インタフェース回路及び送受信システム
【課題】伝送線路が規格を満たさない場合においても、伝送波形の規格を満足させることが可能なインタフェース回路及び送受信システムを提供する。
【解決手段】フレキシブル配線板のように、インピーダンスの大きな伝送線路がある場合、制御部14は信号送信時に、終端抵抗を信号受信時よりも大きくなるようにする(たとえば、抵抗R1<R2の場合、抵抗R2を選択する)。これにより、初期電圧が大きくなり、伝送波形の規格を満たすことが可能になる。
【解決手段】フレキシブル配線板のように、インピーダンスの大きな伝送線路がある場合、制御部14は信号送信時に、終端抵抗を信号受信時よりも大きくなるようにする(たとえば、抵抗R1<R2の場合、抵抗R2を選択する)。これにより、初期電圧が大きくなり、伝送波形の規格を満たすことが可能になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高速にデータの送受信を行うインタフェース回路及び送受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PC(Personal Computer)、HDD(Hard Disk Drive)、デジタルカメラ、携帯型デジタルオーディオ機器間などで、高速にデータの送受信が可能となるUSB(Universal Serial Bus)2.0やS−ATA(Serial-AT Attachment)といったインタフェースの規格が知られている。
【0003】
規格にはデータ伝送を保証するための仕様が存在し、それに基づいてプリント基板などの基板上に配線される伝送線路が設計される。一方で、民生品などではコスト的な観点から、規格が定める伝送線路の仕様を厳密に守ることができない場合もある。そのような場合においても、仕様が定める交流(AC)特性(ACスペック)を満足するようなインタフェース回路の提供が求められている。
【0004】
図14は、従来の送受信システムの構成を示す図である。
プリント基板500a,500bがケーブル501で接続されている構成を示している。
【0005】
プリント基板500a,500bにはLSI(Large Scale Integrated circuit)チップ510a,510bが搭載されている。以下、LSIチップ510a,510bをインタフェース回路510a,510bと呼ぶが、プリント基板500a,500bを含んだものをインタフェース回路と考えることもできる。
【0006】
ケーブル501とインタフェース回路510aとはプリント基板500aの配線520aによって接続されている。また、ケーブル501とインタフェース回路510bとはプリント基板500bの配線520bによって接続されている。
【0007】
インタフェース回路510aは、制御部511a、送信ドライバ回路512a、受信ドライバ回路513a、抵抗Raを有している。
制御部511aは、送信するデータを指定するための信号を、端子DOUTから出力するとともに、アウトプットイネーブル信号を端子OEから、インプットイネーブル信号を端子IEから出力する。また、DIN端子からデータを入力する。
【0008】
送信ドライバ回路512aは、制御部511aの端子DOUT,OEと接続されており、アウトプットイネーブル信号がアサートの場合に端子DOUTからの信号に従ってデータを出力する。送信ドライバ回路512aの出力端子は、配線520aに接続されており、出力信号が伝送される。
【0009】
受信ドライバ回路513aは、制御部511aの端子IEから出力されるインプットイネーブル信号がアサートの場合に、受信したデータを端子DINに入力する。
抵抗Raは終端抵抗であり、送信ドライバ回路512aの出力端子及び受信ドライバ回路513aの入力端子に一方の端子を接続しており、他方の端子は接地されている。
【0010】
インタフェース回路510bは、インタフェース回路510aと同様の構成であり、制御部511b、送信ドライバ回路512b、受信ドライバ回路513b、抵抗Rbを有している。
【0011】
インタフェース回路510a,510bにおいて、終端抵抗である抵抗Ra,Rbは同じ抵抗値を有する。
なお、上記では図示を簡略化するため、1つの信号経路を示しているが、高速なデータの送受信を行うインタフェース回路では、一対の差動信号でデータの送受信を行っている。その場合、インタフェース回路510a,510bの各構成要素が2つずつ設けられた構成となる。
【0012】
図15は、図14の伝送線路部分を回路図で示した図である。
ここでは、図14のノードA,B間の伝送線路を特性インピーダンスで示している。
図14の配線520aをインピーダンスZ0、ケーブル501をインピーダンスZ1、配線520bをインピーダンスZ2で示している。インピーダンスZ0,Z1,Z2には、低電圧電源端子VSSが接続されている。
【0013】
図16は、ノードAからの送信動作の際の送受信システムを模式化した図である。
送信ドライバ回路512aを、定電流源514と、スイッチ515で表している。
定電流源514は、電源電圧端子VDDと接続されており、電流Idを生成する。
【0014】
スイッチ515は、図14の制御部511aの端子DOUTからの信号に従ってオンまたはオフする。なお、端子OEからの信号については図示を省略している。
この回路において、たとえば、インピーダンスZ0,Z1,Z2が45ohmで整合されているならば、ノードA及びノードBでの配線端の抵抗Ra,Rbは、45ohmで終端される。定電流源514が生成する電流Idが理想的に17.8mAを流すとするならば、抵抗Raによる電圧降下でH(High)レベルは400mV、L(Low)レベルは0Vとなる。
【0015】
図17は、送信信号及び受信信号を示す図であり、(A)は送信信号、(B)は受信信号を示す図である。
縦軸が電圧[V]、横軸が時間[ns]である。
【0016】
図のように理想的な状態では、ノードAで発生した電位は、そのままノードBへと伝わる。
なお、たとえば特許文献1には、終端抵抗をオンチップ化して実装面積の縮小などを図った信号伝送回路が開示されている。
【特許文献1】特開平9−18326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、図14のような送受信システムにおいて、実際には伝送線路の特性インピーダンスは多少の誤差を含み、寄生容量により変化する。さらに、ポータブル機器に搭載される際に表面積縮小のため、プリント基板をメインと、サブに分け、その間をフレキシブル配線板で接続する場合がある。
【0018】
図18は、フレキシブル配線板を用いた伝送の様子を示す図である。
図14と同様の構成要素については同一符号としている。この図では、プリント基板500aをメインボードとしており、プリント基板500aは、フレキシブル配線板601を介してサブボードであるプリント基板602に接続している。そして、プリント基板602がケーブル501を介してプリント基板500bに接続している。
【0019】
図19は、図18の伝送線路部分を回路図で示した図である。
ここでは、図18のノードA,B間の伝送線路を特性インピーダンスで示している。
図15と同様に配線520aをインピーダンスZ0、ケーブル501をインピーダンスZ1、配線520bをインピーダンスZ2で示しているほか、フレキシブル配線板601をインピーダンスZ3、プリント基板602をインピーダンスZ4で示している。インピーダンスZ0,Z1,Z2,Z3,Z4には、低電圧電源端子VSSが接続されている。
【0020】
フレキシブル配線板601のインピーダンスZ3も所望の数値に整合させることが可能であるが、コストアップにつながるため、そうされないことがある。できあがったフレキシブル配線板601のインピーダンスZ3が偶然低いか、配線長が短ければ問題とならないが、インピーダンスZ3が高めになり配線長が長い場合には、伝送波形に影響を与えてしまう。
【0021】
図20は、ノードAからの送信動作の際の図18を模式化した図である。
図16,図19と同様の構成要素については同一符号としている。
この回路では、たとえば、インピーダンスZ0,Z1,Z2,Z4が45ohmに対して、フレキシブル配線板601のインピーダンスZ3が90ohmと高い場合を示している。この場合の送信波形は以下のようになる。
【0022】
図21は、図20の特性インピーダンスの伝送線路を用いた場合の送信信号及び受信信号を示す図であり、(A)は送信信号、(B)は受信信号を示す図である。
まず、図21(A)に示すノードAの初期電圧ΔV1は、プリント基板500aの配線520aのインピーダンスZ0(45ohm)と、ノードAに接続された抵抗Ra(45ohm)による並列抵抗(22.5ohm)による電圧降下により決まる。
【0023】
この電位はフレキシブル配線板601があることにより反射の影響を受けつつ、ノードBに到達する。ノードA,Bの電位はさらに反射波をうけ、だんだんと所定の電位に近づいていく。図21(B)では、簡易な波形で階段状になっているが、実際には波形の立ち上がりや降下が緩くなった状態として現われる。
【0024】
図22は、USB2.0のHigh Speed Modeでの伝送波形のアイ・パターンを示す図であり、(A)はフレキシブル配線板がない整合された伝送線路を用いた場合、(B)は特性インピーダンスの高いフレキシブル配線板を伝送線路として挿入した場合を示す図である。
【0025】
縦軸が電圧[V]、横軸が時間[ps]である。
図22(A)では、アイ・パターンは、規格のパターンに対してマージンのある波形形状をしている。ところが、特性インピーダンスの高いフレキシブル配線板を伝送線路として挿入した場合、図22(B)のように、波形の立ち上がり、降下の形状が緩くなりすぎて規格のパターンに対してマージンが無くなり、規格を満たさなくなってしまう問題があった。
【0026】
このような問題を解決する手法の1つに、図21(A)に示したような初期電圧ΔV1を広げる手法がある。初期電圧ΔV1をできるだけ広げることにより、受信端での伝送波形の傾斜が規格に引っ掛からないようにする。
【0027】
初期電圧ΔV1を広げるためには、たとえば、図16の定電流源514の電流Idを増やす方法があるが、消費電流の上昇を招き、低消費電力が求められているポータブル機器への搭載を考えると、望ましくない。また、終端抵抗である抵抗Raと、グランド間にスイッチを設けて、送信時には、終端抵抗をオフして、初期電圧ΔV1を広げることも考えられる。しかし、その場合、送信端であるノードAで終端抵抗がないオープン状態となるために、このポイントで信号は全反射してしまう問題があった。
【0028】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、伝送線路が規格を満たさない場合においても、伝送波形の規格を満足させることが可能なインタフェース回路及び送受信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明者は、制御信号に応じて、定電流源と信号線とを接続または不接続とするスイッチと、前記制御信号を生成するとともに、前記信号線に接続する終端抵抗の抵抗値を、信号送信時に信号受信時よりも大きくなるように制御する制御部と、を有することを特徴とするインタフェース回路を提案する。
【0030】
上記の構成によれば、制御部は信号送信時に、終端抵抗を信号受信時よりも大きくなるようにするので、伝送波形の初期電圧が大きくなり、インピーダンスの大きな伝送線路がある場合でも、伝送波形の規格を満たすことが可能になる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、信号送信時に終端抵抗が大きくなるように制御することで、伝送波形の初期電圧を増加させるので、特性インピーダンスが大きく、規格を満たしていない伝送線路があっても、定電流源で生成する電流値を増加させたり、信号送信時に送信側の終端抵抗を切り離して送信端をオープンにすることなく、伝送波形が規格を満たすようにすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1の実施の形態のインタフェース回路の概略を示す図である。
第1の実施の形態のインタフェース回路10は、定電流源11、スイッチ12、信号線13、制御部14、終端抵抗選択部15、抵抗R1,R2を有している。
【0033】
なお、図1のインタフェース回路10では、信号送信部分を主に図示しており、受信部分については図示を省略している。
定電流源11は、電源電圧端子VDDに接続されており、電流Idを生成する。
【0034】
スイッチ12は、定電流源11と信号線13とを、制御部14からの制御信号に応じて接続(オン)または不接続(オフ)とする。これによって、信号線13の電位は、オンのときはHレベル、オフのときはLレベルとなる。
【0035】
制御部14は、HレベルまたはLレベルを決定するための制御信号を生成するとともに、信号線13に接続する終端抵抗の抵抗値を選択信号により制御する。
図1では、終端抵抗の抵抗値は信号線13に対して並列に接続された抵抗R1,R2により決定される。抵抗R1は、たとえば、基準値であり、たとえば、伝送線路30,31,32のインピーダンスが45ohmで整合されている場合には、45ohmとし、送受信ともこの抵抗R1が終端抵抗として用いられる。抵抗R2は基準値よりも大きい抵抗値を有している。
【0036】
終端抵抗選択部15は、制御部14からの選択信号に応じて、終端抵抗として用いる抵抗R1,R2を選択する。終端抵抗選択部15は、制御部14からの選択信号に応じてオンまたはオフする2つのスイッチ15a,15bを有している。スイッチ15aは、抵抗R1とグランド間に接続されており、スイッチ15bは、抵抗R2とグランド間に接続されている。
【0037】
このようなインタフェース回路10は、信号線13と接続する伝送線路30,31,32を介してインタフェース回路20に接続している。伝送線路30,31,32は、プリント基板の配線や、ケーブル、フレキシブル配線板などである。
【0038】
なお、インタフェース回路20は、受信部分のみを示しており、伝送線路30,31,32に接続する信号線21と、一方の端子を信号線21に接続し、他方を接地した抵抗R3を有している。抵抗R3は終端抵抗であり、抵抗値は抵抗R1と等しい。なお、図1では3つの伝送線路30,31,32を示しているが、この数に限定されるものではない。
【0039】
このような送受信システムにおいて、伝送線路30,32の特性インピーダンスが基準値と同じ抵抗値で整合されているにもかかわらず、伝送線路31の特性インピーダンスが大きく、規格を満たしていない場合についての動作を説明する。
【0040】
インタフェース回路10の制御部14は、信号送信時に、終端抵抗が信号受信時よりも大きくなるようにする。具体的には、終端抵抗選択部15に対して、抵抗値の大きい抵抗R2を選択するための選択信号を送る。これにより、スイッチ15aはオフし、スイッチ15bはオンする。このとき伝送波形の初期電圧は伝送線路30の特性インピーダンスと、抵抗R2の抵抗値から決まる。抵抗R2の抵抗値は抵抗R1よりも大きいため、初期電圧を大きくすることができる。これにより、受信端でも初期電圧が増加する。これにより伝送波形が規格を満たせるようになる。
【0041】
つまり本実施の形態のインタフェース回路によれば、特性インピーダンスが大きく、規格を満たしていない伝送線路(たとえば、フレキシブル配線板など)があっても、定電流源11で生成する電流値を増加させたり、信号送信時に送信側の終端抵抗を切り離したりすることなく、伝送波形が規格を満たせるようになる。
【0042】
次に、第1の実施の形態のインタフェース回路及び送受信システムの詳細を説明する。
図2は、第1の実施の形態のインタフェース回路及び送受信システムの構成を示す図である。
【0043】
第1の実施の形態の送受信システムは、メインのプリント基板100,200がフレキシブル配線板300、サブのプリント基板301、ケーブル302によって接続されている構成からなっている。図2では、本発明に係るインタフェース回路110は、プリント基板100に搭載されており、プリント基板200に搭載されているインタフェース回路210は従来と同様としている。
【0044】
インタフェース回路110,210は、たとえば、それぞれ1チップのLSIにより実現される。
インタフェース回路110は、差動信号の送受信用に2つの送受信部110a,110bを有している。同様にインタフェース回路210も2つの送受信部210a,210bを有している。フレキシブル配線板300、プリント基板301、ケーブル302から構成される伝送線路は、プリント基板100の配線120a,120bによって、インタフェース回路110のそれぞれの送受信部110a,110bに接続されている。同様に、伝送線路は、プリント基板200の配線220a,220bによって、インタフェース回路210のそれぞれの送受信部210a,210bに接続されている。
【0045】
インタフェース回路110において、送受信部110a,110bの構成は同様であるので、以下では送受信部110aの構成を説明する。
送受信部110aは、制御部111、送信ドライバ回路112、受信ドライバ回路113、信号線114、終端抵抗選択部115、抵抗R10,R11を有している。
【0046】
制御部111は、送信するデータを指定するための信号を、端子DOUTから出力するとともに、アウトプットイネーブル信号を端子OEから、インプットイネーブル信号を端子IEから出力する。さらに、選択信号を端子SW0,SW1から出力する。また、DIN端子からデータを入力する。制御部111は、たとえば、信号送信状態なのか信号受信状態なのかを示す状態信号をインタフェース回路110の外部から入力し、状態信号に応じた選択信号を生成する。
【0047】
送信ドライバ回路112は、制御部111の端子DOUT,OEと接続されており、アウトプットイネーブル信号がアサートの場合に端子DOUTからの制御信号に従ってHレベルまたはLレベルのデータを出力する。送信ドライバ回路112の出力端子は、信号線114を介してプリント基板100の配線120aに接続されており、出力信号がプリント基板200側へ伝送される。
【0048】
受信ドライバ回路113は、信号線114を入力端子に接続しており、制御部111の端子IEから出力されるインプットイネーブル信号がアサートの場合に、受信したデータを端子DINに入力する。
【0049】
終端抵抗選択部115は、制御部111からの選択信号に応じて、終端抵抗として用いる抵抗R10,R11を選択する。具体的には、制御部111からの選択信号に応じてオンまたはオフする2つのスイッチ115a,115bを有している。スイッチ115aは、抵抗R10とグランド間に接続されており、スイッチ115bは、抵抗R11とグランド間に接続されている。スイッチ115a,115bは、MOSFET(Metallic Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などで構成される。
【0050】
インタフェース回路210において、送受信部210a,210bの構成は同様であるので、送受信部210aの構成のみ図示している。
送受信部210aは、インタフェース回路110の送受信部110aとの間で信号の送受信を行うものであり、制御部211、送信ドライバ回路212、受信ドライバ回路213、信号線214、抵抗R12を有している。
【0051】
制御部211は、送信するデータを指定するための信号を、端子DOUTから出力するとともに、アウトプットイネーブル信号を端子OEから、インプットイネーブル信号を端子IEから出力する。また、DIN端子からデータを入力する。
【0052】
送信ドライバ回路212は、制御部211の端子DOUT,OEと接続されており、アウトプットイネーブル信号がアサートの場合に端子DOUTからの信号に従ってデータを出力する。送信ドライバ回路212の出力端子は、信号線214を介してプリント基板200の配線220aに接続されており、出力信号がプリント基板100側へ伝送される。
【0053】
受信ドライバ回路213は、信号線214を入力端子に接続しており、制御部211の端子IEから出力されるインプットイネーブル信号がアサートの場合に、受信したデータを端子DINに入力する。
【0054】
抵抗R12は終端抵抗であり、送信ドライバ回路212の出力端子及び受信ドライバ回路213の入力端子に一方の端子を接続しており、他方の端子は接地されている。
なお、インタフェース回路110,210において、終端抵抗である抵抗R10,R12は同じ抵抗値を有し、抵抗R11の抵抗値は、抵抗R10,R12よりも大きい。
【0055】
上記のような送受信システムにおいて、フレキシブル配線板300のように、特性インピーダンスが規格よりも高い伝送線路がある場合、送受信部110aの制御部111は、終端抵抗選択部115に対して、信号受信時にはスイッチ115aをオンし、スイッチ115bをオフし、信号送信時にはスイッチ115aをオフし、スイッチ115bをオンさせるような選択信号を出力する。これにより、終端抵抗選択部115は、信号受信時には、抵抗R10と信号線114とを接続し、抵抗R11と信号線114の接続を切断することで、終端抵抗を抵抗R10とする。また、信号送信時には、抵抗R10と信号線114との接続を切断し、抵抗R11と信号線114とを接続することで、終端抵抗を抵抗R11とする。つまり、信号受信時よりも信号送信時のほうが、終端抵抗が大きくなるようにする。
【0056】
図3は、図2の伝送線路部分を回路図で示した図である。
ここでは、図2のノードA,B間の伝送線路を特性インピーダンスで示している。
図2の配線120aをインピーダンスZ10、フレキシブル配線板300をインピーダンスZ11、サブのプリント基板301をインピーダンスZ12、ケーブル302をインピーダンスZ13、配線220aをインピーダンスZ14で表している。インピーダンスZ10〜Z14には、低電圧電源端子VSSが接続されている。
【0057】
図4は、ノードAからの送信動作の際の第1の実施の形態の送受信システムを模式化した図である。
送信ドライバ回路112を、定電流源112−1とスイッチ112−2で表している。
【0058】
定電流源112−1は、電源電圧端子VDDと接続されており、電流Idを生成する。
スイッチ112−2は、図2の制御部111の端子DOUTからの制御信号に従ってオンまたはオフする。なお、端子OEからの信号については図示を省略している。
【0059】
図4では、伝送線路において、インピーダンスZ10,Z12,Z13,Z14が45ohmで整合されており、インピーダンスZ11が90ohmと、他より高い場合について示している。また、抵抗R10,R12が45ohm、抵抗R11が55ohmとしている。
【0060】
ノードA側からの送信の場合、伝送線路にインピーダンスZ11=90ohmと高いものがあるので、送信側であるノードAでは、スイッチ115bをオンにして終端抵抗をR11(55ohm)とする。定電流源112−1で生成する電流Id(17.8mA)は変えずに、終端抵抗を55ohmとすることで、初期電圧を決定する抵抗R11とインピーダンスZ10との並列抵抗の値は、24.75ohmとなる。これにより、発生する初期電圧は、送信側の終端抵抗を45ohmとした場合よりも10%アップする。
【0061】
図5は、第1の実施の形態の送受信システムにおける送信信号及び受信信号を示す図であり、(A)は送信信号、(B)は受信信号を示す図である。
縦軸が電圧[V]、横軸が時間[ns]である。
【0062】
図5(A)のように、ノードAでの初期電圧ΔV2は、送信端の終端抵抗を45ohmとした場合(図21の初期電圧ΔV1)よりも10%アップする。これにより、図5(B)のように、ノードBに到達する初期電圧もアップする。
【0063】
図6は、第1の実施の形態のインタフェース回路を適用したUSB2.0のHigh Speed Modeでの伝送波形のアイ・パターンのシミュレーション結果である。
縦軸が電圧[V]、横軸が時間[ps]である。
【0064】
初期電圧をアップすることにより、アイ・パターンは、図6のように規格を満たすことが可能になった。
つまり、第1の実施の形態の送受信システムによれば、図2のフレキシブル配線板300のように、特性インピーダンスが大きく、規格を満たしていない伝送線路があっても、定電流源112−1で生成する電流値を増加させたり、信号送信時に送信側の終端抵抗を切り離したりすることなく、伝送波形が規格を満たすようにすることが可能になる。
【0065】
ところで、送信の際に初期電圧を上げるために終端抵抗の抵抗値を上げると、DC(直流)的な電位は上昇する。それが規格を満足するのであれば問題ないが、たとえば、400mV±10%という規格がある場合に、初期電圧を上げると、規格を超えてしまう場合がある。これを防止するための送受信システム及びインタフェース回路を以下に説明する。
【0066】
図7は、第2の実施の形態のインタフェース回路の構成を示す図である。
第1の実施の形態のインタフェース回路110と同じ構成については同一符号としている。
【0067】
第2の実施の形態のインタフェース回路410の送受信部410a,410bは、3つの抵抗R20,R21,R22によって終端抵抗を決定している。終端抵抗選択部415は、抵抗R20とグランド間に接続されたスイッチ415a、抵抗R21とグランド間に接続されたスイッチ415b、抵抗R22とグランド間に接続されたスイッチ415cを有している。スイッチ415a,415b,415cは、制御部411の端子SW0,SW1,SW2から出力される選択信号によって、オンまたはオフされる。
【0068】
ここで、たとえば、抵抗R20の抵抗値は基準値であり、伝送線路が規格内の場合に、送信及び受信の際にスイッチ415aによって選択されて、信号線114に接続される。また、抵抗R21は、大きな特性インピーダンスを持つ規格外の伝送線路(たとえば、図2のフレキシブル配線板)がある場合に、送信の際にスイッチ415bによって選択されて、信号線114に接続される。抵抗R22は、受信の際に、送信側のインタフェース回路410で抵抗R21が選択された場合に、スイッチ415cによって選択されて信号線114に接続される。
【0069】
上記の場合、抵抗R20,R21,R22の抵抗値は、R22<R20<R21を満たしている。すなわち、送信側で大きい終端抵抗を選択した場合に、受信側では逆に小さい終端抵抗を選択している。
【0070】
第2の実施の形態の送受信システムでは、第1の実施の形態の送受信システムと異なり、図7のようなインタフェース回路410を送信側及び受信側、双方で用いる。
図8は、第2の実施の形態のインタフェース回路を用いた送受信システムを模式的に示した図である。送受信端であるノードA,B間の伝送線路は、図3と同じ構成としている。
【0071】
図7のインタフェース回路410を簡略化したものを左端に示しており、右端には、左端と同様の構成(送信ドライバ回路421、受信ドライバ回路422、スイッチ423a,423b,423c、抵抗R23,R24,R25)を示している。
【0072】
図9は、ノードAからの送信動作の際の第2の実施の形態の送受信システムを模式化した図である。
送信側の送信ドライバ回路112を、定電流源112−1と、スイッチ112−2で表している。受信側は抵抗R23,R24,R25及びスイッチ423a,423b,423cのみで表している。
【0073】
また、伝送線路において、インピーダンスZ10,Z12,Z13,Z14が45ohmで整合されており、インピーダンスZ11が90ohmと、他より高い場合について示している。また、抵抗R20,R23が45ohm、抵抗R21,R24が67.5ohm、抵抗R22,R25が33.8ohmとしている。
【0074】
ノードA側からの送信の場合、伝送線路にインピーダンスZ11が90ohmと高いものがあるので、送信側では、スイッチ415bをオンにして終端抵抗をR21(67.5ohm)とする。一方、受信側ではスイッチ423cをオンして終端抵抗をR25(33.8ohm)とする。このように送信側の終端抵抗の抵抗値を上げ、受信側では逆に下げる制御を行うことで、発生する初期電圧を上げることができるとともに、DC的な電位は変えずにすむので、規格が定める出力振幅にあわせることが可能となる。
【0075】
図10は、第2の実施の形態の送受信システムにおける送信信号及び受信信号を示す図であり、(A)は送信信号、(B)は受信信号を示す図である。
縦軸が電圧[V]、横軸が時間[ns]である。
【0076】
送信端の終端抵抗を67.5ohmとしたことで、初期電圧ΔV3は、送信端の終端抵抗を45ohmとした場合(図21の初期電圧ΔV1)よりも20%アップする。これにより、図10(B)のように、ノードBに到達する初期電圧もアップするが、受信端の終端抵抗を33.8ohmとしたことで、DC的な電位は図5(B)よりも低くなり、規格に適合したレベルに抑えることができる。
【0077】
なお、上記の第1の実施の形態のインタフェース回路110では、2つの抵抗R10,R11、第2の実施の形態のインタフェース回路410では、3つの抵抗R20,R21,R22の何れかをそれぞれ選択することで終端抵抗を決定していたが、抵抗の数は上記に限定されない。また、複数の抵抗を同時にオンして、その合成値で終端抵抗の抵抗値を決定するようにしてもよい。また、スイッチと抵抗の位置関係を逆にしてもよい。
【0078】
図11は、インタフェース回路の抵抗と終端抵抗選択部の他の例を示す図である。
抵抗R30,R31,R32,R33,R34,R35,R36は、一方の端子に信号線114を接続し、他方の端子はスイッチ431a,431b,431c,431d,431e,431f,431gを介してグランドに接続されている。
【0079】
スイッチ431a,431b,431c,431d,431e,431f,431gは、前述の制御部111,411の選択信号によってオンまたはオフされる。そして、オンになったスイッチに接続された抵抗により終端抵抗が決定される。たとえば、図のようにスイッチ431a,431b,431cがオンの場合、それらに接続された抵抗R30,R31,R32による並列抵抗によって終端抵抗の抵抗値が決まる。
【0080】
これにより、図2や図7などの場合よりも、細かい抵抗値の設定が可能となる。
また、上記では、送信ドライバ回路112の定電流源112−1を電源電圧端子VDDに接続し、終端抵抗を信号線とグランド間に接続する方式で説明を行ってきたが、この方式に限定されない。
【0081】
図12,13は、送信ドライバ回路と、終端抵抗の接続構成例を示す図である。
図12では、定電流源112−1をグランド側に設け、終端抵抗を決定する複数の抵抗R40,R41,R42をスイッチ441a,441b,441cを介して電源電圧端子VTTに接続している。
【0082】
また、図13では、電流Id1を生成する定電流源112−1aを電源電圧端子VDDに接続し、電流Id2を生成する定電流源112−1bをグランドに接続しており、それぞれスイッチ112−2a,112−2bを介して信号線114に接続している。また、終端抵抗を決定する複数の抵抗R40,R41,R42をスイッチ441a,441b,441cを介して電源電圧端子VTTに接続している。
【0083】
上記のような構成にても、本発明は同様に適用可能である。
なお、上記の抵抗値や電流値などはあくまで一例にすぎず、この値に限定されるものではない。
【0084】
(付記1) 制御信号に応じて、定電流源と信号線とを接続または不接続とするスイッチと、
前記制御信号を生成するとともに、前記信号線に接続する終端抵抗の抵抗値を、信号送信時に信号受信時よりも大きくなるように制御する制御部と、
を有することを特徴とするインタフェース回路。
【0085】
(付記2) 前記終端抵抗は前記信号線に対して並列に接続された、基準値を示す第1の抵抗と、前記基準値よりも大きい抵抗値を有する第2の抵抗を有し、
前記制御部からの選択信号に応じて、終端抵抗として、信号受信時には前記第1の抵抗を選択し、信号送信時は前記第2の抵抗を選択する終端抵抗選択部を有することを特徴とする付記1記載のインタフェース回路。
【0086】
(付記3) 前記終端抵抗は前記信号線に対して並列に接続された、基準値よりも大きい抵抗値を有する第1の抵抗と、前記基準値よりも小さい抵抗値を有する第2の抵抗を有し、
前記制御部からの選択信号に応じて、終端抵抗として、信号受信時には前記第2の抵抗を選択し、信号送信時は前記第1の抵抗を選択する終端抵抗選択部を有することを特徴とする付記1記載のインタフェース回路。
【0087】
(付記4) 前記終端抵抗は前記信号線に対して並列に接続された複数の抵抗を有し、
前記制御部からの選択信号に応じて、電流を流す前記抵抗を選択することで、前記終端抵抗の抵抗値を決定する終端抵抗選択部を有することを特徴とする付記1記載のインタフェース回路。
【0088】
(付記5) 前記定電流源は電源電圧端子に接続され、前記終端抵抗は前記信号線とグランド間に接続されていることを特徴とする付記1乃至4の何れか一項に記載のインタフェース回路。
【0089】
(付記6) 前記定電流源は接地されており、前記終端抵抗は前記信号線と前記電源電圧端子との間に接続されていることを特徴とする付記1乃至5の何れか一項に記載のインタフェース回路。
【0090】
(付記7) 前記定電流源は前記電源電圧端子に接続された第1の定電流源と、接地された第2の定電流源からなり、前記終端抵抗は前記信号線と他の電源電圧端子との間に接続されていることを特徴とする付記1乃至6の何れか一項に記載のインタフェース回路。
【0091】
(付記8) 複数のインタフェース回路が伝送線路を介して接続された送受信システムにおいて、
制御信号に応じて、定電流源と信号線とを接続または不接続とするスイッチと、前記制御信号を生成するとともに、前記信号線に接続する終端抵抗の抵抗値を、信号送信時に信号受信時よりも大きくなるように制御する制御部と、を有するインタフェース回路を具備した送受信システム。
【0092】
(付記9) 送信側の前記インタフェース回路の前記制御部は、前記終端抵抗の抵抗値を基準値よりも大きくなるように制御し、受信側の前記インタフェース回路の前記制御部は、前記終端抵抗の抵抗値を前記基準値よりも小さくなるように制御することを特徴とする付記8記載の送受信システム。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】第1の実施の形態のインタフェース回路の概略を示す図である。
【図2】第1の実施の形態のインタフェース回路及び送受信システムの構成を示す図である。
【図3】図2の伝送線路部分を回路図で示した図である。
【図4】ノードAからの送信動作の際の第1の実施の形態の送受信システムを模式化した図である。
【図5】第1の実施の形態の送受信システムにおける送信信号及び受信信号を示す図であり、(A)は送信信号、(B)は受信信号を示す図である。
【図6】第1の実施の形態のインタフェース回路を適用したUSB2.0のHigh Speed Modeでの伝送波形のアイ・パターンのシミュレーション結果である。
【図7】第2の実施の形態のインタフェース回路の構成を示す図である。
【図8】第2の実施の形態のインタフェース回路を用いた送受信システムを模式的に示した図である。
【図9】ノードAからの送信動作の際の第2の実施の形態の送受信システムを模式化した図である。
【図10】第2の実施の形態の送受信システムにおける送信信号及び受信信号を示す図であり、(A)は送信信号、(B)は受信信号を示す図である。
【図11】インタフェース回路の抵抗と終端抵抗選択部の他の例を示す図である。
【図12】送信ドライバ回路と、終端抵抗の接続構成例を示す図である(その1)。
【図13】送信ドライバ回路と、終端抵抗の接続構成例を示す図である(その2)。
【図14】従来の送受信システムの構成を示す図である。
【図15】図14の伝送線路部分を回路図で示した図である。
【図16】ノードAからの送信動作の際の送受信システムを模式化した図である。
【図17】送信信号及び受信信号を示す図であり、(A)は送信信号、(B)は受信信号を示す図である。
【図18】フレキシブル配線板を用いた伝送の様子を示す図である。
【図19】図18の伝送線路部分を回路図で示した図である。
【図20】ノードAからの送信動作の際の図18を模式化した図である。
【図21】図20の特性インピーダンスの伝送線路を用いた場合の送信信号及び受信信号を示す図であり、(A)は送信信号、(B)は受信信号を示す図である。
【図22】USB2.0のHigh Speed Modeでの伝送波形のアイ・パターンを示す図であり、(A)はフレキシブル配線板がない整合された伝送線路を用いた場合、(B)は特性インピーダンスの高いフレキシブル配線板を伝送線路として挿入した場合を示す図である。
【符号の説明】
【0094】
10,20 インタフェース回路
11 定電流源
12,15a,15b スイッチ
13,21 信号線
14 制御部
15 終端抵抗選択部
30,31,32 伝送線路
【技術分野】
【0001】
本発明は高速にデータの送受信を行うインタフェース回路及び送受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PC(Personal Computer)、HDD(Hard Disk Drive)、デジタルカメラ、携帯型デジタルオーディオ機器間などで、高速にデータの送受信が可能となるUSB(Universal Serial Bus)2.0やS−ATA(Serial-AT Attachment)といったインタフェースの規格が知られている。
【0003】
規格にはデータ伝送を保証するための仕様が存在し、それに基づいてプリント基板などの基板上に配線される伝送線路が設計される。一方で、民生品などではコスト的な観点から、規格が定める伝送線路の仕様を厳密に守ることができない場合もある。そのような場合においても、仕様が定める交流(AC)特性(ACスペック)を満足するようなインタフェース回路の提供が求められている。
【0004】
図14は、従来の送受信システムの構成を示す図である。
プリント基板500a,500bがケーブル501で接続されている構成を示している。
【0005】
プリント基板500a,500bにはLSI(Large Scale Integrated circuit)チップ510a,510bが搭載されている。以下、LSIチップ510a,510bをインタフェース回路510a,510bと呼ぶが、プリント基板500a,500bを含んだものをインタフェース回路と考えることもできる。
【0006】
ケーブル501とインタフェース回路510aとはプリント基板500aの配線520aによって接続されている。また、ケーブル501とインタフェース回路510bとはプリント基板500bの配線520bによって接続されている。
【0007】
インタフェース回路510aは、制御部511a、送信ドライバ回路512a、受信ドライバ回路513a、抵抗Raを有している。
制御部511aは、送信するデータを指定するための信号を、端子DOUTから出力するとともに、アウトプットイネーブル信号を端子OEから、インプットイネーブル信号を端子IEから出力する。また、DIN端子からデータを入力する。
【0008】
送信ドライバ回路512aは、制御部511aの端子DOUT,OEと接続されており、アウトプットイネーブル信号がアサートの場合に端子DOUTからの信号に従ってデータを出力する。送信ドライバ回路512aの出力端子は、配線520aに接続されており、出力信号が伝送される。
【0009】
受信ドライバ回路513aは、制御部511aの端子IEから出力されるインプットイネーブル信号がアサートの場合に、受信したデータを端子DINに入力する。
抵抗Raは終端抵抗であり、送信ドライバ回路512aの出力端子及び受信ドライバ回路513aの入力端子に一方の端子を接続しており、他方の端子は接地されている。
【0010】
インタフェース回路510bは、インタフェース回路510aと同様の構成であり、制御部511b、送信ドライバ回路512b、受信ドライバ回路513b、抵抗Rbを有している。
【0011】
インタフェース回路510a,510bにおいて、終端抵抗である抵抗Ra,Rbは同じ抵抗値を有する。
なお、上記では図示を簡略化するため、1つの信号経路を示しているが、高速なデータの送受信を行うインタフェース回路では、一対の差動信号でデータの送受信を行っている。その場合、インタフェース回路510a,510bの各構成要素が2つずつ設けられた構成となる。
【0012】
図15は、図14の伝送線路部分を回路図で示した図である。
ここでは、図14のノードA,B間の伝送線路を特性インピーダンスで示している。
図14の配線520aをインピーダンスZ0、ケーブル501をインピーダンスZ1、配線520bをインピーダンスZ2で示している。インピーダンスZ0,Z1,Z2には、低電圧電源端子VSSが接続されている。
【0013】
図16は、ノードAからの送信動作の際の送受信システムを模式化した図である。
送信ドライバ回路512aを、定電流源514と、スイッチ515で表している。
定電流源514は、電源電圧端子VDDと接続されており、電流Idを生成する。
【0014】
スイッチ515は、図14の制御部511aの端子DOUTからの信号に従ってオンまたはオフする。なお、端子OEからの信号については図示を省略している。
この回路において、たとえば、インピーダンスZ0,Z1,Z2が45ohmで整合されているならば、ノードA及びノードBでの配線端の抵抗Ra,Rbは、45ohmで終端される。定電流源514が生成する電流Idが理想的に17.8mAを流すとするならば、抵抗Raによる電圧降下でH(High)レベルは400mV、L(Low)レベルは0Vとなる。
【0015】
図17は、送信信号及び受信信号を示す図であり、(A)は送信信号、(B)は受信信号を示す図である。
縦軸が電圧[V]、横軸が時間[ns]である。
【0016】
図のように理想的な状態では、ノードAで発生した電位は、そのままノードBへと伝わる。
なお、たとえば特許文献1には、終端抵抗をオンチップ化して実装面積の縮小などを図った信号伝送回路が開示されている。
【特許文献1】特開平9−18326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、図14のような送受信システムにおいて、実際には伝送線路の特性インピーダンスは多少の誤差を含み、寄生容量により変化する。さらに、ポータブル機器に搭載される際に表面積縮小のため、プリント基板をメインと、サブに分け、その間をフレキシブル配線板で接続する場合がある。
【0018】
図18は、フレキシブル配線板を用いた伝送の様子を示す図である。
図14と同様の構成要素については同一符号としている。この図では、プリント基板500aをメインボードとしており、プリント基板500aは、フレキシブル配線板601を介してサブボードであるプリント基板602に接続している。そして、プリント基板602がケーブル501を介してプリント基板500bに接続している。
【0019】
図19は、図18の伝送線路部分を回路図で示した図である。
ここでは、図18のノードA,B間の伝送線路を特性インピーダンスで示している。
図15と同様に配線520aをインピーダンスZ0、ケーブル501をインピーダンスZ1、配線520bをインピーダンスZ2で示しているほか、フレキシブル配線板601をインピーダンスZ3、プリント基板602をインピーダンスZ4で示している。インピーダンスZ0,Z1,Z2,Z3,Z4には、低電圧電源端子VSSが接続されている。
【0020】
フレキシブル配線板601のインピーダンスZ3も所望の数値に整合させることが可能であるが、コストアップにつながるため、そうされないことがある。できあがったフレキシブル配線板601のインピーダンスZ3が偶然低いか、配線長が短ければ問題とならないが、インピーダンスZ3が高めになり配線長が長い場合には、伝送波形に影響を与えてしまう。
【0021】
図20は、ノードAからの送信動作の際の図18を模式化した図である。
図16,図19と同様の構成要素については同一符号としている。
この回路では、たとえば、インピーダンスZ0,Z1,Z2,Z4が45ohmに対して、フレキシブル配線板601のインピーダンスZ3が90ohmと高い場合を示している。この場合の送信波形は以下のようになる。
【0022】
図21は、図20の特性インピーダンスの伝送線路を用いた場合の送信信号及び受信信号を示す図であり、(A)は送信信号、(B)は受信信号を示す図である。
まず、図21(A)に示すノードAの初期電圧ΔV1は、プリント基板500aの配線520aのインピーダンスZ0(45ohm)と、ノードAに接続された抵抗Ra(45ohm)による並列抵抗(22.5ohm)による電圧降下により決まる。
【0023】
この電位はフレキシブル配線板601があることにより反射の影響を受けつつ、ノードBに到達する。ノードA,Bの電位はさらに反射波をうけ、だんだんと所定の電位に近づいていく。図21(B)では、簡易な波形で階段状になっているが、実際には波形の立ち上がりや降下が緩くなった状態として現われる。
【0024】
図22は、USB2.0のHigh Speed Modeでの伝送波形のアイ・パターンを示す図であり、(A)はフレキシブル配線板がない整合された伝送線路を用いた場合、(B)は特性インピーダンスの高いフレキシブル配線板を伝送線路として挿入した場合を示す図である。
【0025】
縦軸が電圧[V]、横軸が時間[ps]である。
図22(A)では、アイ・パターンは、規格のパターンに対してマージンのある波形形状をしている。ところが、特性インピーダンスの高いフレキシブル配線板を伝送線路として挿入した場合、図22(B)のように、波形の立ち上がり、降下の形状が緩くなりすぎて規格のパターンに対してマージンが無くなり、規格を満たさなくなってしまう問題があった。
【0026】
このような問題を解決する手法の1つに、図21(A)に示したような初期電圧ΔV1を広げる手法がある。初期電圧ΔV1をできるだけ広げることにより、受信端での伝送波形の傾斜が規格に引っ掛からないようにする。
【0027】
初期電圧ΔV1を広げるためには、たとえば、図16の定電流源514の電流Idを増やす方法があるが、消費電流の上昇を招き、低消費電力が求められているポータブル機器への搭載を考えると、望ましくない。また、終端抵抗である抵抗Raと、グランド間にスイッチを設けて、送信時には、終端抵抗をオフして、初期電圧ΔV1を広げることも考えられる。しかし、その場合、送信端であるノードAで終端抵抗がないオープン状態となるために、このポイントで信号は全反射してしまう問題があった。
【0028】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、伝送線路が規格を満たさない場合においても、伝送波形の規格を満足させることが可能なインタフェース回路及び送受信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明者は、制御信号に応じて、定電流源と信号線とを接続または不接続とするスイッチと、前記制御信号を生成するとともに、前記信号線に接続する終端抵抗の抵抗値を、信号送信時に信号受信時よりも大きくなるように制御する制御部と、を有することを特徴とするインタフェース回路を提案する。
【0030】
上記の構成によれば、制御部は信号送信時に、終端抵抗を信号受信時よりも大きくなるようにするので、伝送波形の初期電圧が大きくなり、インピーダンスの大きな伝送線路がある場合でも、伝送波形の規格を満たすことが可能になる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、信号送信時に終端抵抗が大きくなるように制御することで、伝送波形の初期電圧を増加させるので、特性インピーダンスが大きく、規格を満たしていない伝送線路があっても、定電流源で生成する電流値を増加させたり、信号送信時に送信側の終端抵抗を切り離して送信端をオープンにすることなく、伝送波形が規格を満たすようにすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1の実施の形態のインタフェース回路の概略を示す図である。
第1の実施の形態のインタフェース回路10は、定電流源11、スイッチ12、信号線13、制御部14、終端抵抗選択部15、抵抗R1,R2を有している。
【0033】
なお、図1のインタフェース回路10では、信号送信部分を主に図示しており、受信部分については図示を省略している。
定電流源11は、電源電圧端子VDDに接続されており、電流Idを生成する。
【0034】
スイッチ12は、定電流源11と信号線13とを、制御部14からの制御信号に応じて接続(オン)または不接続(オフ)とする。これによって、信号線13の電位は、オンのときはHレベル、オフのときはLレベルとなる。
【0035】
制御部14は、HレベルまたはLレベルを決定するための制御信号を生成するとともに、信号線13に接続する終端抵抗の抵抗値を選択信号により制御する。
図1では、終端抵抗の抵抗値は信号線13に対して並列に接続された抵抗R1,R2により決定される。抵抗R1は、たとえば、基準値であり、たとえば、伝送線路30,31,32のインピーダンスが45ohmで整合されている場合には、45ohmとし、送受信ともこの抵抗R1が終端抵抗として用いられる。抵抗R2は基準値よりも大きい抵抗値を有している。
【0036】
終端抵抗選択部15は、制御部14からの選択信号に応じて、終端抵抗として用いる抵抗R1,R2を選択する。終端抵抗選択部15は、制御部14からの選択信号に応じてオンまたはオフする2つのスイッチ15a,15bを有している。スイッチ15aは、抵抗R1とグランド間に接続されており、スイッチ15bは、抵抗R2とグランド間に接続されている。
【0037】
このようなインタフェース回路10は、信号線13と接続する伝送線路30,31,32を介してインタフェース回路20に接続している。伝送線路30,31,32は、プリント基板の配線や、ケーブル、フレキシブル配線板などである。
【0038】
なお、インタフェース回路20は、受信部分のみを示しており、伝送線路30,31,32に接続する信号線21と、一方の端子を信号線21に接続し、他方を接地した抵抗R3を有している。抵抗R3は終端抵抗であり、抵抗値は抵抗R1と等しい。なお、図1では3つの伝送線路30,31,32を示しているが、この数に限定されるものではない。
【0039】
このような送受信システムにおいて、伝送線路30,32の特性インピーダンスが基準値と同じ抵抗値で整合されているにもかかわらず、伝送線路31の特性インピーダンスが大きく、規格を満たしていない場合についての動作を説明する。
【0040】
インタフェース回路10の制御部14は、信号送信時に、終端抵抗が信号受信時よりも大きくなるようにする。具体的には、終端抵抗選択部15に対して、抵抗値の大きい抵抗R2を選択するための選択信号を送る。これにより、スイッチ15aはオフし、スイッチ15bはオンする。このとき伝送波形の初期電圧は伝送線路30の特性インピーダンスと、抵抗R2の抵抗値から決まる。抵抗R2の抵抗値は抵抗R1よりも大きいため、初期電圧を大きくすることができる。これにより、受信端でも初期電圧が増加する。これにより伝送波形が規格を満たせるようになる。
【0041】
つまり本実施の形態のインタフェース回路によれば、特性インピーダンスが大きく、規格を満たしていない伝送線路(たとえば、フレキシブル配線板など)があっても、定電流源11で生成する電流値を増加させたり、信号送信時に送信側の終端抵抗を切り離したりすることなく、伝送波形が規格を満たせるようになる。
【0042】
次に、第1の実施の形態のインタフェース回路及び送受信システムの詳細を説明する。
図2は、第1の実施の形態のインタフェース回路及び送受信システムの構成を示す図である。
【0043】
第1の実施の形態の送受信システムは、メインのプリント基板100,200がフレキシブル配線板300、サブのプリント基板301、ケーブル302によって接続されている構成からなっている。図2では、本発明に係るインタフェース回路110は、プリント基板100に搭載されており、プリント基板200に搭載されているインタフェース回路210は従来と同様としている。
【0044】
インタフェース回路110,210は、たとえば、それぞれ1チップのLSIにより実現される。
インタフェース回路110は、差動信号の送受信用に2つの送受信部110a,110bを有している。同様にインタフェース回路210も2つの送受信部210a,210bを有している。フレキシブル配線板300、プリント基板301、ケーブル302から構成される伝送線路は、プリント基板100の配線120a,120bによって、インタフェース回路110のそれぞれの送受信部110a,110bに接続されている。同様に、伝送線路は、プリント基板200の配線220a,220bによって、インタフェース回路210のそれぞれの送受信部210a,210bに接続されている。
【0045】
インタフェース回路110において、送受信部110a,110bの構成は同様であるので、以下では送受信部110aの構成を説明する。
送受信部110aは、制御部111、送信ドライバ回路112、受信ドライバ回路113、信号線114、終端抵抗選択部115、抵抗R10,R11を有している。
【0046】
制御部111は、送信するデータを指定するための信号を、端子DOUTから出力するとともに、アウトプットイネーブル信号を端子OEから、インプットイネーブル信号を端子IEから出力する。さらに、選択信号を端子SW0,SW1から出力する。また、DIN端子からデータを入力する。制御部111は、たとえば、信号送信状態なのか信号受信状態なのかを示す状態信号をインタフェース回路110の外部から入力し、状態信号に応じた選択信号を生成する。
【0047】
送信ドライバ回路112は、制御部111の端子DOUT,OEと接続されており、アウトプットイネーブル信号がアサートの場合に端子DOUTからの制御信号に従ってHレベルまたはLレベルのデータを出力する。送信ドライバ回路112の出力端子は、信号線114を介してプリント基板100の配線120aに接続されており、出力信号がプリント基板200側へ伝送される。
【0048】
受信ドライバ回路113は、信号線114を入力端子に接続しており、制御部111の端子IEから出力されるインプットイネーブル信号がアサートの場合に、受信したデータを端子DINに入力する。
【0049】
終端抵抗選択部115は、制御部111からの選択信号に応じて、終端抵抗として用いる抵抗R10,R11を選択する。具体的には、制御部111からの選択信号に応じてオンまたはオフする2つのスイッチ115a,115bを有している。スイッチ115aは、抵抗R10とグランド間に接続されており、スイッチ115bは、抵抗R11とグランド間に接続されている。スイッチ115a,115bは、MOSFET(Metallic Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などで構成される。
【0050】
インタフェース回路210において、送受信部210a,210bの構成は同様であるので、送受信部210aの構成のみ図示している。
送受信部210aは、インタフェース回路110の送受信部110aとの間で信号の送受信を行うものであり、制御部211、送信ドライバ回路212、受信ドライバ回路213、信号線214、抵抗R12を有している。
【0051】
制御部211は、送信するデータを指定するための信号を、端子DOUTから出力するとともに、アウトプットイネーブル信号を端子OEから、インプットイネーブル信号を端子IEから出力する。また、DIN端子からデータを入力する。
【0052】
送信ドライバ回路212は、制御部211の端子DOUT,OEと接続されており、アウトプットイネーブル信号がアサートの場合に端子DOUTからの信号に従ってデータを出力する。送信ドライバ回路212の出力端子は、信号線214を介してプリント基板200の配線220aに接続されており、出力信号がプリント基板100側へ伝送される。
【0053】
受信ドライバ回路213は、信号線214を入力端子に接続しており、制御部211の端子IEから出力されるインプットイネーブル信号がアサートの場合に、受信したデータを端子DINに入力する。
【0054】
抵抗R12は終端抵抗であり、送信ドライバ回路212の出力端子及び受信ドライバ回路213の入力端子に一方の端子を接続しており、他方の端子は接地されている。
なお、インタフェース回路110,210において、終端抵抗である抵抗R10,R12は同じ抵抗値を有し、抵抗R11の抵抗値は、抵抗R10,R12よりも大きい。
【0055】
上記のような送受信システムにおいて、フレキシブル配線板300のように、特性インピーダンスが規格よりも高い伝送線路がある場合、送受信部110aの制御部111は、終端抵抗選択部115に対して、信号受信時にはスイッチ115aをオンし、スイッチ115bをオフし、信号送信時にはスイッチ115aをオフし、スイッチ115bをオンさせるような選択信号を出力する。これにより、終端抵抗選択部115は、信号受信時には、抵抗R10と信号線114とを接続し、抵抗R11と信号線114の接続を切断することで、終端抵抗を抵抗R10とする。また、信号送信時には、抵抗R10と信号線114との接続を切断し、抵抗R11と信号線114とを接続することで、終端抵抗を抵抗R11とする。つまり、信号受信時よりも信号送信時のほうが、終端抵抗が大きくなるようにする。
【0056】
図3は、図2の伝送線路部分を回路図で示した図である。
ここでは、図2のノードA,B間の伝送線路を特性インピーダンスで示している。
図2の配線120aをインピーダンスZ10、フレキシブル配線板300をインピーダンスZ11、サブのプリント基板301をインピーダンスZ12、ケーブル302をインピーダンスZ13、配線220aをインピーダンスZ14で表している。インピーダンスZ10〜Z14には、低電圧電源端子VSSが接続されている。
【0057】
図4は、ノードAからの送信動作の際の第1の実施の形態の送受信システムを模式化した図である。
送信ドライバ回路112を、定電流源112−1とスイッチ112−2で表している。
【0058】
定電流源112−1は、電源電圧端子VDDと接続されており、電流Idを生成する。
スイッチ112−2は、図2の制御部111の端子DOUTからの制御信号に従ってオンまたはオフする。なお、端子OEからの信号については図示を省略している。
【0059】
図4では、伝送線路において、インピーダンスZ10,Z12,Z13,Z14が45ohmで整合されており、インピーダンスZ11が90ohmと、他より高い場合について示している。また、抵抗R10,R12が45ohm、抵抗R11が55ohmとしている。
【0060】
ノードA側からの送信の場合、伝送線路にインピーダンスZ11=90ohmと高いものがあるので、送信側であるノードAでは、スイッチ115bをオンにして終端抵抗をR11(55ohm)とする。定電流源112−1で生成する電流Id(17.8mA)は変えずに、終端抵抗を55ohmとすることで、初期電圧を決定する抵抗R11とインピーダンスZ10との並列抵抗の値は、24.75ohmとなる。これにより、発生する初期電圧は、送信側の終端抵抗を45ohmとした場合よりも10%アップする。
【0061】
図5は、第1の実施の形態の送受信システムにおける送信信号及び受信信号を示す図であり、(A)は送信信号、(B)は受信信号を示す図である。
縦軸が電圧[V]、横軸が時間[ns]である。
【0062】
図5(A)のように、ノードAでの初期電圧ΔV2は、送信端の終端抵抗を45ohmとした場合(図21の初期電圧ΔV1)よりも10%アップする。これにより、図5(B)のように、ノードBに到達する初期電圧もアップする。
【0063】
図6は、第1の実施の形態のインタフェース回路を適用したUSB2.0のHigh Speed Modeでの伝送波形のアイ・パターンのシミュレーション結果である。
縦軸が電圧[V]、横軸が時間[ps]である。
【0064】
初期電圧をアップすることにより、アイ・パターンは、図6のように規格を満たすことが可能になった。
つまり、第1の実施の形態の送受信システムによれば、図2のフレキシブル配線板300のように、特性インピーダンスが大きく、規格を満たしていない伝送線路があっても、定電流源112−1で生成する電流値を増加させたり、信号送信時に送信側の終端抵抗を切り離したりすることなく、伝送波形が規格を満たすようにすることが可能になる。
【0065】
ところで、送信の際に初期電圧を上げるために終端抵抗の抵抗値を上げると、DC(直流)的な電位は上昇する。それが規格を満足するのであれば問題ないが、たとえば、400mV±10%という規格がある場合に、初期電圧を上げると、規格を超えてしまう場合がある。これを防止するための送受信システム及びインタフェース回路を以下に説明する。
【0066】
図7は、第2の実施の形態のインタフェース回路の構成を示す図である。
第1の実施の形態のインタフェース回路110と同じ構成については同一符号としている。
【0067】
第2の実施の形態のインタフェース回路410の送受信部410a,410bは、3つの抵抗R20,R21,R22によって終端抵抗を決定している。終端抵抗選択部415は、抵抗R20とグランド間に接続されたスイッチ415a、抵抗R21とグランド間に接続されたスイッチ415b、抵抗R22とグランド間に接続されたスイッチ415cを有している。スイッチ415a,415b,415cは、制御部411の端子SW0,SW1,SW2から出力される選択信号によって、オンまたはオフされる。
【0068】
ここで、たとえば、抵抗R20の抵抗値は基準値であり、伝送線路が規格内の場合に、送信及び受信の際にスイッチ415aによって選択されて、信号線114に接続される。また、抵抗R21は、大きな特性インピーダンスを持つ規格外の伝送線路(たとえば、図2のフレキシブル配線板)がある場合に、送信の際にスイッチ415bによって選択されて、信号線114に接続される。抵抗R22は、受信の際に、送信側のインタフェース回路410で抵抗R21が選択された場合に、スイッチ415cによって選択されて信号線114に接続される。
【0069】
上記の場合、抵抗R20,R21,R22の抵抗値は、R22<R20<R21を満たしている。すなわち、送信側で大きい終端抵抗を選択した場合に、受信側では逆に小さい終端抵抗を選択している。
【0070】
第2の実施の形態の送受信システムでは、第1の実施の形態の送受信システムと異なり、図7のようなインタフェース回路410を送信側及び受信側、双方で用いる。
図8は、第2の実施の形態のインタフェース回路を用いた送受信システムを模式的に示した図である。送受信端であるノードA,B間の伝送線路は、図3と同じ構成としている。
【0071】
図7のインタフェース回路410を簡略化したものを左端に示しており、右端には、左端と同様の構成(送信ドライバ回路421、受信ドライバ回路422、スイッチ423a,423b,423c、抵抗R23,R24,R25)を示している。
【0072】
図9は、ノードAからの送信動作の際の第2の実施の形態の送受信システムを模式化した図である。
送信側の送信ドライバ回路112を、定電流源112−1と、スイッチ112−2で表している。受信側は抵抗R23,R24,R25及びスイッチ423a,423b,423cのみで表している。
【0073】
また、伝送線路において、インピーダンスZ10,Z12,Z13,Z14が45ohmで整合されており、インピーダンスZ11が90ohmと、他より高い場合について示している。また、抵抗R20,R23が45ohm、抵抗R21,R24が67.5ohm、抵抗R22,R25が33.8ohmとしている。
【0074】
ノードA側からの送信の場合、伝送線路にインピーダンスZ11が90ohmと高いものがあるので、送信側では、スイッチ415bをオンにして終端抵抗をR21(67.5ohm)とする。一方、受信側ではスイッチ423cをオンして終端抵抗をR25(33.8ohm)とする。このように送信側の終端抵抗の抵抗値を上げ、受信側では逆に下げる制御を行うことで、発生する初期電圧を上げることができるとともに、DC的な電位は変えずにすむので、規格が定める出力振幅にあわせることが可能となる。
【0075】
図10は、第2の実施の形態の送受信システムにおける送信信号及び受信信号を示す図であり、(A)は送信信号、(B)は受信信号を示す図である。
縦軸が電圧[V]、横軸が時間[ns]である。
【0076】
送信端の終端抵抗を67.5ohmとしたことで、初期電圧ΔV3は、送信端の終端抵抗を45ohmとした場合(図21の初期電圧ΔV1)よりも20%アップする。これにより、図10(B)のように、ノードBに到達する初期電圧もアップするが、受信端の終端抵抗を33.8ohmとしたことで、DC的な電位は図5(B)よりも低くなり、規格に適合したレベルに抑えることができる。
【0077】
なお、上記の第1の実施の形態のインタフェース回路110では、2つの抵抗R10,R11、第2の実施の形態のインタフェース回路410では、3つの抵抗R20,R21,R22の何れかをそれぞれ選択することで終端抵抗を決定していたが、抵抗の数は上記に限定されない。また、複数の抵抗を同時にオンして、その合成値で終端抵抗の抵抗値を決定するようにしてもよい。また、スイッチと抵抗の位置関係を逆にしてもよい。
【0078】
図11は、インタフェース回路の抵抗と終端抵抗選択部の他の例を示す図である。
抵抗R30,R31,R32,R33,R34,R35,R36は、一方の端子に信号線114を接続し、他方の端子はスイッチ431a,431b,431c,431d,431e,431f,431gを介してグランドに接続されている。
【0079】
スイッチ431a,431b,431c,431d,431e,431f,431gは、前述の制御部111,411の選択信号によってオンまたはオフされる。そして、オンになったスイッチに接続された抵抗により終端抵抗が決定される。たとえば、図のようにスイッチ431a,431b,431cがオンの場合、それらに接続された抵抗R30,R31,R32による並列抵抗によって終端抵抗の抵抗値が決まる。
【0080】
これにより、図2や図7などの場合よりも、細かい抵抗値の設定が可能となる。
また、上記では、送信ドライバ回路112の定電流源112−1を電源電圧端子VDDに接続し、終端抵抗を信号線とグランド間に接続する方式で説明を行ってきたが、この方式に限定されない。
【0081】
図12,13は、送信ドライバ回路と、終端抵抗の接続構成例を示す図である。
図12では、定電流源112−1をグランド側に設け、終端抵抗を決定する複数の抵抗R40,R41,R42をスイッチ441a,441b,441cを介して電源電圧端子VTTに接続している。
【0082】
また、図13では、電流Id1を生成する定電流源112−1aを電源電圧端子VDDに接続し、電流Id2を生成する定電流源112−1bをグランドに接続しており、それぞれスイッチ112−2a,112−2bを介して信号線114に接続している。また、終端抵抗を決定する複数の抵抗R40,R41,R42をスイッチ441a,441b,441cを介して電源電圧端子VTTに接続している。
【0083】
上記のような構成にても、本発明は同様に適用可能である。
なお、上記の抵抗値や電流値などはあくまで一例にすぎず、この値に限定されるものではない。
【0084】
(付記1) 制御信号に応じて、定電流源と信号線とを接続または不接続とするスイッチと、
前記制御信号を生成するとともに、前記信号線に接続する終端抵抗の抵抗値を、信号送信時に信号受信時よりも大きくなるように制御する制御部と、
を有することを特徴とするインタフェース回路。
【0085】
(付記2) 前記終端抵抗は前記信号線に対して並列に接続された、基準値を示す第1の抵抗と、前記基準値よりも大きい抵抗値を有する第2の抵抗を有し、
前記制御部からの選択信号に応じて、終端抵抗として、信号受信時には前記第1の抵抗を選択し、信号送信時は前記第2の抵抗を選択する終端抵抗選択部を有することを特徴とする付記1記載のインタフェース回路。
【0086】
(付記3) 前記終端抵抗は前記信号線に対して並列に接続された、基準値よりも大きい抵抗値を有する第1の抵抗と、前記基準値よりも小さい抵抗値を有する第2の抵抗を有し、
前記制御部からの選択信号に応じて、終端抵抗として、信号受信時には前記第2の抵抗を選択し、信号送信時は前記第1の抵抗を選択する終端抵抗選択部を有することを特徴とする付記1記載のインタフェース回路。
【0087】
(付記4) 前記終端抵抗は前記信号線に対して並列に接続された複数の抵抗を有し、
前記制御部からの選択信号に応じて、電流を流す前記抵抗を選択することで、前記終端抵抗の抵抗値を決定する終端抵抗選択部を有することを特徴とする付記1記載のインタフェース回路。
【0088】
(付記5) 前記定電流源は電源電圧端子に接続され、前記終端抵抗は前記信号線とグランド間に接続されていることを特徴とする付記1乃至4の何れか一項に記載のインタフェース回路。
【0089】
(付記6) 前記定電流源は接地されており、前記終端抵抗は前記信号線と前記電源電圧端子との間に接続されていることを特徴とする付記1乃至5の何れか一項に記載のインタフェース回路。
【0090】
(付記7) 前記定電流源は前記電源電圧端子に接続された第1の定電流源と、接地された第2の定電流源からなり、前記終端抵抗は前記信号線と他の電源電圧端子との間に接続されていることを特徴とする付記1乃至6の何れか一項に記載のインタフェース回路。
【0091】
(付記8) 複数のインタフェース回路が伝送線路を介して接続された送受信システムにおいて、
制御信号に応じて、定電流源と信号線とを接続または不接続とするスイッチと、前記制御信号を生成するとともに、前記信号線に接続する終端抵抗の抵抗値を、信号送信時に信号受信時よりも大きくなるように制御する制御部と、を有するインタフェース回路を具備した送受信システム。
【0092】
(付記9) 送信側の前記インタフェース回路の前記制御部は、前記終端抵抗の抵抗値を基準値よりも大きくなるように制御し、受信側の前記インタフェース回路の前記制御部は、前記終端抵抗の抵抗値を前記基準値よりも小さくなるように制御することを特徴とする付記8記載の送受信システム。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】第1の実施の形態のインタフェース回路の概略を示す図である。
【図2】第1の実施の形態のインタフェース回路及び送受信システムの構成を示す図である。
【図3】図2の伝送線路部分を回路図で示した図である。
【図4】ノードAからの送信動作の際の第1の実施の形態の送受信システムを模式化した図である。
【図5】第1の実施の形態の送受信システムにおける送信信号及び受信信号を示す図であり、(A)は送信信号、(B)は受信信号を示す図である。
【図6】第1の実施の形態のインタフェース回路を適用したUSB2.0のHigh Speed Modeでの伝送波形のアイ・パターンのシミュレーション結果である。
【図7】第2の実施の形態のインタフェース回路の構成を示す図である。
【図8】第2の実施の形態のインタフェース回路を用いた送受信システムを模式的に示した図である。
【図9】ノードAからの送信動作の際の第2の実施の形態の送受信システムを模式化した図である。
【図10】第2の実施の形態の送受信システムにおける送信信号及び受信信号を示す図であり、(A)は送信信号、(B)は受信信号を示す図である。
【図11】インタフェース回路の抵抗と終端抵抗選択部の他の例を示す図である。
【図12】送信ドライバ回路と、終端抵抗の接続構成例を示す図である(その1)。
【図13】送信ドライバ回路と、終端抵抗の接続構成例を示す図である(その2)。
【図14】従来の送受信システムの構成を示す図である。
【図15】図14の伝送線路部分を回路図で示した図である。
【図16】ノードAからの送信動作の際の送受信システムを模式化した図である。
【図17】送信信号及び受信信号を示す図であり、(A)は送信信号、(B)は受信信号を示す図である。
【図18】フレキシブル配線板を用いた伝送の様子を示す図である。
【図19】図18の伝送線路部分を回路図で示した図である。
【図20】ノードAからの送信動作の際の図18を模式化した図である。
【図21】図20の特性インピーダンスの伝送線路を用いた場合の送信信号及び受信信号を示す図であり、(A)は送信信号、(B)は受信信号を示す図である。
【図22】USB2.0のHigh Speed Modeでの伝送波形のアイ・パターンを示す図であり、(A)はフレキシブル配線板がない整合された伝送線路を用いた場合、(B)は特性インピーダンスの高いフレキシブル配線板を伝送線路として挿入した場合を示す図である。
【符号の説明】
【0094】
10,20 インタフェース回路
11 定電流源
12,15a,15b スイッチ
13,21 信号線
14 制御部
15 終端抵抗選択部
30,31,32 伝送線路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御信号に応じて、定電流源と信号線とを接続または不接続とするスイッチと、
前記制御信号を生成するとともに、前記信号線に接続する終端抵抗の抵抗値を、信号送信時に信号受信時よりも大きくなるように制御する制御部と、
を有することを特徴とするインタフェース回路。
【請求項2】
前記終端抵抗は前記信号線に対して並列に接続された、基準値を示す第1の抵抗と、前記基準値よりも大きい抵抗値を有する第2の抵抗を有し、
前記制御部からの選択信号に応じて、終端抵抗として、信号受信時には前記第1の抵抗を選択し、信号送信時は前記第2の抵抗を選択する終端抵抗選択部を有することを特徴とする請求項1記載のインタフェース回路。
【請求項3】
前記終端抵抗は前記信号線に対して並列に接続された、基準値よりも大きい抵抗値を有する第1の抵抗と、前記基準値よりも小さい抵抗値を有する第2の抵抗を有し、
前記制御部からの選択信号に応じて、終端抵抗として、信号受信時には前記第2の抵抗を選択し、信号送信時は前記第1の抵抗を選択する終端抵抗選択部を有することを特徴とする請求項1記載のインタフェース回路。
【請求項4】
複数のインタフェース回路が伝送線路を介して接続された送受信システムにおいて、
制御信号に応じて、定電流源と信号線とを接続または不接続とするスイッチと、前記制御信号を生成するとともに、前記信号線に接続する終端抵抗の抵抗値を、信号送信時に信号受信時よりも大きくなるように制御する制御部と、を有するインタフェース回路を具備した送受信システム。
【請求項5】
送信側の前記インタフェース回路の前記制御部は、前記終端抵抗の抵抗値を基準値よりも大きくなるように制御し、受信側の前記インタフェース回路の前記制御部は、前記終端抵抗の抵抗値を前記基準値よりも小さくなるように制御することを特徴とする請求項4記載の送受信システム。
【請求項1】
制御信号に応じて、定電流源と信号線とを接続または不接続とするスイッチと、
前記制御信号を生成するとともに、前記信号線に接続する終端抵抗の抵抗値を、信号送信時に信号受信時よりも大きくなるように制御する制御部と、
を有することを特徴とするインタフェース回路。
【請求項2】
前記終端抵抗は前記信号線に対して並列に接続された、基準値を示す第1の抵抗と、前記基準値よりも大きい抵抗値を有する第2の抵抗を有し、
前記制御部からの選択信号に応じて、終端抵抗として、信号受信時には前記第1の抵抗を選択し、信号送信時は前記第2の抵抗を選択する終端抵抗選択部を有することを特徴とする請求項1記載のインタフェース回路。
【請求項3】
前記終端抵抗は前記信号線に対して並列に接続された、基準値よりも大きい抵抗値を有する第1の抵抗と、前記基準値よりも小さい抵抗値を有する第2の抵抗を有し、
前記制御部からの選択信号に応じて、終端抵抗として、信号受信時には前記第2の抵抗を選択し、信号送信時は前記第1の抵抗を選択する終端抵抗選択部を有することを特徴とする請求項1記載のインタフェース回路。
【請求項4】
複数のインタフェース回路が伝送線路を介して接続された送受信システムにおいて、
制御信号に応じて、定電流源と信号線とを接続または不接続とするスイッチと、前記制御信号を生成するとともに、前記信号線に接続する終端抵抗の抵抗値を、信号送信時に信号受信時よりも大きくなるように制御する制御部と、を有するインタフェース回路を具備した送受信システム。
【請求項5】
送信側の前記インタフェース回路の前記制御部は、前記終端抵抗の抵抗値を基準値よりも大きくなるように制御し、受信側の前記インタフェース回路の前記制御部は、前記終端抵抗の抵抗値を前記基準値よりも小さくなるように制御することを特徴とする請求項4記載の送受信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2009−49684(P2009−49684A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213536(P2007−213536)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
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