説明

エアナイフユニット

【課題】この発明は、安価且つ容易に製造でき、エア流量を容易に均一化でき、取り扱いを容易にできるエアナイフユニットを提供することを課題とする。
【解決手段】エアナイフユニット10は、間に帯状の隙間Gを形成する第1および第2の板金1、2、これら第1、第2の板金1、2とともにエアチャンバ14を区画する第3の板金3、および第1乃至第3の板金1〜3の両端を封止する第4の板金4a、4bを有する。板金1、2のフランジ部1c、2cには、エアチャンバ14に連通した複数の通気孔15が形成されており、板金2の対向部2aの板金1から離間した裏面側には、複数本の調整ネジ11を螺合する螺合部材6が貼り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板表面にエアを吹き付けて乾燥させるエアナイフユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアナイフユニットとして、洗浄後の基板表面に向けて加圧エアを噴射させて乾燥させるエアナイフノズルが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この公報に開示されたエアナイフノズルは、チャンバ形成部材を2つの外殻部材で挟んで構成されている。そして、2つの外殻部材の間の非接合部分に形成されたスリット状のエア噴射口を介して加圧エアを噴射させ、基板表面を乾燥させる。
【0003】
この種のエアナイフノズルは、一般に、エア噴射口のスリット幅を高精度に均一化するため、金属材料の削り出し加工により形成される。このように、ノズルのスリット幅をその長手方向に沿って均一にすることにより、噴出させるエアの流量をユニットの長手方向に沿って均一にでき、乾燥ムラを無くすことができる。
【特許文献1】特開2003−340319号公報(図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したように、エアナイフノズルを金属材料の削り出し加工によって形成すると、ノズルの重量が重くなり、取り扱いが困難となる。特に、エアを拭き付ける対象となる基板のサイズが大きくなると、エアナイフノズルの長さもその分だけ長くなり、取り扱いが困難になるばかりか、ノズルが自重で撓んでしまう不具合も生じる。このように、ノズルに撓みを生じた場合、スリットにも歪みを生じ、噴出させるエアの流量も不均一になってしまう。
【0005】
また、金属材料の削り出し加工には比較的高価な製造設備が必要で、且つ、加工に熟練を要するばかりか、加工に多くの時間を必要とし、製造コストが増大する問題があった。
【0006】
この発明の目的は、安価且つ容易に製造でき、エア流量を容易に均一化でき、取り扱いを容易にできるエアナイフユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のエアナイフユニットは、帯状の第1の板金と、この第1の板金に帯状の隙間を介して近接対向する帯状の対向部、およびこの対向部に連続して上記第1の板金から離間する方向に折り曲げられた帯状の折り曲げ部を一体に有する帯状の第2の板金と、上記折り曲げ部と上記第1の板金との間で上記隙間に連通するエアチャンバを区画形成するように、上記第1および第2の板金にそれぞれ気密状態で接合した帯状の第3の板金と、上記第1乃至第3の板金の長手方向両端をそれぞれ気密状態で封止して上記エアチャンバを区画する2枚の第4の板金と、上記第2の板金を貫通して上記長手方向に沿って互いに離間して設けられた複数の通気孔と、上記第2の板金の上記第1の板金から離間した裏面側に設けられ、上記長手方向に沿って離間した複数個所で上記対向部を上記第1の板金に対して離接する方向に付勢して上記隙間を調整する隙間調整機構と、を有する。
【0008】
上記発明によると、エアナイフユニットを構成する殆どの部材を板金により形成できるため、金属材料の削り出し加工が不要となり、加工および組立が容易で、軽量化により、取り扱いが容易となり、製造コストを低減できる。
【発明の効果】
【0009】
この発明のエアナイフユニットは、上記のような構成および作用を有しているので、安価且つ容易に製造でき、エア流量を容易に均一化でき、取り扱いを容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1には、エアナイフユニット10の外観斜視図を示してある。また、図2には、このエアナイフユニット10を短手方向に切断して図1の矢印II-II方向から見た断面図を示してある。
【0011】
このエアナイフユニット10は、概ね、複数枚の帯状の板金を必要に応じて折り曲げたり孔開け加工したりして溶接によって互いに接合することで組み立てられる。なお、ここで言う「帯状」、および特許請求の範囲で言う「帯状」とは、一定の厚さを有する金属板(板金)のうち1方向に細長い矩形の板金を指すものとする。また、板金同士の接合には、スポット溶接やシーム溶接を用いる。
【0012】
すなわち、エアナイフユニット10は、帯状の第1の板金1、帯状の第2の板金2、帯状の第3の板金3、2枚の略T字形の第4の板金4a、4b、および2枚の帯状の第5の板金5a、5bを有する。このうち5枚の帯状の板金1、2、3、5a、5bは、略同じ長さを有する。また、板金4a、4bは、板金1、2、3、5a、5bの長手方向両端にそれぞれ気密状態で接合される。
【0013】
この他に、エアナイフユニット10は、板金2が板金1に帯状の隙間Gを介して対向する対向部2aの板金1から離間した裏面側に接合される帯状の螺合部材6、隙間Gを調整するための調整基準を与えるための帯状の剛体7、および板金1の対向部1aの板金2から離間した裏面側に接合される帯状の補強部材8を有する。螺合部材6および補強部材8も、上述した板金1、2、3、5a、5bと略同じ長さを有する。
【0014】
剛体7は、帯状の板金をその長手方向に沿った中間位置で略直角に折り曲げて断面L字状にされ、板金2との間で送気路を形成する板金5bの裏面に接合されている。このように、剛体7をL字状に折り曲げることで、曲げ応力に対する剛性を高めることができる。また、剛体7は、螺合部材6に対向する部位に複数本の調整ネジ11を螺合するための複数の貫通したネジ孔を有する。複数本の調整ネジ11は、螺合部材6の長手方向に沿って互いに一定距離で離間して配置される。これら剛体7、螺合部材6、および複数本の調整ネジ11は、本発明の隙間調整機構として機能する。
【0015】
板金1および板金2は、帯状の隙間Gを介して対向する帯状の対向部1a、2a、これら対向部1a、2aの後端側に連続して互いに離間する方向に傾斜して折り曲げられた帯状の折り曲げ部1b、2b、およびこれら折り曲げ部1b、2bの後端側に連続して水平方向に折り曲げられた帯状のフランジ部1c、2cをそれぞれ一体に有する。板金1、2同士が近接対向する対向部1a、2aに対して折り曲げ部1b、2bを設けることで、折り曲げ部1b、2b間に、隙間Gに連通するエアチャンバ14を形成できる。
【0016】
そして、エアナイフユニット10を組み立てる際には、周縁部に矩形枠状のフランジ部3aを有するとともに、その中央部内側に矩形の凹部3bを有する板金3が、フランジ部3aを介して、板金1のフランジ部1cおよび板金2のフランジ部2cに重ねて気密状態で接合される。この接合部は、例えば、隙間を埋める溶加材を用いたアーク溶接やシーム溶接により気密状態に接合される。
【0017】
或いは、図1に示すように、板金3のフランジ部3aと板金1、2のフランジ部1c、2cとの間にパッキンを介在させて、複数本のボルトを用いて両者を気密状態で強固に気密状態で接合するようにしても良い。
【0018】
また、板金5a、5bは、それぞれ、板金1、2同士が対向する面と離間した裏面との間で送気路12、13を形成するように、折り曲げられて、気密状態で接合される。この場合の接合も、上述したシーム溶接などが用いられる。
【0019】
このとき、例えば、一方の板金5aは、板金1のフランジ部1cの裏面に接合する帯状のフランジ部、および板金1の対向部1aの裏面に接合するフランジ部を形成するよう、長手方向に沿った2箇所で折り曲げられ、さらに送気路12を形成するようにその中間部位が板金1から離れる方向に略直角に折り曲げられる。他方の板金5bも、板金5aと左右対象形に折り曲げられる。
【0020】
そして、この後、板金1、2の対向部1a、2aを両側から挟むように、螺合部材6が板金2の対向部2aの裏面側に接合され、補強部材8が板金1の対向部1aの裏面側に接合される。この螺合部材6および補強部材8の接合には、例えばスポット溶接が用いられる。
【0021】
さらに、板金5bの下端面に上述した剛体7がスポット溶接によって接合される。そして、剛体7の長手方向に沿って互いに離間して形成された複数のネジ孔を介して調整ネジ11が螺合され、各ネジ11の先端が螺合部材6に螺合される。
【0022】
つまり、螺合部材6の長手方向に沿った各位置で調整ネジ11の締め具合を調整することにより、剛体7と螺合部材6との間の距離を各位置で微調整でき、螺合部材6(すなわち対向部2a)を板金1の対向部1aに対して離接する方向に付勢できる。
【0023】
その結果、対向する板金1の対向部1aとの間の隙間Gを長手方向に沿って均一に調整できる。この際、隙間調整の相手となる板金1の対向部1aには補強部材8がスポット溶接によって接合されているため、対向部1aの剛性が高められており、対向部1aの変形によって隙間Gが変動することを防止している。
【0024】
最後に、各板金1、2、3、5a、5bの長手方向両端に対し、板金4a、4bがシーム溶接などを用いて気密状態で接合され、上述した送気路12、13とともに、上述したエアチャンバ14が区画形成される。板金1および板金2それぞれの裏面側に形成された送気路12、13とエアチャンバ14を区画する折り曲げ部1b、2bには、それぞれ長手方向に互いに離間した複数の通気孔15が各板金1、2を貫通して形成されている。
【0025】
また、上述した複数枚の帯状の板金1、2、3、5a、5bの長手方向両端を封止した板金4a、4bには、それぞれ、図示しない送気管を送気路12、13に接続するための接続孔16が形成されている。
【0026】
しかして、送気管を介して送り込まれたエアは、板金4a、4bの接続孔16を介して、エアナイフユニット10の長手方向両端から送気路12、13に流入される。そして、送気路12、13に流入されたエアは、その長手方向に沿って設けられた複数の通気孔15を介してエアチャンバ14へ流入される。さらに、このようにして、エアチャンバ14内に送り込まれたエアは、2枚の板金1、2によって形成された隙間Gを介してエアナイフユニット10のスリット状の送気口10aから流出される。
【0027】
このとき、通気路12、13とエアチャンバ14との間に設けられた複数の通気孔15の間隔および/或いはサイズは、エアチャンバ14内の気圧が長手方向に沿って均一になるように設計されている。その上で、上述した隙間調整機構6、7、11によって、送気口10aの隙間Gが長手方向に沿って均一に調整されている。
【0028】
以上のように、本実施の形態によると、エアナイフユニット10の殆ど全ての構成部材1、2、3、4a、4b、5a、5b、6、7、8を帯状の板金によって形成したため、従来のように金属材料の削り出し加工によってエアナイフユニットを製造する必要がなくなり、エアナイフユニットの製造を容易にでき、製造コストを低減できる。また、本実施の形態によると、エアナイフユニットを構成する金属材料の使用量を少なくでき、エアナイフユニットを軽量化でき、取り扱いを容易にでき、使用する材料コストを低減できる。
【0029】
また、本実施の形態によると、エアナイフユニットの送気口10aの幅を長手方向に沿って均一化するため、例えば、板金1、2の対向面の平面度を高める必要がなく、板金1、2の加工精度を低くでき、その分、製造コストを低減できる。
【0030】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
【0031】
例えば、上述した実施の形態では、エアチャンバ14の左右両側に通気路12、13を形成するため、板金5a、5bを設けた場合について説明したが、これに限らず、エアチャンバ14の片側にだけ通気路を設けても良い。この場合、例えば、板金1を折り曲げ加工せずに、板金2を板金1から離れる方向に折り曲げるだけで両者の間にエアチャンバ14を形成し、板金2だけに複数の通気孔15を形成し、板金2の裏面側にだけ板金5を用いて通気路を形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の実施の形態に係るエアナイフユニットを示す外観斜視図。
【図2】図1のエアナイフユニットの断面図。
【符号の説明】
【0033】
1…第1の板金、2…第2の板金、3…第3の板金、4a、4b…第4の板金、5a、5b…第5の板金、6…螺合部材、7…剛体、8…補強部材、10…エアナイフユニット、11…調整ネジ、12、13…通気路、14…エアチャンバ、15…通気孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の第1の板金と、
この第1の板金に帯状の隙間を介して近接対向する帯状の対向部、およびこの対向部に連続して上記第1の板金から離間する方向に折り曲げられた帯状の折り曲げ部を一体に有する帯状の第2の板金と、
上記折り曲げ部と上記第1の板金との間で上記隙間に連通するエアチャンバを区画形成するように、上記第1および第2の板金にそれぞれ気密状態で接合した帯状の第3の板金と、
上記第1乃至第3の板金の長手方向両端をそれぞれ気密状態で封止して上記エアチャンバを区画する2枚の第4の板金と、
上記第2の板金を貫通して上記長手方向に沿って互いに離間して設けられた複数の通気孔と、
上記第2の板金の上記第1の板金から離間した裏面側に設けられ、上記長手方向に沿って離間した複数個所で上記対向部を上記第1の板金に対して離接する方向に付勢して上記隙間を調整する隙間調整機構と、
を有することを特徴とするエアナイフユニット。
【請求項2】
上記第1の板金から離間した上記第2の板金の裏面側に上記複数の通気孔に連通する上記長手方向に延びた送気路を形成するように、折り曲げられて、上記第2の板金の裏面に気密状態で接合された帯状の第5の板金をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のエアナイフユニット。
【請求項3】
上記第2の板金に設けられた複数の通気孔の間隔は、上記エアチャンバ内の気圧が上記長手方向に沿って均一になるよう設計されていることを特徴とする請求項2に記載のエアナイフユニット。
【請求項4】
上記第2の板金に設けられた複数の通気孔のサイズは、上記エアチャンバ内の気圧が上記長手方向に沿って均一になるよう設計されていることを特徴とする請求項2に記載のエアナイフユニット。
【請求項5】
上記隙間調整機構は、上記対向部の裏面に接合された帯状の螺合部材と、調整基準を与えるための帯状の剛体と、この剛体を貫通して上記螺合部材に螺合した複数本の調整ネジと、を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエアナイフユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−172554(P2009−172554A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16507(P2008−16507)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】