説明

アムロジピンとベナゼプリル/ベナゼプリラートの治療上の組み合せ

【課題】より素晴らしい血圧調節を示すのみならず、アムロジピンとベナゼプリルの低用量併用物よりも優れた予想外且つ更なる有利な効果を示す、高量のCCB及び/又はACEIを含んで成る併用物の提供。
【解決手段】(1)ベナゼプリル、ベナゼプリラート、及び医薬的に許容できるその塩から選択されるACEI、及び(2)アムロジピン又は医薬的に許容できるその塩を含んで成り、症状の治療もしくは予防または進行を遅延する為の医薬の製造をする為の併用物の利用。その症状は、高血圧症、鬱血性心不全、狭心症、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性心筋症、腎不全、末梢血管障害、左心室機能障害、左心室肥大、認知機能障害、高血圧に類縁の脳血管疾患、動悸、肺疾患又は肺高血圧症及び頭痛からなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
高血圧症並びに類縁の疾患及び症状を治療する為に、カルシウムチャネル遮断薬(CCB)及びアンギオテンシン転換酵素阻害薬(ACEI)が広く用いられている。CCBの種類の代表的なものはアムロジピンであり、他方ACEIの種類の代表的なものはベナゼプリル又はベナゼプリラート(benazeprilat)である。
【背景技術】
【0002】
アムロジピンは、2−〔(2−アミノエトキシ)メチル〕−4−(2−クロロフェニル)−1,4−ジヒドロ−6−メチル−3,5−ピリジンジカルボン酸3−エチル5−メチルエステルである。それは、そのベシレート塩の形態において商標NORVASC(登録商標)の下で、抗高血圧製剤として商業的に販売されている。アムロジピンは遊離塩形態又は医薬的に許容できる塩の形態において投与されて良い。本明細書中でアムロジピンの投与量を述べる場合、その量は、別段の指示がない限り、用いられる塩の形態に関わらず、アムロジピン遊離塩基当量に対応する量であるものと解される。
【0003】
アムロジピンによる長期抗高血圧症治療には、往々にして副作用が伴うことが知られている。その副作用とは、例えば、投与量を制限する末梢浮腫、特に足部浮腫(ankle edema)である。例えば、アムロジピンにより誘発された足部浮腫は、脚部での前毛細血管動脈の選択的膨張(preferential dilation)及びそれによる流体の間質空間への流出が生じることによるものであると考えられている。アムロジピンの単独治療による上限は10mg/日であり、そして長期に渡る治療ではより少ない投与量が好まれる。10mg/日を超える用量の製剤は監督機関により承認又は販売がなされていない。何故なら、効力が制限されて最終的に治療の中止をもたらしうる上記のような副作用に多くの個体が陥りやすいからである。本明細書中で用いられた場合、アムロジピンの「高用量」又は「より高い用量」とはアムロジピンの日用量が、5mg超、好ましくは6〜40mg、更に好ましくは7.5〜20mg、例えば、7.5、10、15、又は20mg、一層好ましくは10mg以上、例えば、10、12.5、15、又は20mg、最も好ましくは10又は20mgを意味する。一日おきの投与については、10〜60mg、好ましくは、20〜40mg、例えば20、30、又は40mg、特に40mgの用量が好ましい。
【0004】
ベナゼプリルは、〔S−(R,R)〕−3−〔〔1−(エトキシカルボニル)―3−フェニルプロピル〕アミノ〕―2,3,4,5―テロラヒドロ−2―オキソ−1H−1−ベナゼピン−1−酢酸である。それは、その塩酸塩の形態において商標LOTENSIN(登録商標)又はCIBACEN(登録商標)の下で、抗高血圧製剤として商業的に販売されている。ベナゼプリラートはベナゼプリルの二価酸形態であり、エステル基の解裂により形成され、そしてそれはベナゼプリルの活性代謝産物である。ベナゼプリル及びベナゼプリラートは遊離塩形態又は医薬的に許容できる塩の形態で投与されて良い。本明細書中でベナゼプリル及びベナゼプリラートの投与量を述べる場合、それらの量は、別段の指示がない限り、実際に用いられる塩の形態に関わらず、塩酸ベナゼプリル当量に対応する量であるものと解される。
【0005】
治療に用いられるベナゼプリルもしくは医薬的に許容できるその塩もしくはベナゼプリラートの範囲は10mg〜80mg/日である。しかしながらACEIは、白人種以外、特にアフリカ系アメリカ人及びレニンアンギオテンシンアルドステロン系(RAAS)がかねてより抑制されている患者においてのみ適度な作用を有する。本明細書中で用いられる場合、ベナゼプリルの「高用量」又は「より高い用量」とは20mg超の塩酸ベナゼプリルの用量を意味し、好ましくは21〜160mg、更に好ましくは40〜80mg、例えば、40mg又は80mgに対応する量を意味する。このような投与量の薬物も一日おきに投与されても良く、アムロジピンが与えられる日の同日又は隔日にてアムロジピンと組み合わせて投与されても良い。双方の場合において、ベナゼプリルの量が一定に保たれるのが好ましい。
【0006】
商用名Lotrel(登録商標)の下でアムロジピンとベナゼプリルの一定用量併用物(fixed dose combination)が市販されている。活性成分の対応量とは、遊離塩基に対応するアムロジピンの量及び塩酸塩に対応するベナゼプリルの量である、2.5mgのアムロジピン及び10mgのベナゼプリル、5mgのアムロジピン及び10mgのベナゼプリル並びに5mgのアムロジピン及び20mgのベナゼプリルである。本明細書中で用いられる場合、用語「Lotrel(登録商標)併用物」とはこれらの投与量の組み合わせを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
より素晴らしい血圧調節を示すのみならず、アムロジピンとベナゼプリルの低用量併用物よりも優れた予想外且つ更なる有利な効果を示す、高量のCCB及び/又はACEIを含んで成る併用物を提供することに対する明らかな要請がある。更なる有利な効果を達成するにあたり、長期治療においてかかる併用物を使用することで含まれる有利な点は、例えば、高用量のアムロジピンによる副作用を回避すること等である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くことに、アムロジピンとベナゼプリルを高用量で組み合わせて投与することにより、現在市販されている公知の低用量併用物よりも有益な役に立つ有利な効果が示される。
【0009】
本明細書中で意図された、アムロジピンとベナゼプリルの治療上の組み合わせには、アムロジピンとベナゼプリルの併用物が一日おきに投与されて良いようにこれらの化合物を投与することが含まれる。任意的に、前記併用物が一日おきに投与される場合、ベナゼプリルは単独で隔日に投与されて良い。(i)アムロジピンとベナゼプリルの組み合わせを含んで成る投与形態、及び(ii)活性成分としてベナゼプリル又は偽薬を含んで成る投与形態、が患者に提供されることが適切である。この場合、前記2つの投与形態は以下に記載のキットのパーツとして提供されて良い。例えば、パッケージには、説明書及び分注器中、ブリスター包装又は他の適当な包装中に日々の投与量の適切な活性成分が含まれて成り、適切な錠剤が隔日に摂取されることを確実にしてそして他方で所定の投与計画による適切な服薬を確実にする。関連する実施態様において、日常的に、ベナゼプリルの日々の投与と組み合わせることにおいて、高用量のアムロジピンが低用量のこの薬物に替わりうる。通常、この処方計画におけるベナゼプリルの日々投与レベルは一定に保たれるだろう。
【0010】
本明細書中に記載のように、アムロジピンとベナゼプリル又はベナゼプリラートをそれぞれ高用量で組み合わせることにより、全体的に有害な作用がない、驚くべき有利な作用が供される。その作用は、(限定ではないが)例えば、(i)血圧(最大血圧及び最小血圧のどちらか又は両方の)より良い調節、特にWHOの高血圧症の治療のガイドラインに記載された正常又は至適血圧に達しない患者における調節;(ii)末梢浮腫、例えば足部浮腫等の用量制限形態(dose−limiting formation)のようなアムロジピンによる副作用の抑制、予防、緩和、遅延;(iii)後負荷の低減;(iv)特に狭心症の治療の場合の終末器官保護;(v)危険性もしくは罹患率及び死亡率、特にアテローム性動脈硬化症に関連する罹患率及び死亡率の危険率もしくは発生率の抑制、予防、緩和もしくは遅延、から選択される。
【0011】
本発明の併用物の適用をする為の好ましい患者集団は、(i)WHOによる1999年の高血圧症の治療のガイドラインによる定義された正常血圧又は至適血圧レベルに達しない患者(J Hypertens 1999、17:PP.151〜183を参照のこと);(ii)狭心症の患者であり、狭心症もしくは血圧又はその両方のより良い調節を要する患者;(iii)心不全、特に鬱血性心疾患を有する患者であり、より良い血圧の調節を必要とする患者;並びに(iv)肺疾患又は肺高血圧症を患う患者、から選択される。
【0012】
常用の動物試験モデルにおいて適切な臨床トライアル又は試験を行うことによりこれら驚くべき且つ有利な作用が証明される。
【0013】
臨床トライアルにおいて、例えば重症の高血圧等、分類上様々な高血圧症を有する患者では、本発明の併用物が投与される場合にはLotrel(登録商標)併用物に比べて、陽性の用量反応が示され、副作用減少の確認、及び顕著な血圧低下作用等が確認される。(WHOによれば、収縮期血圧(SBP) ≧180mmHgもしくは拡張期血圧(DBP)≧110mmHgである患者又はSBP≧180mmHg及びDBP≦110mmHgの両方を有する患者が重症の高血圧である。) 同様に、本態性高血圧(MSBBP≧95mmHg〜≦115mmHg)を伴う患者であって、Lotrel(登録商標)併用物を投与されている患者よりも、本発明の併用物が投与されている患者はより良い応答率を有する。とりわけて有利な点は、穏和〜重症の高血圧(穏和な高血圧症とは前記WHOの定義によればDBPが約100mmHgであることを特徴とする)を伴う患者の治療であり、最も好ましいのは、重症高血圧(例えば、ベースラインになる平均着座(sitting)収縮期血圧=MSDBP>105mmHg)を伴う患者の治療である。
【0014】
例えば、二重盲検、無作為抽出、プラセボ比較試験、強制漸増法、平行対照試験等において、対応する臨床トライアルが行われて良い。例えば、2週のウォッシュアウト期間及び2週の単盲検プラセボ実施期間に続いて、患者がランダムに選ばれ、6週に渡りLotrel(登録商標)併用物(遊離塩基に対応する5mgのアムロジピン及び塩酸塩に対応する20mgのベナゼプリル等)又は本発明の併用物(遊離塩基に対応する10mgのアムロジピン及び遊離塩基に対応する20mgのベナゼプリル等)を投与され;偽薬を投与されている患者は全8週に渡りプラセボ状態のままである。基線から終点に至る血圧の変化等の効能が測定され、並びに潜在的な副作用の発生率等の安全性も測定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の併用物は症状の治療(短期及び特に長期治療)もしくは症状の進行の予防もしくは遅延をするのに用いられる。その症状とは、高血圧症(悪性、本態性、腎血管性、糖尿病性、孤立性収縮期、又は他の第二の型の)、心不全、例えば鬱血性心不全、(安定又は不安定)狭心症、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性心筋症、腎不全、末梢血管障害、左心室肥大のような左心室機能障害、認知機能障害(例えば、アルツハイマー病等)、血圧に関連する脳血管疾患、動悸、肺疾患又は肺高血圧症及び頭痛、からなる群から選択される症状である。例えば、アムロジピンを多量に投与することに関連する副作用が進行するのを予防、抑制、緩和及び遅延する為;並びに腎臓及び心臓等の終末器官の保護、例えば、肺高血圧症などに関連する左心室肥大、右心室肥大に対しての保護をする為等にそれが用いられる。
【0016】
本発明は併用物の使用に関連する。その併用物が含んで成るのは、
(1)ベナゼプリル、ベナゼプリラート及び医薬的に許容できるその塩からなる群から選択されるACE阻害剤、並びに
(2)アムロジピン又は医薬的に許容できるその塩、
であり、症状の治療(短期及び特に長期治療)もしくは予防又は症状の進行を遅延する医薬を製造する為に用いられる。その症状は、高血圧症、鬱血性心不全、狭心症、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性心筋症、腎不全、末梢血管障害、左心室肥大、認知機能障害、血圧に関連する脳血管疾患、動悸、肺疾患又は肺高血圧症及び頭痛、からなる群から選択される症状であり;
ここにおいて、
(i)アムロジピン又は医薬的に許容できるその塩の量は、先に定義した高用量、例えば、6mg〜40mgの遊離塩基に対応する高用量であり、そして
(ii)ACE阻害剤又は医薬的に許容できるその塩の量は、先に定義した高用量、例えば、20mg〜160mgの塩酸ベナゼプリルに対応する量である。
【0017】
本発明は、同様に組成物に関連する。その組成物とは、例えば、症状の治療もしくは予防又は症状の進行の遅延をする医薬を製造する為の医薬組成物である。症状は、高血圧症、鬱血性心不全、狭心症、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性心筋症、腎不全、末梢血管障害、左心室肥大、認知機能障害、血圧に関連する脳血管疾患、動悸、肺疾患又は肺高血圧症及び頭痛からなる群から選択される症状であり;組成物が含んで成るのは、
(1)ベナゼプリル、ベナゼプリラート及び医薬的に許容できるその塩からなる群から選択されるACE阻害剤、並びに
(2)アムロジピン又は医薬的に許容できるその塩、及び
(3)医薬的に許容できる担体;
であり、ここにおいて、
(i)アムロジピン又は医薬的に許容できるその塩の量は、先に定義した高用量、例えば、6mg〜40mgの遊離塩基に対応する量であり、そして
(ii)ACE阻害剤又は医薬的に許容できるその塩の量は、先に定義した高用量、例えば、20mg〜160mgの塩酸ベナゼプリルに対応する量である。
【0018】
従って、本発明のアムロジピンとベナゼプリルの一定併用物(fixed combination)に挙げられるのは、先に記載した範囲での、高用量のアムロジピンと高用量のベナゼプリルの併用物、並びに現在承認及び提供されているLotrel(登録商標)併用物より高用量でのアムロジピンの併用物でもあり、例えば、10〜60mgのアムロジピン及び20〜160mgのベナゼプリルに対応する量、例えば、(i)21〜40mgのアムロジピン、好ましくは10〜40mgのアムロジピン遊離塩基、10、15又は20mg等、及び(ii)81〜160mgの塩酸ベナゼプリル、好ましくは20〜80mgの塩酸ベナゼプリルを含む併用物、例えば、
10mgのアムロジピン遊離塩基及び20mgのベナゼプリルHCl、
10mgのアムロジピン遊離塩基及び40mgのベナゼプリルHCl
20mgのアムロジピン遊離塩基及び40mgのベナゼプリルHCl、及び
20mgのアムロジピン遊離塩基及び80mgのベナゼプリルHCl、
に対応する量を含む併用物が挙げられる。前記アムロジピンはアムロジピンベシレートの形態にあるのが好ましい。前記ベナゼプリルは塩酸ベナゼプリルの形態にあるのが好ましい。
【0019】
本明細書中で用いた場合、「医薬的に許容できる担体」とは当業者に周知の化合物が挙げられ、そして活性化合物を医薬的に用いられる製剤へと加工するのを促す賦形剤及び補助剤を含んで成る。処方及び投与に関する技術の更なる詳細は、最新版のRemington’s Pharmaceutical Science(Maack Publishing Co., Easton, PA)中で見つけられる。
【0020】
本発明は同様に症状の治療もしく予防又は症状の進行の遅延をする方法に関連する。症状は、高血圧症、鬱血性心不全、狭心症、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性心筋症、腎不全、末梢血管障害、左心室肥大、認知機能障害、血圧に関連する脳血管疾患、動悸、肺疾患又は肺高血圧症及び頭痛、からなる群から選択される症状であり、その方法は、併用物を必要とする温血動物に対して有効な量のそれを投与することを含んで成り、その併用物が含んで成るのは、
(1)ベナゼプリル、ベナゼプリラート及び医薬的に許容できるその塩からなる群から選択されるACEI、並びに
(2)アムロジピン又は医薬的に許容できるその塩、
であり、ここにおいて
(i)アムロジピン又は医薬的に許容できるその塩の量は、先に定義した高用量、例えば、6mg〜約40mgの遊離塩基に対応する量であり、そして
(ii)ACE阻害剤又は医薬的に許容できるその塩の量は、先に定義した高用量、例えば、20mg〜160mgの塩酸ベナゼプリルに対応する量である。
【0021】
対応する活性成分又は医薬的に許容できるその塩も、常用の方法による結晶化の為に用いられる溶媒和物の形態、例えば、水和物又は他の溶媒を含む形態において用いられて良い。
【0022】
組み合わされる化合物は医薬的に許容できる塩として存在して良い。これらの化合物は塩基中心を1つ以上有するので、それらは酸添加塩を形成できる。
【0023】
アムロジピンの好適な医薬的に許容できる塩は、米国特許第4,879,303号の内容であるベシレート塩;更には米国特許第4,572,929号に記載されたマレイン酸塩であり、両特許は本明細書中でその全てを参照とすることにより組み込まれている。
【0024】
前記ACEIは、ベナゼプリル又はその塩であるのが好ましく、その塩酸塩であるのが最も好ましい。本明細書中にその全てを参照とすることにより組み込まれている米国第4,410,520号においてベナゼプリル及びベナゼプリラートの適切な塩を見出すことができる。本発明の目的の為に、ACEIの塩酸塩が最も有利であり、そして、最も好ましい、あるACEI化合物は塩酸ベナゼプリルである。
【0025】
本発明の最も好適な活性成分は、アムロジピンベシレート及び塩酸ベナゼプリルである。
【0026】
本発明の併用物中での好適な用量範囲は、各場合において、遊離塩基に対応する21mg〜40mg、好ましくは6mg〜40mgのアムロジピン又は医薬的に許容できるその塩の量、及び81mg〜160mg、好ましくは20mg〜160mgのACEI又は医薬的に許容できるその塩の量を含んで成る。上記全ての場合において、かかる併用物の中で、アムロジピン又は医薬的に許容できるその塩の量は、遊離塩基に対応する6mg〜20mg、特に10mgであるのが好ましい。それぞれ、ベナゼプリル又はベナゼプリラート、医薬的に許容できるその塩の量は、上記全ての場合において又は各場合において、塩酸ベナゼプリルに対応する20mg〜80mg、好ましくは20mg〜40mg、例えば、20、30、又は40mg、特に20mgが好ましく、40mg〜160mg、特に40mg〜120mgが好ましく、40mg〜80mg、例えば、40、50、60、70、又は80mg、特に40mgが最も好ましい。
【0027】
アムロジピンもしくは医薬的に許容できるその塩の好適な量は、10mgもしくは20mgであり、そしてベナゼプリルもしくは医薬的に許容できるその塩の好適な量は、20mg、40mg、もしくは80mgである。前記の用量が全て日用量であるのが最も好ましい。本明細書中で用いられる場合、「1日の服用量」とは、好適な治療方法での単独投与により24時間周期で投与される薬物の総量を意味する。
【0028】
本明細書中に記載のように本発明の医薬組成物の活性成分は、同時に使用する為、もしくは任意の順番で連続使用する為に、個別に使用する為に、もしくは一定併用物として使用されて良い。
【0029】
CCB及びACEIは異なる時間に投与できるが、それらを同時に与えるのが最も好ましい。これには、単一の、一定併用物形態を介するのが最も都合が良い。しかし、前記CCBは、ACEIの投与及び本発明の利点が実現されるのとは異なる時間に投与されても良い。異なる時間に投与される場合、前記CCB及びACEIは各々の投与の約16時間以内、好ましくは各々の投与の約12時間以内、一層好ましくは各々の投与の8時間以内、最も好ましくは各々の投与の4時間以内に投与されなければならない。勿論、もしその投与形態が薬剤を長期に渡り「投与するもの」であるのならば、これらの時間周期は伸ばされても良い。
【0030】
CCB及びACEIが実質上同時に与えられる場合、それらは、単一一定併用投与形態又は相違う投与形態、のどちらか都合の良い形態によって投与されて良い。異なる投与形態により投与される場合、投与経路が各薬剤について同じであるか又は各薬剤について異なるのかどうかは関係ない。本発明を実施する為に、各々の薬剤について公知の任意の投与経路が許容される。薬剤が一定の組み合わせにおいて投与されるか又は少なくとも実質上同時、即ち、各々の投与後約1時間以内に投与されるのが最も好ましい。最も適切な投与形態は経口投与形態であり、経口投与が臨床的に適当な経路である。
【0031】
本発明は、同様にその変化版において「キットのパーツ」に関係する。例えば、本発明の併用される成分が個別に投与できるという意味において又は異なる量の成分を伴う様々な固定併用物の使用することによって、即ち同時又は異なる時点で投与できるという意味において関係する。ひいては、キットのパーツの部分は、同時又は年代順にずらして、即ち、異なった時点及び等間隔又は様々な間隔で、キットのパーツの任意の部分を投与することができる。パーツの併用使用における疾患又は症状の治療に対する効果が、任意の成分一つのみを使用することにより得られる効果よりも一層有益であるように、時間間隔が選択されるのが好ましい。
【0032】
二つの製剤の用量には薬剤が個別に用いられる全ての用量が含まれる。アムロジピンの他の塩、遊離ベナゼプリル及びベナゼプリルの他の塩、並びにベナゼプリラート及びその塩に関する対応用量は当業者により容易に分かるであろう。本明細書中で記載した各々の投与量において、その範囲とは、約50〜約70kgの成獣に基づき許容できる範囲である。他の大きさ及び成長の段階にあるホニュウ類の為の修正された用量範囲は当業者には明らかであろう。
【0033】
通常ベナゼプリル及びアムロジピンは物理的な適合性がない物質である。それ故、もしそれらが単一投与形態に組み込まれるならば、物理的に隔離されていなければならない。このことは、当業界で公知の多くの任意の方法により達成されて良い。その方法としては例えば、各薬剤が、錠剤又はカプセル中で用いられる為に2層又は多層区画経皮装置(dual or multiple compartment transdermal device)等を用いて別々にマイクロ封入され一緒に混ぜ合わされる、2層錠剤、ある薬剤を他の錠剤に組み込むことによる被覆ペレット、各薬剤がカプセル又は錠剤中にある個別被覆ペレット、ある薬剤が他の粉末の薬剤と一緒にカプセル中にある被覆ペレット等である。不適合性の故に、注射溶液において2つの薬剤の併用製品は容易には許容されない。便利な目的の為に、カプセル中でアムロジピン粉末と一緒のベナゼプリルの被覆圧縮錠が最も望ましい経口形態として発見されてきた。
【0034】
例えば、本発明の医薬製剤は、約20mg〜約160mgの塩酸ベナゼプリル;約3.4mg〜25.843mgのラクトース一水和物;約3.4mg〜約6.801mgのα化デンプン;約0.068mg〜1.360mgのコロイド状SiO2;約1.360mg〜約5.440mgのクロスポビドン;約23.4mg〜約185.843mgの微結晶性セルロース;約1.340mg〜約8.4mgのステアリン酸マグネシウム;約6mg〜約40mgのアムロジピンベシレート;約20mg〜約160mgの第二リン酸カルシウム;及び約2mg〜約16mgのグリコール酸ナトリウムデンプンを含んで成る。約1.5mg〜約7.5mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース;精製水;約0.075mg〜約0.375mgのポリソルベート80;及び微量のタルクが前記製剤に任意的に加えられる。
【0035】
医薬製剤は、約20mg〜約160mgの塩酸ベナゼプリル;約3.4mg〜約25.843mgのラクトース一水和物;約3.4mg〜約6.801mgのα化デンプン;約0.068mg〜約1.360mgのコロイド状SiO2;約1.360mg〜約5.440mgのクロスポビドン;約3.4mg〜約25.843mgの微結晶性セルロース;約0.340mg〜約3.4mgのステアリン酸マグネシウムを含んで成るコア;並びに約6mg〜約40mgのアムロジピンベシレート;約20mg〜約160mgの微結晶性セルロース;約20mg〜約160mgの第二リン酸カルシウム;約2mg〜約16mgのグリコール酸ナトリウムデンプン;及び約1mg〜5mgのステアリン酸マグネシウムを含んで成る粉末を含んで成るカプセル製剤であるのが好ましい。;約1.5mg〜約7.5mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース;精製水;約0.075mg〜約0.375mgのポリソルベート80;及び微量のタルクが前記製剤に任意的に加えられる。
【0036】
本発明の目的について、好適なホニュウ類はウサギ、イヌ、ヤギ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ウシ、及び霊長類であり、一層好ましくは霊長類、最も好ましくはヒトである。
【0037】
本発明は更に、本発明の併用物と同時に、別々に、連続して使用する為の説明書を一緒に含んで成るコマーシャルパッケージに関連する。
【0038】
以下の例は実施例を表し、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0039】
実施例1
本発明の為に用いる20mgの塩酸ベナゼプリル及び5mgのアムロジピン塩基当量のアムロジピンベシレートを含有する1000個のカプセルを以下の様にして調製した。
塩酸ベナゼプリルコアを以下のものを用いて調製した:
1. ベナゼプリルHCl 20.000mg
2. ラクトース一水和物 32.920mg
3. α化デンプン5.000mg
4. コロイド状SiO2 1.000mg
5. クロスポビドン 2.000mg
6. 微結晶性セルロース 10.000mg
7. 水素化カスター油 4.000mg
8. 精製水 必要量
【0040】
成分1〜3を粉砕して一緒に混合して水を添加し、当該混合物を粒状にする。湿った顆粒を選別してオーブン乾燥する。次いで、乾燥した粒を成分5〜7と共に粉砕する。その後、成分4を選別して他の成分と混合する。次いで、生成される混合物を圧縮してコアにする。
【0041】
このようにして作製したコアを以下の様にして調製した被覆溶液で覆う。
9. ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2910、3cps 4.881mg
10.ポリソルベート80 0.119mg
11.精製水 必要量
12.タルク 微量
【0042】
成分10を水中に溶かしてそこに成分9を加える。次いで、予め作製したコアをこの溶液で覆い、そして湿った被覆錠を乾燥する。その後、乾燥錠に成分12をまぶす。
【0043】
製剤に混ぜる為のアムロジピンベシレートを以下の様にして調製した。
13.アムロジピンベシレート 6.944mg
14.微結晶性セルロース 124.056mg
15.第二リン酸カルシウム 63.000mg
16.グリコール酸ナトリウムデンプン 4.000mg
17.ステアリン酸マグネシウム 2.000g
【0044】
成分13〜16を一緒に混合してその混合物を選別し、そして再混合した。成分17は別に選別して、アムロジピンを含有する前記再混合物と混合した。
【0045】
番号1の硬化ゼラチンカプセルを用いて、アムロジピンベシレート含有粉末200mg/カプセルと共に塩酸ベナゼプリル含有被覆コアを封入した。
【0046】
本発明の為に用いる40mgの塩酸ベナゼプリル及び10mgのアムロジピン塩基当量のアムロジピンベシレートを含有する1000個のカプセルを以下の様にして調製した。
以下のものを用いて塩酸ベナゼプリルコアを調製した:
1. ナゼプリルHCl 40.000mg
2. ラクトース一水和物 7.090mg
3. α化デンプン5.440mg
4. コロイド状SiO2 0.907mg
5. クロスポビドン 3.630mg
6. 微結晶性セルロース 9.070mg
7. ステアリン酸マグネシウム 1.870mg
8. 精製水 微量
1. ベナゼプリル薬物材料、ラクトース一水和物及びα化デンプンを20分(約5〜約30分の範囲)に渡り適切な低せん断型の粒造機中で予め混合する。
2. 26%の精製水(範囲は約16〜約30%である)中で予め混合した粉末を粒状にする。
3. 添加した後、15分(範囲は約5〜約30分である)に渡り粒状化を続ける。
4. 適切な選別製粉機(screening mill)により湿った顆粒を粉砕する。
5. 流動床乾燥機等の適切な乾燥設備により適切な湿った顆粒を乾燥して残りの水分(乾燥によるロス)を1%(範囲は約0.5%〜約2%である)未満にする。
6. コロイド状の二酸化ケイ素、クロスポビドン及び微結晶性セルロースと共に適切な選別製粉機(screening mill)により乾燥した顆粒を粉砕する。
7. 粉砕された顆粒を適切な混合設備に装填する。
8. 混合機中の前記粉末に対して(適切な大きさのスクリーンにより選別した) ステアリン酸マグネシウムを加え、5分(範囲は約2〜約10分である)に渡り混合する。
9. 適切な回転型の圧縮機を用いて混合材料を圧縮して錠剤のコアにする。
【0047】
このようにして作製したコアを以下の様にして調製した被覆溶液で覆う。
9.ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2910、3cps 4.881mg
10.ポリソルベート80 0.119mg
11.精製水 必要量
12.タルク 微量
【0048】
成分10を水中に溶かしてそこに成分9を加える。次いで、予め作製したコアをこの溶液で覆い、そして湿った被覆錠を乾燥する。その後、乾燥錠に成分12をまぶす。
【0049】
製剤に混ぜる為のアムロジピンベシレートを以下に様に調製した。
13.アムロジピンベシレート 13.888mg
14.微結晶性セルロース 117.112mg
15.第二リン酸カルシウム 63.000mg
16.グリコール酸ナトリウムデンプン 4.000mg
17.ステアリン酸マグネシウム 2.000mg
【0050】
成分13〜16を共に混合してその混合物を選別し、そして再混合した。成分17は別に選別して、アムロジピンを含有する前記再混合物と混合した。
【0051】
番号1の硬化ゼラチンカプセルを用いて、アムロジピンベシレート含有粉末200mg(範囲は約196mg〜約218mgである)/カプセルと共に塩酸ベナゼプリル含有被覆コアを封入した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって:
(1)ベナゼプリル、ベナゼプリラート、及び医薬的に許容できるその塩から選択されるアンギオテンシン転換酵素阻害剤(ACEI)、並びに
(2)アムロジピン又は医薬的に許容できるその塩、
を含んで成る、
高血圧症、鬱血性心不全、狭心症、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性心筋症、腎不全、末梢血管障害、左心室肥大、認知機能障害、血圧に関連する脳血管疾患、動悸、肺疾患又は肺高血圧症及び頭痛からなる群から選択される症状の治療もしくは予防又は症状の進行を遅延する薬剤を製造する為の組成物であり;
(i)前記アムロジピン又は医薬的に許容できるその塩の量は、6mg〜40mgの遊離塩基に対応し、そして
(ii)前記アンギオテンシン転換酵素阻害剤又は医薬的に許容できるその塩の量は、20mg〜160mgの塩酸ベナゼプリルに対応する、
組成物。
【請求項2】
前記アムロジピンがアムロジピンベシレートである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ベナゼプリルが塩酸ベナゼプリルである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記アムロジピン又は医薬的に許容できるその塩の量が6mg〜20mgの遊離塩基に対応する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ベナゼプリル又は医薬的に許容できるその塩の量が20mg〜40mgの塩酸ベナゼプリルに対応する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ベナゼプリル又は医薬的に許容できるその塩の量が40mg〜80mgの塩酸ベナゼプリルに対応する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記アムロジピンもしくは医薬的に許容できるその塩及び前記ベナゼプリル又は医薬的に許容できるその塩が、互いに物理的に分かれている、単一投与形態において投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
同時に、別々に、又は連続して使用する為の説明書と一緒に請求項1に記載の組成物を含んで成る、商業パッケージ(commercial package)。
【請求項9】
20mg〜160mgの塩酸ベナゼプリル;
3.4mg〜25.843mgのラクトース一水和物;
3.4mg〜6.801mgのα化デンプン;
0.068mg〜1.360mgのコロイド状SiO2
1.360mg〜5.440mgのクロスポビドン;
23.4mg〜185.843mgの微結晶性セルロース;
1.340mg〜8.4mgのステアリン酸マグネシウム;
6mg〜40mgのアムロジピンベシレート;
20mg〜160mgの第二リン酸カルシウム;及び
2mg〜16mgのグリコール酸ナトリウムデンプン:
を含んで成る医薬製剤。
【請求項10】
1.5mg〜7.5mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース;
水;
0.075mg〜0.375mgのポリソルベート80;及び
微量のタルク:
を更に含んで成る、請求項9に記載の医薬製剤。
【請求項11】
カプセル製剤であって、
20mg〜160mgの塩酸ベナゼプリル;
3.4mg〜25.843mgのラクトース一水和物;
3.4mg〜6.801mgのα化デンプン;
0.068mg〜1.360mgのコロイド状SiO2
1.360mg〜5.440mgのクロスポビドン;
3.4mg〜25.843mgの微結晶性セルロース;
0.340mg〜3.4mgのステアリン酸マグネシウム;
を含んで成るコア:及び
6mg〜40mgのアムロジピンベシレート;
20mg〜160mgの微結晶性セルロース;
20mg〜160mgの第二リン酸カルシウム;
2mg〜16mgのグリコール酸ナトリウムデンプン;及び
1mg〜5mgのステアリン酸マグネシウム;
を含んで成る粉末:
を含んで成るカプセル製剤。
【請求項12】
1.5mg〜7.5mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース;
水;
0.075mg〜0.375mgのポリソルベート80;及び
微量のタルク;
を含んで成る被覆溶液:
を更に含んで成る、請求項11に記載のカプセル製剤。
【請求項13】
請求項12に記載の被覆溶液により前記コアを被覆する方法であって:
ポリソルベート80を水中に溶かしてヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加した溶液を提供し;
当該溶液でコアを被覆し;
被覆されたコアを乾燥して;
乾燥したコアにタルクをまぶす;
ことを含んで成る方法。
【請求項14】
医薬製剤を調製する為の方法であって:
塩酸ベナゼプリル、ラクトース一水和物及びα化デンプンを5分〜30分に渡り予め混合し;
16%〜30%の水中で予め混合した粉末を粒状にし;
水の添加後、5分〜30分に渡り粒状化を続け;
湿った顆粒を粉砕し;
湿った顆粒を乾燥して残留水分を0.5%〜2%未満にし;
コロイド状の二酸化ケイ素、クロスポビドン及び微結晶性セルロースと一緒に乾燥した顆粒を粉砕し;
ステアリン酸マグネシウムと一緒に2分〜10分に渡り混合し;
混合された材料を圧縮して錠剤のコアにし;そして
当該コアをアムロジピンベシレートと共に封入する;
ことを含んで成る方法。
【請求項15】
アムロジピンベシレートと共に封入する前に、被覆溶液で前記コアを被覆することを更に含んで成る、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記被覆溶液が:
1.5mg〜7.5mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース;
水;
0.075mg〜0.375mgのポリソルベート80;及び
微量のタルク;
を含んで成る、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項16に記載の被覆溶液によりコアを被覆する方法であって:
ポリソルベート80を水中に溶かしてヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加した溶液を提供し;
当該溶液でコアを被覆し;
湿った被覆されたコアを乾燥して;
乾燥したコアにタルクをまぶす;
ことを含んで成る方法。

【公開番号】特開2010−43111(P2010−43111A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235225(P2009−235225)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【分割の表示】特願2002−550986(P2002−550986)の分割
【原出願日】平成13年12月17日(2001.12.17)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】