説明

インターロイキン−21/インターロイキン−21受容体のアゴニストを用いた免疫学的障害の治療

インターロイキン−21(IL−21)またはIL−21受容体(「IL−21R」または「MU−1」)のアゴニストを用いて、IL−21/IL−21受容体(MU−1)活性を調節するための方法および組成物を開示する。IL−21/IL−21Rアゴニストを、単独で用いるか、または5つの抗炎症剤と併用して、神経系の免疫学的障害、例えば多発性硬化症に関連する症状を治療する、例えば改善することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、その内容が完全に本明細書に援用される、米国出願第60/456,920号、2003年3月21日に優先権を請求する。
【0002】
発明の分野
本発明は、IL−21/IL−21受容体アゴニスト、例えばIL−21ポリペプチドまたはその活性断片を用いて、神経系の免疫学的障害、例えば多発性硬化症を治療するかまたは防止するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ヒトIL−21はサイトカインである。成熟型では、IL−21は長さ約131アミノ酸であり、そしてIL−2、IL−4およびIL−15に配列相同性を有する(Parrish−Novakら(2000)Nature 408:57−63)。インターロイキン・サイトカイン間の配列相同性が低いにもかかわらず、これらのサイトカインは、特徴的な「4らせん束」構造を含む、共通のフォールドを共有する。大部分のサイトカインは、クラスIまたはクラスIIいずれかのサイトカイン受容体に結合する。クラスIIサイトカイン受容体には、IL−10およびインターフェロンの受容体が含まれ、一方、クラスIサイトカイン受容体には、IL−2、IL−7、IL−9、IL−11〜13、およびIL−15の受容体とともに、造血成長因子、レプチンおよび成長ホルモンの受容体が含まれる(Cosman,D.(1993)Cytokine 5:95−106)。
【0004】
ヒトIL−21RはクラスIサイトカイン受容体であり、リンパ系細胞、特にNK細胞、B細胞、およびT細胞に発現される(Parrich−Novakら(2000)上記)。ヒト・インターロイキン−21(IL−21)およびその受容体(IL−21R)をコードする典型的な核酸配列が、WO00/53761、WO01/85792、Parrish−Novakら(2000)上記、およびOzakiら(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:11439−11444に記載され、対応するアミノ酸配列も記載される。IL−21Rは、IL−2受容体β鎖およびIL−4受容体α鎖に高い配列相同性を示す(Ozakiら(2000)上記)。リガンド結合に際して、IL−21Rは、IL−2、IL−3、IL−4、IL−7、IL−9、IL−13およびIL−15の受容体に共有される、共通のガンマ・サイトカイン受容体鎖(γc)と会合する(Ozakiら(2000)上記;Asaoら(2001)J.Immunol.167:1−5)。IL−21Rがリンパ系に広く分布していることから、IL−21が免疫制御に役割を果たしていることが示唆される。実際、in vitro研究によって、IL−21が、B細胞、CD4 T細胞およびCD8 T細胞、並びにNK細胞の機能を有意に調節することが示されてきている(Parrish−Novakら(2000)上記;Kasaian,M.T.ら(2002)Immunity.16:559−569)。Parrish−Novakら(2000)は、IL−21が、ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖および成熟、抗CD40で同時刺激された成熟B細胞集団の増殖、並びに抗CD3で同時刺激されたT細胞の増殖を活性化するかまたは刺激するように機能することを示唆した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
インターロイキン−21(IL−21)またはIL−21受容体(本明細書において、「IL−21R」または「MU−1」とも称される)のアゴニスト(本明細書において、「IL−21/IL−21Rアゴニスト」または「アゴニスト」とも称される)を用いて、IL−21およびIL−21Rの活性、および/またはこれらの間の相互作用を増加させるための方法および組成物を開示する。こうした方法および組成物を用いて、神経系の免疫学的障害、あるいはIL−10不全と関連する疾患または障害を調節することも可能である。例えば、該方法および組成物を用いて、多発性硬化症(MS)を治療するかまたは防止することも可能である。
【0006】
我々は、例えば、IL−21/IL−21Rアゴニスト、例えばネズミIL−21ポリペプチドで、マウスを予防的に処置すると、実験自己免疫脳炎(EAE)のマウスモデルにおいて、症状の改善が生じることを示した。ミエリン・オリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)ペプチド(例えばMOG35−55)およびプロテオリピド・タンパク質(PLP;例えばPLP139−151)を用いて生成されるマウスモデルにおいて、EAE症状の調節が検出された。IL−21は、in vitroでT細胞増殖を誘導した。IL−21の存在下で培養したリンパ球は、IL−10量の増加およびインターフェロン−γ(IFN−γ)レベルの減少を生じた。したがって、IL−21/IL−21R活性のアゴニストを予防的または療法的に用いて、神経系の免疫学的障害(例えば、多発性硬化症を含む、神経系の慢性免疫学的障害)を治療することも可能である。
【0007】
したがって、1つの側面において、本発明は、被験者において、神経系の免疫学的障害(例えば、多発性硬化症を含む、神経系の慢性免疫学的障害)を治療する(例えば治癒させるか、抑制するか、改善するか、減少させるか、または遅延させる)か、または防止する(例えば開始を防止するか、または反復もしくは再発を防止する)方法を特徴とする。該方法は:免疫細胞活性および/または数を調節する(例えばサイトカインレベル、例えばサイトカイン発現、産生および/または放出を調節する)のに十分な量のIL−21/IL−21Rアゴニストを被験者に投与し、それによって、神経系の免疫学的障害、例えば多発性硬化症を治療するかまたは防止することを含む。1つの態様において、IL−21/IL−21Rアゴニストを症状の開始前に投与して、例えば、症状の開始を遅延させるかまたは防止し、あるいは症状の反復または再発を防止する。例えば、IL−21/IL−21Rアゴニストを、被験者、例えばMS患者が寛解期にあるときに投与することも可能である。他の態様において、IL−21/IL−21Rアゴニストを症状または発作の開始後に投与する。MSの典型的な全身症状には、振戦、協調運動不全、歩行困難、および他の問題が含まれる。
【0008】
IL−21/IL−21Rアゴニストを、単独で、または本明細書に記載する他の療法様式と併用して投与することも可能である。好ましくは、被験者は、哺乳動物、例えば神経系の免疫学的障害、例えば多発性硬化症を患うヒトである。
【0009】
1つの態様において、IL−21/IL−21Rアゴニストは、IL−21またはIL−21R、好ましくは哺乳動物、例えばヒトIL−21またはIL−21Rと相互作用し、例えば結合し、そして1以上のIL−21および/またはIL−21R活性を増加させるかまたは増強させる。IL−21のアゴニストは、本明細書において、「IL−21アゴニスト」と称され、そしてIL−21Rのアゴニストは、「IL−21Rアゴニスト」と称される。IL−21ポリペプチドはそれ自体、IL−21Rアゴニストである。好ましいアゴニストは、高親和性で、例えば少なくとも約10−1、好ましくは約10−1、そしてより好ましくは約10−1〜1010−1の親和性定数で、またはそれより強い親和性定数で、IL−21またはIL−21Rに結合する。IL−21/IL−21Rアゴニストは、例えばIL−21ポリペプチドまたはその活性断片、IL−21融合タンパク質、ペプチドアゴニスト、抗体アゴニストまたはその抗原結合断片、あるいは小分子アゴニストであることも可能である。
【0010】
1つの態様において、IL−21/IL−21RアゴニストはIL−21ポリペプチド、例えばヒト、ウシまたはネズミIL−21ポリペプチド、またはその活性断片(例えば配列番号2に示すアミノ酸配列、または配列番号1に示すヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列、あるいは該配列に少なくとも85%、90%、95%、98%またはそれより同一である配列を含む、ヒトIL−21ポリペプチド)である。別の態様において、IL−21/IL−21Rアゴニストは、ネズミIL−21ポリペプチドまたはその活性断片(例えば配列番号4に示すアミノ酸配列、または配列番号3に示すヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列、あるいは該配列に少なくとも85%、90%、95%、98%またはそれより同一である配列を含む、ネズミIL−21ポリペプチド)である。さらに他の態様において、IL−21/IL−21Rアゴニストは、IL−21ポリペプチド、例えばヒトまたはネズミIL−21ポリペプチド、またはその断片を含み、そして例えば第二の部分、例えばポリペプチド(例えばGST、Lex−A、MBPポリペプチド配列、または例えばFc断片、重鎖定常領域であって:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgEを含む多様なアイソタイプの前記重鎖定常領域を含む、免疫グロブリン鎖)に融合した、融合タンパク質;IL−21受容体に結合するアゴニスト抗体またはその抗原結合断片;あるいは小分子またはペプチドアゴニストである。他の態様において、IL−21/IL−21Rアゴニストは、機能するIL−21の発現、プロセシングおよび/または分泌を増加させることによって、IL−21の活性またはレベルを増加させる剤である。前述のIL−21/IL−21Rアゴニストをコードする核酸もまた、被験者に投与することも可能である。
【0011】
融合タンパク質は、第一の部分、例えばIL−21断片を、第二の部分、例えば免疫グロブリン断片に連結する、リンカー配列をさらに含むことも可能である。他の態様において、さらなるアミノ酸配列を融合タンパク質のN末端またはC末端に付加して、発現、立体構造柔軟性、検出および/または単離または精製を容易にすることも可能である。
【0012】
本明細書記載のIL−21/IL−21Rアゴニスト、例えば本明細書記載のIL−21ポリペプチドまたは融合タンパク質を、誘導体化するか、あるいは別の機能分子、例えば別のペプチドまたはタンパク質(例えばFab’断片)に連結することも可能である。例えば、融合タンパク質、あるいは抗体または抗原結合部分を、1以上の他の分子実体、例えばとりわけ抗体(例えば二重特異性抗体または多重特異性抗体)、毒素、放射性同位体、細胞傷害剤または細胞分裂停止剤に(例えば化学的カップリング、遺伝子融合、非共有会合または他のものによって)機能するように連結することもまた可能である。
【0013】
別の態様において、IL−21/IL−21Rアゴニストは、IL−21R、好ましくはヒトIL−21Rに対する抗体、例えばアゴニスト性抗体、またはその抗原結合部分である。抗体またはその抗原結合部分は、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト(例えばin vitro生成)抗体、またはその抗原結合断片であることも可能である。1つの態様において、抗体は二重特異性抗体、例えばIL−21Rおよび別の受容体鎖と相互作用する抗体である。
【0014】
1つの態様において、該方法は、IL−10パラメーターに関して、被験者を評価することを含む。「IL−10パラメーター」は、IL−10レベルまたは活性、例えばIL−10 mRNAまたはタンパク質レベルまたは活性に関する質的情報または量的情報である。該情報には、例えば、被験者由来の1以上の組織または1以上の試料中のIL−10の濃度が含まれることも可能である。例えば投与前に、例えば少なくとも第一の用量の投与前に、被験者を評価することも可能である。例えば投与後に、例えば1以上の用量の投与後に、例えば規則的な間隔で、または連続投与の場合、1以上の間隔後に、被験者を評価することも可能である。投与前および投与後、両方で、被験者を評価することも可能である。IL−10パラメーターを評価することから得た情報を用いて、IL−21/IL−21Rアゴニストの投与を調節することも可能である。例えば、正常範囲の値になるIL−10パラメーターにおける増加は、望ましい療法効果があったことの指標となりうる。IL−10パラメーターにおける減少は、投与が不十分であるか、または非応答性であることの指標となりうる。同様に、対応するIFNγパラメーターを評価することも可能である。こうした場合、正常範囲の値になるIFNγパラメーターにおける減少は、望ましい療法効果があったことの指標となりうる。IFNγパラメーターにおける増加は、投与が不十分であるか、または非応答性であることの指標となりうる。他のサイトカインおよび因子に関連して評価可能なさらに他のパラメーターを表3に提供する。
【0015】
1つの態様において、該方法は、神経系の免疫学的障害(例えば多発性硬化症)のリスクに関して、またはこうした障害の1以上の症状のリスクに関して、被験者を評価することを含む。リスクを評価する1つの方法は、IL−10パラメーターを評価することを含む。
【0016】
1つの実施において、被験者の状態の改変に応じて、例えばMSと関連する突発または発作に応じて、IL−21/IL−21Rアゴニストを投与する。
IL−21/IL−21Rアゴニスト(単数または複数)を、単回用量の形、あるいは数日、数週または数ヶ月の間隔を置いた一連の用量で投与することも可能である。IL−21/IL−21Rアゴニスト(単数または複数)を、注射、例えば被験者の中枢神経系への注射によって投与することも可能である。例えば、IL−21/IL−21Rアゴニスト(単数または複数)を腰部脳脊髄液に(クモ膜下(intrathetically))注射することも可能である。他の態様において、IL−21/IL−21Rアゴニスト(単数または複数)を静脈内投与する。
【0017】
1つの態様において、本明細書記載のIL−21/IL−21Rアゴニスト、例えばその薬剤組成物を、併用療法で、すなわち他の剤、例えば神経系の免疫学的障害、例えば多発性硬化症を治療するかまたは防止するのに有用な療法剤と併用して、投与する。例えば、併用療法は、1以上のさらなる療法剤、例えば本明細書にさらに記載するような、1以上のサイトカイン阻害剤および増殖因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、および/または細胞傷害剤または細胞分裂停止剤と同時配合され、そして/または同時投与される、1以上のIL−21/IL−21Rアゴニスト、例えばIL−21ポリペプチドまたはその活性断片、IL−12融合タンパク質、ペプチドアゴニスト、抗体アゴニスト、あるいは小分子アゴニストを含むことも可能である。
【0018】
多発性硬化症を治療するため、1以上のIL−21/IL−21Rアゴニストと同時投与し、そして/または同時配合することも可能な療法剤の例には、限定されるわけではないが、1以上の:インターフェロン−β、例えばIFNβ−1αおよびIFNβ−1β;ミエリン塩基性タンパク質を刺激するタンパク質(例えば合成タンパク質、例えば酢酸グラティラマー(glatiramer)、コパキソン(登録商標));コルチコステロイド;IL−1阻害剤;TNF阻害剤;CD40リガンドおよびCD80に対する抗体;IL−12およびIL−23のアンタゴニスト、例えばIL−12およびIL−23のp40サブユニットのアンタゴニスト(例えばp40サブユニットに対する阻害性抗体);IL−22アンタゴニスト;小分子阻害剤、例えばメトトレキセート、レフルノミド、シロリムス(ラパマイシン)およびその類似体、例えばCCI−779;Cox−2およびcPLA2阻害剤;NSAID;p38阻害剤;TPL−2;Mk−2;NFκB阻害剤;RAGEまたは可溶性RAGE;P−セレクチンまたはPSGL−1阻害剤(例えば小分子阻害剤、抗体、例えばP−セレクチンに対する抗体);エストロゲン受容体ベータ(ERB)アゴニストまたはERB−NFκβアンタゴニストが含まれる。
【0019】
TNF阻害剤の例には、例えば、TNFに結合する、キメラ抗体、ヒト化抗体、有効ヒト抗体、ヒト抗体またはin vitro生成抗体、あるいはその抗原結合断片;TNF受容体、例えばp55またはp75ヒトTNF受容体の可溶性断片またはその誘導体、例えば75kd TNFR−IgG(75kD TNF受容体−IgG融合タンパク質、エンブレルTM)、p55 kd TNF受容体−IgG融合タンパク質;およびTNF酵素アンタゴニスト、例えばTNFα変換酵素(TACE)阻害剤が含まれる。
【0020】
1以上のIL−21/IL−21Rアゴニストと同時投与し、そして/または同時配合することも可能なさらなる療法剤には、1以上の:インターフェロン−β、例えばIFNβ−1αおよびIFNβ−1β;コパキソン(登録商標);コルチコステロイド;IL−1阻害剤;TNFアンタゴニスト(例えばTNF受容体、例えばヒトp55またはp75ヒトTNF受容体の可溶性断片またはその誘導体、例えば75kd TNFR−IgG(75kD TNF受容体−IgG融合タンパク質、エンブレルTM));CD40リガンドおよびCD80に対する抗体;並びにIL−12および/またはIL−23のアンタゴニスト、例えばIL−12およびIL−23のp40サブユニットのアンタゴニスト(例えばIL−12およびIL−23のp40サブユニットに結合する阻害性抗体);メトトレキセート、レフルノミド、およびシロリムス(ラパマイシン)またはその類似体、例えばCCI−779が含まれる。
【0021】
別の側面において、本発明は、免疫細胞活性および/または数(例えば免疫細胞、例えばリンパ球(例えばT細胞)または免疫細胞集団、例えば混合されたかもしくは実質的に精製された免疫細胞集団の活性および/または数)を調節する、例えば増加させるかまたは減少させる方法を特徴とする。該方法は、免疫細胞活性および/または数を調節する、例えば増加させるかまたは減少させるのに十分な量のIL−21/IL−21Rアゴニスト、例えば本明細書記載のアゴニストと、免疫細胞、例えば本明細書記載の免疫細胞を接触させることを含む。1つの態様において、活性には、サイトカイン活性またはレベルの調節、例えば増加または減少が含まれる。例えば、IL−21/IL−21Rアゴニストは、リンパ球産生またはIL−10レベルを増加させ、そして/またはインターフェロン−γ産生またはレベルを減少させることも可能である。
【0022】
本方法を、例えばin vitroまたはex vivoで培養中の細胞に用いることも可能である。例えば、免疫細胞、例えば本明細書記載のT細胞を、培地中、in vitroで培養することも可能であり、そして培地に1以上のIL−21/IL−21Rアゴニスト(単数または複数)、例えば本明細書記載のアゴニストを添加することによって、接触工程を達成することも可能である。あるいは、被験者に存在する細胞(例えば本明細書記載の免疫細胞)に対して、例えばin vivo(例えば療法または予防)プロトコルの一部として、該方法を行うことも可能である。
【0023】
免疫細胞活性の変化には:参照細胞、例えば未処理免疫細胞と比較した、IL−21/IL−21Rアゴニストと接触させた免疫細胞の、とりわけ増殖、サイトカイン分泌および/または産生、生存、分化、細胞応答性(例えば脱感作)、細胞溶解活性、エフェクター細胞活性、遺伝子発現のうちの1以上の変動(単数または複数)いずれか、例えば増加/減少が含まれる。例えば、免疫細胞をIL−21/IL−21Rアゴニスト、例えばIL−21ポリペプチドと接触させると:胸腺細胞、リンパ球、リンパ節T細胞、成熟CD4+ T細胞、成熟CD8+ T細胞、またはマクロファージのうちの1以上の:増殖、細胞溶解活性、エフェクター細胞機能、またはサイトカイン分泌のうちの1以上を誘導可能である。1つの態様において、IL−21/IL−21Rアゴニストは、リンパ球産生またはIL−10レベルを増加させ、そして/またはインターフェロン−γ産生またはレベルを減少させることも可能である。
【0024】
別の側面において、本発明は、哺乳動物被験者において、IL−10不全、またはIL−10不全に関連する障害を調節する方法を特徴とする。該方法は、被験者におけるIL−10発現または活性を増加させる、例えば少なくとも1.2、1.5、2、2.5、3、3.5、5、または10倍増加させる、例えば1.2〜2.5倍増加させる、または2.5〜5倍増加させる、5〜10倍増加させる、あるいは10または20倍より多く増加させるのに十分な量のインターロイキン−21(IL−21)ポリペプチドを被験者に投与することを含む。「IL−10不全」は、対応する正常被験者に比較した、IL−10の統計的に有意な減少である。例えば、減少は、0.05未満のP値を有することも可能である。IL−21または他のIL−21/IL−21Rアゴニストを用いて、IL−10レベルまたは活性を増加させることも可能であるため、IL−21およびこうしたアゴニストを用いて、IL−10不全を調節することも可能である。
【0025】
例えば、血液、血清、または脳脊髄液中の、IL−10レベルを監視することも可能である。IL−10不全に関連付けることも可能な典型的な障害には、多発性硬化症、重大な炎症事象(虚血−再灌流傷害を含む)、乾癬および天疱瘡が含まれる。IL−21は、IL−10レベルを増加させることも可能であるため、IL−21を用いて、これらの障害およびIL−10不全に関連する他の障害の少なくとも1つの症状を治療することも可能である。
【0026】
別の側面において、本発明は、哺乳動物被験者、例えばヒトにおいて、多発性硬化症を改善する方法を特徴とする。該方法は:被験者における多発性硬化症または多発性硬化症の少なくとも1つの症状を改善するのに十分な量のインターロイキン−21(IL−21)ポリペプチドを被験者に投与することを含む。例えば、被験者がヒトである場合、IL−21ポリペプチドはヒトIL−21ポリペプチド、例えば配列番号2を含むポリペプチド、または有効ヒトIL−21ポリペプチドであることも可能である。例えば、該ポリペプチドを組換え的に、例えば細菌細胞において産生する。1つの態様において、該方法は、被験者におけるIL−10発現または活性を増加させる、例えば少なくとも1.2、1.5、2、2.5、3、3.5、5、または10倍増加させる、例えば1.2〜2.5倍増加させる、または2.5〜5倍増加させる、5〜10倍増加させる、あるいは10または20倍より多く増加させるのに十分な量のインターロイキン−21(IL−21)ポリペプチドを被験者に投与することを含む。該方法は、本明細書に記載する他の特徴を含むことも可能である。
【0027】
別の側面において、本発明は、哺乳動物被験者において、免疫学的障害を治療するかまたは防止する方法を特徴とする。該方法は、哺乳動物被験者におけるIL−10パラメーターを評価し;そして評価されたIL−10パラメーターの結果に応じた量のインターロイキン−21(IL−21)ポリペプチドを被験者に投与することを含む。例えば、IL−10パラメーターは、IL−10タンパク質またはIL−10 mRNAのレベルに関する質的情報または量的情報を含む。別の例において、IL−10パラメーターは、IL−10タンパク質活性のレベルに関する量的情報を含む。
【0028】
1つの態様において、免疫学的障害は、神経学的障害である。例えば、被験者はヒトであり、そして免疫学的障害は多発性硬化症であるか、あるいはミエリン鞘に損傷または改変を引き起こす免疫学的障害である。該方法は、本明細書に記載する他の特徴を含むことも可能である。
【0029】
別の態様において、本発明は、哺乳動物被験者において、多発性硬化症の治療を評価する方法を特徴とする。該方法は:インターロイキン−21(IL−21)/IL−21受容体(IL−21R)(例えばIL−21ポリペプチド、アゴニスト性抗IL−21R抗体およびアゴニスト性抗IL−21R抗体の抗原結合断片)を被験者に投与し;そして被験者におけるIL−10パラメーターを評価することを含む。1つの態様において、該方法は第二の用量のアゴニストを被験者に投与することをさらに含み、評価されたIL−10パラメーターの関数として、第二の用量を投与する。
【0030】
1つの態様において、被験者はヒトであり、そしてIL−21ポリペプチドはヒトIL−21ポリペプチド、例えば配列番号2を含むポリペプチドである。
1つの態様において、第二の用量または続く用量はいずれも、例えばベースラインに比較して、例えば第一の処置前に比較して、被験者におけるIL−10発現または活性を増加させる、例えば少なくとも1.2、1.5、2、2.5、3、3.5、5、または10倍増加させる、例えば1.2〜2.5倍増加させる、または2.5〜5倍増加させる、5〜10倍増加させる、あるいは10または20倍より多く増加させるのに十分な量のインターロイキン−21(IL−21)ポリペプチドを搬送するよう調整される。関連法において、第一の用量をこのように調整する。該方法は、本明細書に記載する他の特徴を含むことも可能である。
【0031】
別の側面において、本発明は、薬学的に許容しうるキャリアーおよび本明細書記載の少なくとも1つのIL−21/IL−21Rアゴニスト(例えば本明細書記載のIL−21ポリペプチドまたは融合タンパク質)を含む、組成物、例えば薬剤組成物を提供する。1つの態様において、組成物、例えば薬剤組成物は、前述のIL−21/IL−21Rアゴニストの1つの2以上の組み合わせを含む。IL−21/IL−21Rアゴニストおよび薬剤、例えば療法剤(例えば、本明細書にさらに記載するような、1以上のサイトカイン阻害剤および増殖因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、および/または細胞傷害剤または細胞分裂停止剤)もまた、本発明の範囲内である。
【0032】
1つの態様において、薬剤組成物は、薬学的に許容しうるキャリアー中に、IL−21/IL−21Rアゴニストおよび少なくとも1つのさらなる療法剤を含む。組成物、例えば薬剤組成物中に同時配合することも可能な、好ましいさらなる療法剤の例には、限定されるわけではないが、1以上の:インターフェロン−β、例えばIFNβ−1αおよびIFNβ−1β;ミエリン塩基性タンパク質を刺激するタンパク質(例えばコパキソン(登録商標));コルチコステロイド;IL−1阻害剤;TNFアンタゴニスト(例えばTNF受容体、例えばp55またはp75ヒトTNF受容体の可溶性断片またはその誘導体、例えば75kd TNFR−IgG(75kD TNF受容体−IgG融合タンパク質、エンブレルTM));CD40リガンドおよびCD80に対する抗体;並びにIL−12および/またはIL−23のアンタゴニスト、例えばIL−12およびIL−23のp40サブユニットのアンタゴニスト(例えばp40サブユニットに対する阻害性抗体);メトトレキセート、レフルノミド、およびシロリムス(ラパマイシン)またはその類似体、例えばCCI−779が含まれる。
【0033】
別の側面において、本発明は、(i)IL−21ポリペプチドを含む、1以上の単位用量の薬剤組成物を含む容器;および(ii)多発性硬化症を有するか、または有すると推測される被験者に、単位用量を投与するための使用説明書を含む、製品を特徴とする。例えば、使用説明書はラベル上に提供される。ラベルは、容器の外部表面上に貼られていることも可能である。1つの態様において、製品は、例えばIL−21ポリペプチドを含む薬剤組成物のさらなる単位用量を含有する、第二の容器をさらに含む。1つの態様において、製品は、多発性硬化症を治療するための剤、すなわちIL−21以外の剤を含む、第二の薬剤組成物を含む第二の容器をさらに含む。例えば、剤は、酢酸グラティラマーまたは本明細書記載の別の剤である。別の態様において、第一の容器内にIL−21ポリペプチドを含む薬剤組成物は、多発性硬化症を治療するための第二の剤、例えば酢酸グラティラマーをさらに含む。
【0034】
用語「MU−1」および「IL−21R」は、本明細書において、交換可能に用いられる。用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書において、交換可能に用いられる。タンパク質は1以上の鎖を含むことも可能である。
【0035】
当該技術分野に知られる方法いずれによって統計的有意性を決定することも可能である。典型的な統計検定には:スチューデントT−検定、マン・ホイットニーUノンパラメトリック検定、およびウィルコクソン・ノンパラメトリック統計検定が含まれる。いくつかの統計的に有意な関係は、0.05または0.02未満のP値を有する。IL−21/IL−21Rアゴニストに仲介される特定の効果は、統計的に有意な相違(例えばP値<0.05または0.02)を示すことも可能である。用語「誘導する」、「阻害する」、「増強する」、「上昇させる」、「増加させる」、「減少させる」等は、例えば、2つの状態間の区別可能な質的相違または量的相違を示し、そして2つの状態間の相違、例えば統計的に有意な相違を指すことも可能である。
【0036】
別に定義しない限り、本明細書で用いるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の一般の当業者に通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書記載のものと類似のまたは均等の方法および材料を、本発明の実施または試験に使用可能であるが、適切な方法および材料を以下に記載する。すべての刊行物、特許出願、特許、および本明細書に言及する他の参考文献すべてが、完全に本明細書に援用される。不一致の場合は、定義を含めて本明細書が統制する。さらに、材料、方法、および実施例は例示のみであり、そして限定を意図しない。
【0037】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および請求項から明らかであろう。
【課題を解決するための手段】
【0038】
発明の詳細な説明
インターロイキン−21(IL−21)またはIL−21受容体(「IL−21R」または「MU−1」)のアゴニストを用いて、IL−21/IL−21受容体(MU−1)活性を調節するための方法および組成物を開示する。1つの態様において、出願者らは、マウスをIL−21/IL−21Rアゴニスト、例えばネズミIL−21ポリペプチドで処理すると、実験自己免疫脳炎(EAE)のマウスモデルにおいて、症状の改善が生じることを示した。ミエリン・オリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)ペプチド(例えばMOG35−55)およびプロテオリピド・タンパク質(PLP)を用いて生成されるマウスモデルにおいて、EAE症状の調節が検出された。IL−21は、in vitroでT細胞増殖を誘導した。リンパ球をIL−21の存在下で培養すると、IL−10量の増加およびインターフェロン−γレベルの減少が生じた。したがって、IL−21/IL−21R活性のアゴニストを用いて、神経系の免疫学的障害(例えば、多発性硬化症を含む、神経系の慢性免疫学的障害)を治療するかまたは防止することも可能である。
【0039】
本発明をより容易に理解することが可能であるように、まず、特定の用語を定義する。さらなる定義を、詳細な説明全体に示す。
用語「インターロイキン−21」、「IL−21」および「IL−21ポリペプチド」は、IL−21R(例えば哺乳動物、例えばネズミまたはヒト・タンパク質)と相互作用する、例えば結合することが可能であり、そして以下の特徴の少なくとも1つを有するタンパク質(例えば哺乳動物、例えばネズミまたはヒト・タンパク質)を指す:(i)天然存在哺乳動物IL−21またはその断片のアミノ酸配列、例えば配列番号2(ヒト)または配列番号4(ネズミ)に示すアミノ酸配列またはその断片;(ii)配列番号2(ヒト)または配列番号4(ネズミ)に示すアミノ酸配列またはその断片に、実質的に相同である、例えば少なくとも85%、90%、95%、98%、99%相同である、アミノ酸配列;(iii)天然存在哺乳動物IL−21ヌクレオチド配列またはその断片(例えば配列番号1(ヒト)もしくは配列番号3(ネズミ)またはその断片、例えば成熟型をコードする領域)がコードする、アミノ酸配列;(iv)配列番号1(ヒト)または配列番号3(ネズミ)に示すヌクレオチド配列またはその断片(例えば成熟型をコードする領域)に、実質的に相同である、例えば少なくとも85%、90%、95%、98%、99%相同であるヌクレオチド配列がコードする、アミノ酸配列;(v)天然存在IL−21ヌクレオチド配列またはその断片、例えば配列番号1(ヒト)もしくは配列番号3(ネズミ)またはその断片(例えば成熟型をコードする領域)に縮重しているヌクレオチド配列がコードする、アミノ酸配列;あるいは(vi)ストリンジェントな条件下、例えば非常にストリンジェントな条件下で、前述のヌクレオチドの1つの相補体にハイブリダイズするヌクレオチド配列がコードする、少なくとも115アミノ酸のアミノ酸配列(例えば、該ヌクレオチド配列は成熟IL−21タンパク質をコードする領域中でハイブリダイズする)。IL−21RへのIL−21結合は、stat5またはstat3シグナル伝達を導くことも可能である(Ozakiら(2000)上記)。IL−21ポリペプチドは、シグナル配列を含む新生タンパク質からシグナル配列が除去されて、成熟タンパク質にプロセシングされることも可能である。
【0040】
「有効ヒト」IL−21ポリペプチドは、該ポリペプチドが、正常なヒトにおいて、免疫原性応答を誘発しないように、そして該IL−21ポリペプチドがヒトIL−21Rと相互作用するように、十分な数のヒト・アミノ酸位を含む、IL−21ポリペプチドである。
【0041】
用語「MU−1」、「MU−1タンパク質」、「インターロイキン−21受容体」または「IL−21R」は、IL−21(例えば哺乳動物、例えばネズミまたはヒトIL−21)と相互作用する、例えば結合することが可能であり、そして以下の特徴の少なくとも1つを有する受容体(例えば哺乳動物、例えばネズミまたはヒト起源)を指す:(i)天然存在哺乳動物MU−1ポリペプチドIL−21R/MU−1またはその断片のアミノ酸配列、例えば配列番号6(ヒト)または配列番号8(ネズミ)に示すアミノ酸配列またはその断片(例えば成熟領域);(ii)配列番号6(ヒト)または配列番号8(ネズミ)に示すアミノ酸配列またはその断片(例えば成熟領域)に、実質的に相同である、例えば少なくとも85%、90%、95%、98%、99%相同である、アミノ酸配列;(iii)天然存在哺乳動物IL−21R/MU−1ヌクレオチド配列(例えば配列番号5(ヒト)または配列番号7(ネズミ))またはその断片(例えば成熟型領域)がコードする、アミノ酸配列;(iv)配列番号5(ヒト)または配列番号7(ネズミ)に示すヌクレオチド配列またはその断片(例えば成熟型領域)に、実質的に相同である、例えば少なくとも85%、90%、95%、98%、99%相同であるヌクレオチド配列がコードする、アミノ酸配列;(v)天然存在IL−21R/MU−1ヌクレオチド配列またはその断片、例えば配列番号5(ヒト)もしくは配列番号7(ネズミ)またはその断片(例えば成熟領域)に縮重しているヌクレオチド配列がコードする、アミノ酸配列;あるいは(vi)ストリンジェントな条件下、例えば非常にストリンジェントな条件下で、前述のヌクレオチド配列の1つにハイブリダイズするヌクレオチド配列がコードする、少なくとも450アミノ酸のアミノ酸配列。配列番号6に示すヒトIL−21Rの成熟領域は、ほぼアミノ酸20〜538である。
【0042】
典型的なIL−21R/MU−1 cDNAは、寄託番号ATCC 98687として、1998年3月10日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに寄託された。
【0043】
IL−21Rは、NILRとしても知られる、クラスIサイトカインファミリー受容体である(WO01/85792;Parrish−Novakら(2000)Nature 408:57−63;Ozakiら(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:11439−11444)。IL−21Rは、IL−2受容体およびIL−15受容体に共有されるβ鎖、並びにIL−4受容体α鎖に相同である(Ozakiら(2000)上記)。リガンド結合に際して、IL−21R/MU−1は共通γサイトカイン受容体鎖(γc)と相互作用し(Asaoら(2001)J.Immunol.167:1−5)、そしてSTAT1およびSTAT3(Asaoら(2001))またはSTAT5(Ozakiら(2000))のリン酸化を誘導することが可能である。IL−21Rは広いリンパ系組織分布を示す。
【0044】
IL−21Rポリペプチドに結合する能力を保持する限り、全長に満たないIL−21タンパク質の型を本明細書記載の方法および組成物で使用することも可能である。宿主細胞において、全長IL−21タンパク質をコードするポリヌクレオチドの対応する断片を発現させることによって、または修飾タンパク質をコードするポリヌクレオチド(例えば1以上の内部アミノ酸が除去される場合)を発現させることによって、全長に満たないIL−21タンパク質を産生することも可能である。全長に満たないIL−21ポリペプチドの1つの型は、成熟IL−21、例えば配列番号2のIL−21である。別の型は、全長成熟IL−21より短いポリペプチド、例えば131、130、129、128、または125アミノ酸より短い、例えば長さ115〜130アミノ酸のポリペプチドである。例えば、配列番号2由来のIL−21ポリペプチドは、最後の8アミノ酸が欠けているか、またはそのサブセットであることも可能であり、例えばIL−21ポリペプチドは、アミノ酸1〜122を含む。対応するポリヌクレオチド断片を、本発明の方法および組成物中で使用することもまた可能である。適切な望ましい欠失突然変異体の構築、部位特異的突然変異誘発法を含む標準的分子生物学技術によって、あるいは適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって、上述のような修飾ポリヌクレオチドを作成することも可能である。
【0045】
句、MU−1またはIL−21Rポリペプチドの「生物学的活性」は、対応する成熟MU−1タンパク質の1以上の生物学的活性を指し、こうした活性には、限定されるわけではないが:(1)IL−21ポリペプチド(例えばヒトIL−21ポリペプチド)との相互作用、例えば結合;(2)シグナル伝達分子、例えばγc、jAK−1との会合;(3)statタンパク質、例えばSTAT5および/またはSTAT3のリン酸化および/または活性化の刺激;並びに/あるいは(4)免疫細胞、例えばT細胞(CD8+ T細胞、CD4+ T細胞)、NK細胞、B細胞、マクロファージ、および巨核球の増殖、分化、エフェクター細胞機能、細胞溶解活性、サイトカイン分泌、および/または生存の調節、例えば刺激または減少が含まれる。
【0046】
本明細書において、「IL−21/IL−21Rアゴニスト」は、IL−21R/MU−1ポリペプチドの1以上の生物学的活性、例えば本明細書記載の生物学的活性を増強するか、誘導するか、または別の方式で増進する剤を指す。例えば、アゴニストは、IL−21R/MU−1ポリペプチドと相互作用し、例えば結合する。1つの態様において、アゴニストは、IL−21Rおよび別の受容体鎖、例えばγサイトカイン受容体鎖と相互作用する。例えばアゴニストはIL−21Rおよびγサイトカイン受容体鎖を架橋する。
【0047】
本明細書において、IL−21/IL−21Rアゴニストの「療法的有効量」は、被験者、例えばヒト患者に、単回用量または多数用量を投与した際、障害、例えば本明細書記載の障害の1以上の症状を治癒させるか、その重症度を減少させるか、改善する、あるいはこうした治療の非存在下で予期される生存を超えて、被験者の生存を延長させるのに有効な剤の量を指す。
【0048】
本明細書において、IL−21/IL−21Rアゴニストの「予防的有効量」は、被験者、例えばヒト患者に、単回用量または多数用量を投与した際、障害、例えば本明細書記載の障害の開始または再発の発生を防止するかまたは遅延させるのに有効なIL−21/IL−21Rアゴニストの量を指す。
【0049】
例えば、2つの状態間の量的相違を示す、用語「誘導する」、「阻害する」、「増強する」、「上昇させる」、「増加させる」、「減少させる」等は、2つの状態間の、少なくとも統計的に有意な相違を指す。
【0050】
用語「併用して」は、この背景において、剤を、同時にまたは連続していずれかで、実質的に同時期に投与することを意味する。連続して投与した場合、第二の化合物投与の開始時に、好ましくは、2つの化合物の第一のものは、治療部位で、なお有効濃度で検出可能である。
【0051】
本明細書において、「融合タンパク質」は、機能可能であるように会合した、例えば連結された2以上の部分、例えばタンパク質部分を含有するタンパク質を指す。好ましくは、部分は共有的に会合する。該部分は、直接会合することも可能であるし、あるいはスペーサーまたはリンカーを介して連結されることも可能である。
【0052】
本明細書に開示する配列に類似のまたは相同な(例えば少なくとも約85%配列同一性)配列もまた、本出願の一部である。いくつかの態様において、配列同一性は、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれより高いことも可能である。あるいは、核酸セグメントが、選択的ハイブリダイゼーション条件(例えば非常にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件)下で、相補鎖にハイブリダイズする場合、実質的な同一性が存在する。核酸は、全細胞中、細胞溶解物中、あるいは部分的に精製された型または実質的に純粋な型で存在することも可能である。
【0053】
2つの配列間の「相同性」または「配列同一性」(該用語は本明細書において、交換可能に用いられる)の計算を以下のように行う。最適比較目的のため、配列を並列させる(例えば、最適並列のため、第一および第二のアミノ酸または核酸配列の一方または両方に、ギャップを導入することも可能であるし、そして比較目的のため、非相同配列を無視することも可能である)。好ましい態様において、比較目的のため並列させる参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、そしてさらにより好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次いで、対応するアミノ酸位またはヌクレオチド位のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第一の配列の位が、第二の配列の対応する位と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められている場合、該分子は、その位で同一である(本明細書において、アミノ酸または核酸「同一性」は、アミノ酸または核酸「相同性」と均等である)。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適並列のために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れて、配列に共有される同一の位の数の関数である。
【0054】
数学的アルゴリズムを用いて、2つの配列間の配列比較および同一性パーセント決定を達成することも可能である。比較は、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.com)のGAPプログラムおよびパラメーターを用い、パラメーターにはギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、およびフレームシフトギャップペナルティ5を伴うBlosum 62スコアリングマトリックスが含まれる。
【0055】
本明細書において、用語「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を記載する。ストリンジェントな条件は、当業者に知られ、そしてCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,ニューヨーク(1989),6.3.1−6.3.6に見出されることも可能である。水性の方法および非水性の方法が該参考文献に記載され、そしてどちらを使用することも可能である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい一例は、6x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃でのハイブリダイゼーション、その後、0.2xSSC、0.1%SDS中、約50℃での1回以上の洗浄である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の別の例は、6xSSC中、約45℃でのハイブリダイゼーション、その後、0.2xSSC、0.1%SDS中、55℃での1回以上の洗浄である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のさらなる例は、6xSSC中、約45℃でのハイブリダイゼーション、その後、0.2xSSC、0.1%SDS中、60℃での1回以上の洗浄である。好ましくは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、6xSSC中、約45℃でのハイブリダイゼーション、その後、0.2xSSC、0.1%SDS中、65℃での1回以上の洗浄である。特に好ましい非常にストリンジェントな条件(そして分子がハイブリダイゼーション限界内にあるかどうか決定するために、どの条件を適用すべきなのか、実施者が確信できない場合、使用すべき条件)は、0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDS中、65℃でのハイブリダイゼーション、その後、0.2xSSC、1%SDS中、65℃での1回以上の洗浄である。
【0056】
IL−21/IL−21Rアゴニストは、機能に実質的な影響を持たない、さらなる保存的置換または非必須アミノ酸置換を有することも可能である。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を持つアミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を持つアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を持つアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を持つアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖を持つアミノ酸(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を持つアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。
【0057】
IL−21/IL−21Rアゴニスト
本発明の方法および組成物で用いるIL−21/IL−21Rアゴニストは、IL−21ポリペプチド、例えばヒトまたはネズミIL−21ポリペプチド、またはその活性断片(例えば配列番号2に示すアミノ酸配列、または配列番号1に示すヌクレオチド配列がコードする領域を含むアミノ酸配列、または該配列に少なくとも85%、90%、95%、98%またはそれより同一である配列を含む、ヒトIL−21ポリペプチド)(例えば成熟IL−21ポリペプチドをコードする配列番号1の領域)であることも可能である。別の態様において、IL−21/IL−21Rアゴニストは、ネズミIL−21ポリペプチドまたはその活性断片(例えば配列番号4に示すアミノ酸配列、または配列番号3に示すヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列、または該配列に少なくとも85%、90%、95%、98%またはそれより同一である配列を含む、ネズミIL−21ポリペプチド)、あるいは別の哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、ウシなどに由来するIL−21ポリペプチドである。
【0058】
IL−21ポリペプチドのアミノ酸配列は、公的に知られる。例えば、ヒトIL−21のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、GENBANK(登録商標)アクセス番号X_011082号で入手可能である。典型的な開示されるヒトIL−21ヌクレオチド配列を以下に示す:
【0059】
【化1】

【0060】
さらなるヌクレオチド配列情報は、例えばAF254069[gi:11093535]から入手可能であり、これは、典型的なIL−21ポリペプチドをコードする、642bpのmRNA配列を提供する。いくつかの態様において、例えばシグナル配列をコードする領域を除いて、成熟IL−21をコードするヌクレオチド配列の領域を使用すると十分である。典型的な成熟ヒトIL−21ポリペプチドのアミノ酸配列を以下に示す:
【0061】
【化2】

【0062】
成熟配列は、Parrish−Novakら(2000)Nature 408:57−63に基づく。全長配列は:
【0063】
【化3】

【0064】
である。
ヒトIL−21ポリペプチドのアミノ酸配列を提供するさらなるエントリーは以下の通りである:gi|11141875|ref|NP_068575.1|インターロイキン21[Homo sapiens];gi|11093536|gb|AAG29348.1|インターロイキン21[Homo sapiens];gi|42542586|gb|AAH66259.1|インターロイキン21[Homo sapiens];gi|42542588|gb|AAH66260.1|インターロイキン21[Homo sapiens];gi|42542657|gb|AAH66261.1|インターロイキン21[Homo sapiens];gi|42542659|gb|AAH66258.1|インターロイキン21[Homo sapiens];およびgi|42542807|gb|AAH66262.1|インターロイキン21[Homo sapiens]。ヒトIL−21ポリペプチドは、機能性を保持する限り、本明細書記載のポリペプチドの変異体であることも可能である。
【0065】
IL−21ポリペプチドは、本明細書記載の条件下、例えば非常にストリンジェントな条件下(例えば0.1xSSC、65℃)で、配列番号1、配列番号3、配列番号5、または配列番号7に示すヌクレオチド配列、またはその相補体にハイブリダイズする核酸にコードされることも可能である。IL−21/IL−21Rタンパク質または融合タンパク質をコードするが、遺伝暗号の縮重のため、配列番号1、配列番号3、配列番号5、または配列番号7に示すヌクレオチド配列と異なる、単離ポリヌクレオチドを使用することも可能である。点突然変異によって、または誘導された修飾によって引き起こされた、配列番号1、配列番号3、配列番号5、または配列番号7に示すヌクレオチド配列の変型もまた、使用可能である。
【0066】
さらに他の態様において、IL−21/IL−21Rアゴニストは、IL−21ポリペプチド、例えばヒトまたはネズミIL−21ポリペプチド、またはその断片を含み、そして例えば第二の部分、例えばポリペプチド(例えばGST、Lex−A、MBPポリペプチド配列、または例えばFc断片、重鎖定常領域であって:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgEを含む多様なアイソタイプの前記重鎖定常領域を含む、免疫グロブリン鎖)に融合した、融合タンパク質である。
【0067】
融合タンパク質は、IL−21またはIL−21R断片を第二の部分に連結するリンカー配列をさらに含むことも可能である。例えば、融合タンパク質は、ペプチドリンカー、例えば長さ約4〜20アミノ酸、より好ましくは5〜10アミノ酸のペプチドリンカーを含むことも可能であり;ペプチドリンカーは長さ8アミノ酸である。ペプチドリンカー中の各アミノ酸は、Gly、Ser、Asn、ThrおよびAlaからなる群より選択され;ペプチドリンカーはGly−Ser要素を含む。他の態様において、融合タンパク質はペプチドリンカーを含み、そしてペプチドリンカーは式(Ser−Gly−Gly−Gly−Gly、配列番号11)を有する配列を含み、式中、yは例えば1、2、3、4、5、6、7、または8である。
【0068】
他の態様において、融合タンパク質のN末端またはC末端にさらなるアミノ酸配列を付加して、発現、検出および/または単離または精製を容易にすることも可能である。例えば、IL−21融合タンパク質を、1以上のさらなる部分、例えばGST、His6タグ、FLAGタグに連結することも可能である。例えば、融合タンパク質をさらにGST融合タンパク質に連結することも可能であり、ここで融合タンパク質配列は、GST(すなわちグルタチオン−S−トランスフェラーゼ)配列のC末端に融合される。こうした融合タンパク質は、融合タンパク質の精製を容易にすることも可能である。
【0069】
別の態様において、融合タンパク質は、N末端に異種シグナル配列(すなわちIL−21核酸にコードされるポリペプチドには存在しないポリペプチド配列)を含む。例えば、天然シグナル配列を除去し、そして別のタンパク質由来のシグナル配列と置き換えることも可能である。特定の宿主細胞(例えば哺乳動物宿主細胞)において、異種シグナル配列の使用を通じて、IL−21/IL−21Rアゴニストの発現および/または分泌を増加させることも可能である。類似の方法を用いて、IL−21Rタンパク質およびその断片を産生し、例えばIL−21Rと相互作用するアゴナイズ抗体を得るための免疫原を提供することもまた可能である。
【0070】
標準的組換えDNA技術によって、キメラタンパク質または融合タンパク質を産生することも可能である。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNA断片を、慣用的技術にしたがって、例えば連結のため、平滑端またはねじれ(stagger)端の制限酵素消化を使用して、適切な末端を提供し、適切なように粘着端を埋め込み、アルカリホスファターゼ処理して、望ましくない連結を回避し、そして酵素的に連結することによって、異なるポリペプチド配列をコードするDNA断片を、ともにインフレームで連結する。別の態様において、自動化DNA合成装置を含む慣用的技術によって、融合遺伝子を合成することも可能である。あるいは、2つの連続遺伝子断片間に相補的オーバーハングを生じさせるアンカープライマーを用いて、遺伝子断片のPCR増幅を行うことも可能であり、この断片を続いてアニーリングして、そして再増幅してキメラ遺伝子配列を生成することも可能である(例えば、Ausubelら(監修)CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley & Sons,1992を参照されたい)。さらに、融合部分(例えば免疫グロブリン重鎖のFc領域)をコードする、多くの発現ベクターが商業的に入手可能である。融合部分が、免疫グロブリンタンパク質にインフレームで連結されるように、核酸をコードするIL−21/IL−21Rアゴニストをこうした発現ベクターにクローニングすることも可能である。
【0071】
いくつかの態様において、融合ポリペプチドは、二量体(例えばホモ二量体またはヘテロ二量体)または三量体などのオリゴマーとして存在することも可能である。当該技術分野に知られる方法を用いて、第一のポリペプチド、および/または第一のポリペプチドをコードする核酸を構築することも可能である。
【0072】
いくつかの態様において、第一のポリペプチドには、全長IL−21/IL−21Rアゴニストポリペプチド(例えばIL−21自体)が含まれる。あるいは、第一のポリペプチドは全長IL−21/IL−21Rポリペプチドに満たないものを含む。融合タンパク質に含まれることも可能なシグナルペプチドは、MPLLLLLLLLPSPLHP(配列番号9)である。望ましい場合、IL−21/IL−21Rアゴニスト部分を含む第一のポリペプチド部分および第二のポリペプチド部分間に、1以上のアミノ酸をさらに挿入することも可能である。
【0073】
第二のポリペプチドは、好ましくは可溶性である。いくつかの態様において、第二のポリペプチドは、連結されたポリペプチドの半減期(例えば血清半減期)を増進させる。いくつかの態様において、第二のポリペプチドには、第二のIL−21/IL−21Rアゴニストポリペプチドと該融合ポリペプチドの会合を容易にする配列が含まれる。好ましい態様において、第二のポリペプチドには、免疫グロブリンポリペプチドの少なくとも1領域が含まれる。免疫グロブリン融合ポリペプチドは当該技術分野に知られ、そして例えば米国特許第5,516,964号;第5,225,538号;第5,428,130号;第5,514,582号;第5,714,147号;および第5,455,165号に記載される。
【0074】
いくつかの態様において、第二のポリペプチドは、全長免疫グロブリンポリペプチドを含む。あるいは、第二のポリペプチドは、全長に満たない免疫グロブリンポリペプチド、例えば重鎖、軽鎖、Fab、Fab、Fv、またはFcを含む。第二のポリペプチドには、免疫グロブリンポリペプチドの重鎖が含まれることも可能である。第二のポリペプチドには、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域が含まれることも可能である。
【0075】
いくつかの態様において、第二のポリペプチドは、野生型免疫グロブリン重鎖のFc領域のエフェクター機能よりも少ないエフェクター機能を有する。Fcエフェクター機能には、例えば、Fc受容体結合、補体結合およびT細胞枯渇活性が含まれる(例えば米国特許第6,136,310号を参照されたい)。T細胞枯渇活性、Fcエフェクター機能、および抗体安定性をアッセイするための方法が当該技術分野に知られる。1つの態様において、第二のポリペプチドは、Fc受容体に低い親和性を有するかまたはまったく親和性を持たない。別の態様において、第二のポリペプチドは、補体タンパク質C1qに低い親和性を有するかまたはまったく親和性を持たない。
【0076】
タンパク質を組換え的に産生するため、本明細書記載の単離IL−21/IL−21Rアゴニストポリヌクレオチドを、Kaufmanら,Nucleic Acids Res.19,4485−4490(1991)に開示されるpMT2またはpED発現ベクターなどの発現調節配列に、機能可能であるように連結することも可能である。多くの適切な発現調節配列が当該技術分野に知られる。組換えタンパク質を発現する一般的な方法もまた知られ、そしてR.Kaufman,Methods in Enzymology 185,537−566(1990)に例示される。本明細書で定義するような「機能可能であるように連結された」は、連結されたポリヌクレオチド/発現調節配列で形質転換(トランスフェクション)されている宿主細胞によって、目的のタンパク質(例えばIL−21または別のIL−21/IL−21Rアゴニスト)が発現されるように、目的のタンパク質をコードする特定のポリヌクレオチドおよび発現調節配列の間で共有結合が形成されるよう、酵素的または化学的に連結されていることを意味する。
【0077】
用語「ベクター」は、本明細書において、連結されている別の核酸を輸送するか、または該核酸の維持または複製を持続させることが可能な核酸分子を指すよう意図される。ベクターの1つの種類は、「プラスミド」であり、これは、環状二本鎖DNAループを指し、この中にさらなるDNAセグメントを連結することも可能である。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、さらなるDNAセグメントをウイルスゲノム内に連結することも可能である。特定のベクターは、導入された宿主内で自律複製することが可能である(例えば細菌複製起点を有する細菌ベクター、およびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入されると、宿主細胞ゲノム内に組み込まれることも可能であり、そしてそれによって宿主ゲノムとともに複製される。さらに、特定のベクターは、機能可能であるように連結された遺伝子の発現を指示することが可能である。こうしたベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と称される。一般的に、組換えDNA技術において、有用な発現ベクターは、しばしば、プラスミドの形である。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は、交換可能に使用可能であり、これはプラスミドが、ベクターの最も一般的に用いられる型であるためである。しかし、本発明は、均等の機能を果たす、ウイルスベクター(例えば複製不全レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルス)などの発現ベクターの他の形を含むと意図される。
【0078】
用語「制御配列」は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を調節する、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現調節要素(例えばポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。こうした制御配列は、例えば、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,カリフォルニア州サンディエゴ(1990)に記載される。当業者は、制御配列の選択を含めて、発現ベクターの設計が、形質転換しようとする宿主細胞の選択、望ましいタンパク質の発現レベルなどの要因に応じる可能性もあることを認識するであろう。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい制御配列には、哺乳動物細胞において、高レベルのタンパク質発現を指示するウイルス要素、例えばFF−1aプロモーターおよびBGHポリA、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、サル・ウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマ由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーが含まれる。ウイルス制御要素のさらなる説明、およびその配列に関しては、例えば、Stinskiによる米国特許第5,168,062号、Bellらによる米国特許第4,510,245号、およびSchaffnerらによる米国特許第4,968,615号を参照されたい。
【0079】
組換え発現ベクターは、さらなる配列、例えば宿主細胞におけるベクターの複製を制御する配列(例えば複製起点)および選択可能マーカー遺伝子を所持することも可能である。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えばすべてAxelらによる米国特許第4,399,216号、第4,634,665号、および第5,179,017号を参照されたい)。例えば、典型的には、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞に、G418、ハイグロマイシン、またはメトトレキセートなどの薬剤に対する耐性を与える。好ましい選択可能マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(dhfr−宿主細胞中、メトトレキセート選択/増幅とともに用いるため)およびneo遺伝子(G418選択のため)が含まれる。
【0080】
いくつかの種類の細胞が、IL−21/IL−21Rアゴニストタンパク質またはその融合タンパク質の発現に適した宿主細胞として作用しうる。機能するIL−21/IL−21Rタンパク質を発現可能な細胞種いずれを使用することも可能である。適切な哺乳動物宿主細胞には、例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト腎臓293細胞、ヒト上皮A431細胞、ヒトColo205細胞、3T3細胞、CV−1細胞、他の形質転換霊長類細胞株、正常二倍体細胞、初代組織のin vitro培養由来の細胞株、初代外植片、HeLa細胞、マウスL細胞、BHK、HL−60、U937、HaK、Rat2、BaF3、32D、FDCP−1、PC12、M1xまたはC2C12細胞が含まれる。
【0081】
1以上の昆虫発現ベクター中で、適切な調節配列に、IL−21/IL−21Rアゴニストタンパク質またはその融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを機能可能であるように連結し、そして昆虫発現系を使用することによって、こうしたタンパク質を産生することもまた可能である。バキュロウイルス/昆虫細胞発現系の材料および方法は、例えばInvitrogen、米国カリフォルニア州サンディエゴからキットの形(MAXBAC(登録商標)キット)で商業的に入手可能であり、そしてこうした方法は、本明細書に援用されるSummersおよびSmith,Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555(1987)に記載されるように、当該技術分野に周知である。MU−1タンパク質の可溶性型もまた、上述のような適切な単離ポリヌクレオチドを用いて、昆虫細胞中で産生可能である。
【0082】
あるいは、IL−21/IL−21Rアゴニストタンパク質またはその融合タンパク質を酵母などのより低次の真核生物または細菌などの原核生物において、産生することも可能である。適切な酵母株には、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クロイベロミセス属(Kluyveromyces)株、カンジダ属(Candida)、または異種タンパク質を発現可能な酵母株いずれかが含まれる。適切な細菌株には、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、または異種タンパク質を発現可能な細菌株いずれかが含まれる。
【0083】
1つの態様において、シグナル配列を伴わずに(例えば原核生物シグナル配列または真核生物シグナル配列いずれも含まずに)細菌中でIL−21を産生する。細菌中の発現は、組換えタンパク質を取り込んだ封入体の形成を生じることも可能である。したがって、活性物質またはより活性である物質を産生するため、組換えタンパク質の再フォールディングが必要である可能性もある。細菌封入体から、正しくフォールディングされた異種タンパク質を得るためのいくつかの方法が、当該技術分野に知られる。これらの方法は、一般的に、封入体からタンパク質を可溶化し、次いでカオトロピック剤を用いて、該タンパク質を完全に変性させることを含む。
【0084】
タンパク質の一次アミノ酸配列に、システイン残基が存在している場合、ジスルフィド結合の正しい形成を容易にする環境で、タンパク質を再フォールディングさせることも可能である(例えばレドックス系)。再フォールディングの一般的な方法が、Kohno,Meth.Enzym.,185:187−195(1990)、EP0433225およびU.S.5,399,677に開示されている。Asanoら(2002)FEBS Lett.528(1−3):70−6は、細菌細胞で産生したIL−21を再フォールディングさせる典型的な方法を記載する。例えば、大腸菌において、不溶性封入体として、rIL−21(組換えIL−21)を発現させ、次いで可溶化し(例えば変性剤を用いて)そしてレドックス試薬を導入する修飾透析法を用いることによって、再フォールディングさせる。
【0085】
IL−21/IL−21Rアゴニストタンパク質またはその融合タンパク質はまた、トランスジェニック動物の産物として、例えばIL−21/IL−21Rアゴニストタンパク質またはその融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含有する体細胞または生殖細胞によって特徴付けられる、トランスジェニック・ウシ、ヤギ、ブタ、またはヒツジのミルクの構成要素として、発現させることも可能である。
【0086】
望ましいタンパク質を発現させるのに必要な培養条件下で、培養形質転換宿主細胞を増殖させることによって、IL−21/IL−21Rアゴニストタンパク質またはその融合タンパク質を調製することも可能である。次いで、生じた発現タンパク質を培地または細胞抽出物から精製することも可能である。IL−21/IL−21Rアゴニストタンパク質またはその融合タンパク質の可溶性型を馴化培地から精製することも可能である。発現細胞から総膜分画を調製し、そしてTriton X−100などの非イオン性界面活性剤を用いて膜を抽出することによって、膜結合型のMU−1タンパク質を精製することも可能である。
【0087】
当業者に知られる方法を用いて、IL−21/IL−21Rアゴニストタンパク質または融合タンパク質を精製することも可能である。例えば、商業的に入手可能なタンパク質濃縮フィルター、例えばAMICON(登録商標)またはMILLIPORE(登録商標)PELLICONTM限外ろ過装置を用いて、IL−21/IL−21Rアゴニストタンパク質を濃縮することも可能である。濃縮工程後、濃縮物を、ゲルろ過媒体などの精製マトリックスに適用することも可能である。あるいは、陰イオン交換樹脂、例えばペンダント・ジエチルアミノエチル(DEAE)またはポリエチレンイミン(PEI)基を有するマトリックスまたは支持体を使用することも可能である。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロースまたはタンパク質精製に一般的に使用される他の種類であることも可能である。あるいは、陽イオン交換工程を使用することも可能である。適切な陽イオン交換基には、スルホプロピル基またはカルボキシメチル基を含む多様な不溶性マトリックスが含まれる。スルホプロピル基が好ましい(例えばS−Sepharose(登録商標)カラム)。培養上清からのMU−1タンパク質または融合タンパク質の精製には、コンカナバリンA−アガロース、ヘパリン−TOYOPEARL(登録商標)またはCibacromブルー3GA SEPHAROSE(登録商標)などのアフィニティー樹脂上の1以上のカラム工程;あるいはフェニルエーテル、ブチルエーテル、またはプロピルエーテルなどの樹脂を用いた疎水性相互作用クロマトグラフィーによるカラム工程;あるいはイムノアフィニティークロマトグラフィーによるカラム工程が含まれることもまた、可能である。最後に、逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)疎水性媒体、例えばペンダント・メチルまたは他の脂肪族基を有するシリカゲルを使用した、1以上のRP−HPLC工程を使用して、IL−21/IL−21Rアゴニストタンパク質をさらに精製することも可能である。既知の方法にしたがって、IL−21/IL−21Rアゴニストタンパク質に対する抗体を含むアフィニティーカラムを精製に使用することも可能である。前述の精製工程のいくつかまたはすべてを、多様な組み合わせで、または他の既知の方法とともに使用して、実質的に精製された単離組換えタンパク質を提供することも可能である。好ましくは、他の哺乳動物タンパク質を実質的に含まないように、または細菌で産生した場合、他の細菌タンパク質、例えば内毒素を実質的に含まないように、単離IL−21/IL−21Rアゴニストタンパク質を精製する。
【0088】
他の態様において、IL−21/IL−21Rアゴニストは、例えばIL−21R、好ましくは、哺乳動物(例えばヒトまたはネズミ)IL−21またはIL−21Rに結合し、そしてIL−21R活性を活性化させる抗体、またはその抗原結合断片である。
【0089】
本明細書において、用語「抗体」は、少なくとも1つ、そして好ましくは2つの重(H)鎖可変領域(本明細書において、VHと略す)、および少なくとも1つ、そして好ましくは2つの軽(L)鎖可変領域(本明細書において、VLと略す)を含むタンパク質を指す。さらに、VH領域およびVL領域を、「相補性決定領域」(「CDR」)と称する超可変領域にさらに分割することも可能であり、この領域間には、「フレームワーク領域」(FR)と称する、より保存される領域が散在する。フレームワーク領域およびCDR領域の範囲は、正確に定義されてきている(本明細書に援用される、Kabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,米国保健社会福祉局,NIH刊行物第91−3242号、およびChothia,C.ら(1987)J.Mol.Biol.196:901−917を参照されたい)。各VHおよびVLは、以下の順:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で、アミノ末端からカルボキシ末端に配置された、3つのCDRおよび4つのFRで構成される。
【0090】
抗体は、重鎖および軽鎖の定常領域をさらに含むことも可能であり、それによってそれぞれ、重鎖および軽鎖の免疫グロブリン鎖が形成される。1つの態様において、抗体は、2つの重鎖免疫グロブリンおよび2つの軽鎖免疫グロブリンの四量体であり、ここで重鎖および軽鎖免疫グロブリンは、例えばジスルフィド結合によって、相互連結される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLで構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、典型的には、免疫系の多様な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第一の構成要素(C1q)を含む、宿主組織または因子に対する抗体の結合を仲介する。
【0091】
本明細書において、用語「免疫グロブリン」は、免疫グロブリン遺伝子に実質的にコードされる1以上のポリペプチドからなるタンパク質を指す。認知されているヒト免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ(IgA1およびIgA2)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子とともに、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25kDまたは214アミノ酸)は、NH2末端の可変領域遺伝子(約110アミノ酸)およびCOOH末端のカッパまたはラムダ定常領域遺伝子にコードされる。全長免疫グロブリン「重鎖」(約50kDまたは446アミノ酸)は、同様に、可変領域遺伝子(約116アミノ酸)および前述の定常領域遺伝子の1つ、例えばガンマ(約330アミノ酸をコードする)にコードされる。
【0092】
本明細書において、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子にコードされる抗体クラス(例えばIgMまたはIgG1)を指す。
用語、抗体の「抗原結合断片」(あるいは単に「抗体部分」または「断片」)は、本明細書において、抗原(例えばIL−21R)に特異的に結合する能力を保持する全長抗体の1以上の断片を指す。用語、抗体の「抗原結合断片」に含まれる結合断片の例には(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメインおよびCH1ドメインからなる一価断片である、Fab断片;(ii)ヒンジ領域のジスルフィド架橋に連結される2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab’)断片;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片;(v)VHドメインからなるdAb断片(Wardら(1989)Nature 341:544−546);並びに(vi)単離相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは、別個の遺伝子にコードされているが、組換え法を用い、VL領域およびVH領域が対形成して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖として作成することを可能にする合成リンカーによって、これらを連結することも可能である(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Birdら(1988)Science 242:423−426;およびHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883を参照されたい)。こうした一本鎖抗体もまた、用語、抗体の「抗原結合断片」内に含まれると意図される。当業者に知られる慣用的技術を用いてこれらの抗体断片を得て、そして損なわれていない(intact)抗体の場合と同じ方式で、有用性に関してスクリーニングする。「有効ヒト」免疫グロブリン可変領域は、正常なヒトにおいて、該免疫グロブリン可変領域が免疫原性応答を誘発しないように、十分な数のヒト・フレームワークアミノ酸位を含む免疫グロブリン可変領域である。「有効ヒト」抗体は、正常なヒトにおいて、該抗体が免疫原性応答を誘発しないように、十分な数のヒト・アミノ酸位を含む抗体である。ヒトおよび有効ヒト免疫グロブリン可変領域および抗体を使用することも可能である。
【0093】
IL−21またはIL−21Rタンパク質を用いて、動物(例えば非ヒト動物、およびヒト免疫グロブリン遺伝子を含む非ヒト動物)を免疫して、IL−21/IL−21Rアゴニストタンパク質と特異的に反応し、そしてIL−21Rを活性化することも可能なポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を得ることも可能である。免疫原として全IL−21/IL−21Rアゴニストタンパク質を用いて、またはIL−21/IL−21R断片を用いることによって、こうした抗体を得ることも可能である。ペプチド免疫原は、さらに、カルボキシ末端にシステイン残基を含有することも可能であり、そしてこれをキーホールリンペット(keyhole limpet)ヘモシアニン(KLH)などのハプテンにコンジュゲート化する。チロシン残基を硫酸化チロシン残基で置き換えることによって、さらなるペプチド免疫原を生成することも可能である。こうしたペプチドを合成するための方法が、例えばR.P.Merrifield,J.Amer.Chem.Soc.85,2149−2154(1963);J.L.Krstenanskyら,FEBS Lett.211,10(1987)におけるように、当該技術分野に知られる。
【0094】
マウス系でなく、ヒト免疫グロブリン遺伝子を所持するトランスジェニックマウスを用いて、IL−21またはIL−21Rに対して向けられるヒトモノクローナル抗体(mAb)を生成することも可能である。目的の抗原で免疫した、これらのトランスジェニックマウス由来の脾臓細胞を用いて、ヒト・タンパク質由来のエピトープに特異的親和性を持つヒトmAbを分泌するハイブリドーマを産生する(例えば、WO91/00906、WO91/10741;WO92/03918;WO92/03917;Lonberg,N.ら 1994 Nature 368:856−859;Green,L.L.ら 1994 Nature Genet.7:13−21;Morrison,S.L.ら 1994 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855;Bruggemanら 1993 Year Immunol 7:33−40;Tuaillonら 1993 PNAS 90:3720−3724;Bruggemanら 1991 Eur J Immunol 21:1323−1326を参照されたい)。
【0095】
組換えDNA技術の当業者に知られる他の方法によって、モノクローナル抗体を生成することもまた可能である。特定の抗原特異性を有する抗体断片を同定し、そして単離するための「コンビナトリアル抗体ディスプレイ」法と称される代替法が開発されてきており、そして該方法を利用してモノクローナル抗体を産生することも可能である(コンビナトリアル抗体ディスプレイの説明に関しては、例えばSastryら 1989 PNAS 86:5728;Huseら 1989 Science 246:1275;およびOrlandiら 1989 PNAS 86:3833を参照されたい)。上述のような免疫原で動物を免疫した後、生じたB細胞プールの抗体レパートリーをクローニングする。オリゴマー・プライマーの混合物およびPCRを用いることによって、免疫グロブリン分子の多様な集団の可変領域のDNA配列を得るための方法が一般的に知られる。例えば、5’リーダー(シグナルペプチド)配列および/またはフレームワーク1(FR1)配列に対応する混合オリゴヌクレオチドプライマーとともに、保存される3’定常領域プライマーに対するプライマーを、いくつかのネズミ抗体由来の重鎖および軽鎖の可変領域のPCR増幅のために使用することも可能である(Larrickら,1991,Biotechniques 11:152−156)。同様の戦略を用いて、ヒト抗体由来のヒト重鎖および軽鎖の可変領域を増幅することもまた可能である(Larrickら,1991,Methods:Companion to Methods in Enzymology 2:106−110)。
【0096】
当該技術分野に知られる組換えDNA技術によって、キメラ免疫グロブリン鎖を含むキメラ抗体を産生することも可能である。例えば、ネズミ(または他の種)のモノクローナル抗体分子のFc定常領域をコードする遺伝子を制限酵素で消化して、ネズミFcをコードする領域を除去して、そしてヒトFc定常領域をコードする遺伝子の均等部分で置換する(Robinsonら、国際特許刊行物PCT/US86/02269;Akiraら、欧州特許出願184,187;Taniguchi,M.、欧州特許出願171,496;Morrisonら、欧州特許出願173,494;Neubergerら、国際出願WO86/01533;Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Cabillyら、欧州特許出願125,023;Betterら(1988 Sicence 240:1041−1043);Liuら(1987)PNAS 84:3439−3443;Liuら,1987,J.Immunol.139:3521−3526;Sunら(1987)PNAS 84:214−218;Nishimuraら,1987,Canc.Res.47:999−1005;Woodら(1985)Nature 314:446−449;およびShawら,1988,J.Natl Cancer Inst.80:1553−1559を参照されたい)。
【0097】
当該技術分野に知られる方法によって、抗体または免疫グロブリン鎖をヒト化することも可能である。抗原結合に直接関与しないFv可変領域の配列を、ヒトFv可変領域由来の均等配列で置き換えることによって、ヒト化免疫グロブリン鎖を含むヒト化抗体を生成することも可能である。ヒト化抗体を生成する一般的な方法は、Morrison,S.L.,1985,Science 229:1202−1207、Oiら,1986,BioTechniques 4:214、およびQueenら、US5,585,089、US5,693,761およびUS5,693,762に提供され、これら文献のすべての内容は、本明細書に援用される。これらの方法は、少なくとも1つの重鎖または軽鎖由来の免疫グロブリンFv可変領域のすべてまたは一部をコードする核酸配列を単離し、操作し、そして発現させることを含む。こうした核酸の供給源は当業者に周知であり、そして例えば、あらかじめ決定されたターゲットに対する抗体を産生するハイブリドーマから得ることも可能である。次いで、ヒト化抗体をコードする組換えDNA、またはその断片を、適切な発現ベクターにクローニングすることも可能である。
【0098】
CDR移植またはCDR置換によって、ヒト化またはCDR移植抗体分子または免疫グロブリンを産生することも可能であり、ここで、免疫グロブリン鎖の1つ、2つ、またはすべてのCDRを置き換えることも可能である。例えば、そのすべての内容が明確に本明細書に援用される、米国特許第5,225,539号;Jonesら 1986 Nature 321:552−525;Verhoeyanら 1988 Science 239:1534;Beidlerら 1988 J.Immunol.141:4053−4060;Winter US5,225,539を参照されたい。Winterは、ヒト化抗体を調製するのに使用可能なCDR移植法を記載し(英国特許出願GB2188638A、1987年3月26日出願;Winter US5,225,539)、その内容は明確に本明細書に援用される。特定のヒト抗体のCDRすべてを、非ヒトCDRの少なくとも一部で置き換えることも可能であるし、またはいくつかのCDRのみを非ヒトCDRで置き換えることも可能である。あらかじめ決定された抗原に対するヒト化抗体の結合に必要な数のCDRを置き換えれば十分である。
【0099】
いくつかの実施において、例えば抗体の他の部分、例えば定常領域を欠失させ、付加し、または置換することによって、モノクローナル抗体、キメラ抗体、およびヒト化抗体を修飾することも可能である。例えば、抗体を以下のように修飾することも可能である:(i)定常領域を欠失させることによって;(ii)定常領域を別の定常領域、例えば抗体の半減期、安定性または親和性を増加させる定常領域、または別の種もしくは抗体クラス由来の定常領域で置き換えることによって;あるいは(iii)定常領域中の1以上のアミノ酸を修飾して、例えばとりわけグリコシル化部位の数、エフェクター細胞機能、Fc受容体(FcR)結合、補体結合を改変することによって。
【0100】
抗体定常領域を改変するための方法が当該技術分野に知られる。抗体の定常部の少なくとも1つのアミノ酸残基を、異なる残基で置き換えることによって、機能が改変された抗体、例えば細胞上のFcRまたは補体のC1構成要素などのエフェクターリガンドに対する親和性が改変された抗体を産生することも可能である(例えば、EP388,151 A1、US5,624,821およびUS5,648,260を参照されたい)。ネズミまたは他の種の免疫グロブリンに適用した場合、これらの機能を減少させるかまたは除去するであろう、類似の種類の改変を記載することも可能である。
【0101】
例えば、明記される残基(単数または複数)を、側鎖上に適切な官能性を有する残基(単数または複数)で置き換えるか、あるいはグルタミン酸またはアスパラギン酸などの荷電官能基を導入するか、あるいはおそらくフェニルアラニン、チロシン、トリプトファンまたはアラニンなどの芳香族非極性残基を導入することによって、FcR(例えばFcガンマR1)またはC1q結合に関する抗体(例えばIgG、例えばヒトIgG)のFc領域の親和性を改変することが可能である(例えばUS5,624,821を参照されたい)。
【0102】
1つの態様において、IL−21Rのアゴニストは、IL−21Rおよび別の受容体サブユニット、例えばγcと相互作用する剤である。例えば、剤は、IL−21Rおよび別の受容体サブユニット、例えばγcと相互作用するタンパク質であることも可能である。該タンパク質は、例えば、IL−21Rと相互作用する1つの抗原結合部位、およびγcと相互作用する別の抗原結合部位を含む、二重特異性抗体であることも可能である。こうしたタンパク質の結合を用いて、受容体を架橋し、そしてアゴナイズし、例えばSTAT3またはSTAT5のシグナル伝達を活性化するかまたは増加させることも可能である。
【0103】
1つの態様において、IL−21/IL−21Rアゴニストは、IL−21およびIL−21Rの一方または両方と結合することによって、IL−21/IL−21R相互作用を安定化させる剤(例えば免疫グロブリン)である。
【0104】
当該技術分野に知られる方法を用いて、IL−21/IL−21Rタンパク質のアゴニストを、例えば、IL−21Rポリペプチドの結合および/または活性化に関してスクリーニングすることも可能である。固定されているかまたは固定されていない、望ましい結合タンパク質を用いた結合アッセイが当該技術分野に知られ、そして本明細書記載のIL−21Rタンパク質を用いて、この目的のために使用可能である。精製した細胞に基づくスクリーニングアッセイまたはタンパク質に基づく(細胞不含)スクリーニングアッセイを用いて、こうしたアゴニストを同定することも可能である。例えば、IL−21Rタンパク質をキャリアー上に精製型で固定し、そして精製IL−21Rタンパク質に対する潜在的なリガンドの結合を測定することも可能である。IL−21R活性およびSTAT3またはSTAT5のシグナル伝達を評価するための細胞に基づくアッセイが知られる。例を本明細書に記載する。
【0105】
薬剤組成物
IL−21/IL−21Rアゴニストを、薬学的に許容しうるキャリアーと組み合わせると、薬剤組成物として用いることも可能である。こうした組成物は、IL−21/IL−21Rアゴニストおよびキャリアーに加えて、多様な希釈剤、増量剤(filler)、塩、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤、および当該技術分野に周知の他の物質を含有することも可能である。用語「薬学的に許容しうる」は、活性成分(単数または複数)の生物学的活性の有効性に干渉しない、非毒性物質を意味する。キャリアーの特性は、投与経路に応じるであろう。
【0106】
薬剤組成物は、以下に詳細に記載するような他の抗炎症剤をさらに含有することも可能である。こうしたさらなる因子および/または剤を薬剤組成物中に含んで、IL−21/IL−21Rアゴニストとの相乗効果を生じるか、またはIL−21/IL−21Rアゴニストに引き起こされる副作用を最小限にすることも可能である。逆に、IL−21/IL−21Rアゴニストを特定の抗炎症剤の配合物に含んで、抗炎症剤の副作用を最小限にすることも可能である。
【0107】
薬剤組成物は、リポソームの形であることも可能であり、この場合は、IL−21/IL−21R−アゴニストが、他の薬学的に許容しうるキャリアーに加えて、水性溶液中のミセル、不溶性単層、液体結晶、または薄板状層として、凝集された形で存在する、脂質などの両親媒性剤と組み合わされている。リポソーム配合物に適した脂質には、限定なしに、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸等が含まれる。こうしたリポソーム配合物の調製は、すべて本明細書に援用される、米国特許第4,235,871号;米国特許第4,501,728号;米国特許第4,837,028号;および米国特許第4,737,323号に開示されるように、当該技術分野の技術レベル内である。
【0108】
本明細書において、用語「療法的有効量」は、薬剤組成物または方法の各活性構成要素の総量が、患者の意義ある利益、例えばこうした状態の症状の改善、その回復、または回復速度の増加を示すのに十分であることを意味する。単独で投与される個々の活性成分に適用した場合、該用語は、その成分のみを指す。併用に適用した場合、該用語は、連続してまたは同時に、併用投与したのであれ、療法効果を生じる活性成分の組み合わせた量を指す。
【0109】
治療法または使用の実施において、療法的有効量のIL−21/IL−21R−アゴニストを被験者、例えば哺乳動物(例えばヒト)に投与する。IL−21/IL−21R−アゴニストを、単独で、または抗炎症剤を使用する治療などの他の療法と併用して投与することも可能である。1以上の剤と同時投与する場合、IL−21および/またはIL−21R−アゴニストを第二の剤と同時に、または連続して投与することも可能である。連続して投与する場合、他の剤と併用してIL−21/IL−21R−アゴニストを投与するのに適した順序を主治医が決定することも可能である。
【0110】
薬剤組成物中で用いるか、または本発明の方法を実施する、IL−21/IL−21R−アゴニストの投与を、経口摂取、頭蓋内、吸入、または皮膚、皮下、または静脈内注射または投与などの多様な慣用法で行うことも可能である。例えば、硬膜外または別の方式で、例えば脳脊髄液に組成物を搬送することも可能である。
【0111】
療法的有効量のIL−21/IL−21R−アゴニストを経口投与する場合、結合剤は、錠剤、カプセル、粉末、溶液またはエリキシル剤の形であろう。錠剤型で投与する場合、薬剤組成物は、ゼラチンまたはアジュバントなどの固体キャリアーをさらに含有することも可能である。錠剤、カプセル、および粉末は、約5〜95%の結合剤、そして好ましくは約25〜90%の結合剤を含有する。液体型で投与する場合、水、石油、動物または植物起源の油、例えばピーナツ油、ミネラルオイル、大豆油、またはゴマ油、あるいは合成油などの液体キャリアーを添加することも可能である。薬剤組成物の液体型は、生理学的生理食塩水溶液、デキストロースまたは他の糖類溶液、あるいはエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールをさらに含有することも可能である。液体型で投与する場合、薬剤組成物は、重量約0.5〜90%の結合剤、そして好ましくは、約1〜50%の結合剤を含有する。
【0112】
療法的有効量のIL−21/IL−21R−アゴニストを静脈内、皮膚または皮下注射によって投与する場合、結合剤は、発熱物質不含の非経口的に許容しうる水性溶液の形であろう。pH、等張性、安定性等を十分考慮した、こうした非経口的に許容しうるタンパク質溶液の調製は、当該技術分野の範囲内である。静脈内、皮膚、または皮下注射に好ましい薬剤組成物は、結合剤に加えて、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、乳酸加リンゲル注射液、または当該技術分野に知られる他のビヒクルなどの等張ビヒクルを含有しなければならない。本発明の薬剤組成物はまた、安定化剤、保存剤、緩衝剤、酸化防止剤、または当業者に知られる他の添加剤も含有することも可能である。
【0113】
本発明の薬剤組成物中のIL−21/IL−21R−アゴニストの量は、治療する状態の性質および重症度、並びに患者が経験した以前の治療の性質に応じることも可能である。主治医は、各個々の患者を治療するアゴニストの量を決定することも可能である。例えばまず、主治医は、低用量の結合剤を投与し、そして患者の反応を観察することも可能である。患者にとって最適な療法効果が得られるまで、より多い用量の結合剤を投与して、そして一般的にその時点で投薬量はさらに増加されないことも可能であるし、またはサイトカインレベルまたは1以上の症状を監視することによることも可能である。本発明の方法の実施に用いる多様な薬剤組成物が、体重kgあたり、約0.1μg〜約100mgのIL−21/IL−21R−アゴニストを含有すべきであることが意図される。例えば、有用な投薬量には、体重kgあたり、約10μg〜1mg、0.1〜5mg、および3〜50mgのIL−21/IL−21Rアゴニストが含まれることも可能である。IL−21の有用な投薬量には、さらに、体重kgあたり、約5μg〜1mg、0.1〜5mg、および3〜20mgのIL−21/IL−21Rアゴニストが含まれることも可能である。
【0114】
薬剤組成物を用いた静脈内療法の期間は、治療する疾患の重症度、並びに各個々の患者の状態および潜在的な固有の反応に応じて多様であることも可能である。IL−21/IL−21R−アゴニストの各適用期間は、連続静脈内投与では、例えば12〜24時間の範囲内であることも可能である。主治医は、本発明の薬剤組成物を用いた静脈内療法の適切な期間を決定することも可能である。
【0115】
IL−21/IL−21アゴニストに加えて、こうしたアゴニストがタンパク質である場合、こうしたタンパク質をコードするポリヌクレオチドの投与または使用(例えば遺伝子治療またはDNAの導入に適したベクター中)によって、疾患または障害を治療するかまたは防止することも可能である。
【0116】
免疫応答を増進するためのIL−21/IL−21R−アゴニストの使用
1つの側面において、本発明は、被験者において、神経系の免疫学的障害(例えば多発性硬化症を含む、神経系の慢性免疫学的障害)を治療する(例えば治癒させる、抑制する、改善する、該障害の開始を遅延させるかまたは防止する、あるいは該障害の反復または再発を防止する)かまたは防止するための方法を提供する。該方法は:免疫細胞活性および/または細胞数を調節する(例えばサイトカインレベル、例えばサイトカイン発現、産生および/または放出を調節する)のに十分な量のIL−21/IL−21Rアゴニストを被験者に投与し、それによって、神経系の免疫学的障害、例えば多発性硬化症を治療するかまたは防止することを含む。
【0117】
多発性硬化症(MS)は、炎症およびミエリン鞘の欠損によって特徴付けられる中枢神経系の疾患であり、ミエリン鞘は、神経を絶縁し、そして適切な神経機能に必要な脂肪性物質である。IL−21が調節する免疫応答から生じる炎症を、本明細書記載のIL−21/IL−21Rアゴニストで防止するかまたは治療することも可能である。多発性硬化症の実験自己免疫脳炎(EAE)マウスモデル(Tuohyら(J.Immunol.(1988)141:1126−1130)、Sobelら(J.Immunol.(1984)132:2393−2401)、およびTraugott(Cell Immunol.(1989)119:114−129))において、EAE誘導前に、IL−21注射でマウスを処置すると、疾患の症状が減少する。したがって、本明細書記載のIL−21/IL−21Rアゴニストを同様に用いて、ヒトにおける多発性硬化症を治療するかまたは防止することも可能である。
【0118】
MS診断に関するワークショップによって定義されるような、臨床的に明確なMSの診断を確立する基準によって、こうした治療に適した患者を同定することも可能である(Poserら,Ann.Neurol.13:227,1983)。簡潔には、臨床的に明確なMSを患う個体は、2回の発作を経験し、そして2つの病巣の臨床的徴候、または1つの病巣の臨床的徴候および別の離れた病巣のパラクリニカル(paraclinical)徴候のいずれかを有する。明確なMSはまた、2回の発作および脳脊髄液中のIgGの少クローン性バンドによって、あるいは発作、2つの病巣の臨床的徴候および脳脊髄液中の少クローン性バンドの組み合わせによって、診断されることも可能である。臨床的に可能性があるMSの診断には、わずかに低い基準を用いる。
【0119】
いくつかの異なる方式で、多発性硬化症に有効な治療を調べることも可能である。以下の基準のいずれかを満たせば有効な治療であることの証明となる。3つの主な基準を用いる:EDSS(長期身体障害状態スケール)、再燃(exacerbation)の出現またはMRI(磁気共鳴画像化法)。EDSSは、MSによる臨床的な機能障害を等級分けする手段である(Kurtzke,Neurology 33:1444,1983)。神経学的機能障害の種類および重症度に関して、8つの機能系を評価する。簡潔には、治療前に、以下の系の機能障害に関して患者を評価する:錐体、小脳、脳幹、感覚、腸および膀胱、視覚、大脳、および他のもの。規定の間隔で、経過観察を行う。スケールは、0(正常)から10(MSによる死亡)の範囲である。1つの完全な段階の減少は、本発明の背景において、治療が有効であることと定義される(Kurtzke,Ann.Neurol.36:573−79,1994)。再燃は、MSに起因し、そして適切な新規神経学的異常が伴う、新たな症状の出現と定義される(IFNB MS研究グループ、上記)。さらに、再燃は、少なくとも24時間持続しなければならないし、そして少なくとも30日間の安定または改善の後でなければならない。簡潔には、患者は、臨床家による標準的神経学的検査を受ける。再燃は、神経学的評価スケール(Sipeら,Neurology 34:1368,1984)の変化にしたがうと、軽度、中程度、または重度いずれかである。年間再燃率および再燃がない患者の比率を決定する。これらの測定値のいずれかに関して、処置群およびプラセボ群の間に、再燃率または再燃がない患者の比率に統計的に有意な相違がある場合、療法は有効であると見なされる。さらに、最初の再燃までの時間および再燃期間および重症度もまた、測定可能である。これに関して、療法としての有効性の測定値は、対照群に比較して、処置群における、最初の再燃までの時間または再燃期間および重症度の統計的に有意な相違である。
【0120】
MRIを用いて、ガドリニウム−DTPA増進画像化法(McDonaldらAnn.Neurol.36:14,1994)を用い、活性病巣を測定するか、またはT加重技術を用い、病巣の位置および範囲を測定することも可能である。簡潔には、ベースラインMRIを得る。続く研究各々で、同じ画像化平面および患者の体位を用いる。体位取りおよび画像化の順序を選択して、病巣検出を最大限にし、そして病巣追跡を容易にすることも可能である。続く研究では、同じ体位取りおよび画像化の順序を用いることも可能である。放射線医が、MS病巣の存在、位置および範囲を決定することも可能である。病巣領域の輪郭を描き、そして総病巣領域に関して、スライスごとに合計することも可能である。3つの解析を行うことも可能である:新規病巣の徴候、活性病巣出現率、病巣領域の変化パーセント(Patyら,Neurology 43:665,1993)。ベースラインに比較して個々の患者において、またはプラセボ群に対して治療群において、統計的に有意な改善があることによって、療法による改善を確立することも可能である。
【0121】
多発性硬化症に関連する典型的な症状には:視神経炎、複視、眼振、眼の測定障害、核間性眼筋麻痺、運動および音の眼内せん光、求心性瞳孔障害、不全麻痺、単不全麻痺、不全対麻痺、片側不全麻痺、四肢不全麻痺(quadraparesis)、麻痺(plegia)、対麻痺、片麻痺、四肢麻痺(tetraplegia、quadraplegia)、痙縮、講語障害、筋萎縮、攣縮、痙攣、低血圧、クローヌス、筋クローヌス、筋波動症、下肢不安症候群、垂足、機能不全反射、錯感覚症、無感覚症、神経痛、神経障害性および神経原性の痛み、レルミット徴候、固有受容機能不全、三叉神経痛、運動失調症、企図振戦、測定障害、前庭性運動失調、めまい、言語行動失調、筋緊張異常、拮抗運動反復不全、頻尿、膀胱痙縮、膀胱弛緩、排尿筋−膀胱括約筋協調障害、勃起機能障害、性感異常症、冷感症、便秘、便意逼迫、糞便失禁、抑うつ症、認知機能障害、痴呆、躁うつ、感情的不安定性、多幸症、二極性症候群、不安症、失語症、神経性不全失語症、易疲労、ウトホフ症状、胃食道逆流、および睡眠障害が含まれる。
【0122】
防止の候補患者は、遺伝的要因の存在によって同定可能である。例えば、MS患者の大部分は、HLA DR2a型およびDR2b型を有する。治療に適切な、MSに遺伝的傾向を有するMS患者は、2つの群に属する。第一群は、再発寛解型の初期疾患患者である。エントリー基準には、疾患期間1年未満、1.0〜3.5のEDSSスコア、年間0.5より高い再燃率、および研究前の2ヶ月間、臨床的再燃がないことが含まれることも可能である。第二群には、過去2年間に渡って、1.0EDSS単位/年より高い疾患進行の患者が含まれるであろう。防止の候補患者は、サイトカイン・パラメーター、例えばIL−10またはIL−21パラメーターを評価することによって、同定可能である。
【0123】
防止の背景において、以下の基準に基づいて、IL−21/IL−21Rアゴニストの有効性を判断する:限界希釈によって決定される、MBP応答性T細胞の頻度、MBP応答性T細胞株およびクローンの増殖応答、患者から確立されたMBPに対するT細胞株およびクローンのサイトカイン・プロフィール。応答性細胞頻度の減少、天然のものに比較して改変されたペプチドを用いた場合のチミジン取り込みの減少、並びにTNFおよびIFN−αの減少によって、有効性を確認する。臨床測定値には、1年および2年間隔の再発率、およびEDSSの変化が含まれ、6ヶ月間持続する、EDSS上1.0単位のベースラインからの進行までの時間が含まれる。カプラン・メイヤー曲線上で、身体障害の進行持続が遅延していれば、有効性が示される。他の基準には、MRI上のT2画像の面積および体積の変化、並びにガドリニウム増進画像によって決定される病巣の数および体積の変化が含まれる。
【0124】
1つの態様において、IL−21/IL−21Rアゴニスト、例えばその薬剤組成物を、併用療法において投与する、すなわち他の剤、例えば脳の免疫および炎症障害、例えば多発性硬化症などの病的状態または障害を治療するのに有用な療法剤と併用する。用語「併用」は、この背景において、同時にまたは連続していずれかで、実質的に同時期に投与することを意味する。連続して投与した場合、第二の化合物投与の開始時に、好ましくは、2つの化合物の第一のものは、治療部位で、なお有効濃度で検出可能である。
【0125】
例えば、併用療法には、1以上のさらなる療法剤、例えば以下により詳細に記載するような、1以上のサイトカイン阻害剤および増殖因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、および/または細胞傷害剤または細胞分裂停止剤と同時配合され、そして/または同時投与される、1以上のIL−21/IL−21Rアゴニスト(例えばIL−21ポリペプチドまたは融合タンパク質、ペプチドアゴニストまたは小分子アゴニスト)が含まれることも可能である。さらに、本明細書記載の1以上のIL−21/IL−21Rアゴニストを本明細書記載の2以上の療法剤と併用することも可能である。こうした併用療法は、より低い投薬量で投与された療法剤を好適に利用し、したがって多様な単剤療法に関与する、ありうる毒性または合併症を回避することも可能である。さらに、本明細書に開示する療法剤は、IL−21/IL−21R受容体経路と異なる経路に作用して、そしてしたがって、IL−21/IL−21Rアゴニストの効果を増進し、そして/またはこうした効果と同調すると予期される。IL−21/IL−21Rアゴニストと併用する、好ましい療法剤は、自己免疫およびそれに続く炎症性応答の異なる段階に干渉する剤である。
【0126】
IL−21/IL−21Rアゴニストと併用可能な、多発性硬化症を治療するかまたは防止するための剤の限定されない例には、以下が含まれる:インターフェロン、例えばインターフェロン−ベータ−1α(例えばアボネックスTM;Biogen)およびインターフェロン−1β(ベタセロンTM;17位が置換されたヒト・インターフェロンβ;Berlex/Chiron)、酢酸グラティラマー(コポリマー1、Cop−1とも称される;コパキソンTM;Teva Pharmaceutical Industries,Inc.);高圧酸素;静脈内免疫グロブリン;クラブリビン(clabribine);本明細書記載のTNFアンタゴニスト;コルチコステロイド;プレドニゾロン;メチルプレドニゾロン;アザチオプリン;シクロホスファミド;シクロスポリン;メトトレキセート;4−アミノプリン;およびチザニジン。IL−21アゴニストと併用可能なさらなるアンタゴニストには、他のヒト・サイトカインまたは増殖因子、例えばTNF、LT、IL−1、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−12、IL−15、IL−16、IL−18、EMAP−11、GM−CSF、FGF、およびPDGFに対する抗体またはそれらのアンタゴニストが含まれる。本明細書記載のIL−21アゴニストを、CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80、CD86、CD90またはそのリガンドなどの細胞表面分子に対する抗体と併用することも可能である。IL−21アゴニストを、メトトレキセート、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド、NSAID、例えばイブプロフェン、コルチコステロイド、例えばプレドニゾロン、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アデノシン・アゴニスト、抗血栓剤、補体阻害剤、アドレナリン作動剤、本明細書記載の炎症促進性サイトカインによるシグナル伝達に干渉する剤、IL−1β変換酵素阻害剤(例えばVx740)、抗P7、PSGL、TACE阻害剤、キナーゼ阻害剤などのT細胞シグナル伝達阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、本明細書記載の可溶性サイトカイン受容体およびその誘導体、並びに抗炎症性サイトカイン(例えばIL−4、IL−10、IL−13およびTGF)。
【0127】
IL−21/IL−21Rアゴニストと併用可能な、多発性硬化症を治療するかまたは防止するための療法剤の例には、インターフェロン−β、例えばIFNβ−1αおよびIFNβ−1β、酢酸グラティラマー(例えばコパキソン(登録商標))、コルチコステロイド、IL−1阻害剤、TNF阻害剤、CD40リガンドおよびCD80に対する抗体、並びにIL−12アンタゴニストが含まれる。さらなる例には、MSの1以上の症状または副作用を治療するのに使用可能な剤、例えばアマンタジン、バクロフェン、ミネラルオイル、パパベリン、メクリジン、ヒドロキシジン、スルファメトキサゾール、シプロフロキサシン、ドキュセート、シプロフロキサシン、ペモリン、ダントロレン、デスモプレッシン、デスモプレッシン、デキサメタゾン、プレドニゾン、トルテロジン(tolterodine)、フェニトイン、オキシブチニン、オキシブチニン(持続放出配合)、ビサコジル、ベンラファクシン、アミトリプチリン、ドキュセート便柔軟剤便秘薬、リン酸ナトリウム、メテナミン、バクロフェン(クモ膜下内)、クロナゼパム、イソニアジド、バルデナフィル、ニトロフラントイン、車前子親水性粘漿剤、アルプロスタジル、ギャバペンチン、ミトキサントロン、オキシブチニン、ノルトリプチリン、パロキセチン、水酸化マグネシウム、臭化プロパンテリン、アルプロスタジル、モダフィニル、フルオキセチン、フェナゾピリジン、グリセリン、メチルプレドニゾロン、カルバマゼピン、イミプラミン、ジアゼパム、シルデナフィル、ブプロピオン、チザニジン、およびセルトラリンが含まれる。
【0128】
こうした剤の例には、IL−12アンタゴニスト、例えばIL−12(好ましくはヒトIL−12)に結合する、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体またはin vitro生成抗体(またはその抗原結合断片)、例えばWO00/56772、Genetics Institute/BASFに開示される抗体;IL−12受容体阻害剤、例えばヒトIL−12受容体に対する抗体;およびIL−12受容体、例えばヒトIL−12受容体の可溶性断片が含まれる。IL−15アンタゴニストの例には、IL−15またはその受容体に対する抗体(またはその抗原結合断片)、例えばヒトIL−15またはその受容体に対するキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体またはin vitro生成抗体、IL−15受容体の可溶性断片、およびIL−15結合タンパク質が含まれる。IL−18アンタゴニストの例には、ヒトIL−18に対する抗体、例えばキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体またはin vitro生成抗体(またはその抗原結合断片)、IL−18受容体の可溶性断片、およびIL−18結合タンパク質(IL−18BP、Malletら(2001)Circ.Res.28)が含まれる。IL−1アンタゴニストの例には、Vx740などのインターロイキン−1変換酵素(ICE)阻害剤、IL−1アンタゴニスト、例えばIL−1RA(ANIKINRA、AMGEN)、sIL1RII(Immunex)、および抗IL−1受容体抗体(またはその抗原結合断片)が含まれる。
【0129】
TNFアンタゴニストの例には、TNF(例えばヒトTNFα)に対するキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体またはin vitro生成抗体(またはその抗原結合断片)、例えばD2E7(ヒトTNFα抗体、U.S.6,258,562、BASF)、CDP−571/CDP−870/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFα抗体、Celltech/Pharmacia)、cA2(キメラ抗TNFα抗体、レミケードTM、Centocor);抗TNF抗体断片(例えばCPD870);TNF受容体、例えばp55またはp75ヒトTNF受容体の可溶性断片またはその誘導体、例えば75kd TNFR−IgG(75kD TNF受容体−IgG融合タンパク質、エンブレルTM;Immunex;例えばArthritis & Rheumatism(1994)Vol.37,S295;J.Invest.Med.(1996)Vol.44,235Aを参照されたい)、p55 kdTNFR−IgG(55kD TNF受容体−IgG融合タンパク質(レネルセプトTM));酵素アンタゴニスト、例えばTNFα変換酵素(TACE)阻害剤(例えばアルファ−スルホニルヒドロキサム酸誘導体、WO01/55112、およびN−ヒドロキシホルムアミドTACE阻害剤GW 3333、−005、または−022);およびTNF−bp/s−TNFR(可溶性TNF結合タンパク質;例えばArthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S284;Amer.J.Physiol.−Heart and Circulatory Physiology(1995)Vol.268,pp.37−42を参照されたい)が含まれる。好ましいTNFアンタゴニストは、TNF受容体の可溶性断片、例えばp55またはp75ヒトTNF受容体またはその誘導体、例えば75kdTNFR−IgG、およびTNFα変換酵素(TACE)阻害剤である。
【0130】
他の態様において、本明細書に記載するIL−21/IL−21Rアゴニストを、以下の1以上と併用投与することも可能である:IL−13アンタゴニスト、例えば可溶性IL−13受容体(sIL−13)および/またはIL−13に対する抗体;IL−2アンタゴニスト、例えばDAB486−IL−2および/またはDAB389−IL−2(IL−2融合タンパク質;Seragen、例えばArthritis & Rheumatism(1993)Vol.36,1223を参照されたい)、および/またはIL−2Rに対する抗体、例えば抗Tac(ヒト化抗IL−2R;Protein Design Labs、Cancer Res.1990 Mar 1;50(5):1495−502を参照されたい))。さらに別の併用には、非枯渇性抗CD4阻害剤(IDEC−CE9.1/SB 210396(非枯渇性霊長類化(primatized)抗CD4抗体;IDEC/SmithKline))と併用するIL−21アンタゴニストが含まれる。さらに他の好ましい併用には、抗体、可溶性受容体、またはアンタゴニスト性リガンドを含む、CD80(B7.1)およびCD86(B7.2)同時刺激経路のアンタゴニスト;それとともに、P−セレクチン糖タンパク質リガンド(PSGL);抗炎症性サイトカイン、例えばIL−4(DNAX/Schering);IL−10(SCH 52000;組換えIL−10、DNAX/Schering);IL−13およびTGF、並びにそのアゴニスト(例えばアゴニスト抗体)が含まれる。
【0131】
他の態様において、1以上のIL−21/IL−21Rアゴニストを、1以上の抗炎症性薬剤、免疫抑制剤、あるいは代謝阻害剤、または酵素阻害剤と同時配合し、そして/または同時投与することも可能である。本明細書に記載するIL−21アゴニストと併用可能な薬剤または阻害剤の限定されない例には、限定されるわけではないが:非ステロイド性抗炎症性薬剤(単数または複数)(NSAID)、例えばイブプロフェン、テニダップ(例えばArthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S280を参照されたい)、ナプロキセン(例えばNeuro Report(1996)Vol.7,pp.1209−1213を参照されたい)、メロキシカム、ピロキシカム、ジクロフェナク、およびインドメタシン);スルファサラジン(例えばArthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S281を参照されたい);プレドニゾロンなどのコルチコステロイド;サイトカイン抑制性抗炎症性薬剤(単数または複数)(CSAID);ヌクレオチド生合成の阻害剤、例えばプリン生合成の阻害剤、葉酸アンタゴニスト(例えばメトトレキセート(N−[4−[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸));およびピリミジン生合成の阻害剤、例えばジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(DHODH)阻害剤(例えばレフルノミド(例えばArthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S131;Inflammation Research(1996)Vol.45,pp.103−107を参照されたい)))の1以上が含まれる。IL−21/IL−21Rアンタゴニストと併用する好ましい療法剤には、NSAID、CSAID、DHODH阻害剤(例えばレフルノミド)、および葉酸アンタゴニスト(例えばメトトレキセート)が含まれる。
【0132】
さらなる阻害剤の例には:コルチコステロイド(経口、吸入、および局所注射);免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、タクロリムス(FK−506);およびmTOR阻害剤例えばシロリムス(ラパマイシン)またはラパマイシン誘導体、例えば可溶性ラパマイシン誘導体(例えばエステル・ラパマイシン誘導体、例えばCCI−779(Elit.L.(2002)Current Opinion Investig.Drugs 3(8):1249−53;Huang,S.ら(2002)Current Opinion Investig.Drugs 3(2):295−304));TNFαまたはIL−1などの炎症促進性サイトカインによるシグナル伝達に干渉する剤(例えばIRAK、NIK、IKK、p38またはMAPキナーゼ阻害剤);COX2阻害剤、例えばセレコキシブおよびその変異体、MK−966、例えばArthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S81を参照されたい);ホスホジエステラーゼ阻害剤、例えばR973401、(ホスホジエステラーゼIV型阻害剤;例えばArthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S282を参照されたい);ホスホリパーゼ阻害剤、例えば細胞質ゾル・ホスホリパーゼ2(cPLA2)阻害剤(例えばトリフルオロメチルケトン類似体(U.S.6,350,892));血管内皮細胞増殖因子または増殖因子受容体の阻害剤、例えばVEGF阻害剤および/またはVEGF−R阻害剤;および血管形成阻害剤の1以上が含まれる。IL−21/IL−21Rアンタゴニストと併用する、好ましい療法剤には、免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、タクロリムス(FK−506);およびmTOR阻害剤、例えばシロリムス(ラパマイシン)またはラパマイシン誘導体、例えば可溶性ラパマイシン誘導体(例えばエステル・ラパマイシン誘導体、例えばCCI−779);COX2阻害剤、例えばセレコキシブおよびその変異体;およびホスホリパーゼ阻害剤、例えば細胞質ゾル・ホスホリパーゼ2(cPLA2)阻害剤(例えばトリフルオロメチルケトン類似体)が含まれる。
【0133】
IL−21/IL−21Rアゴニストと併用可能な療法剤のさらなる例には:6−メルカプトプリン(6−MP);アザチオプリン;スルファサラジン;メサラジン;オルサラジン;クロロキニン/ヒドロキシクロロキン;ペニシラミン;アウロチオールナレート(aurothiornalate)(筋内および経口);アザチオプリン;コルヒチン;ベータ−2アドレナリン受容体アゴニスト(サルブタモール、テルブタリン、サルメテロール(salmeteral));キサンチン(テオフィリン、アミノフィリン);クロモグリク酸;ネドクロミル;ケトチフェン;イプラトロピウムおよびオキシトロピウム;ミコフェノール酸モフェチル;アデノシン・アゴニスト;抗血栓剤;補体阻害剤;およびアドレナリン作用剤の1以上が含まれる。
【0134】
本発明の別の側面は、したがって、IL−21/IL−21Rアンタゴニストと他の療法化合物の併用投与を行うためのキットに関する。1つの態様において、該キットは、薬剤キャリアー中で配合された1以上の結合剤、および1以上の別個の薬剤調製物中で適切であるように配合された、少なくとも1つの剤、たとえば療法剤を含む。
【0135】
サイトカインレベルを評価するアッセイ
標準的アッセイいずれかを用いて、試料または被験者中のサイトカインレベルを評価することも可能である。例えば、被験者から試料を得るか、または試料が培養細胞を含むことも可能である。典型的な試料は、1以上の細胞、組織、あるいは血液、尿、リンパ液、脳脊髄液、または漿液などの体液、培養細胞(例えば組織培養細胞)、頬スワブ、洗口液、便、組織切片、および生検物質(例えば生検吸引物)から得られるか、またはこれらに由来することも可能である。
【0136】
サイトカインレベルを評価するための方法は、核酸を評価して、目的のサイトカイン(例えばIL−10またはIL−21)をコードするmRNAまたはcDNAを検出するか、またはタンパク質を評価して、サイトカイン自体を検出することを含む。例えばRT−PCR(例えば定量的PCR)または核酸マイクロアレイを用いて、核酸を評価することも可能である。例えば質量分析またはイムノアッセイを用いて、タンパク質を評価することも可能である。
【0137】
ELISAは、イムノアッセイの1つの好適な型を提供する。例えば、Biosource International、カリフォルニア州カマリロは、<0.2pg/mlの感度でIL−10を、そして<2pg/mlの感度でIL−12を検出するのに使用可能なアッセイ試薬を提供する。同様に、R&D Systemsは、<8pg/mlの感度でIFN−γを、または<7pg/mlの感度でTGF−ベータ1を検出する試薬を提供する。
【0138】
SEARCHLIGHTTMプロテオームアレイ系(Pierce、Boston Technology Center)は、多数のサイトカインを一度に評価する包括的試薬を提供する。
【0139】
これらの方法を用いて、IL−21/IL−21Rアゴニストの投与を評価することも可能である。例えば、こうしたアゴニストが、サイトカイン、例えばIL−10またはIFNγのレベルに統計的に有意な変化を引き起こすかどうかを決定するか、あるいはこうしたアゴニストが、許容しうる変化、例えばサイトカイン、例えばIL−10またはIFNγの正常範囲内レベルへの変化を引き起こすかどうかを決定する。評価から得られる情報を用いて、アゴニストの投薬量を調節することも可能である。例えば、IL−10レベルが正常被験者の範囲内のレベルに増加しない場合、例えば投薬量または頻度を増加させることによって、アゴニストの投与を増加させることも可能である。逆に、IL−10レベルが、望ましい範囲を超えて増加している場合、例えば投薬量または頻度を減少させることによって、アゴニストの投与を減少させることも可能である。
【0140】
免疫活性化因子としてのIL−21/IL−21Rアゴニストの活性を評価するためのアッセイ
免疫系の活性化因子としてのIL−21/IL−21Rアゴニストの活性を、とりわけ、以下の方法によって測定することも可能である:
胸腺細胞または脾臓細胞傷害性に適したアッセイには、限定なしに:Current Protocols in Immunology,J.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H. Margulies,E.M.Shevach,W Strober監修,Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience刊行(第3章,In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function 3.1−3.19;第7章,Immunologic studies in Humans);Herrmannら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:2488−2492,1981;Herrmannら,J.Immunol.128:1968−1974,1982;Handaら,J.Immunol.135:1564−1572,1985;Takaiら,J.Immunol.137:3494−3500,1986;Takaiら,J.Immunol.140:508−512,1988;Herrmannら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:2488−2492,1981;Herrmannら,J.Immunol.128:1968−1974,1982;Handaら,J.Immunol.135:1564−1572,1985;Takaiら,J.Immunol.137:3494−3500,1986;Bowmanetら,J.Virology 61:1992−1998;Takaiら,J.Immunol.140:508−512,1988;Bertagnolliら,Cellular Immunology 133:327−341,1991;Brownら,J.Immunol.153:3079−3092,1994に記載されるものが含まれる。
【0141】
T細胞依存性免疫グロブリン応答およびアイソタイプスイッチングに関するアッセイ(とりわけ、T細胞依存性抗体応答を調節し、そしてTh1/Th2プロフィールに影響を及ぼすタンパク質を同定するもの)には、限定なしに:Maliszewski,J.Immunol.144:3028−3033,1990;並びにAssays for B cell function:In vitro antibody production,Mond,J.J.およびBrunswick,M.Current Protocols in Immunology.中 J.E.e.a.Coligan監修 Vol 1 pp.3.8.1−3.8.16,John Wiley and Sons,トロント 1994に記載されるものが含まれる。
【0142】
混合リンパ球反応(MLR)アッセイ(とりわけ、主にTh1およびCTL応答を生じるタンパク質を同定するもの)には、限定なしに:Current Protocols in Immunology,J.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach,W Strober監修,Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience刊行(第3章,In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function 3.1−3.19;第7章,Immunologic studies in Humans);Takaiら,J.Immunol.137:3494−3500,1986;Takaiら,J.Immunol.140:508−512,1988;Bertagnolliら,J.Immunol.149:3778−3783,1992に記載されるものが含まれる。
【0143】
樹状細胞依存性アッセイ(とりわけ、未刺激(naive)T細胞を活性化する、樹状細胞に発現されるタンパク質を同定するもの)には、限定なしに:Gueryら,J.Immunol.134:536−544,1995;Inabaら,Journal of Experimental Medicine 173:549−559,1991;Macatoniaら,Journal of Immunology 154:5071−5079,1995;Porgadorら,Journal of Experimental Medicine 182:255−260,1995;Nairら,Journal of Virology 67:4062−4069,1993;Huangら,Science 264:961−965,1994;Macatoniaら,Journal of Experimental Medicine 169:1255−1264,1989;Bhardwajら,Journal of Clinical Investigation 94:797−807,1994;およびInabaら,Journal of Experimental Medicine 172:631−640,1990に記載されるものが含まれる。
【0144】
リンパ球生存/アポトーシスに関するアッセイ(とりわけ、スーパー抗原誘導後、アポトーシスを防止するタンパク質、およびリンパ球ホメオスタシスを制御するタンパク質を同定するもの)には、限定なしに:Darzynkiewiczら,Cytometry 13:795−808,1992;Gorczycaら,Leukemia 7:659−670,1993;Gorczycaら,Cancer Research 53:1945−1951,1993;Itohら,Cell 66:233−243,1991;Zacharchuk,Journal of Immunology 145:4037−4045,1990;Zamaiら,Cytometry 14:891−897,1993;Gorczycaら,International Journal of Oncology 1:639−648,1992に記載されるものが含まれる。
【0145】
T細胞拘束および発達の初期段階に影響を及ぼすタンパク質に関するアッセイには、限定なしに:Anticaら,Blood 84:111−117,1994;Fineら,Cellular Immunology 155:111−122,1994;Galyら,Blood 85:2770−2778,1995;Tokiら,Proc.Nat.Acad Sci.U.S.A.88:7548−7551,1991に記載されるものが含まれる。
【0146】
STATの活性化を評価するためのアッセイは、例えばGilmourら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:10772−10776に記載される。例えば評価する細胞(例えばアゴニストまたは候補アゴニストで処理した細胞)を溶解し、そして抗ホスホチロシン抗体を用いて、チロシンリン酸化タンパク質を免疫沈降することも可能である。次いで、シグナル伝達経路構成要素に特異的な抗体、例えばSTATタンパク質、例えばSTAT5に対する抗体を用いて、沈降した物質を評価することも可能である。
【0147】
サイトカイン産生および細胞増殖/分化の調節因子としてのIL−21/IL−21Rアゴニストの活性を測定するためのアッセイ
限定なしに、32D、DA2、DA1G、T10、B9、B9/11、BaF3、MC9/G、M+(プレB M+)、2E8、RB5、DA1、123、T1165、HT2、CTLL2、TF−1、Mo7eおよびCMKを含む細胞株に関する、いくつかの日常的な因子依存性細胞増殖アッセイのいずれか1つを用いて、サイトカイン産生および細胞増殖/分化の調節因子としてのIL−21/IL21Rアゴニストの活性を試験することも可能である。
【0148】
T細胞または胸腺細胞増殖に関するアッセイには、限定なしに:Current Protocols in Immunology,J.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach,W Strober監修,Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience刊行(第3章,In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function 3.1−3.19;第7章,Immunologic studies in Humans);Takaiら,J.Immunol.137:3494−3500,1986;Bertagnolliら,J.Immunol.145:1706−1712,1990;Bertagnolliら,Cellular Immunology 133:327−341,1991;Bertagnolliら,J.Immunol.149:3778−3783,1992;Bowmanら,J.Immunol.152:1756−1761,1994に記載されるものが含まれる。
【0149】
脾臓細胞、リンパ節細胞または胸腺細胞のサイトカイン産生および/または増殖に関するアッセイには、限定なしに:Polyclonal T cell stimulation,Kruisbeek,A.M.およびShevach,E.M.Current Protocols in Immunology.中 J.E.e.a.Coligan監修 Vol 1 pp.3.12.1−3.12.14,John Wiley and Sons,トロント 1994;およびMeasurement of mouse and human Interferon gamma,Schreiber,R.D.Current Protocols in Immunology.中 J.Coligan監修 Vol 1 pp.6.8.1−6.8.8,John Wiley and Sons,トロント 1994に記載されるものが含まれる。
【0150】
造血細胞およびリンパ球産生細胞の増殖および分化に関するアッセイには、限定なしに:Measurement of Human and Murine Interleukin 2 and Interleukin 4, Bottomly,K.,Davis,L.S.およびLipsky,P.E.Current Protocols in Immunology.中 J.Coligan監修 Vol 1 pp.6.3.1−6.3.12,John Wiley and Sons,トロント 1991;deVriesら,J.Exp.Med.173:1205−1211,1991;Moreauら,Nature 336:690−692,1988;Greenbergerら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:2931−2938,1983;Measurement of mouse and human interleukin 6−−Nordan,R.Current Protocols in Immunology.中 J.E.e.a.Coligan監修 Vol 1 pp.6.6.1−6.6.5,John Wiley and Sons,トロント 1991;Smithら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.83:1857−1861,1986;Measurement of human Interleukin ll−−Bennett,F.,Giannotti,J.,Clark,S.C.およびTurner,K.J.Current Protocols in Immunology.中 J.E.e.a.Coligan監修 Vol 1 pp.6.15.1 John Wiley and Sons,トロント 1991;Measurement of mouse and human Interleukin9−−Ciarletta,A.,Giannotti,J.,Clark,S.C.およびTurner,K.J.Current Protocols in Immunology.中 J.Coligan監修 Vol 1 pp.6.13.1,John Wiley and Sons,トロント 1991に記載されるものが含まれる。
【0151】
抗原に対するT細胞クローン応答に関するアッセイ(とりわけ、増殖およびサイトカイン産生を測定することによって、APC−T細胞相互作用に影響を及ぼすとともに、T細胞効果を達成するタンパク質を同定するもの)には、限定なしに:Current Protocols in Immunology,J.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach,W Strober監修,Greene Publishing Associates and Wiley−Ihterscience刊行(第3章,In Vitro assays for Mouse Lymphocyte Function;第6章,Cytokines and their cellular receptors;第7章,Immunologic studies in Humans);Weinbergerら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.77:6091−6095,1980;Weinbergerら,Eur.J.Immun.11:405−411,1981;Takaiら,J.Immunol.137:3494−3500,1986;Takaiら,J.Immunol.140:508−512,1988に記載されるものが含まれる。
【0152】
以下の限定されない実施例において、我々は、とりわけ、IL−21がEAEマウスにおいて、部分的保護を生じることを立証する。
【実施例】
【0153】
実施例:IL−21はEAEマウスにおいて、部分的保護を生じる
試薬
マウス
メスC57BL/6マウスおよびメスSJL/JマウスをThe Jackson Laboratoryから得た。動物をAAALAC認可バリア施設内で飼育し、そして寄生虫とともに細菌およびウイルス病原体に関して監視した。すべてのマウスを8〜10週齢で用いた。
【0154】
増殖応答
マウス・オリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)35−55ペプチドに曝露したC57BL/6メスマウスのリンパ節細胞を、免疫20日後にマウスから採取した。10%ウシ胎児血清(FCS)を含有するダルベッコの修飾イーグル培地(DME)中で細胞を培養した。MOG35−55ペプチド(25μg/ml)で細胞を再刺激し、そしてネズミIL−21の存在下または非存在下で、平底96ウェルマイクロタイタープレート中で増殖させた。72時間後、0.5μCiのトリチル化チミジン/ウェルでプレートをパルス処理し、そして4〜6時間インキュベーションした。シンチレーションカウンターによって、3つ組ウェルにおけるDNA中のチミジンの平均取り込みを測定した。
【0155】
サイトカイン定量化
免疫マウス由来のリンパ節細胞を、25μg/mlのMOG35−55ペプチドで、in vitroで活性化した。10%FCSおよびIL−2(10U/ml)および5ng/ml〜25ng/mlの範囲の多様な濃度のネズミIL−21を含有する(DME)中で、細胞を培養した。72時間後、培養上清を収集し、そしてSEARCHLIGHTTMプロテオームアレイ系(Pierce、Boston Technology Center)を用いて、サイトカインおよびケモカイン産生に関して解析した。
【0156】
実験自己免疫脳炎(EAE)の誘導および評価
800μgのヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)H37Ra(Difco Laboratories)を補った完全フロイントアジュバント中で乳化した100μgのプロテオリピド・タンパク質(PLP)139−151ペプチドを皮下注射して、メスSJL/Jマウスを免疫した。免疫時および48時間後に、400ngの百日咳毒素(List Biological Laboratories)もまた、マウスに腹腔内注射した。以下のスケールにしたがって、EAEの臨床的徴候に関して、動物を毎日スコア付けした:0、疾患なし、1、足を引きずる;2、後肢が弱いかまたは部分的麻痺;3、後肢完全麻痺;4、前肢および後肢麻痺、並びに5、瀕死。各群のマウスの個々のスコアを平均することによって、平均臨床スコアを計算した。
【0157】
in vivoのIL−21投与
EAEに感作したマウスに、0.2mlのPBS中、100ng/日または1μg/日のネズミIL−21を腹腔内注射した。対照マウスに0.2mlの生理食塩水を投与した。PLP139−151ペプチドで免疫する前日に処置を始め、そして総数10用量を1日おきに続けて与えた。
【0158】
ネズミIL−21に誘導される増殖応答およびサイトカイン産生
MOG35−55特異的T細胞応答の誘導および拡大に対するIL−21の影響を評価した。結果によって、IL−21が用量依存方式でリンパ球の増殖を誘導することが示される。図1Aおよび表1において、20ng/mlのIL−21と培養したリンパ球は、ペプチドのみで刺激した細胞に比較して、3.5倍の有意な増殖増加を示した。サイトカインの力価決定(titration)に際して、細胞は、対照細胞と同様の増殖能を示した。
表1:IL−21の存在下でのリンパ球増殖
【0159】
【表1】

【0160】
図1Bは、1μg/mlのプロテオリピド・タンパク質(PLP)のみで処理した細胞に比較して、示した濃度のネズミIL−21(ng/ml)で培養したPLPトランスジェニックマウス由来のT細胞の増殖増加を示す。
【0161】
増殖性T細胞応答が、サイトカイン産生と相関するかどうかを同定するため、リンパ球をIL−21と培養した。未処理細胞と比較して、IL−21は、Th2サイトカイン、IL−10の分泌増加を誘導した。この応答は飽和性であり(図2および表2)、そしてIL−21の最高試験濃度(25ng/ml)で、細胞は、対照群よりも、およそ2.5倍多いIL−10を産生した。
表2:IL−21はIL−10分泌を誘導する
【0162】
【表2】

【0163】
図3は、対照細胞に比較して、示した濃度のネズミIL−21で処理した脾臓細胞によるIFNγの分泌減少を示す。MOG33−55で刺激した免疫マウス由来脾臓細胞に、IL−21を添加すると、IFNγの2倍の減少が生じ、一方、IL−21Rの添加は2倍の増加を生じる。リンパ節細胞をIL−21で処理すると、IFNγレベルが、20,000pg/ml(対照)または15840pg/ml(偽処理)から3260pg/ml(IL−21処理)に減少した。
【0164】
IL−21またはIL−21R処理の際のサイトカイン分泌変化を、以下のように表3に要約する。
表3:サイトカイン分泌の変化
【0165】
【表3】

【0166】
IL−21で処置したマウスにおけるEAEの発展
EAEの発展におけるIL−21の役割を決定するため、CFA中の脳炎誘発性PLP139−151ペプチドに加えて百日咳毒素でマウスを免疫し、そしてIL−21の予防的措置でこれらを処置した。生理食塩水またはIL−21で処置したマウスにおいて、EAEの臨床的経過を比較した。
【0167】
表4は、ネズミIL−21の存在下または非存在下で処理した2つの典型的なPLP培養物におけるサイトカイン分泌の平均変化を立証する。未処理対照細胞におけるサイトカインレベルを100に基準化する。
表4
【0168】
【表4】

【0169】
図4および図5に示すように、対照マウスは疾患に非常に感受性である。対照的に、低用量(100ng/日)または高用量(1μg/日)のIL−21のいずれかで処置したマウスは、より深刻でない臨床スコアを有した。
【0170】
図5および表5は、対照マウスに比較して、低用量(100ng/日)または高用量(1μg/日)のネズミIL−21で処置したマウスにおける、EAE重症度の減少を示す。
表5
【0171】
【表5】

【0172】
我々の発見によって、IL−21がEAE進行の調節に関与し、そしてIL−10の上方制御によって、この経路が仲介されうることが示される。
本出願全体で引用される、すべての参考文献、係属中の特許出願および刊行特許の内容は、明確に本明細書に援用される。
【0173】
均等物
当業者は、日常的な実験以上のものを用いずに、本明細書記載の本発明の特定の態様の多くの均等物を認識するか、または確認することも可能である。こうした均等物は、請求項に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1A】図1Aは、多様な希釈の20ng/mlのネズミIL−21の存在下で培養したリンパ節細胞の増殖増加を示す線グラフである。ペプチドのみで刺激した細胞に比較して、IL−21は、例えば、1:50希釈で、リンパ節細胞の増殖増加を引き起こした。
【図1B】図1Bは、プロテオリピド・タンパク質(PLP)1μg/mlのみで処理した細胞に比較して、示した濃度のネズミIL−21(ng/ml)および1μg/mlのPLPで培養したPLPトランスジェニックマウス由来のT細胞の増殖増加を示す線グラフである。
【図2】図2は、未処理細胞に比較して、示した濃度のマウスIL−21の存在下でのIL−10の分泌増加を示す棒グラフである。応答は飽和性であり、そしてIL−21の最高試験濃度(25ng/ml)で、細胞は、対照群のおよそ2.5倍多いIL−10を産生した。増加したレベルのIL−10が産生されたことから、IL−21処理が、抗原特異的細胞をTh2プロフィールに歪めうることが示唆される。
【図3】図3は、対照細胞に比較して、示した濃度のネズミIL−21で処理した脾臓細胞およびリンパ節細胞によるIFNγの分泌の減少を示す棒グラフである。MOG 33−55で刺激した免疫マウス由来脾臓細胞にIL−21を添加すると、IFNγの2倍の減少が生じ、一方、IL−21Rの添加は2倍の増加を引き起こす。
【図4】図4は、EAEモデルにおける疾患の臨床的症状の減少を示す。この図は、IL−21がIFNγを抑制し、そしてIL−10を増進することを示す。図4は、in vivoトランスファー後の日数に関して、未処理培養に比較して、IL−21処理PLP脾臓細胞で検出されるEAE症状の減少を示す線グラフである。
【図5】図5は、EAEモデルにおける疾患の臨床的症状の減少を示す。この図は、対照マウスに比較して、ネズミIL−21の低用量(100ng/日)または高用量(1μg/日)いずれかで処置したマウスにおけるEAEの重症度の減少を示す棒グラフである。
【配列表】
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者において、多発性硬化症の症状を改善する方法であって:
多発性硬化症の症状を改善するのに十分な量のインターロイキン−21(IL−21)/IL−21受容体(IL−21R)のアゴニストを被験者に投与し、ここで前記アゴニストは、IL−21ポリペプチド、アゴニスト性抗IL−21R抗体およびアゴニスト性抗IL−21R抗体の抗原結合断片からなる群より選択される
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
アゴニストが、配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも90%同一である配列を含み、そしてIL−21Rに結合可能である、IL−21ポリペプチドである、請求項1の方法。
【請求項3】
アゴニストが、配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも95%同一である配列を含み、そしてIL−21Rに結合可能である、IL−21ポリペプチドである、請求項1の方法。
【請求項4】
アゴニストが、配列番号2のアミノ酸配列を含むIL−21ポリペプチドである、請求項1の方法。
【請求項5】
アゴニストが、アゴニスト性抗IL−21R抗体またはその抗原結合断片である、請求項1の方法。
【請求項6】
アゴニスト性抗IL−21R抗体がヒト抗体である、請求項5の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの抗炎症剤を被験者に投与することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項8】
抗炎症剤が、IFNβ−1α、IFNβ−1β、TNFアンタゴニスト、IL−12アンタゴニスト、IL−23アンタゴニスト、メトトレキセート、レフルノミド、シロリムス(ラパマイシン)、およびCCI−779からなる群より選択される、請求項7の方法。
【請求項9】
被験者が哺乳動物である、請求項1の方法。
【請求項10】
IL−21/IL−21Rアゴニストを単回用量の形で投与する、請求項1の方法。
【請求項11】
IL−21/IL−21Rアゴニストを、数日、数週または数ヶ月の間隔を置いた一連の用量として投与する、請求項1の方法。
【請求項12】
IL−21/IL−21Rアゴニストを注射によって投与する、請求項1の方法。
【請求項13】
IL−21/IL−21Rアゴニストを中枢神経系に注射する、請求項12の方法。
【請求項14】
IL−21/IL−21Rアゴニストをクモ膜下(intrathetically)注射または静脈内注射する、請求項12の方法。
【請求項15】
IL−21/IL−21Rアゴニストを腰部脳脊髄液に注射する、請求項12の方法。
【請求項16】
被験者のIL−10パラメーターを評価することによって、多発性硬化症リスクに関して被験者を評価することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項17】
投与前に、被験者のIL−10パラメーターを評価することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項18】
投与後、被験者のIL−10パラメーターを評価することをさらに含み、IL−10パラメーターの増加は療法に効果があったことの指標となる、請求項17の方法。
【請求項19】
投与後、被験者のIL−10パラメーターを評価することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項20】
IL−21/IL−21Rアゴニストおよび抗炎症剤を含む薬剤組成物であって、前記IL−21/IL−21Rアゴニストが、IL−21ポリペプチド、アゴニスト性抗IL−21R抗体およびアゴニスト性抗IL−21R抗体の抗原結合断片からなる群より選択される、前記薬剤組成物。
【請求項21】
IL−21ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも90%同一である配列を有し、そしてIL−21Rに結合可能である、請求項20の薬剤組成物。
【請求項22】
IL−21ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも95%同一である配列を有し、そしてIL−21Rに結合可能である、請求項20の薬剤組成物。
【請求項23】
前記IL−21/IL−21Rアゴニストが、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項20の薬剤組成物。
【請求項24】
抗炎症剤が、IFNβ−1α、IFNβ−1β、TNFアンタゴニスト、IL−12アンタゴニスト、IL−23アンタゴニスト、メトトレキセート、レフルノミド、シロリムス(ラパマイシン)、およびCCI−779からなる群より選択される、請求項20の薬剤組成物。
【請求項25】
アゴニストが、アゴニスト性抗IL−21R抗体またはその抗原結合断片である、請求項20の薬剤組成物。
【請求項26】
アゴニスト性抗IL−21R抗体がヒト抗体である、請求項25の薬剤組成物。
【請求項27】
IL−21/IL−21Rアゴニスト、およびミエリン塩基性タンパク質を刺激するタンパク質を含む、薬剤組成物であって、前記IL−21/IL−21Rアゴニストが、IL−21ポリペプチド、アゴニスト性抗IL−21R抗体およびアゴニスト性抗IL−21R抗体の抗原結合断片からなる群より選択される、前記薬剤組成物。
【請求項28】
IL−21/IL−21RアゴニストがIL−21ポリペプチドを含むタンパク質であり、そしてミエリン塩基性タンパク質を刺激するタンパク質が酢酸グラティラマー(glatiramer)を含む、請求項27の薬剤組成物。
【請求項29】
哺乳動物被験者において、多発性硬化症を改善する方法であって:
被験者における多発性硬化症または多発性硬化症の少なくとも1つの症状を改善するのに十分な量のインターロイキン−21(IL−21)ポリペプチドを被験者に投与する
ことを含む、前記方法。
【請求項30】
被験者がヒトであり、そしてIL−21ポリペプチドがヒトIL−21ポリペプチドである、請求項29の方法。
【請求項31】
IL−21ポリペプチドが配列番号2を含む、請求項30の方法。
【請求項32】
IL−21ポリペプチドが組換え的に産生される、請求項30の方法。
【請求項33】
IL−21ポリペプチドが、細菌細胞において、組換え的に産生される、請求項30の方法。
【請求項34】
哺乳動物被験者において、IL−10不全、またはIL−10不全に関連する障害を調節する方法であって:
被験者におけるIL−10発現または活性を増加させるのに十分な量のインターロイキン−21(IL−21)ポリペプチドを被験者に投与する
ことを含む、前記方法。
【請求項35】
哺乳動物被験者において、免疫学的障害を治療するかまたは防止する方法であって:
哺乳動物被験者におけるIL−10パラメーターを評価し;そして
評価されたIL−10パラメーターの結果に応じた量のインターロイキン−21(IL−21)ポリペプチドを被験者に投与する
ことを含む、前記方法。
【請求項36】
IL−10パラメーターが、IL−10タンパク質またはIL−10 mRNAのレベルに関する量的情報を含む、請求項35の方法。
【請求項37】
IL−10パラメーターが、IL−10タンパク質活性のレベルに関する量的情報を含む、請求項35の方法。
【請求項38】
免疫学的障害が神経学的障害である、請求項35の方法。
【請求項39】
被験者がヒトであり、そして免疫学的障害が多発性硬化症である、請求項38の方法。
【請求項40】
免疫学的障害が、ミエリン鞘に損傷または改変を引き起こす、請求項38の方法。
【請求項41】
哺乳動物被験者において、多発性硬化症の治療を評価する方法であって:
インターロイキン−21(IL−21)/IL−21受容体(IL−21R)のアゴニストを被験者に投与し;そして
被験者におけるIL−10パラメーターを評価する
ことを含む、前記方法。
【請求項42】
第二の用量のアゴニストを被験者に投与することをさらに含み、評価されたIL−10パラメーターの関数として、第二の用量を投与する、請求項41の方法。
【請求項43】
アゴニストが、IL−21ポリペプチド、アゴニスト性抗IL−21R抗体およびアゴニスト性抗IL−21R抗体の抗原結合断片からなる群より選択される、請求項41の方法。
【請求項44】
アゴニストがIL−21ポリペプチドである、請求項43の方法。
【請求項45】
被験者がヒトであり、そしてIL−21ポリペプチドがヒトIL−21ポリペプチドである、請求項44の方法。
【請求項46】
IL−21ポリペプチドが配列番号2を含む、請求項44の方法。
【請求項47】
(i)IL−21ポリペプチドを含む、1以上の単位用量の薬剤組成物を含む容器;および
(ii)多発性硬化症を有するか、または有すると推測される被験者に、単位用量を投与するための使用説明書
を含む、製品。
【請求項48】
使用説明書がラベル上に提供される、請求項47の製品。
【請求項49】
ラベルが、容器の外部表面上に貼られている、請求項48の製品。

【図1A】
image rotate

image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2006−523682(P2006−523682A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507478(P2006−507478)
【出願日】平成16年3月22日(2004.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/008833
【国際公開番号】WO2004/084835
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(302042209)ワイス (7)
【Fターム(参考)】