説明

インプリント装置及び物品の製造方法

【課題】 インプリント処理がなされる空間内の気体がインプリント装置外に流出することの防止とインプリント装置外のパーティクルが前記空間内に流入することの防止との両立。
【解決手段】 インプリント装置は、モールド11を保持するヘッド12と、基板13を保持するステージ14と、樹脂を前記基板に塗布する塗布機構20と、インプリント処理がなされる第1空間Aとその外側の第2空間Bとの境界を定める第1隔壁41と、前記第2空間とその外側の第3空間Cとの境界を定める第2隔壁40と、を備え、前記第2空間を経由した前記第1空間と前記第3空間との間の気体の流通を阻害するように前記第2空間の圧力を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント技術は、ナノスケールの微細パターンの転写を可能にする技術であり、磁気記憶媒体や次世代半導体デバイスの量産向けリソグラフィ技術の1つとして実用化されつつある。インプリントでは、電子線描画装置等を用いて微細パターンが形成されたモールド(型)を原版としてシリコンウエハやガラスプレート等の基板上に微細パターンが形成される。この微細パターンは、基板上に樹脂を塗布し、その樹脂を介して基板にモールドのパターンを押し付けた状態でその樹脂を硬化させることによって形成される。
【0003】
現時点において実用化されているインプリント技術としては、熱サイクル法および光硬化法がある。熱サイクル法では、基板に塗布された熱可塑性の樹脂をガラス転移温度以上の温度に加熱し、樹脂の流動性を高めた状態で樹脂を介して基板にモールドが押し付けられる。そして、樹脂を冷却した後に樹脂からモールドを引き離すことにより基板上にパターンが形成される。
【0004】
光硬化法では、紫外線硬化型の樹脂を使用し、樹脂を介して基板にモールドを押し付けた状態で紫外線を照射して樹脂を硬化させた後、硬化した樹脂からモールドを引き離すことにより基板上にパターンが形成される。熱サイクル法は、温度制御による転写時間の増大および温度変化による寸法精度の低下を伴うが、光硬化法には、そのような問題が存在しない。そのため、現時点においては、光硬化法がナノスケールの半導体デバイスの量産において有利である。特許文献1には、光硬化法を用いたインプリント装置においてインプリント装置内の圧力を大気圧より高い圧力として揮発性の高い硬化前の樹脂の揮発量を低減することが開示されている。従来のインプリント装置10は、図5に示されるように、クリーンルーム内に設置され、インプリント装置10の全体が筐体40で囲まれている。その上で、送風機30からフィルター32を通して空気を導風ダクト31で筐体40の内部に供給することで、クリーンルームより高度に清浄なインプリント処理空間を得ている。筐体40の内部に送風機30で空気を供給することで、筐体40の内部を外部より圧力(気圧)が高くなる(陽圧)ように保たれている。これにより、筐体40にわずかな隙間があっても、筐体40の内部から外部へ向かって空気が流れ出るため、筐体40の外部からパーティクルが混入することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−91782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のインプリント装置では、インプリント処理で使用される樹脂の気化ガスやパターン欠陥を減少するためにパターン面周囲の空気と置換されるヘリウム等の気体がインプリント装置の外部に漏洩することがあった。本発明は、インプリント処理がなされる空間内の気体がインプリント装置外に流出することの防止とインプリント装置外のパーティクルが前記空間内に流入することの防止との両立に有利なインプリント装置の提供を例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、モールドと樹脂とを用いたインプリント処理を基板に対して行うインプリント装置であって、前記モールドを保持するヘッドと、前記基板を保持するステージと、前記樹脂を前記基板に塗布する塗布機構と、前記インプリント処理がなされる第1空間とその外側の第2空間との境界を定める第1隔壁と、前記第2空間とその外側の第3空間との境界を定める第2隔壁と、を備え、前記第2空間を経由した前記第1空間と前記第3空間との間の気体の流通を阻害するように前記第2空間の圧力を調節する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、インプリント処理がなされる空間内の気体がインプリント装置外に流出することの防止とインプリント装置外のパーティクルが前記空間内に流入することの防止との両立に有利なインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態のインプリント装置を示した図である。
【図2】第2実施形態のインプリント装置を示した図である。
【図3】第3実施形態のインプリント装置を示した図である。
【図4】第4実施形態のインプリント装置を示した図である。
【図5】従来のインプリント装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
〔第1実施形態〕
図1を参照しながら第1実施形態のインプリント装置について説明する。インプリント装置10は、パターン面を有するモールド11を保持するヘッド12を備えている。ヘッド12は構造体18に取り付けられて支持され、不図示の駆動源と制御部50によって基板13とモールド11が近づいたり離れたりする方向に駆動することができる。インプリント装置10は、パターン面が押し付けられた樹脂を硬化する紫外線を照射するために、紫外光源16と照明光学系17を備えている。ステージ定盤19上を駆動するステージ14は基板13を保持する。基板13に樹脂21を塗布するために、インプリント装置10はその内部に塗布機構20を備えている。塗布機構20は樹脂21を吐出するノズルを持ち、インプリント装置10はステージ14を駆動して基板13をノズル下に移動させて樹脂を塗布する。インプリント装置10は、また、基板13に樹脂が塗布されてから樹脂が硬化されるまでの一連のインプリント処理を制御する制御部50を備えている。
【0012】
制御部50は、樹脂22を塗布した基板13の部分をモールド11の下へ移動させるために、ステージ14を駆動する。このとき、制御部50は、ステージ14の位置をレーザー干渉計又はエンコーダー15を用いて計測し、不図示の制御機構とアライメント機構によって数ナノメートル以下の精度でステージ14の位置合わせの制御を行う。制御部50は、ヘッド12を駆動させて、基板13上の樹脂22にモールド11のパターン面を押し付けた状態で紫外線を照射して樹脂を硬化させる。なお、熱で樹脂を硬化させるためにモールドチャックにヒーターなどの熱源を構成しているインプリント装置もある。
【0013】
これら一連のインプリント処理により、インプリント装置10は、基板13にモールド11のパターンをインプリントする。モールド11や基板13にパーティクルが付着すると、転写したパターンの不良になる。従って、インプリント装置10は、通常クリーンルームに設置される。しかし、クリーンルーム全体を清浄にするには限度があり、また、高度な清浄度を保つためにはコストが大幅に上昇してしまう。
【0014】
第1実施形態のインプリント装置10は、ステージ14等インプリント処理がなされる空間を囲むように隔壁(第1隔壁)41を設けていることを特徴とする。ここで、外側の境界が隔壁41によって定められる空間を第1空間Aとする。さらに、隔壁41と筐体(第2隔壁)40との間の空間を第2空間Bとし、筐体40の外側の空間を第3空間Cとする。すなわち、第2空間Bは、内側の境界が隔壁41によって、外側の境界が筐体40によって定められる空間であり、第3空間Cは、内側の境界が筐体40によって定められる空間である。第1実施形態においては、第3空間Cはクリーンルーム空間である。前述のように、塗布機構20によって液体の樹脂21が基板上に塗布される。ここで、塗布機構20をインプリント装置10の内部に構成せず、インプリント装置10の外に配置された塗布機構20によって樹脂を基板に塗布してからインプリント装置10へ搬入する形態とすることも可能である。塗布機構20は、樹脂吐出ノズルのメンテナンスや樹脂の変質によるノズルの目詰まりを防止するために、基板13以外にも樹脂を吐出する機能を設けている。そのため、塗布機構20から吐出される樹脂21を受容する受け皿(受容部)23を第1空間A内のステージ14上に配置している。吐出される樹脂21を受容するために、樹脂を吸収する吸収体を構成しても良いし、真空によって外部に排出する機構を受け皿23に設けても良い。
【0015】
樹脂の種類によっては樹脂成分の一部または全部が気化し、周辺の空間に樹脂成分の蒸気が拡散する。インプリント装置10の内部においては、樹脂を塗布した基板13や塗布機構20の樹脂吐出ノズル、受け皿23から樹脂が気化し、インプリント装置10の内部空間に樹脂の蒸気が充満することがある。メンテナンスなどでインプリント装置10の内部へ清浄な空気を送風する機能が長期間停止した場合等、インプリント装置10の内部空間の換気機能が果たされなかった場合には、内部空間の樹脂の蒸気濃度が高くなることがある。また、インプリント装置10の内部では空気以外の気体を扱う場合がある。例えば、モールド11を樹脂に押し付けて樹脂を硬化させるときに、パターン面周囲の雰囲気を空気以外の気体で置換することでインプリントにおけるパターン欠陥が減少することが知られている。そのようなインプリント処理を促進する気体としてヘリウムや窒素、各種の機能性ガスが用いられる。本発明の各実施形態においては、主にヘリウムを用いることとして説明するが、気体の種類を限定するものではない。本発明の各実施形態のインプリント装置10では、モールド11の周辺にヘリウムを供給する気体供給口24を設けており、インプリント処理時にパターン面にヘリウムが供給される構成としている。以上に述べてきたように、インプリント装置10の内部空間には、樹脂の蒸気や空気以外の気体が存在している。それらの気体が筐体から漏洩してクリーンルームに放出されると、その気体の成分が半導体製造プロセスを汚染したり、計測機器の計測結果に誤差を与えたりする要因になりうる。従って、インプリント処理がなされる第1空間Aで発生する気体がインプリント装置10の外部へ漏洩することを防ぐことが求められる。
【0016】
従来のインプリント装置のように、インプリント装置10の筐体40の内部を外部より圧力を高くすると、筐体40の内部へのパーティクルの侵入は防げるが、同時にインプリント装置10の内部で発生する気体をクリーンルームに放出してしまうこととなる。そこで、第1実施形態ではこれらの課題を解決するために、ステージ14、モールド11、基板13、基板に塗布された樹脂22、塗布機構20、樹脂の受け皿23、気体供給口24が前記第1空間Aに含まれるような隔壁41を設けている。また、インプリント装置10に筐体40を設けることで、隔壁41との間に前記第2空間Bを形成している。第1空間Aと第2空間Bにはそれぞれ導風ダクト31で送風機30と接続されている。制御部50は、第1空間Aと第2空間Bとの圧力をそれぞれ違う圧力(気圧)とするように制御できる。さらには、第3空間Cであるクリーンルームの圧力を計測し、第1空間A、第2空間B、第3空間Cのそれぞれの圧力に差ができるように調節できる構成としている。
【0017】
圧力の差を調節するために、第1実施形態では圧力センサとして微差圧計を用いている。微差圧計は、第1空間A、第2空間B、第3空間Cそれぞれに対する各空間の圧力差を精密に計測できる。微差圧計の計測結果に基づいて、送風機30において送風量又は送風圧力を制御する。送風機30は第1空間A用と第2空間B用をそれぞれに備えても良い。第2空間B用の送風機30は、気体を第2空間Bに供給する第1気体供給部を構成し、第1空間A用の送風機30は、気体を第1空間Aに供給する第2気体供給部を構成する。各空間への送風量を一定とし、各空間を隔てる隔壁41又は筐体40の隙間の量を変えることで圧力差を調節する構成でも良い。
【0018】
送風機30にはインプリント装置10の内部へ供給する空気に含まれるパーティクルを除去するためのフィルター32を備えており、クリーンルーム空間Cよりも清浄な空気を供給することができる。さらに、送風機30にはインプリント装置10の内部へ供給する空気を温度制御する機能を備えており、クリーンルーム空間Cの空気よりも温度変動幅が少ない空気を供給することができる。送風機30によってインプリント装置10の内部の各空間へ供給された空気は、各空間を流れ、空間内部に存在するパーティクルを除去し、インプリント装置10の温度ムラを低減させるのに寄与する。その後、空気は、不図示の排気ダクトを介してインプリント装置10の外部へ排気される。前記排気ダクトを送風機30に接続し、再び温度制御とフィルターによる清浄化を施してインプリント装置10の内部へ循環させる構成としても良い。
【0019】
各空間を形成する隔壁には、金属や樹脂製の板状のものを用いると良い。ビニールカーテンやゴムシートなど、形状が自由に屈曲する材料で形成しても良い。もちろん、インプリント装置10を構成するユニットや構造体によって空間を分離する隔壁41となるように構成しても良い。隔壁41によって隔てられる空間は、完全に密閉空間とする必要はない。例えば、隔壁41となる部品を取り付けた際に生じる隙間、基板13を装置外から搬入するための基板搬入口、モールド11を装置外から搬入するためのモールド搬入口など、隔壁には隙間が存在し、それらの隙間から他の空間へ気体の出入があって良い。ただし、送風機30からの空気の供給能力によって、各空間に圧力差を発生させることができる程度まで、隙間を狭くする必要がある。このとき、隔壁の隙間を介して圧力が高い空間から低い空間への一方向の流れが形成される。
【0020】
各空間の圧力差は、常に一定になるように調節することが望ましい。そのためには、隔壁に隙間の開閉度を可変にできる開閉弁を設けても良い。この開閉弁は、アクチュエーターで制御する機構としても良いし、バネや重力による力と圧力差による力とのバランスで開閉する圧力調整弁としても良い。さらには、インプリント装置10の電源オフ時など、送風機30の運転が停止されるときには自動的に閉じて密閉状態を形成し、装置の清浄度の低下や温度変化を防ぐ機構としても良い。
【0021】
第1実施形態では、制御部50は、第2空間Bの圧力が第1空間Aの圧力及び第3空間Cの圧力より高くなるように制御している。それにより、第1空間Aと第3空間Cとの間で第2空間Bを経由した気体の流通が阻害されている。具体的には、第2空間Bの圧力を第1空間Aより高くすることで、第1空間Aから第2空間Bへ気体が漏洩することを防ぐことができる。第2空間Bから第1空間Aへは気体が侵入するが、侵入する気体はフィルター32を介して送風機30から供給された清浄度の高い気体である。また、第2空間Bの圧力を第3空間Cより高くすることで、筐体の隙間から第2空間Bの気体が第3空間Cに漏洩する流れが生じるため、筐体40の外部からパーティクルなどの汚染物質がインプリント装置10の内部に侵入してくることを防ぐことができる。
【0022】
従って、第1実施形態では、第1空間Aに存在する樹脂の蒸気やヘリウムがインプリント装置10から外部空間に漏洩することなく、かつ、装置外の汚染物質をモールド11や基板13が存在する第1空間Aに侵入させない効果を得ることができる。これは従来のインプリント装置では両立し得ない課題を解決できたことを示している。
【0023】
これまでの説明では、第1空間Aにも清浄で温度制御された空気を送風機により供給することから、各空間の圧力は、第2空間B>第1空間A≧第3空間Cの順で高くすることが想定できる。ここで、第1空間Aへ空気を供給するのための送風機や送風ダクトは構成せず、第2空間Bを介して第1空間Aへ空気が供給される構成としても良い。また、第1空間Aには空気の供給や排気を実施せず、密閉構造としても良い。また、第1空間Aにはヘリウムや窒素などの空気以外の気体を供給して空間内部を充満させ、空気または酸素の濃度を低減させた空間を得る形態としても良い。また、各空間を隔てる隔壁は、必ずしも周囲を取り囲む必要はない。
【0024】
図1に示すように、筐体40の床部分が、第1空間Aと第3空間Cとを隔てる隔壁を構成しても良い。また、構造体18が第1空間Aと第2空間Bとを隔てる第1隔壁の少なくとも一部として機能させても良い。また、インプリント装置10のメンテナンス時など、送風機30が長期間停止する場合には、インプリント装置10とは別の送風機を配置し、第2空間Bのみに清浄な空気を供給する構成としても良い。この場合、第2空間Bに排気口を設け、排気ダクトを接続して外部に排気したり、排気ダクトを送風機に接続して空気を循環させたりしても良い。これまで説明した構成により、第1実施形態では、従来のインプリント装置の課題を解決し、かつ良好なインプリントパターンを得るインプリント装置を提供することができる。
【0025】
〔第2実施形態〕
次に、図2に基づいて第2実施形態のインプリント装置10について説明する。第2実施形態のインプリント装置10は、図2に示すように、インプリント装置の筐体40,42が2重に構成されていることを特徴とする。本実施形態においては、第1実施形態における第1空間Aにインプリント装置全体を含む。また、インプリント装置10の筐体は、内側の筐体42と外側の筐体40から成り、その間の空間を第1実施形態における第2空間Bとすることができる。第1実施形態では、インプリント装置10の内部空間を隔壁41で分割することを特徴としたが、本実施形態のように、筐体を2重にすることでも第1実施形態と同様の効果が期待できる。
【0026】
〔第3実施形態〕
次に、図3に基づいて第3実施形態のインプリント装置10について説明する。第3実施形態のインプリント装置10は、第1実施形態における第1空間Aを大気圧以下にすることを特徴としている。本実施形態では、第1空間Aの気体を排気する排気装置(第1排気部)33を備えている。その他の構成は、第1実施形態と同様である。排気装置33は、ファンによって吸引力を生成する装置でも良いし、真空ポンプや真空発生器による真空吸引力を利用する装置でも良い。従来のインプリント装置の構成では、排気装置33によってインプリント装置内部の圧力がクリーンルームの圧力よりも低下すると、装置筐体の隙間から筐体外部空間のパーティクルなどを含んだ空気が侵入してしまう課題があった。しかし、第3実施形態によると、第1空間Aを第3空間Cよりも低い圧力にしても(例えば大気圧以下)、第2空間Bの圧力を第1空間Aや第3空間Cよりも高くしているため、第3空間Cからの空気の侵入を防ぐことができる。同時に、第1空間Aで発生した気体はインプリント装置10の外部へ漏洩することなく、排気装置33によって排気することができる。つまり、第3実施形態において、各空間の圧力は、第2空間B>第3空間C≧第1空間Aの順で高くすることが想定できる。第3実施形態により、第1空間を清浄度の高い状態を保ちつつ、第1空間内部で発生した気体を排気装置33によって回収することが可能である。
【0027】
以上述べてきた第1〜第3実施形態では、圧力を異ならせる空間は3つであった。しかし、圧力を異ならせる空間の数は3に限定されず、インプリント装置10の外部空間を含めた3つ以上の任意の数とすることができる。
【0028】
〔第4実施形態〕
次に、図4に基づいて第4実施形態のインプリント装置について説明する。第1〜第3実施形態までは、第2空間Bの圧力が第1空間Aの圧力や第3空間Cの圧力よりも高く調節されていた。第4実施形態のインプリント装置10は、第2空間Bの圧力が第1空間Aや第3空間Cの圧力よりも低くなるように調節されることを特徴としている。インプリント装置10は、第2空間Bの圧力を低くするために、空気を第2空間Bから排気する排気装置(第2排気部)33を備える。また、これまで説明した実施形態と同様に、第1空間Aにはフィルター32を通過した清浄な空気を送風機30で供給する。
【0029】
第4実施形態では、第1空間Aよりも第2空間Bの圧力が低いため、気体は第1空間Aから第2空間Bへ漏洩する。しかし、第2空間Bよりも第3空間Cの圧力が高いため、インプリント装置10で発生した気体は第3空間C(インプリント装置10の外部)に漏洩しない。また、第3空間Cよりも第2空間Bの圧力が低いため、インプリント装置10の外部の清浄度の高くない気体が第2空間Bに侵入してくる。しかし、第2空間Bよりも第1空間Aの圧力が高いため、第1空間Aに清浄度の高くない気体は侵入してこない。従って、第5実施形態によっても、従来のインプリント装置の課題を解決し、かつ良好なインプリントパターンを得るインプリント装置を提供することができる。
【0030】
なお、以上の実施形態において、第1空間Aは、単一の連続した空間のみならず、複数の空間として構成されていてもよい。また、第1空間Aと第2空間Bとの間に、少なくとも1つの別の空間(第4空間、第5空間、・・・)が介在するように、追加の隔壁が構成されていてもよい。
【0031】
[物品の製造方法]
物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを転写(形成)する工程を含む。さらに、該製造方法は、パターンを転写された基板をエッチングする工程を含みうる。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングの代わりに、パターンを転写された基板を加工する他の処理を含みうる。以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内において様々な変形及び変更が可能である。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールドと樹脂とを用いたインプリント処理を基板に対して行うインプリント装置であって、
前記モールドを保持するヘッドと、
前記基板を保持するステージと、
前記樹脂を前記基板に塗布する塗布機構と、
前記インプリント処理がなされる第1空間とその外側の第2空間との境界を定める第1隔壁と、
前記第2空間とその外側の第3空間との境界を定める第2隔壁と、を備え、
前記第2空間を経由した前記第1空間と前記第3空間との間の気体の流通を阻害するように前記第2空間の圧力を調節する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記第1空間の圧力及び前記第3空間の圧力より高くなるように前記第2空間の圧力を調節する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記インプリント処理を促進する気体を前記第1空間に供給する供給部を備える、ことを特徴とする請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記第1空間から気体を排気する排気部を備える、ことを特徴とする請求項3に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記第1空間の圧力及び前記第3空間の圧力より低くなるように前記第2空間の圧力を調節する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記インプリント処理を促進する気体を前記第1空間に供給する供給部を備える、ことを特徴とする請求項5に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記供給部は、前記樹脂が塗布された基板と前記モールドとの間の空間に前記気体を供給する供給口を前記第1空間内に備える、ことを特徴とする請求項3または請求項6に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記塗布機構から吐出される樹脂を受容する受容部を前記第1空間内に備える、ことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記ヘッドを支持する構造体を備え、前記構造体は、前記第1隔壁の少なくとも一部を構成する、ことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いてインプリント処理を基板に対して行う工程と、
前記工程で前記インプリント処理の行われた基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−49471(P2012−49471A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192701(P2010−192701)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】