説明

アゾール化合物のモノ−リジン塩

【化1】


第二級または第三級ヒドロキシ基を有するトリアゾール化合物のモノ−リジン塩が提供される。より詳細には、一般式I(ここで、式I中のAは、第二級または第三級ヒドロキシ基を含有するタイプのトリアゾール抗真菌性化合物の非ヒドロキシ部分を表す。式I中のRおよびRはそれぞれ水素原子または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であることができる)を有する新規な水溶性トリアゾール抗真菌性モノ−リジン塩化合物、またはその溶媒和物が提供される。新規な水溶性アゾール化合物は真菌感染症の治療に有用であり、経口、局所および非経口投与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、重い全身真菌感染症の治療に有用であり、経口、局所および非経口投与に好適である新規な水溶性アゾール化合物に関する。より詳細には、本発明は、一般式I
【0002】
【化1】

【0003】
を有する新規な水溶性塩プロドラッグに関する。
【0004】
式Iで、RおよびRのそれぞれが、水素原子または(C−C)アルキル基であり、Aが、第二級または第三級ヒドロキシ基を含有するタイプのトリアゾール抗真菌性化合物の非ヒドロキシ部分である。また、本発明は、式Iの塩化合物の薬理学的に許容される溶媒和物、当該溶媒和物の使用方法およびその製造方法も含まれる。
【背景技術】
【0005】
トリアゾール抗真菌性化合物は、本技術分野では知られている。知られている幾つかのクラスのうち、特に強力な一のクラスは、第三級ヒドロキシル基を含有する。例えば、米国特許第5,648,372号明細書は、(2R,3R)−3−[4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル]−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−ブタン−2−オールの化合物が抗真菌活性を有することを開示している。米国特許第5,648,372号明細書の化合物は、以下に示される。
【0006】
【化2】

【0007】
しかしながら、このクラスの化合物の有用性は、低い水溶解度によって制限される。例えば、6.8のpHの水への上記トリアゾール化合物の溶解度は、0.0006mg/mLである。これは好適な非経口投薬形態の開発を大いに妨げる。
【0008】
この問題に対処する一の方法は、欧州特許出願第829478号明細書に開示されており、(以下に示されるように)アゾール抗真菌薬の水溶解度が連結アミノ酸を該分子のアゾール部分に結合させることによって高められる。
【0009】
【化3】

【0010】
あるいは、国際公開第97/28169号パンフレットは、フォスフェイト部分が、例えば、以下に示される式を有する抗真菌性化合物の第三級ヒドロキシル部分に直接結合させられ得ることを開示している。
【0011】
【化4】

【0012】
一方、米国特許第5,707,977号明細書および国際公開第95/19983号パンフレットは、以下に示される一般式を有する水溶性プロドラッグを開示している。
【0013】
【化5】

【0014】
上の式で、Xが、OP(O)(OH)または容易に加水分解できるエステルOC(O)RNRである。
【0015】
対照的に、国際公開第95/17407号パンフレットは、以下に示される一般式の水溶性アゾール・プロドラッグを開示している。
【0016】
【化6】

【0017】
上の式では、XがP(O)(OH)、C(O)−(CHR−OP(O)(OH)またはC(O)−(CHR−(OCHRCHRORである。
【0018】
他のアゾール化合物が提案されてきた。例えば、国際公開第96/38443号パンフレットは、以下に示される一般式の水溶性アゾール・プロドラッグを開示している。
【0019】
【化7】

【0020】
米国特許第5,883,097号明細書は、以下に示されるような、例えば、グリシンエステルなどの水溶性アミノ酸アゾール・プロドラッグを開示している。
【0021】
【化8】

【0022】
ヒドロキシル含有薬物へのフォスフォノオキシメチル部分の導入が、ヒドロキシル含有薬物の水溶性プロドラッグを製造するための方法として開示されている。
【0023】
欧州特許出願第604910号明細書は、以下に示されるような一般式のフォスフォノオキシメチルタキサン誘導体を開示している。
【0024】
【化9】



【0025】
上の式で、R’、R’’、R’、R’またはR’の少なくとも1つが、OCHOP(O)(OH)である。
【0026】
欧州特許出願第639577号明細書は、式T−[OCH(OCHOP(O)(OH)(ここで、式中のTが、置換3−アミノ−2−ヒドロキシプロパノイルオキシ基をC13炭素原子に持つタキサン部分であり、nが、1、2または3であり、mが、0または両端を含む1〜6の整数である)のフォスフォノオキシメチルタキサン誘導体を開示している。
【0027】
国際公開第99/38873号パンフレットは、ジアリール1,3,4−オキサジアゾロン・カリウムチャネル開口薬のO−フォスフォノオキシメチルエーテル・プロドラッグを開示している。
【0028】
ゴリック・J.(Golik,J.)ら著、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、6(1996)、1837〜1842ページは、以下に示されるものなどの、パクリタキセルの新規な水溶性プロドラッグを開示している。
【0029】
米国特許第6,362,172号明細書は、以下に示される一般式を有する水溶性アゾール・プロドラッグを開示している。
【0030】
【化10】

【0031】
上の式で、Aが、第二級または第三級ヒドロキシ基を含有するタイプのトリアゾール抗真菌性化合物の非ヒドロキシ部分であり、RおよびRが、それぞれ独立して水素または(C−C)アルキルである。
【0032】
しかしながら、米国特許第6,362,172号明細書のプロドラッグは、経口投与に容易に使用することができない。
【発明の開示】
【0033】
((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトを含む、第二級または第三級ヒドロキシル基を含有するトリアゾール抗真菌性フォスフェイト化合物のモノ−リジン塩が、以前に開示したものより、予期せぬ優れた特性を有することが分かった。具体的には、本発明は、式I
【0034】
【化11】

【0035】
の、化合物のモノ−リジン塩、または薬理学的に許容されるその溶媒和物に関する。
【0036】
式Iで、RおよびRのそれぞれが、水素原子または(C−C)アルキル基であり、好ましくは1つまたは両方が水素である。同様に、式Iにおいて、Aが、第二級または第三級ヒドロキシ基を含有するタイプのトリアゾール抗真菌性塩化合物の非ヒドロキシ部分を表す。
【0037】
式Iの化合物のうち、Aが、第三級ヒドロキシ基を含有するタイプのトリアゾール抗真菌性化合物の非ヒドロキシ部分を表すものが好ましい。
【0038】
上記のタイプの塩化合物のさらなる実施形態では、Aが、式(i)
【0039】
【化12】

【0040】
(ここで、式(i)のRが、1つもしくはそれ以上(好ましくは1〜3)のハロゲン原子で置換されたフェニル基を表し;Rが、水素またはメチル(CH)を表し;Rが、水素を表し、またはRと一緒になって=CHを表してもよく;Rが、ハロゲン、=O、CH=CH−(C)−OCHCFCHF、ならびにCNおよびOCHCFCHFからなる群から選択された1つもしくはそれ以上の基で置換されたフェニルから選択された1つもしくはそれ以上の基で、任意に置換されていてもよい5もしくは6員窒素含有環、またはハロゲンおよびメチルピラゾリルからなる群から選択された1つもしくはそれ以上の基で置換されたフェニルを表す)
である。
【0041】
が、窒素含有複素環を表す場合、かかる例には、各環がハロゲン、=O、CH=CH−(C)−OCHCFCHF、ならびにCNおよびOCHCFCHFからなる群から選択された1つもしくはそれ以上の基で置換されたフェニルからなる群から選択された1つもしくはそれ以上の基で、任意に置換されている、チアゾリル、ピリミジニル、およびトリアゾリルが含まれる。
【0042】
Aの例には、下記が含まれるが、それらに限定されない。
【0043】
【化13】

【0044】
【化14】

【0045】
【化15】

【0046】
上の具体的な化合物のうち、下記が好ましい実施形態である。
【0047】
【化16】

【0048】
および
【化17】

【0049】
式Iのモノ−リジン塩化合物のより好ましい実施形態は、以下に示されるような構造を有する。
【0050】
【化18】

【0051】
式Iの塩化合物の溶媒和物形もまた、本発明のさらなる実施形態である。
【0052】
第三級アルコールを含有する構造体への本発明の適用に加えて、この発見は第二級アルコールを含有する抗真菌性原料に適用できることも、また理解されるべきである。第二級ヒドロキシ基を含有するタイプのトリアゾール抗真菌性塩化合物の非ヒドロキシ部分の幾つかの例には、下記が含まれるが、それらに限定されない。
【0053】
【化19】

【0054】
【化20】

【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
一般式Iのモノ−リジン塩化合物は、生体内投与された時に、アルカリ性フォスファターゼの存在下にて、生物活性な親アゾールに変換されるので、「プロドラッグ」として機能する。同様に、一般式Iのモノ−リジン塩化合物は、好適な溶解性を維持したまま、製造中のより良好なハンドリングにつながり、該プロドラッグを経口、局所および非経口用途に好適なものにする、低い吸湿性で、予期せぬ改善された物理的安定性を有する。
【0056】
本発明のモノ−リジン塩化合物は、水和物、溶媒和物または非溶媒和物であることができる。幾つかの同形溶媒和物形の結晶構造体もまた可能である。例えば、かかる溶媒和物形には、水、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコールおよびn−プロピルアルコールに由来するものが含まれる。さらに、本発明のモノ−リジン塩またはその溶媒和物の結晶多形もまた可能である。
【0057】
Aが、
【0058】
【化21】

【0059】
または
【0060】
【化22】

【0061】
である場合には、それらの化合物の溶媒和物が好ましく、ここで、これらの化合物のうち第1の化合物が最も好ましい。
【0062】
本発明のモノ−リジン塩は、同じ化合物のビス−リジン塩と比して、改善されたハンドリングにつながる、予期せぬ良好な溶解性および低い吸湿性で高純度の結晶性固体として得ることができる。例えば、本発明のモノ−リジン塩は、((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトの結晶化塩であることができる。
【0063】
本明細書で用いる「(C−C)アルキル」とは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第二ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルなどの、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の飽和脂肪族基を意味する。
【0064】
本明細書で用いる用語「ハロゲン」とは、クロロ、ブロモ、フルオロおよびヨードを含み、好ましくはクロロまたはフルオロであり、最も好ましくはフルオロである。
【0065】
記載されたように、式IのRおよびRのそれぞれは、水素原子または長さで1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である。例えば、Rおよび/またはRが、メチルまたはエチル基である。好ましくは、式IのRおよびRのそれぞれが、水素を表す。
【0066】
同様に、式(i)のR〜Rは幾つかの可能な置換基であることができる。一の実施形態では、モノ−リジン塩またはその溶媒和物は、2,4−ジフルオロフェニルであるRを有する。別の実施形態では、モノ−リジン塩またはその溶媒和物のRは、Rが水素原子である場合にはメチルである。さらなる別の実施形態では、式(i)のRが、4−(4−シアノフェニル)−チアゾール−2−イルである。
【0067】
本発明のさらなる実施形態は、以下に示されるような、((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン塩、または薬理学的に許容されるその溶媒和物である。
【0068】
【化23】

【0069】
本発明のモノ−リジン塩および溶媒和物は結晶形であってもよく、錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、乳液、軟膏、ローション、クリームまたはスプレーの形で医薬組成物に使用されてもよい。例えば、プロドラッグはモノ−リジン塩化合物の結晶性エタノール溶媒和物を含むことができる。
【0070】
同様に、式Iのモノ−リジン塩または溶媒和物は、そのビス−リジン塩形と比べてその水溶解性を驚くほどに維持し、低い吸湿性に起因して予想外に改善されたハンドリングを有し、それを非経口投与だけでなく経口投与にも使用されることを可能にする。
【0071】
さらに、モノ−リジン塩およびその溶媒和物は、ビス−リジン塩と比べて製造および圧縮(圧縮挙動)中の改善されたハンドリングを示し、従って固体投薬形態(すなわち、錠剤)に好適である。モノ−リジン塩は、ビス−リジン塩形と比較してより低い凝集指数、そして親化合物(すなわち、ラヴコナゾール(Ravuconazole))と比べて類似の凝集指数を有することが分かった。また、モノ−リジン塩およびその溶媒和物は、ビス−リジン形と比較した時により高い嵩密度および錠剤密度を示す。このように、モノ−リジン形は圧縮(錠剤への)に対して存続可能であり、減少した薬物負荷を有し、ビス−リジン形に対して(コーティングありまたはなしで)高湿度条件に対してより少ない感受性というさらなる利点を有する。さらに、モノ−リジン塩およびその溶媒和物は、溶液で(薬物物質としておよび調合物での両方で)安定であり、結晶形で単離することができ、生体内で親薬物へ容易に変換される。
【0072】
また、モノ−リジン塩およびその溶媒和物は、より良好な固体状態安定性を示す。固体状態安定性は、本明細書では、周囲条件および/または加速貯蔵条件下におけるAPIの安定性を意味する。例えば、モノ−リジン塩およびその溶媒和物は、ビス−リジンと比較してより低い吸湿(およびその程度)で、改善されたより良好なハンドリングを有する。また、かかる特性は、より良好なハンドリングおよび長期安定性(より低い水分、より少ない分解など)にもつながる。
【0073】
モノ−リジン塩またはその溶媒和物の吸湿挙動は、より低いRH値(例えば、0%から50%RHまで)では相当するビス−リジン塩またはその溶媒和物のそれと同程度であるが、驚くべきことに、50%RHより上のより高いRH値でははるかにより低い(例えば、ビス−リジン・モノエタノレートについての10%重量変化と比べてモノ−リジン・モノエタノレートについては60%RHで2〜3%重量変化)吸湿挙動を示す。ビス−リジン塩化合物と比較して、モノ−リジン塩化合物は、図1〜4から理解できるように、高い相対湿度で、かつ、高温で、予期せぬ改善されたハンドリングおよび吸湿を有する。
【0074】
図1は、(2R,3R)−3−[4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル]−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−2−[(ジハイドロジェン フォスフォノキシ)メトキシ]ブタンのビス−リジン・エタノール溶媒和物の吸湿を示す。吸着が−○−で、脱着が−●−で示される、重量変化(y軸)対相対湿度(x軸)が示される。
【0075】
図2は、((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・エタノール溶媒和物の吸湿を示し、重量変化(y軸)対相対湿度(x軸)が示され、吸着が−○−で、脱着が−●−で示される。
【0076】
図3は、((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・イソプロピルアルコール溶媒和物の吸湿を示し、重量変化(y軸)対相対湿度(x軸)が示され、吸着が−○−で、脱着が−●−で示される。
【0077】
図4は、モノ−リジン塩とビス−リジン形(ジ−リジンとしても知られる)とを比較した吸湿データを示し、ビス−リジン形が−◆−で表され、モノ−リジン形が−▲−で表される、重量変化(y軸)対相対湿度(x軸)を示す。
【0078】
図5は、((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・エタノール溶媒和物(実施例1)のPXRDオーバーレイを示し、単結晶構造からシミュレートされたものに対して、バルクサンプルから実験的に取得されたものを示す。
【0079】
図6A〜6Cは、実施例1についての核磁気共鳴データに関する。図6AはH−1 NMRデータに関し、図6BはF−19 NMRデータに関し、図6CはP−31 NMRデータに関する。
【0080】
図7は、熱流量(W/g)がy軸であり、温度(℃)がx軸である、実施例1についてのDSC曲線である。
【0081】
図8は、実施例1についてのTGA曲線である(y軸が重量(%)、x軸が温度(℃)である)。
【0082】
図9は、((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・イソプロピルアルコール溶媒和物(実施例5)のPXRDオーバーレイを示し、単結晶構造からシミュレートされたものに対して、バルクサンプルから実験的に取得されたものを示す。
【0083】
図10は、熱流量(W/g)がy軸であり、温度(℃)がx軸である、実施例5についてのDSC曲線である。
【0084】
図11は、実施例5についてのTGA曲線である(y軸が重量(%)、x軸が温度(℃)である)。
【0085】
図12は、((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・n−プロピルアルコール溶媒和物(実施例6)のPXRDオーバーレイを示し、単結晶構造からシミュレートされたものに対して、バルクサンプルから実験的に取得されたものを示す。
【0086】
図13は、熱流量(W/g)がy軸であり、温度(℃)がx軸である、実施例6についてのDSC曲線である。
【0087】
図14は、実施例6についてのTGA曲線である(y軸が重量(%)、x軸が温度(℃)である)。
【0088】
本発明のモノ−リジン塩およびその溶媒和物は、次の一般的な反応スキームによって製造することができる。この方法において、Aは、第三級または第二級ヒドロキシル基を含有するタイプのトリアゾール抗真菌性化合物の非ヒドロキシ部分を表し、Prは、tert−ブチル、ベンジルまたはアリルなどの通常のヒドロキシ保護基を表し、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または(C−C)アルキル基である。最も好ましくは、RおよびRは両方とも水素である。
【0089】
【化24】

【0090】
本方法について詳細に述べると、関連する抗真菌性の親化合物IIは、好適な塩基の存在下に塩化物中間体IIIを用いたO−アルキル化によってエステルフォスフェイト中間体IV(第1中間体)へ変換される。好適な塩基は、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウムアミド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシド、ナトリウム・ビス(トリメチルシリル)アミド、カリウム・ビス(トリメチルシリル)アミド、または水素化ナトリウム+ナトリウム・ビス(トリメチルシリル)アミドなどの、それらの組み合わせであることができる。この反応工程は、約0℃〜50℃、より好ましくは約20℃〜40℃、最も好ましくは約40℃でテトラヒドロフラン、メチル−テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、ジエチルエーテルまたはジメチルアセトアミドなどの不活性有機溶媒中で反応を行うことができる。最も好ましい塩基は水素化ナトリウムであり、最も好ましい溶媒はテトラヒドロフランである。最も好ましいRは水素であり、最も好ましいRもまた水素である。
【0091】
次いで、エステルフォスフェイト中間体IVは、ヒドロキシル保護基Prを除去するために通常の脱保護工程を受け、次に式Vの(第2)中間体を形成する(T.W.グリーン(T.W.Greene)ら著、Protecting Groups in Organic Synthesis(有機合成における保護基)、ジョン・ウィリー&サンズ(John Wiley & Son)社、1991年);参照により本明細書に援用される;を参照されたい)。かかる工程で使用される試薬は、使用される特定のヒドロキシル保護基に依存するが、当業者には周知であろう。最も好ましいヒドロキシ保護基は、適切な不活性有機溶媒中トリフルオロ酢酸、塩化水素酸またはギ酸で除去することができるtert−ブチル基である。不活性有機溶媒は、例えば、塩化メチレン、ジクロロエタン、メチルベンゼンまたはトリフルオロメチルベンゼンであってもよい。ジ−tert−ブチルエステルでの好ましい脱保護工程のケースでは、脱保護工程を約0℃〜40℃の温度で、最も好ましくは約0〜5℃の温度で、塩化メチレン中トリフルオロ酢酸で行うことが好ましい。
【0092】
次いで、中間生成物Vは回収され、逆相C−18カラムクロマトグラフィーまたは溶媒抽出などの通常の手順で精製される。中間生成物Vは、もちろん、上記のような所望の薬理学的に許容される塩へ常法によって変換されてもよい。次に、中間生成物Vは、本発明のモノ−リジン塩を得るためにリジン源と混合される。
【0093】
具体的には、中間生成物Vは、溶媒(例えば、低級アルコール)に溶解されて遊離酸溶液を形成する。次に、遊離酸溶液(中間生成物Vを含有する)は加熱され、最終生成物Iを得るために、リジン(すなわち、L−リジン)の水溶液で処理され、ここで、pHは約3.5〜約6.0、好ましくは約4.2〜約5.5に調整される。狭いpH範囲は、ビス−リジン塩が生成して混入することなく、式Iの純粋なモノ−リジン塩を得るのに役立つ。
【0094】
【化25】

【0095】
精製された試薬IIIの使用は、上の反応でかなり低収率の中間体IV(おおよそ10〜35%収率)をもたらし、生成物Iの低い全収率をもたらす。しかしながら、ヨウ化物イオン源が上の反応のO−アルキル化工程に添加される場合、中間体IVの収率は予期せぬほどに約90%まで上がり、したがって、また、中間生成物Vの収率を著しく上げる。ヨウ化物イオンの添加は、式
【0096】
【化26】

【0097】
の相当するヨウ化物中間体IIIaの反応系中での形成をもたらし、この試薬の使用は中間体IVの収率に大きな増大をもたらすと考えられる。しかしながら、上の反応の第1工程で中間体IIIをあらかじめ形成された中間体IIIaに置き換えるという試みは、塩化物中間体IIIと比して、ヨウ化物試薬IIIaの大きく低下した安定性のために不成功であった。成功する別の方法は、O−アルキル化工程においてNaH(ヨウ素に対する還元剤としても働く)などの塩基の存在下に、塩化物中間体IIIと一緒にヨウ素を使用することを伴う。ヨウ素はヨウ化物イオンに還元され、それは次に塩化物中間体IIIを反応系中でヨウ化物中間体IIIaに変換して、本方法のこの工程を促進すると考えられる。後述する実施例は、元素状ヨウ素を使用するO−アルキル化工程が、中間体IVを得るこの反応の実施に好ましい方法であることを示す。
【0098】
ヨウ化物イオン源の添加により、ヨウ化物試薬IIIaを反応系中で形成させることによって、または強塩基の存在下でのヨウ素と試薬IIIとの反応によって、中間体IVの大きく増大した収率は、中間体Vが大きく増大した収率で得られることを可能にする。これは、もちろん、式Iのモノ−リジン塩およびその溶媒和物の大きく増大した収率に至る。
【0099】
ヨウ化物イオン源は、好ましくはヨウ化ナトリウムであるが、ヨウ化リチウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化カドミウム、ヨウ化コバルト、ヨウ化銅、ヨウ化ルビジウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化亜鉛およびヨウ化カルシウムを含んでもよい。親化合物A−OHの当量当たり約2〜3当量のヨウ化物塩が、通常、使用される。
【0100】
元素状ヨウ素がカップリング工程で使用される場合、親化合物A−OHの当量当たり約0.1〜1.0当量、好ましくは0.5当量のヨウ素が使用される。
【0101】
ヨウ素またはヨウ化物イオンが使用される場合に使用される塩基および溶媒は、試薬IIIそれ自体が使用される場合に上に記載されたものと同じものである。
【0102】
上の反応で使用される置換基が、望ましくない副反応をもたらすかもしれないアミノまたはカルボキシレート基などの、ある種の反応感受性官能基を含有する場合、かかる基は当業者に公知の通常の保護基によって保護されてもよいことは理解されるであろう。好適な保護基およびそれらの除去方法は、例えば、テオダーラ・W.グリーン(Theodora W.Greene)著、Protective Groups in Organic Synthesis(ジョン・ウィリー&サンズ社、1991年)に例示されている。
【0103】
式Iの範囲内のある種の生成物が光学異性体の形成をもたらし得る置換基を有するかもしれないことは理解されるであろう。本発明は、その範囲内にそのエピマー混合物だけでなくすべてのかかる光学異性体、すなわち、R−またはS−またはラセミ体を含むことが意図される。
【0104】
本発明の薬理学的に活性な塩またはその溶媒和物は単独で使用されてもよいし、または活性トリアゾール原料に加えて、薬理学的に許容される担体、補助剤もしくは希釈剤を含む医薬もしくは医薬組成物として調合されてもよい。
【0105】
医薬組成物は、カプセル、錠剤、粉末などの固体形であってもよいし、または溶液、懸濁液もしくは乳液などの液体形であってもよい。かかるカプセル、錠剤などは放出をコントロールした製剤を含有してもよい。ゼラチンカプセルまたは圧縮錠剤などのかかる固体形は、任意の通常技法で調製することができる。例えば、活性化合物は、賦形剤(例えば、デンプン、ラクトース)、結合剤(例えば、ゼラチン、セルロース、ゴム)、崩壊剤(例えば、アルギネート、プリモゲル(Primogel)、およびコーンスターチ)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素)、ならびに甘味剤または香料(例えば、グルコース、蔗糖、サッカリン、サリチル酸メチル、およびペパーミント)などの薬理学的に許容される担体を含む処方中へ組み入れることができる。また、様々なコーティングも、カプセルおよび錠剤の風味、味、色、および形状を改善するためにカプセルおよび錠剤向けに調製することができる。さらに、脂肪油、滅菌水、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤ならびにコーン油、ピーナッツ油およびゴマ油などの食用油などの液体担体で、活性原料の性質や所望の特定の投与形態に適したものを添加できる。香料、着色剤、保存剤ならびに酸化防止剤、例えば、ビタミンE、アスコルビン酸、BHTおよびBHAなどの、医薬組成物の調製に慣用される補助剤が効果的に含められてもよい。当該組成物は、いつでも使用できる形であってもよいし、または滅菌水などの好適な媒体を用いた薬物送達時における再調製のための粉末形であってもよい。
【0106】
例えば、錠剤は、場合により1つもしくはそれ以上の補助的な成分と共に、圧縮または成形によって製造されてもよい。圧縮錠剤は、場合により薬学的に許容される担体と混合された、粉末または顆粒を含むがそれらに限定されない、自由流動形の活性成分を好適な機械で圧縮することによって製造されてもよく、担体は1つもしくはそれ以上の滑剤、不活性希釈剤、界面活性剤または分散剤などを含んでもよい。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らされた粉末化化合物の混合物を好適な機械で成形することによって製造されてもよい。組成物中に存在する活性成分の量は、患者に投与されるべき活性成分の量に依存して変わってもよい。
【0107】
同様に、一般式Iのモノ−リジン塩および/またはその溶媒和物は低い吸湿性のために加工中の改善されたハンドリングと、良好な溶解性とを有するので、本発明は、凍結乾燥製剤として投与することができる。同様に、かかる特性は、本発明が、様々な手段によって投与されることを可能にする。投与は、本明細書ではその幾つかのモードを意味する。例えば、投与は、経口、局所または非経口(静脈内、脈管内、腹腔内、皮下、筋肉内、胸骨内および輸液技法を含む)であることができ、ここで、投与は有効なまたは治療上の抗真菌性量の塩化合物を用いる。哺乳類対象(例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ブタなど)は、それを必要とする時にかかる経口、局所または非経口投与を受けることができる。
【0108】
注射可能な使用に好適な医薬溶液は、無菌の注射可能な溶液または懸濁剤の即時調製のための滅菌水性溶液または分散剤と滅菌粉末とを含む。添加剤には、溶解助剤(例えば、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム)、バッファー(例えば、クエン酸ナトリウム、グリセリン)、等張化剤(例えば、グルコース)および安定剤(例えば、ポリエチレングリコール)が含まれる。活性塩または遊離塩基としての溶媒和物の溶液または懸濁液は、グリセロール、液体、ポリエチレングリコール、オイル中のそれらの混合物、または非経口的に許容される幾つかの他の非毒性希釈剤もしくは溶媒中で、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として調製することができる。用いられてもよい許容される媒体および溶媒の中には、水、リンゲル(Ringer)液、および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の不揮発性油が通常、溶媒または懸濁媒体として用いられる。貯蔵および使用の通常条件下で、これらの調製物は防腐剤を含有する。さらに、注射用組成物は、アンプルでのまたはマルチ用量容器での単位用量型で調製されてもよく、懸濁剤、安定剤、および分散剤などの添加剤を含有してもよい。すべてのケースで、その形態は無菌でなければならず、かつ、容易な注射針通過性が存在する程度まで流動性でなければならない。それは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、かつ、細菌のような微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、それらの好適な混合物、ならびに植物油を含有する、溶媒または分散媒体であることができる。
【0109】
さらに、投与用量は変わり得る。投与されるべき用量は、かなりの程度まで、使用中の特定の化合物、調合された特定の組成物、投与のルート、宿主の性質および状態ならびに治療中の特定の部位および組織に依存する。特定の好ましい用量および適用のルートの選択は、次に、医師または獣医の裁量に任せられ、所定の方法で決定することができる。
【0110】
さらに、投与時間も変わり得る。しかしながら、一般に、塩または溶媒和物化合物は、約5mg/日〜約1.0g/日の量で、哺乳類宿主に非経口または経口投与されてもよい。これらの投与量は、典型的な平均ケースであり、より高いまたはより低い用量にメリットがある個々の場合があり得るし、かかる用量はこの発明の範囲内である。さらに、本発明の化合物の投与は、単回投与か分割投与かのどちらかで行うことができる。
【0111】
経口または非経口投与される場合、当業者は、塩化合物の好適量および投与時間を決定することができる。
【0112】
経口投与される場合、塩化合物の好適量は85mg〜1020mgの範囲にあり、そして1日に1回〜1日に3回の範囲内である。
【0113】
非経口投与される場合、塩化合物の好適量は85mg〜1020mgの範囲にあり、そして1日に1回〜1日に3回の範囲内である。
【0114】
あるいは、本発明の化合物は坐薬またはペッサリーの形で投与することができ、またはそれらはローション、溶液、またはクリームの形で局所塗布されてもよい。さらに、それらは、必要とされる安定剤および/または防腐剤と一緒に白蝋または柔らかい白パラフィンベースからなる軟膏中へ(10%以下の濃度で)組み入れられてもよい。
【0115】
局所投与のためには、組成物は1日に2〜4回、またはその回数をある程度変更して、患部に塗布することができる。
【0116】
局所投与に好適な製剤には、皮膚への浸透に好適な液体または半液体製剤(例えば、塗布薬、ローション、軟膏、クリーム、またはペースト)が含まれる。かかる局所製剤は、キサンタンゴム、ワセリン、蜜蝋、またはポリエチレングリコール、ソルビトール、鉱油、ラノリン、スクワレンなどを含むがそれらに限定されない1つもしくはそれ以上の増粘剤、湿潤剤および/または皮膚軟化剤を含むことができる。例えば、ローションまたはクリームでは、本発明の塩または溶媒和物は、例えば、次のもの:鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコール、液体パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水の1つもしくはそれ以上の混合物に懸濁または溶解される。活性塩または溶媒和物を含有する軟膏処方については、活性成分は、例えば、次のもの:鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋および水の1つもしくはそれ以上の混合物に懸濁または溶解される。本発明の塩または溶媒和物の活性処方の好適な局所量は、毎日1〜4回、好ましくは1または2回投与される0.1mg〜150mgである。局所投与については、活性成分は0.001%〜10%w/w、例えば、処方の1%〜2重量%含有することができるが、処方の10%w/w程度含有してもよく、好ましくは5%w/w以下、より好ましくは処方の0.1〜1%含有してもよい。
【0117】
本発明の塩またはその溶媒和物はまた、鼻腔内にまたは吸入によって投与することもでき、そして好適な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134A[商標])もしくは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA[商標])などのハイドロフルオロアルカン、二酸化炭素または他の好適なガスを用いて、加圧容器、ポンプ、スプレーまたは噴霧器から乾燥粉末吸入器またはエアゾールスプレーという使い勝手の良い形で供給される。加圧エアゾールの場合は、用量単位は、計量された量を放出するためのバルブを装備することによって測定されてもよい。加圧容器、ポンプ、スプレーまたは噴霧器は、例えば、溶媒としてエタノールと推進剤との混合物を用いた、活性塩または溶媒和物の溶液または懸濁液を含有してよく、さらに、滑沢剤、例えば、ソルビタントリオレエートを含有してもよい。吸入器または注入器での使用のためのカプセルおよびカートリッジ(例えば、ゼラチンでできた)は、本発明の化合物とラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末ベースとの粉末混合物を含有するように処方されてもよい。スプレー用組成物は、例えば、式Iの新規塩(またはその溶媒和物)の上述されたような薬理学的に許容される液体の担体を用いた溶液を含むであろう。スプレーは、局所投与のためにも使用することができる。また、吸入用組成物は、式Iの新規モノ−リジン塩またはその溶媒和物、ならびに上述されたような許容される推進剤を有するであろう。
【0118】
本発明のモノ−リジン塩、またはその溶媒和物は、それらが、特に哺乳類そして最も特にヒトをはじめとする、動物で薬理活性を有するので、有用である。具体的には、本発明の塩または溶媒和物は、カンジダ(Candida)、白癬菌属(Trichophyton)、小胞子菌属(Microsporum)、または表皮糸状菌属(Epidermophyton)の種によって引き起こされるものをはじめとする、局所真菌感染症の治療または予防に有用である。さらに、それらは、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)によって引き起こされる粘膜感染の予防または治療に有用である。また、それらは、例えば、カンジダ・アルビカンス,クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、コクシジオイデス属(Coccidioides)、パラコクシジオデス属(Paracoccidiodes)、ヒストプラズマ属(Histoplasma)、またはブラストミセス属(Blastomyces)の種によって引き起こされる全身真菌感染症の予防または治療に使用することもできる。
【0119】
したがって、本発明の別の態様によれば、薬理学的にまたは治療的に有効な量の該化合物を宿主に投与することを含む真菌感染症の治療方法が提供される。宿主は特に哺乳類宿主、最も特にヒト患者である。
【0120】
医薬品としての本発明の塩またはその溶媒和物の使用および真菌感染症の治療のための薬剤の製造での本発明の化合物の使用もまた提供される。
【0121】
本発明の化合物の抗真菌活性のin vivo評価は、最小阻止濃度(MIC)を測定することによって行うことができる。MICは、試験微生物の増殖を阻止する試験化合物の濃度である。実際には、それぞれが試験化合物をある特定の濃度で組み入れられた一連の寒天プレートが真菌株を接種され、各プレートが次に37℃で48時間培養される。プレートは真菌増殖の有無について調べられ、該当濃度が書き留められる。試験に用いることができる微生物には、カンジダ・アルビカンス、アスペルギルス・フミガーツス、白癬菌属種、小胞子菌属種、表皮糸状菌フロッコサム(floccosum)、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)、およびトルロプソス・ガルブラータ(Torulopsos galbrata)が含まれる。プロドラッグとして、本発明の幾つかの塩またはその溶媒和物は、in vitro試験では活性でないかもしれないことが認められるべきである。
【0122】
本発明の塩またはその溶媒和物のin vivo評価は、真菌の株(例えば、カンジダ・アルビカンス)を接種されたマウスへの腹腔内もしくは静脈内注射によってまたは経口投与によって一連の投与量レベルで実施することができる。活性は、未処理群のマウスの死亡後に異なる用量レベルでの処理群のマウスの生存を比較することによって測定される。試験塩または溶媒和物化合物が感染の致死効果からの50%保護を提供する投与量レベルが書き留められる。
【0123】
本発明のモノ−リジン塩またはその溶媒和物は、親トリアゾール抗真菌性化合物の良好な溶解性を維持しながら低い吸湿性のためにハンドリングを予期せぬほどに高め、生物活性な化合物を放出する(例えば、プロドラッグとして機能する)。例えば、図2に示されるように、エタノール溶媒和物形に関しては、60%RHにおいて、吸着については2.5%未満の重量変化があり、脱着については5%未満の重量変化がある。別の例として、イソプロピルアルコール溶媒和物に関しては、60%RHにおいて、吸着については0.5%未満の重量変化があり、脱着については1%未満の重量変化がある。
【実施例】
【0124】
次の実施例は本発明を例示するが、本発明の限定として意図されるものではない。実施例で用いられる省略形は、当業者に周知の通常の省略形である。用いられる省略形の幾つかは次の通りである。
【0125】
【表1】

【0126】
次の実施例では、すべての温度は摂氏(℃)で示す。融点は電熱装置で測定し、補正していない。プロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルはブルッカー(Bruker)−500、ブルッカーAM−300またはバリアン・ジェミニ(Varian Gemini)300分光計で記録する。すべてのスペクトルは、特に明示しない限り、CDCl3またはD2O中で測定する。化学シフトは、テトラメチルシラン(TMS)または対照溶媒ピークと比べてδ単位(ppm)で報告し、プロトン間結合定数はヘルツ(Hz)単位で報告する。分裂パターンは次の通り示される:s、シングレット;d、ダブレット;t、トリプレット;q、カルテット;m、マルチプレット;br、幅広いピーク;dd、ダブレットのダブレット;dt、トリプレットのダブレット;およびapp.d、見かけのダブレットなど。質量スペクトルは、直接化学イオン化(DCI、イソブテン)、高速原子衝撃(FAB)、または電子イオンスプレー(ESI)を利用するクレイトス(Kratos)MS−50またはフィネガン(Finnegan)4500機器で記録する。
【0127】
薄層クロマトグラフィー(TLC)は、プレコートされたシリカゲル・プレート(60F−254)で実施し、UV光、ヨウ素蒸気、および/またはリンモリブデン酸メタノール溶液を付けての加熱による染色を用いて目に見えるようにする。逆相クロマトグラフィーは、大気圧より幾分上の圧力でC18シリカゲル(ウォーターズ・コーポレーション分取(Waters Corporation Preparative)C18 125A)を用いてガラス・カラムで行う。
【0128】
実施例1
((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイト モノ−リジン塩エタノール溶媒和物
【0129】
【化27】

【0130】
工程A
機械撹拌機、窒素導入アダプター、ゴムセプタム付き等圧滴下ロートおよび温度プローブを備え付けたオーブン乾燥した1L丸底フラスコに、水素化ナトリウム(2.89g、0.069モル、60%)およびTHF(50mL)を装入した。この懸濁液を撹拌しながら、30mLのTHF中の(2R,3R)−3−[4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル]−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オール(式B)(10g、0.023モル)を室温で20分間にわたって滴下した。45分間撹拌した後、THF(30mL)中のヨウ素(2.99g、0.0118モル)の溶液を10分にわたって滴下し、続けて化合物リン酸ジ−tert−ブチルクロロメチル(式III’)(13.29g、0.035モル、約68%純度)を15分にわたって滴下した。反応混合物を約41℃で4時間撹拌して反応を完結させた。反応の完結はインプロセスHPLCによって判断した。
【0131】
【化28】

【0132】
反応混合物を氷−冷水(100mL)へ注いだ。水相を分離し、酢酸エチル(3×50mL)で抽出し、有機抽出物を合わせて、10%チオ亜硫酸ナトリウム(50mL)、水(50mL)、食塩水(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧下に濃縮して淡黄色オイル(22.8g、インプロセスHPLC:約97面積パーセント)を与えた。粗生成物(式IV)を「そのまま」工程Bに使用した。
【0133】
工程B
電磁撹拌機、冷却浴、pHプローブおよびN導入口−排出口を備え付けた丸底フラスコに、CH2Cl2(23mL)中の上記工程Aの生成物(式IV)(7.5g)を装入し、0℃に冷却した。この溶液を撹拌しながら、トリフルオロ酢酸(8.8mL)をゆっくり加え、3時間撹拌して反応を完結させた。反応の完結はインプロセスHPLCによって判断した。反応混合物を2N NaOH(64mL)の冷溶液へ注いだ。反応混合物を酢酸tert−ブチル(2×65mL)で抽出して有機不純物すべてを除去した。ビスナトリウム塩生成物を含有する水層を活性炭(10g)で処理し、セライト(Celite)層を通して濾過した。澄明な濾液を1N HClでpH2.5に酸性化した。遊離酸生成物を酢酸エチル(2×50mL)へ抽出した。有機層を合わせて水で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過し、濾液を減圧下に濃縮して3.39gの粗生成物Vを与えた。あるいは、本発明の好ましい態様では、工程Bは連続プロセスとして実施することができ、その詳細は当業者によって決定することができる。
【0134】
【化29】

【0135】
工程C
上記で得られた生成物Vをメタノール(75mL)に溶解させた。この遊離酸溶液へ、L−リジン(1.8g)を、pHを4.2〜5.5に維持しながら加え、混合物を60℃で4.5時間加熱した。熱い反応混合物をセライト層を通して濾過した。濾液を約5mLまで濃縮し、エタノール(10mL)と混合し、65℃に加熱し、モノ−リジン塩の溶媒和物を晶析させた。溶媒和物をブフナー(Buchner)ロート上に集め、真空下に乾燥させて3.71gの標題の溶媒和物化合物を結晶性固体として与えた。
【0136】
【化30】

【0137】
粉末X線回折データ(PXRD)(図5参照)、単結晶からのX線結晶学的データ(表1〜2)および核磁気共鳴スペクトルデータ(図6A、6B、6C)を集め、示差走査熱量測定法曲線(図7)および熱重量分析(TGA)曲線(図8)を実施例1について得た。
【0138】
【表2】

【0139】
【表3】

【0140】
【表4】

【0141】
【表5】

【0142】
実施例2
1−((2S,3S)−3−(4−(4−(4−(4−(((3S)−5−((1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル)−5−(2,4−ジフルオロフェニル)−テトラヒドロフラン−3−イル)メトキシ)フェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン塩
下の化合物を式Bの化合物の代わりに使用する以外は、実施例1の工程Aを繰り返す。
【0143】
【化31】

【0144】
式IV’の化合物の粗生成物を得て、「そのまま」工程Bに使用する。
【0145】
【化32】

【0146】
式IV’の化合物を式IVの化合物の代わりに使用する以外は、実施例1の工程Bを繰り返す。粗生成物V’を製造する。
【0147】
【化33】

【0148】
式V’の化合物を式Vの化合物の代わりに使用する以外は、実施例1の工程Cを繰り返してモノ−リジン塩化合物を製造する。
【0149】
【化34】

【0150】
実施例3
((2R,3R)−3−(3−((E)−4−(2,2,3,3,−テトラフルオロプロポキシ)スチリル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン塩
下の化合物を式Bの化合物の代わりに使用する以外は、実施例1の工程Aを繰り返す。
【0151】
【化35】

【0152】
式IV’’の化合物の粗生成物を得て、「そのまま」工程Bに使用する。
【0153】
【化36】

【0154】
式IV’’の化合物を式IVの化合物の代わりに使用する以外は、実施例1の工程Bを繰り返す。粗生成物V’’を製造する。
【0155】
【化37】

【0156】
式V’’の化合物を式Vの化合物の代わりに使用する以外は、実施例1の工程Cを繰り返してモノ−リジン塩化合物を製造する。
【0157】
【化38】

【0158】
実施例4
1−((2S,3S)−3−(4−(4−(4−(4−(((3S)−5−((1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチル)−5−(2,4−ジフルオロフェニル)−テトラヒドロフラン−3−イル)メトキシ)フェニル)ピペラジン−1−イル)フェニル)−5−オキソ−4,5−ジヒドロ−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタン−2−イルオキシ)プロピル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン塩
下の化合物を式Bの化合物の代わりに使用する以外は、実施例1の工程Aを繰り返す。
【0159】
【化39】

【0160】
塩化物中間体IIIのRがエチルであり、Rが水素である、式IV’’’の化合物の粗生成物を得て、「そのまま」工程Bに使用する。
【0161】
【化40】

【0162】
式IV’’’の化合物を式IVの化合物の代わりに使用する以外は、実施例1の工程Bを繰り返す。粗生成物V’’’を製造する。
【0163】
【化41】

【0164】
式V’’’の化合物を式Vの化合物の代わりに使用する以外は、実施例1の工程Cを繰り返してモノ−リジン塩化合物を製造する。
【0165】
【化42】

【0166】
実施例5
((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイト モノ−リジン塩イソプロピルアルコール溶媒和物
工程Cでの濾液を濃縮し、イソプロピルアルコール(100mL)と混合し、65℃に加熱してモノ−リジン塩の溶媒和物を結晶化させた以外は、実施例1の工程A、BおよびCを繰り返した。溶媒和物をブフナーロート上で集め、真空下に乾燥させて標題の溶媒和物化合物を結晶性固体として得た。
【0167】
PXRDデータ(図9参照)、単結晶からのX線結晶学的データ(表3〜4)を集め、DSC曲線(図10)およびTGA曲線(図11)を実施例5について得た。
【0168】
【表6】

【0169】
【表7】

【0170】
【表8】

【0171】
【表9】

【0172】
実施例6
((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイト モノ−リジン塩n−プロピルアルコール溶媒和物
工程Cでの濾液を濃縮し、n−プロピルアルコール(100mL)と混合し、65℃に加熱してモノ−リジン塩の溶媒和物を結晶化させた以外は、実施例1の工程A、BおよびCを繰り返した。溶媒和物をブフナーロート上で集め、真空下に乾燥させて標題の溶媒和物化合物を結晶性固体として得た。
【0173】
PXRDデータ(図12参照)、単結晶からのX線結晶学的データ(表5〜6)を集め、DSC曲線(図13)およびTGA曲線(図14)を実施例6について得た。
【0174】
【表10】

【0175】
【表11】

【0176】
【表12】

【0177】
【表13】

【0178】
比較例1
(2R,3R)−3−[4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル]−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−2−[(ジハイドロジェン フォスフォノキシ)メトキシ]ブタンのビス−リジン塩
実施例1の工程AおよびB後に、得られた式Vの上記生成物をメタノール(75mL)に溶解させた。これに、L−リジン(1.8g)を加え、pHを7.0〜9.0に維持し、混合物を60℃で4.5時間加熱した。熱い反応混合物をセライト層を通して濾過した。濾液を約5mLまで濃縮し、エタノール(100mL)と混合し、65℃に加熱してビスリジン塩を結晶化させた。該塩をブフナーロート上に集め、真空下に乾燥させて3.71gの標題化合物を真っ白でない結晶性固体として与えた。
【0179】
比較例2
(2R,3R)−3−[4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル]−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−2−[(ジハイドロジェン フォスフェノキシ)メトキシ]ブタンのジ−トリス塩
比較例1(10g、11.3ミリモル)を水に溶解させた。22.6mLの1N HClをpH2.65まで加え、抽出のための70mLの酢酸エチルを加えた。混合物を70mL水で洗浄した。EtOAc層中の遊離酸を分離し、ここで、水層をEtOAc(30mL×2)で抽出し、EtOAc層を真空で濃縮して380mgのガラス状固体を与えた。3.6mL水(70〜80℃)中の2.596gのトリスアミン塩を加えた。ミルク状の懸濁液を得た。反応混合物を50〜55℃に2時間加熱し、室温に冷却し、18時間撹拌した。濾過およびEtOAcでのリンスがそれに続いた。ジ−トリス塩をブフナーロート上に集め、真空下に乾燥させて7.92gの該化合物を真っ白でない結晶性固体として与えた。
【0180】
比較例3
(2R,3R)−3−[4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル]−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−2−[(ジハイドロジェン フォスフォノキシ)メトキシ]ブタンのtert−ブチルアミン塩
実施例1の工程AおよびB後に、生成物IVの溶液を50mLの酢酸エチルに溶解させ、これにtert−ブチルアミン(5.3mL)を窒素下に加えた。反応混合物を40℃で約1時間撹拌して生成物を結晶化させた。ビスtert−ブチルアミン塩をブフナーロート上に集め、真空下に乾燥させて2.21gの該化合物を真っ白でない結晶性固体として与えた。
【0181】
比較例4
(2R,3R)−3−[4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル]−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−2−[(ジハイドロジェン フォスフォノキシ)メトキシ]ブタン、ナトリウム塩
【0182】
【化43】

【0183】
工程A
【0184】
【化44】

【0185】
窒素雰囲気下のTHF(40mL)中の(2R,3R)−3−[4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル]−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オール、2(8.74g、20ミリモル)の溶液に、水素化ナトリウム(0.80g、オイル中60%、20ミリモル)を室温で加えた。生じた混合物を室温で0.25時間撹拌し、次にリン酸ジ−tert−ブチルクロロメチル、3(10.3g、40ミリモル)を加えた。反応混合物を50℃で16時間加熱した。反応混合物を次に室温まで放冷し、減圧下に濃縮した。残渣をEtOに溶解させ、HOおよび食塩水で洗浄した。有機層をMgSO上で乾燥させ、減圧下に濃縮して17.0gの粗化合物、4を粘性物質として得た。この粗化合物の小部分を、C−18での逆相クロマトグラフィーによって精製した。カラムを、30%CHCN/HO、38%CHCN/HO、45%CHCN/HO、次に50%CHCN/HOで溶出した。生成物含有画分を、CHCNを除去するために減圧下に濃縮した。得られた水層を次にEtOで抽出した。EtO層を食塩水で洗浄し、乾燥させ、減圧下に濃縮して精製化合物、4を白色固体として与えた。スペクトルデータは次の通りである:1H NMR(300MHz,CDCl):δ 8.35(s,1H),7.98(d,2H,J=9),7.76(s,1H),7.71(d,2H,J=9),7.63(s,1H),7.36〜7.27(m,1H),6.86〜6.78(m,2H),5.53(dd,1H,J=28,6),5.53(dd,1H,J=9,6),5.17(d,1H,J=15),5.03(d,1H,J=15),4.01(q,1H,J=7),1.47(s,9H),1.45(s,9H),1.37(d,3H,J=7)。MS[ESI+(M+H)+]660.2測定値。
【0186】
工程B
【0187】
【化45】

【0188】
粗(2R,3R)−3−[4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル]−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−2−[(ジ−tert−ブチルフォスフォノキシ)メトキシ]ブタン、4(17g)をCHCl(100mL)に溶解させた。この溶液にTFA(50mL)を加え、反応混合物を室温で0.25時間撹拌した。反応混合物を次に減圧下に濃縮した。残渣にHO(200mL)、EtO(100mL)およびEtOAc(100mL)を加えた。水層のpHを、固体NaCOの添加によって7.6に調整し、次に有機層および水層を分離した。水層を次に、400gのC−18の逆相クロマトグラフィーにかけ、HO〜5%CHCN/HOで溶出した。生成物含有画分を減圧下に濃縮し、凍結させ、凍結乾燥させて1.5gの化合物、1を白色固体として与えた(1.5g、2つの工程にわたって12%)。スペクトルデータは次の通りである:1H NMR(500MHz,DO)δ 8.91(s,1H),7.92(s,1H),7.81(d,2H,J=8),7.80(s,1H),7.77(d,2H,J=8),7.21(dd,1H,J=15,9),6.99(ddd,1H,J=9,9,2),6.91(ddd,1H,J=9,9,2),5.35(dd,1H,J=6,6),5.29(d,1H,J=15),5.21(dd,1H,J=6,6),5.19(d,1H,J=15),3.86(q,1H,J=7),および1.35(d,3H,J=7);MS[(ESI−(M−H)−546.1];元素分析.C2318/Na/3.5HOに対する計算値:C,42.21:H,3.85:N,10.70:Na,7.03.実測値:C,42.32:H,3.83:N,10.60:Na,7.04。
【0189】
リン酸ジ−tert−ブチルクロロメチル、3は、次の方法のいずれかで製造されてもよい。
【0190】
方法1
リン酸ジ−tert−ブチル(亜リン酸ジ−tert−ブチルからチールザック、クルーバ(Zwierzak and Kluba)著、Tetrahedron、27(1971)、3163ページ)の方法によって得られた)を1当量の炭酸銀と50%水性アセトニトリル中で混合し、乾固まで凍結乾燥させることによって調製される、リン酸ジ−tert−ブチル銀(6.34g、20ミリモル)を、クロロヨードメタン(35g、200ミリモル)と一緒にベンゼンに入れ、室温で18時間撹拌する。反応混合物を濾過し、濾液を減圧下に濃縮する。残渣をシリカでクロマトグラフィーにかけ、2:1ヘキサン−酢酸エチルで溶出する。適切な画分を濃縮乾固してサブタイトル化合物3(3.7g、71%収率)を得る:1H NMR(CDCl)δ 5.63(d,2H,J=17),1.51(s,18H);MS MH=259)。
【0191】
方法2
リン酸テトラブチルアンモニウムジ−tert−ブチルを、リン酸ジ−tert−ブチル[20g、94ミリモル(亜リン酸ジ−tert−ブチルからチールザック、クルーバ著、Tetrahedron、27(1971)、3163ページの方法によって得られた)]を水酸化テトラブチルアンモニウムメタノール溶液(47mLの1M溶液、47ミリモル)に溶解させることによって調製する。反応混合物は23℃の温度および4.33のpHを有する。反応混合物のpHを、水酸化テトラブチルアンモニウムメタノール溶液(48mLの1M溶液、48ミリモル)の0.2時間にわたる添加によって6.5〜7.0に調整する。反応混合物をおおよそ26℃で0.5時間撹拌し、次に減圧下に40℃より下の浴温で濃縮する。粗残渣を、トルエン(3×100mL)を加えることによって3回共沸させ、次に混合物を減圧下に濃縮する。次に、粗残渣を冷ヘキサン(0℃)中で1時間粉砕し、次いで固体を濾過により集め、最少量の冷ヘキサンで洗浄し、乾燥させてリン酸テトラブチルアンモニウムジ−tert−ブチルの第1生成物を白色固体(24.0g)として与える。母液を減圧下に濃縮し、次に冷ヘキサン(20mL)中で1時間粉砕する。固体を濾過により集め、最少量の冷ヘキサンで洗浄し、乾燥させてリン酸テトラブチルアンモニウムジ−tert−ブチルの第2生成物を白色固体として与える。[(8.5g、計32.5g(77%)]。ベンゼン(200mL)中のリン酸テトラブチルアンモニウムジ−tert−ブチル(218g、480ミリモル)の溶液を、撹拌下のクロロヨードメタン(800g、4535ミリモル)に室温で1.5時間にわたって滴下する。反応混合物を室温で追加の1.5時間撹拌し、次に減圧下に濃縮する。油状残渣をEtOに溶解させ、沈澱した白色固形分を除去するために濾過する。有機層を飽和NaHCOおよびHO/食塩水(1/1)で洗浄する。有機層を次に硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下に濃縮して赤褐色オイル(320g)をもたらす。赤褐色オイルをシリカゲル(800g)でクロマトグラフィーにかけ、20%EtOAc/ヘキサン、25%EtOAc/ヘキサン、次に30%EtOAc/ヘキサンで溶出した。生成物含有画分を減圧下に濃縮して金色オイルをもたらす。該オイルをCHCl(30mL)で希釈し、減圧下に濃縮し、次に真空下に乾燥させて化合物3(61.3g、収率49%)をもたらす。1H NMR(ベンゼン−d)δ 5.20(2H,d,J=15),1.22(18H,s)。
【0192】
方法3
25℃でヨードクロロメタン(974g、402mL、5.53モル)をリン酸テトラブチルアンモニウムジ−tert−ブチル(250g、0.553モル)で処理する。該リン酸エステルを何回かに分けて10分にわたって添加する。不均一混合物は、おおよそ15分後に透明なピンク色溶液になる。混合物を3時間撹拌し、次にヨードクロロメタンを30℃未満の浴温でロータリーエバポレーションによって除去する。残渣を1Lのtert−ブチルメチルエーテルに溶解し、15分間撹拌して副生物のヨウ化テトラブチルアンモニウムを沈澱させる。ヨウ化テトラブチルアンモニウムを、焼結ガラスロートを通して真空濾過によって除去する。濾液をロータリーエバポレーションによってオイルへ濃縮し、それは3’’と望ましくないダイマー不純物との5:1混合物を含有する。
【0193】
【化46】

【0194】
混合物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して3を純粋な化合物として約60%収率でオイルとして得ることができる。
【0195】
結晶データおよび物理的−化学的特性
モノ−リジン塩について溶媒和物形の単結晶を結晶学によって分析し、エタノール溶媒和物およびn−プロピルアルコール溶媒和物はイソプロピルアルコール溶媒和物と同形であることが分かる(表7)。
【0196】
【表14】

【0197】
((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン塩の得られた溶媒和物はスケールアップされ、十分に特性化される。溶解性、安定性、吸湿、圧縮などをはじめとする物理的−化学的特性を評価し、比較例1のビス−リジン塩と比較する。
【0198】
モノ−リジン塩またはその溶媒和物は、特により高いRH値(90%RHで比較例1のビス−リジン塩と比べて50%取り込み)で、大きく改善された吸湿性(図1、2)を実証する。例えば、比較例1は60%RHで約10%の重量変化を有する(図1)が、実施例1は同じ湿度レベルで約2〜2.5%の重量変化を有する(図2)。平均して、モノ−リジン塩またはその溶媒和物は、ビス−リジン形よりも良好な安定性を有する(図4)。
【0199】
イソプロピルアルコール溶媒和物についての吸湿データは、より大きい改善を示す(図3)。例えば、60%RHで1%未満の重量変化がある(図3)。
【0200】
同様に、実施例1は、比較例1のビス−リジン塩のそれと類似の高い水溶解度(>200mg/mL)を保持する。
【0201】
モノ−リジン塩またはその溶媒和物の結晶は容易に成長し、より望ましい形態学的性質を示す。物理化学的研究は、ビス−リジン塩と比べて優れた溶液および物理的安定性を例証する。過酷な安定性条件下で貯蔵された試料で収集した2週間の安定性データに基づき、結晶性エタノール溶媒和物は、40℃/75%RH(開放および密閉)での最小の分解と共に低い相対湿度および高温で(表8)良好な安定性を示す。いかなる他の貯蔵条件下でも分解は見られない。
【0202】
本発明の低い吸湿性は、それはそれで、物理的安定性および材料のハンドリングにも余裕を与え、式Iのモノ−リジン塩およびその溶媒和物を静脈内投薬形態だけでなく経口用の固形としても好適なものにする(表8)。モノ−リジン塩または溶媒和物の別の主要な利点は、その高められた物理的安定性に加えて、減少した薬物負荷およびその結果としてより良好な加工性である。
【0203】
【表15】

【0204】
実施例7〜9
実施例1〜3を使用して医薬組成物の実施例4〜6を、以下の通り製造する。
【0205】
実施例7
2.5mgの実施例1の化合物をデンプン、マンニトール、微結晶性セルロースおよびステアリン酸マグネシウムと混合し、次に圧縮して錠剤を形成する。好適な成分および量は当業者によって決定され得る。
【0206】
実施例8
2.5mgの実施例2の化合物を凍結乾燥形へ変換し、滅菌水、植物油およびポリエチレングリコールと混合して医薬溶液を製造する。好適な成分および量は当業者によって決定され得る。
【0207】
実施例9
2.5mgの実施例3の化合物を鉱油、プロピレングリコール、液体ワセリン、乳化蝋および水と混合して(活性成分は処方の1重量%の約0.01%w/wである)ワックス状軟膏を製造する。好適な成分および量は当業者によって決定され得る。
【0208】
実施例10〜12
実施例7〜9を対象に次の通り投与する。
【0209】
実施例10
実施例7を、カンジダ・アルビカンスに全身感染している第1セットのマウスに1日に2回、2週の期間経口投与する。カンジダ・アルビカンスにまた全身感染した別のセットのマウスを、しかし1日に4回2週間治療する。感染の観察は、各群について7日間毎日実施する。
【0210】
実施例11
実施例8を、クリプトコッカス・ネオフォルマンスに全身感染したマウスに1日に2回、1週の期間静脈内投与する。感染の観察は14日間毎日実施する。
【0211】
実施例12
実施例9のクリームを、白癬菌種に感染したマウスに1日に2回1週間局所投与する。感染の観察は7日間毎日実施する。
【0212】
本発明の塩およびその溶媒和物は、経口、非経口または局所投与されるかに関わらず、優れた抗真菌活性を示す。
【産業上の利用可能性】
【0213】
本発明によれば、式I
【0214】
【化47】


(式中、RおよびRのそれぞれは水素原子または(C−C)アルキル基であり、Aは、第二級または第三級ヒドロキシル基を含有するタイプのトリアゾール抗真菌性塩化合物の非ヒドロキシ部分を表す)のアゾール化合物のモノ−リジン塩、または薬学的に許容されるその溶媒和物が提供される。本発明によるこれらのモノ−リジン塩または薬学的に許容されるその溶媒和物は、例えば、重い全身真菌感染症の治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】(2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−2−[(ジハイドロジェン フォスフォノキシ)メトキシ]ブタンのビス−リジン・エタノール溶媒和物の吸湿特性を示す。
【図2】((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・エタノール溶媒和物の吸湿特性を示す。
【図3】((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・イソプロピルアルコール溶媒和物の吸湿特性を示す。
【図4】ビス−リジン塩と比較してモノ−リジン塩の吸湿特性を示す。
【図5】((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・エタノール溶媒和物について得られた粉末X線回折(PXRD)データに関するグラフである。
【図6A】((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・エタノール溶媒和物についてのNMRデータに関するグラフである。
【図6B】((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・エタノール溶媒和物についてのNMRデータに関するグラフである。
【図6C】((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・エタノール溶媒和物についてのNMRデータに関するグラフである。
【図7】((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・エタノール溶媒和物についての示差走査熱量測定法(DSC)曲線である。
【図8】((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・エタノール溶媒和物についての熱重量分析(TGA)曲線である。
【図9】((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・イソプロピルアルコール溶媒和物について得られたPXRDデータに関するグラフである。
【図10】((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・イソプロピルアルコール溶媒和物についてのDSC曲線である。
【図11】((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・イソプロピルアルコール溶媒和物についてのTGA曲線である。
【図12】((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・n−プロピルアルコール溶媒和物について得られたPXRDデータに関するグラフである。
【図13】((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・n−プロピルアルコール溶媒和物についてのDSC曲線である。
【図14】((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン・n−プロピルアルコール溶媒和物についてのTGA曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物のモノ−リジン塩、またはその溶媒和物。
【化1】


(式中、RおよびRのそれぞれが、水素または(C−C)アルキルであり、
Aが、
【化2】


【化3】


および式(i)
【化4】


からなる群から選択され、
ここで、式(i)において
が、1つもしくはそれ以上のハロゲン原子で置換されたフェニル基を表し、
が、水素またはCHを表し、
が、水素、またはRと一緒になって=CHを表し、
が、チアゾリル、ピリミジニルもしくはトリアゾリル(各環がハロゲン、=O、CH=CH−(C)−OCHCFCHF、ならびにCNおよびOCHCFCHFからなる群から選択された1つもしくはそれ以上の基で置換されたフェニルから選択された1つもしくはそれ以上の基で、任意に置換されている)、またはハロゲンおよびメチルピラゾリルからなる群から選択された1つもしくはそれ以上の基で置換されたフェニルを表す)
【請求項2】
Aが、式(i)
【化5】


(式中、
が、1つもしくはそれ以上のハロゲン原子で置換されたフェニル基を表し、
が、水素またはCHを表し、
が、水素、またはRと一緒になって=CHを表し、
が、チアゾリル、ピリミジニルもしくはトリアゾリル(各環がハロゲン、=O、CH=CH−(C)−OCHCFCHF、ならびにCNおよびOCHCFCHFからなる群から選択された1つもしくはそれ以上の基で置換されたフェニルから選択された1つもしくはそれ以上の基で、任意に置換されている)、またはハロゲンおよびメチルピラゾリルからなる群から選択された1つもしくはそれ以上の基で置換されたフェニルを表す)
を表す、請求項1に記載のモノ−リジン塩またはその溶媒和物。
【請求項3】
式(i)のRが、2,4−ジフルオロフェニルである、請求項1または2に記載のモノ−リジン塩またはその溶媒和物。
【請求項4】
式(i)のRがメチルであり、Rが水素である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモノ−リジン塩またはその溶媒和物。
【請求項5】
式(i)のRが、4−(4−シアノフェニル)−チアゾール−2−イルである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のモノ−リジン塩またはその溶媒和物。
【請求項6】
式IのRおよびRのそれぞれが水素である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のモノ−リジン塩またはその溶媒和物。
【請求項7】
Aが、
【化6】


である、請求項1または2に記載のモノ−リジン塩またはその溶媒和物。
【請求項8】
Aが、
【化7】


【化8】


からなる群から選択される、請求項1に記載のモノ−リジン塩またはその溶媒和物。
【請求項9】
前記Aが、
【化9】


【化10】


からなる群から選択される、請求項1に記載のモノ−リジン塩またはその溶媒和物。
【請求項10】
前記その溶媒和物が、エタノール溶媒和物である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のモノ−リジン塩の溶媒和物。
【請求項11】
前記その溶媒和物が、イソプロピルアルコール溶媒和物である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のモノ−リジン塩の溶媒和物。
【請求項12】
前記その溶媒和物が、n−プロピルアルコール溶媒和物である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のモノ−リジン塩の溶媒和物。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のモノ−リジン塩、または薬理学的に許容されるその溶媒和物と、
薬理学的に許容される補助剤、希釈剤、または担体と、
を含む医薬組成物。
【請求項14】
有効な抗真菌性量の請求項1〜9のいずれか一項に記載のモノ−リジン塩、または薬理学的に許容されるその溶媒和物を、それを必要としている哺乳類宿主に投与する工程、
を含む、真菌感染症の治療方法。
【請求項15】
式I
【化11】


(式中、RおよびRのそれぞれが、水素または(C−C)アルキルであり、
Aは、
【化12】


【化13】


および式(i)
【化14】


からなる群から選択され、
ここで、式(i)において
が、1つもしくはそれ以上のハロゲン原子で置換されたフェニル基を表し、
が、水素またはCHを表し、
が、水素、またはRと一緒になって=CHを表し、
が、チアゾリル、ピリミジニルもしくはトリアゾリル(各環がハロゲン、=O、CH=CH−(C)−OCHCFCHF、ならびにCNおよびOCHCFCHFからなる群から選択された1つもしくはそれ以上の基で置換されたフェニルから選択された1つもしくはそれ以上の基で、任意に置換されている)、またはハロゲンおよびメチルピラゾリルからなる群から選択された1つもしくはそれ以上の基で置換されたフェニルを表す)
の水溶性モノ−リジン塩の製造方法であって、
(a)式A−OH(Aが、式Iで上記にて定義されたものである)の化合物を、式III
【化15】


(ここで、式III中のRおよびRが、それぞれ独立して水素または(C−C)アルキルであり、Prがヒドロキシル保護基を表す)
の化合物と反応させる工程であって、前記反応が約25℃〜50℃の温度で塩基の存在下に不活性有機溶媒中で実行され、式IV
【化16】


(ここで、式IV中のRおよびRが、それぞれ独立して水素または(C−C)アルキルであり、Prが、ヒドロキシル保護基を表し、Aが、式Iで定義されたものである)
の第1中間体を形成する工程と、
(b)式IVの保護基Prを有機溶媒中で除去して、式V
【化17】


(ここで、式V中のRおよびRが、それぞれ独立して水素または(C−C)アルキルであり、Aが式Iで定義されたものである)
の第2中間体を形成する工程と、
(c)式Vの前記第2中間体を、リジンと、溶媒中、4.2〜5.5の範囲のpHで反応させて式Iの前記モノ−リジン塩を製造する工程と、
を含む方法。
【請求項16】
Prの前記保護基が、tert−ブチルである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(a)での溶媒がテトラヒドロフランである、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
工程(a)で使用される塩基が、水素化ナトリウムである、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
式I
【化18】


(式中、RおよびRのそれぞれが、水素または(C−C)アルキルであり、
Aが、
【化19】


【化20】


および式(i)
【化21】


からなる群から選択され、
ここで、式(i)において
が、1つもしくはそれ以上のハロゲン原子で置換されたフェニル基を表し、
が、水素またはCHを表し、
が、水素、またはRと一緒になって=CHを表し、
が、チアゾリル、ピリミジニルもしくはトリアゾリル(各環がハロゲン、=O、CH=CH−(C)−OCHCFCHF、ならびにCNおよびOCHCFCHFからなる群から選択された1つもしくはそれ以上の基で置換されたフェニルから選択された1つもしくはそれ以上の基で、任意に置換されている)、またはハロゲンおよびメチルピラゾリルからなる群から選択された1つもしくはそれ以上の基で置換されたフェニルを表す)
を有するモノ−リジン塩の水溶性溶媒和物の製造方法であって、
(a)式A−OH(Aが、式Iで上記にて定義されたものである)の化合物を、式III
【化22】


(ここで、式III中のRおよびRが、それぞれ独立して水素または(C−C)アルキルであり、Prが、ヒドロキシル保護基を表す)
の化合物と反応させる工程であって、前記反応が約25℃〜50℃の温度で塩基の存在下に不活性有機溶媒中で実行され、式IV
【化23】


(ここで、式IV中のRおよびRが、それぞれ独立して水素または(C−C)アルキルであり、Prが、ヒドロキシル保護基を表し、Aが、式Iで定義されたものである)
の第1中間体を形成する工程と、
(b)式IVの保護基Prを有機溶媒中で除去して、式V
【化24】


(ここで、式V中のRおよびRが、それぞれ独立して水素または(C−C)アルキルであり、Aが、式Iで定義されたものである)
の第2中間体を形成する工程と、
(c)式Vの前記第2中間体を、リジンと、溶媒中4.2〜5.5の範囲のpHで反応させて、式Iの前記モノ−リジン塩を製造する工程と、
(d)前記モノ−リジン塩を、溶媒中で結晶化させて前記モノ−リジン塩の溶媒和物を製造する工程と、
を含む方法。
【請求項20】
工程(d)での溶媒が、水性エタノールである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程(d)での溶媒が、水性イソプロピルアルコールである、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
工程(d)での溶媒が、水性n−プロピルアルコールである、請求項19〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
出発原料A−OHのAが、式(i)
【化25】


である、請求項15〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
下記構造
【化26】


を有する((2R,3R)−3−(4−(4−シアノフェニル)チアゾール−2−イル)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−イルオキシ)メチル ジハイドロジェン フォスフェイトのモノ−リジン塩または薬理学的に許容されるその溶媒和物。
【請求項25】
結晶形である、請求項23に記載のモノ−リジン塩またはその溶媒和物。
【請求項26】
前記その溶媒和物が、エタノール溶媒和物である、請求項24に記載のモノ−リジン塩の溶媒和物。
【請求項27】
前記その溶媒和物が、イソプロピルアルコール溶媒和物である、請求項24に記載のモノ−リジン塩の溶媒和物。
【請求項28】
前記その溶媒和物が、n−プロピルアルコール溶媒和物である、請求項24に記載のモノ−リジン塩の溶媒和物。
【請求項29】
有効量の請求項24に記載のモノ−リジン塩、または薬理学的に許容されるその溶媒和物と、
薬理学的に許容される補助剤、希釈剤、または担体と、
を含む医薬組成物。
【請求項30】
錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、乳液、軟膏、ローション、クリームまたはスプレーである、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
有効な抗真菌性量の請求項24に記載のモノ−リジン塩、または薬理学的に許容されるその溶媒和物を、それを必要としている哺乳類宿主に投与する工程、
を含む真菌感染症の治療方法。
【請求項32】
有効な抗真菌性量の請求項24に記載のモノ−リジン塩、または薬理学的に許容されるその溶媒和物を、それを必要としている哺乳類宿主に経口投与する工程、
を含む真菌感染症の治療方法。
【請求項33】
有効な抗真菌性量の請求項24に記載のモノ−リジン塩、または薬理学的に許容されるその溶媒和物を、それを必要としている哺乳類宿主に非経口投与する工程、
を含む真菌感染症の治療方法。
【請求項34】
下記の式
【化27】


の水溶性モノ−リジン塩の製造方法であって、
(a)式B
【化28】


の化合物を、式III’
【化29】


(ここで、式III’のPrがヒドロキシル保護基を表す)
の化合物と反応させる工程であって、前記反応が約25℃〜50℃の温度で塩基の存在下に不活性有機溶媒中で実行され、式IV’
【化30】


(ここで、式IV’のPrが、ヒドロキシル保護基を表す)
の第1中間体を形成する工程と、
(b)式IV’の保護基Prを有機溶媒中で除去して、式V’
【化31】


の第2中間体を形成する工程と、
(c)式V’の前記第2中間体を、リジンと、溶媒中4.2〜5.5の範囲のpHで反応させて前記モノ−リジン塩を製造する工程と、
を含む方法。
【請求項35】
Prの保護基が、tert−ブチルである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
工程(a)での溶媒が、テトラヒドロフランである、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
工程(a)で使用される塩基が、水素化ナトリウムである、請求項34〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】

【化32】


を有するモノ−リジン塩の水溶性溶媒和物の製造方法であって、
(a)式B
【化33】


の化合物を、式III’
【化34】


(ここで、式III’のPrがヒドロキシル保護基を表す)
の化合物と反応させる工程であって、前記反応が約25℃〜50℃の温度で塩基の存在下に不活性有機溶媒中で実行され、式IV’
【化35】


(ここで、式IV’のPrが、ヒドロキシル保護基を表す)
の第1中間体を形成する工程と、
(b)式IV’の保護基Prを有機溶媒中で除去して、式V’
【化36】


の第2中間体を形成する工程と、
(c)式V’の前記第2中間体を、リジンと、溶媒中4.2〜5.5の範囲のpHで反応させてモノ−リジン塩を製造する工程と、
(d)前記モノ−リジン塩を溶媒中で結晶化させて前記モノ−リジン塩の溶媒和物を製造する工程と、
を含む方法。
【請求項39】
工程(d)での溶媒が、水性エタノールである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
工程(d)での溶媒が、水性イソプロピルアルコールである、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
工程(d)での溶媒が、水性n−プロピルアルコールである、請求項38〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
真菌感染症治療薬の製造のための請求項1〜9のいずれか一項に記載のモノ−リジン塩の使用。
【請求項43】
真菌感染症治療薬の製造のための請求項24に記載のモノ−リジン塩の使用。


【公表番号】特表2008−544948(P2008−544948A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509811(P2007−509811)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【特許番号】特許第4015691号(P4015691)
【特許公報発行日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【国際出願番号】PCT/JP2006/309435
【国際公開番号】WO2006/118351
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】