説明

アルミ合金製シリンダスリーブの製造方法

【課題】原料粉末を出発材料にして製造するアルミ合金製シリンダスリーブの形状精度を、生産性の低下やコストアップなどを回避しながら高められるようにすることを課題としている。
【解決手段】原料粉末を加圧して得たリング状の成形体10を、下1、下2パンチ1,2、上1、上2パンチ3,4、コア5及びダイ6を組み合わせた金型7のキャビティに装填して背圧を加え、その成形体10の押し出し先端を固める。次いで、下1パンチ1を下降させながら好ましくは押し出し比10以上で成形体を押し出し加工し、下2パンチ2とコア5との間に生じた環状隙間9から材料を下向きに押し出して単品のシリンダスリーブ20を得るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関に用いるアルミ合金製シリンダスリーブの製造方法、特に、原料粉末を出発材料にして鍛造法で製造するアルミ合金製シリンダスリーブの形状精度を、生産性の低下やコストアップなどを回避しながら高められるようにした製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のシリンダブロックのシリンダ孔に鋳込みや圧入などで取り付けて使用されるアルミ合金製シリンダスリーブを、アルミ合金の粉末を出発材料にして製造する場合、冷間等方圧加圧法(CIP法)で成形した成形体(ビレット)を熱間で押し出し加工して長尺の押出材を製作し、これを所定長さに切断する製法が一般的に採用されている。押出材は、例えば、外径:70〜90mm、長さ:6m程度とし、これを70〜90mm程度の長さに切断して目的のシリンダスリーブを得ている。
【0003】
ほかにも、下記特許文献1が開示しているように、アルミニウム合金の粉末を溶解、凝固させずに固化し、次いで、得られたスリーブ素材を金型で鍛造して有底円筒状の成形素材となし、その成形素材の底部を機械加工して除去する方法がある。
【特許文献1】特開2000−38956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した一般的な製法では、熱間押し出しによって製造される押出材が長尺であるため自重による変形(撓みや真円度の悪化)が避けられない。また、押出材の先頭〜後尾の間での押し出し状態の変化による厚み寸法の変化やテーパ外径のマンドレルを使用することによる最後尾の寸法変化も起こり、製品の形状精度を高めるのが難しい。
【0005】
また、形状精度が高まらないために不良品や使用できない部分が発生し、材料の浪費につながってコストが上昇する。これに加え、製造設備が大掛かりで設備費もかさみ、製品価格に悪影響がでる。
【0006】
なお、特許文献1の方法は後方押出し鍛造であり、押出された品物はダイ及び上パンチの両方から摩擦を受ける。そのため、鍛造圧力が高くなり、潤滑等の問題が生じてくる。
【0007】
この発明は、粉末を出発材料にして製造するアルミ合金製シリンダスリーブの形状精度を生産性の低下やコストアップ、潤滑の問題などを回避しながら高められるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、この発明においては、粉末の成形体を鍛造してアルミ合金製シリンダスリーブを製造する。詳しくは、原料粉末を金型で加圧してリング状の成形体を得る粉末成形工程、得られた成形体に金型で背圧を加えてその成形体の押し出し先端を固める背圧付与工程、背圧付与後の成形体を前記金型で押し出し加工してシリンダスリーブを形成する鍛造工程を経てアルミ合金製シリンダスリーブを得る。
この方法における鍛造は、温間または熱間鍛造とするのがよく、また、このときの成形体の温度は、好ましくは370〜430℃、金型の温度は200〜380℃とするのがよい。さらに、この鍛造における押し出し比は、10以上とするのがよい。
【0009】
この製造方法の好ましい具体例を以下に挙げる。
(1)円筒状の下1パンチと、その下1パンチの外周に同心的に配置する円筒状の下2パンチと、下1パンチに対向させる円筒状の上1パンチと、この上1パンチの外周に同心的に配置して下2パンチに対向させる円筒状の上2パンチと、上1パンチの内側に上側から貫通させて挿入するコアと、成形孔を有するダイとを備えた金型を使用し、
この金型の下1、下2、上1、上2の各パンチとダイとコアとの間に形成されるキャビティに粉末成形工程で得られた成形体を装填し、この成形体に上下のパンチで背圧を加えて成形体の押し出し先端を固め、しかる後、下1パンチの引き下げと上1、上2パンチの押し下げを行い、下2パンチとコアとの間に生じた環状隙間から材料を下向きに押し出してシリンダスリーブを得る方法。
(2)上記(1)の方法の金型のコアを、下1パンチの内側に下側から貫通させて挿入するコアに置き換えた金型を使用し、
この金型の下1、下2、上1、上2の各パンチとダイとコアとの間に形成されるキャビティに粉末成形工程で得られた成形体を装填し、この成形体に上下のパンチで背圧を加えて成形体の押し出し先端を固め、しかる後、上1パンチの引き上げと上2パンチの押し下げを行い、上2パンチとコアとの間に生じた環状隙間から材料を上向きに押し出してシリンダスリーブを得る方法。
【0010】
なお、鍛造を行うときに金型で成形体に背圧を加えることが難しければ、粉末成形工程において得られたリング状の成形体を事前に鍛造して固める予備鍛造工程を設け、予備鍛造後の成形体を鍛造工程において押し出し加工するとよい。このときの押し出し比も10以上にすると好ましい。
【0011】
その予備鍛造を行うときには、シリンダスリーブの鍛造を、下1パンチと上1パンチの無い金型や上1パンチの無い金型を使用して行うことができる。
【0012】
各々が円筒状の下パンチと上パンチ、上パンチの内側に上側から貫通させて挿入するマンドレル、および成形孔を有するダイを備えた金型を使用し、この金型の上下の各パンチとダイとマンドレルとの間に形成されるキャビティに予備鍛造後の成形体を装填し、しかる後、上パンチの押し下げを行い、上パンチとマンドレルとの間に生じた環状隙間から材料を上向きに押し出してシリンダスリーブを得る。
【0013】
この方法での下パンチを、下1パンチとその下1パンチの外周に同心的に配置する下2パンチとで構成されるものに代え、予備鍛造後の成形体をキャビティに装填した後、下1パンチ1の引き下げと上パンチの押し下げを行って下2パンチとマンドレルとの間に生じた環状隙間から材料を下向きに押し出す方法でも所望のシリンダスリーブが得られる。
【発明の効果】
【0014】
この発明の製造方法によれば、粉末成形体を鍛造して単品のシリンダスリーブに形成するので、長尺押出材を製造するときの自重によるスリーブの変形や押し出し状態の変化による寸法変化が起こらず、製品の形状精度が向上する。
【0015】
そのために、不良発生率が低減され、仕上げ加工代を小さくしてシリンダスリーブの肉厚を薄くすることも可能になる。また、底の無いスリーブを押し出すので、鍛造後に成形素材の底部を除去する必要がなく、これらによって材料歩留まりが向上し、コストが低減される。さらに、所定長さにするための切断工程や成形素材の底部の除去工程がないので生産性も向上する。長尺材を押し出す方法に比べると設備も簡素化され、鍛造プレス機と金型があれば製造可能であるので設備費の面でも有利になる。
【0016】
また、この発明の方法における鍛造は、基本的には押出しであり、押出された後の品物(シリンダスリーブ)には摩擦が全く作用しないため、前掲の特許文献1の方法に比較してより低圧で押出しを行うことができ、潤滑の問題も発生しない。
【0017】
なお、温間や熱間で行う鍛造は、冷間鍛造に比べて鍛造圧が低くて済み、金型の損耗も抑制される。このときの、成形体の温度は、低すぎると鍛造性が悪くなり、高すぎると材料の変質などの問題が起こる。また、金型の温度が低すぎると成形体の温度が奪われて鍛造性が悪くなり、高すぎると金型の耐久性が損なわれやすくなるので、上記の好ましいとした範囲にするのがよい。
【0018】
また、鍛造時の押し出し比を10以上にすると、予備鍛造を行っていない成形体を用いたときにも良好な鍛造性を確保しやすい。押し出し比が大きくなるほど成形体の断面積が増えてパンチの端面に加わる面圧が小さくなるため、パンチの損傷が抑制され、また、同時に、成形体の長さが短くなってパンチのストロークも小さくて済むようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明のアルミ合金製シリンダスリーブの製造方法の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、アルミニウム合金の原料粉末を加圧して得られた成形体を示している。この成形体10は、所望のシリンダスリーブを1個作るのに必要な量の原料粉末をプレス成形して作られたものであり、リング形状をなしている。また、真密度の80%程度の密度を有するものになっている。長尺押出材を製造する方法で使用する成形体は、CIP法で成形する必要があり、大掛かりな成形設備を要するが、シリンダスリーブ1個分の原料粉末を固めた成形体10は、簡単な粉末成形プレスで成形でき、これも設備費削減の効果をもたらす。
【0020】
図1の成形体10を据込み鍛造する金型の一例と、その金型を用いたこの発明のアルミ合金製シリンダスリーブの製造方法の一例を、図2、図3に示す。図2の金型7は、円筒状の下1パンチ1、その下1パンチ1の外周に同心的に配置する円筒状の下2パンチ2、下1パンチ1に対向させる円筒状の上1パンチ3、上1パンチ3の外周に同心的に配置して下2パンチ2に対向させる円筒状の上2パンチ4、上1パンチ3の内側に上側から貫通させて挿入するコア5、および成形孔6aを有するダイ6を組み合わせて構成されている。下2パンチ2は、先端部の内径を下1パンチの外周に適合して嵌る大きさにし、先端部を除く部分の内径は先端部の内径よりも大きくしたものを用いている。
【0021】
図2では、各パンチ、コア、ダイの支持要素をいずれも省略したが、下1パンチ1は昇降機構を備える下パンチプレートに、下2パンチ2はベースプレートに、上1パンチ3は昇降機構を備える上1パンチプレートに、上2パンチ4はプレス機の上ラムに駆動される上2パンチプレートに、コア5はプレス機の上ラムに、ダイ6はプレス機の下ラムに駆動されて昇降するダイプレートにそれぞれ支持される。
【0022】
下1パンチ1は、鍛造時の押し出し比が10以上となるように、軸直角断面の面積を、同じ方向に切断した成形体10の断面積の1/10以下にしている。
【0023】
このように構成した図2の金型7は、各パンチ1〜4とコア5とダイ6との間に作り出されるキャビティ8に、好ましくは370〜430℃に加熱した成形体10を装填し、その後、上1、上2の各パンチ3,4とコア5を降下させて図2の状態となす。そしてこの状態から鍛造を開始し、その初期に上下のパンチで成形体10を加圧してその成形体の少なくとも押し出し先端(下1パンチ1の先端が接触している部分)を固める。下1パンチ1の引き下げと上1、上2パンチ3,4の押し下げを行い、図3に示すように、下2パンチ2の内周とコア5の外周との間に生じた環状隙間9から材料を下向きに押し出してシリンダスリーブ20を形成する。そのシリンダスリーブは、外径70〜90mm、長さ70〜80mm程度のものが既に提供されており、この発明の方法で製造するものも同様のサイズのものが多くなると考えられる。これよりも小さいサイズ、大きいサイズのシリンダスリーブも勿論製造可能である。
【0024】
なお、この方法では、金型7も、好ましくは、200〜380℃程度に加熱して据込み鍛造を行うと好ましい。また、材料を完全に押しきってキャビティ8内にディスカード(薄い板状物)が残らないようにするのがよい。上1パンチ3が図3に示すように下2パンチ2の内側に入り込み、この状態で下2パンチ2と上2パンチ4の先端間にシリンダスリーブから切り離されたディスカードが残ることも考えられるが、そのときには、残存したディスカードを回収して次の工程に備える。押し出し成形されたシリンダスリーブ20は、ダイ6を下2パンチと面が揃う高さまで引き下げ、この状態で下1パンチ1で突き上げて下2パンチ2の内側から取り出すことができる。
【0025】
図1の成形体10を据込み鍛造する金型の他の例を図4に示す。この金型7は、図2の金型のコア5に代えて下1パンチ1の内側に下側から貫通させて挿入するコア5Aを設け
、さらに、下2パンチ2は内径が全長において等しく、上2パンチ4は、先端部を除く部分の内径を先端部の内径よりも大きくしたものを用いており、各パンチとコアの上下関係を図2の金型とは逆にしたものと考えてよい。コア5Aは、プレス機の下ラム(図示せず)に支持され、上下の各パンチ1〜4とダイ6は、図2の金型と同様の要素によって同様に支持される。
【0026】
この図4の金型7を用いた据込み鍛造は、以下のようにして行われる。すなわち、各パンチ1〜4とコア5とダイ6との間に形成されるキャビティ8に図1の成形体を装填し、その後、上1、上2の各パンチ3,4を降下させ、鍛造の初期に上下のパンチでキャビティ内の成形体を加圧してその成形体の少なくとも押し出し先端を固める。そして、この後に上1パンチ3の引き上げと上2パンチ4の押し下げを行い、上2パンチ4の内周とコア5Aの外周との間に生じた環状隙間9から材料を下向きに押し出してシリンダスリーブ20を形成する。押し出し後に下パンチと上パンチ間にディスカードが残ったときには、下1パンチ1と上2パンチ4でディスカードをせん断してシリンダスリーブ20から取り除くことができる。
【0027】
図2、図3の方法は、ダイ6を固定した状態で上パンチを押し下げて成形体を加圧する直接押し出し法となっているのに対し、図4の方法は、上1、上2の各パンチを3,4を降下させて成形体を加圧するときにダイ6を上パンチに追従させて下降させる間接押し出し法となっている。この間接押し出し法は、成形体とダイの摩擦抵抗が直接押し出し法よりも小さくなるため、鍛造圧が小さくて済む利点がある。
【0028】
図5は、図1の成形体10を据込み鍛造する金型のさらに他の例である。この金型7は、各々が円筒状の下パンチ11と、これに対向させた上パンチ12と、上パンチ12の内側に上側から貫通させて挿入したマンドレル13と、成形孔6aを有するダイ6を組み合わせたものになっている。マンドレル13は鍛造中に定位置に保持されるフィックスマンドレルであり、図2の金型のコア5に代わる要素として用いられている。
【0029】
据込み鍛造用の金型で成形体に必要な背圧を加えることができないときには、粉末成形工程において得られたリング状の成形体を事前に金型で鍛造して固める予備鍛造工程を設け、予備鍛造後の成形体を据込み鍛造工程において押し出し加工するとよい。このときに使用する据込み鍛造用の金型は、図5に示すものなどでよい。図5の金型7は間接押し出しを行うものであって、図2、図4の金型に含まれる下1パンチと上1パンチが存在せず、簡素化されたものになっている。
【0030】
なお、成形体を予備鍛造して用いる場合には、成形体の密度を予備鍛造なしの場合よりも高めることが可能であり、押し出し比が10以下でも鍛造の安定性を確保できるが、この場合も、押し出し比は10以上とするのがよい。押し出し比が大きくなるほど成形体の断面積が大きくなるため、鍛造圧によるパンチのダメージを軽減することができる。また、成形体の長さが短くなるため鍛造時のパンチストロークも短縮され、鍛造プレス機の小型化につながる。
【0031】
予備鍛造を行う前の成形体10と、予備鍛造を行った後の成形体10Aを図6に示す。
予備鍛造後の成形体10Aを、図5の金型7の各構成要素によって形成されるキャビティ8に装填し、しかる後、上パンチ12を押し下げ、上パンチ12の先端の内周とマンドレル13の先端外周との間に生じた環状隙間9から材料を上向きに押し出してシリンダスリーブ20を形成する。
【0032】
図7に示すように、環状隙間9を下パンチの先端の内周とマンドレル13の先端外周との間に生じさせてシリンダスリーブ20を下向きに押し出すこともできる。この方法を採用するときには、同心配置の下1パンチ1と下2パンチ2を組み合わせた下パンチと、マンドレル13の先端外径と対応した内径を有する上パンチ12と、マンドレル13と、ダイ6を組み合わせた金型7を使用すると、押し出し成形されたシリンダスリーブ20を下1パンチ1で突き上げて下2パンチ2の内側から取り出すことができる。
【0033】
なお、図5、図7の金型による鍛造では、パンチによる材料の押しきりが完全になされなかったときに、製造されたシリンダスリーブ20の押し出し後端に図8に示すように一体のディスカード21が残ることが考えられる。そのときには、別工程でディスカード21を打ち抜き加工するなどしてシリンダスリーブ20から取り除く。
【0034】
以下に、より詳細な実施例を挙げる。
質量比でSi:17%、Fe:5%、Cu:3.5%、Mg:1%、Mn:0.5%、アルミナ:3%、黒鉛0.5%、残部Alの組成の急冷凝固法で得られたアルミニウム合金粉末{住友電気工業社製 スミアルタフ(商標) #209}を出発材料にし、図2の金型を用いるこの発明の製造方法と、CIP法で原料粉末を成形し、得られた大サイズの成形体(ビレット)を熱間で押し出し加工して長尺の押出材を製作し、これを所定長さに切断する従来法によって同一仕様のアルミ合金製シリンダスリーブを製造した。そのシリンダスリーブは、内径側が真円の孔で、外径側には長手方向に伸びたシリンダブロックに係合する高さが1mmにも満たない凸条を周方向に定ピッチで多数有する形状になっている。
【0035】
この発明の方法による製造は、密度80%(真密度に対する比率)の粉末成形体を、400℃に加熱して200〜300℃の範囲に加温された金型にセットし、その成形体を押し出し比10.5の条件で、外径73mm、内径60mm、長さ80mmのシリンダスリーブに押し出す方法で行った。
【0036】
また、従来法による製造は、CIP法で成形した成形体を460℃に加熱し、これを押し出し加工して外径73mm、内径60mm、全長6mの押出材を製作し、これを長さ75mmに切断する方法で行った。
【0037】
その結果、従来法では、全長6mの押出材が自身の重量で垂れ下がることによって歪が生じ、真円度が悪化して押出材中央部の約1mの長さ範囲部分が製品として使用できなかった。
また、押出材先頭部〜後尾部での外径寸法ばらつきが0.6mm発生し、目標寸法をオーバーするものが発生した。
そして、さらに、マンドレル外径のテーパーが押出材内径にそのまま転写されるため、マンドレルの最も外径が大きい部分、すなわち、押出材内径が最も大きい部分でも加工代が確保できるようにしなければならず、その結果、マンドレルの外径が小さい部分では加工代が不必要に大きくなってしまった。
【0038】
これに対し、この発明の方法で製造されたシリンダスリーブは、真円度、外径寸法精度に優れ、長さ方向の各部での肉厚変動もほとんど見られず、従来法で製造されるシリンダスリーブよりも仕上げ加工代を小さくして肉厚を薄くすることが可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】アルミニウム合金の原料粉末を加圧して得られる成形体の斜視図
【図2】この発明の製造方法の一例を示す断面図
【図3】図2の金型でシリンダスリーブの押し出しを行った状態を示す断面図
【図4】この発明の製造方法の他の例を示す断面図
【図5】この発明の製造方法のさらに他の例を示す断面図
【図6】予備鍛造を行う前の成形体と予備鍛造した成形体を示す斜視図
【図7】図5の金型の下パンチを第1、第2の下パンチで構成されるものに代えて材料を下向きに押し出す例を示す断面図
【図8】製造されたシリンダスリーブに残ったディスカードの打ち抜き除去の説明図
【符号の説明】
【0040】
1 下1パンチ
2 下2パンチ
3 上1パンチ
4 上2パンチ
5,5A コア
6 ダイ
6a 成形孔
7 金型
8 キャビティ
9 環状隙間
10 成形体
10A 予備鍛造後の成形体
11 下パンチ
12 上パンチ
13 マンドレル
20 シリンダスリーブ
21 ディスカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料粉末を金型で加圧してリング状の成形体(10)を得る粉末成形工程、得られた成形体に金型(7)で背圧を加えてその成形体の押し出し先端を固める背圧付与工程、背圧付与後の成形体を前記金型(7)を用いて押し出し加工する鍛造工程を経てシリンダスリーブ(20)を得るアルミ合金製シリンダスリーブの製造方法。
【請求項2】
円筒状の下1パンチ(1)と、その下1パンチ(1)の外周に同心的に配置する円筒状の下2パンチ(2)と、下1パンチ(1)に対向させる円筒状の上1パンチ(3)と、この上1パンチ(3)の外周に同心的に配置して下2パンチ(2)に対向させる円筒状の上2パンチ(4)と、上1パンチ(3)の内側に上側から貫通させて挿入するコア(5)と、成形孔(6a)を有するダイ(6)を備えた金型(7)を使用し、
この金型(7)の下1、下2、上1、上2の各パンチ(1〜4)とコア(5)とダイ(6)との間に形成されるキャビティ(8)に前記成形体(10)を装填し、この成形体(10)に上下のパンチで背圧を加えて成形体の押し出し先端を固め、しかる後、下1パンチ(1)の引き下げと上1、上2パンチ(3,4)の押し下げを行い、下2パンチ(2)とコア(5)のとの間に生じた環状隙間(9)から材料を下向きに押し出してシリンダスリーブ(20)を得る請求項1に記載のアルミ合金製シリンダスリーブの製造方法。
【請求項3】
各々が円筒状の下1パンチ(1)と、その下1パンチ(1)の外周に同心的に配置する下2パンチ(2)と、下1パンチ(1)に対向させる円筒状の上1パンチ(3)と、上1パンチ(3)の外周に同心的に配置して下2パンチ(2)に対向させる円筒状の上2パンチ(4)と、下1パンチ(1)の内側に下側から貫通させて挿入するコア(5A)と、成形孔(6a)を有するダイ(6)を備えた金型(7)を使用し、
この金型(7)の下1、下2、上1、上2の各パンチ(1〜4)とコア(5)とダイ(6)との間に形成されるキャビティ(8)に前記成形体(10)を装填し、この成形体(10)に上下のパンチで背圧を加えて成形体の押し出し先端を固め、しかる後、上1パンチ(3)の引き上げと上2パンチ(4)の押し下げを行い、上2パンチ(4)とコア(5)との間に生じた環状隙間(9)から材料を上向きに押し出してシリンダスリーブ(20)を得る請求項1に記載のアルミ合金製シリンダスリーブの製造方法。
【請求項4】
原料粉末を金型で加圧してリング状の成形体(10)を得る粉末成形工程、得られた成形体を金型(7)で加圧して固める予備鍛造工程、予備鍛造後の成形体(10A)を金型(7)を用いて押し出し加工する鍛造工程を経てシリンダスリーブ(20)を得るアルミ合金製シリンダスリーブの製造方法。
【請求項5】
各々が円筒状の下パンチ(11)と、これに対向した上パンチ(12)と、上パンチ(12)の内側に上側から貫通させて挿入するマンドレル(13)と、成形孔(6a)を有するダイ(6)を備えた金型(7)を使用し、
この金型(7)の上下の各パンチ(11,12)とマンドレル(13)とダイ(6)との間に形成されるキャビティ(8)に予備鍛造後の成形体(10A)を装填し、しかる後、上パンチ(12)の押し下げを行い、上パンチ(12)とマンドレル(13)との間に生じた環状隙間(9)から材料を上向きに押し出してシリンダスリーブ(20)を形成する請求項4に記載のアルミ合金製シリンダスリーブの製造方法。
【請求項6】
各々が円筒状の下1パンチ(1)と、その下1パンチ(1)の外周に同心的に配置する下2パンチ(2)と、下1、下2の各パンチに対向させた上パンチ(12)と、上パンチ(12)の内側に上側から貫通させて挿入するマンドレル(13)と成形孔(6a)を有するダイ(6)を備えた金型(7)を使用し、
この金型(7)の上下の各パンチ(1,2,12)とマンドレル(13)とダイ(6)との間に形成されるキャビティ(8)に予備鍛造後の成形体(10A)を装填し、しかる後、下1パンチ(1)の引き下げと上パンチ(12)の押し下げを行い、下2パンチ(2)とマンドレル(13)との間に生じた環状隙間(9)から材料を下向きに押し出してシリンダスリーブ(20)を形成する請求項4に記載のアルミ合金製シリンダスリーブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−126251(P2008−126251A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311736(P2006−311736)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(593016411)住友電工焼結合金株式会社 (214)
【Fターム(参考)】