説明

アルカリ蓄電池

【課題】電解液の漏れを防止することができるアルカリ蓄電池を提供する。
【解決手段】正極24及び負極26がこれらの間にセパレータ28を介在させて渦巻き状に巻回されてなる電極群22と、正極24に接続された正極集電板38とを備え、これら電極群22及び正極集電体38を上端が開口した有底円筒状の外装缶10に電解液とともに収容し、外装缶10の開口を正極集電体38に接続された封口体14で封口してなるアルカリ蓄電池2において、セパレータ28の封口体14側の上端縁を電極群22の負極26によって形成される上端54から電極群22の軸線方向に埋没させることで正極24及び負極26の間に形成された渦巻き状の間隙58と、間隙58の全体に亘って渦巻き状に配置された帯状の粘着テープ50とを有し、粘着テープ50は、電気絶縁性及び電解液に対する不透過性を有し、セパレータ28に対し電極群22の軸線方向に並んで配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル水素二次電池等のアルカリ蓄電池は、携帯電話、電動工具、電気自動車等の電源として広く使用されている。
【0003】
ここで、特に、電動工具や電気自動車等に用いられる電池においては、その更なる高容量化、高出力化と併せて高率放電特性の向上が望まれている。このような高率放電特性に優れた電池としては、例えば、特許文献1の電池が知られている。
【0004】
特許文献1に代表される高率放電特性に優れた電池においては、電極群の正極と正極端子とが正極集電体を介して電気的に接続されている。詳しくは、正極及び負極がセパレータを介して渦巻き状に巻回されてなる電極群において、前記正極の上端縁部が、前記電極群の上端から渦巻き状に突出させられており、この突出した上端縁部の全体が前記正極集電体と接合されている。これにより、正極が正極集電体と広い範囲で接続するので、電池の内部抵抗は小さくなり、高率放電特性が向上する。
【0005】
ここで、上記した電池においては、セパレータの上端部を電極群の負極上端から比較的長めに突出させ、正極の上端縁部に沿うように配置している。これにより、電極群から突出した正極の上端縁部はセパレータでカバーされるので、内部短絡を起こすことが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−21435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記した電池においては、電池容量以上の充電(以下、過充電という)をした場合、正極から酸素ガスが発生する。一方、電池容量以上の放電(以下、逆充電という)をした場合、正極から水素ガスが発生する。これらのガスは、セパレータの中を通り電極群の上部に抜けていくが、この際、セパレータ中の電解液を上部に押し上げていく。これにより、セパレータを介した電解液の這い上がり現象が起こる。ここで、上述したようにセパレータの上端部は、電極群の上端側に突出しているので、セパレータ中を這い上がった電解液は、セパレータの上端部から流れ出し電極群の上部に溜まる。このように、電極群の上部に電解液が溜まった状態で、電池内圧が高まり安全弁が開くと、前記ガスとともにその電解液が電池の外へ漏れてしまう。このように液漏れが発生すると、漏れ出した電解液が電池周辺の他の部品を腐蝕させたり、電池内の電解液の減少に伴い電池の容量低下を招くといった不具合を生じる。
【0008】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、電解液の漏れを防止することができるアルカリ蓄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明によれば、正極及び負極がこれらの間にセパレータを介在させて渦巻き状に巻回されてなる電極群と、前記正極に電気的に接続された正極集電体とを備え、これら電極群及び正極集電体を上端が開口した有底円筒状の外装缶にアルカリ性の電解液とともに収容し、前記外装缶の開口を前記正極集電体に電気的に接続された封口体で封口してなるアルカリ蓄電池において、前記セパレータの前記封口体側の上端縁を前記電極群の前記負極によって形成される上端から前記電極群の軸線方向に埋没させることで前記正極及び前記負極の間に形成された渦巻き状の間隙と、前記間隙の全体に亘って渦巻き状に配置された帯状のプラグ部材とを有し、前記プラグ部材は、電気絶縁性及び前記電解液に対する不透過性を有し、前記セパレータに対し前記軸線方向に並んで配置されていることを特徴とするアルカリ蓄電池が提供される(請求項1)。
【0010】
また、前記正極は、前記電極群の上端から前記封口体側へ突出し、且つ、前記正極集電体と接続される上端縁部を含み、前記プラグ部材は、その上部が前記正極の上端縁部に沿って前記電極群の上端から突出している構成とすることが好ましい(請求項2)。
【0011】
好ましくは、前記プラグ部材は、絶縁樹脂製の粘着テープであり、前記粘着テープは、前記正極の前記間隙に臨む面及び前記上端縁部の側面に亘って接着されている構成とする(請求項3)。
【0012】
また、前記粘着テープは、前記セパレータの厚さと同じ厚さを有し、前記粘着テープと前記セパレータとは互いに突き合わされている構成とすることが好ましい(請求項4)。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るアルカリ蓄電池においては、セパレータの封口体側の上端縁を電極群の上端から前記電極群の軸線方向に埋没した位置に位置付けることにより、正極及び負極の間に形成された渦巻き状の間隙と、前記間隙の全体に亘って嵌め込まれた帯状のプラグ部材とを含み、前記プラグ部材は、電気絶縁性及び前記電解液に対する不透過性を有していることから、過充電や逆充電によりセパレータ中を這い上がってきた電解液は、このプラグ部材により這い上がり経路が遮断される。これにより、電解液が電極群の上部に漏れ出て溜まることを阻止することができる。その結果、電解液が電池外へ漏れ出ることを有効に防止することができる。
【0014】
また、プラグ部材の上部が正極の上端縁部に沿って電極群の上端から突出しているので、正極の上端縁部をカバーすることができ、内部短絡防止に寄与する。
【0015】
また、プラグ部材に絶縁樹脂製の粘着テープを使用することにより、簡単にセパレータの封口体側にプラグ部材を設けることができ、液漏れが少ない電池の製造効率の向上に寄与する。
【0016】
更に、前記粘着テープは、前記セパレータの厚さと同じ厚さを有し、前記粘着テープと前記セパレータとは互いに突き合わされている構成とすることにより、セパレータの上端縁にて電解液の這い上がりを阻止することができる。また、粘着テープ及びセパレータの前記負極に対する接触面が互いに面一状態となり、粘着テープの部分が局部的に厚くなることを抑制できる。これにより、電極群を巻回する際に巻きずれが発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る円筒形のニッケル水素二次電池を部分的に破断して示した正面図である。
【図2】図1のニッケル水素二次電池に組み込まれている正極を展開した状態を模式的に示した斜視図である。
【図3】図1のニッケル水素二次電池における正極と正極集電板との接続領域を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るアルカリ蓄電池を、図面を参照して説明する。
本発明が適用される一実施形態のアルカリ蓄電池として、例えば、図1に示すAAサイズの円筒型ニッケル水素二次電池(以下、電池という)2に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0019】
図1に示すように、電池2は、上端が開口した有底円筒形状をなす外装缶10を備えている。外装缶10は導電性を有し、その底壁8は負極端子として機能する。外装缶10の開口内には、導電性を有する円板形状の封口体14及びこの封口体14を囲むリング形状の絶縁パッキン12が配置され、絶縁パッキン12及び封口体14は外装缶10の開口縁をかしめ加工することにより外装缶10の開口縁に固定されている。即ち、封口体14及び絶縁パッキン12は互いに協働して外装缶10の開口を封口している。
【0020】
ここで、詳しくは、封口体14は中央にガス抜き孔16を有し、そして、封口体14の外面上にはガス抜き孔16を塞ぐゴム製の弁体18が配置されている。更に、封口体14の外面上には、弁体18を覆うようにしてフランジ付き円筒形状の正極端子20が固定され、正極端子20は弁体18を封口体14に向けて押圧している。従って、通常時、ガス抜き孔16は弁体18によって気密に閉じられている。一方、外装缶10内にガスが発生し、その内圧が高まれば、弁体18は内圧によって圧縮され、ガス抜き孔16を開き、この結果、外装缶10内からガス抜き孔16及び正極端子20を介してガスが放出される。つまり、ガス抜き孔16、弁体18及び正極端子20は電池のための安全弁を形成している。
【0021】
外装缶10には、電極群22が収容されている。この電極群22は、それぞれ帯状の正極24、負極26及びセパレータ28からなり、これらは正極24と負極26の間にセパレータ28が挟み込まれた状態で渦巻状に巻回されている。即ち、セパレータ28を介して正極24及び負極26が互いに重ね合わされている。
【0022】
そして、外装缶10内には、所定量のアルカリ電解液(図示せず)が注液され、セパレータ28に含まれたアルカリ電解液を介して正極24と負極26との間で充放電反応が進行する。
【0023】
また、外装缶10内には、その底壁8と電極群22との間に、円形状をなす金属製の負極集電板30が配置され、この負極集電板30を介して負極26は外装缶10と電気的に接続されている。より詳しくは、負極26は、例えばパンチングメタルからなる負極基板32を有し、負極基板32の両面には水素吸蔵合金を含む負極活物質層34が保持されている。また、負極基板32は、負極活物質層34から負極集電板30に向かって突出しており、この突出した部分が負極集電板30に溶接されている。
【0024】
更に、外装缶10内には、電極群22と蓋板14との間にも円形状をなす金属製の正極集電板38が配置されている。この正極集電板38には、帯状のリード部40が一体に形成され、リード部40の先端は蓋板14に溶接されており、蓋板14、正極集電板38及びリード部40を介して、正極24は正極端子20と電気的に接続されている。
【0025】
より詳しくは、正極24は非焼結式電極であって、図2に展開して示したように、帯状をなす導電性の正極基板42を有する。正極基板42は金属多孔体からなり、3次元網目構造の骨格により形成される無数の空孔を含む。正極基板42の空孔内には、電極群22の軸線方向でみて封口体14側に位置付けられる上端縁部43を除き、正極活物質としての水酸化ニッケル粒子が充填されている。
【0026】
正極基板42の上端縁部43は、薄肉領域44と、この薄肉領域44に接合された金属薄板48とを含む。
薄肉領域44は、詳しくは、図2に示すように、その一方の面(図2中において上側の面)側が厚み方向にプレス加工され、押し潰されており、正極活物質が充填された部位(本体部46)よりも薄くなっている。そして、この押し潰された部分には帯状の金属薄板48が溶接されている。金属薄板48は、図2から明らかなように、封口体14側の方向への長さが、薄肉領域44の封口体14側の方向への長さよりも長く、薄肉領域44から突出している。また、金属薄板48は、薄肉領域44と本体部46との段差に合致しており、本体部46と略面一をなしている。この金属薄板48は、正極タブとして機能する。
【0027】
正極24の封口体14側の端縁付近の両面には粘着テープ50,50が接着されている。詳しくは、これら粘着テープ50,50は、正極24の長手方向(巻回方向)の全域に亘って延びており、一方の面では、薄肉領域44と本体部46との段差部分を跨いで金属薄板48及び本体部46を部分的に覆う位置に接着され、他方の面では、一方の面と対向する位置に接着されている。
【0028】
粘着テープ50,50は、金属の突起など鋭利なものを容易に突き通すことがない機械的強度を有しており、更に、電気絶縁性及び電解液に対する不透過性を有している。この粘着テープ50,50としては、例えば、ポリプロピレン及びポリエチレン製の粘着テープ、あるいは、熱溶着テープが用いられる。なお、ポリプロピレン及びポリエチレン等のポリオレフィン樹脂製の粘着テープは、耐アルカリ性に優れており、アルカリ電池に好適する。粘着テープ50,50の厚さは、セパレータ28と略同じ厚さとする。具体的には、粘着テープ50,50は、例えば50〜200μmの厚さを有する。
【0029】
上記のように粘着テープ50が接着された正極24は、セパレータ28を介して負極26とともに渦巻き状に巻回され、電極群22が形成される。このとき、セパレータ28は、粘着テープ50と重ならないように配置され巻回が行われる。詳しくは、セパレータ28は、正極24の本体部46において、粘着テープ50,50よりも外装缶の底壁側に対応する位置に位置付けられ、セパレータ28と粘着テープ50は互いの端縁を突き合わせて配設される。これにより、セパレータ28及び粘着テープ50の負極26に対する接触面が略面一をなすので、粘着テープ50の部分が局部的に厚くなるということはなく、巻回時に巻きずれは起こらない。
【0030】
次いで、図3は、上述の正極24と正極集電板38との接続領域を拡大して模式的に示している。電極群22において、正極24は、金属薄板48が電池2の内側になるよう巻回されている。そして、正極24を挟むように粘着テープ50が径方向内側及び径方向外側にそれぞれ位置付けられている。また、電極群22の軸線方向でみて、正極24の薄肉領域44、金属薄板48及び粘着テープ50は、電極群22の上端、つまり、負極26の上端54から突出しており、この金属薄板48からなる正極タブが正極集電板38に溶接されている。
【0031】
ここで、図3から明らかなように、電極群22の軸線方向でみて、セパレータ28の上端縁56は、電極群22内に埋没しており、これにより形成された正極24と負極26との間の間隙58内に、粘着テープ50が存在している。この粘着テープ50は、電解液に対する不透過性を備えているので、過充電又は逆充電が起きて電解液の這い上がり現象が起きても、電解液は粘着テープ50の部分で堰き止められ、電極群22の上部に電解液が漏れ出ることは抑制される。その結果、電極群22の上部に電解液が溜まることは有効に防止されるので、仮に安全弁が開いても電池2の外へ電解液が漏れることは防止される。また、この粘着テープ50は、機械的強度も高いので、正極基板42の骨格の一部が突出した部分、あるいは、薄肉領域44と本体部46との境界のエッジ部分に当接しても破れることはなく、内部短絡の発生防止にも寄与している。
【0032】
本発明は上記した一実施形態に限定されることはなく、種々変形が可能であって、例えば、電池の種類は、ニッケル水素二次電池に限定されず、ニッケル−カドミウム二次電池、リチウムイオン二次電池等であってもよい。
【実施例】
【0033】
1.電池の製作
(実施例)
(1)正極の製作
連続気泡のポリウレタンフォームであるスポンジ状の有機多孔体に導電処理をした後、電解槽のめっき液に浸漬してニッケルめっきを行った。次いで、ニッケルめっきが施された有機多孔体を750℃の温度で所定時間焙焼して有機多孔体の樹脂成分を除去し、さらに、還元雰囲気で焼結してニッケルからなる金属多孔体を得た。得られた金属多孔体は、目付が約600g/m、多孔度が95%、厚みが約2.0mmであった。
【0034】
一方、2.5質量%の亜鉛と、1質量%のコバルトを共沈成分として含有する水酸化ニッケル粉末90質量部に対して、コバルト粉末10質量部、酸化亜鉛粉末3質量部を添加して全体を混合し、その混合物にヒドロキシプロピルセルロース水溶液(固形分0.2重量%)50質量部を添加して全体を混練し、ペースト状の正極活物質スラリーを得た。
【0035】
得られた正極活物質スラリーを、金属多孔体に充填した。充填量は、圧延後の活物質密度が約2.91g/cmとなるように調整した。活物質スラリーを乾燥させた後、厚みが約0.7mmとなるように金属多孔体にロール圧延を行った。そして、圧延された金属多孔体を短冊状に切断し、得られた短冊の一側縁部の活物質を超音波剥離等により除去した。この後、前記側縁部を一方の面側から再びロール圧延して厚みが0.5mmの薄肉領域に形成した。この薄肉領域は、正極活物質が充填されている本体部の一面から0.2mmの段差を有している。
【0036】
この後、この薄肉領域の一方の面に、電気抵抗溶接により厚み0.2mm、幅3mmのニッケルリボンを薄肉領域の長手方向の全域にわたって接続した。これにより、ニッケルリボンは、本体部と面一の状態で接続される。
【0037】
次いで、薄肉領域及び本体部の一部を含む範囲の両面に粘着テープを接着して正極を形成した。ここで、この粘着テープとしては、機械的強度が高く、電気絶縁性及び電解液に対する不透過性を備えているポリプロピレン製粘着テープを用いた。この粘着テープは、厚さが70μm、幅が3mmである。そして、この粘着テープは、正極の一面側においては、ニッケルリボン及び本体部の境界を跨ぎ、これらニッケルリボン及び本体部を部分的に覆う位置に位置付けられ、正極の長手方向の全域に亘って接着されている。また、正極の他面側においては、一面側の粘着テープと対向する位置に粘着テープを接着した。
【0038】
(2)電池の組立て
上述のように製作した正極と、水素吸蔵合金を含む負極とをポリプロピレン製不織布からなるセパレータを介して巻回して渦巻き状の電極群を得た。ここで、セパレータの厚さは、粘着テープの厚さと同じ70μmとした。そして、このセパレータを粘着テープと重ならないように配置して巻回作業を行った。これにより、粘着テープとセパレータとは、電極群内において、互いの端縁を突き合わせた状態で配設された状態となった。つまり、セパレータの上端縁が電極群の上端から前記電極群の軸線方向に埋没した位置に位置付けられ、これにより、正極及び負極の間に渦巻き状の間隙が形成され、この間隙の全体に亘って粘着テープが嵌め込まれた状態となっている。そして、粘着テープの上部は、正極の薄肉領域及び正極タブに沿って、電極群の上端から突出している。
【0039】
次いで、得られた電極群の両端に正極集電板及び負極集電板を溶接した後、電極群を外装缶内に挿入し、負極集電板を外装缶の底壁にスポット溶接するとともに正極集電板のリード部を封口体に溶接した。この後、外装缶内に、水酸化リチウム及び水酸化ナトリウムを含有した7.5Nの水酸化カリウム水溶液からなる電解液を注入した。そして、外装缶の開口内に絶縁パッキンを介して封口体を配置した状態にて開口縁をかしめ加工し、公称容量1200mAhの円筒型ニッケル水素二次電池を組み立てた。このニッケル水素二次電池を電池Aと称す。なお、この電池Aを1000個組み立てた。
【0040】
(比較例)
セパレータを粘着テープとオーバーラップするように配置して巻回作業を行い、セパレータの上端縁を電極群の上部から突出させたこと以外は実施例の電池Aと同様なニッケル水素二次電池(電池B)を組み立てた。
【0041】
2.ニッケル水素二次電池の液漏れの発生率
電池A、電池Bに対し、3Cの充電電流で60分間の過充電を行った。
【0042】
過充電を行った後、各電池の封口体付近を目視観察するとともに、リトマス試験紙で封口体付近を拭いた。そして、目視で液漏れが確認できた場合又はリトマス試験紙が赤色から青色に変化した場合には液漏れと判定し、液漏れした電池の個数を数えた。この液漏れした電池の個数を液漏れ個数とする。そして、(I)式で示される液漏れ発生率を求めた。
液漏れ発生率(%)=(液漏れ個数/組み立てた電池の総数)×100・・・(I)
得られた結果を表1に示した。
【0043】
【表1】

【0044】
5.評価結果
表1から次のことが明らかである。
電池A(実施例)と電池B(比較例)とを比較すると、電池Aは、電池Bに比べ電解液の液漏れ発生率が低いことがわかる。電池Aの電極群は、粘着テープがセパレータの上部に位置付けられており、電極群の上面からセパレータの上端縁が突出していないので、過充電により電解液がセパレータ中を這い上がっても、粘着テープの部分で電解液は堰き止められる。このため、電解液が電極群の上部に漏れ出ることはないので、電解液が電極群の上部に溜まることは有効に防止されている。よって、安全弁が作動しても電解液が電池外に漏れることはなく、液漏れ発生率が電池Bより低くなっていると考えられる。
【0045】
これに対し、電池Bの電極群は、セパレータが粘着テープにオーバーラップし、セパレータの上端縁が電極群の上部から突出しているので、過充電により電解液の這い上がり現象が起こると、セパレータ中を這い上がってきた電解液はセパレータの上端部から流出し、電極群の上部に溜まる。このため、電池内圧が上昇し、安全弁が開いた場合、電池外へ放出されるガスと一緒に電極群の上部に溜まった電解液が放出されたために液漏れ発生率が電池Aよりも高くなっていると考えられる。
【0046】
以上の結果から、セパレータの上端縁を電極群内に埋没させた位置に位置付け、その上に電気絶縁性及び電解液に対する不透過性を有する粘着テープを配設することは、電池外への電解液の漏出を防止させる上で有効であることがわかる。
【符号の説明】
【0047】
2 ニッケル水素二次電池
10 外装缶
12 絶縁パッキン
14 封口体
20 正極端子
24 正極
26 負極
28 セパレータ
42 正極基板
43 上端縁部
44 薄肉領域
48 金属薄板
50 粘着テープ
56 上端縁
58 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極がこれらの間にセパレータを介在させて渦巻き状に巻回されてなる電極群と、前記正極に電気的に接続された正極集電体とを備え、これら電極群及び正極集電体を上端が開口した有底円筒状の外装缶にアルカリ性の電解液とともに収容し、前記外装缶の開口を前記正極集電体に電気的に接続された封口体で封口してなるアルカリ蓄電池において、
前記セパレータの前記封口体側の上端縁を前記電極群の前記負極によって形成される上端から前記電極群の軸線方向に埋没させることで前記正極及び前記負極の間に形成された渦巻き状の間隙と、
前記間隙の全体に亘って渦巻き状に配置された帯状のプラグ部材と
を有し、
前記プラグ部材は、
電気絶縁性及び前記電解液に対する不透過性を有し、前記セパレータに対し前記軸線方向に並んで配置されている
ことを特徴とするアルカリ蓄電池。
【請求項2】
前記正極は、
前記電極群の上端から前記封口体側へ突出し、且つ、前記正極集電体と接続される上端縁部を含み、
前記プラグ部材は、
その上部が前記正極の上端縁部に沿って前記電極群の上端から突出している
ことを特徴とする請求項1に記載のアルカリ蓄電池。
【請求項3】
前記プラグ部材は、
絶縁樹脂製の粘着テープであり、
前記粘着テープは、
前記正極の前記間隙に臨む面及び前記上端縁部の側面に亘って接着されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアルカリ蓄電池。
【請求項4】
前記粘着テープは、
前記セパレータの厚さと同じ厚さを有し、
前記粘着テープと前記セパレータとは互いに突き合わされていることを特徴とする請求項3に記載のアルカリ蓄電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−12349(P2013−12349A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143303(P2011−143303)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(510206213)FDKトワイセル株式会社 (36)
【Fターム(参考)】