説明

アルカリ剤及び酸化組成物を含むエマルションを使用する、ケラチン物質の明色化方法

【課題】本発明の目的は、多量の水性アンモニアの存在に起因する、既存の組成物を用いる方法の欠点を持たないと同時に、明色化及びこの明色化の均一性に関しては、少なくとも前記方法と同等に有効である、ケラチン物質、特にケラチン繊維、例えば髪の明色化方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、(a)直接エマルションであって、(A)このエマルションの全質量に対して25質量%超の量の、好ましくは50質量%の量の、脂肪酸以外の1つまたは複数の脂肪物質、1つまたは複数の界面活性剤、1つまたは複数のアルカリ剤、及び5質量%超の量の水を含む、直接エマルション、(b)(B)1つまたは複数の酸化剤を含む、組成物、が使用される、ケラチン物質の明色化方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人のケラチン物質、特に髪の、明色化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケラチン物質、例えばヒトのケラチン繊維の明色化方法は、多くの場合において、少なくとも1つの酸化剤を含む水性組成物をアルカリpH条件下で使用することを含む。この酸化剤は、髪のメラニンを分解する役割を有し、これにより、存在する酸化剤の性質によって、多少によらず顕著な繊維の明色化がもたらされる。このように、比較的に弱い明色化のためには、前記酸化剤は、一般的に過酸化水素である。より強い明色化が求められる場合には、通常は、過酸化塩類、例えば過硫酸塩類が、過酸化水素の存在下で使用される。
【0003】
明色化方法がアルカリ条件下で行われ、また最も一般的に使用されるアルカリ剤が水性アンモニアであるという事実から生じる問題の1つに、水性アンモニアが、このタイプの方法においては特に有利であるということがある。有利である理由は、水性アンモニアによれば、組成物のpHをアルカリpHに調整して酸化剤を活性化させることができるためである。この作用剤はまた、鱗片を開かせてケラチン繊維を膨張させ、これにより酸化剤の繊維への浸透を促進し、かくして反応の有効性を向上させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Walter Noll著「Chemistry and Technology of Silicones」(1968年)、Academic Press
【非特許文献2】Cosmetics and Toiletries、Vol.91、Jan.76、p.27-32で発表されたTodd & Byersの論文「Volatile Silicone fluids for cosmetics」
【非特許文献3】”The HLB system. A time-saving guide to Emulsifier Selection” (published by ICI Americas Inc; 1984)
【非特許文献4】J. Chem. Soc. Jpn., 1968, 89, 435
【非特許文献5】K. Shinoda and H. Saito, J. Colloid Interface Sci., 1969, 30, 258
【非特許文献6】”Application of the phase-inversion-temperature method to the emulsification of cosmetics”; T. Mitsui, Y. Machida and F. Harusawa, American Cosmet. Perfum., 1972, 87, 33
【非特許文献7】T. Forster、W. von Rybinski、及びA. Waldeによる文献:Influence of microemulsion phases on the preparation of fine disperse emulsions, Advances in Colloid and Interface Sciences, 58, 119-149, 1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この塩基性化剤は非常に揮発性であるため、この方法の実施中に発生する、アンモニアの特徴的な、強く、かなり不快な臭気のために、使用者はこれを好ましくないと見なす。
【0006】
更にまた、揮発するアンモニアの量的な損失を補填するために、より高含量での使用が必要になる。これは、使用者に影響をもたらさずにはおかず、使用者は、依然として臭気に不便を被るのみならず、不耐性、例えば頭皮の炎症(刺痛)のより大きな危険性に直面しうる。
【0007】
水性アンモニアの全部または一部を、1つまたは複数の別の塩基性化剤で単に置き換えるのみの選択肢に関しては、この選択肢によると、特にこれらの塩基性化剤は酸化剤の存在下において有色繊維の十分な明色化を行うことができないため、当該組成物は水性アンモニアに基づくものほど有効にならない。
【0008】
本発明の目的の1つは、多量の水性アンモニアの存在に起因する、既存の組成物を用いる方法の欠点を持たないと同時に、明色化及びこの明色化の均一性に関しては、少なくとも前記方法と同等に有効である、ケラチン物質、特にケラチン繊維、例えば髪の明色化方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
こうした目標は本発明によって達成され、然るに、本発明の主題の1つは、
(a)直接エマルションであって、(A)このエマルションの全質量に対して、25質量%超の量の、好ましくは50質量%の量の脂肪酸以外の1つまたは複数の脂肪物質、1つまたは複数の界面活性剤、1つまたは複数のアルカリ剤、及び5質量%超の量の水を含む、直接エマルション、
(b)(B)1つまたは複数の酸化剤を含む、組成物、
が使用される、ケラチン物質の明色化方法である。
【0010】
本発明はまた、多区画装置であって、第一区画にはエマルション(A)が包含され、別の区画には組成物(B)が包含された多区画装置に関する。
【0011】
本発明の意味においては、直接エマルションとは、水中油型エマルションである。
【0012】
以下の本明細書中においては、特記のない限り、数値範囲の上下限は、この範囲内に含まれる。
【0013】
本発明の方法で処理されるケラチン物質は、例えば、体毛、睫毛、及び頭髪である。本発明の方法によれば、特に、刺激性となりうるアンモニア臭を発生させることなく、これらのケラチン物質、例えば頭髪の、高度な明色化を得ることが可能になる。
【0014】
エマルション(A)は、特に、このエマルションの全質量に対して50質量%未満、好ましくは10乃至50質量%の水含量を有する。
【0015】
更に、特段の一実施態様によれば、直接エマルション(A)は、ヒトのケラチン繊維の染色に通常使用される、如何なる直接染料も酸化染料前駆体(塩基類及びカップラー類)も含まないか、または、もしも含む場合であっても、その合計含量は、その油中水型エマルションの質量に対して0.005質量%を超えることはない。厳密に言えば、こうした含量では、エマルションのみが染色され、すなわちケラチン繊維に対する染色効果は観察されないものである。
【0016】
本発明において有用な水中油型エマルションは、1つまたは複数の脂肪物質を含む。
【0017】
「脂肪物質」なる語は、常温(25℃)及び大気圧(760mmHg)下で水に不溶性である(溶解度が5%未満、好ましくは1%未満、更により好ましくは0.1%未満である)有機化合物を意味する。これらは、その構造中に、少なくとも2つのシロキサン基の鎖または少なくとも6つの炭素原子を含む、少なくとも1つの炭化水素系の鎖を示す。さらにまた、脂肪物質は、一般的に、同じ温度及び圧力の条件下で、例えばクロロホルム、エタノール、ベンゼン、またはデカメチルシクロペンタシロキサンなどの有機溶媒に可溶である。
【0018】
本発明によれば、脂肪物質とは、脂肪酸類を除く。脂肪物質は、特に、低級アルカン類、脂肪アルコール類、脂肪酸エステル類、脂肪アルコールのエステル類、鉱物、植物、動物または合成由来の油、好ましくは非シリコーン性の鉱物、植物、動物または合成由来の油、に非シリコーンワックス類、及びシリコーン類から特に選択される。
【0019】
本発明の目的のためには、脂肪アルコール類、脂肪エステル類、及び脂肪酸類は、特に、6から30の炭素原子を含み、1つまたは複数(特に1から4)のヒドロキシル基で任意に置換された、直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和の、1つまたは複数の炭化水素系の基を含むことに留意されたい。これらが不飽和である場合、このような化合物は、1から3つの共役または非共役の炭素-炭素二重結合を含んでよい。
【0020】
低級アルカン類に関しては、これらは、6乃至16の炭素原子を含み、直鎖状または分枝状、任意には環状である。例えば、アルカン類は、ヘキサン及びドデカン、イソパラフィン類、例えば、イソヘキサデカン及びイソデカンから選択してよい。
【0021】
本発明の組成物中に使用して良い非シリコーン油としては、挙げてよい例には、以下のものが含まれる。
- 動物由来の炭化水素系の油、例えばペルヒドロスクアレン;
- 植物由来の炭化水素系の油、例えば、6から30の炭素原子を有する液体脂肪酸トリグリセリド類、例えば、ヘプタン酸またはオクタン酸のトリグリセリド類、あるいは、例えば、ヒマワリ油、トウモロコシ油、大豆油、ヒョウタン油、ブドウ種油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、アンズ油、マカデミア油、アララ油、ヒマシ油、アボカド油、カプリル酸/カプリン酸のトリグリセリド類、例えばStearineries Dubois社から販売されているもの、またはDynamit Nobel社から、Miglyol(登録商標)810、812及び818の名称で販売されているもの、ホホバ油、及びシアバター油;
- 鉱物由来または合成由来の、直鎖状または分枝状の炭化水素類、例えば流動パラフィン類、ワセリン、流動ワセリン、ポリデセン類、水添ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標);
- 部分的に炭化水素系であるフッ素化油類;挙げてよいフッ素化油類には、ペルフルオロメチルシクロペンタン及びペルフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン、つまりBNFL Fluorochemicals社より、「FLUTEC(登録商標)PC1」及び「FLUTEC(登録商標)PC3」の名称で販売されているもの、ペルフルオロ-1,2-ジメチルシクロブタン、ペルフルオロアルカン類、例えばドデカフルオロペンタン及びテトラデカフルオロヘキサン、3M社から「PF 5050(登録商標)」及び「PF 5060(登録商標)」の名称で販売されているもの、またはブロモペルフルオロオクチル、すなわちAtochem社から「FORALKYL(登録商標)」の名称で販売されているもの、ノナフルオロメトキシブタン及びノナフルオロエトキシイソブタン、ペルフルオロモルホリンの誘導体、例えば4-トリフルオロメチルペルフルオロモルホリン、すなわち3M社から「PF 5052(登録商標)」の名称で販売されているものが含まれる。
【0022】
本発明の組成物中に使用してよい脂肪アルコール類は、アルコキシル化されておらず、飽和または不飽和の、直鎖状または分枝状のものであり、6から30の炭素原子、とりわけ8から30の炭素原子を含む。セチルアルコール、ステアリルアルコール、及びこれらの混合物(セチルステアリルアルコール)、オクチルドデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ウンデシルペンタデカノール、オレイルアルコール、またはリノレイルアルコールを挙げてよい。
【0023】
本発明の組成物において使用することができる非シリコーンワックスは、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、アフリカハネガヤワックス(esparto grass wax)、パラフィンワックス、オゾケライト類、植物ワックス類、例えばオリーブワックス、ライスワックス、水添ホホバワックスまたは花等の無水ワックス類、例えばBertin社(仏国)から販売されているブラックカラントの花のエッセンシャルワックス、動物ワックス類、例えば蜜蝋、または変性蜜蝋(セラベリナ)から特に選択される。本発明により使用可能な他のワックスまたはワックス様原材料は、特に海洋ワックス類、例えば参照名M82でSophin社から販売されている製品、及び一般的にはポリエチレンワックス類またはポリオレフィンワックス類である。
【0024】
エステル類は、飽和または不飽和の、直鎖状または分枝状の、C1〜C26脂肪族の、モノもしくはポリ酸類と、飽和または不飽和の、直鎖状のまたは分枝状の、C1〜C26脂肪族の、モノもしくはポリアルコール類とのエステルであり、エステル類の炭素の総数は、とりわけ10以上である。
【0025】
モノエステル類の中では、ベヘン酸ジヒドロアビエチル、ベヘン酸オクチルドデシル、ベヘン酸イソセチル、乳酸セチル、乳酸C12〜C15アルキル、乳酸イソステアリル、乳酸ラウリル、乳酸リノレイル、乳酸オレイル、オクタン酸(イソ)ステアリル、オクタン酸イソセチル、オクタン酸オクチル、オクタン酸セチル、オレイン酸デシル、イソステアリン酸イソセチル、ラウリン酸イソセチル、ステアリン酸イソセチル、オクタン酸イソデシル、オレイン酸イソデシル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸イソステアリル、リシノール酸メチルアセチル、ステアリン酸ミリスチル、イソノナン酸オクチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸オクチル、ペラルゴン酸オクチル、ステアリン酸オクチル、エルカ酸オクチルドデシル、エルカ酸オレイル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-オクチルデシル、ミリスチン酸アルキル類、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、もしくは、ミスチリン酸ステアリル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソブチル、リンゴ酸ジオクチル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸2-ヘキシルデシルなどを挙げてよい。
【0026】
さらに、この変法の範囲内で、C4〜C22のジ-もしくはトリ-カルボン酸類とC1〜C22アルコール類とのエステル、及びモノ-、ジ-もしくはトリ-カルボン酸類とC2〜C26ジ-、トリ-、テトラ-もしくはペンタ-ヒドロキシアルコール類とのエステルを使用してもよい。
【0027】
セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ-n-プロピル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソステアリル、マレイン酸ジオクチル、ウンデシレン酸グリセリル、ステアリン酸オクチルドデシルステアロイル、モノリシノール酸ペンタエリスリチル、テトライソノナン酸ペンタエリスリチル、テトラペラルゴン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、プロピレングリコールジカプリラート、プロピレングリコールジカップラート、エルカ酸トリデシル、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリイソステアリル、トリ乳酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、クエン酸トリオクチルドデシル、クエン酸トリオレイル、ジオクタン酸プロピレングリコール、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコール、及びジステアリン酸ポリエチレングリコール類を特に挙げてよい。
【0028】
上述のエステル類の中では、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸ステアリル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-オクチルデシル、ミリスチン酸アルキル類、例えばミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸セチル、またはミリスチン酸2-オクチルドデシル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソブチル、リンゴ酸ジオクチル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸2-ヘキシルデシル、イソノナン酸イソノニル、またはオクタン酸セチルを使用するのが好ましい。
【0029】
組成物はまた、脂肪エステルとして、C6〜C30、好ましくはC12〜C22の脂肪酸の、糖エステル類及びジエステル類を含むこともできる。「糖」という用語は、アルデヒド官能基またはケトン官能基の有無にかかわらず、いくつかのアルコール官能基を含み、少なくとも4つの炭素原子を含む、酸素含有の炭化水素系化合物を意味することを意図していることに留意されたい。このような糖類は、単糖、寡糖類または多糖類であってよい。
【0030】
挙げてよい適切な糖類の例には、スクロース(またはショ糖)、グルコース、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、及びラクトース、並びにこれらの誘導体、特にアルキル誘導体類、例えばメチル誘導体類、例えばメチルグルコースが含まれる。
【0031】
脂肪酸の糖エステル類は、前述の糖類と、直鎖状または分枝状の、飽和または不飽和の、C6〜C30、好ましくはC12〜C22の脂肪酸類とのエステル類またはエステル混合物類を含む群から特に選択してよい。これらが不飽和の場合、このような化合物は、1から3つの共役または非共役の炭素-炭素二重結合を含みうる。
【0032】
この変法によるエステル類はまた、モノ-、ジ-、トリ-及びテトラ-エステル類、ポリエステル類、並びにこれらの混合物から選択してよい。
【0033】
このようなエステル類は、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、ヤシ脂肪酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、カプリン酸、及びアラキドン酸のエステル類、またはこれらの混合物から選択して良く、例えば、特にオレオパルミチン酸、オレオステアリン酸、パルミトステアリン酸の混合エステル類であってよい。
【0034】
モノエステル類及びジエステル類を使用することがとりわけ好ましく、特にスクロース、グルコース、またはメチルグルコースのモノ-もしくはジ-オレイン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレオパルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、オレオステアリン酸のエステル類が使用される。
【0035】
挙げてよい例は、Glucate(登録商標)DOの名称でAmerchol社から販売されている製品であるが、これは、メチルグルコースジオレイン酸エステルである。
【0036】
挙げてよい糖と脂肪酸とのエステル類またはエステル混合物類の例には、以下が含まれる:
- Crodesta社から、F160、F140、F110、F90、F70、SL40の名称で販売されている製品であり、それぞれモノエステル73%及びジエステル及びトリエステル27%、モノエステル61%及びジエステル、トリエステル及びテトラエステル39%、モノエステル52%及びジエステル、トリエステル及びテトラエステル48%、モノエステル45%及びジエステル、トリエステル及びテトラエステル55%、モノエステル39%及びジエステル、トリエステル及びテトラエステル61%から形成される、パルミトステアリン酸スクロース類並びにモノラウリン酸スクロースを意味するもの、
- Ryoto Sugar Esterの名称で、例えば品番B370で販売され、モノエステル20%及びジエステル-トリエステル-ポリエステル80%から形成されるベヘン酸スクロースに相当する製品、
- Tegosoft(登録商標)PSEの名称で、Goldschmidt社から販売されているモノ-ジ-パルミトステアリン酸スクロース。
【0037】
本発明の組成物に使用してよいシリコーン類は、揮発性または不揮発性の、環状、直鎖状、または分枝状の、有機の基で変性された、または未変性の、25℃で5×10-6から2.5m2/s、好ましくは1×10-5から1m2/sの粘度を有するシリコーン類である。
【0038】
本発明によって使用してよいシリコーン類は、油、ワックス、樹脂またはゴムの形態であってよい。
【0039】
好ましくは、シリコーン類は、ポリジアルキルシロキサン類、特にポリジメチルシロキサン類(PDMS)、並びに、ポリ(オキシアルキレン)基、アミン基及びアルコキシ基から選択される少なくとも1つの官能基を含む、有機変性されたポリシロキサン類から選択される。
【0040】
有機ポリシロキサン類は、Walter Noll著「Chemistry and Technology of Silicones」(1968年)、Academic Pressの中でより詳細に定義されている。これらは揮発性または不揮発性であってよい。
【0041】
これらが揮発性の場合、シリコーン類は、とりわけ60℃から260℃の間の沸点を有するものから選択され、さらにとりわけ、以下から選択される:
(i)3から7つ、好ましくは4から5つの珪素原子を含有する環状ポリジアルキルシロキサン類。これらは、例えば、特にVolatile Silicone(登録商標)7207の名称で、Union Carbide社から販売されている、または、Silbione(登録商標)70045 V2の名称でRhodia社から販売されている、オクタメチルシクロテトラシロキサン、Volatile Silicone(登録商標)7158の名称で Union Carbide社から、及びSilbione(登録商標)70045 V5の名称でRhodiaから販売されている、デカメチルシクロペンタシロキサン及びこれらの混合物。
【0042】
ジメチルシロキサン/メチルアルキルシロキサン型のシクロコポリマー類、例えば、下式:
【化1】

の、Union Carbide社から販売されているVolatile Silicone(登録商標)FZ 3109を挙げてよい。
【0043】
環状ポリジアルキルシロキサン類と有機珪素化合物類との混合物、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラトリメチルシリルペンタエリスリトールとの混合物(50/50)及びオクタメチルシクロテトラシロキサンとオキシ-1,1'-(ヘキサ-2,2,2',2',3,3'-ヘキサトリメチルシリルオキシ)ネオペンタンとの混合物も挙げることができる。
(ii)2から9個の珪素原子を含有し、25℃で5×10-6m2/s以下の粘度を有する、揮発性の直鎖状ポリジアルキルシロキサン類。例としては、特にToray Silicone社より「SH 200」の名称で販売されているデカメチルテトラシロキサンである。この範疇に属するシリコーン類は、Cosmetics and Toiletries、Vol.91、Jan.76、p.27-32で発表されたTodd & Byersの論文「Volatile Silicone fluids for cosmetics」にも記載されている。
【0044】
不揮発性のポリジアルキルシロキサン類、ポリジアルキルシロキサンのゴム類及び樹脂類、上述の有機官能基で変性されたポリ有機シロキサン類並びにこれらの混合物が、好ましく使用される。
【0045】
これらのシリコーン類は、とりわけ、ポリジアルキルシロキサン類から選択され、その中でも、トリメチルシリル末端基を含有するポリジメチルシロキサン類を主に挙げてよい。シリコーン類の粘度は、例えば、ASTM規格445付録Cに従って25℃で測定される。
【0046】
これらのポリジアルキルシロキサン類の中では、非限定的に、以下の市販の製品を挙げてよい:
- Rhodiaから販売されているSilbione(登録商標)油の47及び70 047シリーズ、またはMirasil(登録商標)油、例えば、70 047 V 500 000の油、
- Rhodia社から市販されているMirasil(登録商標)シリーズの油、
- Dow Corning社製の200シリーズの油、例えば、粘度60000mm2/sを有するDC200など、
- General Electric製のViscasil(登録商標)油及びGeneral Electric製のSFシリーズのいくつかの油(SF 96、SF 18)。
【0047】
ジメチコノール(CTFA)の名称で知られる、ジメチルシラノール末端基を含有するポリジメチルシロキサン類、例えばRhodia社製の48シリーズの油もまた挙げてよい。
【0048】
この範疇のポリジアルキルシロキサン類の中では、Goldschmidt社から「Abil Wax(登録商標)9800及び9801」の名称で販売されている製品もまた挙げてよく、これはポリ(C1〜C20)ジアルキルシロキサンである。
【0049】
本発明に従って使用することができるシリコーンゴム類は、特に、ポリジアルキルシロキサン類であり、好ましくは、200000から1000000の間の高い数平均分子量を有し、溶媒中で単独でまたは混合して使用される、ポリジメチルシロキサン類である。この溶媒は、揮発性シリコーン類、ポリジメチルシロキサン(PDMS)油、ポリフェニルメチルシロキサン(PPMS)油、イソパラフィン類、ポリイソブチレン類、塩化メチレン、ペンタン、ドデカン、トリデカンまたはこれらの混合物から選択することができる。
【0050】
本発明に従って特に使用できる製品は、例えば以下のような混合物である:
- 鎖の末端がヒドロキシル化したポリジメチルシロキサンもしくはジメチコノール(CTFA)と、シクロメチコン(CTFA)とも呼ばれている環状ポリジメチルシロキサンから形成される混合物、例えばDow Corning社から販売されている製品Q2 1401など、
- ポリジメチルシロキサンゴムと環状シリコーンとの混合物、例えばGeneral Electric社の製品SF 1214 Silicone Fluidであり、この製品は、デカメチルシクロペンタシロキサンに相当するSF 1202 Silicone Fluidの油に溶解された、数平均分子量500000を有する、ジメチコンに相当するゴムSF 30である、
- 異なる粘度の2種のPDMS、とりわけPDMSゴムとPDMS油の混合物、例えばGeneral Electric社製の製品SF 1236。この製品SF 1236は、粘度20m2/sを有する上記に記載のゴムSE30と、粘度5×10-6m2/sを有する油SF96の混合物である。この製品は、好ましくは、ゴムSE 30を15%、油SF 96を85%含む。
【0051】
本発明に従って使用可能な有機ポリシロキサンの樹脂は、以下の単位:
R2SiO2/2、R3SiO1/2、RSiO3/2、及びSiO4/2
(式中、Rは、1から16の炭素原子を含む炭化水素系基を表す)を含有する、架橋したシロキサン系である。このような製品の中で特に好ましいものは、Rが、C1〜C4低級アルキル基、とりわけメチルを意味するものである。
【0052】
このような樹脂の中では、「Dow Corning 593」の名称で販売されている製品、またはGeneral Electric社から「Silicone Fluid SS 4230」及び「Silicone Fluid SS 4267」の名称で販売されている製品を挙げることができるが、これらは、ジメチル/トリメチルシロキサン構造のシリコーンである。
【0053】
更に、X22-4914、X21-5034、及びX21-5037の名称でShin-Etsu社から販売されている、トリメチルシロキシシリケート型の樹脂も挙げることができる。
【0054】
本発明に従って使用可能な有機変性シリコーン類は、以上に定義された通りであり、且つ、炭化水素基を用いて固定された1つまたは複数の有機官能基をその構造の中に有する、シリコーン類である。
【0055】
上述したシリコーンに加えて、有機変性シリコーン類は、ポリジアリールシロキサン類、特にポリジフェニルシロキサン類、及び以前に述べた有機官能基で官能化されたポリアルキルアリールシロキサン類である。
【0056】
ポリアルキルアリールシロキサン類は、直鎖状及び/または分枝状であり、25℃で1.10-5から5.10-2m2/sの範囲の粘度を有する、ポリジメチル/メチルフェニルシロキサン類及びポリジメチル/ジフェニルシロキサン類から特に選択される。
【0057】
このようなポリアルキルアリールシロキサン類の中で、挙げてよい例には以下の名称で市販されている製品が含まれる:
- RHODIA製の70 641シリーズのSILBIONE(登録商標)油、
- RHODIA製のRHODORSIL(登録商標)70 633及び763シリーズの油、
- DOW CORNING製のDOW CORNING 556 COSMETIC GRADE FLUIDの油、
- BAYER製のPKシリーズのシリコーン、例えば製品PK20、
- BAYER製のPN、PHシリーズのシリコーン、例えばPN1000及びPH1000の製品、
- GENERAL ELECTRIC製のSFシリーズのある種の油、例えばSF 1023、SF 1154、SF 1250、SF 1265。
【0058】
有機変性シリコーンの中では、以下のポリ有機シロキサン類を挙げることができる:
- C6〜C24アルキル基を任意に含むポリエチレンオキシ及び/またはポリプロピレンオキシ基を含むもの、例えばDOW CORNING社からDC 1248の名称で市販されている、またはUNION CARBIDE社製のSILWET(登録商標)L 722、L 7500、L 77、L 711の油などのジメチコンコポリオールと呼ばれる製品、及びDOW CORNING社からQ2 5200の名称で市販されている(C12)アルキルメチコンコポリオール、
- 置換または非置換のアミン基を含むもの、例えばGENESEE社からGP4 Silicone Fluid及びGP 7100の名称で市販されている製品、またはDOW CORNING社からQ2 8220及びDOW CORNING 929もしくは939の名称で市販されている製品。置換アミン基は、特にC1〜C4アミノアルキル基である。
- アルコキシル化した基を含むもの、例えばSWS SILICONESから「SILICONE COPOLYMER F-755」の名称で、及びGOLDSCHMIDT社からABIL WAX(登録商標)2428、2434及び2440の名称で市販されている製品。
【0059】
脂肪物質としては、オキシアルキレン化もグリセロール化もされていないものが好ましい。
【0060】
とりわけ、脂肪物質は、常温及び大気圧下で液体またはペースト状である化合物から選択される。
【0061】
脂肪物質としては、温度25℃及び大気圧下で液体である化合物が好ましい。
【0062】
脂肪物質は、低級アルカン類、脂肪アルコール類、脂肪酸エステル類、脂肪アルコールエステル類、油類、特に、鉱物性、植物性、または合成の非シリコーン油類及びシリコーン類から選択されるのが好ましい。
【0063】
一実施形態によると、脂肪物質はまた、流動ワセリン、ポリデセン類、脂肪酸または脂肪アルコールの液体エステル類、またはこれらの混合物から選択され、特に本発明による組成物の脂肪物質は、非シリコーン系である。
【0064】
アルカン類または炭化水素類、及びシリコーン類が、好ましく選択されることになる。
【0065】
本発明による組成物は、脂肪物質を少なくとも25%含む。好ましくは、脂肪物質の濃度は、組成物の全質量の、25%から80%、さらにより好ましくは25%から65%、さらによいのは30%〜55%の範囲である。
【0066】
エマルション(A)は、1つまたは複数の界面活性剤を更に含む。
【0067】
好ましくは、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤類及びアニオン性界面活性剤類から選択され、好ましくは非イオン性界面活性剤類である。
【0068】
アニオン性界面活性剤は、例えば、以下の化合物の塩類(特にアルカリ金属の塩類、特にナトリウムの塩類、アンモニウムの塩類、アミンの塩類、アミノアルコールの塩類、またはアルカリ土類金属の塩類、例えばマグネシウムの塩類)から選択される:
- アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミドエーテル硫酸塩、アルキルアリールポリエーテル硫酸塩、モノグリセリド硫酸塩、
- アルキルスルホン酸塩、アルキルアミドスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、α-オレフィン-スルホン酸塩、パラフィン-スルホン酸塩、
- アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、
- アルキルスルホコハク酸塩、アルキルエーテルスルホコハク酸塩、アルキルアミド-スルホコハク酸塩、アルキルスルホスコハク酸塩、
- アルキルスルホ酢酸塩、
- アシルサルコシネート、アシルイセチオン酸塩及びN-アシルタウレート、
- 脂肪酸の塩、例えばオレイン酸、リシノール酸、パルミチン酸、またはステアリン酸の塩、ヤシ油酸または水添ヤシ油酸の塩、
- アルキル-D-ガラクトシドウロン酸の塩、
- アシル-ラクチレート、
- ポリオキシアルキレン化アルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシアルキレン化アルキルアリールエーテルカルボン酸、ポリオキシアルキレン化アルキルアミドエーテルカルボン酸、特に2から50のエチレンオキシド基を有するものの塩、
- 並びにこれらの混合物。
これら様々な化合物のアルキル基またはアシル基は、6から24の炭素原子、好ましくは8から22の炭素原子、更に好ましくは18から22の炭素原子を有するのが有利であり、また、アリール基は、好ましくはフェニル基またはベンジル基を示すことに留意すべきである。
【0069】
非イオン性界面活性剤は、とりわけ、モノオキシアルキレン化またはポリオキシアルキレン化した、モノグリセロール化またはポリグリセロール化した、非イオン性界面活性剤から選択される。オキシアルキレン単位は、とりわけ、オキシエチレンまたはオキシプロピレン単位、またはこれらの組合せであり、好ましくはオキシエチレン単位である。
【0070】
挙げてよいオキシアルキレン化した非イオン性界面活性剤には、以下のもの:
・ オキシアルキレン化(C8-C24)フェノール、
・ 飽和または不飽和の、直鎖状または分枝状の、オキシアルキレン化C8〜C30アルコール、
・ 飽和または不飽和の、直鎖状または分枝状の、オキシアルキレン化C8〜C30アミド、
・ 飽和または飽和の、直鎖状または分枝状の、C8〜C30酸とポリエチレングリコールとのエステル、
・ 飽和または不飽和の、直鎖状または分枝状の、C8〜C30酸とソルビトールとのポリオキシエチレン化エステル、
・ 飽和または不飽和の、オキシエチレン化植物油、
・ エチレンオキシド及び/またはプロピレンオキシドとの縮合物、
が、とりわけ、単独でまたは混合物として含まれる。
【0071】
界面活性剤は、1から50、好ましくは2から30のモル数の、エチレンオキシド及び/またはプロピレンオキシドを有する。非イオン性界面活性剤は、オキシプロピレン単位を含まないのが有利である。
【0072】
本発明の好ましい実施形態によれば、オキシアルキレン化非イオン性界面活性剤は、オキシエチレン化C8〜C30アルコール、好ましくはオキシエチレン化C18〜C30アルコールから選択される。
【0073】
挙げてよいエトキシル化脂肪アルコールの例には、エチレンオキシドとラウリルアルコールとの付加物、特に9から50のオキシエチレン基を含むもの、特に10から12のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名でLaureth-10からLaureth-12)、エチレンオキシドとべへニルアルコールとの付加物、特に9から50のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名でBeheneth-9からBeheneth-50)、好ましくは10のオキシエチレン基を含むもの(Beheneth-10)、エチレンオキシドとセトステアリルアルコール(セチルアルコールとステアリルアルコールとの混合物)との付加物、特に10から30のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名でCeteareth-10からCeteareth-30)、エチレンオキシドとセチルアルコールとの付加物、特に10から30のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名でCeteth-10からCeteth-30)、エチレンオキシドとステアリルアルコールとの付加物、特に10から30のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名でSteareth-10からSteareth-30)、エチレンオキシドとイソステアリルアルコールとの付加物、特に10から50のオキシエチレン基を含むもの(CTFA名でIsosteareth-10からIsosteareth-50)、並びにこれらの混合物が含まれる。
【0074】
挙げてよいエトキシル化脂肪酸の例には、エチレンオキシドとラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、もしくはベヘン酸との付加物、及びこれらの混合物、特に9から50のオキシエチレン基を含むもの、例えば、PEG-9からPEG-50のラウレート(CTFA名:PEG-9ラウレートからPEG-50ラウレート)、PEG-9からPEG-50のパルミテート(CTFA名:PEG-9パルミテートからPEG-50パルミテート)、PEG-9からPEG-50のステアレート(CTFA名:PEG-9ステアレートからPEG-50ステアレート)、PEG-9からPEG-50のパルミトステアレート、PEG-9からPEG-50のベヘネート(CTFA名:PEG-9ベヘネートからPEG-50ベヘネート)、及びこれらの混合物が含まれる。
【0075】
本発明の好ましい実施態様においては、オキシアルキレン化非イオン性界面活性剤類は、オキシエチレン化C18-C30アルコール類から選択される。
【0076】
脂肪アルコール並びに脂肪酸の、これらのオキシエチレン化誘導体の混合物もまた使用してよい。
【0077】
好ましい実施態様によれば、エマルション(A)は少なくとも一つのエトキシル化脂肪アルコール、好ましくは少なくとも一つのべへニルアルコールを含む。
【0078】
モノグリセロール化もしくはポリグリセロール化した非イオン性界面活性剤の例としては、好ましくはモノグリセロール化もしくはポリグリセロール化C8〜C40アルコールが用いられる。
【0079】
特に、モノグリセロール化もしくはポリグリセロール化C8〜C40アルコールは、以下の式に相当する:
RO-[CH2-CH(CH2OH)-O]m-H
(式中、Rは、直鎖状または分枝状のC8〜C40、好ましくはC8〜C30の、アルキルまたはアルケニル基を表し、mは、1から30、好ましくは1から10の範囲の数を表す)。
【0080】
本発明の範囲内での適切な化合物の例として、4モルのグリセロールを有するラウリルアルコール(INCI名:ポリグリセリル-4ラウリルエーテル)、1.5モルのグリセロールを有するラウリルアルコール、4モルのグリセロールを有するオレイルアルコール(INCI名:POLYGLYCERYL-4OLEYL ETHER)、2モルのグリセロールを有するオレイルアルコール(INCI名:POLYGLYCERYL-2OLEYL ETHER)、2モルのグリセロールを有するセテアリルアルコール、6モルのグリセロールを有するセテアリルアルコール、6モルのグリセロールを有するオレオセチルアルコール及び6モルのグリセロールを有するオクタデカノールを挙げることができる。
【0081】
アルコールとは、複数のアルコールの混合物を表してよく、mの数値は、統計値を表すが、これは、市販の製品において、数種類のポリグリセロール脂肪アルコールが混合物の形態で共存してよいことを意味する。
【0082】
モノグリセロール化もしくはポリグリセロール化アルコールの中では、1モルのグリセロールを有するC8/C10アルコール、1モルのグリセロールを有するC10/C12アルコール、及び1.5モルのグリセロールを有するC12アルコールを使用することがとりわけ好ましい。
【0083】
好ましくは、エマルション中に存在する界面活性剤は、8から18のHLBを有する非イオン性界面活性剤である。HLBは、当該分子中での親油性部分に対する親水性部分の割合である。このHLBなる語は、当業者には周知であり、”The HLB system. A time-saving guide to Emulsifier Selection” (published by ICI Americas Inc; 1984)に記載されている。
【0084】
エマルション(A)中の界面活性剤の含有量は、無水組成物の質量に対して、とりわけ、0.1から50質量%であり、好ましくは0.5から30質量%である。
【0085】
本発明において有用であるエマルションは、1つまたは複数のアルカリ剤を含む。
【0086】
アルカリ剤としては、無機塩基、有機アミン、及び有機アミン塩を単独または混合物として選択してよい。
【0087】
挙げてよい有機アミンの例は、25℃におけるそのpKbが12未満、好ましくは10未満、更に有利には6未満である有機アミンである。これが最高の塩基性の官能性に相当するpKbであることに留意すべきである。
【0088】
有機アミンは、1つまたは2つの第一級、第二級、または第三級アミン官能基、並びに、1つまたは複数のヒドロキシル基を担持する、1つまたは複数の直鎖状または分枝状のC1-C8アルキル基を含んでよい。
【0089】
アルカノールアミン、例えば、1つから3つの同一または相違するC1-C4ヒドロキシアルキル基を含む、モノ-、ジ-、トリ-アルカノールアミンから選択される有機アミンが、特に本発明における使用に適切である。
【0090】
挙げることのできる、このタイプの化合物は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N-ジメチルアミノエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジメチルアミノ-1,2-プロパンジオール、及びトリス(ヒドロキシメチルアミノ)メタンである。
【0091】
下式を有する有機のアミンもまた、使用に適切である。
【化2】

(式中、Wは、ヒドロキシル基またはC1〜C6アルキル基で任意に置換された、C1〜C6アルキレン残基であり、Rx、Ry、Rz、及びRtは、同一でも相違してもよく、水素原子、C1〜C6アルキル、C1〜C6ヒドロキシアルキル、C1〜C6アミノアルキル基を表す)
【0092】
そのようなアミンの例として挙げてよいものには、1,3-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、スペルミン、及びスペルミジンが含まれる。
【0093】
本発明の別の変法によると、有機アミンは、アミノ酸から選択される。
【0094】
とりわけ、使用することができるアミノ酸は、L、D、またはラセミ形の天然由来または合成由来のものであり、とりわけカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸またはリン酸の官能基から選択される少なくとも1つの酸官能基を有する。アミノ酸は、中性またはイオンの形態であってよい。
【0095】
有利には、アミノ酸は、環内またはウレイド官能基内に任意に含まれる別のアミン官能基を含む塩基性アミノ酸である。
【0096】
このような塩基性アミノ酸は、好ましくは、以下の式(I):
【化3】

(式中、Rは、以下:
【化4】

から選択される基を意味する)
に相当するものから選択される。
【0097】
式(I)に相当する化合物は、ヒスチジン、リシン、アルギニン、オルニチン、及びシトルリンである。
【0098】
本発明において使用してよいアミノ酸としては、特に、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、アルギニン、オルニチン、シトルリン、アスパラギン、カルニチン、システイン、グルタミン、リシン、ヒスチジン、リシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、N-フェニルアラニン、プロリン、セリン、タウリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンを挙げてよい。
【0099】
本発明の好ましい変法によると、有機アミンは、塩基性アミノ酸から選択される。特に好ましいアミノ酸は、アルギニン、リシン、及びヒスチジン、並びにこれらの混合物である。
【0100】
別の変法によると、有機アミンは、複素環式型の有機アミンから選択される。アミノ酸としてすでに述べたヒスチジンに加えて、ピリジン、ピペリジン、イミダゾール、1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、及びベンズイミダゾールを特に挙げることができる。
【0101】
別の変法によると、有機アミンは、アミノ酸ジペプチドから選択される。本発明に使用可能なアミノ酸ジペプチドとして、カルノシン、アンセリン、及びバレニンを特に挙げることができる。
【0102】
本発明の別の変法によると、有機アミンは、グアニジン官能基を有する化合物から選択される。本発明に使用してよいこの種類のアミンとして、以前にアミノ酸として述べたアルギニンに加えて、クレアチン、クレアチニン、1,1-ジメチルグアニジン、1,1-ジエチルグアニジン、グリコシアミン、メトホルミン、アグマチン、n-アミジノアラニン、3-グアニジノプロピオン酸、4-グアニジノ酪酸及び2-([アミノ(イミノ)メチル]アミノ)エタン-1-スルホン酸を特に挙げることができる。
【0103】
好ましくは、有機アミンは、アルカノールアミンである。更に好ましくは、有機アミンは、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール及びモノエタノールアミン、またはこれらの混合物から選択される。更に一層好ましくは、有機アミンは、モノエタノールアミンである。
【0104】
好ましい実施態様によれば、当該組成物は、アルカリ剤として少なくとも一つの有機アミン、好ましくはアルカノールアミンを含む。この組成物が、アルカノールアミン及び水酸化アンモニウム、またはこれらの塩を含む1つ以上のアルカリ剤を含む場合には、有機アミンの量は、好ましくはアンモニアの量より多い。アルカリ剤は、塩の形態の有機アミンであってよい。本発明の目的のためには、「有機アミン塩」なる語は、上述の有機アミンの有機または無機の塩を意味する。
【0105】
好ましくは、有機塩は、有機酸の塩類、例えばクエン酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、及び酒石酸塩から選択される。
【0106】
好ましくは、無機塩は、ハロゲン化水素塩(例えば塩酸塩)、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、リン酸水素塩、及びリン酸塩から選択される。
【0107】
本発明の目的のためには、「無機塩基」なる語は、その構造中に、水素の他に、元素の周期表の1族から13族の1つ以上の元素を含み、炭素原子と水素原子とを同時に含まない、あらゆる化合物を意味する。
【0108】
本発明の特段の実施態様によれば、無機塩基は、水素の他に、元素の周期表の1族及び2族の1つ以上の元素を含む。
【0109】
好ましい変法において、無機塩基は、以下の構造を有する:
(Z1x-)m(Z2y+)n
(式中、
Z2は、元素周期表の1から13族、好ましくは1または2族の金属、例えばナトリウムまたはカリウムなどを意味し、
Z1x-は、C032-、OH-、HCO32-、SiO32-、HPO42-、P043-、B4072-のイオン、好ましくはCO32-、OH-、SiO32-のイオンから選択されるアニオンを意味し、
xは、1、2または3を意味し、
yは、1、2、3または4を意味し、
m及びnは、互いに独立して、1、2、3または4を意味し、
n.y=m.xである)。
【0110】
好ましくは、無機塩基は、以下の式(Z1x-)m(Z2y+)n(式中、Z2は、元素周期表の1及び2族の金属を意味し、Z1x-は、イオンCO32-、OH-、SiO32-から選択されるアニオンを意味し、xは1であり、yは、1または2を意味し、m及びnは、互いに独立して、1または2を意味し、n.y=m.xである)に相当する。
【0111】
本発明により使用可能な無機塩基として、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、メタケイ酸ナトリウム、及びメタケイ酸カリウムを挙げることができる。
【0112】
アンモニウム塩もまた、アルカリ剤として使用してよい。本発明による組成物B中に使用してよいアンモニウム塩は、アンモニウム塩(NH4+)である。
【0113】
本発明による組成物B中に使用してよいアンモニウム塩は、好ましくは以下の酸塩、酢酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、塩化物塩、クエン酸塩、硝酸塩塩、亜硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩から選択される。特に好ましい方式では、この塩は炭酸塩、例えば炭酸アンモニウムである。
【0114】
一般的に、エマルション(A)は、前記組成物全質量に対して0.1乃至40質量、好ましくは0.5乃至20質量%のアルカリ剤含有量を有する。
【0115】
エマルション(A)は、直接エマルション調製の通常の方法により調製してよいが、PIT方法によって調製してもよい。転相温度(もしくはPIT)を利用する乳化の原理は、原理上は当業者に周知であり、1968年にK. Shinodaにより記載されている(J. Chem. Soc. Jpn., 1968, 89, 435)。この乳化技術によって安定で微細なエマルションが得られることが示されている(K. Shinoda and H. Saito, J. Colloid Interface Sci., 1969, 30, 258)。この技術は、Mitsuiらによって、早くも1972年には化粧品に応用された(”Application of the phase-inversion-temperature method to the emulsification of cosmetics”; T. Mitsui, Y. Machida and F. Harusawa, American Cosmet. Perfum., 1972, 87, 33)。
【0116】
この技術の原理は以下の通りである:水性相と油性相との混合物を調製し、これを、系の転相温度、すなわちPIT温度より高温に昇温させるが、この温度とは、使用する乳化剤の親水性特性と親油性特性との間に平衡が達成される温度である。昇温させた温度、すなわち転送温度より高い(>PIT)温度ではこのエマルションは油中水型であり、その冷却の間にこのエマルションは転相温度において転相して水中油型エマルションになるが、この時、事前にマイクロエマルションの状態を経る。この特段の実施態様によれば、非イオン性界面活性剤は、8から18のHLBを有する。これは、エトキシル化脂肪アルコール、エトキシル化脂肪酸、エトキシル化脂肪酸部分グリセリド、及びポリグリセロール化脂肪酸トリグリセリド、並びにこれらのエトキシル化誘導体、並びにこれらの混合物から選択されることが好ましい。更にまた、こうしたエマルションは、4ミクロン未満、好ましくは1μm未満の粒径を有する。
【0117】
更に詳しくは、PITエマルションを得るために以下のように作業することができる。
1) 容器内で直接エマルション(A)の全ての構成成分を計量し、
2) この混合物を、水浴を使用して転相温度T1より高温にまで徐々に温度を上げることによって加熱しつつ、例えばRayneriブレンダーを350rpmで使用して均一化させ、すなわち透明または半透明の相(マイクロエマルション領域またはラメラ相)を得て、その後に逆相エマルションが得られたことを示す、より粘性の相を得て、
3) 加熱を停止して、このエマルションが、転相温度T1、すなわちこの温度にて微細なO/Wエマルションが形成される温度を経て室温に冷却されるまで攪拌を継続し、
4) 温度が転相温度より低温の領域(T1)に下がった時点で、任意の添加物及び感熱性出発物質を加える。
【0118】
親油性相の液滴が10から200nmの微細なサイズである、安定な最終組成物が得られる。
【0119】
マイクロエマルション(半透明の混合物)の形成の領域においては、界面活性剤が直接ミセルと逆ミセルとの両方を形成する傾向を有することから、親水性と疎水性との相互作用が平衡する。この領域を超えて加熱することにより、界面活性剤が油中水型エマルションの形成に有利に働くことから、W/Oエマルションが形成される。次いで、転相領域より低温に冷却すると、このエマルションは直接エマルション(O/W)になる。
【0120】
転相による乳化は、参照のために援用することとする、T. Forster、W. von Rybinski、及びA. Waldeによる文献:Influence of microemulsion phases on the preparation of fine disperse emulsions, Advances in Colloid and Interface Sciences, 58, 119-149, 1995に詳細に説明されている。
【0121】
エマルション(A)はまた、髪用明色化組成物中に従来使用されている様々な補助剤、例えば、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性、または双性イオン性のポリマー、あるいはこれらの混合物、無機増粘剤、特に粘土、タルク等のフィラー、有機増粘剤、特にアニオン性、カチオン性、非イオン性、及び両性の、ポリマー会合性増粘剤、酸化防止剤、浸透剤、金属イオン封鎖剤、芳香剤、分散剤、膜形成剤、防腐剤、乳白剤を含んでよい。
【0122】
これはまた、1つまたは複数の有機溶媒を任意に含んでよい。挙げてよい有機溶媒の例には、直鎖状または分枝状のC2〜C4アルカノール、例えばエタノール及びイソプロパノール、グリセロール、ポリオール及びポリオールのエーテル、例えば2-ブトキシエタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールのモノメチルエーテル、グリセロール、ジエチレングリコールのモノメチルエーテル及びモノエチルエーテル、さらに芳香族アルコール、例えばベンジルアルコールまたはフェノキシエタノール、並びにこれらの混合物が含まれる。
【0123】
この方法は、1つまたは複数の酸化剤を含む組成物(B)を用いて行われる。
【0124】
とりわけ、酸化剤は、過酸化水素、過酸化尿素、アルカリ金属のブロメートまたはフェリシアン化物、過酸化した塩、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属の過硫酸塩、過ホウ酸塩、及び過酸、並びにこれらの前駆体、更に過炭酸塩から選択される。
【0125】
この酸化剤は、過酸化水素によって、特に水溶液(過酸化水素水溶液)として構成されるのが有利であり、その濃度は、とりわけ、0.1から40容量(すなわち、0.3から12%のH2O2)、より好ましくは5から40容量(すなわち、1.5から12%のH2O2)の範囲であってよい。
【0126】
所望する明色化の程度に応じて、酸化剤はまた、好ましくは過酸化塩から選択される酸化剤を更に含んでよい。
【0127】
組成物(B)は、一般的に水性組成物である。「水性組成物」なる語は、5質量%超の水、好ましくは10質量%超の水、更に有利には20質量%超の水を含む組成物を意味する。
【0128】
この組成物(B)は、1つまたは複数の、上述の有機溶媒を更に含んでよい。これはまた、1つまたは複数の酸性化剤をさらに含んでよい。
【0129】
挙げてよい酸性化剤の例には、無機または有機の酸類、例えば塩酸、オルトリン酸、硫酸、カルボン酸類、例えば酢酸、酒石酸、クエン酸、または乳酸、及びスルホン酸が含まれる。
【0130】
通常、組成物(B)のpHは、7未満である。
【0131】
最後に、組成物(B)は、様々な形態、例えば溶液、エマルションまたはゲルの形態をとる。
【0132】
本発明の方法は、エマルション(A)と組成物(B)とを連続的に、間に濯ぎを行わずに適用することによって使用してよい。
【0133】
別の変法によれば、エマルション(A)と組成物(B)との使用時の即時混合によって得られる組成物は、湿ったまたは乾いたケラチン物質に適用される。この実施態様によれば、(A)/(B)及びR2の量の重量比は、0.1から10、好ましくは0.2から2、更に好適には0.3から1の範囲である。
【0134】
更に、使用する変法とは独立に、((A)と(B)との即時混合によってもたらされるか、またはその部分的もしくは完全な連続適用によってもたらされる、)ケラチン物質表面に存在する混合物は、一般的に約1分から1時間、好ましくは5分から30分の時間に亘って、そのままおかれる。
【0135】
この方法における温度は、通常は室温(15から25℃)から80℃、好ましくは室温から60℃である。
【0136】
処理後、ケラチン物質を、乾燥させるかまたは風乾する前に、任意に水で濯ぎ、任意に洗い、次いで水で濯ぐ。
【0137】
本発明の好ましい変法では、ケラチン物質は、ケラチン繊維、例えば体毛、睫毛、及び頭髪である。特定の実施態様によれば、エマルション(A)と水性の酸化剤含有組成物(B)との混合物から得られる、本発明の組成物は、混合後の脂肪物質の量が20%超、好ましくは25%超、特に好ましくは30%超となるようなものである。
【0138】
最後に、本発明は、第一区画にはエマルション(A)が包含され、第二区画には1つまたは複数の酸化剤を含む組成物(B)が包含された、多区画装置に関する。これらの組成物については前述の通りである。
【実施例】
【0139】
以下の組成物を調製した。
(本発明の実施例)
以下のエマルションA1を、転相温度法(PIT法)によって調製した。
製造方法:
1. 相Aを、水浴中でRayneri攪拌しつつ(400rpm)加熱する。流動性白色エマルションが得られ、約68℃で(マイクロエマルション相を経て)半透明になり、この温度より高温で増粘する。
2. エマルションが増粘したところで、水浴を取り除く。エマルションを、攪拌しつつ放冷する。
3. 約50℃にて、Carbopolを加える。
4. 室温に冷却されたところで、エタノール及びモノエタノールアミンを加え、蒸発による水分喪失量(<5%)を再調整する。
1μm未満の液滴サイズを有する、半透明のゲル化エマルション(粘度=72 DU M4(rheomatによる)、pH11.5)が、かくして得られる。
【0140】
【表1】

【0141】
使用時に、エマルションA1と、水中の脂肪アルコール(8%)の分散物及びPlatinium 20Vの名称で市販されている12%過酸化水素水溶液を含む、水性の酸化組成物(B)とを、同質量で混合する。
【0142】
その後、この混合物を天然の栗茶色(トーン高さ=4)の毛束に適用する。「混合物/毛束」の浴比は、それぞれ、10/1(g/g)である。放置時間は、27℃にて30分間である。この時間後、毛束を濯ぎ、その後、Elseveマルチビタミンシャンプーで洗う。高度の明色化が、臭気を伴わずに得られる。
【0143】
以下のエマルションA2を、PIT法によって調製した。
製造方法:
・相Aを、水浴中でRayneri攪拌しつつ(400rpm)加熱する。流動性白色エマルションが得られ、約68℃で(マイクロエマルション相を経て)半透明になり、この温度より高温で増粘する。
・エマルションが増粘したところで、水浴を取り除く。エマルションを、攪拌しつつ放冷する。
・約50℃にて、ポロキサマーを加える。
・室温にて、エタノール、モノエタノールアミン、及び予め5gの水に分散させた重炭酸カリウムを加え、蒸発による水分喪失量(<5%)を再調整する。
1μm未満の液滴サイズを有する、半透明のゲル化エマルション(粘度=8 DU M4、pH11.3)が、かくして得られる。
【0144】
【表2】

【0145】
使用時に、1重量部のエマルションA2と、水中の脂肪アルコール(8%)の分散物及び12%過酸化水素水溶液:Platinium 20Vを含む、を1.5重量部の水性酸化組成物(B2)と混合する。
【0146】
その後、この混合物を天然の栗茶色(トーン高さ=4)の毛束に適用する。「混合物/毛束」の浴比は、それぞれ、10/1(g/g)である。放置時間は、27℃にて30分間である。この時間後、毛束を濯ぎ、その後、Elseveマルチビタミンシャンプーで洗う。高度の明色化が、臭気を伴わずに得られる。
【0147】
(比較例)
以下のアンモニア系水性組成物を調製する。
【表3】

【0148】
使用時に、この組成物と、水中の脂肪アルコール(8%)の分散物及び12%過酸化水素水溶液:Platinium 20Vを含む、酸化剤20V(約80%の水を含む)とを、同質量で混合する。この混合物のpHは、9.9±0.1である。
【0149】
(結果)
本発明のエマルションA1及びA2は、比較例の組成物とは異なり、好ましからぬ臭気を全く発生させない。更にまた、以下の表に示す通り、本発明のエマルションを用いて得られる明色化の程度は、高度の明色化をもたらすことが知られた、水性アンモニアに基づく従来の組成物の代表的比較例を用いて得られるものと、著しい相違がない。
【0150】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン物質の明色化方法であって、
(A) 直接エマルションであって、このエマルションの全質量に対して、25質量%超の量の脂肪酸以外の1つまたは複数の脂肪物質、1つまたは複数の界面活性剤、1つまたは複数のアルカリ剤、及び5質量%超の量の水を含む、直接エマルション、
(B) 1つまたは複数の酸化剤を含む、組成物、
が使用される、方法。
【請求項2】
前記エマルション(A)が、50質量%超の脂肪物質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エマルション(A)中の水含量が、10質量%超、好ましくは10乃至50質量%である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記脂肪物質が、室温及び常圧にて液体である化合物から選択されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記脂肪物質が、炭素原子が6乃至16であるアルカン類、脂肪アルコール類、脂肪酸類、脂肪酸エステル類、脂肪アルコールエステル類、炭素原子が16超である鉱物油類、非シリコーン性の植物、動物、もしくは合成油類、シリコーン類、及び非シリコーンワックス類から選択されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記脂肪物質の含量が、エマルション(A)の質量に対して25乃至80質量%であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記液体脂肪物質が、360g/mol以上の分子量を有することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記エマルション(A)が、1つまたは複数の非イオン性界面活性剤を含み、前記非イオン性界面活性剤が、特に、モノオキシアルキレン化もしくはポリオキシアルキレン化された、モノグリセロール化された、あるいはポリグリセロール化されたものから選択されることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記エマルション(A)の界面活性剤が、エチレンオキシドとラウリルアルコールとの付加物、エチレンオキシドとセテアリルアルコールとの付加物、エチレンオキシドとセチルアルコールとの付加物、エチレンオキシドとステアリルアルコールとの付加物、エチレンオキシドとイソステアリルアルコールとの付加物、エチレンオキシドとラウリル酸、パルミチン酸、ステアリル酸、またはベヘン酸との付加物、並びにこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記エマルション(A)が、1つまたは複数のアルカリ剤を含むことを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アルカリ剤が、有機アミン類、無機塩基類、有機アミン塩類、及びアンモニウム塩類から選択されることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記有機アミンが、好ましくは2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール及びモノエタノールアミン、またはこれらの混合物から選択されるアルカノールアミン、あるいは、アルギニン、ヒスチジン、及びリシン、またはこれらの混合物より選択される塩基性アミノ酸であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物(B)が、過酸化水素、過酸化尿素、アルカリ金属臭素酸塩類、またはヘキサシアノ鉄酸塩類、及び過酸化塩類、例えばアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の過硫酸塩類、過ホウ素酸塩類、及び過酸類、並びにこれらの前駆体、及び過炭酸塩類から選択される1つまたは複数の酸化剤、好ましくは過酸化水素を含むことを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物(B)が、5質量%超の、好ましくは20質量%超の水を含む、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記エマルション(A)と前記組成物(B)との、使用時の即時混合によって得られる組成物が、ケラチン繊維に適用されることを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記エマルション(A)と前記組成物(B)とが、連続的に且つ間に濯ぎを行わずに、ケラチン繊維に適用されることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
多区画装置であって、第一区画には請求項1乃至12のいずれか一項に記載のエマルション(A)が包含され、別の区画には請求項1、13、及び14のいずれか一項に記載の前記組成物(B)が包含される、多区画装置。

【公開番号】特開2010−143908(P2010−143908A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−288197(P2009−288197)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】