説明

イオン含有排水処理装置及びイオン含有排水の処理方法

【課題】イオン含有排水を処理するに際し、凝集沈澱処理の設置面積の省スペース化を図ると共に、フロックの造粒効果を高め、汚泥を水と安定かつ高速に分離し、処理可能なイオン含有排水処理装置及びイオン含有排水の処理方法を提供する。
【解決手段】第一のイオン含有排水処理装置10Aは、フッ化物イオンを含有する排水11A中のフッ化物イオンをフッ化カルシウムにする第一の反応槽14と、フッ化カルシウムを含有する排水11B中に残留するフッ化物イオンを除去する第二の反応槽19と、フッ化カルシウムを含有する排水11B中のフッ化カルシウムの凝集したフロックが更に大きく成長し、造粒する造粒槽53と、フロックが濃縮された濃縮汚泥23を高速に沈降分離する高速沈澱槽55と、沈降分離した濃縮汚泥23の一部23aを水酸化カルシウム12と混合したアルカリ化合物含有濃縮汚泥27を第一の反応槽14に送給する汚泥反応槽28とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン含有排水をアルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物と反応させて生成された不溶物を造粒後、水と分離して処理するイオン含有排水処理装置及びイオン含有排水の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオン含有排水にアルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物を添加して当該イオンと反応して難溶性塩から成る不溶物を生成させ、生成した不溶物を含有する汚泥に高分子凝集剤を添加して不溶物を凝集させ、凝集したフロックと上澄み水とを固液分離し、上澄み水は放流され、凝集したフロックが沈降分離した濃縮汚泥は回収し、回収された濃縮汚泥の一部と前記アルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物とを混合し、得られたアルカリ化合物含有濃縮汚泥を前記の反応のアルカリ化合物として使用する方法が知られている。
【0003】
従来のイオン含有排水としては、例えばフッ化物イオンを含有する排水を処理する従来のイオン含有排水処理装置を図5に示す。図5は、従来のイオン含有排水処理装置の構成を示す概略図である。図5に示すように、従来のイオン含有排水処理装置100Aは、フッ化物イオンを含有する排水(原水)11Aにアルカリ化合物として水酸化カルシウム12を第一の薬剤供給部13より供給し、フッ化物イオンをフッ化カルシウムの生成を行なう第一の反応槽14と、析出された前記フッ化カルシウムを含有する排水に硫酸アルミニウム15を供給する無機凝集剤供給部16と前記フッ化カルシウムを含有する排水に酸17を供給する第二の薬剤供給部18とからなる第二の反応槽19と、前記フッ化カルシウムを含有する排水に高分子凝集剤20を供給する有機高分子凝集剤供給部21と、析出した前記フッ化カルシウムを凝集させる凝集槽22と、前記フロックが濃縮した濃縮汚泥23と上澄み水とを沈降分離する沈澱槽24と、該沈澱槽24で沈降分離された濃縮汚泥23の一部23aを抜出す汚泥返送ライン26と、該汚泥返送ライン26より送給された前記濃縮汚泥23の一部23aと前記第一の薬剤供給部13より供給される前記水酸化カルシウム12とを混合して得られる水酸化カルシウム含有濃縮汚泥27を前記第一の反応槽14に送給する汚泥反応槽28とからなるものである。
また、図中、符号29−1、29−2はpH計であり、V1〜V5はバルブであり、Pはポンプであり、Mはモーターである。
【0004】
従来のイオン含有排水を処理する方法としては、排水導入管31より第一の反応槽13に送給された前記フッ化物イオンを含有する排水(原水)11Aにアルカリ化合物供給管32より前記水酸化カルシウム12を添加してフッ化物イオンをフッ化カルシウムとして析出している。そして、前記第二の反応槽19において無機凝集剤供給管33より硫酸アルミニウム15を供給してフッ化カルシウムの凝集を促進し、酸供給管34より酸17を供給して前記硫酸アルミニウム15の凝集効果を高める共に、排水のpHの調整を行なっている。そして、前記凝集槽22において高分子凝集剤供給管35より高分子凝集剤20をフッ化カルシウムを含有する排水11Bに供給して前記フッ化カルシウムの凝集を促進させている。その後、前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bは排水送給管36を介して前記沈澱槽24に送給され、前記沈澱槽24において前記フロックが濃縮した濃縮汚泥23と上澄み水とを固液分離している。
【0005】
そして、前記上澄み水は沈澱槽本体25上部から処理水40として放流され、前記濃縮汚泥23は汚泥排出管37より抜出されて脱水機41へ送られると共に、前記濃縮汚泥23の一部23aは前記汚泥返送ライン26を介して前記汚泥反応槽28に送給され、前記水酸化カルシウム12と混合される。そして、得られたアルカリ化合物含有濃縮汚泥27を前記水酸化カルシウム12として使用する方法が採用されている。この方法は、所謂「アルカリ汚泥法」または「重金属汚泥の減容化技術(HDS法)」と呼ばれ、汚泥の削減、ランニングコストの削減を図るために採用されている(特許文献1、2)。
【0006】
ところで、アルカリ汚泥法を用いた場合、前記沈澱槽24で生成する前記濃縮汚泥23は高密度で脱水性に優れ沈降性は良いが、前記沈澱槽24において従来と同様に前記濃縮汚泥23と前記上澄み水とを固液分離している限り、水面積負荷は大幅に改善することはできない。また、アルカリ汚泥法を用いない通常の処理方法では、生成するフロックは軽く沈降性が悪いため、前記沈澱槽24で前記濃縮汚泥23と前記上澄み水とを固液分離する際、前記沈澱槽24の水面積負荷はあまり大きくすることはできず、通常例えば1m3/m2・hr前後が一般的である。
【0007】
図6は、沈澱槽内に回転式ディストリビューターを設けた従来のイオン含有排水処理装置の構成を示す図であり、図7は、回転式ディストリビューターによる排水の分散状況を模式的に表した図である。図6及び図7に示すように、従来のイオン含有排水処理装置100Bは、沈澱槽24内に固液分離として進行方向の後側に開口部42Aと、本体上部に整流板43を有する回転式ディストリビューター44Aを設け、アルカリ汚泥に用いたフッ化物イオン含有排水の処理において前記濃縮汚泥23と前記上澄み水とを固液分離するために水面積負荷を大きくできるイオン含有排水処理装置が提案されている(特許文献3)。
【0008】
また、図8は、他の回転式ディストリビューターによる排水の分散状況を模式的に表した図である。図8に示すように、前記沈澱槽24内に本体底部に開口部42Bと、本体上部に整流板43と、回転進行方向の本体下部側面に平板状のじゃま板45とを有する回転式ディストリビューター44Bを設けたイオン含有排水処理装置が提案されている(特許文献4)。
【0009】
【特許文献1】特許第3457013号公報
【特許文献2】特開2006−320869号公報
【特許文献3】特許第3196640号公報
【特許文献4】特許第3514170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図6及び図7に示す沈澱槽に使用している回転式のディストリビューター44Aでは、アルカリ汚泥法で生成した高密度のフロックがディストリビューター44Aの内部に堆積し、開口部42Aを閉塞する可能性がある、という問題がある。
【0011】
また、図8に示すような前記沈澱槽に使用しているディストリビューター44Bにおいても、前記ディストリビューター44B内の汚泥による閉塞を防止するのが充分とはいえない、という問題がある。
【0012】
そのため、図6〜図8に示すディストリビューター44A、44Bのような複雑な装置を用いることなく、前記濃縮汚泥23による閉塞を回避しつつ、前記濃縮汚泥23と水とを固液分離するための水面積負荷を大きくし、前記濃縮汚泥23の処理が可能なイオン含有排水処理装置が望まれている。
【0013】
本発明は、前記問題に鑑み、イオン含有排水を処理するに際し、凝集沈澱処理の設置面積の省スペース化を図ると共に、フロックの造粒効果を高め、汚泥を水と安定かつ高速に分離し、処理可能なイオン含有排水処理装置及びイオン含有排水の処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、イオンを含有する排水に第一の薬剤供給部よりアルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物を供給し、難溶性塩から成る不溶物の生成を行なう第一の反応槽と、該第一の反応槽より生成された前記不溶物を含有する排水に第二の薬剤供給部より酸を供給し、前記不溶物を含有する排水中に残留する前記イオンを除去すると共に、前記不溶物を含有する排水のpHの調整を行なう第二の反応槽と、前記第二の反応槽から排出される前記不溶物を含有する排水に有機高分子凝集剤を供給し、前記不溶物の凝集を行なう有機高分子凝集剤供給部と、槽本体内の回転軸方向に少なくとも二段以上の攪拌翼が設けられ、前記不溶物が凝集したフロックを含有する排水を槽本体下部から供給し、前記槽本体上部に上昇するにつれて前記フロックが更に大きく成長し、造粒する造粒槽と、該造粒槽において造粒したフロックを含有する排水を槽本体上部から供給し、前記造粒したフロックが濃縮された濃縮汚泥を沈降分離する高速沈澱槽と、該高速沈澱槽で沈降分離された濃縮汚泥の一部を抜出す汚泥返送ラインと、該汚泥返送ラインより送給された前記濃縮汚泥と前記第一の薬剤供給部より供給される前記アルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物と混合して得られるアルカリ化合物含有濃縮汚泥を前記第一の反応槽に送給する汚泥反応槽とからなることを特徴とするイオン含有排水処理装置にある。
【0015】
第2の発明は、イオンを含有する排水に第一の薬剤供給部よりアルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物を供給し、難溶性塩から成る不溶物の生成を行なう第一の反応槽と、該第一の反応槽より生成された前記不溶物を含有する排水に第二の薬剤供給部より酸を供給し、前記排水中に残留する前記イオンを除去すると共に、前記排水のpHの調整を行なう第二の反応槽と、前記第二の反応槽から排出される前記不溶物を含有する排水に有機高分子凝集剤を供給し、前記不溶物の凝集を行なう有機高分子凝集剤供給部と、槽本体内下部側に回転軸方向に少なくとも二段以上の攪拌翼が設けられ、前記不溶物の凝集したフロックを含有する排水を槽本体下部から供給し、槽本体上部に上昇するにつれて前記フロックを更に大きく成長させて造粒し、槽本体内上部側において造粒したフロックが濃縮された汚泥を水と固液分離し、槽本体側壁に設けられている汚泥抜出し管より前記汚泥を抜出す造粒・沈澱槽と、前記沈澱槽で固液分離された前記汚泥の一部を抜出す汚泥返送ラインと、汚泥返送ラインより送給された前記濃縮汚泥と前記第一の薬剤供給部より供給される前記アルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物とを混合して得られるアルカリ化合物含有濃縮汚泥を前記第一の反応槽に送給する汚泥反応槽とからなることを特徴とするイオン含有排水処理装置にある。
【0016】
第3の発明は、第2の発明において、前記造粒・沈澱槽から抜出された前記汚泥を回収する排泥器が設けられてなることを特徴とするイオン含有排水処理装置にある。
【0017】
第4の発明は、第1乃至第3の何れか一つの発明において、前記第二の反応槽が、前記不溶物を含有する排水に無機凝集剤を供給し、前記不溶物の凝集を促進する無機凝集剤供給部を有してなることを特徴とするイオン含有排水処理装置にある。
【0018】
第5発明は、第1乃至第4の発明の何れか一つにおいて、前記アルカリ化合物が、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムの何れか一つ又はこれら混合してなるものであることを特徴とするイオン含有排水処理装置にある。
【0019】
第6の発明は、第1乃至第5の何れか一つの発明において、前記カルシウム化合物が、塩化カルシウムであることを特徴とするイオン含有排水処理装置にある。
【0020】
第7の発明は、第1乃至第6の発明の何れか一つにおいて、前記酸が、硫酸、塩酸の何れかであることを特徴とするイオン含有排水処理装置にある。
【0021】
第8の発明は、第1乃至第7の何れか一つの発明において、前記無機凝集剤が、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化アルミニウムのアルミ系凝集剤、又は、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄の鉄系凝集剤の何れかであることを特徴とするイオン含有排水処理装置にある。
【0022】
第9の発明は、第1乃至第8の何れか一つの発明において、前記イオンを含有する排水が、フッ化物イオン、重金属イオン、リン酸イオンの何れか一つ以上を含有する排水であることを特徴とするイオン含有排水処理装置にある。
【0023】
第10の発明は、イオンを含有する排水を第一の反応槽に送給し、前記第一の反応槽において排水中の前記イオンとアルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物とを反応させ、難溶性塩から成る不溶物を生成し、生成された前記不溶物を含有する排水を第二の反応槽に送給し、前記第二の反応槽において前記不溶物を含有する排水に酸を供給し、前記不溶物を含有する排水中に残留する前記イオンを除去すると共に、前記不溶物を含有する排水のpHの調整を行なう反応工程と、前記反応工程において前記第二の反応槽から排出される前記不溶物を含有する排水に有機高分子凝集剤を添加して前記不溶物を凝集し、前記不溶物が凝集したフロックを生成し、前記フロックを含有する排水を造粒槽本体下部に送給し、前記造粒槽本体内の回転軸方向に少なくとも二段以上設けられている攪拌翼を回転させ、前記造粒槽本体下部から前記造粒槽本体上部に上昇するにつれて前記フロックを更に大きく成長させ、造粒する造粒工程と、前記造粒工程において造粒したフロックを含有する排水を沈澱槽本体上部側から供給し、前記造粒槽において前記造粒したフロックが濃縮された汚泥と水とを高速に沈降分離する固液分離工程と、前記固液分離工程において沈降分離された前記汚泥を前記沈澱槽から抜出し、抜出された前記汚泥の一部と前記アルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物とを混合して得られるアルカリ化合物含有濃縮汚泥を前記アルカリ化合物として前記第一の反応槽に送給する汚泥反応工程とからなることを特徴とするイオン含有排水の処理方法にある。
【0024】
第11の発明は、イオンを含有する排水を第一の反応槽に送給し、前記第一の反応槽において排水中の前記イオンとアルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物とを反応させ、難溶性塩から成る不溶物を生成し、生成された前記不溶物を含有する排水を第二の反応槽に送給し、前記第二の反応槽において前記不溶物を含有する排水に酸を供給し、前記排水中に残留する前記イオンを除去すると共に、前記排水のpHの調整を行なう反応工程と、前記反応工程において前記第二の反応槽から排出される前記不溶物を含有する排水に有機高分子凝集剤を添加して前記不溶物を凝集し、前記不溶物が凝集したフロックを生成し、前記フロックを含有する排水を造粒・沈澱槽本体下部に送給し、造粒・沈澱槽本体内の下部側に回転軸方向に少なくとも二段以上設けられている攪拌翼を回転させ、前記造粒・沈澱槽本体下部から前記造粒・沈澱槽本体上部に上昇するにつれて前記フロックを更に大きく成長させて造粒し、前記造粒・沈澱槽本体内上部側において造粒したフロックが濃縮された汚泥を水と高速に固液分離し、前記造粒・沈澱槽本体側壁に設けられている汚泥抜出し管より前記汚泥を抜出る造粒・分離工程と、前記造粒・分離工程において固液分離され抜出された前記汚泥の一部と前記アルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物とを混合して得られるアルカリ化合物含有濃縮汚泥を前記アルカリ化合物として前記第一の反応槽に送給する汚泥反応工程とからなることを特徴とするイオン含有排水の処理方法にある。
【0025】
第12の発明は、第11の発明において、前記造粒・沈澱槽から抜出された不溶物を含む汚泥を排泥器に回収することを特徴とするイオン含有排水の処理方法にある。
【0026】
第13の発明は、第10乃至第12の何れか一つの発明において、前記第二の反応槽中の前記不溶物を含有する排水に無機凝集剤を供給し、前記不溶物の凝集を促進することを特徴とするイオン含有排水の処理方法にある。
【0027】
第14の発明は、第10乃至第13の何れか一つの発明において、前記アルカリ化合物が、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムの何れか一つ又はこれら混合してなるものであることを特徴とするイオン含有排水の処理方法にある。
【0028】
第15の発明は、第10乃至第14の何れか一つの発明において、前記カルシウム化合物が、塩化カルシウムであることを特徴とするイオン含有排水の処理方法にある。
【0029】
第16の発明は、第10乃至第15の何れか一つの発明において、前記酸が、硫酸、塩酸の何れかであることを特徴とするイオン含有排水の処理方法にある。
【0030】
第17の発明は、第10乃至第16の何れか一つの発明において、前記無機凝集剤が、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化アルミニウムのアルミ系凝集剤、又は、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄の鉄系凝集剤の何れかであることを特徴とするイオン含有排水の処理方法にある。
【0031】
第18の発明は、第10乃至第17の発明の何れか一つにおいて、前記イオンを含有する排水が、フッ化物イオン、重金属イオン、リン酸イオンの何れか一つ以上を含有する排水であることを特徴とするイオン含有排水の処理方法にある。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、イオンを含有する排水中のイオンとアルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物との反応で生成した不溶物を凝集し、凝集した前記不溶物を予め造粒槽で大きなフロックに成長させて造粒することができ、高速沈澱槽で前記造粒したフロックが濃縮した濃縮汚泥を水と高速で沈降分離させることで、高密度の汚泥でも、高速、かつ安定に処理することができる。
【0033】
また、前記造粒槽で予め凝集した前記不溶物を大きなフロックに成長させて造粒することにより、前記高速沈澱槽で前記造粒したフロックの沈降速度を高めることができるため、前記高速沈澱槽での固液分離の面積を縮小することができる。
【0034】
また、本発明によれば、イオンを含有する排水中のイオンとアルカリ化合物との反応で生成した不溶物を凝集し、凝集した前記不溶物を予め造粒・沈澱槽下部側で大きなフロックとして成長させて造粒し、造粒・沈澱槽上部側で前記フロックが濃縮した濃縮汚泥を水と高速で固液分離することで、前記不溶物の造粒と、前記濃縮汚泥を水と固液分離を一つの槽内で一体的に行なうことができ、高密度の汚泥でも、高速、かつ安定に処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態及び実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0036】
[第一の実施の形態]
本発明による第一の実施の形態に係るイオン含有排水処理装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明による第一の実施の形態に係るイオン含有排水処理装置の構成を示す概略図である。図中、前記図5に示したイオン含有排水処理装置と同一構成には同一符号を付して重複した説明は省略する。
また、本実施の形態では、処理対象となるイオンを含有する排水としては、例えば半導体製造工場などから排出されるフッ化物イオンを含有するイオン含有排水を用いて説明する。
図1に示すように、本発明による第一の実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aは、フッ化物イオンを含有する排水(原水)11Aに第一の薬剤供給部13より水酸化カルシウム12を供給し、フッ化カルシウム(CaF2)の生成を行なう第一の反応槽14と、該第一の反応槽14より生成された前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bに第二の薬剤供給部18より酸17を供給し、前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中に残留する前記フッ化物イオンを除去すると共に、前記フッ化カルシウムを含有する排水11BのpHの調整を行なう第二の反応槽19と、該第二の反応槽19から排出される前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bに高分子凝集剤20を供給し、前記フッ化カルシウムの凝集を行なう有機高分子凝集剤供給部21と、造粒槽本体51内の回転軸方向に少なくとも二段以上の攪拌翼52が設けられ、フッ化カルシウムの凝集したフロックを含有する排水を造粒槽本体51下部から供給し、前記造粒槽本体51上部に上昇するにつれて前記フロックが更に大きく成長し、造粒する造粒槽53と、前記造粒したフロックを含有する排水11Cを高速沈澱槽本体54上部から供給し、前記造粒したフロックが濃縮された濃縮汚泥23を高速に沈降分離する高速沈澱槽55と、該高速沈澱槽55で沈降分離された前記濃縮汚泥23の一部23aを抜出す汚泥返送ライン26と、該汚泥返送ライン26より送給された前記濃縮汚泥23の一部23aと前記第一の薬剤供給部13より供給される前記水酸化カルシウム12とを混合して得られる水酸化カルシウム含有濃縮汚泥27を前記第一の反応槽14に送給する汚泥反応槽28とからなるものである。
【0037】
本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aでは、前記フッ化物イオンを含有する排水(原水)11Aに前記水酸化カルシウム12を供給する前記第一の反応槽14を有している。前記水酸化カルシウム12をアルカリ化合物供給管32から前記第一の反応槽14に供給することにより、前記フッ化物イオンを含有する排水(原水)11A中のフッ化物イオンと水酸化カルシウム12とが反応し、不溶物であるフッ化カルシウムを生成する。これにより、前記フッ化物イオンを含有する排水(原水)11A中にフッ化カルシウムを析出させることができる。
【0038】
また、本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aでは、後述するように前記汚泥反応槽28において前記汚泥返送ライン26より抜出された前記濃縮汚泥23の一部23aを前記水酸化カルシウム12と混合して前記水酸化カルシウム含有濃縮汚泥27としてアルカリ化合物供給管32から前記第一の反応槽14に供給することができる。
【0039】
また、本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aにおいて、アルカリ化合物供給管32AからバルブV1を経由して供給される前記水酸化カルシウム(Ca(OH)2)12の使用割合は、フッ化物イオンを含有する排水(原水)11A中のF(フッ化物イオン濃度)に対し、通常2〜5倍当量であるが、前記水酸化カルシウム12等のようにアルカリ性のカルシウム化合物を使用する場合は、前記第一の反応槽14におけるフッ化物イオンを含有する排水(原水)11A中のpHが8〜11の範囲となるように調整する。また、pH計29−1により計測結果を前記バルブV1に送信することにより、前記水酸化カルシウム12の供給量が制御される。
【0040】
また、本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aにおいては、アルカリ化合物としては、前記水酸化カルシウム12を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他のアルカリ化合物及びカルシウム化合物を添加したものを用いるようにしてもよい。
【0041】
また、前記アルカリ化合物として、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)の何れか一つ又はこれら混合してなるものを用いる場合には、前記カルシウム化合物として、例えば塩化カルシウム(CaCl2)を添加するようにする。
【0042】
また、前記塩化カルシウム(CaCl2)等のアルカリ性でないカルシウム化合物を使用する場合には、別途水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ化合物を添加し、前記フッ化物イオンを含有する排水(原水)11AのpH調整を行うのが好ましい。
【0043】
また、本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aでは、無機凝集剤として前記硫酸アルミニウム15を供給する前記無機凝集剤供給部16を有している。前記無機凝集剤として例えば前記硫酸アルミニウム15を前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bに供給することにより、フッ化カルシウムの凝集を促進させることができる。また、前記第一の反応槽14では、前記水酸化カルシウム12と反応せずに残留したフッ化物イオンを例えば前記硫酸アルミニウム15との共沈によりフッ化物イオンを更に低濃度にまで除去することができる。
【0044】
また、本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aでは、無機凝集剤として前記硫酸アルミニウム15の添加量は、前記フッ化物イオンを含有する排水(原水)11Aに対して通常10〜40ppmである。また、有機高分子凝集剤を添加するときの有機高分子凝集剤の添加量は、前記フッ化物イオンを含有する排水(原水)11Aに対して通常1〜10ppmである。
【0045】
また、本実施の形態では、無機凝集剤としては、前記硫酸アルミニウム15を用いているが、本発明はこれに限定されるものではく、ポリ塩化アルミニウム、塩化アルミニウムのアルミ系凝集剤、又は、硫酸第二鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄の鉄系凝集剤の何れかを用いてもよい。
【0046】
また、本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aでは、前記第一の反応槽14より析出された前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bに前記第二の薬剤供給部18より前記酸17を供給する前記第二の反応槽19を有している。前記第二の反応槽19において、前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bに前記酸17を供給することにより、前記無機凝集剤である前記硫酸アルミニウム15と、後述の高分子凝集剤20の凝集効果を高めることができる。これにより、前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中に残留するフッ化物イオンを前記硫酸アルミニウム15との共沈でフッ素を更に低濃度にまで除去すると共に、前記フッ化カルシウムを含有する排水11BのpHの調整を行なうことができる。
【0047】
また、本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aにおいて、前記第二の反応槽19における前記フッ化カルシウムを含有する排水11BのpHは、例えば6.0〜8.0とするのが好ましい。
【0048】
本実施の形態では、前記酸17としては、硫酸、塩酸などが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】
前記第二の反応槽19から排出される前記フッ化カルシウムを含有する排水11BはポンプPにより移送され、排水送給管36Aを介して前記造粒槽53の前記造粒槽本体51の下部に供給される。
【0050】
また、本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aでは、前記第二の反応槽19から排出される前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bに前記高分子凝集剤20を供給する前記有機高分子凝集剤供給部21を排水送給管36に有している。前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bに前記高分子凝集剤20を供給することにより、前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中の前記フッ化カルシウムの凝集を更に促進することができる。
【0051】
前記造粒槽53に送給される前に排水送給管36Aで前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中に前記高分子凝集剤20を供給し、前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中の前記フッ化カルシウムの凝集を促進しておくことで、前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bが前記造粒槽53の前記造粒槽本体51の下部に供給される段階では、前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中の前記フッ化カルシウムが凝集したフロックが生成される。
【0052】
これにより、本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aは、前記図5及び図6に示した従来のイオン含有排水処理装置100A、100Bのように前記凝集槽22を設けることなく、迅速に前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中の前記フッ化カルシウムの凝集を促進し、前記造粒槽53での前記フッ化カルシウムが凝集したフロックの造粒を有利にすることができる。
【0053】
また、本実施の形態では、前記高分子凝集剤20の一例として、例えばアニオン系(陰イオン)高分子凝集剤が用いられる。アニオン系(陰イオン)高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド系、アニオン性ポリアクリルアミド系、ポリアクリルアミドの部分加水分解物などが挙げられる。
【0054】
前記高分子凝集剤20は、何れも、周知であり、市販品として容易に入手することが出来る。因に、アニオン系高分子凝集剤の分子量は1200万〜1800万程度である。また、一般に、アニオン系高分子凝集剤は、線状の高分子によって不溶物を巻き込むことにより凝集体を形成すると考えられている。
【0055】
また、本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aにおいては、前記排水送給管36Aでアニオン系高分子凝集剤を添加する際の添加量は、原水に対して通常1〜5ppmとする。
【0056】
また、前記造粒槽本体51下部から供給される前記フロックを含有する排水は、前記造粒槽本体51上部に上昇していく。
【0057】
また、本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aでは、前記造粒槽本体51内の回転軸方向に少なくとも二段以上の前記攪拌翼52が設けられた前記造粒槽53を有している。前記造粒槽本体51内に設けられている少なくとも二段以上の前記攪拌翼52を回転軸方向に回転させることにより、前記造粒槽本体51下部から供給される前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中の前記フロックを前記造粒槽本体51上部に上昇するにつれて更に大きく成長させ、造粒することができる。
【0058】
また、本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aにおいて、前記造粒槽53に設けられた前記攪拌翼52の回転速度は、例えば50rpm以下で運転するようにしている。尚、高速沈澱槽55の大きさにもよるが、例えば0.5〜50rpmで運転するのが好ましい。更には0.5〜20rpmで運転するのが好ましい。また、前記造粒槽53の滞留時間は例えば1分〜5分で行なうのが好ましい。
【0059】
また、本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aでは、前記造粒槽53において前記造粒したフロックを高速に分離する前記高速沈澱槽55を有している。前記造粒槽53において前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中の前記フッ化カルシウムが凝集したフロックを予め生成してから、前記造粒したフロックを含有する排水11Cを前記高速造粒槽55の沈澱高速沈澱槽槽本体54上部から供給しているため、前記高速造粒槽本体54において前記濃縮汚泥23を高速に沈降分離することができる。
【0060】
また、本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aでは、前記造粒槽53で前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中の前記フロックを予め大きなフロックに成長させて造粒することで、前記高速沈澱槽55で前記造粒したフロックの沈降速度を高めることができるため、前記高速沈澱槽55での固液分離の面積を縮小することができる。
【0061】
これにより、前記濃縮汚泥23と沈降分離された上澄み液は、処理水40として取出すことができると共に、前記沈澱槽24で沈降分離された前記濃縮汚泥23は汚泥排出管37より抜出すことができる。
【0062】
また前記高速造粒槽本体54で分離された前記濃縮汚泥23の一部23aは、例えばフィルタープレスなどの脱水機41で脱水される。
【0063】
また、本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aでは、前記汚泥返送ライン26より抜出された前記濃縮汚泥23の一部23aを前記第一の薬剤供給部13より供給される前記水酸化カルシウム12と混合させる前記汚泥反応槽28を有している。
【0064】
前記汚泥排出管37で前記汚泥返送ライン26より抜出された前記濃縮汚泥23の一部23aを前記第一の薬剤供給部13より供給される前記水酸化カルシウム12と混合して得られるアルカリ化合物含有濃縮汚泥27を前記第一の反応槽14に送給することで、前記フッ化物イオンを含有する排水(原水)11A中のフッ化物イオンと反応させることができる。
【0065】
また、本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aにおいては、前記汚泥返送ライン26より抜き出され、前記汚泥反応槽28においてカルシウム化合物との混合に供される前記濃縮汚泥23の一部23aの固形分量は、前記フッ化物イオン含有排水(原水)11とカルシウム化合物との中和で発生する不溶化物(汚泥)の量に対し、通常10〜40倍、好ましくは15〜20倍となるように調整される(なお、斯かる比率を汚泥返送比と定義する)。
また、前記濃縮汚泥23aの供給量の制御は、前記汚泥返送ライン26の途中に設けられた手動弁(図示せず)の開度調節によって行うことができる。
【0066】
また、図2は、本発明による第一の実施の形態に係るイオン含有排水処理装置を用いて行なう工程図である。図2に示すように、本発明による第一の実施の形態に係るイオン含有排水処理装置10Aを用いる場合には以下の工程で示すことができる。
【0067】
本発明による第一の実施の形態に係るイオン含有排水処理装置を用いて行なう工程は、前記フッ化物イオンを含有する排水11A中にフッ化カルシウムの生成を行なう反応工程(S101)と、前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中の前記フッ化カルシウムが凝集したフロックを更に大きく成長させ、造粒する造粒工程(S102)と、造粒したフロックが濃縮された濃縮汚泥23を高速に沈降分離する固液分離工程(S103)と、前記濃縮汚泥23の一部23aと前記水酸化カルシウム12とを混合して得られる前記水酸化カルシウム含有濃縮汚泥27を前記第一の反応槽14に送給する汚泥反応工程(S104)とからなるものである。
【0068】
<反応工程(S101)>
前記反応工程(S101)は、前記フッ化物イオンを含有する排水(原水)11Aを第一の反応槽14に送給し、前記第一の反応槽14において前記フッ化物イオンを含有する排水(原水)11A中の前記フッ化物イオンと前記水酸化カルシウム12とを反応させ、フッ化カルシウムを生成し、生成された前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bを第二の前記反応槽19に送給し、前記第二の反応槽19において前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bに酸17を供給し、前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中に残留する前記フッ化物イオンを除去すると共に、前記フッ化カルシウムを含有する排水11BのpHの調整を行なう工程である。
【0069】
前記反応工程(S101)では、前記フッ化物イオンを含有する排水(原水)11Aにアルカリ化合物供給管32から前記水酸化カルシウム12を前記第一の反応槽14に供給し、フッ化カルシウムを生成する。
【0070】
そして、前記無機凝集剤として前記硫酸アルミニウム15を前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bに供給することにより、フッ化カルシウムの凝集を促進する。また、前記第一の反応槽14で前記水酸化カルシウム12と反応せずに残留したフッ化物イオンを前記硫酸アルミニウム15との共沈によりフッ化物イオンを更に低濃度まで除去する。
【0071】
また、前記第二の反応槽19で、前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bに前記酸17を供給し、前記硫酸アルミニウム15と、前記高分子凝集剤20の凝集効果を高めると共に、前記フッ化カルシウムを含有する排水11BのpHの調整を行なう。
【0072】
<造粒工程(S102)>
前記造粒工程(S102)は、前記反応工程(S101)において前記第二の反応槽19から排出される前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bに前記有機高分子凝集剤20を添加して前記フッ化カルシウムを凝集し、前記フッ化カルシウムが凝集したフロックを生成し、前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bを前記造粒槽本体51下部に送給し、前記造粒槽本体51内の回転軸方向に少なくとも二段以上設けられている前記攪拌翼52を回転させ、前記造粒槽本体51下部から前記造粒槽本体51上部に上昇するにつれて前記フロックを更に大きく成長させ、造粒する工程である。
【0073】
前記造粒工程(S102)では、前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bに前記排水送給管36Aで前記高分子凝集剤20を供給し、前記フッ化カルシウムの凝集を更に促進する。前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bが前記造粒槽53の前記造粒槽本体51の下部に供給される段階では、前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中の前記フッ化カルシウムが凝集したフロックが生成される。
【0074】
そして、前記フロックを含有する排水を前記造粒槽53の前記造粒槽本体51の下部に供給し、前記造粒槽本体51内に設けられている少なくとも二段以上の前記攪拌翼52を回転軸方向に回転させ、前記造粒槽本体51下部から供給される前記フロックを含有する排水中の前記フロックを前記造粒槽本体51上部に上昇するにつれて更に大きく成長させ、造粒する。
【0075】
<固液分離工程(S103)>
前記固液分離工程(S103)は、前記造粒工程(S102)において前記造粒したフロックを含有する排水11Cを前記高速造粒槽本体54上部側から供給し、前記高速沈澱槽55において前記濃縮汚泥23を高速に沈降分離する工程である。
【0076】
前記固液分離工程(S103)では、前記造粒槽53において前記造粒したフロックを含有する排水11Cを排水送給管36Bを介して前記高速沈澱槽55の前記高速造粒槽本体54上部に供給し、前記高速沈澱槽55において前記濃縮汚泥23が形成される。そして、前記造粒槽53において前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中の前記フッ化カルシウムが凝集したフロックを予め生成してから、前記造粒したフロックを含有する排水11Cを前記高速造粒槽55の沈澱高速沈澱槽槽本体54上部から供給しているため、前記高速造粒槽本体54において前記濃縮汚泥23を高速に沈降分離する。
【0077】
そして、前記高速沈澱槽55で沈降分離された前記濃縮汚泥23は汚泥排出管37より抜出され、この抜出された前記濃縮汚泥23は、前記脱水機41に送給される。
【0078】
<汚泥反応工程(S104)>
前記汚泥反応工程(S104)は、前記固液分離工程(S103)において沈降分離された前記濃縮汚泥23を前記高速沈澱槽55から抜出し、抜出された前記濃縮汚泥23の一部23aと前記水酸化カルシウム12とを混合して得られる前記水酸化カルシウム含有濃縮汚泥27を前記第一の反応槽14に送給する工程である。
【0079】
前記汚泥反応工程(S104)では、前記汚泥排出管37で前記汚泥返送ライン26より抜出された前記濃縮汚泥23の一部23aを前記第一の薬剤供給部13より供給される前記水酸化カルシウム12と混合し、得られる前記水酸化カルシウム含有濃縮汚泥27を前記水酸化カルシウム12として前記第一の反応槽14に送給し、前記フッ化物イオンを含有する排水(原水)11A中のフッ化物イオンと反応させる。
【0080】
このように本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aによれば、前記フッ化物イオンを含有する排水(原水)11A中のフッ化物イオンと前記水酸化カルシウム12との反応で生成し、凝集した前記フッ化カルシウムを予め前記造粒槽53で大きなフロックに造粒し、前記濃縮汚泥23と水とを沈降分離することにより、生成した高密度の汚泥でも、高速、かつ安定に処理することができる。
【0081】
本実施の形態では、処理対象となるイオン含有排水としては、フッ化物イオン含有排水(例えば半導体製造工場などから排出されるフッ素含有排水)を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば銅、亜鉛、ニッケル、カドミウム、マンガン、鉛、亜鉛、鉄などの重金属イオン含有排水(例えばメッキ排水)、リン酸イオン含有排水(例えばリン酸製造工場排水)等でもよい。
【0082】
本実施の形態においては、前記イオン含有排水としてフッ化物イオン含有排水11Aを用いているが、例えば前記イオン含有排水がリン酸イオンを含有する排水の場合、前記フッ化物イオン含有排水11Aの場合と同様、アルカリ化合物としては、前記水酸化カルシウム(Ca(OH)2)12のみを添加したもの、又は水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)の何れか一つ又はこれら混合してなるものに前記カルシウム化合物として塩化カルシウム(CaCl2)を添加したものを用いるようにしてもよい。
【0083】
また、前記イオン含有排水が例えば重金属イオンを含有する排水の場合、前記水酸化カルシウム(Ca(OH)2)12、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)の何れか一つ又はこれら混合してなるアルカリ化合物のみを添加すればよい。
【0084】
よって、前記イオン含有排水が、フッ化物イオン、重金属イオン、リン酸イオンの何れか一つ以上を含有する排水からなる場合、前記第一の薬剤供給部から供給する薬剤を適宜調整するようにすればよい。
【実施例】
【0085】
次に、本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aの効果を示す実施例について説明する。
ここで、本実施例では、イオン含有排水としては、フッ化物イオン含有排水を用いた。
【0086】
本実施例では、図1に示す処理水40の水量が約17m3/hである試験装置を用いて、フッ化物イオン濃度が約100mg/Lの排水を用いた。
実施例1は、図1に示す本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aを用いて行なったものである。また、実施例1では、沈澱槽の水面積負荷を5.0m3/m2・hrとしたものである。
比較例1、2は、図5に示す従来のイオン含有排水処理装置100Aを用いて行なったものである。
比較例1は図5に示す従来のイオン含有排水処理装置100Aの沈澱槽の水面積負荷を5.0m3/m2・hrとしたものである。
比較例2は図5に示す従来のイオン含有排水処理装置100Aの沈澱槽の水面積負荷を1.0m3/m2・hrとしたものである。
【0087】
実施例1と、比較例1、2の沈澱槽の水面積負荷、処理水のSS(浮遊物質)濃度、処理水のF(フッ化物イオン)濃度を下記表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
表1より、図1に示す本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aを用いて行なった実施例1では、沈澱槽の水面積負荷が5.0m3/m2・hrとした時、処理水のSS(浮遊物質)濃度は5〜8mg/Lであり、処理水のF(フッ化物イオン)濃度は8〜15mg/Lであったことが確認された。
【0090】
また、図5に示す従来のイオン含有排水処理装置100Aを用い、沈澱槽の水面積負荷を5.0m3/m2・hrとして行なった比較例1では、処理水のSS(浮遊物質)濃度は50〜100mg/Lであり、処理水のF(フッ化物イオン)濃度は20〜30mg/Lであったことが確認された。
【0091】
よって、図5に示す従来のイオン含有排水処理装置100Aを用い、沈澱槽の水面積負荷を5.0m3/m2・hrとして運転した場合、沈澱槽からSS(浮遊物質)は、キャリーオーバーし、処理水のSS濃度が悪化すると共に、そのSS(浮遊物質)が原因で処理水F濃度も悪化することも確認された。
【0092】
また、図5に示す従来のイオン含有排水処理装置100Aを用い、沈澱槽の水面積負荷を1.0m3/m2・hrとして行なった比較例2では、処理水のSS(浮遊物質)濃度は5〜8mg/Lであり、処理水のF(フッ化物イオン)濃度は8〜15mg/Lであったことが確認された。
【0093】
よって、図1に示す本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aを用いて行なった実施例1によれば、沈澱槽の水面積負荷が5.0m3/m2・hrの高負荷での運転状況においても処理水SS(浮遊物質)濃度、処理水のF(フッ化物イオン)濃度ともに図5に示す従来のイオン含有排水処理装置100Aを用いて沈澱槽の水面積負荷を1.0m3/m2・hrとして行なった比較例2と同等の処理水質が得られることが確認された。
【0094】
これより、本実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aによれば、凝集したフッ化カルシウムを更に大きなフロックとして造粒し、造粒したフッ化カルシウムが濃縮された汚泥と水とを固液分離することで、アルカリ汚泥法で生成した高密度の汚泥でも、高速で安定に処理することができることが確認された。
【0095】
[第二の実施の形態]
本発明による第一の実施の形態に係るイオン含有排水処理装置について、図3を参照して説明する。
図3は、本発明による第二の実施の形態に係るイオン含有排水処理装置の構成を示す概略図である。図中、図1に示す第一の実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aと同一構成には同一符号を付して重複した説明は省略する。
図3に示すように、本実施の形態に係る第二のイオン含有排水処理装置10Bは、図1に示す第一の実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aの前記造粒槽53の前記攪拌翼52を前記高速造粒槽本体54内の槽下部に一体として設けてなるものである。
【0096】
即ち、本実施の形態に係る第二のイオン含有排水処理装置10Bの一体型の造粒・沈澱槽61は、造粒・沈澱槽本体62内下部側に回転軸方向に少なくとも二段以上の攪拌翼52が設けられ、前記造粒・沈澱槽本体62内上部側に造粒したフロックが濃縮された濃縮汚泥23を水と高速に固液分離し、前記造粒・沈澱槽本体62側壁に前記濃縮汚泥23を抜出す汚泥抜出し管63を設けてなるものである。
【0097】
本実施の形態に係る第二のイオン含有排水処理装置10Bでは、前記造粒・沈澱槽61の前記造粒・沈澱槽本体62内下部に回転軸方向に少なくとも二段以上の攪拌翼52が設けられている。これにより、前記造粒・沈澱槽本体62の下部側から供給された前記フロックを含有する排水が前記造粒・沈澱槽本体62上部側に上昇するにつれて前記フロックを更に大きく成長させて造粒することができる。
【0098】
また、本実施の形態に係る第二のイオン含有排水処理装置10Bでは、前記造粒・沈澱槽本体62内の上部側の前記造粒・沈澱槽本体62側壁に前記濃縮汚泥23を抜出す前記汚泥抜出し管63が設けられている。前記造粒・沈澱槽本体62内下部において前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中の前記フッ化カルシウムが凝集したフロックを予め生成してから、前記造粒・沈澱槽本体62上部側に移行しているため、前記造粒・沈澱槽本体62内上部側で前記濃縮汚泥23を水と高速に固液分離し、前記汚泥抜出し管63によって前記造粒・沈澱槽本体62の側壁から抜出すことができる。
【0099】
また、本実施の形態に係る第二のイオン含有排水処理装置10Bでは、前記造粒・沈澱槽61から抜出された前記濃縮汚泥23を回収する前記排泥器64が配設されている。この前記排泥器64により、前記汚泥抜出し管63によって前記造粒・沈澱槽本体62側壁から抜出された前記濃縮汚泥23を貯蔵しておくことができ、適時排出することができる。
【0100】
また、本実施の形態に係る第二のイオン含有排水処理装置10Bにおいては、前記造粒・沈澱槽本体62上部側に前記濃縮汚泥23の排泥レベルを二箇所以上設けている。これにより、前記造粒・沈澱槽本体62上部側に汚泥ゾーンを適切に設けることができ、前記濃縮汚泥23を排出することができる。
【0101】
前記濃縮汚泥23は、前記排泥器64を経た後、図1に示す第一の実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aと同様、前記濃縮汚泥23の一部23aは前記汚泥返送ライン26を介して前記汚泥反応槽28へ送給され、前記濃縮汚泥23の一部23aは前記脱水器41へ移送される。
【0102】
また、図4は、本発明による第二の実施の形態に係るイオン含有排水処理装置を用いて行なう工程図である。図4に示すように、本発明による第二の実施の形態に係るイオン含有排水処理装置10Aを用いる場合には以下の工程で示すことができる。
【0103】
本発明による第二の実施の形態に係るイオン含有排水処理装置を用いて行なう工程は、
前記フッ化物イオンを含有する排水11A中にフッ化カルシウムの生成を行なう反応工程(S201)と、前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中の前記フッ化カルシウムが凝集したフロックを更に大きく成長させて造粒し、造粒したフロックが濃縮された濃縮汚泥23を水と高速に固液分離し、前記濃縮汚泥23を抜出す造粒・分離工程(S202)と、前記濃縮汚泥23の一部23aと前記水酸化カルシウム12とを混合して得られる前記水酸化カルシウム含有濃縮汚泥27を前記第一の反応槽14に送給する汚泥反応工程(S203)とからなるものである。
【0104】
<反応工程(S201)>
反応工程(S201)は、前記フッ化物イオンを含有する排水(原水)11Aを第一の反応槽14に送給し、前記第一の反応槽14において排水11中の前記フッ化物イオンと水酸化カルシウム12とを反応させ、フッ化カルシウムを生成し、生成された前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bを第二の反応槽19に送給し、前記第二の反応槽19において前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bに酸17を供給し、前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中に残留する前記フッ化物イオンを除去すると共に、前記フッ化カルシウムを含有する排水11BのpHの調整を行なう工程である。
【0105】
前記反応工程(S201)では、前記反応工程(S101)と同様、前記フッ化物イオンを含有する排水11A中のフッ化物イオンを前記水酸化カルシウム12と共に前記第一の反応槽14に供給し、フッ化カルシウムを生成し、前記硫酸アルミニウム15を添加してフッ化カルシウムの凝集を促進し、前記第一の反応槽14で水酸化カルシウム12と反応せずに残留したフッ化物イオンを更に低濃度まで除去する。
【0106】
<造粒・分離工程(S202)>
前記造粒・分離工程(S202)は、前記反応工程(S201)において前記第二の反応槽19から排出される前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中の前記フッ化カルシウムを凝集し、前記フッ化カルシウムが凝集したフロックを生成し、前記造粒・沈澱槽62本体下部から前記造粒・沈澱槽本体62上部に上昇するにつれて前記フロックが更に大きく成長して造粒し、前記造粒・沈澱槽本体62内上部側において造粒したフロックが濃縮された濃縮汚泥23を水と高速に固液分離し、抜出す工程である。
【0107】
前記造粒・分離工程(S202)では、前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bに前記排水送給管36で前記高分子凝集剤20を供給し、前記フッ化カルシウムの凝集を更に促進する。また、前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中の前記フッ化カルシウムが凝集したフロックが生成される。そして、前記造粒・沈澱槽本体62下部から前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bを供給し、前記造粒・沈澱槽61の前記造粒・沈澱槽本体62内下部に設けられている回転軸方向に少なくとも二段以上の前記攪拌翼52により、前記造粒・沈澱槽本体62下部から供給された前記フッ化カルシウムを含有する排水11Bが前記造粒・沈澱槽本体62上部に上昇するにつれて前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中の前記フロックを更に大きく成長させ、造粒する。
【0108】
前記造粒・沈澱槽本体62内上部側において、前記造粒・沈澱槽本体62下部から上昇するにつれて造粒したフロックが濃縮された前記濃縮汚泥23が形成される。そして、前記造粒・沈澱槽本体62内下部において前記フッ化カルシウムを含有する排水11B中の前記フッ化カルシウムが凝集したフロックを予め生成してから、前記造粒・沈澱槽本体62上部側に移行しているため、前記造粒・沈澱槽本体62内上部側において、前記造粒・沈澱槽本体62内上部側で前記濃縮汚泥23を水と高速に固液分離する。
【0109】
前記造粒・沈澱槽本体62内上部側の前記造粒・沈澱槽本体62側壁に設けられている前記汚泥抜出し管63から前記濃縮汚泥23を抜出す。
【0110】
そして、前記造粒・沈澱槽61の外側に設けられている前記排泥器64に汚泥抜出し管63によって前記造粒・沈澱槽61から抜出された前記濃縮汚泥23を回収・貯蔵し、適時前記汚泥排出管37から排出することができる。
【0111】
抜出された前記濃縮汚泥23は、前記脱水機41に送給される。
【0112】
<汚泥反応工程(S203)>
前記汚泥反応工程(S203)は、前記造粒・分離工程(S202)において固液分離され抜出された前記濃縮汚泥23の一部23aと前記水酸化カルシウムとを混合して得られる水酸化カルシウム含有濃縮汚泥27を前記第一の反応槽14に送給する工程である。
【0113】
前記汚泥反応工程(S203)では、前記汚泥反応工程(S104)と同様、前記汚泥排出管37で前記汚泥返送ライン26より抜出された前記濃縮汚泥23の一部23aを前記水酸化カルシウム12と混合し、得られる前記水酸化カルシウム含有濃縮汚泥27を前記水酸化カルシウム12として前記第一の反応槽14に送給し、前記フッ化物イオンを含有する排水11A中のフッ化物イオンと反応させる。
【0114】
また、本発明実施の形態に係る第二のイオン含有排水処理装置10Bでは、通常処理水量が多い場合には、図1に示す第一の実施の形態に係る第一のイオン含有排水処理装置10Aのように前記造粒槽53と前記沈澱槽24を分ける方式を採用するのが好ましい。また、処理水量が少ない場合は本実施の形態に係る第二のイオン含有排水処理装置10Bのように造粒槽と沈澱槽とを一体型とし前記造粒・沈澱槽61を採用するのが好ましいが、本発明は特に処理水量に限定されるものではない。
【0115】
このように本実施の形態によれば、前記フッ化物イオンを含有する排水11A中のフッ化物イオンと前記水酸化カルシウム12との反応で生成し、凝集した前記フッ化カルシウムを予め前記造粒・沈澱槽61で大きなフロックに造粒しておくことにより、前記造粒・沈澱槽61で前記濃縮汚泥23を水と高速に固液分離することで、生成した高密度の汚泥でも、高速、かつ安定に処理することができる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
以上のように、本発明に係るイオン含有排水処理装置は、生成されたフッ化カルシウムを予め造粒槽又は、造粒・沈澱槽で前記フッ化カルシウムの凝集したフロックを造粒しておくことにより、造粒したフロックが濃縮した汚泥を高速に分離できるため、アルカリ汚泥法で生成した高密度の汚泥でも複雑な構造を用いることなく汚泥の閉塞を回避し、高速かつ安定に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明による第一の実施の形態に係るイオン含有排水処理装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明による第一の実施の形態に係るイオン含有排水処理装置を用いて行なう工程図である。
【図3】本発明による第二の実施の形態に係るイオン含有排水処理装置の構成を示す概略図である。
【図4】本発明による第二の実施の形態に係るイオン含有排水処理装置を用いて行なう工程図である。
【図5】従来のイオン含有排水処理装置の構成を示す概略図である。
【図6】従来の他のイオン含有排水処理装置の構成を示す概略図である。
【図7】ディストリビューターの断面図である。
【図8】他のディストリビューターの断面図である。
【符号の説明】
【0118】
10A 第一のイオン含有排水処理装置
10B 第二のイオン含有排水処理装置
11A フッ化物イオンを含有する排水(原水)
11B フッ化カルシウムを含有する排水
11C 造粒したフロックを含有する排水
12 水酸化カルシウム
13 第一の薬剤供給部
14 第一の反応槽
15 硫酸アルミニウム
16 無機凝集剤供給部
17 酸
18 第二の薬剤供給部
19 第二の反応槽
20 高分子凝集剤
21 有機高分子凝集剤供給部
22 凝集槽
23 フッ化カルシウムを含む濃縮汚泥
24 沈澱槽
25 沈澱槽本体
26 汚泥返送ライン
27 水酸化カルシウム含有濃縮汚泥
28 汚泥反応槽
29−1、29−2 pH計
31 排水導入管
32 アルカリ化合物供給管
32A アルカリ化合物供給管
32B アルカリ化合物供給管
33 無機凝集剤供給管
34 酸供給管
35 高分子凝集剤供給管
36 排水送給管
36A 排水送給管
36B 排水送給管
37 汚泥排出管
40 処理水
41 脱水機
42A、42B 開口部
43 整流板
44A、44B ディストリビューター
45 じゃま板
51 造粒槽本体
52 攪拌翼
53 造粒槽
54 高速造粒槽本体
55 高速沈澱槽
61 造粒・沈澱槽
62 造粒・沈澱槽本体
63 汚泥抜出し管
64 排泥器
V1〜V5 バルブ
M モーター
P ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを含有する排水に第一の薬剤供給部よりアルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物を供給し、難溶性塩から成る不溶物の生成を行なう第一の反応槽と、
該第一の反応槽より生成された前記不溶物を含有する排水に第二の薬剤供給部より酸を供給し、前記不溶物を含有する排水中に残留する前記イオンを除去すると共に、前記不溶物を含有する排水のpHの調整を行なう第二の反応槽と、
前記第二の反応槽から排出される前記不溶物を含有する排水に有機高分子凝集剤を供給し、前記不溶物の凝集を行なう有機高分子凝集剤供給部と、
槽本体内の回転軸方向に少なくとも二段以上の攪拌翼が設けられ、前記不溶物が凝集したフロックを含有する排水を槽本体下部から供給し、前記槽本体上部に上昇するにつれて前記フロックが更に大きく成長し、造粒する造粒槽と、
該造粒槽において造粒したフロックを含有する排水を槽本体上部から供給し、前記造粒したフロックが濃縮された濃縮汚泥を沈降分離する高速沈澱槽と、
該高速沈澱槽で沈降分離された濃縮汚泥の一部を抜出す汚泥返送ラインと、
該汚泥返送ラインより送給された前記濃縮汚泥と前記第一の薬剤供給部より供給される前記アルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物と混合して得られるアルカリ化合物含有濃縮汚泥を前記第一の反応槽に送給する汚泥反応槽とからなることを特徴とするイオン含有排水処理装置。
【請求項2】
イオンを含有する排水に第一の薬剤供給部よりアルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物を供給し、難溶性塩から成る不溶物の生成を行なう第一の反応槽と、
該第一の反応槽より生成された前記不溶物を含有する排水に第二の薬剤供給部より酸を供給し、前記排水中に残留する前記イオンを除去すると共に、前記排水のpHの調整を行なう第二の反応槽と、
前記第二の反応槽から排出される前記不溶物を含有する排水に有機高分子凝集剤を供給し、前記不溶物の凝集を行なう有機高分子凝集剤供給部と、
槽本体内下部側に回転軸方向に少なくとも二段以上の攪拌翼が設けられ、前記不溶物の凝集したフロックを含有する排水を槽本体下部から供給し、槽本体上部に上昇するにつれて前記フロックを更に大きく成長させて造粒し、槽本体内上部側において造粒したフロックが濃縮された汚泥を水と固液分離し、槽本体側壁に設けられている汚泥抜出し管より前記汚泥を抜出す造粒・沈澱槽と、
前記沈澱槽で固液分離された前記汚泥の一部を抜出す汚泥返送ラインと、
汚泥返送ラインより送給された前記濃縮汚泥と前記第一の薬剤供給部より供給される前記アルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物とを混合して得られるアルカリ化合物含有濃縮汚泥を前記第一の反応槽に送給する汚泥反応槽とからなることを特徴とするイオン含有排水処理装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記造粒・沈澱槽から抜出された前記汚泥を回収する排泥器が設けられてなることを特徴とするイオン含有排水処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一つにおいて、
前記第二の反応槽が、前記不溶物を含有する排水に無機凝集剤を供給し、前記不溶物の凝集を促進する無機凝集剤供給部を有してなることを特徴とするイオン含有排水処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一つにおいて、
前記アルカリ化合物が、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムの何れか一つ又はこれら混合してなるものであることを特徴とするイオン含有排水処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一つにおいて、
前記カルシウム化合物が、塩化カルシウムであることを特徴とするイオン含有排水処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一つにおいて、
前記酸が、硫酸、塩酸の何れかであることを特徴とするイオン含有排水処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一つにおいて、
前記無機凝集剤が、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化アルミニウムのアルミ系凝集剤、又は、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄の鉄系凝集剤の何れかであることを特徴とするイオン含有排水処理装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一つにおいて、
前記イオンを含有する排水が、フッ化物イオン、重金属イオン、リン酸イオンの何れか一つ以上を含有する排水であることを特徴とするイオン含有排水処理装置。
【請求項10】
イオンを含有する排水を第一の反応槽に送給し、前記第一の反応槽において排水中の前記イオンとアルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物とを反応させ、難溶性塩から成る不溶物を生成し、生成された前記不溶物を含有する排水を第二の反応槽に送給し、前記第二の反応槽において前記不溶物を含有する排水に酸を供給し、前記不溶物を含有する排水中に残留する前記イオンを除去すると共に、前記不溶物を含有する排水のpHの調整を行なう反応工程と、
前記反応工程において前記第二の反応槽から排出される前記不溶物を含有する排水に有機高分子凝集剤を添加して前記不溶物を凝集し、前記不溶物が凝集したフロックを生成し、前記フロックを含有する排水を造粒槽本体下部に送給し、前記造粒槽本体内の回転軸方向に少なくとも二段以上設けられている攪拌翼を回転させ、前記造粒槽本体下部から前記造粒槽本体上部に上昇するにつれて前記フロックを更に大きく成長させ、造粒する造粒工程と、
前記造粒工程において造粒したフロックを含有する排水を沈澱槽本体上部側から供給し、前記造粒槽において前記造粒したフロックが濃縮された汚泥と水とを高速に沈降分離する固液分離工程と、
前記固液分離工程において沈降分離された前記汚泥を前記沈澱槽から抜出し、抜出された前記汚泥の一部と前記アルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物とを混合して得られるアルカリ化合物含有濃縮汚泥を前記アルカリ化合物として前記第一の反応槽に送給する汚泥反応工程とからなることを特徴とするイオン含有排水の処理方法。
【請求項11】
イオンを含有する排水を第一の反応槽に送給し、前記第一の反応槽において排水中の前記イオンとアルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物とを反応させ、難溶性塩から成る不溶物を生成し、生成された前記不溶物を含有する排水を第二の反応槽に送給し、前記第二の反応槽において前記不溶物を含有する排水に酸を供給し、前記排水中に残留する前記イオンを除去すると共に、前記排水のpHの調整を行なう反応工程と、
前記反応工程において前記第二の反応槽から排出される前記不溶物を含有する排水に有機高分子凝集剤を添加して前記不溶物を凝集し、前記不溶物が凝集したフロックを生成し、前記フロックを含有する排水を造粒・沈澱槽本体下部に送給し、造粒・沈澱槽本体内の下部側に回転軸方向に少なくとも二段以上設けられている攪拌翼を回転させ、前記造粒・沈澱槽本体下部から前記造粒・沈澱槽本体上部に上昇するにつれて前記フロックを更に大きく成長させて造粒し、前記造粒・沈澱槽本体内上部側において造粒したフロックが濃縮された汚泥を水と高速に固液分離し、前記造粒・沈澱槽本体側壁に設けられている汚泥抜出し管より前記汚泥を抜出る造粒・分離工程と、
前記造粒・分離工程において固液分離され抜出された前記汚泥の一部と前記アルカリ化合物、又は前記アルカリ化合物及びカルシウム化合物とを混合して得られるアルカリ化合物含有濃縮汚泥を前記アルカリ化合物として前記第一の反応槽に送給する汚泥反応工程とからなることを特徴とするイオン含有排水の処理方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記造粒・沈澱槽から抜出された不溶物を含む汚泥を排泥器に回収することを特徴とするイオン含有排水の処理方法。
【請求項13】
請求項10乃至12の何れか一つにおいて、
前記第二の反応槽中の前記不溶物を含有する排水に無機凝集剤を供給し、前記不溶物の凝集を促進することを特徴とするイオン含有排水の処理方法。
【請求項14】
請求項10乃至13の何れか一つにおいて、
前記アルカリ化合物が、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムの何れか一つ又はこれら混合してなるものであることを特徴とするイオン含有排水の処理方法。
【請求項15】
請求項10乃至14の何れか一つにおいて、
前記カルシウム化合物が、塩化カルシウムであることを特徴とするイオン含有排水の処理方法。
【請求項16】
請求項10乃至15の何れか一つにおいて、
前記酸が、硫酸、塩酸の何れかであることを特徴とするイオン含有排水の処理方法。
【請求項17】
請求項10乃至16の何れか一つにおいて、
前記無機凝集剤が、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化アルミニウムのアルミ系凝集剤、又は、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄の鉄系凝集剤の何れかであることを特徴とするイオン含有排水の処理方法。
【請求項18】
請求項10乃至17の何れか一つにおいて、
前記イオンを含有する排水が、フッ化物イオン、重金属イオン、リン酸イオンの何れか一つ以上を含有する排水であることを特徴とするイオン含有排水の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−237947(P2008−237947A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77735(P2007−77735)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000232863)日本錬水株式会社 (75)
【出願人】(501370370)三菱重工環境エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】