマチ、非リューマチ様炎症性関節炎、ライム病に関連する関節炎および炎症性変形性関節症からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記特発性炎症性疾患が、乾癬および全身性狼瘡からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の、有効阻害量を被験体に投与する工程によって該被験体における移植拒絶を阻害するための方法。
【請求項32】
前記移植拒絶が、移植された、心臓、腎臓、肝臓、皮膚、膵臓島細胞または骨髄を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によって該被験体における移植片対宿主疾患を阻害するための方法。
【請求項34】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によって該被験体におけるアレルギー応答を阻害するための方法。
【請求項35】
前記アレルギー応答が、枯草熱またはペニシリンまたは他の薬剤に対するアレルギーからなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によって該被験体における自己免疫応答を阻害するための方法。
【請求項37】
前記自己免疫応答が、感染性疾患から由来する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記自己免疫応答が、ライター症候群、脊椎関節炎、ライム病、HIV感染症、梅毒または結核から由来する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記自己免疫応答が、関節リューマチ、重症筋無力症、全身エリテマトーデス、グレーブス病、特発性血小板減少症、紫斑病、溶血性貧血、真性糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、多発性硬化症、乾癬、薬剤誘導性自己免疫疾患、および薬剤誘導性狼瘡からなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によって該被験体における線維症を阻害するための方法。
【請求項41】
前記線維症が、肺線維症および線維性疾患からなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記肺線維症が、成人呼吸窮迫症候群に二次的な肺線維症、薬剤誘導性肺線維症、特発性肺線維症および過敏性肺炎からなる群より選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記線維性疾患が、C型肝炎、B型肝炎、肝硬変、毒物発作に二次的な肝硬変、ウィルス感染に二次的な肝硬変および自己免疫疾患に二次的な肝硬変からなる群より選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によってHTLV Iウィルスによる該被験体のT細胞のウィルス感染を阻害するための方法。
【請求項45】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によって該被験体における胃腸疾患を阻害するための方法。
【請求項46】
前記胃腸疾患が、食道運動不全、炎症性腸疾患および硬皮症からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によって該被験体における脈菅疾患を阻害するための方法。
【請求項48】
前記脈菅疾患が、アテローム性動脈硬化症または再灌流傷害からなる群より選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によって、T細胞癌に罹患した該被験体におけるT細胞腫瘍細胞の増殖を阻害するための方法。
【請求項50】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物の有効阻害量を被験体に投与する工程によってHTLV Iによる該被験体のT細胞のウィルス感染を阻害するための方法。
【請求項51】
前記アグリコシル抗CD154抗体またはアグリコシル抗CD154抗体誘導体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、マウス抗体、キメラ抗体、霊長類化抗体、ヒト化抗体および完全ヒト抗体からなる群より選択される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記アグリコシル抗CD154抗体またはアグリコシル抗CD154抗体誘導体が、多量体抗体、ヘテロ二量体抗体、ヘミ二量体抗体、4価抗体、二重特異性抗体、Fab抗体フラグメント、Fab’抗体フラグメント、Fab’2抗体フラグメント、F(v)抗体フラグメント、および単鎖抗体またはその誘導体からなる群より選択される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記アグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、医学的に受容可能であるいずれかの様式で前記被験体に投与される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記アグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、髄内注射、脳室内注射、硬膜内注射、動脈内注射、脈菅内注射、関節内注射、滑液内注射、胸骨内注射、髄腔内注射、肝臓内注射、脊椎内注射、腫瘍内注射、頭蓋内注射、経腸注射、肺内注射、経粘膜注射、子宮内注射、舌下注射または炎症または腫瘍生育の部位での局所的注射によって前記被験体に投与される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記アグリコシル抗CD154抗体もしくはアグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、経口経路、経鼻経路、眼内経路、直腸内経路および局所的経路からなる群より選択される経路により前記被験体に投与される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記アグリコシル抗CD154抗体、アグリコシル抗CD154抗体誘導体、または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、カプセル剤、錠剤、水性の懸濁液または溶液の形態で経口的に前記被験体に投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記アグリコシル抗CD154抗体、アグリコシル抗CD154抗体誘導体または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、クリーム、軟膏などの適用により局所的に前記被験体に投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記アグリコシル抗CD154抗体、アグリコシル抗CD154抗体誘導体または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、ネブライザー、乾燥粉末吸入器または計量用量吸入器の使用を介した吸入により前記被験体に投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記アグリコシル抗CD154抗体、アグリコシル抗CD154抗体誘導体または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、除放性投与により前記被験体に投与される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記アグリコシル抗CD154抗体、アグリコシル抗CD154抗体誘導体または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、治療剤と一緒に前記被験体に投与される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記アグリコシル抗CD154抗体、アグリコシル抗CD154抗体誘導体または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、一日当たり複数回投与において前記被験体に投与される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記アグリコシル抗CD154抗体、アグリコシル抗CD154抗体誘導体または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、毎日〜1ヶ月おきの範囲の間隔で反復して前記被験体に投与される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記アグリコシル抗CD154抗体、アグリコシル抗CD154抗体誘導体または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、数日または数週間〜被験体の生涯の範囲で医学的に指示されるような長さの間隔で前記被験体に投与される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記アグリコシル抗CD154抗体、アグリコシル抗CD154抗体誘導体または該抗体もしくは抗体誘導体を含有する薬学的組成物が、免疫調節性化合物または免疫抑制性化合物と一緒に前記被験体に投与される、請求項23〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
請求項64に記載の方法であって、前記免疫調節性化合物または免疫抑制性化合物が、以下:
(a)CD28を介したT細胞同時刺激シグナリングを中断させる薬剤;
(b)カルシニューリンシグナリングを中断させる薬剤;
(c)コルチコステロイド;
(d)抗増殖剤;および、
(e)CD45、CD2、IL2R、CD4、CD8およびRANK FcR、B7、CTLA4、TNF、LTβおよびVLA−4が挙げられるが、これらに限定されない、免疫細胞の表面上に発現されるタンパク質に特異的に結合する抗体;
からなる群より選択される、方法。
【請求項66】
前記免疫抑制性化合物または免疫調節性化合物が、タクロリムス、シロリムス、マイコフェノレートモフェチル、ミゾルビン、デオキシスペルグアリン、ブレキナールナトリウム、レフルノミド、ラパマイシンおよびアザスピランからなる群より選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
ATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8により特異的に認識されるタンパク質を発現する、被験体における腫瘍細胞または新生物細胞を画像化するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)該抗体または抗体誘導体と、該腫瘍細胞または新生物細胞の表面上のタンパク質との間の複合体形成を可能にする条件下で請求項18に記載の薬学的組成物の有効量を該被験体に投与する工程;および
(b)任意の形成された、抗体/タンパク質複合体または抗体誘導体/複合体を画像化することにより、該被験体における任意の腫瘍細胞または新生物細胞を画像化する工程;
を包含する方法。
【請求項68】
ATCC受託番号PTA−4931を有する細胞株により産生されるアグリコシルhu5c8により特異的に認識されるタンパク質を発現する被験体における腫瘍細胞または新生物細胞の存在を検出するための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)該抗体または抗体誘導体と該タンパク質との間の複合体形成を可能にする条件下で請求項18に記載の薬学的組成物の有効量を該被験体に投与する工程;
(b)いかなる未結合の画像化剤を該被験体から除去する工程;および
(c)任意の形成された、抗体/タンパク質複合体または抗体誘導体/複合体の存在を検出する工程であって、このような複合体の存在は該被験体における腫瘍細胞または新生物細胞の存在を示す、工程;
を包含する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−500012(P2008−500012A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533753(P2006−533753)
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/018708
【国際公開番号】WO2005/003175
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/018708
【国際公開番号】WO2005/003175
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】
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