説明

アルミニウム製品のろう付け用連続炉

【課題】急速加熱及び急速冷却しても、支持部が熱膨張や熱収縮で、搬送ローラが貫通するマッフルの孔が変形したり、位置が変化したりすることなく、搬送ローラを滑らかに支持できるアルミニウム製品のろう付け用連続炉。
【解決手段】加熱ゾーン及び水冷冷却ゾーンは、炉壁28及び水冷壁内にカーボンマッフル31及びカーボン床板を備えた加熱室及び水冷冷却ゾーンを有し、炉壁26の両側に密封されたボックス39を有し、搬送ローラハースは、複数の搬送ローラ19が搬送方向に並列されて成る搬送ローラ群を複数群備え、搬送ローラ19は、その両端がカーボンマッフル31の側壁35に形成された支持孔36を貫通して外側に伸び、ローラ支持軸37に同心的に固定され、複数の搬送ローラ19と連動する連動機構26が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム製品のろう付けのために利用され、加熱ゾーンと水冷冷却ゾーン及び空冷冷却ゾーンが連続的に配されたアルミニウム製品のろう付け用連続炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製品の加熱処理やろう付けのために加熱ゾーンと水冷冷却ゾーン及び空冷冷却ゾーンが連続的に配置され連続炉では、加熱処理すべき金属製品を搬送するための手段と、その問題点等は次のとおりである。
【0003】
(1)ベルトコンベア
熱処理する金属製品とともに熱容量が大きいベルトを加熱、冷却する為エネルギーの損失が大きい。また、搬送速度は一定であるため、水冷冷却室に急速送り込み急速冷却を行うことが出来ない。加熱ゾーンと水冷冷却ゾーン等、ゾーン毎に速度を調整しようとすると構造も複雑となり不適切である。なお、 金属メッシュベルトから成るベルトコンベアをアルミニウム製品のろう付け用連続炉に利用した構成は公知である(特許文献1参照)。
【0004】
(2)トレープッシャ
搬送速度は一定であるため、水冷冷却室に急速送り込み急速冷却を行うことが出来ない。また、熱処理する金属製品は熱容量の大きいトレーを使用して搬送(加熱、冷却)するためエネルギーの損失が大きい。
【0005】
なお、トレープッシャを利用した従来例として、連続炉において、被加熱処理品を載せた黒鉛性のトレーをプッシャー方式で加熱炉内に送り込み、その後、このトレーをローラハースによって冷却室内を搬送する構成は公知である(特許文献2参照)。
【0006】
(3)ローラハース
搬送は、ゾーン毎に搬送速度を搬送ローラの速度を可変することにより熱処理する金属製品を急速に加熱室又は冷却室内に送り込みすることが出来るので金属製品を急速加熱、冷却ができる。また、重量のある金属製品、密に載置した金属製品等の搬送を滑らかに行うことができる。炉の搬送手段としてローラハースを用いた技術自体は公知である(特許文献3、4参照)。
【0007】
ところで、アルミニウム製品のろう付けにおいては、加熱炉内で空気中で昇温されると、アルミニウム製品は酸化されやすく、ろう材、フラックスについても酸化されると、品質に支障を及ぼす。
【0008】
そこで、本出願人等は、炉内壁の内面をグラファイト等の炭素質で形成し、炉内に混入した微量酸素等を含む窒素の炉内雰囲気ガスを、炉内壁をなすグラファイト等の炭素質と接触させて微量のCOとし、炉内雰囲気ガスの酸素濃度を低く抑えるとともに、炉内のベルトコンベア(メッシュベルト)を覆うようにして、バッフルを設け、対流加熱を実現し且つ炉内の酸素濃度を低く保つアルミニウム製品のろう付け用連続炉をすでに提案している(特許文献1参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2004−050223号公報
【特許文献2】特開2004−143565号公報
【特許文献3】特開平08−233470号公報
【特許文献4】特開平08−313161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
アルミニウム製品のろう付け用連続炉において、ベルトコンベア及びトレープッシャのような搬送手段を用いる場合は、炉内にマッフルケースを設け、マッフルケース内に窒素ガス、アルゴンガス等不活性ガスを挿入ことによりマッフル内の酸素濃度を50ppm以下にすることが出来る。
【0011】
ところで、ベルトコンベア炉及びトレープッシャ炉においては、ベルト及びトレーの熱容量が大きいために、加熱、冷却する為エネルギーの損失が大きく、省エネルギー上も必ずしも好ましくない。また、ベルト及びトレーは、搬送速度は一定であるため、冷却室に急速送り込み急速冷却を行うことが出来ない。
【0012】
特に、近年、急速加熱及び急速冷却により、加熱、冷却に要する時間を短縮化し、アルミ材料の改質を図るとともに省エネルギーを図る要請が強い。例えば、アルミニウム製の熱交換器のフィン等では、薄くしかも強度を持たせるために合金元素を添加するが、このようなアルミニウム製品のろう付けでは、600℃で加熱してから300℃まで急冷するとより強度の効果が出るといわれている。このため従来は5〜6分必要であった冷却時間を3分程度にすることが要望されている。
【0013】
以上のように炉内の酸素濃度の低下、省エネルギー、送り速度の制御容易性、重量物の搬送等の観点から、金属製マッフルを設けたアルミニウム製品のろう付け用連続炉において、搬送手段としてローラハースを設けることが望ましい。
【0014】
しかしながら、炉内に金属製マッフルを設けたアルミニウム製品のろう付け用連続炉においては、搬送手段としてローラハースを設けたものは、従来、存在せず、そのような発想は皆無であった。
【0015】
その理由は、次のとおりと考えられる。アルミニウム製品のろう付け用連続炉において金属製マッフルを設けると、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で酸素濃度を低下させた状態での加熱処理が可能となり、品質維持のためにきわめて有益である。しかし、加熱炉内において金属製マッフルは加熱されることにより膨張が生じる。
【0016】
例えば、金属製マッフルを、熱膨張率が17×10−6−1の金属材料で形成すると、加熱炉内の温度が600℃の場合、1mにつき、10.2mm膨張することとなる。従って、長さが10m程度の金属製マッフルでは、全体として102mm膨張する。
【0017】
ところで、ローラハースにマッフルを設ける場合は、搬送ローラ両端の支持軸(回転軸)は、その両端が金属マッフルの側壁に形成される支持孔を貫通して回転可能に支持され、室温にたもたれた金属製マッフルの外側に配置される駆動機構が配置される。
【0018】
しかし、上記のとおり金属製マッフルは熱膨張が大きく、特に、加熱炉の長手方向(搬送方向)の熱膨張により、搬送ローラ両端の支持軸に対して支持孔の位置が大きく変化したり変形するためにローラ両端の支持軸を円滑に支持できず、また、支持軸、搬送ローラ又はマッフルの損傷の原因となり、炉内に空気の侵入をまねき炉内の酸素濃度の上昇の原因にもなる。
【0019】
よって、金属製マッフルを設けたアルミニウム製品のろう付け用連続炉では、搬送手段として、ローラハースを採用するようなことは、常識に反し、そのような発想はなかった。本発明の課題は、炉内の酸素濃度の低下、省エネルギー及び送り速度等の技術的要請を充たすために、金属製マッフルを設けたアルミニウム製品のろう付け用連続炉において、加熱炉内の搬送手段としてローラハースを採用する構成を実現することである。
【0020】
なお、特許文献2にはトレーをローラハースによって冷却室内を搬送する連続炉がすでに開示されている。しかしながら、この特許文献1記載の発明は、高温度に加熱された製品を急冷する際の急速な温度変化によるトレーの損傷を防止することを課題とし、この課題を解決するために、熱膨張係数が温度で一定な黒鉛のトレーを利用する構成を特徴とするものである。
【0021】
即ち、特許文献2記載の発明では、本発明のような加熱ゾーン、水冷冷却ゾーン及び空冷冷却ゾーンで搬送ローラにより搬送速度を調整可能とすることを課題とするものではなく、また、マッフルや搬送ローラ自体が膨張して搬送ローラに対するマッフルの支持部が変形し、滑らかに支持できない等の問題を課題とするものではない。この点は、特許文献1、3、4についても同様に、マッフルの熱変形とは全く関係ない発明である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は上記課題を解決するために、加熱ゾーン、水冷冷却ゾーン、空冷冷却ゾーン及びローラハースを備えたアルミニウム製品のろう付け用連続炉であって、前記加熱ゾーン及び前記水冷冷却ゾーンは、炉壁及び水冷壁内にカーボンマッフル及びカーボン床板を備えた加熱室及び水冷冷却ゾーンを有し、前記ローラハースは、複数の搬送ローラが搬送方向に並列されて成る搬送ローラ群を複数群備え、該搬送ローラ群毎にモータで独立的に駆動されるように形成されおり、前記搬送ローラは、その両端が前記カーボンマッフルの側壁及び水冷壁に形成された孔を貫通して外側に伸び、ローラ支持軸に同心的に固定されており、該ローラ支持軸は、炉壁及び水冷壁の外面に軸受を介して回転可能に軸支されていることを特徴とするアルミニウム製品のろう付け用連続炉を提供する。
【0023】
本発明は上記課題を解決するために、加熱ゾーン、水冷冷却、空冷冷却ゾーン及びローラハースを備えたアルミニウム製品のろう付け用連続炉であって、前記加熱ゾーンは、炉壁内にカーボンマッフルを備え炉内雰囲気ガスが供給される加熱室を有するとともに、炉壁の両側に密封されたボックスを有し、前記水冷冷却ゾーンは、水冷壁内にカーボン床板を備え、空冷冷却は冷却ブロアにより冷却される冷却室を有するとともに、壁の両側にボックスを有し、前記ローラハースは、複数の搬送ローラが搬送方向に並列されて成る搬送ローラ群を複数群備え、該搬送ローラ群毎にモータで独立的に駆動されるように形成されており、前記搬送ローラは、その両端が前記カーボンマッフルの側壁及び水冷壁に形成された孔を貫通して外側に伸び、ローラ支持軸に同心的に固定されており、該ローラ支持軸は、炉壁及び水冷壁を貫通して前記ボックス内に伸び、該炉壁外面に軸受を介して回転可能に軸支され、該ローラ支持軸の一端部には、前記ボックス内において当該ローラ支持軸が支持する搬送ローラが属する搬送ローラ群を構成する他の複数のローラと連動する連動機構が設けられていることを特徴とするアルミニウム製品のろう付け用連続炉を提供する。
【0024】
前記ボックス内に前記炉内雰囲気ガスが供給される構成とすることが好ましい。
【0025】
前記ボックス内において、前記搬送ローラ群を構成する複数のローラの1つを支持するローラ支持軸の端部に、モータで駆動される駆動機構が設けられている構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るアルミニウム製品のろう付け用連続炉は、次のような効果が生じる。
(1)炉内に設けたマッフルを、温度が変化しても熱膨張係数の変化が小さく安定したカーボン材料で形成したので、搬送ローラの支持軸を回転可能に支持するマッフルの支持孔の位置が熱膨張によって変化したり支持孔の変形が少なく、そのために、搬送ローラ及びその支持軸やマッフルを破損したりすることなく、スムースに滑らかに回転可能に支持し炉外の空気の侵入を防ぐ事ができる。
【0027】
(2)よりきめ細かく速度制御の可能なローラハースを搬送手段として利用する構成であるから、急速加熱及び急速冷却に対応してアルミニウム製品の炉内搬送速度を適切に調整することが可能となり、急速加熱及び急速冷却を可能とし、省エネルギー効果を高めること共に材料の改質に寄与する事とができる。
【0028】
(3)炉内に比較的熱容量の大きいベルトコンベアが走行しないので、ベルトコンベアの加熱に要する熱量がなくなり、省エネルギー効果を向上させ、しかも、大きな重量のアルミニウム製品も炉内を搬送可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明に係るアルミニウム製品のろう付け用連続炉を実施するための最良の形態を実施例に基づき図面を参照して、以下説明する。
【0030】
図1は、アルミニウム製品のろう付け用連続炉51の全体構成を示す図である。この連続炉51は、加熱炉52(加熱ゾーン)、徐冷室8、水冷冷却室53、空冷冷却室54を備えている。そして、加熱室52を通してローラハース55が設けられ、徐冷室8、水冷冷却室53を通してローラハース56が設けられさらに、空冷冷却室54を通してローラハース57が設けられている。ローラハース55、56、及び57は、それぞれモータ58、59及び60によって独立的に制御され駆動される構成である。
【0031】
この発明の特徴は、加熱炉52内のローラハース55を覆うマッフル(加熱炉内で設けたローラハースを覆うケース。図1では図示せず。)を設けた構成である。そのような構成は、前記したとおり、従来、常識に反する発想外の構成であったが、本発明では、マッフルとして熱膨張率の少ないグラファイトマッフルを採用することで、マッフルの熱膨張によるローラ支持軸の支持孔の変形や位置の変化等により生じる問題を解決できたのである。
【0032】
ちなみに、カーボンマッフルの材料を、熱膨張率2×10−6−1のカーボン材料で形成すると、加熱炉内の温度が600℃の場合、1mにつき、1.2mmしか膨張しない。従って、長さが10m程度のカーボンマッフルケースを用いた加熱炉では、全体として12mmしか膨張しないが、さらに、製造技術的にカーボンマッフルは積み木状に組み立てていくため、一枚のユニットの長さは500mm程度であり、その嵌合部には緩衝材を挿入するため実質上熱膨張によるマッフルの熱膨張によるローラ支持軸の支持孔の変形や位置の変化等は、まったく問題とならない。
【0033】
図1において、ローラハース55で加熱炉51内を搬送されるアルミニウム製品は600℃程度に加熱され、ろう付けが行われる。徐冷室8の室温は、500〜600℃であり、アルミニウム製品の徐冷が行われる。さらに、水冷冷却室53及び空冷冷却室54にて冷却される。
【0034】
本発明では、ローラハース55は、モータ58によってローラハース56とは独立してまた、ローラハース57はモータ60によって別個に駆動することができ、これにより、加熱室52で600℃程度に加熱されたアルミニウム製品を、徐冷室8、水冷冷却室53を通して搬送し、3分程度で、約300℃程度まで冷却することが可能となる。
【0035】
本発明では、以上の構成を採用することにより、カーボンマッフルによる酸素濃度の低下作用による品質の改善、ローラハースによる独立的な速度制御による冷却時間の短縮、熱容量が比較的低いローラハースの使用のよる省エネルギー等の複合的な効果を相乗的に生じると共にアルミ材料の改質がおこなわれる。以下、本発明の具体的な構成をさらに、実施例によって詳細に説明する。
【実施例】
【0036】
(構成)
図2は、本発明に係るアルミニウム製品のろう付け用連続炉の全体構成を説明する図である。ここでは、説明をより分かりやすくするために、加熱炉が比較的短い構造の実施例で説明をする。図3(a)は、図2の加熱室のA−A断面図を示す図で、その一部拡大図を図3(b)に示す。本発明に係るアルミニウム製品のろう付け用連続炉1は、加熱ゾーン2、水冷冷却ゾーン3、徐冷室8、空冷冷却ゾーン4及びローラハース5備えている。
【0037】
加熱ゾーン2は、加熱室入口6及び複数の加熱室7を備えている。加熱室入口6は上下方向に可動な入口扉9で開閉可能であり、加熱処理中は通常は若干開いており窒素等の炉内雰囲気ガスが入口扉9から排気する構成となっている。本実施例の加熱ゾーン2では、適宜、仕切り枠10で仕切られた3つの加熱室7−1、7−2、7−3が設けられており、ろう付けすべきアルミニウム製品11をヒータ12(図3(a)参照)で約600℃に加熱する。
【0038】
加熱室7には、窒素等の炉内雰囲気ガスが、外部から供給管50によって後記するボックス39を通って、3つの加熱室7内に導入される。そして、炉内雰囲気ガスは加熱室7内で図示しないファン等により循環されて、加熱室入口6や水冷冷却室出口18を通り出口扉17から排出するように構成されている。
【0039】
水冷冷却ゾーン3は水冷冷却室13を有する。水冷冷却室13は、水冷ジャケット方式の冷却室で例えば600℃位に加熱されたアルミニウム製品11を、約300℃程度に冷却する。
【0040】
空冷冷却ゾーン4の空冷冷却室は、上方に強制冷却ブロア15を備え、この強制冷却ブロア15でアルミニウム製品11を強制空冷冷却する室であるが、例えば水冷冷却室で約300℃迄冷却されたアルミニウム製品11を、室温+10℃程度に冷却する。
【0041】
水冷冷却室出口18は、上下方向に可動な出口扉17で開閉可能であり、通常加熱処理中はこの出口扉17が開かれており、水冷冷却室3内の窒素等の炉内雰囲気ガスが水冷冷却室出口18から排気される構成となっている。
【0042】
ローラハース5は、アルミニウム製品のろう付け用連続炉1において、ろう付けすべきアルミニウム製品11を、加熱室入口6から空冷冷却室出口16まで搬送する搬送手段である。このローラハース5は、複数の搬送ローラ19が搬送方向に並列されて成る搬送ローラ群を複数群20、21、22備え、搬送ローラ群毎にそれぞれ別のモータ22、23、24で独立的に駆動されるように形成される。搬送ローラ群20、21、22の搬送ローラ19を連動して回転させる連動機構26、及びローラ群毎に別の駆動モータ22、23、24で駆動される駆動機構27の詳細は後記する。
【0043】
次に、図3(a)、(b)により、本発明に係るアルミニウム製品のろう付け用連続炉1の具体的な構造をさらに説明する。加熱ゾーン2の炉壁28は、金属製の外壁29と、外壁の内側の断熱壁30とから成る。この断熱壁30で囲まれた空洞内に、カーボンマッフルとして、断面が矩形状のグラファイト外マッフル31(炭素材で形成されたトンネル状のマッフル)が配置されている。グラファイト外マッフル31は、炉内でCO+COを形成し、フラックスやアルミニウム製品11の酸化を低減する機能を奏する。
【0044】
グラファイト外マッフル31内にはグラファイト内マッフル33が設けられ、このグラファイト内マッフル33内の上下方向中央に加熱処理室32が設けられている。そして、グラファイト内マッフル33の上下には、それぞれヒータ12が水平にグラファイト外マッフル31を貫通し、炉壁28にブッシュ40を介して取り付けられて配置されている。
【0045】
グラファイト内マッフル33の内側にある加熱処理室32には、その下部にローラハース5が配置されている。ローラハース5は、搬送方向に間隔をおいて水平に設けられた複数本の搬送ローラ19から成る搬送ローラ群を有する。本発明のアルミニウム製品のろう付け用連続炉は、ローラハース5として、搬送ローラ群を複数群設け、各群毎に適宜、速度制御できるが、この実施例では、図2に示すように、加熱ゾーン2、水冷冷却ゾーン3及び空冷冷却ゾーン4に対応して3つの搬送ローラ群20、21、22を設けている。
【0046】
搬送ローラ群20、21、22の構成要素である搬送ローラ19は、その両端がグラファイト外マッフル31の両側の側壁35に形成された支持孔36を通して回転可能なように貫通しており、さらにその外端部はローラ支持軸37の内端に、グラファイトマッフル31の軸心とローラ支持軸37の軸心を一致させ、即ち同心的に固定されている。
【0047】
炉壁28の左右の両側には、金属製の板材38で形成され密封したボックス39が形成されている。左右のローラ支持軸37は、それぞれ炉壁28を貫通し、炉壁28に固定されたブッシュ34を通してさらにその外側のボックス39内まで延びている。左右のローラ支持軸37は、ボックス39内で、炉壁28の外壁29に固定された軸受41に回転可能に支持されている。
【0048】
左右のローラ支持軸37の少なくともいずれか一方は、本実施例では図3(a)、(b)に示すように、右側のローラ支持軸37は、軸受41からさらに外側に延びその外端部には、連動機構26が設けられている。即ち、ローラ支持軸37の外端部には、連動用スプロケット42が取り付けられている。搬送ローラ群20、21、22を構成する複数の搬送ローラ19の全てのローラ支持軸37の外端部にはこの連動用スプロケット42が取り付けられ、それらを連動するチェーン(図示せず。)が装架されている。
【0049】
そして、搬送ローラ群20、21、22を構成する複数の搬送ローラ19の所定の一つ、例えば、本実施例では図2に示す加熱ゾーン2の搬送ローラ19’のローラ支持軸37’にはさらにその外端には、駆動機構27が設けられている。即ち、このローラ支持軸37’の外端には、被被駆動用スプロケット43が取り付けられ、右側のボックス39の底部には、軸受41で支持された回転駆動軸44に駆動用スプロケット45が取り付けられている。
【0050】
ボックス39の外側において、回転駆動軸44には被駆動用スプロケット46が取り付けられ、チェーン47を介してモータ23のモータスプロケット48により回転駆動される。以上、加熱ゾーン2の搬送ローラ群20の駆動機構について説明したが、水冷冷却ゾーン3における搬送ローラ群21の連動機構26及び駆動機構27も同様な構成である。
【0051】
加熱室7の左右のボックス39には、窒素等の炉内雰囲気ガスの供給管50が接続されており、炉内雰囲気ガスが加圧状態で供給されるように構成されている。そして、炉壁28及びグラファイトマッフル31を貫通して装着されたブッシュ40とヒータ12の隙間から、炉内雰囲気ガスはグラファイト外マッフル31内に供給される構成となっている。グラファイト内マッフル33には図示しないが、炉内雰囲気ガスが通過する孔が形成されているので、これを通過し炉内雰囲気ガスは、加熱処理室32内に供給可能である。
【0052】
そして、ボックス39には炉内雰囲気ガスが加圧された状態で供給されるために、炉内に供給されている炉内雰囲気ガスが、ブッシュ40とヒータ12の隙間、或いは、搬送ローラ19及びローラ支持軸37がグラファイトマッフル31及び炉壁28へ取り付けられている部分の隙間等から漏れ出ることを阻止している。
【0053】
なお、水冷冷却室13の底部には、図示しないが、カーボン床板(カーボン製の床板)が配設されており、水冷冷却室13内においても酸素濃度の低下作用による品質の改善等を図っている。
【0054】
(作用)
以上の構成から成るアルミニウム製品のろう付け用連続炉1の作用を以下に説明する。モータ23、24、25が回転すると、モータスプロケット48、チェーン47、被駆動用スプロケット46、回転駆動軸44、駆動用スプロケット45、チェーン47、及び被駆動用スプロケット43を介してローラ支持軸37が回転する。そして、ローラ支持軸37に固定された連動用スプロケット42が回転し、図示しないチェーンを介して搬送ローラ群20、21、22の複数のローラ支持軸37及び搬送ローラ19を回転する。
【0055】
窒素等の炉内雰囲気ガスは、供給管50からボックス39内及び徐令室内8に送り込まれる。ボックス39内に送り込まれた炉内雰囲気ガスは、ブッシュ40とヒータ12の隙間からグラファイト外マッフル31内に供給される。あわせて徐冷室から供給された導入ガスと共に炉内雰囲気ガスはグラファイト内マッフル33内に充満し加熱室7内の酸化を低減するとともに、水冷冷却室13内に送り込まれ、出口扉17から排気される。供給管50から送り込まれた炉内雰囲気ガスは、加熱室入口6からも外部に排気される。
【0056】
加熱処理すべきアルミニウム製品11は、加熱室入口6からローラハース5に載せて装架すると、加熱室7内に搬入されて前方に搬送されながら600℃程度で加熱処理が行われる。さらに徐冷室8から水冷冷却室13を通過して300℃程度に冷却され、空冷冷却室14に搬入される。そして、空冷冷却室出口16から取り出される。
【0057】
このアルミニウム製品のろう付け用連続炉1では、加熱ゾーン2及び冷却ゾーン3に対応してそれぞれ搬送ローラ群20、21、22を設け、それぞれ別のモータ23、24、25により独立して駆動しているので、それぞれのゾーンにおける必要処理時間に対応して、搬送ローラ群20、21、22の搬送速度を適宜、調整することができる。
【0058】
そして、アルミニウム製品11の加熱処理用連続炉アルミニウム製品のろう付け用連続炉1では、搬送ローラ19は、グラファイトマッフル31の側壁35の支持孔36を貫通して外方に伸びているが、加熱室7内が約600℃程度に加熱されても、グラファイトマッフル31の熱膨張率は小さい。従って、熱膨張に起因して、搬送ローラ19が貫通するグラファイトマッフル31の支持孔36が変形したりその位置が変化したりすることがない。そのため、搬送ローラ19及びそのローラ支持軸37が損傷したりすることもなく、円滑な回転が保証される。
【0059】
以上、本発明に係るアルミニウム製品のろう付け用連続炉を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上、本発明を説明したが、本発明に係るアルミニウム製品のろう付け用連続炉は、連続炉を複数の搬送ローラ群で適宜、速度を調整して搬送可能とするものであり、アルミニウム製品のろう付けに適用するものであるが、金属の浸炭、焼鈍、焼結等の連続炉、或いはろう付け用の連続炉等、各種の金属熱処理用の連続炉にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係るアルミニウム製品のろう付け用連続炉の全体構成を示す。
【図2】本発明に係るアルミニウム製品のろう付け用連続炉の実施例の全体構成を示す。
【図3】(a)は図2のA−A断面図を示し、(b)は要部拡大図である。
【符号の説明】
【0062】
1、51 アルミニウム製品のろう付け用連続炉
2 加熱ゾーン
3 水冷冷却ゾーン
4 空冷冷却ゾーン
5 ローラハース
6 加熱室入口
7 加熱室
8 徐冷室
9 入口扉
10 仕切り枠
11 ろう付けすべきアルミニウム製品
12 ヒータ
13 水冷冷却室
14 空冷冷却室
15 強制冷却ブロア
16 空冷冷却室出口
17 出口扉
18 水冷冷却室出口
19、19’ 搬送ローラ
20、21、22 搬送ローラ群
23、24、25 モータ
26 連動機構
27 駆動機構
28 炉壁
29 金属製の外壁
30 外壁の内側の断熱壁
31 グラファイト外マッフル
32 加熱処理室
33 グラファイト内マッフル
34 ブッシュ
35 グラファイトマッフルの両側の側壁
36 側壁に形成された支持孔
37、37’ ローラ支持軸
38 金属製の板材
39 ボックス
40 ブッシュ
41 軸受
42 連動用スプロケット
43 被駆動用スプロケット
44 回転駆動軸
45 駆動用スプロケット
46 被駆動用スプロケット
47 チェーン
48 モータスプロケット
49 支持フレーム
50 炉内雰囲気ガスの供給管
52 加熱炉
53 水冷冷却室
54 空冷冷却室
55、56、57 ローラハース
58、59、60 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱ゾーン、水冷冷却ゾーン、空冷冷却ゾーン及びローラハースを備えたアルミニウム製品のろう付け用連続炉であって、
前記加熱ゾーン及び前記水冷冷却ゾーンは、炉壁及び水冷壁内にカーボンマッフル及びカーボン床板を備えた加熱室及び水冷冷却ゾーンを有し、
前記ローラハースは、複数の搬送ローラが搬送方向に並列されて成る搬送ローラ群を複数群備え、該搬送ローラ群毎にモータで独立的に駆動されるように形成されおり、
前記搬送ローラは、その両端が前記カーボンマッフルの側壁及び水冷壁に形成された支持孔を貫通して外側に伸び、ローラ支持軸に同心的に固定されており、
該ローラ支持軸は、炉壁及び水冷壁の外面に軸受を介して回転可能に軸支されていることを特徴とするアルミニウム製品のろう付け用連続炉。
【請求項2】
加熱ゾーン、水冷冷却ゾーン、空冷冷却ゾーン及びローラハースを備えたアルミニウム製品のろう付け用連続炉であって、
前記加熱ゾーンは、炉壁内にカーボンマッフルを備え炉内雰囲気ガスが供給される加熱室を有するとともに、炉壁の両側に密封されたボックス有し、
前記水冷冷却ゾーンは、水冷壁内にカーボン床板を備え、空冷冷却ゾーンはブロアにより冷却される冷却室を有するとともに、壁の両側に密封されたボックスを有し、
前記ローラハースは、複数の搬送ローラが搬送方向に並列されて成る搬送ローラ群を複数群備え、該搬送ローラ群毎にモータで独立的に駆動されるように形成されており、
前記搬送ローラは、その両端が前記カーボンマッフル及び水冷壁の側壁、空冷冷却室の壁に形成された支持孔を貫通して外側に伸び、ローラ支持軸に同心的に固定されており、
該ローラ支持軸は、炉壁、水冷壁及び空冷壁を貫通して前記ボックス及びボックス内に伸び、該炉壁外面に軸受を介して回転可能に軸支され、該ローラ支持軸には、前記ボックス内において当該ローラ支持軸が支持する搬送ローラが属する搬送ローラ群を構成する他の複数のローラと連動する連動機構が設けられていることを特徴とするアルミニウム製品のろう付け用連続炉。
【請求項3】
前記ボックス内に前記炉内雰囲気ガスが供給されることを特徴とする請求項2記載のアルミニウム製品のろう付け用連続炉。
【請求項4】
前記ボックス内において、前記搬送ローラ群を構成する複数のローラの1つを支持するローラ支持軸の端部に、モータで駆動される駆動機構が設けられていることを特徴とする請求項2又は3記載のアルミニウム製品のろう付け用連続炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−105044(P2008−105044A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289251(P2006−289251)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000157072)関東冶金工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】