説明

アミン系老化防止剤含有プリプレグ、及びそのプリプレグを用いた積層体

【課題】耐熱性が高く、広い温度範囲で長時間、高周波回路基板材料として好適に使用できる積層体を製造することができるプリプレグ、及びこのプリプレグを用いた積層体を提供する。
【解決手段】共役ジエン系ポリマー、ラジカル発生剤、及びアミン系老化防止剤を含む硬化性組成物を強化繊維に含浸することにより得られるプリプレグ、及び上記のプリプレグを、該プリプレグ同士で、または他材料と積層した後に硬化して得られる積層体は、耐熱性が高く、広い温度範囲で長時間、高周波回路基板材料として好適に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路基板を含む多層配線基板等に好適なプリプレグ及びそのプリプレグを用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板は、一般に誘電体層と導体層とから構成される。近年、高度情報化時代を迎え、情報伝送は高速化・高周波に動き出し、マイクロ波通信やミリ波通信が現実になってきている。これらの高周波化時代の回路基板は、高周波におけるノイズや伝送ロスを極限まで軽減する必要があり、誘電正接(tanδ)が低い誘電体材料の選定が重要な課題となってきている。
【0003】
誘電正接の低い誘電材料としては、ポリブタジエンやポリイソプレン等の共役ジエン系ポリマーが注目されている。たとえば、特許文献1には、室温液状の分子量5,000未満である1,2−ポリブタジエン、固体ポリマーであるスチレン−ブタジエン−スチレントリブロックコポリマー等の熱可塑性ブロックコポリマー、ジクミルペルオキシドやt−ブチルペルオキシヘキシン−3などの有機過酸化物及びエチレンビステトラブロモフタルイミド、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、デカブロモジフェノキシルオキシドなどの臭素含有難燃剤などを溶媒中で混合し、スラリーとして繊維強化材に含浸させた後に溶媒除去してプリプレグを作製し、次いで2枚の銅箔間に複数枚のプリプレグを積層し、硬化してなる積層体が開示されている。しかしながら、本法で得られる積層体では、耐熱性が十分でなく、高温で保持した場合、誘電正接の増加、及び機械的特性の劣化が大きいという問題があった。
【0004】
一方、特許文献2には、ポリブタジエンまたはポリイソプレンポリマー、引火遅延剤、編織物、粒状充填剤、有機過酸化物とを含む回路基板材料に重量平均分子量が50,000未満のエチレン−プロピレンポリマーを全ポリマー中の6〜12重量%含有させることで、熱による劣化が少なく誘電率等の安定性が改良されることが開示されている。しかしながら、本法でも十分な耐熱性が得られない問題があった。本法においては、また、210℃の熱劣化試験で老化防止剤としてNaugard(2,2−オキサリルジアミドビス[エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロプリオネート])を添加しても改善効果が見られなかったことが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−208856号公報
【特許文献2】特表2003−528450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、誘電正接の低いポリブタジエンあるいはポリイソプレン等の共役ジエン系ポリマーを用いて耐熱性が高く、広い温度範囲で長時間、高周波回路基板材料として好適に使用できる積層体を製造することができるプリプレグ、及びこのプリプレグを用いた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討の結果、1,2−ポリブタジエンやスチレン−ブタジエンブロックコポリマーなどの共役ジエン系ポリマーとラジカル発生剤とを含む硬化性組成物にアミン系老化防止剤を配合させることでラジカル発生剤の活性を阻害させず、誘電正接が低いまま耐熱性を向上させることができることを見出した。また、これらの効果は、アミン系老化防止剤として、第2級アミン系老化防止剤、特にジフェニルアミン系老化防止剤を使用することで格段と向上することを見出した。本発明者らは、また、共役ジエン系ポリマーに対して、あるいはラジカル発生剤に対して特定量のアミン系老化防止剤を配合することで、共役ジエンポリマーの架橋反応を阻害することなく、耐熱性をも向上することを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて発明を完成するに至ったものである。
【0008】
かくして本発明によれば、共役ジエン系ポリマー、ラジカル発生剤、及びアミン系老化防止剤を含む硬化性組成物を強化繊維に含浸してなるプリプレグが提供される。
本発明によれば、また、上記のプリプレグを、該プリプレグ同士で、または他材料と積層した後に硬化してなる積層体が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、誘電正接が低いポリブタジエンあるいはポリイソプレンを用いて、耐熱性に優れる積層体及びそれを与えるプリプレグを容易に製造することができる。また、本発明の積層体は、誘電正接が低く、耐熱性に優れるので、通信機器用途等のマイクロ波またはミリ波等の高周波回路基板に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(共役ジエン系ポリマー)
本発明に使用される共役ジエン系ポリマーは、共役ジエンを少なくとも含むポリマーであれば格別に限定はされないが、共役ジエン系ホモポリマーと共役ジエン系コポリマーとからなる群から選ばれる少なくとも1種が好適に用いられる。これらの重合様式は、使用目的に応じて適宜選択され、常法に従って行なうことができる。
【0011】
共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ペンタジエンなどが挙げられ、好ましくはブタジエンやイソプレンで、より好ましくはブタジエンである。
【0012】
共役ジエン系ホモポリマーとしては、共役ジエンを重合してなるものであれば格別の限定はなく、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリシアノブタジエン、ポリペンタジエンなどが挙げられ、好ましくはポリブタジエン、ポリイソプレン、より好ましくはポリブタジエンである。
【0013】
共役ジエン系コポリマーとしては、共役ジエンを少なくとも含むコポリマーであれば格別な限定はなく、例えば、ランダムコポリマーやブロックコポリマーを用いることができる。
【0014】
共重合するモノマーとしては、共役ジエンと共重合可能なモノマーであれば格別の限定はなく、例えば、シアノ基含有ビニル、アミノ基含有ビニル、ピリジル基含有ビニル、アルコキシル基含有ビニル、芳香族ビニルなどが挙げられ、これらの中でもシアノ基含有ビニルや芳香族ビニルが好ましく、特に芳香族ビニルが好ましい。芳香族ビニルとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、N,N−ジメチルアミノエチルスチレン、N,N−ジエチルアミノエチルスチレンなどを挙げることができ、これらの中でも、スチレン、α−メチルスチレンが特に好ましい。
【0015】
共役ジエン系コポリマーの共役ジエンと共重合モノマーとの割合は、使用目的に応じて適宜選択され、共役ジエン/共重合モノマーの重量比で、通常95/5〜5/95、好ましくは90/10〜10/90、より好ましくは80/20〜20/80の範囲であり、この範囲の時に、積層体の耐熱性、機械的強度及び靭性等の特性が高度にバランスされ好適である。
【0016】
共役ジエン系ブロックコポリマーの結合様式は、通常2ブロックコポリマー、3ブロックコポリマー、4ブロックコポリマー、5ブロックコポリマー等、使用目的に応じて適宜選択されるが、2ブロックコポリマーと3ブロックコポリマーが好適であり、3ブロックコポリマーがプリプレグ及び積層体の積層性、耐熱性及び機械的強度のバランスを高度に保つことができ特に好適である。3ブロックコポリマーの具体例としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、α−メチルスチレン−ブタジエン−α−メチルスチレンブロックコポリマーなどが挙げられ、好ましくはスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーである。
【0017】
本発明に使用される共役ジエン系ポリマーの共役ジエン部の1,2−ビニル結合量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常5モル%以上、好ましくは40モル%以上、より好ましくは60モル%以上、最も好ましくは80モル%以上である。1,2−ビニル結合量がこの範囲である時に、積層体の機械的強度や耐熱性を高度に向上させることができ好適である。
【0018】
共役ジエン系ホモポリマーまたは共役ジエン系コポリマーをそれぞれ単独で用いる場合の共役ジエン系ポリマーの分子量は、使用目的に応じて適宜選択できるが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ポリスチレン換算 トルエン溶離液)で測定される重量平均分子量で、通常500〜5,000,000、好ましくは1,000〜1,000,000の範囲である。
【0019】
本発明において、上記共役ジエン系ポリマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができるが、共役ジエン系ホモポリマーと共役ジエン系コポリマーを組み合わせることでプリプレグの積層性並びに積層体の耐熱性及び機械的特性等の特性を高度にバランスさせることができ好適である。
【0020】
共役ジエン系ホモポリマーと共役ジエン系コポリマーを組み合わせる場合の、共役ジエン系ホモポリマーの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ポリスチレン換算 トルエン溶離液)で測定される重量平均分子量で、通常500〜500,000、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは1,000〜5,000の範囲である。組み合わせる場合の、共役ジエン系コポリマーの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ポリスチレン換算 トルエン溶離液)で測定される重量平均分子量で、通常1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜300,000の範囲である。共役ジエン系ホモポリマーと共役ジエン系コポリマーの分子量がこの範囲である時に、積層体の積層性と機械的強度の関係を高度にバランスさせることができ好適である。
【0021】
共役ジエン系ホモポリマーと共役ジエン系コポリマーを組み合わせる場合の使用する割合は、使用目的に応じて適宜選択されるが、共役ジエン系ホモポリマー/共役ジエン系コポリマーの重量比で、通常10/90〜95/5、好ましくは30/70〜90/10、より好ましくは50/50〜85/15の範囲である。両者の割合がこの範囲にあるときに、積層体の耐熱性、機械的特性及び誘電正接等の特性が高度にバランスされ好適である。
【0022】
(ラジカル発生剤)
本発明に使用されるラジカル発生剤は、上記共役ジエン系ポリマーを架橋させるものであれば格別な限定はないが、通常有機過酸化物、ジアゾ化合物および非極性ラジカル発生剤などが挙げられ、有機過酸化物や非極性ラジカル発生剤が積層体の誘電正接を下げる上で特に好適である。
【0023】
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンなどのジアルキルペルオキシド類;ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどのペルオキシケタール類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナートなどのペルオキシカルボナート類;t−ブチルトリメチルシリルペルオキシドなどのアルキルシリルペルオキシド類;などが挙げられる。中でも、ジアルキルペルオキシドおよびペルオキシケタール類が好ましい。ジアゾ化合物としては、例えば、4,4’−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0024】
非極性ラジカル発生剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2−トリフェニルエタン、1,1,1−トリフェニル−2−フェニルエタンなどが挙げられる。
【0025】
本発明に使用されるラジカル発生剤の1分間半減期温度は、ラジカル発生剤の種類及び使用条件により適宜選択されるが、通常、50〜350℃、好ましくは100〜250℃、より好ましくは150〜230℃の範囲である。
【0026】
これらのラジカル発生剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。ラジカル発生剤の使用量は、共役ジエン系ポリマー100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
【0027】
(アミン系老化防止剤)
本発明においては、老化防止剤としてアミン系老化防止剤を使用することを特徴とする。
アミン系老化防止剤としては、アミノ基を有する抗酸化物質であれば格別な限定はなく、通常第1級アミン系老化防止や第2級アミン系老化防止剤が用いられ、好ましくは、第2級アミンが用いられる。
【0028】
第1級アミン系老化防止剤としては、例えば、アルドール−α−ナフチルアミン、アセトアルデヒドアニリン、p,p’−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
第2級アミン系老化防止剤としては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリンなどの第2級アミン・ケトン系老化防止剤;N−フェニル−1−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミンなどの分子中にジフェニルアミン構造を有する化合物であるジフェニルアミン系老化防止剤;などが挙げられる。これらの中でも、高揮発点を有するジフェニルアミン系老化防止剤が好ましく、特に、N−フェニル−1−ナフチルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンなどの芳香環を3つ以上有するジフェニルアミン系老化防止剤が好適である。
これらのアミン系老化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
アミン系老化防止剤の使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、共役ジエン系ポリマー100重量部に対して、通常0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
【0030】
アミン系老化防止剤とラジカル発生剤との使用割合は、使用目的に応じて適宜選択されるが、アミン系老化防止剤/ラジカル発生剤(重量比)で、通常1/99〜90/10、好ましくは2/98〜70/30、より好ましくは3/97〜50/50の範囲である。アミン系老化防止剤とラジカル発生剤との使用割合がこの範囲にあるときに、共役ジエン系ポリマーの架橋反応を阻害することなく、積層体の耐熱性をも向上することができ好適である。
【0031】
(硬化性組成物)
本発明に使用される硬化性組成物は、上記共役ジエン系ポリマー、ラジカル発生剤、及びアミン系老化防止剤を必須成分として、必要に応じて、充填剤、架橋助剤、難燃剤及びその他の配合剤などを添加することができる。
【0032】
本発明においては、硬化性組成物に充填剤を添加することでより耐熱性を向上させることができ好適である。使用される充填剤は、工業的に一般に使用されるものであれば格別な限定はなく無機系充填剤や有機系充填剤のいずれも用いることができるが、好適には無機系充填剤である。
【0033】
無機系充填剤としては、例えば、鉄、銅、ニッケル、金、銀、アルミニウム、鉛、タングステン等の金属粒子;カーボンブラック、グラファイト、活性炭、炭素バルーン等の炭素粒子;シリカ、シリカバルーン、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化すず、酸化アンチモン、酸化ベリリウム、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の無機酸化物粒子;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機水酸化物粒子;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム等の無機炭酸塩粒子;硫酸カルシウム等の無機硫酸塩粒子;タルク、クレー、マイカ、カオリン、フライアッシュ、モンモリロナイト、ケイ酸カルシウム、ガラス、ガラスバルーン等の無機ケイ酸塩粒子;チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛等のチタン酸塩粒子、窒化アルミニウム、炭化ケイ素粒子やウィスカー等が挙げられる。これらの中でも、積層体の誘電正接と耐熱性を高度にバランスさせるためには、金属粒子、無機酸化物粒子、無機水酸化物粒子、無機ケイ酸塩粒子及びチタン酸塩粒子などが好ましく、無機酸化物粒子やチタン酸塩などがより好ましい。
【0034】
有機系充填剤としては、例えば、木粉、デンプン、有機顔料、ポリスチレン、ナイロン、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、塩化ビニル、各種エラストマー、廃プラスチック等の粒子化合物が挙げられる。
これらの充填剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その添加量は、共役ジエン系ポリマー100重量部に対して、通常10〜1,000重量部、好ましくは50〜750重量部、より好ましくは100〜500重量部の範囲である。
【0035】
本発明においては、硬化性組成物に架橋助剤を添加することにより、硬化性組成物の強化繊維への含浸性を高度に向上でき、また、硬化して得られる積層体の機械的強度と耐熱性を高度にバランスさせることができ好適である。
【0036】
架橋助剤としては、工業的に用いられるものを格別な限定なく用いることができ、例えば、p−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、o−ジイソプロペニルベンゼンなどの2官能架橋助剤、トリイソプロペニルベンゼン、トリメタアリルイソシアネートなどの3官能架橋助剤等が挙げられる。
これらの架橋助剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋助剤の使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、共役ジエン系ポリマー100重量部に対し、通常0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部の範囲である。
【0037】
本発明においては、硬化性組成物に難燃剤を添加することにより積層体に難燃性が付与され好適である。
使用される難燃剤は、工業的に用いられるものを格別な限定はなく用いることができ、例えば、ハロゲン系難燃剤やノンハロ系難燃剤のいずれをも用いることができる。
【0038】
ハロゲン系難燃剤は、ハロゲン原子を含む難燃剤である。ハロゲン系難燃剤としては、例えば、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルオキシド、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールS、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニルプロパン)、ペンタブロモトルエン、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、含ハロゲン縮合燐酸エステルなどの低分子ハロゲン含有有機化合物;ハロゲン含有量が40〜70重量%のハロゲン化パラフィン類;ハロゲン化エラストマー;塩素化ポリスチレン、ヨウ化ポリスチレンなどのハロゲン化ポリスチレン;ハロゲン含有量が50重量%以上の高塩素化ポリエチレン、高塩素化ポリプロピレン、クロロスルホン化ポリエチレンなどのハロゲン化ポリオレフィン;塩素化ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ポリ塩化ビニル;などの高分子量のものが挙げられる。
【0039】
ノンハロ系難燃剤としては、ハロゲン原子を含まない難燃剤であり、例えば、金属水酸化物系難燃剤、金属酸化物系難燃剤、燐系難燃剤、窒素系難燃剤、燐及び窒素双方を含有する難燃剤などを挙げることができる。
【0040】
金属水酸化物系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。金属酸化物系難燃剤としては、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。燐系難燃剤としては、赤燐、燐酸エステル等が挙げられる。燐酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジクレジル)ホスフェートなどが挙げられるが、好ましくは、トリクレジルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジクレジル)ホスフェートなどの比較的分子量の大きい3級燐酸エステルが挙げられる。
【0041】
窒素系難燃剤としては、窒素を含む難燃剤であれば格別の限定はなく、たとえば、メラミン誘導体類、グアニジン類、イソシアヌル酸などが挙げられるが、好ましくはメラミン誘導体類が挙げられる。メラミン誘導体類としては、たとえば、メラミン、メラミン樹脂、メラム、メレム、メラミンシアヌレート、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、硫酸メラミン、硫酸グアニルメラミン、硫酸メラム、硫酸メレムなどが挙げられるが、好ましくは硫酸メラミンである。グアニジン類としては、たとえば、硝酸グアニジン、炭酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン、硝酸アミノグアニジン、重炭酸アミノグアニジンなどが挙げられるが、好ましくは硝酸グアニジンが挙げられる。
【0042】
燐及び窒素の双方を含有する難燃剤としては、たとえば、ポリ燐酸アンモニウム、燐酸メラミン、ポリ燐酸メラミン、ポリ燐酸メラム、燐酸グアニジン、フォスファゼン類などが挙げられるが、好ましくはポリ燐酸アンモニウム、ポリ燐酸メラミン、ポリ燐酸メラムである。
【0043】
これらの難燃剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。難燃剤の添加量は、共役ジエン系ポリマー100重量部に対して、通常10〜300重量部、好ましくは20〜200重量部、より好ましくは30〜150重量部の範囲である。
【0044】
その他の配合剤としては、その他のポリマー成分、その他の老化防止剤、着色剤、染料、顔料などが挙げられる。これらのその他の添加剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択される。
【0045】
本発明に使用される硬化性組成物は、上記成分を混合して得ることができる。混合は、常法に従って行なうことができる。
【0046】
(強化繊維)
本発明に使用される強化繊維としては、格別な制限はないが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、アラミド繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、液晶ポリエステル繊維などの有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、ブデン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、シリカ繊維などの無機繊維;などを挙げることができる。これらの中でも、有機繊維やガラス繊維が好ましく、特にアラミド繊維、液晶ポリエステル繊維、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、Eガラス、NEガラス、Sガラス、Dガラス、Hガラス等の繊維を好適に用いることができる。
【0047】
これらの強化繊維は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。強化繊維の使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、プリプレグあるいは積層体中の、通常10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%の範囲であり、この範囲にあるときに積層体の誘電正接と耐熱性が高度にバランスされ好適である。
【0048】
(プリプレグ)
本発明のプリプレグは、前記硬化性組成物を上記強化繊維に含浸して製造することができる。
含浸方法としては、常法に従えばよく、例えば、共役ジエン系ポリマー、ラジカル発生剤、アミン系老化防止剤、及び必要に応じて、充填剤、架橋助剤、難燃剤、その他の配合剤を溶媒に溶解して低粘度化した硬化性組成物を強化繊維に含浸させた後に脱溶媒させるウェット法、リリースペーパー上に硬化性組成物をコーティングし、その上に強化繊維を引き揃え、加熱溶解した硬化性組成物をロールあるいはドクターブレード等で加圧含浸させ、その後、放冷するホットメルト法(ドライ法)などが挙げられるが、通常はウェット法で行なわれる。
【0049】
ウェット法で含浸した後の乾燥温度は、通常50〜250℃、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜170℃の範囲であり、通常ラジカル発生剤の1分間半減期温度以下、好ましくは1分間半減期温度より10℃以上低い温度、より好ましくは1分間半減期温度より20℃以上低い温度である。ここで1分間半減期温度は、ラジカル発生剤の半量が1分間で分解する温度である。例えば、ジ−t−ブチルペルオキシドでは186℃、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシンでは194℃である。乾燥時間は適宜選択すればよいが、通常0.1〜120分間、好ましくは0.5〜60分間、より好ましくは1〜30分間の範囲である。
【0050】
本発明のプリプレグの厚みは、使用目的の応じて適宜選択されるが、通常0.001〜10mm、好ましくは0.01〜1mm、より好ましくは0.05〜0.5mmの範囲である。プリプレグの厚みがこの範囲であるときに、プリプレグの操作性、及び硬化して得られる積層体の機械的強度や靭性が充分に発揮され好適である。
【0051】
本発明のプリプレグ中の揮発成分量は、プリプレグを200℃で1時間放置した時に揮発する量で、全硬化性組成物中の通常30重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、もっとも好ましくは1重量%以下である。プリプレグの揮発成分量が過度に多いと、乾燥後のプリプレグにベタ付きが残り、プリプレグの操作性及び保存安定性が悪くなる。また、プリプレグ及び積層体中にボイドが発生し、外観や機械的強度を低下させたり、積層体のブリードや耐熱性、耐薬品性等への問題が生じ好ましくない。
【0052】
(積層体)
本発明の積層体は、上記プリプレグを、同じプリプレグ同士で、または他材料と積層して、必要に応じて賦形した後に、硬化することで製造することができる。
積層してもよい他材料としては、使用目的に応じて適宜選択されるが、例えば、熱可塑性樹脂材料、金属材料などが挙げられ、好ましくは金属材料が挙げられる。金属材料としては、回路基板で一般に用いられるものを格別な限定なく用いることができ、通常金属箔、好ましくは銅箔が用いられる。金属材料の厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常1〜50μm、好ましくは3〜30μm、より好ましくは5〜20μm、最も好ましくは5〜15μmの範囲である。
【0053】
プリプレグを積層及び硬化させる方法は、常法に従えばよく、例えば、平板成形用のプレス枠型を有する公知のプレス機、シートモールドコンパウンド(SMC)やバルクモールドコンパウンド(BMC)などのプレス成形機を用いた熱プレスによって行なうことができる。加熱温度は、ラジカル発生剤による架橋が起こる温度であり、通常1分間半減期温度以上、好ましくは1分間半減期温度より5℃以上高い温度、より好ましくは1分間半減期温度より10℃以上高い温度である。通常は、100〜300℃、好ましくは150〜250℃の範囲である。加熱時間は、0.1〜180分、好ましくは1〜120分、より好ましくは2〜20分の範囲である。プレス圧力は、通常0.1〜20MPa、好ましくは0.1〜10MPa、より好ましくは1〜5MPaである。また、熱プレスは、真空または減圧雰囲気下で行ってもよい。
【0054】
かくして得られる本発明の積層体は、高周波領域での伝送ロスが少なく且つ耐熱性に優れるため、広域な温度下で長時間、高周波基板材料として好適に用いることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0056】
実施例および比較例における各特性は、下記の方法に従い測定、評価した。
(1) 誘電正接:インピダンスアナライザーを用いて積層体の1GHzにおける誘電正接(tanδ)を、容量法で測定し、比較例1の誘電正接を100として、下記基準で判断した。
○:100以下
×:100を超える
(2) 耐熱性(誘電正接):得られた積層体を、230℃で30日間保持した後、2×2cmに切り出し、インピダンスアナライザーを用いて積層体の1GHzにおける誘電正接(tanδ)を容量法で測定した。(保持後のtanδ)/(保持前のtanδ)を算出し、下記基準で判断した。
○:2.0未満
△:2.0以上4.0未満
×:4.0以上
(3) 耐熱性(機械的強度):得られた積層体を、230℃で30日間保持した後、0.5×3cmに切り出し、引っ張り試験機を用いて、ASTM D638に従って、積層体の引っ張り強度を測定した。(保持後の引っ張り強度)/(保持前の引っ張り強度)を算出し、下記基準で判断した。
○:0.75以上
△:0.5以上0.75未満
×:0.5未満
【0057】
実施例1
ポリブタジエンホモポリマー B3000(日本曹達社製;分子量3000、1,2−ビニル結合量95モル%)100部、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー タフプレンA(旭化成社製)20部、難燃剤としてビスフェノールAビス(ジクレジル)ホスフェート 80部、シリカ(アドマファイン製 0.5μm)35部、ラジカル発生剤としてジ−t−ブチルペルオキシド1.2部及びアミン系老化防止剤として6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン1部をキシレン中で混合し、硬化性組成物を得た。次いで、得られた硬化性組成物をガラスクロス(Eガラス)に含浸させ、加熱により溶媒を除去してプリプレグを作製した。プリプレグの強化繊維含有量は41%であった。
【0058】
次に、作製したプリプレグ5枚を重ね、200℃で10分間、3MPaにて加熱プレスを行い積層体を得た。得られた積層体の誘電正接と耐熱性を評価し、その結果を表1にまとめた。
【0059】
実施例2
アミン系老化防止剤を4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンに変える以外は実施例1と同様にプリプレグ及び積層体を作製し、各特性を評価してその結果を表1にまとめた。
【0060】
比較例1
老化防止剤を用いない以外は実施例1と同様にプリプレグ及び積層体を作製し、各特性を評価してその結果を表1にまとめた。
【0061】
比較例2
エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエンランダムコポリマー トリレン54(ユニロイヤル社;重量平均分子量:30000)10部を加える以外は比較例1と同様にプリプレグ及び積層体を作製し、各特性を評価してその結果を表1にまとめた。
【0062】
比較例3
老化防止剤として2−オキサリルジアミドビス[エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロプリオネート])1部を加える以外は比較例2と同様にプリプレグ及び積層体を作製し、各特性を評価してその結果を表1にまとめた。
【0063】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系ポリマー、ラジカル発生剤、及びアミン系老化防止剤を含む硬化性組成物を強化繊維に含浸してなるプリプレグ。
【請求項2】
共役ジエン系ポリマー100重量部に対して、アミン系老化防止剤0.001〜10重量部を配合してなる請求項1記載のプリプレグ。
【請求項3】
アミン系老化防止剤/ラジカル発生剤の重量比が1/99〜90/10の範囲である請求項1または2記載のプリプレグ。
【請求項4】
アミン系老化防止剤が第2級アミン系老化防止剤である請求項1乃至3のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項5】
第2級アミン系老化防止剤が、ジフェニルアミン系老化防止剤である請求項4記載のプリプレグ。
【請求項6】
硬化性組成物が、難燃剤を含んでなる請求項1乃至5のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のプリプレグを、該プリプレグ同士で、または他材料と積層した後に硬化してなる積層体。

【公開番号】特開2011−98993(P2011−98993A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60727(P2008−60727)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】