説明

アミン化合物とアクセプタ性化合物とを含む組成物

【課題】有機電界発光素子の材料として用いた場合、正孔注入性及び素子寿命が優れた組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1):


(式中、A環、B環及びC環は、単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R1及びR4は、1価の基を表し、R2、R3、R5及びR6は、水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。A環、B環、C環、R1及びR4は、置換基を有していてもよい。R2、R3、R5及びR6で表されるアリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、置換基を有していてもよい。)で表される化合物、その残基を有する化合物、又は繰り返し単位を含む化合物と、アクセプタ性化合物とを含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミン化合物とアクセプタ性化合物とを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アミン化合物とアクセプタ性化合物とを含む組成物は、有機電界発光素子の材料として有用であり、種々検討されている。その具体例としては、トリアリールアミン系ポリマーと2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンとの組成物(特許文献1)、トリフェニルアミンと2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンとの組成物(特許文献2)等が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特表2005−531915号公報
【特許文献2】特開2007−208102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記組成物は、有機電界発光素子の材料として用いても、正孔注入性、素子寿命が十分ではない。
【0005】
そこで、本発明は、有機電界発光素子の材料として用いた場合、正孔注入性及び素子寿命が優れた組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は第一に、下記式(1):

(式中、A環、B環及びC環はそれぞれ独立に、単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R1及びR4はそれぞれ独立に、1価の基を表し、R2、R3、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。A環、B環、C環、R1及びR4は、置換基を有していてもよい。R2、R3、R5及びR6で表されるアリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、置換基を有していてもよい。)
で表される化合物、その残基を有する化合物、又は下記式(2):

(式中、A環、B環、C環、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、前記と同じ意味を有する。但し、A環及びC環は、それぞれ結合手を有する。)
で表される繰り返し単位を含む化合物と、アクセプタ性化合物とを含む組成物、並びにこの組成物を用いてなる層を有する有機電界発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物は、有機電界発光素子の材料(特には、バッファ層の材料)として用いた場合、正孔注入性及び素子寿命が優れたものである。したがって、本発明の組成物は、有機電界発光素子の材料として特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
<組成物>
本発明の組成物は、前記式(1)で表される化合物、その残基を有する化合物、又は前記式(2)で表される繰り返し単位を含む化合物と、アクセプタ性化合物とを含むものである。前記式(1)で表される化合物、その残基を有する化合物、前記式(2)で表される繰り返し単位を含む化合物、アクセプタ性化合物は、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0009】
−式(1)の説明−
前記式(1)において、A環、B環及びC環はそれぞれ独立に、単環の芳香環又は縮合した芳香環を表す。また、A環、B環及びC環はそれぞれ置換基を有していてもよい。
【0010】
このような芳香環としては、単環の芳香環、縮合した芳香環等が挙げられる。前記単環の芳香環としては、例えば、ベンゼン環等が挙げられる。前記縮合した芳香環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、ペリレン環、テトラセン環、ペンタセン環、フルオレン環等の芳香族炭化水素環;ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、キナゾリン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、チオフェンオキシド環、ベンゾチオフェンオキシド環、ジベンゾチオフェンオキシド環、フラン環、ベンゾフラン環、ピロール環、インドール環、ジベンゾピロール環、シロール環、ベンゾシロール環、ジベンゾシロール環、ボロール環、ベンゾボロール環、ジベンゾボロール環等の複素芳香環が挙げられるが、耐熱性、蛍光強度、素子特性等の観点から、芳香族炭化水素環が好ましい。前記芳香環としては、置換基を有していてもよい単環の芳香環が特に好ましい。
【0011】
また、A環、B環及びC環が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、置換カルボキシル基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基が挙げられる。
【0012】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0013】
前記アルキル基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよい。このようなアルキル基の炭素数は、通常1〜30程度であり、有機溶媒への溶解性の観点から、好ましくは3〜15程度である。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基が挙げられるが、有機溶媒への溶解性、合成の行いやすさの観点から、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基が好ましい。
【0014】
前記アルコキシ基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよい。このようなアルコキシ基の炭素数は、通常1〜30程度であり、有機溶媒への溶解性の観点から、好ましくは3〜15程度である。このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基が挙げられるが、有機溶媒への溶解性、合成の行いやすさの観点から、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基が好ましい。
【0015】
前記アルキルチオ基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよい。このようなアルキルチオ基の炭素数は、通常1〜30程度であり、有機溶媒への溶解性の観点から、好ましくは3〜15程度である。このようなアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、i−プロピルチオ基、ブチルチオ基、i−ブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基、トリフルオロメチルチオ基が挙げられるが、有機溶媒への溶解性、合成の行いやすさの観点から、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基が好ましい。
【0016】
前記アリール基は、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた原子団であり、縮合環をもつもの、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接又はビニレン等の基を介して結合したものも含まれる。このようなアリール基の炭素数は、通常6〜60程度であり、好ましくは6〜30程度である。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12は、C1〜C12の直後に示す有機基の炭素数(ここでは、アルコキシフェニル基のうちのアルコキシ基中の炭素数)が1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられるが、有機溶媒への溶解性、合成の行いやすさの観点から、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基が好ましい。また、C1〜C12アルコキシフェニル基としては、例えば、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、プロピルオキシフェニル基、i−プロピルオキシフェニル基、ブトキシフェニル基、i−ブトキシフェニル基、s−ブトキシフェニル基、t−ブトキシフェニル基、ペンチルオキシフェニル基、ヘキシルオキシフェニル基、シクロヘキシルオキシフェニル基、ヘプチルオキシフェニル基、オクチルオキシフェニル基、2−エチルヘキシルオキシフェニル基、ノニルオキシフェニル基、デシルオキシフェニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェニル基、ラウリルオキシフェニル基が挙げられる。さらに、C1〜C12アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、プロピルフェニル基、メシチル基、メチルエチルフェニル基、i−プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、i−ブチルフェニル基、s−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、イソアミルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ドデシルフェニル基が挙げられる。
【0017】
前記アリールオキシ基の炭素数は、通常6〜60程度であり、好ましくは6〜30程度である。このようなアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられるが、有機溶媒への溶解性、合成の行いやすさの観点から、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基が好ましい。また、C1〜C12アルコキシフェノキシ基としては、例えば、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、プロピルオキシフェノキシ基、i−プロピルオキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、i−ブトキシフェノキシ基、s−ブトキシフェノキシ基、t−ブトキシフェノキシ基、ペンチルオキシフェノキシ基、ヘキシルオキシフェノキシ基、シクロヘキシルオキシフェノキシ基、ヘプチルオキシフェノキシ基、オクチルオキシフェノキシ基、2−エチルヘキシルオキシフェノキシ基、ノニルオキシフェノキシ基、デシルオキシフェノキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェノキシ基、ラウリルオキシフェノキシ基が挙げられる。さらに、C1〜C12アルキルフェノキシ基としては、例えば、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、1,3,5−トリメチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、i−プロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、i−ブチルフェノキシ基、s−ブチルフェノキシ基、t−ブチルフェノキシ基、ペンチルフェノキシ基、イソアミルフェノキシ基、ヘキシルフェノキシ基、ヘプチルフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、ノニルフェノキシ基、デシルフェノキシ基、ドデシルフェノキシ基が挙げられる。
【0018】
前記アリールチオ基の炭素数は、通常6〜60程度であり、好ましくは6〜30程度である。このようなアリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニルチオ基、C1〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒への溶解性、合成の行いやすさの観点から、C1〜C12アルコキシフェニルチオ基、C1〜C12アルキルフェニルチオ基が好ましい。
【0019】
前記アリールアルキル基の炭素数は、通常7〜60程度であり、好ましくは7〜30程度である。このようなアリールアルキル基としては、例えば、フェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキル基が挙げられるが、有機溶媒への溶解性、合成の行いやすさの観点から、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基が好ましい。
【0020】
前記アリールアルコキシ基の炭素数は、通常7〜60程度であり、好ましくは7〜30程度である。このようなアリールアルコキシ基としては、例えば、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基、フェニルブトキシ基、フェニルペンチロキシ基、フェニルヘキシロキシ基、フェニルヘプチロキシ基、フェニルオクチロキシ基等のフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基が挙げられるが、有機溶媒への溶解性、合成の行いやすさの観点から、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基が好ましい。
【0021】
前記アリールアルキルチオ基の炭素数は、通常7〜60程度であり、好ましくは7〜30程度である。このようなアリールアルキルチオ基としては、例えば、フェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基が挙げられるが、有機溶媒への溶解性、合成の行いやすさの観点から、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルチオ基が好ましい。
【0022】
前記アルケニル基の炭素数は、通常2〜30程度であり、好ましくは2〜15程度である。このようなアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロピレニル基、2−プロピレニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、シクロヘキセニル基が挙げられる。また、このようなアルケニル基には、1,3−ブタジエニル基、シクロヘキサ−1,3−ジエニル基、1,3,5−ヘキサトリエニル基等のジエニル基やトリエニル基も含まれる。
【0023】
前記アルキニル基の炭素数は、通常2〜30程度であり、好ましくは2〜15程度である。このようなアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピレニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、シクロヘキシルエチニル基が挙げられる。また、このようなアルキニル基には、1,3−ブタジイニル基等のジイニル基も含まれる。
【0024】
前記2置換アミノ基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基からなる群から選択される2個の基で置換されたアミノ基が挙げられる。このような2置換アミノ基において、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、1価の複素環基はそれぞれ置換基を有していてもよい。また、このような2置換アミノ基の炭素数は、アルキル基等が有する置換基の炭素数を含めないで通常2〜60程度、好ましくは2〜30程度である。このような2置換アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジ−2−エチルヘキシルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジデシルアミノ基、ジ−3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ジラウリルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、ジ−1−ナフチルアミノ基、ジ−2−ナフチルアミノ基、ジペンタフルオロフェニルアミノ基、ジピリジルアミノ基、ジピリダジニルアミノ基、ジピリミジルアミノ基、ジピラジルアミノ基、ジトリアジルアミノ基、ジ(フェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基ジ(C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基が挙げられる。
【0025】
前記3置換シリル基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基からなる群から選択される3個の基で置換されたシリル基が挙げられる。このような3置換シリル基の炭素数は通常3〜90程度、好ましくは3〜45程度である。なお、このような3置換シリル基において、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、1価の複素環基は置換基を有していてもよい。このような3置換シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、ジメチル−i−プロピリシリル基、ジエチル−i−プロピルシリル基、t−ブチルシリルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ラウリルジメチルシリル基、フェニル−C1〜C12アルキルシリル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルシリル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルシリル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルシリル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキルシリル基、フェニル−C1〜C12アルキルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が挙げられる。
【0026】
前記アシル基の炭素数は、通常2〜30程度であり、好ましくは2〜15程度である。このようなアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロベンゾイル基が挙げられる。
【0027】
前記アシルオキシ基の炭素数は、通常2〜30程度であり、好ましくは2〜15程度である。このようなアシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基が挙げられる。
【0028】
前記イミン残基の炭素数は、通常2〜30程度であり、好ましくは2〜15程度である。このようなイミン残基としては、例えば、以下に示す構造式で表される基が挙げられる。なお、以下に示す構造式において、波線はsyn又はantiを表すが、synであってもantiであってもよい。

(式中、Meはメチル基を表す。以下、同様である。)
【0029】
前記アミド基の炭素数は、通常2〜30程度であり、好ましくは2〜15程度である。このようなアミド基としては、例えば、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、ジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
【0030】
前記酸イミド基としては、酸イミドからその窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる残基が挙げられる。このような酸イミド基の炭素数は、通常4〜30程度であり、好ましくは4〜15程度である。このような酸イミド基としては、例えば、以下に示す構造式で表される基が挙げられる。

【0031】
前記1価の複素環基は、複素環式化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団をいう。このような1価の複素環基の炭素数は、通常2〜30程度であり、好ましくは2〜15程度である。なお、このような1価の複素環基において、複素環は置換基を有していてもよいが、炭素数には、複素環上の置換基の炭素数は含まれない。また、ここで複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する原子が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、燐、硼素等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。このような1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基が挙げられる。これらの中でも、1価の芳香族複素環基が好ましく、特に、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基
が好ましい。
【0032】
前記置換カルボキシル基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基で置換されたカルボキシル基が挙げられる。このような置換カルボキシル基の炭素数は、通常2〜30程度であり、好ましくは2〜15程度である。このような置換カルボキシル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、i−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシロキシカルボニル基、シクロヘキシロキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシロキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基が挙げられる。なお、このような置換カルボキシル基において、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、1価の複素環基は置換基を有していてもよい。また、置換カルボキシル基の炭素数にはアルキル基等の有する置換基の炭素数は含まれない。
【0033】
前記ヘテロアリールオキシ基(即ち、Q1−O−で表される基(ここで、Q1は1価の複素環基を表す))の炭素数は、通常2〜30程度であり、好ましくは2〜15程度である。なお、このようなヘテロアリールオキシ基において、1価の複素環基は置換基を有していてもよいが、ヘテロアリールオキシ基の炭素数には、1価の複素環基上の置換基の炭素数は含まれない。このようなヘテロアリールオキシ基としては、例えば、チエニルオキシ基、C1〜C12アルキルチエニルオキシ基、ピロリルオキシ基、フリルオキシ基、ピリジルオキシ基、C1〜C12アルキルピリジルオキシ基、イミダゾリルオキシ基、ピラゾリルオキシ基、トリアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、チアゾールオキシ基、チアジアゾールオキシ基が挙げられる。また、Q1としては1価の芳香族複素環基が好ましい。
【0034】
前記ヘテロアリールチオ基(即ち、Q2−S−で表される基(ここで、Q2は1価の複素環基を表す))の炭素数は、通常2〜30程度であり、好ましくは2〜15程度である。なお、このようなヘテロアリールチオ基において、1価の複素環基は置換基を有していてもよいが、ヘテロアリールチオ基の炭素数には、1価の複素環基上の置換基の炭素数は含まれない。このようなヘテロアリールチオ基としては、チエニルメルカプト基、C1〜C12アルキルチエニルメルカプト基、ピロリルメルカプト基、フリルメルカプト基、ピリジルメルカプト基、C1〜C12アルキルピリジルメルカプト基、イミダゾリルメルカプト基、ピラゾリルメルカプト基、トリアゾリルメルカプト基、オキサゾリルメルカプト基、チアゾールメルカプト基、チアジアゾールメルカプト基が挙げられる。また、Q2としては1価の芳香族複素環基が好ましい。
【0035】
前記式(1)において、R1及びR4はそれぞれ独立に1価の基を表す。
【0036】
本明細書において、1価の基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、3置換シリル基、アシル基、1価の複素環基、置換カルボキシル基等が挙げられる。
【0037】
これらのアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、3置換シリル基、アシル基、1価の複素環基及び置換カルボキシル基としては、A環、B環及びC環が有していてもよい置換基として説明し例示したものと同様のものが挙げられる。
【0038】
化合物の安定性の観点から、R1及びR4はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基であることが好ましく、アリール基であることがより好ましい。
【0039】
前記式(1)において、R2、R3、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
【0040】
2、R3、R5及びR6で表されるアルキル基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよいが置換基を有しない。このようなアルキル基の炭素数は、通常1〜30程度であり、有機溶媒への溶解性の観点から、好ましくは3〜15程度である。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基が挙げられるが、有機溶媒への溶解性、合成の行いやすさの観点から、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基が好ましい。
【0041】
2、R3、R5及びR6で表されるアリール基、アリールアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基としては、A環、B環及びC環が有していてもよい置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0042】
前記式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、置換基を有していてもよいアリール基であることが特に好ましい。
【0043】
前記式(1)で表される化合物の具体例を以下に挙げる。

















【0044】
前記式(1)で表される化合物の残基を有する化合物とは、前記式(1)で表される化合物における水素原子を1又は2以上取り除いた残りの原子団である残基を有する化合物である。
【0045】
前記式(1)で表される化合物の残基を有する化合物の具体例を以下に挙げる。











【0046】
−式(2)の説明−
前記式(2)において、A環、B環及びC環はそれぞれ独立に単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R1及びR4はそれぞれ独立に1価の基を表し、R2、R3、R5及びR6はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。なお、A環、B環、C環、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、前記式(1)の項で説明し例示したものと同様である。但し、A環及びC環上に結合手を有する。なお、前記結合手の位置は、得られる化合物の導電性の観点から、分子内の共役がつながる位置であることが好ましい。
【0047】
前記式(2)で表される繰り返し単位を含む化合物は、前記式(2)で表される繰り返し単位のみからなる化合物であっても、その他の繰り返し単位を含む化合物であってもよい。ここで、「繰り返し単位」とは、分子中に2以上繰り返して含まれる単位を意味する。
【0048】
前記式(2)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げる。











【0049】
さらに、有機電界発光素子に用いた時に寿命等の素子特性に優れるという観点から、前記式(2)で表される繰り返し単位を含む化合物は、更に下記式(3)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。

(式中、Ar1はアリーレン基又は2価の複素環基を表す。R7及びR8はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基又はシアノ基を表す。nは0又は1を表す。Ar1、R7及びR8は、置換基を有していてもよい。)
【0050】
このようなAr1におけるアリーレン基は、炭素数が通常6〜60であり、好ましくは6〜20である。このようなAr1におけるアリーレン基としては、例えば、フェニレン基(例えば、下式1〜3)、ナフタレンジイル基(例えば、下式4〜13)、アントラセニレン基(例えば、下式14〜19)、ビフェニレン基(例えば、下式20〜25)、トリフェニレン基(例えば、下式26〜28)、縮合環化合物基(例えば、下式29〜38)が挙げられる。なお、以下に示す式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアリールオキシ基又はヘテロアリールチオ基を表す。また、アリーレン基の炭素数には、Rが置換基である場合、その炭素数は含まれない。なお、Rは水素原子又は置換基を表し、該置換基は、A環、B環及びC環が有していてもよい置換基として説明し例示したものと同じ意味を有し、以下、同様である。
【0051】









【0052】
また、本明細書において、2価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいう。このような2価の複素環基の炭素数は、通常4〜60、好ましくは4〜20である。ここで、複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する原子が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。
【0053】
このような2価の複素環基としては、例えば、以下のものが挙げられる。なお、以下に示す式中、Rは、前記と同じ意味を有する。
ヘテロ原子として窒素を含む2価の複素環基として、例えば、ピリジン−ジイル基(例えば、下式39〜44)、ジアザフェニレン基(例えば、下式45〜48)、キノリンジイル基(例えば、下式49〜63)、キノキサリンジイル基(例えば、下式64〜68)、アクリジンジイル基(例えば、下式69〜72)、ビピリジルジイル基(例えば、下式73〜75)、フェナントロリンジイル基(例えば、下式76〜78)が挙げられる。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレン等を含みフルオレン構造を有する基として、例えば、下式79〜98で表される基が挙げられる。これらの中でも、窒素原子を含む下式82〜84で表されるカルバゾールやトリフェニルアミンジイル基等の芳香族アミンモノマーを有していることが望ましい。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレン等を含む5員環複素環基として、例えば、下式94〜98で表される基が挙げられる。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレン等を含む5員環縮合複素環基として、例えば、下式99〜109で表される基、ベンゾチアジアゾール−4,7−ジイル基、ベンゾオキサジアゾール−4,7−ジイル基が挙げられる。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレン等を含む5員環複素環基でそのヘテロ原子のα位で結合し2量体やオリゴマーになっている基として、例えば、下式110〜111で表される基が挙げられる。
ヘテロ原子としてけい素、窒素、硫黄、セレン等を含む5員環複素環基でそのヘテロ原子のα位でフェニル基に結合している基として、例えば、下式112〜118で表される基が挙げられる。
ヘテロ原子として窒素、酸素、硫黄等を含む縮合した複素環基とベンゼン環又は単環性の複素環基とが結合した3環性の基として、例えば、下式120〜125で表される基が挙げられる。
【0054】



















(式中、Rは水素原子又は置換基を表す。)
【0055】
前記式(3)中、R7、R8で表されるアルキル基、アリール基、1価の複素環基は、前記A環、B環及びC環が有していてもよい置換基として例示し説明したものと同じものが挙げられる。
【0056】
前記式(3)で表される繰り返し単位において、nが0であること、Ar1がアリーレン基であることが好ましい。前記式(3)で表される繰り返し単位としては、下記式(4−1):

(式中、C4環及びC5環はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表し、2つの結合手はそれぞれC4環又はC5環上に存在し、Rw及びRxはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、置換カルボキシル基、ヘテロアリールオキシ基又はヘテロアリールチオ基を表す。Rw及びRxは、置換基を有していてもよい。)
で表されるものであることが好ましい。
【0057】
芳香族炭化水素環とは、ベンゼン環又は縮合した芳香族炭化水素環を意味する。このような芳香族炭化水素環の炭素数は6〜30程度、好ましくは6〜15程度である。なお、芳香族炭化水素環の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。このような芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フェナレン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、ピレン環、クリセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ビフェニレン環、フルオレン環、アセナフチレン環が挙げられる。
【0058】
Rw及びRxにおけるアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、置換カルボキシル基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基としては、A環、B環及びC環が有していてもよい置換基として説明し例示したものと同様のものが挙げられる。Rw及びRxは、アルキル基であることが好ましい。
【0059】
前記式(4−1)で表される繰り返し単位としては、下式1A−0〜1A−13で表される繰り返し単位が挙げられる。また、このような繰り返し単位は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、置換カルボキシル基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基及びハロゲン原子等からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有していてもよい。なお、下式1A−0〜1A−13において、芳香族炭化水素における結合手は任意の位置をとり得る。
【0060】

【0061】
これらの繰り返し単位の中でも、式1A−0、1A−1、1A−2、1A−3で表される繰り返し単位が好ましく、式1A−0で表される繰り返し単位が特に好ましい。
【0062】
また、前記式(2)で表される繰り返し単位を含む化合物は、耐熱性の向上、電荷輸送性改善の観点から、下記式(5−1)、(5−2)及び(5−3)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種類の繰り返し単位を更に含むことが好ましく、2種類以上の繰り返し単位を含むことがより好ましい。

(式中、Ar2、Ar3、Ar4及びAr5はそれぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。Ar6、Ar7及びAr8はそれぞれ独立に、アリール基又は1価の複素環基を表す。B及びbはそれぞれ独立に、0又は正の整数を表す。Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6、Ar7及びAr8は置換基を有していてもよい。)

(式中、D環及びE環はそれぞれ独立に、芳香環を表す。Y1は−O−、−S−又は−C(=O)−を表す。R20は1価の基を表す。D環及びE環は、それぞれ結合手を有する。D環、E環、Y1及びR20は、置換基を有していてもよい。)

(式中、Y2は−O−又は−S−を表す。)
【0063】
前記式(5−1)で表される繰り返し単位において、素子寿命等の素子特性の観点から、Ar2、Ar3、Ar4及びAr5がそれぞれ独立にアリーレン基であり、Ar6、Ar7及びAr8がそれぞれ独立に、アリール基であるものが好ましい。また、Ar2、Ar3、Ar4及びAr5がそれぞれ独立に、無置換のフェニレン基、無置換のビフェニレン基、無置換のナフチレン基、又は無置換のアントラセンジイル基であるものが好ましい。さらに、有機溶媒への溶解性、素子特性等の観点から、Ar6、Ar7及びAr8がそれぞれ独立に、置換基を有するアリール基であるものが好ましく、3つ以上の置換基を有するアリール基であるものがより好ましい。さらに、Ar6、Ar7及びAr8が3つ以上の置換基を有するフェニル基、3つ以上の置換基を有するナフチル基、又は3つ以上の置換基を有するアントラセニル基であるものがより好ましく、Ar6、Ar7及びAr8が3つ以上の置換基を有するフェニル基であるものがさらにより好ましい。
【0064】
これらの繰り返し単位の中でも、Ar6、Ar7及びAr8が、それぞれ独立に下記式(5−4)で表される基であり、かつB+b≦3であるものが好ましく、B+b=1であるものがより好ましく、B=1、b=0であるものが特に好ましい。

【0065】
前記式(5−4)において、Re、Rf及びRgはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基又はハロゲン原子を表す。また、Re、Rf及びRgに含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。さらに、Rh及びRiはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、1価の複素環基又はハロゲン原子を表す。また、Rh及びRiに含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。
【0066】
また、前記式(5−4)において、Re及びRfがそれぞれ独立に、炭素数3以下のアルキル基、炭素数3以下のアルコキシ基、炭素数3以下のアルキルチオ基であり、かつRgが炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキルチオ基であることが好ましい。
【0067】
前記式(5−1)で表される繰り返し単位において、Ar3が下記式(5−5)又は(5−6)で表される基であることが好ましい。

【0068】
前記式(5−5)及び(5−6)において、構造中に含まれるベンゼン環は、無置換のものが好ましいが、それぞれ独立に1個以上4個以下の置換基を有していてもよい。それら置換基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、このようなベンゼン環に他の芳香族炭化水素環又は複素環が縮合していてもよい。
【0069】
前記式(5−1)で表される繰り返し単位としては、下記式133〜140で表されるものが挙げられる。





(式中、Rは、前記と同じ意味を有する。)
【0070】
前記式におけるRがアルキル基を含む置換基である場合においては、高分子化合物の有機溶媒への溶解性を高めるために、炭素数が3以上のアルキル基が含まれることが好ましい。さらに、上記式133〜140で表される構造の中でも、発光波長を調節するという観点から、上記式133、134、137で表される構造が好ましい。
【0071】
前記式(5−1)で表される繰り返し単位のより好ましい例としては、下式141〜143で表されるものが挙げられる。

(式中、Re、Rf、Rg、Rh及びRiは、前記と同じ意味を有する。)
【0072】
前記式(5−1)で表される繰り返し単位の特に好ましい例としては、耐熱性等の観点から、下記式(22)〜(24)で表されるものが挙げられる。

【0073】
前記式(5−2)において、D環及びE環はそれぞれ独立に、芳香環を表す。D環及びE環上には置換基を有していてもよい。前記芳香環は、化合物の安定性の観点から、好ましくは芳香族炭化水素環であり、特に好ましくはベンゼン環である。
【0074】
前記式(5−2)において、Y1は、−CH2−であることが好ましい。また、R20で表される1価の基は、前記R1、R4で表される1価の基として説明し例示したものと同じである。
【0075】
前記式(5−2)で表される繰り返し単位としては、下記式(5−7)で表されるものが挙げられる。

(式中、Y1及びR20は、前記と同じ意味を有する。)
【0076】
前記式(5−3)で表される繰り返し単位の具体例としては、以下のものが挙げられる。

【0077】
前記式(2)で表される繰り返し単位を含む化合物の中でも、薄膜にした時の電荷輸送性、有機電界発光素子に用いた時に寿命等の素子特性の観点から、共役系高分子であるものが好ましい。ここで、共役系高分子とはポリマーの主鎖骨格に沿って非局在π電子対が存在している高分子を意味する。この非局在π電子対としては、2重結合の代わりに不対電子又は孤立電子対が共鳴に加わる場合もある。
【0078】
前記式(2)で表される繰り返し単位を含む化合物においては、発光特性や電荷輸送性を損なわない範囲で、非共役単位で連結されていてもよいし、繰り返し単位に前記非共役単位が含まれていてもよい。前記非共役単位としては、例えば、以下に示す式で表される構造、及び以下に示す式で表される構造のうち2つ以上を組み合わせた構造が挙げられる。

(式中、Rは前記と同じ意味を有する。Arは芳香族炭化水素環又は複素環を表す。)
【0079】
また、前記式(2)で表される繰り返し単位を含む化合物は、ランダム、ブロック又はグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。蛍光又はりん光の量子収率の高い化合物を得る観点からは完全なランダム共重合体よりブロック性を帯びたランダム共重合体やブロック又はグラフト共重合体が好ましい。さらに、前記式(2)で表される繰り返し単位を含む化合物には、主鎖に枝分かれがあり、末端部が3つ以上あるものやデンドリマーも含まれる。
【0080】
前記式(2)で表される繰り返し単位を含む化合物において、全繰り返し単位に対して、前記式(2)で表される繰り返し単位の割合が、10〜100モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましい。
【0081】
前記式(2)で表される繰り返し単位を含む化合物の例を以下に挙げる。





(式中、nは、各繰り返し単位のモル比を表す数である。)
【0082】
本発明の組成物において、前記式(1)で表される化合物、その残基を有する化合物、及び前記式(2)で表される繰り返し単位を含む化合物の中でも、塗布法により有機電界発光素子を作製することができるので、前記式(2)で表される繰り返し単位を含む化合物が好ましい。
【0083】
前記式(1)で表される化合物、その残基を有する化合物は、分子量が300〜5000であることが好ましく、1000〜3000であることがより好ましく、1000〜2000であることがさらに好ましい。
前記式(2)で表される繰り返し単位を含む化合物は、ポリスチレン換算の数平均分子量が2×103以上であることが好ましく、2×103〜1×108であることがより好ましく、1×104〜1×106であることが特に好ましい。
【0084】
−アクセプタ化合物−
前記アクセプタ性化合物としては、キノン系化合物、遷移金属錯塩系化合物、有機閉殻陰イオン性化合物、シアノ基とニトロ基を有するフルオレン系化合物、テトラシアノエチレン、テトラシアノブタジエン、ヘキサフルオロ砒酸リチウム、燐酸トリクロライド、フルオラニル、クロラニル、ブロマニル等が挙げられる。これらのアクセプタ性化合物は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。なお、以下の説明において、酸化還元半波電位E11/2を、単に「E11/2」と記載することがある。
【0085】
前記キノン系化合物としては、例えば、p−ベンゾキノン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、1,4−ナフトキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体等が挙げられるが、酸化還元半波電位E11/2の値の大きさの観点から、p−ベンゾキノン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体が好ましい。
【0086】
前記p−ベンゾキノン誘導体としては、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)[E11/2=+0.56(V)]、2,3−ジブロモ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DBDQ)[E11/2=+0.53(V)]、2,3−ジヨード−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(DIDQ)[E11/2=+0.51(V)]、2,3−ジシアノ−p−ベンゾキノン(Q(CN)2)[E11/2=+0.34(V)]等が例示される。
【0087】
前記テトラシアノキノジメタン誘導体としては、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)[E11/2=+0.60(V)]、2,3,5−トリフルオロメチル−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(CF3−TCNQ)[E11/2=+0.43(V)]、2,5−ジフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F2−TCNQ)[E11/2=+0.40(V)]、2−モノフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F−TCNQ)[E11/2=+0.32(V)]、11,11,12,12−テトラシアノナフト−2,6−キノジメタン(TNAP)[E11/2=+0.26(V)]、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン (TCNQ)[E11/2=+0.22(V)]、デシル−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(C10−TCNQ)[E11/2=+0.20(V)]等が例示される。
【0088】
前記1,4−ナフトキノン誘導体としては、2,3−ジシアノ−5−ニトロ−1,4−ナフトキノン(DCNNQ)[E11/2=+0.38(V)]、2,3−ジシアノ−1,4−ナフトキノン(DCNQ)[E11/2=+0.21(V)]等が例示される。
【0089】
前記ジフェノキノン誘導体としては、3,3’,5,5’−テトラブロモ-ジフェノキノン(TBDQ)等が例示される。
【0090】
前記遷移金属錯塩系化合物としては、例えば、(TPP)2Pd(dto)2[E11/2=+1.20(V)]、(TPP)2Pt(dto)2[E11/2=+0.90(V)]、(TPP)2Ni(dto)2[E11/2=+0.57(V)]、(TPP)2Cu(dto)2[E11/2=+0.08(V)]、(TBA)2Cu(ox)2[E11/2=+1.28(V)]等が挙げられるが、酸化還元半波電位E11/2の値の大きさの観点から、(TPP)2Pd(dto)2、(TBA)2Cu(ox)2が好ましい。
【0091】
前記有機閉殻陰イオン性化合物としては、例えば、ピクラート、トシラート等が挙げられる。
【0092】
前記シアノ基とニトロ基を有するフルオレン系化合物としては、例えば、9−ジシアノメチレン−2,4,5,7−テトラニトロ−フルオレノン(DTENF)[E11/2=+0.23(V)]、9−ジシアノメチレン−2,4,7−トリニトロ−フルオレノン(DTNF)[E11/2=+0.01(V)]、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン(TENF)[E11/2=−0.13(V)]、2,4,7−トリニトロフルオレノン(TNF)[E11/2=−0.42(V)]等が挙げられるが、酸化還元半波電位E11/2の値の大きさの観点から、9−ジシアノメチレン−2,4,5,7−テトラニトロ−フルオレノン(DTENF)が好ましい。
【0093】
前記アクセプタ性化合物としては、酸化還元半波電位E11/2の値の大きさの観点から、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン、テトラシアノブタジエン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン、9−ジシアノメチレン−2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、ヘキサフルオロ砒酸リチウム、燐酸トリクロライド、フルオラニル、クロラニル及びブロマニルからなる群から選ばれるものが好ましく、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノンがより好ましい。
【0094】
前記アクセプタ性化合物は、飽和カロメル電極(SCE)により、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートを0.1mol/L支持塩として含むアセトニトリル溶媒において、温度20℃、電圧挿引速度10mV/sの条件下で測定される酸化還元半波電位E11/2が、E11/2≧+0.20[V]を満たす化合物であることが、陽極からの正孔注入性の観点から好ましく、+1.50[V]≧E11/2≧+0.20[V]を満たす化合物であることがより好ましく、+1.30[V]≧E11/2≧+0.20[V]を満たす化合物であることが特に好ましい。
【0095】
本発明の組成物において、前記アクセプタ性化合物の割合は、前記式(1)で表される化合物、その残基を有する化合物、又は前記式(2)で表される繰り返し単位を含む化合物100重量部に対して、通常、0.1〜100重量部であり、好ましくは10〜50重量部であり、より好ましくは10〜30重量部である。
【0096】
本発明の組成物は、その他の成分を含んでいてもよい。
【0097】
<有機電界発光素子>
本発明の組成物は、有機電界発光素子の作製に用いることができる。本発明の組成物を有機電界発光素子の作製に用いる場合、バッファ層等の層の材料として用いることが好ましい。また、本発明の組成物を用いて薄膜を形成させ、それをバッファ層等の層として用いてもよい。ここで、バッファ層とは、陽極と発光層との間に配置され、隣接する層と電気的に通じている層である。
【0098】
前記薄膜の平均膜厚は、通常、0.5〜500nmであり、好ましくは20〜70nmである。
【0099】
本発明の組成物を用いて薄膜を形成させる方法としては、例えば、真空蒸着法、レーザー転写法等の乾式法;キャスティング法、スピンコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット法、キャピラリコート法、ノズルコート法、スプレーコート法等の湿式法が挙げられるが、本発明の組成物が溶解又は分散している溶液を用いる成膜方法であれば、この限りではない。ここで、膜形成手法の簡便さの観点から、湿式法が好ましい。
【0100】
前記湿式法では、塗布液を調製し、該塗布液を所望の層(又は電極)上に、塗布・乾燥することで、前記薄膜を形成させることができる。塗布液中にはバインダーとして樹脂を含有させてもよく、樹脂は溶媒に溶解状態とすることも、分散状態とすることもできる。なお、前記溶媒には、酸化防止剤、粘度調整剤等を含有させてもよい。
【0101】
前記樹脂としては、非共役系高分子、共役系高分子を使用することができる。
前記非共役系高分子の樹脂としては、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン、ABS樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチルセルロース、ポリアミド、フェノキシ樹脂、ケトン樹脂、炭化水素樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)が挙げられる。
前記共役系高分子の樹脂としては、パラフェニレン樹脂、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリオキサジアゾール、ポリアゾメチンが挙げられる。
【0102】
前記塗布液に用いられる溶媒は、前記式(1)で表される化合物、その残基を有する化合物、前記式(2)で表される繰り返し単位を含む化合物、及び前記アクセプタ性化合物を溶解・分散することができる安定なものであればよい。このような溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等の有機塩素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ノルマルヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これらの溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0103】
前記塗布膜の乾燥温度は、使用した溶媒の沸点以上であることが好ましい。
【0104】
本発明の組成物を薄膜の材料として用い、その薄膜をバッファ層として使用した有機電界発光素子の構造としては、以下の構造が例示されるが、好ましくは、陽極/バッファ層/発光層/電子注入層/陰極、陽極/バッファ層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極であり、より好ましくは、陽極/バッファ層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極である。
陽極/バッファ層/発光層/陰極
陽極/バッファ層/正孔輸送層/発光層/陰極
陽極/バッファ層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
陽極/バッファ層/発光層/電子輸送層/陰極
陽極/バッファ層/発光層/電子注入層/陰極
陽極/バッファ層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
陽極/バッファ層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
陽極/バッファ層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
【実施例】
【0105】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。なお、数平均分子量、重量平均分子量は、以下の方法により測定した。
【0106】
数平均分子量及び重量平均分子量は、GPC(島津製作所社製、商品名:LC−10Avp)によりポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。測定する重合体は、約0.5重量%の濃度になるようテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに50μL注入した。GPCの移動相はテトラヒドロフランを用い、0.6mL/分の流速で流した。カラムは、TSKgel SuperHM−H(東ソー社製)2本とTSKgel SuperH2000(東ソー製)1本を直列に繋げた。検出器には示差屈折率検出器(島津製作所製、商品名:RID−10A)を用いた。
【0107】
<合成例1>(化合物(A−4)の合成)
−化合物(A−1)の合成−
300mlの4口フラスコに、1,4−ジブロモベンゼン5.00g、アントラニル酸メチル7.05gを取り、脱水トルエン100mlを加え、1時間窒素バブリングした。その後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.19g、トリ(t−ブチル)ホスフィンテトラフルオロボレート0.24g、及び炭酸セシウム10.36gを加え、70℃で5時間加熱した後に、20時間還流した。セライト20gを敷いたグラスフィルターで熱時濾過し、フィルター上の残留物を酢酸エチルで洗浄した。次に、溶媒を留去し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、脱イオン水、飽和食塩水の順番で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。そして、溶媒を留去し、5.49gの粗生成物を得た。また、水相を100mlのクロロホルムで3回抽出し、水、飽和食塩水の順番で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。その後、溶媒を留去し、更に4.00gの粗生成物を得た。得られた粗生成物を合わせ、トルエン30mlで再結晶し、下記式(A−1):

で表される化合物(A−1)6.28gを得た。
−分析データ−
・LC-MS
APPI-MS, positive 377 ([M+H]+、exact mass=376)
1H-NMR(300MHz,CDCl3)
δ3.91(6H, s), 6.72(2H, t),7.17-7.26(6H, m), 7.31(2H, t), 7.96(2H, d), 9.42(2H, s)
13C-NMR(300MHz,CDCl3)
δ52.1,111.8, 114.1, 117.1, 124.4, 131.9, 134.5, 136.9, 148.7, 169.3。
【0108】
−化合物(A−2)の合成−
300mlの4口フラスコに、1−ブロモ−4−n−ヘキシルベンゼン8.98gを取り、窒素置換した。その後、90mlの脱水THFに溶解し、−78℃に冷却した後、10分でn−ブチルリチウム(1.6Mへキサン溶液)を滴下した。次に、2時間保温した後、化合物(A−1)2.00gを20mlの脱水THFに溶解させ、滴下した。その後、徐々に室温まで昇温し、5時間攪拌した後に、0℃にて100mlの水を滴下した。次いで、分液し、水相を100mlの酢酸エチルで抽出した。油相を水、飽和食塩水で洗浄した後、溶媒を留去したところ、8.86gの粗生成物を得た(赤橙色固体)。得られた粗生成物をヘキサン50mlで再結晶し、下記式(A−2):

で表される化合物(A−2)4.14gを得た。
−分析データ−
・LC-MS
ESI, positive 999 ([M+K]+、exact mass=960)
1H-NMR(300MHz,CDCl3)
δ0.88(12H,t), 1.30(24H, m), 1.60(8H, m), 2.60(8H, t), 4.74(2H, brs), 5.68 (2H, brs), 6.55-6.63(6H, m), 6.75(2H,m), 7.03-7.26(20H, m)
13C-NMR(300MHz,CDCl3)
δ14.4,22.9, 29.3, 31.6, 32.0, 35.8, 82.4, 118.8, 120.2, 122.0, 127.9, 128.4, 130.3, 136.1, 137.7, 142.3, 143.3, 144.0。
【0109】
−化合物(A−3)の合成−
300mlのナス型フラスコに、化合物(A−2)8.00gを取り、窒素置換した。その後、80mlの酢酸に溶解させ、0℃に冷却した。2.8mlの濃塩酸を滴下した後、室温に昇温し、5時間攪拌した後、再度0℃に冷却して濾過、水洗した。次に、トルエン250mlに溶解させ、水酸化ナトリウム水溶液で塩基性にし、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水の順番で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。その後、溶媒を留去したところ13.75gの粗生成物を得た。得られた粗生成物をトルエン50mlで再結晶し、下記式(A−3):

で表される化合物(A−3)6.78gを得た。
−分析データ−
・LC-MS
ESI, positive 963 ([M+K]+、exact mass=924)
1H-NMR(300MHz,THF-d8)
δ0.90(12H,t), 1.34(24H, m), 1.55-1.62(8H, m), 2.56(8H, t), 6.37(2H, s), 6.63-6.70(6H, m), 6.87(8H, d), 6.98-7.01(10H, m),7.87(2H, s)
13C-NMR(300MHz,THF-d8)
δ13.7, 22.8, 29.5, 31.8, 32.0, 35.7, 56.2, 113.5, 115.2, 118.2, 126.8, 127.1, 127.3, 130.1, 130.4, 134.5, 140.4, 141.8, 144.6。
【0110】
−化合物(A−4)の合成−
300mlの4口フラスコを窒素置換し、化合物(A−3)9.90g、及び1−ブロモ−4−n−ブチルベンゼンを4.94g取り、脱水トルエン150mlに溶解させた。20分間窒素バブリングした後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.05g、トリ(t−ブチル)ホスフィンテトラフルオロボレート0.03g、及びナトリウム−t−ブトキシド0.30gを加え、10時間還流した。その後、0℃まで冷却後、水100mlを加え、分液し、水相を100mlのトルエンで2回抽出した。そして、油相を合わせ、水、飽和食塩水で洗浄し、シリカゲル60gを敷いたグラスフィルターで濾過した。その後、トルエンで洗浄した後、溶媒を留去し、16.52gの粗生成物を得た。得られた粗生成物にヘキサン50mlを加え結晶化し、メタノール50mlを加え、濾過した。得られた固体をヘキサン50mlで再結晶し、下記式(A−4):

で表される化合物(A−4)10.09gを得た。
−分析データ−
・LC-MS
ESI, positive 1218 ([M+H]+、exact mass=1217)
1H-NMR(300MHz,THF-d8)
δ0.62(12H,t), 0.69(6H, t), 1.00-1.34--17(28H, m), 1.27-1.37(12H, m), 2.26-2.35(12H, m), 5.67(2H, s), 5.93(2H, d), 6.38-6.47(8H, d), 6.56-6.61(10H, m), 6.64(8H, d), 6.79(6H, d)
13C-NMR(300MHz,THF-d8)
δ15.5, 15.6, 24.6, 24.7, 31.3, 33.7, 33.9, 35.8, 37.6, 58.3, 116.0, 117.8, 121.2, 128.0, 129.1, 130.8, 138.5, 140.9, 142.2, 144.1, 145.0, 146.0。
【0111】
<合成例2>(化合物Aの合成)
300mlのナス型フラスコに、化合物(A−4)10.09gを取り、窒素置換した。その後、100mlのクロロホルムに溶解させ、0℃に冷却した。次に、2.87gのN−ブロモスクシンイミド(NBS)をDMF6mlに溶解させた溶液を20分で滴下した。その後、冷浴を外し、7時間攪拌後、0℃に冷却して0.29gのNBSを0.5mlのDMFに溶解し、滴下した。さらに、2.5時間攪拌後、水100mlを滴下し、分液し、水相をクロロホルムで抽出した。また、油相を水、飽和食塩水で洗浄した後、シリカゲル50gを敷いたグラスフィルターを通して濾過し、得られた固体をトルエン洗浄した。その後、溶媒を留去したところ、12.48gの粗生成物を得た。水相及び油相から得られた粗生成物をヘキサン180ml、ヘキサン200mlの順番で再結晶し、下記式(A):

で表される化合物(A)9.55gを得た。
−分析データ−
・LC-MS
APCI, positive 1346 ([M+H]+、exact mass=1345)
1H-NMR(300MHz,THF-d8)
δ0.90(12H,t), 0.97(6H, t), 1.30-1.45(28H, m), 1.57-1.69(12H, m), 2.56-2.61(12H, m), 5.95(2H, s), 6.16(2H, brs), 6.70(4H, d), 6.76(8H, d), 7.01(8H, d), 7.02(2H, m), 7.05(2H, m), 7.12(4H, d)
13C-NMR(300MHz,THF-d8)
δ15.5, 15.6, 24.6, 24.7, 31.3, 33.6, 33.9, 35.7, 37.4, 37.6, 117.7, 129.4, 130.3, 132.0, 138.5, 142.7, 144.5。
【0112】
<合成例3>(高分子化合物1の合成)
窒素雰囲気下、化合物(A)1.01g、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン0.40g、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.5mg、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ社製、商品名:Aliquat336)0.10g、及びトルエン15mlを混合し、90℃に加熱した。この反応溶液に17.5重量%の炭酸ナトリウム水溶液4.1mlを滴下し、2時間還流させた。反応後、フェニルホウ酸10mgを加え、さらに4.5時間還流させた。次いで、ジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え、80℃で3時間撹拌した。冷却後、水10mlで2回、3重量%酢酸水溶液10mlで2回、水10mlで2回洗浄し、得られた溶液をメタノール120mLに滴下、ろ取することで沈殿物を得た。この沈殿物をトルエン25mLに溶解させ、シリカゲルの上に活性アルミナを敷いたカラムを通すことにより精製した。得られたトルエン溶液をメタノール120mlに滴下し、撹拌した後、得られた沈殿物をろ取し、乾燥させて、高分子化合物1を0.89g得た。高分子化合物1のポリスチレン換算の数平均分子量は1.0×105であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は3.0×105であった。なお、仕込み原料より、高分子化合物1は、下記式で表される繰り返し単位を含むものと推定される。



【0113】
<合成例4>(高分子化合物2の合成)
窒素雰囲気下、化合物(A)1.0g、ビス[1,5−シクロオクタジエン]ニッケル錯体0.55g、2,2’−ビピリジル0.31g、及びTHF35mlを混合し、60℃で3時間、加熱還流した。室温まで冷却した後、この反応溶液をメタノール40mlおよびアンモニア水溶液20mlの混合溶液に滴下し、0.5時間室温で撹拌させた。析出した固体をろ取した後、減圧乾燥した。得られた粗生成物をトルエン50mlに溶解させた後、ラジオライトカラムに通液後、アルミナカラムクロマトグラフィーにより精製した。得られたトルエン溶液を塩酸水溶液、アンモニア水溶液およびイオン交換水で洗浄した。水相を除去した後、有機相をメタノール70mlに滴下し、室温で0.5時間撹拌した。得られた沈殿物をろ取し、乾燥させて、高分子化合物2を0.47g得た。
高分子化合物2のポリスチレン換算の数平均分子量は4.2×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.9×105であった。なお、仕込み原料より、高分子化合物2は、下記式で表される繰り返し単位を含むものと推定される。

【0114】
<合成例5>(正孔輸送性高分子材料の合成)
ジムロートを接続したフラスコに、下記式:

で表される化合物α 5.25g(9.9mmol)、下記式:

で表される化合物β 4.55g(9.9mmol)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:Aliquat336、アルドリッチ社製) 0.91g、及びトルエン69mlを加えてモノマー溶液を得た。窒素雰囲気下、モノマー溶液を加熱し80℃で酢酸パラジウム 2mg、及びトリス(2−メチルフェニル)ホスフィン 15mgを加えた。得られたモノマー溶液に、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液 9.8gを注加した後、110℃で19時間攪拌した。次に、トルエン1.6mlに溶解したフェニルホウ酸 121mgを加え、105℃で1時間攪拌した。
有機相を水相と分離した後、有機相にトルエン300mlを加えた。有機相を3重量%酢酸水溶液 40ml(2回)、イオン交換水 100ml(1回)の順番で洗浄し、水相と分離した。有機相にN,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物 0.44g、トルエン 12mlを加え65℃で4時間攪拌した。
あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに反応生成物のトルエン溶液を通液し、この溶液をメタノール 1400mlに滴下しポリマーを沈殿させ、沈殿物を濾過後乾燥し固体を得た。この固体をトルエン 400mlに溶解させ、メタノール 1400mlに滴下しポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾過後乾燥し、正孔輸送性高分子化合物を6.33g得た。正孔輸送性高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは8.8×104であり、重量平均分子量Mwは3.2×105であった。
なお、正孔輸送性高分子化合物は、仕込み原料から、下記式:



で表される繰り返し単位を、1:1(モル比)で含むものと推定される。
【0115】
<実施例1>(組成物Aの調製)
アクセプタ性化合物である2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンをジクロロメタン溶媒に、0.2重量%溶液となるように溶解させ、アクセプタ性化合物溶液1を調製した。
また、高分子化合物1をジクロロメタン溶媒に、0.3重量%溶液となるように溶解させ、高分子化合物1溶液を調製した。
これらのアクセプタ性化合物溶液1と高分子化合物1溶液とを、得られる溶液の高分子化合物1とアクセプタ性化合物の重量比が、80:20となるように混合し、組成物A(混合溶液)を調製した。
【0116】
<実施例2>(有機電界発光素子1の作製)
組成物AをITO陽極が成膜されたガラス基板上にスピンコート法により回転数800rpmで塗布し、50nmの薄膜を成膜した。こうして得られたガラス基板Aを200℃で10分間加熱処理して溶媒を蒸発させた。
次いで、正孔輸送性高分子材料を準備し、キシレン溶媒に0.8重量%溶液となるように溶解させ、正孔輸送性高分子材料溶液1を調製した。正孔輸送性高分子材料溶液1を、高分子化合物1とアクセプタ性化合物との混合膜を成膜したガラス基板上にスピンコート法によって膜厚が20nmとなるように成膜し、正孔輸送層とした。こうして得られたガラス基板Bを200℃で15分加熱処理して溶媒を蒸発させた。
【0117】
次いで、高分子発光材料(サメイション株式会社製、商品名:BP361)を準備し、キシレン溶媒に、1.2重量%溶液となるように溶解させ、高分子発光材料溶液1を調製した。高分子発光材料溶液1をガラス基板A上にスピンコート法によって膜厚が70nmとなるように成膜し、発光層とした。こうして得られたガラス基板Cを130℃で20分加熱処理して溶媒を蒸発させた。
【0118】
次いで、ガラス基板C上に真空蒸着装置でバリウムを5nm、次に、アルミニウムを80nm堆積させ陰極とし、ガラス基板D(陰極形成済み)を得た。その後、エポキシ樹脂と封止用ガラス板を用いて、ガラス基板Dを封止し、有機電界発光素子1を作製した。
【0119】
<実施例3>(組成物Bの調製)
実施例1において、高分子化合物1の代わりに高分子化合物2を用いる以外は実施例1と同様にして調製した組成物を組成物Bとした。
【0120】
<実施例4>(有機電界発光素子2の作製)
実施例2において、組成物Aの代わりに組成物Bを用いる以外は実施例2と同様にして作製した有機電界発光素子を有機電界発光素子2とした。
【0121】
<合成例5>(高分子化合物3の合成)
N,N’−ジ(p−ブロモフェニル)−N,N’−ジ(p−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミンを、Polymer Preprints 2001, 42(2), 587に記載の方法で合成した。
窒素雰囲気下、N,N’−ジ(p−ブロモフェニル)−N,N’−ジ(p−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン2.73g、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン2.11g、酢酸パラジウム1.8mg、トリ(o−トリル)ホスフィン11.3mg、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ社製、商品名:Aliquat336)0.52g、及びトルエン15mlを混合し、90℃に加熱した。この反応溶液に17.5重量%の炭酸ナトリウム水溶液10.9mlを滴下し、6時間還流させた。反応後、フェニルホウ酸49mgを加え、さらに2時間還流させた。次いで、ジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え、80℃で2時間撹拌した。冷却後、水50mlで2回、3重量%酢酸水溶液50mlで2回、水50mlで2回の順番で洗浄し、得られた溶液をメタノール620mlに滴下、ろ取することで沈殿物を得た。この沈殿物をトルエン120mlに溶解させ、シリカゲルの上に活性アルミナを敷いたカラムを通すことにより精製した。得られたトルエン溶液をメタノール620mlに滴下し、撹拌した後、得られた沈殿物をろ取し乾燥させて、高分子化合物3を3.19g得た。高分子化合物3のポリスチレン換算の数平均分子量は4.2×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は1.7×105であった。なお、仕込み原料より、高分子化合物3は、下記式で表される繰り返し単位を含むものと推定される。



【0122】
<合成例6>(高分子化合物4の合成)
不活性雰囲気下、N,N’−ジ(p−ブロモフェニル)−N,N’−ジ(p−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(10.238g)、2,2’−ビピリジル(6.325g)をあらかじめアルゴンでバブリングした、脱水テトラヒドロフラン410mLに溶解した。この溶液を60℃まで昇温後、ビス(1、5−シクロオクタジエン)ニッケル(0){Ni(COD)2}(11.140g)を加え、攪拌し、5時間反応させた。この反応液を室温まで冷却し、25重量%アンモニア水54mL/メタノール410mL/イオン交換水410mL混合溶液中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して減圧乾燥し、トルエン450mlに溶解させた。溶解後、ラヂオライト1.8gを加えて30分攪拌し、不溶解物を濾過した。得られた濾液をアルミナカラムを通して精製を行った。次に、4重量%アンモニア水890mLを加え、2時間攪拌した後に水層を除去した。さらに有機層にイオン交換水約890mLを加え1時間攪拌した後、水層を除去した。その後、有機層をメタノール1400mlに注加して0.5時間攪拌し、析出した沈殿をろ過して減圧乾燥させて、高分子化合物4を6.72g得た。また、高分子化合物4のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは8.6×103であり、重量平均分子量Mwは9.7×104であった。なお、仕込み原料より、高分子化合物4は、下記式で表される繰り返し単位を含むものと推定される。

【0123】
<比較例1>(組成物Cの調製)
実施例1において、高分子化合物1の代わりに高分子化合物3を用いる以外は、実施例1と同様にして調製した組成物を組成物Cとした。
【0124】
<比較例2>(有機電界発光素子3の作製)
実施例2において、組成物Aの代わりに組成物Cを用いる以外は、実施例2と同様にして作製した有機電界発光素子を有機電界発光素子3とした。
【0125】
<比較例3>(組成物Dの調製)
実施例1において、高分子化合物1の代わりに高分子化合物4を用いる以外は、実施例1と同様にして調製した組成物を組成物Dとした。
<比較例4>(有機電界発光素子4の作製)
実施例2において、組成物Aの代わりに組成物Dを用いる以外は、実施例2と同様にして作製した有機電界発光素子を有機電界発光素子4とした。
【0126】
<素子評価>
−測定1−
定電圧・電流電源を準備して、有機電界発光素子1〜4のITO陽極を電源の陽極に、アルミニウム陰極を電源の陰極に接続して、電圧を印加し、電流注入を行った。発光輝度1cd/m2時の電圧、及び発光輝度1600cd/m2による連続駆動時の輝度半減寿命を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0127】
【表1】

【0128】
−評価1−
表1から分かるとおり、本発明の組成物を用いた有機電界発光素子1、2は、その他の組成物を用いた有機電界発光素子3、4と比較して、発光輝度1cd/m2時の電圧(発光開始電圧)が低下し、また輝度半減寿命が長くなると認められる。従って、本発明の組成物は、正孔注入性、素子寿命が優れていると認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):

(式中、A環、B環及びC環はそれぞれ独立に、単環の芳香環又は縮合した芳香環を表し、R1及びR4はそれぞれ独立に、1価の基を表し、R2、R3、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。A環、B環、C環、R1及びR4は、置換基を有していてもよい。R2、R3、R5及びR6で表されるアリール基、アリールアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、置換基を有していてもよい。)
で表される化合物、その残基を有する化合物、又は下記式(2):

(式中、A環、B環、C環、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、前記と同じ意味を有する。但し、A環及びC環は、それぞれ結合手を有する。)
で表される繰り返し単位を含む化合物と、アクセプタ性化合物とを含む組成物。
【請求項2】
前記A環、B環及びC環が、置換基を有していてもよい単環の芳香環である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記R1、R2、R3、R4、R5及びR6が、置換基を有していてもよいアリール基である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
さらに、下記式(3):

(式中、Ar1はアリーレン基又は2価の複素環基を表す。R7及びR8はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基又はシアノ基を表す。nは0又は1を表す。Ar1、R7及びR8は、置換基を有していてもよい。)
で表される繰り返し単位を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記式(3)で表される繰り返し単位が、下記式(4−1):

(式中、C4環及びC5環はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表し、2つの結合手はそれぞれC4環又はC5環上に存在し、Rw及びRxはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、2置換アミノ基、3置換シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、置換カルボキシル基、ヘテロアリールオキシ基又はヘテロアリールチオ基を表す。Rw及びRxは、置換基を有していてもよい。)
で表されるものである請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記式(2)で表される繰り返し単位を含む化合物が、さらに、下記式(5−1)、(5−2)及び(5−3)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種類の繰り返し単位を含む化合物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。

(式中、Ar2、Ar3、Ar4及びAr5はそれぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。Ar6、Ar7及びAr8はそれぞれ独立に、アリール基又は1価の複素環基を表す。B及びbはそれぞれ独立に、0又は正の整数を表す。Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6、Ar7及びAr8は置換基を有していてもよい。)

(式中、D環及びE環はそれぞれ独立に、芳香環を表す。Y1は−O−、−S−又は−C(=O)−を表す。R20は1価の基を表す。D環及びE環は、それぞれ結合手を有する。D環、E環、Y1及びR20は、置換基を有していてもよい。)

(式中、Y2は−O−又は−S−を表す。)
【請求項7】
前記アクセプタ性化合物が、キノン系化合物、遷移金属錯塩系化合物、有機閉殻陰イオン性化合物、シアノ基とニトロ基を有するフルオレン系化合物、テトラシアノエチレン、テトラシアノブタジエン、ヘキサフルオロ砒酸リチウム、燐酸トリクロライド、フルオラニル、クロラニル及びブロマニルからなる群から選ばれるものである請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記アクセプタ性化合物が、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン、テトラシアノブタジエン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン、9−ジシアノメチレン−2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、ヘキサフルオロ砒酸リチウム、燐酸トリクロライド、フルオラニル、クロラニル及びブロマニルからなる群から選ばれるものである請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記アクセプタ性化合物の割合が、前記式(1)で表される化合物、その残基を有する化合物、又は前記式(2)で表される繰り返し単位を含む化合物100重量部に対して、0.1〜100重量部である請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物を用いてなる層を有する有機電界発光素子。

【公開番号】特開2009−149846(P2009−149846A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262584(P2008−262584)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(506061668)サメイション株式会社 (51)
【Fターム(参考)】