説明

アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による微小血管系疾患の治療

微小血管系循環問題によりもたらされる様々な疾患、例えば、これらに限定されないが、血行不全、幻肢痛、糖尿病性神経障害、神経因性疼痛、自己免疫/炎症性疾患 (例えば、多発性硬化症、パーキンソン病、クローン病、狼瘡、関節リウマチ、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、皮膚筋炎、サルコイドーシス)、尿閉、リンパ浮腫、および慢性腎不全の治療方法が開示される。特に、1または複数の微小血管系疾患を治療するための有効量のアセチルコリンエステラーゼ阻害化合物 (または化合物の組合せ)を提供する治療が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野
本発明は、微小血管系循環問題によりもたらされる様々な疾患、例えばこれらに限定されないが、血行不全、幻肢痛、糖尿病性神経障害、筋筋膜痛/線維筋痛、神経因性疼痛、炎症性疾患 (例えば、多発性硬化症、パーキンソン病、クローン病、狼瘡、関節リウマチ、皮膚筋炎、多発性筋炎、リウマチ性多発筋痛症、サルコイドーシス)、尿閉、リンパ浮腫、慢性腎不全、CNS 変性疾患、神経筋変性疾患、振戦、運動失調、および内臓における微小血管疾患の治療方法を提供する。具体的には、本発明の方法または治療は1または複数の微小血管系疾患を治療するための有効量のアセチルコリンエステラーゼ阻害化合物 (または化合物の組合せ)を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
微小血管疾患は、病態生理が終細動脈(end arterioles)-毛細血管-細静脈における血流と関連する大きな群の疾患を含む。この微小血管循環は神経の栄養血管(vasovasorum)を含む細胞および組織のレベルで起こる。現在まで、微小血管レベルでの血流を改善する有効な手段はなかった。リンパ球からの炎症性カスケードの血流制御に加えて、従来は副腎皮質ステロイド、メトトレキサートに、より最近ではTNF (腫瘍壊死因子) 調節因子に、このプロセスの制御を依存してきた。微小血管循環にて起こる白血球接着は炎症と相関しており、自己免疫症状と相関している病型である。リンパ球上のアセチルコリン受容体は、サイトカインおよび臨床的および組織学的に認識される反応カスケードを生じる炎症誘発メディエーターの放出の阻害により炎症工程を調節する手段を提供する。本発明は「流出(run off)」の改善により微小血管循環に取り組み、リンパ球の安定性および微小血管系内の内皮に対する白血球の接着に影響を与えることによって炎症を調節する。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療の影響は副交感神経系に対する効果を発揮し、それゆえ体の恒常性維持機能、例えば血流を改善し、疼痛および炎症を低減し、排尿および、中枢神経 (CNS) および末梢神経内の神経の正常な機能を促進する。本発明はこの必要性に取り組む。
【0003】
微小血管系疾患は疾患の原因が白血球または微小血管系における白血球接着の問題である大きな群の疾患を含む。この白血球の接着は両脈管構造循環問題をもたらし、その結果、血流が低下した部位がどこであるかまたはどの組織であるかに依存する疾患症候が導かれ、また、様々なサイトカインおよびその他の炎症誘発メディエーターの炎症性カスケードをもたらす。様々な治療が、微小血管系白血球接着の下流の効果、例えば、炎症性カスケードまたはかかるカスケードからのシグナル伝達の阻害、に取り組んできた。しかし、当該技術分野において、炎症性カスケードが局所的にトリガーされる前に、疾患のより初期のメディエーターを阻害することによって疾患の進行に取り組む必要がある。微小血管疾患には本明細書に記載する疾患および振戦、運動失調、CNS 変性疾患、神経筋変性疾患、例えば、 ALS (筋萎縮性側索硬化症)、ジスキネジア、脳炎、および心臓、膵臓および肺の内臓微小血管疾患が含まれる。本発明はこの必要性に取り組む。
【0004】
糖尿病
真性糖尿病は非外傷性切断術の50-75%に関係する。切断術をもたらす侵襲の原因は2つある。第一は微小血管疾患に基づく血行不全であり、第二は感覚の喪失を伴う糖尿病に関連する神経障害である。感覚神経障害は糖尿病性足部潰瘍の発症の主な危険因子である。下肢切断術の85%が糖尿病に二次的な感覚神経障害の結果起こると見積もられている。末梢血管疾患の存在は糖尿病と密接に関連しており、終細動脈または微小血管循環の損傷と関連している。コリンエステルはイオン泳動を介して投与した場合皮膚の血流を改善することが示されている。コリン作用薬(アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、コリン前駆体、およびコリンエステル)は、PET スキャンにおいて脳の皮質および皮質下構造における循環を改善する能力を示した。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、リバスチグミン(rivastigmine)、ドネペジル(donepizil))は、アルツハイマー患者および正常対象の両方の脳において局所血流を改善する能力を示した。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用はアセチルコリンの分解を阻害することによりコリン作用薬として作用し、それゆえ血管におけるアセチルコリン受容体の活性化を介して血流を改善する。
【0005】
末梢血管疾患は真性糖尿病のもっとも一般的な合併症の一つである。治療としては、アスピリンを用いる血小板阻害およびロピドグレル治療があった。プレタール(登録商標) (シロスタゾール)による治療は生存率の低下を伴う心臓合併症を随伴し、あらゆる重篤度のうっ血性心不全患者のすべてにおいて禁忌となった。重篤な症例では、ワルファリンが血栓形成を防ぐことにより灌流を改善するために抗凝血のために用いられる。ペントキシフィリンが慢性末梢血管疾患患者において血液の粘度を改善するために用いられる。循環を改善する治療手段には、跛行の症候を緩和し、側副循環を通る血流を改善するための運動も含まれていた。治療アプローチは服薬率および時間制約により制限されている。現在まで、循環の改善に成功した有効な医薬は存在しない。
【0006】
多数の外科的解決が循環の改善のために開発されており、例えば、終細動脈の血管収縮に関連するカテコリン(catecholine)を低下させることにより、血管緊張を除去し、循環を促進するための交感神経切除が挙げられる。現在の外科的手順は大動脈: 大動脈、腸骨、大腿、脛骨および 腓骨動脈、における血流の改善に注目している。改善された血流は血液の液圧を向上させ終細動脈に影響を与える。これは循環の改善をもたらすが、組織への不十分な血流により壊疽が起こる皮膚および遠位末端における微小循環の問題には取り組んでいない。この圧力の上昇は血管浮腫およびリンパ浮腫を導き、それには関与する末端における慢性膨張の不快感が伴う。
【0007】
糖尿病に関する微小脈管構造における第一の病理学的変化の一つは血管収縮を好む生理的傾向である。この血管収縮へのシフトは組織への血流を低下させ、液体の間質への浸出を導き、浮腫をもたらし、さらに組織虚血を悪化させる。高血圧を伴う血管収縮に加えて、小血管の内膜に病的変化が起こり、それによって毛細血管または微小血管循環の正常機能が損なわれる。
【0008】
アセチルコリン
アセチルコリンはヒト生理および生物系における多くの神経回路に必要な天然のコリンエステルである。この神経伝達物質はおそらく生物系に関わる既知の神経伝達物質のなかで最古のものであろう。神経性ではないアセチルコリン受容体の存在が、組織および細胞への酸素および栄養の送達に重要な点である非常に小さい細動脈および究極的には毛細血管系内の血流の制御の原因である可能性がある。非神経性アセチルコリン受容体の静脈の内膜における存在により、微小血管レベルでの血流が起こるのに必須である「流出(run off)」の現象が可能となる。神経性および非神経性アセチルコリン受容体が血管の内膜に存在する。非神経性アセチルコリン受容体は、ヒトおよび哺乳類組織サンプルの組織化学的分析により示された。アセチルコリンは終細動脈を血管拡張するよう作用して血圧を低下させ、灌流を上昇させる。糖尿病患者において、微小血管レベルでの血管収縮のプロセスは、組織虚血をもたらし、長期に観察される異栄養性変化の原因となり、究極的には重篤な虚血をもたらし、感染症および切断術を招く。微小血管レベルでのこの血管収縮の傾向は潰瘍形成および組織壊死の主な原因であり、不十分な血液供給による感染症をもたらす。糖尿病患者は皮膚および指に表層性壊死を発症し、乾性壊疽を導く。この乾性壊疽はしばしば湿性壊疽へと進行し、外科的処置が必要となる。
【0009】
コリンエステルは皮膚血流を改善することが示されている。メタコリンは皮膚血流および皮膚温度を動物モデルにおいて上昇させる。これが起こる機構は副交感神経系に関連するアセチルコリン受容体の刺激を介すると考えられている。より最近の研究により、非神経性アセチルコリン受容体の血管内膜における存在が示されており、それは副交感刺激の単なる結果であると考えられていた初期の研究において観察されていた効果の原因であろう。心血管応答には、心拍数の低下に加えて小細動脈の拡張を介する血圧の低下が含まれる。肺動脈灌流もコリンエステルの使用により改善を示した。
【0010】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、コリンエステラーゼの阻害を介してアセチルコリンの分解を阻害し、それゆえアセチルコリン活性を上昇させ、血管拡張のコリン作用性機能を促進するという事実により、コリン作用薬である。神経筋接合部に関連するアセチルコリンエステラーゼはアセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療により影響を受けない。アセチルコリン受容体の非神経系に関連するコリンエステラーゼはアセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療に非常に感受性であり、その結果アセチルコリン関連性コリン作動性生理活性を持続させる。
【0011】
慢性腎不全
慢性腎不全患者はしばしば血清クレアチニンレベルが1.2を超える。慢性腎不全には複数の原因があり得、例えば、高血圧、薬物関連真性糖尿病(NSAID)および複数のその他の症状が挙げられる。腎不全患者ではBUN (血液尿素窒素)および血清クレアチニンの値が徐々に上昇し、それに応じてクレアチニンクリアランスが低下する。腎機能の悪化は高血圧、うっ血性心不全、腎性骨異栄養症、アシドーシス、抗カリウム血症および腎不全の神経筋障害を導く。
【0012】
腎機能が徐々に悪化している患者は腎臓への皮質血流が減少しており、その血流の欠乏により、ろ過、代謝の窒素排泄物のクリアランス、電解質バランスの維持、液体バランスの制御およびエリスロポエチンの産生に責任がある腎臓における機能単位を構成するネフロンが欠損する。1.2以上のクレアチニンレベルにてこれらの症候が現れはじめ、医学的管理が必要となる。
【0013】
糖尿病性多発神経障害
糖尿病性多発神経障害は糖尿病患者が遭遇する一般的な問題である。それは感覚および運動合併症をもたらす。感覚合併症には、2地点識別の欠損、振動(vibration)および異常感覚が含まれる。運動欠陥には、萎縮症、脱力、振戦および筋肉痛が含まれる。糖尿病性多発神経障害の疼痛成分は非常にやっかいである。運動失調および運動感覚フィードバックの欠損は一般的な続発症である。
【0014】
線維筋痛症/筋筋膜性疼痛症候群
筋筋膜性疼痛は結合織炎/線維筋痛症に伴うしばしば起こる疼痛症候群である。線維筋痛症および筋筋膜性疼痛に伴う疼痛はあらゆる場所で起こり得るが、頸部後側領域、後側肩甲部、胸部および腰仙部においてもっとも一般的である。筋筋膜性疼痛および線維筋痛症の疼痛症候群はしばしば外傷、ストレスに関連し、慢性的な愁訴が著しい。筋筋膜性疼痛/線維筋痛症の治療は難しい問題である。非ステロイド性抗炎症薬、三環系抗うつ薬(tricyclic antidepressants)、および麻薬の賢明な使用が受け入れられている医薬アプローチである。心臓、超音波、ヴァポコオラント(vapocoolants)を含む物理療法が利得応答の調節に有用である。ステロイドを含むかまたは含まない発痛点注射が、結合織炎および線維筋痛症に関連する発痛点の管理に有用である。
【0015】
リンパ浮腫
リンパ浮腫は外傷、火傷、手術(例えば、関節置換術)、血栓後症候群、本態性リンパ浮腫 (ミルロイ病)、および感染原因によるリンパ浮腫を含む原因からの四肢におけるリンパの異常な蓄積であり、リンパ管の血栓症をもたらす。現在の治療アプローチには、圧迫帯、連続的空圧圧迫帯; 挙上および利尿薬 (フロセミド、チアジド系利尿薬)の賢明な使用が含まれる。未治療のリンパ浮腫からの長期続発症によりセルライトの再発性発作が起こり、外観が損なわれ、反復性潰瘍により、外皮を維持するために外科的切除および皮膚移植が必要となる。
【0016】
多発性硬化症
M.S.は、若年成人が主に罹患する神経性症状である。それはもっとも一般的な慢性神経性疾患の一つである。この疾患は中枢神経内の限局性障害の発症を特徴とする。症候は人生にわたって寛解と再発を繰り返すか稀な状況では進行性脱髄性症状として存在する。臨床症状は中枢神経の特定の領域に偏向した脱髄の病巣によって示される。一般的な症候としては、視覚障害、眼振、企図振戦、運動失調、膀胱機能障害、四肢脱力、情動性傾向および不全対麻痺が挙げられる。現在では予防的治療には、悪化の危険性を低下させるためのベータインターフェロンが含まれていた。慢性症候の治療は特定の系に向けられており、膀胱痙縮のためにはジロトパン/デトロール、痙縮のためにはバクロフェン/ダントロレンおよび感覚機能障害のためにはガバペニン(gabapenin)/三環系抗うつ薬が含まれる。ステロイド治療が、パルスされるIV ソルメドロール、次いで徐々に低用量の経口製剤の形態において、急性悪化のために用いられている。
【0017】
神経因性疼痛
神経因性疼痛は中枢または末梢神経系に対する多くの侵襲の結果として起こりうる。一般的な例としては、切断術 (「幻肢痛」)、放射線誘発神経炎、反射性交感神経性ジストロフィー、および上肢および下肢の両方に伴う神経叢障害(plexopathies) (上腕神経叢障害/腰仙骨神経叢障害)が挙げられる。神経因性疼痛の原因には栄養血管(vasovasorum) レベルでの神経の血管供給の妨害が含まれ、その結果、疼痛および関与する神経の機能障害が起こる。
【0018】
尿閉
排尿には副交感および交感神経制御の両方が関与する。副交感神経は仙椎第2,3および4根から現れ、膀胱筋肉 (排尿筋)および後部尿道弁に供給される。交感神経支配は腰部内臓神経から現れ、膀胱頸部および近位尿道に供給され、禁欲(continence)を維持する。排尿は膀胱体積が400-500 ccに近づくと通常開始する随意作用である。仙椎反射中枢の活性化により近位尿道および会陰筋肉の最初の弛緩が起こり、次いで、膀胱収縮 (排尿筋)が起こり、そして尿が膀胱から排泄される。正常の状況では排尿後の残尿は100 cc未満である。それは膀胱尿管(cystoureteral) 接合部の正常の解剖学の変化に起因するうっ滞および逆流に二次的な感染症に寄与する。
【0019】
血行不全
特に糖尿病患者における血行不全は、以下を含む多くの因子に関連する:感染症の制御の困難、血管再生のためのバイパス手術を必要とする大血管疾患および血管浮腫をもたらす小動脈疾患。全体の効果により異栄養性変化を伴う四肢、血管浮腫および壊疽および切断術の素因となる創傷治癒問題が起こる。褥瘡の防止および動脈圧を改善するために外科的血管再生手順を行う努力がなされてきた。小細動脈における血流を改善するのに利用できる薬物療法や外科的手順は現在存在しない。過去には腰部交感神経切除が行われたが臨床成績においてはわずかな改善しか得られなかった。理論的には小細動脈の拡張は、アセチルコリン濃度の上昇による副交感神経(parasympathic)刺激の使用により可能である。現在では、ホスホジエステラーゼ阻害剤(PDE5)を介するCGMPの上昇により勃起不全を改善する薬物療法を利用できる。これら薬物療法は陰茎海綿体における血管拡張を促進し、それゆえ陰茎勃起が促進される。
【0020】
末梢血管疾患における使用も、四肢の小細動脈の拡張の促進、血管流の改善による褥瘡の治癒、血管浮腫の低下および休息痛/跛行症候の改善または排除により、同様の効果を与えるであろう。
【0021】
リウマチ症状(Rheumatologic Conditions)
リウマチ症状は関節空間の糜爛、血管炎、疼痛および膨張(swelling)をもたらす小血管の血管周囲空間の領域内の炎症の一般的な特徴を共有する。関節リウマチ (RA)の最も初期の徴候は炎症細胞の血管周囲浸潤を伴う小血管の血管炎であると考えられる。全身性エリテマトーデス (SLE)は血管炎、血管、特に腎臓の類線維素要素を伴う。強皮症の初期事象は、小細動脈 (150-500 μm)に対する傷害であり、炎症細胞の存在と線維芽細胞増殖を伴う。皮膚筋炎とSLEは、顔面と胸部上方との血管浮腫 (発疹)と一致する共通の所見を共有する。リウマチ性疾患の一般的な特徴には小血管うっ血が含まれ、炎症反応が発生する。リウマチ症状と関連する筋炎には、Rho Aおよびタンパク質キナーゼ Cが関与する工程による、ムスカリン性受容体による細胞質ミオシンの制御が関係する。白血球の表現型発現 (炎症) はコリン作動性刺激の非存在下で起こる。
【0022】
パーキンソン病
パーキンソン病は中枢神経系 (CNS)の病状であり、脳幹のメラニン含有神経細胞が変性して、振戦、動作緩慢、および前屈姿勢を伴う引きずり歩行として臨床的に認識される臨床症候群を起こす。この疾患によりもっとも影響を受ける脳幹構造は、黒質および青斑核である。組織化学研究は尾状核および基底核の被殻構造内のドーパミンの量が低下していることを反映する。障害の原因は未知であるが、疾患の後期段階において認知症が伴い、不安および緊張を伴う症候が悪化する。黒質の不全が起こる原因はいくらか遺伝性素因であると推測され、環境因子も影響を与えると考えられている。黒質の変性のもっともらしい原因は、これら構造を与える中枢神経系内の微小血管循環の損傷に関する。
【0023】
糖尿病性多発神経障害
糖尿病性多発神経障害の治療は困難な問題であり、疼痛、機能障害、筋萎縮症および運動欠陥(motor loss)を伴う。もっとも重要な問題は感覚消失である。疼痛症候は、知覚異常 (異常感覚)、通常の接触による疼痛 (異痛症)、および様々な灼熱痛、痛みまたは電撃痛として報告されている。もっとも一般的な症候は知覚および正確な運動機能の不能を伴う感覚消失の負の症候である。肢遠位部において温度の判断や不快感の知覚を行えないという問題は、患者が褥瘡からの傷害および潰瘍形成を受けやすくする。感覚神経障害は下肢切断術の大部分の原因である糖尿病性足部潰瘍の発症の主な危険因子である。従来の治療は細心の血液グルコース制御に注意を払っていた。血液グルコースの制御を改善することにより罹患率が低下することを支持する証拠がある。感覚異常の管理は、三環系抗うつ薬、ガバペンチン、および麻薬の賢明な使用による対症療法が中心であった。より最近では、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が用いられたがあまり成功していない。疼痛性糖尿病症候に対するその影響は内因性疼痛経路の調節を理論的に考慮しているにすぎない気分の高揚に関する。
【0024】
治療は疼痛問題を寛解させることを目的としてきたが、萎縮症、感覚消失および関連する運動機能障害を改善する有効な薬剤はなく、その結果、下垂側、異常な手洗いの繰り返し、およびその他の多発単神経炎の症候群が起こりうる。高血糖に加えて、糖尿病には微小血管循環の機能障害が明らかに伴う。微小血管循環に対する損傷は、栄養血管(vasovaorum)のレベルでの神経への血流と関係がある。末梢神経への血液供給の妨害は、かかる神経の機能に対して有害な効果を有し、明らかに糖尿病患者が患う病理学的工程と関連している。
【0025】
糖尿病
糖尿病は西洋における神経障害の第一の原因である。糖尿病性神経障害は末梢神経系の感覚、自律および運動神経に影響を及ぼし機能障害をもたらす。糖尿病性多発神経障害の疼痛および機能障害の対症療法が管理の臨床アプローチであった。三環系抗うつ薬は脳におけるセロトニンとノルエピネフリンの再取り込みを阻害することにより中枢神経系における疼痛の知覚に影響すると考えられている。より最近では、部分癲癇の治療のためのガバペンチンが非盲検で一連の疼痛性糖尿病性神経障害を含む疼痛症候群の治療において有効であったと報告されている。ガバペンチンはガンマアミノ酪酸 (GABA)と構造的に関連している。ガバペンチンはGABAまたはGABA 取り込みの阻害剤に代謝的に変換されない。疼痛調節に対するその効果についてのいくつかの理論があるが、実際の機構は未知である。糖尿病が疼痛を起こす機構も未知である。セロトニン再取り込み阻害薬はセロトニンおよびノルエピネフリンのレベルを上昇させ、内因性下行性疼痛経路に影響を及ぼし、それによって疼痛シグナルを阻害し、 神経因性疼痛の知覚を低減する。三環系抗うつ薬、ガバペンチンおよびセロトニン再取り込み阻害薬に共通の特徴は「疼痛知覚」を調節することである。疼痛の知覚は感情的および生理的状態に関連している可能性があり、気分を高揚させる薬物療法の使用により改善することが出来る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤
現在のアルツハイマー病 (AD)医療は4つのコリンエステラーゼ阻害剤および1つのN-メチル-D-アスパラギン酸 (NMDA) アンタゴニストからなる。米国での使用が認可されているコリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジル (アリセプト(登録商標))、リバスチグミン (エクセロン(登録商標))、ガランタミン (レミニール(登録商標))およびタクリン (コグネックス(登録商標))であり、最後のものはほとんど使用されていない。対照臨床試験の知見はコリンエステラーゼ 阻害剤が脳のアセチルコリンレベルを保持し、認知および行動症候に適度の、一過性の改善を与えうるということを示した (Selkoe and Schenk、2003)。アセチルコリン産生は ADでは徐々に低下し (Terry and Buccafusco、2003)、コリンエステラーゼ阻害が有益ではなくなる地点に最終的には達する(Selkoe and Schenk、2003)。短期試験の知見は、コリンエステラーゼ阻害剤は軽度から中程度に重篤な AD患者における全体的および認知機能の尺度ではプラセボよりも優れていることを示した(Rockwood et al.、2001; Rogers et al.、1998; Roesler et al.、1999; Wilcock et al.、2000; Winblad et al.、2001)。しかし、これらの変化が正の結果、例えば、日常生活活動の維持、介護者の負担の低減および養護施設への収容の遅延に変換されるかということには完全には同意されていない(Clegg et al.、2002; Lanctot et al.、2003)。
【0027】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ドネペジルおよびリバスチグミン)はPET スキャンでCNS 構造に対する血流を改善することが示された。コリンエステルはイオン泳動により投与した場合、皮膚血流を改善する能力および皮膚温度を上昇させる能力があることが示された。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤はアセチルコリンの分解を阻害するコリン作用薬であり、それゆえコリン作用性機能を促進する。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療は副作用プロファイルにより示すと体中に全体的に分布する。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療の正味の効果は体内のコリン作用性機能を促進することである。副交感神経系はコリン作動性伝達を利用して体内の恒常性維持機能を促進する。この結果、血圧が低下し、心拍数が低下し、消化管通過および副交感神経系に関連するその他の多くのコリン作動性活性が促進される。神経性および非神経性アセチルコリン受容体は血管の内膜に存在する。このことによりアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の投与に伴う血管の拡張および血圧の低下が説明される。
【課題を解決するための手段】
【0028】
発明の概要
本発明は、有効量のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を投与することを含む、微小血管系に関連する疾患、炎症性疾患、様々な疼痛症候群、尿閉および血行不全の治療方法を提供する。好ましくは、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジル(donepizil)、ガランタミン(galantamine)、リバスチグミン(rivastigmine)、タクリン(tacrine)、それらの組合せ、およびそれらの医薬上許容される塩からなる群から選択される。もっとも好ましくは、成人において、ドネペジルの一日用量は、約 5 mg〜 約 10 mg、ガランタミンの一日用量は約 16 mg〜 約 32 mg、リバスチグミンの一日用量は約 3 mg〜 約 9 mgである。
【0029】
好ましくは、微小血管系に関連する疾患、自己免疫/炎症性疾患、様々な疼痛症候群、尿閉および血行不全は、慢性腎不全、糖尿病性多発神経障害、糖尿病性末梢血流症状、糖尿病性末梢神経系症状、線維筋痛症疼痛症候群、筋筋膜性疼痛症候群、神経因性疼痛、幻肢痛、放射線誘発神経炎、反射性交感神経性ジストロフィー、上肢および下肢の両方に伴う神経叢障害 (上腕/腰仙骨神経叢障害)、尿閉、血行不全、自己免疫/炎症性疾患、多発性硬化症、関節リウマチ、クローン病、狼瘡、炎症性腸疾患、リウマチ性症状、パーキンソン病、および上記障害の組合せからなる群から選択される。
【0030】
本発明はさらに、有効量のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を投与することを含む環境ストレスに関連する疾患の治療方法を提供する。好ましくは、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン およびそれらの医薬上許容される塩からなる群から選択される。もっとも好ましくは、成人においてドネペジルの一日用量は約 5 mg〜 約 10 mg、ガランタミンの一日用量は約 16 mg〜 約 32 mg、リバスチグミンの一日用量は約 3 mg〜 約 9 mgである。好ましくは、環境ストレスは、ADD (注意欠陥障害)、ADHD (注意欠陥多動性障害)、喘息、呼吸困難、睡眠時無呼吸、勃起不全、IBS (過敏性腸症候群)、異常リポ蛋白血症(dysliproteinemia)、骨粗鬆症、シックハウス症候群、および憩室症からなる群から選択される疾患または障害として現れる。
【0031】
本発明はさらに、有効量のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を投与することを含む、振戦、運動失調、CNS 変性疾患、神経筋変性疾患、ALS (筋萎縮性側索硬化症)、ジスキネジア、脳炎、および心臓、膵臓および肺の内臓微小血管疾患からなる群から選択される微小血管疾患の治療方法を提供する。好ましくは、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンおよびそれらの医薬上許容される塩からなる群から選択される。もっとも好ましくは、成人においてドネペジルの一日用量は約 5 mg〜 約 10 mg、ガランタミンの一日用量は約 16 mg〜 約 32 mg、リバスチグミン の一日用量は約 3 mg〜 約 9 mgである。
【0032】
発明の詳細な説明
糖尿病に関連する虚血の工程は徐々に起こり、長期にわたって容赦がない。四肢の一つの欠損の後の対側の四肢の切断術の頻度は続く5年間で50% に達する。患者および医師は、皮膚および爪の異栄養性変化、血管浮腫、跛行、および休息痛を含む潜行性徴候および症候が起こることに気づいている。皮膚の表面レベルでの血流は非常に脆弱である。血行不全の最初の外観は皮膚の表層性潰瘍形成において気づかれる。この虚血の初期徴候は微小血管疾患および非常に小さい細動脈の損傷および皮膚の穿通(perforator)と一致する。血管外科的手順は大動脈における血流の改善に成功している。この改善した血流により終細動脈に影響する液圧が上昇する。動脈圧の改善は終細動脈および毛細血管の循環を上昇させるが、浮腫の上昇という犠牲を伴う。組織および細胞に送達される酸素および栄養の鍵となる要素は、常に微小血管レベルで起こり、毛細血管および終細動脈の内膜に位置する神経性および非神経性アセチルコリン受容体の両方に制御されているようである。微小血管循環の拡張が改善されると、酸素および栄養の細胞および組織への送達が起こり、虚血を緩和させる。循環の重要な部分は、酸素および栄養の交換が起こる微小血管レベルで起こる。酸素および栄養の送達と同時に代謝廃棄物が除かれ、代謝廃棄物としては二酸化炭素および代謝の窒素含有副生物が挙げられる。理論や作用機構に拘束されることなく、微小血管循環の血管拡張工程は、このたぐいの患者に観察される改善に必要であるようである。微小血管循環の効果は、交換の臨界点を表す終動脈-毛細血管関連の結果としてすべての臓器系および組織で起こる。本明細書で記載する類の患者に観察される短期での有益効果はおそらく腎臓の皮質および心筋ならびに消化器官への血流の改善を示し、そこでは微小血管循環は酸素および栄養の交換が起こる循環における地点を表す。微小血管レベルでの虚血性問題の再発を予防するためにはアセチルコリンエステラーゼ阻害剤による長期治療が必要であると考えられる。
【0033】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤で治療された患者は、治療期間中に血管浮腫の低下を示した。ベルヌーイ式は非圧縮性液体、例えば、血液に適用できる流体力学の物理を説明する。この現象の実験モデルはベンチュリ管において示すことが出来る。この物理モデルは管の狭窄におけるかまたは管の狭窄に遠位の圧力と比較して管の内径の低下部に近位の圧力計において圧力が上昇することを示す。このモデルを終動脈または毛細血管に適用すると、これは血管内腔の狭窄の結果としての液体浸出を反映する。狭窄制限が内腔の拡張を介して緩和されると、昇圧勾配は無くなり、浸出は起こらない。終細動脈の血管収縮は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療によって緩和されると、血液を改善させ、浮腫が起こる傾向を減少させる。血管再生の後の浮腫の現象は、ベンチュリ管のモデルと非常に類似した工程を表す。同じ原理がすべての患者において、特に血管または整形外科的手順の後のリンパ浮腫に適用できる。虚血性四肢の問題に直面している患者は、損傷微小血管循環の根底の問題の治療のためにアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を摂取する見解を提示されると、最初は懐疑的でありこれら薬物療法がアルツハイマー病治療に用いられているという知識に基づき、それを嫌がった。この理論的根拠は患者に理解しがたく、アルツハイマー病が不安であるという言及に関して固有の興味が含まれる。治療の有益効果は数日から数週間で明らかであり、認知症に関する不安は、膨張、疼痛の軽減を伴い、運動および感覚機能の改善を伴う治癒しない潰瘍の解決を伴う血行不全の劇的な改善によってすぐに緩和される。患者が神経因性疼痛の治療のために発作性薬物療法を使用することに関してあまり関心がないということは興味深い。
【0034】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療による可能性のある危険は非常に少ない。創傷治癒処置および局所医薬および看護処置の費用と比べてアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用に伴う費用が少ないことは明白である。治療での患者の服薬率は非常に良好であり、これは微小血管循環の完全性の維持に必要である。有害な副作用の頻度は非常に少なく、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療の妨げは示されなかった。
【0035】
微小血管循環の問題は糖尿病および血管損傷患者においては以前には取り組まれていなかった。
【0036】
要約すると、糖尿病からの血行不全は微小血管循環の損傷を伴う。有効用量のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療はアセチルコリンの相対濃度を高め、血管内膜における神経性および非神経性アセチルコリン受容体の刺激を介する微小循環 (終細動脈)の血管拡張を促進する。血管拡張を促進し組織灌流を改善し、異栄養性変化を修正し、虚血性疼痛および潰瘍を緩和するという有益効果はこの類の患者において明白である。本発明者らは、微小血管疾患の治療のためのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用による血行不全の有意な改善に由来する短い一連の連続する特許を提供している。
【0037】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、酵素コリンエステラーゼによる分解を低下させることによって神経末端での神経伝達物質アセチルコリンの量を上昇させる。欧州特許第0296560号は、アルツハイマー病の治療に有用なアセチルコリンエステラーゼ阻害剤として示される多数の化合物を開示している(1-ベンジル-4->(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2-イルメチルピペリジン、ドネペジル、E-2020およびアリセプトとしても知られる)は特に注目される。化合物の好適な用量は、成人一日あたり0.1〜300 mg、好ましくは 1〜100 mgの範囲と示されている。アミロイド関連障害の活性薬剤の例としては、ドキソルビシン、ガランタミン、タクリン (コグネックス)、メトリホナート、リバスチグミン、セレギリン、フィゾスチグミン 、ドネペジル (アリセプト)、ミラメリン(milameline)、キサノメリン(xanomeline)、サエルゾール(saeluzole)、アセチル-L-カルニチン、イデベノン、ENA-713、メムリック(memric)、クエチアピン、ニューレストロール(neurestrol)およびニューロミダール(neuromidal)が挙げられる。好ましくは、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤またはブチルコリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジル (アリセプト)、タクリン (コグネックス) リバスチグミン (エクセロン)、フィゾスチグミン (シナプトン)、ガランタミン (レミニール)、メトリホナート (プロメム)、キロスチグミン、トルセリン、チアトルセリン、シムセリン、チアシムセリン、ネオスチグミン、エセロリン、ジフロシロン、メスチノン、ヒューペルジン A およびイコペジルまたは上記化合物のいずれかの医薬上許容される塩から選択される。
【0038】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、典型的には95重量%、好ましくは99重量%よりも純粋なアセチルコリンエステラーゼ阻害剤および1以上の賦形剤、希釈剤またはその他の医薬組成物に一般的にみられる不活性成分を含む(またはからなる) 医薬組成物として投与される。したがって、天然物、即ち、天然に生産されるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤はいずれも、開示される方法に用いられる前に単離および精製されるか、または合成により生産される。
【0039】
本明細書において用いる場合、開示される本発明の化合物の「有効量」は、治療を必要とする対象に投与された場合に、対象の予後を改善する、例えば、治療される症状に関連する1以上の対象の症候の発生を遅延させる、および/または、重篤度を低減する量である。対象に投与されるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の量は、特定の疾患、投与様式、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤のバイオアベイラビリティーおよび対象の特徴、例えば、全般的健康、その他の疾患、年齢、性別、遺伝子型、体重および薬物に対する耐性に依存するであろう。当業者であれば、これらおよびその他の因子に応じて適当な用量を決定することが出来る。医薬上許容されるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の有効量は典型的には約 0.1 mg/kg 体重 /日〜約 1000 mg/kg 体重 /日の範囲であり、好ましくは 1 mg/kg 体重 /日 〜100 mg/kg 体重 /日の範囲である。
【0040】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の投与経路は治療すべき症状に依存する。例えば、静脈内注射が全身性障害、例えば、糖尿病性多発神経障害の治療に好ましく、経口投与が胃腸障害、例えば、クローン病の治療に好ましい。投与すべきアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の投与経路および用量は、標準的用量応答研究と組み合わせて過度の実験を行うことなく当業者により決定できる。かかる判断を行う際に考慮すべき関連する状況には、治療すべき症状、投与する組成物の選択、個々の患者の年齢、体重、および応答ならびに患者の症候の重篤度が含まれる。したがって、症状に応じて、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は患者に、経口的に、非経口的に、鼻腔内に、膣内に、直腸に、舌に、舌下に、頬側に、および頬内に投与することが出来る。
【0041】
したがって、経口、舌、舌下、頬側および頬内投与のために設計されたアセチルコリンエステラーゼ阻害剤組成物は、当該技術分野において周知の手段により過度の実験を行うことなく作ることが出来、例えば不活性希釈剤または可食担体を用いて作ることが出来る。組成物はゼラチンカプセルに封入してもよいし、圧縮して錠剤としてもよい。経口治療投与の目的で、本発明の医薬組成物は賦形剤とともに導入すればよく、錠剤、トローチ剤、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハ、チューインガム等の形態で使用される。
【0042】
錠剤、丸剤、カプセル、トローチ剤等は、結合剤、レシピエント(recipient)、崩壊剤、滑沢剤、甘味料および香味料を含んでいてもよい。結合剤の例としては、微晶質セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンが挙げられる。賦形剤の例としてはデンプンまたはラクトースが挙げられる。崩壊剤の例としては、アルギン酸、トウモロコシデンプン等が挙げられる。 滑沢剤の例としてはステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カリウムが挙げられる。流動促進剤の例はコロイド状二酸化ケイ素である。甘味料の例としては、スクロース、サッカリン等が挙げられる。香味料の例としては、ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジフレーバー等が挙げられる。これら様々な組成物の調製に使用される材料は 、医薬的に純粋であり、使用量において非毒性であるべきである。
【0043】
本発明のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤組成物は容易に、非経口的に、例えば、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内または皮下注射により投与できる。非経口投与は本発明のコリン作動性アゴニスト組成物を、溶液または懸濁液に導入することにより達成することが出来る。かかる溶液または懸濁液は無菌の希釈剤、例えば、注射用水、塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶媒を含んでいてもよい。非経口製剤はまた、抗細菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム、および、キレート化剤、例えば、 EDTAを含んでいてもよい。緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩および浸透圧調整剤、例えば、 塩化ナトリウムまたはデキストロースも添加してもよい。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチックでできたアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回用量バイアルに封入するとよい。
【0044】
直腸投与は、医薬組成物を直腸または大腸に投与することを含む。これは坐薬または浣腸を用いて達成することが出来る。坐薬製剤は当該技術分野において知られた方法によって容易に作ることが出来る。例えば、坐薬製剤は、グリセリンを約 120℃に加熱し、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤をグリセリンに溶解し、加熱したグリセリンを混合した後、精製水を添加し、熱い混合物を坐薬鋳型に注ぐことによって調製することが出来る。
【0045】
本発明は、有効量のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の対象への鼻腔内投与も含む。本明細書において用いる場合、鼻腔内投与または経鼻投与は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の患者の鼻孔または鼻腔の粘膜への投与を含む。 本明細書において用いる場合、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の経鼻投与用の医薬組成物は、周知の方法により、例えば、経鼻スプレー、点鼻薬、懸濁液、ゲル、軟膏、クリームまたは散剤として調製された投与すべき治療上有効量のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を含む。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の投与は鼻用タンポンまたは鼻用スポンジを用いて行うことも出来る。
【0046】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は(単独療法として)単独で投与してもよいし、治療すべき症状に対して有効である1以上のその他の医薬上活性の薬剤と組み合わせて投与してもよい。しかし、その教示全体を引用より本明細書に含める米国特許第5,981,549号に用いられているように、併用療法にはコリンエステラーゼ再活性化因子を含めない。例えば、それらはアセチルコリン受容体アゴニスト (特に血液脳関門を透過するアルファ 7 特異的アゴニストおよびムスカリン性受容体アゴニスト、例えば、米国特許第6,610,713号および WO 03/072135および2003年12月5日出願の米国出願第10/729,427号参照- それら刊行物の教示全体を引用より本明細書に含める)、例えば、抗微生物薬、抗炎症薬、鎮痛薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗ヒスタミン薬等と組み合わせて投与するとよい。
【0047】
微小血管疾患
Mrs. R.E.
Mrs. R.E.は、末梢血管疾患 (PVD) および成人発生真性糖尿病 (AODM) によって右下腿切断術 (BKA)を受けた。彼女の左脚は冷たく、血管浮腫がたくさんあった。彼女の踵後内側には、およそ 1x 2 cmの潰瘍があり、局所抗生物質、膠質軟膏、コラゲナーゼおよび厳密な圧力除去装置による治療にも拘わらず治癒しなかった。潰瘍はこの治療にもかかわらず悪化した。外科医による報告によるとさらなる血管の外科的処置は不可能であった。コウマジン(coumadin)およびASAによる長期間の治療は成功しなかった。この症状および血管機能障害の治療期間は6ヶ月を超えた。患者はドネペジル一日5 mg PO による療法を開始した。治療の1ヶ月後、彼女の温度に有意な改善がみられ血管浮腫が低下した。彼女の踵潰瘍の症状は顕著に治癒の瀬戸際から改善した。
【0048】
2ヶ月の治療の後、彼女の血管浮腫は痕跡的となり、踵潰瘍は完全に解消した。脚にはチアノーゼはなく温かかった。爪の完全性は明らかに改善し、ほとんど正常の外観となった。患者は毎日5 mg ドネペジルを続け、悪心/嘔吐または下痢症候は無かった。彼女は彼女の切断した四肢の補綴によって通院を開始した。彼女の微小血管疾患のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療の前には彼女の対側の四肢における疼痛、膨張および血行不全のためにこれは以前では不可能なことであった。
【0049】
Mr. D.R.
Mr. D.R.は真性糖尿病、末梢血管疾患および左足根中足の切断術の病歴を有し、右下腿切断術 (BKA) は右膝上切断術 (AKA)に変わり、左下肢血管浮腫と内果潰瘍を有していた。足根中足の切断術の外科切開術の故障を含む真性糖尿病からの微小血管疾患と一致する有意な栄養性変化があった。患者はガランタミン 4 mg を1日2回摂取し、経口的に 3回4 mgまで用量設定された。下痢または胃食道逆流疾患 (GERD)の症候は報告されなかった。2週間以内に、左下肢浮腫は有意な改善を示した。内果潰瘍は4週間以内に治癒した。患者は重篤な幻肢痛を右 AKA 部位に有していた。これらの症候はガランタミンによる治療期間中に劇的に改善し、患者は麻薬を必要としなくなった。さらに患者は便柔軟剤または下剤を必要としなかった。
【0050】
Ms. B.D.
Ms. B.D.は、真性糖尿病に続発する末梢血管疾患により右膝上切断術を以前に受けていた。左下肢における血行不全は血管浮腫、跛行および栄養性変化について顕著であり、末梢血管疾患 (PVD) と一致した。彼女の糖尿病症状には高血圧が伴っていた。彼女は補綴を装着していたが、彼女の切断していない下肢における疼痛と膨張により機能的運動性は制限されていた。患者は血行再建術の候補とはみなされなかった。彼女は彼女の踵に潰瘍を有していたため、彼女の歩行能力は制限されていた。彼女の血行不全はASA、毎日81mgにより管理されていた。患者は毎日ドネペジル 5 mgを摂取し、治療の1ヶ月後、患者の踵潰瘍は解消した。血管浮腫は顕著に減少し、患者は跛行の症候を有さなかった。彼女は疼痛を有さなくなった。彼女の歩行能力は改善し、彼女は社会歩行できるようになった。以前は彼女は彼女の自宅中でのわずかな距離に歩行が制限されていた。彼女は下痢または胃腸逆流の症候を経験しなかった。彼女は5 mg ドネペジルを毎日続けた。彼女の 3ヶ月経過観察により、温かい脚、および彼女の血管浮腫のほとんど完全な解消が明らかとなった。
Mr. J.B.
【0051】
Mr. J.B.は左足根中足切断術を受け、それには左大腿遠位バイパス手術が伴った。アスピリン治療、局所創傷治癒処置および抗生物質治療にもかかわらず、彼は左膝上切断術を受けた。血行不全の随伴性症候が彼の右脚に起こり、疼痛、彼の右膝の潰瘍および血管浮腫の増加が含まれた。患者は成人発生真性糖尿病および高血圧の診断を受けた。彼は彼の標準的歩行器での歩行の不能により補綴の候補とはみなされなかった。患者の右脚疼痛/踵潰瘍は悪化し続けた。彼は毎日ドネペジル 5 mgを摂取した。1ヶ月以内で彼の疼痛愁訴は緩和した。彼の脚の血管浮腫は解消し、彼の踵の潰瘍は顕著に改善した。毎日ドネペジル 5 mg による2ヶ月の治療の後、患者は歩行器により歩行し、彼の右踵の潰瘍は解消した。患者は補綴の装着および歩行訓練の候補とみなされた。彼はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療での薬物療法を1年以上続け、彼の血行不全や切断術による疼痛愁訴は再発しなかった。
【0052】
Ms. W.M.R.
Ms. W.M.R. は麻薬による疼痛管理では難治性の休息痛右脚を有する外来患者であり、ESRD (末期腎疾患)、インスリン依存性真性糖尿病 (IDDM)、末梢血管疾患 (PVD)、左膝上切断術 (AKA)の病歴を有する83歳の女性である。患者は血管再生の候補から除外された。彼女はASA (アセチルサリチル酸)、三環系抗うつ薬およびガバペンチンの試験を受けたが成功しなかった。Ms. W.M.R. は毎日ドネペジル 5 mgを2週間摂取した。深刻な有害な副作用はなかった。彼女の疼痛は顕著に改善し、彼女の睡眠様式も同様であった。彼女の脚の栄養性悪化は改善した。脚の重篤な栄養性症状は生存可能な組織に変化した。彼女はこの治療過程を6ヶ月以上続け、有害な副作用は無かった。
【0053】
Mr. M.M.
Mr. M. M. は右下腿切断術 (BKA)、続発性 PVD、成人発生真性糖尿病 (AODM)、高血圧の病歴を有し、切断していない左下肢に疼痛および膨張を伴う64 歳の男性であり、左脚における補綴の使用による歩行運動の際に跛行の症候を示した。彼の脚はむくんでおり、血管浮腫により腫れ上がっていた。毛細血管補給は良好でないと判断された。Mr. M.M.は毎日ドネペジル 5 mgを1ヶ月摂取し、脚とつま先の浮腫は完全に解消した。脚の温度は改善して温かくなり、毛細血管補給は良好となった。彼の疼痛は軽減し、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療による下痢または酸逆流などの有害な副作用はなかった。
【0054】
Mr. L.W.
Mr. L.W. は、インスリン依存性真性糖尿病 (IDDM)、末梢血管疾患 (PVD)および右 BKA (下腿切断術)の病歴を有する48歳の男性である。Mr. L.W.は彼の切断していない左下肢に血管浮腫を有しており、複数の指切断術、脚および足首の内側および外側面に潰瘍を有するシャルコー脚を伴っていた。Mr. L.W.は1日2回ガランタミン 4 mgを摂取し、1日3回経口的に8 mgまで用量設定された。左脚の血管浮腫は1ヶ月以内で劇的に改善した。彼の左脚遠位3分の1の潰瘍は2ヶ月間で解消した。シャルコー脚の奇形は変化しなかった。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤ガランタミンによる治療期間中に新しい潰瘍は発生しなかった。彼の歩行状態は改善して彼は1本の杖により歩行できるようになった。治療時間経過は6 週間持続した。彼はさらに12週間ガランタミンの使用を続け、血行不全の徴候または症候は回復した。治療による肺、胃腸または尿生殖器に関する有害な副作用は無かった。
【0055】
Mr. R.H.
Mr. R. H. は、真性糖尿病および末梢血管疾患による右下腿切断術の病歴を有する58 歳の男性である。彼は血行不全による彼の対側の四肢の異栄養性潰瘍のあらゆる治療を受けた。彼は、彼の潰瘍の治癒のための局所適用治療および彼の浮腫のための利尿薬治療にもかかわらず切断していない四肢に顕著な血管浮腫を伴う複数の潰瘍を有していた。患者はまたクレアチニンが1.8であり、慢性腎不全も患っていた。彼は毎日経口的にドネペジル 5 mgでの療法を開始した。治療の1ヶ月後、彼は、彼の脚の遠位3分の1の中央に位置する彼の潰瘍の顕著な治癒を示し、彼の膨張は低減した。彼の利尿薬治療は中断し、ドネペジルの用量を毎日10 mgに増やし、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療による有害な副作用は無かった。さらに1ヶ月の治療の後、脚の潰瘍はほとんど完全に治癒し、彼の浮腫は完全に解消した。彼のクレアチニンは標準化し0.8となった。彼はこの治療法を続け、6 ヶ月以上何も事故は起こらなかった。下腿切断術の幻肢不快感を伴う疼痛問題は寛解した。
【0056】
アセチルコリンは天然のコリンエステルであって、副交感神経系を介する血管拡張効果の維持に役割を果たす。非神経性のコリン作動性系に媒介される血管拡張効果はおそらくアセチルコリンエステラーゼ阻害剤によるコリンエステラーゼ遮断の長期効果の結果として非常に顕著であろう。終細動脈における血流の抵抗を減らすことにより、浮腫は排除されるか顕著に低下し、灌流は改善する。
【0057】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による微小血管循環の血流の改善は用量関連性であるようである。より高用量ではアセチルコリンの分解の阻害によるより高い効果があり、終細動脈、毛細血管および細静脈の拡張または微小血管循環が促進される。理論に拘束されることはないが、血管浮腫の低減の理論的考慮は、ベルヌーイ式とそのベンチュリ管モデルとの関係に基づいて説明可能であり、組織虚血問題をさらに複雑にする血管の相対的狭窄に近位の間質への液体の浸出を減らす正味の効果がある。迷走神経を介する副交感神経支配は胃腸管内で起こるため、下痢および悪心の症候の可能性が存在する。血管拡張のためのコリンエステルの使用はそのGI 毒性および末梢における血管拡張効果を重篤に鈍らせる分解により制限されている。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の利点はそのGI 耐性にあり、罹患率を非常に制限しつつコリン作動性伝達を上昇させる有効な手段を提供する。
【0058】
メトクロプラミド (レグラン(Reglan)(登録商標))は抗コリン作動薬である。下痢または悪心の症候によりアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用が制限される場合、メトクロプラミドによる治療により胃腸症候は寛解または排除される。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療はおそらく微小血管循環内の血管完全性を維持するための長期治療であるようである。この薬物治療アプローチは主要動脈遮断の血管外科的矯正や抗血小板薬物療法などのその他の介入を排除するものではないが、非侵入的に微小血管循環問題に取り組み、罹患率が非常に低くなる有効な手段を提供する。
【0059】
さらに、本明細書に記載する患者の病歴に加えて、さらに17名の患者が微小血管疾患を示し、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤で治療するとその結果は成功した。成功しなかった結果は無かった。
【0060】
慢性腎不全
慢性腎不全の続発症を延期または回避するための、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療は、腎皮質への血流の促進に利用できるアセチルコリン濃度を上昇させ、ネフロンの欠損を防止し、既存の腎実質が腎臓の重要な機能を果たすのを可能にする。副交感流出が恒常性の神経入力により腸機能を排除するように、同じ副交感神経支配が最適の機能を小細動脈の血管拡張を提供して腎臓の皮質の最適な機能を可能とする。
【0061】
Ms. P.E.
Ms. P.E. は高血圧、SVT (上室性頻拍 ) および下腿切断術後の右脚骨肉腫の病歴を有する63歳の女性であった。彼女の手術後のリハビリテーション施設への収容により、クレアチニンが1.7でありBUN (血液尿素窒素)が21である慢性腎不全が明らかとなった。彼女は彼女の SVTのためにベータ遮断薬を摂取していた。 Ms. P.E.は経口的にドネペジル 5 mgを4 週間与えられた。経過観察ではクレアチニンは1.1に改善していた。患者はさらに1ヶ月薬物療法を続け、クレアチニンは0.9と測定された。彼女は治療により有害な副作用を受けなかった。
【0062】
Ms. F.C.
Ms. F.C.は、血行不全、右下腿切断術の病歴を有する64歳の女性であり、ルーチン的実験室スクリーニングでBUNが48でありクレアチニンが1.8であった。彼女は毎日経口的にドネペジル 5 mgで1ヶ月治療を受けた。経過観察ではBUN/クレアチニンはそれぞれ37/1.6となった。彼女は代謝的アシドーシスまたは抗カリウム血症の証拠を示さなかった。彼女はさらに毎日ドネペジル 5 mgで6 週間治療を受けた。経過観察ではクレアチニンは1.2であり、BUNは19に低下していた。患者には有害な副作用はなかった。
【0063】
Mr. J.B.
Mr. J.B. は、AODM (成人発生真性糖尿病)、高血圧および末梢血管疾患の病歴を有する78歳の男性であった。外来患者設定における血清電解質のルーチン的試験において彼のクレアチニンは1.4であり BUN (血液尿素窒素)は 27であった。Mr. J.B.は利尿薬治療を受けていなかった。彼は毎日ドネペジル 5 mg を経口的に1ヶ月与えられた。彼の経過観察ではクレアチニンは0 .9でありBUN は12であった。彼はドネペジルによる治療による有害な副作用を示さなかった。
【0064】
Mr. J.A.
Mr. J.A.は、NIDDM (非インスリン依存性真性糖尿病) 、高血圧、PVD (末梢血管疾患)および左足根中足の切開切断術の後のCRI (慢性腎不全) 状態の病歴を有する51歳の男性であった。収容時、彼のクレアチニンは1.6 でありBUNは 11であった。Mr. J.A.は毎日ドネペジル 5 mg を経口的に与えられた。ドネペジル治療の後2週間未満で彼のクレアチニンは1.3となった。2週間後の経過観察ではクレアチニンは1.0となった。 Mr. J.A.は、治療時または治療前に利尿薬治療を受けていなかった。
【0065】
Mr. R.M.
R.M. は慢性腎不全 (CRI) の病歴を有する73歳の男性でありクレアチニンが 1.8 でありBUN (血液尿素窒素)が32であって利尿薬治療を受けていなかった。彼はCRIに続発する彼の関節炎のために非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を摂取できなかった。Mr. R.M.は1日3回経口的ガランタミン 4mgを開始した。経過観察ではクレアチニンは1.4 でありBUNは21であった。投薬の便宜のため Mr. R.M. は毎日経口的にドネペジル 5 mg を開始し、ガランタミンは中断した。治療の1ヶ月後、経過観察ではクレアチニンは1.0 でありBUNは14であった。患者は治療過程において利尿薬治療を受けていなかった。
【0066】
Mr. R.H.
Mr. R.H.は右下腿切断術の病歴を有する58歳の男性であり、浮腫および慢性腎不全を伴っていた。彼の BUNは 37でありクレアチニンは1.4であった。彼は左脚の血行不全のために経口的にドネペジル 5 mgを開始した。治療の6 週間後、彼の BUNは21であり彼のクレアチニンは1.0であった。彼は利尿薬治療を受けていなかった。彼は治療により有害な副作用を示さなかった。
【0067】
Mr. C.D.
Mr. C.D. は右全膝関節形成術の後にリハビリテーション施設に収容された82歳の男性であった。収容時、彼の BUNは30でありクレアチニンは1.8であった。彼は血圧制御のために毎日5 mg 経口的にリシノプリルを与えられていた。患者は毎日経口的にドネペジル 5 mgを開始した。2週間の経過の間、彼の BUNは 22まで改善し、彼のクレアチニンは1.3まで低下した。彼は血圧制御のためにリシノプリルを毎日続けていた。彼は治療により有害な副作用を示さなかった。彼はこの薬物療法のまま退院し、経過観察ではBUN は 1 ヶ月後に19 でありクレアチニンが 1.1であった。
【0068】
Mr. R.R.
Mr. R.R.は彼の左大腿の癒着不能のための修正手術の後にリハビリテーション病院に収容された病的肥満の病歴を有する36歳の男性であった。 彼の収容時、BUN は39であり、クレアチニンは2.8であった。彼は皮質血流を促進するため彼の慢性腎不全のために低用量のリシノプリルによる治療を受けていた。この患者は高血圧の病歴を有さず、利尿薬治療を受けていなかった。患者は毎日経口的にドネペジル 5mgを開始した。3週間の経過の間、彼の BUN は26でありクレアチニンは1.4であった。
【0069】
Mr. F.C.
Mr. F.C. はCRI (慢性腎不全) の病歴を有する78歳の男性であった。彼はTHR (人工股関節全置換) の後に来診し、BUN (血液尿素窒素)が35でありクレアチニンが 1.7であった。Mr. F.C.は毎日経口的にドネペジル 5mgを1ヶ月摂取した。経過観察ではBUN は24でありクレアチニンが 1.4であった。彼はさらに 6 週間治療を続けた。およそ 3ヶ月の治療後、彼の BUN (血液尿素窒素) は20であり、クレアチニンが 1.1であった。彼はドネペジルによる治療による有害な副作用を示さなかった。
【0070】
糖尿病性多発神経障害
糖尿病性多発神経障害の運動および感覚消失の症候は、副交感神経系の主要な神経伝達物質であるアセチルコリンの濃度を上昇させることによるアセチルコリンエステラーゼ阻害によって寛解する。副交感神経系の神経への栄養入力の増加により; 疼痛および感受性不良は減少し、筋肉の脱力/萎縮症は減少する。非アルツハイマー患者における臨床観察では、有効用量のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療の後に運動および感覚機能は改善する。微小血管循環内の改善した血流は神経の栄養血管(vasovasorum )を供給し有益効果をもたらす。血流の神経の栄養血管(vasovasorum )への回復により、虚血性疼痛は軽減し、神経の正常機能が起こるようになる。微小血管循環の血管拡張の工程は、アセチルコリンによる神経性および非神経性アセチルコリン受容体の両方の刺激を介して媒介される。アセチルコリンレベルの上昇は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療によりもたらされる。
【0071】
Mr. D.D.
Mr. D.D. は、左 CVA (脳血管障害)、右半CVAの病歴を有する80歳の男性であり、右下肢の蜂窩織炎により病院に収容されていた。彼は彼の脚における疼痛の愁訴は有さなかったが、彼の手には灼熱、刺痛および時折の拍動痛を含む糖尿病性多発神経障害症候が示された。治療用量のガバペンチンおよびデセリル(登録商標)、トラザドン(trazadone) の試験は有効ではなかった。Mr. D.D.は毎日ドネペジル 5 mgを摂取した。手の疼痛症候に顕著な改善がみられ、睡眠様式が改善し、血管浮腫が低下し、四肢の発赤制御も改善した。この臨床的改善はドネペジルによる治療に起因した。
【0072】
Mr. V.S.
Mr. V.S.は、膵炎および疼痛を伴う両側下肢糖尿病性多発神経障害の病歴を有する56歳の男性であった。Mr. V.S.は右 THA (股関節全形成術)を受け、左よりも右が強い両側脚疼痛により病院に収容されていたが血管浮腫は無かった。両側の脚は温かく、脈は正常であった。患者は右臀部術後疼痛の愁訴を少し有していた。彼の右臀部疼痛のための麻薬治療にもかかわらず、患者は脚の疼痛の症候を訴え、即ち、両側脚疼痛がもっとも問題であった。Mr. V.S.はガランタミン 4 mg POを1日2回摂取した。すぐに疼痛症候の改善がみられた。彼はガランタミンによる治療後、快適な睡眠を報告した。
【0073】
Ms. P.M.
Ms. P.M.は、IDDM (インスリン依存性真性糖尿病)、および両側下腿切断術の病歴を有する62歳の女性であった。Ms. M.は両側 BKA (下腿切断術) 疼痛と両側手疼痛を訴えた。彼女はわずかな左側脱力を伴う穏やかな発作が持続していた。 彼女の歩行する能力は、彼女の手および両側切断術 (経脛骨)の疼痛により制限されていた。患者はオキシコンチン(登録商標) (長時間作用性オキシコドン) 1日3回10mg、ペロセット(登録商標) (オキシコドン/アセトアミノフェン) および メサドン毎日20 mgの試験を受けていた。彼女の疼痛管理には、神経因性疼痛のためのデセリル(登録商標) (トラザドン)およびガバペンチンの投薬が含まれていた。 患者は疼痛管理にもかかわらず持続性の疼痛を示した。麻薬の投薬は認知機能障害および嗜眠により制限されていた。
【0074】
Ms. P.M. は毎日ドネペジル 5 mgを摂取したところ4 週間で顕著に改善がみられた。彼女はPRN (必要な場合) 麻薬を続けたが、ガバペンチン/三環系抗うつ薬はこれら薬物があまり有益でないと感じたため中断した。ドネペジルの用量を4 週間後には毎日10 mgに増やした。すべての麻薬による疼痛治療を中断した。患者は睡眠様式が顕著に改善したと報告した。さらに、Ms. Mの両側 BKA および手疼痛は十分に減少したため、改善した糖尿病性多発神経障害管理により歩行運動の補綴が可能となった。
【0075】
本明細書に提供する糖尿病性多発神経障害症例の病歴の3名の患者に加えて、さらに21名の糖尿病性多発神経障害患者をアセチルコリンエステラーゼ阻害剤で治療したところ、結果は成功であった。不成功の結果は無かった。
【0076】
脚脱力/左下垂側、AODM (成人発生真性糖尿病)、糖尿病性多発神経障害
Ms. T.T.
Ms. T.Tは、高血圧、OA (骨関節炎)、喘息、CRI (慢性腎不全)、腰部椎弓切除術後の症状および癒着の病歴を有する54歳の女性であった。彼女は手術の過去は左下肢脱力および部分的下垂側を合併していた。理学的検査は糖尿病性多発神経障害とよく一致し、診断はかかりつけの神経内科医によりなされた。Ms. T.T.は喘息の病歴を有する。彼女の母親 (死亡)はアルツハイマー病であった。左脚は重い「木」にように感じられ、患者は自宅および社会での歩行のために回転歩行器が必要であった。Ms. T.T.はガランタミン 8 mgの試験投与を受け、外来患者部門において45 分間観察されたが、彼女の肺状態に関連する病的な副作用は無かった。彼女は1日4回4 mg ガランタミンを摂取し1日3回8 mgの用量まで用量設定され、左脚強度の主観的および客観的改善を示し、左下垂側のおよそ80-85%の改善がみられ、足首脚整形器具の使用を中断できた。
【0077】
Ms. M.L.
Ms. M.L.は、IDDM (インスリン依存性真性糖尿病)および末梢血管疾患 (PVD) および壊疽による両側下腿切断術 (BKA) の病歴を有する68歳の女性であった。Ms. M.L. は彼女の手および両側BKAに疼痛愁訴を有していた。彼女ではガバペンチンおよび三環系抗うつ薬により有意な改善は示されなかった。Ms. M.L. は1日3回ガランタミン 4mgによる治療を受けたところ、まず顕著な改善が示され、1日2回8mgの用量を維持して摂取した。
【0078】
Mr. L.S.
Mr. L.S.は、IDDM (インスリン依存性真性糖尿病) の病歴を有する52歳の男性であり、ホジキンリンパ腫は寛解せず、右 THA (股関節全形成術)術後症状も有していた。彼の関節置換術の後の病院経過は麻薬での治療によっても不治の顕著な疼痛愁訴を特徴としていた。 Mr. L.S.は1日3回ガランタミン 4 mgを摂取し、次いで1日3回8 mgに増やし、さらに疼痛症候が改善した。
【0079】
Ms. P.M.
Ms. P.M.は、AODM (成人発生真性糖尿病)、右 TKA (全膝関節形成術)、高血圧および右の方が左よりも強い両側脚疼痛を伴う糖尿病性多発神経障害の病歴を有する58歳の女性である。ガバペンチン、麻薬、および三環系抗うつ薬による治療は成功しなかった。彼女は1日3回ガランタミン 4 mgによる治療を受けると顕著に改善した。用量を1日3回8 mgまで上昇させ維持用量とし、彼女の疼痛愁訴は適切に軽減した。
【0080】
Ms. J.D.
Ms. J.D.は慢性背部疼痛と重なる糖尿病性多発神経障害の病歴を有する53歳の女性である。彼女は、ガバペンチン、三環系抗うつ薬および麻薬で治療されたが部分的にしか軽減しなかった。彼女の系は長時間作用性麻薬と疼痛を打破するための麻薬の組合せにより寛解した。患者は1日3回ガランタミン 4 mgによる療法を開始し、適度に改善した。彼女の用量を1日2回8 mg まで上昇させると睡眠が改善し、1日3回8 mgガランタミン療法を行うことにより疼痛愁訴は低下した。彼女は長時間作用性麻薬をやめることが出来、短時間作用性麻薬を時折使用するのみとなった。
【0081】
Ms. D.J.
Ms. D.J. は、AODM (成人発生真性糖尿病)、高血圧、中毒性結節性甲状腺腫の切除術後症状の病歴を有する68歳の女性である。彼女は呼吸器の問題により長期の入院経過を有しており、いずれも気管切開を要求する手術を伴った。彼女の短期入院リハビリテーションの経過の間、彼女は両側脚疼痛を訴え、左足首背屈筋における脱力を伴う糖尿病性多発神経障害と一致した。Ms. D.J. は、1日2回経口的にリバスチグミン 1.5mgを開始した。彼女は彼女の症候の改善を報告した。用量を1日2回3mgまで上昇させると制御はより良好となった。Ms D.J.はリバスチグミンによる治療による胃または呼吸器の有害な副作用を経験しなかった。
【0082】
Mr. C.T.
Mr. C.T.は、AODM、末梢血管疾患、左膝上切断術後症状の病歴を有する 64歳の男性であり、「幻肢痛」の愁訴と、無傷の脚における糖尿病性多発神経障害の愁訴を伴った。彼は不眠を訴え、手の振戦を報告した。彼の幻肢および糖尿病性神経因性疼痛は、麻薬、三環系抗うつ薬およびガバペンチンでは制御できなかった。Mr. C.T. は1日2回経口的にガランタミン 4 mgを開始し、毎日4回まで用量設定された。彼は、糖尿病神経因性疼痛の低下および 「幻肢痛」愁訴の顕著な低減を報告した。Mr. C.T. は1日3回経口的に8 mgの用量を維持して摂取し、「幻肢痛」、糖尿病神経障害性と不快感は報告せず、彼の睡眠様式は顕著に改善し、彼の手の振戦は解消した。
【0083】
Ms. V.C.
Ms. V.C.は、腰部椎弓切除術後の脆性真性糖尿病状態と癒着を有する50歳の女性である。彼女の術後治療過程は、両側下垂側 (足首背屈筋の不在)および両側下肢脱力を合併していた。彼女の症状は1年以上かけてゆっくりと改善していた。彼女の手術のすぐ後の画像研究は脊髄圧迫について陰性であった。彼女は最終的には歩行器と1つの足首脚整形器具によって社会を歩行することができた。最近の夏および秋 (2004)、Ms. V.C. は彼女の脚の脱力が進んでいることに気づいた。彼女は毎日ドネペジル 5 mgを摂取した。患者は続けている4 週間の間に強度の上昇と協調を報告し、有害な副作用はなく、毎日薬物療法を続けた。彼女は足首脚整形器具の使用を中断することができ、補助装置なしで社会歩行するようになった。
【0084】
Mr. W.T.
Mr. W.T. は、NIDDM (非インスリン依存性真性糖尿病)、ESRD (末期腎疾患)、腎臓移植術後症状の病歴を有する67歳の男性であり、右臀部骨折の整形外科的修復を受けた。患者は発作による右側の脱力の既存の病歴を有していたが、臀部骨折の前は杖を用いて歩行していた。彼の骨折の外科的固定術の後、彼は治療のためにリハビリテーション病院に収容された。Mr. W.T.は手術の後の両脚の脱力の増加により運動が困難であった。治療の1週間後、独立歩行を行うほどの進歩はあまりなく、彼は毎日経口的にドネペジル5mgを与えられた。彼の歩行状態は1週間後には改善した。彼の改善した機能的運動性がドネペジルによるのか彼の手術後の時間経過によるのかを確かめるためにドネペジルをやめた。次の7-10日間、彼の能力および強度は徐々に低下した。Mr. W.T. には初期アルツハイマー病の徴候または症候はなかった。ドネペジルを再開すると、彼の強度および 持久力は改善した。
【0085】
Ms. G.S.
Ms. G.S.は、IDDM (インスリン依存性真性糖尿病) の病歴を有する58歳の女性であり、AFO (足首脚整形器具)を必要とする両側下垂側を伴う糖尿病性多発神経障害からの両側下肢脱力を有していた。彼女は外来患者部門に来診し、脱力の上昇および持久力の低下の愁訴を有していた。Ms. G.S.は1日2回経口的にリバスチグミン 1.5mgを開始した。治療の1ヶ月後、彼女は彼女の強度におけるさらなる悪化を報告しなかった。GI 副作用は存在せず、 用量を経口的に 1日2回3.0 mgまで上昇させた。1ヶ月後の経過観察来診では、持久力と強度の改善が顕著であった。さらに 2ヶ月リバスチグミンの用量を1日2回 3.0 mgに維持した。彼女は歩行能力のさらなる改善と疼痛の低下を報告した。彼女は彼女の右下肢のAFOの使用を中断することができた。
【0086】
線維筋痛症/筋筋膜性疼痛症候群
本発明は、アセチルコリンの組織レベルを上昇させることによる線維筋痛症および筋筋膜性疼痛症候群の治療方法を提供する。アセチルコリンは副交感神経系の神経伝達物質である。本発明の方法は副交感伝達の相対量を上昇させ、それによって疼痛領域の解消を促進し、麻薬および多剤療法の必要性を減少する。麻薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)および三環系抗うつ薬および有害な副作用を有する疼痛に使用されるその他の薬物療法の使用の低減が主な利益である。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の投与により、アセチルコリンの相対濃度が上昇し、副交感神経系の刺激の伝播および非神経性のアセチルコリン受容体において用いることが出来るようになり、疼痛および攣縮が減少する。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の投与により、アセチルコリンの相対濃度が上昇し、副交感神経系の刺激の伝播に用いることが出来るようになり、疼痛および攣縮が減少する。アセチルコリンレベルの上昇によりもたらされる非神経性のアセチルコリン受容体の影響により、炎症誘発メディエーターが低減し、疼痛伝達に関与する神経繊維への血流が上昇する。正味の効果は炎症の低減と疼痛の感覚を低下させる侵された神経の栄養血管(vasovasorum )への血流の改善である。
【0087】
Mr. R.M.
Mr. R.M. は代償性の頸部脊椎前弯症を伴う胸部チフスの病歴を有する73歳の男性である。彼の疼痛愁訴には、軟らかい襟の使用にもかかわらぬ両側頸部疼痛、および左腕における三角筋の付着点での疼痛が含まれていた。頸部牽引、筋筋膜放出治療、超音波と組み合わせた非ステロイド性抗炎症薬 (NSAID)、麻薬および筋弛緩薬はわずかにしか有益ではなかった。彼の非ステロイド性抗炎症薬の使用はBUNとクレアチニンとの上昇として腎臓毒性が現れたために削減された。Mr. R.M. は1日3回経口的にガランタミン 4 mg を1ヶ月摂取したところ、頸部の明白な愁訴の改善を報告した。彼は毎日ドネペジル 5 mg をさらに 6 週間摂取したが、GI 不調または下痢を報告しなかった。 患者はガランタミンからドネペジルへと単に投薬の便宜から変更した。
【0088】
Ms. L.G.
Ms. L.G.は、腰部背部疼痛および腰部椎弓切除術後症状の病歴を有する68歳の女性である。彼女の術後疼痛愁訴は手術前症候と同一であり、両側仙腸疼痛および後側膝腱攣縮および腰仙部の両側疼痛を含んでいた。Ms. L.G.は、麻薬、フレキセリル(登録商標) (シクロベンザプリン)または非ステロイド性抗炎症薬では彼女の疼痛は軽減しなかった。Ms. L.G.は、1日2回ガランタミン 4 mgを開始し、1日4回用量 4 mgまで用量設定された。彼女の膝腱攣縮は解消し、傍脊椎および仙腸領域の筋肉の攣縮も解消した。
【0089】
MS. S.W.
Ms. S.W.は、狭窄のために頸部と腰部の両方の椎弓切除術の病歴を有する62歳の女性である。彼女の最後の背部手術の後2年間以上、彼女は、慢性頸部および背部疼痛を訴えた。彼女の疼痛は、ガバペンチン、三環系抗うつ薬および筋弛緩薬による治療では難治性であった。彼女は長時間および短時間作用性麻薬の組合せによりわずかに一時的な軽減を示した。Ms. S.W. は1日3回経口的にガランタミン 4 mgを摂取した。1ヶ月後彼女は、完全にすべての麻薬を中断した。
【0090】
Mr. C.R.
Mr. C.R.は、治療にもかかわらず背部疼痛の愁訴を有する外来患者部門に来診していた外傷性左下腿切断術の病歴を有する43歳の男性である。画像研究では椎間板ヘルニアまたは狭窄について陰性であった。彼の疼痛は麻薬の賢明な使用および非麻薬薬物療法によっては難治性であった。 Mr. C.R.は1ヶ月間1日2回リバスチグミン 1.5 mgを摂取し、有意な改善を示した。次の30 日間リバスチグミンの用量を1日2回3 mgに上昇させたところほとんど彼の疼痛は完全に軽減し、短時間作用性麻薬を時折使用するのみとなった。
【0091】
Ms. M.H.
Ms. M.H.は、骨関節炎、右全膝置換術後症状、血管壊死左臀部および頸部、肩部および上腕骨の粗面の三角筋の付着点における筋筋膜性疼痛の愁訴の病歴を有する63歳の女性である。彼女の疼痛愁訴は非ステロイド性抗炎症薬、三環系抗うつ薬、麻薬またはガバペンチンと組み合わせての3つのすべての組合せによる治療では治らなかった。彼女は鍼治療を受けたが、あまり利益はなかった。Ms. M.H. は1日3回経口的にガランタミン 4mgを開始したところ彼女の疼痛症候の制御は良好となった。彼女にはGIまたは呼吸器副作用はなかった。
【0092】
Mr. J.E.
Mr. J.E. は、筋筋膜頸部および両側肩部疼痛の病歴を有する51歳の女性であり鍼治療を適用されていた。彼女の症候には、不眠、不穏状態および非ステロイド性抗炎症薬、三環系抗うつ薬および麻薬に難治性の数年にわたる疼痛が含まれていた。彼女は1日2回経口的にリバスチグミン 1.5 mgを摂取し、次いで1日2回経口的に3 mgまで用量設定された。彼女の疼痛症候の頻度は減り、彼女の三環系抗うつ薬は中断できた。彼女は快適であり、自宅および勤務先の両方で機能することができた。
【0093】
Mr. O.H.
Mr. O.H. は骨盤骨折、左中軸大腿骨折、両側寛骨臼骨折および顎顔面外傷を伴う労働災害を受けていた。彼は大腿および骨盤骨折の観血的整復法および内固定を受けた。Mr. O.H. は両側「下垂側」についてAFOおよび理学療法で治療された。彼は両脚および背部のしびれ痛の愁訴を有していた。ガバペンチン、トラザドン(登録商標)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)および麻薬による治療はあまり役に立たなかった。患者は1日2回経口的にガランタミン 4mgを開始し、1日3回8 mgまで用量設定された。彼の疼痛は十分に改善し、非ステロイド性抗炎症薬を中断することができ、彼の経口麻薬摂取は劇的に低減した。彼の歩行能力は顕著であり、彼は歩行器から四脚杖まで前進することが出来た。
【0094】
Ms. J.D.
Ms. J.D.は、腰部神経根症候群と筋筋膜性疼痛との組合せを患う長期患者である。患者は疼痛制御のために短時間作用性麻薬と組み合わせて長時間作用性麻薬を摂取していた。ガバペンチン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、および三環系抗うつ薬の組合せが彼女の疼痛症候を調節するのを助けるために麻薬とともに彼女の治療に用いられた。 Ms. J.D.は1日2回経口的にガランタミン 4 mgの試験を受けたが、下痢症候のためにやめなければならなかった。Ms. J.D.は経口的にレグラン(Reglan)(登録商標) (メトクロプラミド) 5mgを食前および眠前に開始した。彼女は毎日ドネペジル 5 mgを与えられた。この形態のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤はよく耐用された。患者は彼女の長時間作用性麻薬の使用をやめることが出来、彼女の疼痛の管理に必要な短時間作用性麻薬の量は顕著に低下した。
【0095】
Mr. W.H.
Mr. W.H.は頸部および両側肩部領域に線維筋痛症の愁訴を有するため外来患者部門に来診した右下腿切断術を受けた74歳の男性であり、短時間作用性麻薬および非ステロイド性抗炎症薬 (NSAID)による管理では難治性であった。Mr. W.H.は1日3回経口的にガランタミン 4 mgを摂取した。患者は彼の頸部と背部の彼の疼痛症候の完全な解消を報告した。彼は治療により有害な副作用を示さなかった。
【0096】
Ms. M.C.
Ms. M.C.は、慢性背部および仙椎疼痛の病歴を有する64歳の女性である。彼女の以前の病歴では高血圧、および慢性気管支炎が顕著であった。患者は抗炎症薬療法、麻薬および筋弛緩薬で長い間治療を受けていたが、あまり成功していなかった。彼女の疼痛愁訴は麻薬によって部分的に制御されたのみであった。Ms. M.C.は腰仙部脊椎が関与する筋筋膜性疼痛症候群と診断された。患者は1日2回経口的にリバスチグミン 4 mgを摂取し、1日3回8 mgまで用量設定された。彼女の麻薬の使用は完全に排除できた。彼女はGIまたは呼吸器系の有害効果を受けなかった。
【0097】
Ms. C.G.
Ms. C.G.は、狭窄のために頸部除圧術の病歴を有する74歳の女性である。彼女の術後期間の間、彼女はNIDDM (非インスリン依存性真性糖尿病)と診断された。彼女は、筋弛緩薬、非ステロイド性抗炎症薬 (NSAID)、三環系抗うつ薬の使用および麻薬の賢明な使用にもかかわらず彼女の手術の後に持続性の頸部疼痛を有していた。彼女の疼痛愁訴は彼女の手術後3年以上持続していた; 彼女の糖尿病は経口血糖降下薬により制御された。Ms. C.G.は毎日経口的にドネペジル 5mgを摂取した。1ヶ月後彼女は彼女の頸部の疼痛愁訴の低下を報告した。彼女の術後筋筋膜性疼痛愁訴は、麻薬または非ステロイド性抗炎症薬を使用せずに制御できた。
【0098】
Ms. R.W.
Ms. R.W.は、慢性胸腹腰部脊椎疼痛のための側弯症手術の病歴を有する80歳の女性である。彼女の椎弓切除術および癒着の後、彼女は手術後1年以上さらに腰仙部疼痛愁訴を有していた。Ms. R.W.は毎日経口的にドネペジル 5mg を開始し彼女の背部疼痛愁訴の改善を報告した。彼女は悪心または下痢を示さなかった。彼女は薬物療法に良好な耐容性を示し、彼女の背部疼痛の悪化は報告されなかった。
【0099】
Mr. M.F.
Mr. M.F. は、病的肥満およびTKR (全膝置換術) の後の感染症のために右膝上切断術の病歴を有する48歳の男性である。Mr. M.F. は、彼の切断術の後頸部および低背部に持続性の疼痛愁訴を有しており、麻薬および鍼治療で治療された。非ステロイド性抗炎症薬の使用は腎不全と悪化する高血圧のために制限された。Mr. M.F. は体重100ポンド以上の彼の病的肥満の管理のために胃バイパスを受けた。彼はそれでも彼の背部と頸部に持続性の筋筋膜性疼痛愁訴を有していた。彼は1日2回経口的にリバスチグミン 1.5 mgの療法をはじめ、彼の疼痛はよりよく制御された。彼は4ヶ月以上この用量を維持し、有害な副作用は無かった。
【0100】
Mr. U.G.
Mr. U.G.は、TKR (全膝置換術)を伴う骨関節炎の病歴を有する66歳の女性であり、彼女の膝置換術手術の6ヶ月後外来患者部門に来診し、腰仙部疼痛の愁訴および彼女の膝腱の筋痙攣を有していた。彼女の背部疼痛愁訴は神経根症の脊椎症のパターンとは異なっていた。Ms. U.G.は毎日ドネペジル 5 mgを開始した。彼女の疼痛愁訴は4週間にわたって顕著に低下した。彼女はこの薬物療法を3ヶ月続け、彼女の背部疼痛または脚筋痙攣は再発しなかった。
【0101】
筋筋膜痛疼痛症例について本明細書に提供する病歴を有する14名の患者に加えて、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤で治療を受け、結果が成功であったさらに31名の筋筋膜痛疼痛患者がいた。成功しなかった症例はなかった。
【0102】
リンパ浮腫
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療は神経伝達物質、アセチルコリンを上昇させ、それは、副交感神経系の活性化の原因となり、それによって小細動脈における動脈の灌流を改善する。小細動脈における灌流の改善は、終細動脈の静水圧を低下させ、それゆえリンパ管内のリンパ液の回復を妨害する間質の液体蓄積を低下させる。この現象についての物理モデルはベルヌーイ式およびそのベンチュリ管との関連を利用するものである。相対的な狭窄の近位の静水圧は圧力勾配を作りだし、それによって浸出物が増加する。それはリンパ系が管理する能力を圧倒する。小細動脈の副交感神経系の血管拡張効果は灌流を改善し、リンパ浮腫の蓄積を低減させる。リンパ浮腫の一般的な例は関節置換術の後に起こり、3〜6ヶ月、ときには永久に持続する膨張を伴う。関節置換術の後、リンパ浮腫は回復を遅らせ、疼痛を引き起こし、深部静脈血栓症および感染症の素因となる。
【0103】
Ms. A.S.
Ms. A.S. は、5年間にわたる含気性圧迫治療、圧迫ストッキングおよび利尿薬治療に難治性の両側下肢リンパ浮腫の病歴を有する82歳の女性である。Ms. A.S.は、毎日経口的にドネペジル 5mgを開始した。彼女は下痢または悪心の症候を示した。3ヶ月の経過の間に彼女のリンパ浮腫には顕著な改善がみられ、それによって彼女は1本の杖によって社会歩行することが可能となった。ドネペジルによる治療の前は、彼女は歩行器を必要とし、自宅に閉じこもっていた。
【0104】
Mr. D.T.
Mr. D.T.は、真性糖尿病、高血圧および右下腿切断術の病歴を有する76歳の男性である。彼は圧迫ストッキングおよび利尿薬治療に難治性の彼の左脚における顕著なリンパ浮腫を患っていた。Mr. D.T.は、毎日経口的にドネペジル 5mgを開始した。治療の1ヶ月後、彼の下肢膨張に有意な改善がみられ、彼は靴を履いて社会歩行することがより容易になった。
【0105】
Ms. L.T.
Ms. L.T.は、腰部狭窄による背部疼痛および病的肥満の病歴を有する48歳の女性である。彼女は圧迫ストッキング、挙上(elevation)およびチアジド系利尿薬に難治性のリンパ浮腫を患っていた。彼女は1日3回経口的にガランタミン 4mgを開始し、すぐに1日3回8 mgまで用量設定された。2ヶ月の経過の間、彼女の下肢膨張に有意な改善がみられた。
【0106】
Mr. H.D
Mr. H.D. は、右人工股関節全置換の後リハビリテーション施設に収容されている高血圧および骨関節炎の病歴を有する53歳の男性である。彼は、挙上、圧迫ストッキングおよび逆行性マッサージに難治性の顕著なリンパ浮腫を彼の手術後に経験していた。Mr. H.D. は1日2回経口的にリバスチグミン 1.5 mgを開始した。4 日間の経過の間、圧迫ストッキングの非存在下で膨張の顕著な改善がみられた。彼はリバスチグミンによる治療による病的な副作用を示さなかった。
【0107】
Mr. R.C.
Mr. R.C.は、右全膝置換術の後リハビリテーション病院に収容された高血圧および骨関節炎の病歴を有する62歳の女性である。 彼女の術後経過は疼痛と顕著なリンパ浮腫を合併しており、彼女の膝の屈曲とリハビリテーションは制限されていた。彼女は彼女の以前の病歴に示されるように過敏性腸症候群を患っていた。彼女は1日2回リバスチグミン 1.5 mgを開始した。彼女は3日間以内に改善を示し、彼女のリハビリテーションプログラムをより有効に続けることが可能となり、疼痛および膨張は低下した。
【0108】
Mr. T.F.
Mr. T.F. は、左全膝置換術の病歴を有する63歳の男性であり、術後経過は、抗炎症薬、挙上および圧迫ストッキングにもかかわらず疼痛を伴う慢性膨張を合併していた。ドップラー研究では深部静脈血栓症について陰性であった。Mr. T.F.は毎日経口的にドネペジル 5mgを開始した。1週間の経過の間、彼の下肢リンパ浮腫は改善した。回復の後1ヶ月 後には彼の手術直後の症状に類似の膨張となっていた。彼は経口的にドネペジル 5mgを再開し、7-10 日間にわたって彼の膨張は解消した。
【0109】
Ms. N.R.
Ms. N.R. は、喘息、高血圧および骨関節炎を患う72歳の女性であり、右全膝置換術を経験していた。ハビリテーション施設への収容時、彼女は、麻薬、圧迫ストッキングおよび寒冷療法 (氷)に難治性の疼痛および膨張の愁訴を有していた。患者は1日3回経口的にガランタミン 4mg を開始し、彼女の肺症状の損傷はみられなかった。用量を1日3回経口的に8 mgまで上昇させたところ、彼女の膨張は顕著に改善し、同様に彼女の疼痛は低減した。病院からの退院時にガランタミンを中断した。退院の3日間後、患者の要求によりガランタミンを再開して彼女の膨張および疼痛愁訴を制御した。
【0110】
Mr. Z.T.
Mr. Z.T.は、右全膝置換術の1ヶ月後外来患者 施設に来診した70歳の男性である。患者は圧迫ストッキングおよび挙上にもかかわらず彼の右脚に持続性の膨張を有していた。ドップラー研究では深部静脈血栓症について陰性であった。Mr. Z.T.は1日2回経口的にガランタミン 8mgを1ヶ月与えられ、経過観察された。圧迫ストッキングの使用なしに彼の膨張には顕著な改善がみられた。
【0111】
全関節置換術からのリンパ浮腫を有する全部で 14名のさらなる患者をアセチルコリンエステラーゼ阻害剤で治療したところその膨張に顕著な改善がみられ、関与する四肢の機能も改善した。
【0112】
圧迫ストッキングおよび利尿薬による管理に難治性の下肢の依存的膨張を有する全部で 6名の患者は、利尿薬または圧迫ストッキングの非存在下でアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用により膨張の低下を経験した。
【0113】
有害な副作用の頻度は喘息および過敏性腸症候群の理論的な悪化を含めて観察されなかった。全体の印象は内臓の恒常性機能における改善であった。
【0114】
多発性硬化症
本発明は、副交感神経伝達を改善し、頭蓋仙椎にしばしば分布するM.S.の特徴に打ち勝つために、中枢神経系内のアセチルコリンエステラーゼの相対濃度を上昇させるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を提供する。頭蓋症候には、精神状態変化、情緒不安定および視覚機能障害および眼振が含まれる。外眼性の筋肉を制御する頭蓋神経もまた影響を受ける。頭蓋の関与は明らかな嚥下障害を伴う嚥下問題としても現れうる。副交感神経機能障害の仙椎徴候は腸および膀胱制御に関する。痙性膀胱、尿閉および便秘の症候はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療により軽減し、アセチルコリン濃度が上昇することにより、副交感神経系の神経伝達が促進され、正常な腸および膀胱機能が促される。M.S.の頭蓋仙椎徴候は副交感神経系が関係する神経伝達機能障害に反映され、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療により寛解または治癒しうる。髄鞘/神経の栄養血管(vasovasorum )内の血流の改善はMS 症候の寛解にも有用であると考えられる。中枢神経系の神経の栄養血管(vasovasorum ) の微小血管循環内の血流の改善ならびに炎症性カスケードを妨げるリンパ球活性の調節は、作用機構において重要であると考えられる。
【0115】
Mr. H.N.
Mr. H.N.は、長年にわたる高血圧および多発性硬化症の病歴を有する52歳の男性であり、最近経口ステロイド治療により悪化していた。彼は右側脱力および疼痛の愁訴により歩行できなかった。彼の検査では両側下肢脱力が顕著であった。Mr. H.N.は彼のステロイドを減らして経口的に10 mg プレドニゾンから毎日経口的にドネペジル 5mg に切り替えた。 Mr. H.N.は彼の疼痛愁訴の急速な軽減を報告した。彼の脚の脱力は、彼が平行棒の助けにより移動および直立できるようになるほど改善した。彼は車いすレベルとなって自宅に退院した。回復の1ヶ月後、彼は右手伸筋に持続性の脱力を有し、手背屈装具を装着された。GI 愁訴は無く、彼のドネペジルの用量を毎日経口的に10 mgまで上昇させた。6 週間後の経過観察試験では、重力にさからう関節伸展強度が顕著に回復していた。患者は回復して外来患者となり下肢強度および持久力が改善したためさらに歩行訓練の治療を受けた。
【0116】
Ms. G.L.
Ms. G.L.は、過去20年間多発性硬化症の病歴を有する55歳の女性である。彼女は最近、右よりも左がひどい両側下肢脱力が悪化した。ソルメドロール(登録商標) 1gm を毎日パルスされた後、彼女は治療のためにリハビリテーション病院に収容された。彼女の病院経過は左下肢脱力の上昇が顕著であり、中程度の呼吸困難による咳と痙性膀胱を伴った。Ms. G.L.は1日3回経口的にガランタミン 4mgを開始し、すぐに1日3回経口的に8 mgまで用量設定された。彼女は、主観的および客観的に強度および持久力が上昇した。彼女の呼吸器および膀胱症候も改善した。
【0117】
Mr. C.A.
Mr. C.A. は、多発性硬化症の3年間の病歴を有する47歳の男性である。腰部穿刺と診断され、頭部CTスキャンで特徴的な知見がみられた。彼は両側下肢脱力および疼痛を経験し、歩行運動が失調していた。彼は病歴によると喘息性であったが薬物治療を受けていなかった。彼は1日2回経口的にリバスチグミン 1.5 mgを開始し、喘息性症候またはGI 不耐性の悪化はなかった。用量を問題により1日2回3mgに上昇させた。患者は両側下肢強度および持久力が改善した。彼はまた性行為による勃起機能の回復も示した。
【0118】
Ms. L.G.
Ms. L.G. は、長年の多発性硬化症の病歴を有する肥満の38歳の女性である。彼女の非常に最近の悪化により、3日間IV ソルメドロール(登録商標)による治療を受けており、改善を示した。彼女はハビリテーション施設に移され、左側脱力および左内斜視の愁訴により治療を受けた。Ms. L.G.は、1日3回経口的にガランタミン 4mgを摂取した。用量は良好に耐容性を示した。彼女の用量を1日3回8mgまで上昇させた。彼女は左側脱力の持続性の症候を有していた。彼女は頻回の排便によるGI 不耐性により毎日ドネペジル 5 mg に変更された。用量を毎日ドネペジル 10mgまで上昇させてもGI 耐性が維持された。彼女の強度は2ヶ月にわたって徐々に改善した。彼女の内斜視は解消した。強度の改善は6 ヶ月にわたって維持され、さらに悪化することはなかった。
【0119】
Ms. D.A.
Ms. D.A.は、多発性硬化症の病歴を有する57歳の女性であり、アボネックス(登録商標) (インターフェロンベータ) で治療されていた。CTスキャンは多発性硬化症および神経性疾患の臨床証拠と一致した。患者は遠位近位パターンにて両方の手足に絶え間ない疼痛を感じた。麻薬の使用と組み合わせての抗けいれん薬物療法、ガバペニン、および三環系抗うつ薬の組合せによる疼痛管理は成功しなかった。Ms. D.A. は1日3回経口的にガランタミン 4mgでの療法を開始し、すぐに1日3回経口的に8 mgまで用量設定された。彼女の運動症候は緩和したが、彼女は指腹にて手の疼痛の愁訴を有していた。
【0120】
Ms. S.B.
Ms. S.B.は、5年間の多発性硬化症の病歴を有する32歳の女性である。彼女の症候の現れには腸および膀胱症候を伴う下肢痙縮が含まれた。彼女の腸症候は便秘であり、彼女の膀胱症候は「痙性膀胱」として現れ、ジトパン(Ditopan)(登録商標) (オキシブチニン) で治療された。彼女はアボネックス(登録商標)およびジロトパン(登録商標)による成功が限られていたため鍼治療を受けた。Ms. S.B. は1日3回経口的にガランタミン 4mg を開始した。彼女は2週間後に来診し、彼女の膀胱痙縮の症候に改善が報告された。用量は1日3回経口的に8 mgまで用量設定された。彼女の便秘は軽減し、彼女の膀胱症候も軽減した。下肢痙縮は大幅に軽減した。
【0121】
Ms. J.McF.
Ms. J.McF.は、尿閉、便秘および両手足すべてにおいて脱力を伴う長期の多発性硬化症の病歴を有する73歳の女性である。彼女の脚は彼女の腕よりも重症であった。彼女は外科的固定術を必要とする彼女の右臀部骨折により倒れた後リハビリテーション病院に収容された。収容時、彼女は尿閉によりフォーリーカテーテル留置を有しており、脱力を伴っており、彼女の長期多発性硬化症と一致していた。Ms. J.McF.は1日3回経口的にガランタミン 4 mgを開始した。彼女のフォーリーカテーテルは48 時間後に除かれ、排尿後の残尿は100 cc未満であった。ガランタミンの用量を1日3回経口的に8 mgまで上昇させた。次の2週間にわたって彼女は強度の上昇を示し、彼女は歩行可能となった。彼女は入院前には同施設内で歩行することができなかった。
【0122】
Mr. K.W.
Mr. K.W.は、多発性硬化症の病歴を有する55 歳の男性であり、悪化の結果、両側下肢が脱力し、左が右より重症であった。患者はオールドポリオの病歴を有し、その影響で右脚に部分的下垂側を伴っていた。Mr. K.W. はソルメドロールのパルスによる治療を受けたが、回復は不完全であった。彼は左下肢に持続性の脱力および両側手振戦を有していた。彼の運動症候に加えて、彼は排尿問題を経験しており、尿意逼迫を伴っていた。Mr. K.W.は、最初は1日3回経口的にガランタミン 4mgを開始た。用量を1日3回経口的に8mgまで上昇させたがGIまたは呼吸器合併症は報告されなかった。彼の膀胱症候は解消し、彼は彼の左下肢の強度を獲得し、彼の手振戦は正常になった。Mr. K.W.は4 週間の治療を必要とした。彼は1日2回経口的に8 mgの用量を維持して摂取し、多発性硬化症症候の再発は後に続く3ヶ月にわたってみられなかった。
【0123】
筋筋膜痛疼痛
Ms. C.G.
Ms. C.G. は、狭窄のために頸部除圧術(decompassive laimectomy) の病歴を有する74歳の女性である。彼女の術後期間の間、彼女はNIDDM (非インスリン依存性真性糖尿病)と診断された。彼女は筋弛緩薬、非ステロイド性抗炎症薬、三環系抗うつ薬の使用および麻薬の賢明な使用にもかかわらず、彼女の手術の後持続性の頸部疼痛を有していた。彼女の疼痛愁訴は彼女の手術の後3年以上持続した。彼女の糖尿病は経口血糖降下薬により制御された。Ms. C.G.は、毎日経口的にドネペジル 5mgを摂取した。1ヶ月後彼女は彼女の頸部の疼痛愁訴の低下を報告した。彼女の術後筋筋膜性疼痛愁訴は、麻薬または非ステロイド性抗炎症薬 (NSAID)を使用せず制御された。
【0124】
Ms. R.W.
Ms. R.W.は、慢性胸腹腰部脊椎疼痛のために側弯症手術の病歴を有する80歳の女性である。彼女の椎弓切除術および癒着の後、彼女は手術後1年以上たっても腰仙部疼痛愁訴を示した。Ms. R.W.は毎日経口的にドネペジル 5mg を開始し、彼女の背部疼痛愁訴の改善を報告した。彼女には悪心または下痢はなかった。彼女は薬物療法に良好に耐容性を示し、彼女の背部疼痛の悪化は報告されなかった。
【0125】
Mr. M.F.
Mr. M.F.は、病的肥満およびTKR (全膝置換術) の後の感染症による右膝上切断術の病歴を有する48歳の男性である。Mr. M.F. は彼の切断術の後、頸部および低背部に持続性の疼痛愁訴を有しており、麻薬および鍼治療で治療された。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID) の使用は腎不全および高血圧の悪化のために制限されていた。Mr. M.F. は体重が100 ポンドを超える彼の病的肥満の管理のために胃バイパスを受けた。彼は彼の背部および頸部に持続性の筋筋膜性疼痛愁訴を有していた。彼は1日2回経口的にリバスチグミン 1.5 mgでの療法を開始し、彼の疼痛はよく制御された。彼は4ヶ月以上この用量を維持し、有害な副作用はなかった。
【0126】
Ms. U.G.
Mr. U.G. は、TKR (全膝置換術)を伴う骨関節炎の病歴を有する66歳の女性であり、彼女の膝置換術手術の6ヶ月後、腰仙部疼痛および彼女の膝腱の筋痙攣の愁訴により外来患者部門に来診した。彼女の背部疼痛愁訴は神経根症の脊椎症のパターンとは違っていた。 Ms. U.G. は、毎日ドネペジル 5 mgを開始した。彼女の疼痛愁訴は4週間にわたり顕著に低減した。彼女はこの薬物療法を3ヶ月続け、筋痙攣は再発しなかった。
【0127】
神経因性疼痛
本発明は、機械的、化学的または放射能関連の外傷に起因する神経因性疼痛の治療方法を提供する。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用は、副交感神経系の神経伝達物質であるアセチルコリンの相対濃度を上昇させる。副交感神経系への神経入力を促進することにより、神経因性疼痛のやっかいな症候は軽減するか、または顕著に減少する。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は神経筋接合部にも存在するが、アセチルコリンの分解速度はより迅速であり、それゆえ効果はアセチルコリンの分解がより遅い副交感神経系において顕著であり、より原始的な神経系(副交感)における神経伝達の上昇が可能となる。神経因性疼痛に対する疼痛愁訴は、外傷、放射能、線維症、または虚血による栄養血管(vasovasorum )への血液供給の損傷に理論的基礎を有する。この疼痛症状のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤による管理は、神経の栄養血管(vasovasorum )の微小血管循環内の血流を改善し、正常機能の回復および疼痛症候の減少を助ける。神経鞘の微小血管循環の血管拡張工程は、血管内膜内の神経性および非神経性アセチルコリン受容体の刺激により起こる。
【0128】
神経因性疼痛のもっとも極端な例は、神経が完全に切断される切断術の後に起こる。疼痛愁訴は抗発作薬、三環系抗うつ薬および麻薬の通常の組合せによっては管理が困難である。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用は侵害感覚の源に取り組む。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用における律速段階は典型的には胃腸耐性である。この問題は、悪心/嘔吐または排便回数増加のためのレグラン(登録商標) (メトクロプラミド) による治療によって通常管理される。
【0129】
上記より一般的でない形態の神経因性疼痛はRSD (反射性交感神経性ジストロフィー )と称される。RSD 症候群は過去においては交感神経に媒介されると説明されていた。疾患の経過は異なるように反映される。まず、個人は様々な重篤度の四肢に対する傷害を有し、その結果、疼痛愁訴により機能が失陥し、遠位から近位分布において四肢の紅斑および膨張が伴うようになる。報告される疼痛症候には「灼熱」痛および接触に対する過敏症が含まれる。 疾患の進行により、関節の萎縮症、骨減少症および関節線維症が起こる。疾患の経過は過去においては「交感神経性機能障害」であると説明されていた関与する四肢への副交感神経入力の欠損を反映する。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療はアセチルコリンの利用可能濃度を上昇させ、それによって疾患の進行を防ぎ、随伴する疼痛愁訴を軽減する。
【0130】
Mr. R.F.
Mr. R.F. は、腫瘍による左膝上切断術の病歴を有する62歳の男性であり、右回旋筋腱板裂傷術後状態(s/p)修復を伴っている。Mr. R.F.は境界病的肥満および高血圧を有していた。彼は彼の切断術の結果として疼痛を経験しており、不眠の問題の原因となる「幻肢痛」と一致していた。Mr. R.F.は1日3回経口的にガランタミン 4mgを開始した。彼は有害な副作用を経験せず、用量を同じ投薬スケジュールで経口的に8 mgに上昇させたところ彼の疼痛制御に劇的な改善がみられた。彼は非ステロイド性抗炎症薬および麻薬を中断することができた。彼の睡眠様式も同様に改善した。
【0131】
Mr. S.S.
Mr. S.S.は、労働災害による外傷性右下腿切断術の病歴を有する45歳の男性である。彼は彼の切断術から2年以上、ガバペンチン、三環系抗うつ薬および長時間および短時間作用性麻薬による管理にもかかわらず持続性の幻肢痛を有していた。Mr. S.S.は1日3回経口的にガランタミン 4mgの試験を受けた。彼は報告された息切れにより彼の薬物療法の使用を中断しなければならなかった。 Mr. S.S.は彼の幻肢痛の管理を試みるために薬物療法試験を行うため病院に収容された。彼は毎日経口的に10 mgの用量のプレドニゾンを与えられ、毎日ドネペジル 5 mgを開始した。彼は薬物療法に耐容性を示し、悪心および嘔吐はなかった。彼は次いで食前にレグラン(登録商標) (metrocopramide) 5 mgを摂取し、プレドニゾンは減らしてやめた。彼の幻肢痛は良好に制御された。彼は息切れまたは有害な GI 副作用を経験しなかった。
【0132】
Ms. C.S.
Ms. C.S.は、 脛骨腓骨(tibia-fibula) 骨折の癒着不能の後の合併症による右下腿切断術の病歴を有する59歳の女性である。彼女の「幻肢痛」制御はガバペンチンおよび三環系抗うつ薬と組み合わせての長時間および短時間作用性麻薬の組合せによる2年の期間にわたる治療ではよく管理されなかった。Ms. C.S. は1日3回経口的にガランタミン 4 mgを開始し、有意な改善を示した。1日3回8 mgまで用量を上昇させると、彼女は下痢症候を経験した。彼女は彼女は最初の投薬により得ることができた軽減に満足していた。
【0133】
Mr. R.R.
Mr. R.R. は、軟組織傷害およびショパール関節離断を必要とする彼の右脚骨折を伴う労働災害により損傷を受けた34歳の男性である。彼の疼痛はガバペンチン、トラザドンおよび長時間および短時間作用性麻薬の組合せによってはあまりよく管理されなかった。2年後彼は幻肢痛を経験したままであり、日常的に麻薬を必要とした。Mr. R.R.は1日2回経口的にリバスチグミン 1.5 mgを開始し、彼の疼痛の有意な改善を報告した。彼の用量を1日2回3 mgまで上昇させたところ彼の疼痛はほとんど完全に解消した。彼はすべての麻薬疼痛薬物療法ならびにガバペンチンおよびトラザドンを中断した。
【0134】
Mr. R.P.
Mr. R.P. は、右全膝置換術術後状態、骨関節炎の病歴を有する76歳の男性である。彼の術後経過は感染症を合併しており、膝上切断術が必要であった。彼はDIC (播種性血管内凝固)からの合併症により対側の四肢の膝上切断術を受けた。彼は麻薬、ガバペンチン、および三環系抗うつ薬による2年間にわたる治療にもかかわらず「幻肢痛」および不快感を経験した。 Mr. R.P.は毎日経口的にドネペジル 5mgを摂取した。2週間後彼のジュラゲシック (登録商標) (フェンタニル) パッチの用量は1時間当たり50から25 mgに低下した。彼は1週間後25 mg ジュラゲシック(登録商標) パッチを中断することができた。彼は時折の疼痛悪化のためにヒドロコドン製剤を使用し続けたが、彼の「幻肢痛」の管理のための長時間作用性麻薬による「多剤療法」は必要ではなくなった。
【0135】
Mr. S.S.
Mr. S.S.は、歩行時の交通事故の病歴を有する24 歳の男性であり以下の傷害を有していた; 顎顔面外傷、筋区画症候群筋膜切開術を伴う右脛骨腓骨骨折および左下肢骨折および膝上切断術が必要となるほど重篤な軟組織傷害。 Mr. S.S. は彼の膝上切断術に関して顕著な疼痛問題を有しており、疼痛制御のために、1日3回経口的に20 mgの範囲のオキシコンチン(登録商標)、4時間毎に2錠のパーコセット(登録商標) 5/325の投与が必要であった。Mr. S.S.は1日3回経口的にガランタミン 4 mgを摂取し1日3回8 mgまで用量設定された。患者はヒドロコドンの使用をやめることができた。
【0136】
Mr. W.D.
Mr. W.D. は、仕事中に傷害を受けた52歳の男性建設作業員であり右鎖骨骨折、右半胸郭の複数の肋骨骨折、軟組織傷害およびそれに伴う両側脚の長骨骨折の傷害を有しており、右膝上切断術および左下腿切断術が必要であった。彼の病院経過は、呼吸困難および彼の傷害に伴う幻肢痛が顕著であった。Mr. W.D.は、1日2回経口的にガランタミン 4mgを開始し、1日3回経口的に8 mgまで用量設定された。彼の麻薬、抗炎症薬療法およびガバペンチンの使用は完全に排除された。彼はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用により呼吸器機能障害を患わなかった。
【0137】
Ms. G.C.
Ms. G.C.は、労働災害の結果として外傷性右下腿肘切断術の病歴を有する28歳の女性である。彼女は就寝時にロラゼパム 0.5mgによる治療を受けていたが、彼女の幻肢痛の改善は制限されていた。彼女は以前に三環系抗うつ薬、ガバペンチンおよび麻薬で治療を受けていたが、あまり成功しなかった。Ms. G.C. は、リバスチグミンの試験投与を受け、薬物療法投与の後1時間以内に彼女の幻肢痛は顕著な改善を示した。彼女は翌月にわたって1日2回経口的にリバスチグミン 1.5 mgを与えられ、彼女の幻肢痛は良好に制御された。
【0138】
Mr. R.T.
Mr. R.T. は抗発作薬、三環系抗うつ薬および麻薬による管理に難治性の彼の左親指における慢性神経因性疼痛の病歴を有する61歳の男性である。彼は腰部椎弓切除術を受けたが、左脚の神経因性疼痛愁訴は続き、同じ分布パターンで対側の脚に同様の性質の新しい疼痛愁訴が発生した。Mr. R.T. は1日3回経口的にガランタミン 4 mg を開始し、いくらか改善した。彼のフレキセリル(登録商標)は中断され、ガランタミンの用量は1日3回経口的に8 mgに増やされた。彼は依然として時折の麻薬疼痛薬物療法を必要としたが、彼の全体的な疼痛制御は顕著に改善し、有害な副作用はなかった。
【0139】
Ms. K.McC.
Ms. K.McC.は、2001年に腰部椎弓切除術、次いで左半身麻痺を伴う右脳血管障害の病歴を有する62歳の女性である。彼女は、抗発作薬、三環系抗うつ薬および麻薬に難治性の彼女の左親指における「灼熱」痛を有していた。彼女の左脚疼痛および線維筋痛症は彼女の発作の後の主な愁訴であった。Ms. K.McC. は1日2回経口的にリバスチグミン 1.5 mg を開始し、彼女の疼痛愁訴は改善した。用量を1日2回3 mgにまで上昇させた。彼女の左親指の灼熱痛は顕著に改善し、彼女の左肩部の彼女の線維筋痛症も同様であった。患者は彼女の IBS (過敏性腸症候群)の有意な改善にも気づいた。
【0140】
Mr. R.P.
Mr. R.P. は、18歳の時にオートバイ事故により左上腕神経叢傷害を受けた25歳の男性である。彼は彼の左手に異常感覚を報告し、運動機能が制限されていた。彼は「不安発作」を患っており、アルプラゾラム (ザナックス(登録商標)) で治療されていた。Mr. R.P. は、1日3回経口的にガランタミン 4mgを開始したところ、すぐに彼の左腕および手の彼の疼痛愁訴は改善した。用量を1日2回8 mgの用量に上昇させて維持し、彼の症候の良好な制御、および、親指と人差し指とで指先でつまむ運動にわずかな改善がみられた。患者は不安発作の頻度の低下を報告した。
【0141】
Mr. B.E.
Mr. B.E. は、CAD (冠動脈疾患) の病歴を有する58歳の男性であり、落下による腕の軽傷の後左肩部および手疼痛の愁訴を有していた。X線によると骨折ではなかった。 MRIスキャンでは慢性回旋筋腱板裂傷が示され、急性変化はなかった。Mr. B.E. の愁訴は4ヶ月以上持続した。彼の検査は反射性交感神経性ジストロフィー(RSD) と一致した。彼は臨床検査に不釣合な苦痛を受け、肘、手首および指に他動的関節可動域の疼痛愁訴を有していた。手首と指には瀰漫性膨張があり、穏やかな紅斑が伴っていた。リウマチ学研究は陰性であった。Mr. B.E. は毎日経口的にドネペジル mgを開始した。彼の 1ヶ月 経過観察では可動域の改善が明らかとなり、痛覚過敏は低下した。手首と指の膨張は減少した。患者は同じ薬物療法を翌月も続けた。彼の疼痛愁訴は劇的に改善し、彼の身体所見も同様であった。
【0142】
Mr. R.T.
Mr. R.T.は、左大腿頸部骨折および左遠位橈骨骨折が顕著な労働災害の病歴を有する53歳の男性である。両方の傷害は外科的固定術で治療された。整形管理の後、患者はケアのためにリハビリテーション施設に移された。彼のリハビリテーション経過は、傷害の重篤度には見合わない疼痛が顕著であった。3-6 ヶ月の経過の間、患者は左下肢に浮腫を発症し、接触に対する過敏症を示し初期RSD (反射性交感神経性ジストロフィー ) と一致した。彼の症状は悪化して、彼は歩行不能となり、骨折治癒の放射線学的証拠にもかかわらず脚に負荷をかけることができなかった。患者は彼の傷害の後9ヶ月以上、RSDの典型的初期特徴を示した。Mr. R.T.は、1日2回経口的に1週間リバスチグミン 1.5 mgを開始した。GIまたは呼吸器愁訴はなく、用量を1日2回3 mgまで上昇させた。2週間の経過の間、彼の疼痛は顕著に改善し、麻薬の必要性は低下した。彼は負荷をかけることができるようになり、彼の事故の後初めて補助装置により歩行することができるようになった。
【0143】
Ms. H.E.
Ms. H.E. は、彼女の利き手である右手の正中神経に分布する夜間疼痛と知覚異常の病歴を有する53歳の女性である。リウマチ学研究では結合組織障害について陰性であった。副腎皮質ステロイドの短い経過の夜間スプリントの試験は成功しなかった。EMG/NCSは、手根管症候群の臨床所見と一致した。Ms. H.E.は、1日2回経口的にリバスチグミン 1.5 mgを与えられた。彼女は48時間以内に彼女の症候の改善を感じた。静止期手スプリントを中断したが症候は回復しなかった。彼女は薬物療法を1ヶ月続けたが症候の問題や再発があった。彼女は毎日の薬物療法を中断することができ、次の4 ヶ月にわたって必要な場合に間欠性症候を制御することができた。
【0144】
Mr. M.N.
Mr. M.N.は、骨肉腫のために右片側骨盤切断手術の後、リハビリテーション施設に収容された64歳の男性である。彼の術後経過は手術性および「幻肢」性の両方の和らぐことのない疼痛が顕著であった。手術の後、彼は1日3回オキシコンチン(登録商標) 20 mg、突出痛のためパーコセット(登録商標)、ガバペニン、プレドニゾンおよび三環系抗うつ薬を与えられた。患者は常に疼痛ならびに麻薬およびステロイドによる重篤な便秘を報告し、外痔核が生じた。Mr. M.N. は1日3回経口的にガランタミン 4 mg を与えられ、用量はすぐに疼痛が軽減するまで効果を発揮するよう用量設定により増やされた。彼のオキシコンチン(登録商標)の用量は1日2回経口的に10 mgまで用量設定により減らされた。この期間の間、ステロイドの用量は減らされ、その後中断された。疼痛制御に有効であるために必要な最終的なガランタミンの用量は1日4回 8 mg であった(最大用量)。彼の腸機能は回復し、痔核は解消した。次の2週間の経過の間ガランタミンの用量は毎日経口的に1日3回8 mgに減らされ、オキシコンチン(登録商標)の用量は0となった。患者は時折疼痛悪化のために短時間作用性麻薬の投与を必要とした。
【0145】
Ms. J.J.
Ms. J.J.は、左下肢神経因性疼痛およびそれに伴う麻薬、抗発作薬療法および三環系抗うつ薬での「疼痛管理」に難治性の背部疼痛を有する前側/後側癒着の後リハビリテーション施設に収容された70 歳の女性である。病院への収容時、彼女の薬物療法には就寝時250 mgのトラザドン、75 mcg/時間のフェンタニル(登録商標)パッチおよび1日2回30 mgのレストリル(登録商標)が含まれていた。患者は僅かに頭が混乱しており彼女の左脚と背部に重篤な神経疼痛を訴え、深刻な尿閉を有することが判明した。彼女のトラザドンの用量は用量設定により減らされ4日間かけて完全に中断された。彼女のレストリル(登録商標)も中断し、患者は1日2回0.5 mgおよび就寝時に1mg 経口的にアチヴァン(登録商標)を摂取した。フェンタニル(登録商標) パッチは4 日間かけて25 mcg/時間に減らされた。これら薬物療法変化の経過の間、患者は1日3回経口的にガランタミン 4 mgを開始した。患者は彼女の左脚の疼痛の中断を報告し、背部の疼痛愁訴はわずかとなった。彼女の精神状態は劇的に改善され、フォーリーカテーテルは除かれ、正常な排尿後の残尿であった。背部大手術の後の老人患者の非常に困難な術後管理状況がガランタミンの使用により可能となった。
【0146】
Ms. A.R.
Ms. A.R. は、腎臓動脈狭窄、高血圧、異常リポ蛋白血症の病歴を有する72 歳の女性であり、神経因性跛行両脚による脊髄狭窄の精密検査の後、リハビリテーション病院に収容された。収容時、彼女は麻薬、抗発作薬および三環系抗うつ薬による組合せ管理に難治性の疼痛を訴えた。 Ms. A.R. は1日3回経口的にガランタミン 4 mgを与えられた。彼女は彼女の疼痛愁訴にすぐに改善を感じた。用量を1日2回経口的に8 mgに上昇させた。彼女が感じた残存する不快感は最小限であった。用量を1日3回に上昇させると彼女は排便回数増加を報告した。彼女は1日2回経口的にレグラン(登録商標) (メトクロプラミド) 5 mgを症候の制御のために与えられた。患者は彼女の疼痛の軽減に非常に満足しており、アルツハイマー病の治療薬を摂取しているという悪印象を気にしなかった。
【0147】
本明細書に提供する神経因性疼痛症例の病歴を有する17名の患者に加えてさらに18名の神経因性疼痛患者がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤で治療され、結果は成功であった。成功しなかった結果はなかった。
【0148】
多発性神経障害
本発明はさらに、上肢および下肢の両方の切断術の後の幻肢痛の治療方法を提供する。「幻肢痛」は、上肢または下肢のいずれかの切断術の後に示される現象である。感覚は切断術の後一般的であり、様々な程度の不快感と衰弱が存在する。幻肢痛を有する患者は典型的には抗うつ薬、ニューロンチン(登録商標) (ガバペニナンド)、麻薬で様々な程度で治療される。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用は麻薬の必要性を低下させ、多剤療法の必要性を一般に排除し、疼痛を改善し、創傷治癒を促進し、切断患者の睡眠様式を改善する。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の用量は、腸運動の一貫性と頻度が決定因子であるGI (胃腸) 耐性が得られるまで用量設定される。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療は、不快感のために幻肢痛の侵害症候の原因であるようである副交感神経系の活性化に必要な神経伝達物質である利用可能なアセチルコリンを上昇させる。本発明は、上肢または下肢のいずれかの切断術に伴う幻肢痛の治療方法を提供する。
【0149】
Mr. C.R.
Mr. C.R.は、オートバイ事故による外傷性左下腿切断術 BKAの病歴を有する43歳の男性である。彼の事故の8年以上後、彼の左 BKAの幻肢痛は持続性の問題であり、毎週麻薬が必要であった。彼は、彼の幻肢四肢疼痛に随伴する悪化する慢性背部疼痛を有していた。患者は1日2回 (BID) ガランタミン 8 mgを開始し、次いで1日3回(TID) 8 mgに上昇させ、ほぼ完全に彼の疼痛は解消した。
【0150】
Ms. C.L.
Ms. C.L.は、 SLE (狼瘡)による末梢血管疾患 (PVD) の病歴を有する61歳の女性である。彼女は壊疽により右下腿切断術 (BKA)を受けた。患者はガバペンチンおよび三環系抗うつ薬による治療にもかかわらず持続性の幻肢痛を有していた。患者は麻薬によりわずかに改善したが、認知機能障害によりその使用は制限されていた。患者は毎日ドネペジル 5 mgを開始し、幻肢不快感は劇的に改善したが悪心を経験した。彼女はレグラン(登録商標)(メトクロプラミド)による治療を受け、ドネペジルによる治療を続けることができた。
【0151】
Mr. D.D.
Mr. D.D.は、喫煙により血管疾患の病歴を有する67歳の男性である。彼は右 AKA (膝上切断術)を受けた。彼の術後経過は幻肢四肢不快感が顕著であり、それは麻薬にのみ応答した。しかし、麻薬により衰弱し、嗜眠と認知機能障害が生じた。Mr. D.D. はガバペンチンと三環系抗うつ薬をの試験与えられたが成功しなかった。彼は毎日ドネペジル 5 mgによる治療を受け、彼の疼痛制御は迅速に改善した。
【0152】
Ms. I.A.
Ms. I.A. は、慢性低背部疼痛および糖尿病の病歴を有する54歳の女性であり、画像研究では椎間板ヘルニアまたは狭窄は示唆されなかった。彼女の疼痛は麻薬、非ステロイド性抗炎症薬または三環系抗うつ薬による管理には難治性であった。患者は1日3回経口的にガランタミン 4 mgを摂取し、彼女の疼痛および睡眠様式は顕著に改善した。彼女の用量を1日3回経口的に8mgまで上昇させたところ、彼女の疼痛愁訴は完全に解消した。
【0153】
Mr. R.H.
Mr. R.H.は、末梢血管疾患からの壊疽による右下腿切断術 (BKA) の病歴を有する54歳の男性であり、彼の左下肢にも同様の血管損傷があり、脛骨前部潰瘍が含まれた。彼の主な愁訴は右 BKA 部位の幻肢痛であり、オキシコンチン(登録商標)、三環系抗うつ薬およびガバペンチンに難治性の膝腱の攣縮を伴っていた。Mr. R.H. は、毎日ドネペジル 5 mg を3週間摂取した。彼の幻肢痛は減少して、彼はオキシコチン(登録商標)を必要としなくなった。彼は補綴の装着に伴う右 BKAにおける機械的疼痛のためにヒドロコドンの時折の使用を続けた。
【0154】
Mr. R.T.
Mr. R.T.は、血液学により判定して過凝固状態による右膝上切断術 AKAの病歴を有する52歳の男性である。彼の幻肢痛愁訴は三環系抗うつ薬、ガバペンチン、パーコセット(登録商標)およびメサドンによる管理には難治性であった。彼は1日2回2週間のガランタミン 8 mgの試験を受けた。彼はこの治療に応答し、彼のオキシコドン(登録商標)/APAPの使用は5 錠/日から2-3 錠/週に低下した。
【0155】
Mr. H.F.
Mr. H. F. は労働災害における左膝上切断術 (AKA)を有していた。1日3回オキシコンチン(登録商標) 20 mg、および4時間毎に 4 mg POのジルヅジド(登録商標) (ヒドロモルホネ)による2ヶ月の治療の後、治療用量でのトラザドン(登録商標)およびガバペンチンによる併用治療にもかかわらず軽減はみられなかった。患者は以前に糖尿病または多発性神経障害の病歴は有していなかった。Mr. H.F.は、1日2回ガランタミン 4 mgによる治療を受け、1日4回4 mgまで用量設定されたが、悪心/嘔吐またはGI 不調は無かった。彼の麻薬の使用はすぐに中断し、1日2回POでのオキシコンチン(登録商標) 10 mg は顕著にパーコセット(登録商標)の使用をPRN (必要な場合)まで低下させた。患者は睡眠の改善とエネルギーの上昇を報告し続けた。患者は彼が以前に経験した疼痛性神経因性疼痛または幻肢の不快感を再発しなかった。
【0156】
Mr. M.F.
Mr. M.F.は、歩行中の自動車事故のために外傷性右膝上切断術 (AKA)を有する若い男性であった。患者の疼痛制御の最初の試みとして治療用量における三環系抗うつ薬およびガバペンチンによる標準的治療を用いたが、長時間および短時間作用性の寛大な麻薬の使用にもかかわらず成功しなかった。三環系抗うつ薬(トラザドン)、および麻薬(オキシコンチン(登録商標) 10 mg 1日3回およびPRN ペロセット(登録商標))からなる従来型の疼痛管理の2ヶ月後でも、患者は顕著な疼痛を示した。患者は1日4回ガランタミン 4 mgを摂取し、睡眠様式が改善し、完全に長時間作用性麻薬(オキシコンチン(登録商標))が中断でき、薬物療法 (パーコセット(登録商標) 2-3/日)の使用もPRNに制限できた。
【0157】
Mr. T.F.
Mr. T.F.は、労働災害において肘に重篤である彼の左腕に傷害を受けた。患者は、疼痛管理の6ヶ月後、成功しなかったことを報告した。試験には、ガバペンチン、三環系抗うつ薬および麻薬が含まれていた。患者は最初の診察によりニューロンチン/トラザドンおよびPRN 麻薬の標準的療法を受けた。6 週間後、患者は幻肢不快感が改善しないことを報告した。Mr. T.F. は1日4回ガランタミン 4 mg を与えられると睡眠および幻肢痛症候が劇的に改善した。用量を1日3回8 mgまで上昇させたが副作用または彼の疼痛症候の再発はなかった。
【0158】
Mr. T.C
Mr. T.C.は、 AODM (成人発生真性糖尿病)、高血圧、壊疽による左膝上切断術後の末梢血管疾患状態の病歴を有する78歳の男性である。彼の疼痛をガバペンチン、三環系抗うつ薬、および麻薬で制御する試みは成功しなかった。彼は毎日ドネペジル 5 mgを摂取した。悪心および嘔吐の愁訴は低下した。GI 症候がレグラン(登録商標) (メトクロプラミド) による治療により報告された。ドネペジル治療を再開すると脚不快感が顕著に改善した。
【0159】
Ms. S.J.
Ms. S .J. は、右下腿切断術 (BKA) 後の単独PVD状態の病歴を有する80歳の女性である。彼女は、ガバペンチン、三環系抗うつ薬、および麻薬による積極的な治療にもかかわらず幻肢不快感を経験した。彼女の症候は切断術の後3 年間持続した。患者は毎日ドネペジル5 mgによる治療を開始した。彼女は幻肢不快感のかなりの改善および睡眠の改善を報告し、悪心および嘔吐は無かった。彼女はその他のすべての対症薬物療法を中断した。次の 9 ヶ月の治療にわたって彼女の対側の四肢における血行不全の症候は無かった。
【0160】
尿閉
本発明は、膀胱および自律性括約筋を制御する脊髄の仙椎部分の仙髄部分における排尿中枢への副交感神経入力の増強を介する男性および女性患者の尿閉の治療を提供する。排尿には副交感神経制御と交感神経制御の両方が関与する。副交感神経は第2、3および4仙椎根から生じて、膀胱筋肉 (排尿筋)および後部尿道弁に至る。交感神経支配は腰部内臓神経から生じて膀胱頸部および近位尿道に至り、禁欲(continence)を維持する。非神経性アセチルコリン受容体は膀胱に位置し、かかる受容体のコリンエステラーゼ活性はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療に非常に感受性であり、排尿筋肉の収縮を保持させ、膀胱内の緊張を上昇させる。排尿は随意作用であり、膀胱体積が400-500 ccに近づくと通常開始する作用である。仙椎反射中枢の活性化により、近位尿道および会陰筋肉がまず弛緩し、次いで膀胱収縮 (排尿筋)が起こり、その結果尿が膀胱から排出される。正常の状況では、排尿後の残尿は100 cc未満である。うっ滞による感染症および膀胱尿管(cystoureteral) 接合部での正常な解剖学の変化による逆流が寄与する。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の投与は副交感緊張を高め、近位尿道を弛緩させ、排尿筋肉の適切な筋肉収縮をもたらし、正常な排尿をおこし、排尿後の残尿を許容範囲に維持する。
【0161】
Mr. W.B.
Mr. W.B.は、喫煙による末梢血管疾患を患う67歳の男性であり、下腿切断術を受けており、救命医療神経障害の診断および体調不良による長期病気期間の後、リハビリテーション病院に収容された。彼は良性前立腺肥大のためのアルファ遮断薬の使用にもかかわらず彼の膀胱から有効に排尿することが出来なかった。Mr. W.B.は毎日経口的にドネペジル 5mg を開始し、48時間後にフォーリーカテーテル留置を除去した。彼は偶発でなく排尿することができた。彼の排尿後の残尿は一貫して100 cc未満であった。彼には薬物療法の使用による有害な副作用は無かった。
【0162】
Mr. W.F.
Mr. W.F. は、除圧性腰部椎弓切除術L4-S1の後リハビリテーション病院に収容された61歳の男性である。Mr. W.F.は良性前立腺肥大の既存の病歴があり、ハイトリン(登録商標)就寝時5 mg で治療されていた。彼は150〜200 ccの範囲の排尿後の残尿を有することを感じた。Mr. W.F.は1日3回経口的にガランタミン 4 mgを開始した。彼の PVRは一貫して100 cc以下となった。用量を1日2回経口的に8 mgに上昇させるとPVRの範囲は50 ccとなった。彼には有害な副作用は無かった。
【0163】
Ms. M.P.
Ms. M.P.は、待機的右全膝置換術の後の骨関節炎状態の病歴を有する72歳の女性である。彼女は彼女の手術の後にリハビリテーション病院に収容され、フォーリーカテーテル留置を有していた。彼女が便所に比較的容易に行くことができるようになった際に、フォーリーカテーテルを中断し、患者は排尿を試みた。彼女は尿閉を経験し、排尿後の残尿(PVR)は300 ccを超えていた。フォーリーカテーテルを再挿入し、患者は毎日経口的にドネペジル 5mgで48時間治療された。2回目の排尿の試みは成功し、膀胱体積は100 ccを下回った。
【0164】
Ms. L.R.
Ms. L.R. は、除圧性椎弓切除術および癒着の後リハビリテーション施設に収容された70歳の女性である。施設に到着した際、彼女は留置カテーテルを有していた。Ms. L.R.は「排尿困難」の既存の病歴を有していた。彼女がある程度容易に便所に行くことができた時、彼女は排尿を試みた。彼女の最初の試みは成功せず、カテーテルの再挿入を必要とした。Ms. L.R. は彼女の最初の試みから1週間以内の2回目の試みに失敗した。彼女は毎日経口的にドネペジル 5mgはを与えられ、24 時間後、3回目の排尿の試みを行った。ドネペジルによる治療の後、 彼女は排尿後の残尿を50 cc の範囲に維持することができ、失禁の症候はなかった。ドネペジル投与の1週間未満の後、彼女は排便回数増加を開始した。彼女は彼女の GI 愁訴の解決のために食前および眠前にレグラン(登録商標) 5mgを摂取した。Ms. L.R.は緊急(urgency)または失禁の症候を報告しなかった。
【0165】
Ms. E.G.
Ms. E.G.は、両側下肢切断術、高血圧および非インスリン依存性真性糖尿病を患う68歳の女性である。彼女は慢性尿閉を患っておりフォーリーカテーテル留置が必要であった。彼女は便所に行くことができたが排尿を開始することができなかった。Ms. E.G. は、毎日経口的にドネペジル 5mgを開始した。彼女の排尿後の残尿体積は50 cc未満となった。彼女の薬物療法による主な愁訴は多尿であり、皮膚解離を避けるために成人用おむつが必要であった。 Ms. E.G.は、彼女の排尿頻度を低減させるために毎日経口的にデトロール LA(登録商標) 2 mgを摂取し、同時にPVR (排尿後の残尿)は一貫して100 cc未満となった。
【0166】
Mr. R.G.
Mr. R.G.は、右下腿切断術、真性糖尿病、末梢血管疾患の病歴を有する64歳の男性であり、血行不全のための親指開放切断術の後リハビリテーション施設に収容された。彼の術後経過は尿閉を合併しており排尿後の残尿は尿300 ccを超えた。フォーリーカテーテル留置を挿入して膀胱を72 時間除圧し、その間彼はフロマックス(登録商標) 0.4 mgによる治療を受けた。彼の1回目の排尿の試みは成功せず、カテーテルを再挿入した。フロマックス(登録商標)の用量を0.8 mgまで上昇させ、その間膀胱は除圧し続けた。2回目の排尿の試みも成功しなかった。フロマックス (登録商標)を中断し、患者は毎日経口的にドネペジル 5mg による治療を受けた。3回目の排尿の試みは成功し、排尿後の残尿は50 ccの範囲であった。患者はGIまたは呼吸器系の有害効果を受けなかった。
【0167】
Mr. R.A.
Mr. R.A. は、真性糖尿病に起因する血行不全による右下腿切断術の病歴を有する76歳の男性である。リハビリテーション施設への収容時、彼は排尿後の残尿が400 ccを超えたため膀胱除圧のために留置カテーテルを挿入された。患者が容易に便所にいけるようになったとき、彼は排尿の試みを行ったが、成功せず、フォーリーカテーテルの再挿入を必要とした。Mr. R.A.は毎日経口的にドネペジル 5mgを開始し、48 時間後2回目の排尿の試みを行った。毎日ドネペジル 5 mgの投与の後彼の2回目の排尿の試みは成功し、排尿後の膀胱体積は100 cc未満であった。患者は呼吸器またはGIの有害な副作用を報告しなかった。
【0168】
Ms. C.J.
Ms. C.J. は、右全膝置換術 (TKR)の術後(s/p)の骨関節炎の病歴を有する80歳の女性である。彼女の術後経過には尿閉が合併しており留置カテーテルが必要であった。彼女の 1回目の排尿の試みは成功せず排尿後の残尿は400 ccの範囲であった。フォーリーカテーテルを再挿入した。Ms. C.J. は毎日経口的にドネペジル 5mgを48 時間開始した。2回目の排尿の試みは成功し、排尿後の膀胱体積は80 cc未満であった。患者は緊急または頻度の症候を経験しなかたった。
【0169】
Ms. A.M.L.
Ms. A.M.L.は、真性糖尿病、高血圧、および背部および脚疼痛の病歴を有する36歳のジャマイカの女性である。彼女はMRI スキャンを受けたが、脊髄狭窄、脊椎症、および髄核ヘルニアについては陰性であった。彼女はリハビリテーション施設に収容され、常の絶え間ない疼痛を管理された。収容時、患者は30 mg のオキシコンチン(登録商標)を1日3回摂取した。Ms. A.M.L. は1日3回経口的にガランタミン 4 mgを開始し、彼女の疼痛愁訴は改善した。彼女は穏やかな悪心を訴えた(嘔吐はしなかった)。彼女は食前および眠前にレグラン(登録商標)による治療を受けたところ、迅速に彼女の GI 愁訴は軽減した。ガランタミンの用量を1日3回経口的に8 mgまで上昇させた。患者は容易に麻薬をやめることができ、退院時にはオキシコンチン(登録商標)は完全に中断でき、彼女は疼痛症候の管理のために時折のヒドロコドンを用いた。
【0170】
本明細書に提供する尿閉症例についての9名の患者病歴に加えて、さらに3名の尿閉患者がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤で治療され、結果は成功であった。成功しなかった結果は無かった。
【0171】
血行不全
本発明は、末梢血管疾患の医学的管理方法を提供する。末梢血管疾患のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤による管理は脚の血管灌流における中心的なジレンマに取り組む。アセチルコリンの相対濃度を上昇させることにより、副交感神経系が改善され、小終細動脈の弛緩により組織レベルでの血流が改善し、灌流が改善し、それゆえ血管浮腫が低下し、栄養性潰瘍の解消が促進され、休息痛と跛行の愁訴が軽減する。副交感神経系は小細動脈における血管床を制御し、利用可能なアセチルコリンを上昇させることによって、拡張が起こり、血流が改善する。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療により、結果として血管血液供給が改善し、小細動脈レベルでのうっ血が低下し、血液供給が改善される。これは特に糖尿病患者に必要である。非神経性アセチルコリン受容体の微小血管レベルでの血管内膜における存在は第二の生理的機構を表すため、小血管の拡張がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用によって促進される。コリンエステラーゼの感受性による非神経性アセチルコリン系が関与するこの第二の機構により、微小血管循環に影響するコリン作動性活性が保持され、重要な終動脈-毛細血管-細静脈レベルでの灌流が改善される。
【0172】
Mrs. R.E.
Mrs. R.E. は、AODM (成人発生真性糖尿病)による末梢血管疾患によって右下腿切断術を受けた。彼女の左脚は冷たく、血管浮腫がたくさんあった。彼女は踵後内側に、およそ 1x 2 cmの潰瘍を有しており、局所抗生物質、膠質軟膏、コラゲナーゼおよび厳密な圧力除去装置による治療にもかかわらず治癒しなかった。潰瘍はこの治療にもかかわらず悪化した。さらなる血管外科的処置は不可能であると外科医により報告された。コウマジンおよびASA (アセチルサリチル酸)による長期間にわたる治療は成功しなかった。この症状および血管機能障害の治療期間は6 ヶ月を超えた。患者は毎日POドネペジル 5 mgでの療法を開始した。1ヶ月後、彼女の左脚温度は有意に改善し、血管浮腫は低下した。彼女の踵潰瘍の症状は治癒の瀬戸際から改善した。治療の3ヶ月後、彼女の血管浮腫は痕跡レベルとなり、踵潰瘍は完全に解消した。脚はチアノーゼを用いなくても温かかった。爪の外観も改善した。患者は毎日5 mgのドネペジルを続け、悪心/嘔吐または下痢症候は無かった。彼女は彼女の切断した四肢の補綴によって歩行できた。これは以前には疼痛、膨張および血行不全のために不可能であった。
【0173】
Mr. D.R.
Mr. D.R.の病歴は、 真性糖尿病、末梢血管疾患、左足根中足の切断術および右下腿切断術、下肢血管浮腫および内果潰瘍による右膝上切断術; 足根中足の切断術、浮腫を伴う潰瘍、冷たい脚であった。患者は1日2回ガランタミン 4mgを摂取し、1日4回経口的に4 mgまで用量設定された。下痢または胃食道逆流の症候は報告されなかった。2週間以内に、彼の左下肢浮腫は解消した。内果潰瘍は4週間以内に治癒した。患者は重篤な幻肢痛を右膝上切断術部位に有していた。これらの症候はガランタミンによる治療期間中に劇的に改善し、患者は麻薬を必要としなくなった。さらに患者は便柔軟剤または下剤を必要としなくなった。患者は彼の腸機能が正常であり、治療前の症状と比べてかなり改善したことを報告した。
【0174】
Ms B.D.
Ms. B.D. は、以前に末梢血管疾患により右膝上切断術を受けた。左下肢の血行不全により血管浮腫が顕著であり; 跛行および栄養性変化は末梢血管疾患と一致した。彼女の糖尿病症状には高血圧が伴った。彼女は補綴を装着されていたが、彼女の下肢の疼痛/膨張により機能状態は制限されていた。患者は血行再建術の候補とはみなされなかった。彼女は彼女の踵に潰瘍を有しており、これによって彼女の歩行能力は制限された。彼女の血行不全は毎日81 mgのASA (アセチルサリチル酸)で管理されていた。患者は毎日ドネペジル 5 mgを摂取し、治療の1ヶ月後、患者の踵潰瘍は解消した。血管浮腫は顕著に減少し、患者は跛行の症候を有さなくなった。彼女は疼痛を有さなかった。彼女の歩行能力は改善し、彼女は彼女の以前の自宅内のみの歩行状態から社会歩行できるまでになった。彼女は下痢または潰瘍症候を経験しなかった。彼女は毎日5 mgのドネペジルを維持した。彼女の 3ヶ月の経過観察では、温かい脚、および彼女の血管浮腫のほとんど完全な解消が明らかとなった。
【0175】
Mr. J.B.
Mr. J.B. は左 TMA (足根中足の切断術)およびそれに伴う左大腿遠位バイパス手術を受けた。アスピリン治療、局所創傷治癒処置および抗生物質治療にもかかわらず、彼は、脚膝上切断術を受けなければならなかった。血行不全の随伴性症候が彼の右脚に現れ、疼痛、彼の右膝の潰瘍および血管浮腫の増加が含まれた。彼は彼の補綴なしでは歩行不能であり補綴の候補とみなされなかった。患者の右脚疼痛/踵潰瘍は悪化し続けた。彼は毎日ドネペジル 5 mgを摂取した。1ヶ月以内で彼の疼痛愁訴は緩和した。彼の脚の血管浮腫は解消し、彼の踵の潰瘍は顕著に改善した。毎日ドネペジル 5 mg による2ヶ月の治療の後、患者は歩行器により歩行でき、彼の右踵潰瘍は解消した。患者は補綴の装着と歩行訓練の候補とみなされた。
【0176】
Ms. W.M.R.
Ms. W.M.R.は血液透析を行う末期腎疾患、真性糖尿病の病歴を有する83歳の女性であり、末梢血管疾患および左膝上切断術の病歴を有し、麻薬による疼痛管理に難治性の右脚の休息痛により外来患者設定に訪れた。患者は血管再生の候補からは除外されていた。彼女は試験的ASA、三環系抗うつ薬を受けていたが、成功しなかった。 Ms. W.M.Rは毎日ドネペジル 5 mgを2週間摂取した。深刻な有害な副作用は感じられなかった。彼女の疼痛は顕著に改善し、彼女の睡眠様式も同様であった。彼女の脚の栄養性悪化も改善した。脚はほとんどミイラ化していたが生存可能な組織へと回復した。患者は次の6 ヶ月この治療に耐容性を示すことができ、彼女の糖尿病症状、末期腎疾患に関する有害な副作用はなく、彼女の右脚と足に陽性の変化が感じられ、用量を上昇させず持続した。
【0177】
Mr. Mc.M.
Mr. Mc.M. は、末梢血管疾患による右下腿切断術、成人発生真性糖尿病、高血圧の病歴を有する64歳の男性であり、左下肢および脚の疼痛、膨張および跛行の症候の愁訴を有しており左脚の補綴の使用により歩行運動していた。彼の脚はむくんでおり、血管浮腫により腫れ上がっていた。毛細血管補給は不良であると判定された。Mr. Mc.M.は、毎日ドネペジル 5 mgを1ヶ月摂取したところ脚とつま先の浮腫は完全に解消した。脚の温度は改善して温かくなった。彼の疼痛は軽減した。下痢または酸逆流などの有害な副作用は感じられなかった。患者はこの薬物療法に耐容性を示すことができ、切断していない四肢に感じられた血行不全は解消した。
【0178】
Mr. L.W.
Mr. L.W.は、インスリン依存性真性糖尿病、末梢血管疾患および右下腿切断術の病歴を有する48歳の男性である。Mr. L.W.は左下肢に血管浮腫を有しており複数の指切断術を行っており左脚の下肢の内側および外側面に潰瘍のあるシャルコー脚であった。Mr. L.W.は、 1日2回ガランタミン 4 mgを摂取し、1日4回経口的に4 mgまで用量設定された。左脚の血管浮腫は劇的に改善した。彼の左脚の遠位3分の1の潰瘍は解消した。シャルコー 脚奇形には変化はなかった。新しい虚血性潰瘍(栄養性)は発症しなかった。彼の歩行状態は改善し、1本の杖で歩行運動できるようになった。治療時間経過は6 週間持続した。
【0179】
パーキンソン病
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用はCNS内の微小血管循環を促進する。これはアルツハイマー病患者と非アルツハイマー患者でPET スキャンによって示されている。局所血流はドネペジルおよびリバスチグミンの投与の後上昇する。本発明者はパーキンソン病と診断された患者のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用による治療は、損傷した微小血管循環内の血流を改善し、黒質および青斑核への血流を回復させることを見いだした。このドーパミンレベルは被殻および尾状核でも上昇した。振戦、運動低下および前屈姿勢での引きずり歩行の臨床症候は排除されるか寛解し、患者の機能能力を回復させた。
【0180】
Ms. R.T.
Ms. R.T. は、歩行運動開始不全 (パーキンソン病変異)と診断された75歳の女性であり、症候の管理および治療の推奨のために外来患者設定に訪れた。彼女は彼女の脚の「堅さ」および下肢静止不能症候群を訴えた。クロナゼパムの試験は理学療法とともに有効ではなかった。患者は静止時振戦および運動低下を含むパーキンソン病のすべての症候を有していた。彼女の左側はよりこれらの症候が重かったが、頭部CTでは脳血管障害について陰性であった。患者は毎日経口的にドネペジル 5mg を開始した。治療の1ヶ月後、彼女は機能の改善および下肢静止不能症候群の症候の低下を感じた。彼女には有害な胃腸症候は無く、実際に腸機能の改善を報告した。用量を毎日ドネペジル10 mgまで上昇させ、さらに彼女の症候は改善した。彼女は歩行器の使用を中断することができ、1本の杖で社会歩行することができた。彼女は多尿および排便回数増加の症候を発症した。 かかる症候についてはレグラン(登録商標) (メトクロプラミド) およびデトロール(登録商標) (トルテロジン) の使用による治療が成功した。彼女はこの療法を次の 6ヶ月続け、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療による悪化またはさらなる副作用は無かった。
【0181】
Ms. M.M.
Ms. M.M.は、パーキンソン病、高血圧および認知症の病歴を有する80歳の女性である。シネメット(登録商標) (レボドパ/カルボキシドーパ) の試験では耐容性が不良であり、陰性の認知変化と悪心が起こった。彼女の認知症はネメンダ(登録商標) (メナンチン)で管理された。彼女のパーキンソン病および認知症の症候は良好に管理できなかった。患者は治療のためにリハビリテーション施設に収容された。収容時、彼女の症候は、重篤な運動低下、静止時振戦および顔面無表情特徴が顕著であった。患者は毎日経口的にドネペジル 5mgを開始し、彼女の運動障害および認知は改善した。用量はドネペジル 毎日10 mgまで用量設定され、彼女の機能的運動性は顕著に改善し、振戦および動作緩慢は低下した。主な副作用は患者にとってやっかいな夜間頻尿であった。ドネペジルの用量を毎日5 mgまで低下させると彼女の運動機能は顕著に悪化し、パーキンソン症候が再発した。患者は毎日デトロール LA (トルテロジン) 4 mgを開始しドネペジルの用量を毎日10 mgまで再び上昇させた。患者はドネペジル 10 mg のこの療法に耐容性を示すことができ、毎日デトロール LA 4 mgを多尿の制御のために用いた。彼女には有害な胃腸症候は無かった。患者は自宅に退院し、以前に車いすに束縛されていたときに彼女が有していた歩行器を用いての歩行レベルに達していた。
【0182】
Mr. A.B.
Mr. A.B. は、成人発生真性糖尿病、高血圧、および右下腿切断術の病歴を有する80歳の男性である。彼はパーキンソン病であると診断され、右下腿切断術の後リハビリテーション病院に移された。収容時に患者は手の顕著な静止時振戦および重篤な動作緩慢を有していた。彼は彼の切断した四肢に重篤な「幻肢」痛および対側の四肢に疼痛を訴え、糖尿病性多発神経障害と一致した。患者は急性および慢性腎臓不全により血液透析を受けた。リハビリテーション施設への入院の後、彼は毎日経口的にドネペジル 5mgを摂取した。患者は、切断術および糖尿病性多発神経障害に関連する彼の疼痛の迅速な改善を感じた。次の48 時間にわたり、彼の運動障害は顕著に改善し、静止時振戦は低下し、運動も改善した。彼の顔面表情はより活発となった。ドネペジルによる治療の1週間後、用量を毎日10 mgまで上昇させた。彼の静止時振戦は改善し続けた。動作緩慢は完全に解消した。2 週間の経過の間、患者は排尿を開始した。彼のクレアチニンは収容時の5.5から治療のたった2週間後には4.2まで改善した。患者はドネペジルの用量を上昇させ、腹部筋痙攣を訴えた。かかる症候は食前および眠前の経口的にメトクロプラミド 5 mgの使用により容易に管理できた。患者はこの薬物療法を翌月も続けたところ、彼の腎機能はさらに改善した。彼のクレアチニンは2.1まで改善し、血液透析は中断できた。彼はドネペジルによってパーキンソン症候を再発しなかった。
【0183】
Mr. M.L.
Mr. M.L.は、非手術管理に難治性の彼の右膝に関節炎の病歴を有する57歳の男性である。患者はパーキンソン病の初期発生と診断され、1日4回経口的にスタレボ(登録商標) (カルビドパ/レボドパ/エンタカポン) 50 mgで治療されていた。患者は彼の右膝に全膝関節形成術を受けた。手術の後、彼はリハビリテーション施設に収容され、彼のパーキンソン病および全膝置換術のために全般的入院治療を受けた。収容時、彼はパーキンソン病による静止時振戦および動作緩慢を有すると感じていた。全膝置換術による顕著な右下肢リンパ浮腫があった。患者の彼の現在のパーキンソン治療の満足度は最適ではなかった。スタレボ(登録商標)を減らしていき、完全にアセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療に変えることが患者との議論で同意された。Mr. M.L.は1日2回経口的にリバスチグミン 1.5 mgを開始した。次の2日間にわたり、彼は、副作用が無く、静止時手振戦は低下し、改善を報告した。彼の脚の膨張は改善し、運動範囲は90度に近づいた。3日間後、リバスチグミンの用量を1日2回経口的に3 mgまで上昇させた。患者は彼のパーキンソン症候の完全な解消を感じた。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による管理は胃腸の観点から良好に耐容性を示し、静止時振戦、および堅さに関する結果はスタレボ(登録商標)による治療より大いに優れていた。全膝置換術の後の右脚のリンパ浮腫は顕著に良好となった。患者は自宅に退院し、1日2回リバスチグミン3 mgを摂取した。彼はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療についての陰性副作用を有さなかった。
【0184】
リウマチ症状
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用は、コリンエステラーゼの阻害によりアセチルコリンレベルを上昇させる。アセチルコリンレベルの上昇は血管内膜および白血球にある副交感神経系の神経性受容体および非神経性受容体を刺激する。微小血管循環内の血流改善および白血球の安定化およびその血管壁への接着のこの二重効果はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤のリウマチ性疾患の治療への使用により観察される抗炎症効果をもたらす。
【0185】
Ms. C.C.
Ms. C.C. は、除圧性腰部椎弓切除術の後リハビリテーション施設に収容された関節リウマチ (RA)を患う71歳の女性である。彼女の術後リハビリテーションの経過の間、彼女は彼女の手首の背側面および中手指骨関節の両側の疼痛性の膨張として現れる彼女の RAの疼痛性の「感覚(flair up)」を発症した。患者は1日3回経口的にレミニール (ガランタミン) 4 mg を開始し、すぐに1日3回経口的に8 mgまで用量設定された。患者はこの薬物の使用により、疼痛の低下、温かさおよび膨張の低下を感じた。臨床観察は彼女の報告した症候と一致した。患者は椎弓切除術の後の彼女の背部疼痛愁訴の改善を感じた。
【0186】
Ms. E.W.
Ms. E.W. は、両側全膝関節形成術 (TKA) の後リハビリテーション病院に収容された関節リウマチ (RA) の病歴を有する62歳の女性である。病院への収容時、彼女は温かさおよび表層性紅斑を伴う両側手首疼痛および膨張を訴えはじめ、彼女の RAの感覚(flair up) と一致した。Ms. E.W.は、1日2回経口的にリバスチグミン 1.5 mgを開始した。膨張および温かさの徴候は改善したが、患者は疼痛の愁訴が持続していた。リバスチグミンの用量を1日2回経口的に3 mgまで上昇させた。彼女の疼痛症候は1日で解消した。それに伴い、全膝置換術の後の彼女の下肢膨張の改善もみられた。彼女には消化不良、下痢または多尿などの有害な副作用は無かった。彼女は2週間にわたりこの薬物療法に良好な耐容性を示し、予防のためにより低用量を次の 3ヶ月摂取し続けたが疼痛または膨張は再発しなかった。
【0187】
Ms. M.G.
Ms. M.G. は、はじめは多発性硬化症 (MS)と診断された58歳の女性であり、非対称的に彼女の脚に脱力を有していた。その後の所見は完全な対麻痺であり、視覚が関与し、支持する検査室試験では全身性エリテマトーデス (SLE)の診断が確認された。彼女の症状は悪化し、患者は完全に対麻痺のままであり、失明、尿閉および両側腕脱力を伴った。Ms. M.G. は毎日経口的にドネペジル 5mgを1ヶ月開始した。彼女は下痢または悪心の症候は報告しなかった。この期間の間、患者は彼女の両側の脚の運動の回復を報告した(背屈および足底屈曲)。翌月用量を経口的に10 mgまで上昇させた。彼女は彼女の腕の強度の改善を報告したが、しかし用量の上昇にもかかわらず彼女の脚の反重力強度は低下していた。彼女が以前に経験していた彼女の脚の膨張および異常感覚は解消した。ドネペジルの用量を次の 4 ヶ月10 mgに維持した。彼女の腕の強度は強くなり感覚は回復した。彼女の脚の運動も改善したが、歩行には不十分であった。視覚は回復しなかった。患者は意思に基づいて排尿することができ、排尿後の残尿は許容可能な範囲であった(100 cc未満)。
【0188】
Ms. L.V.
Ms. L.V. は、臨床観察および確認支持検査室データにより診断してリウマチ性多発筋痛症 (PMR) の病歴を有する76歳の女性である。彼女の疼痛愁訴には、両側肩部疼痛、肩甲骨後側領域の疼痛が含まれていた。彼女は両側膝疼痛を有しており圧迫帯および利尿薬治療に難治性のリンパ浮腫を伴っていた。彼女は不眠、および腰痛の愁訴を有していた。患者は毎日経口的にドネペジル 5mgを開始した。次の週にわたってリハビリテーション病院での治療が観察され彼女の進行が測定された。患者は治療前レベルと比べて睡眠様式の改善および疼痛の低下を報告した。彼女の両脚に以前に感じられていた浮腫は解消した。彼女は以前に彼女が車いすを用いていた場合、歩行を開始した。彼女は次の 6 ヶ月にわたりこの療法に耐容性を示し、事故、有害な副作用または彼女の症状の悪化はみられなかった。続く赤血球沈降速度は正常な範囲であった。
【0189】
Ms. C.C.
Ms. C.C. は、除圧性腰部椎弓切除術の後リハビリテーションに収容された関節リウマチの病歴を有する71歳の女性である。彼女の術後ケアの経過の間、彼女は温かさ、圧痛を伴う彼女の右手首の疼痛性の膨張として現れる彼女の RAの疼痛性の感覚(flair up)を発症した。患者は1日3回経口的にガランタミン 4 mg を開始し、すぐに1日3回経口的に8 mgまで用量設定された。彼女は膨張および疼痛の低下を感じ、可動域が改善した。
【0190】
Ms. M.G.G.
Ms. M.G.G. は、はじめはMS (多発性硬化症)と診断された58歳の女性であり、非対称的に彼女の脚に脱力を有していた。後の所見は視覚関与を伴う完全な対麻痺であり、支持検査室試験では全身性エリテマトーデスの診断が確認された。彼女の症状は悪化し、患者は完全に対麻痺、失明、尿閉、および両側腕脱力の状態であった。Ms. M.G.G は毎日経口的にドネペジル 5mgを1ヶ月開始した。彼女は下痢の症候は報告しなかった。用量を毎日10 mgまでさらに1ヶ月上昇させた。患者は彼女の両脚の運動の回復および下肢膨張の低下を報告した。
【0191】
Ms. L.V.
Ms. L.V. は、 臨床観察および確認的支持的検査室研究により診断されたPMR (リウマチ性多発筋痛症) の病歴を有する76歳の女性である。Ms. L.V.は、毎日経口的にドネペジル 5mg を1ヶ月開始した。彼女は彼女の疼痛愁訴の改善および彼女の両足首の膨張の低下を報告した。彼女は治療により有害な副作用を示さず、逆に睡眠様式の改善、彼女の便秘症候の改善および全体的な幸福感を報告した。経過観察ではESR (赤血球沈降速度)は低下した。
【0192】
Ms. M.G.
Ms. M.G. は、多発性筋炎と診断された呼吸困難の病歴を有する64歳の女性であり、高用量プレドニゾンで治療されたところ、彼女の呼吸困難は改善し、彼女が歩行できなくなるほど悪化していた彼女の強度もいくらかの改善した。彼女は救急病院から退院し、入院リハビリテーション施設に移された。彼女は彼女の多発性筋炎の管理のためにステロイドを与えられ続けた。彼女はゆっくりと改善し、車いすレベルとなり自宅に退院した。自宅での彼女は食道運動障害を経験し始めた。Ms. M.C.は呼吸困難問題、すべての四肢の脱力および嚥下障害の問題により外来診療患者として訪れた。彼女は1日3回経口的にガランタミン 4 mgを開始した。彼女は迅速に彼女の嚥下障害の改善を感じたが、脱力は持続した。彼女は息切れの増加は経験せず、実際にいくらかの改善を報告した。ガランタミンの用量を1日3回経口的に8 mgまで上昇させた。4-6 週間の経過の間、彼女の強度は改善し、プレドニゾンの用量を低下させた。彼女の呼吸困難は解消し、彼女は歩行器を用いて歩行できるようになった。彼女は下痢または悪心の有害な副作用を経験しなかった。
【0193】
さらに、3名のリウマチ症状の患者がアセチルコリンエステラーゼ阻害剤で治療され結果は成功であった。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療のいずれにおいても、成功しなかった結果は無かった。
【0194】
糖尿病性多発神経障害
糖尿病に伴う血管収縮に傾く生理的変化はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の投与の後に逆転し、微小血管系の灌流が可能となり、糖尿病の作用により傷害を受けた虚血性運動および感覚神経への血流が回復する。以下の一連の患者は真性糖尿病に続発する運動および感覚神経障害の両方を有していたが、糖尿病性多発神経障害の治療のためのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用により有意な改善を示した。
【0195】
Mr. D.D.
Mr. D.D. は、肥満、インスリン依存性真性糖尿病、左 CVAおよび右半身麻痺の病歴を有する80歳の男性であり、右下肢蜂窩織炎によりリハビリテーション施設に収容された。彼は感染症の治療のためにIV 抗生物質を与えられた。患者は彼の脚の疼痛の愁訴は有していなかったが、灼熱、刺痛および時折の拍動痛を彼の両手に訴えた。彼の手には対称的に膨張と発赤が随伴していた。治療用量でのガバペンチンおよびトラザドンの試験は有効ではなかった。Mr. D.D. は経口的に就寝時にドネペジル 5 mgを与えられた。次の数日間にわたって彼の手の疼痛愁訴はすぐに改善し、両手の発赤と膨張も低下した。次の 2ヶ月にわたって治療を続けたが有害な副作用はなかった。糖尿病性多発神経障害による彼の手の疼痛性の神経障害性症候は再発しなかった。
【0196】
Mr. V.S.
Mr. V.S. は、彼の脚に両側下肢疼痛を伴う真性糖尿病に続発する膵炎の病歴を有する56歳の男性であり、糖尿病性多発神経障害と一致した。患者は血糖制御のために夕方にインスリングラルギンおよびスライド制被覆(sliding scale coverage)を受けた。患者は右人工股関節全置換を受け術後治療のためにリハビリテーション施設に収容された。彼の主な愁訴には彼の脚の異常感覚が含まれていた。彼の脚の疼痛は時折うずくような疼痛を伴う灼熱痛として報告された。疼痛愁訴は臀部置換術を受けた脚と非手術側とで同様に重篤であった。臀部置換術後の術後疼痛は、必要に応じての麻薬で容易に管理された。ガバペンチンおよび三環系抗うつ薬による治療にもかかわらず、彼は彼の両脚の足底側面に疼痛症候を報告した。Mr. V.S.は、1日3回経口的にガランタミン 4 mgを摂取し、1日3回経口的に8 mgまで用量設定された。患者は彼の脚の疼痛の有意な改善と睡眠様式の改善を報告した。人工股関節全置換を受けた四肢の術後リンパ浮腫は顕著に低減した。有害な副作用は無かった。彼はこの薬物療法を退院時および次の 3ヶ月にわたって続けたが有害な副作用は無かった。彼の糖尿病性神経障害に伴う灼熱痛および時折のうずくような疼痛は再発しなかった。
【0197】
Ms. R.M.
Ms R.M. は、IDDM (インスリン依存性真性糖尿病)および筋電図および神経伝導速度研究で報告された糖尿病性多発神経障害の病歴を有する58歳の女性である。彼女の糖尿病の管理は1日2回分割用量のインスリン 70/30で行われた。彼女の疼痛症候は悪化し、最終的には知覚麻痺の状態まで進行した。彼女の感覚神経障害の進行に随伴して、彼女は運動関与を経験し、両側下垂側が記録された。彼女は歩行のために回転歩行器と両側足首脚整形器具を必要とした。Ms. R.M.は、1日2回経口的にリバスチグミン 1.5 mg を開始した。1ヶ月後、彼女は感覚の改善と部分的背屈強度の回復を報告した。リバスチグミンの用量を1日2回経口的に3.0 mgまで上昇させた。1ヶ月後の経過観察ではほとんど完全に彼女の下垂側は修正されていた。彼女は歩行のためにもはや彼女の足首脚整形器具も回転歩行器も必要としなかった。彼女にはアセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療による有害な副作用は無かった。彼女の治療経過の間のある時点で彼女は経過観察を忘れ、彼女のリバスチグミンの処方は中断された。彼女は脱力の愁訴および歩行不能を再発した。彼女はリバスチグミンを再開し、強度の回復および初期薬物試験で感じていた協調を経験した。彼女は治療経過を6ヶ月以上続けたが、有害な副作用はなく、背屈脱力は再発せず、正常な感覚に近づいた。彼女がリバスチグミンを摂取している間、血行不全または異栄養性変化の証拠は無かった。
【0198】
Ms.P.M.
Ms.P.M. は、IDDM (インスリン依存性真性糖尿病)および両側下腿切断術の病歴を有する62歳の女性である。彼女の糖尿病管理には、毎朝1回の中間型インスリンが含まれていた。患者は彼女の切断術部位に幻肢痛を訴えたが、発赤と膨張を伴う彼女の両手の灼熱性の異常感覚の愁訴がより深刻であり、血管浮腫と一致した。彼女は疼痛を睡眠を妨げる耐え難いものであり、日常生活のすべての活動に干渉するものとして説明した。 患者は治療用量でのガバペンチン、三環系抗うつ薬、および麻薬による治療を受けていた。麻薬による治療の律速段階は嗜眠の症候と認知機能障害であった。Ms.P.M. は突出痛のために毎日分割用量で40 mg もの用量のメサドンと短時間作用性麻薬を与えられていたが、適切な疼痛の軽減はみられなかった。患者はメサドンをやめ、毎日経口的にドネペジル 5mgを1ヶ月摂取した。彼女の症候は長時間作用性麻薬による治療と比べて改善した。ドネペジルの用量を毎日10 mgまで上昇させても有害な副作用はなかった。翌月にわたって彼女の手と切断術部位の両方において彼女の疼痛愁訴は顕著に改善した。彼女は彼女の糖尿病、血圧またはGI管に関してアセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療の有害な副作用を経験しなかった。彼女は彼女の疼痛の悪化のために時折の短時間作用性麻薬を必要としていた。患者はこの療法に耐容性を示し、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤に伴うことがある副作用は示されなかった。
【0199】
Ms. B.F.
Ms. B.F. は、糖尿病性多発神経障害に続発する難治性の疼痛により救急病院に収容されたインスリン依存性真性糖尿病の48歳の女性である。彼女は5年以上インスリン依存性糖尿病を患っていた。彼女は疼痛制御のためにガバペンチンと組み合わせて長時間および短時間作用性麻薬を必要とした。彼女は薬物療法のこの組合せにより彼女の疼痛の最低限の寛解しか受けなかった。彼女は次いでリハビリテーション病院に移され疼痛愁訴および上肢および下肢の両方の、上肢および下肢の遠位部分の膨張と発赤を伴う脱力による自立活動と機能的運動性の欠損に取り組んだ。患者は毎日経口的にドネペジル 5mgを開始した。彼女は迅速に彼女の疼痛症候の改善と彼女の脚の膨張の低下を次の2日間にわたって感じた。彼女の長時間作用性麻薬の用量は用量設定により減らされ、耐容性を示すようになった。3日後ドネペジルの用量を毎日10 mgまで上昇させた。すべての長時間作用性麻薬を中断し(オキシコンチン)、彼女は必要な場合にヒドロコドンで管理するのみとなった。彼女の手脚の膨張は解消し、彼女は自宅に退院し、補助装置を用いて独立して歩行できるレベルとなった。彼女はドネペジルのこの療法を次の6ヶ月続けたが、副作用はなく、糖尿病性多発神経障害の疼痛性の症候は再発しなかった。
【0200】
Ms. J.H.
Ms. J.H. は、観血的整復法および内固定で治療された大腿頸部骨折の後リハビリテーション施設に収容されたIDDM (インスリン依存性真性糖尿病) の病歴を有する61歳の女性である。患者は糖尿病性多発神経障害の感覚関連症候を患っており、彼女の脚の足底側面に灼熱を伴った。彼女は病歴または血行不全による跛行の症候は有していなかった。リハビリテーションプログラムの経過の間、彼女の進展は膨張を伴う彼女の両脚の疼痛性の異常感覚の愁訴により制限されるようになった。患者は毎日経口的にドネペジル 5mgを治療のために開始した。彼女は迅速に彼女の疼痛愁訴の改善と足の浮腫の解消を感じた。用量を維持したが、次の 3ヶ月にわたって有害な副作用はなかった。疼痛性の糖尿病性多発神経障害による彼女の脚の疼痛および膨張の制御の結果、彼女の機能状態は改善した。
【0201】
Ms. A.R.
Ms A.R. は、10年間にわたるインスリン依存性真性糖尿病の病歴を有する39歳の女性である。彼女は体重が低下し始め、脱力が伴った。彼女はより坐位につくようになり、最終的には床に伏せた。この期間の間、彼女は彼女の仙骨に褥瘡潰瘍を発症し、筋肉皮弁が閉じなくなったため救急病院に収容された。彼女は彼女の糖尿病管理のためにインスリングラルギンおよびスライド制被覆(sliding scale coverage)を受けた。彼女の外科的手順の後、彼女はリハビリテーション術後管理に収容された。脱力の発生、褥瘡潰瘍の発症と外科治療の間の6ヶ月間に、彼女は上肢および下肢の両方に運動失調が進行し、筋電図および神経伝導研究で記録された糖尿病性多発神経障害と一致した。彼女の脚の疼痛愁訴はガバペンチンおよび三環系抗うつ薬に加えて麻薬を必要とするのに十分に重篤であった。患者は異常な手洗いの繰り返しのために手の使用が制限されており、彼女の両手の指を曲げる彼女の能力は顕著に低下していた。彼女の下肢疼痛には左側下垂側が合併していた。彼女は彼女の脚に重篤なうずくような疼痛を報告し筋系の萎縮症が伴った。運動および感覚神経障害に加えて彼女は尿閉を有しており排尿の試みを何度も失敗した。患者は毎日経口的にドネペジル 5mg1週間を開始した。疼痛愁訴は急速に低減した。副作用はなく、毎日経口的に10 mgまで用量を上昇させた。次の3日間にわたり彼女の左脚の足首背屈は部分的に回復した。次の排尿の試みは成功し、患者は補助装置 (回転歩行器)を用いて歩行することを開始した。彼女はすべての麻薬を2週間やめて病院から退院した。彼女は疼痛を有さなくなり、排尿にも成功した。彼女の治療を次の 9 ヶ月にわたって続けたが有害な副作用はなかった。彼女は2ヶ月以内に歩行器の使用を中断することができた。彼女の左脚の背屈は完全に回復した。彼女の手の固有の消耗は解決し、正常な屈曲機能が回復した。
【0202】
理論に拘束されることなく、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用は、そのコリン作動性伝達を改善する能力により、運動および感覚の両方の末梢神経の栄養血管(vasovasorum )の虚血である糖尿病性多発神経障害の鍵となる要素の1つを修正する理論的能力を有しており、基礎疾患を改善する手段が提供された。すべての神経は正しく機能するためには適切な血管供給が必要であるため、いずれのタイプの神経も脆弱である。糖尿病性神経障害には多くの徴候があり、糖尿病胃不全麻痺、尿生殖器自律神経障害、疼痛を伴う運動症候群および感覚機能障害ならびに感覚の欠損が含まれる。感覚運動神経障害は大小の求心路神経に影響を与える。大求心路は、自己受容、冷覚および振動感覚を制御する。小神経は疼痛伝達に影響する。感覚運動の症候は真性糖尿病に伴う血管合併症と同様に遠位から近位へと進行する。神経性虚血と糖尿病性神経障害との相関はよく確立されている。微小血管系は糖尿病の病態生理およびその神経に対する作用と結びついている。これは糖尿病患者の末梢血管疾患および神経障害において示されている。
【0203】
理論に拘束されることなく、微小血管系の最初の病的変化は微小血管循環の終細動脈にて起こる血管収縮を好む傾向であり、血液供給を低下させる。虚血は、疼痛、感覚の欠損および曖昧な不快感または異常感覚として現れる機能障害を導く。アセチルコリン受容体は血管の内膜にあると示されている。そこには神経性および非神経性アセチルコリン受容体の両方が存在する。アセチルコリンは冠血管および肺動脈床を拡張することが示されている。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤はアセチルコリンの分解を阻害してアセチルコリンの相対濃度を上昇させ、さらにアセチルコリン受容体の刺激のための神経伝達物質基質を提供する。アセチルコリンの分解を阻害することにより、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤はコリン作用薬として作用する。
【0204】
さらに、理論に拘束されることなく、微小血管疾患進行において、基底膜の肥厚と内皮過形成が存在し、これは神経機能障害の進行と相関している。「非神経性コリン作動性系」内のコリンエステラーゼ活性は神経系のために存在するものと比較してより遅い速度で起こる。 それゆえコリン作動性活性を長期間アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用により保持することができる。この非神経系内に保持されたコリン作動性活性は、神経(副交感) 系からの効果と一緒になって、終細動脈の血管拡張の改善と末梢神経の微小血管循環内の血流の上昇の原因である可能性がある。
【0205】
糖尿病は、細胞内グルコースレベルの上昇を促進する「異化亢進」状態であると説明されてきた。細胞および組織の正常機能に有害なフリーラジカルの形成を導くものは複雑な代謝カスケードである。いずれの異化亢進状態も正常な細胞機能を保持するために必要な酸素および栄養を提供するためにさらなる血液供給を必要とする。糖尿病の特徴である微小血管疾患は不十分な血流をもたらし、長期間では神経性運動機能障害、高血糖、フリーラジカルおよびストレス型代謝状態により既に損傷された感覚および自律神経機能障害を導く。異化亢進状態と損傷された微小血管系との間には粘性サイクルが存在する。それゆえ、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用は、そのコリン作用特性により、おそらく損傷を受けた神経に酸素および栄養を供給する血管拡張を促進する。
【0206】
糖尿病性多発神経障害の原因は明らかではない。しかし、体内の代謝経路は高濃度の細胞内グルコースによって有害な影響を受ける。糖尿病に関連する糖尿病性多発神経障害を含む合併症を完全に予防または頻度予測するための厳密な血糖制御は示されていない。糖酸化および脂質酸化生成物は多発性神経障害を導く病理をもたらすことができる有害な化合物である可能性がある。タンパク質キナーゼ Cは、糖尿病性多発神経障害と医師に認識される病型をつくる異常な代謝経路の可能性のある源であり得る。
【0207】
微小血管疾患には糖尿病性多発神経障害の進行が伴う。これは組織化学研究と動物モデルにおいて示され、微小血管循環は疾患工程の初期に損傷され、神経機能障害の進行と糖尿病性多発神経障害に観察される臨床所見は並行することが示された。
【0208】
本発明において提供するように、糖尿病性多発神経障害の治療のためのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用は、このクラスの薬物のコリン作用特性に基づく利点を有しており、本明細書で提供する臨床症例は、皮膚の血流を改善するコリンエステルの能力を示している。研究によりアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の使用により脳の局所血流が改善することが示された。これらの知見はPET スキャンで観察され、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が脳の血流を改善することを示す。有益効果は視床と海馬で観察された。血圧低下とGI運動の上昇を伴うアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の全身作用は、体と末梢の全体にわたって分布していることを示す。
【0209】
本明細書における症例研究にて提供したように、脳における血流改善の観察は、体中の微小血管循環において起こっているようである。これらの患者でみられた臨床観察は四肢における循環の改善、運動および感覚神経障害症候の顕著な改善と一致している。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による治療の理論的根拠は微小血管循環内の循環を改善させる前提および臨床証拠に基づく。微小血管循環の実際の測定は非常に制限されている。皮膚レベルでの血流の改善は静脈波検査および経皮酸素測定により推測することが出来る。運動、感覚、および自律神経への血流の改善は運動機能の改善および疼痛の軽減の臨床観察によってのみしか把握できない。コリンエステルの経口投与は胃腸系に対する直接のコリン作動性作用によってあまり耐容性を示さない。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の主な利点は胃腸の観点からのその耐性である。神経の栄養血管(vasovasorum)に対する微小血管の測定技術は存在しない。侵入性の試みはいずれも研究すべき微細な微小血管系を破壊してしまうであろう。
【0210】
組織および細胞に送達される酸素および栄養の鍵となる要素は微小血管レベルで起こる。このレベルでの血流の制御は神経性および非神経性アセチルコリン受容体の両方により制御されているようであり、微小血管循環の拡張を促進することにより酸素の送達の改善が起こる。循環の重要な部分である、酸素および栄養の交換は毛細血管レベルで起こる。理論に拘束されることなく、このレベルでの血管拡張工程はこの類の患者において感じられた改善の原因であるようである。神経の栄養血管(vasovasorum)における循環の改善は、微小血管での血液供給が影響を受ける領域に限られないようである。すべての臓器系において組織レベルで微小血管循環が改善されている可能性が非常に高い。これにより腎皮質に対する血流を促進することにより、腎不全を患う糖尿病患者にさらに利益が与えられ、心筋への微小血管血液供給が改善し、心臓筋肉への虚血が軽減することにより、心血管自律神経障害を患う心臓患者にさらに利益が与えられる。疼痛の改善の臨床観察が数日間で観察されたが、しかしその他の臓器系、例えば腎臓および心臓の同様の改善には利益が与えられるまでに、より長く持続する治療が必要である可能性がある。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤による長期治療が糖尿病の微小血管合併症に対抗するために必要であると考えられる。
【0211】
糖尿病性運動機能障害および疼痛性感覚神経障害の管理は過去においては困難であり、寛解の結果は制限されていた。本明細書に提供する症例研究にて感じられた改善および理論的根拠は症候を改善すると同時に糖尿病性多発神経障害と認識される病型およびその他の微小血管疾患に寄与する微小血管問題を修正する機会を医師に与えると考えられる。この臨床群はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤がコリン作用薬として作用する能力に基づく有効性の強力な証拠を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を投与することを含む、微小血管系に関連する疾患、自己免疫/炎症性疾患、様々な疼痛症候群、尿閉、パーキンソン病、および血行不全の治療方法。
【請求項2】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、タクリン、それらの組合せ、およびそれらの医薬上許容される塩からなる群から選択される、請求項 1の微小血管系に関連する疾患、自己免疫/炎症性疾患、様々な疼痛症候群、尿閉および血行不全の治療方法。
【請求項3】
成人のドネペジルの一日用量が約 5 mg〜 約 10 mg、ガランタミンの一日用量が約 16 mg〜 約 32 mg、およびリバスチグミンの一日用量が約 3 mg〜 約 9 mgである、請求項 1の微小血管系に関連する疾患、自己免疫疾患、様々な疼痛症候群、尿閉、パーキンソン病、および血行不全の治療方法。
【請求項4】
微小血管系に関連する疾患、自己免疫/炎症性疾患、様々な疼痛症候群、尿閉および血行不全が、慢性腎不全、糖尿病性多発神経障害、糖尿病性末梢血流症状、糖尿病性末梢神経系症状、線維筋痛症疼痛症候群、筋筋膜性疼痛症候群、神経因性疼痛、幻肢痛、放射線誘発神経炎、反射性交感神経性ジストロフィー、上肢および下肢の両方に伴う神経叢障害(上腕/腰仙骨神経叢障害)、尿閉、血行不全、自己免疫/炎症性疾患、多発性硬化症、パーキンソン病、関節リウマチ、クローン病、狼瘡、炎症性腸疾患、および上記障害の組合せからなる群から選択される、請求項 1の微小血管系に関連する疾患、自己免疫/炎症性疾患、様々な疼痛症候群、尿閉および血行不全の治療方法。
【請求項5】
有効量のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を投与することを含む、環境ストレスに関連する疾患の治療方法。
【請求項6】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、タクリン、それらの組合せ、およびそれらの医薬上許容される塩からなる群から選択される、請求項 5の環境ストレスに関連する疾患の治療方法。
【請求項7】
成人のドネペジルの一日用量が約 5 mg〜 約 10 mg、ガランタミンの一日用量が約 16 mg〜 約 32 mg、およびリバスチグミンの一日用量が約 3 mg〜 約 9 mgである、請求項 5の環境ストレスに関連する疾患の治療方法。
【請求項8】
環境ストレスが、ADD (注意欠陥障害)、ADHD (注意欠陥多動性障害)、喘息、呼吸困難、睡眠時無呼吸、勃起不全、IBS (過敏性腸症候群)、異常リポ蛋白血症、シックハウス症候群、および憩室症からなる群から選択される疾患または障害として現れる、請求項 5の環境ストレスに関連する疾患の治療方法。
【請求項9】
有効量のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を投与することを含む、振戦、運動失調、CNS 変性疾患、神経筋変性疾患、ALS (筋萎縮性側索硬化症)、ジスキネジア、脳炎、および心臓、膵臓および肺の内臓微小血管疾患からなる群から選択される微小血管疾患の治療方法。
【請求項10】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン およびそれらの医薬上許容される塩からなる群から選択される、請求項 9の微小血管疾患の治療方法。
【請求項11】
成人のドネペジルの一日用量が約 5 mg〜 約 10 mg、ガランタミンの一日用量が約 16 mg〜 約 32 mg、およびリバスチグミンの一日用量が約 3 mg〜 約 9 mgである、請求項 9の微小血管疾患の治療方法。

【公表番号】特表2008−530119(P2008−530119A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555268(P2007−555268)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/004857
【国際公開番号】WO2006/086698
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507272821)
【氏名又は名称原語表記】Stephen WILLS
【Fターム(参考)】