説明

アルカリ可溶性樹脂、ポジ型レジスト組成物及びネガ型レジスト組成物

【課題】レジスト組成物に好適な高いアルカリ可溶性を有し、熱処理工程において水分等の低分子成分を発生することなく、解像性や耐熱性に優れた高い耐熱性を有する硬化物を生成することができるアルカリ可溶性樹脂であり、該アルカリ可溶性樹脂を用いたポジ型レジスト組成物及びネガ型レジスト組成物を提供する。
【解決手段】ベンゾオキサジン環の開環構造を有するアルカリ可溶性樹脂であり、該樹脂は、ベンゾオキサジン環を有する化合物と、フェノール性水酸基を1つのベンゼン環上に1以上有する芳香族化合物を交互共重合させた繰り返し単位からなり、絶縁性、機械強度、難燃性、耐水性等、ベンゾオキサジン樹脂が有する基本的な特徴を兼ね備え、フェノール性水酸基含有化合物由来の高いアルカリ可溶性が発現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物に好適な高いアルカリ可溶性を有し、高温焼成が不要で、熱処理工程において水分等の低分子成分を殆ど発生することなく、解像性や耐熱性に優れた硬化物を生成することができるアルカリ可溶性樹脂に関する。また、該アルカリ可溶性樹脂を用いたポジ型レジスト組成物及びネガ型レジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子に用いる表面保護膜や層間絶縁膜には、絶縁性、耐熱性、機械強度等の特性が必要とされることから、ポリイミド樹脂やポリベンゾオキサゾール樹脂が広く使用されている。近年、半導体素子の微細化や高集積化、加工工程の簡略化が進むに伴い、感光性を付与したポリイミドや感光性を付与したポリベンゾオキサゾールを用いてパターンを形成する方法が注目を集めている(例えば、非特許文献1)。また、パターン形成の際に用いる現像液として、有機溶剤タイプとアルカリ水溶液タイプがあるが、特に近年では、環境配慮等の側面からアルカリ水溶液タイプが主流となっている。
【0003】
一般的に、感光性を付与したポリイミドの場合、感光性ポリイミド前駆体であるポリアミック酸又はポリアミック酸変性体をアルカリ可溶性樹脂としてポジ型レジスト組成物又はネガ型レジスト組成物を調製し、パターンを形成した後、熱処理によりポリイミド膜が形成される。
感光性を付与したポリベンゾオキサゾールの場合も、前駆体であるポリヒドロキシアミド又はポリヒドロキシアミド変性体をアルカリ可溶性樹脂としてポジ型レジスト組成物又はネガ型レジスト組成物を調製し、パターンを形成した後、熱処理によりポリベンゾオキサゾール膜が形成される。
しかしながら、これらの方法では、高温の熱処理工程(通常300℃以上)が必要であるばかりでなく、熱処理工程における縮合反応に伴い、水や有機物等の低分子成分がアウトガスとして発生するため、硬化時にボイドが発生したり、半導体素子を汚染したりする等、信頼性低下を引き起こすという問題があった。
【0004】
これに対し、ベンゾオキサジン樹脂は、絶縁性や耐熱性等に優れ、熱硬化時に揮発成分を発生することがない樹脂として知られている。しかしながら、従来のベンゾオキサジン樹脂はアルカリ水溶液に対する溶解性が無い(又は極めて低い)ため、レジスト組成物のアルカリ可溶性樹脂としてはほとんど用いられていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】高分子論文集、Vol.63、No.9、p561−576、2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、レジスト組成物に好適な高いアルカリ可溶性を有し、熱処理工程において水分等の低分子成分を殆ど発生することなく、高温焼成が不要で、解像性や耐熱性に優れた硬化物を生成することができるアルカリ可溶性樹脂を提供することを目的とする。また、該アルカリ可溶性樹脂を用いたポジ型レジスト組成物及びネガ型レジスト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記一般式(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位からなるアルカリ可溶性樹脂である。
【0008】
【化1】

【0009】
式(1−1)中、Arは下記一般式(2−1)、(2−2)又は(2−3)で表される4価の芳香族基を表し、Rは脂肪族基、脂環式基、又は、芳香族基を表し、R〜Rは、同一でも異なってもよく、水酸基、水素原子、脂肪族基、脂環式基、又は、芳香族基を表す。
式(1−2)中、Xは2価の有機基を表す。R〜Rは、同一でも異なってもよく、水素原子、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、又は、ハロゲン基を示す。R〜Rは、同一でも異なってもよく、水酸基、水素原子、脂肪族基、脂環式基、又は、芳香族基を示す。
【0010】
【化2】

【0011】
式(2−1)、(2−2)、(2−3)中、**印は酸素原子への結合部位を表し、他はメチレン基への結合部位を表す。また、各芳香環の水素は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、又は、置換若しくは無置換フェニル基で置換されていてもよい。式(2−1)において、Xは、直接結合手(原子又は原子団が存在しない)、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、及び、下記群Aからなる群より選択される少なくとも1つであるヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい脂肪族、脂環式、又は、芳香族の炭化水素基を表す。
【0012】
【化3】

【0013】
群Aに含まれる各式中、*印は式(2−1)における芳香環への結合部位を表す。
以下に本発明を詳述する。
【0014】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は、ベンゾオキサジン環の開環構造を有するものである。これにより、熱硬化時に水等のアウトガスが発生することなく、高温焼成が不要で、耐熱性に優れた硬化物を形成することができる。またさらに、絶縁性、機械強度、難燃性、耐水性等、ベンゾオキサジン樹脂が有する基本的な特徴を兼ね備えた硬化物が得られる。
本発明のアルカリ可溶性樹脂は、ベンゾオキサジン環の開環構造由来のフェノール性水酸基以外のフェノール性水酸基を有する。このようなフェノール性水酸基を有することにより、本発明のアルカリ可溶性樹脂は、高いアルカリ可溶性を発揮するためレジスト組成物に好適に用いることができ、解像性に優れた硬化膜が得られる。
【0015】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量の好ましい下限が1000、好ましい上限が2万である。重量平均分子量が1000未満であると、レジスト組成物としたときの保持力が弱く、パターンを形成することができないことがある。重量平均分子量が2万を超えると、樹脂自体の合成が困難であり、また、アルカリ現像性が劣ることがある。
なお、本明細書において重量平均分子量とは、例えば、昭和電工社製Shodex LF−804等のカラムを用い、テトラヒドロフランを展開溶媒としたGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)法により測定された値であって、ポリスチレン換算されたものを意味する。
【0016】
本発明のアルカリ可溶樹脂は、ベンゾオキサジン環を有する化合物と、フェノール性水酸基を1つのベンゼン環上に1以上有する芳香族化合物を交互共重合させることにより、合成することができる。ベンゾオキサジン環が電子不足なのに対し、フェノール性水酸基含有化合物は電子供与性であるため、これらを混合して反応させることにより容易に交互共重合体とすることができる。このような方法により合成された本発明のアルカリ可溶性樹脂は、直鎖状又は分岐を含むポリマーであるため、溶媒やアルカリ性水溶液に可溶である。また、このような構造を有することから、ベンゾオキサジン由来の特性と、フェノール性水酸基含有化合物由来の高いアルカリ可溶性が発現される。
【0017】
ベンゾオキサジン環を有する化合物と、フェノール性水酸基を1つのベンゼン環上に1以上有する芳香族化合物を交互共重合させる反応は、下記反応式(3)又は(4)で表すことができる。
【0018】
【化4】

【0019】
上記反応式(3)、(4)において、nは正の整数を表す。
【0020】
上記反応式(3)において、原料となるベンゾオキサジン環を有する化合物は、HO−Ar−OHで表されるジオール化合物と、NH−Rで表される一級アミン化合物と、アルデヒド化合物とを反応させることによって合成することができる。アルデヒド化合物として、ホルムアルデヒドを使用した場合の反応を反応式(5)に示す。
【0021】
【化5】

【0022】
上記HO−Ar−OHで表されるジオール化合物としては、例えば、上記一般式(2−1)、(2−2)、(2−3)で示される4価の芳香族基において、**印の結合手にOH基が結合し、他の結合手にHが結合した化合物が挙げられる。
【0023】
上記HO−Ar−OHで表されるジオール化合物のうち、上記一般式(2−1)で示される4価の芳香族基の**印の結合手にOH基が結合し、他の結合手にHが結合した化合物としては、例えば、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスフェノール(三井化学社製 ビスフェノールP、東京化成では「α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン」の化合物名で販売)、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスフェノール(三井化学社製 ビスフェノールM)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、2,6−ビス((2−ヒドロキシフェニル)メチル)フェノール(a=1の化合物)等のように、連結部Xを除いて、分子内にベンゼン環を二つ有し、ベンゼン環一つに対してOH基が一つ結合している化合物等が挙げられる。
【0024】
上記HO−Ar−OHで表されるジオール化合物のうち、上記一般式(2−2)で示される4価の芳香族基の**印の結合手にOH基が結合し、他の結合手にHが結合した化合物としては、例えば、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、のように、分子内に一つのナフタレン環を有し、ナフタレン環に対して二つのOH基が結合した化合物等が挙げられる。
【0025】
上記HO−Ar−OHで表されるジオール化合物のうち、上記一般式(2−3)で示される4価の芳香族基の**印の結合手にOH基が結合し、他の結合手にHが結合した化合物としては、例えば、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)のように分子内に一つのベンゼン環を有し、ベンゼン環に対してOH基が二つ結合した化合物等が挙げられる。
【0026】
上記HO−Ar−OHで表されるジオール化合物の例示においては、OH基の結合している芳香環において、OH基と連結部X(一般式(2−1)の場合)以外は無置換のものを挙げたが、いずれもOH基のオルト位のいずれか1つが置換可能なHであればよく、芳香環のその他の部位は種々の置換基、例えば炭素数1〜10の直鎖状又は分岐を含む脂肪族炭化水素基や脂環式炭化水素基、置換又は無置換の芳香族基で置換されていてもよい。また、連結部Xに芳香環を含む場合においても、この芳香環は種々の置換基、例えば炭素数1〜10の直鎖状あるいは分岐を含む脂肪族炭化水素基や脂環式炭化水素基等で置換されていてもよい。
【0027】
上記芳香環が置換されたものの簡単な例示としては、一般式(2−1)の場合においては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタンが挙げられ、一般式(2−3)の場合においては、例えば、2−メチルレゾルシノール、2,5−ジメチルレゾルシノール等が挙げられる。
【0028】
上記NH−Rで表される一級アミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン、脂環式アミン、及び、芳香族アミンが挙げられる。
上記脂肪族アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、ラルリルアミンが挙げられる。
上記脂環式アミンとしては、例えば、シクロヘキシルアミン、アダマンチルアミン、ノルボルネンモノアミンが挙げられる。
上記芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、エチルアニリン、ジエチルアニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、トリベンジルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、α−ナフチルアミン、β−ナフチルアミンが挙げられる。
なかでも、メチルアミン、アニリン、メチルアニリン等が好適である。
【0029】
上記反応式(3)におけるベンゾオキサジン環を有する化合物を合成する反応に用いられる上記アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド類、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、ホルムアルデヒド類が好適であり、ホルムアルデヒドの水溶液であるホルマリンや、ホルムアルデヒドの重合物であるパラホルムアルデヒドがより好適である。
【0030】
上記反応式(3)におけるベンゾオキサジン環を有する化合物を合成する反応では、上記HO−Ar−OHで表されるジオール化合物のフェノール性水酸基と、上記NH−Rで表される一級アミン化合物の一級アミンと、上記アルデヒド化合物とが1:2:4のモル比となるように混合し、反応させることが好ましい。反応効率を高めるためには、アルデヒド化合物を多少過剰に加えてもよい。
【0031】
上記反応式(4)において、原料となるベンゾオキサジン環を有する化合物は、HN−X−NHで表されるジアミン化合物と、フェノール化合物と、アルデヒド化合物とを反応させることによって合成することができる。上記アルデヒド化合物として、ホルムアルデヒドを使用した場合の反応を反応式(6)に示す。
【0032】
【化6】

【0033】
上記HN−X−NHで表されるジアミン化合物において、Xは2価の有機基を表す。このような化合物としては、例えば、脂肪族ジアミン化合物、芳香族ジアミン化合物、脂環式ジアミン化合物、シリコンジアミン化合物等が挙げられる。
上記脂肪族ジアミン化合物は特に限定されず、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン等が挙げられる。
上記芳香族ジアミン化合物は特に限定されず、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス〔(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ネオペンタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[(4−アミノフェノキシ)フェニル]ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
上記脂環式ジアミン化合物は特に限定されず、例えば、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン、2,5(6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ジアミノアダマンタン等が挙げられる。
【0034】
上記フェノール化合物は、1個のフェノール性水酸基を有し、かつ、フェノール性水酸基のオルト位の少なくとも1つが水素原子である(置換されていない)化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール類、キシレノール類、アルキルフェノール類、アリルフェノール類、アラルキルフェノール類、アラルキルフェノール類、アルケニルフェノール類、アルコキシフェノール類、ハロゲン化フェノール類、単官能フェノール類等が挙げられる。
上記クレゾール類は特に限定されず、例えば、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等が挙げられる。
上記キシレノール類は特に限定されず、例えば、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等が挙げられる。
上記アルキルフェノール類は特に限定されず、例えば、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、n−ブチルフェノール、s−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、2,3,4−トリメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,4,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール等が挙げられる。
上記アリルフェノール類は特に限定されず、例えば、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール等が挙げられる。
上記アラルキルフェノール類は特に限定されず、例えば、o−ベンジルフェノール、m−ベンジルフェノール、p−ベンジルフェノール等が挙げられる。
上記アルケニルフェノール類は特に限定されず、例えば、o−ビニルフェノール、m−ビニルフェノール、p−ビニルフェノール、o−アリルフェノール、m−アリルフェノール、p−アリルフェノール等が挙げられる。
上記アルコキシフェノール類は特に限定されず、例えば、o−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール、o−エトキシフェノール、m−エトキシフェノール、p−エトキシフェノール等が挙げられる。
上記ハロゲン化フェノール類は特に限定されず、例えば、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール等が挙げられる。
上記単官能フェノール類は特に限定されず、例えば、α−ナフトール、β−ナフトール等が挙げられる。
【0035】
上記反応式(4)におけるベンゾオキサジン環を有する化合物を合成する反応に用いられるアルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド類、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、ホルムアルデヒド類が好適であり、ホルムアルデヒドの水溶液であるホルマリンや、ホルムアルデヒドの重合物であるパラホルムアルデヒドがより好適である。
【0036】
上記反応式(4)におけるベンゾオキサジン環を有する化合物を合成する反応では、上記HN−X−NHで表されるジアミン化合物と、上記フェノール化合物と、上記アルデヒド化合物とが1:2:4のモル比となるように混合し、反応させることが好ましい。反応効率を高めるためには、アルデヒド化合物を多少過剰に加えてもよい。
【0037】
上記反応式(3)又は(4)において、フェノール性水酸基を1つのベンゼン環上に1以上有する芳香族化合物としては、例えば、フェノール、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)等が挙げられ、これらは芳香族環上に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等、水酸基以外の脂肪族基を有してもよい。ただし、芳香族環上の少なくとも2以上の置換基は、水素原子である。なかでも、特に電子供与性が高く反応性が高いことから、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)等フェノール性水酸基を1つのベンゼン環上に2以上有する芳香族化合物が好適である。
【0038】
上記反応式(3)又は(4)で表した反応にて上記ベンゾオキサジン環を有する化合物と、フェノール性水酸基を1つのベンゼン環上に1以上有する芳香族化合物を交互共重合させて本発明のアルカリ可溶樹脂を得る反応においては、上記ベンゾオキサジン環を有する化合物と、フェノール性水酸基を1つのベンゼン環上に1以上有する芳香族化合物とを1:2〜2:1のモル比で反応させることが好ましい。この範囲外で反応させた場合、所定の分子量のものが得られなかったり、アルカリ水溶液に対する溶解性が高すぎたり低すぎたりする場合がある。もっとも好ましくは、1:1のモル比で反応させることが好ましい。
【0039】
上記(3)〜(6)の反応は、無溶媒又は溶媒中で行うことができる。
上記(3)〜(6)の反応を溶媒中で行う場合、使用する溶媒としては特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒や、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒や、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒や、乳酸エチル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチルエングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。また、後述するレジスト溶剤を使用し、そのまま配合に用いてもよい。また、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記(3)〜(6)の反応は、50〜200℃程度で数分間〜数時間程度加熱することにより行うことが好ましい。
【0040】
また、本発明のアルカリ可溶性樹脂は、上記式(1−1)中のR〜R又は式(1−2)中のR〜Rのうち、少なくとも1つが水酸基であることが好ましい。このような場合、合成時の反応が制御しやすい上に、生成物のアルカリ可溶性が高く、特に所望の特性を有する樹脂が得られる。
このような樹脂を得るためには、上述の反応式(3)又は(4)において、原料となるフェノール性水酸基を1つのベンゼン環上に1以上有する芳香族化合物として、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)等フェノール性水酸基を1つのベンゼン環上に2以上有する芳香族化合物を用いればよい。なかでも、合成時の反応性の高さやアルカリ可溶性の点から、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)が特に好ましい。
【0041】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は、高いアルカリ可溶性を有し、熱処理工程において水分等の低分子成分を発生することなく、高温焼成が不要で、高い耐熱性を有する硬化物を生成することができる。従って、レジスト組成物のアルカリ可溶性樹脂として極めて好適に用いることができる。本発明のアルカリ可溶性樹脂を用いてなるポジ型レジスト組成物、ネガ型レジスト組成物もまた、本発明の1つである。
【0042】
本発明のポジ型レジスト組成物は、本発明のアルカリ可溶性樹脂と、光酸発生剤とを含有する。
上記光酸発生剤としては特に限定されず、従来公知のポジ型感光性樹脂組成物に用いられる光酸発生剤を用いることができる。
上記光酸発生剤としては、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシ−2’−メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,6−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,4’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,5−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,5’,6−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシベンゾフェノン類が挙げられる。
【0043】
上記光酸発生剤としては、例えば、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−{1−[4−〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール,3,3’−ジメチル−{1−[4−〔2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール等のビス[(ポリ)ヒドロキシフェニル]アルカン類が挙げられる。
【0044】
上記光酸発生剤としては、例えば、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン等のトリス(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体が挙げられる。
【0045】
上記光酸発生剤としては、例えば、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン等のビス(シクロヘキシルヒドロキシフェニル)(ヒドロキシフェニル)メタン類若しくはそのメチル置換体等と、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸若しくはナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸、オルトアントラキノンジアジドスルホン酸等のキノンジアジド基含有スルホン酸との完全エステル化合物、部分エステル化合物、アミド化物、又は、部分アミド化物等が挙げられる。
【0046】
上記光酸発生剤の配合量としては特に限定されないが、本発明のアルカリ可溶性樹脂に対して、好ましい下限は5重量%、好ましい上限は60重量%である。上記光酸発生剤の配合量が5重量%未満であると、感度不足により露光部と非露光部とのアルカリに対する溶解度差が得られないことがあり、60重量%を超えると、誘電率や機械特性等の塗膜物性が低下することがある。上記光酸発生剤の配合量のより好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は50重量%である。
【0047】
本発明のネガ型レジスト組成物は、本発明のアルカリ可溶性樹脂と、重合性不飽和化合物と、光ラジカル開始剤とを含有する。
上記重合性不飽和化合物としては特に限定されないが、例えば、多官能(メタ)アクリレート化合物が好適である。また、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物も好適に用いることができる。
【0048】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物のうち2官能のものとしては、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
上記重合性不飽和化合物の配合量としては特に限定されないが、本発明のアルカリ可溶性樹脂に対して、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は200重量%である。上記重合性不飽和化合物の配合量が10重量%未満であると、光硬化性が不充分となり、レジストパターンが形成できない場合があり、200重量%を超えると、耐熱性や絶縁性、機械特性等の塗膜物性が低下することがある。
【0051】
上記光反応開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンジル、チオキサントン及びこれらの誘導体等の従来公知の光反応開始剤が挙げられる。
具体的には、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ミヒラーケトン、(4−(メチルフェニルチオ)フェニル)フェイルメタノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1(4−メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらの光反応開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
上記光反応開始剤の配合量としては特に限定されないが、上記重合性不飽和化合物に対して、好ましい下限は0.5重量%、好ましい上限は20重量%である。上記光反応開始剤の配合量が0.5重量%未満であると、光硬化性が不充分となり、レジストパターンが形成できない場合があり、20%を超えると、解像度が低下したり誘電率や機械特性等の塗膜物性が低下したりすることがある。
【0053】
本発明のポジ型レジスト組成物、ネガ型レジスト組成物は、粘度等を調整する目的で、溶剤を含有することが好ましい。
上記溶剤としては特に限定されず、例えば、芳香族炭化水素化合物、飽和又は不飽和炭化水素化合物、エーテル類、ケトン類、エステル類等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素化合物は特に限定されず、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、トリメチルベンゼン、ジエチルベンゼン等が挙げられる。
上記飽和又は不飽和炭化水素化合物は特に限定されず、例えば、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキセン、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタンジペンテン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、イソノナン、n−デカン、イソデカン、テトラヒドロナフタレン、スクワラン等が挙げられる。
上記エーテル類は特に限定されず、例えば、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等が挙げられる。
上記ケトン類は特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン等が挙げられる。
上記エステル類は特に限定されず、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルセロソルブ、酢酸エチルセロソルブ、酢酸ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソアミル、ステアリン酸ブチル等が挙げられる。
これらの溶剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
上記溶剤の配合量としては特に限定されないが、本発明のポジ型レジスト組成物、ネガ型レジスト組成物の固形分濃度が10〜60重量%、より好ましくは15〜50重量%となるように配合することが、塗工性や塗膜均一性等の点から好ましい。
【0055】
本発明のポジ型レジスト組成物、ネガ型レジスト組成物は、更に、本発明の目的を阻害しない範囲で、界面活性剤、密着性向上剤、溶解促進剤、無機フィラー等の従来公知の添加剤を含有してもよい。また、必要に応じて、エポキシ樹脂やオキセタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、マレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等の従来公知の樹脂成分を含有してもよい。また、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂及びそれらの前駆体を含有してもよい。また、ベンゾオキサジン環を有する化合物(フェノール性水酸基を有さない)を、現像性を損なわない程度に含有してもよい。
【0056】
本発明のポジ型レジスト組成物、ネガ型レジスト組成物を製造する方法としては特に限定されず、本発明のアルカリ可溶性樹脂と、光酸発生剤等の必須成分、及び、必要に応じて添加する添加剤を、従来公知の各種混合機を用いて混合する方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、レジスト組成物に好適な高いアルカリ可溶性を有し、熱処理工程において水分等の低分子成分を殆ど発生することなく、高温焼成が不要で、解像性や耐熱性に優れた硬化物を生成することができるアルカリ可溶性樹脂を提供することができる。また、該アルカリ可溶性樹脂を用いたポジ型レジスト組成物及びネガ型レジスト組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0059】
〈アルカリ可溶性樹脂の合成〉
(合成例1)
500mL容のビーカーに、ビスフェノールA45.6g(0.2mol)、パラホルムアルデヒド26.4g(0.88mol)、アニリン37.2g(0.4mol)を投入し、常温で30分間攪拌してスラリー状にした後、ホットプレート上で170℃に加熱し、10分間反応させた。反応液をフッ素樹脂製のシート上に流延し、室温まで冷却して得た固形物を乳鉢ですり潰して、1分子中に2個のベンゾオキサジン環を有する化合物を得た。
【0060】
還流管を備えた500mL容のフラスコに、得られた1分子中に2個のベンゾオキサジン環を有する化合物46.2g(0.10mol)、ピロガロール12.6g(0.10mol)、乳酸エチル137.2gを投入し、120℃で30分間反応させて、本発明のアルカリ可溶性樹脂の溶液(固形分30重量%)を得た。
【0061】
(合成例2)
500mL容のビーカーに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン40g(0.2mol)、パラホルムアルデヒド26.4g(0.88mol)、アニリン37.2g(0.4mol)を投入し、常温で30分間攪拌してスラリー状にした後、ホットプレート上で170℃に加熱し、10分間反応させた。反応液をフッ素樹脂製のシート上に流延し、室温まで冷却して得た固形物を乳鉢ですり潰して、1分子中に2個のベンゾオキサジン環を有する化合物を得た。
【0062】
還流管を備えた500mL容のフラスコに、得られた1分子中に2個のベンゾオキサジン環を有する化合物43.4g(0.10mol)、ピロガロール12.6g(0.10mol)、乳酸エチル130.7gを投入し、120℃で30分間反応させて、本発明のアルカリ可溶性樹脂の溶液(固形分30重量%)を得た。
【0063】
(合成例3)
還流管とディーンスターク管を備えた500mL容のフラスコに、フェノール37.6g(0.4mol)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン39.6g(0.2mol)、パラホルムアルデヒド26.4g(0.88mol)、トルエン103.6gを投入し、反応中に生じる水を除去しながら、120℃で3時間反応させた。反応後の溶液を多量のメタノールに投じ、沈殿物を回収、減圧乾燥し、1分子中に2個のベンゾオキサジン環を有する化合物を得た。
【0064】
還流管を備えた500mL容のフラスコに、得られた1分子中に2個のベンゾオキサジン環を有する化合物43.4g(0.10mol)、ピロガロール12.6g(0.10mol)、乳酸エチル130.7gを投入し、120℃で30分間反応させて、本発明のアルカリ可溶性樹脂の溶液(固形分30重量%)を得た。
【0065】
(合成例4)
還流管とディーンスターク管を備えた500mL容のフラスコに、p−クレゾール43.2g(0.4mol)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン39.6g(0.2mol)、パラホルムアルデヒド26.4g(0.88mol)、トルエン109.2gを投入し、反応中に生じる水を除去しながら、120℃で3時間反応させた。反応後の溶液を多量のメタノールに投じ、沈殿物を回収、減圧乾燥し、1分子中に2個のベンゾオキサジン環を有する化合物を得た。
【0066】
還流管を備えた500mL容のフラスコに、得られた1分子中に2個のベンゾオキサジン環を有する化合物46.2g(0.10mol)、ピロガロール12.6g(0.10mol)、乳酸エチル137.2gを投入し、120℃で30分間反応させて、本発明のアルカリ可溶性樹脂の溶液(固形分30重量%)を得た。
【0067】
(合成例5)
ピロガロールの代わりに、カテコール11.0g(0.10mol)を用い、乳酸エチルを133.4g用いた以外は合成例1と同様にして合成を行い、本発明のアルカリ可溶性樹脂の溶液(固形分30重量%)を得た。
【0068】
合成例1〜5で得られた樹脂について、カラムとしてShodex LF−804(昭和電工社製)、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いGPC測定を行い、重量平均分子量(ポリスチレン換算)を調べた。
また、得られた樹脂を2.38%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液に加え、溶解性試験を行った。結果を表1に示す。
【0069】
〈ポジ型レジスト組成物の作製及び評価〉
(実施例1〜5)
合成例1〜5で得られた固形分30重量%の樹脂溶液20.0g、光酸発生剤として2,3,4,4’−テトラメチルベンゾフェノンに平均して3個の5−ナフトキノンジアジドスルホニル基を結合させたもの(4NT−300、東洋合成社製)1.5g、フッ素系界面活性剤(PF−3320、OMNOVA SOLUTIONS社製)0.015g、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル16.1gを混合し、固形分20重量%のポジ型レジスト組成物を得た。
【0070】
得られたポジ型レジスト組成物を、スピンコーターを用いてシリコンウエハ上に厚さ3μmとなるように塗布した後、ホットプレート上で100℃に加熱し、2分間乾燥させて塗膜を得た。
得られた塗膜に対して、4〜20μmのドットパターン及びラインアンドスペースパターンを有するマスクを介して400mJ/cmの紫外線照射を行った。紫外線照射後、2.38%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液を用いて30秒間現像し、水で洗浄してパターン形成を行った。
【0071】
得られたパターンを光学顕微鏡で観察し、解像度の評価を行った。
また、得られたパターンを、更に220℃、60分間加熱処理した後、シリコンウェハ上から削り取り、熱重量測定装置(TG/DTA320、セイコーインスツルメンツ社製)により耐熱性評価を行った。100℃まで昇温して吸着水分を除去した後、この重量を100%とし、10℃/分の昇温速度で500℃まで加熱して5%重量減少温度を測定した。
結果を表2に示す。
【0072】
〈ネガ型レジスト組成物の作製及び評価〉
(実施例6〜10)
合成例1〜5で得られた固形分30重量%の樹脂溶液20.0g、重合性不飽和化合物としてペンタエリスリトールトリアクリレート6.0g、光重合開始剤として2−メチル−1(4−メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ社製)1.0g、フッ素系界面活性剤(PF−3320、OMNOVA SOLUTIONS社製)0.015g、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル38.1gを混合し、固形分20重量%のネガ型レジスト組成物を得た。
【0073】
得られたネガ型レジスト組成物を、スピンコーターを用いてシリコンウエハ上に厚さ3μmとなるように塗布した後、ホットプレート上で100℃に加熱し、2分間乾燥させて塗膜を得た。
得られた塗膜に対して、4〜20μmのドットパターン及びラインアンドスペースパターンを有するマスクを介して400mJ/cmの紫外線照射を行った。紫外線照射後、2.38%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液を用いて30秒間現像し、水で洗浄してパターン形成を行った。
【0074】
得られたパターンを光学顕微鏡で観察し、解像度の評価を行った。
また、得られたパターンを、更に220℃、60分間加熱処理した後、シリコンウェハ上から削り取り、熱重量測定装置(TG/DTA320、セイコーインスツルメンツ社製)により耐熱性評価を行った。100℃まで昇温して吸着水分を除去した後、この重量を100%とし、10℃/分の昇温速度で500℃まで加熱して5%重量減少温度を測定した。
結果を表3に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、レジスト組成物に好適な高いアルカリ可溶性を有し、熱処理工程において水分等の低分子成分を発生することなく、解像性や耐熱性に優れた高い耐熱性を有する硬化物を生成することができるアルカリ可溶性樹脂を提供することができる。また、該アルカリ可溶性樹脂を用いたポジ型レジスト組成物及びネガ型レジスト組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1−1)又は(1−2)で表される繰り返し単位からなることを特徴とするアルカリ可溶性樹脂。
【化1】

式(1−1)中、Arは下記一般式(2−1)、(2−2)又は(2−3)で表される4価の芳香族基を表し、Rは脂肪族基、脂環式基、又は、芳香族基を表し、R〜Rは、同一でも異なってもよく、水酸基、水素原子、脂肪族基、脂環式基、又は、芳香族基を表す。
式(1−2)中、Xは2価の有機基を表す。R〜Rは、同一でも異なってもよく、水素原子、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、又は、ハロゲン基を示す。R〜Rは、同一でも異なってもよく、水酸基、水素原子、脂肪族基、脂環式基、又は、芳香族基を示す。
【化2】

式(2−1)、(2−2)、(2−3)中、**印は酸素原子への結合部位を表し、他はメチレン基への結合部位を表す。また、各芳香環の水素は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、又は、置換若しくは無置換フェニル基で置換されていてもよい。式(2−1)において、Xは、直接結合手(原子又は原子団が存在しない)、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、及び、下記群Aからなる群より選択される少なくとも1つであるヘテロ元素若しくは官能基を含んでいてもよい脂肪族、脂環式、又は、芳香族の炭化水素基を表す。
【化3】

群Aに含まれる各式中、*印は式(2−1)における芳香環への結合部位を表す。
【請求項2】
重量平均分子量が1000〜2万であることを特徴とする請求項1記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項3】
式(1−1)中のR〜R又は式(1−2)中のR〜Rのうち、少なくとも1つが水酸基であることを特徴とする請求項1又は2記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載のアルカリ可溶性樹脂と、光酸発生剤とを含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【請求項5】
請求項1、2又は3記載のアルカリ可溶性樹脂と、重合性不飽和化合物と、光ラジカル開始剤とを含有することを特徴とするネガ型レジスト組成物。

【公開番号】特開2010−77380(P2010−77380A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22993(P2009−22993)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】