説明

アルミニウム−炭化珪素質複合体

【課題】パワーモジュール用ベース板として好適なアルミニウム−炭化珪素質複合体を提供する。
【解決手段】アルミニウム粉末を主成分とする金属粉末20〜40体積%と、平均粒径が10〜350μmの炭化珪素を90体積%以上含有するセラミックス粉末60〜80体積%との混合粉末4を金型1,2,3に充填して成形し、金属粉末の中で最も低い融点より100K低い温度〜金属粉末の中で最も低い融点未満の温度T(K)に加熱し、30MPa以上の圧力(P)で、セラミックス粉末体積%(Vf)とし、92≦16.23+(−0.54)×Vf+5.60×ln(P)+0.10×T+ln(t)を満たす時間t(秒)加圧成形し、一主面の形状を凸形状に形成すると共に、相対密度92%以上に緻密化させて、25〜150℃までの熱膨張係数、及び200mmあたりの加熱冷却処理時の反り変化量が所定の値を満足する、板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュール用ベース板として好適なアルミニウム−炭化珪素質複合体及びそれを用いた放熱部品に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、半導体素子の高集積化、小型化に伴い、発熱量は増加の一途をたどっており、いかに効率よく放熱させるかが課題となっている。そして、高絶縁性・高熱伝導性を有する例えば窒化アルミニウム基板、窒化珪素基板等のセラミックス基板の表面に、銅製又はアルミニウム製の金属回路を、また裏面に銅製又はアルミニウム製の金属放熱板が形成されてなる回路基板が、パワーモジュール用回路基板として使用されている。
【0003】
従来の回路基板の典型的な放熱構造は、回路基板の裏面(放熱面)の金属板、例えば銅板を介してベース板が半田付けされてなるものであり、ベース板としては銅が一般的であった。しかしながら、この構造においては、半導体装置に熱負荷がかかった場合、ベース板と回路基板の熱膨張係数差に起因するクラックが半田層に発生し、その結果放熱が不十分となって半導体素子を誤作動させたり、破損させたりするという課題があった。
【0004】
そこで、熱膨張係数を回路基板のそれに近づけたベース板として、アルミニウム−炭化珪素質複合体が提案されている。このベース板用のアルミニウム−炭化珪素質複合体の製法としては、炭化珪素の多孔体にアルミニウム合金の溶湯を加圧含浸する溶湯鍛造法(特許文献1)、炭化珪素の多孔体にアルミニウム合金の溶湯を非加圧で浸透させる非加圧含浸法(特許文献2)が実用化されている。一方、コスト面からは、アルミニウム粉末と炭化珪素粉末を混合して、加熱成形する粉末冶金法が有利であり、同製法によるアルミニウム−炭化珪素質複合体の検討も行われている(特許文献3,4)。しかし、粉末冶金法によるアルミニウム−炭化珪素質複合体は、溶湯鍛造法のものに比べ、熱伝導率等が低いという課題がある。
【0005】
ベース板は、放熱フィンと接合して用いることが多く、その接合部分の形状や反りもまた重要な特性として挙げられる。例えば、ベース板を放熱フィンに接合する場合、一般に高熱伝導性の放熱グリースを塗布してベース板の周縁部に設けられた穴を利用して放熱フィンや放熱ユニット等にねじ固定するが、ベース板に微少な凹凸が多く存在すると、ベース板と放熱フィンとの間に隙間が生じ、高熱伝導性の放熱グリースを塗布しても、熱伝達性が著しく低下し、その結果セラミックス回路基板、ベース板、放熱フィン等で構成されるモジュール全体の放熱性が著しく低下してしまうという課題があった。
【0006】
そこで、ベース板表面を機械加工により切削することで反りを付ける方法があるが、アルミニウム−炭化珪素質複合体は非常に硬いため、ダイヤモンド等の工具を用い多くの研削が必要となり、コストが高くなるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3468358号
【特許文献2】特表平5−507030号公報。
【特許文献3】特開平9−157773号公報
【特許文献4】特開平10−335538号公報
【特許文献5】特許3792180号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、パワーモジュール用ベース板として好適なアルミニウム−炭化珪素質複合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、アルミニウム−炭化珪素質複合体において、炭化珪素粉末の粒度、含有量を適正化し、アルミニウムの融点以下の温度域にて温度、圧力、時間の加熱成形条件を適正化することで、熱伝導率を向上できるとの知見を得て本発明を完成した。更に、加熱成形時に易加工材料の複合化及び、金型形状の調整により、板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体の穴形成、反り形状、及び反り安定性を付与できるとの知見を得て本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明はアルミニウム粉末、アルミニウム合金粉末又は、アルミニウムとアルミニウム以外の金属の混合粉末を含む金属粉末20体積%〜40体積%と、平均粒径が10μm〜350μmの炭化珪素を90体積%以上含有するセラミックス粉末60体積%〜80体積%との混合粉末を金属粉末の中で最も低い融点より100K低い温度〜金属粉末の中で最も低い融点未満の温度で加圧成形してなり、25℃〜150℃までの熱膨張係数が実測値/計算値=1.1〜1.3の範囲を満たし、且つ、−40℃〜125℃の温度範囲での加熱冷却処理30回後の放熱面の長軸上の反り変化量が200mmあたり50μm以下の板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体である。
【0011】
また、本発明は、アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末に、マグネシウム粉末又は、アルミニウムとマグネシウムの合金粉末を添加することによりマグネシウムを0.5質量%〜5.0質量%含む混合粉末20体積%〜40体積%と、平均粒径が10μm〜350μmの炭化珪素を90体積%以上含有するセラミックス粉末60体積%〜80体積%との混合粉末を金属粉末の中で最も低い融点より100K低い温度〜金属粉末の中で最も低い融点未満の温度で加圧成形してなり、25℃〜150℃までの熱膨張係数が実測値/計算値=1.1〜1.3の範囲を満たし、且つ、−40℃〜125℃の温度範囲での加熱冷却処理30回後の放熱面の長軸上の反り変化量が200mmあたり50μm以下の板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体である。
【0012】
更に、本発明は以下の工程を経由して製造される、板厚2〜6mmの板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体である。
(1)アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末又はアルミニウムと他の金属の混合粉を含む金属粉末20体積%〜40体積%と、平均粒径が10μm〜350μmの炭化珪素を90体積%以上含有するセラミックス粉末60体積%〜80体積%との混合粉を作製する工程
(2)混合粉を金型に充填して10MPa以上の面圧で加圧成形し成形体を作製する工程
(3)成形体をアルミニウム又はアルミニウム合金又は他の金属の金属粉末の中で最も低い融点より100K低い温度〜金属粉末の中で最も低い融点未満の温度T(K)に加熱する工程
(4)温度T(K)に加熱した、セラミックス粉をVf(体積%)含む成形体を、一主面に200mmあたり0〜500μmの形状の凹型を用いて30MPa以上の圧力P(MPa)、で、92≦16.23+(−0.54)×Vf+5.60×ln(P)+0.10×T+ln(t)を満たす時間t(秒)で加圧成形し、アルミニウム−炭化珪素質複合体の一主面の形状を200mmあたり0〜500μmの凸形状を形成すると共に、相対密度92%以上に緻密化させる工程
(5)得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体に、穴及びタップ穴又は皿穴を形成する工程
【0013】
また、本発明は、以下の工程を経由して製造される、表面に50μm〜300μmの金属層を有し、板厚2〜6mmの板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体である。以下の工程を経由して製造されることを特徴とする、表面に50μm〜300μmの金属層を有し、板厚2〜6mmの板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
(1)前段落(2)記載の混合粉を金型に充填する際に、成形体の片面又は両面に金属層が形成されるように、混合粉と金属箔を10MPa以上の面圧で加圧成形し片面又は両面に50μm〜300μmの金属層を有する成形体を作製する工程
(2)成形体をアルミニウム又はアルミニウム合金又は他の金属の金属粉末の中で最も低い融点より100K低い温度〜金属粉末の中で最も低い融点未満の温度T(K)に加熱する工程
(3)温度T(K)に加熱した、セラミックス粉をVf(体積%)含む成形体を、一主面に200mmあたり0〜500μmの形状の凹型を用いて30MPa以上の圧力P(MPa)、で、92≦16.23+(−0.54)×Vf+5.60×ln(P)+0.10×T+ln(t)を満たす時間t(秒)で加圧成形し、アルミニウム−炭化珪素質複合体の一主面の形状を200mmあたり0〜500μmの凸形状を形成すると共に、相対密度92%以上に緻密化させる工程
(4)得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体に、穴及びタップ穴又は皿穴を形成する工程
【0014】
加えて、本発明は以下の工程を経由して製造される、表面に50μm〜300μmの金属層を有し、穴部表面が金属層で覆われている板厚2〜6mmのアルミニウム−炭化珪素質複合体である。
以下の工程を経由して製造されることを特徴とする、表面に50μm〜300μmの金属層を有し、穴部表面が金属層で覆われているアルミニウム−炭化珪素質複合体。
(1)前段落記載の混合粉を金型に充填する際に、成形体の片面又は両面に金属層が形成されるように、混合粉と金属箔を10MPa以上の面圧で加圧成形し片面又は両面に50μm〜300μmの金属層を有する成形体を作製する工程
(2)表面に金属層を有する成形体に、穴を成形時、又は成形後に機械加工により形成し、成形体の穴に穴の直径の90%以上の径の金属材を配置する工程
(3)成形体をアルミニウム又はアルミニウム合金又は他の金属の金属粉末の中で最も低い融点より100K低い温度〜金属粉末の中で最も低い融点未満の温度T(K)に加熱する工程
(4)温度T(K)に加熱したセラミックス粉をVf(体積%)含む成形体を、一主面に200mmあたり0〜500μmの形状の凹型を用いて30MPa以上の圧力P(MPa)、で、92≦16.23+(−0.54)×Vf+5.60×ln(P)+0.10×T+ln(t)を満たす時間t(秒)で加圧成形し、アルミニウム−炭化珪素質複合体の一主面の形状を200mmあたり0〜500μmの凸形状を形成すると共に、相対密度92%以上に緻密化させる工程
(5)得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体の金属材部分に金属材の直径の0.3倍〜0.95倍の形状の穴又はタップ穴又は皿穴を機械加工により形成する工程
【0015】
本発明は、以下の工程を経由して製造される、表面に50μm〜300μmの金属層を有し、表裏に貫通する穴部を有する板厚2〜6mmのアルミニウム−炭化珪素質複合体である。
(1)前段落記載の表面に金属層を有する成形体に、穴を成形時、又は成形後に機械加工により形成する工程
(2)成形体をアルミニウム又はアルミニウム合金又は他の金属の金属粉末の中で最も低い融点より100K低い温度〜金属粉末の中で最も低い融点未満の温度T(K)に加熱する工程
(3)温度T(K)に加熱したセラミックス粉をVf(体積%)含む成形体を、一主面に200mmあたり0〜500μmの形状の凹型を用いて30MPa以上の圧力P(MPa)、で、92≦16.23+(−0.54)×Vf+5.60×ln(P)+0.10×T+ln(t)を満たす時間t(秒)で加圧成形し、アルミニウム−炭化珪素質複合体の一主面の形状を200mmあたり0〜500μmの凸形状及び穴を形成すると共に、相対密度92%以上に緻密化させる工程
【0016】
本発明は、以下の工程を経由して製造される、表面に金属層を有し、タップ穴又は皿穴表面が金属層で覆われ、他の表裏に貫通する穴を有する板厚2〜6mmのアルミニウム−炭化珪素質複合体である。
以下の工程を経由して製造されることを特徴とする、表面に金属層を有し、タップ穴又は皿穴表面が金属層で覆われ、他の表裏に貫通する穴を有するアルミニウム−炭化珪素質複合体。
(1)前段落記載の成形体及び金属材をアルミニウム又はアルミニウム合金又は他の金属の金属粉末の中で最も低い融点より100K低い温度〜金属粉末の中で最も低い融点未満の温度T(K)に加熱する工程
(2)温度T(K)に加熱したセラミックス粉をVf(体積%)含む成形体を、一主面に200mmあたり0〜500μmの形状の凹型を用いて30MPa以上の圧力P(MPa)、で、92≦16.23+(−0.54)×Vf+5.60×ln(P)+0.10×T+ln(t)を満たす時間t(秒)で加圧成形し、アルミニウム−炭化珪素質複合体の一主面の形状を200mmあたり0〜500μmの凸形状を形成すると共に、相対密度92%以上に緻密化させる工程
(3)得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体の金属部分にタップ穴又は皿穴を機械加工により形成し、更に、アルミニウム−炭化珪素質複合体に表裏に貫通する穴を形成する工程
【0017】
本発明は、アルミニウム−炭化珪素質複合体に複合化する金属箔、及び金属材がアルミニウム又はアルミニウム合金であるアルミニウム−炭化珪素質複合体である。
【0018】
本発明は、アルミニウム−炭化珪素質複合体に用いる金属箔の代わりに、Vfが2体積%〜10体積%のセラミックス繊維を用いて、0.01〜0.2mmのアルミニウムとセラミックス繊維の複合体をアルミニウム−炭化珪素質複合体の片面又は両面に形成するアルミニウム−炭化珪素質複合体である。
【0019】
本発明は、アルミニウム−炭化珪素質複合体をNaOH溶液に浸漬した場合、平均粒径が10μm〜350μmの炭化珪素粒子が得られ、独立した炭化珪素粒子から成るアルミニウム−炭化珪素質複合体である。
【0020】
本発明は、アルミニウム−炭化珪素質複合体の外周形状をウォータージェット加工、又はレーザー加工、又は研削加工により加工するアルミニウム−炭化珪素質複合体である。
【0021】
本発明は25℃の熱伝導率が150W/(m・K)以上、25℃〜150℃の熱膨張係数が5×10−6/K〜12×10−6/K、3点曲げ強度が100MPa以上、相対密度が92%以上であるアルミニウム−炭化珪素質複合体である。
【0022】
本発明は、一定曲率に撓む様に10kPa以上の応力を掛けた状態で、温度400〜550℃で30秒以上加熱処理することによりクリープ変形させて、放熱面側に凸型の反り形状を付与するアルミニウム−炭化珪素質複合体の製造方法である。
【0023】
本発明は、アルミニウム−炭化珪素質複合体の表面に、めっき処理を行い、一主面がセラミックス回路基板に半田付け又はロウ付け接合され、他の一主面が放熱面として用いられるパワーモジュール用ベース板である。
【発明の効果】
【0024】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体は、低熱膨張、並びに高熱伝導という特性を有する。本発明は、アルミニウム粉末等の金属粉末と炭化珪素粉末を金属の融点未満の温度で加熱成形して得られるアルミニウム−炭化珪素質複合体において、炭化珪素粉末の粒度及び含有量を適性化することで得られる複合体の熱伝導率等の特性を著しく向上し、また、高信頼性が要求される半導体素子を搭載するパワーモジュールのベース板として、加熱冷却処理による反り挙動が安定なアルミニウム−炭化珪素質複合体を安価に供給するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】アルミニウム−炭化珪素質複合体の作製方法を示す説明図(実施例1,複合化前の積層状態)
【図2】アルミニウム−炭化珪素質複合体の構造を示す説明図(実施例1,アルミニウム−炭化珪素質複合体の断面構造)
【図3】アルミニウム−炭化珪素質複合体の構造を示す説明図(実施例2,アルミニウム−炭化珪素質複合体の断面構造)
【図4】アルミニウム−炭化珪素質複合体の作製方法を示す説明図(実施例3,複合化前の積層状態)
【図5】アルミニウム−炭化珪素質複合体の構造を示す説明図(実施例3,アルミニウム−炭化珪素質複合体の断面構造)
【図6】アルミニウム−炭化珪素質複合体の構造を示す説明図(実施例4,アルミニウム−炭化珪素質複合体の断面構造)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体は、主成分がアルミニウムであるアルミニウム合金からなる第一の成分と、主成分が炭化珪素からなる第二の成分からなる。本発明のような異種の材料を複合化した複合体では、異種の材料の界面が強固に結びつくことでお互いに熱のやり取りが可能となる。このため、界面の密着性が悪い場合は、複合体の熱伝導率はマトリックス材(本発明ではアルミニウム合金)に支配され、強化材(本発明では炭化珪素)自体の熱伝導率が如何に高くても、複合体全体の熱伝導特性はマトリックス材以下となる。本発明の基本的な考え方は、複合体において如何に金属成分と強化材を強固に密着させるかであり、その手法として、金属成分を融点以下の温度で加圧成形する圧力と時間を適正化することで、アルミニウムのクリープ変形を利用した緻密化により両者の界面を強固なものとし、目的とする特性を達成するものである。
【0027】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体の特に重要な特性は、熱伝導率と熱膨張係数である。このため、用いる強化材としては、素材自体の熱伝導率が高く且つ熱膨張係数が小さいことが必要であり、炭化珪素が好適である。更に、炭化珪素とアルミニウムでは、その熱伝達機構が異なる。このため、両素材の界面での熱伝達ロスが複合体の熱伝導率を大きく左右し、この界面の面積を少なくすること(粒子径の大きい炭化珪素粉末を用いること)が、得られる複合体の熱伝導率の向上に効果的である。
【0028】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体に用いる強化材としては、炭化珪素を90体積%以上含有するセラミックス粉末を60体積〜80体積%含有することが好ましい。炭化珪素含有量が90体積%未満であると、アルミニウム−炭化珪素質複合体の低熱膨張性、及び高熱伝導特性を維持することが困難になる。セラミックス粉末としては、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、ダイヤモンド及び黒鉛から選ばれた少なくとも1種であり、強度、熱伝導、加工性等の必要に応じて炭化珪素に添加してもよい。
【0029】
炭化珪素粉末の平均粒子径は10〜350μmが好ましく、炭化珪素粉末の粒度に関しては、アルミニウム−炭化珪素質複合体の熱伝導率及び緻密化の点から、平均粒子径が10μm以上である。一方、平均粒子径が350μmを超えると、アルミニウム−炭化珪素質複合体の表面粗さが低下すると共に、強度特性が低下するため好ましくない。炭化珪素粉末の含有量が60体積%未満では、アルミニウム−炭化珪素質複合体の熱伝導率が低下し、熱膨張係数が大きくなり好ましくない。一方、炭化珪素粉末の含有量が80体積%を超えると、アルミニウム−炭化珪素質複合体の緻密化が不足し、強度、熱伝導率が低下して好ましくない。また、炭化珪素粉末の含有量を上げ、且つ、緻密化を達成するためには、平均粒子径の異なる炭化珪素粉末を粒度配合することが好適である。この場合、炭化珪素粉末の平均粒子径は、個々の炭化珪素粉末の平均粒子径と含有量より算出する。このため、粒度配合を行う場合には、平均粒子径が10μm未満及び/又は350μmを超える粉末も、使用することができる。更に、球形状に近い炭化珪素粉末を使用することは、含有量を上げるために効果的である。
【0030】
本発明に用いる金属粉末は、アルミニウム粉末、アルミニウム合金粉末又は、アルミニウムとアルミニウム以外の金属の混合粉である。アルミニウム合金及びアルミニウムとアルミニウム以外の金属の混合粉の組成はアルミニウム77〜100質量%、珪素0〜20質量%及びマグネシウム0〜3質量%が好ましい。この金属粉末としては、(1)金属粉末を混合して用いる、(2)金属粉末と合金粉末を混合して用いる(例えば、アルミニウム粉末、珪素粉末及びアルミニウム−マグネシウム合金粉末を用いる)、(3)3成分を所定量含有する合金粉末を用いることが可能である。珪素成分が20質量%を超えると、得られる合金の熱伝導率が低下し、その結果、得られる熱伝導率が低下して好ましくない。一方、珪素成分が20質量%を超えると、得られる合金の熱伝導率が低下し、得られるアルミニウム−炭化珪素質複合体の熱伝導率が低下し好ましくない。マグネシウム成分は、得られる合金と炭化珪素の密着性を向上させる効果があり、5質量%を超えると、複合化時に炭化アルミニウム(Al)を生成し易くなり、熱伝導率、強度の面で好ましくない。
【0031】
これらの金属粉末の含有量は、得られるアルミニウム−炭化珪素質複合体に対して、20〜40体積%である。ここで、金属粉末の含有量(体積%)は、金属粉末の平均密度を2.7g/cmとして含有量(体積%)を規定している。20体積%未満では、加熱プレス成形時の金属粉末量が不足し、アルミニウム−炭化珪素質複合体の緻密化が不足するため好ましくない。一方、40体積%を超えると、緻密なアルミニウム−炭化珪素質複合体を得ることはできるが、アルミニウム−炭化珪素質複合体の熱膨張係数が大きくなり過ぎて好ましくない。これらの金属粉末の粒度に関しては、平均粒子径が10〜100μm程度が好適である。平均粒子径が10μm未満では、金属粒子表面の酸化により緻密化が阻害され好ましくない。また、平均粒子径が100μmを超えると、クリープ変形による金属粒子の緻密化が進みにくくなることがあり好ましくない。
【0032】
本発明の原料粉末の混合方法に関しては、個々の原料が均一に混合される方法であれば特に制約はない。ボールミル混合、ミキサーによる混合等が可能である。混合時間に関しては、原料粉末の酸化及び粉砕が進まない程度の時間が好ましく、混合方法及び充填量にもよるが、15分〜5時間程度が一般的である。混合時間が短いと、アルミニウム-炭化珪素質複合体の緻密化不足が発生したり、複合体組織の不均一が発生したりするため好ましくない。一方、混合時間が長すぎると原料粉末の酸化及び粉砕による微粉化が起こり、その結果、アルミニウム−炭化珪素質複合体の熱伝導率が低下する場合があり好ましくない。また、加熱プレス成形時の加熱段階で除去可能なものであれば、必要に応じて保形用バインダー等の使用が可能である。
【0033】
本発明の加熱プレス成形で用いる金型は、強度の点から、鋳鉄、ステンレス等の鉄製の材料が適しており、高価ではあるが窒化珪素等のセラミックスも用いることができる。更に、黒鉛製の金型も用いることができる。金型は、加熱プレス成形で得られる複合体との離型性の面より、表面に離型剤を塗布して用いる。この離型剤としては、黒鉛、アルミナ、窒化硼素等の離型剤が適している。また、金型にアルミナ等の薄膜を形成した後、離型剤を塗布することにより、優れた離型性を得ることが出来ると共に、金型の寿命を延ばすことができる。また、必要に応じて金型と製品の間に、黒鉛シート等の離型板を用いることもできる。
【0034】
本発明では、金属粉末と炭化珪素粉末の混合粉末を金型内に充填し、金属粉末の融点以下の温度で加熱成形することにより、緻密化した板厚2〜6mmの板状アルミニウム−炭化珪素質複合体とする。この場合、得られる板状アルミニウム−炭化珪素質複合体の板厚は、金型に充填する混合粉末量により調整する。板厚2mm未満では、パワーモジュール用のベース板として用いる場合、面方向の熱伝達が不足し、パワーモジュール全体の放熱特性が低下し好ましくない。一方、板厚が6mmを超えると、板厚の増加によりベース板自体の熱抵抗が大きくなり、その結果、半導体素子の温度が上がり過ぎてしまい好ましくない。更に好ましい板状アルミニウム−炭化珪素質複合体の板厚は、3〜5mmである。
【0035】
本発明では、混合粉末を金型に充填し、加圧成形し成形体を作製する。加圧成形の成形圧力は10MPa以上である。加圧成形時の圧力が10MPa未満では、緻密化が不足するため成形体のハンドリングが困難になり、欠け易くなるため好ましくない。また、プレス圧の上限については、特性面からの制約はないが、金型の強度、装置の力量より、300MPa以下が適当である。
【0036】
本発明では、成形体を離型処理を施した金型に充填し、使用する金属粉末の中で最も低い融点未満の温度T(K)に加熱する。加熱温度は使用する金属粉末の中で最も低い融点より100K低い温度から金属粉末の中で最も低い融点未満の範囲の温度が好ましい。該融点より100K低い温度に満たない場合、金属粉末が変形しにくくなり、アルミニウム−炭化珪素質複合体の緻密化が不足するため好ましくない。一方、加熱温度が、該融点を超えると、成形時にアルミニウムが漏出し、熱伝導率や強度などの特性バラツキが生じやすくなるため好ましくない。
【0037】
本発明では、加熱成形条件とアルミニウム−炭化珪素質複合体の密度の関係に影響を及ぼす主条件として、圧力、温度、時間及びセラミックス充填量がある。成形圧力の対数(ln(P))と密度は比例関係、成形温度(T)と密度は比例関係、成形時間の対数(ln(t))と密度は比例関係、また、セラミックス充填量を示すVfが増加すると密度は減少する関係がある。
【0038】
本発明では、これらの関係式の重回帰分析を行い、以下の式を満たすことで相対密度≧92%以上の緻密体が得られることを導き出した。温度T(K)に加熱したセラミックス粉をVf(体積%)含む成形体を30MPa以上の圧力P(MPa)で、関係式92≦12.23+(−0.54)×Vf+5.60×ln(P)+0.10×T+ln(t)を満たすように時間t(秒)で加圧成形する。
【0039】
アルミニウム−炭化珪素質複合体は融点以下の温度で加圧成形した後、室温まで冷却する。なお、複合化時の歪み除去の目的で、アルミニウム−炭化珪素質複合体のアニール処理を行うこともある。
【0040】
複合化時の歪み除去の目的で行うアニール処理は、400℃〜550℃の温度で10分以上行うことが好ましい。アニール温度が400℃未満であると、複合体内部の歪みが十分に開放されずに機械加工後の熱処理で形状が変化してしまう場合がある。一方、アニール温度が550℃を越えると、複合体中のアルミニウム合金が溶融する場合がある。アニール時間が10分未満であると、アニール温度が400℃〜550℃であっても複合体内部の歪みが十分に開放されず、機械加工後の熱処理で形状が変化してしまう場合がある。
【0041】
アルミニウム−炭化珪素質複合体の片面又は両面の表面がアルミニウムを主成分とする金属層で覆われていると、アルミニウム−炭化珪素質複合体をめっき処理するのに好適である。
【0042】
表面の金属層の材料としては、アルミニウム−炭化珪素質複合体と密着しやすいアルミニウム、又はアルミニウム合金が好ましく、アルミニウム、又はアルミニウム合金の融点より100K低い温度〜融点未満の温度で加圧成形することで、アルミニウム−炭化珪素質複合体の表面に複合化することができる。
【0043】
また、アルミニウム−炭化珪素質複合体の片面又は両面の表面に形成される金属層の厚みは、50〜300μmであることが好ましい。金属層の厚みが50μm以上であれば、めっき性を確保することができる。一方、金属層の厚みが300μmを超えると、アルミニウム−炭化珪素質複合体の熱膨張係数が増加し好ましくない。
【0044】
更に、この表面層は、積層時に離型処理を施した金型に、厚みが0.1〜1.0mmでVf(セラミックスの含有量)が2〜10体積%のセラミックス繊維を片面又は両面に配置して、金属粉末と炭化珪素粉末の混合粉末を充填し、金属粉末の中で最も低い融点以下の温度で加圧成形することで、調製することができる。上記製造方法により得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体は、両主面に厚み0.01〜0.2mmのアルミニウム−セラミックス繊維複合体からなる表面層が形成される。
【0045】
このアルミニウム−セラミックス繊維複合体層は、めっき性の関係より、アルミニウム合金以外の含有量は、30体積%未満であることが好ましい。このため、金型内に配置するセラミックス繊維として、厚みが0.1〜1.0mmでVfが2〜10体積%とする。セラミックス繊維の厚みが、1.0mmを超えると、加熱プレス成形によって、十分に緻密化したアルミニウム−セラミックス繊維複合体層が得られず好ましくない。セラミックス繊維の厚みの下限については、特性状の制約はないが、ハンドリング性の点より0.1mm以上であることが好ましい。また、セラミックス繊維のVfが、20体積%を超えると、得られるアルミニウム−セラミックス繊維複合体層のアルミニウム合金以外の含有量が30体積%を超え、めっき性が低下し好ましくない。Vfの下限については、特性状の制約はないが、ハンドリング性の点より3体積%以上であることが好ましい。セラミックス繊維としては、特に限定されないが、耐熱性の面より、アルミナ繊維、シリカ繊維、ムライト繊維等のセラミックス繊維が好ましく使用できる。
【0046】
本発明では、加熱プレス成形時に、200mmあたり0〜500μmの凹型の反りを具備してなる金型を用いて、加熱プレス成形することで、一主面に200mmあたり0〜500μmの凸型の反りを付与することができる。この場合、金型表面を機械加工により、反り量が0〜500μmの凹型形状とすることにより、得られる板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体は、理想的な球面形状の放熱面を得ることが可能であり、良好な放熱特性を得ることができる。本発明の板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体を、パワーモジュール用ベース板として用いる場合、その反り量が、長さ200mmあたり0μm未満では、その後のモジュール組み立て工程でベース板と放熱フィンとの間に隙間が生じ、たとえ高熱伝導性の放熱グリースを塗布しても、熱伝達性が著しく低下し、その結果セラミックス回路基板、ベース板、放熱フィン等で構成されるモジュールの放熱性が著しく低下してしまう場合がある。一方、反り量が500μmを超えると、放熱フィンとの接合の際のネジ止め時に、ベース板、又はセラミックス回路基板にクラックが発生してしまう場合があり好ましくない。
【0047】
また、本発明の板状アルミニウム−炭化珪素質複合体の反りを形成する方法として、板状アルミニウム−炭化珪素質複合体を、200mmあたり100〜1000μmの反りとなる曲率に撓む様に10kPa以上の応力を掛けた状態で、温度400〜550℃で30秒以上加熱処理することによりクリープ変形させて、200mmあたり50〜500μmの凸型の反りを付与することもできる。加熱処理時に印加する応力が10kPa未満では、撓み量が不足し、目的とする反り量を得ることができない。また、処理温度が400℃未満又は処理温度が400〜550℃でも処理時間が30秒未満では、十分なクリープ変形を起こすことが出来ず、目的とする反り量を得ることができない。処理温度が550℃を超えると、複合体中の金属成分の移動に伴う密度低下等の問題が発生して好ましくない。
【0048】
一主面に凸型の反りを付与した板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体を加熱冷却処理した場合の長さ200mmあたりの反り変化量は100μm以下であることが好ましく、更に好ましくは50μm以下である。反り変化量が100μmより大きいと、パワーモジュールのベース板の反りが大きく変形しパワーモジュールからヒートシンクへの放熱が不足してしまう場合があり好ましくない。
【0049】
加熱冷却処理については、対象物が所定の温度に保持される条件であれば特に制約はなく、例えば、板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体を−40℃の温度雰囲気に30分保持した後に、125℃の温度雰囲気に30分保持し、1サイクルとすることができる。
【0050】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体はアルミニウムを主体とする金属のクリープ変形による緻密化で複合化されるため、溶湯鍛造法やダイキャスト法などの溶湯アルミニウムとセラミックスとの複合体と比較して、複合体中の残留応力が小さいためベース板の加熱冷却処理時の反り変化量が小さい。
【0051】
次に、本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体の加工方法の例を説明する。アルミニウム−炭化珪素質複合体は非常に硬い難加工性材料であるため、直接アルミニウム−炭化珪素質複合体の穴加工もできるが、穴加工部分に易加工性の金属材、好ましくはアルミニウム又はアルミニウム合金を複合化することで、容易に穴、皿穴、タップ穴を形成することができる。また、皿穴、タップ穴部分などの複雑な加工形状が必要な部分のみを易加工性材料にし、貫通穴をアルミニウム−炭化珪素質複合体に加工することもできる。
【0052】
易加工性材料は、金属材のアルミニウム、又はアルミニウム合金の他、黒鉛、窒化硼素などの加工性材料を選定することもできる。
【0053】
穴加工部分にアルミニウム又はアルミニウム合金を複合化する場合、アルミニウム又はアルミニウム合金部分の径に対して、0.3〜0.95倍の穴加工することが好ましい。穴径が0.95倍より大きいと、金属加工用の工具がアルミニウム−炭化珪素質複合体部分にあたってしまい、寿命が低下してしまう。穴径が0.3倍より小さいと、アルミニウム−炭化珪素質複合体とアルミニウム又はアルミニウム合金部分との熱膨張係数差の違いにより、界面にクラックが入る場合がある。
【0054】
また、アルミニウム−炭化珪素質複合体は非常に硬い難加工性材料であるが、ウォータージェット加工機により、外周部を加工することができる。その結果、得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体は、外周部はアルミニウム−炭化珪素質複合体が露出する構造となる。ここで、上記穴部は、他の放熱部品にネジ止めできるよう、上下面を貫くように設けられていればよい。
【0055】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体はレーザー加工を用いても、外周部の加工を行うことができる。得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体は、外周部にアルミニウム−炭化珪素質複合体が露出する構造となる。なお、本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体は、通常のダイヤモンド工具等を用いた加工も可能ではあるが、非常に硬い難加工性材料であるため、工具の耐久性や加工コストの面から、ウォータージェット加工機又はレーザー加工による加工が好ましい。更に、本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体は、必要に応じて主面を研磨又は研削加工することもできる。
【0056】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体をパワーモジュール用のベース板として用いる場合、特に重要な特性は、熱伝導率と熱膨張係数である。このため、用いる強化材としては、素材自体の熱伝導率が高く且つ熱膨張係数が小さい炭化珪素を選択し、更に、炭化珪素とアルミニウムでは、その熱伝達機構が異なるため、両素材の界面での熱伝達ロスを抑えるべく、この界面の面積を少なくすること(粒子径の大きい炭化珪素粉末を用いること)及びその配合比を適性化することで、熱伝導率を向上させ、熱膨張係数を制御している。本発明では、用いる金属粉末の中で最も低い融点未満の温度で、加熱成形することで、クリープ変形により変形したアルミニウムと強化材である炭化珪素粉末との界面を密着させ、アルミニウム−炭化珪素質複合体の気孔率を制御すると共に熱伝導特性を改善している。
【0057】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体の温度25℃での板厚方向の熱伝導率は、150W/mK以上である。熱伝導率が、150W/mK未満では、パワーモジュール用のベース板等の放熱部品として用いる場合に十分な放熱特性が得られず好ましくない。熱伝導率の上限に関しては、特性面からの制約はないが、炭化珪素自体の特性より300W/mK以下となる。
【0058】
本発明では、アルミニウム−炭化珪素質複合体を、加熱プレス成形して作製するため、得られるアルミニウム−炭化珪素質複合体には、原料粉末の配向により不可避的に特性の異方性が発生する。本発明の複合体は、熱伝導率の高い炭化珪素の配向により、主面方向の熱伝導率が板厚方向の熱伝導率より大きく、板厚方向の熱伝導率が主面方向の熱伝導率の80%以上であることが好ましい。
【0059】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体の温度25℃から150℃の熱膨張係数は、5×10−6〜12×10−6/Kである。パワーモジュール用のベース板等の放熱部品として用いる場合、接合されるセラミックス回路基板との熱膨張係数のマッチングが非常に重要である。熱膨張係数が、5×10−6/K未満又は12×10−6/Kを超えると、半導体素子作動時の熱負荷により、接合層(半田層等)やセラミックスの破壊が起こり、放熱特性が低下する場合があり好ましくない。
【0060】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体の温度25℃から150℃の熱膨張係数は、アルミニウムと炭化珪素間の界面が完全に密着していると仮定して算出された計算値と実際の不完全な密着状態を反映した実測値の比が、実測値/計算値=1.1〜1.3の範囲を満たすことが好ましい。実測値/計算値が1.1未満の場合、アルミニウムと炭化珪素間の界面の密着性がよすぎるためアルミニウム−炭化珪素質複合体中の残留応力が大きく残り易く、加熱冷却処理時の反り変化量が大きくなる場合がある。実測値/計算値が1.3より大きいと、逆にアルミニウムと炭化珪素間の界面の密着性が悪く緻密化が不足してしまうため、相対密度、熱伝導率、及び強度等の特性が低下してしまう場合があり好ましくない。
【0061】
熱膨張係数の計算値の算出方法は、粒子分散複合材料の熱膨張係数の理論式である、以下のTurnerの式を用いて算出した。
【0062】
【数1】




αc:複合体の熱膨張係数、αp:粒子の熱膨張係数、αm:マトリックスの熱膨張係数
Vp:粒子の体積率、Vm:マトリックスの体積率
Kp:粒子の体積弾性係数、Km:マトリックスの体積弾性係数
【0063】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体の気孔率は8体積%未満である。気孔率が、8体積%を超えると熱伝導率等の特性が低下すると共に、パワーモジュール用のベース板等の放熱部品として用いる場合に、使用環境からの水分の透過等によるモジュール自体の耐食性に問題が発生し好ましくない。
【0064】
本発明のアルミニウム−炭化珪素質複合体の3点曲げ強度は100MPa以上が好ましい。アルミニウム−炭化珪素質複合体を、パワーモジュール用のベース板等の放熱部品として用いる場合、3点曲げ強度が100MPa未満では、ネジ止めする際の割れや、使用時の振動等の影響による欠けの問題があり好ましくない。3点曲げ強度の上限に関しては、特性状の制約はないが、3点曲げ強度を極端に向上させるためには、炭化珪素の添加量の増加及び微粉化が必要となり、その結果、得られるアルミニウム−炭化珪素質複合体の熱伝導率が低下する。
【0065】
本発明に係るアルミニウム−炭化珪素質複合体は、パワーモジュール用ベース板として用いる場合、取り付け穴等を加工した後、セラミックス回路基板と半田付けにより接合して用いられるのが一般的である。このため、アルミニウム−炭化珪素質複合体表面には、Niめっきを施すことが必要である。めっき処理方法は特に限定されず、無電解めっき処理、電気めっき処理法のいずれでもよい。Niめっきの厚みは1〜20μmであることが好ましい。めっき厚みが1μm未満では、部分的にめっきピンホールが発生し、半田付け時に半田ボイド(空隙)が発生し、回路基板からの放熱特性が低下する場合がある。一方、Niめっきの厚みが20μmを超えると、Niめっき膜と表面アルミニウム合金との熱膨張差によりめっき剥離が発生する場合がある。Niめっき膜の純度に関しては、半田濡れ性に支障をきたさないものであれば特に制約はなく、リン、硼素等を含有することができる。更に、Niめっき表面に金めっきを施すことも可能である。
【0066】
本発明に係わるアルミニウム−炭化珪素質複合体とセラミックス回路基板との接合は、活性金属ロウ材を介してロウ付けすることもできる。活性金属ロウ材は、ペースト状のものも使用可能であるが、取り扱い上合金箔が好ましい。この場合、活性金属ロウ材は、アルミニウム−炭化珪素質複合体の金属成分としての合金よりも融点の低いものが好ましい。例示すればCu1〜6質量%のAl−Cu合金箔、Cu4質量%とMg0.5%質量を含む2018合金箔、0.5質量%のMnを含む2017合金箔、更にはJIS合金の2001、2003、2005、2007、2011、2014、2024、2025、2030、2034、2036、2048、2090、2117、2124、2218、2224、2324、7050、7075等の合金箔が使用可能である。また、Mg、Zn、In、Mn、Cr、Ti、Bi等の第三成分を、合計で5質量%まで含むものの使用も可能である。
【実施例】
【0067】
[実施例1]
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製/平均粒子径:120μm、密度:3.2g/cm):141.4(32.5体積%)g、炭化珪素粉末B(大平洋ランダム社製/平均粒子径:10μm、密度:2.2g/cm):141.4g(32.5体積%)、アルミニウム粉末(アルコア社製/平均粒子径:25μm):128.0gをボールミルにて1時間混合し、混合粉末を402.7g秤量した。次に、図1に示す鋳鉄製の金型1(外寸:250×200×50mm、内寸:190×140×50mm)及び金型2(下部:250×200×20mm、上部:189.9×139.9×10mm、200mmあたり200μmの反り)に離型剤として黒鉛及び窒化硼素を塗布した後、積層して金型2、3側の面に純アルミニウム箔(100μm)を配置して、前記混合粉末とアルミニウム箔の成形体を作製した。同様に離型剤を塗布した金型3(189.9×139.9×60mm)を積層し、油圧プレスにて面圧:50MPaで予備成形を実施した。
【0068】
次に、この積層体を電気炉にて、大気雰囲気下、温度600℃に加熱して15分間保持して、積層体の温度を600℃とした。加熱した積層体は、厚み5mmの断熱材を介して、油圧プレスにて面圧:100MPaで3分間、加熱成形を行った後、圧力を開放して室温まで冷却した。次に、金型2を外し、油圧プレスにて金型3を押し込み、成形体を取り出した後、離型用に配置した黒鉛シートを剥がして、190×140×5mmtのアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0069】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体は、ウォータージェット加工機(スギノマシン製アブレッシブ・ジェットカッタNC)により、圧力250MPa、加工速度50mm/minの条件で、研磨砥粒として粒度100μmのガーネットを使用して、外周部分を加工して、187mm×137mm×5mmの形状とした。
【0070】
次に、このアルミニウム−炭化珪素質複合体をマシニングセンタにてダイヤモンド工具を用いて、縁周部8箇所にΦ7の穴加工及び縁周部4箇所にΦ8.6の皿穴加工を施した。
【0071】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体の放熱面の形状を接触型二次元輪郭形状測定機(東京精密社製;コンターレコード1600D−22)にて測定し、200mmあたりの反り量を測定した結果、200μmであった。
【0072】
アルミニウム−炭化珪素質複合体を−40℃と125℃の気槽雰囲気に、それぞれ30分間保持し、加熱冷却処理を30回実施した後の放熱面の形状を接触型二次元輪郭形状測定機(東京精密社製;コンターレコード1600D−22)にて測定し、200mmあたりの反り量を測定した結果、190μmであった。
【0073】
次いで、圧力0.3MPa、搬送速度1.0m/minの条件でアルミナ砥粒にてブラスト処理を行い清浄化した後、無電解Ni−P及びNi−Bめっきを行い、複合体表面に8μm厚(Ni−P:6μm+Ni−B:2μm)のめっき層を形成した。得られためっき品は、肉眼で確認されるピンホールはなく良好であった。
【0074】
加熱成形で得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体から、研削加工により板厚方向の熱伝導率測定用試験体(直径11mm厚さ3mm)及び熱膨張係数測定用試験体(3×3×10mm)及びを作製した。それぞれの試験片を用いて、温度25℃〜150℃の熱膨張係数を熱膨張計(セイコー電子工業社製;TMA300)で、25℃での熱伝導率をレーザーフラッシュ法(理学電機社製;LF/TCM−8510B)で測定した。その結果、温度25℃の板厚方向の熱伝導率は160W/mKであり、温度25℃〜150℃の熱膨張係数は、9.9×10−6/Kであった(実測値/計算値=1.3)。
【0075】
アルミニウム−炭化珪素質複合体より、研削加工により3点曲げ強度測定用試験体(3×4×40mm)を作製し、曲げ強度試験機にて3点曲げ強度を測定した結果、200MPaであった。更に、アルミニウム−炭化珪素質複合体の密度をアルキメデス法で測定し、気孔率を算出した結果、気孔率は、4.0体積%であった。温度873Kに加熱したセラミックス粉を65体積%含む成形体を、100MPaで、180秒加熱成形した場合、次式{16.23+(−0.54)×Vf+5.60×ln(P)+0.10×T+ln(t)}の値は99であった。
【0076】
[実施例2]
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製/平均粒子径:120μm、密度:3.2g/cm):141.4g(32.5体積%)、炭化珪素粉末B(大平洋ランダム社製/平均粒子径:10μm、密度:2.2g/cm):141.4g(32.5体積%)、アルミニウム粉末(アルコア社製/平均粒子径:25μm):126.3g、マグネシウム粉末(平均粒子径:50μm):1.3gを、ボールミルにて1時間混合し、混合粉末を402.2g秤量した。次に、50μmのアルミニウム箔を用いたこと以外は実施例1と同様にして、50MPaの予備成形により、混合粉末とアルミニウム箔の成形体を作製し、機械加工にて縁周部8カ所にΦ8.2mm及び縁周部4カ所にΦ10.2mmの貫通穴を成形体に形成した。貫通穴部にΦ8.0mm及びΦ9.0mmの純アルミニウム材を配置し、金型1、金型2及び金型3に積層して、積層体を作製した。
【0077】
次に、この積層体を実施例1と同様の手法で、加熱成形を行うことで190×140×5mmtの表面に50μmのアルミニウムの金属層と、Φ8、Φ10の純アルミニウム材を有するアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0078】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体を研削加工により外周部分を加工して、187mm×137mm×5mmの形状とした。
【0079】
次に、このアルミニウム−炭化珪素質複合体の純アルミニウム部分をマシニングセンタで金属加工用の工具を用いて、縁周部8箇所にΦ7の穴加工及び縁周部4箇所にΦ8.6の皿穴加工を施した。
【0080】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体の放熱面の形状を接触型二次元輪郭形状測定機(東京精密社製;コンターレコード1600D−22)にて測定し、200mmあたりの反り量を測定した結果、190μmであった。
【0081】
アルミニウム−炭化珪素質複合体を−40℃と125℃の気槽雰囲気に、それぞれ30分間保持し、加熱冷却処理を30回実施した後の放熱面の形状を接触型二次元輪郭形状測定機(東京精密社製;コンターレコード1600D−22)にて測定し、200mmあたりの反り量を測定した結果、194μmであった。
【0082】
次いで、圧力0.3MPa、搬送速度1.0m/minの条件でアルミナ砥粒にてブラスト処理を行い清浄化した後、無電解Ni−P及びNi−Bめっきを行い、複合体表面に8μm厚(Ni−P:6μm+Ni−B:2μm)のめっき層を形成した。得られためっき品は、肉眼で確認されるピンホールはなく良好であった。
【0083】
加熱プレス成形で得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体から、研削加工により板厚方向の熱伝導率測定用試験体(直径11mm厚さ3mm)及び熱膨張係数測定用試験体(3×3×10mm)及びを作製した。それぞれの試験片を用いて、温度25℃〜150℃の熱膨張係数を熱膨張計(セイコー電子工業社製;TMA300)で、25℃での熱伝導率をレーザーフラッシュ法(理学電機社製;LF/TCM−8510B)で測定した。その結果、温度25℃の板厚方向の熱伝導率は175W/mKであり、温度25℃〜150℃の熱膨張係数は、9.8×10−6/Kであった(実測値/計算値=1.3)。
【0084】
アルミニウム−炭化珪素質複合体より、研削加工により3点曲げ強度測定用試験体(3×4×40mm)を作製し、曲げ強度試験機にて3点曲げ強度を測定した結果、210MPaであった。更に、アルミニウム−炭化珪素質複合体の密度をアルキメデス法で測定し、気孔率を算出した結果、気孔率は、3.0体積%であった。
【0085】
[実施例3]
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製/平均粒子径:120μm、密度:3.2g/cm):141.4g(32.5体積%)、炭化珪素粉末B(大平洋ランダム社製/平均粒子径:10μm、密度:2.2g/cm):141.4g(32.5体積%)、アルミニウム粉末(アルコア社製/平均粒子径:25μm):125.0g、アルミニウム−マグネシウム合金粉末(Al:Mg=50:50、平均粒子径:40μm):2.6gを、ボールミルにて1時間混合し、混合粉末を402.2g秤量した。次に、200μmのアルミニウム箔を用い、図4の金型を用いたこと以外は実施例1と同様にして、10MPaの予備成形により、縁周部8箇所に貫通穴Φ7.0mmを有する成形体を作製した。金型1、金型2及び金型3に積層して、積層体を作製した。
【0086】
次に、この積層体を実施例1と同様の手法で、加熱成形することで190×140×5mmtの表面に200μmの純アルミニウムの金属層及び、縁周部8カ所に貫通穴Φ7.0mmを有するアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0087】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体をウォータージェット加工機(スギノマシン製アブレッシブ・ジェットカッタNC)により、圧力250MPa、加工速度50mm/minの条件で、研磨砥粒として粒度100μmのガーネットを使用して、外周部分を加工して、187mm×137mm×5mmの形状とした。
【0088】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体の放熱面の形状を接触型二次元輪郭形状測定機(東京精密社製;コンターレコード1600D−22)にて測定し、200mmあたりの反り量を測定した結果、220μmであった。
【0089】
アルミニウム−炭化珪素質複合体を−40℃と125℃の気槽雰囲気に、それぞれ30分間保持し、加熱冷却処理を30回実施した後の放熱面の形状を接触型二次元輪郭形状測定機(東京精密社製;コンターレコード1600D−22)にて測定し、200mmあたりの反り量を測定した結果、185μmであった。
【0090】
次いで、圧力0.3MPa、搬送速度1.0m/minの条件でアルミナ砥粒にてブラスト処理を行い清浄化した後、無電解Ni−P及びNi−Bめっきを行い、複合体表面に8μm厚(Ni−P:6μm+Ni−B:2μm)のめっき層を形成した。得られためっき品は、肉眼で確認されるピンホールはなく良好であった。
【0091】
加熱プレス成形で得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体から、研削加工により板厚方向の熱伝導率測定用試験体(直径11mm厚さ3mm)及び熱膨張係数測定用試験体(3×3×10mm)及びを作製した。それぞれの試験片を用いて、温度25℃〜150℃の熱膨張係数を熱膨張計(セイコー電子工業社製;TMA300)で、25℃での熱伝導率をレーザーフラッシュ法(理学電機社製;LF/TCM−8510B)で測定した。その結果、温度25℃の板厚方向の熱伝導率は185W/mKであり、温度25℃〜150℃の熱膨張係数は、9.7×10−6/Kであった(実測値/計算値=1.3)。
【0092】
アルミニウム−炭化珪素質複合体より、研削加工により3点曲げ強度測定用試験体(3×4×40mm)を作製し、曲げ強度試験機にて3点曲げ強度を測定した結果、230MPaであった。更に、アルミニウム−炭化珪素質複合体の密度をアルキメデス法で測定し、気孔率を算出した結果、気孔率は、2.5体積%であった。
【0093】
[実施例4]
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製/平均粒子径:120μm、密度:3.2g/cm):141.4g(32.5体積%)、炭化珪素粉末B(大平洋ランダム社製/平均粒子径:10μm、密度:2.2g/cm):141.4g(32.5体積%)、アルミニウム粉末(アルコア社製/平均粒子径:25μm):117.8g、珪素粉末(エルケム社製/平均粒子径:10μm)6.3g、マグネシウム粉末(平均粒子径:50μm):1.3gを、ボールミルにて1時間混合し、混合粉末を401.4g秤量した。次に、300μmのアルミニウム箔(A3003材)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、50MPaの予備成形により、混合粉末とアルミニウム箔の成形体を作製し、機械加工により縁周部4カ所にΦ10.2mmの貫通穴を成形体に形成した。貫通穴部にΦ10.0mmのアルミニウム材(A5052材)を配置し、金型1、金型2及び金型3に積層して、積層体を作製した。
【0094】
次に、この積層体を実施例1と同様の手法で、加熱成形を行うことで190×140×5mmtの表面に300μmのアルミニウムの金属層とΦ10mmのアルミニウム材を有するアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0095】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体をウォータージェット加工機(スギノマシン製アブレッシブ・ジェットカッタNC)により、圧力250MPa、加工速度50mm/minの条件で、研磨砥粒として粒度100μmのガーネットを使用して、外周部分を加工して、187mm×137mm×5mmの形状とした。
【0096】
次に、このアルミニウム−炭化珪素質複合体の純アルミニウム部分をマシニングセンタにて、金属加工用の工具を用いて縁周部4箇所のアルミニウム材部分にM4のタップ穴を形成し、ダイヤモンド工具を用いて縁周部8カ所に貫通穴Φ7mmを加工した。
【0097】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体の放熱面の形状を接触型二次元輪郭形状測定機(東京精密社製;コンターレコード1600D−22)にて測定し、200mmあたりの反り量を測定した結果、170μmであった。
【0098】
アルミニウム−炭化珪素質複合体を−40℃と125℃の気槽雰囲気に、それぞれ30分間保持し、加熱冷却処理を30回実施した後の放熱面の形状を接触型二次元輪郭形状測定機(東京精密社製;コンターレコード1600D−22)にて測定し、200mmあたりの反り量を測定した結果、215μmであった。
【0099】
次いで、圧力0.3MPa、搬送速度1.0m/minの条件でアルミナ砥粒にてブラスト処理を行い清浄化した後、無電解Ni−P及びNi−Bめっきを行い、複合体表面に8μm厚(Ni−P:6μm+Ni−B:2μm)のめっき層を形成した。得られためっき品は、肉眼で確認されるピンホールはなく良好であった。
【0100】
加熱プレス成形で得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体から、研削加工により板厚方向の熱伝導率測定用試験体(直径11mm厚さ3mm)及び熱膨張係数測定用試験体(3×3×10mm)及びを作製した。それぞれの試験片を用いて、温度25℃〜150℃の熱膨張係数を熱膨張計(セイコー電子工業社製;TMA300)で、25℃での熱伝導率をレーザーフラッシュ法(理学電機社製;LF/TCM−8510B)で測定した。その結果、温度25℃の板厚方向の熱伝導率は160W/mKであり、温度25℃〜150℃の熱膨張係数は、9.1×10−6/Kであった(実測値/計算値=1.2)。
【0101】
アルミニウム−炭化珪素質複合体より、研削加工により3点曲げ強度測定用試験体(3×4×40mm)を作製し、曲げ強度試験機にて3点曲げ強度を測定した結果、180MPaであった。更に、アルミニウム−炭化珪素質複合体の密度をアルキメデス法で測定し、気孔率を算出した結果、気孔率は、6.5体積%であった。
【0102】
[実施例5]
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製/平均粒子径:120μm、密度:3.2g/cm):141.4g(32.5体積%)、炭化珪素粉末B(大平洋ランダム社製/平均粒子径:10μm、密度:2.2g/cm):141.4g(32.5体積%)、珪素を5重量%含有するアルミニウム−珪素合金粉末(平均粒子径:30μm):125.5g、マグネシウム粉末(平均粒子径:50μm):1.3gを、ボールミルにて1時間混合し、混合粉末を402.7g秤量した。次に、Vfが10体積%で厚み0.2mmtのアルミナ繊維のシートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、50MPaの予備成形により、混合粉末とアルミニウム箔の成形体を作製し、積層体を作製した。
【0103】
次に、予熱を550℃の温度で実施したこと以外は実施例1と同様の手法で、この積層体を加熱成形することで190×140×5mmtの表面に0.02mmのアルミニウムとセラミックス繊維の複合体層を有するアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0104】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体をレーザー加工機(マザック製STX−MK3)により、加工速度250mm/minの条件で外周部分を加工して、187mm×137mm×5mmの形状とした。
【0105】
次に、このアルミニウム−炭化珪素質複合体をマシニングセンタにて、ダイヤモンド工具を用いて縁周部8カ所に貫通穴Φ7mmを加工した。
【0106】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体の放熱面の形状を接触型二次元輪郭形状測定機(東京精密社製;コンターレコード1600D−22)にて測定し、200mmあたりの反り量を測定した結果、200mmあたりの反り量は、200μmであった。
【0107】
アルミニウム−炭化珪素質複合体を−40℃と125℃の気槽雰囲気に、それぞれ30分間保持し、加熱冷却処理を30回実施した後の放熱面の形状を接触型二次元輪郭形状測定機(東京精密社製;コンターレコード1600D−22)にて測定し、200mmあたりの反り量を測定した結果、230μmであった。
【0108】
次いで、圧力0.3MPa、搬送速度1.0m/minの条件でアルミナ砥粒にてブラスト処理を行い清浄化した後、無電解Ni−P及びNi−Bめっきを行い、複合体表面に8μm厚(Ni−P:6μm+Ni−B:2μm)のめっき層を形成した。得られためっき品は、肉眼で確認されるピンホールはなく良好であった。
【0109】
加熱プレス成形で得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体から、研削加工により板厚方向の熱伝導率測定用試験体(直径11mm厚さ3mm)及び熱膨張係数測定用試験体(3×3×10mm)及びを作製した。それぞれの試験片を用いて、温度25℃〜150℃の熱膨張係数を熱膨張計(セイコー電子工業社製;TMA300)で、25℃での熱伝導率をレーザーフラッシュ法(理学電機社製;LF/TCM−8510B)で測定した。その結果、温度25℃の板厚方向の熱伝導率は170W/mKであり、温度25℃〜150℃の熱膨張係数は、8.6×10−6/Kであった(実測値/計算値=1.1)。
【0110】
アルミニウム−炭化珪素質複合体より、研削加工により3点曲げ強度測定用試験体(3×4×40mm)を作製し、曲げ強度試験機にて3点曲げ強度を測定した結果、220MPaであった。更に、アルミニウム−炭化珪素質複合体の密度をアルキメデス法で測定し、気孔率を算出した結果、気孔率は4体積%であった。温度823Kに加熱したセラミックス粉を65体積%含む成形体を、100MPaで、180秒加熱成形した場合、次式{16.23+(−0.54)×Vf+5.60×ln(P)+0.10×T+ln(t)}の値は94であった。
【0111】
実施例1〜5の表面及び、穴部の構造を表1に示す。
【0112】
【表1】



【0113】
[実施例6〜9、比較例1〜5]
アルミニウム粉末(アルコア社製/平均粒子径:25μm)と、炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製/平均粒子径:120μm)、炭化珪素粉末B(屋久島電工社製/平均粒子径:10μm)、炭化珪素粉末C(大平洋ランダム社製/平均粒子径:180μm)、炭化珪素粉末D(大平洋ランダム社製/平均粒子径:250μm)、炭化珪素粉末E(大平洋ランダム社製/平均粒子径:350μm)、炭化珪素粉末F(大平洋ランダム社製/平均粒子径:500μm)、炭化珪素粉末G(大平洋ランダム社製/平均粒子径:50μm)、炭化珪素粉末H(大平洋ランダム社製/平均粒子径:25μm)、炭化珪素粉末I(大平洋ランダム社製/平均粒子径:7μm)、炭化珪素粉末J(大平洋ランダム社製/平均粒子径:3μm)を、表2に示す配合比で、ボールミルにて1時間混合した。ここで、金属粉末の密度2.7g/cmとして計算した。次に、図1に示す鋳鉄製の金型1(外形寸:250×200××50mm、内径寸:190×140×50mm)及び金型2(下部:250×200×20mm、上部:189.9×139.9×10mm、200mmあたり200μmの反り)に離型剤として黒鉛及び窒化硼素を塗布した後、積層して金型2の上面に黒鉛シートを配置して、前記混合粉末を充填した。更に、混合粉末の上部に黒鉛シートを配置し、同様に離型剤を塗布した金型3(139.9×129.9×60mm)を積層し、油圧プレスにて面圧:10MPaで予備成形を実施した。
【0114】
【表2】




【0115】
次に、加熱成形条件を610℃、100MPaで10分加熱成形したこと以外は実施例1と同様の手法にて、190×140×5mmtのアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体は、研削加工により板厚方向の熱伝導率測定用試験体(直径11mm厚さ3mm)及び熱膨張係数測定用試験体(3×3×10mm)を作製した。それぞれの試験片を用いて、温度25℃〜150℃の熱膨張係数を熱膨張計(セイコー電子工業社製;TMA300)で、25℃での熱伝導率をレーザーフラッシュ法(理学電機社製;LF/TCM−8510B)で測定した。また、アルミニウム−炭化珪素質複合体より、研削加工により3点曲げ強度測定用試験体(3×4×40mm)を作製し、曲げ強度試験機にて3点曲げ強度を測定した。更に、アルミニウム−炭化珪素質複合体の密度をアルキメデス法で測定し、気孔率を算出した。加熱成形条件である温度、圧力、時間及び、Vfを次式{16.23+(−0.54)×Vf+5.60×ln(P)+0.10×T+ln(t)}に代入して値を算出した。
その結果を表3に示す。
【0116】
【表3】



【0117】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体は、ウォータージェット加工機(スギノマシン製アブレッシブ・ジェットカッタNC)により、圧力250MPa、加工速度50mm/minの条件で、研磨砥粒として粒度100μmのガーネットを使用して、外周部分を加工して、187mm×137mm×5mmの形状とした。
【0118】
次に、このアルミニウム−炭化珪素質複合体をマシニングセンタにてダイヤモンド工具を用いて、縁周部8箇所にΦ7の穴加工及び縁周部4箇所にΦ8.6の皿穴加工を施した。
【0119】
次いで、圧力0.4MPa、搬送速度1.0m/minの条件でアルミナ砥粒にてブラスト処理を行い清浄化した後、無電解Ni−P及びNi−Bめっきを行い、複合体表面に8μm厚(Ni−P:6μm+Ni−B:2μm)のめっき層を形成した。
実施例6〜9、比較例1〜5のアルミニウム−炭化珪素質複合体のめっきピットは観察されず、薬液のしみだしもなく良好であることが確認された。
【0120】
[実施例10〜14]
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製/平均粒子径:120μm、密度:3.2g/cm):152.2g(35体積%)、炭化珪素粉末B(大平洋ランダム社製/平均粒子径:50μm、密度:2.2g/cm):152.2g(35体積%)、アルミニウム粉末(アルコア社製/平均粒子径:25μm):109.8gを、ボールミルにて1時間混合し、混合粉末を406.1g秤量した。次に、実施例1と同様の手法にて、表面に純アルミニウムの金属層を有する成形体を作製した。
【0121】
[比較例6〜7]
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製/平均粒子径:120μm、密度:3.2g/cm):163.1g(37.5体積%)、炭化珪素粉末B(大平洋ランダム社製/平均粒子径:50μm、密度:2.2g/cm):163.1g(37.5体積%)、アルミニウム粉末(アルコア社製/平均粒子径:25μm):91.5gを、ボールミルにて1時間混合し、混合粉末を409.5g秤量した。次に、実施例1と同様の手法にて、表面に純アルミニウムの金属層を有する成形体を作製した。
【0122】
次に、実施例10〜14及び比較例6〜7の成形体を積層した積層体を電気炉にて、大気雰囲気下、表4に示す温度に加熱して15分間保持して、積層体の温度を表4に示す温度とした。加熱した積層体は、厚み5mmの断熱材を介して、油圧プレスにて表4に示す面圧で、加熱プレス成形を行った後、圧力を開放して室温まで冷却した。次に、金型2を外し、油圧プレスにて金型3を押し込み成形体を取り出した後、離型用に配置した黒鉛シートを剥がして、190×140×5mmtのアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0123】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体を研削加工により外周部分を加工して、187mm×137mm×5mmの形状とした。
【0124】
次に、このアルミニウム−炭化珪素質複合体をマシニングセンタにてダイヤモンド工具を用いて、縁周部8箇所にΦ7の穴加工及び縁周部4箇所にΦ8.6の皿穴加工を施した。
【0125】
【表4】



【0126】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体から、研削加工により板厚方向の熱伝導率測定用試験体(直径11mm厚さ3mm)及び熱膨張係数測定用試験体(3×3×10mm)を作製した。それぞれの試験片を用いて、温度25℃〜150℃の熱膨張係数を熱膨張計(セイコー電子工業社製;TMA300)で、25℃での熱伝導率をレーザーフラッシュ法(理学電機社製;LF/TCM−8510B)で測定した。また、アルミニウム−炭化珪素質複合体より、研削加工により3点曲げ強度測定用試験体(3×4×40mm)を作製し、曲げ強度試験機にて3点曲げ強度を測定した。更に、アルミニウム−炭化珪素質複合体の密度をアルキメデス法で測定し、気孔率を算出した。結果を表5に示す。
【0127】
【表5】



【0128】
[比較例8]
表面の金属層を形成する純アルミニウム箔に20μm(比較例8)の厚みの純アルミニウム箔を用いたこと以外は、実施例1と同様の手法にて、作製した混合粉末を成形し、表面に厚みの異なる純アルミニウムの金属層を有する成形体を作製した。
【0129】
次に、この積層体を実施例1と同様の手法にて加熱プレス成形し、190×140×5mmtのアルミニウム−炭化珪素質複合体を得た。
【0130】
加熱プレス成形で得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体は、ウォータージェット加工機(スギノマシン製アブレッシブ・ジェットカッタNC)により、圧力250MPa、加工速度50mm/minの条件で、研磨砥粒として粒度100μmのガーネットを使用して、外周部分を加工して、187mm×137mm×5mmの形状とした。
【0131】
次に、このアルミニウム−炭化珪素質複合体をマシニングセンタにてダイヤモンド工具を用いて、縁周部8箇所にΦ7の穴加工及び縁周部4箇所にΦ8.6の皿穴加工を施した。
【0132】
次いで、圧力0.4MPa、搬送速度1.0m/minの条件でアルミナ砥粒にてブラスト処理を行い清浄化した後、無電解Ni−P及びNi−Bめっきを行い、複合体表面に8μm厚(Ni−P:6μm+Ni−B:2μm)のめっき層を形成した。比較例8のめっき品は、ピンホールが肉眼で観察され薬液によるシミが多数認められた。
【0133】
[実施例15]
実施例1で得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体を、穴加工、皿穴加工後に、反りを付与するため、カーボン製で200mmあたり240μmの反りを設けた凹凸型を準備した。この凹凸型を熱プレス機に装着し、加熱して型の表面温度を510℃とした。この凹凸型の間に前記複合体を配置し、40kPaでプレスした。この際、当該複合体の側面に熱電対を接触させ測温した。複合体の温度が500℃になった時点から3分間保持後、加圧を解除し、50℃まで自然冷却した。次に、得られた複合体は、反り付け時の残留歪み除去のために、電気炉で350℃の温度で30分間アニール処理を行った。
【0134】
得られたアルミニウム−炭化珪素質複合体の放熱面の形状を接触型二次元輪郭形状測定機(東京精密社製;コンターレコード1600D−22)にて測定し、200mmあたりの反り量を測定した結果、220μmであった。
【0135】
アルミニウム−炭化珪素質複合体を−40℃と125℃の気槽雰囲気に、それぞれ30分間保持し、加熱冷却処理を30回実施した後の放熱面の形状を接触型二次元輪郭形状測定機(東京精密社製;コンターレコード1600D−22)にて測定し、200mmあたりの反り量を測定した結果、200μmであった。

【符号の説明】
【0136】
1 金型1
2 金型2
3 金型3
4 金属粉末と炭化珪素粉末の混合粉末
4’ 金属−炭化珪素質複合体
5 黒鉛シート
6 金型4
7 表面金属層
8 貫通穴(アルミニウム−炭化珪素質複合体部)
9 皿穴(アルミニウム−炭化珪素質複合体部)
10 金属材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム粉末、アルミニウム合金粉末又は、アルミニウムとアルミニウム以外の金属との混合粉末を含む金属粉末20体積%〜40体積%と、平均粒径が10μm〜350μmの炭化珪素を90体積%以上含有するセラミックス粉末60体積%〜80体積%との混合粉末を金属粉末の中で最も低い融点より100K低い温度〜金属粉末の中で最も低い融点未満の温度で加圧成形してなり、25℃〜150℃までの熱膨張係数が実測値/計算値=1.1〜1.3の範囲を満たし、且つ、−40℃〜125℃の温度範囲での加熱冷却処理30回後の放熱面の長軸上の反り変化量が200mmあたり50μm以下であることを特徴とする板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
【請求項2】
アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末に、マグネシウム粉末又は、アルミニウムとマグネシウムの合金粉末を添加することによりマグネシウムを0.5質量%〜5.0質量%含む混合粉末20体積%〜40体積%と、平均粒径が10μm〜350μmの炭化珪素を90体積%以上含有するセラミックス粉末60体積%〜80体積%との混合粉末を金属粉末の中で最も低い融点より100K低い温度〜金属粉末の中で最も低い融点未満の温度で加圧成形してなり、25℃〜150℃までの熱膨張係数が実測値/計算値=1.1〜1.3の範囲を満たし、且つ、−40℃〜125℃の温度範囲での加熱冷却処理30回後の放熱面の長軸上の反り変化量が200mmあたり50μm以下であることを特徴とする板状のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
【請求項3】
以下の工程を経由することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
(1)請求項1又は請求項2に記載の混合粉末を作製する工程。
(2)混合粉末を金型に充填して10MPa以上の面圧で加圧成形し成形体を作製する工程。
(3)成形体をアルミニウム又はアルミニウム合金又は他の金属の金属粉末の中で最も低い融点より100K低い温度〜金属粉末の中で最も低い融点未満の温度T(K)に加熱する工程。
(4)温度T(K)に加熱したセラミックス粉をVf(体積%)含む成形体を、一主面に200mmあたり0〜500μmの形状の凹型を用いて30MPa以上の圧力P(MPa)、で、92≦16.23+(−0.54)×Vf+5.60×ln(P)+0.10×T+ln(t)を満たす時間t(秒)で加圧成形し、アルミニウム−炭化珪素質複合体の一主面の形状を200mmあたり0〜500μmの凸形状に形成すると共に、相対密度92%以上に緻密化させる工程。
(5)得られた厚さ2〜6mmのアルミニウム−炭化珪素質複合体に、穴及びタップ穴又は皿穴を形成する工程。
【請求項4】
以下の工程を経由して、表面に50μm〜300μmの金属層を形成したことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
(1)請求項1又は請求項2に記載の混合粉末を金型に充填する際に、成形体の片面又は両面に金属層が形成されるように、混合粉末と金属箔を10MPa以上の面圧で加圧成形し片面又は両面に50μm〜300μmの金属層を有する成形体を作製する工程。
(2)成形体をアルミニウム又はアルミニウム合金又は他の金属の金属粉末の中で最も低い融点より100K低い温度〜金属粉末の中で最も低い融点未満の温度T(K)に加熱する工程。
(3)温度T(K)に加熱したセラミックス粉をVf(体積%)含む成形体を、一主面に200mmあたり0〜500μmの形状の凹型を用いて30MPa以上の圧力P(MPa)、で、92≦16.23+(−0.54)×Vf+5.60×ln(P)+0.10×T+ln(t)を満たす時間t(秒)で加圧成形し、アルミニウム−炭化珪素質複合体の一主面の形状を200mmあたり0〜500μmの凸形状に形成すると共に、相対密度92%以上に緻密化させる工程。
(4)得られた厚さ2〜6mmのアルミニウム−炭化珪素質複合体に、穴及びタップ穴又は皿穴を形成する工程。
【請求項5】
以下の工程を経由して、表面に50μm〜300μmの金属層及び、穴部表面に金属層を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
(1)請求項1又は請求項2に記載の混合粉末を金型に充填する際に、成形体の片面又は両面に金属層が形成されるように、混合粉と金属箔を10MPa以上の面圧で加圧成形し片面又は両面に50μm〜300μmの金属層を有する成形体を作製する工程。
(2)表面に金属層を有する成形体に、穴を成形時、又は成形後に機械加工により形成し、成形体の穴に穴の直径の90%以上の径の金属材を配置する工程。
(3)成形体をアルミニウム又はアルミニウム合金又は他の金属の金属粉末の中で最も低い融点より100K低い温度〜金属粉末の中で最も低い融点未満の温度T(K)に加熱する工程。
(4)温度T(K)に加熱したセラミックス粉をVf(体積%)含む成形体を、一主面に200mmあたり0〜500μmの形状の凹型を用いて30MPa以上の圧力P(MPa)、で、92≦16.23+(−0.54)×Vf+5.60×ln(P)+0.10×T+ln(t)を満たす時間t(秒)で加圧成形し、アルミニウム−炭化珪素質複合体の一主面の形状を200mmあたり0〜500μmの凸形状に形成すると共に、相対密度92%以上に緻密化させる工程。
(5)得られた厚さ2〜6mmのアルミニウム−炭化珪素質複合体の金属材部分に金属材の直径の0.3倍〜0.95倍の形状の穴又はタップ穴又は皿穴を機械加工により形成する工程。
【請求項6】
以下の工程を経由して、表面に50μm〜300μmの金属層及び、表裏に貫通する穴部を形成することを特徴とする請求項4記載のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
(1)請求項4記載の表面に金属層を有する成形体に、穴を成形時、又は成形後に機械加工により形成する工程。
(2)成形体をアルミニウム又はアルミニウム合金又は他の金属の金属粉末の中で最も低い融点より100K低い温度〜金属粉末の中で最も低い融点未満の温度T(K)に加熱する工程。
(3)温度T(K)に加熱したセラミックス粉をVf(体積%)含む成形体を、一主面に200mmあたり0〜500μmの形状の凹型を用いて30MPa以上の圧力P(MPa)、で、92≦16.23+(−0.54)×Vf+5.60×ln(P)+0.10×T+ln(t)を満たす時間t(秒)で加圧成形し、アルミニウム−炭化珪素質複合体の一主面の形状を200mmあたり0〜500μmの凸形状、厚さ2〜6mm、及び穴を形成すると共に、相対密度92%以上に緻密化させる工程。
【請求項7】
以下の工程を経由して、表面に金属層及び、タップ穴又は皿穴表面が金属層部分に形成さ
れ、表裏に貫通する穴を有する請求項5記載のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
(1)請求項5記載の成形体及び金属材をアルミニウム又はアルミニウム合金又は他の金属の金属粉末の中で最も低い融点より100K低い温度〜金属粉末の中で最も低い融点未満の温度T(K)に加熱する工程。
(2)温度T(K)に加熱したセラミックス粉をVf(体積%)含む成形体を、一主面に200mmあたり0〜500μmの形状の凹型を用いて30MPa以上の圧力P(MPa)、で、92≦16.23+(−0.54)×Vf+5.60×ln(P)+0.10×T+ln(t)を満たす時間t(秒)で加圧成形し、アルミニウム−炭化珪素質複合体の一主面の形状を200mmあたり0〜500μmの凸形状に形成すると共に、相対密度92%以上に緻密化させる工程。
(3)得られた厚さ2〜6mmのアルミニウム−炭化珪素質複合体の金属部分にタップ穴又は皿穴を機械加工により形成し、更に、アルミニウム−炭化珪素質複合体に表裏に貫通する穴を形成する工程。
【請求項8】
金属箔がアルミニウム又はアルミニウム合金であることを特徴とする請求項4又は請求項6記載のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
【請求項9】
金属箔及び金属材がアルミニウム又はアルミニウム合金であることを特徴とする請求項5又は請求項7記載のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
【請求項10】
アルミニウム−炭化珪素質複合体に用いる金属箔の代わりに、Vfが2体積%〜10体積%のセラミックス繊維を用いて、0.01〜0.2mmのアルミニウムとセラミックス繊維の複合体をアルミニウム−炭化珪素質複合体の片面又は両面に形成することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
【請求項11】
アルミニウム−炭化珪素質複合体の外周形状をウォータージェット加工、又はレーザー加工、又は研削加工により加工することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
【請求項12】
200mmあたり100〜1000μmの反りとなる曲率に撓む様に10kPa以上の応力を掛けた状態で、温度400〜550℃で30秒以上加熱処理することによりクリープ変形させて、放熱面側に凸型の反り形状を付与することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項記載のアルミニウム−炭化珪素質複合体を製造する方法。
【請求項13】
25℃の熱伝導率が150W/(m・K)以上、25℃〜150℃の熱膨張係数が5×10−6/K〜12×10−6/K、3点曲げ強度が100MPa以上、相対密度が92%以上であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項記載のアルミニウム−炭化珪素質複合体。
【請求項14】
請求項13記載のアルミニウム−炭化珪素質複合体の表面に、めっき処理を行い、一主面がセラミックス回路基板に半田付け又はロウ付け接合され、他の一主面が放熱面として用いられるパワーモジュール用ベース板。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−57252(P2012−57252A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174597(P2011−174597)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】