説明

アモルファスSiO2膜被覆部材および、その形成方法

【課題】 耐熱衝撃性の他、塩水はもとより、塩酸、硫酸、硝酸のような強酸に対しても優れた耐食性を発揮する、アモルファスSiO2膜を被覆形成してなる部材、およびその形成方法を提案すること。
【解決手段】 鏡面仕上げした金属製基材の表面に、ポリシラザン化合物を加熱焼成することにより形成したアモルファスSiO2膜被覆部材において、前記記金属製基材の表面は、Ra:0.2μm以下またはRa:0.2μmかつRz:0.5μm以下の表面粗さであること、前記アモルファスSiO2膜の膜厚は、0.05〜5μmであること、前記金属製基材が、普通炭素鋼、特殊鋼、Niおよびその合金、Tiおよびその合金、Alおよびその合金、Cuおよびその合金、またはこれらの金属・合金からなるめっき膜、物理蒸着法あるいは化学蒸着法で得られる蒸着膜のうちのいずれか1種の皮膜で覆われた金属製基材であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強い腐食性の薬剤を使用する半導体加工装置や、僅かな微粉の残留も障害となるような超清浄半導体加工装置、生物・医学的清浄環境下で使用される装置などの部材として好適なアモルファスSiO2膜被覆部材および、その形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、金属材料あるいは非金属材料は、耐摩耗性や潤滑性、耐食性などの機能を付与することを目的として、各種の表面処理技術が採用されている。例えば、そうした技術の一つとして、ゾル・ゲル法がある。この方法は、アルコキシ基(Cn2n+1O、ただし、n=1、2、3……)を有する金属化合物(金属アルコシド:テトラメトキシシラン[Si(OCH3)4]などのシリコンアルコキシド、アルミニウム、チタン、ジルコニウムなどのアルコキシド)を、溶媒で加水分解・縮重合させ、得られた金属酸化物(水酸化物)の微粒子分散ゾルをゲル化させて、金属あるいは非金属材料の表面に薄膜状の無機化合物を形成する技術である。
【0003】
このゾル・ゲル法は、原料である金属アルコシドや添加する化合物の種類を変えることによって、種々の機能を有するゲル状薄膜を形成することができることから、下記ような産業分野で広く採用されている。
(1)光の透過、反射、干渉および蛍光などの光機能性を利用した光学および電子機器装置
(2)強誘電性、圧電性、電子伝導性、イオン伝導性および磁性などの電子機能を利用した装置
(3)撥水性、親水性および防食性を利用した汎用装置
【0004】
例えば、特許文献1では、ゾル・ゲル法に関する従来技術として、基板にゾルを塗布し、ゲル化乾燥させた後、紫外線を照射する工程を経て加熱焼成することにより、厚膜化ができ、結晶性が高く、酸素欠損もない良好な酸化物薄膜を形成する方法を提案している。また、特許文献2では、マグネシウム合金材の表面に、CH3SiOxからなる柔軟なゾル・ゲル層を形成した後、Ni−Pの無電解めっき層を施工することにより、耐食性や耐摩耗性、摺動性などに優れたマグネシウム合金材を提供する技術を提案している。
【0005】
一方、ゾル・ゲル法に類似した薄膜形成技術として、特許文献3には、金属アルコシドに代えて、基材上にポリシラザン溶液を塗布した後、低温で焼成処理することによって、SiO2を主成分とするセラミックス薄膜を基材上に形成する技術を開示している。なお、この技術において用いられている前記ポリシラザン溶液とは、数平均分子量100〜50,000のポリシラザンとアセチルアセトナイト錯体(金属として、Ni、Pt、Pd、Al、Phなどを含む)を加熱して得られるグリシドール/ポリシラザンの原子比が、0.000001〜2の範囲内で、かつ数平均分子量が200〜50万のアセチルアセトナイト錯体付加ポリシラザンを含有するコーティング組成物である。
【0006】
また、特許文献4には、ポリシラザンを、水分濃度が1mass%以下の雰囲気中で焼成し、SiO2とSi3N4との混合物からなる薄膜を形成する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平10−219462号公報
【特許文献2】特開平05−320929号公報
【特許文献3】特開平06−306329号公報
【特許文献4】特開平05−345983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の薄膜形成技術は、以下に示すような課題がある。
(1)ゾル・ゲル法によるSiO2薄膜技術(特許文献1および2)は、光学、電子および厚膜形成法としては有効であるが、塩酸、硫酸、硝酸、塩水などの強い腐食性環境下では、金属基材の腐食を防止することができない。
(2)特許文献3に開示の技術は、電子部品やプラスチック等へのコーティングを目的として、150〜350℃という低温で焼成しているため、薄膜成分が、Si−N−O−M系およびSi−N−O−C−M系(ここで、MはNi、Pt、Pd、Al、Rhなど)となり、強酸や塩水のような厳しい腐食環境下で十分な耐食性を発揮することができない。
(3)特許文献4に開示の技術では、成膜材料としてポリシラザンのみを使用しているが、成膜環境の水分濃度を1mass%以下に制限しているため、環境制御用設備の設備経費の増加や生産性の低下などの問題があるうえ、得られる薄膜は、SiO2以外にSi3N4をも含むため、耐食性に乏しい。
【0008】
そこで、本発明の目的は、従来技術が抱えているこのような問題を解決することにあり、耐熱衝撃性の他、塩水はもとより、塩酸、硫酸、硝酸のような強酸に対しても優れた耐食性を発揮する、アモルファスSiO2膜を被覆形成してなる部材、およびその形成方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため鋭意研究した結果、発明者らは、金属製基材の表面性状およびその表面上に形成したアモルファスSiO2膜の状態が重要であることを突きとめ、本発明を完成させた。即ち、本発明は、鏡面仕上げした金属製基材の表面に、ポリシラザン化合物を加熱焼成することにより形成した固相状態のアモルファスSiO2膜を有することを特徴とするアモルファスSiO2膜被覆部材を提案するものである。
【0010】
なお、本発明のアモルファスSiO2膜被覆部材においては、前記金属製基材の表面は、Ra:0.2μm以下または、Ra:0.2μm以下かつRz:0.5μm以下の表面粗さであること、前記アモルファスSiO2膜の膜厚は、0.05〜5μmであること、および前記金属製基材が、普通炭素鋼、特殊鋼、Niおよびその合金、Tiおよびその合金、Alおよびその合金、Cuおよびその合金、またはこれらの金属・合金からなるめっき膜、物理蒸着法あるいは化学蒸着法で得られる蒸着膜のうちのいずれか1種の皮膜で覆われた金属製基材であることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明は、金属製基材の表面を鏡面処理し、次いで、その鏡面処理した基材表面にポリシラザン化合物を被覆し、その後、乾燥しさらに加熱焼成することにより、該基材表面にアモルファスSiO2膜を被覆形成することを特徴とするアモルファスSiO2膜の形成方法を提案するものである。
【0012】
なお、本発明のアモルファスSiO2膜の形成方法においては、前記ポリシラザン化合物の基材表面への被覆、乾燥および加熱焼成を複数回繰り返して、アモルファスSiO2膜を肥厚化させること、前記アモルファスSiO2膜の膜厚は、0.05〜5μmであること、前記鏡面処理は、Ra:0.2μm以下または、Ra:0.2μm以下かつRz:0.5μm以下の表面粗さにすること、ポリシラザン化合物を被覆した前記金属製基材を、室温〜120℃の温度の大気中で、0.5〜3時間乾燥し、さらに350〜600℃の温度で0.5〜3時間加熱焼成すること、前記金属製基材が、普通炭素鋼、特殊鋼、Niおよびその合金、Tiおよびその合金、Alおよびその合金、Cuおよびその合金、またはこれらの金属・合金からなるめっき膜、物理蒸着法あるいは化学蒸着法で得られる蒸着膜のうちのいずれか1種の皮膜で覆われた金属製基材であること、および前記鏡面処理は、バフ研磨、化学研磨および電解研磨法から選ばれるいずれか1種または2種以上の方法により、Ra:0.2μm以下またはRa:0.2μm以下かつRz:0.5μm以下の表面粗さにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、腐食性環境下において優れた耐食性を示すと共に、耐熱衝撃性に優れたアモルファスSiO2膜およびその被覆部材を提供することができる。このため、半導体加工装置のような強い腐食性環境下で使用される各種の部材、特に精密機械部材の長寿命化に大きな効果が期待できる。
また、清浄な環境が要求される半導体加工装置においては、機械部材の腐食によって発生する腐食反応生成物の微細な粉体が、汚染源の一つとなっている。この点、本発明によれば、その腐食反応生成物の発生を減少することができるので、半導体製品の品質向上が期待できると共に、アモルファスSiO2薄膜の表面が平滑であることから、汚染物質を水洗により容易に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において用いられる金属(合金を含む)製基材、該基材上へのアモルファスSiO2膜の被覆形成方法、および皮膜の特性について説明する。
(1)金属製基材について
本発明において用いられる基材は、普通炭素鋼、ステンレス鋼などの特殊鋼、Niおよびその合金、Tiおよびその合金、Alおよびその合金、Cuおよびその合金、さらには、これらの金属・合金製の基材の表面に形成したNi、Cr、Cuなどのめっき膜、物理蒸着法や化学蒸着法で形成させた蒸着膜を有する金属製基材が用いられる。これらの金属・合金製の基材は、入手が容易であるうえ、機械装置の部品として加工しやすいという特徴がある。また、物理蒸着法や化学蒸着法で形成された蒸着膜の表面は、非常に平滑であり、アモルファスSiO2膜用基材として好適に用いることができる。
【0015】
(2)基材の前処理
本発明においては、アモルファスSiO2膜を形成する前に、基材表面は、前処理を行うことが必要である。具体的には、基材表面を鏡面仕上げすることであり、鏡面の程度は、表面粗さ(JIS B0633(2001)規定)を、Ra:0.2μm以下またはRa:0.2μm以下かつRz:0.5μm以下にする。なお、Raを0.2μm以下にする理由は、その表面に形成するアモルファスSiO2膜が0.05〜5μmの薄膜であるため、基材の表面粗さの影響を強く受け、Raが0.2μmを超えると、SiO2膜にピンホールなどの欠陥が生じ易くなるためである。また、Rzを0.5μm以下にする理由は、たとえ、基材表面に鏡面仕上げ加工を施したとしても、局部的に表面粗さの大きい箇所が1ヶ所でも存在すると、その部分に形成されるアモルファスSiO2膜に欠陥が生じ易くなり、腐食発生の起点となってしまうためである。
【0016】
本発明において、鏡面の程度をRaまたはRaおよびRzの両方の粗さで制御することとした理由は、Raは、基材の平均的な表面粗さの状態を工学的に把握するのに適しており、目視による観察結果ともよく一致し、作業上便利であるが、生産現場においては、鏡面仕上げの条件によって、Raが本発明の範囲内(0.2μm以下)であるのにも拘らず、Rzが0.5μm以上となる場合がある。そのため、本発明では、Raのみの場合と、RaとRzの組み合わせによって、基材表面の表面粗さを制御し、良質のアモルファスSiO2膜を形成することにしたのである。
【0017】
なお、一般的な仕上処理方法としては、ブラスト処理、酸洗、グライダー研磨、エメリ研磨などがあるが、これらの処理方法は、一般に、鏡面仕上げには不適当である。したがって、本発明では、これらの処理方法を、鏡面仕上げをする前の一次的処理方法として採用し、仕上処理として、機械的研磨方法として最高の平滑研磨面が得られるバフ研磨法、化学薬品の溶解反応を利用する化学研磨法、および電気化学的溶解反応を利用する電解研磨法を、単独または2種以上の方法を組み合わせて用いることが好ましい。これらの研磨法のメカニズムは、基材表面の凸部を優先的に除去したり、溶解するプロセスを保有しており、鏡面仕上げするための最終処理方法として好適である。
【0018】
これらの方法により基材表面を鏡面に仕上処理する理由としては、その仕上面上に形成するSiO2膜の耐食性および耐熱衝撃性が、仕上面の表面粗さによって著しく影響を受けるためである。
図1は、表面粗さの異なる炭素鋼素材の試験片上に、後述のポリシラザン溶液を塗布し、450℃×1hの焼成処理を行った後の、該試験片の断面状態を模式的に示したものである。これによると、Ra:0.2μm以下、Rz:0.5μm以下の鏡面仕上面上に形成されたSiO2薄膜(図1(a))では、平均した有効膜厚が保持されているのに対し、表面粗さの大きい基材上に形成されたSiO2薄膜(図1(b))では、Raが本発明の範囲内(0.2μm以下)にあっても、Rzが大きい(0.5μm超)ために、この部分でのSiO2膜の有効厚さが小さくなり、耐食性の低下と共に、その部分からの腐食が優先的に発生してしまうのである。なお、図1における1は基材、2はSiO2膜、3はRaで表示される算術平均粗さ、4はRzで表示される最大粗さである。また、基材表面の凹部については、その上に形成されるSiO2膜厚が必然的に大きくなるので、特に規定するものではない。
【0019】
(3)アモルファスSiO2膜被覆形成方法(ポリシラザン溶液処理)
次に、鏡面仕上げ処理した基材表面に、固相状態のアモルファスSiO2膜を被覆形成する方法について説明する。
まず、本発明において使用するポリシラザン化合物とは、有機溶剤に可溶な液相状態の無機ポリマーであり、主鎖の−Si−N−結合に側鎖として水素のみが結合したシラザンの重合体((SiH2NH)n-)のことである。本発明は、このポリシラザン化合物が、大気中または水蒸気含有雰囲気中における焼成(450℃程度)により、水分や酸素と反応し、緻密なアモルファスSiO2膜を形成することを利用したものである。
【0020】
なお、アモルファスSiO2は、結晶質SiO2と異なり、表面が平滑であるうえ、結晶の異方向成長に伴う膜質の不均等性がなく、また理論上、結晶と結晶の間で生じやすい空隙の存在も無視することができ、ミクロ的な緻密性が得られるという特徴があるため、本発明の如き耐熱衝撃性および耐食性に優れた被覆用皮膜として好適である。
【0021】
本発明方法において使用可能なポリシラザン化合物の製造方法は、米国特許第4,397,828号公報、特公昭63−16325号公報、特開平1−138108号公報、特開平1−221466号公報、特開平2−84437号公報などに開示されている方法と同じ方法の採用によることが好ましい。
【0022】
本発明では、ポリシラザン化合物を、キシレン、ジブチルエーテルなどの有機溶剤で5〜25mass%に希釈して得たポリシラザン溶液を、基材表面に塗布し、スプレーしまたは浸漬することにより、前処理後の金属基材上に付着させ、その後、これを大気雰囲気下(相対湿度10〜90%)で室温〜120℃の電気炉中で0.5〜3時間乾燥し、有機溶媒成分を揮散させた後、電気炉中で350〜600℃×0.5〜3h焼成処理を行うことによって、目的とするアモルファスSiO2膜を形成することができる。
【0023】
なお、本発明のアモルファスSiO2膜は固相状態であることが好ましいが、これは、基材表面を全面にわたって完全に被覆し、長期間に亘って環境を遮断させるとともに、その部材の取扱いが容易であるためである。
【0024】
上記工程(1回)によって形成されるSiO2膜の膜厚は、0.01〜0.5μmの範囲内となるようにすることが好ましい。このSiO2膜の膜厚は、ポリシラザン濃度の有機溶媒による希釈の程度によって調整することができる他、上記工程(基材上へのポリシラザンの付着と乾燥、焼成処理工程)を複数回繰り返すことによって、本発明において好適と考えられるSiO2膜厚:0.05〜5μmとすることができる。
【0025】
なお、SiO2膜の膜厚は、0.05μmより薄い場合には、十分な耐食性が得られず、5μm以上の場合には、SiO2膜に微細な割れが多数発生するため、耐食性が却って低下して好ましくない。
【0026】
また、本発明では、ポリシラザン溶液の基材上への付着に先駆けて、鏡面仕上処理された金属基材表面を、中性洗剤、アルカリ性洗剤あるいは有機溶剤で脱脂した後、さらに60℃以上に加熱することによって水分を十分に除去することが好ましい。これは、金属基材表面に水分が残留していると、水分がポリシラザン溶液と直に加水分解反応を起こし、緻密なSiO2膜を形成することができないためである。
【0027】
また、上記SiO2膜の形成において、加熱焼成温度が350℃より低い場合には、ポリシラザン化合物に含まれているN化合物が膜中に残留し、十分な耐食性が得られず、また、600℃より高温で焼成した場合には、SiO2膜に微細な割れが発生したり、基材金属の種類によっては酸化され、SiO2膜の性能を低下させるおそれがあるため好ましくない。
【0028】
(4)アモルファスSiO2膜の特性
上記方法により形成されたアモルファスSiO2膜は、高純度(99.9wt%以上)のアモルファスSiO2であり、光学顕微鏡(×1000倍)で観察した結果では、気孔の存在がほとんど認められない程度に緻密であった。また、SiO2膜の表面は、極めて平滑で、Ra:0.1μm以下であるため、固形粉体をはじめとして、水(洗浄水)、有機溶剤、無機・有機酸水溶液などの他、微生物や細菌などが付着しても容易に除去することができる。
【0029】
また、アモルファスSiO2膜は、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、酢酸などの有機酸、塩水およびSO2、SO3、NOx、HCl、Cl2、O2(O3)などのガス体に対し、優れた耐食性を発揮すると共に、高濃度アルカリ水溶液(例えば、NaOH、KOH)には腐食される傾向が認められるものの、pH12程度のアルカリに対しては、工学的に利用可能な程度の耐食性を示す。
【0030】
さらに、本発明では、鏡面処理した金属製基材上に350〜600℃の高温で加熱焼成してアモルファスSiO2膜を形成するため、基材とSiO2膜との密着性が高く、耐熱衝撃性に優れると共に、800℃程度の高温で加熱しても殆ど、外観上の変化が見られないという特性がある。したがって、本発明のアモルファスSiO2膜は、耐熱・耐酸化性膜としての特性を有していると言える。
【0031】
また、本発明のアモルファスSiO2膜は、比較的硬質(JIS K5600規定の鉛筆法による引っかき硬度では最高鉛筆硬度9H以上)であるため、薄膜としては、優れた耐摩耗性とともに、外部からの機械的接触によるキズ(疵、傷)が付き難いという特性をもっている。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
この実施例では、前処理方法と基材表面粗さがアモルファスSiO2膜の腐食特性に与える影響について検討した。まず、市販のSS400鋼板から試験片(寸法幅30mm×長さ50mm×厚さ3.2mm)を切り出し、次のような5種類の前処理を行った。
(1)前処理方法とその条件
(a)バフ研磨:酸洗浄後の試験片の表面を、酸化クロムの微粉末を含む固形研磨剤を塗布した羽布を回転させながら試験片に押しつけて研磨した。
(b)化学研磨法:エメリ研磨後の試験片を、ピロリン酸と硫酸を含む研磨液中に浸漬した。(液温150〜170℃)
(c)電解研磨法:エメリ研磨後バフ研磨した試験片を、過塩素酸と無水錯酸の混合液を電解質とし、試験片を陽極として電解した(液温15℃)。
(d)酸洗:10wt%HCl水溶液中に20℃、5時間浸漬し、試験片の表面に生成している酸化スケールを溶解除去した後、その表面を流水中でスチール製ワイヤーで研磨した。
(e)エメリ研磨:JIS R6010規定の#320のエメリ研磨紙を用いて試験片を研磨した。
【0033】
上記5種類の研磨方法で前処理を行った後の試験片の表面粗さを、それぞれ下記の方法により測定した。なお、各研磨方法において試験片を5つずつ用意した(No.1〜5 計25)。
<測定方法>
バフ研磨、化学研磨および電解研磨:原子間力顕微鏡(セイコーインスツルメンツ株式会社製Manopics 2100型)を用いた。
酸洗およびエメリ研磨:染色針式表面粗さ計を用いた。
その結果を表1に示す。
【0034】
(2)アモルファスSiO2膜の形成
次に、上記前処理後の各試験片を、ポリシラザンとキシレンの混合液中に浸漬した後、引上げて室内で自然乾燥し、次いで110℃で0.5時間加熱した後、450℃で0.5時間加熱する焼成処理を1サイクルとして、計3サイクル実施することにより試験片の表面に1.5μm厚のアモルファスSiO2膜を形成した。
【0035】
(3)腐食試験方法
成膜後の試験片に対し、JIS Z 2371規定の塩水噴霧試験方法に従って96時間の腐食試験を行い、水洗後の試験片を目視観察し、赤さびの発生の有無を確認した。その結果を表1に示す。なお、赤さびを発生した試験片については、表面粗さの数字を( )で囲み、赤さびが発生しなかった試験片については無印とした。
【0036】
(4)試験結果
表1の結果から明らかなように、バフ研磨、化学研磨および電解研磨を行った場合(本発明)では、ほとんどの基材の表面粗さがRa:0.2μm以下、Rz:0.5μm以下となり、その上にアモルファスSiO2膜を形成した試験片についてはいずれも、極めて良好な耐食性を発揮し、赤さびの発生は認められなかった。ただし、バフ研磨については、前処理時に十分な研磨が行われず、局部的に大きな粗さが残留してしまい、赤さびの発生が認められたものがあった。
一方、酸洗、エメリ研磨を行った場合(比較例)では、前処理終了後の基材表面粗さが、いずれもRa:2.9μm以上、Rz:9.8μm以上と大きく、さらに腐食試験後のすべての試験片に、赤さびの発生が認められた。
【0037】
以上の結果から、ポリシラザンを用いて耐食性に優れたアモルファスSiO2膜を形成するためには、バフ研磨、化学研磨あるいは電解研磨により、基材の表面粗さを、Ra:0.2μm以下、Rz:0.5μm以下の鏡面に仕上げることが必要であることが確認できた。
【表1】

【0038】
(実施例2)
この実施例では、SS400試験片上に電気NiめっきおよびCrめっきを膜厚が15μmになるように施し、そのめっき膜表面をバフ研磨または電解研磨した後、上記実施例1と同様の方法によって研磨面上に2.0μm厚のアモルファスSiO2膜を形成し、塩水噴霧試験を行った。また、比較例としては、電気めっき膜表面をバフ研磨した試験片(SiO2膜なし)を用いた。各試験片について、研磨後の表面粗さ、および塩水噴霧試験後の赤さびの発生の有無を目視確認し、その結果を表2に示す。
【0039】
電気めっき膜のみからなる試験片(比較例)では、前処理としてバフ研磨を行い、鏡面仕上げをしたものの、耐食性に乏しく、すべての試験片(No.1〜6)において赤さびが発生した。
これに対し、電気めっき膜上にアモルファスSiO2膜を有する本発明では、優れた耐食性を示し、赤さびの発生は認められなかった。しかし、本発明(バフ研磨)においても、めっき膜の表面研磨が不充分な試験片(No.3および6)において、赤さびの発生が見られ、めっき膜上にSiO2膜を形成する際においても、表面粗さの影響が極めて大きいことが確認された。

【表2】

【0040】
(実施例3)
この実施例では、アモルファスSiO2膜の緻密性を調査するため、SS400試験片(寸法:幅30mm×長さ50mm×厚さ3.2mm)基材表面を、電解研磨法によって表面粗さがRa:0.10〜0.19μm、Rz:0.27〜0.41μmになるように鏡面に仕上げた後、上記実施例1に記載の方法でSiO2膜を1.5μm厚に被覆形成させた。その後、JIS H 8645規定のフェロキシル試験方法によって、SiO2膜に存在する微小な気孔の有無を調査した。
【0041】
フェロキシル試験方法とは、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム25gと塩化ナトリウム15gを1リットルの蒸留水に溶解し、これを分析用の濾紙に十分含浸させる。その後、前記濾紙を、試験片表面に貼付し、30分間静置した後、濾紙を剥がして濾紙面での青色斑点発生の有無を目視判定した。これは、SiO2膜に気孔が存在するとフェロキシル試験液が侵透し、鉄基材面に達して鉄イオンを生成させ、これにヘキサシアノ(III)酸カリウム塩が青色反応することによって判定することができるものである。
なお、比較例としては、SS400試験片上にNiめっき膜(膜厚15μm)を成膜したもの(SiO2膜なし)を用いた。
【0042】
上記目視判定結果を表3に示す。Niめっき試験片(比較例:No.4〜6)では、多数の青色の斑点が確認されたが、SiO2膜(本発明:No.1〜3)では、青色の斑点が全く認められず、無気孔の状態にあることがわかった。
【表3】

【0043】
(実施例4)
この実施例では、基材表面にポリシラザンを用いてSiO2膜を形成したケース(本発明)と、シリコンアルコキシドを用いたゾル・ゲル法によってSiO2膜を形成した場合(比較例)の耐酸性を比較検討した。
まず、試験片としては、SS400またはSUS304鋼を使用し、それぞれ幅30mm×長さ50mm×厚さ3.2mmの試験片を製作した後、その表面を電解研磨法によって、表面粗さがRa:0.07〜0.18μm、Rz:0.29〜0.50μmの範囲内に鏡面仕上げした。
次に、研磨後の試験片上に、ポリシラザンとキシレンの混合溶液を用いて、浸漬と450℃×0.5時間の焼成処理を行い、1.2μm厚のアモルファスSiO2膜を被覆形成させた。一方、比較例のSiO2膜は、研磨後の試験片上に、シリコンアルコキシド溶液を用いて、ゾル・ゲル法による浸漬と450℃×0.5時間の焼成処理を行い、1.5μm厚に被覆形成させた。
なお、耐酸性試験用の薬剤としては、10%HCl、20%H2SO4、10%HNO3(mass%)水溶液を使用し、室温(20℃〜25℃)状態で48時間浸漬することによって、SiO2膜の耐酸性を調査した。
【0044】
表4の結果から明らかなように、ポリシラザンによって形成されたSiO2膜(No.1〜5)は、いずれの酸に対しても優れた耐食性を示し、健全な状態を呈していた。これに対し、ゾル・ゲル法によって形成されたSiO2膜(No.6〜9)では、SS400基材の場合には激しく腐食され、また、SUS340基材を用いた場合においてもSiO2膜を通して、それぞれの酸が内部へ侵入してしまい、腐食溶解された基材成分(Cr、Ni)が溶出して試験液が青色に変化していた。以上より、ゾル・ゲル法により基材上にSiO2膜を成膜した場合には、試験片の表面を鏡面状態に仕上げたとしても十分な耐食性を発揮することができないことがわかった。
【表4】

【0045】
(実施例5)
この実施例では、SS400(寸法:幅30mm×長さ50mm×厚さ3.2mm)からなる試験片表面を、バフ研磨法と電解研磨法を併用してRa:0.06〜0.19μm、Rz:0.21〜0.35μmに鏡面仕上げし、その上に、ポリシラザン溶液を用いる方法(本発明:膜厚1.7μm)とシリコンアルコキシド溶液を用いるゾル・ゲル法(比較例:膜厚1.8μm)の2種類の方法を用いてSiO2膜を形成させた。これらのSiO2膜を形成した試験片を、(1)実験室内(6ヶ月間)、(2)JIS Z 2371規定の塩水噴霧試験(96時間)、(3)純水中浸漬(1ヶ月間)の3種類の環境に曝露して耐食性を比較した。その結果を表5に示す。
【0046】
表5より、比較例のゾル・ゲル法により形成したSiO2膜(No.3、4)では、実験室雰囲気(室温放置)下においては、健全な状態を維持していた。しかしながら、純水中では、僅かではあるが、赤さびの発生が認められ(No.4)、塩水噴霧環境では、全面にわたって赤さびが発生した。このように、ゾル・ゲル法によって得られるSiO2膜は、緩慢な腐食環境下では、十分な耐食性を発揮するものの、厳しい腐食環境下では工学的な利用価値が著しく低下する。
これに対し、本発明に係るポリシラザンを用いて形成したSiO2膜では、塩水噴霧中でも十分な耐食性を発揮し、SiO2膜自身はもちろんのこと、試験片の鏡面状態も維持されていた。
【表5】

【0047】
(実施例6)
この実施例では、SiO2膜厚と基材に対する防食効果との関係を調査した。基材としては、SS400、SUS410、SUS304、Cu(JIS H 3100規定のC1020)およびTi(JIS H 4600規定の1種)を用いて、それぞれ幅30mm×長さ50mm×厚さ1.0〜2.5mmの試験片を作製した。試験片の表面はすべて、電解研磨法を用いてRa:0.06〜0.18μm、Rz:0.30〜0.50μmに鏡面仕上げした。
【0048】
なお、ポリシラザンはキシレンによって希釈して1回の浸漬と焼成処理(450℃×0.5時間)によって得られるSiO2膜厚が0.01〜0.5μmになるように調整したものを準備し、この溶液を用いて塗布回数が1〜25回(膜厚:0.04〜5.10μm)の薄膜試験片を作製した。
【0049】
(腐食試験方法)
デシケーターの底部に濃HClを100ml入れ、その上に磁性の多孔板を配設し、その上部に白金線を用いて試験片を吊るした。濃HClから室温(20〜25℃)状態で発生したHCl蒸気が、多孔板を通じて試験片に接するようにし、その状態で24時間放置した後、デシケーターから試験片を取り出して、その表面を目視観察した。
【0050】
表6に示す結果から明らかなように、いずれの基材質の試験片においても、成膜回数が3〜20回、膜厚として0.05〜5μmのものまでは、全く腐食の発生が見られなかった。しかし、成膜回数が25回、膜厚として5.10μmの試験片では、前者に比較して厚膜であるにもかかわらず、SS400は赤さび、Cuは青さびが試験片全体に発生し、また、SUS410、SUS304、Tiにおいては、局部的な腐食(孔食)の発生が認められた。さらに、赤さび、青さびおよび局部的な腐食が発生した試験片の表面を拡大鏡を用いて観察したところ、微細な割れが多数認められ、HCl蒸気が、これらの割れを通じて内部へ侵入し、腐食を発生させたものと考えられる。一方、膜厚が0.04μmの試験片では、いずれの金属質の試験片においても、局部的に腐食されたり、全面腐食し、環境の腐食性を遮断することができないことがわかった。以上より、SiO2の膜厚は、0.05〜5μmの範囲内とすることが好ましいことが確認できた。
【表6】

【0051】
(実施例7)
この実施例では、成膜法および成膜時の加熱条件が、SiO2膜の腐食特性に与える影響について検討した。まず、SUS316鋼試験片(寸法:幅50mm×長さ60mm×厚さ1.8mm)の表面を、電解研磨法によって表面粗さRa:0.07〜0.15μm、Rz:0.33〜0.42μmの鏡面に仕上げた後、ポリシラザン溶液を用いてSiO2膜を350℃×3時間(本発明:No.1)または600℃×0.5時間(本発明:No.2)の条件でそれぞれ膜厚1.5μmに形成したものと、比較例として、ポリシラザン溶液によるSiO2膜を、700℃×1時間の条件で膜厚1.5μmに形成したもの(比較例:No.3)、シリコンアルコキシド溶液を用いるゾル・ゲル法によって膜厚1.6μmのSiO2膜を形成したもの(比較例:No.4,5)を準備した。
【0052】
これらのSiO2膜形成試験片を、電気炉中で600℃×4時間加熱した後、25℃の室温まで空冷した(一種の熱衝撃試験)。その後、これらの試験片を室温(25℃)の10mass%HClと3mass%酢酸(CH3COOH)水溶液中に24時間浸漬し、外観変化を目視によって観察した。その結果を表7に示す。
【0053】
表7に示すように、600℃×4時間の加熱と空冷によっては、すべてのSiO2膜において、外観的な異常は認められず、健全であった。しかし、10mass%HClと3mass%酢酸水溶液中に各試験片を24時間浸漬した結果では、比較例のNo.3は、加熱処理後の腐食試験では、基材に赤さびの発生が認められた。これは、加熱によってSiO2膜に目視では判別困難なほどの微細な割れが発生し、その部分から酸が浸入して基材を腐食したものと思われる。また、ゾル・ゲル法によって形成されたSiO2膜(No.4、5)では、局部的に剥離され、その露出された部分が、酸によって僅かながら腐食され、初期の金属光沢が完全に消失していた。
これに対し、本発明のSiO2膜(No.1、2)では、健全な状態を維持し、熱的な負荷が加えられた後でも、優れた耐食性を発揮していた。
【表7】

【0054】
(実施例8)
この実施例では、本発明に用いる基材質について検討した。まず、Ni基材とAl基材(寸法:50mm×50mm×厚さ3.2mm)の表面を電解研磨法によってRa:0.15〜0.17μm、Rz:0.38〜0.41μmに鏡面仕上げした試験片(No.1、5)と、鏡面処理後の基材表面に電子ビーム熱源を用いたイオンプレーティング法(PVD法)によってCr薄膜(膜厚:2.2μm)を施工した試験片(No.2、6)と、塩化アルミニウム蒸気を用いたCVD法によってAl薄膜(膜厚が2.2μm)を施工した試験片(No.3、7)を準備し、各試験片上に、ポリシラザン溶液を用いてアモルファスSiO2膜(膜厚:1.8μm)を形成した。なお、Cr薄膜およびAl薄膜の表面粗さは、いずれもRa:0.15〜0.18μm、Rz:0.38〜0.49μmの範囲であった。比較例としては、NiおよびAl基材の表面粗さの大きい試験片(No.4、8)を準備し、この表面上にもアモルファスSiO2膜(膜厚:1.8μm)を形成した。
【0055】
以上のすべての試験片を、JIS Z 2371規定の塩水噴霧試験に連続200時間曝露した後、その表面を目視観察した。その結果を表8に示す。Ni基材、Al基材のいずれも、基材の表面粗さが小さい試験片(No.1、5)では、塩水噴霧試験後もアモルファスSiO2膜は健全な状態を維持していたが、試験片の表面粗さが大きい試験片(No.4、8)では、SiO2膜が局部的に剥離したり、全面に亘って剥離していた。また、基材上にPVD法およびCVD法によってCr膜(No.2、6)、Al膜(No.3、7)を施工したものは、いずれも優れた耐食性を発揮し、基材の腐食を含めて健全な状態を維持していた。
【表8】

【0056】
(実施例9)
この実施例では、ポリシラザン溶液の加熱焼成条件について検討した。まず、SUS304鋼(寸法50mm×50mm×厚さ3.2mm)の試験片の表面を、電解研磨法によってRa:0.15〜0.19μm、Rz:0.38〜0.47μmの鏡面に仕上げた後、ポリシラザン溶液を用いて、300〜700℃の各温度で加熱焼成することによりアモルファスSiO2膜(膜厚2.1μm)を形成し、6種類の試験片を作製した。なお、焼成時間はいずれも1.5時間とした。
その後、各試験片を10mass%HCl水溶液(水温22℃)に48時間浸漬し、その耐酸性を調査した。その結果を表9に示す。
【0057】
300℃で焼成したアモルファスSiO2膜(No.1)では、酸によってSiO2膜が浸食され、膜が完全に膨潤していた。一方、700℃に加熱焼成して形成したアモルファスSiO2膜(No.6)では、膜自体の耐酸性は良好であったが、膜の表面が局部的に剥離し、その直下のSUS304鋼基材に腐食の発生が認められた。この原因としては、加熱焼成温度が高いため、SiO2膜の一部に微細な割れが発生したことが考えられる。これに対し、加熱焼成温度が350〜600℃の場合(No.2〜5)では、SiO2膜に異常が認められず健全な状態を維持していた。
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0058】
強い腐食性の薬剤を使用する半導体加工装置や、僅かな微粉の残留を嫌う超清浄半導体加工装置、生物・医学的清浄環境下で操作される装置などでの利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】金属製基材の表面に形成させたアモルファスSiO2膜の断面状態を模式的に示したものである。(a)鏡面仕上面上に形成されたSiO2薄膜の断面模式図(b)表面粗さの大きい基材上に形成されたSiO2薄膜の断面模式図
【符号の説明】
【0060】
1 金属製基材
2 アモルファスSiO2
3 基材の平均的な表面粗さ面(Ra)
4 基材表面における最大表面粗さを示す凸起部(Rz)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡面仕上げした金属製基材の表面に、ポリシラザン化合物を加熱焼成することにより形成したアモルファスSiO2膜を有することを特徴とするアモルファスSiO2膜被覆部材。
【請求項2】
前記金属製基材の表面は、Ra:0.2μm以下の表面粗さであることを特徴とする請求項1に記載のアモルファスSiO2膜被覆部材。
【請求項3】
前記金属製基材の表面は、Ra:0.2μm以下、かつRz:0.5μm以下の表面粗さであることを特徴とする請求項1に記載のアモルファスSiO2膜被覆部材。
【請求項4】
前記アモルファスSiO2膜の膜厚は、0.05〜5μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアモルファスSiO2膜被覆部材。
【請求項5】
前記金属製基材が、普通炭素鋼、特殊鋼、Niおよびその合金、Tiおよびその合金、Alおよびその合金、Cuおよびその合金、またはこれらの金属・合金からなるめっき膜、物理蒸着法あるいは化学蒸着法で得られる蒸着膜のうちのいずれか1種の皮膜で覆われた金属製基材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアモルファスSiO2膜被覆部材。
【請求項6】
金属製基材の表面を鏡面処理し、次いで、その鏡面処理した基材表面にポリシラザン化合物を被覆し、その後、乾燥しさらに加熱焼成することにより、該基材表面にアモルファスSiO2膜を被覆形成することを特徴とするアモルファスSiO2膜の形成方法。
【請求項7】
前記ポリシラザン化合物の基材表面への被覆、乾燥および加熱焼成を複数回繰り返して、アモルファスSiO2膜を肥厚化させることを特徴とする請求項6記載のアモルファスSiO2膜の形成方法。
【請求項8】
前記アモルファスSiO2膜の膜厚は、0.05〜5μmであることを特徴とする請求項6または7に記載のアモルファスSiO2膜の形成方法。
【請求項9】
前記鏡面処理は、Ra:0.2μm以下の表面粗さにすることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のアモルファスSiO2膜の形成方法。
【請求項10】
前記鏡面処理は、Ra:0.2μm以下、かつRz:0.5μm以下の表面粗さにすることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のアモルファスSiO2膜の形成方法。
【請求項11】
ポリシラザン化合物を被覆した前記金属製基材を、室温〜120℃の温度の大気中で、0.5〜3時間乾燥し、さらに350〜600℃の温度で0.5〜3時間加熱焼成することを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載のアモルファスSiO2膜の形成方法。
【請求項12】
前記金属製基材が、普通炭素鋼、特殊鋼、Niおよびその合金、Tiおよびその合金、Alおよびその合金、Cuおよびその合金、またはこれらの金属・合金からなるめっき膜、物理蒸着法あるいは化学蒸着法で得られる蒸着膜のうちのいずれか1種の皮膜で覆われた金属製基材であることを特徴とする請求項6〜11のいずれか1項に記載のアモルファスSiO2膜の形成方法。
【請求項13】
前記鏡面処理は、バフ研磨、化学研磨および電解研磨法から選ばれるいずれか1種または2種以上の方法によりRa:0.2μm以下または、Ra:0.2μm以下かつRz:0.5μm以下の表面粗さにすることを特徴とする請求項6〜12のいずれか1項に記載のアモルファスSiO2膜の形成方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−347827(P2006−347827A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177080(P2005−177080)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000109875)トーカロ株式会社 (127)
【Fターム(参考)】