説明

アルミニウム溶解炉

【課題】短時間で高品質のアルミニウム溶湯を効率よく得ることができるアルミニウム溶解炉を提供する。
【解決手段】アルミニウム溶解炉10は、固体状アルミニウム58を溶解する溶解炉12と、溶湯60の状態のままで保持する保持炉70を備えている。前記溶解炉12は、坩堝36を囲む炉体14によって加熱室18が形成され、炉体側面14Bにはブラウンガスバーナ32A,32Bが取付けられている。該ブラウンガスバーナ32A,32Bは、燃焼制御装置52により支持台16との距離が調節され、加熱温度の制御が可能となっている。ブラウンガスバーナ32A,32Bを燃焼させて支持台16を加熱すると、坩堝36が底面36Aから加熱される。これと同時に、加熱室18内にブラウンガスの燃焼により生じた水から過熱蒸気が生成するため、該過熱蒸気によって坩堝36全体を均一に過熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムを溶解(ないし溶融)するためのアルミニウム溶解炉に関し、更に具体的には、ブラウンガス(酸素―水素混合ガス)を利用したアルミニウム溶解炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム溶解炉には、直接加熱(直火焚き)構造と、間接加熱構造のものがある。直接加熱式の溶解炉では、被溶解物(アルミニウム片など)を溶解室に設けた加熱バーナで加熱し、前記加熱バーナから噴射する火炎と溶解室の蓄熱により前記被溶解物を溶かす。前記被溶解物の溶解により得られた溶湯は、保温機能を備えた保持炉に貯留され、必要な時に汲み出しされる。このような直接加熱式のものとしては、例えば、以下の特許文献1に示すアルミニウム合金溶解炉がある。また、間接加熱式では、炉体内に坩堝を備えた溶解炉があり、加熱バーナで前記坩堝を外側から加熱して内部のアルミニウム固体を溶解する。このような間接加熱式のものとしては、例えば、以下の特許文献2に示す坩堝炉を原型とした低融点金属の連続溶解保持装置が開示されている。
【特許文献1】特開平7−146073号公報
【特許文献2】特開平10−332272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、以上のような背景技術には次のような不都合がある。まず、直火加熱式の溶解炉では、酸化物の生成によって溶湯の歩留まりが低下したり、空気中の水分が分解して生成した水素ガスなどが混入したりするため、高品質の溶湯を得るのが難しい。また、間接加熱式の溶解炉では、一般的に加熱バーナの火炎が当たる部分から被溶解物が溶け出すため、坩堝の上方まで均一に熱が回りにくく、溶解するのに時間がかかるという不都合もある。
【0004】
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、短時間で高品質のアルミニウムの溶湯を効率よく得ることができるアルミニウム溶解炉を提供することである。他の目的は、アルミニウムの溶解に利用した熱を、溶解の保持に再利用することができるアルミニウム溶解炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明のアルミニウム溶解炉は、被溶解物の投入口と溶湯の排出口を有する坩堝、該坩堝を載せる耐火性の支持台を有しており、前記坩堝を囲んでその周囲に加熱室を形成するとともに、前記加熱室内のガスの排気口と、前記溶湯の排出口に接続された出湯管の貫通口を備えた炉体、前記加熱室の上部を閉塞する蓋ないしシール部材、前記炉体に取り付けられており、前記支持台を加熱するブラウンガスバーナ、を備えるとともに、前記ブラウンガスバーナの燃焼により発生した水ないし水蒸気が、前記加熱室内で過熱蒸気となり、前記坩堝全体を加熱することを特徴とする。
【0006】
主要な形態の一つは、ブラウンガスを生成するブラウンガス発生手段、前記ブラウンガスバーナを、前記支持台との距離が可変となるように移動させるバーナ駆動手段、前記坩堝内の温度を計測する温度センサ、該温度センサの検出結果に応じて、前記バーナ駆動手段を制御して前記ブラウンガスバーナの位置を調節するとともに、前記ブラウンガス発生手段から前記ブラウンガスバーナに送るブラウンガスの流量を制御する燃焼制御手段、を備えたことを特徴とする。
【0007】
他の形態は、前記出湯管から送られた溶湯を貯留する貯留手段と、該貯留手段を加熱してアルミニウムを溶湯のまま保持するための加熱手段を有する保持炉、を備えるとともに、前記加熱手段が、前記加熱室から回収された過熱蒸気を利用することを特徴とする。
【0008】
更に他の形態は、前記炉体の炉壁が、一層以上設けられた耐火煉瓦、耐火煉瓦の外側に設けられた断熱材、該断熱材の外側を覆う外壁、により形成されていることを特徴とする。更に他の形態は、前記耐火煉瓦が、吸水性を有することを特徴とする。本発明の前記及び他の目的、特徴、利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、坩堝と炉体の間に形成された加熱室で、ブラウンガスバーナにより前記坩堝の支持台を加熱するとともに、ブラウンガスの燃焼により発生した水ないし水蒸気が、前記加熱室内で過熱蒸気となって、前記坩堝全体を加熱することで、短時間で不純物の混入が少ない高品質のアルミニウム溶湯を得ることができる。また、前記坩堝の加熱に利用した過熱蒸気を、溶湯を貯留する保持炉に送って、溶湯の保温に利用することとしたので、熱の有効利用が可能になるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
最初に、図1及び図2を参照しながら、本発明の実施例1の構成を説明する。図1は、本実施例の全体構成を示す模式図、図2は、本実施例の溶解炉の詳細な構成を示す断面斜視図である。本実施例のアルミニウム溶解炉10は、炉体14の内側に坩堝36を備えた溶解炉12に、ブランガスバーナ32A,32B,駆動モータ34A,34B,温度センサ50、燃焼制御装置52、ブラウンガス発生装置54を設けた構成となっている。また、必要に応じて、前記溶解炉12で溶解したアルミニウムを、溶湯状態のままで貯留しておく保持炉70が設けられている。
【0012】
まず、前記溶解炉12について説明する。炉体14は、底面14Aに煉瓦15が敷設されており、該煉瓦15の上に設けられた耐火性の支持台16の上に、坩堝36が固定される。前記坩堝36は、上端36Cが開放し、側面36Bの所定の位置に溶湯を排出するための排出口38が設けられている。前記炉体側面14Bは、図2に示すように、形状の異なる2種類の煉瓦20,22によって2重の壁が形成されている。そして、前記煉瓦15,20,22の外側には断熱材24が設けられ、更にその外側には外壁26が設けられている。このような炉体14と坩堝36の間には、ブラウンガスバーナ32A,32Bを燃焼させるための加熱室18が形成されている。すなわち、内側の煉瓦20と坩堝36の間に所定の空間を形成するように予め設定されている。
【0013】
前記溶解炉12の上部には、前記炉体上端14Cと坩堝上端36Cの間を塞ぐための略リング状のシール部材(ないし蓋)44が設けられており、該シール部材44によって、前記加熱室18内の上端が密閉され、ガスが外部に漏れにくくなっている。また、前記シール部材44の上には、固体状のアルミニウム58(アルミニウムインゴットなど)を投入するための投入口46Aを備えた略リング状のリング板46と蓋48(図2参照)が設けられる。なお、前記リング板46と蓋48は、必要に応じて設けるようにすればよく、シール部材44の内径を調節することによって、該シール部材が前記リング板46を兼ねるような構成としてもよい。前記煉瓦15,20,22は、本実施例では、吸水性が高い耐火煉瓦が用いられる。また、前記支持台16、坩堝36は、例えば鉄により形成されている。
【0014】
また、前記炉体側面14Bには、坩堝36の排出口38に接続された出湯管40や、前記加熱室18内のガスを排出するための排気管42A,42Bを引き出すための開口部28が設けられている。更に、前記炉体側面14Bの下方には、前記加熱室18内で燃焼されるブラウンガスバーナ32A,32Bを取り付けるための取付口30A,30Bが形成されている。前記ブラウンガスバーナ32A,32Bの近傍には、駆動モータ34A,34Bがそれぞれ設けられており、該駆動モータ34A,34Bの駆動により、前記ブラウンガスバーナ32A,32Bを図1に矢印F1で示す方向にスライドさせ、前記支持台16との距離の調節が行われる。
【0015】
前記ブラウンガスバーナ32A,32B及び駆動モータ34A,34Bは、燃焼制御装置52に接続されている。また、前記坩堝36内部の温度を計測するための温度センサ50とブラウンガス発生装置54が、前記燃焼制御装置52に接続されている。該燃焼制御装置52は、前記温度センサ50の検出結果に基づき、前記駆動モータ34A,34Bの駆動を制御して、前記ブラウンガスバーナ34A,34Bと支持台16の間の距離を調節する。具体的には、所定の温度よりも低い場合には、ブラウンガスバーナ32A,32Bを支持台16に近づけるようにし、所定の温度よりも高い場合には、支持台16から離すようにするという具合である。また、前記燃焼制御装置52は、ブラウンガス発生装置54からブラウンガスバーナ32A,32Bに送るガスの流量を一定に制御し、逆火を防止する機能も有している。
【0016】
前記ブラウンガス発生装置54は、水の電気分解により水素と酸素を生成するもので、その構成は公知である。このような水の電気分解により生成した水素と酸素を混合したガス(ブラウンガス)を燃焼させると、水ないし水蒸気になり、有害物質や二酸化炭素などを出さないことが知られている。前記ブラウンガス発生装置54で生成したブラウンガスをブラウンガスバーナ32A,32Bに送って燃焼させると、バーナの炎により支持台16が加熱されて坩堝36の底部36Aが間接的に加熱される。一方、ブラウンガスの燃焼により生成した水ないし水蒸気は、加熱室18が非常に高温なため過熱蒸気となる。過熱蒸気は、空気を汚さないため環境に好ましく、対流のみならず放射によっても熱を伝達する作用があるために熱容量が非常に大きいという特徴がある。このような過熱蒸気が加熱室18内に生成することにより、前記坩堝36の全体が均一に加熱される。
【0017】
次に、保持炉70について説明する。保持炉70は、前記溶解炉12で固体状アルミニウム58が溶解して得られた溶湯を貯留するものであって、断熱性を有する炉体72の内側に溶湯を貯留する坩堝74が設けられた構成となっている。前記炉体72と坩堝74の間には、過熱蒸気が通過するための蒸気室80が形成されている。また、前記炉体72と坩堝74の上端には、前記蒸気室80の上部を閉塞するための略リング状のシール部材76が設けられている。前記溶解炉12の出湯管40から送られた溶湯60は、前記シール部材76の略中央部に設けられた投入口78から坩堝74内に投入される。該坩堝74に貯留された溶湯をその状態のまま維持するためには、所定の温度以上に前記坩堝74を加熱しておく必要がある。本実施例では、前記炉体72の側面に、前記溶解炉12の排気管42A,42Bと接続するための蒸気導入口82A,82Bとともに、過熱蒸気を排出するための蒸気排出口84が設けられている。更に、前記炉体72の側面の所定位置には、前記坩堝74に接続された出湯管86が貫通可能な開口部88が形成されている。このような構成とすることで、前記溶解炉12から回収した過熱蒸気が、保持炉70の加熱に再利用される。
【0018】
次に、本実施例の作用を説明する。まず、投入口46Aから坩堝36内に、適量の固体状アルミニウム58を投入する。そして、ブラウンガス発生装置54によるブラウンガスの生成を開始し、ブラウンガスバーナ32A,32Bにガスを送り、加熱室18内で燃焼させて支持台16を加熱する。支持台16が高温になると、これを介して坩堝36が底部36Aから間接的に加熱される。これに加え、本実施例では、ブラウンガスバーナ32A,32Bの燃焼に発生した水(ないし水蒸気)が、高温の加熱室18内で熱容量が非常に大きい加熱蒸気となり、坩堝36の全体を均一に加熱する。坩堝36の加熱に利用されて温度が低下した過熱蒸気は、排気管42A,42Bから保持炉70に送られる。また、前記加熱室18内の加熱蒸気の一部は冷却されて液化するが、炉体14の内壁に吸水性を有する煉瓦15,20,22を設けているため、水分が吸収される。
【0019】
固体状アルミニウム58の溶解により得られた溶湯60は、坩堝36の排出口38から出湯管40を通って保持炉70に送られる。坩堝36内の溶湯60が一定量以下になったら、必要に応じて固体状アルミニウム58を追加投入する。また、以上のような溶解工程中、坩堝36内の温度が温度センサ50により計測されており、その検出結果に基づいて、燃焼制御装置52が駆動モータ34A,34Bの駆動を制御し、ブラウンガスバーナ32A,32Bの位置を調節して温度制御を行う。また、ブラウンガス発生装置54からブラウンガスバーナ32A,32Bへ送るガスの流量を制御し、逆火を防止している。
【0020】
一方、前記溶解炉12から溶湯60が送られた保持炉70では、溶湯60が投入口78から坩堝74内に投入されて貯留される。また、保持炉70の周囲に形成された蒸気室80には、前記排気管42A,42Bから過熱蒸気が送られる。該過熱蒸気は、若干温度は低下しているものの、坩堝74を加熱してアルミニウムを溶湯60の状態のまま維持できる程度の温度を有している。もちろん、再利用の過熱蒸気だけでなく、他の加熱手段を併用するようにしてもよい。そして、坩堝74の保温に利用されて温度が低下した過熱蒸気は、炉体72の底面近傍の蒸気排出口84から外部に排出される。坩堝74内の溶湯60は、必要に応じて出湯管86から外部に汲み出される。
【0021】
<実験例>・・・次に、本実施例の溶解炉12を用いてアルミニウム片を間接溶解した場合と、比較例としてアルミニウム製品を直接加熱により溶解した場合の溶湯品質の比較を、ガス分析により行った。試験サンプルは、アルミニウム片及びアルミニウム製品(比較例)のそれぞれについて2回ずつ行った。試験サンプルは、(1)適当な大きさ(1000g程度)に切断→(2)洗浄→(3)水酸化ナトリウムに15分浸漬→(4)硝酸に15分浸漬→(5)超音波洗浄器で15分洗浄→(6)水分除去→(7)アセトンで油脂を除去、の順で下準備を行ったのち、ガス量分析器及びガス成分分析器による分析を行った。
【0022】
図3は、本実施例の結果を示す図であり、(A)は成分別ガス量を示す表、(B)は前記(A)をグラフで示したものである。図4は、比較例の結果を示す図であり、(A)は成分別ガス量を示す表、(B)は前記(A)をグラフで示したものである。また、図5は、アルミニウム片と比較用のアルミニウム製品の分光分析結果である。図3及び図4において、ガス量の単位は、「cc/100gAI」である。まず、図3を見ると、アルミニウム片を本実施例の溶解炉12により間接加熱で溶解した場合には、H成分のほかに、N,CH,CO,CO,C成分も検出された。これは、間接加熱の場合は、直接加熱のように混合が燃焼して発生するCOなどのガスに触れなかったためと考えられる。この結果から、本実施例の溶解炉12で溶解した場合は、カーボン系ガスの影響を受けないことが確認された。
【0023】
サンプルの重量に対してのガス量で比較すると、アルミニウム片のほうがH成分の量は多かったが、溶解温度や金属成分の含有量によってもHの溶解度が変化するため、アルミニウム片のH量は比較品とほぼ同じと考えられる。また、全体のガス量は、比較例と比べると、本実施例では大幅に低減していることが確認された。なお、図5には、アルミニウム片と比較用のアルミニウム製品の分光分析結果が示されている。前記図5に示すように、アルミニウム片とアルミニウム製品からは、ほぼ同じ数値の成分が検出されている。
【0024】
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。
(1)坩堝36と炉体14の間に形成された加熱室18で、ブラウンガスバーナ32A,32Bにより支持台16を加熱するとともに、ブラウンガスの燃焼により生じた水(ないし水蒸気)が加熱室18内で過熱蒸気となり、坩堝36の全体を均一に加熱することとしたので、短時間で不純物の混入が少ない高品質のアルミニウム溶解物を得ることができる。
(2)燃焼制御装置52と温度センサ50を設け、該温度センサ50の検出結果に応じて、ブラウンガスバーナ32A,32Bが支持台16に対して所望の位置となるように駆動モータ34A,34Bを制御することとしたので、坩堝36内を所望の温度に調節することができる。
(3)前記燃焼制御装置52により、ブラウンガス発生装置54から前記ブラウンガスバーナ32A,32Bに送るガスの流量を一定に制御することとしたので、逆火を防止することができる。
(4)前記炉体14を構成する煉瓦15,20,22が吸水性を有するため、加熱室18内の温度低下を防止することができる。
(5)溶湯60を貯留する保持炉70を設けるとともに、該保持炉70の加熱に前記溶解炉12から回収した過熱蒸気を利用することとしたので、熱の有効利用が可能となる。
【0025】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例1における形状、大きさ、材質は一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
(2)前記実施例1における炉体14も一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。例えば、前記実施例1では、形状の異なる煉瓦20,22を用いた2重構造としたが、煉瓦の大きさや形状に応じて、適宜層数を増減してよい。
(3)ブラウンガスバーナ32A,32Bも一例であり、その設置数は必要に応じて増減してよい。
(4)前記保持炉70も一例であり、必要に応じて設けるようにすればよい。例えば、アルミニウム58の溶解後に、溶解炉12自体を溶湯60の保持炉として使用する場合には、保持炉70を省略することが可能である。
(5)前記実施例1では、保持炉70の加熱に溶解炉12から回収した過熱蒸気を利用することとしたが、これも一例であり、他の加熱手段を利用することを防げるものではない。
(6)本実施例で溶解するアルミニウムは固体状のものであればよく、インゴットに限らずアルミニウム製品などの溶解に適用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、坩堝と炉体の間に形成された加熱室で、ブラウンガスバーナにより前記坩堝の耐火性の支持台を加熱するとともに、ブラウンガスの燃焼により生じた水(ないし水蒸気)が、加熱室内で過熱蒸気となって前記坩堝全体を加熱することで、短時間で高品質のアルミニウム溶湯が得られるため、アルミニウム溶解炉の用途に適用できる。特に、加熱室で利用した過熱蒸気を保持炉で再利用可能なため、保持炉を備えたアルミニウム溶解炉の用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1の全体構成を示す模式図である。
【図2】前記実施例1の溶解炉の詳細な構成を示す断面斜視図である。
【図3】前記実施例1の溶解炉による間接加熱で溶解したアルミニウム片のガス分析結果を示す図である。
【図4】バーナによる直接加熱で溶解した比較例のアルミニウム製品のガス分析結果を示す図である。
【図5】前記アルミニウム片と比較例のアルミニウム製品の分光分析結果を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
10:アルミニウム溶解炉
12:溶解炉
14:炉体
14A:底面
14B:側面
14C:上端
15:煉瓦
16:支持台
18:加熱室
20,22:煉瓦
24:断熱材
26:外壁
28:開口部
30A,30B:取付口
32A,32B:ブラウンガスバーナ
34A,34B:駆動モータ
36:坩堝
36A:底面
36B:側面
36C:上端
38:排出口
40:出湯管
42A,42B:排気管
44:シール部材
46:リング板
46A:投入口
48:蓋
50:温度センサ
52:燃焼制御装置
54:ブラウンガス発生装置
58:固体状アルミニウム
60:溶湯
70:保持炉
72:炉体
74:坩堝
76:シール部材
78:投入口
80:蒸気室
82A,82B:蒸気導入口
84:蒸気排出口
86:出湯管
88:開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被溶解物の投入口と溶湯の排出口を有する坩堝、
該坩堝を載せる耐火性の支持台を有しており、前記坩堝を囲んでその周囲に加熱室を形成するとともに、前記加熱室内のガスの排気口と、前記溶湯の排出口に接続された出湯管の貫通口を備えた炉体、
前記加熱室の上部を閉塞する蓋ないしシール部材、
前記炉体に取り付けられており、前記支持台を加熱するブラウンガスバーナ、
を備えるとともに、
前記ブラウンガスバーナの燃焼により発生した水ないし水蒸気が、前記加熱室内で過熱蒸気となり、前記坩堝全体を加熱することを特徴とするアルミニウム溶解炉。
【請求項2】
ブラウンガスを生成するブラウンガス発生手段、
前記ブラウンガスバーナを、前記支持台との距離が可変となるように移動させるバーナ駆動手段、
前記坩堝内の温度を計測する温度センサ、
該温度センサの検出結果に応じて、前記バーナ駆動手段を制御して前記ブラウンガスバーナの位置を調節するとともに、前記ブラウンガス発生手段から前記ブラウンガスバーナに送るブラウンガスの流量を制御する燃焼制御手段、
を備えたことを特徴とする請求項1記載のアルミニウム溶解炉。
【請求項3】
前記出湯管から送られた溶湯を貯留する貯留手段と、該貯留手段を加熱してアルミニウムを溶湯のまま保持するための加熱手段を有する保持炉、
を備えるとともに、
前記加熱手段が、前記加熱室から回収された過熱蒸気を利用することを特徴とする請求項1又は2記載のアルミニウム溶解炉。
【請求項4】
前記炉体の炉壁が、
一層以上設けられた耐火煉瓦、
該耐火煉瓦の外側に設けられた断熱材、
該断熱材の外側を覆う外壁、
により形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアルミニウム溶解炉。
【請求項5】
前記耐火煉瓦が、吸水性を有することを特徴とする請求項4記載のアルミニウム溶解炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−186157(P2009−186157A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29625(P2008−29625)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(508041404)株式会社Z・E・T (5)
【Fターム(参考)】