説明

インク吐出印刷装置及びそれを用いたカラーフィルタの製造方法

【課題】カラーフィルタの処理基板が大型化してプロセス中の温度変化が生じても、処理基板上に形成されたブラックマトリクス隔壁内に、着色フィルタを精度良く形成できるインク吐出印刷装置及びカラーフィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】インク吐出印刷装置100は、X、Y、θ方向に移動可能なステージ10と、機能液滴を吐出可能なインク吐出ヘッド20と、ステージ10とインク吐出ヘッド20とを制御するメインコントローラ30と、処理基板の表面温度を測定する温度測定手段40とから構成されており、温度測定手段40にて測定された処理基板の表面温度はメインコントローラ30にて取り込まれ、演算処理された後エンコーダーコントローラ31にて吐出信号が、トリガーコントローラ32にて温度補正信号がヘッドドライバー21を介してインク吐出ヘッド20に供給され、機能液滴の吐出タイミングを制御している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタを形成すためのインク塗出印刷装置及びカラーフィルタの製造方法に係わり、特に、処理基板の大きさに係わらずラックマトリクス隔壁内に、着色フィルタを精度良く形成できるインク塗出印刷装置及びカラーフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大型カラーテレビ、ノートパソコン、携帯用電子機器の増加に伴い、液晶ディスプレイ、特にカラー液晶ディスプレイパネルの需要の増加はめざましいものがある。
カラー液晶ディスプレイパネルに用いられるカラーフィルタは、透明基板上に、ブラックマトリックス、赤色フィルタ、緑色フィルタ、青色フィルタ等からなる着色フィルタがフォトマスクを用いたパターン露光、現像等のパターニング処理を行うフォトリソグラフィープロセスを経て作製されているのが主流となっている。
【0003】
これに対し、最近は、カラーフィルタ基板の大型化、低コスト化に対応するため、インク吐出印刷装置、インクジェットプリンタ等を用いたインクジェット法にて、処理基板上に形成されたブラックマトリクス隔壁内に、着色フィルタを形成するカラーフィルタの製造方法の開発、導入が検討されている。
【0004】
インク吐出印刷装置、インクジェットプリンタ等を用いたカラーフィルタの製造方法は、処理基板上に形成されたブラックマトリクス隔壁内に、インク吐出ヘッドにて着色インクを吐出、充填し、乾燥硬化して着色フィルタを形成するというものである。
【0005】
インク吐出ヘッドにて着色インクを吐出する際、着色インク滴の着弾位置にズレを生じることなく、且つ迅速に描画するために、複数のインク吐出ヘッドを配設したキャリッジと、処理基板が相対的に移動し、着色インク滴を吐出するインク吐出印刷装置において、移動する前記キャリッジを連続的に位置検出し,吐出信号を生成し、それに基づいて着色インク滴の吐出をインク吐出印刷装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
従来のインク吐出印刷装置でカラーフィルタを作製するカラーフィルタの製造法において、ブラックマトリクス隔壁が適正な温度管理のもとで作製された処理基板に着色インク滴の吐出を行う場合には,相対移動における位置検出から生成された吐出信号に基づいて着色インク滴の吐出を行えば着弾位置はずれることはない。
しかし、従来方法では、理想的な温度管理は望めず処理基板が伸縮し、寸法精度の悪い隔壁を有する基材に対しては、着色インク滴の正確な着弾を望めない。
【0007】
すなわち、従来方法では、温度により伸縮する材料をベースとした処理基板に対しての着色インク滴の吐出による描画によって、正確な位置精度を有するカラーフィルタの製造は難しくなってくる。
【0008】
また、処理基板の伸縮を皆無にすることは非常に困難である。
【0009】
また、仮に、基材の伸縮が線形に伸びたと仮定した場合、エンコーダの位置精度を上回る細かさで隔壁のピッチが変化している可能性が高い。
その際、エンコーダの位置精度を該当する精度で出力することは、コストも増大し、実現性は難しくなってくる。
【0010】
このため、ベース材料が伸縮し寸法精度の悪い隔壁を有する処理基板に対して,コストの増大を回避しながら、所望の位置に着弾する方法が必要になる。
【0011】
また、機能液滴が色を表現することが目的であった場合において、面の位置がCADなどデジタル情報と相違がある場合、着色インク滴が一率であると,隔壁に無用な着弾を生じてしまい、カラーフィルタの品質の劣化を招いてしまう。
【特許文献1】特開2003−266671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑み考案されたもので、カラーフィルタの処理基板が大型化してプロセス中の温度変化が生じても、処理基板上に形成されたブラックマトリクス隔壁内に、着色フィルタを精度良く形成できるインク吐出印刷装置及びカラーフィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1においては、少なくともX、Y、θ方向に移動可能なステージと、機能液滴を吐出可能なインク吐出ヘッドと、前記ステージと前記インク吐出ヘッドとを制御するメインコントローラと、処理基板の表面温度を測定する温度測定手段とを備えてなるインク吐出印刷装置であって、
前記温度測定手段にて測定された処理基板の表面温度をメインコントローラに取り込み、温度補正された吐出タイミング信号を作製し、前記温度補正された吐出タイミング信号にて前記インク吐出ヘッドの吐出タイミングを制御するようにしたことを特徴とするインク吐出印刷装置としたものである。
【0014】
また、請求項2においては、請求項1記載のインク吐出印刷装置を用いて、処理基板上に形成されたブラックマトリクス隔壁内に、着色フィルタを形成したことを特徴とするカラーフィルタの製造方法としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のインク吐出印刷装置及びカラーフィルタの製造方法を適用することにより、処理基板が大型化してプロセス中の温度変化が生じても、処理基板上にあらかじめ形成されたブラックマトリクス隔壁内に、着色フィルタを精度良く形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態につき説明する。
図1は、本発明のインク吐出印刷装置の一実施例を示す模式構成図である。
本発明のインク吐出印刷装置100は、X、Y、θ方向に移動可能なステージ10と、機能液滴を吐出可能なインク吐出ヘッド20と、ステージ10とインク吐出ヘッド20とを制御するメインコントローラ30と、処理基板の表面温度を測定する温度測定手段40とから構成されている。
【0017】
温度測定手段40にて測定された処理基板の表面温度はメインコントローラ30にて取り込まれ、演算処理された後エンコーダーコントローラ31にて吐出信号が、トリガーコントローラ32にて温度補正信号がヘッドドライバー21を介してインク吐出ヘッド20に供給され、機能液滴の吐出タイミングを制御している。
【0018】
このように、温度測定手段40にて測定された処理基板の表面温度をメインコントローラ30に取り込んで、インク吐出ヘッド20の機能液滴の吐出タイミングを制御している
ので、プロセス中に処理基板温度が変化しても、機能液滴の着弾位置がずれることなく、処理基板上に形成されたブラックマトリクス隔壁内に、着色フィルタを精度良く形成できる。
【0019】
以下、図2に示すフローチャートにより、本発明のインク吐出印刷装置の動作概要について説明する。
まず、メインコントローラ30からステージコントローラ33を介してステージ10の初期化を行う(S1)。
【0020】
次に、温度測定手段40にて測定された処理基板の表面温度及び処理基板含めたカラーフィルタ情報をメインコントローラ30に取り込む(S2)。
温度測定手段40としては、サーモカップル、非接触の放射温度計が使用でき、測定精度、応答性等から放射温度計が好適である。
【0021】
次に、処理基板の表面温度及び処理基板含めたカラーフィルタ情報を基にメインコントローラ30にて演算処理を行う(S3)。
【0022】
次に、S3で演算処理された結果を基にエンコーダーコントローラ31にて吐出タイミング信号を生成する(S4)。
【0023】
次に、S3で演算処理された結果を基にトリガーダーコントローラ32にて温度補正トリガー信号を生成する(S5)。
【0024】
次に、エンコーダーコントローラ31、トリガーコントローラ32、ステージコントローラ33にそれぞれ基本パラメータをセットする(S6)。
【0025】
次に、エンコーダーコントローラ31、トリガーコントローラ32、ステージコントローラ33にそれぞれ塗工動作パラメータをセットする(S7)。
【0026】
次に、描画パターンのビットマップデータをヘッドドライバー21に格納する(S8)。
【0027】
次に、ステージコントローラ33を介してステージ10を移動し、インク吐出ヘッド20の吐出開始位置を合わせる(S9)。
【0028】
次に、インク吐出ヘッド20の状態を良好にするためフラッシングを行い、トリガーコントローラ32を経由してヘッドドライバー21に対して吐出開始を指示する信号であるトリガー信号を出力し(S10)、インク吐出ヘッド20より機能液滴の吐出を開始する(S11)。
【0029】
次に、吐出タイミング信号に同期してインク吐出ヘッド20の吐出動作を行い、所定の位置で温度補正された吐出タイミング信号にて吐出タイミング補正を行って、処理基板に対するインク吐出ヘッド20の位置補正を行いながらインク吐出ヘッド20の一連の吐出動作が行われる(S12)。
【0030】
次に、描画エリアに対して,吐出が終われば動作は終了する(S13)。
【0031】
上記したように、本発明のインク吐出印刷装置でインク吐出ヘッド20の吐出動作を行うことにより、処理基板の温度変化による基材の伸縮が生じても、処理基板の表面温度を取り込んで、温度補正された吐出タイミング信号を作製し、温度補正された吐出タイミン
グ信号にてインク吐出ヘッドの吐出タイミングを制御することにより、所望の位置に精度良く吐出パターンを形成することができる。
【0032】
以下本発明のインク吐出印刷装置を用いたカラーフィルタの製造方法について説明する。
図3(a)〜(d)は、本発明のインク吐出印刷装置を用いたカラーフィルタの製造方法の一実施例を示す模式構成断面図である。
まず、公知の方法、例えばフォトプロセス法を用いて、アクリル系樹脂にカーボンブラックを分散した黒色感光性樹脂溶液をスピンナー等により塗布、乾燥して、黒色感光性樹脂層を形成し、パターン露光、現像等の一連のパターニング処理を行って、処理基板51上の所定位置にブラックマトリクス隔壁61を形成し、ブラックマトリクス隔壁61が形成された基板50を作製するする(図3(a)参照)。
ここで、処理基板51としては、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス等のガラス基板及びプラスチックフィルム等が使用できる。
【0033】
次に、上記ブラックマトリクス隔壁61が形成された基板50を図1に示す本発明のインク吐出印刷装置100のステージ10上に載置する。
ステージ10の初期化、処理基板51の表面温度及び処理基板含めたカラーフィルタ情報をメインコントローラ30に取り込み、演算処理を行う。。
【0034】
次に、機能液滴として、樹脂と色素と溶媒を主成分とした着色インク(赤色インク、緑色インク、青色インク)を使用し、それぞれインク吐出ヘッドに供給する。
演算処理された結果を基にエンコーダーコントローラ31にて吐出タイミング信号を、トリガーダーコントローラ32にて温度補正トリガー信号をそれぞれ生成する。
【0035】
次に、エンコーダーコントローラ31、トリガーコントローラ32、ステージコントローラ33にそれぞれ基本パラメータ、塗工動作パラメータをセットする。
【0036】
次に、描画パターンのビットマップデータをヘッドドライバー21に格納し、ステージコントローラ33を介してステージ10を移動し、インク吐出ヘッド20の吐出開始位置を合わせる。
【0037】
次に、インク吐出ヘッド20の状態を良好にするためフラッシングを行い、トリガーコントローラ32を経由してヘッドドライバー21に対して吐出開始を指示する信号であるトリガー信号を出力し、インク吐出ヘッド20より着色インク滴(赤色インク、緑色インク、青色インク)の吐出を順次開始する。
【0038】
次に、吐出タイミング信号に同期してインク吐出ヘッド20の吐出動作を行い、所定の位置で温度補正された吐出タイミング信号にて吐出タイミング補正を行って、処理基板51に対するインク吐出ヘッド20の位置補正を行いながらインク吐出ヘッド20の一連の吐出動作が行われ、処理基板51のブラックマトリクス隔壁61内に赤色フィルタ71R、緑色フィルタ72G、青色フィルタ73Bが順次形成され、カラーフィルタが作製される(図3(b)〜(d)参照)。
さらに必要であれば、透明電極、スペーサー等の形成を行って、カラーフィルタを完成させる。
【0039】
上記したように、本発明のインク吐出印刷装置を用いてカラーフィルタを作製することにより、処理基板の温度変化による基材の伸縮が生じても、温度補正された吐出タイミング信号にてインク吐出ヘッドの吐出タイミングを制御することにより、ブラックマトリクス隔壁61内に精度良く着色フィルタを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のインク吐出印刷装置の一実施例を示す模式構成図である。
【図2】本発明のインク吐出印刷装置の動作概要を示すフローチャートである。
【図3】(a)〜(d)は、本発明のインク吐出印刷装置を用いたカラーフィルタの製造工程を示す模式構成断面図である。
【符号の説明】
【0041】
10……ステージ
20……インク吐出ヘッド
21……ヘッドドライバー
30……メインコントローラ
31……エンコーダコントローラ
32……トリガーコントローラ
33……ステージコントローラ
40……温度測定手段
50……ブラックマトリクス隔壁が形成された基板
51……処理基板
61……ブラックマトリクス隔壁
71R……赤色フィルタ
72G……緑色フィルタサ
73B……青色フィルタ
100……インク吐出印刷装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともX、Y、θ方向に移動可能なステージと、機能液滴を吐出可能なインク吐出ヘッドと、前記ステージと前記インク吐出ヘッドとを制御するメインコントローラーと、処理基板の表面温度を測定する温度測定手段とを備えてなるインク吐出印刷装置であって、
前記温度測定手段にて測定された処理基板の表面温度を前記メインコントローラーに取り込み、温度補正された吐出タイミング信号を作製し、前記温度補正された吐出タイミング信号にて前記インク吐出ヘッドの吐出タイミングを制御するようにしたことを特徴とするインク吐出印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載のインク吐出印刷装置を用いて、処理基板上に形成されたブラックマトリクス隔壁内に、着色フィルタを形成したことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−301877(P2007−301877A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133614(P2006−133614)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】