説明

インターネット電話システムおよびその緊急ライン接続方法

【課題】 通信回線が110番または119番等の緊急ラインである場合でも、その通信回線が切断されても再接続を可能とする。
【解決手段】 IP電話装置21〜2nからの接続要求が緊急ラインへの接続要求の場合には、IP電話番号識別装置4は、その呼を記憶しておくとともにその接続要求をIP電話受信/発信装置5および電話接続装置6を介して一般電話回線網へ直接接続する。したがって、接続されている通信回線が緊急ラインである場合には何らかの理由で通信回線が切断された場合でも元の通信回線を再接続することができ、一般電話回線網の回線品質と同程度の回線品質で緊急ラインの接続が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インターネットを用いて電話サービスを提供するインターネット電話システムに関し、特に接続要求を110番や119番等の緊急ラインに対して接続するための緊急ライン接続方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のインターネット電話システムの構成を図4に示す。
【0003】この従来のインターネット電話システムは、IP(Internet Protocol)電話装置21〜2nと、IP電話終端装置21と、IP中継装置7と、IP電話接続サーバ3とから構成されている。
【0004】IP電話終端装置21は、IPを用いた通信回線とIP電話装置21〜2nとの接続を行なっている。
【0005】IP電話接続サーバ3は、IP電話終端装置21に接続され、インターネット電話回線の接続処理を行っている。
【0006】IP中継装置7は、IP電話終端装置21をインターネット電話回線を介して他のIP電話終端装置に中継する処理を行なっている。
【0007】次に、この従来のインターネット電話システムの動作について説明する。
【0008】各IP電話装置21〜2nは、他のIP電話装置との接続要求を行う場合、そのIP電話装置のIPアドレスを、IP終端装置21を介してIP電話接続サーバ3に対して送信することにより接続要求を行う。接続要求を受けたIP電話接続サーバ3では、IP通信回線を受信側のIP電話装置と接続した後に、発信側と受信側とを接続するための共通のポート番号を、発信側のIP電話装置に通知する。そして、発信側のIP電話装置は、そのポート番号を用いることにより受信側のIP電話装置と通信を行なうものであった。
【0009】一般電話回線では、110番や119番等の緊急ラインは、何らかの理由により通信回線が切断されても再接続されるようになっている。
【0010】しかし、この従来のインターネット電話システムにおいては、送信側と受信側のIP電話装置間における通信は、IP電話接続サーバ3によって提供されるIPによるデータであり、回線品質および接続保留などの優先度付け機能をもたない1対1通信である。従って、110番または119番のような緊急ラインの場合であっても他の通常の呼と同一の接続品質をもって処理される。そのため、緊急ラインが接続された後に、過負荷等の何らかの理由で切断されても、発呼者の識別は可能であるものの再接続できなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来のインターネット電話システムでは、緊急ラインが切断された場合に再接続することができないという問題点があった。
【0012】本発明の目的は、通信回線が110番または119番等の緊急ラインである場合には、その通信回線が切断されても再接続を可能とするインターネット電話システムおよびその緊急ライン接続方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明のインターネット電話システムは、IPを用いて接続される複数のIP電話装置と、IPを用いて通信を行うためのIP通信回線と前記各IP電話装置との接続を行なっているIP電話終端装置と、前記IP電話終端装置に接続され、インターネット電話回線の接続処理を行っているIP電話接続サーバと、前記IP電話終端装置をインターネット電話回線を介して他のIP電話終端装置に中継する処理を行なっているIP中継装置とを有するインターネット電話システムにおいて、前記IP電話終端装置に接続され、一般電話回線に対する発呼および一般回線からの受信を行なっているIP電話受信/発信手段と、前記IP電話受信/発信装置と一般電話回線との間の接続を行なっている電話接続手段と、前記各IP電話装置からの接続要求に含まれるIPアドレスを判別し、該IPアドレスが緊急ラインのIPアドレスの場合には、前記接続要求元のIP電話装置のIPアドレスを記録するとともに該接続要求を前記IP電話受信/発信手段に転送し、前記IPアドレスが緊急ライン以外の通常のIPアドレスの場合には、該接続要求を前記IP中継装置に転送するIP電話番号識別手段とを有することを特徴とする。
【0014】本発明のインターネット電話システムでは、IP電話装置からの接続要求が緊急ラインへの接続要求の場合には、IP電話番号識別手段がその呼を記憶しておくとともにその接続要求をIP電話受信/発信手段および電話接続手段を介して一般電話回線網へ直接接続するようにしたものである。
【0015】したがって、接続されている通信回線が緊急ラインである場合には何らかの理由で通信回線が切断された場合でも元の通信回線を再接続することができ、一般電話回線網の回線品質と同程度の回線品質で緊急ラインの接続が可能となる。
【0016】また、本発明の他のインターネット電話システムは、前記IP電話番号識別手段が、前記IP電話終端装置内に設けられている。
【0017】また、本発明のインターネット電話システムの緊急ライン接続方法は、IP電話装置からの接続要求を緊急ラインに接続するためのインターネット電話システムの緊急ライン接続方法であって、前記各IP電話装置からの接続要求に含まれるIPアドレスを判別し、該IPアドレスが緊急ラインのIPアドレスの場合には、前記接続要求元のIP電話装置のIPアドレスを記録するとともに該接続要求を一般電話回線に対して転送し、前記IPアドレスが緊急ライン以外の通常のIPアドレスの場合には、該接続要求をIP通信回線に転送する。
【0018】本発明のインターネット電話システムの緊急ライン接続方法では、IP電話装置からの接続要求が緊急ラインへの接続要求の場合には、その呼を記憶しておくとともにその接続要求を一般電話回線網へ直接接続するようにしたものである。したがって、接続されている通信回線が緊急ラインである場合には何らかの理由で通信回線が切断された場合でも元の通信回線を再接続することができ、一般電話回線網の回線品質と同程度の回線品質で緊急ラインの接続が可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】図1は本発明の一実施形態のインターネット電話システムの構成を示すブロック図である。図4中と同番号は同じ構成要素を示す。
【0021】本実施形態のインターネット電話システムは、複数のIP電話装置21〜2nと、IP電話装置21〜2nを収容するIP電話終端装置1と、IP電話接続サーバ3と、IP電話受信/発信装置5と、電話接続装置6とから構成されている。
【0022】本実施形態のインターネット電話システムは、図4に示した従来のインターネット電話システムに対して、IP電話終端装置21がIP電話終端装置1に置き換わり、IP電話受信/発信装置5と、電話接続装置6とが新たに設けられたものである。
【0023】IP電話受信/発信装置5は、IP電話終端装置1に接続され、一般電話回線に対する発呼および一般回線からの受信を行なっている。
【0024】電話接続装置6は、電話受信/発信装置5と一般電話回線との間の接続を行なっている。
【0025】IP電話終端装置1は、図4に示したIP電話終端装置21に対して、IP電話番号識別装置4が内部に設けられたものである。
【0026】IP電話番号識別装置4は、IP電話装置21〜2nからの接続要求に含まれるIPアドレスを判別し、そのIPアドレスが緊急ラインのIPアドレスの場合には、接続要求元のIP電話装置のIPアドレスを記録するとともにその接続要求をIP電話受信/発信装置5に転送し、そのIPアドレスが緊急ライン以外の通常のIPアドレスの場合には、その接続要求をIP中継装置7に転送している。次に、本実施形態の動作について図1〜図3を参照して詳細に説明する。
【0027】IP電話装置21〜2nからの緊急ライン接続要求は、IP電話番号識別装置4により、IP電話受信/発信装置5に接続される。そして、IP電話受信/発信装置5では、一般電話回線に対する発呼を行うことにより、接続要求を電話接続装置6および一般電話回線を通して緊急ラインに接続する。
【0028】この場合、IP電話終端装置4では、緊急ラインの接続を要求したIP電話装置21〜2nのIPアドレスが記録される。そして、何らかの理由により通信回線が切断された場合には、一般電話回線側から再接続要求が送信されてくる。そのため、IP電話受信/発信装置5は電話接続装置6を介してその再接続要求を受信して、IP電話終端装置1に対して再接続要求を行うことにより、IP電話装置21〜2nのうちのもとの発信者であるIP電話装置に再度接続することができる。
【0029】図2は、本実施形態における接続要求が処理される様子を示したシーケンス図である。
【0030】例えば、通常のIP電話装置の接続要求では、相手のIPアドレスと通常の接続のためのポート番号(ここではAとしている)が用いられるものとする。このポート番号が用いられる場合には、IP電話終端装置1から、IP電話接続サーバ3へと接続要求が転送される。
【0031】しかし、IP電話装置からの接続要求が、緊急ライン接続要求の場合には、110番や119番に相当するIPアドレスと、緊急接続のためのポート番号(ここではBとしている)が用いられるものとする。この場合には、接続要求はIP電話終端装置1で即座に処理され、IP電話番号識別装置4が緊急ラインの電話番号を識別することにより、IP電話受信/発信装置5を経由し、電話接続装置6を用いて一般電話回線に接続される。
【0032】図3は、IP電話番号識別装置4の内部における処理を示したフローチャートである。
【0033】先ず、IP電話装置21〜2nからの接続要求を示すIPパケット内の接続先(すなわちIPアドレス)が判別され、そのIPアドレスが通常のIP電話接続先のIPアドレスであるか、緊急ラインに対するIPアドレスであるかが判定される(ステップ302)。
【0034】ステップ302において、そのIPアドレスが通常のIP電話接続先のIPアドレスであると判定された場合には、その接続要求はIP電話接続サーバ3に転送される(ステップ303)。
【0035】一方、ステップ302において、そのIPアドレスが緊急ラインのIPアドレスであると判定された場合には、その接続要求はIP電話受信/発信装置5に転送され、IP電話受信/発信装置5によって一般電話回線に接続される。このとき、IP電話受信/発信装置5は、一般電話回線に対して110番、または119番等のライン番号を用いて発呼する(ステップ304)。
【0036】本実施形態では、IP電話終端装置1内に、IP電話番号識別装置4を組み込む場合を用いて説明しているが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、IP電話番号識別装置4をIP電話終端装置1の外部に設置する場合でも同様に適用することができるものである。
【0037】また、本実施形態では、緊急ラインを接続するために専用の一般電話回線を設けているため、この一般電話回線を緊急ラインの接続以外にも用いることができる。例えば、IP電話終端装置4の保守等を遠隔地から制御するような場合に、この一般電話回線を用いて遠隔操作を行うようにすることができる。
【0038】さらに、本実施形態では、緊急ラインとして110番や119番等の電話回線を用いているが、本発明はこのような場合に限定されるものではなく、接続優先度を他の通信回線より高くしたい特定の回線を緊急ラインとする場合にも同様に適用することができるものである。
【0039】
【発明の効果】インターネット電話において、110番や、119番のような緊急ラインが、従来のインターネット以外の電話と同様のレベルでサービス可能になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のインターネット電話システムの構成を示したブロック図である。
【図2】図1中のIP電話番号識別装置4における処理の概要を示す図である。
【図3】図1中のIP電話番号識別装置4における処理を示すフローチャートである。
【図4】従来のインターネット電話システムの構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
1 IP電話終端装置
1〜2n IP電話装置
3 IP電話接続サーバ
4 IP電話番号識別装置
5 IP電話受信/発信装置
6 電話接続装置
7 IP中継装置
21 IP電話終端装置
301〜304 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 IPを用いて接続される複数のIP電話装置と、IPを用いて通信を行うためのIP通信回線と前記各IP電話装置との接続を行なっているIP電話終端装置と、前記IP電話終端装置に接続され、インターネット電話回線の接続処理を行っているIP電話接続サーバと、前記IP電話終端装置をインターネット電話回線を介して他のIP電話終端装置に中継する処理を行なっているIP中継装置とを有するインターネット電話システムにおいて、前記IP電話終端装置に接続され、一般電話回線に対する発呼および一般回線からの受信を行なっているIP電話受信/発信手段と、前記IP電話受信/発信装置と一般電話回線との間の接続を行なっている電話接続手段と、前記各IP電話装置からの接続要求に含まれるIPアドレスを判別し、該IPアドレスが緊急ラインのIPアドレスの場合には、前記接続要求元のIP電話装置のIPアドレスを記録するとともに該接続要求を前記IP電話受信/発信手段に転送し、前記IPアドレスが緊急ライン以外の通常のIPアドレスの場合には、該接続要求を前記IP中継装置に転送するIP電話番号識別手段とを有することを特徴とするインターネット電話システム。
【請求項2】 前記IP電話番号識別手段が、前記IP電話終端装置内に設けられている請求項1記載のインターネット電話システム。
【請求項3】 前記緊急ラインが、110番または119番の通信回線である請求項1または2記載のインターネット電話システム。
【請求項4】 IP電話装置からの接続要求を緊急ラインに接続するためのインターネット電話システムの緊急ライン接続方法であって、前記各IP電話装置からの接続要求に含まれるIPアドレスを判別し、該IPアドレスが緊急ラインのIPアドレスの場合には、前記接続要求元のIP電話装置のIPアドレスを記録するとともに該接続要求を一般電話回線に対して転送し、前記IPアドレスが緊急ライン以外の通常のIPアドレスの場合には、該接続要求をIP通信回線に接続するインターネット電話システムの緊急ライン接続方法。
【請求項5】 前記緊急ラインが、110番または119番の通信回線である請求項4記載のインターネット電話システムの緊急ライン接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2000−138752(P2000−138752A)
【公開日】平成12年5月16日(2000.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−312154
【出願日】平成10年11月2日(1998.11.2)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】