説明

インクジェットヘッドワイピング装置

【課題】 洗浄移動ユニットとインクジェットヘッドとの位置関係が不当に厳格とならないようにした上で、両者の接触に起因する耐久性の低下、摩耗粉塵等の異物の発生、印刷不良や配向膜形成不良等を回避する。また、インクジェットヘッドの液状材料噴出口を通じてその内部に洗浄液が浸入して液状材料の濃度が低下するという不具合を回避した上で、負圧吸引による洗浄能力をより高める。
【解決手段】 ライン状に配列された複数の液状材料噴出口3の周辺に負圧による吸引力を発生させる真空ノズル5を有し且つインクジェットヘッド1に対して相対移動可能な洗浄移動ユニット4を備えた構成において、真空ノズル5の先端に存する負圧吸引領域を、液状材料噴出口3の配列方向に短尺に且つその配列方向と直交する方向に長尺になるようにして、真空ノズル5を上記の配列方向に移動させるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドのワイピング装置に係り、より詳しくは、当該インクジェットヘッドの液状材料噴出口やその周辺への異物の付着を可及的に抑制し、或いは当該部位に付着した液状材料や異物を適切に吸い取り除去するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、紙等のプリント媒体にインクによる印刷を行なう場合、液晶表示器等の基板(透明基板)上に配向膜の形成やUVインクの塗布を行なう場合、或いは有機EL表示器の基板上にカラーフィルタを塗布する場合には、インクジェットヘッドを用いた所謂インクジェット法が広く採用されるに至っている。この種のインクジェットヘッドには、一端面にインクや膜材料を噴出させるための液状材料噴出口が開口しており、この液状材料噴出口から、紙等のプリント媒体にインクが噴出供給され、或いは表示器の透明基板等に液状の膜材料が噴出供給される。
【0003】
ところで、この種のインクジェットヘッドにおいては、極めて開口面積の小さな液状材料噴出口からインクや膜材料が噴出されることから、その液状材料自体或いはその液状材料中の例えば顔料等が固化するなどして液状材料噴出口及びその周辺に付着すると共に、外気中のゴミ等の異物も液状材料噴出口及びその周辺に付着するという事態を招く。そして、これが原因となって、液状材料の噴出不良が生じ、プリント媒体への印刷や配向膜の形成に支障を来たすことになる。
【0004】
そこで、この種のインクジェットヘッドには、これらの問題が生じる前に、適当な時間間隔で、インクジェットヘッドの液状材料噴出機能を良好な状態に復帰させる目的をもって、液状材料噴出口及び/又はその周辺を洗浄する洗浄移動ユニットが配備される。そして、この洗浄移動ユニットとしては、液状材料噴出口及び/又はその周辺に付着している固化材料や異物を負圧による吸引力によって吸い取り除去するための負圧吸引手段を備えたものが公知となっている。
【0005】
その一例として、下記の特許文献1によれば、インクジェットヘッド(プリントヘッド)の材料噴出口が開口する一端面に、洗浄移動ユニットの真空フードを直接接触させ、材料噴出口のみならずその内部に対しても真空フードを通じて負圧吸引を行なう技術が開示されている。また、下記の特許文献2及び特許文献3によれば、洗浄移動ユニットに真空ノズルを設けると共に、インクジェットヘッドの材料噴出口が開口する一端面に対して真空ノズル自体を非接触とした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−190514号公報
【特許文献2】特開平6−126972号公報
【特許文献3】特開平8−118668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に開示された技術によれば、洗浄移動ユニットの真空フードがインクジェットヘッドに接触することに起因して、その接触部分に傷が付くため、長期使用が困難となって耐久性の低下を招く。しかも、この両者の接触によって摩耗粉塵或いは摩滅粉塵等の異物が発生し、この異物がインクジェットヘッドの液状噴出口やその周辺に付着することにより、液状材料の噴出不良を招くと共に、印刷や配向膜形成、更には負圧吸引に支障を来たすことになる。
【0008】
また、上記の特許文献2に開示された技術によれば、真空ノズルはインクジェットヘッドに対して非接触に維持されているものの、この真空ノズルを支持する支持部材は、バネによりインクジェットヘッド側に押圧付勢されて該インクジェットヘッドのレッジ面に接触している。したがって、この技術によるにしても、洗浄移動ユニットの支持部材がインクジェットヘッドに接触することから、その接触部分に傷が付くことによる耐久性の低下、摩耗粉塵等の異物の発生、及びこれに起因する液状材料の噴出不良、印刷不良や配向膜形成不良、更には負圧吸引不良等を招くという問題が生じる。
【0009】
更に、上記の特許文献3に開示された技術によれば、洗浄移動ユニットに設けられた真空ノズルは、インクジェットヘッドに対して非接触とされているものの、洗浄移動ユニットに設けられた超音波液状ワイパ装置の洗浄ノズルは、その先端に形成される洗浄液の液柱(同文献ではメニスカス)を介してインクジェットヘッドのノズル面に接触しており、印加電圧による励振がその液柱を通じてインクジェットヘッドのノズル面に転送される構成である。このような構成であると、洗浄ノズルとインクジェットヘッドとの間に、適切な液柱を形成する必要があるため、この両者の位置関係は厳格でなければならず、その位置決め精度を極めて高精度とする必要がある。このため、構造が複雑になると共に、各構成要素の組み付け精度も高精度とする必要性が生じ、組立作業が面倒且つ煩雑になるばかりでなく、コスト面においても不利となる。
【0010】
しかも、上記のように洗浄液を用いる手法によれば、インクジェットヘッドの液状材料噴出口を通じてその内部に洗浄液が浸入し、液状材料中に洗浄液が混入するという事態を招くため、液状材料の濃度が低下して、正常な印刷や配向膜形成を行なう上で大きな妨げとなる。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、洗浄移動ユニットとインクジェットヘッドとの位置関係が不当に厳格な制約を受けないようにした上で、両者の接触に起因する耐久性の低下、摩耗粉塵等の異物の発生、印刷不良や配向膜形成不良、更には負圧吸引不良等を回避することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記技術的課題を解決するために創案された本発明は、インクジェットヘッドに設けられてライン状に配列された複数の液状材料噴出口の周辺を洗浄するインクジェットヘッドワイピング装置において、前記液状材料噴出口の周辺に負圧による吸引力を発生させる真空ノズルを有し且つインクジェットヘッドに対して相対移動可能な洗浄移動ユニットを、その全ての構成要素がインクジェットヘッドから完全に分離して非接触に維持されるように構成すると共に、前記真空ノズルの先端に存する負圧吸引領域が、インクジェットヘッドのノズル面における前記液状材料噴出口の配列方向に短尺に且つその配列方向と直交する方向に長尺になるようにして、該真空ノズルを前記配列方向に移動させるように構成したことを特徴とするものである。
【0013】
この場合、洗浄移動ユニットの「全ての構成要素」とは、洗浄移動ユニットを構成している各部品のみならず、洗浄液の液柱をも含む。したがって、洗浄移動ユニットの全ての構成要素がインクジェットヘッドから完全に分離して非接触に維持されるとういうことは、洗浄移動ユニットの何れかの部品とインクジェットヘッドとが接触している場合を排除するのみならず、洗浄移動ユニットとインクジェットヘッドとが例えば洗浄液の液柱を介して接触している場合をも排除するものである。
【0014】
このような構成によれば、洗浄移動ユニットを構成している各部品がインクジェットヘッドに接触しなくなることから、これらが接触することによる傷の発生及びこれに起因する耐久性低下等の不具合が生じなくなると共に、インクジェットヘッドの液状噴出口やその周辺への摩耗粉塵等の異物の付着、及びこれに起因する液状材料の噴出不良、並びに印刷不良や配向膜形成不良、更には負圧吸引不良等の不具合も生じなくなる。加えて、洗浄移動ユニットとインクジェットヘッドとが洗浄液の液柱を介して接触するという事態も生じないことから、この両者の位置関係を厳格にする必要がなく、位置決めに要する構造が簡素化されると共に、組立作業を容易に行なえるようになり、製造コストの低廉化が図られる。
【0015】
この構成において、前記真空ノズルから前記インクジェットヘッドのノズル面に吸引力を作用させる吸引領域が、前記ノズル面における前記液状材料噴出口の配列方向に短尺に且つその配列方向と直交する方向に長尺になるように構成されていることが好ましい。
【0016】
以上の構成を備えたインクジェットヘッドワイピング装置を、基板上に配向膜を形成するためのインクジェットヘッドに設けることにより、配向膜形成装置を構成することができる。
【0017】
すなわち、以上の構成を備えたインクジェットヘッドワイピング装置は、用紙に印字等を行なうインクジェット式プリンタや、有機EL表示器の基板(透明基板)上にカラーフィルタを塗布する装置等に使用することも可能であるが、液晶表示器の基板(透明基板)上に配向膜を形成する配向膜形成装置に使用することが好適である。この場合に使用される液状材料は、例えば、粘度が5〜16cpとされ、また表面張力が30〜40dyn/cmとされる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明に係るインクジェットヘッドワイピング装置によれば、真空ノズルを有する洗浄移動ユニットを、その全ての構成要素がインクジェットヘッドから完全に分離して非接触に維持されるように構成したから、洗浄移動ユニットを構成している各部品の何れかがインクジェットヘッドに接触することによる傷の発生及びこれに起因する耐久性低下等の不具合が生じなくなると共に、インクジェットヘッドの液状噴出口やその周辺への摩耗粉塵等の異物の付着、及びこれに起因する液状材料の噴出不良、並びに印刷不良や配向膜形成不良、更には負圧吸引不良等の不具合も生じなくなる。加えて、洗浄移動ユニットとインクジェットヘッドとが洗浄液の液柱を介して接触するという事態も生じないことから、この両者の位置関係を厳格にする必要がなく、位置決めに要する構造が簡素化されると共に、組立作業を容易に行なえるようになり、製造コストの低廉化が図られる。
【0019】
そして、既述のインクジェットヘッドワイピング装置を、基板上に配向膜を形成するためのインクジェットヘッドに設けることにより、配向膜形成装置を構成すれば、例えば液晶表示器具の透明基板上に、良質の配向膜を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略正面図、図1(b)は、そのインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略側面図である。
【図2】図2(a)は、本発明の第2実施形態に係るインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略正面図、図2(b)は、そのインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略側面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の第3実施形態に係るインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略正面図、図3(b)は、そのインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略側面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の第4実施形態に係るインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略正面図、図4(b)は、そのインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略側面図である。
【図5】図5(a)は、本発明の第5実施形態に係るインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略平面図、図5(b)は、そのインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略正面図、図5(c)は、そのインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略正面図、図1(b)は、そのインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略側面図である。
【0022】
図1(a)、(b)に示すように、この第1実施形態に係るインクジェットヘッドワイピング装置は、インクジェットヘッド(プリントヘッド)1の一端面つまりノズル面2に所定のピッチで縦方向(図1(a)の左右方向)にライン状に複数配列された噴出ノズルの液状材料噴出口3の周辺を洗浄する洗浄移動ユニット4を備えている。なお、図1(a)、(b)では、便宜上、各液状材料噴出口3(噴出ノズル)をインクジェットヘッド1の一端面2から突出させているが、これらの液状材料噴出口3は、この実施形態では、インクジェットヘッド1の一端面2に開口しており、この一端面2からは突出していない(以下の第2〜第5実施形態についても同様)。但し、本発明は、これらの液状材料噴出口3がインクジェットヘッド1の一端面2から突出してなるものを排除するものではない。
【0023】
前記洗浄移動ユニット4は、真空ノズル5を有すると共に、矢印Xで示す縦方向すなわち液状材料噴出口3の配列方向に対して移動するように構成されている。そして、この洗浄移動ユニット4の真空ノズル5を含む全ての構成要素は、その使用時に、インクジェットヘッド1から完全に分離して非接触に維持されるように構成されている。この場合、インクジェットヘッド1の一端面2と洗浄移動ユニット4との離間寸法Sは、0.2mm〜1.0mmの範囲内、好ましくは0.3mm〜0.7mmの範囲内、この実施形態では、概ね0.5mmに設定されている(以下の第2実施形態から第5実施形態についても同様)。また、真空ノズル5は、吸引通路6を介して図外の負圧源に連通されており、この真空ノズル5の内部及び吸引通路6の内部では、矢印A1、A2で示す方向に吸引エアが流れるように構成されている。
【0024】
前記真空ノズル5の吸引口7は、縦方向(液状材料噴出口3の配列方向)に短尺であり、且つ、横方向すなわちインクジェットヘッド1の一端面2に対向する面内で縦方向と直交する横方向(液状材料噴出口3の配列方向と直交する方向であって図1(b)の左右方向)に長尺なスリット状に形成されている。したがって、真空ノズル5の先端に存する負圧吸引領域は、縦方向に短尺で且つ横方向に長尺とされ、更には、真空ノズル5からインクジェットヘッド1の一端面2に吸引力が作用する吸引領域も、縦方向に短尺で且つ横方向に長尺とされた上で、真空ノズル5が縦方向に移動するように構成されている。そして、この実施形態では、真空ノズル5の吸引口7における縦方向寸法については、0.2mm〜1.0mmの範囲内、好ましくは0.3mm〜0.7mmの範囲内、この実施形態では、概ね0.5mmに設定されており(第2実施形態から第5実施形態についても、吸引口7の短尺側寸法は、この場合と同様)、横方向については、インクジェットヘッド1の一端面2の横方向寸法と同一又は略同一とされている。したがって、この真空ノズル5を矢印Xで示す縦方向に移動させることのみをもって、インクジェットヘッド1の一端面2の全領域に対する洗浄作業を行なうことが可能に構成されている。
【0025】
更に、この実施形態では、真空ノズル5の吸引口7の横方向中間位置に、インクジェットヘッド1の各液状材料噴出口3と吸引口7とが直接対面しないようにするための邪魔部8が形成されている。すなわち、洗浄移動ユニット4の縦方向Xに対する移動時においては、真空ノズル5の邪魔部8とインクジェットヘッド1の液状材料噴出口3とが対面した状態に維持されるように構成されている。したがって、インクジェットヘッド1の液状材料噴出口3に対しては、真空ノズル5の吸引口7から直接的に負圧による吸引力が作用しない構成とされており、これにより真空ノズル5による吸引力が、液状材料噴出口3を通じてその内部の液状材料の内圧に不当な影響を与えること、及びこれに起因して液状材料の噴出ノズルの内部に空気が混入することを回避できるように配慮がなされている。なお、真空ノズル5による吸引力を、液状材料噴出口3を通じてその内部の液状材料の内圧に影響を与えることがない程度の強さに設定しておけば、上記の邪魔部8を設けなくてもよい。
【0026】
以上のように、この第1実施形態の構成によれば、インクジェットヘッド1の一端面2つまり液状材料噴出口3及びその周辺に付着している膜材料の固化物やゴミ等の異物が、洗浄移動ユニット4の真空ノズル5から作用する負圧によって真空ノズル5内に吸引され、洗浄作業が行われる。そして、この洗浄移動ユニット4が、このような動作を行ないつつ、矢印Xで示す縦方向に移動していくことにより、インクジェットヘッド1の一端面(ノズル面)2の全域又は略全域の洗浄が行われる。
【0027】
そして、洗浄移動ユニット4を構成している各部の全てはインクジェットヘッド1に対して完全非接触とされていることから、これらが接触することによる傷の発生及びこれに起因する耐久性の低下等が生じなくなる。しかも、インクジェットヘッド1の液状材料噴出口3やその周辺への摩耗粉塵等の異物の付着、及びこれに起因する液状材料の噴出不良、印刷不良又は配向膜形成不良、更には負圧吸引不良等も生じなくなる。加えて、洗浄移動ユニット4とインクジェットヘッド1とが洗浄液の液柱を介して接触するという事態も生じないことから、この両者の位置関係を厳格にする必要がなく、位置決めに要する構造が簡素化されると共に、組立作業を容易に行なえるようになる。
【0028】
図2(a)は、本発明の第2実施形態に係るインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略正面図、図2(b)は、そのインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略側面図である。なお、図2(a)、(b)に基づくこの第2実施形態に係るインクジェットヘッドワイピング装置の説明において、上述の第1実施形態と共通の構成要件については同一符号を使用して、その詳細な説明を省略する。
【0029】
図2(a)、(b)に示すように、このインクジェットヘッドワイピング装置は、インクジェットヘッド1の液状材料噴出口3が形成された一端面2に対して、完全非接触で縦方向に移動可能な洗浄移動ユニット4が、真空ノズル5に加えて、空気や窒素等の気体をインクジェットヘッド1の一端面2に噴射供給するための気体噴射ノズル9を有している。そして、インクジェットヘッド1の一端面2における気体噴射ノズル9による気体噴射領域と真空ノズル5による吸引領域とは略一致しており、詳しくは、気体噴射領域は吸引領域の全てを包含している。
【0030】
真空ノズル5の吸引口7は、縦方向に短尺で且つ横方向に長尺なスリット状に形成されると共に、気体噴射ノズル9の気体噴射口10も同様に、縦方向に短尺で且つ横方向に長尺なスリット状に形成され、且つ、単一の吸引口7を中心してその縦方向両側に2つの気体噴射口10が形成されている。この2つの気体噴射口10は、吸引口7から隔離されていると共に、吸引口7の邪魔部8と同様に、それぞれの気体噴射口10の横方向中間位置には、インクジェットヘッド1の各液状材料噴出口3と気体噴射口10とが直接対面しないようにするための邪魔部8が形成されている。すなわち、インクジェットヘッド1の液状材料噴出口3に対して、気体噴射口10から直接的に気体が噴射供給されない構成とされており、これにより気体噴射口10から噴射供給された気体が、液状材料噴出口3を通じてその内部の液状材料の内圧に不当な影響を与えること、或いは液状材料を飛散させること等を回避できるように配慮がなされている。
【0031】
この場合、2つの気体噴射口10を先端に有する気体噴射ノズル9は、1本の送給通路11を介して図外の気体圧源に通じていると共に、気体噴射ノズル9における2つの気体噴射口10に通じる噴射通路は、インクジェットヘッド1側に移行するにしたがって漸次相接近するようにそれぞれが傾斜している。そして、気体噴射ノズル9の内部及び送給通路11の内部では、矢印B1、B2で示す方向に気体が流れるように構成されている。なお、送給通路11から気体噴射口10に至る気体流通経路と、吸引口7から吸引通路6に至る吸引エア流通経路とは、完全に隔離された状態にある。また、各気体噴射口10の縦方向寸法は、吸引口7の縦方向寸法よりも長尺とされているのに対して、各気体噴射口10の横方向寸法と、吸引口7の横方向寸法とは、同一又は略同一とされている。
【0032】
以上のように、この第2実施形態の構成によれば、インクジェットヘッド1の一端面2つまり液状材料噴出口3及びその周辺に付着している膜材料の固化物やゴミ等の異物が、洗浄移動ユニット4の気体噴射ノズル9から噴射される気体によって、それらの異物等の剥離が促進されつつ、真空ノズル5から作用する負圧によって、それらの異物等が真空ノズル5内に吸引される。そして、この洗浄移動ユニット4が、このような動作を行ないつつ、矢印Xで示す縦方向に移動していくことにより、インクジェットヘッド1の一端面(ノズル面)2の全域又は略全域の洗浄が行われる。この場合、真空ノズル5内には、気体噴射ノズル9から噴射された気体のみ又は略その気体のみと異物等とが吸引され得ることになるので、周辺の汚れた空気やゴミ等が真空ノズル5内に吸引されることを防止することができる。なお、その他の作用効果は、上述の第1実施形態と同様である。
【0033】
図3(a)は、本発明の第3実施形態に係るインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略正面図、図3(b)は、そのインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略側面図である。なお、図3(a)、(b)に基づくこの第3実施形態に係るインクジェットヘッドワイピング装置の説明において、上述の第1実施形態と共通の構成要件については同一符号を使用して、その詳細な説明を省略する。
【0034】
図3(a)、(b)に示すように、このインクジェットヘッドワイピング装置は、洗浄移動ユニット4が矢印Yで示すように横方向に移動するように構成されており、その関係上、洗浄移動ユニット4の縦方向寸法が、インクジェットヘッド1の縦方向寸法と略同一または僅かにそれよりも長尺とされている。そして、この洗浄移動ユニット4に設けられている真空ノズル5の吸引口7は、横方向が短尺側とされ、且つ縦方向がインクジェットヘッド1の全ての液状材料噴出口3の配列領域と略同一又はそれよりも僅かに長い長尺側とされたスリット状の形成されている。なお、この吸引口7には、邪魔部が形成されていない。
【0035】
したがって、この第3実施形態の洗浄移動ユニット4の詳細な構成は、図3(b)に示す側面図については、図1(a)に示す正面図における「縦方向」と「横方向」とを相互に変換した場合における既述の説明と同一であり、また図3(a)に示す正面図については、図1(b)に示す側面図における「縦方向」と「横方向」とを相互に変換した場合における既述の説明(邪魔部8の説明を除く)と同一である。
【0036】
この第3実施形態の構成によれば、インクジェットヘッド1の一端面2(液状材料噴出口3及びその周辺)に付着している膜材料の固化物やゴミ等の異物が、洗浄移動ユニット4の真空ノズル5から作用する負圧によって真空ノズル5内に吸引され、洗浄作業が行われる。そして、この洗浄移動ユニット4は、このような動作を行ないつつ、矢印Yで示す横方向に移動していくことにより、インクジェットヘッド1の一端面(ノズル面)2の全域又は略全域の洗浄が行われる。
【0037】
この場合、洗浄移動ユニット4が矢印Yで示す横方向に移動している途中において、真空ノズル5の吸引口7とインクジェットヘッド1の液状材料噴出口3とが対面した時点では、真空ノズル5による吸引が一時的に停止される。これにより、インクジェットヘッド1の液状材料噴出口3に対しては、真空ノズル5の吸引口7から直接的に負圧による吸引力が作用しなくなって、真空ノズル5による吸引力が、液状材料噴出口3を通じてその内部の液状材料の内圧に不当な影響を与えること、及びこれに起因して液状材料の噴出ノズルの内部に空気が混入することが回避される。なお、真空ノズル5による吸引力を、液状材料噴出口3を通じてその内部の液状材料の内圧に影響を与えることがない程度の強さに設定しておけば、上記の一時停止を行なわなくてもよい。その他の作用効果については、上述の第1実施形態と同一である。
【0038】
図4(a)は、本発明の第4実施形態に係るインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略正面図、図4(b)は、そのインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略側面図である。なお、図4(a)、(b)に基づくこの第4実施形態に係るインクジェットヘッドワイピング装置の説明において、上述の第2実施形態と共通の構成要件については同一符号を使用して、その詳細な説明を省略する。
【0039】
図4(a)、(b)に示すように、このインクジェットヘッドワイピング装置も、洗浄移動ユニット4が矢印Yで示すように横方向に移動するように構成されており、その関係上、洗浄移動ユニット4の縦方向寸法が、インクジェットヘッド1の縦方向寸法と略同一または僅かにそれよりも長尺とされている。そして、この洗浄移動ユニット4に設けられている真空ノズル5の吸引口7は、横方向が短尺側とされ、且つ縦方向がインクジェットヘッド1の全ての液状材料噴出口3の配列領域と略同一又はそれよりも僅かに長い長尺側とされたスリット状に形成されている。なお、この吸引口7には、邪魔部が形成されていない。
【0040】
更に、この洗浄移動ユニット4は、真空ノズル5に加えて、空気や窒素等の気体をインクジェットヘッド1の一端面2に噴射供給するための気体噴射ノズル9を有している。そして、インクジェットヘッド1の一端面2における気体噴射ノズル9による気体噴射領域と真空ノズル5による吸引領域とは略一致しており、詳しくは、気体噴射領域は吸引領域の全てを包含している。気体噴射ノズル9の気体噴射口10は、横方向に短尺で且つ縦方向に長尺なスリット状に形成され、且つ、単一の吸引口7を中心してその横方向両側に2つの気体噴射口10が形成されている。なお、この真空ノズル5の吸引口7にも、邪魔部は形成されていない。
【0041】
そして、この第4実施形態の洗浄移動ユニット4の詳細な構成は、図4(b)に示す側面図については、図2(a)に示す正面図における「縦方向」と「横方向」とを相互に変換した場合における既述の説明と同一であり、また図4(a)に示す正面図については、図2(b)に示す側面図における「縦方向」と「横方向」とを相互に変換した場合における既述の説明(邪魔部8の説明を除く)と同一である。
【0042】
この第4実施形態の構成によれば、インクジェットヘッド1の一端面2つまり液状材料噴出口3及びその周辺に付着している膜材料の固化物やゴミ等の異物が、洗浄移動ユニット4の気体噴射ノズル9から噴射される気体によって、それらの異物等の剥離が促進されつつ、真空ノズル5から作用する負圧によって、それらの異物等が真空ノズル5内に吸引される。そして、この洗浄移動ユニット4が、このような動作を行ないつつ、矢印Yで示す横方向に移動していくことにより、インクジェットヘッド1の一端面(ノズル面)2の全域又は略全域の洗浄が行われる。
【0043】
この場合、洗浄移動ユニット4が矢印Yで示す横方向に移動している途中において、真空ノズル5の吸引口7及び気体噴射ノズル9の気体噴射口10と、インクジェットヘッド1の液状材料噴出口3とが対面した時点では、真空ノズル5による吸引及び気体噴射ノズル9による噴射が一時的に停止される。これによる利点は、真空ノズル5に関しては既に述べた通りであるが、気体噴射ノズル9に関しては、インクジェットヘッド1の液状材料噴出口3に対して、気体噴射口10から直接的に気体が噴射供給されなくなることにより、気体噴射口10から噴射供給された気体が、液状材料噴出口3を通じてその内部の液状材料の内圧に不当な影響を与えること、或いは液状材料を飛散させることを回避できることになる。なお、真空ノズル5による吸引力を、液状材料噴出口3を通じてその内部の液状材料の内圧に影響を与えることがない程度の強さに設定しておけば、真空ノズル5の吸引については、上記の一時停止を行なわなくてもよい。その他の作用効果については、上述の第2実施形態と同一である。
【0044】
図5(a)は、本発明の第5実施形態に係るインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略平面図、図5(b)は、そのインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略正面図、図5(c)は、そのインクジェットヘッドワイピング装置を示す概略側面図である。この第5実施形態は、複数個のインクジェットヘッド1を縦方向に千鳥状に配設してなる大型プリンタ或いは大型配向膜形成装置に係るものである。なお、図5(a)、(b)、(c)に基づくこの第5実施形態に係るインクジェットヘッドワイピング装置の説明において、上述の第1実施形態と共通の構成要件については同一符号を使用して、その詳細な説明を省略する。
【0045】
図5(b)に示すように、このインクジェットヘッドワイピング装置は、矢印Xで示すように縦方向に移動可能な洗浄移動ユニット4を備え、この洗浄移動ユニット4に設けられている真空ノズル5の正面視形態については、図1(a)の正面図に基づいて既に説明した内容と同一である。そして、この第5実施形態では、図5(a)、(c)に示すように、洗浄移動ユニット4が2列のインクジェットヘッド1に跨るように配置されると共に、この洗浄移動ユニット4には、インクジェットヘッド1の2列配列に伴って、2つの真空ノズル5が並列に設けられている。この場合、2つの真空ノズル5は、1本の吸引通路6に合流された上で図外の負圧源に通じている。そして、個々の真空ノズル5の吸引口7の構成、及びこれらと各列毎のインクジェットヘッド1との相対関係については、既述の第1実施形態と同一である。
【0046】
この第5実施形態の構成によれば、2列に配列された複数のインクジェットヘッド1に対して、単一の洗浄移動ユニット4を矢印Xで示す縦方向に移動させるだけで、全てのインクジェットヘッド1の一端面2に対する負圧吸引による洗浄を一挙に行なうことが可能となる。なお、この場合には、単一の洗浄移動ユニット4を縦方向Xに移動させていく間に、洗浄移動ユニット4とインクジェットヘッド1とが対面しない箇所が交互に出現する関係上、2つの真空ノズル5による吸引を交互に一時停止させることが好ましい。その他の作用効果については、既述の第1実施形態と同様である。
【0047】
なお、この第5実施形態では、洗浄移動ユニット4に、真空ノズル5のみを並列に2つ設ける構成としたが、図2に示す構成を利用して、真空ノズル5と気体噴射ノズル9とを並列に2セットずつ設けるようにしてもよい。そして、2列に千鳥状に配列された複数のインクジェットヘッド1のそれぞれに対して、図1または図2に示す洗浄移動ユニット4を個別に配設して洗浄をするように構成してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 インクジェットヘッド
2 一端面(ノズル面)
3 液状材料噴出口
4 洗浄移動ユニット
5 真空ノズル
7 吸引口
9 気体噴射ノズル
10 気体噴射口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドに設けられてライン状に配列された複数の液状材料噴出口の周辺を洗浄するインクジェットヘッドワイピング装置において、
前記液状材料噴出口の周辺に負圧による吸引力を発生させる真空ノズルを有し且つインクジェットヘッドに対して相対移動可能な洗浄移動ユニットを、その全ての構成要素がインクジェットヘッドから完全に分離して非接触に維持されるように構成すると共に、前記真空ノズルの先端に存する負圧吸引領域が、インクジェットヘッドのノズル面における前記液状材料噴出口の配列方向に短尺に且つその配列方向と直交する方向に長尺になるようにして、該真空ノズルを前記配列方向に移動させるように構成したことを特徴とするインクジェットヘッドワイピング装置。
【請求項2】
前記真空ノズルから前記インクジェットヘッドのノズル面に吸引力を作用させる吸引領域が、前記ノズル面における前記液状材料噴出口の配列方向に短尺に且つその配列方向と直交する方向に長尺になるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッドワイピング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−201307(P2011−201307A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115955(P2011−115955)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【分割の表示】特願2007−20639(P2007−20639)の分割
【原出願日】平成15年12月9日(2003.12.9)
【出願人】(591255416)株式会社石井表記 (20)
【Fターム(参考)】