説明

インキ吐出印刷装置

【課題】インキ吐出を高精度で行い、同時に生産性の高いインキ吐出印刷装置を提供する。
【解決手段】第1の方向に配列され、インキを吐出する複数のインキ吐出口を有するインキ吐出部と基材上の画素形状を画像認識できるカメラおよびインク吐出口と基材の隙間を測定するための変位計からなるインキ吐出部ユニットと、第1の方向に移動軸を有し、インキ吐出部を第1の方向に移動させる移動手段と、基材をインキ吐出部に対して、第1の方向とほぼ直交する第2の方向に搬送する搬送手段と、搬送手段による搬送に同期して複数のインキ吐出口からインキを吐出させて基材上の複数の画素位置にインキを付与する手段と、第1及び第2の方向と直交する第3の方向を回転軸として、インキ吐出部を回転させる手段と、基材を前記第3の方向にそってインキ吐出部を修正する修正手段とを含むインキ吐出印刷装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキ皮膜を有する印刷物を製造するインキ吐出印刷装置に関する。印刷物及びインキ皮膜として、カラーフィルタの着色層、色変換フィルターの色変換層、回路基板の回路パターン、薄膜トランジスタの配線パターン、マイクロレンズのレンズパターン、バイオチップの流路パターン等を挙げることができる。
【0002】
本発明は、高精細なパターンを吐出するための吐出パターン生成方法で、フィルムベースのカラーフィルタ製造、ガラスベースのカラーフィルタ製造等の高精細なパターンの製造に関するインキ吐出印刷装置に係るものである。
【背景技術】
【0003】
例えば、カラーフィルタの製造方法としてはフォトリソグラフィー法、エッチング法等が知られている。フォトリソグラフィー法によるカラーフィルタの製造方法は、基板全体に各色の感光性樹脂層の塗布膜を形成し、パターン状に露光した後に塗布膜の不要な部分を取り除き、残ったパターンを各画素とする。この方法では塗布膜の多くが現像除去されるため、大量の材料が無駄になる。さらに、画素ごとに露光、現像工程を行うため、工程数が多くなる。このフォトリソグラフィー方式は、カラーフィルタに限らず、有機エレクトロルミネッセンス素子等、種々の光学素子や電気素子の製造に利用されている。
【0004】
しかし、カラーフィルタの基板サイズは年々大型化が進んでいる。カラーフィルタのコストダウン化を図るためには、従来のフォトリソグラフィー工程を繰り返す顔料分散法等は無駄が多く、近年、インキ吐出印刷装置を用いた方法が検討されている。
【0005】
インキ吐出印刷装置は、複数のノズル(以下、インキ吐出口とする。)が整列配置されたインキ吐出部を備えている。インキ吐出印刷装置では、インキ吐出部と基板置台とを、基板置台面上に沿って相対的に移動させ描画を行っている。基板の大型化に伴い歩留まりを考慮し、インキ吐出印刷装置は、インキ吐出部は複数個整列で配置して備え、吐出液量が均一になるような吐出パターン情報を作成している(特許文献1〜3)。
【0006】
インキ吐出印刷装置においては、印刷中にインキ吐出口の高い位置精度が要求される。インキ吐出部相互のインキ吐出口位置が正確でなくなると、インキ吐出部間で隙間が生じたりドットが重なったりするためである。このような現象が生じるとスジ状の抜けやムラができ混色等の不良の原因となる。このため、インキ吐出部を配置する際に、複数のインキ吐出部のインキ吐出口面の高さが水平になるように、インキ吐出部間で隙間が生じたりドットが重なったりしないように調整していた。基材が大型になるほど誤差も大きくなるため、特に大型基板を基材として用いる場合にはこのような調整が重要であった。
【0007】
不良の発生を防止するため、インキ吐出口から吐出され基材に着弾したインキドットの着弾位置を測定して、そのズレ量をインキ吐出口の位置で調整する方法が知られている(特許文献4参照)。
【0008】
また、基材搬送精度も高い位置精度が要求される。
【0009】
基材搬送精度が正確でなくなると、上記と同様にスジ状の抜けやムラができ混色等の不良の原因となる。このため、搬送位置をレーザ測定器とバーミラーを用いて測定し、位置決めする方法が知られている(特許文献5参照)。
【0010】
ところで、例えば、インキ吐出印刷装置を用いて液晶ディスプレイ用カラーフィルタの着色層を形成する場合、硝子基板を基材として使用する。近年液晶パネルの生産性向上のため、硝子基板の大型化が進められている。基板が大型化した場合はインキ吐出部ユニットの幅を通常よりも長くすれば対応できるが、基板搬送精度の限界や、インキ吐出ユニットの重量の問題等によりインキ吐出ユニットの幅には限界がある。
【0011】
そこで、インキ吐出部ユニットの幅を通常よりも長くし、さらにインキ吐出部ユニットをスライドして複数回往復させることで、大型基板にインキ吐出印刷装置で着色インキを付与することとしている。インキ吐出部ユニットを移動させるため、インキ吐出部ユニットを支える移動軸を設けるが、この移動軸はインキ吐出部ユニットの重量によりたわむ問題があった。基材を搭載するステージをスライドする方法も考えられるが、この方法によると基材の可動域の拡大によってステージが大型化し、ステージの輸送に支障が生じるため現実的でない。
【0012】
そして、基板の大型化が進むとこの移動軸の長さが従来よりも長くなり、インキ吐出部ユニットの長尺化・大重量と共に、移動軸のたわみの増加する原因となった。
【0013】
たわみが大きくなると、インキ吐出口と基材と接触する懸念が生じるので、インキ吐出口と基材との距離をあらかじめ大きく設定する必要が生じる。しかし、この距離が長くなると着弾精度が悪化し、インキ滴後方にできるサテライトと呼ばれる微小インキ滴が主たるインキ滴と違う位置に着弾して不良を引き起こしてしまう。
【0014】
また、インキ吐出部ユニットを長尺化すると多数のインキ吐出部を使用することとなり、インキ吐出口の位置等をインキ吐出印刷装置の稼動時間外に逐一調整すると、その調整時間に長尺化のメッリト(スループット向上)が吸収されてしまいかねない。このため、インキ吐出部の相互位置調整は短時間であることが好ましかった。
【0015】
ところが、上記特許文献4に記載の方法によると、着弾誤差測定およびヘッドアライメントを吐出工程とは別に必要であるため、その調整時間分、生産性が低下するという問題があった。そして、基材に大型硝子基板を用いた場合、特許文献4に記載の方法によっては、不良の発生を抑えることができなかった。さらに、インキ吐出部の移動条件の変化、インキの粘度等によっても、着弾誤差が変わるため条件を変えるたびに着弾誤差測定する必要が生じていた。
【0016】
また、インキ塗工部ユニット移動軸のみならず、基材搬送軸も基板の大型化とともに移動距離が長くなることでの移動中の真直度誤差や基板の幅広化による回転方向誤差(ヨーイング)が着弾精度悪化の原因になっていた。
【0017】
従来、このような高精度用途の基材搬送装置は、高精度化とその精度維持を目的とし、石製案内を可動部とする精密搬送ステージを採用していた。
【0018】
しかしながら、このような部品の加工精度に依存する装置製作にも限界があることと、大型で均一組織の石材料の入手および加工も難しくなり、さらに重量が重くなり運搬にも支障を来たしてしまう。さらなる大型基板に対応するためには、部品の加工精度に依存しない搬送装置が求められていた。
【0019】
大型化したステージの精度確保として、あらかじめステージの各軸精度をレーザ測定器等で測定して、予定位置に対する誤差量を指令値に付加して補正する方法が現実的な方法として採用されている。
【0020】
しかしながら、この方法についても以下の改善課題がある。
(1)補正データを作成するための各軸の精度測定に時間がかかる
(2)基板の大型化にともない、測長距離が長くなることや、測長距離が長くなると周辺の振動や測長空間の温度分布、風速の影響を受けやすく測定精度確保が難しくなる
(3)精度的に経時変化があり、それが許容範囲以上になった場合、上記作業をやり直さなければならない。
(4)各軸に補正制御を付加した状態でのステージ総合精度を測定できない。
【0021】
このため、実際に塗工して許容範囲内であるかの確認が必要になる。しかしながら、この場合、塗工ヘッドの着弾精度も加わってしまい、ステージ単体の総合精度測定とはならない。
(5)混色等の問題が発生するまで、ステージの経時による精度劣化がわからない
ステージの補正方法としては、ステージに測定器を内蔵してリアルタイムに補正する方法がある。経時変化の影響を受けることがない。
【0022】
しかしながら、上記レーザ測定器や特許文献5に記載のバーミラーを使用したレーザ測定器は高価で装置のコストアップになってしまう。
また、各軸移動ストローク全域でレーザ光を遮断しないようにするため駆動系の構成が制約されることになる。
【特許文献1】特開平9−101412号公報
【特許文献2】特開2003−172814号公報
【特許文献3】特開2003−265996号公報
【特許文献4】特開2002−82216号公報
【特許文献5】特開2006−245174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の課題とするところは、インキ吐出印刷装置において上記問題を解決することである。すなわち大型の基材に対しインキ吐出を高精度で行い、同時に生産性の高いインキ吐出印刷装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
ところで本発明者らの検討によると、インキ吐出印刷装置のインキ吐出部ユニットを移動軸にそって移動したところ、インキ吐出部ユニットは毎回同じ固有のたわみの移動軌跡を描くことを見出した。また、この移動軌跡はインキ吐出部の交換などによっては変化しないインキ吐出印刷装置に固有のたわみであることを見出した。
【0025】
インキ吐出部が配列する方向を第1方向とし、第1方向に直交しインキ吐出部が移動する方向を第2方向とし、第1方向及び第2方向と直交する方向を第3方向とし、3次元系とし、この固有のたわみを第1方向と第3方向の成分に分解した。
【0026】
また、本発明者らはインキ吐出部ユニットを移動した場合、インキ吐出ユニットが第3方向に平行な軸を中心として回転することによっても誤差を生じることを見出した。
【0027】
そして、このインキ吐出印刷装置に固有のたわみの第1方向成分と回転誤差を基材上の画素形状をカメラで画像認識することで、第3方向成分をギャップ測定変位で測定しておき、これらの情報に基づいてインキ吐出部ユニットの位置を、インキ吐出部ユニットを移動軸に沿って移動する際に修正し、たわみによる誤差のない移動軸の端で結ばれる直線上に予定される位置に戻すことにより、インキ吐出部のズレが矯正され精度が向上することを見出した。
【0028】
また、第1方向成分のたわみの情報に基づいて、インキ吐出部の吐出のタイミングの情報をあらかじめ調整しておくことにより、第1方向成分のたわみによるずれを修正し精度を向上することができることを見出した。
【0029】
さらに本発明者らの検討によると、インキ吐出印刷装置の基材保持部を移動軸にそって移動したところ、基材保持部は毎回同じ固有の曲線状の移動軌跡を描くことを見出した。また、この移動軌跡は基材の交換などによっては変化しないインキ吐出印刷装置に固有の移動軌跡であることを見出した。
【0030】
インキ吐出部が配列する方向を第1方向とし、第1方向に直交する方向を第2方向とし、第1方向及び第2方向と直交する方向を第3方向とし、3次元系とし、この固有の移動軌跡を第1方向と第3方向の成分に分解した。
【0031】
さらに、本発明者らは基材保持部を第2方向に移動した場合、基材保持部が第3方向に平行な軸を中心として回転することによっても誤差を生じることを見出した。
【0032】
そして、このインキ吐出印刷装置に固有の移動軌跡の第1方向成分、第2方向成分、回転誤差を基材上の画素形状をカメラ等の画像認識機器(ここではレーザ光切断法等、非接触で形状確認できるものすべてをカメラと呼んでいる)で画像認識することであらかじめ測定しておき、これらの情報に基づいて基材保持部の位置を、基材保持部を移動軸に沿って移動する際に修正し、移動軌跡による誤差のない移動軸の端で結ばれる直線上に予定される位置に戻すことにより、基材保持部のズレが矯正され精度が向上することを見出した。
【0033】
本発明は上記の知見に基づいてなされたものであり、請求項1に記載の発明は、
基材上の所定位置にインキ吐出部からインキを吐出して複数の画素を有する印刷物を製造するインキ吐出印刷装置において、
第1の方向に配列され、インキを吐出する複数のインキ吐出口を有するインキ吐出部と、基材上の画素形状を画像認識するためのカメラとインク吐出口と基材の隙間(ギャップ)を測定するための変位計からなるインキ吐出部ユニットと、
前記第1の方向に移動軸を有し、インキ吐出部を第1の方向に移動させる移動手段と、
前記基材を保持する保持手段と、前記基材を前記インキ吐出部に対して、前記第1の方向とほぼ直交する第2の方向に、搬送する搬送手段と、
前記搬送手段による搬送に同期して前記複数のインキ吐出口からインキを吐出させて前記基材上の複数の画素位置にインキを付与する手段と、
前記第1の方向及び第2の方向と直交する第3の方向を回転軸として、インキ吐出部を回転させる手段と、
前記基材を前記第3の方向にそってインキ吐出部を昇降する修正手段と、
前記搬送手段上で、前記第1の方向に前記保持手段を移動させる移動手段と、
前記搬送手段上で、第1の方向および第2の方向と直交する第3の方向を回転軸として、基材保持部を回転させる手段と、
前記搬送手段により、保持された基材を第1の方向および第2の方向と直交する第3の方向を回転軸として所定の位置に位置決めする基材位置決め手段(アライメント部)、
を含んでいることを特徴とするインキ吐出印刷装置を提供するものである。
【0034】
請求項2に記載の発明は、前記インキ吐出部は、各々のインキ吐出部の位置調整の基準となるアライメントマークを有しており、前記移動手段にインキ吐出部のアライメントマーク位置を検出する検出手段が備わっている請求項1に記載のインキ吐出印刷装置を提供するものである。
【0035】
請求項3に記載の発明は、上記インキ吐出部ユニットを第1の方向上で移動させた時に、基材の位置によって生じる第1の方向上に生じる予定位置からの移動誤差を、基材上の画素形状をカメラで画像認識して、
第1の方向上の位置と、
その位置における第1の方向上の移動誤差を記録しておく記録部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のインキ吐出印刷装置を提供するものである。
【0036】
請求項4に記載の発明は、前記インキ吐出部ユニットを第1の方向上で移動させた時に、基材の位置によって生じる第3の方向上に生じる初期位置からの位置誤差を前記変位計で測定して、
第1の方向上の位置と、
その位置での第3の方向上の位置誤差を記録しておく記録部を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインキ吐出印刷装置を提供するものである。
【0037】
請求項5に記載の発明は、前記インキ吐出部ユニットを第1の方向上で移動させた時に、基材の位置によって生じる第3の方向の軸まわりに生じる初期位置からの回転方向誤差(ヨーイング誤差)を、基材上の画素形状をカメラで画像認識して、
第1の方向上の位置と、
その位置におけるヨーイング誤差を記録しておく記録部を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインキ吐出印刷装置を提供するものである。
【0038】
請求項6に記載の発明は、前記第1の方向上の位置と第2の方向上の移動誤差を記録した記録部の情報に応じて、吐出タイミングを変化させる補正回路を含むことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のインキ吐出印刷装置を提供するものである。
【0039】
請求項7に記載の発明は、前記搬送手段により基材保持部を第2の方向上で移動させた時に、基材の位置によって生じる第2の方向上に生じる予定位置からの移動誤差を、搬送に同期したタイミングで基材上の画素形状をカメラで画像認識して、
第2の方向上の位置と、
その位置における第1の方向上の移動誤差を記録しておく記録部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のインキ吐出印刷装置を提供するものである。
【0040】
請求項8に記載の発明は、前記搬送手段により基材保持部を第2の方向上で移動させた時に、基材の位置によって生じる第1の方向上に生じる予定位置からの移動誤差を、搬送に同期したタイミングで基材上の画素形状をカメラで画像認識して、
第2の方向上の位置と、
その位置における第1の方向上の移動誤差を記録しておく記録部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のインキ吐出印刷装置を提供するものである。
【0041】
請求項9に記載の発明は、前記搬送手段により基材保持部を第2の方向上で移動させた時に、基材の位置によって生じる第3の方向の軸まわりに生じる初期位置からの回転方向誤差(ヨーイング誤差)を、搬送に同期したタイミングで基材上の画素形状をカメラで画像認識して、
第2の方向上の位置と、
その位置におけるヨーイング誤差を記録しておく記録部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のインキ吐出印刷装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0042】
本発明によると、インキ吐出印刷装置のインキ吐出部ユニットの第1方向、第2方向、
第3方向の誤差を修正し、第3方向に平行な軸を中心として発生するヨーイング誤差を修正することができ、インキ吐出口位置の精度を向上することができた。この結果、インキ吐出部ユニット移動軸の固有のたわみ、回転に起因する着弾位置不良による不良を防ぐことができた。
【0043】
また、インキ吐出印刷装置の基材保持部の第1方向、第2方向の誤差を修正し、第3方向に平行な軸を中心として発生するヨーイング誤差を修正することができ、基材搬送位置の精度を向上することができた。この結果、基材搬送軸の固有の移動軌跡、回転に起因する着弾位置不良による不良を防ぐことができた。
【0044】
さらに、本発明によると、上記誤差の修正を予め測定した情報に基づきインキ吐出部ユニットの移動と同時に行なうことができるため、別途インキ吐出部ユニットを調整する必要がなく、インキ吐出印刷装置の生産性を向上させることができた。
【0045】
また、本発明によると、基材として大型な基板を用いた場合、第1方向、第2方向、第3方向の誤差、ヨーイング誤差は増大してしまうが、本願発明によればあらかじめ固有のたわみや移動軌跡を測定し、この測定情報を修正に反映するので大型の基材を用いても、たわみや移動軌跡による不良を生じないため高い精度の吐出を行なうことができた。
【0046】
また、本発明では、第3方向の誤差を修正することにより、基材とインキ吐出部ユニットの距離を小さくすることができ、高精度の吐出を維持することができた。
【0047】
また、本発明によると、予め行う測定を基材上の画素形状を本装置に備えられたカメラで画像認識することで行うため、
(1)調整時間を短縮できる
(2)十分高精度な基材上の画素位置精度基準での測定であるため、レーザ測定器のように大判化にともなう測定精度の低下がない
(3)測定手段を内臓しているため、容易に装置精度の確認・キャリブレーションが出来るため、経時変化等の精度劣化による生産停止時間を極小化できる。
【0048】
上記のように、特にインキ吐出印刷装置が大型化した場合に、部品の加工精度や組立て精度が十分でなくとも、着弾精度の高いインキ吐出印刷を行うことができるインキ吐出印刷装置を提供することができたのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、図面を参照し、本発明のインキ吐出印刷装置の一例について詳細に説明する。
【0050】
図1は、本発明の実施の形態に係るインキ吐出印刷装置の全体図であり、基材搬送ステージ27、インキ吐出部ユニット14、インキ吐出部ユニット移動軸4、メインコントローラ10、吐出制御部9とで、構成されている。
【0051】
図2は、上記インキ吐出部群14およびその周辺機構図である。
【0052】
基材搬送ステージ上の基材保持部2は、基材1を固定するための真空吸着穴を備え、基材表面より突出するものなく基材を固定することができる。これによって、基材1とインキ吐出部13の間隔を極小に近づけられる。また、第2方向(以下、基材搬送方向とする。)先端にインキ吐出部群14のアライメントマーク20を検出するための倒立顕微鏡7が備えられ、アライメントマークの位置からインキ吐出部ユニットを基材搬送方向と直交するよう調整することができる。この調整によって、各インキ吐出部は基材搬送方向と直交する位置に配置することができる。
【0053】
インキ吐出部ユニット14は、アライメントマーク20を基準にインキ吐出部13を平行かつ隣り合うインキ吐出部のインキ吐出口間隔調整をインキ吐出印刷装置外の装置(以下、修正装置とする。)にて調整してある。そして、この修正装置には、インキ吐出口位置修正後の位置情報を記録することができ、予めインキ吐出印刷装置に転送しておくことで、インキ吐出印刷装置の本機上で直接各インキ吐出部の位置調整する工程を省くことができる。
【0054】
また、インキ吐出部ユニット14には基材搬送方向と平行に2個のカメラ21、22が備わっている。前記基材搬送ステージのY方向の位置を検出するためのリニアスケールからの信号からシャッターのタイミングパルスを得て、搬送中の基材画素の予定位置で画像を取り込むことができる。
【0055】
基材搬送ステージ27には、図に示すX方向24に基材保持部2を移動させるためのX調整機構28が備わっている。これによって、搬送ステージ移動中に発生する基材保持部の第1方向(以下X方向とする。)の位置誤差を基材搬送方向と平行に修正することができる。
【0056】
また、図に示すθ方向25に基材保持部2を回転させるためのθ調整機構26が備わっている。これによって、搬送ステージ移動中に発生する基材保持部の回転方向誤差を基材搬送方向と直交するよう修正することができる。これらにより、後述の各補正制御をおこなうことができる。また、基材搬送ステージの第2方向(以下、Y方向とする。)11の位置を検出するためのリニアスケール(図示しない)が備わっており、これにより、基材搬送ステージの位置に応じて吐出タイミングパルスをメインコントローラ10に送り、後述の吐出タイミング制御をおこなうことができる。
【0057】
インキ吐出部ユニット移動軸4には、図に示すθ方向18にインキ吐出部ユニット14を回転させるためのθ調整機構15が備わっている。これによって、インキ吐出部ユニットのアライメントマークの位置からインキ吐出部ユニットを基材搬送方向と直交するよう修正することができる。また、インキ吐出部群移動軸には、図に示す第3方向(以下、Z方向とする。)17にインキ吐出部ユニットを昇降させ、修正することで、インキ吐出口と基材との間隔を一定に保つことができる。この時の間隔(ギャップ)は変位計29にて測定している。また、インキ吐出部ユニットの第1方向(以下、X方向とする。)12の位置を検出するためのリニアスケール5が備わっており、これにより、インキ吐出部ユニットの位置制御および後述の各補正制御をおこなうことができる。
【0058】
インキ吐出部ユニット移動軸4の所定位置にインキ吐出部ユニット14を移動させ、アライメント部で位置決めされた基材を基材搬送ステージ27で搬送するときに、インキ吐出部ユニット上のカメラ21,22により撮影された画像データから、以下の位置誤差を測定することができる。
(1)Y軸ヨーイング(基材の位置によって生じる第3の方向を回転軸とする回転方向誤差)
(2)Y軸真直度誤差(基材の位置によって基材搬送方向と直交する方向に生じる誤差)(3)Y軸累積誤差(基材の位置によって生じる基材搬送方向の位置誤差)
また、アライメント部で位置決めされた基材を基材搬送ステージに吸着固定したままにして、インキ吐出部ユニットを移動軸4にそって移動させるときに、インキ吐出部ユニット上のカメラにより撮影された画像データから、以下の位置誤差を測定することができる。
(1)X軸ヨーイング(インキ吐出部ユニットの位置によって生じる第3の方向を回転軸とする回転方向誤差)
(2)X軸真直度誤差(インキ吐出部ユニットの位置によって基材搬送方向に生じる誤差)
(3)X軸累積誤差(インキ吐出部ユニットの位置によって生じるインキ吐出部ユニット移動方向の位置誤差)
メインコントローラ10には、基材搬送ステージ移動にともなうY軸ヨーイングの測定値を記録する記録部(図示しない)が内蔵されている。これによって、Y方向の任意の位置でのヨーイング誤差に応じてθ軸を回転させることでヨーイング誤差を修正することができる。
【0059】
また、メインコントローラには、基材搬送ステージ移動にともなうY軸真直度誤差の測定値を記憶する記録部が内蔵されている。これによって、Y軸上の任意の位置でのX方向の誤差量を把握することができ、基材搬送ステージ移動中の任意の位置におけるX方向の誤差量に応じてX調整機構28を移動させることで、X方向の誤差の補正することができる。
【0060】
また、吐出制御部9には、基材搬送ステージ移動にともなうY軸累積誤差の測定値を記憶する記録部が内蔵されている。これによって、Y軸上の任意の位置でのY方向の誤差量を把握することができ、基材搬送ステージ移動中の任意の位置におけるY方向の誤差量に応じてインキ吐出口の吐出のタイミングを変えることで、Y方向の誤差の補正することができる。
【0061】
さらにメインコントローラ10には、インキ吐出部ユニット移動にともなうX軸ヨーイングの測定値を記録する記録部(図示しない)が内蔵されている。これによって、X軸上の任意の位置でのヨーイング誤差を修正することができ、インキ吐出部ユニット14を第X方向にそって所望の位置に移動させた後、その位置のヨーイング誤差に応じてθ軸を回転させることで、ヨーイング誤差の補正をすることができる。
【0062】
また、吐出制御部9には、インキ吐出部ユニット移動にともなうX軸真直度誤差の測定値を記憶する記録部が内蔵されている。これによって、X軸上の任意の位置でのY方向の誤差量を把握することができ、インキ吐出部ユニット移動にともなう任意の位置におけるY方向の誤差量に応じてインキ吐出口の吐出のタイミングを変えることで、Y方向の誤差の補正することができる。
【0063】
さらに、吐出制御部9には、インキ吐出部群移動にともなうX軸上の位置の測定値を記録する記録部が内蔵されている。これによって、X軸上の任意の位置での予定位置と実際位置の誤差を把握することができ、インキ吐出部ユニット14を所望の位置にX方向の誤差量を加えて移動させた後、停止位置を補正をすることができる。
【0064】
また、メインコントローラには、インキ吐出部ユニットの移動に伴うたわみ(Z方向の誤差)の測定値を記憶する記録部が内蔵されている。これによって、X軸上の任意の位置でのZ方向の誤差量を把握することができ、インキ吐出部ユニットを所望の位置に移動させた後、その位置のZ方向の誤差量に応じてインキ吐出部ユニットを昇降させることで、Z方向の誤差の補正することができる。
【0065】
図5は、本発明のインキ吐出部群内のインキ吐出部の配列およびアライメントマークを示す平面図である。
【0066】
インキ吐出部13は、基材搬送方向と直交する方向に平行に配置されている。また、インキ吐出口範囲よりインキ吐出部本体の幅が広いため、隣り合うインキ吐出部は、基材搬送方向にずらした千鳥状の配置としている。このため、隣接するインキ吐出部のY方向の
位置の違い分だけ吐出タイミングを変えることで、インキ吐出部を直線状に配置した場合と同様に均一なインキ吐出をすることができる。
【0067】
アライメントマーク20は、基材保持部2の倒立顕微鏡7で検出できるようインキ吐出部ユニット本体下側にある。また、このアライメントマーク20を基準として、各インキ吐出部をX方向12、θ方向18とも所望の位置に調整する。
【0068】
図5は、本発明の印刷工程およびインキ吐出部の補正手順を示す図である。
【0069】
まず、手順1のように、吸着固定された基材1の塗工位置に、インキ吐出部ユニット14を移動させる。例えば、図6に示すように、基材としてブラックマトリクス30が形成された硝子基板を用い、これに着色インキを吐出する場合、ブラックマトリクスと相対位置関係が既知のアライメントマーク位置をアライメントカメラ23で位置検出して基材搬送ステージで位置決めし、ブラックマトリクスに対応する位置にインキ吐出部ユニットを移動させる。
【0070】
つぎに、手順2のように、メインコントローラ10に内蔵の記録部に記録されたインキ吐出部ユニット14のX軸上の位置に対応するヨーイング誤差情報により、ヨーイング誤差分だけθ軸15を回転させ、ヨーイング補正を行う。
【0071】
つぎに、メインコントローラ10に内蔵の記録部(図示しない)のインキ吐出部ユニット14のX軸上の位置に対応するZ方向の誤差情報により、誤差分だけZ軸16を昇降させ、たわみ補正をおこなう。
【0072】
つぎに、吐出制御部9に内蔵の記録部(図示しない)のインキ吐出部ユニット14のX軸上の位置に対応するY方向の予定位置と実際位置との誤差により、塗工中に吐出制御部に内蔵の補正回路(図示しない)で誤差の補正ができるように誤差分だけ吐出タイミングパラメータを変えておく。
【0073】
ここで、手順3のように、基材を載せた基材搬送ステージ2を搬送手段により搬送させ、ブラックマトリクスの所望の位置にRGBインキをインキ吐出印刷装置により吐出し、吐出が終了すると基材搬送ステージを停止させる。このとき、メインコントローラ10に内蔵の記録部(図示しない)のY軸上の位置に対応するX方向の誤差情報により、誤差分だけX軸28を移動させ、直線性補正をおこなう。また、同時にY軸上の位置に対応するヨーイング誤差情報により、ヨーイング誤差分だけθ軸26を回転させ、ヨーイング補正を行う。さらに、同時にY軸上の位置に対応する累積誤差情報により、誤差分だけ吐出タイミングパラメータを変えて補正を行う。
【0074】
つぎに、手順4のように、インキ吐出部ユニット14を次の吐出位置に移動させる。移動させた結果、X軸上の位置が変わってしまうので、手順5のように、再度上記ヨーイング補正、たわみ補正、直線性補正をおこない、手順6のように、次の塗工をおこなう。
【0075】
上記手順を繰返し、基板のブラックマトリクス領域すべてを塗工する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るインキ吐出印刷装置の全体図である。
【図2】図2は、本発明のインキ吐出印刷装置に係るインキ吐出部群およびその周辺機構図である。
【図3】図3は、本発明のインキ吐出印刷装置に係る基材搬送ステージおよびその周辺機構図である。
【図4】図4は、本発明のインキ吐出印刷装置に係るインキ吐出部群内のインキ吐出部の配列およびアライメントマークを示す平面図である。
【図5】図5は、本発明のインキ吐出印刷装置を使用する場合に係る塗工および補正手順を示す図である。
【図6】図6は、ブラックマトリクスが形成された硝子基板と搬送方向を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
1…基材
2…基材保持部
3…メンテナンスステーション
4…インキ吐出部ユニット移動軸(X軸)
5…リニアスケール
6…インキ吐出部ユニット移動ベース
7…倒立顕微鏡
8…搬送ステージ制御部
9…吐出制御部
10…メインコントローラ
11…基材搬送ステージ搬送方向(Y方向)
12…インキ吐出部ユニット移動方向(X方向)
13…インキ吐出部
14…インキ吐出部ユニット
15…θ調整機構(θ軸)
16…昇降機構(Z軸)
17…Z方向
18…θ方向
19…インキ吐出部ベース板
20…アライメントマーク
21…カメラ1
22…カメラ2
23…アライメントカメラ
24…X方向
25…θ方向
26…θ調整機構(θ軸)
27…基材搬送ステージ
28…X調整機構
29…変位計
30…ブラックマトリックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の所定位置にインキ吐出部からインキを吐出して複数の画素を有する印刷物を製造するインキ吐出印刷装置において、
第1の方向に配列され、インキを吐出する複数のインキ吐出口を有するインキ吐出部と、基材上の画素形状を画像認識するためのカメラとインク吐出口と基材の隙間(ギャップ)を測定するための変位計からなるインキ吐出部ユニットと、
前記第1の方向に移動軸を有し、インキ吐出部を第1の方向に移動させる移動手段と、
前記基材を保持する保持手段と、前記基材を前記インキ吐出部に対して、前記第1の方向とほぼ直交する第2の方向に、搬送する搬送手段と、
前記搬送手段による搬送に同期して前記複数のインキ吐出口からインキを吐出させて前記基材上の複数の画素位置にインキを付与する手段と、
前記第1の方向及び第2の方向と直交する第3の方向を回転軸として、インキ吐出部を回転させる手段と、
前記基材を前記第3の方向にそってインキ吐出部を昇降する修正手段と、
前記搬送手段上で、前記第1の方向に前記保持手段を移動させる移動手段と、
前記搬送手段上で、第1の方向および第2の方向と直交する第3の方向を回転軸として、基材保持部を回転させる手段と、
前記搬送手段により、保持された基材を第1の方向および第2の方向と直交する第3の方向を回転軸として所定の位置に位置決めする基材位置決め手段、
を含んでいることを特徴とするインキ吐出印刷装置。
【請求項2】
前記インキ吐出部は、各々のインキ吐出部の位置調整の基準となるアライメントマークを有しており、前記移動手段にインキ吐出部のアライメントマーク位置を検出する検出手段が備わっている請求項1に記載のインキ吐出印刷装置。
【請求項3】
前記インキ吐出部ユニットを第1の方向上で移動させた時に、基材の位置によって生じる第1の方向上に生じる予定位置からの移動誤差を、基材上の画素形状をカメラで画像認識して、
第1の方向上の位置と、
その位置における第1の方向上の移動誤差を記録しておく記録部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のインキ吐出印刷装置。
【請求項4】
前記インキ吐出部ユニットを第1の方向上で移動させた時に、基材の位置によって生じる第3の方向上に生じる初期位置からの位置誤差を前記変位計で測定して、
第1の方向上の位置と、
その位置での第3の方向上の位置誤差を記録しておく記録部を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインキ吐出印刷装置。
【請求項5】
前記インキ吐出部ユニットを第1の方向上で移動させた時に、基材の位置によって生じる第3の方向の軸まわりに生じる初期位置からの回転方向誤差(ヨーイング誤差)を、基材上の画素形状をカメラで画像認識して、
第1の方向上の位置と、
その位置におけるヨーイング誤差を記録しておく記録部を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインキ吐出印刷装置。
【請求項6】
前記第1の方向上の位置と第2の方向上の移動誤差を記録した記録部の情報に応じて、吐出タイミングを変化させる補正回路を含むことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のインキ吐出印刷装置。
【請求項7】
前記搬送手段により基材保持部を第2の方向上で移動させた時に、基材の位置によって生じる第2の方向上に生じる予定位置からの移動誤差を、搬送に同期したタイミングで基材上の画素形状をカメラで画像認識して、
第2の方向上の位置と、
その位置における第1の方向上の移動誤差を記録しておく記録部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のインキ吐出印刷装置。
【請求項8】
前記搬送手段により基材保持部を第2の方向上で移動させた時に、基材の位置によって生じる第1の方向上に生じる予定位置からの移動誤差を、搬送に同期したタイミングで基材上の画素形状をカメラで画像認識して、
第2の方向上の位置と、
その位置における第1の方向上の移動誤差を記録しておく記録部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のインキ吐出印刷装置。
【請求項9】
前記搬送手段により基材保持部を第2の方向上で移動させた時に、基材の位置によって生じる第3の方向の軸まわりに生じる初期位置からの回転方向誤差(ヨーイング誤差)を、搬送に同期したタイミングで基材上の画素形状をカメラで画像認識して、
第2の方向上の位置と、
その位置におけるヨーイング誤差を記録しておく記録部を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のインキ吐出印刷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−131789(P2009−131789A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310319(P2007−310319)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】