アルミニウム合金製シリンダーブロック及びその製造方法
【課題】シリンダーボア表面に必要な特性を確保しつつも、安価に製造することのできるアルミニウム合金製シリンダーブロック及びその製造方法を提供する。
【解決手段】有効負荷粗さを「Rk」、初期摩耗高さを「Rpk」、油溜まり深さを「Rvk」としたとき、「Rk+Rpk<1.0μm」、且つ「Rk+Rvk<2.0μm」、且つ「Rk>0.65μm」となり、更にシリンダーボアの表面に螺旋状に形成された、凹凸の高低差が2μm未満のピット空白領域の幅が1.0mm以下なるように、シリンダーボアの表面を形成した。
【解決手段】有効負荷粗さを「Rk」、初期摩耗高さを「Rpk」、油溜まり深さを「Rvk」としたとき、「Rk+Rpk<1.0μm」、且つ「Rk+Rvk<2.0μm」、且つ「Rk>0.65μm」となり、更にシリンダーボアの表面に螺旋状に形成された、凹凸の高低差が2μm未満のピット空白領域の幅が1.0mm以下なるように、シリンダーボアの表面を形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金製のシリンダーブロック及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンの軽量化等を目的として、シリンダーブロック材料の、鋳鉄からアルミニウム合金への置換が進められている。一般に、こうしたアルニウム合金製のシリンダーブロックは、アルミニウム合金製のブロック基体に鋳鉄製のシリンダーライナーを鋳込みや圧入により一体化して形成されている。こうしたシリンダーブロックでは、鋳鉄製のシリンダーライナーにより、シリンダーボア表面に必要とされる耐摩耗性や耐スカッフ性、摺動特性等が確保されている。
【0003】
一方、そうしたアルミニウム合金製のシリンダーブロックの更なる軽量化等を目的として、鋳鉄製のシリンダーライナーを廃止した、ライナーレス・アルミシリンダーブロックが開発されている。こうしたライナーレス・アルミシリンダーブロックは、シリンダーボア表面の耐摩耗性や耐スカッフ性、摺動特性等を確保するため、シリコン含有率の高いアルミニウム合金(ハイシリンコンアルミ)を使用するのが一般的となっている。
【0004】
そして従来、特許文献1には、平均粒径3μm〜10μmの初晶シリコンが晶出したアルミニウム合金を用いるとともに、ホーニング加工を施すことでシリンダーボアの表面を表面粗さRa=0.05〜0.3μmとしたハイシリコンアルミ製のシリンダーブロックが提案されている。こうしたシリンダーブロックによれば、初晶シリコンがシリンダーボア表面に突出されるようになり、耐焼き付き性や耐摩耗性が確保されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−221077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした従来のシリンダーブロックでは、シリンダーボア表面の耐焼き付き性や耐摩耗性の確保が可能ではあるものの、価格の高いハイシリンコンアルミニウム合金を使用しているため、高コストとなってしまう。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、シリンダーボア表面に必要な特性を確保しつつも、安価に製造することのできるアルミニウム合金製シリンダーブロック及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、アルミニウム合金製のシリンダーブロックにおいて、有効負荷粗さを「Rk」、初期摩耗高さを「Rpk」、油溜まり深さを「Rvk」としたとき、シリンダーボアの表面を、「Rk+Rpk < 1.0μm」、且つ「Rk+Rvk < 2.0μm」となるように形成している。
【0009】
このようにシリンダーボア表面の形成されたアルミニウム合金製シリンダーブロックでは、Si含有率の高いアルミニウム合金を使用せずとも、シリンダーボア表面の摺動特性やオイル保持能力を、鋳鉄製シリンダーライナー並みかそれ以上とすることができる。そのため、上記構成によれば、シリンダーボア表面に必要な特性を確保しつつも、安価に製造することができるようになる。
【0010】
更に請求項2によるように、有効負荷粗さRkが0.65μmより大きく、且つシリンダーボアの表面に螺旋状に形成された、凹凸の高低差が2μm未満のピット空白領域の幅が1.0mm以下となるようにすれば、シリンダーボア表面に、鋳鉄製シリンダーライナー以上の耐スカッフ性を確保することができるようにもなる。
【0011】
なお、上記のようなシリンダーボアの表面は、請求項3によるように、プラズマ照射により粗面化した後、ホーニング加工を施すことで形成することができる。
ちなみに、こうしたアルミニウム合金製シリンダーブロックの材料としては、請求項4によるように、ADC12を用いることができる。
【0012】
また上記課題を解決するため、アルミニウム合金製シリンダーブロックの製造方法としての請求項5に記載の発明は、シリンダーボアの表面にプラズマ照射を行う工程と、そのプラズマ照射により粗面化された前記シリンダーボアの表面にホーニング加工を施す工程と、を通じて、有効負荷粗さを「Rk」、初期摩耗高さを「Rpk」、油溜まり深さを「Rvk」としたときにシリンダーボアの表面を、「Rk+Rpk < 1.0μm」、且つ「Rk+Rvk < 2.0μm」となるように形成している。
【0013】
このようにシリンダーボア表面の形成されたアルミニウム合金製シリンダーブロックでは、Si含有率の高いアルミニウム合金を使用せずとも、シリンダーボア表面の摺動特性やオイル保持能力を、鋳鉄製シリンダーライナー並みかそれ以上とすることができる。そのため、上記方法によれば、シリンダーボア表面に必要な特性を確保しつつも、安価に製造することができるようになる。
【0014】
更に請求項6によるように、上記プラズマ照射を行う工程と、上記ホーニング加工を施す工程とを通じて、シリンダーボアの表面の有効負荷粗さRkが0.65μmより大きくなり、且つシリンダーボアの表面に螺旋状に形成された、凹凸の高低差が2μm未満のピット空白領域の幅が1.0mm以下となるようにした場合には、シリンダーボア表面に、鋳鉄製シリンダーライナー以上の耐スカッフ性を確保することができるようにもなる。
【0015】
なお、こうして製造されるアルミニウム合金製シリンダーブロックの材料としては、請求項7によるように、ADC12を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】特殊粗さ曲線と負荷曲線とを示す図。
【図2】シリンダーボア表面の性状分布を模式的に示す略図
【図3】図2の III−III 線に沿った表面粗さ曲線を示す図。
【図4】Rk+Rvkとオイル保持量との関係を示すグラフ。
【図5】往復摺動試験機の斜視構造を示す斜視図。
【図6】Rk+Rpkと平均摩擦係数との関係を示すグラフ。
【図7】往復摺動試験機での試験中の摩擦力の推移を示すグラフ。
【図8】Rkとスカッフ時間との関係を示すグラフ。
【図9】ピット空白領域の幅とスカッフ時間との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のアルミニウム合金製シリンダーブロック及びその製造方法を具体化した一実施形態を、図1〜図9を参照して詳細に説明する。
本実施の形態のアルミニウム合金製シリンダーブロックは、そのシリンダーボア部分にアルミダイカスト材(ADC12)を使用したものとなっている。そしてシリンダーボアの表面には、その粗面化及び硬化のためのプラズマ照射の後、ホーニング加工が施されている。なお、このときのプラズマ照射は、出力:200W、処理能力:20立方ミリメートル/秒で行っている。
【0018】
またシリンダーボアの表面性状は、接触式粗さ測定機により複数箇所で測定した有効負荷粗さRk、初期摩耗高さRpk、油溜まり深さRvkが、以下の条件(A)〜(C)のすべてを満すように形成されている。
【0019】
Rk+Rpk < 1.0μm …(A)
Rk+Rvk < 2.0μm …(B)
Rk > 0.65μm …(C)
ここで条件(A)〜(C)を規定する有効負荷粗さRk、初期摩耗高さRpk、油溜まり深さRvkは、以下のように規定されたものとなっている。
【0020】
図1の左側に示される曲線は、ISO13565及びDIN4776に規定される態様で、表面粗さ曲線にフィルターをかけてうねりを除去したものとなっている。また同図1の右側に示す負荷曲線は、特殊粗さ曲線を抽出曲線とし、これから評価長さ法およびμm法によって求めたもので、統計学上でいう累計確率密度関数に相当するものとなっている。
【0021】
更に同図に示す線分ABは、負荷曲線において、負荷長さ率(tp値)の方向に40%の幅をとり、この両端の高さの差が最小となる位置を探し、その2点を通る直線(最小傾斜直線)を示すものとなっている。なお同図の点Aは、この最小傾斜直線と、tp=0%の限界線との交点であり、点Cは、この点Aからの水平線と負荷曲線との交点となっている。また点Bは、最小傾斜直線と、tp=100%の限界線との交点であり、点Dは、この点Bからの水平線と負荷曲線との交点となっている。
【0022】
こうした図において初期摩耗高さRpkは、0%限界線と辺ACと負荷曲線とで囲まれる部分の面積と等しい、辺ACを一辺とする直角三角形をなすようなtp=0%の限界線上の高さとなっている。また油溜まり深さRvkは、100%限界線と辺BDと負荷曲線とで囲まれる部分の面積と等しい、辺BDを一辺とする直角三角形をなすような100%限界線上の高さとなっている。そして有効負荷粗さRkは、点C、点D間の高さの差となっている。
【0023】
ちなみに、本実施の形態での表面粗さの測定条件は、次の通りとなっている。
評価長さ : 0.8mm
測定長さ : 4mm
前後予備長さ(助走距離) : 前後それぞれ0.4mm
測定速度 : 0.5mm/s
触針形状 : 2μm、頂角60°
フィルター : ガウシアン
ところで、上述したシリンダーボア表面のプラズマ照射は、シリンダーボアの内周を螺旋状に走査しながらプラズマを照射して行なわれている。こうしたプラズマ照射にかかるコストを削減するには、プラズマの照射量(1気筒当りの照射長さ)を必要最小に抑える必要がある。そしてそのためには、照射のピッチを、すなわち図2に示すような照射中心の軌跡間の距離を、最大限に広げることが有効となる。照射のピッチをある程度に広げると、照射中心の軌跡の近傍には、プラズマの照射量が多く、照射中心の軌跡から離れた部分では、プラズマの照射量が少なくなる。そのため、このときのシリンダーボアの表面には、プラズマ照射中心の軌跡に直交する方向において、プラズマ照射による粗面化で多数のピットが形成された領域(ピット領域)と、目立ったピットが存在しないピット空白領域とが、交互に繰り返し表れることになる。
【0024】
図3は、図2のIII−III線に沿ったシリンダーボア表面の粗さ曲線を示している。ピット領域とピット領域との間には、凹凸の高低差が2μm未満のピット空白領域が形成されている。本実施の形態では、こうしたピット空白領域の幅が1.0mm以下となるように、プラズマ照射のピッチを設定するようにしている。
【0025】
次に、上記条件(A)〜(C)及び上記ピット空白領域の幅を規定した理由について説明する。
発明者らは、プラズマ照射条件、ホーニング条件を変化させ、様々な表面性状の試験片を作成し、オイル保持量の評価を行った。オイル保持量の評価は、オイルを塗布した試験片を立てかけたまま4時間放置し、その前後の質量差を測定することで行っている。なお、実際のエンジンに適用したときのエンジンのオイルの消費量を考慮すれば、シリンダーボア表面のオイル保持量は、少なくすることが望ましい。
【0026】
その評価結果からは、図4に示すように、オイル保持量は、有効負荷粗さと油溜まり深さの加算値(Rk+Rvk)に相関を有していることが確かめられた。この結果は、シリンダーボア表面に形成された凹部にオイルが蓄積されることを考えれば、妥当なものである。同図に示すように、オイル保持量を、鋳鉄製シリンダーライナーと同等以下(0.1mg/平方cm以下)としたいのであれば、Rk+Rvkは、2.0μmよりも小さくする必要がある。
【0027】
また発明者らは、表面性状を変化させた多数の試験片のフリクションの評価試験を行った。この試験は、図5に示すような、往復摺動試験機を作成して行われている。この往復摺動試験機は、試験片1が固定されるテーブル2と、ピストンリングの切出片3が固定されるテーブル4との2つのテーブルを備えている。そしてこの試験機は、荷重をかけて試験片1を切出片3に押し付けながら、テーブル4を上下に往復動させて、そのときの試験片1と切出片3との摺動摩擦力をロードセル5で測定することで評価試験を行うように構成されている。
【0028】
こうした往復摺動試験機を用いたフリクションの評価試験の結果からは、フリクションは、図6に示すように、有効負荷粗さと初期摩耗高さとの加算値(Rk+Rpk)と相関があることが確かめられた。そして同図に示すように、摩擦係数を鋳鉄製シリンダーライナーと同等以下(0.03以下)としたいのであれば、Rk+Rpkは、1.0よりも小さくする必要がある。
【0029】
更に発明者らは、表面性状を変化させた多数の試験片の耐スカッフ性の評価試験も行っている。この耐スカッフ性の評価試験も、図5に示した往復摺動試験機を使用して行っている。
【0030】
図7は、試験中の試験片1、切出片3間の摺動摩擦力の推移を示している。試験開始後、試験片1、切出片3間の摺動摩擦力は、小さい値のまま推移しているが、スカッフィングが発生すると、急激に増大する。そこでここでは、試験開始から摺動摩擦力が急増するまでの時間(スカッフ時間)を、耐スカッフ性の指標値として測定することで、評価試験を行っている。
【0031】
図8は、有効負荷粗さRkとスカッフ時間との関係を示している。この関係からは、スカッフ時間を鋳鉄製シリンダーライナーと同等以上(5分以上)となるのは、少なくとも、有効負荷粗さRkが「0.65μm」を上回っているもののみとなっている。ただし、有効負荷粗さRkが「0.65μm」を上回った試験片についても、スカッフ時間が5分を下回るものもある。
【0032】
そこで更なる調査を行ったところ、耐スカッフ性は、上述したピット空白領域の幅にも相関があることが確認された。図9は、Rkが「0.65μm」を超える、図8の点線枠内に位置する試験片のピット空白領域の幅とスカッフ時間との関係を示したものである。同図に示すように、ピット空白領域の幅が1mm以上の試験片は、スカッフ時間が5分未満となっている。これは、ピット空白領域では、オイル保持性が低下して局所的な油膜切れが発生し、試験片1と切出片3とが直接接触し易くなるため、ピット空白領域が大きくなると、そこを起点にスカッフが発生するためであると考えられる。
【0033】
以上の各評価試験の結果を纏めると、次の通りとなる。
・シリンダーボアのオイル保持量を鋳鉄製シリンダーライナーと同等以下とするには、有効負荷粗さと油溜まり深さの加算値(Rk+Rvk)を2.0μmよりも小さくする必要がある。
【0034】
・シリンダーボア、ピストンリング間の摩擦係数を鋳鉄製シリンダーライナーと同等以下とするには、有効負荷粗さと初期摩耗高さとの加算値(Rk+Rpk)を1.0よりも小さくする必要がある。
【0035】
・シリンダーボアの耐スカッフ性を鋳鉄製シリンダーライナーと同等以上とするには、有効負荷粗さRkを0.65μmよりも大きくし、且つピット空白領域の幅を1.0mm以下とする必要がある。
【0036】
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施の形態では、有効負荷粗さを「Rk」、初期摩耗高さを「Rpk」、油溜まり深さを「Rvk」としたとき、シリンダーボアの表面を、「Rk+Rpk < 1.0μm」、且つ「Rk+Rvk < 2.0μm」となるように形成している。このようにシリンダーボア表面の形成されたアルミニウム合金製シリンダーブロックでは、Si含有率の高いアルミニウム合金を使用せずとも、シリンダーボア表面の摺動特性やオイル保持能力を、鋳鉄製シリンダーライナー並みかそれ以上とすることができる。そのため、本実施の形態によれば、シリンダーボア表面に必要な特性を確保しつつも、安価に製造することができるようになる。
【0037】
(2)本実施の形態では、有効負荷粗さRkを0.65μmより大きくするとともに、シリンダーボアの表面に螺旋状に形成された、凹凸の高低差が2μm未満のピット空白領域の幅を1.0mm以下とするようにしている。そのため、シリンダーボア表面に、鋳鉄製シリンダーライナー以上の耐スカッフ性を確保することができるようになる。
【0038】
(3)本実施の形態では、高Si材に比して安価なアルミダイカスト材(ADC12)を使用しているため、アルミニウム合金製シリンダーブロックを比較的安価に製造することができるようになる。
【0039】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施の形態では、シリンダーブロックの材料としてADC12を使用するようにしていたが、それ以外のアルミニウム合金を用いるようにしても良い。
【符号の説明】
【0040】
1…試験片、2…テーブル、3…ピストンリングの切出片、4…テーブル、5…ロードセル、Rk…有効負荷粗さ、Rpk…初期摩耗高さ、Rvk…油溜まり深さ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金製のシリンダーブロック及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンの軽量化等を目的として、シリンダーブロック材料の、鋳鉄からアルミニウム合金への置換が進められている。一般に、こうしたアルニウム合金製のシリンダーブロックは、アルミニウム合金製のブロック基体に鋳鉄製のシリンダーライナーを鋳込みや圧入により一体化して形成されている。こうしたシリンダーブロックでは、鋳鉄製のシリンダーライナーにより、シリンダーボア表面に必要とされる耐摩耗性や耐スカッフ性、摺動特性等が確保されている。
【0003】
一方、そうしたアルミニウム合金製のシリンダーブロックの更なる軽量化等を目的として、鋳鉄製のシリンダーライナーを廃止した、ライナーレス・アルミシリンダーブロックが開発されている。こうしたライナーレス・アルミシリンダーブロックは、シリンダーボア表面の耐摩耗性や耐スカッフ性、摺動特性等を確保するため、シリコン含有率の高いアルミニウム合金(ハイシリンコンアルミ)を使用するのが一般的となっている。
【0004】
そして従来、特許文献1には、平均粒径3μm〜10μmの初晶シリコンが晶出したアルミニウム合金を用いるとともに、ホーニング加工を施すことでシリンダーボアの表面を表面粗さRa=0.05〜0.3μmとしたハイシリコンアルミ製のシリンダーブロックが提案されている。こうしたシリンダーブロックによれば、初晶シリコンがシリンダーボア表面に突出されるようになり、耐焼き付き性や耐摩耗性が確保されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−221077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした従来のシリンダーブロックでは、シリンダーボア表面の耐焼き付き性や耐摩耗性の確保が可能ではあるものの、価格の高いハイシリンコンアルミニウム合金を使用しているため、高コストとなってしまう。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、シリンダーボア表面に必要な特性を確保しつつも、安価に製造することのできるアルミニウム合金製シリンダーブロック及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、アルミニウム合金製のシリンダーブロックにおいて、有効負荷粗さを「Rk」、初期摩耗高さを「Rpk」、油溜まり深さを「Rvk」としたとき、シリンダーボアの表面を、「Rk+Rpk < 1.0μm」、且つ「Rk+Rvk < 2.0μm」となるように形成している。
【0009】
このようにシリンダーボア表面の形成されたアルミニウム合金製シリンダーブロックでは、Si含有率の高いアルミニウム合金を使用せずとも、シリンダーボア表面の摺動特性やオイル保持能力を、鋳鉄製シリンダーライナー並みかそれ以上とすることができる。そのため、上記構成によれば、シリンダーボア表面に必要な特性を確保しつつも、安価に製造することができるようになる。
【0010】
更に請求項2によるように、有効負荷粗さRkが0.65μmより大きく、且つシリンダーボアの表面に螺旋状に形成された、凹凸の高低差が2μm未満のピット空白領域の幅が1.0mm以下となるようにすれば、シリンダーボア表面に、鋳鉄製シリンダーライナー以上の耐スカッフ性を確保することができるようにもなる。
【0011】
なお、上記のようなシリンダーボアの表面は、請求項3によるように、プラズマ照射により粗面化した後、ホーニング加工を施すことで形成することができる。
ちなみに、こうしたアルミニウム合金製シリンダーブロックの材料としては、請求項4によるように、ADC12を用いることができる。
【0012】
また上記課題を解決するため、アルミニウム合金製シリンダーブロックの製造方法としての請求項5に記載の発明は、シリンダーボアの表面にプラズマ照射を行う工程と、そのプラズマ照射により粗面化された前記シリンダーボアの表面にホーニング加工を施す工程と、を通じて、有効負荷粗さを「Rk」、初期摩耗高さを「Rpk」、油溜まり深さを「Rvk」としたときにシリンダーボアの表面を、「Rk+Rpk < 1.0μm」、且つ「Rk+Rvk < 2.0μm」となるように形成している。
【0013】
このようにシリンダーボア表面の形成されたアルミニウム合金製シリンダーブロックでは、Si含有率の高いアルミニウム合金を使用せずとも、シリンダーボア表面の摺動特性やオイル保持能力を、鋳鉄製シリンダーライナー並みかそれ以上とすることができる。そのため、上記方法によれば、シリンダーボア表面に必要な特性を確保しつつも、安価に製造することができるようになる。
【0014】
更に請求項6によるように、上記プラズマ照射を行う工程と、上記ホーニング加工を施す工程とを通じて、シリンダーボアの表面の有効負荷粗さRkが0.65μmより大きくなり、且つシリンダーボアの表面に螺旋状に形成された、凹凸の高低差が2μm未満のピット空白領域の幅が1.0mm以下となるようにした場合には、シリンダーボア表面に、鋳鉄製シリンダーライナー以上の耐スカッフ性を確保することができるようにもなる。
【0015】
なお、こうして製造されるアルミニウム合金製シリンダーブロックの材料としては、請求項7によるように、ADC12を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】特殊粗さ曲線と負荷曲線とを示す図。
【図2】シリンダーボア表面の性状分布を模式的に示す略図
【図3】図2の III−III 線に沿った表面粗さ曲線を示す図。
【図4】Rk+Rvkとオイル保持量との関係を示すグラフ。
【図5】往復摺動試験機の斜視構造を示す斜視図。
【図6】Rk+Rpkと平均摩擦係数との関係を示すグラフ。
【図7】往復摺動試験機での試験中の摩擦力の推移を示すグラフ。
【図8】Rkとスカッフ時間との関係を示すグラフ。
【図9】ピット空白領域の幅とスカッフ時間との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のアルミニウム合金製シリンダーブロック及びその製造方法を具体化した一実施形態を、図1〜図9を参照して詳細に説明する。
本実施の形態のアルミニウム合金製シリンダーブロックは、そのシリンダーボア部分にアルミダイカスト材(ADC12)を使用したものとなっている。そしてシリンダーボアの表面には、その粗面化及び硬化のためのプラズマ照射の後、ホーニング加工が施されている。なお、このときのプラズマ照射は、出力:200W、処理能力:20立方ミリメートル/秒で行っている。
【0018】
またシリンダーボアの表面性状は、接触式粗さ測定機により複数箇所で測定した有効負荷粗さRk、初期摩耗高さRpk、油溜まり深さRvkが、以下の条件(A)〜(C)のすべてを満すように形成されている。
【0019】
Rk+Rpk < 1.0μm …(A)
Rk+Rvk < 2.0μm …(B)
Rk > 0.65μm …(C)
ここで条件(A)〜(C)を規定する有効負荷粗さRk、初期摩耗高さRpk、油溜まり深さRvkは、以下のように規定されたものとなっている。
【0020】
図1の左側に示される曲線は、ISO13565及びDIN4776に規定される態様で、表面粗さ曲線にフィルターをかけてうねりを除去したものとなっている。また同図1の右側に示す負荷曲線は、特殊粗さ曲線を抽出曲線とし、これから評価長さ法およびμm法によって求めたもので、統計学上でいう累計確率密度関数に相当するものとなっている。
【0021】
更に同図に示す線分ABは、負荷曲線において、負荷長さ率(tp値)の方向に40%の幅をとり、この両端の高さの差が最小となる位置を探し、その2点を通る直線(最小傾斜直線)を示すものとなっている。なお同図の点Aは、この最小傾斜直線と、tp=0%の限界線との交点であり、点Cは、この点Aからの水平線と負荷曲線との交点となっている。また点Bは、最小傾斜直線と、tp=100%の限界線との交点であり、点Dは、この点Bからの水平線と負荷曲線との交点となっている。
【0022】
こうした図において初期摩耗高さRpkは、0%限界線と辺ACと負荷曲線とで囲まれる部分の面積と等しい、辺ACを一辺とする直角三角形をなすようなtp=0%の限界線上の高さとなっている。また油溜まり深さRvkは、100%限界線と辺BDと負荷曲線とで囲まれる部分の面積と等しい、辺BDを一辺とする直角三角形をなすような100%限界線上の高さとなっている。そして有効負荷粗さRkは、点C、点D間の高さの差となっている。
【0023】
ちなみに、本実施の形態での表面粗さの測定条件は、次の通りとなっている。
評価長さ : 0.8mm
測定長さ : 4mm
前後予備長さ(助走距離) : 前後それぞれ0.4mm
測定速度 : 0.5mm/s
触針形状 : 2μm、頂角60°
フィルター : ガウシアン
ところで、上述したシリンダーボア表面のプラズマ照射は、シリンダーボアの内周を螺旋状に走査しながらプラズマを照射して行なわれている。こうしたプラズマ照射にかかるコストを削減するには、プラズマの照射量(1気筒当りの照射長さ)を必要最小に抑える必要がある。そしてそのためには、照射のピッチを、すなわち図2に示すような照射中心の軌跡間の距離を、最大限に広げることが有効となる。照射のピッチをある程度に広げると、照射中心の軌跡の近傍には、プラズマの照射量が多く、照射中心の軌跡から離れた部分では、プラズマの照射量が少なくなる。そのため、このときのシリンダーボアの表面には、プラズマ照射中心の軌跡に直交する方向において、プラズマ照射による粗面化で多数のピットが形成された領域(ピット領域)と、目立ったピットが存在しないピット空白領域とが、交互に繰り返し表れることになる。
【0024】
図3は、図2のIII−III線に沿ったシリンダーボア表面の粗さ曲線を示している。ピット領域とピット領域との間には、凹凸の高低差が2μm未満のピット空白領域が形成されている。本実施の形態では、こうしたピット空白領域の幅が1.0mm以下となるように、プラズマ照射のピッチを設定するようにしている。
【0025】
次に、上記条件(A)〜(C)及び上記ピット空白領域の幅を規定した理由について説明する。
発明者らは、プラズマ照射条件、ホーニング条件を変化させ、様々な表面性状の試験片を作成し、オイル保持量の評価を行った。オイル保持量の評価は、オイルを塗布した試験片を立てかけたまま4時間放置し、その前後の質量差を測定することで行っている。なお、実際のエンジンに適用したときのエンジンのオイルの消費量を考慮すれば、シリンダーボア表面のオイル保持量は、少なくすることが望ましい。
【0026】
その評価結果からは、図4に示すように、オイル保持量は、有効負荷粗さと油溜まり深さの加算値(Rk+Rvk)に相関を有していることが確かめられた。この結果は、シリンダーボア表面に形成された凹部にオイルが蓄積されることを考えれば、妥当なものである。同図に示すように、オイル保持量を、鋳鉄製シリンダーライナーと同等以下(0.1mg/平方cm以下)としたいのであれば、Rk+Rvkは、2.0μmよりも小さくする必要がある。
【0027】
また発明者らは、表面性状を変化させた多数の試験片のフリクションの評価試験を行った。この試験は、図5に示すような、往復摺動試験機を作成して行われている。この往復摺動試験機は、試験片1が固定されるテーブル2と、ピストンリングの切出片3が固定されるテーブル4との2つのテーブルを備えている。そしてこの試験機は、荷重をかけて試験片1を切出片3に押し付けながら、テーブル4を上下に往復動させて、そのときの試験片1と切出片3との摺動摩擦力をロードセル5で測定することで評価試験を行うように構成されている。
【0028】
こうした往復摺動試験機を用いたフリクションの評価試験の結果からは、フリクションは、図6に示すように、有効負荷粗さと初期摩耗高さとの加算値(Rk+Rpk)と相関があることが確かめられた。そして同図に示すように、摩擦係数を鋳鉄製シリンダーライナーと同等以下(0.03以下)としたいのであれば、Rk+Rpkは、1.0よりも小さくする必要がある。
【0029】
更に発明者らは、表面性状を変化させた多数の試験片の耐スカッフ性の評価試験も行っている。この耐スカッフ性の評価試験も、図5に示した往復摺動試験機を使用して行っている。
【0030】
図7は、試験中の試験片1、切出片3間の摺動摩擦力の推移を示している。試験開始後、試験片1、切出片3間の摺動摩擦力は、小さい値のまま推移しているが、スカッフィングが発生すると、急激に増大する。そこでここでは、試験開始から摺動摩擦力が急増するまでの時間(スカッフ時間)を、耐スカッフ性の指標値として測定することで、評価試験を行っている。
【0031】
図8は、有効負荷粗さRkとスカッフ時間との関係を示している。この関係からは、スカッフ時間を鋳鉄製シリンダーライナーと同等以上(5分以上)となるのは、少なくとも、有効負荷粗さRkが「0.65μm」を上回っているもののみとなっている。ただし、有効負荷粗さRkが「0.65μm」を上回った試験片についても、スカッフ時間が5分を下回るものもある。
【0032】
そこで更なる調査を行ったところ、耐スカッフ性は、上述したピット空白領域の幅にも相関があることが確認された。図9は、Rkが「0.65μm」を超える、図8の点線枠内に位置する試験片のピット空白領域の幅とスカッフ時間との関係を示したものである。同図に示すように、ピット空白領域の幅が1mm以上の試験片は、スカッフ時間が5分未満となっている。これは、ピット空白領域では、オイル保持性が低下して局所的な油膜切れが発生し、試験片1と切出片3とが直接接触し易くなるため、ピット空白領域が大きくなると、そこを起点にスカッフが発生するためであると考えられる。
【0033】
以上の各評価試験の結果を纏めると、次の通りとなる。
・シリンダーボアのオイル保持量を鋳鉄製シリンダーライナーと同等以下とするには、有効負荷粗さと油溜まり深さの加算値(Rk+Rvk)を2.0μmよりも小さくする必要がある。
【0034】
・シリンダーボア、ピストンリング間の摩擦係数を鋳鉄製シリンダーライナーと同等以下とするには、有効負荷粗さと初期摩耗高さとの加算値(Rk+Rpk)を1.0よりも小さくする必要がある。
【0035】
・シリンダーボアの耐スカッフ性を鋳鉄製シリンダーライナーと同等以上とするには、有効負荷粗さRkを0.65μmよりも大きくし、且つピット空白領域の幅を1.0mm以下とする必要がある。
【0036】
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施の形態では、有効負荷粗さを「Rk」、初期摩耗高さを「Rpk」、油溜まり深さを「Rvk」としたとき、シリンダーボアの表面を、「Rk+Rpk < 1.0μm」、且つ「Rk+Rvk < 2.0μm」となるように形成している。このようにシリンダーボア表面の形成されたアルミニウム合金製シリンダーブロックでは、Si含有率の高いアルミニウム合金を使用せずとも、シリンダーボア表面の摺動特性やオイル保持能力を、鋳鉄製シリンダーライナー並みかそれ以上とすることができる。そのため、本実施の形態によれば、シリンダーボア表面に必要な特性を確保しつつも、安価に製造することができるようになる。
【0037】
(2)本実施の形態では、有効負荷粗さRkを0.65μmより大きくするとともに、シリンダーボアの表面に螺旋状に形成された、凹凸の高低差が2μm未満のピット空白領域の幅を1.0mm以下とするようにしている。そのため、シリンダーボア表面に、鋳鉄製シリンダーライナー以上の耐スカッフ性を確保することができるようになる。
【0038】
(3)本実施の形態では、高Si材に比して安価なアルミダイカスト材(ADC12)を使用しているため、アルミニウム合金製シリンダーブロックを比較的安価に製造することができるようになる。
【0039】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施の形態では、シリンダーブロックの材料としてADC12を使用するようにしていたが、それ以外のアルミニウム合金を用いるようにしても良い。
【符号の説明】
【0040】
1…試験片、2…テーブル、3…ピストンリングの切出片、4…テーブル、5…ロードセル、Rk…有効負荷粗さ、Rpk…初期摩耗高さ、Rvk…油溜まり深さ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金製のシリンダーブロックであって、
有効負荷粗さを「Rk」、初期摩耗高さを「Rpk」、油溜まり深さを「Rvk」としたとき、シリンダーボアの表面が、
Rk+Rpk < 1.0μm、且つ
Rk+Rvk < 2.0μm
となるように形成されてなる
ことを特徴とするアルミニウム合金製シリンダーブロック。
【請求項2】
有効負荷粗さRkが0.65μmより大きく、且つ前記シリンダーボアの表面に螺旋状に形成された、凹凸の高低差が2μm未満のピット空白領域の幅が1.0mm以下とされてなる
請求項1に記載のアルミニウム合金製シリンダーブロック。
【請求項3】
前記シリンダーボアの表面は、プラズマ照射により粗面化した後、ホーニング加工を施すことで形成されてなる
請求項1又は2に記載のアルミニウム合金製シリンダーブロック。
【請求項4】
当該シリンダーブロックは、ADC12により形成されてなる
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製シリンダーブロック。
【請求項5】
アルミニウム合金製のシリンダーブロックを製造する方法であって、
シリンダーボアの表面にプラズマ照射を行う工程と、
そのプラズマ照射により粗面化された前記シリンダーボアの表面にホーニング加工を施す工程と、
を通じて、有効負荷粗さを「Rk」、初期摩耗高さを「Rpk」、油溜まり深さを「Rvk」としたときに前記シリンダーボアの表面が、
Rk+Rpk < 1.0μm、且つ
Rk+Rvk < 2.0μm
となるように形成されてなる
ことを特徴とするアルミニウム合金製シリンダーブロックの製造方法。
【請求項6】
前記プラズマ照射を行う工程と、前記ホーニング加工を施す工程とを通じて、前記シリンダーボアの表面の有効負荷粗さRkが0.65μmより大きくなり、且つ前記シリンダーボアの表面に螺旋状に形成された、凹凸の高低差が2μm未満のピット空白領域の幅が1.0mm以下となるようにした
請求項5に記載のアルミニウム合金製シリンダーブロックの製造方法。
【請求項7】
前記シリンダーブロックは、ADC12により形成されてなる
請求項5又は6に記載のアルミニウム合金製シリンダーブロックの製造方法。
【請求項1】
アルミニウム合金製のシリンダーブロックであって、
有効負荷粗さを「Rk」、初期摩耗高さを「Rpk」、油溜まり深さを「Rvk」としたとき、シリンダーボアの表面が、
Rk+Rpk < 1.0μm、且つ
Rk+Rvk < 2.0μm
となるように形成されてなる
ことを特徴とするアルミニウム合金製シリンダーブロック。
【請求項2】
有効負荷粗さRkが0.65μmより大きく、且つ前記シリンダーボアの表面に螺旋状に形成された、凹凸の高低差が2μm未満のピット空白領域の幅が1.0mm以下とされてなる
請求項1に記載のアルミニウム合金製シリンダーブロック。
【請求項3】
前記シリンダーボアの表面は、プラズマ照射により粗面化した後、ホーニング加工を施すことで形成されてなる
請求項1又は2に記載のアルミニウム合金製シリンダーブロック。
【請求項4】
当該シリンダーブロックは、ADC12により形成されてなる
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製シリンダーブロック。
【請求項5】
アルミニウム合金製のシリンダーブロックを製造する方法であって、
シリンダーボアの表面にプラズマ照射を行う工程と、
そのプラズマ照射により粗面化された前記シリンダーボアの表面にホーニング加工を施す工程と、
を通じて、有効負荷粗さを「Rk」、初期摩耗高さを「Rpk」、油溜まり深さを「Rvk」としたときに前記シリンダーボアの表面が、
Rk+Rpk < 1.0μm、且つ
Rk+Rvk < 2.0μm
となるように形成されてなる
ことを特徴とするアルミニウム合金製シリンダーブロックの製造方法。
【請求項6】
前記プラズマ照射を行う工程と、前記ホーニング加工を施す工程とを通じて、前記シリンダーボアの表面の有効負荷粗さRkが0.65μmより大きくなり、且つ前記シリンダーボアの表面に螺旋状に形成された、凹凸の高低差が2μm未満のピット空白領域の幅が1.0mm以下となるようにした
請求項5に記載のアルミニウム合金製シリンダーブロックの製造方法。
【請求項7】
前記シリンダーブロックは、ADC12により形成されてなる
請求項5又は6に記載のアルミニウム合金製シリンダーブロックの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−12957(P2012−12957A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147735(P2010−147735)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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