説明

インキ供給装置

【課題】インキを溜め受けるタンクの液面測定を行なうなどの煩雑なシステムを必要としないとともに、そのタンクからの固形物のインキ塗工手段側への送り込みが発生しないようにし、簡易な装置構成で良好なインキ供給を行なう。
【解決手段】インキ供給源5のインキ3を、多数のインキジェットヘッド7が接続されたヘッダー8からなるインキ塗工手段9に供給する装置であり、インキ供給源5からインキ塗工手段9に亘る管路11に、インキ供給源5からインキ塗工手段9へインキ3を一方向にして流すダイヤフラムポンプ13を備えてなるインキ送出手段12を介装し、かつ、インキ送出手段12に、インク塗工手段9でのインキ圧力を検出する圧力センサ17からの情報に基づいて、インキジェットヘッド7のヘッド吐出口におけるインキ3のメニスカス面を形成するインキ圧力条件を維持するようにインキ送出手段12を動作させる駆動手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカラーフィルタ形成用インクジェットプリンタ装置などのインキ吐出機構にインキを供給するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年においてカラーフィルタなどのパターンを得るに際して、精細なパターン印刷に優れたインクジェットプリンタ装置が用いられるようになってきている。このような工業用のインクジェットプリンタ装置では多数のインクジェットヘッドをユニット化して備えているとともに、カートリッジとしてインキ室とインクジェットヘッドとが一体となっている一般的なインクジェットプリンタとは異なって、インキ供給装置によりインクジェットヘッド側にインキの供給が行なわれるシステムとなっている。
そして、このインクジェット方式において、インキを適正な液量のドロップレットとする上で、インクジェットヘッドの各インキ吐出口でのインキ面(外方に臨んでいる面)をメニスカス面とする必要がある。そのため、インキ供給装置において、インキ供給源からインクジェットヘッドまでのインキ供給系の途中に、大気開放のサブタンク(インキタンク)を介在させ、そのサブタンクでの液面高さと前記インクジェットヘッドのインク吐出口のインキ面高さとの水頭差を確保して、各インク吐出口のインキ面がメニスカス面となる状態でインキ供給が行なわれるようにした工夫が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−318184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記インキ供給装置にあってはヘッド吐出口のインキ面高さとサブタンク内の液面高さとを設定の値とするべく、サブタンク内に液面高さを測定するセンサを設けて、インキ供給元タンクからのインキ供給調整を行なう必要があり、サブタンク自体にインキを供給するシステムが煩雑になるという問題があった。また、上述したようにサブタンクが大気開放型であるため、大気に触れている液面が乾燥してタンク内周面に固形物として付着して蓄積し易くなり、その付着部位からインキが小さな固形物の状態でインクジェットヘッド側に送り出されて、ヘッドで吐出不良を起こすという問題があった。
【0004】
発明者は、鋭意検討の結果、多数のインクジェットヘッドをヘッダーに接続してなるインキ塗工手段でのインキ圧力を負圧状態に管理するとともに、インキ吐出時における時間当たりのインキ供給量を把握できれば、後はインキ塗工手段へのインキ供給のタイミングを前記インキ塗工手段側の負圧状態に合わせることで、適正なインキ吐出が行なえることを発見した。
そこで本発明は上記事情に鑑み、インキを溜め受けるタンクの液面測定を行なうなどの煩雑なシステムを必要としないとともに、そのタンクからの固形物のインキ塗工手段側への送り込みが発生しないようにすることを課題とし、簡易な装置構成で良好なインキ供給が行なえるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(請求項1の発明)
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、インキ供給源のインキを、インキジェットヘッドが接続されたヘッダーからなるインキ塗工手段に供給する装置において、前記インキ供給源からインキ塗工手段に亘る管路に、インキ供給源からインキ塗工手段へインキを一方向にして流すダイヤフラムポンプを備えてなるインキ送出手段を介装し、かつ、前記インキ送出手段に、前記インク塗工手段でのインキ圧力を検出する圧力センサからの情報に基づいて、前記インキジェットヘッドのヘッド吐出口におけるインキのメニスカス面を形成するインキ圧力条件を維持するように前記インキ送出手段を動作させる駆動手段が設けられていることを特徴とするインキ供給装置を提供して、上記課題を解消するものである。
(請求項2の発明)
そして、本発明において、上記駆動手段はサーボモータとすることが可能である。
【発明の効果】
【0006】
(請求項1の発明の効果)
請求項1の発明によれば、インキ送出手段の動作の下でインキ供給源からインキ塗工手段に亘る管路に一方向にしてインキが流れるようにしたため、インキが流れる管路の構成がシンプルなものとなってインキ供給装置の構成が簡易なものとなる。また、インキ送出手段がインキ供給源からインキを吸引する構成となるので、インキ供給源を大気開放型にする必要がなく、インキ供給源内でのインキの固形化を防止し易くなる。さらにインキ送出手段でのインキ供給の停止を行なうだけで、インキジェットヘッドからの液垂れを確実に防止できる。
さらに洗浄に際しても、インキ供給源に代えて洗浄液タンクを接続するなどしてからインキ送出手段を動作させて上記インキの流れ方向と同じ方向に洗浄液を通すだけでよく、全体の洗浄が簡単に行なえるようになる。
(請求項2の発明の効果)
そして、請求項2の発明により、インキ塗工手段側へのインキの送出調整が極めて正確にして、かつ送出動作の応答性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
つぎに本発明を図1に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図中1はインキ供給装置で、該インキ供給装置1は、軟質材(ポリプロピレンなど)の袋2aにインキ3が満杯充填されたものを金属缶2bに収めてなる容器2が重量測定手段4などにより常時測定される状態の下で内容物である前記インキ3の残量などを把握できるように保持されたインキ供給源5と、このインキ供給源5のインキ3内に上流端6が挿入配置されているとともに、多数のインクジェットヘッド7をヘッダー8に接続してなるインキ塗工手段9の前記ヘッダー8に下流端10が接続されている管路11と、前記管路11の途中に介装されているインキ送出手段12とからなるものであり、後述するように本インキ供給装置1にあっては稼働時におけるインキ3の流れ方向を前記インキ供給源5からインキ塗工手段9への一方向にして、かつ一通路としているものである。
そして、インキ送出手段12は吸引側と送出側とが区分されているダイヤフラムポンプ13を備えてなるものであって、インキ供給源5側をインキを強制吸引する吸引側とし、インキ塗工手段9側をインキを強制送出する送出側として管路11に配置されている。また、図示されているようにインキ送出手段12には、ダイヤフラムポンプ13の駆動させるサーボモータ14が接続されていて、このサーボモータ14の動作によってインキの吐出を極めて正確にして行なわれるようにダイヤフラムポンプ13が駆動制御され、さらに、吐出停止もサーボモータ14の動作によって制御されるようにしている。
【0008】
なお、図において上流の管路11に吸引側バルブ15が示され、下流の管路11に送出側バルブ16が示されている。この吸引側バルブ15と送出側バルブ16は説明を容易にするためにインキ送出手段12と別体のごとく図示されているが、吸引側バルブ15と送出側バルブ16とはダイヤフラムポンプ13の構成部材であって、ダイヤフラムポンプ13が吸引動作しているときには吸引側バルブ15が開、送出側バルブ16が閉となり、ダイヤフラムポンプ13が吐出動作およびインキ塗工手段9に対する圧力維持動作しているときには吸引側バルブ15が閉、送出側バルブ16が開となり、ダイヤフラムポンプ13によるインキ塗工手段9への送出停止の動作をしているときには吸引側バルブ15が閉、送出側バルブ16が閉となるように動作するものである。
【0009】
また、本インキ供給装置1においては管路11の下流端10に接続されて上記インキ塗工手段9のインキ圧力を常時検知する圧力センサ17が設けられている。そして、この圧力センサ17は、検知したインキ圧力をデータとして上記インキ送出手段12におけるサーボモータ14側に送り出されるように接続されている。そして、このインキ供給装置1ではインキ供給稼働時において、インキ塗工手段9でのインキ圧力を、そのインキ塗工手段9におけるインキジェットヘッド7でのインキ吐出口でインキ面がメニスカス面となるように予め設定された圧力条件(例えば−1200±250Pa)に収めるべくサーボモータ14がダイヤフラムポンプ13を駆動させ、その駆動によるインキ塗工手段9のインキ圧力のデータを常時、サーボモータ14側にフィードパックするように設けられている。
インキ塗工手段9側では塗工するパターンに応じてインキジェットヘッド7が予め設定されたインキ吐出動作を行なうが、このインキ塗工手段9でのインキ圧力の状態が適正な圧力条件となるように上述のごとく本インキ供給装置1から制御された量とタイミングで強制的に送り込まれてくるようにしていることから、インキ塗工手段9でのインキ塗工動作は適正なものとなる。
なお、本インキ供給装置1を組み入れたインキ塗工システムを用いたパターン形成工程において、上述したようにインキ送出手段12での上流側からのインキ引き込みと下流側へのインキ送り出しとを強制的に止める動作もあり、その場合、管路11やインキ塗工手段9でインキが滞留することになるが、インキが固形化するほどの長時間となることはない。勿論、本インキ供給装置1ではインキの固形物がインキ塗工手段9に送り込まれないように工夫が施されていて、図示されているように上流側と下流側とのそれぞれの管路11にフィルタ18が配置されている。
【0010】
インキ供給装置1において洗浄を行なう場合、上記インキ供給源5に代えて洗浄液タンクなどを接続し、上記インキ流れと同じように一方向に送り出すようにすればよい。また、本インキ供給装置1には、メンテナンス終了後の空気抜きを行なう場合に備えて、バルブ19を介装した排出経路20が設けられている。
符号21はインキ供給源5に不活性ガスを供給する加圧管であるが、不活性ガスによる加圧送り出しは上記インキ吸引を補助するものであり、必ずしも必要とされるものではなく、例えば、このインキ供給源5の上記軟質材の袋2aと金属缶2bとの間に空気を圧入してこの加圧がインキ吸引の補助とすることが可能である。勿論、この場合や上述したインキ供給源の構成においてもインキが空気に触れないようにする。
また、符号22は圧力センサ17が微負圧を検知する高性能ものであるために、この圧力センサ17を保護すべく設けられたバルブであるが、これも必ずしも必要とされるものではない。
【0011】
上記実施の形態ではインキをカラーフィルタ形成用のものとして説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、インキが例えばEL発光材となるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るインキ供給装置の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0013】
1…インキ供給装置
3…インキ
5…インキ供給源
7…インクジェットヘッド
8…ヘッダー
9…インキ塗工手段
11…管路
12…インキ送出手段
13…ダイヤフラムポンプ
14…サーボモータ
17…圧力センサ
18…フィルタ
20…排出経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ供給源のインキを、インキジェットヘッドが接続されたヘッダーからなるインキ塗工手段に供給する装置において、
前記インキ供給源からインキ塗工手段に亘る管路に、インキ供給源からインキ塗工手段へインキを一方向にして流すダイヤフラムポンプを備えてなるインキ送出手段を介装し、
かつ、前記インキ送出手段に、前記インク塗工手段でのインキ圧力を検出する圧力センサからの情報に基づいて、前記インキジェットヘッドのヘッド吐出口におけるインキのメニスカス面を形成するインキ圧力条件を維持するように前記インキ送出手段を動作させる駆動手段が設けられていることを特徴とするインキ供給装置。
【請求項2】
上記駆動手段はサーボモータである請求項1に記載のインキ供給装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−29932(P2007−29932A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221436(P2005−221436)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】