説明

アーム機構を備えた移動ロボット

【課題】 到達可能範囲を大きくでき、運搬・移動作業時に折り畳むことが可能な、出っ張りもなく収納が可能な安全性の高いアーム機構を備えた移動ロボットの提供。
【解決手段】 移動ロボットは、本体側面の第1関節で回動可能に軸支される第1アーム部101を備えている。第1アーム部には、収納用凹部及びこの収納用凹部に連通する開口部107を有し、この収納部に折り畳み機構が収納される。折り畳み機構では、第1アームに第2アーム部102が第2関節部を介して連結され、第3アーム部104が第2アーム部に第3関節部を介して連結されている。第1アーム部は、第1関節の周りに回動されてその開口部を任意の方向に向け、収納用凹部に沿って前記第2関節部をスライドさせて折り畳み機構を開口部から取り出すことができ、第3関節部の周りで前記第3アーム部を回動して第3アーム部を展開することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アーム機構を備えた移動ロボットに係り、特に、物品を搭載して家庭内、施設等の建築物内を移動して物品を運搬する為のアーム機構を備え、サービス用途に利用される移動ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間と活動空間を共有するサービスロボットが種々発表されている。サービスロボットが人の指示に従って、指示された物品へアクセスし、対象物品をハンドリングし、また、把持した物品を運搬するため、移動ロボット本体にアームが搭載されている。このようにアームを搭載したロボットが多数提案され、例えば、特許文献1及び非特許文献1に開示されている。これら文献に開示されたサービスロボットでは、通常、搭載アームが本体両側の左右に取り付けられている。従って、物の運搬などサービスロボットの移動中に搭載アームが周囲にぶつかる恐れがあり、人との行き違い時に危険を人に及ぼす恐れがあり、或いは、不安感を抱かせる虞がある等安全性の面で問題があるとされている。このような背景から、従来のサービスロボットでは、移動台車に搭載したアームがアームとは、別途に設けた開閉カバーで覆れ、安全性並びに不安感除去の対策が執られている。
【特許文献1】特開2004−230509「移動ロボット」
【非特許文献1】川内 直人、外4名、「ホームユースロボット"wakamaru"」、三菱重工技報、三菱重工株式会社、2003年9月、第40巻、5号、P.270-273
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載されるように、アーム収納用開閉カバーが設けられる場合には、開閉カバーがアーム全体を覆うよう配置されるため移動ロボット自体の大きさが大きくなる問題がある。また、移動ロボットでは、アームを展開するたびにカバーの開閉動作が毎回必要となり、アーム展開動作に時間が掛り、この動作が煩わしいとされる等の問題がある。また、アームの収納時に折り畳み可能な構造が採用されるサービスロボットにあっては、折り畳むことによってその大きさをコンパクトにできる。しかし、アームを利用して物を取ったり、置いたりする際のアームが到達する可動範囲を大きくする場合には、自ずとアーム長をはじめ搭載するロボット自体も大きくすることが必要とされ、安全面からも好ましくないとされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記問題点を解決するためになされてものであり、その目的は、アーム機構がコンパクトな構造を有し、ロボット自体から出っ張り無く収納可能として、非作業時或いは移動中の安全性を図ることができる共にアーム可動範囲を大きく取ることが出来るアーム機構を備えた移動ロボットを提供するにある。
【0005】
この発明によれば、
移動ロボット本体と、
この移動ロボット本体を載置し、当該移動ロボット本体を移動させる移動駆動機構と、
前記移動ロボット本体の側面に設けられ、前記移動ロボット本体側面の第1関節で回動可能に軸支され、収納用凹部及びこの収納用凹部に連通する開口部を有する第1アーム部と、
前記第1アームに第2関節部を介して連結された第2アーム部及びこの第2アーム部に第3関節部を介して連結された第3アーム部とから構成され、第3関節部で第3アーム部を前記第2アーム部に向けて折り畳むことが可能な折り畳み機構であって、前記収納部の窪み内に折り畳んだ状態で収納可能で、前記開口部を介して第1のアーム部外に出入可能な折り畳み機構と、
前記第1アーム部を前記第1関節の周りに回動して前記開口部を任意の方向に向ける第1の回動駆動部と、
前記収納用凹部に沿って前記第2関節部をスライドさせて前記折り畳まれた折り畳み機構を前記開口部から出し入れさせるスライド駆動部と、
前記第3関節部の周りで前記第3アーム部を回動して前記第2アーム部に対して前記第3アーム部に任意角度を与える第2の回動駆動部と、
を具備することを特徴とする移動ロボットが提供される。
【発明の効果】
【0006】
この発明のアーム機構を搭載型移動ロボットによれば、アーム全体の収納がロボット本体からの出っ張りが無く可能であると共に第1アーム自体が本体の一部を成すとともにその第1アームの回転駆動及び第2アームのスライド伸縮駆動を伴った展開により、可動範囲を大きくすることが出来る。従って、アーム先端の到達可能範囲を大きくできると共に、建物内での物品の運搬・移動作業時には、背丈を低くすることができる。また、移動ロボット全体がコンパクトで、アームの本体から出っ張り箇所が無いため、ロボットが移動する際に移動路にある物に接触或いは衝突することがなく、安全性に比較的狭い場所にも移動することができ、廊下での人との行き違いの際に不安感を与えることがない。
【0007】
また、この発明によれば、本来の移動機構のみでは対応できない段差の乗り越え或いは傾斜のある床面における移動を搭載されるマニュピュレータ機構の展開駆動動作を併用することにより実現することができる。更に、この発明によれば、周囲の対象物を検知する検知センサがロボット本体に配置される構造において、検知センサが第1アーム部に配置され、搭載される他のアーム部が駆動されても第1アーム部とともに検知センサが動くことから、この検知センサによる検出動作が妨げられることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、この発明の一実施の形態に係るアーム機構を備えた移動ロボットについて説明する。
【0009】
(第1の実施の形態)
図1(a)及び(b)は、この発明の第1の実施の形態に係るアーム機構を備えたアーム搭載型移動ロボット100の上面構造を概略的に示す平面図並びにその側面構造を概略的に示す側面図である。
【0010】
図1(a)に示されるように、アーム搭載型移動ロボット100は、その外形が略円柱状を有する本体60を備え、この本体60が台座部62に載置固定されている。この台座部62には、移動ロボット100を前後並びに左右方向に移動させる為の移動輪を有する移動機構部109が設けられるとともに本体60の上部には、移動ロボット100が運搬物を搭載する為に略水平に延びる載置面を有する運搬物搭載部110が設けられている。また、本体60には、当該アーム搭載型移動ロボット100を操作し、また、当該アーム搭載型移動ロボット100の状態を表示することができる表示・操作用ディスプレイ108が設けられている。
【0011】
図1(a)及び(b)に示される移動ロボット100は、片側にのみアーム機構80が搭載されるタイプであって、略円柱状本体60の一方の側面は、皿状の蓋部64で塞がれ、図1(b)に示されるように、本体60の他方の側面には、本体60の側面形状に対応して外形が円盤蓋状に形成され、第1のアームとして機能する第1アーム部101が設けられている。円盤蓋状の第1アーム部101は、図示しない本体60内に設けられた回転機構によって本体60の中心を通る回転軸120の周りに矢印R0で示すように回転可能に保持され、回転機構が動作されることによって、第1アーム部101が矢印R1に沿って回転される。このように円盤蓋状の第1アーム部101が回転可能であることから、回転軸120が本体60に対する第1アーム部101の第1関節に相当する。また、後に説明されるようにこの第1アーム部101内にスライド伸縮機構(図示せず)が設けられ、このスライド伸縮機構のスライド軸103と回転軸120との間の第1アーム部101の部分が実質的なアーム部に相当し、その間の距離がアーム長に定められる。
【0012】
第1アーム部101には、アーム部が折り畳まれた状態のマニュピュレータ機構、90、即ち、アーム折り畳み機構を収納するに適する形状を有する収納部106としての窪みが形成されている。マニュピュレータ機構90は、図1(b)に示すようにマニュピュレータ機構90を本体60に連結する第2関節としてのスライド軸103、第2、第3及び第4のアーム部102、104、105及びこれらを連結する第3及び第4の関節132,134から構成され、第3及び第4の関節132,134で第2、第3及び第4のアーム部102、104、105が互いに略平行となるように折り畳まれて収納部106に収納される。マニュピュレータ機構90の自由端に相当する第4のアーム部105の先端には、後に説明される物品を把持する為のグリッパ部130が取り付けられている。
【0013】
折り畳まれ状態のマニュピュレータ機構90を本体60の側面に沿って移動させてこのマニュピュレータ機構90を収納部106から出し入れする為にこの収納部106は、第1アーム部101の外周にマニュピュレータ機構90を収納部106外に展開する為に開口部107で開口されている。第1アーム部101は、外面が滑らかな面を有するように、一例として、モノコックフレームで形成され、その収納部106としての窪みは、図1(a)からも明らかなように、折り畳まれた状態のマニュピュレータ機構90が収納部106内に完全に収納され、収納部106外に突出しないような深さを有している。従って、収納部106にマニュピュレータ機構90が収納されている限り、移動ロボット100の側面には突起が生ずることがない。また、仮に、移動ロボット100が矢印Mで示すように移動されても、マニュピュレータ機構90の外面が移動路上の障害物、或いは、人等に接触しても滑らかな外面を有する第1アーム部101によって移動ロボット100が障害物、或いは、人等に引っ掛かり、その結果として障害物を破損し、或いは、人等にダメージを与えることはない。
【0014】
尚、図1(a)及び(b)に示される第1アーム部101は、マニュピュレータ機構90が収納部106内に収納された状態で露出されているが、収納部106がカバーで覆われ、開口部107のみが開口されている構造でも良い。マニュピュレータ機構90は、開口部107を介して出し入れされ、第1アーム部101から側面方向に、即ち、回転軸120に沿ってスライドされることはないことから、その側面がカバーで覆われても良い。
【0015】
スライド伸縮機構のスライド軸103を移動可能とする為に収納部106の底面に収納部106の長手方向に沿って延出されているスライド溝82が形成されている。また、スライド伸縮機構のスライド軸103は、第2アーム部102の基部に連結されている。従って、スライド伸縮機構が作動してスライド軸103がスライド溝82を移動すると、折り畳まれた状態でマニュピュレータ機構90が展開用開口部107から第1アーム部101外に延伸される。
【0016】
図1(a)に示されるように第2アーム102の基部にスライド軸103が取り付けられているが、このスライド軸103は、第1アーム部101の回転軸120から偏心させて位置されている。従って、第1アーム部101が回転駆動される範囲に第2アーム部102がスライド伸縮駆動される範囲が加えられた範囲がマニュピュレータ機構90の可動範囲となり、マニュピュレータ機構90が展開された際にその先端のグリッパ部130が到達する高さ(範囲)を大きくすることができる。また、開口部107は、第1アーム部101上に設けられ、第1アーム部101が回転軸120の回りに回転されることから、マニュピュレータ機構90は、移動ロボット本体の周方向回り(回転軸120の回り)の360°の角度範囲内のいずれの方向にも必要に応じてマニュピュレータ機構90を展開させることができる。図3(b)に示されるアーム機構は、7関節からなるアーム部にグリッパ105を搭載した例を示しているが、関節数及びアーム部の数は、搭載アーム部の自由度に応じて選定され、折りたたみ収納可能であれば、自由度数や構造に制限は無いことは明らかである。
【0017】
上述した実施例においては、第1アーム部101は、円柱形状に形成しているが、円柱形状に限られるものではなく、必要に応じて側面が正多角形をなす柱状形状に形成されても良い。
【0018】
図1(a)及び図1(b)に示されるアーム機構を備えた移動ロボット100は、次のように動作される。
【0019】
始めに、外部からの無線信号が図2に示すような無線部210で受信されて、或いは、表示・操作用ディスプレイ108を利用して移動すべき目標位置、物品の搬送等の対処動作及び搬送物品等の対処物品が予め入力される。この入力信号は、CPU214を介して図2に示すRAM212に一時的に格納される。移動ロボット100が動作開始すると、ROM216から作動プログラムがCPU214に読み出されて目標位置に応じて移動機構駆動部218にインタフェース220を介して動作指示が与えられる。従って、移動機構部109が動作されて移動ロボットは、目標位置にまで移動されて停止される。この停止した状態で、作動プログラムに従って図2に示す第1アーム回転駆動部222が作動されて本体60内の回転機構が動作される。従って、矢印R1に示すように第1アーム部101が回転軸120の周りに回転され、対処物品の位置に応じて第1アーム部101の開口部107が所定方向、例えば、図3(b)に示すように開口部107が上方に向けられる。開口部107が所定方向に向けられてマニュピュレータ機構90の展開方向が決定されると、第2アーム部102の第2アームスライド駆動部224によってスライド伸縮機構が作動して図3(b)に示すようにスライド軸103が矢印S1に示すようにスライド溝82に沿って移動される。その結果、マニュピュレータ機構90が第1アーム部101外に引き出される。
【0020】
マニュピュレータ機構90は、図示しないアーム駆動機構が作動して展開される。即ち、スライド伸縮機構によって第2アーム部102が第1アーム部101外に伸長され、第2アーム部102に対して第3アーム部104がある開き角をなすように第3関節駆動部226が作動して第3アーム部104が第3関節部132を基部として矢印R2に示すように回動され、また、第3アーム部104に対して第4アーム部105がある開き角をなすように第4関節駆動部228が作動して第4アーム部105が第4関節部134を基部として矢印R3に示すように回動される。従って、マニュピュレータ機構90は、展開され、回転軸120からグリッパ部130までの距離は、スライド軸103のスライド長、矢印R2で示す第3アーム部104の開き角、矢印R3で示す第4アーム部105の開き角及び第1から第4アーム部101,102,104,105のアーム長で決定される。従って、スライド長及び開き角を調整することによって回転軸120からグリッパ部130までの距離を調整することができる。
【0021】
図3(b)に示すようにマニュピュレータ機構90においては、第2アーム部102は、第2アーム軸方向回転駆動部230によって矢印R4に示すようにその軸の周りに回転されてこの第2アーム部102に連結された関節132も回転される。また、関節132に連結された第3アーム部104は、第3アーム軸方向回転駆動部232によって矢印R5に示すようにその軸の周りに回転されてこの第3アーム部104に連結された関節134も同様に回転される。更に、関節134に連結された第4アーム部105は、第4アーム軸方向回転駆動部234によって矢印R6に示すようにその軸の周りに回転されてこの第4アーム部105に連結されたグリッパ部130も同様に回転される。従って、展開されたマニュピュレータ機構90のアーム部を軸周りに所定角だけ回転し、スライド長及び開き角を調整することによってグリッパ部130を対処物品にアクセスさせることができる。
【0022】
グリッパ部130は、グリッパ駆動部240によってグリッパ部130の軸方向に沿ってスライド可能であるとともに物品を把持する把持機構を備えていることから、対処物品を把持することができる。従って、CPU214からの指示に従って、マニュピュレータ機構90の各アーム部を調整駆動することによって対処物品を運搬物搭載部110にまで搬送し、運搬物搭載部110上に乗せることができる。
【0023】
対処物品が運搬物搭載部110上に載置されると、同様にCPU214からの指示に従って、展開されていたマニュピュレータ機構90は、折り畳まれ、上述した展開動作と逆の動作で開口部107から収納部106に引き込まれて収納される。
【0024】
(第2の実施の形態)
図4を参照して、この発明の第2の実施の形態に係るアーム搭載型移動ロボット100について説明する。図4(a)及び(b)は、この発明の第2の実施の形態に係るアーム搭載型移動ロボット100を概略的に示す側面図及び上面図である。図4(a)及び(b)に示される移動ロボット100は、ロボット本体の両側面部に、第1の搭載アーム機構並びに第2の搭載アーム機構を備えている。図4(a)及び(b)において、図1〜図3(b)に示した符号と同一符号は、同一箇所或いは同一部品を示すものとしてその詳細な説明は省略する。
【0025】
第1の搭載アーム機構80A並びに第2の搭載アーム機構80Bは、同一の構造を有し、夫々第1アーム部101、111を備え、その第1アーム部101、111の回転軸中心が本体側面ほぼ中央部の回転軸120に一致されている。第1アーム部101、111は、ロボット本体60に対して対称に取り付けられた構造を有している。既に説明したように第1アーム部101、111の収納部106には、マニュピュレータ機構90A、90Bが折り畳まれて収納され、マニュピュレータ機構90A、90Bは、図3(b)を参照して説明したように展開され、再び、収納部106に折り畳まれる。
【0026】
図4(a)及び(b)に示される移動ロボット100においては、夫々の搭載アーム部101、111、102、104、105は、展開動作時にも干渉を受けることなく容易に展開可能で、第1の搭載アーム機構80A並びに第2の搭載アーム機構80Bの夫々に異なった動作をさせることも出来る。また、図5に示される作業動作例ように、2つのマニュピュレータ機構90A、90Bが第1アーム部101,111の回転駆動とともに互いに並列させて水平方向に同期して動かすことができる。従って、1つのマニュピュレータ機構90A、90Bでは、質量が重く扱うことが出来なかった物品であっても、アクセスが可能となり、把持した物品を移動ロボット本体60に設けた運搬物搭載部110に搭載することが出来る。
【0027】
図5に示される作業動作例では、収納棚400に収まっているトレイ401を搭載されたマニュピュレータ機構90A、90Bで把持して、移動ロボット本体に設けた運搬物搭載部110に搭載するためのアームの動きを示している。
【0028】
搭載アーム機構80A、80Bは、第1アーム部101及び第2アーム部102の動作により可動範囲を大きくすることができる。従って、収納棚409に対しても高い位置から床下側の低い位置までマニュピュレータ機構90A、90Bのアクセス範囲を広くすることができる。
【0029】
また、図6は、同じくアーム機構80の作業動作例であって、大きな箱状の物品を移動ロボットに搭載して移動する例を示している。移動中に、例えば、ドアを開ける必要が生じても、搭載アーム機構80自体は、容易に展開することができ、図6に示すようにマニュピュレータ機構90A、90Bを展開してドアノブ500にアクセスして開くことで運搬作業を広範囲にわたって行うことが可能である。
【0030】
図4(a)及び(b)に示す移動ロボットは、図7(a)及び図7(b)に示されるようにそのアーム機構80A、80Bを利用して段差の乗り越え動作を実現することができる。物の運搬などで移動動作中に、その移動手段として備えている移動機構109のみでは対応不可能な一定以上の高さのある段差600、或いは、一定以上の図示していない勾配を持つ床面に対しては、搭載アームの第1アーム部101の回転駆動動作と、回転による床面側への第2アーム部102のスライド伸縮駆動103を伴うアーム駆動動作を併用することで段差乗り越え移動することが出来る。即ち、図示しないセンサが段差或いは勾配を有する斜面を検出すると、図7(a)に示すようにマニュピュレータ機構90A、90Bが床面に対して延出されて移動ロボット本体60の駆動部車輪を持ち上げるようにグリッパ部130が床面に当接される。この状態で第1アーム部101が回転されると、図7(b)に示されるように駆動部車輪が段差上に持ち上げられ、段差上に車輪を移動させることができる。このように移動ロボット100の段差600乗り越え時にグリッパ部130がロボット自身の体を支え、第1アーム部101が乗り越え移動の駆動力を付加することができる。図7(a)及び図7(b)に示した場合だけでなく、搭載アーム機構80は、凹凸のある床面に限らず、その他様々な床面状態への移動動作を支援でき、駆動車輪だけでは走行不可能な種々の床面を移動ロボットが走行することができる。
【0031】
(第3の実施の形態)
図8(a)及び(b)は、この発明の第3の実施の形態に係るアーム搭載型移動ロボット100を示す概略図である。図8(a)及び(b)に示されるように、第1アーム部101を構成する円柱側面の周囲に、例えば、超音波センサや光電式距離センサ等の周囲の障害物を検知する複数の検知センサ700が配置される場合、図8(a)のように第1アーム101と共に検知センサ700も回動される。従って、回転角に応じたセンサ位置の補正は必要であるが、アームの展開をはじめ作業動作中におけるセンシングを邪魔することがないので周囲の障害物を安定に検出することができる。
【0032】
これに対し、図9(a)及び(b)に示すような比較例として示す搭載アーム構造701では、検知センサ700の位置が固定され、アーム部の動作中に検知センサ700の前を横切ることが生じるため、センシングできないことが多々生じてしまう。
【0033】
また、周囲の障害物を検知する検知センサ700が側面側だけでなく、複数個の検知センサ700が第1アームを構成する円柱周上面に配置される場合にも、同様にアーム展開動作或いはアーム作業中に検出センサ700のセンシングをさえぎることがないことから安定して障害物の検知が可能となる。
【0034】
尚、これらセンサ700からのセンサ出力は、図2に示すようにインタフェース220を介してCPU214にて解析されて障害物の位置並びに大きさが検出される。
【0035】
(第4の実施の形態)
図10は、この発明の第5の実施の形態に係るアーム搭載型移動ロボット100を示す上面図であって、アーム収納用凹部構造106を有する第1アーム部101,111の本体60側面に接近する構造部周囲に、回転方向R1に沿って、発光素子801等のような複数個のインジケータ部800が設けられている。このインジケータ部800は、アーム搭載型移動ロボットのアーム部の展開駆動を含めた動作状態に応じて、その複数の同一発光色或いは異なる発光色の発光素子800がCPU214によって表示制御されてその発光状態が変化される。例えば、複数の発光素子800が点滅表示或いは発光色が変化される。ここで、発光色の変化には、異なる発光色が交互に点滅される場合も含む。このインジケータ部800の表示状態により、ロボットの周囲にいる人は、移動ロボット100の動作状態を知り得ることが可能となり、不安を抱くことなく近づくことができ、安全性も高めることができる。例えば、ロボットが移動中は青色発光させて移動の接近を知らせ、インジケータ部が両側にある場合には、左折、右折時に夫々の側の青色インジケータ部を点滅させて曲がる方向を知らせ、また、マニュピュレータ機構90,90A、90Bの展開動作を開始する時に、発光色を赤色に変化させて展開動作開始されたことを知らせ、その注意を促すことができ、人に対しての安全性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、この発明に係る移動ロボット搭載アームは、コンパクトにアーム機構を構造部内に出っ張り無く収納可能として、非作業時や移動中の安全性が図れると共に、その第1及び第2アーム部の駆動によりアーム可動範囲を大きく取ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)及び(b)は、この発明の第1の実施の形態に係るアーム機構を搭載した移動ロボットを概略的に示す側面図及び上面図である。
【図2】図1に示した移動ロボットを駆動する回路システムを概略的に示すブロック図である。
【図3】図1(a)及び(b)に示した移動ロボットのアーム機構における展開の動作及び可動部の動作例を概略的に示す側面図である。
【図4】この発明の第2の実施の形態に係る移動ロボットを概略的に示す側面図及び上面図である。
【図5】図4に示す移動ロボットのアーム機構における作業動作例を示す側面図である。
【図6】図4に示す移動ロボットのアーム機構における他の作業動作例を示す側面図である。
【図7】(a)及び(b)は、図4に示す移動ロボットのアーム機構における段差を乗り越える移動支援動作を概略的に示す側面図である。
【図8】図4に示す移動ロボットのアーム機構とともに回動する周囲の障害物を検知する検出センサがアーム機構に配置された例を示す概略図である。
【図9】図4に示す移動ロボットのアーム機構の比較例であって、周囲の障害物を検知する検出センサが固定的に配置される例を示す概略図である。
【図10】この発明の第5の実施の形態に係るインジケータ部を搭載する移動ロボットを概略的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0038】
60...ロボット本体、62...台座部、82...スライド溝、90...マニュピュレータ機構、100...移動ロボット、101、111、102、104、114...アーム部、103...スライド軸、106...収納部、107...開口部、130...グリッパ部、108...表示操作用ディスプレイ、109...移動機構部、110...運搬物搭載部、120...ロボット本体側面中央部の回転軸、700...検出センサ、800...動作状態インジケータ、801...発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動ロボット本体と、
この移動ロボット本体を載置し、当該移動ロボット本体を移動させる移動駆動機構と、
前記移動ロボット本体の側面に設けられ、前記移動ロボット本体側面の第1関節で回動可能に軸支され、収納用凹部及びこの収納用凹部に連通する開口部を有する第1アーム部と、
前記第1アームに第2関節部を介して連結された第2アーム部及びこの第2アーム部に第3関節部を介して連結された第3アーム部とから構成され、第3関節部で第3アーム部を前記第2アーム部に向けて折り畳むことが可能な折り畳み機構であって、前記収納部の窪み内に折り畳んだ状態で収納可能で、前記開口部を介して第1のアーム部外に出入可能な折り畳み機構と、
前記第1アーム部を前記第1関節の周りに回動して前記開口部を任意の方向に向ける第1の回動駆動部と、
前記収納用凹部に沿って前記第2関節部をスライドさせて前記折り畳まれた折り畳み機構を前記開口部から出し入れさせるスライド駆動部と、
前記第3関節部の周りで前記第3アーム部を回動して前記第2アーム部に対して前記第3アーム部に任意角度を与える第2の回動駆動部と、
を具備することを特徴とする移動ロボット。
【請求項2】
前記折り畳み機構は、前記第3アーム部に第4関節部を介して連結され、前記第4関節部で前記第4アーム部を前記第3アーム部に向けて折り畳むことが可能な第4アーム部を更に含み、
前記第4関節部の周りで前記第4アーム部を回動して前記第3アーム部に対して前記第4アーム部に任意角度を与える第3の回動駆動部と、
を更に具備することを特徴とする請求項1の移動ロボット。
【請求項3】
前記第4アーム部は、物品を把持する把持機構を更に備えることを特徴とする請求項2の移動ロボット。
【請求項4】
前記第2及び第3アーム部は、その軸の周りに回転可能に構成され、
前記第2及び第3アーム部をその軸の周りに回転する第1及び第2の軸回転駆動部を更に具備することを特徴とする請求項1の移動ロボット。
【請求項5】
前記第2、第3及び第4アーム部は、その軸の周りに回転可能に構成され、
前記第2、第3及び第4アーム部をその軸の周りに回転する第1、第2及び第3の軸回転駆動部を更に具備することを特徴とする請求項2の移動ロボット。
【請求項6】
前記本体の略中央部に前記第1関節部が設けられ、前記本体には、物品運搬用の搭載部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の移動ロボット。
【請求項7】
前記移動ロボット本体の他の側面に設けられ、前記移動ロボット本体側面の第5関節で回動可能に軸支され、収納用凹部及びこの収納用凹部に連通する開口部を有する第5アーム部と、
前記第5アームに第6関節部を介して連結された第6アーム部及びこの第6アーム部に第7関節部を介して連結された第7アーム部とから構成され、第7関節部で第7アーム部を前記第6アーム部に向けて折り畳むことが可能な第2の折り畳み機構であって、前記収納部の窪み内に折り畳んだ状態で収納可能で、前記開口部を介して第5のアーム部外に出入可能な第2の折り畳み機構と、
前記第5アーム部を前記第5関節の周りに回動して前記開口部を任意の方向に向ける第4の回動駆動部と、
前記収納用凹部に沿って前記第6関節部をスライドさせて前記折り畳まれた折り畳み機構を前記開口部から出し入れさせる第2のスライド駆動部と、
前記第7関節部の周りで前記第7アーム部を回動して前記第6アーム部に対して前記第7アーム部に任意角度を与える第5の回動駆動部と、
を具備することを特徴とする請求項1の移動ロボット。
【請求項8】
前記第1の回動駆動部を動作させて開口部を当該移動ロボットの移動路に向け、前記スライド駆動部を動作させて第1の折り畳み機構をスライドし、その先端を当該移動路に接触させ、前記第1の回動駆動部により前記第1アーム部を回転させて当該移動ロボット本体を持ち上げて移動路上の障害を乗り越えることを特徴とする請求項1に記載の移動ロボット。
【請求項9】
前記第1の回動駆動部によって回動される前記第1アーム部上には、この第1アーム部とともに回動される当該ロボット周囲の障害物を検出するセンサが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の移動ロボット搭載アーム。
【請求項10】
前記第1の回動駆動部によって回動される前記第1アーム部には、この第1アーム部とともに回動される当該ロボットの動作状態を明示するインジケータが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の移動ロボット搭載アーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−61964(P2007−61964A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251511(P2005−251511)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(501300104)学校法人 多摩美術大学 (25)
【Fターム(参考)】