説明

インプラント用のコーティングおよび骨結合が改良されたインプラント、および製造方法

【解決課題】移植領域の中/上への移植が意図されたインプラントへのコーティングが提供される。
【解決手段】前記コーティングは、抗ウイルス、抗真菌、および抗菌効果を得るため、ならびに該移植領域におけるインプラントの骨結合、骨治癒、骨成長、および創傷治癒の促進のために酸化窒素(NO)を含む。酸化窒素(NO)溶出ポリマーは、用いる担体材料が治療用量の酸化窒素(NO)の溶出を調節し、制御するように該担体材料と一体化される。該コーティングを含むインプラント、およびインプラントのキットも提供される。さらに、該インプラントの製造方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、インプラントのコーティングの分野に関し、該インプラントは骨のような組織の、破砕、変形、腫瘍疾患、置換の外科的処置、および該インプラントの骨結合および創傷治癒の促進用に配置され、該コーティングは酸化窒素(NO)の使用を含む。さらに詳しくは、本発明は、そのような被覆されたインプラントのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
移植外科の分野においては、外科医は、ヒトまたは動物のような患者へ広く種々の金属、セラミック、およびポリマー材料を移植する。外科医はこれらの種類のインプラントを、骨のような組織の、破砕の治療、変形の治療、腫瘍疾患、置換のような整形外科的目的で用い、また、美容整形、再建外科、ワイヤーリード、心臓弁手術のような心臓外科、動脈瘤クリップ、歯科外科的処置のような移植の他の分野において用いる。
【0003】
インプラントの挿入に関連する問題は、患者の身体が開かれる場合、あるいは創傷が外傷の間に与えられる場合に、挿入されたインプラントに近接する組織へ入ってくるウイルス、真菌、および/または細菌によって引き起こされたウイルスおよび細菌学的感染である。また、インプラントそれ自体がウイルス、真菌または細菌を運ぶ可能性もある。
【0004】
また、インプラントが挿入された患者の身体はインプラントを異物として認識し、恐らくは、局所的または全身的反応に至る。かくして、先行技術における問題はインプラントの骨結合である。
【0005】
たとえ骨が硬くて、我々の身体の体重を支えるのに十分に強くても、それは決して変化しない組織ではない。生きた細胞は緻密な骨の重量の15%を占め、これらの細胞は再形成の絶え間ないプロセスに従事している。1つのクラスの細胞(破骨細胞)は古い骨のマトリックスを破壊し、他方、もう1つのクラスの細胞(骨芽細胞)は新しい骨マトリックスを沈積させる。このメカニズムは、それを通じてそれが担う負荷に適合することができる骨の内部における、骨マトリックスの連続的代謝回転および置換を供する。また、これは、インプラントの成功した骨結合に対する要件である。
【0006】
酸化窒素(NO)は抗生物質のような従来の療法に対する代替法を提供することが知られている。酸化窒素は、多くの細胞機能に関与する極めて反応性に富む分子である。事実、酸化窒素は免疫系において非常に重要な役割を演じ、真菌、ウイルス、細菌などのような多数の病原体、および一般的な微生物侵入に対してそれ自体を保護するために、マクロファージによってエフェクター分子として利用される。治癒のこの改良は、血中血小板の活性化または凝集を阻害するNOによって、また、インプラントの部位において炎症プロセスの低下させるNOによっても部分的に引き起こされる。
【0007】
NOは抗病原体、特に抗ウイルス効果を有するものとしても知られ、さらに、NOは抗癌効果も有する。というのは、それは治療濃度において細胞傷害性であって、静細胞性であり、すなわち、それはとりわけ、殺腫瘍および殺菌効果を有するからである。NOは、例えば、白血病またはリンパ腫を持つ患者からのヒト血液学的悪性細胞に対して細胞傷害性効果を有し、それにより、例え細胞が従来の抗癌剤に対して抵抗性となった場合でも、NOは、そのような血液学的障害を治療するための化学療法剤として用いることができる。NOのこの抗病原体および抗腫瘍効果は、例えば、多くの抗癌剤として副作用を有することなく、本発明によって利用される。
【0008】
しかしながら、NOの短い半減期のため、従来、NOでウイルス、細菌、ウイルス、真菌または酵母感染を治療するのは非常に困難であった。これは、NOが高濃度においては現実には毒性であって、身体に余りにも多量に適用されると負の効果を有するからである。NOは実際には血管拡張剤でもあり、身体へ導入される余りにも多量のNOは循環系の完全な崩壊を引き起こすであろう。他方、NOは1秒から数秒までの画分の短い半減期をそれが一旦放出されれば有する。よって、NOの短い半減期および毒性による投与の制限は、これまで、抗病原体および抗癌治療の分野においてNOの使用における制限因子であった。
【0009】
近年、研究が、水と接触するようになった場合、酸化窒素を放出する能力を持つポリマーに向けられてきた。そのようなポリマーが、例えば、L−PEI(線状ポリエチレンイミン)およびB−PEI(分岐ポリエチレンイミン)のようなポリアルキレンイミンである。そのポリマーが生体適合性であるという利点を有する。
【0010】
NO溶出ポリマーについての他の例は米国特許5,770,645号に掲載されており、そこでは、ポリマーの1200原子質量単位当たり少なくとも1つの−NO基で誘導体化されたポリマーが開示されており、Xは1または2である。1つの例はS−ニトロシル化ポリマーである、遊離チオール基をニトロシル化するのに適当な条件下でポリチオール化ポリマーをニトロシル化剤と反応させることによって調製される。
【0011】
Akron大学はデバイスを移植する場合に治癒プロセスの有意な改良および低下した炎症を示す、移植された移植片のような永久的に移植される医療デバイスの表面にナノ紡糸されうるNO−溶出L−PEI分子を開発した。米国特許6,737,447号によると、医療デバイスのためのコーティングは、線状ポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオレートのナノ繊維を用いて酸化窒素送達を供する。線状ポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオレートは制御された様式で酸化窒素(NO)を組織および器官に放出して、治癒プロセスを助け、および負傷の危険性がある組織に対する負傷を妨げる。線状ポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオレートの電子紡糸されたナノ−繊維は、デバイスの特性の変化を最小化しつつ、医療デバイスの周囲の組織に治療レベルのNOを送達する。ナノ繊維コーティングは、ナノ繊維の単位質量当たりの小さなサイズおよび大きな表面積のため、デバイスの他の特性の変化を最小化しつつ、単位質量当たりかなり大きな表面積を供する。
【0012】
しかしながら、米国特許6,737,447号の関係で「制御された」意味は、一定期間の間に酸化窒素がコーティングから溶出される事実にのみ向けられる。従って、米国特許6,737,447号に関する「制御された」の解釈は、本発明における「調節する」の意味とは異なる。「調節する」は、本発明によると、酸化窒素の溶出を変化させて、それにより、異なる溶出プロフィールを達成する可能性と解釈されるべきことを意図する。
【0013】
米国特許2004/0131753号は、L−PEIのナノ繊維を用いることによって、コーティングがNO送達を供する医療デバイス用のコーティングを開示する。米国特許2004/0131753号の技術的効果は、放出されたNOが血小板凝集および平滑筋細胞増殖を妨げるのを助けることである。どのようにして、NOの溶出が本適用において開始されるかは明らかでない。米国特許2004/0131753号によるコーティングから酸化窒素の溶出はどのようにしても調節されていない。さらに、米国特許2004/0131753号は改良された骨結合については全く沈黙している。
【0014】
米国特許6,270,779号は、治療量の酸化窒素を哺乳動物身体内の特定の部位に放出する求核性残基にカップリングされたシラン化表面を備えた生体適合性金属医療デバイスを記載する。かくして、この特許による医療デバイスは全てが金属であり、それを製造する方法はシラン化工程を必要とする。米国特許6,270,779号による金属表面からの酸化窒素の溶出はどのようにしても調節されていない。さらに、米国特許6,270,779号は、改良された骨結合については全く沈黙している。
【0015】
WO 03/026717号は、米国特許6,270,779号で述べられたものと同様な、医療デバイスのような酸化窒素放出基材を調製する方法を記載する。かくして、WO 03/026717号による基材からの酸化窒素の溶出はどのようにしても調節されていない。さらに、WO 03/026717号は改良された骨結合について全く沈黙している。
【0016】
米国特許2003/083739号は、シラン化された医療デバイスで血管ステント内再狭窄を治療するためのシステムを開示する。米国特許2003/083739号によるシラン化されたデバイスからの酸化窒素の溶出はどのようにしても調節されていない。さらに、米国特許2003/083739号は改良された骨結合について全く沈黙している。
【0017】
米国特許5,770,645号は、血小板沈積および再狭窄を低下させるための酸化窒素溶出ポリマーで被覆された医療デバイスを開示する。米国特許5,770,645号によるデバイスからの酸化窒素の溶出はどのようにしても調節されていない。さらに、米国特許5,770,645号は改良された骨結合について全く沈黙している。
【0018】
Pulfer,S.K.らの“Incorporation of nitric oxide−releasing crosslinked polyethyleneimine microspheres into vascular grafts”,Journal of Biomedinal Materials Research,Wiley,New York,NY,US.vol.37,no.2,November 1997は、酸化窒素放出ポリエチレンイミンマイクロスフェアを血管移植片のポアに捕獲することによる酸化窒素の部位特異的送達を開示する。これらの移植片で得られた効果は血小板凝集の阻害、平滑筋細胞の増殖および全身抗凝固剤に対する必要性の排除である。この論文によるポリマーからの酸化窒素の溶出はどのようにしても調節されていない。さらに、この論文は改良された骨結合について全く沈黙している。
【0019】
Shabani,M.らの“Enhancement of wound repair with a topically applied nitric−oxide releasing polymer”,Wound Repair and Regeneration,Mosby−Year Book,St.Louis MO,US,vol.4,no.3,1 July 1996は、局所使用のためのPEI−C NONOateポリマーを開示する。この論文によるポリマーからの酸化窒素の溶出はどのようにしても調節されていない。さらに、この論文は改良された骨結合について全く沈黙している。
【0020】
Bohl Masters,K.S.らの“Effects of nitric oxide releasing poly(vinyl alcohol)hydrogel dressings on dermal would healing in diabetic mice”Wound Repair and Regeneration,Mosby−Year Book,St.Louis,MO,US,vol.10,no.5,2002は、治療レベルのNOを生じる、ポリマー骨格に共有結合によりカップリングされたNOドナーでの、ポリ(ビニルアルコール)からの紫外線開始重合によって製造された新規なヒドロゲルに対するイン・ビトロおよびイン・ビボ応答を記載する。これは皮膚に適用されたポリマーであって、骨結合については何も示されていない。さらに、この論文によるヒドロゲルによる酸化窒素の溶出はいずれにせよ調節されていない。
【0021】
かくして、該開示は、酸化窒素NOの溶出によって抗菌、抗真菌、および抗ウイルス効果を供し、それにより、改良された骨結合を得るための、インプラントにNO溶出ポリマーをコーティングすることについての本技術の改良に関しては共に沈黙している。さらに、該開示はそのようなコーティングからの酸化窒素の溶出の調節および/または制御に関して沈黙している。
【0022】
かくして、同時に、インプラントの骨結合、骨治癒、骨成長、および創傷治癒の促進を得つつ、抗ウイルス、抗真菌、および抗菌効果を得る方法を提供することが理解されるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従って、本発明は、好ましくは、先行技術における前記した欠点の一以上、および単独での、またはいずれかの組合せでの不利を軽減し、緩和し、または排除することを求め、少なくとも部分的には、添付の特許請求の範囲によるコーティング、インプラントおよびインプラントのキットを提供することによって、とりわけ、前記した問題を少なくとも解決する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の1つの態様によると、コーティングが提供され、そのコーティングが、抗ウイルス、抗真菌、および抗菌効果、および、インプラントの骨結合、インプラント上での骨治癒、骨成長、および創傷治癒の促進を可能とする。該コーティングは、酸化窒素の治療用量が該酸化窒素溶出ポリマーから溶出され、抗ウイルス、抗真菌、および抗菌効果、およびインプラントの骨結合、骨治癒、骨成長、および創傷治癒の促進を可能とするように、酸化窒素(NO)溶出ポリマーを含む。
【0025】
本発明のもう1つの態様によると、インプラントが提供され、そのインプラントは少なくとも部分的に該コーティングを有する。
【0026】
本発明のさらにもう1つの態様によると、該インプラントのキットが提供される。
【0027】
本発明は、インプラントに近接する組織または器官のNOへの標的暴露を供し、それにより、活性な医薬物質に対する抵抗性、疼痛などを発生することなく、該組織または器官領域における増大した循環、抗ウイルス、抗真菌、および抗菌効果、および、インプラントの骨結合、骨治癒、骨成長、および創傷治癒の促進が同時に得られるという先行技術よりも優れた利点を少なくとも有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下の記載は、インプラントへのコーティングへ適用可能な本発明の具体例に焦点を合わせており、このコーティングは、抗ウイルス、抗真菌、および抗菌効果、およびインプラントの骨結合、骨治癒、骨成長、および創傷治癒の促進を可能とする。
【0029】
該具体例による患者は、ネコ、イヌ、ウマ、ウシなどよりなる群から選択される哺乳動物のようなヒトまたは動物であってよい。
【0030】
酸化窒素(一酸化窒素、NO)に関しては、その生理学的および薬理学的役割は、多くの注目を引き付け、かくして、研究されてきた。NOは酸化窒素シンターゼ(NOS)によって基質としてのアルギニンから合成される。NOSは、生体の通常の状態においてさえ存在する構成的酵素cNOS、およびある種の刺激に応答して大量に生産される誘導性酵素iNOSに分類される。cNOSによって生じるNOの濃度と比較して、iNOSによって生じるNOの濃度は2ないし3桁高く、すなわち、100ないし1000倍高く、およびiNOSは極端に大量のNOを生じることが知られている。
【0031】
iNOSによる生産の場合におけるような大量のNOの生成の場合には、NOは活性酸素と反応して、外来性微生物および癌細胞を攻撃するが、炎症および組織傷害も引き起こすことが知られている。他方、cNOSによる生産の場合におけるような少量のNOの生成の場合には、NOは、血管拡張剤作用、血液循環の改良、抗血小板凝集作用、抗菌作用、抗癌作用、消化管における吸収の加速、腎臓機能調節、神経伝達作用、勃起(生殖)、学習、食欲などのような、環状GMP(cGMP)を介する生体についての種々の保護作用を担うと考えられる。従前は、NOSの酵素活性の阻害剤は、生体中の大量に生じたNOに帰すことができると考えられた、炎症および組織傷害を予防する目的で調べられてきた。しかしながら、NOS(特にcNOS)の酵素活性(または発現された量)の促進は、NOSの酵素活性を促進し、およびNOを適切に生じさせることによって、生体についての種々の保護作用を呈する目的では調べられてこなかった。
【0032】
今回、NOが骨細胞活性の重要な局所的メディエーターであることが示された。骨に作用する機械的力の変化は、骨の順応再形成に導く。NOは成熟骨組織に対する重要なシグナリング分子であり、適応反応をトリガーする。
【0033】
骨芽細胞および破骨細胞は共にNOを生産し、それに応答し;低用量のNOは破骨細胞および骨芽細胞の機能を支持し、より高い用量は該機能を阻害する。
【0034】
全ての3つのタイプのNOSは骨組織の発達およびホメオスタシスに関与する。eNOSおよびnNOSによる基礎低レベルNO合成は、各々、骨芽細胞および破骨細胞を刺激し、それらの機能にとって必須である。eNOSの欠如は、低下した骨形成および骨用量をもたらす。eNOS欠乏骨芽細胞は、再形成部位に対する骨芽細胞の要件で必要な成長因子TGF−ベータに対してより弱い応答も示す。nNOS−欠乏は、他方、骨代謝回転不全を示す。
【0035】
なおより高い濃度における外来性NOは、破骨細胞の形成および活性を抑制することによって骨再吸収を阻害する。
【0036】
本発明はこれらの事実を利用し、従って、インプラント上のNO溶出コーティングを用いることによってインプラントの骨結合に関する予期せぬ効果を呈する。
【0037】
近年、研究は、水と接触した場合に、酸化窒素を放出する能力を持つポリマーに向けられてきた。そのようなポリマーは、例えば、L−PEI(線状ポリエチレンイミン)およびB−PEI(分岐ポリエチレンイミン)のようなポリアルキレンイミンであり、そのポリマーは生体適合性であるという利点を有する。
【0038】
本発明の具体例で使用されるポリマーは電子紡糸、空気紡糸、ガス紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸、溶融紡糸、およびゲル紡糸によって製造することができる。電子紡糸は、懸濁したポリマーが荷電されるプロセスである。特徴的な電圧において、ポリマーの微細なジェットが印加された電場と該ジェットによって運ばれた電荷との相互作用によって生じた張力に応答して表面から放出される。このプロセスはナノ繊維のようなポリマー繊維の束を生じる。ポリマー繊維のこのジェットは表面が処理されるように仕向けることができる。
【0039】
さらに、米国特許6,382,526号、米国特許6,520,425号、および米国特許6,695,992号は、そのようなポリマー繊維の生産のためのプロセスおよび装置を開示する。これらの技術は、一般には、繊維を形成できる液体および/または溶液の空気紡糸として繊維形成産業内でやはり知られている気流紡糸に基づくものである。気流紡糸は、本発明のある具体例によるデバイスを生産するのに適している。
【0040】
本発明の具体例において、NO溶出ポリマーはインプラント上に電子紡糸される。該インプラントは異なる具体例によると、例えば、一時的、永久的、または生分解性インプラントであり得る。一時的インプラントはある一定期間の移植の後に取り出されるインプラントである。例えば、図1に示すような、スクリューおよび/またはプレートを含む自体公知のデバイス1が、その骨折部位を横切って骨折した骨に固定される。しかしながら、デバイス1の移植後一定期間の間は、該デバイスにNOを溶出するコーティングが設けられる。かくして、例えば、骨結合が促進され、骨折骨は、デバイス1がそのような有利なコーティングを有しない場合よりも速く治癒される。治癒が少なくとも部分的に達成された後、例えば、骨折が十分な安定性まで治癒されると、一時的デバイス1は外科的処置によって取り出される。生分解性インプラントの代替具体例は、生物学的手段によって、安全かつ比較的迅速に天然の原料まで分解され、それが移植されていた身体から消失する能力を有する。後者の場合には、移植後一定期間の間におけるNOを溶出するコーティングもまた生分解性であるか、少なくとも生体適合性である。
【0041】
本発明の具体例によるインプラントは、(i)股関節、(ii)骨断片、骨片または骨の部分を相互に接合させまたは付着させることを意図したスクリュー、カニューレ挿入スクリュー、ネイル、骨髄内ネイル、およびプレート、(iii)外部固定具、(iv)脊椎に関する、変性不安定、骨折、腫瘍、変形の治療を意図したインプラント、または(v)下顎骨、中央顔、または頭蓋骨の骨折の治療、再構成、および変形の修正を意図した頭蓋−顎顔面インプラントのような整形外科用インプラントである。
【0042】
他の具体例において、該インプラントは群:1)人工歯がチタンスクリュー上に設置される前に、例えば、チタンスクリュー上に一時的に置かれた歯科インプラントおよびシーリングキャップ、2)内部および外部創傷縫合、3)美容整形、4)再建外科、5)ワイヤーリード、6)心臓弁膜手術のような心臓外科、7)動脈瘤クリップ、8)感染の間の鼓膜を通じる排出チューブのような耳用移植、9)静細胞剤注入システムのような注入システム、10)人工肛門形成、気管切開用チューブおよびシステムのような小孔システム、および11)涙チャネル移植から選択することができる。
【0043】
前記に従いインプラントをNO溶出ポリマーで被覆した後、インプラントを移植を必要とする領域に設置し、設け、または適用することができる。被覆されたインプラントは所定の位置にあり、インプラントは移植された身体中の避けることのできない水分または水と接触すると、インプラントのコーティング中のNO溶出ポリマーはNOを溶出し始める。
【0044】
本発明のもう1つの具体例において、インプラントはNO溶出ポリマーで部分的に被覆される。この具体例は、例えば、所定の位置における、頭部、脊椎または膝を保持するための固定手段に関するように、対象身体内部にあるインプラントの一部のみが、なんらかの理由で治癒プロセスの間に調節を必要とする場合に用いることができる。これらの場合における全インプラントをNO溶出コーティングで被覆するのはもちろん本発明の範囲内にあるが、被検体、すなわち、標的領域と接触した部分のみを被覆するのがより経済的であろう。
【0045】
次いで、NOの溶出は抗ウイルス、抗真菌、および抗菌効果、ならびに標的領域でのインプラントの骨結合、骨治癒、骨成長および創傷治癒の促進を実現する。
【0046】
酸化窒素溶出ポリマーからの酸化窒素の溶出を制御し、調節する際の3つの重要な因子は、ジアゾリウムジオレート基のような酸化窒素放出ポリマーとどのようにして迅速にプロトンドナーが接触するか、酸化窒素溶出ポリマーを囲む環境の酸性度、および酸化窒素放出ポリマーを囲む環境の温度である(より高い温度は酸化窒素の溶出を促進する)。
【0047】
1つの具体例において、NO溶出ポリマーは、もう1つのポリマーまたは他のポリマーのような担体材料と一緒にインプラント上に共紡糸される。この文脈での「共紡糸」は、空気紡糸、電子紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸、空気紡糸、溶融紡糸またはゲル紡糸いずれかによってNO溶出ポリマーと一緒にポリマー混合物として紡糸されると解釈されるべきことを意図する。この/これらの他のポリマー/ポリマー類は、例えば、群:ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、澱粉、セルロース、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエステル、ポリカプトラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質系ポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、およびラテックスまたはこれらのいずれかの組合せから選択することができる。
【0048】
本発明の1つの具体例において、L−PEI−NOのような酸化窒素溶出ポリマーは担体ポリマーと混合して、酸化窒素の溶出を遅らせ、または遅延させる。また、もう1つの具体例において、酸化窒素溶出ポリマーは1を超える担体ポリマーと混合することができ、それにより、溶出または放出は具体的な要望にフィットさせるように仕立てることができる。そのような要望は、例えば、酸化窒素溶出ポリマーの環境が疎水性である場合、最初の一定期間の間において低溶出でありえ、酸化窒素溶出ポリマーの環境がより親水性に変化した場合、一定期間の間におけるより速い溶出であり得る。これは、例えば、生分解性ポリマーを用いることによって達成することができ、それにより、最初の一定期間の間における低溶出が得られ、その後、疎水性ポリマーが溶解してしまうと、親水性ポリマーは酸化窒素のより高い溶出を供する。かくして、より疎水性の担体ポリマーは酸化窒素のより遅い溶出を与える。というのは、水または体液のようなプロトンドナーの活性化は担体ポリマーをより遅く浸透させるからである。他方、親水性ポリマーは反対に作用する。親水性ポリマーの一つの例はポリエチレンオキサイドであり、疎水性ポリマーの1つの例はポリスチレンである。これらの担体ポリマーを酸化窒素溶出ポリマーと混合し、次いで、適当な繊維に電子紡糸することができる。当業者は同様な目的でいずれかの他のポリマーを用いることができるかを知っている。図4は2つの異なるポリマー混合物;酸性環境において親水性担体ポリマーと混合された酸化窒素溶出ポリマー(A)および中性環境において疎水性担体ポリマーと混合された酸化窒素溶出ポリマー(B)についての2つの溶出プロフィール(NO濃度対時間)を示す。
【0049】
1つの具体例において、この担体ポリマーは疎水性または親水性特性を持つもう1つの材料によって置換される。従って、この文脈での用語「担体材料」は、担体ポリマー、および親水性または疎水性特性を持つ他の材料を含むものと解釈されるべきである。
【0050】
本発明のもう1つの具体例において、L−PEI−NOのような酸化窒素溶出ポリマーからの酸化窒素の溶出は、プロトンの存在によって影響される。これは、より酸性の環境が酸化窒素のより速い溶出を提供することを意味する。酸化窒素溶出ポリマー、または酸化窒素溶出ポリマーおよび担体材料の混合物を、アスコルビン酸溶液のような酸性流体で活性化することによって、酸化窒素の溶出を加速することができる。
【0051】
前記した担体ポリマーおよび担体材料は、酸化窒素溶出の調節以外の特徴に影響し得る。そのような特徴の例は機械的強度である。
【0052】
担体ポリマーまたは担体材料に関しては、NO−溶出ポリマーは、本発明の具体例の全てにおいて、これらの材料のいずれかに一体化させることができ、いずれかと一緒に紡糸することができ、またはいずれかの頂部に紡糸することができる。この紡糸は電子紡糸、空気紡糸、乾式紡糸、湿式紡糸、溶融紡糸、およびゲル紡糸を含む。このように、所定の酸化窒素溶出特徴を持つ、酸化窒素溶出ポリマーおよび担体ポリマーあるいは担体材料を含むポリマー混合物の繊維を製造することができる。これらの特徴は異なる適用において異なる溶出プロフィールとなるように調整することができる。
【0053】
NO溶出ポリマーについての他の例が米国特許5,770,645号に掲載されており、そこでは、ポリマーの1200原子質量単位当たり少なくとも1つの−NOX基で誘導体化されたポリマーが開示されており、Xは1または2である。1つの例はS−ニトロシル化ポリマーであり、これは、遊離チオール基をニトロシル化するのに適した条件下で、ポリチオール化ポリマーをニトロシル化剤と反応させることによって調製される。
【0054】
Akron大学が、デバイスを移植した場合に、治癒プロセスの有意な改良および低下した炎症を示す、移植された移植片のような永久的に移植された医療デバイスの表面にナノ紡糸できるNO溶出L−PEI分子を開発した。米国特許6,737,447号によると、医療デバイスのためのコーティングは、線状ポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオレートのナノ繊維を用いる酸化窒素送達を提供する。線状ポリ(エチレンイミン)−ジアゼニウムジオレートは制御された中で酸化窒素(NO)を放出する。
【0055】
しかしながら、米国特許6,737,447号の文脈での「制御された」の意味は、酸化窒素が一定期間の間にコーティングから溶出される、すなわち、酸化窒素は一度に全てが溶出されないという事実に向けられるに過ぎない。従って、米国特許6,737,447号に関する「制御された」の解釈は、本発明における「調節する」の意味とは異なる。本発明による「調節する」または「制御する」は、酸化窒素の溶出を変化させ、それにより、異なる溶出プロフィールを達成する能力と解釈されるべきであることを意図する。
【0056】
O−ニトロシル基を含むポリマーは潜在的な酸化窒素溶出ポリマーでもある。かくして、本発明の1つの具体例において、酸化窒素溶出ポリマーはジアゼニウムジオレート基、S−ニトロシル基およびO−ニトロシル基またはそのいずれかの組合せを含む。
【0057】
本発明のなおもう1つの具体例において、該酸化窒素溶出ポリマーはL−PEI−NO(線状ポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオレート)のようなポリ(アルキレンイミン)ジアゼニウムジオレートであり、ここに、該酸化窒素溶出ポリマーにはジアゼニウムジオレート基を介して酸化窒素が負荷され、処置部位において酸化窒素を放出するように配置される。
【0058】
適当な酸化窒素溶出ポリマーのいくつかの他の例はアミノセルロース、アミノデキストラン、キトサン、アミノ化キトサン、ポリエチレンイミン、PEI−セルロース、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリウレタン、ポリ(ブタンジオールスペルメート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリペプチド、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)およびポリジメチルシロキサンまたはこれらのいずれかの組合せ、ならびに多糖骨格またはセルロース骨格のような不活性な骨格にグラフトされたこれらの言及したポリマーを含む群から選択される。
【0059】
本発明のなおもう1つの具体例において、酸化窒素溶出ポリマーはO−誘導体化NONOateであってよい。この種のポリマーは、しばしば、酸化窒素を放出するのに酵素反応を必要とする。
【0060】
酸化窒素溶出ポリマーとして適当であり得るポリマーを記載する他の方法はL−PEIのような第二級アミン基(=N−H)を含むポリマーであり、またはアミノセルロースのような、ペンダントとして、第二級アミン(=N−H)を有する。
【0061】
酸化窒素溶出ポリマーは、前記したように、骨格中に、またはペンダントとしてのいずれかで、第二級アミンを含むことができる。これは良好な酸化窒素溶出ポリマーを作成するであろう。第二級アミンは酸化窒素を負荷するのが容易となるように強い負の電荷を有するべきである。もし窒素(N)よりも高い電気陰性度を持つ、リガンドが、窒素原子に対して、炭素原子のような隣接原子上のごとき第二級アミンの近くにあると、ポリマーに酸化窒素を負荷するのは非常に困難である。他方、もし窒素原子に対して、炭素原子のような隣接原子上のような、第二級アミン近くに電気陽性リガンドがあると、アミンの電気陰性度は増大し、それにより、酸化窒素溶出ポリマーに酸化窒素を負荷する可能性を増大させる。
【0062】
本発明の具体例において、酸化窒素ポリマーは塩で安定化することができる。ジアゼニウムジオレート基のような酸化窒素溶出基は通常は陰性であるので、カチオンのような正の対イオンを用いて、酸化窒素溶出基を安定化するのに用いることができる。このカチオンは、例えば、Na、K、Li、Be2+、Ca2+、Mg2+、Ba2+、および/またはSr2+のような、周期表において1族または2族からのいずれかのカチオンを含む群から選択することができる。同一酸化窒素溶出ポリマーの異なる塩は異なる特性を有する。このように、適当な塩(またはカチオン)を異なる目的で選択することができる。カチオン安定化ポリマーの例はL−PEI−NO−Na、すなわち、ナトリウムで安定化されたL−PEIジアゼニウムジオレート、およびL−PEI−NO−Ca、すなわち、カルシウムで安定化されたL−PEIジアゼニウムジオレートである。
【0063】
本発明のもう1つの具体例は酸化窒素溶出ポリマー、または酸化窒素溶出ポリマーおよび担体材料の混合物を吸収剤と混合することを含む。この具体例は酸化窒素の加速された溶出の利点を提供する。というのは、吸収剤を介して、該ポリマーまたはポリマー混合物は水または体液のような活性化流体をかなり速く取ることができるからである。1つの具体例において、80%(w/w)吸収剤を酸化窒素溶出ポリマー、または酸化窒素溶出ポリマーおよび担体材料の混合物と混合し、もう1つの具体例において、10ないし50%(w/w)の吸収剤を酸化窒素溶出ポリマー、または酸化窒素溶出ポリマーおよび担体材料の混合物と混合する。
【0064】
酸化窒素の溶出は水のようなプロトンドナーによって活性化されるので、酸化窒素溶出ポリマー、または酸化窒素溶出ポリマーおよび担体材料の混合物を該プロトンドナーと接触させておくのは有利であろう。もし適応症が、長期間における酸化窒素の溶出を必要とするならば、プロトンドナーを酸化窒素溶出ポリマー、または酸化窒素溶出ポリマーおよび担体材料の混合物と接触させておく可能性を示すシステムが有利である。従って、本発明のなおもう1つの具体例において、酸化窒素の溶出は吸収剤を添加することによって調節することができる。吸収剤は水のようなプロトンドナーを吸収し、プロトンドナーの、長期間の間における、酸化窒素溶出ポリマーとの密接な接触を維持する。該吸収剤はポリアクリレート、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース、および微結晶性セルロース、綿、ならびに澱粉を含む群から選択される。この吸収剤は充填剤として用いることもできる。この場合、該充填剤は酸化窒素溶出ポリマー、または該酸化窒素溶出ポリマーおよび担体材料の混合物に所望の組織を与えることができる。
【0065】
なおもう1つの具体例において、前記に従ったNO溶出ポリマーをナノ粒子またはマイクロスフェアに粉砕または破砕する。次いで、これらのナノ粒子またはマイクロスフェアーは、インプラントのボディ環境に溶解できない膠での接着のような当業者に知られたいずれかの便宜的な方法によってインプラントに適用される。また、NO溶出ポリマーの繊維、ナノ粒子、またはマイクロスフェアを、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロリトリル、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、澱粉、セルロース、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質系ポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、およびラテックスまたはこれらのいずれかの組合せのような他のポリマーと混合し、またはカプセル化するのも可能である。NO溶出ポリマーの繊維、ナノ粒子またはマイクロスフェアが、本具体例に従って、移植領域における水分または水と接触すると、NOの溶出が開始され、抗ウイルス、抗真菌、および抗菌効果が得られる。この具体例は、NOを溶出しない他のポリマーの混合によって、NOのインプラントからの放出の時間スパンを制御または調節する利点を供する。
【0066】
本発明の文脈では、用語「カプセル化」は、酸化窒素溶出ポリマーを発泡体、フィルム、ナノ繊維の不織マット、繊維、またはNO溶出ポリマーを固定する能力を持つ他の材料のような三次元マトリックス中に固定し、あるいは酸化窒素溶出ポリマーをいずれかの適当な材料に包むと解釈されるべきことを意図する。
【0067】
1つの具体例において、粉末、ナノ粒子またはマイクロスフェアのような酸化窒素溶出ポリマーを発泡性に組み込むことができる。発泡体は開放気泡構造を有することができ、これは、プロトンドナーの酸化窒素溶出ポリマーへの輸送を容易にする。発砲体はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、澱粉、セルロース、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質系ポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ポリオレフィンおよびラテックス、またはこれらまたはラテックスのいずれかの組合せのようないずれかの適当なポリマーであり得る。次いで、この発砲体をデバイスに適用して、改良された骨結合を得る。
【0068】
なおもう1つの具体例において、NO溶出ポリマーはもう1つの適当なポリマー(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、澱粉、セルロース、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質系ポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、およびラテックス、またはこれらのいずれかの組合せ)フィルムのフィルムに一体化させ、次いで、前記した、制限下でそのフィルムをインプラント上に接着させる。NO溶出ポリマーを含めたこれらのフィルムが移植領域における水分または水と接触すると、NOの溶出が開始され、抗ウイルス、抗真菌、および抗菌効果、ならびにインプラントの骨結合、骨治癒、骨成長、および創傷治癒の促進が得られる。
【0069】
もう1つの具体例において、前記によるナノ粒子、またはマイクロスフェアは移植領域で分解した、可溶性フィルムに一体化させて、可溶性フィルムが移植領域中の水分または水と接触すると、注目する領域において、NOを溶出させることができる。
【0070】
デバイスは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100ppmのような、0.1ないし1000ppmのような、0.01ないし3000ppmのような、0.001ないし5000ppmのような治療用量にて該溶出ポリマーから酸化窒素(NO)を溶出する。該濃度は、該濃度が測定される場所に依存して広く変化することができる。もし濃度が現実のNO溶出ポリマー近くで測定されれば、濃度は数千pmと高くなりえ、他方、この場合において組織内部の濃度は、しばしば、1ないし1000ppmのようにかなり低い。
【0071】
コーティングにおけるNO溶出ポリマーは、ヒドロ活性化銀のような銀と合わせることができる。デバイスへの銀の一体化は過剰ブーストに抗微生物、および抗ウイルス効果を与える。好ましくは、銀は銀イオンの形態でデバイスから放出可能である。銀のデバイスへの一体化は数個の利点を与えることができる。そのような利点の1つの例は、銀がデバイスそれ自体を細菌またはウイルスから自由に保つことができ、他方、酸化窒素溶出ポリマーは治療用量の酸化窒素を標的部位に溶出させる。
【0072】
本発明のなおもう1つの具体例において、NO溶出コーティングは薬物溶出インプラント、例えば、医薬品、ビタミン、ニコチン、ニトログリセリン、エタムブトール、ジクロフェナク、イブプロフェン、アスピリン、ナプロキセン、COX−2阻害剤、コリンマグネシウムトリサリシレート、ジフルニザール、サルサレート、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、オキサプロジン、インドメタシン、スリンラック、トルメチン、メロキシカム、ピロキシカム、メトロフェナメート、メフェナミン酸、ナブメトン、エトダラック、ケトロラック、セレコキシブ、バルデコキシブ、およびロフェコキシブのような非ステロイド抗炎症薬物(NSAID);コルチゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、ビタミンD、エストロゲン、コレステロール、ベクロメタゾン、フルニソリド、フルチカゾン、トリアムシノロン、デソナイド、クロベタゾール、アルクロメタゾール、デスオキシメタゾン、ベタメタゾン、ハルシノニド、およびデキサメタゾンのようなステロイド;モトリン、フェルデン、ナプロシン、リドカイン、およびプリロカインのような鎮痛剤;およびインジナビルスルフェート、フィナステリド、アプレピタント、モンテルカストナトリウム、アレンドロネートナトリウム、ロフェコキシブ、安息香酸リザトリプタン、シンバスタチン、フィナステリド、エゼチミブ、酢酸カスポフンギン、エルタペネムナトリウム、塩酸ドルゾラミド、チモロールマレイン酸塩、ロサルタンカリウム、およびヒドロクロロチアザイドなどのような他の物質についてのブースターとして作用している。この具体例は、1つの処理において、有意な値の2つの処理を合わせる利点を持つコーティングを示す。
【0073】
デバイスは、例えば、L−PEIの電子紡糸によって製造することができる。次いで、L−PEIを特徴的な電圧で荷電し、L−PEIの微細なジェットはL−PEIポリマー繊維の束として放出される。ポリマー繊維のこのジェットは処理すべき表面に向けることができる。処理すべき表面は、例えば、いずれかの適当な材料とすることができる。次いで、L−PEIの電子紡糸繊維は該材料に付着し、本発明によるデバイス上でL−PEIのコーティング/層を形成する。
【0074】
特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内で依然としてありつつ、前記に従った他のNO溶出ポリマーをインプラント上に電子紡糸するのはもちろん可能である。
【0075】
1つの具体例において、コーティングで使用されるNO溶出ポリマーは、純粋なNO溶出ポリマー繊維を得ることができるように電子紡糸される。
【0076】
該NO溶出ポリマーのインプラント上への気流紡糸、空気紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸、溶融紡糸、およびゲル紡糸もまた本発明の範囲内にある。
【0077】
製造方法は、コーティングで被覆すべき領域に関してNO溶出ポリマー繊維またはミクロ粒子の大きな接触表面の利点、NO溶出ポリマーの効果的な使用、およびインプラントをコーティングするコスト的に有利な方法を提供する。
【0078】
本発明はいずれかの適当な形態で実施することができる。本発明による具体例のエレメントおよび構成要素はいずれかの適当な方法で物理的に、機能的に、および論理的に実施することができる。事実、機能性は単一ユニットで、複数のユニットで、または他の機能的ユニットの一部として実施することができる。
【0079】
本発明を特別な具体例を参照して先に記載したが、本明細書中に記載された特別な形態に限定されることを意図しない。むしろ、本発明は特許請求の範囲によってのみ限定され、前記の特定のもの以外の具体例は同等に特許請求の範囲内にあることが可能である。
【0080】
特許請求の範囲において用語「含む/含んでいる」は他のエレメントまたは工程の存在を排除しない。さらに、個々にリストアップしたが、複数の手段、エレメントまたは方法工程を実施することができる。加えて、個々の特徴を異なる請求項に含めることができるが、これらは潜在的に有利に組み合わせることができ、異なる請求項へ含めるのは、特徴の組み合わせが可能でない、および/または有利でないことを意味しない。加えて、単数の言及は複数を排除しない。用語「ある」、「第一の」、「第二の」などは複数を排除しない。請求項における参照記号は明瞭化した例として掲げるに過ぎず、請求項の範囲を制限するものと断じて解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
本発明のこれらおよび他の態様、特徴および利点は本発明の実施形態の記載から明白であり、明らかとされ、添付の図面への参照がなされる。
【図1】図1は本発明の具体例によるインプラントの1つの例の説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗−ウィルス、抗−真菌、および抗菌効果を得るための、酸化窒素(NO)を溶出するように配置され、かつ移植領域において当該インプラントの骨−結合、骨治癒、骨成長、および創傷治癒を促進するように配置された酸化窒素溶出ポリマーを含む、移植領域の中に/上に移植されるように配置されたインプラントのコーティングであって、ここに、該コーティングは該インプラントを少なくとも部分的に被覆し、
該酸化窒素(NO)溶出ポリマーは、用いる担体材料が治療用量の該酸化窒素(NO)の溶出を調節し、制御するように該担体材料と一体化されていることを特徴とするコーティング。
【請求項2】
酸化窒素の該溶出が、破骨細胞および骨芽細胞の機能を支持するように選択された請求項1記載のコーティング。
【請求項3】
該酸化窒素(NO)溶出ポリマーがジアゼニウムジオレート基、S−ニトロシル基、およびO−ニトロシル基、またはこれらのいずれかの組合せを含む請求項1記載のコーーティング。
【請求項4】
該酸化窒素(NO)溶出ポリマーが、ヒトまたは動物の身体中、またはその上の該移植領域における酸化窒素(NO)の放出のために配置された、該ジアゼニウムジオレート基、S−ニトロシル基またはO−ニトロシル基、またはこれらのいずれかの組合せを介して酸化窒素(NO)を負荷されたL−PEI(線状ポリエチレンイミン)である請求項1記載のコーティング。
【請求項5】
該酸化窒素溶出ポリマーがアミノセルロース、アミノデキストラン、キトサン、アミノ化キトサン、ポリエチレンイミン、PEI−セルロース、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリウレタン、ポリ(ブタンジオールスペルメート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリペプチド、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、およびポリジメチルシロキサンまたはこれらのいずれかの組合せ、ならびに多糖骨格またはセルロース骨格のような不活性骨格にグラフト化されたこれらの言及されたポリマーから選択される請求項1記載のコーティング。
【請求項6】
プロトンドナーに付された場合、該コーティングが少なくとも部分的に分解可能である請求項1記載のコーティング。
【請求項7】
該ポリマーがナノ粒子またはマイクロスフェアの形態である請求項1記載のコーティング。
【請求項8】
該ナノ粒子、またはマイクロスフェアが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、澱粉、セルロース、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質系ポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ポリオレフィン、およびラテックス、またはこれらのいずれかの組合せのような適当な材料中にカプセル化された請求項7記載のコーティング。
【請求項9】
担体材料がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、澱粉、セルロース、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、蛋白質系ポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ポリオレフィンおよびラテックスまたはこれらのいずれかの組合せよりなる群から選択される請求項1記載のコーティング。
【請求項10】
該コーティングが該領域の暴露のために配置された銀を含む請求項1記載のコーティング。
【請求項11】
該コーティングが医薬、ビタミン、ニコチン、ニトログリセリン、非ステロイド抗炎症薬、ステロイド、および/または鎮痛剤よりなる群から選択される他の有効成分用のブースターとして作用するように配置された請求項1記載のコーティング。
【請求項12】
該酸化窒素溶出ポリマーが該骨格中の第二級アミン、またはペンダントとしての第二級アミンを含む請求項1記載のコーティング。
【請求項13】
正のリガンドを第二級アミンに対して隣接原子に位置させた請求項12記載のコーティング。
【請求項14】
吸収剤を含む請求項1または9記載のコーティング。
【請求項15】
該吸収剤がポリアクリレート、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース(CMC)、微結晶性セルロース、綿、または澱粉、またはそのいずれかの組合せよりなる群から選択される請求項14記載のコーティング。
【請求項16】
カチオンを含み、該カチオンが該酸化窒素溶出ポリマーを安定化させる請求項1、9、または14記載のコーティング。
【請求項17】
該カチオンがNa、K、Li、Be2+、Ca2+、Mg2+、Ba2+、および/またはSr2+、またはそのいずれかの組合せよりなる群から選択される請求項16記載のコーティング。
【請求項18】
請求項1記載のコーティングを含むインプラント。
【請求項19】
該インプラントが(i)股関節、(ii)骨断片、骨片または骨の部分を相互に接合させまたは付着させることを意図したスクリュー、カニューレ挿入スクリュー、ネイル、骨髄内ネイル、およびプレート、(iii)外部固定具、(iv)脊椎に関する、変性不安定、骨折、腫瘍、変形の治療を意図したインプラント、または(v)下顎骨、中央顔、または頭蓋骨の骨折の治療、再構成、および変形の修正を意図した頭蓋−顎顔面インプラントのような整形外科用インプラントである請求項18記載のインプラント。
【請求項20】
該インプラントは群:1)人工歯がチタンスクリュー上に設置される前に、チタンスクリュー上に一時的に置かれた歯科インプラントおよびシーリングキャップ、2)内部および外部創傷縫合、3)美容整形、4)再建外科、5)ワイヤーリード、6)心臓弁膜手術のような心臓外科、7)動脈瘤クリップ、8)感染の間の鼓膜を通じる排出チューブのような耳用移植、9)静細胞剤注入システムのような注入システム、10)人工肛門形成、気管切開用チューブおよびシステムのような小孔システム、および11)涙チャネル移植から選択される請求項18または19記載のインプラント。
【請求項21】
該インプラントは請求項1記載のコーティングを含む、請求項18記載のインプラントのキット。
【請求項22】
該キットが骨断片、骨片または骨の部分を相互に接合し、または付着させることを意図したスクリューおよびプレートを含む、請求項21記載のキット。
【請求項23】
該キットが一時的インプラント、生分解性および/または非生分解性インプラントを含む請求項21記載のキット。
【請求項24】
複数の酸化窒素溶出ポリマー粒子、好ましくはナノ繊維、ナノ粒子またはマイクロスフェアおよび担体材料を選択し、次いで、
該酸化窒素溶出粒子および担体材料をインプラント上のコーティングとして展開することを含み、
ここに、該展開は該粒子の電子、空気、ガス流、湿式、乾式、溶融、ゲル紡糸を含むことを特徴とする、請求項11記載のインプラント上に請求項1記載のコーティングを適応する工程。
【請求項25】
該で用いる場合に、治療用量の酸化窒素(NO)を溶出させるように配置された酸化窒素(NO)溶出ポリマーを選択し、
担体材料を選択し、その担体材料は、抗ウイルス、抗真菌、および抗菌効果を得、およびその移植領域における、インプラントの骨結合、骨治癒、骨成長、および創傷治癒を促進するインプラントの使用のための該治療用量の酸化窒素(NO)の溶出を調節し、および制御するように配置され、
該担体材料が、該デバイスの使用において、該治療用量の酸化窒素(NO)の溶出を調節しおよび制御するように、該担体材料と共にNO−溶出ポリマーを酸化窒素(NO)溶出材料に一体化させ、次いで、
用いる該NO−溶出ポリマーが酸化窒素(NO)を溶出させる場合に、移植領域を該酸化窒素に暴露するように該インプラントが配置されるように、該インプラントを少なくとも部分的に被覆するコーティングとして該酸化窒素溶出材料を展開する;
ことを含む請求項18記載のインプラントの製造工程。
【請求項26】
該展開がNO−溶出ポリマーの電子紡糸、空気紡糸、ガス紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸、溶融紡糸またはゲル紡糸を含む請求項25記載の製造工程。
【請求項27】
該酸化窒素(NO)溶出ポリマーの該選択が、複数の酸化窒素(NO)溶出ポリマー粒子、好ましくはナノ繊維、ナノ粒子、マイクロスフェアを選択することを含む請求項25または26記載の製造工程。
【請求項28】
該NO−溶出ポリマーの該担体材料との該一体化が、該インプラントの酸化窒素溶出特性を予め規定するために、該NO−溶出ポリマーの該担体材料中への一体化、該NO−溶出ポリマーの該担体材料と共に行う紡糸、または該NO−溶出ポリマーの該担体材料の頂部への紡糸を含む請求項25または26記載の製造工程。
【請求項29】
銀を該デバイスに一体化させることをさらに含む請求項25記載の製造工程。
【請求項30】
インプラント上にコーティングを製造するための酸化窒素(NO)溶出ポリマーの使用であって、該インプラントは移植領域中/上への移植を意図したものであり、
ここに、酸化窒素は該コーティングに負荷され、そのコーティングは、抗ウイルス、抗真菌、および抗菌効果を得、および該移植領域において、インプラントの骨結合、骨治癒、骨成長、および創傷治癒を促進するための、該移植領域中/上で用いた場合に、該溶出ポリマーから非毒性用量で酸化窒素(NO)を溶出させることを特徴とする使用。
【請求項31】
該非毒性用量が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100ppmのような、0.1ないし1000ppmのような、0.01ないし3000ppmのような0.001ないし5000ppmである請求項30記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2009−507539(P2009−507539A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529568(P2008−529568)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050903
【国際公開番号】WO2007/028657
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(507271798)ノーラブズ エービー (11)
【Fターム(参考)】