説明

イオン注入装置用の質量分析器

【課題】入射したイオンビームの全電流量、イオン種比率、中性粒子量の正確な測定ができ、イオン種比率の測定をイオン注入中にでき、励磁、電界形成および2次電子抑制のための電源を不要にして小電力で作動でき、装置全体を小型化できるイオン注入装置用の質量分析器を提供する。
【解決手段】イオン源2と対向しかつ基板6の周囲を通過したイオンビーム5の一部が入射する位置に設置されており、入射したイオンビームに直交する方向に磁場を形成する永久磁石13と、磁場で曲げられたイオンビームが全て入射し総イオン量と各イオン種量を測定可能なイオン量測定器と、磁場で曲がらない中性粒子が全て入射するように配置された中性粒子測定器17とを備える。イオン量測定器は、ファラデーカップ15と可動式遮蔽板16からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上のシリコン膜に不純物を注入するイオン注入装置用の質量分析器に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入装置は、薄膜トランジスタ等の製造のため、ガラス基板等の基板上のシリコン薄膜に不純物を注入する装置である。かかるイオン注入装置は、例えば特許文献1〜3に開示されている。
これらのイオン注入装置において、注入する不純物は、リン(P)やボロン(B)などであり、フォスフィン(PH3)やジボラン(B2H6)の水素希釈ガスなどを材料ガスとして、装置内でプラズマを生成し、これからリン(P)やボロン(B)を含むイオンを引き出し、これを加速してイオンビームとして薄膜に照射して不純物を注入する。
【0003】
しかし、材料ガスとして、フォスフィン(PH3)やジボラン(B2H6)の水素希釈ガスなどを使用するため、注入するPイオンやBイオンの他に水素イオンなどの不要なイオンが注入されることがある。
そのため、イオン注入装置には、イオンビーム中の必要なイオン種(P、B)の量を測定または制御する質量分析器が不可欠となる。
【0004】
イオン注入装置用の質量分析器は、特許文献4,5にも開示されている。
質量分析器は、イオンビームの一部を分析して、測定した各イオンの電流量から必要なイオン種の比率を求め、これをイオン注入装置にフィードバックして薄膜への注入量を制御するために用いられる。
【0005】
従来の質量分析器は、(1)電磁石又はコイルを用いる磁場分析方式、(2)電場と磁場の両方を用いるE×B分析方式、(3)四重極間の電場を用いた四重極分析方式などに大別することができる。
【0006】
特許文献1は、図5に示すように、イオンの入射方向に対して垂直方向成分をもつ電場及び磁場を備えた電磁型エネルギー分析器54を開示している。この電磁型エネルギー分析器54は、E×B分析方式の質量分析器である。
【0007】
特許文献2は、図6に示すように、イオン源62から引き出したイオンビーム66の一部を、ビームモニタ部60で受けてイオンビーム電流を計測し、その間にそこを通過するイオンビーム66を質量分析する質量分析器64を開示している。この質量分析器64は、磁極と電極を直交配置し、磁界および電界を用いるE×B分析方式の質量分析器である。
【0008】
特許文献3は、図7に示すように、イオンビーム71からイオン種と水素イオンとの比率を求めるためのE×Bモニタ75を開示している。このE×Bモニタ75は、磁界を与える1対の永久磁石と、磁界と直交する方向に電界を与える1対の電極を備えたE×B分析方式の質量分析器である。
【0009】
特許文献4は、図8に示すように、透孔81を塞ぐように設けられた質量分析器84を開示している。この質量分析器84は、曲げられた管体86と、その管体86の外部に設けられた磁場発生手段としてのコイル88とで構成される。従って、この質量分析器84は、コイルを用いる磁場分析方式の質量分析器である。
【0010】
特許文献5は、図9に示すように、基板を保持するサセプタのガラス基板周辺部に、ドープ量を計測する固定ファラデー96を配置し、さらに質量分析を可能とする電磁石または永久磁石を固定ファラデーに設けたものが開示されている。従って、この質量分析器は、電磁石または永久磁石を用いる磁場分析方式の質量分析器である。
【0011】
【特許文献1】特開平5−67450号公報、「イオン注入装置」
【特許文献2】特開平6−36737号公報、「イオン注入装置」
【特許文献3】特開平8−225938号公報、「イオンシャワードーピング装置」
【特許文献4】特開2002−231652号公報、「不純物注入量計測装置および不純物注入量計測方法」
【特許文献5】特開2002−358921号公報、「イオンドーピング装置及びそれに用いるドーズ量の管理方法」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の質量分析器には、以下の問題点があった。
(1)電磁石を用いる磁場分析方式では、電磁石自体の重量が重く体積も大きくなる。また、電磁石励起のため大電力が必要である。
これらの方式で電力を低減しようとすると分析長を長くとる必要があり、体積がさらに大きくなる。また、分離したイオンの検出のために、可動式のファラデーカップやスリットを組み込む必要があり、体積の増大につながっている。
(2)E×B分析方式は、磁場分析方式と比べれば小型にできるが、入射したイオンビームの全電流量の測定ができない。そのため、イオン種比率の正確な測定ができない。
(3)また、E×B分析方式や四重極分析方式では、広範囲な特性のイオンビームを分析するためには、電力または体積のいずれかを増す必要がある。
【0013】
以下、問題点をさらに詳細に説明する。
【0014】
(イオン量測定)
E×B分析方式や四重極分析方式では、各イオン量の総和と実際の総イオン量とが一致しないという不具合が生じる場合がある。また、磁場分析方式でも可動式の検出器を用いた場合には、総イオン量測定が確かでない問題がある。
【0015】
(中性粒子測定)
E×B分析方式や四重極分析方式では、直進する方向にイオン検出器を設置するため、中性粒子の計測は事実上不可能であった。そのため、中性粒子量がイオン量に比べて無視できない量である場合、実際の注入量はイオン量の測定のみでは不正確になる。
【0016】
(リアルタイム測定)
従来の質量分析器では、実際に基板に注入処理する直前にイオン種比率の計算を行い、これを注入量にフィードバックしていた。しかしこの場合では、イオン注入中のイオン種比率の変動は加味されない。
【0017】
(消費電力の低減)
電磁石分析方式、E×B分析方式、四重極分析方式などはすべて励磁や電界形成のために電源を必要とする。
また、検出部のファラデーカップサイズには、電場による2次電子抑制機構が用いられてきた。
そのため、電源が不可欠であり、電源故障や配線不良など、電源関係の不具合の可能性があり、機器としての安定性や信頼性が低い。
【0018】
(サイズ縮小)
従来の多くの分析器では、入射側から見て分析器を越えた位置に検出部を設置し、ビーム電流を測定している。この結果、分析器が入射方向に長くなり、結果的に装置全体の体積を増加させる要因となっていた。
【0019】
本発明は、上述した種々の問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の第1の目的は、入射したイオンビームの全電流量(総イオン量)、イオンビーム中のイオン種比率、及びイオンビーム中の中性粒子量の正確な測定ができるイオン注入装置用の質量分析器を提供することにある。
また、第2の目的は、少なくともイオンビーム中のイオン種比率の測定を、実際のイオン注入中にできるイオン注入装置用の質量分析器を提供することにある。
また、第3の目的は、励磁、電界形成および2次電子抑制のための電源を不要にして小電力で作動でき、かつ装置全体を小型化できるイオン注入装置用の質量分析器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、イオン源でプラズマを発生させ、加速電極系でプラズマ中のイオンをイオンビームとして出力し、出力されたイオンビームを基板に照射して基板上のシリコン膜に不純物を注入するイオン注入装置用の質量分析器であって、
該質量分析器は、イオン源と対向しかつ基板の周囲を通過したイオンビームの一部が入射する位置に設置されており、
入射したイオンビームに直交する方向に磁場を形成する磁石と、
前記磁場で曲げられたイオンビームが全て入射し、総イオン量と各イオン種量を測定可能なイオン量測定器と、
前記磁場で曲がらない中性粒子が全て入射するように配置された中性粒子測定器と、を備えたことを特徴とするイオン注入装置用の質量分析器が提供される。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記イオン量測定器は、一端が前記中性粒子測定器に近接し、他端が磁場に入射したイオンビームの最大偏向位置まで延びる直線状または円弧状の長いファラデーカップと、
該ファラデーカップと前記磁場との間に位置し、イオンビームを遮蔽する可動式遮蔽板とからなり、
該可動式遮蔽板は、全開から全閉まで連続的に開閉可能に構成されている。
【0022】
また、前記磁石は、永久磁石であり、
さらに、永久磁石を用いた磁場で2次電子抑制を行う2次電子抑制装置を備える。
【発明の効果】
【0023】
上記本発明の構成によれば、磁場で曲げられたイオンビームが全て入射するイオン量測定器(すなわち直線状または円弧状の長いファラデーカップ)を備えるので、これにより入射したイオンビームを全て検出でき、総イオン量の測定が正しく行える。
また、ファラデーカップと磁場との間にイオンビームを遮蔽する可動式遮蔽板を備えるので、これを連続的に開閉してファラデーカップの検出範囲を変化させることで、ファラデーカップサイズとその電流との関係によりイオンスペクトルが得られる。
さらに、イオン量測定器のみで総イオン量と各イオン種量を測定できるため、正確なイオン種比率を計算することができる。
【0024】
また本発明では、永久磁石で形成する磁場によってイオンビームを曲げて分析するため、分析部(磁場中)を直進する中性粒子も中性粒子測定器で分離検出することができる。これにより、実際に薄膜に注入される粒子はイオンと中性粒子の両方であるため、中性粒子量を測定できることで注入量の信頼性が向上する。
【0025】
また本発明の質量分析器は、注入中でも測定できる位置にあり、また特定のイオン種量を連続測定することができる。これにより注入中のイオン種量変動を捉えて、注入量にフィードバックすることが可能である。
【0026】
また、磁場形成のために永久磁石を使用することで、電磁石を使用した場合と比べて、重量、体積を大幅に縮小できる。
さらに、電磁石分析方式、E×B分析方式、四重極分析方式などはすべて励磁や電界形成のために電源を必要とするが、永久磁石では不要である。
【0027】
また、本発明では、永久磁石を用いた磁場で2次電子抑制を行う2次電子抑制装置を備えるので、分析部と検出部に永久磁石を用いることで、電源を不要とし、電源故障や配線不良など、電源関係の不具合の心配がなくなり、機器としての安定性や信頼性が向上する。
【0028】
さらに本発明では、強力な磁場を形成して、分析部で分解されたビームを大きな偏向角で曲げ、分析部と並ぶ位置に設置した検出器へ飛行させる機構とした。これにより分析器の長さを短縮でき、分析器のサイズ低減により装置全体の体積削減が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0030】
図1は、本発明の質量分析器を備えたイオン注入装置の全体構成図であり、図2は別の実施形態を示す図である。
図1及び図2において、イオン注入装置1は、イオン源2でプラズマ3を発生させ、加速電極部4でプラズマ中のイオンをイオンビーム5として出力し、出力されたイオンビーム5を基板(液晶ガラス基板)6に照射して基板上のシリコン膜に不純物を注入するようになっている。
また、これらの図で、2aは熱電子を発生するためのフィラメント、2bはプラズマ閉じ込めのための磁石である。
【0031】
本発明の質量分析器10は、イオン注入装置1の構成機器の1つであり、図のようにプロセス室のイオン源2と対向する位置(この例で下部)で、基板6の周囲を通過したイオンビーム5の一部が入射する位置に設置されている。
【0032】
イオン(不純物)としては、リン(P)やボロン(B)を注入するため、材料ガスとしては、フォスフィン(PH3)やジボラン(B2H6)を水素希釈したガスなどが使用される。そのため、注入するイオンビームには、例えばジボランの場合には、B2Hxイオン、BHxイオン、Hxイオン(xは0以上の整数)などの複数種のイオンが含まれる。注入に必要なB2Hxイオンの量を測定するために、質量分析器10が用いられる。
【0033】
本発明の質量分析器10は、分離部12と検出部14の2つの部分で構成されている。
分離部12には、入射したイオンビーム5に直交する方向(この図で紙面に垂直方向)に磁場を形成する磁石13が設けられている。この磁石13はこの例では永久磁石13であるが、電磁石でもよい。
分離部12では、入射したイオンビーム5をコリメートした後で磁場発生部12aを通過させて質量によって分離する。磁場発生部12aは永久磁石13を用いた磁気回路により磁場を形成している。
【0034】
永久磁石13による強力な磁場により図に示すように、水素などの軽いイオンビーム5aは偏向を受けて検出部14のファラデーカップ15に到達する。またPHxやB2Hxなどの重いイオンビーム5bはより低い角度で偏向してファラデーカップ15に到達する。
各イオンの質量と加速エネルギーによって偏向角が異なるため、到達位置とそこで検出される電流を計測することで、各イオン量を測定できる。
【0035】
検出部14は、イオン量測定器15,16と中性粒子測定器17とを備える。イオン量測定器15,16は、ファラデーカップ15と可動式遮蔽板16とからなり、磁場発生部12aの磁場で曲げられたイオンビーム5が全て入射し、総イオン量と各イオン種量を測定可能に構成されている。
中性粒子測定器17は、磁場発生部12aの磁場で曲がらない中性粒子5cが全て入射するように、入射したイオンビーム5の延長上に配置されている。
【0036】
検出部14では、磁場で分離したイオンビーム5a,5bをファラデーカップ15で検出して電流を測定する。また直進する方向に設置された中性粒子検出器17で中性粒子5cの量を測定する。
【0037】
ファラデーカップ15は、分離されたイオンビーム5a,5bの全てを検出できるように、一端が中性粒子測定器17に近接し、他端が磁場に入射したイオンビームの最大偏向位置まで延びる形状をしている。この形状は図1では円弧状であり、図2では直線状である。
この構成により、分離したイオンビーム5a,5bを全て検出できるため、総イオン量の測定が正しく行える。
【0038】
また、可動式遮蔽板16は、ファラデーカップ15と磁場発生部12aの磁場との間に位置し、イオンビーム5を遮蔽する全開から全閉まで、図示しない駆動装置で連続的に開閉可能に構成されている。
【0039】
すなわちファラデーカップ15のビーム入射側に設置した可動式遮蔽板16により、ファラデーカップ15のサイズを可変にしている。ファラデーカップサイズとその電流との関係によりイオンスペクトルが得られる。例えば、初めに遮蔽板16を全て閉じ、測定開始とともに遮蔽板16を開いていく。ファラデーカップサイズが徐々に大きくなり、分離されたイオンが低い質量数から順に流入するようになる。
可動式遮蔽板16の開度(ファラデーカップのサイズ)をイオンの質量に変換してファラデーカップに流れる電流をプロットすればイオンスペクトルが得られ、各イオン種の量とそれらの総和としての総イオン量が測定可能である。
この結果からビーム中の必要なイオン種の比率が計算できる。
【0040】
可動式遮蔽板16の機構としては、直線状では回転駆動を直線移動に変換した機構、円弧状の場合には回転駆動をそのまま遮蔽板の駆動としたものを用いることができる。
【0041】
検出部14のファラデーカップ15には、イオンビーム5a,5bが照射されることによって発生する2次電子を抑制してファラデーカップに戻すための2次電子抑制装置18が付加されている。(図3参照)
【0042】
図3は、本発明の2次電子抑制装置18の模式図である。この図に示すように、本発明の2次電子抑制装置18は、永久磁石19を用いた磁場で2次電子抑制を行うものであり、永久磁19を用いてファラデーカップの入口に磁場を形成し、発生した2次電子を捕捉してファラデーカップに戻すことができる。
従来の電気的な抑制機構では電源が必要であるが、永久磁石回路を用いることで電源が不要となる。また電源を不要とした分離部とともに電源関係の不具合の可能性を本質的になくすことができる。
【0043】
質量分析器10は図示しないプロセス室とバルブで分離することができる。質量分析器10には真空ポンプが設置され差動排気し、またプロセス室とは独立して大気開放と真空引きができる構造となっている。
またイオンビーム5または材料ガスにより、ファラデーカップなどの真空部品が汚染されるため、定期的にメンテナンスする必要がある。そのため真空容器にはメンテナンス用ハッチがあり、交換部品の取付け、取外しができるようになっている。
【0044】
イオンスペクトル測定は、制御装置20により自動で行われる。制御装置20からの指令でファラデーカップ15の前面にある可動式遮蔽板16を移動する。希望する質量測定範囲を遮蔽板位置に変換し、その範囲を遮蔽板が移動する。遮蔽板移動開始と同時にイオン量測定器15,16でファラデーカップ電流を測定開始するように指令する。可動式遮蔽板16が目的の移動を終了すると電流計測も終了する。
可動式遮蔽板16を連続で移動させて、その間にファラデーカップ電流を連続で測定し、一連の測定が終了した後に遮蔽板の位置とファラデーカップ電流を同期させてプロットすることでビームのイオンスペクトルが得られる。
【0045】
図4は、イオンビームの質量数と電流量との関係図である。この図において、横軸はイオンビームの質量数であり、左端は遮蔽板の全閉位置、右端は全開位置に相当する。
また左側の縦軸は電流量すなわちファラデーカップ電流であり、図中の太い実線に対応する。さらに右側の縦軸は電流量の差分であり、図中の細線に対応する。
なおこの例は、材料ガスとしては、ジボラン(B2H6)を水素希釈したガスを用いた場合であり、図中の細線の山は、左からHx,BHx,B2Hxにそれぞれ対応する。
【0046】
従来のイオンスペクトル測定では遮蔽板を逐次移動させて位置を確認し、その度にファラデーカップ電流を計測する方式がとられていた。そのため、測定に長時間を要していた。
これに対し、本発明では一体のファラデーカップ15を用いてファラデーカップ電流を一括で測定する方式をとることにより、可動式遮蔽板16を全開から全閉に移動するだけの短時間にイオンスペクトル測定ができる。従って、従来と比較して測定時間を大幅に短縮することができる。
【0047】
この一括測定方式により、可動式遮蔽板16の位置情報をイオンの質量に変換して、その情報とファラデーカップ15の電流情報とを組み合わせて図4の電流量のようなビームのイオンスペクトルが得られる。この電気量から、例えばB2Hxを対象イオンとした場合、その必要イオン種電気量と総電気量の比率を容易に求めることができる。
【0048】
またこの電流値を差分表示することで、図4の変換データのような、一般的なピーク分布表示ができ、質量数と各イオン量の関係がより明確になる。
【0049】
さらに、図1及び図2において、制御装置20により必要なイオン種の比率を求め、その結果を装置の運転条件(注入量設定値、電極電圧等)にフィードバックすることにより、必要なイオンの注入量の精度を向上することができる。
また希望するイオン種のみを連続して測定する定点測定を可能とした。イオンスペクトル測定は実際の注入処理の直前に実施され、注入量の設定値にフィードバックされる。
【0050】
質量分析器10は注入中もイオンビームを取り込んで測定可能なように、基板の外側に設置されている。そのため例えば、イオンスペクトル測定でB2Hxイオンの検出範囲を特定し、その範囲のみを検出できるよう他の部分を複数の可動式遮蔽板16で覆い、ファラデーカップ電流を連続的に測定することにより、B2Hxイオン量の変動を注入中でも観測することができる。この変動をリアルタイムで注入量にフィードバックすることにより、より正確な注入が可能となる。
【0051】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の質量分析器を備えたイオン注入装置の全体構成図である。
【図2】本発明の質量分析器を備えた別のイオン注入装置の全体構成図である。
【図3】本発明の2次電子抑制装置の模式図である。
【図4】イオンビームの質量数と電流量との関係図である。
【図5】特許文献1の装置の模式図である。
【図6】特許文献2の装置の模式図である。
【図7】特許文献3の装置の模式図である。
【図8】特許文献4の装置の模式図である。
【図9】特許文献5の装置の模式図である。
【符号の説明】
【0053】
1 イオン注入装置、2 イオン源、2a フィラメント、2b 磁石、
3 プラズマ、4 加速電極部、5,5a,5b イオンビーム、
5c 中性粒子、6 基板(ガラス基板)、
10 質量分析器、12 分離部、12a 磁場発生部、
13 永久磁石、14 検出部、15 ファラデーカップ、
16 可動式遮蔽板、17 中性粒子検出器、
18 2次電子抑制装置、19 永久磁石、20 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源でプラズマを発生させ、加速電極系でプラズマ中のイオンをイオンビームとして出力し、出力されたイオンビームを基板に照射して基板上のシリコン膜に不純物を注入するイオン注入装置用の質量分析器であって、
該質量分析器は、イオン源と対向しかつ基板の周囲を通過したイオンビームの一部が入射する位置に設置されており、
入射したイオンビームに直交する方向に磁場を形成する磁石と、
前記磁場で曲げられたイオンビームが全て入射し、総イオン量と各イオン種量を測定可能なイオン量測定器と、
前記磁場で曲がらない中性粒子が全て入射するように配置された中性粒子測定器と、を備えたことを特徴とするイオン注入装置用の質量分析器。
【請求項2】
前記イオン量測定器は、一端が前記中性粒子測定器に近接し、他端が磁場に入射したイオンビームの最大偏向位置まで延びる直線状または円弧状の長いファラデーカップと、
該ファラデーカップと前記磁場との間に位置し、イオンビームを遮蔽する可動式遮蔽板とからなり、
該可動式遮蔽板は、全開から全閉まで連続的に開閉可能に構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入装置用の質量分析器。
【請求項3】
前記磁石は、永久磁石であり、
さらに、永久磁石を用いた磁場で2次電子抑制を行う2次電子抑制装置を備える、ことを特徴とする請求項2に記載のイオン注入装置用の質量分析器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−273150(P2007−273150A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94718(P2006−94718)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】