説明

ウロテンシンII受容体拮抗物質

本発明は、式(I)の化合物、
【化1】


並びにその薬剤として許容される塩、エステル、及びプロドラッグ、式(I)の化合物を含有する医薬組成物、並びにウロテンシンII受容体拮抗物質としての前記化合物及び組成物の使用を目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規三環式化合物、前記化合物の調製方法、前記化合物を含有する組成物、及びウロテンシンII媒介疾患の治療における前記化合物の使用、に関する。より具体的には、本発明の化合物は、ウロテンシン−II媒介疾患の治療に有用なウロテンシン−II受容体拮抗物質である。
【背景技術】
【0002】
ウロテンシン−II(U−II)は、システイン結合環状ペプチドであり、これは、心臓血管、腎臓、膵臓、及び中枢神経系に強力な効果を及ぼす。元々、この物質は、ハゼ(ギリチス・ミラビリス(Gillichthys mirabilis))の尾部下垂体(尾部神経分泌器官)から、12−mer,AGTAD−シクロ(CFWKYC)−Vとして単離されたが(D.Pearson.J.E.Shively,B.R.Clark,I.I.Geschwind,M.Barkley,R.S.Nishioka,H.A.Bern,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1980,77,5021〜5024)、現在脊椎動物の全ての綱で同定されている。U−IIの組成は、ヒトの11アミノ酸からマウスの14アミノ酸まで変動するが、常に保存されたシステイン結合大環状分子、CFWKYCを有する。近年、U−II受容体が同定されたが(R.S.Ames,H.M.Sarau,J.K.Chambers,R.N.Willette,N.V.Aiyar,A.M.Romanic,C.S.Louden,J.J.Foley,C.F.Sauermelch,R.W.Coatney,Z.Ao,J.Disa,S.D.Holmes,J.M.Stadel,J.D.Martin,W.−S.Liu,G.I.Glover,S.Wilson,D.E.McNulty,C.E.Ellis,N.A.Elshourbagy,U.Shabon,J.J.Trill,D.W.P.Hay,E.H.Ohlstein,D.J.Bergsma,S.A.Douglas,Nature(London)1999,401,282〜286)、それは、GPR14オーファン受容体として既に知られていたG−タンパク質結合受容体(GPCR)であり(M.Tal,D.A.Ammar,M.Karpuj,V.Krizhanovsky,M.Naim,D.A.Thompson,Biochem.Biophys.Res.Commun.1995,209,752〜759;及びA.Marchese,M.Heiber,T.Nguyen,H.H.Q.Heng,V.R.Saldivia,R.Cheng,P.M.Murphy,L.−C.Tsui,X.Shi,P.Gregor,S.R.George,B.F.O’Dowd,J.M.Docherty,Genomics 1995,29、335〜344)、心臓血管組織で主に発現する。
【0003】
ハゼのU−IIは、魚類、哺乳類及びヒトで、強力な血管収縮活性を有する(J.M.Conlon,K.Yano,D.Waugh,N.Hazon,J.Exp.Zool.1996,275,226〜238;F.Bohm,J.Pernow,Br.J.Pharmacol.2002,135,25〜27)。更に、それは、既知である最も強力な血管収縮剤であると思われ(S.A.Douglas,E.H.Ohlstein,Trends Cardiovasc.Med.2000,10,229〜237)、エンドセリン−1の約10倍超強力である、1nM未満のEC50値で、ラット及びヒトの単離された動脈輪の濃度依存的収縮を引き起こす。近年、国際公開第2005/072226号でKikkawa,H.及びKushida,H.は、細菌、虚血、放射線、薬物又は化学物質により引き起こされるクローン病、潰瘍性大腸炎、及び炎症性大腸炎が挙げられるが、これらに限定されない炎症性腸疾患の予防及び/又は治療のために、ウロテンシン−II拮抗物質を使用することを開示した。
【0004】
慢性血管疾患におけるU−IIの役割に関して、このペプチドは、心筋細胞の肥大(Y.Zou,R.Nagai,T.Yamazaki,FEBS Letters 2001,508,57〜60)及び平滑筋細胞の増殖(T.Watanabe,R.Pakala,T.Katagiri,C.R.Benedict,Circulation 2001,104,16〜18)を誘発することが報告されており、これは心不全及びアテローム性動脈硬化症との関与を示唆する。更に、U−IIは、慢性心不全の特徴である末梢血管緊張の増加を示した(M.Lim,S.Honisett,C.D.Sparkes,P.Komesaroff,A.Kompa,H.Krum,Circulation 2004,109,1212〜1214)。最近の結果は、ヒト大動脈のアテローム性動脈硬化性病変で、U−II受容体濃度の増加が観察されたことを示した(N.Bousette,L.Patel,S.A.Douglas,E.H.Ohlstein,A.Giaid,Atherosclerosis 2004,176,117〜123)。
【0005】
健常個体に対して、U−II様免疫反応性の発現は、透析を施行していない、腎機能障害を有する患者の血漿で2倍、血液透析を施行している患者で3倍高かった(K.Totsune,K.Takahashi,Z.Arihara,M.Sone,F.Satoh,S.Ito,Y.Kimura,H.Sasano,O.Murakami,Lancet 2001,358,810〜811).近年、国際公開第2005/034873号で、Kinoshita,M.及びKushida,H.は、抗新生物剤により引き起こされる腎臓毒性及び下痢の低減にウロテンシン−II拮抗物質を使用することを開示した。
【0006】
U−IIは、糖尿病の潜在的媒介物質であると記載されている。例えば、U−IIは、グルコース濃度の上昇に応答して、かん流ラット膵臓におけるインスリンの放出を阻害することが示されている(R.A.Silvestre,J.Rodriguez−Gallardo,E.M.Egido,J.Marco,Horm.Metab.Res.2001,33,379〜381)。腎不全ではなくとも、真性糖尿病患者で、U−II濃度の上昇が見られた(K.Totsune,K.Takahashi,Z.Arihara,M.Sone,S.Ito,O.Murakami,Clin.Sci.2003,104,1〜5)。
【0007】
U−II拮抗物質は、疼痛、神経学的状態及び精神状態、片頭痛、神経筋欠陥、並びに心臓血管疾患の治療に有用である可能性がある。U−IIのICV(脳室内)投与は、CNS刺激活性を示唆する立ち上がり、毛づくろい、及び運動活性を増加させる(J.Gartlon,F.Parker,D.C.Harrison,S.A.Douglas,T.E.Ashmeade,G.J.Riley,Z.A.Hughes,S.G.Taylor,R.P.Munton,J.J.Hagan,J.A.Hunter,D.N.C.Jones,Psychopharmacology 2001,155,426〜433)。U−IIは、認知的反応、情動反応及び運動反応、疼痛の知覚、並びにパニック反応において重要な帯状皮質及び中脳水道周囲灰白質脳領域のFos発現を増加させる(J.E.Gartlon,T.Ashmeade,M.Duxon,J.J.Hagan,D.N.C.Jones,Eur.J.of Pharmacol.2004,493,95〜98)。U−IIは、高架式十字迷路試験及び穴板試験(hole-board test)において、齧歯類の不安惹起様反応を誘発する(Y.Matsumoto,M.Abe,T.Watanabe,Y.Adachi,T.Yano,H.Takahashi,T.Sugo,M.Mori,C.Kitada,T.Kurokawa,M.Fujino,Neuroscience Letters 2004,358,99〜102)。
【0008】
米国特許第6,911,464号及び米国特許出願公開第2004/0259873号及び同第2005/0203090号(Man,H−W.及びMuller,G.W.の国際公開第2004080422号に対応する)は、異常なTNF−アルファ濃度に付随する、PDE4阻害により媒介される、及び/又はMMP阻害により媒介される、種々の疾病及び疾患の治療又は予防用の、N−アルキル−ヒドロキサム酸−イソインドリル化合物を開示している。
【0009】
米国特許第7,043,052号及び米国特許出願公開第2004/0259873号及び同第2005/0203090号(Man,H−W.、Muller,G.W.、及びZhang,W.の国際公開第2004/080423号に対応する)は、癌、炎症性腸疾患及び骨髄異形成症候群が挙げられるが、これらに限定されない種々の疾病及び疾患の治療、予防又は管理用の、7−アミド−イソインドリル化合物を開示している。
【0010】
Kawasaki,H.、Shinagawa,Y.、及びMimura,Tは、国際公開第98/52919号で、選択的IgE及びIL−5生成阻害活性を有する、フタルアミド誘導体及びそれを含有する抗アレルギー剤を開示している。
【0011】
米国特許出願公開第2004/0267051号(国際公開第2003/014061号に対応している)は、移動水素化条件下における、カルボニル化合物の還元的アミノ化によるアミンの生成方法を記載する。
【0012】
米国特許第6,884,887号(国際公開第2001/005741号に対応している)は、カルボニル化合物の均質的な触媒還元的アミノ化によるアミンの生成方法を記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、ウロテンシン−II媒介疾患の治療に有用なウロテンシン−II拮抗物質である化合物を提供することである。本発明の別の目的は、その化合物、組成物、中間体及び誘導体を調製するプロセスを提供することである。本発明の更なる目的は、血管性高血圧、心不全、アテローム性動脈硬化症、腎不全、抗新生物剤により引き起こされる腎臓毒性及び下痢、心筋梗塞後症候群、肺高血圧症/線維症、糖尿病、並びに、疼痛、アルツハイマー病、痙攣、抑欝、片頭痛、精神病、不安、神経筋欠陥及び脳卒中が挙げられるCNS徴候が挙げられるが、これらに限定されないウロテンシン−II媒介疾患を治療する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、式(I)の化合物:
【0015】
【化1】

式中、
1は、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、及びNRAB(式中、RA及びRBは、それぞれ独立して、水素及びC1〜4アルキルから成る群から選択される)から成る群から選択され;
nは、0〜3の整数であり(好ましくは、nは1〜2の整数である);
2は、フェニル及び5〜6員ヘテロアリールから成る群から選択され、フェニル又は5〜6員ヘテロアリールは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、ハロゲン化C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、ハロゲン化C1〜4アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、(C1〜4アルキル)アミノ、ジ(C1〜4アルキル)アミノ及び−C(O)O−C1〜4アルキルから成る群から独立して選択される、1つ以上の置換基で所望により置換されてもよく;
3は、3又は4位に結合し、NRCDである(式中RC及びRDは、水素及びC1〜4アルキルから成る群からそれぞれ独立して選択され、
或いは、RC及びRDは、それらに結合している窒素原子と一緒になって、ピペリジニル、ピペラジニル、及びピロリジニルから成る群から選択される飽和環構造を形成し、
飽和環構造は、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、ハロゲン化C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、ハロゲン化C1〜4アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、(C1〜4アルキル)アミノ、ジ(C1〜4アルキル)アミノ及び−C(O)O−C1〜4アルキルから成る群から独立して選択される、1つ以上の置換基で所望により、置換される);
並びに、その薬剤として許容される塩、エステル、及びプロドラッグ、を目的とする。
【0016】
本発明の実例は、薬剤として許容される担体及び式(I)の化合物を含む医薬組成物である。本発明の実例は、式(I)の化合物と薬剤として許容される担体とを混合する工程を含む、医薬組成物を製造するプロセスである。
【0017】
本発明は、更に、ウロテンシン−II媒介疾患を治療又は寛解させる方法を目的とする。具体的には、本発明の方法は、血管性高血圧、心不全、アテローム性動脈硬化症、腎不全、抗新生物剤により引き起こされる腎臓毒性及び下痢、心筋梗塞後症候群、肺高血圧症/線維症、糖尿病(例えば、II型真性糖尿病)、並びに、疼痛、アルツハイマー病、痙攣、抑欝、片頭痛、精神病、不安、神経筋欠陥及び脳卒中が挙げられるCNS徴候が挙げられるが、これらに限定されないウロテンシン−II媒介疾患を治療又は寛解させることを目的とする。
【0018】
本発明は、式(I)の化合物、並びにその医薬組成物及び薬剤を調製するプロセスを更に目的とする。
【0019】
別の例では、本発明は、それを必要としている被験体において、(a)血管性高血圧、(b)心不全、(c)アテローム性動脈硬化症、(d)腎不全、(e)抗新生物薬により引き起こされる腎毒性、(f)抗新生物薬により引き起こされる下痢、(g)心筋梗塞後症候群、(h)肺高血圧、(i)肺線維症、(j)糖尿病(例えば、II型真性糖尿病)、(k)疼痛、(l)アルツハイマー病、(m)痙攣、(n)抑鬱、(o)片頭痛、(p)精神病、(q)不安症、(r)神経筋欠陥、又は(s)脳卒中、を治療するための薬剤の調製における、本明細書に記載の化合物のいずれかの使用を目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、式(I)の化合物、
【0021】
【化2】

(式中、R1、R2、n及びR3は、本明細書で定義する通りである)、並びにその薬剤として許容される塩、エステル、及びプロドラッグを目的とする。式(I)の化合物は、ウロテンシンII受容体の拮抗物質として有用であるため血管性高血圧、心不全、アテローム性動脈硬化症、腎不全、抗新生物薬により引き起こされる腎毒性及び下痢、心筋梗塞後症候群、肺高血圧/線維症、糖尿病、並びに疼痛、アルツハイマー病、痙攣、抑鬱、偏頭痛、精神病、不安症、神経筋欠陥、及び脳卒中を含むCNS徴候が挙げられるが、これらに限定されないウロテンシンII媒介疾患の治療に有用である。
【0022】
本発明の実施形態では、R1は、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、及びNRAB(式中、RA及びRBは、水素及びC1〜4アルキルから成る群からそれぞれ独立して選択される)から成る群から選択される。本発明の別の実施形態においては、R1は、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜3アルキル、及びC1〜3アルコキシから成る群から選択される。本発明の別の実施形態においては、R1は、水素、ハロゲン、C1〜3アルキル、及びC1〜3アルコキシから成る群から選択される。本発明の別の実施形態においては、R1は水素である。本発明の別の実施形態では、R1は、NRABである(式中、RA及びRBは、水素、メチル、エチル、及びt−ブチルから成る群からそれぞれ独立して選択される)。
【0023】
本発明の1つの実施形態において、nは1〜3の整数である。本発明の別の実施形態においては、nは0〜2の整数である。本発明の別の実施形態においては、nは1〜2の整数である。
【0024】
本発明の1つの実施形態では、R2は、フェニル及び5〜6員ヘテロアリールから成る群から選択され、フェニル又は5〜6員ヘテロアリールは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、ハロゲン化C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、ハロゲン化C1〜4アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、(C1〜4アルキル)アミノ、及びジ(C1〜4アルキル)アミノから成る群から独立して選択される、1〜3つの置換基で、所望により置換される。本発明の別の実施形態では、R2は、フェニル及び5〜6員ヘテロアリールから成る群から選択され、フェニル又は5〜6員ヘテロアリールは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、フッ素化C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、フッ素化C1〜4アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、(C1〜4アルキル)アミノ、及びジ(C1〜4アルキル)アミノから成る群から独立して選択される、1〜2つの置換基で、所望により置換される。
【0025】
本発明の1つの実施形態では、R2は、フェニル及び5〜6員ヘテロアリールから成る群から選択される。本発明の別の実施形態では、R2は、フェニルであり、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、ハロゲン化C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、ハロゲン化C1〜4アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、(C1〜4アルキル)アミノ、及びジ(C1〜4アルキル)アミノから成る群から独立して選択される、1〜3つの置換基で、所望により置換される。本発明の別の実施形態では、R2は、フェニルであり、フェニルは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、フッ素化C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、フッ素化C1〜4アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、(C1〜4アルキル)アミノ、及びジ(C1〜4アルキル)アミノから成る群から独立して選択される、1〜2つの置換基で、所望により置換される。本発明の別の実施形態では、R2はフェニルであり、フェニルは、C1〜4アルコキシから独立して選択される、1〜2つの置換基で、所望により置換される。本発明の別の実施形態では、R2は、(R)−3,4−ジメトキシ−フェニルである。
【0026】
本発明の1つの実施形態では、R3は、3又は4位に結合し、NRCD(式中、RC及びRDは、水素及びC1〜4アルキルから成る群からそれぞれ独立して選択される)から成る群から選択される。本発明の別の実施形態では、R3は、3又は4位に結合し、NRCD(式中、RC及びRDは、水素、メチル、エチル、及びt−ブチルから成る群からそれぞれ独立して選択される)から成る群から選択される。
【0027】
本発明の別の実施形態では、R3は、3又は4位に結合し、NRCD(式中、RC及びRDは、それらに結合している窒素原子と一緒になって、ピペリジニル、ピペラジニル、及びピロリジニルから成る群から選択される飽和環構造を形成し、飽和環構造は、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、ハロゲン化C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、ハロゲン化C1〜4アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、(C1〜4アルキル)アミノ、及びジ(C1〜4アルキル)アミノから成る群から独立して選択される、1〜3つの置換基で、所望により、置換される)から成る群から選択される。本発明の別の実施形態では、R3は、3又は4位に結合し、NRCD(式中、RC及びRDは、それらに結合している窒素原子と一緒になって、ピペリジニル、ピペラジニル、及びピロリジニルから成る群から選択される飽和環構造を形成し、飽和環構造は、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、フッ素化C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、フッ素化C1〜4アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、(C1〜4アルキル)アミノ、及びジ(C1〜4アルキル)アミノから成る群から独立して選択される、1〜2つの置換基で、所望により、置換される)から成る群から選択される。
【0028】
本発明の別の実施形態では、R3は、3又は4位に結合し、NRCD(式中、RC及びRDは、それらに結合している窒素原子と一緒になって、ピペリジニルを形成し、ピペリジニルは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、ハロゲン化C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、ハロゲン化C1〜4アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、(C1〜4アルキル)アミノ、及びジ(C1〜4アルキル)アミノから成る群から独立して選択される、1〜3つの置換基で、所望により、置換される)から成る群から選択される。本発明の別の実施形態では、R3は、3又は4位に結合し、NRCD(式中、RC及びRDは、それらに結合している窒素原子と一緒になって、ピペリジニルを形成し、ピペリジニルは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、フッ素化C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、フッ素化C1〜4アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、(C1〜4アルキル)アミノ、及びジ(C1〜4アルキル)アミノから成る群から独立して選択される、1〜2つの置換基で、所望により置換される)から成る群から選択される。
【0029】
本発明の別の実施形態では、R3は、3又は4位に結合し、並びに、ピペラジニル(所望により、C1〜4アルキルで置換される)である。本発明の別の実施形態では、R3は、3位に結合し、並びに、ピペラジニル(所望により、C1〜4アルキルで置換される)である。本発明の別の実施形態では、R3は、3位に結合し、1−(4−エチル−ピペラジニル)である。
【0030】
本発明の1つの実施形態では、式(I)の化合物は、4R−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−10−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−1,3,4,10b−テトラヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソインドール−6−オン;7R−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−1−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−7,8,9,10,11,11a−ヘキサヒドロ−アゼピノ[2,1−a]イソインドール−5−オン;並びにその薬剤として許容される塩、エステル、及びプロドラッグから成る群から選択される。
【0031】
1つの実施形態では、本発明は、式(I)の化合物の対応する立体異性体の混合物、例えば、ラセミ混合物を目的とする。本発明の1つの実施形態では、式(I)の化合物は、対応する4種の鏡像異性体(即ち、(R,R)、(R,S)、(S,S)及び(S,R)鏡像異性体)のうちの任意の1種がジアステレオマー的に過剰な状態で存在してもよく、以下に示すように構造中の立体中心を「*」で示す。
【0032】
【化3】

【0033】
1つの実施形態では、式(I)の化合物は、その対応する鏡像異性体のうちの任意の1種が、約75%ee以上、好ましくは約85%ee以上、より好ましくは約95%ee以上、より好ましくは約98%ee以上、より好ましくは約99%ee以上の鏡像体過剰な状態である。
【0034】
本発明の更なる実施形態は、本明細書で定義される変数の1つ以上に対して選択される置換基(即ち、R1、R2、n、及びR3)が、任意の個々の置換基であるか、本明細書で定義される完全なリストから選択される置換基の任意のサブセットであるように、独立して選択される。
【0035】
本発明の別の実施形態は、下の表1に列挙される代表的な化合物から選択される任意の1つの化合物、又は化合物のサブセットである。
【0036】
【表1】

【0037】
本明細書で使用するとき、「ハロゲン」は塩素、臭素、フッ素及びヨウ素を意味する。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「アルキル」は単独でも置換基の一部として使用する場合でも、直鎖及び分枝状鎖を含む。例えば、アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル等を含む。特に指摘がない限り、「C1〜4」は、アルキルと共に使用される場合、1〜4個の炭素原子の炭素鎖構成を意味する。
【0039】
本明細書で使用するとき、特に断りがない限り、用語「ハロゲン化C1〜4アルキル」は、上記に定義された通り、少なくとも1個のハロゲン原子で置換された、好ましくは少なくとも1個のフッ素原子で置換された任意のC1〜4アルキル基を意味するものとする。好適な例としては−CF3、−CH2−CF3、−CF2−CF2−CF2−CF3などが挙げられるが、これらに限定されない。同様にして、用語「フッ素化C1〜4アルキル」は、上記に定義された通り、少なくとも1個のフッ素原子で置換された任意のC1〜4アルキル基を意味するものとする。好適な例には−CF3、−CH2−CF3、−CF2−CF2−CF2−CF3などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用するとき、特に断りがない限り、「アルコキシ」は、上記の直鎖又は分枝鎖アルキル基の酸素エーテル基を示すものとする。例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ヘキシルオキシなど。特に明記しない限り、「C1〜4」は、アルコキシとともに用いられるとき、1〜4つの炭素原子を含む上記のような酸素エーテルラジカルを意味する。
【0041】
特定の基が「置換された」(例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキルなど)場合、その基は、置換基のリストから独立して選択される、1個又はそれ以上の置換基、好ましくは1〜5個の置換基、より好ましくは1〜3個の置換基、最も好ましくは1〜2個の置換基を有してもよい。
【0042】
置換基に関して、用語「独立して」とは1より多くのそのような置換基が可能である場合、そのような置換基は互いに同じでも異なってもよいことを意味する。
【0043】
本明細書で使用するとき、表記「*」は、立体中心の存在を示すものとする。
【0044】
本発明による化合物が少なくとも1つのキラル中心を有する場合、結果としてそれらは鏡像異性体として存在し得る。化合物が2つ以上のキラル中心を有する場合、それらは更にジアステレオマーとして存在し得る。すべてのそのような異性体及びその混合物が本発明の範囲に包含される。好ましくは、化合物が鏡像異性体として存在する場合、鏡像異性体は約80%以上の鏡像異性体過剰率で、より好ましくは約90%以上の鏡像異性体過剰率で、更により好ましくは約95%以上の鏡像異性体過剰率で、更により好ましくは約98%以上の鏡像異性体過剰率で、最も好ましくは約99%以上の鏡像異性体過剰率で存在する。同様に、化合物がジアステレオマーとして存在する場合、ジアステレオマーは約80%以上のジアステレオマー過剰率で、より好ましくは約90%以上のジアステレオマー過剰率で、更により好ましくは約95%以上のジアステレオマー過剰率で、更により好ましくは約98%以上のジアステレオマー過剰率で、最も好ましくは約99%以上のジアステレオマー過剰率で存在する。
【0045】
更に、本発明の化合物のいくつかの結晶形態は多形体として存在することができ、そのようなものは、本発明に含まれることが意図される。加えて、本発明のいくつかの化合物は、水との溶媒和物(すなわち、水和物)又は通常の有機溶媒との溶媒和物を形成することができ、そのような溶媒和物も、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0046】
本開示全体で使用される標準的な命名法の下では、指定される側鎖の末端部が最初に記載され、結合点に向かって隣接する官能基が続く。したがって、例えば、「フェニルC1〜C6アルキルアミノカルボニルC1〜C6アルキル」置換基は、以下の式の基を指す。
【0047】
【化4】

【0048】
特に明記しない限り、R3置換基が結合している式(I)の化合物のフェニル部分上の炭素原子を同定する目的のために、式(I)の化合物のフェニル部分上の炭素原子は、以下の構造で示すように番号付けするものとする。
【0049】
【化5】

【0050】
明細書、特にスキーム及び実施例で使用される略語は、以下の通りである。
【0051】
【表2】

【0052】
本明細書で使用されるように、特に指摘がない限り、用語「単離形態」は、化合物が、別の化合物(一種又は複数)との任意の固体混合物、溶媒系又は生物学的環境から分離された形態で存在することを意味するものとする。本発明の一実施形態において、式(I)の化合物は単離形態として存在する。
【0053】
本明細書で使用するとき、特に断りのない限り、用語「実質的に純粋な化合物」は、単離した化合物中の不純物のモルパーセントが、約5モルパーセント未満、好ましくは約2モルパーセント未満、より好ましくは約0.5モルパーセント未満、最も好ましくは約0.1モルパーセント未満であることを意味するものとする。本発明の一実施形態において、式(I)の化合物は、実質的に純粋な化合物として存在する。
【0054】
本明細書で使用するとき、特に断りのない限り、用語「実質的に対応する塩形態を含まない」は、式(I)の化合物を説明するために用いるとき、単離した式(I)の塩基中の対応する塩形態のモルパーセントが、約5モルパーセント未満、好ましくは約2モルパーセント未満、より好ましくは約0.5モルパーセント未満、最も好ましくは約0.1モルパーセント未満であることを意味する。本発明の一実施形態において、式(I)の化合物、は、実質的に対応する塩形態を含まない形態で存在する。
【0055】
本明細書で使用されるように、用語「被験体/患者」は、処理、観察又は実験に付されている動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを指す。好ましくは、被験体/患者は、治療及び/又は予防するべき疾病又は疾患の少なくとも1つの症状を経験し及び/又は示している。
【0056】
本明細書で使用するとき、用語「治療上の有効量」は、研究者、獣医、医師、又は他の臨床医により求められている、処置されている疾病又は疾患の症状の緩和を含む、組織系、動物、又はヒト内で生体学的反応又は医薬反応を引き出す活性化合物又は医薬品の量を意味する。
【0057】
本明細書で使用するとき、用語「組成物」は、特定の成分を特定の量で含む製品、並びに特定の量の特定の成分の組み合わせから直接的又は間接的に得られる任意の製品を包含することを意図する。
【0058】
ここに記載されている明細書においてより広く提供されるとき、「反応する」及び「反応した」等の用語は、(a)化学物質の実際に列挙されている形態、及び(b)化合物が命名されたときであると見なされている媒体中における化学物質の形態のいずれか1つ、のいずれか1つである化学物質に関して本明細書で使用される。
【0059】
当業者は、特に指示がない限り、反応工程(1又は複数)は、適切な条件下で、公知の方法に従って行われて、所望の生成物を提供することを認識するであろう。当業者は、更に、本明細書に提示された明細書及び特許請求の範囲において、試薬又は試薬の部類/種類(例えば、塩基、溶媒等)が方法の1を超える工程に引用されている場合、個々の試薬は、各反応工程に関して独立して選択され、同一であっても又は互いに異なっていてもよいことを認識するであろう。例えば、プロセスの2つの工程が、試薬として有機又は無機塩基を挙げている場合、第1工程に関して選択される有機又は無機塩基は、第2工程の有機又は無機塩基と同一でも異なっていてもよい。更に当業者は、本発明の反応工程を、様々な溶媒又は溶媒系中で行うことができ、この反応工程はまた、適切な溶媒又は溶媒系の混合物中でも行うことができることを認識するであろう。
【0060】
説明をより簡潔にする目的で、本明細書に示す量的表現のいくつかは、用語「約」により修飾されない。用語「約」が明確に用いられていようといまいと、本明細書に記載する全ての量はその実際値を指すことを意味し、またこのような値の実験及び/又は測定条件による近似値を含む、当該技術分野における通常の技量に基づいて合理的に推測されるようなこのような値の近似値を指すことも意味する。
【0061】
より簡潔な説明を提供するために、本明細書の量的表現のいくつかは、約量X〜約量Yの範囲として列挙される。範囲が列挙されていようといまいと、範囲は、列挙された上限及び下限に限定されるものではなく、約量X〜約量Yの全範囲、又はその中の任意の範囲を含むと理解される。
【0062】
好適な溶媒、塩基、反応温度、並びに他の反応パラメータ及び成分の例は、本明細書で以下に詳細に説明される。当業者は、上記例の列挙が、以後の特許請求の範囲に記載される発明を決して限定する意図はなく、そのように解釈すべきではないことを認識する。
【0063】
説明をより簡潔にする目的で、本明細書に示す量的表現のいくつかは、用語「約」により制限されない。用語「約」が明確に用いられていようといまいと、本明細書に記載する全ての量はその実際値を指すことを意味し、またこのような値の実験及び/又は測定条件による近似値を含む、当該技術分野における通常の技量に基づいて合理的に推測されるようなこのような値の近似値を指すことも意味する。
【0064】
本明細書で使用されるように、特に指摘がない限り、用語「脱離基」は、置換又は変位反応中に離脱する帯電又は非帯電の原子又は基を意味するものとする。好適な例には、Br、Cl、I、メシラート、トシレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書で使用するとき、特に指摘がない限り、用語「窒素保護基」は、窒素原子に結合してその窒素原子が反応に参加することから保護することができ、また反応後に容易に除去できる基を意味するものとする。好適な窒素保護基としては、カルバメート−式−C(O)OR(式中、Rは、例えばメチル、エチル、t−ブチル、ベンジル、フェニルエチル、CH2=CH−CH2−などである)の基、アミド−式−C(O)−R’(式中、R’は、例えばメチル、フェニル、トリフルオロメチルなどである)の基、N−スルホニル誘導体−式−SO2−R”(式中、R”は、例えばトリル、フェニル、トリフルオロメチル、2,2,5,7,8−ペンタミチルクロマン−6−イル−、2,3,6−トリメチル−4−メトキシベンゼンなどである)の基が挙げられるが、これらに限定されない。他の好適な窒素保護基は、T.W.Greene & P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,1991等の教科書に見出すことができる。
【0066】
本明細書で使用するとき、特に断りがない限り、用語「酸素保護基」は、酸素原子に結合することで、かかる酸素原子を反応への参加から保護することができ、かつ反応後には容易に除去できる基を意味するものとする。好適な酸素保護基としては、アセチル、ベンゾイル、t−ブチル−ジメチルシリル、トリメチルシリル(TMS)、MOM、THP等が挙げられるが、これらに限定されない。他の好適な酸素保護基は、T.W.Greene & P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,1991等の教科書に見出すことができる。
【0067】
当業者は、本発明の反応工程を、様々な溶媒又は溶媒系中で行うことができ、この反応工程はまた、適切な溶媒又は溶媒系の混合物中でも行うことができることを認識するであろう。
【0068】
本発明による化合物を製造する方法により立体異性体の混合物が生じる場合、これらの異性体は、分取クロマトグラフィーのような従来の技術により分離することができる。化合物はラセミ体で調製されてもよく、又は個々のエナンチオマーがエナンチオ選択的合成若しくは分解のいずれかにより調製されてもよい。化合物は、例えば標準的な技術、例えば(−)−ジ−p−トルオイル−D−酒石酸及び/又は(+)−ジ−p−トルオイル−L−酒石酸などの光学的に活性な酸と共に塩を形成することによりジアステレオマー対を形成した後、分別結晶化及び遊離塩基の再生を行ってそれらの成分であるエナンチオマーに分解することができる。化合物は、ジアステレオマーエステル又はアミドの形成、及びその後のクロマトグラフ分離及びキラル補助基の除去により分解することもできる。代替的に、化合物は、キラルHPLCカラムを使用して分解されてもよい。
【0069】
更に、標準物質に対するキラルHPLCを用いて、鏡像体過剰率(ee%)を決定することができる。鏡像体過剰率は、以下のように算出することができる。
[(Rモル−Sモル)/(Rモル+Sモル)]×100%
式中、Rモル及びSモルは、Rモル+Sモル=1となるような、混合物中のR及びSのモル分率である。或いは、鏡像体過剰率は、以下のように、所望の鏡像異性体及び調製された混合物の比旋光度から算出することもできる。
ee=([α−obs]/[α−max])×100
【0070】
本発明の化合物の任意の調製プロセス中、関与する任意の分子の感応性基又は反応性基を保護することが必要及び/又は望ましい場合がある。これは、Protective Groups in Organic Chemistry,ed.J.F.W.McOmie,Plenum Press,1973;及びT.W.Greene&P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,1991に記載されているような従来の保護基を用いて達成され得る。保護基は、当該技術分野において既知の方法を用いて、都合のよいその後の段階で除去してよい。
【0071】
本発明はその範囲に、本発明の化合物のプロドラッグを含む。概してそのようなプロドラッグは、必要な化合物に容易にインビボで変換され得る化合物の機能的誘導体である。すなわち、本発明の治療法では、用語「投与」は、記載する種々の障害の、具体的に開示する化合物を用いた、又は具体的には開示しないくともよいが、患者に投与された後にインビボで特定の化合物に転換する化合物を用いた治療を包含すべきである。好適なプロドラッグ誘導体の選択及び調製に関する通常の手順は、例えば、「Design of Prodrugs」,ed.H.Bundgaard,Elsevier,1985に述べられている。
【0072】
薬剤で使用するために、本発明の化合物の塩は非毒性の「薬剤として許容される塩」を指す。しかし他の塩も本発明による化合物又はそれらの薬剤として許容される塩の調製に有用となり得る。化合物の適切な薬剤として許容される塩には酸付加塩を含み、これは例えば化合物の溶液を、塩酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、クエン酢酸、酒石酸、カルボン酸又はリン酸のような薬剤として許容される酸の溶液と混合することにより形成することができる。さらに本発明の化合物が酸性部分を持つ場合、その適切な薬剤として許容される塩にはアルカリ金属塩、例えばナトリウム若しくはカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム若しくはマグネシウム塩;及び適切な有機リガンドと形成される塩、例えば四級アンモニウム塩を含むことができる。したがって、代表的な薬剤として許容される塩としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物塩、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレソルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル臭化物、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムコ酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクレート、トシル酸塩、トリエチオジド及び吉草酸塩。
【0073】
薬剤として許容される塩の調製で用いることができる代表的な酸としては、以下の酸が挙げられるが、これらに限定されない:酢酸、2,2−ジクロロ酢酸、アシル化アミノ酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、L−アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4−アセトアミド安息香酸、(+)−カンファー酸、カンファースルホン酸、(+)−(1S)−カンファー−10−スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシルスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロシ−エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、D−グルクロン酸、L−グルタミン酸、α−オキソ−グルタル酸、グリコール酸、馬尿酸(hipuric acid)、臭化水素酸、塩酸、(+)−L−乳酸、(±)−DL−乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、(−)−L−リンゴ酸、マロン酸、(±)−DL−マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ニコチン(nicotinc)酸、硝酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミトリン酸、パモ酸、リン酸、L−ピログルタミン酸、サリチル酸、4−アミノ−サリチル酸、セバイン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)−L−酒石酸、チオシアン酸、p−トルエンスルホン酸及びウンデシレン酸。
【0074】
薬剤として許容される塩の調製で用いることができる代表的な塩基としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アンモニア、L−アルギニン、ベネタミン、ベンザチン、水酸化カルシウム、コリン、デアノール、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2−(ジエチルアミノ)−エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチル−グルカミン、ヒドラバミン、1H−イミダゾール、L−リシン、水酸化マグネシウム、4−(2−ヒドロキシエチル)−モルホリン、ピペラジン、水酸化カリウム、1−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリジン、第二級アミン、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、トロメタミン及び水酸化亜鉛を含む塩基。
【0075】
式(I)の化合物は、以下の一般的なスキーム1に概説するように調製することができる。
【0076】
【化6】

【0077】
したがって、既知の化合物、又は既知の方法により調製された化合物である、好適に置換された式(V)の化合物(式中、A1は、C1〜4アルキルであり;LG1は、Cl、Br等の好適に選択された脱離基であり、好ましくはLG1は、Brであり;LG2は、Br、Cl、I、OTf等の好適に選択された脱離基であり、好ましくは、LG2は、Brである)は、好適に置換された式(VI)の化合物(式中、PG1は、ベンジル、ジメトキシベンジル、テトラヒドロピラニル等の好適に選択された酸素保護基であり、好ましくはベンジル、好ましくはアセチル以外である)と;TEA、DIPEA、ピリジン等の有機塩基の存在下で;トルエン、酢酸エチル等の有機溶媒中で;好ましくは約40℃〜約110℃の範囲の温度で、より好ましくは約90℃で;反応して、式(VII)に対応する化合物を得る。
【0078】
式(VII)の化合物は、既知の化合物又は既知の方法により調製された化合物である、好適に置換された式(VIII)の化合物と、ビス(t−ブチルホスフィン)パラジウム(0)等の好適に選択された触媒の存在下で;セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ブチル−トリエチルアンモニウムクロリド等の好適に選択された相間移動剤の存在下で;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の好適に選択された無機塩基の存在下で;トルエン、ベンゼン等の有機溶媒中で;好ましくは約75℃〜約100℃の範囲の温度で、より好ましくは約90℃で;反応して、式(IX)に対応する化合物を得る。
【0079】
式(IX)の化合物を既知の方法に従って脱保護して、式(X)に対応する化合物を得る。例えば、PG1がベンジルであるとき、式(IX)の化合物は、Pd/C等の触媒の存在下で、触媒量のHCl等の酸の存在下で、エタノール等の溶媒中で、水素ガスと反応することにより脱保護される。
【0080】
式(X)の化合物は、既知の化合物であるメタンスルホニルクロリド(メシルクロリドとしても知られている)と;TEA、DIPEA、ピリジン等の有機塩基の存在下で;DCM、DCE、クロロホルム等の有機溶媒中で;好ましくは約0℃〜約25℃の範囲の温度で、より好ましくは約0℃で;反応して、式(XI)に対応する化合物を得る。
【0081】
式(XI)の化合物は、NaOt−Bu、NaOEt、NaH等の好適に選択された塩基、好ましくはNaOt−Buと;DME、THF、アセトニトリル等の有機溶媒中で;好ましくは約40℃〜約80℃の範囲の温度で、より好ましくは約60℃で;反応して、式(I)に対応する化合物を得る。
【0082】
当業者は、式(VI)の化合物が、その対応する鏡像異性体(立体中心は*により示される)のうちの1種が鏡像体過剰な状態で存在する場合、式(I)の化合物は、対応する鏡像異性体が鏡像体過剰であるように調製されることを理解する。
【0083】
当業者は更に、式(I)の化合物が、所望により、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基と;DMF NMP、スルホラン等の非プロトン溶媒中で;更に反応して;化合物の立体構造が異性体化されている式(I)に対応する化合物が得られることを理解する。
【0084】
nが2である式(I)の化合物は、以下のスキーム2に概説されるプロセスに従って代替的に調製することもできる。
【0085】
【化7】

【0086】
したがって、既知の化合物、又は既知の方法により調製された化合物である、好適に置換された式(X)の化合物は、上記式(XII)の化合物中のポリマーが
【0087】
【化8】

【0088】
記号で示されている、好適に置換された式(XII)のポリマー結合化合物、例えば、IBX−ポリスチレンと;DCM、DCE等の有機溶媒中で反応して;式(XIII)に対応する化合物を得る。当業者は、式(X)の化合物が、既知の方法に従って、Swern酸化又はDess−Martin反応を介して反応して、式(XIII)に対応する化合物を得ることもできることを理解する。
【0089】
式(XII)の化合物は、PPh3CH3Br等と;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基の存在下で;18−クラウン−6、15−クラウン−5等の好適に選択されたクラウンエーテルの存在下で;DCM、DCE、THF等の有機溶媒中で反応して;式(XIV)に対応する化合物を得る。
【0090】
式(XIV)の化合物は、9−BBN等と;THF、DME、DCE等のボランに対して不活性である有機溶媒の存在下で;好ましくは約0℃〜約20℃の範囲の温度で反応して;続いて、NaOH等の好適に選択された塩基、及び過酸化水素と反応して(work-up);式(XV)に対応する化合物を得る。
【0091】
式(XV)の化合物は、メシルクロリドと;TEA、DIPEA、ピリジン等の有機塩基の存在下で;DCM、DCE、THF等の有機溶媒中で反応して;式(XIa)に対応する化合物を得る。
【0092】
式(XIa)の化合物は、t−ブトキシドナトリウム、t−ブトキシドカリウム等の好適に選択された塩基と;DME等の有機溶媒中で反応して;式(Ia)に対応する化合物を得る。
【0093】
本発明は、有効量の式(I)の化合物を患者に投与することを含む、それを必要とする患者においてウロテンシン−II媒介疾患を治療する方法を目的とする。
【0094】
本発明の実施形態は、血管性高血圧、心不全、アテローム性動脈硬化症、腎不全、抗新生物剤により引き起こされる腎臓毒性及び下痢、心筋梗塞後症候群、肺高血圧症/線維症、糖尿病、並びに、疼痛、アルツハイマー病、痙攣、抑欝、片頭痛、精神病、不安、神経筋欠陥及び脳卒中が挙げられるCNS徴候が挙げられるが、これらに限定されない疾患を治療するための方法である。本発明の別の実施形態は、心不全及び腎不全から成る群から選択されるウロテンシン−II媒介疾患を治療するための方法である。
【0095】
本発明はまた、ウロテンシン−II媒介疾患を治療するための薬剤の製造における本化合物の使用を含む。本発明は、薬としての式(I)の化合物の使用を更に含む。
【0096】
ウロテンシンII受容体拮抗物質を使用して、抗新生物剤によって誘発される下痢及び腎臓毒性を低減する本方法は、抗新生物剤(シスプラチン、シス−ジアミンジクロロ白金など)を癌又は腫瘍の治療のために使用するとき、どんな状況においても適用可能である。しかしながら、U−II拮抗物質が最もよく使われるのは、治療されている腫瘍又は癌が、固形悪性腫瘍、特に、精巣腫瘍のような膀胱、子宮頸部、肺、卵巣及び精巣の固形悪性腫瘍;膀胱癌;尿管腎盂腎炎腫瘍;前立腺癌;卵巣癌;頭頸部癌;非小細胞肺癌;食道癌;子宮頸癌;神経芽細胞腫;胃癌;小細胞肺癌;骨癌;非ホジキンリンパ腫;脳、子宮内膜、上部消化管、頭頸部及び胸腺の腫瘍;神経芽細胞腫;並びに骨及び軟阻止器の肉腫であるときである。最近のデータ(American Heart Association Scientific Sessions 2005,「SB−611812 in the treatment of heart failure」,by Nicolas Bousette at Montreal General Hospital,Canada)では、ウロテンシン−II受容体拮抗物質が、心機能の向上及び慢性心不全(CHF)に関連する心臓リモデリングに有用であり得ることが示された。
【0097】
本明細書で使用するとき、用語「新生物」は、細胞又は組織の異常な増殖を指し、良性、すなわち非癌性増殖、及び悪性、すなわち癌性増殖を含むと理解される。用語「新生物の」は新生物を意味する又は新生物に関する。
【0098】
本明細書で使用するとき、用語「剤」は、組織、系、動物、哺乳類(特にヒト)又は他の被験体で所望の効果を生成する物質を意味すると理解される。したがって、用語「抗新生物剤」は、組織、系、動物、哺乳類(特にヒト)又は他の被験体で抗新生物効果を生成する物質を意味すると理解される。「剤」は、単一化合物、あるいは、2種若しくはそれ以上の化合物の組み合わせ又は組成物であってよい。
【0099】
典型的な抗新生物剤の一部としては、メルファラン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メクロレタミン、ヘキサメチルメラミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン及びダカルバジンのようなアルキル化剤;5−フルオロウラシル、メトトレキサート、シタラビン、メルカプトプリン(mecaptopurine)及びチオグアニンのような代謝拮抗物質;パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチンのような有糸分裂阻害剤;イリノテカン、カンプトテシン(campthothecin)及びカンプトテシン誘導体、例えばトポテカンのようなトポイソメラーゼI阻害剤;ドキソルビシンのようなトポイソメラーゼII阻害剤;並びに、シスプラチン及びカルボプラチンのような白金配位錯体が挙げられる。
【0100】
本発明は更に、1つ又はそれ以上の式(I)の化合物と、薬剤として許容される担体とを含有する医薬組成物を含む。活性成分として本明細書に記載した本発明の化合物の1つ以上を含有する医薬組成物は、従来の医薬品配合技術に従って、化合物(単数又は複数)を医薬担体とよく混合することによって製造できる。担体は、所望の投与経路(例えば、経口、非経口)に応じて様々な形態をとってよい。したがって、懸濁剤、エリキシル剤及び液剤のような液体経口製剤では、好適な担体及び添加剤としては、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、安定剤、着色剤などが挙げられ、散剤、カプセル剤及び錠剤のような固体経口製剤では、好適な担体及び添加剤としては、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などが挙げられる。固体経口製剤は、糖のような物質でコーティングされてもよく、又は主要な吸収部位を調節するために腸溶コーティングされていてもよい。非経口投与では、担体は通常、滅菌水からなり、溶解度の上昇又は保存のために他の成分を添加してもよい。注入用の懸濁液又は溶液も、水性担体を適切な添加剤と共に用いて製造することができる。
【0101】
本発明の医薬組成物を製造するために、活性成分としての1つ以上の本発明の化合物を、従来の医薬品配合技術に従って、医薬担体と共にしっかりと混合するが、この担体は、例えば経口又は筋内内のような非経口投与に望ましい製剤の形態に応じて様々な形態をとることができる。経口剤形における組成物の製造には、任意の通常の医薬媒体を用いることができる。したがって、例えば、懸濁剤、エリキシル剤及び液剤のような液体経口製剤では、好適な担体及び添加剤としては、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤などが挙げられ、散剤、カプセル剤、カプレット剤、ジェルキャップ、及び錠剤のような固体経口製剤では、好適な担体及び添加剤としては、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などが挙げられる。投与が容易であるため、錠剤及びカプセル剤は最も有利な経口投薬量単位形態であり、その場合、固体医薬担体が明らかに使用される。場合により、錠剤は、標準的な技術により、糖コーティング又は腸溶コーティングされてよい。非経口の場合、担体は、通常、滅菌水を含むが、例えば、溶解性を助けるなどの目的のため又は保存のために、他の成分を含んでよい。注入用の懸濁液も調製することができ、その場合、適切な液体担体、懸濁化剤などを使用することができる。本明細書の医薬組成物には、投与量単位、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、注射液、茶さじ一杯などにつき、上述した有効投薬量を送達するのに必要な活性成分の量が含まれる。本明細書の医薬組成物は、単位用量、例えば錠剤、カプセル剤、散剤、注射液、坐剤、茶さじ一杯及び同様物当たり、約0.1〜1000mg又はその中の任意の範囲を含み、また、約0.01〜300mg/kg/日、又はその中の任意の範囲、好ましくは約0.5〜50mg/kg/日、又はその中の任意の範囲の投与量で付与されるであろう。しかしながら、投薬量は患者の要求量、治療される状態の重症度及び採用される化合物に応じて変化してもよい。連日投与又は周期後投与のいずれを用いてもよい。
【0102】
好ましくは、これらの組成物は、経口、非経口、鼻腔内、舌下若しくは直腸投与、又は吸入若しくは吹送による投与のための、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒、無菌非経口溶液又は懸濁液、定量エアゾール又は液体噴霧剤、ドロップ、アンプル、自動注入装置又は坐薬のような単位剤形である。あるいは、組成物は、週1回又は月1回投与に好適な形態で存在することができ、例えば、デカン酸塩のような活性化合物の不溶性塩は、筋肉内注入のためのデポー製剤を提供するよう適合され得る。錠剤のような固体組成物の調製に関しては、主要活性成分を、医薬担体、例えば、トウモロコシデンプン、乳糖、ショ糖、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、又はゴムのような従来の錠剤化成分、及び他の医薬希釈剤、例えば水と混合して、本発明の化合物又はその薬剤として許容される塩の均質混合物を含む固体予備処方組成物を形成する。これらの予備処方組成物を均質と称するとき、これは、活性成分が組成物全体にむらなく分散し、その結果、組成物は同等に効果的な、錠剤、丸剤及びカプセル剤のような剤形に容易に分割できることを意味する。この固体予備配合組成物は、次に0.1〜約500mgの本発明の活性成分を含む、上述した種類の単位剤形に分割される。新規な組成物の錠剤又は丸剤は、長期間作用するという利点を付与する剤形を提供するためにコーティングすることができる、又は別の方法で配合することができる。例えば、錠剤又は丸剤は、内側投与成分及び外側投与成分を含むことができ、後者は前者の外被の形態である。2つの成分は、胃での崩壊を阻止し、また内側成分を無傷で十二指腸内まで通過させる、又は放出を遅延させることができる腸溶性の層によって分離され得る。このような腸溶性層又はコーティングには様々な材料を使用することができ、そのような材料としては、セラック、セチルアルコール及び酢酸セルロースのような材料を伴う多数のポリマー酸が挙げられる。
【0103】
本発明の新規な組成物を経口的若しくは注射による投与用に包含することができる液状形態には、水性液剤、適当に風味を加えたシロップ剤、水性若しくは油懸濁剤及び綿実油、ゴマ油、ココナッツ油若しくはピーナッツ油のような食用油との風味を加えたエマルジョン、ならびにエリキシル剤及び同様の製薬学的賦形剤を含む。水性懸濁剤のための好適な分散剤又は懸濁化剤としては、合成及び天然ゴム、例えばトラガカント、アカシア、アルギン酸塩、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニル−ピロリドン又はゼラチンが挙げられる。
【0104】
本発明に記載される疾患の処置方法は、本明細書に定義される任意の化合物、及び薬剤として許容される担体を含む医薬組成物を使用しても実施され得る。医薬組成物は、約0.01mg〜1000mgの化合物、又はその中の任意の範囲、好ましくは約10〜500mgの化合物を含んでもよく、選択される投与モードに好適な任意の形態に構成することができる。担体は、結合剤、懸濁化剤、滑沢剤、着香剤、甘味剤、保存剤、染料、及びコーティングが挙げられるがこれらに限定されない必要かつ不活性な医薬賦形剤を含む。経口投与用に好適な組成物としては、丸剤、錠剤、カプレット剤、カプセル剤(それぞれ、迅速放出、時限放出及び持続放出製剤を含む)、顆粒、及び散剤のような固体形、並びに液剤、シロップ剤、エリキシル剤、及び縣濁剤のような液体形が挙げられる。非経口投与用に有用な形態としては、滅菌液剤、エマルション及び懸濁液が挙げられる。
【0105】
有利なことに、本発明の化合物は、1回に1日量を投与してもよく、又は全1日量を1日2回、3回又は4回に分割して投与してもよい。更に、本発明のための化合物は、当業者に周知の、好適な鼻腔内賦形剤の局所使用による経鼻投与形態で、又は経皮皮膚貼付剤を介して投与してもよい。経皮送達系の形態で投与するために、投薬量の投与は、勿論、投薬レジメン全体にわたって断続的ではなく連続的となるであろう。
【0106】
例えば、錠剤又はカプセル剤の形態での経口投与のために、活性薬物成分をエタノール、グリセロール、水などのような、経口、非毒性、薬剤として許容される不活性担体と組み合わせることができる。更に、場合によって又は必要であれば、好適な結合剤、滑沢剤、崩壊剤及び着色剤を混合物中に組み込むこともできる。好適な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、ブドウ糖若しくはβ−乳糖などの天然糖、トウモロコシ甘味剤、アカシア、トラガカントのような天然及び合成ゴム、又はオレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
液体は、合成及び天然ゴム、例えば、トラガカント、アカシア、メチル−セルロースなどのような好適に香味付けされた懸濁化剤又は分散剤の形態をとる。非経口投与のためには、滅菌懸濁液及び溶液が望ましい。静脈内投与が望ましいとき、好適な保存剤を一般に含有する等張製剤を用いる。
【0108】
本発明の医薬組成物を調製するには、活性成分としての式(I)の化合物を、従来の薬学的配合技術に従って、薬学的担体と共に緊密に混合するのだが、その担体は、投与(例えば、経口又は非経口)に所望される製剤の形態に応じて、非常に様々な形態をとることができる。薬剤として許容される好適な担体は、当技術分野にて周知である。これらの薬剤として許容される担体のいくつかの説明は、American Pharmaceutical Association及びPharmaceutical Society of Great Britain出版の「Handbook of Pharmaceutical Excipients」に見出すことができる。
【0109】
医薬組成物を配合する方法は、例えば、Marcel Dekker,Inc出版の、Liebermanら編、「Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets」、第2版、改訂及びExpanded、第1〜3巻、Avisら編、「Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications」、第1〜2巻、及びLiebermanら編、「Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems」、第1〜2巻のような多数の刊行物に記載されている。
【0110】
本発明の化合物は、本明細書に記載されるウロテンシンIIにより媒介される疾患の処置が必要な際にはいつでも、任意の前述の組成物で、当技術分野にて確立された投与計画に従って投与することができる。
【0111】
製品の一日用量は、ヒト成人につき1日当たり0.1〜10,000mg、又はその中の任意の範囲の幅広い範囲で変動しうる。経口投与用に、組成物は、治療されるべき患者に対する用量を症状によって調整のために、好ましくは0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、150、200、250、500及び1000ミリグラムの活性成分を含む錠剤形態で提供される。薬物の有効量は、通常、1日当たり約0.01mg/kg体重〜約1000mg/kg体重、又はその中の任意の範囲の用量レベルで供給される。好ましくは、範囲は、1日当たり約0.5〜約50.0mg/kg体重、又はその中の任意の範囲である。より好ましくは、1日当たり約1.0〜約5.0mg/kg体重、又はその中の任意の範囲である。化合物は、1日当たり1〜4回のレジメンで投与され得る。
【0112】
投与すべき最適用量は、当業者により容易に決定することができ、また使用される特定の化合物、投与モード、製剤の強度、投与モード、及び疾病症状の進行により変動するであろう。更に、患者の年齢、体重、食事、及び投与時間を含む、治療する具体的な患者と関連する因子が、投薬量を調整する必要性をもたらす。
【0113】
当業者は、好適な、既知の及び一般に認められた細胞及び/又は動物モデルを使用したインビボ及びインビトロの両方での試験により、試験化合物の所定の疾患を処置又は予防する能力を予測できることを認識するであろう。
【0114】
当業者は、健康な患者及び/又は所定の疾患に罹患している患者におけるファースト・イン・ヒューマン(first-in-human)試験、投与量決定試験、及び有効性試験を含むヒト臨床試験が、臨床及び医療分野で周知の方法に従って完了し得ることを更に認識するであろう。
【0115】
以下の実施例は、本発明の理解を補助するために記載され、以下の特許請求の範囲に記載される本発明を如何様にも限定することを意図するものではなく、また解釈されるべきではない。
【0116】
以下の実施例において、いくつかの合成生成物は、残留物として単離されたものとして列挙されている。当業者は、用語「残留物」が、生成物が単離された物理的状態を限定するものではなく、例えば、固体、油、発泡体、ゴム、シロップなどを含み得ることを理解するであろう。
【実施例】
【0117】
実施例1:(R,R)−4−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−10−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−1,3,4,10b−テトラヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソインドール−6−オン
【0118】
【化9】

【0119】
メタンスルホン酸4−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−4−[4−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−1−オキソ1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−ブチルエステル(112mg、0.211mmol)をDME(0.80mL)に溶解させ、4MのNaOtBuのTHF溶液(0.5mL)を添加した。得られた混合物を60℃で1時間撹拌し、次いで室温に冷却させた。次いで、得られた混合物を、水(10mL)に注ぎ、EtOAc(2回、15mL)で抽出した。有機層をまとめ、食塩水(10mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、真空下で濃縮して、残留物を得た。残留物を、prep−HPLC 5〜90勾配水(0.2% TFAバッファ)/アセトニトリル(0.15% TFAバッファ)を用いて精製し、淡黄色の固体として表題の化合物を得た。
【0120】
MS+ H 436.40(100),437.42(40)
1H NMR(500MHz,CDCl3)δppm 1.15(d,J=12.5Hz,1H),1.40(t,J=7.32Hz,3H),1.79〜1.88(m,2H),2.54(dd,J=23.80,2.75Hz,1H),2.52(d,J=18.31Hz,1H),2.89(t,J=12.05Hz,1H),3.17(dd,J=7.32,1.53Hz,2H),3.23(d,J=12.51Hz,1H),3.29(d,J=6.41Hz,2H),3.57(t,J=11.29Hz,1 H),3.68(d,J=10.99Hz,1H),3.76(d,J=11.29Hz,1H),3.85(d,J=20.75Hz,6H),4.34(dd,J=12.05,3.81Hz,1H),5.78(d,J=2.75Hz,1H),6.79〜6.85(m,2H),7.29(d,J=7.63Hz,1H),7.50(t,J=7.78Hz,1H),7.74(d,J=7.32Hz,1H)
13C NMR(500MHz,CDCl3)δppm 166.8,149.4,148.2,146.1,139.1,133.7,131.9,129.9,123.0,120.6,118.8,111.2,110.6,56.1,555.9,55.6,52.2,51.8,51.6,49.4,49.3,48.0,30.4,27.5,19.8,9.10.
【0121】
実施例2:(R,R)−7−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−1−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−7,8,9,10,11,11a−ヘキサヒドロ−アゼピノ[2,1−a]イソインドール−5−オン
【0122】
【化10】

【0123】
工程A:
(R,R)−2−[1−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−4−ヒドロキシ−ブチル]−4−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オン(1.2g、2.646mmol)をDCM(75mL)に溶解させ、IBX−ポリスチレン(4.81g、5.29mmol)を添加し、得られた混合物を一晩撹拌した。次いで、反応混合物を濾過し、DCMで洗浄した。まとめた濾液及び洗浄物を濃縮し、真空下で乾燥させて、黄色のふわふわした固体として、4−(R)−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−4−[4−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−ブチルアルデヒドを得た。
【0124】
(M+H)+452.0;1H NMR(300MHz,クロロホルム−d)δppm 1.14(t,J=7.16Hz,3H)1.85(dt,J=6.88,3.16Hz,2H)2.27(s,1H)2.35〜2.72(m,7H)2.96〜3.17(m,4H)3.67〜3.80(m,1H)3.81〜3.95(m,1H)superimposed on 3.85(s,3H)及び3.88(s,3H),4.22(d,J=16.95Hz,1H)5.55(dd,J=9.04,6.40Hz,1H)6.79〜6.92(m,2H)6.92〜7.00(m,1H)7.09(d,J=6.78Hz,1H)7.41(t,J=7.54Hz,1H)7.47〜7.56(m,1H)9.79(s,1H).
【0125】
工程B:
CH3PPh3Br(0.237g、0.66mmol)のDCM(1mL)懸濁液に、K2CO3(0.092g、0.66mmol)及び18−クラウン−6(0.004g)を添加した。得られた混合物を30分間撹拌し、次いで4−(R)−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−4−[4−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−ブチルアルデヒド(0.11g、0.33mmol)のDCM(1mL)溶液を滴下し、得られた混合物を4時間還流させた。次いで、得られた混合物を冷却し、CELITE(登録商標)を通して濾過し、ジエチルエーテルで洗浄した。濾液及び洗浄物を濃縮し、RPHPLC 10〜90勾配(0.2% TFAバッファ)/アセトニトリル(0.15% TFAバッファ)により精製し、次いで飽和NaHCO3水溶液(3×15mL)で洗浄して、黄色のガラス質固体として2−(R)−[1−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−ペント−4−エニル]−4−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オンを得た。
【0126】
3.79(s,3H)及び3.85(s,3H),4.05〜4.15(m,1H)4.92〜5.00(m,2H)5.50(t,J=7.09Hz,1H)5.75〜5.86(m,1H)6.79〜6.92(m,2H)6.92〜7.00(m,1H)7.09(d,J=6.78Hz,1H)7.41(t,J=7.54Hz,1H)7.47〜7.56(m,1H)9.79(s,1H)に重ね合わさった(M+H)+450.0;1H NMR(300MHz,クロロホルム−d)δppm 1.14(t,J=7.19Hz,3H)1.93〜2.75(m,4H)2.49(br s,2H)2.95〜3.71(m,8H)3.75〜3.91(m,1H)。
【0127】
工程C:
約3℃未満の温度に維持しながら、0℃、窒素条件下の2−(R)−[1−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−ペント−4−エニル]−4−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オン(0.1g、0.22mmol)の無水THF(3mL)溶液に、9−BBNのTHF溶液(0.5M)をゆっくりと添加した。得られた混合物を0℃で3時間撹拌し、次いで20℃で18時間撹拌した。混合物を0℃に冷却した後、水を添加した(0.12mL)。沸騰がおさまると、温度を50℃未満に維持しながら、NaOH溶液(3M、0.27mL)、続いて30% H22(0.32mL)溶液を添加した。添加後、得られた混合物を50℃で3.5時間加熱し、冷却し、固体の炭酸カリウムで飽和させた。得られた混合物を濾過し、濾液をEtOAc(2×10mL)で抽出した。まとめた抽出物を食塩水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、濃縮した。得られた残留物を、RPHPLC 10〜60勾配(0.2% TFAバッファ)/アセトニトリル(0.15% TFAバッファ)により精製し、次いで飽和NaHCO3水溶液(3×15mL)で洗浄して、遊離アミンとして2−[1−(R)−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−5−ヒドロキシ−ペンチル]−4−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オンを得た。
【0128】
3.85(s,3 H)及び3.93(s,3 H)4.22(d,J=16.87Hz,2H)5.56(dd,J=9.29,6.36Hz,1 H)6.84(d,J=8.31Hz,1 H)6.90(d,J=1.96Hz,1 H)6.92〜6.98(m,1H)7.08(d,J=8.07Hz,1 H)7.40(t,J=7.83Hz,1 H)7.50〜7.54(m,1 H)に重ね合わさった(M+H)+468.0;1H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δppm 1.13(t,J=7.21Hz,3H)1.65(m,2H)1.82〜2.15(m,2 H)2.06〜2.16(m,2 H)2.48(q,J=7.25Hz,2H)2.59(br.s,2H)3.00〜3.12(m,2 H)3.50(br s,2H),3.65(d,J=4.65Hz,4 H)3.77〜3.93(m,1 H)。
【0129】
工程D:
2−[1−(R)−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−5−ヒドロキシ−ペンチル]−4−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−2,3−ジヒドロ−イソインドール−1−オン(0.05g、0.11mmol)を、DCM(3mL)に溶解させ、トリエチルアミン(45.4μL、0.16mmol)を添加し、得られた混合物を0℃に冷却した。次いで、メタンスルホニルクロリドを滴下し、得られた混合物をこの温度で2時間撹拌した。得られた溶液を濃縮し、残留物をRPHPLC 10〜85勾配(0.2% TFAバッファ)/アセトニトリル(0.15% TFAバッファ)により精製し、次いで飽和NaHCO3水溶液(3×15mL)で洗浄して、透明なガラス質半固体として、5−(R)−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−5−[4−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−ペンチルエステルメタンスルホン酸を得た。
【0130】
(M+H)+546.2;1H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δppm 1.17(t,J=7.16Hz,3 H)1.47〜1.58(m,2H)1.78〜1.97(m,2H)2.07〜2.20(m,2H)2.46〜2.71(br.m,5H)2.97(s,3H),3.09(br m,3H)3.29〜3.69(br.s,3H)3.85(s,3H)3.88(s,3H)3.92(d,J=17.12Hz,1H)4.19〜4.28(m,2H)5.55(dd,J=9.3,6.6Hz,1 H)6.85(d,J=8.31Hz,1 H)6.89(d,J=1.71Hz,1 H)6.91〜6.98(m,1 H)7.10(d,J=7.83Hz,1 H)7.41(t,J=7.70Hz,1 H)7.48〜7.56(m,1 H).
【0131】
工程E:
5−(R)−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−5−[4−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル]−ペンチルエステルメタンスルホン酸(0.03g、0.055mmol)をDME(0.5mL)に溶解させ、t−ブトキシドナトリウム(31.7mg、0.33mmol)を添加し、得られた混合物を一晩65℃で加熱した。次いで、得られた混合物を室温に冷却し、濾過し、DCMで洗浄した。まとめた濾液及び洗浄物を濃縮した。得られた残留物を、RPHPLC 10〜80勾配(0.2% TFAバッファ)/アセトニトリル(0.15% TFAバッファ)により精製して、白色固体として、表題の化合物を対応するTFA塩として得た。
【0132】
(M+H)+450.43;1H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δppm 0.91(t,J=6.89Hz,3 H)1.22〜1.31(m,2H)1.33〜1.45(m,2H)1.61〜1.78(m,2H)2.02〜2.15(m,2H)2.33〜2.51(br.s,4H),2.87〜3.01(br m,2H)3.16〜3.52(m,4H)3.85(s,3H)3.88(s,3H)4.19〜4.28(d,J=17.02Hz,1H)5.55(t,J=6.5Hz,1 H)6.75(d,J=8.02Hz,1 H)6.83(d,J=1.71Hz,1 H)6.91〜6.98(m,1 H)7.15(d,J=7.80Hz,1 H)7.41(t,J=7.70Hz,1 H)7.48〜7.56(m,1 H).
【0133】
実施例3:ラットUIIカルシウム動員FLIPRアッセイ
蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR,Molecular Devices,Sunnyvale,CA)に基づくカルシウム動員アッセイを用いて、ラットGPR14(U−II受容体)をトランスフェクトしたCHO細胞内で(M.Tal,D.A.Ammar,M.Karpuj,V.Krizhanovsky,M.Naim,D.A.Thompson,Biochem.Biophys.Res.Commun.1995,209,752〜759.A.Marchese,M.Heiber,T.Nguyen,H.H.Heng,V.R.Saldivia,R.Cheng,P.M.Murphy,L.C.Tsui,X.Shi,P.Gregor,Genomics 1995,29,335〜344.)、5分間インキュベートした後、1nMで作動物質環状ペプチド(Ac)−CFWK(2−Nal)C−NH2に応答する、拮抗物質活性を決定した(FLIPR EC50=0.54±0.2nM、rU−II Ki=0.12±0.05nM)(W.A.Kinney,H.R.Almond,Jr.,J.Qi,C.E.Smith,R.J.Santulli,L.de Garavilla,P.Andrade−Gordon,D.S.Cho,A.M.Everson,M.A.Feinstein,P.A.Leung,B.E.Maryanoff,Angew.Chem.,Intl.Ed.2002,41,2940〜2944)。
【0134】
これらの細胞を誘導するために、ラットU−IIの完全コード配列(Genbank登録番号U32673)を、ラット心臓マラソン−レディ(heart marathon-Ready)cDNAからネステッドPCRにより増幅した。PCRは、製造業者により提示された条件に従って、DNAポリメラーゼPFU(Stratagene)を用いて実施した。PCR産物を、EcoRI及びXbaIで切断されたpcDNA3(Invitrogen)にクローン化した。ラットU−II受容体を含むクローンを、PCRによって誘発されたエラーのないことを保証するために、U−II受容体挿入断片を完全に配列決定することにより検証した。構築したベクターを、リポフェクタミン(GIBCO BRL)を用いることにより、CHO細胞にトランスフェクトした。ラットのU−II受容体を高発現しているCHO細胞を選択し、G418を用いることにより安定な細胞株を確立した。アッセイの24時間前、1ウェル当たり25,000細胞で、96ウェルの壁が黒色で底部が透明なマイクロタイタープレートにCHO細胞を播種した。培地(15mMのHEPES、L−グルタミン、塩酸ピリドキシンを含有するDMEM/F12;10%ウシ胎児血清;1mg/mLのG418サルフェート;抗生物質−抗真菌剤;pH 7.4)中の細胞を、アッセイバッファ(ハンクス平衡塩類溶液(Hanks Balanced Salts Solution)、20mMのHEPES、0.1% BSA、2.5mMのプロベネシド、pH 7.4)中で調製したFLIPRカルシウムアッセイキット(Molecular Devices)の専売染料にロードし、37℃で1時間インキュベートした。室温(23℃)でカルシウム動員測定を行った。ラットGPR14の使用は、許容できるとみなされた。その理由は、ヒトU−IIがトランスフェクトされた細胞中のヒト又はラットGPR14と類似の親和性を有するためである(S.A.Douglas,E.H.Ohlstein,Trends Cardiovasc.Med.2000,10,229〜237)。
【0135】
上記に手順に従って、本発明の代表的な化合物をアッセイし、結果を下の表2に列挙した。
【0136】
【表3】

【0137】
実施例4:ヒト放射性リガンド結合アッセイ
ヒト骨格筋筋芽細胞(HSMM)を、Cambrexから入手し、製造業者の指示書に従って培養した。細胞生存率を、トリパンブルー排除により評価した。4経路未満の細胞を全ての研究で用いた。(125I)−U−II結合実験(「Characterization of Functional Urotensin II Receptors in Human Skeletal Muscle Myoblasts:Comparison with Angiotensin II Receptors」J.Qi,L.K.Minor,C.Smith,B,Hu,J.Yang,P.Andrade−Gordon,B.Damiano,Peptides 2005,26,683〜690に記載されている)では、HSMMを、48時間、完全培地中の12ウェルコースタープレートにプレーティングし、70%の合流(confluence)に達した。用いた結合培地は、2mg/mLのBSA及び25mMのHEPES(pH 7.4)を含有しているダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)であった。細胞を、室温で、結合培地で2度洗浄し、1穴当たり0.2mLの、0.150nM(125I)−U−II及び化合物を含有する調製した結合培地で、3時間インキュベートした。細胞を結合培地で4度洗浄し、1% SDS及び0.5NのNaOHに可溶化した。放射能を、ガンマ計算により定量化した。
【0138】
放射標識した(125I)−U−IIは、インタクトな付着性HSMMに特異的に且つ飽和的に結合した。結合アッセイは、25℃で実施し、37℃で見られた細胞による(125I)−U−IIの非特異的取り込みを低下させた。この方法を用いて、非特異的結合は、総結合の10%未満であった。グラフパッドプリズム(GraphPad Prism)のバージョン3.0の非直鎖飽和データ曲線適合技術を用いる飽和データの分析により、1部位モデルに対して最良の適合が観察されたことが明らかになった。得られたKd値は、単一に近いヒルスロープ(Hill Slope)を有する0.309±0.022nM(N=3での実験)であった。ウェル中の細胞の数及びBmax値に基づいて、HSMMにおけるUT受容体数は、1細胞当たり、2311±236(N=3での実験)であった。経時的実験は、(125I)−U−IIのHSMMへの結合は3時間で定常状態に達し、5時間以下で定常状態を保ち、最長時点を測定したことを示した。ヒトU−IIは、時間0で添加するとき、0.425±0.096nM(N=3での実験)のKiで、(125I)−U−IIの特異的結合を効果的に置換する。
【0139】
上記に手順に従って、本発明の代表的な化合物をアッセイし、結果を下の表3に列挙した。
【0140】
【表4】

【0141】
実施例5:ヒトUIIカルシウム動員アッセイ
6D9ヒト横紋筋肉腫細胞を、25μLの培地中に、8,000細胞/ウェルで、組織培養処理した384ウェル黒壁透明底プレート(3712、Corning Incorporated,Corning,NY)に播種し、カルシウム動員アッセイ前に、22時間、インキュベータ(37℃で5% CO2)内で維持した。25μLの染料溶液を、作動物質/拮抗物質処理前の最終液体体積が、全てのアッセイに対して50μLになるように、ウェルに添加した。細胞プレートを、37℃で45分間インキュベートし、蛍光強度を、蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPRTETRA、Molecular Devices,Sunnyvale,CA)で測定した。
【0142】
拮抗物質及び作動物質U−IIを室温でFLIPRTETRAに添加し、添加前後の蛍光強度を4分間にわたって測定した。染料のインキュベート時間及び温度、並びに機器の設定を調節したため、同じ日にプレート間の蛍光強度を比較できた。EC50及びIC50を、GraphPad Prism4ソフトウェア(GraphPad Software Inc.,San Diego,CA)で分析した。
【0143】
材料及び試薬の調製:ヒト横紋筋肉腫細胞(6D9:RMS細胞の希釈サブクローニングにより単離、ATCC(登録商標)番号:CRL−2061、アメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)ATCC、バージニア州マナサス(Manassas))を、10%(v/v)ウシ胎児血清(SH30071.03、Hyclone,Logan,UT)を補ったRPMI−1640培地(30−2001、ATCC、バージニア州マナサス)中で維持した。
【0144】
染料の調製:BDTM(商標)カルシウムアッセイキット(80500−301、BD Biosciences,Rockville,MD)を、製造業者の指示書に従って、20mMのHEPESバッファ(25−060−C、Mediatech,Inc.Herndon,VA)を含有する、1×ハンクス平衡塩類溶液(HBSS、21−023−CV、Mediatech,Inc.Herndon,VA)中で調製した。最終染料ロード条件は、1.25mMのプロベネシド(P36400、Invitrogen,Carlsbad,CA)及び0.01% FBSを含んでいた。
【0145】
作動物質及び拮抗物質の調製:ヒトU−IIストック(U−7257、Sigma,St.Louis,MO)を、酸性化した水(pH 4.95)中で5mMで調製した。ウランチド(PUT−3639−PI、Peptide International,Louisville,KY)を、水中で5mMで調製した。アッセイのために、U−II作動物質、U−II拮抗物質及びウランチドを、0.01%のFBSを含有するHBSS/HEPESで希釈した。
【0146】
試験化合物を、DMSOに10mMの濃度で溶解した。HBSS/HEPES中で段階希釈を実施した。最も高いDMSO濃度は、0.1%であった。
【0147】
上記に手順に従って、本発明の代表的な化合物をアッセイし、結果を下の表4に列挙した。
【0148】
【表5】

【0149】
実施例6
経口製剤−予想例
経口組成物の特定の実施形態として、実施例1で調製した化合物100mgを、十分な微粉乳糖とともに配合し、580〜590mgの合計量を得て、サイズOの硬質ゲルカプセル剤を満たした。
【0150】
上記の明細書は説明を目的として与えられる実施例と共に本発明の原理を教示するものであるが、本発明の実施には、以下の特許請求の範囲及びその同等物に含まれるすべての通常の変形、改作及び/又は修正が包含される点が理解されるであろう。上記明細書で開示した全ての刊行物は、その全文を参照により本明細書に組み込むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、
【化1】

式中、
1は、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、及びNRAB(式中、RA及びRBは、水素及びC1〜4アルキルから成る群からそれぞれ独立して、選択される)から成る群から選択され;
nは、0〜3の整数であり、
2は、フェニル及び5〜6員ヘテロアリールから成る群から選択され、前記フェニル又は5〜6員ヘテロアリールは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、ハロゲン化C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、ハロゲン化C1〜4アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、(C1〜4アルキル)アミノ、ジ(C1〜4アルキル)アミノ及び−C(O)O−C1〜4アルキルから成る群から独立して選択される、1つ以上の置換基で所望により置換されてもよく;
3は、3又は4位に結合し、NRCDである(式中RC及びRDは、水素及びC1〜4アルキルから成る群からそれぞれ独立して選択され、
或いは、RC及びRDは、それらに結合している窒素原子と一緒になって、ピペリジニル、ピペラジニル、及びピロリジニルから成る群から選択される飽和環構造を形成し、
前記飽和環構造は、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、ハロゲン化C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、ハロゲン化C1〜4アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、(C1〜4アルキル)アミノ、ジ(C1〜4アルキル)アミノ及び−C(O)O−C1〜4アルキルから成る群から独立して選択される、1つ以上の置換基で、所望により置換される);
又は、その薬剤として許容される塩、エステル、若しくはプロドラッグ。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物、式中、
nが、0〜2の整数であり、
2が、フェニル及び5〜6員ヘテロアリールから成る群から選択され、前記フェニル又は5〜6員ヘテロアリールは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、ハロゲン化C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、ハロゲン化C1〜4アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、(C1〜4アルキル)アミノ、及びジ(C1〜4アルキル)アミノから成る群から独立して選択される1〜3つの置換基で、所望により置換され、
3が、3又は4位に結合し、NRCDである(式中、RC及びRDは、それらに結合している窒素原子と一緒になって、ピペリジニル、ピペラジニル、及びピロリジニルから成る群から選択される飽和環構造を形成し、
前記飽和環構造が、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜4アルキル、ハロゲン化C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、ハロゲン化C1〜4アルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、(C1〜4アルキル)アミノ、及びジ(C1〜4アルキル)アミノから成る群から独立して選択される、1〜3つの置換基で、所望により置換される)、
又は、その薬剤として許容される塩、エステル、若しくはプロドラッグ。
【請求項3】
式中、
1が水素であり、
nが、1〜2の整数であり、
2がフェニルであり、前記フェニルは、所望により、C1〜4アルコキシから独立して選択される、1〜2つの置換基で置換され、
3が、3位に結合し、ピペラジニル(所望により、C1〜4アルキルで置換される)である、
請求項1に記載の化合物、又は、その薬剤として許容される塩、エステル、若しくはプロドラッグ。
【請求項4】
式中、
1が水素であり、
nが、1〜2の整数であり、
2が(R)−3,4−ジメトキシ−フェニルであり、
3が3位に結合し、1−(4−エチル−ピペリジニル)である、
請求項1に記載の化合物、又は、その薬剤として許容される塩、エステル、若しくはプロドラッグ。
【請求項5】
4R−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−10−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−1,3,4,10b−テトラヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソインドール−6−オンと、
7R−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−1−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−7,8,9,10,11,11a−ヘキサヒドロ−アゼピノ[2,1−a]イソインドール−5−オンと、
その薬剤として許容される塩、エステル、及びプロドラッグと、から成る群から選択される化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物及び薬剤として許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物の有効量を患者に投与することを含む、それを必要としている患者のウロテンシンII媒介疾患又は状態を治療又は予防する方法。
【請求項8】
前記量が、約0.1mg〜約1,000mgの範囲の投与量を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ウロテンシンII媒介疾患が、血管性高血圧、心不全、アテローム性動脈硬化症、腎不全、抗新生物剤により引き起こされる腎臓毒性及び下痢、心筋梗塞後症候群、肺高血圧症、肺線維症及び糖尿病、又は、疼痛、アルツハイマー病、痙攣、抑欝、片頭痛、精神病、不安、神経筋欠陥及び脳卒中から成る群から選択されるCNS徴候、から成る群から選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
前記ウロテンシンII媒介疾患が、心不全及び腎不全から成る群から選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
それを必要としている被験体において、(a)血管性高血圧、(b)心不全、(c)アテローム性動脈硬化症、(d)腎不全、(e)抗新生物薬により引き起こされる腎毒性、(f)抗新生物薬により引き起こされる下痢、(g)心筋梗塞後、(h)肺高血圧、(i)肺線維症、(j)糖尿病(例えば、II型真性糖尿病)、(k)疼痛、(l)アルツハイマー病、(m)痙攣、(n)抑鬱、(o)偏頭痛、(p)精神病、(q)不安症、(r)神経筋欠損、又は(s)脳卒中を治療するための薬剤の調製における、請求項1に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2011−529966(P2011−529966A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522131(P2011−522131)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2009/052403
【国際公開番号】WO2010/017105
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】