アレイアンテナ装置
【課題】振幅分布が一様である複合ユニットを用いた場合であってもサイドローブを低減させることができるアレイアンテナ装置を提供する。
【解決手段】一列に配置された複数のアンテナ素子を制御する給電回路33、34における振幅分布が一様な複合ユニット3を複数配列することによりアンテナ開口面が形成されたアレイアンテナ装置であって、アンテナ開口面は、一方向に配列された複数の複合ユニット3と該一方向と交差する交差方向に配列された複数の複合ユニット3とによって擬似円状に形成されている。
【解決手段】一列に配置された複数のアンテナ素子を制御する給電回路33、34における振幅分布が一様な複合ユニット3を複数配列することによりアンテナ開口面が形成されたアレイアンテナ装置であって、アンテナ開口面は、一方向に配列された複数の複合ユニット3と該一方向と交差する交差方向に配列された複数の複合ユニット3とによって擬似円状に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナ素子が配列されたアレイアンテナ装置に関し、特にサイドローブのレベルを低下させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の送受信モジュールや移相器を配列してなるアレイアンテナ装置が知られている。このようなアレイアンテナ装置では、コストを低減するために、複数の送受信モジュールや移相器を纏めて複合ユニットを構成し、この複合ユニットをさらに複数配列することによりアンテナ開口面が形成されている。各複合ユニットは、共通に使用することによる低コスト化を可能にするために、振幅分布が一様になるように構成されている。
【0003】
ところで、アンテナ開口面を大きくするためには、複数の複合ユニットを多段に配列する必要がある。この場合、例えば、図11(b)に示すように、複数の複合ユニットを矩形状に均一に配列するのが一般的である。
【0004】
しかしながら、各複合ユニットの振幅分布が一様であると、図11(a)に示すように、アンテナ開口面全体の振幅分布も一様になるので、指向性利得を高くすることができるが、サイドローブのレベルが高くなるという問題がある(非特許文献1参照)。
【0005】
また、複数の複合ユニットを多段に配列する場合に、複合ユニットの筐体の形状に起因して、複合ユニット間に隙間ができる場合がある。この場合は、振幅分布に段差ができることになり、更にサイドローブのレベルが高くなるという問題がある。
【0006】
さらに、従来のアレイアンテナ装置では、図12に示すように、アンテナ開口面を開口Aと開口Bとに2分割して、開口Aと開口Bの出力の和によりΣビームを、また、開口Aと開口Bの出力の差によりΔビームを形成している。この構成によれば、移相器は1種類でよいが、アンテナ開口面を2分割できる場合に限定される。複合ユニットが奇数段(または奇数列)の場合には、アンテナ開口面を2分割できないため、和と差のビームを形成できず、ΣビームおよびΔビームによるモノパルスビームを形成できないという問題がある。
【非特許文献1】吉田孝監修、「改訂 レーダ技術」、初版、社団法人電子情報通信学会、平成15年2月15日 p99
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来のアレイアンテナ装置では、振幅分布が一様な複合ユニットを多段に配列した場合に、サイドローブが高くなるという問題がある。また、複合ユニットを奇数段(または奇数列)に配列すると、ΣビームおよびΔビームによるモノパルスビームを形成できないという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、その課題は、振幅分布が一様である複合ユニットを用いた場合であってもサイドローブを低減させることができ、また、振幅分布が一様である複合ユニットを奇数段に配列した場合であってもΣビームおよびΔビームによるモノパルスビームを形成できるアレイアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係るアレイアンテナ装置は、上記課題を達成するために、一列に配置された複数のアンテナ素子を制御する給電回路における振幅分布が一様な複合ユニットを複数配列することによりアンテナ開口面が形成されたアレイアンテナ装置であって、アンテナ開口面は、一方向に配列された複数の複合ユニットと該一方向と交差する交差方向に配列された複数の複合ユニットとによって擬似円状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明に係るアレイアンテナ装置は、第1の発明に係るアレイアンテナ装置において、一方向に配列された複数の複合ユニットは、交差方向に生じる隙間を埋めるように、該交差方向に交互に位置をずらして配列されていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明に係るアレイアンテナ装置は、第1または第2の発明に係るアレイアンテナ装置において、一方向および交差方向の少なくとも1つの方向の複数の複合ユニットの各々は、アンテナ開口面の振幅分布が滑らかに変化するように給電回路における振幅分布を補正することを特徴とする。
【0012】
第4の発明に係るアレイアンテナ装置は、第1の発明に係るアレイアンテナ装置において、複数の複合ユニットの各々は、アンテナ素子からの受信信号の位相を独立に制御する2種類の移相器を備え、2種類の移相器のうちの一方の移相器の位相を制御してΣビームを形成するとともに、他方の移相器の位相を制御してΔビームを形成することによりモノパルスビームを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明に係るアレイアンテナ装置によれば、アンテナ開口面を、一方向に配列された複数の複合ユニットと該一方向と交差する交差方向に配列された複数の複合ユニットとによって擬似円状に形成したので、アンテナ開口面の振幅分布がテーパを有するようになる。従って、振幅分布が一様の複合ユニットを用いた場合であっても、サイドローブのレベルが低減される。
【0014】
第2の発明に係るアレイアンテナ装置によれば、一方向に配列された複数の複合ユニットは、交差方向に生じる隙間を埋めるように、該交差方向に交互に位置をずらして配列されているので、振幅分布の凹凸が減少されて滑らかになり、さらにサイドローブのレベルを低減させることができる。
【0015】
第3の発明に係るアレイアンテナ装置によれば、一方向および交差方向の少なくとも1つの方向の複数の複合ユニットの各々は、アンテナ開口面の振幅分布が滑らかに変化するように給電回路における振幅分布を補正するように構成したので、アンテナ開口面の振幅分布が滑らかになり、サイドローブのレベルを低減させることができる。
【0016】
第4の発明に係るアレイアンテナ装置によれば、一方の移相器の位相を制御してΣビームを形成するとともに、他方の移相器の位相を制御してΔビームを形成することによりモノパルスビームを形成するように構成したので、振幅分布が一様な奇数段(または奇数列)の複合ユニットを用いて、ΣビームおよびΔビームによるモノパルスビームが必要な場合に、モノパルスビームを形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例に係るアレイアンテナ装置を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
なお、以下では、本発明の一方向を「横方向」、一方向に交差する交差方向を「縦方向」として説明するが、一方向を「縦方向」、一方向に交差する交差方向を「横方向」とすることもできる。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の実施例1に係るアレイアンテナ装置の構成を示す図である。このアレイアンテナ装置は、横方向分配合成器1、複数の縦方向分配合成器2、複数の複合ユニット3、複数の縦方向合成器4、横方向合成器5およびサーキュレータ6から構成されている。
【0020】
サーキュレータ6は、図示しない送信機から送られてくる送信信号Txを横方向分配合成器1に送るか、横方向合成器5から送られてくる縦方向(エレベーション方向、以下、「EL方向」という)の差信号ΔELを図示しない受信機に送るかを切り替える。
【0021】
横方向分配合成器1は、送信機からサーキュレータ6を経由して送られてくる送信信号Txを電力分配し、縦方向分配合成器2および複合ユニット3に送る(信号経路は図1中において破線で示されている)。また、横方向分配合成器1は、複合ユニット3から直接に、および複合ユニット3から縦方向分配合成器2を経由して送られてくる受信信号Rxaに含まれる受信信号Rxb2を合成することにより縦方向の差信号ΔELを生成し、サーキュレータ6を経由して受信機に送る。
【0022】
縦方向分配合成器2は、アンテナ開口面を形成する複数の複合ユニット3の列数に応じた数だけ設けられている。各縦方向分配合成器2は、横方向分配合成器1から送られてくる送信信号をさらに電力分配し、送信信号Txaとして複合ユニット3に送る。また、縦方向分配合成器2は、複合ユニット3から送られてくる受信信号Rxaに含まれる受信信号Rxb2を合成して横方向分配合成器1に送る。
【0023】
複合ユニット3は、アレイアンテナ装置のアンテナ開口面を形成するように複数設けられている。複数の複合ユニット3は、擬似円状に配列されている(配列の詳細は後述する)。各複合ユニット3の詳細は構成および動作は後述する。
【0024】
縦方向合成器4は、アンテナ開口面を形成する複数の複合ユニット3の列数に応じた数だけ設けられている。各縦方向合成器4は、複合ユニット3からの受信信号Rxaに含まれる受信信号Rxb1を合成し、横方向合成器5に送る。
【0025】
横方向合成器5は、複合ユニット3から直接に、および縦方向合成器4を経由して送られてくる受信信号Rxaに含まれる受信信号Rxb1に基づき、和信号Σおよび横方向(アジマス方向、以下、「AZ方向」という)の差信号ΔAZを生成し、図示しない受信機に送る。
【0026】
図2は、複合ユニット3の詳細な構成を示すブロック図である。複合ユニット3は、複数の送受信モジュール32、分配器33および合成器34から構成されている。分配器33および合成器34を給電回路と総称する。
【0027】
複数の送受信モジュール32には、一列に配置された複数のアンテナ素子31がそれぞれ接続されている(図5および図7参照)。各送受信モジュール32は、図3に示すように、サーキュレータ321、送信増幅器322、受信増幅器323、スイッチ324、第1移相器325および第2移相器326から構成されている。
【0028】
サーキュレータ321は、送信増幅器322から送られてくる送信信号をアンテナ端に接続されたアンテナ素子31に送るか、アンテナ素子31からアンテナ端を経由して送られてくる受信信号を受信増幅器323に送るかを切り替える。
【0029】
送信増幅器322は、スイッチ324から送られてくる送信信号を増幅し、サーキュレータ321に送る。受信増幅器323は、サーキュレータ321から送られてくる受信信号を低雑音増幅し、スイッチ324および第2移相器326に送る。
【0030】
スイッチ324は、第1移相器325から送られてくる送信信号を送信増幅器322に送るか、受信増幅器323から送られてくる受信信号を第1移相器325に送るかを切り替える。第1移相器325は、分配器33から送られてくる送信信号Txbの位相を制御してスイッチ324に送るとともに、受信増幅器323からスイッチ324を経由して送られてくる受信信号の位相を制御し、受信信号Rxb2として合成器34に送る。第2移相器326は、受信増幅器323から送られてくる受信信号の位相を制御し、受信信号Rxb1として合成器34に送る。
【0031】
以上のように構成される送受信モジュール32では、分配器33から送られてくる送信信号Txbは、第1移相器325で所定の位相制御がなされた後に、スイッチ324を経由して送信増幅器322に送られる。そして、送信増幅器322で増幅された送信信号は、サーキュレータ321を介してアンテナ素子31から送信される。
【0032】
一方、アンテナ素子31で受信された受信信号は、サーキュレータ321を経由して、受信増幅器323に送られる。そして、受信増幅器323で低雑音増幅された受信信号は、スイッチ324を経由して第1移相器325に送られるとともに、第2移相器326に送られる。第1移相器325で位相制御がなされた受信信号は、受信信号Rxb2として合成器34に送られる。また、第2移相器326で位相制御がなされた受信信号は、受信信号Rxb1として合成器34に送られる。
【0033】
複合ユニット3の分配器33は、横方向分配合成器1または縦方向分配合成器2から送られてくる送信信号Txaを電力分配し、送信信号Txbとして複数の送受信モジュール32に送る。複数の送受信モジュール32の各々は、分配器33からの送信信号Txbの位相を制御した後に増幅し、アンテナ素子31に送る。
【0034】
また、複合ユニット3の合成器34は、送受信モジュール32から送られてくる受信信号Rxb1を合成し、受信信号Rxaに含めて縦方向合成器4または横方向合成器5に送る。縦方向合成器4は、複合ユニット3から送られてくる受信信号Rxaを合成し、横方向合成器5に送る。
【0035】
横方向合成器5は、縦方向合成器4および複合ユニット3から送られてくる受信信号Rxaに含まれる受信信号Rxb1に基づき、開口分割した信号の和と差をとるモノパルス合成により合成し、和信号Σと横方向の差信号ΔAZを生成する。
【0036】
また、複合ユニット3の合成器34は、送受信モジュール32から送られてくる受信信号Rxb2を合成し、受信信号Rxaに含めて縦方向分配合成器2または横方向分配合成器1に送る。縦方向分配合成器2は、複合ユニット3から送られてくる受信信号Rxaを合成し、横方向分配合成器1に送る。横方向分配合成器1は、縦方向合成器4および複合ユニット3から送られてくる受信信号Rxaに含まれる受信信号Rxb2に基づき縦方向の差信号ΔELを生成し、サーキュレータ6を経由して出力する。
【0037】
次に、このように構成された実施例1に係るアレイアンテナ装置のアンテナ開口面を形成する複合ユニット3の配列について説明する。
【0038】
図4は、アンテナ開口面を構成する複合ユニット3の配列を示す図である。アンテナ開口面は、複数の複合ユニットブロック7から成り、各複合ユニットブロック7は、図5に示すように、複数の複合ユニット3をAZ方向に三角配列することにより構成されている。
【0039】
アンテナ開口面は、図4(b)に示すように、その中央部分でEL方向に3段の複合ユニットブロック7が配置され、その両側でEL方向に2段の複合ユニットブロック7が配置され、最も外側でEL方向に1段の複合ユニットブロック7が配置されることにより構成されており、全体として複合ユニット3が擬似円状に配列されている。
【0040】
上述したような複合ユニット3の擬似円状の配列により、アンテナ開口面におけるAZ方向は、図4(a)に示すような振幅分布になり、また、EL方向は、図8に示すような振幅分布になる。その結果、アンテナ開口面全体の振幅分布がコサイン分布やコサイン2乗分布に近くなるので、サイドローブのレベルを低減させることができる。
【0041】
以上説明したように、本発明の実施例1に係るアレイアンテナ装置によれば、複合ユニットを擬似円状に配列してアンテナ開口面を形成したので、アンテナ開口面全体の振幅分布がテーパを有するコサイン分布やコサイン2乗分布に近くなり、サイドローブのレベルを低減させることができる。
【0042】
なお、複数の複合ユニットブロック7を擬似円状に配置する場合、図4(b)に示すように、複数の複合ユニットブロック7の間に隙間8が生じることがある。このような隙間8が生じると、例えば図4(a)に示すように、EL方向の振幅分布に凹凸が生じ、サイドローブのレベルの低減が阻害される。
【0043】
この問題を解消するために、実施例1に係るアレイアンテナ装置は、次のように変形することができる。すなわち、変形例に係るアレイアンテナ装置では、図7に示すように、各複合ユニットブロック7aを構成する複合ユニット3aは、EL方向の位置を交互にずらして配列される。
【0044】
この構成によれば、図6(b)に示すように、複数の複合ユニットブロック7aの間の隙間8aが埋められるので、アンテナ開口面におけるAZ方向の振幅分布は、図6(a)に示すように、図4(a)に示した場合に較べて滑らかになる。従って、サイドローブのレベルをさらに低減させることができる。
【0045】
また、上述した実施例1およびその変形例では、送信機能と受信機能の双方を有するアレイアンテナ装置について説明したが、本発明は、例えば、受信機能のみまたは送信機能のみを有するアレイアンテナ装置に適用することができる。
【0046】
さらに、上述した実施例1およびその変形例では、送受信モジュール32の内部に2個の移相器を備えるように構成したしたが、送信および受信を兼用する1個の移相器で構成することもできる。
【実施例2】
【0047】
次に、本発明の実施例2に係るアレイアンテナ装置を説明する。上述した実施例1に係るアレイアンテナ装置において、アンテナ開口面のAZ方向の振幅分布として、例えば図9(a)に示すようなテイラー分布を与えたい場合には、図9(b)に示すような複合ユニット3を多段に配列することによって得られる振幅分布を補正するように構成することができる。
【0048】
この補正は、図9(c)に示すような振幅分布Wc(n)(n=1〜N)を複合ユニット3の横方向合成器5に与えることにより実現できる。振幅分布Wcは、下記式(1)により求めることができる。
【0049】
Wc(n)=Wt(n)/Wd(n)・・・(1)
ここで、Wc(n)は横方向合成器5における振幅分布(n=1〜N)であり、Nは合成数、Wt(n)は設定したい振幅分布(例えばテイラー分布)、Wd(n)は多段に配列することによって得られる振幅分布を表している。
【0050】
以上説明したように、本発明の実施例2に係るアレイアンテナ装置によれば、アンテナ開口面における振幅分布を滑らかにすることができるので、サイドローブを低減させることができる。なお、上記の構成は、AZ方向の振幅分布のみ成らず、EL方向の振幅分布についても適用できる。
【実施例3】
【0051】
次に本発明の実施例3に係るアレイアンテナ装置を説明する。上述した実施例1に係るアレイアンテナ装置のように、複合ユニット3の段数が3段(奇数段)である場合には、アンテナ開口面は、図10(a)に示すように、開口A、開口Bおよび開口Cに3分割される。
【0052】
開口Aに対応する複合ユニット3の送受信モジュール32に含まれる第1移相器325は、受信信号の位相を制御して位相0゜の和信号ΣAを出力し、第2移相器326は、受信信号の位相を制御して位相0゜の差信号ΔAを出力する。
【0053】
開口Bに対応する複合ユニット3の送受信モジュール32に含まれる第1移相器325は、受信信号の位相を制御して位相0゜の和信号ΣBを出力し、第2移相器326の半分は、受信信号の位相を制御して位相0゜の差信号ΔBを出力し、第2移相器326の他の半分は、受信信号の位相を制御して位相180゜の差信号ΔBを出力する。
【0054】
開口Cに対応する複合ユニット3の送受信モジュール32に含まれる第1移相器325は、受信信号の位相を制御して位相0゜の和信号ΣCを出力し、第2移相器326は、受信信号の位相を制御して位相180゜の差信号ΔCを出力する。
【0055】
横方向合成器5は、図10(b)に示すように、開口Aからの和信号ΣA、開口Bからの和信号ΣBおよび開口Cからの和信号ΣCを加算して和信号Σ(Σビーム)を生成する。また、横方向合成器5は、開口Aからの差信号ΔA、開口Bからの差信号ΔBおよび開口Cからの差信号ΔCを加算して差信号ΔAZ(Δビーム)を生成する。同様に、横方向分配合成器1は、開口Aからの差信号ΔA、開口Bからの差信号ΔBおよび開口Cからの差信号ΔCを加算して差信号ΔEL(Δビーム)を生成する。
【0056】
以上説明したように、実施例3に係るアレイアンテナ装置によれば、第1移相器325および第2移相器326といった2種類の移相器を設け、一方をΣビーム用に、他方をΔビーム用にしてアンテナ開口面を2分割した場合の和と差に相当するように位相制御するように構成したので、振幅分布が一様な奇数段(または奇数列)の複合ユニットを用いて、ΣビームおよびΔビームによるモノパルスビームが必要な場合に、モノパルスビームを形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、送受信モジュールや位相器を複数配列したアレイアンテナ装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例1に係るアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示した複合ユニットの詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した送受信モジュールの詳細な構成を示す図である。
【図4】本発明の実施例1に係るアレイアンテナ装置のアンテナ開口面を構成する複合ユニットの配列を示す図である。
【図5】図4に示す複合ユニットブロックを構成する複合ユニットの配列を示す図である。
【図6】本発明の実施例1の変形例に係るアレイアンテナ装置のアンテナ開口面を構成する複合ユニットブロックの配列を示す図である。
【図7】図6に示す複合ユニットブロックを構成する複合ユニットの配列を示す図である。
【図8】本発明の実施例1に係るアレイアンテナ装置のアンテナ開口面におけるAZ方向の振幅分布を示す図である。
【図9】本発明の実施例2に係るアレイアンテナ装置のアンテナ開口面における振幅分布の補正を説明するための図である。
【図10】本発明の実施例3に係るアレイアンテナ装置におけるモノパルスビームの形成を説明するための図である。
【図11】従来のアレイアンテナ装置のアンテナ開口面の構成を説明するための図である。
【図12】従来のアレイアンテナ装置におけるモノパルスビームの形成を説明するための図である。
【符号の説明】
【0059】
1 横方向分配合成器
2 縦方向分配合成器
3 複合ユニット
4 縦方向合成器
5 横方向合成器
6 サーキュレータ
31 アンテナ素子
32 送受信モジュール
33 分配器
34 合成器
321 サーキュレータ
322 送信増幅器
323 受信増幅器
324 スイッチ
325 第1移相器
326 第2移相器
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナ素子が配列されたアレイアンテナ装置に関し、特にサイドローブのレベルを低下させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の送受信モジュールや移相器を配列してなるアレイアンテナ装置が知られている。このようなアレイアンテナ装置では、コストを低減するために、複数の送受信モジュールや移相器を纏めて複合ユニットを構成し、この複合ユニットをさらに複数配列することによりアンテナ開口面が形成されている。各複合ユニットは、共通に使用することによる低コスト化を可能にするために、振幅分布が一様になるように構成されている。
【0003】
ところで、アンテナ開口面を大きくするためには、複数の複合ユニットを多段に配列する必要がある。この場合、例えば、図11(b)に示すように、複数の複合ユニットを矩形状に均一に配列するのが一般的である。
【0004】
しかしながら、各複合ユニットの振幅分布が一様であると、図11(a)に示すように、アンテナ開口面全体の振幅分布も一様になるので、指向性利得を高くすることができるが、サイドローブのレベルが高くなるという問題がある(非特許文献1参照)。
【0005】
また、複数の複合ユニットを多段に配列する場合に、複合ユニットの筐体の形状に起因して、複合ユニット間に隙間ができる場合がある。この場合は、振幅分布に段差ができることになり、更にサイドローブのレベルが高くなるという問題がある。
【0006】
さらに、従来のアレイアンテナ装置では、図12に示すように、アンテナ開口面を開口Aと開口Bとに2分割して、開口Aと開口Bの出力の和によりΣビームを、また、開口Aと開口Bの出力の差によりΔビームを形成している。この構成によれば、移相器は1種類でよいが、アンテナ開口面を2分割できる場合に限定される。複合ユニットが奇数段(または奇数列)の場合には、アンテナ開口面を2分割できないため、和と差のビームを形成できず、ΣビームおよびΔビームによるモノパルスビームを形成できないという問題がある。
【非特許文献1】吉田孝監修、「改訂 レーダ技術」、初版、社団法人電子情報通信学会、平成15年2月15日 p99
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来のアレイアンテナ装置では、振幅分布が一様な複合ユニットを多段に配列した場合に、サイドローブが高くなるという問題がある。また、複合ユニットを奇数段(または奇数列)に配列すると、ΣビームおよびΔビームによるモノパルスビームを形成できないという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、その課題は、振幅分布が一様である複合ユニットを用いた場合であってもサイドローブを低減させることができ、また、振幅分布が一様である複合ユニットを奇数段に配列した場合であってもΣビームおよびΔビームによるモノパルスビームを形成できるアレイアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係るアレイアンテナ装置は、上記課題を達成するために、一列に配置された複数のアンテナ素子を制御する給電回路における振幅分布が一様な複合ユニットを複数配列することによりアンテナ開口面が形成されたアレイアンテナ装置であって、アンテナ開口面は、一方向に配列された複数の複合ユニットと該一方向と交差する交差方向に配列された複数の複合ユニットとによって擬似円状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明に係るアレイアンテナ装置は、第1の発明に係るアレイアンテナ装置において、一方向に配列された複数の複合ユニットは、交差方向に生じる隙間を埋めるように、該交差方向に交互に位置をずらして配列されていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明に係るアレイアンテナ装置は、第1または第2の発明に係るアレイアンテナ装置において、一方向および交差方向の少なくとも1つの方向の複数の複合ユニットの各々は、アンテナ開口面の振幅分布が滑らかに変化するように給電回路における振幅分布を補正することを特徴とする。
【0012】
第4の発明に係るアレイアンテナ装置は、第1の発明に係るアレイアンテナ装置において、複数の複合ユニットの各々は、アンテナ素子からの受信信号の位相を独立に制御する2種類の移相器を備え、2種類の移相器のうちの一方の移相器の位相を制御してΣビームを形成するとともに、他方の移相器の位相を制御してΔビームを形成することによりモノパルスビームを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明に係るアレイアンテナ装置によれば、アンテナ開口面を、一方向に配列された複数の複合ユニットと該一方向と交差する交差方向に配列された複数の複合ユニットとによって擬似円状に形成したので、アンテナ開口面の振幅分布がテーパを有するようになる。従って、振幅分布が一様の複合ユニットを用いた場合であっても、サイドローブのレベルが低減される。
【0014】
第2の発明に係るアレイアンテナ装置によれば、一方向に配列された複数の複合ユニットは、交差方向に生じる隙間を埋めるように、該交差方向に交互に位置をずらして配列されているので、振幅分布の凹凸が減少されて滑らかになり、さらにサイドローブのレベルを低減させることができる。
【0015】
第3の発明に係るアレイアンテナ装置によれば、一方向および交差方向の少なくとも1つの方向の複数の複合ユニットの各々は、アンテナ開口面の振幅分布が滑らかに変化するように給電回路における振幅分布を補正するように構成したので、アンテナ開口面の振幅分布が滑らかになり、サイドローブのレベルを低減させることができる。
【0016】
第4の発明に係るアレイアンテナ装置によれば、一方の移相器の位相を制御してΣビームを形成するとともに、他方の移相器の位相を制御してΔビームを形成することによりモノパルスビームを形成するように構成したので、振幅分布が一様な奇数段(または奇数列)の複合ユニットを用いて、ΣビームおよびΔビームによるモノパルスビームが必要な場合に、モノパルスビームを形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例に係るアレイアンテナ装置を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
なお、以下では、本発明の一方向を「横方向」、一方向に交差する交差方向を「縦方向」として説明するが、一方向を「縦方向」、一方向に交差する交差方向を「横方向」とすることもできる。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の実施例1に係るアレイアンテナ装置の構成を示す図である。このアレイアンテナ装置は、横方向分配合成器1、複数の縦方向分配合成器2、複数の複合ユニット3、複数の縦方向合成器4、横方向合成器5およびサーキュレータ6から構成されている。
【0020】
サーキュレータ6は、図示しない送信機から送られてくる送信信号Txを横方向分配合成器1に送るか、横方向合成器5から送られてくる縦方向(エレベーション方向、以下、「EL方向」という)の差信号ΔELを図示しない受信機に送るかを切り替える。
【0021】
横方向分配合成器1は、送信機からサーキュレータ6を経由して送られてくる送信信号Txを電力分配し、縦方向分配合成器2および複合ユニット3に送る(信号経路は図1中において破線で示されている)。また、横方向分配合成器1は、複合ユニット3から直接に、および複合ユニット3から縦方向分配合成器2を経由して送られてくる受信信号Rxaに含まれる受信信号Rxb2を合成することにより縦方向の差信号ΔELを生成し、サーキュレータ6を経由して受信機に送る。
【0022】
縦方向分配合成器2は、アンテナ開口面を形成する複数の複合ユニット3の列数に応じた数だけ設けられている。各縦方向分配合成器2は、横方向分配合成器1から送られてくる送信信号をさらに電力分配し、送信信号Txaとして複合ユニット3に送る。また、縦方向分配合成器2は、複合ユニット3から送られてくる受信信号Rxaに含まれる受信信号Rxb2を合成して横方向分配合成器1に送る。
【0023】
複合ユニット3は、アレイアンテナ装置のアンテナ開口面を形成するように複数設けられている。複数の複合ユニット3は、擬似円状に配列されている(配列の詳細は後述する)。各複合ユニット3の詳細は構成および動作は後述する。
【0024】
縦方向合成器4は、アンテナ開口面を形成する複数の複合ユニット3の列数に応じた数だけ設けられている。各縦方向合成器4は、複合ユニット3からの受信信号Rxaに含まれる受信信号Rxb1を合成し、横方向合成器5に送る。
【0025】
横方向合成器5は、複合ユニット3から直接に、および縦方向合成器4を経由して送られてくる受信信号Rxaに含まれる受信信号Rxb1に基づき、和信号Σおよび横方向(アジマス方向、以下、「AZ方向」という)の差信号ΔAZを生成し、図示しない受信機に送る。
【0026】
図2は、複合ユニット3の詳細な構成を示すブロック図である。複合ユニット3は、複数の送受信モジュール32、分配器33および合成器34から構成されている。分配器33および合成器34を給電回路と総称する。
【0027】
複数の送受信モジュール32には、一列に配置された複数のアンテナ素子31がそれぞれ接続されている(図5および図7参照)。各送受信モジュール32は、図3に示すように、サーキュレータ321、送信増幅器322、受信増幅器323、スイッチ324、第1移相器325および第2移相器326から構成されている。
【0028】
サーキュレータ321は、送信増幅器322から送られてくる送信信号をアンテナ端に接続されたアンテナ素子31に送るか、アンテナ素子31からアンテナ端を経由して送られてくる受信信号を受信増幅器323に送るかを切り替える。
【0029】
送信増幅器322は、スイッチ324から送られてくる送信信号を増幅し、サーキュレータ321に送る。受信増幅器323は、サーキュレータ321から送られてくる受信信号を低雑音増幅し、スイッチ324および第2移相器326に送る。
【0030】
スイッチ324は、第1移相器325から送られてくる送信信号を送信増幅器322に送るか、受信増幅器323から送られてくる受信信号を第1移相器325に送るかを切り替える。第1移相器325は、分配器33から送られてくる送信信号Txbの位相を制御してスイッチ324に送るとともに、受信増幅器323からスイッチ324を経由して送られてくる受信信号の位相を制御し、受信信号Rxb2として合成器34に送る。第2移相器326は、受信増幅器323から送られてくる受信信号の位相を制御し、受信信号Rxb1として合成器34に送る。
【0031】
以上のように構成される送受信モジュール32では、分配器33から送られてくる送信信号Txbは、第1移相器325で所定の位相制御がなされた後に、スイッチ324を経由して送信増幅器322に送られる。そして、送信増幅器322で増幅された送信信号は、サーキュレータ321を介してアンテナ素子31から送信される。
【0032】
一方、アンテナ素子31で受信された受信信号は、サーキュレータ321を経由して、受信増幅器323に送られる。そして、受信増幅器323で低雑音増幅された受信信号は、スイッチ324を経由して第1移相器325に送られるとともに、第2移相器326に送られる。第1移相器325で位相制御がなされた受信信号は、受信信号Rxb2として合成器34に送られる。また、第2移相器326で位相制御がなされた受信信号は、受信信号Rxb1として合成器34に送られる。
【0033】
複合ユニット3の分配器33は、横方向分配合成器1または縦方向分配合成器2から送られてくる送信信号Txaを電力分配し、送信信号Txbとして複数の送受信モジュール32に送る。複数の送受信モジュール32の各々は、分配器33からの送信信号Txbの位相を制御した後に増幅し、アンテナ素子31に送る。
【0034】
また、複合ユニット3の合成器34は、送受信モジュール32から送られてくる受信信号Rxb1を合成し、受信信号Rxaに含めて縦方向合成器4または横方向合成器5に送る。縦方向合成器4は、複合ユニット3から送られてくる受信信号Rxaを合成し、横方向合成器5に送る。
【0035】
横方向合成器5は、縦方向合成器4および複合ユニット3から送られてくる受信信号Rxaに含まれる受信信号Rxb1に基づき、開口分割した信号の和と差をとるモノパルス合成により合成し、和信号Σと横方向の差信号ΔAZを生成する。
【0036】
また、複合ユニット3の合成器34は、送受信モジュール32から送られてくる受信信号Rxb2を合成し、受信信号Rxaに含めて縦方向分配合成器2または横方向分配合成器1に送る。縦方向分配合成器2は、複合ユニット3から送られてくる受信信号Rxaを合成し、横方向分配合成器1に送る。横方向分配合成器1は、縦方向合成器4および複合ユニット3から送られてくる受信信号Rxaに含まれる受信信号Rxb2に基づき縦方向の差信号ΔELを生成し、サーキュレータ6を経由して出力する。
【0037】
次に、このように構成された実施例1に係るアレイアンテナ装置のアンテナ開口面を形成する複合ユニット3の配列について説明する。
【0038】
図4は、アンテナ開口面を構成する複合ユニット3の配列を示す図である。アンテナ開口面は、複数の複合ユニットブロック7から成り、各複合ユニットブロック7は、図5に示すように、複数の複合ユニット3をAZ方向に三角配列することにより構成されている。
【0039】
アンテナ開口面は、図4(b)に示すように、その中央部分でEL方向に3段の複合ユニットブロック7が配置され、その両側でEL方向に2段の複合ユニットブロック7が配置され、最も外側でEL方向に1段の複合ユニットブロック7が配置されることにより構成されており、全体として複合ユニット3が擬似円状に配列されている。
【0040】
上述したような複合ユニット3の擬似円状の配列により、アンテナ開口面におけるAZ方向は、図4(a)に示すような振幅分布になり、また、EL方向は、図8に示すような振幅分布になる。その結果、アンテナ開口面全体の振幅分布がコサイン分布やコサイン2乗分布に近くなるので、サイドローブのレベルを低減させることができる。
【0041】
以上説明したように、本発明の実施例1に係るアレイアンテナ装置によれば、複合ユニットを擬似円状に配列してアンテナ開口面を形成したので、アンテナ開口面全体の振幅分布がテーパを有するコサイン分布やコサイン2乗分布に近くなり、サイドローブのレベルを低減させることができる。
【0042】
なお、複数の複合ユニットブロック7を擬似円状に配置する場合、図4(b)に示すように、複数の複合ユニットブロック7の間に隙間8が生じることがある。このような隙間8が生じると、例えば図4(a)に示すように、EL方向の振幅分布に凹凸が生じ、サイドローブのレベルの低減が阻害される。
【0043】
この問題を解消するために、実施例1に係るアレイアンテナ装置は、次のように変形することができる。すなわち、変形例に係るアレイアンテナ装置では、図7に示すように、各複合ユニットブロック7aを構成する複合ユニット3aは、EL方向の位置を交互にずらして配列される。
【0044】
この構成によれば、図6(b)に示すように、複数の複合ユニットブロック7aの間の隙間8aが埋められるので、アンテナ開口面におけるAZ方向の振幅分布は、図6(a)に示すように、図4(a)に示した場合に較べて滑らかになる。従って、サイドローブのレベルをさらに低減させることができる。
【0045】
また、上述した実施例1およびその変形例では、送信機能と受信機能の双方を有するアレイアンテナ装置について説明したが、本発明は、例えば、受信機能のみまたは送信機能のみを有するアレイアンテナ装置に適用することができる。
【0046】
さらに、上述した実施例1およびその変形例では、送受信モジュール32の内部に2個の移相器を備えるように構成したしたが、送信および受信を兼用する1個の移相器で構成することもできる。
【実施例2】
【0047】
次に、本発明の実施例2に係るアレイアンテナ装置を説明する。上述した実施例1に係るアレイアンテナ装置において、アンテナ開口面のAZ方向の振幅分布として、例えば図9(a)に示すようなテイラー分布を与えたい場合には、図9(b)に示すような複合ユニット3を多段に配列することによって得られる振幅分布を補正するように構成することができる。
【0048】
この補正は、図9(c)に示すような振幅分布Wc(n)(n=1〜N)を複合ユニット3の横方向合成器5に与えることにより実現できる。振幅分布Wcは、下記式(1)により求めることができる。
【0049】
Wc(n)=Wt(n)/Wd(n)・・・(1)
ここで、Wc(n)は横方向合成器5における振幅分布(n=1〜N)であり、Nは合成数、Wt(n)は設定したい振幅分布(例えばテイラー分布)、Wd(n)は多段に配列することによって得られる振幅分布を表している。
【0050】
以上説明したように、本発明の実施例2に係るアレイアンテナ装置によれば、アンテナ開口面における振幅分布を滑らかにすることができるので、サイドローブを低減させることができる。なお、上記の構成は、AZ方向の振幅分布のみ成らず、EL方向の振幅分布についても適用できる。
【実施例3】
【0051】
次に本発明の実施例3に係るアレイアンテナ装置を説明する。上述した実施例1に係るアレイアンテナ装置のように、複合ユニット3の段数が3段(奇数段)である場合には、アンテナ開口面は、図10(a)に示すように、開口A、開口Bおよび開口Cに3分割される。
【0052】
開口Aに対応する複合ユニット3の送受信モジュール32に含まれる第1移相器325は、受信信号の位相を制御して位相0゜の和信号ΣAを出力し、第2移相器326は、受信信号の位相を制御して位相0゜の差信号ΔAを出力する。
【0053】
開口Bに対応する複合ユニット3の送受信モジュール32に含まれる第1移相器325は、受信信号の位相を制御して位相0゜の和信号ΣBを出力し、第2移相器326の半分は、受信信号の位相を制御して位相0゜の差信号ΔBを出力し、第2移相器326の他の半分は、受信信号の位相を制御して位相180゜の差信号ΔBを出力する。
【0054】
開口Cに対応する複合ユニット3の送受信モジュール32に含まれる第1移相器325は、受信信号の位相を制御して位相0゜の和信号ΣCを出力し、第2移相器326は、受信信号の位相を制御して位相180゜の差信号ΔCを出力する。
【0055】
横方向合成器5は、図10(b)に示すように、開口Aからの和信号ΣA、開口Bからの和信号ΣBおよび開口Cからの和信号ΣCを加算して和信号Σ(Σビーム)を生成する。また、横方向合成器5は、開口Aからの差信号ΔA、開口Bからの差信号ΔBおよび開口Cからの差信号ΔCを加算して差信号ΔAZ(Δビーム)を生成する。同様に、横方向分配合成器1は、開口Aからの差信号ΔA、開口Bからの差信号ΔBおよび開口Cからの差信号ΔCを加算して差信号ΔEL(Δビーム)を生成する。
【0056】
以上説明したように、実施例3に係るアレイアンテナ装置によれば、第1移相器325および第2移相器326といった2種類の移相器を設け、一方をΣビーム用に、他方をΔビーム用にしてアンテナ開口面を2分割した場合の和と差に相当するように位相制御するように構成したので、振幅分布が一様な奇数段(または奇数列)の複合ユニットを用いて、ΣビームおよびΔビームによるモノパルスビームが必要な場合に、モノパルスビームを形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、送受信モジュールや位相器を複数配列したアレイアンテナ装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例1に係るアレイアンテナ装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示した複合ユニットの詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した送受信モジュールの詳細な構成を示す図である。
【図4】本発明の実施例1に係るアレイアンテナ装置のアンテナ開口面を構成する複合ユニットの配列を示す図である。
【図5】図4に示す複合ユニットブロックを構成する複合ユニットの配列を示す図である。
【図6】本発明の実施例1の変形例に係るアレイアンテナ装置のアンテナ開口面を構成する複合ユニットブロックの配列を示す図である。
【図7】図6に示す複合ユニットブロックを構成する複合ユニットの配列を示す図である。
【図8】本発明の実施例1に係るアレイアンテナ装置のアンテナ開口面におけるAZ方向の振幅分布を示す図である。
【図9】本発明の実施例2に係るアレイアンテナ装置のアンテナ開口面における振幅分布の補正を説明するための図である。
【図10】本発明の実施例3に係るアレイアンテナ装置におけるモノパルスビームの形成を説明するための図である。
【図11】従来のアレイアンテナ装置のアンテナ開口面の構成を説明するための図である。
【図12】従来のアレイアンテナ装置におけるモノパルスビームの形成を説明するための図である。
【符号の説明】
【0059】
1 横方向分配合成器
2 縦方向分配合成器
3 複合ユニット
4 縦方向合成器
5 横方向合成器
6 サーキュレータ
31 アンテナ素子
32 送受信モジュール
33 分配器
34 合成器
321 サーキュレータ
322 送信増幅器
323 受信増幅器
324 スイッチ
325 第1移相器
326 第2移相器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一列に配置された複数のアンテナ素子を制御する給電回路における振幅分布が一様な複合ユニットを複数配列することによりアンテナ開口面が形成されたアレイアンテナ装置であって、
前記アンテナ開口面は、一方向に配列された複数の複合ユニットと該一方向と交差する交差方向に配列された複数の複合ユニットとによって擬似円状に形成されていることを特徴とするアレイアンテナ装置。
【請求項2】
前記一方向に配列された複数の複合ユニットは、前記交差方向に生じる隙間を埋めるように、該交差方向に交互に位置をずらして配列されていることを特徴とする請求項1記載のアレイアンテナ装置。
【請求項3】
前記一方向および前記交差方向の少なくとも1つの方向の複数の複合ユニットの各々は、前記アンテナ開口面の振幅分布が滑らかに変化するように前記給電回路における振幅分布を補正することを特徴とする請求項1または請求項2記載のアレイアンテナ装置。
【請求項4】
前記複数の複合ユニットの各々は、前記アンテナ素子からの受信信号の位相を独立に制御する2種類の移相器を備え、
前記2種類の移相器のうちの一方の移相器の位相を制御してΣビームを形成するとともに、他方の移相器の位相を制御してΔビームを形成することによりモノパルスビームを形成することを特徴とする請求項1記載のアレイアンテナ装置。
【請求項1】
一列に配置された複数のアンテナ素子を制御する給電回路における振幅分布が一様な複合ユニットを複数配列することによりアンテナ開口面が形成されたアレイアンテナ装置であって、
前記アンテナ開口面は、一方向に配列された複数の複合ユニットと該一方向と交差する交差方向に配列された複数の複合ユニットとによって擬似円状に形成されていることを特徴とするアレイアンテナ装置。
【請求項2】
前記一方向に配列された複数の複合ユニットは、前記交差方向に生じる隙間を埋めるように、該交差方向に交互に位置をずらして配列されていることを特徴とする請求項1記載のアレイアンテナ装置。
【請求項3】
前記一方向および前記交差方向の少なくとも1つの方向の複数の複合ユニットの各々は、前記アンテナ開口面の振幅分布が滑らかに変化するように前記給電回路における振幅分布を補正することを特徴とする請求項1または請求項2記載のアレイアンテナ装置。
【請求項4】
前記複数の複合ユニットの各々は、前記アンテナ素子からの受信信号の位相を独立に制御する2種類の移相器を備え、
前記2種類の移相器のうちの一方の移相器の位相を制御してΣビームを形成するとともに、他方の移相器の位相を制御してΔビームを形成することによりモノパルスビームを形成することを特徴とする請求項1記載のアレイアンテナ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−180218(P2006−180218A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371427(P2004−371427)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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