エアバッグ、エアバッグ装置及び車両
【課題】車両の前突時に小柄な乗員を受け止めるのに好適なエアバッグ及びエアバッグ装置と、このエアバッグ装置を備えた車両を提供する。
【解決手段】エアバッグ１０は、乗員前方の右側において膨張する右半側エアバッグ１２と、乗員前方の左側において膨張する左半側エアバッグ１４と、該右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の基端側に連通する基端室１６とを有する。膨張したエアバッグ１０の乗員対向面には上下に延在する凹部１３が存在する。凹部１３は、中間部が最も深く、その上部及び下部では浅くなっている。
【解決手段】エアバッグ１０は、乗員前方の右側において膨張する右半側エアバッグ１２と、乗員前方の左側において膨張する左半側エアバッグ１４と、該右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の基端側に連通する基端室１６とを有する。膨張したエアバッグ１０の乗員対向面には上下に延在する凹部１３が存在する。凹部１３は、中間部が最も深く、その上部及び下部では浅くなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、車両衝突時等に乗員を拘束するためのエアバッグ及びエアバッグ装置に係り、特に、膨張した状態において、エアバッグの乗員対向面に、上下方向の凹部が形成されるエアバッグ及びエアバッグ装置に関する。また、本発明はこのエアバッグ装置を備えた車両に関する。
【背景技術】
【０００２】
車両衝突時等に乗員を拘束するためのエアバッグとして、膨張した状態において、エアバッグの乗員対向面に、上下方向の凹部が形成されるエアバッグが特開２００６−１０３６５４に記載されている。同公報の００３９段落には、車両の前突時に、膨張したエアバッグの該凹部の両側の肩拘束部によって乗員の肩部が拘束され、乗員の頭部は、凹部に進入しつつ拘束される旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００６−１０３６５４号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
上記特開２００６−１０３６５４号のエアバッグにあっては、同号公報の図４の通り、凹部は上下方向の中間部が最も浅く、該中間部から上方及び下方に向って次第に深くなっている。
【０００５】
本発明は、車両の前突時に小柄な乗員を受け止めるのに好適なエアバッグ及びエアバッグ装置と、このエアバッグ装置を備えた車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明（請求項１）のエアバッグは、助手席乗員の前方に膨張するエアバッグであって、膨張した状態において乗員に対面して上下方向に延在した凹部が形成されるエアバッグにおいて、該凹部の上下方向の中間部における深さは、上部及び下部における該凹部の深さよりも大きいことを特徴とするものである。
【０００７】
請求項２のエアバッグは、請求項１において、該エアバッグは、車両前方側に配置された基端室と、該基端室に連なり、乗員前方の左側において膨張する左半側エアバッグと、該基端室に連なり、乗員前方の右側において膨張する右半側エアバッグとを有し、該左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分同士が結合されることにより前記凹部が形成されていることを特徴とするものである。
【０００８】
請求項３のエアバッグは、請求項２において、前記左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分同士が縫合によって結合されていることを特徴とするものである。
【０００９】
請求項４のエアバッグは、請求項３において、該縫合の縫目は、前記対面部分の上部同士を縫合した縫目（以下、上部縫目と称する。）と、該対面部分の中間部同士を縫合した縫目（以下、中間部縫目と称する。）と、該対面部分の下部同士を縫合した縫目（以下、下部縫目と称する。）とを有しており、エアバッグ膨張状態において、該中間部縫目は、少なくとも部分的に、該上部縫目及び下部縫目よりも、該エアバッグの乗員対向面から車両前方側に離隔していることを特徴とするものである。
【００１０】
請求項５のエアバッグは、請求項４において、該上部縫目、中間部縫目及び下部縫目は、略上下方向に延在した、連続した縫目であり、該中間部縫目は、少なくとも一部が前記乗員対向面から遠ざかるように湾曲していることを特徴とするものである。
【００１１】
請求項６のエアバッグは、請求項４において、少なくとも該上部縫目と中間部縫目とは不連続となっており、該中間部縫目の上端側は、該上部縫目よりも車両前方側に位置していることを特徴とするものである。
【００１２】
請求項７のエアバッグは、請求項３ないし６のいずれか１項において、前記凹部の前記中間部よりも車両前方側にあっては、エアバッグ膨張状態において左半側エアバッグと右半側エアバッグとが押し付け合わされたものとなるように構成されていることを特徴とするものである。
【００１３】
請求項８のエアバッグは、請求項３ないし７のいずれか１項において、該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの膨張時における左右幅を小さくするための左右テザーが設けられており、該左右テザーが前記縫合の縫目によって左半側エアバッグ又は右半側エアバッグに縫着されていることを特徴とするものである。
【００１４】
請求項９のエアバッグは、請求項１ないし８のいずれか１項において、エアバッグが膨張した状態において、凹部の上部における該エアバッグの乗員対向面からの該凹部の深さｄ１は５〜２００ｍｍであり、凹部の中間部における該乗員対向面からの該凹部の深さｄ２は２５〜４００ｍｍであり、凹部の下部における該乗員対向面からの該凹部の深さｄ３は５〜２００ｍｍであり、該凹部の上部及び下部の最奥部同士に接する接線からの該凹部の中間部の深さｄ４は、０〜２００ｍｍであることを特徴とするものである。
【００１５】
請求項１０のエアバッグは、請求項９において、前記中間部の凹部は、深さが２５〜４００ｍｍの部分であり、上下方向に１５０〜４００ｍｍ延在していることを特徴とするものである。
【００１６】
請求項１１のエアバッグは、請求項１１において、前記中間部の凹部においては、上部側ほど該凹部の深さが深くなっていることを特徴とするものである。
【００１７】
請求項１２のエアバッグは、請求項９ないし１１のいずれか１項において、前記中間部の凹部においては、少なくとも部分的に、その最奥部の鉛直面内における接線方向が車両前方に向って前傾していることを特徴とするものである。
【００１８】
請求項１３のエアバッグは、請求項１ないし１２のいずれか１項において、前記中間部の凹部を車両前方へ引っ張るための前後テザーが設けられていることを特徴とするものである。
【００１９】
本発明（請求項１４）のエアバッグは、助手席乗員の前方に膨張するエアバッグであって、膨張した状態において乗員に対面して上下方向に延在した凹部が形成されるエアバッグにおいて、該エアバッグは、車両前方側に配置された基端室と、該基端室に連なり、乗員前方の左側において膨張する左半側エアバッグと、該基端室に連なり、乗員前方の右側において膨張する右半側エアバッグとを有し、該左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分同士が縫合によって結合されることにより前記凹部が形成されており、該縫合の縫目は、該対面部分同士を下部から上部まで連続して縫合した縫目（以下、主縫目と称する。）を有しており、該主縫目は、上部側ほど車両前方側となるように延在していることを特徴とするものである。
【００２０】
請求項１５のエアバッグは、請求項１４において、前記主縫目は、少なくとも前記凹部の上下方向の中間部において、上部側ほど車両前方側となるように前傾した略直線状に延在していることを特徴とするものである。
【００２１】
請求項１６のエアバッグは、請求項１４又は１５において、前記縫合の縫目は、さらに、前記左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分の上部同士を縫合した縫目（以下、上部縫目と称する。）を有しており、該エアバッグ膨張状態において、該上部縫目は、前記主縫目の上端側よりも車両後方に配置されていることを特徴とするものである。
【００２２】
請求項１７のエアバッグは、請求項１ないし１６のいずれか１項において、該エアバッグは、車両のインストルメントパネルから乗員に接近するように車両後方へ向って膨張するものであり、該エアバッグに、該エアバッグが膨張した状態において該エアバッグを略上下方向に貫通する空洞部が設けられており、該空洞部は、該エアバッグが膨張した状態において、その下端側が、少なくとも部分的に、インストルメントパネルの車両後方側の端部よりも車両後方に位置するように構成されていることを特徴とするものである。
【００２３】
本発明（請求項１８）のエアバッグ装置は、かかる本発明のエアバッグと、該エアバッグを膨張させるインフレータとを備えたものである。
【００２４】
本発明（請求項１９）の車両は、かかる本発明のエアバッグ装置を搭載してなるものである。
【発明の効果】
【００２５】
本発明（請求項１，１８）のエアバッグ及びエアバッグ装置にあっては、該エアバッグの乗員対向面に上下方向に延在する凹部が設けられており、この凹部の上下方向の中間部が上部及び下部よりも深いものとなっている。小柄な乗員が助手席に座っていたときに前突が生じた場合、この小柄な乗員の頭部が、凹部の両側部分に挟まれるようにして該凹部の中間部付近に入り込むので、頭部の前方移動速度が急激に減速することがない。乗員の左右の胸は、凹部の両側部分で受け止められる。
【００２６】
本発明の一態様に係るエアバッグは、乗員の左半身の前方において膨張する左半側エアバッグ及び右半身の前方において膨張する右半側エアバッグを有し、この左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分同士が結合されることにより凹部が形成されている。
【００２７】
自動車の前突時にこのエアバッグが膨張した場合、左半側エアバッグが乗員の左胸を受け止め、右半側エアバッグが乗員の右胸を受け止める。この左右の胸には硬くて強い肋骨が存在する。このエアバッグは、この肋骨を介して乗員を受承し、衝撃を吸収する。このエアバッグは、膨張した状態において左半側エアバッグと右半側エアバッグの先端部同士の間に谷間状の凹部が存在し、乗員の胸中央の胸骨付近は該凹部に対峙する。従って、乗員の身体がエアバッグに突っ込んでいった場合、胸の胸骨付近は、エアバッグからそれ程大きな反力を受けないようになり、この胸骨付近の負担が小さくなる。
【００２８】
本発明においては、左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分同士を縫合によって結合してもよい。
【００２９】
この縫合の縫目として、左半側エアバッグと右半側エアバッグとの対面部分の上部同士を縫合した上部縫目と、該対面部分の中間部同士を縫合した中間部縫目と、該対面部分の下部同士を縫合した下部縫目とを設け、この中間部縫目を、少なくとも部分的に、該上部縫目及び下部縫目よりもエアバッグの乗員対向面から車両前方側に離隔させた構成としてもよい。この場合、凹部の最奥部はこれらの縫目となる。また、中間部縫目が少なくとも部分的に上部縫目及び下部縫目よりもエアバッグの乗員対向面から車両前方側に離隔していることにより、凹部は、上部及び下部よりも中間部が深くなる。
【００３０】
これらの上部縫目、中間部縫目及び下部縫目を、略上下方向に延在した、連続した縫目としてもよい。この場合、該中間部縫目の少なくとも一部を乗員対向面から遠ざかるように湾曲させることにより、凹部は、上部及び下部よりも中間部が深くなる。
【００３１】
少なくとも上部縫目と中間部縫目とを不連続としてもよい。この場合、中間部縫目の上端側を上部縫目よりも車両前方側に位置させることにより、凹部は、上部よりも中間部が深くなる。
【００３２】
本発明の別の一態様にあっては、凹部の中間部よりも車両前方側にあっては、エアバッグ膨張状態において左半側エアバッグと右半側エアバッグとが押し付け合わされた状態となるように構成されている。車両衝突時に乗員の頭部がこの中間部に当ったときに、該頭部は、左半側エアバッグと右半側エアバッグとを押し分けるようにして左半側エアバッグと右半側エアバッグとの間に入り込み、この間に衝撃が吸収される。
【００３３】
本発明では、左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの膨張時における左右幅を小さくするように左右テザーを設けてもよい。このようにすると、膨張完了状態において左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの車両後方側が乗員に向って突き出した形状をとるようになり、前記凹部の左右幅を小さくすることができる。また、左半側エアバッグと右半側エアバッグとが押し付け合わされた領域の車両前後方向長さを大きくすることも可能である。
【００３４】
本発明においては、凹部の上部におけるエアバッグの乗員対向面からの該凹部の深さｄ１は５〜２００ｍｍであり、凹部の中間部における該乗員対向面からの該凹部の深さｄ２は２５〜４００ｍｍであり、凹部の下部における該乗員対向面からの該凹部の深さｄ３は５〜２００ｍｍであり、該凹部の上部及び下部の最奥部同士に接する接線からの該凹部の中間部の深さｄ４は、０〜２００ｍｍであることが好ましい。このように構成することにより、小柄な乗員の頭部を該凹部の中間部付近に深く入り込ませることができる。
【００３５】
本発明の一態様にあっては、中間部の凹部は、深さが２５〜４００ｍｍの部分であり、上下方向に１５０〜４００ｍｍ延在している。
【００３６】
本発明の一態様にあっては、中間部の凹部においては、上部側ほど該凹部の深さが深くなっている。このように構成することにより、前傾姿勢にて凹部に進入してきた小柄乗員の頭部がこの凹部に深く入り込むようになる。これにより、小柄乗員の頭部が左右にずれ動くことなく、しっかりと凹部内に保持される。
【００３７】
本発明においては、凹部の中間部においては、少なくとも部分的に、その最奥部の鉛直面内における接線方向が車両前方に向って前傾するものとなっていることが好ましい。この場合、小柄乗員の顔面が凹部の最奥部に達したときに、顔面がこの接線方向と略々合致するため、小柄乗員の首に対する負荷が最小化される。
【００３８】
助手席に大柄な乗員が座っている状態で前突が生じた場合、乗員の頭部はエアバッグ上部の凹部で受け止められ、左右の胸は凹部の両側部分で受け止められる。
【００３９】
本発明では、中間部の凹部を前後テザーで車両前方に引っ張ることにより、凹部の上下方向中間部を凹部の上部及び下部よりも深くするように構成してもよい。
【００４０】
本発明（請求項１４，１８）のエアバッグ及びエアバッグ装置にあっては、該エアバッグは、乗員の左半身の前方において膨張する左半側エアバッグ及び右半身の前方において膨張する右半側エアバッグを有し、この左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分同士が縫合によって結合されることにより、該エアバッグの膨張時に乗員に対面して上下方向に延在した凹部が形成されるように構成されている。この縫合の縫目は、該対面部分同士を下部から上部まで連続して縫合した主縫目を有しており、該主縫目は、上部側ほど車両前方側となるように延在したものとなっている。即ち、このエアバッグが膨張した場合には、凹部の深さは、該凹部の上部側ほど深くなる。小柄な乗員が助手席に座っていたときに前突が生じた場合、この小柄な乗員の頭部が、凹部の両側部分に挟まれるようにして該凹部の中間部付近に入り込むので、頭部の前方移動速度が急激に減速することがない。乗員の左右の胸は、凹部の両側部分で受け止められる。
【００４１】
本発明の一態様に係るエアバッグにおいては、前記主縫目は、少なくとも凹部の上下方向の中間部において、上部側ほど車両前方側となるように前傾した略直線状に延在している。このエアバッグにあっては、凹部の中間部においては、その最奥部は、該主縫目に沿って前傾したものとなっているので、小柄乗員の顔面が凹部の最奥部に達したときに、顔面がこの最奥部の延在方向と略々合致するため、小柄乗員の首に対する負荷が最小化される。また、この凹部の中間部においては、上部側ほど該凹部の深さが深くなっているので、前傾姿勢にて凹部に進入してきた小柄乗員の頭部がこの凹部に深く入り込むようになる。これにより、小柄乗員の頭部が左右にずれ動くことなく、しっかりと凹部内に保持される。
【００４２】
この縫合の縫目は、さらに、該主縫目の上端側よりも車両後方において左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分の上部同士を縫合した上部縫目を有していてもよい。この場合、凹部の上部は中間部よりも浅くなる。助手席に大柄な乗員が座っている状態で前突が生じた場合、乗員の頭部はエアバッグ上部の凹部で受け止められ、左右の胸は凹部の両側部分で受け止められる。このようにエアバッグ上部において凹部が浅くなっていることにより、大柄な乗員の頭部を拘束するのに必要なエアバッグの前後ストロークを確保することができる。
【００４３】
本発明では、エアバッグに、膨張した該エアバッグを略上下方向に貫通する空洞部を設け、エアバッグが膨張した状態において、該空洞部の下端側が少なくとも部分的にインストルメントパネル（以下、インパネと略すことがある。）の車両後方側の端部よりも車両後方に位置するように構成してもよい。これにより、エアバッグが膨張するときに、インパネの近傍に物体が存在していても、この物体が空洞部に呑み込まれるようになる。
【図面の簡単な説明】
【００４４】
【図１】実施の形態に係るエアバッグの斜視図である。
【図２】図１のエアバッグの水平断面図である。
【図３】図２のIII−III線断面図である。
【図４】図３のIV−IV線断面図である。
【図５】図３のＶ−Ｖ線断面図である。
【図６】図３のVI−VI線断面図である。
【図７】図１のエアバッグの側面図である。
【図８】インサイドパネルの平面図である。
【図９】アウトサイドパネルの平面図である。
【図１０】図１のエアバッグの分解斜視図である。
【図１１】図１のエアバッグの分解斜視図である。
【図１２】インサイドパネルの構成図である。
【図１３】インサイドパネルの構成図である。
【図１４】インサイドパネルの構成図である。
【図１５】図１のエアバッグの膨張時の側面図である。
【図１６】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図１７】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図１８】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図１９】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図２０】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図２１】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図２２】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の水平方向の断面図である。
【図２３】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図２４】図２３のXXIV−XXIV断面図である。
【図２５】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図２６】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図２７】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図２８】インサイドパネルの糸目方向を示す平面図である。
【図２９】アウトサイドパネルの糸目方向を示す平面図である。
【図３０】インサイドパネルとアウトサイドパネルとの分解斜視図及びインサイドパネル及びアウトサイドパネルの外周縁同士の縫合部付近の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【００４５】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【００４６】
第１図は本発明の実施の形態に係るエアバッグの膨張状態における上方からの斜視図、第２図はこのエアバッグの水平断面図、第３図は第２図のIII−III線断面図、第４，５，６図は第３図のIV−IV線、Ｖ−Ｖ線、VI−VI線断面図、第７図は膨張したエアバッグの側面図、第８図はインサイドパネルの平面図、第９図はアウトサイドパネルの平面図、第１０図、第１１図はこのエアバッグの分解斜視図である。
【００４７】
このエアバッグ１０は、乗員前方の右側において膨張する右半側エアバッグ１２と、乗員前方の左側において膨張する左半側エアバッグ１４と、該右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の基端側に連通する基端室１６とを有する。左半側エアバッグ１４と右半側エアバッグ１２とは、それらの対峙面同士が縫目９０Ｓによって縫合されている。
【００４８】
右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４とは、各々の対峙面に設けられた第１の開口９１及び第２の開口９２によって連通している。第１の開口９１はエアバッグ１０の上部に設けられ、第２の開口９２は下部に設けられている。開口９１の開口面積は７５００〜５００００ｍｍ２特に２００００〜４００００ｍｍ２程度が好適であり、開口９２の開口面積は１２００〜３２０００ｍｍ２特に１９００〜２００００ｍｍ２程度が好適である。縫目９０Ｓは、開口９１，９２を取り巻くように延在している。
【００４９】
このエアバッグ１０が膨張した状態にあっては、右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４の先端部同士の間にタイパネルなどの架渡部材は存在せず、両バッグ１２，１４の先端部同士に間に上下方向に延在する凹部１３が形成される。この凹部１３は、乗員に向って（即ち、第１図〜第７図において右方に向って）開放している。凹部１３の最奥部は上記の縫目９０Ｓである。
【００５０】
このエアバッグ１０が膨張完了した状態にあっては、第２図の通り、右半側エアバッグ１２の最先端１２ｔと左半側エアバッグ１４の最先端１４ｔとの間隔Ｗは１５０〜４５０ｍｍ特に１７０〜４３０ｍｍであることが好ましい。
【００５１】
第３図の通り、前記縫目９０Ｓは、凹部１３の上部付近（開口９１の後縁側）においては車両後方側へ突出するように湾曲し、凹部１３の中間部付近（開口９１，９２同士の中間付近）においては車両前方側へ突出するように湾曲し、凹部１３の下部付近（開口９１の後縁側）においては車両後方側へ突出するように湾曲している。即ち、この実施の形態では、該縫目９０Ｓは、略上下方向に延在しており、且つ該凹部１３の中間部において一部が乗員対向面から遠ざかるように湾曲したものとなっている。符号Ｔ１は、この凹部１３の上部側における縫目９０Ｓの凸曲線と、凹部１３の下部側における縫目９０Ｓの凸曲線との双方に接する（即ち、凹部１３の上部及び下部の最奥部同士に接する）接線を示している。
【００５２】
この実施の形態では、縫目９０Ｓがこのように延在していることにより、凹部１３は、上下方向の中間部で最も深く、それから上方及び下方に向って徐々に浅くなっている。
【００５３】
第４〜６図の通り、エアバッグ１０の膨張完了状態において、凹部１３の上部における右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の最先端１２ｔ，１４ｔからの凹部１３の深さｄ１は５〜２００ｍｍ特に３０〜１７０ｍｍが好適であり、凹部１３の中間部における該最先端１２ｔ，１４ｔからの該凹部１３の深さｄ２は２５〜４００ｍｍ特に５０〜３５０ｍｍが好適であり、凹部１３の下部における該最先端１２ｔ，１４ｔからの該凹部１３の深さｄ３は５〜２００ｍｍ特に３０〜１７０ｍｍが好適である。
【００５４】
また、第３図の通り、凹部１３の中間部における前記接線Ｔ１からの該凹部１３の深さｄ４は、０〜２００ｍｍ特に４０〜１７０ｍｍであることが好ましい。
【００５５】
凹部１３の中間部においては、深さが２５〜４００ｍｍである範囲Ｌ（第７図）が上下方向に１５０〜４００ｍｍ特に２００〜３００ｍｍ延在することが好ましい。なお、この範囲を示す長さＬは、乗員対向面に沿う長さである。この範囲Ｌの下端の位置と、ＦＭＶＳＳのＡＦ０５タイル（アメリカ合衆国Federal Motor Vehicle Safety Standardに規定するアメリカ成人女性の小さい方から５％の体格）の小柄な乗員ダミーのヒップポイントＨＰとの高低差ｈ１が２４０〜４６０ｍｍであることが好ましい。また、この範囲Ｌの上端と、該ヒップポイントＨＰとの高低差ｈ２が４６０〜６７０ｍｍであることが好ましい。
【００５６】
この実施の形態では、上記範囲Ｌの上下方向の中間においては、該凹部１３の最奥部の鉛直面内における接線方向Ｔ２（第３図）は、車両前方に向って傾斜している。この接線方向Ｔ２の傾斜角度（水平面に対する仰角）θは２５〜５０°特に３０〜４５°程度であることが好ましい。
【００５７】
なお、第３，７図においては、縫目９０Ｓは、上記範囲Ｌの上端付近から下端付近にかけて全体的に車両前方側へ凸の略円弧状に湾曲しており、これにより、凹部１３は、上下方向の中間部で最も深く、それから上方及び下方に向って徐々に浅くなっているが、縫目９０Ｓの形状及び凹部１３の最深部の位置はこれに限定されない。例えば、縫目９０Ｓは、略く字形や略７字形（第３，５図においては左右逆向きの略７字形）等の形状に延設されてもよい。また、凹部１３は、例えばその上部の下側（即ち上記範囲Ｌの上端近傍）において急に深くなり、そこから下部側に向って徐々に浅くなる形状、即ち凹部１３が中間部において上部側ほど深くなる形状であってもよい。縫目９０Ｓは、凹部１３の上部、中間部及び下部にわたって連続していなくてもよい。即ち、例えばこの凹部１３の上部と中間部との間、及び中間部と下部との間の少なくとも一方で縫目９０Ｓが不連続となっていてもよい。また、この凹部１３の中間部において、縫目９０Ｓは、必ずしも乗員対向面から遠ざかるように湾曲していなくてもよい。即ち、この凹部１３の中間部の深さが凹部１３の上部及び下部よりも深くなっていれば、該中間部において、縫目９０Ｓは、少なくとも一部が乗員対向面に接近するように湾曲していてもよく、一直線状に延在していてもよい。このように構成されたエアバッグの一例を第２５〜２７図に示し、後で詳しく説明する。
【００５８】
この実施の形態では、右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の上下方向の中間付近かつ前後方向の中間付近に、それぞれ、エアバッグ１０の左右方向に延在する左右テザー９３，９４が設けられている。この左右テザー９３，９４によって右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の膨張時の左右幅を規制することにより、各バッグ１２，１４の乗員側の先端部分を乗員方向に、より長く突出させ、凹部１３をより深くすることができる。また、右半側エアバッグ１２の最先端部１２ｔと左半側エアバッグ１４の最先端部１４ｔとの間隔Ｗを規制することにより、確実に乗員の肋骨をこれらのエアバッグ１２，１４によって拘束することができ、胸骨への負担が小さくなる。
【００５９】
右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の外側面、即ち右アウト面４０及び左アウト面３０にはベントホール１８が設けられている。
【００６０】
このエアバッグ１０のパネル構成について第８図〜第１１図を参照して以下に説明する。なお、第１０，１１図は、このエアバッグ１０を各パネルに分解した分解斜視図である。
【００６１】
このエアバッグ１０の外殻は、インサイドパネル２０とアウトサイドパネル８０とで構成されている。
【００６２】
インサイドパネル２０は、略瓢箪形の細長いパネルであり、第１０，１１図の通り、中央で２つ折りされることによりライトサイド２０Ｒとレフトサイド２０Ｌが形成される。このインサイドパネル２０は、ライトサイド２０Ｒが右半側エアバッグ１２の内側面を構成し、レフトサイド２０Ｌが左半側エアバッグ１４の内側面を構成する。インサイドパネル２０は、レフトサイド２０Ｌの下辺２８、先端辺２１、上辺２２、折り返し部付近の上辺２３、ライトサイド２０Ｒの上辺２４、先端辺２５、下辺２６、及び、該折り返し部付近の下辺２７によって全周の辺部が構成されている。
【００６３】
第９図〜第１１図の通り、アウトサイドパネル８０は、右半側エアバッグ１２の外側面を構成する右アウト面４０と、左半側エアバッグ１４の外側面を構成する左アウト面３０と、基端室１６を構成するためのマウス面５０とを有している。
【００６４】
該左アウト面３０及び右アウト面４０は、それぞれ、先端辺３１，４１、上辺３２，４２、及び下辺３４，４４によって外周の辺縁が構成されている。
【００６５】
マウス面５０は、左サイド面５０Ａ、底面５０Ｂ、右サイド面５０Ｃ、上面左サイドを構成する左フラップ５０Ｄ、上面右サイドを構成する右フラップ５０Ｅを有している。前記左アウト面３０の基端側は該左サイド面５０Ａに連なり、右アウト面４０の基端側は該右サイド面５０Ｃに連なっている。このマウス面５０は、各サイド面５０Ａ，５０Ｃが略三角形となるように折られ、且つ、エアバッグ先端側に向って開放している。
【００６６】
このマウス面５０は、略長方形状のフラップ５０Ｄ，５０Ｅ同士の対向辺５１，５２、フラップ５０Ｄ，５０Ｅの後側辺（フラップ後側辺）５３，５４、フラップ５０Ｄ，５０Ｅの前側辺５５，５６、該前側辺５５，５６に対向する前辺５７、及び底面５０Ｂの後側辺（底部後側辺）６０によって外縁が構成されている。
【００６７】
該フラップ後側辺５３，５４は、それぞれ左アウト面３０及び右アウト面４０の上辺３２，４２に連なり、底部後側辺６０の両端側は、それぞれ左アウト面３０及び右アウト面４０の下辺３４，４４に連なっている。
【００６８】
インサイドパネル２０のレフトサイド２０Ｌ及びライトサイド２０Ｒの上部には、それぞれ、左半側エアバッグ１４内と右半側エアバッグ１２内とを連通するための開口９１が設けられている。また、レフトサイド２０Ｌ及びライトサイド２０Ｒの下部にも、それぞれ、左半側エアバッグ１４内と右半側エアバッグ１２内とを連通するための開口９２が設けられている。
【００６９】
レフトサイド２０Ｌ及びライトサイド２０Ｒの各開口９１，９２同士の間には、それぞれ左右テザー９４の基端が縫目９４Ｓによって縫着されている。
【００７０】
アウトサイドパネル８０には、左右テザー９４に対峙する位置に左右テザー９３の基端が縫目９３Ｓによって縫着されている。
【００７１】
なお、第１０，１１図では、図面を明瞭とするために左右テザー９３，９４は図示が省略されている。
【００７２】
アウトサイドパネル８０の左右方向の中央部にはインフレータ１１５（第７図）からのガス導入用の開口であるマウス７０が設けられている。
【００７３】
このエアバッグ１０を製作するには、第１０，１１図のように、まずマウス面５０のフラップ５０Ｄ，５０Ｅの対向辺５１，５２同士を縫合する。第１１図の５１Ｓはこの縫合の縫目を示している。
【００７４】
次に、インサイドパネル２０のレフトサイド２０Ｌとライトサイド２０Ｒとを重ね合わせるようにインサイドパネル２０を二ツ折りにし、開口９１，９２を取り巻く縫目９０Ｓによって両サイド２０Ｌ，２０Ｒを縫合する。次いでアウトサイドパネル８０の左アウト面３０とインサイドパネル２０のレフトサイド２０Ｌとを対面させ、先端辺２１，３１同士、上辺２２，３２同士、下辺２８，３４同士をそれぞれ縫合すると共に、アウトサイドパネル８０の右アウト面４０とインサイドパネル２０のライトサイド２０Ｒとを対面させ、先端辺２５，４１同士、上辺２４，４２同士、下辺２６，４４同士を縫合する。また、アウトサイドパネル８０のマウス面５０のフラップ後側辺５３，５４をインサイドパネル２０の折り返し部付近の上辺２３付近と縫合し、該マウス面５０の底部後側辺６０を折り返し部付近の下辺２７付近と縫合する。
【００７５】
次いで、左右テザー９３，９４の先端同士を縫目９５Ｓ（第２，５図）によって縫合する。
【００７６】
これらの縫合により、エアバッグ１０（第１図）を表裏逆にした状態、即ち、縫い合せ代がエアバッグの表側に露出した状態となる。第１１図の通り、マウス面５０のフラップ前側辺５５，５６と前辺５７とは、まだ縫合されておらず、この状態では開放口Ｍとなっている。
【００７７】
そこで、この開放口Ｍを通してエアバッグを表裏反転させる。この開放口Ｍを縫目５０Ｓ（第１，２図）で縫合することにより、第１図のエアバッグ１０となる。
【００７８】
なお、第２図の通り、基端室１６の底面５０Ｂに、インフレータ１１５（第７図）からのガス導入用の開口（マウス）７０が配置される。
【００７９】
このエアバッグ１０は、２枚のパネル２０，８０により外殻が構成されるため、縫合の手間が容易である。
【００８０】
このエアバッグ１０は、車両衝突時に自動車の助手席乗員を拘束するために、助手席用エアバッグ装置に装着される。
【００８１】
第７図の通り、該助手席用エアバッグ装置は、インストルメントパネル１１０のトップ面に設置された、エアバッグ１０を収容するための容器状のケース（コンテナ）１１４と、エアバッグ１０を膨張させるためのインフレータ１１５等を備えている。該インフレータ１１５はケース１１４に配置されている。エアバッグ１０が折り畳まれてこのケース１１４内に収容されている。そして、このエアバッグ１０の折り畳み体を覆うようにケースにリッドが装着されている。該リッドは、エアバッグ１０が膨張するときに該エアバッグ１０からの押圧力によって開裂するようになっている。第７図の符号１２０はウィンドウシールドを示す。
【００８２】
このエアバッグ装置の作動は次の通りである。
【００８３】
このエアバッグ装置を搭載した自動車が衝突した場合、インフレータ１１５がガス噴出作動する。このインフレータ１１５からのガスは、まず基端室１６を膨張させ、次いで右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４内に流入してこれらを膨張させる。
【００８４】
このエアバッグ１０にあっては、先に膨張した基端室１６は、インストルメントパネル１１０の上面に接し、姿勢が安定する。このため、右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４は、膨張完了時だけでなく膨張途中時でも姿勢が安定する。
【００８５】
また、膨張した基端室１６から右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４にガスが略均等に供給されると共に、右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４の先端側同士が開口９１，９２によって連通されているので、該右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４の双方が膨張初期の段階からスムーズに且つ左右略均等に膨張するようになる。例えば、開口９１，９２が設けられていないと、右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の内圧が不均一となることで該右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の膨張が不均一となり、これによってエアバッグ１０の展開挙動が不安定になる可能性があるが、開口９１，９２を設けることにより、右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の不均一な展開及び膨張時の暴れが抑制される。
【００８６】
エアバッグ１０が膨張完了した状態において、乗員対向面の左右方向の中央に、上下方向に延在した凹部１３が形成される。即ち、右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４の先端部同士の間に、上下方向に延在した谷間状の凹部１３が形成され、この凹部１３が乗員に向って開放している。
【００８７】
このエアバッグ１０では、前記の通り、左右テザー９３，９４が設けられており、右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の膨張完了時の左右幅が小さい。また、エアバッグ１０の膨張完了時に、右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の乗員側の最先端１２ｔ，１４ｔ付近が乗員に向って突き出した形状となる。これにより、凹部１３の深さｄ１〜ｄ３が大きなものとなる。また、凹部１３の左右幅を小さくすることができる。
【００８８】
膨張したエアバッグ１０に乗員が突っ込んできた場合、膨張した右半側エアバッグ１２が、助手席の左右方向の中央に座っている乗員Ｐの右胸を受け止め、膨張した左半側エアバッグ１４が左胸を受け止め、胸骨付近は凹部１３に対峙する。このため、胸骨付近に加えられるエアバッグ受承時の反力が小さなものとなる。頭部は、凹部１３に入り込んで受け止められる。
【００８９】
このエアバッグ１０にあっては、凹部１３の上下方向の中間部の深さｄ２が上部の深さｄ１及び下部の深さｄ３よりも大きいものとなっている。ＦＭＶＳＳのＡＦ０５タイル程度の小柄な乗員が助手席に座っていたときに前突が生じた場合、この小柄な乗員の頭部が中間部の深い凹部１３に受け止められる。乗員の左右の胸や肩付近は、上記の通り右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の下部に受け止められる。小柄な乗員の場合、質量が小さいので、シートベルト着用時には、該シートベルトのショルダーウェビングの拘束力が作用することにより、胸の前方移動速度は比較的小さい。小柄な乗員の頭部は胸に比べて相対的に大きな速度で前方に移動する。この頭部が、両側から右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４とに挟まれるようにして凹部１３の中間部付近に入り込むので、この頭部の前方移動速度が急激に減速することがなく、胸と頭部がほぼ同挙動にて前方移動し、エアバッグ１０を押し縮める。これにより、小柄な乗員の首に加えられる入力が最小化される。
【００９０】
なお、凹部１３の最奥部の接線方向Ｔ２が前傾していると、ＡＦ０５タイル程度の小柄乗員の顔面が凹部１３の最奥部に達したときに、顔面が接線方向Ｔ２と略々合致するため、乗員の首に対する負荷が最小化される。
【００９１】
助手席にＦＭＶＳＳのＡＭ５０タイル（アメリカ成人男性の平均的体格）程度の大柄な乗員が座っている状態で前突が生じた場合、乗員の頭部はエアバッグ１０の乗員対向面の上部で受け止められ、胸や肩はエアバッグ１０の上下方向中間部で受け止められる。大柄な乗員は、質量が大きいので、小柄乗員の場合よりも大きなエネルギーにて前方移動する。このエアバッグ１０の上部では、凹部１３が浅くなっており、頭部が凹部１３に入り込んだときに、ほぼ同時に左右の胸、肩も右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４に当接する。そして、頭部と胸、肩とが一体的に、エアバッグ１０を押し縮めながら前方移動する。エアバッグ１０の上部において凹部１３が浅くなっていることにより、頭部を拘束するのに必要なエアバッグ１０の前後ストロークを確保することができるため、大柄な乗員に加えられる衝撃が吸収される。
【００９２】
なお、この実施の形態においては、第３図の通り、シーム９０Ｓと基端室１６との間における右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４との間に、上下方向に貫通する空洞部９０Ｖが存在する。この空洞部９０Ｖは、エアバッグ１０の膨張完了状態において、その下端側が少なくとも部分的にインパネ１１０の最後端部１１０ａよりも車両後方側に位置するように形成されている。即ち、エアバッグ１０の膨張完了状態においては、この空洞部９０Ｖの下端側の開口部が、少なくとも部分的に、インパネ１１０の最後端部１１０ａよりも車両後方において該エアバッグ１０の下面に露呈する。従って、第１５図のように、エアバッグ１０が膨張するときに、インパネ１１０の近傍に物体Ｃが存在していても、この物体Ｃが空洞部９０Ｖに呑み込まれるようになる。
【００９３】
上記実施の形態では、右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４とは対称形状となっているが、非対称形状であってもよい。また、右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４の容積は同一であってもよく、異なってもよい。
【００９４】
上記実施の形態のエアバッグ１０では２個の開口９１，９２が設けられているが、１個又は３個以上の開口が設けられてもよく、開口は省略されてもよい。また、開口の大きさを上記説明以外としてもよい。
【００９５】
第１６図〜第２７図を参照してさらに別の実施の形態について説明する。
【００９６】
第１６図は、下部の開口９２を省略し、上部の開口９１のみを設けた実施の形態に係るエアバッグ１０Ｂの第３図と同様部分の縦断面図である。
【００９７】
第１７図は、上部の開口９１を省略し、下部の開口９２のみを設けた実施の形態に係るエアバッグ１０Ｃの第３図と同様部分の縦断面図である。
【００９８】
第１８図は、上部の開口９１と下部の開口９２との間に中間の開口９１ｍを設けた実施の形態に係るエアバッグ１０Ｄの第３図と同様部分の縦断面図である。
【００９９】
第１９図は、上部及び下部の開口９１，９２を省略した実施の形態に係るエアバッグ１０Ｅの第３図と同様部分の縦断面図である。
【０１００】
第１６図〜第１９図のその他の構成は第３図と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【０１０１】
本発明では、縫目９０Ｓは、閉じたループ形ではなく、途中で途切れたものであってもよい。第２０図及び第２１図は、このような実施の形態に係るエアバッグの第３図と同様部分の縦断面図である。
【０１０２】
第２０図のエアバッグ１０Ｆでは、縫目９０Ｓ’は、前記縫目９０Ｓから車両前方側の上下方向延在部を部分的に省略したものである。このエアバッグ１０Ｆは、上記エアバッグ１０Ｅと同じく開口９１，９２のいずれもが省略されている。その他の構成は第３図と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【０１０３】
第２１図のエアバッグ１０Ｇでは、上部の開口９１が設けられている。縫目９０Ｓ’’は、第２０図の縫目９０Ｓ’の上部側を延長し、開口９１を周回して取り巻くように構成されている。その他の構成は第２０図と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【０１０４】
本発明では、右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４が、凹部１３の中間部の奥側において、エアバッグ膨張状態において押し付け合わされるように構成してもよい。
【０１０５】
第２２図は、かかる実施の形態に係るエアバッグ１０Ｈの膨張状態における乗員側の略々水平方向の断面図であり、前記第５図と同様部分の断面を示している。
【０１０６】
この実施の形態では、縫目９０Ｓのうち乗員側の部分が、凹部１３の中間部において、前記第５図よりも若干奥側（車両前方側）に位置している。この縫目９０Ｓよりも乗員側にあっては、凹部１３の中間部の奥側領域Ｋにおいて、膨張した右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４とが押し付け合わされている。乗員Ｐの頭部は、車両前突時に該奥側領域Ｋに入り込み、右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４とを押し分けるようにして前方に移動し、この間に衝撃が吸収される。
【０１０７】
本発明では、左右テザーを縫目９０Ｓによって右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４に縫合してもよい。第２３図は、かかるエアバッグ１０Ｉの第３図と同様部分の縦断面図である。第２４図は、第２３図のXXIV−XXIV線に沿う断面図である。このエアバッグ１０Ｉでは、左右テザー９４が縫目９０Ｓによってインサイドパネル２０に縫合されている。このように縫目９０Ｓによって左右テザー９４を縫合することにより、縫目９４Ｓを省略できる。
【０１０８】
なお、本発明では、左右テザー９３，９４は、インサイドパネル２０及びアウトサイドパネル８０と同様に、ナイロン等の合成繊維の織布よりなる基布の一方の面にシリコーン樹脂等のコーティングを施したコート布にて構成されることが好ましい。
【０１０９】
このようなコート布にて左右テザー９３，９４を構成した場合、左右テザー９３，９４の樹脂コーティング面が車両前方を向くようにするのが好ましい。これにより、インフレータからの熱いガスが左右テザー９３，９４に当る場合でも、左右テザー９３，９４の耐熱性が高いものとなる。
【０１１０】
上記第１図〜第１５図等の実施の形態では開口９１，９２が独立して離隔して設けられているが、第１２図〜第１４図のインサイドパネル２０Ａ，２０Ｂ，２０Ｃのように、開口９１，９２を繋げた形状の細長い開口９４を設け、この開口９４を横断する小パネルよりなる前後テザーを設けてもよい。
【０１１１】
第１２図（ａ），（ｂ）のインサイドパネル２０Ａの開口９４は、途中がくびれた瓢箪形である。この開口９４のくびれた部分を小パネルよりなる前後テザー９５が横断し、第１２図（ｂ）の通り、開口９４の車両前側及び車両後側の縁部にそれぞれ縫目９５Ｓによって縫着されている。
【０１１２】
第１３図（ａ）のインサイドパネル２０Ｂは、この開口９４のくびれた部分の車両前側及び車両後側の縁部にそれぞれ小パネル９６の基端側が縫目９６ａによって縫着されている。第１３図（ｂ）のように、この小パネル９６，９６の先端側同士が縫目９６ｂによって縫着されている。即ち、小パネル９６，９６を連結した小パネル連結体よりなる前後テザーが開口９４を横断している。
【０１１３】
第１４図のインサイドパネル２０Ｃでは、開口９４のくびれた部分の車両後側の縁部及び車両前側の縁部からそれぞれ小パネル９７ａ，９７ｂが突設されている。小パネル９７ａ，９７ｂは、インサイドパネル２０Ｃの基布と一連一体に設けられている。第１４図（ｂ）のように、この小パネル９７ａ，９７ｂの先端同士が縫目９７ｃによって縫着されている。即ち、小パネル９７ａ，９７ｂの連結体よりなる前後テザーが開口９４を横断している。
【０１１４】
これらのインサイドパネル２０Ａ〜２０Ｃを用いて製作されたエアバッグも、上記実施の形態のエアバッグと同様の作用効果を奏する。なお、インサイドパネル２０Ａ〜２０Ｃの前後テザー９５や、小パネル９６又は９７の連結体よりなる前後テザーの開口横断方向の長さを短くすることにより、凹部１３の中間部の深さｄ２を大きくすることができる。
【０１１５】
第２５図は、さらに別の実施の形態に係るエアバッグ１０Ｊの第３図と同様部分の縦断面図である。
【０１１６】
このエアバッグ１０Ｊにおいては、凹部１３の中間部は、上部側ほど深くなっている。
【０１１７】
即ち、この実施の形態では、前記縫目９０Ｓの車両後方側の上下方向延在部は、凹部１３の上部では、開口９１の後縁に沿って車両後方側へ突出するように湾曲しており、凹部１３の中間部（即ち前記範囲Ｌ）では、該開口９１の近傍（即ち前記範囲Ｌの上端近傍）において該開口９１の下縁に沿うようにして車両後方側へ突出するように湾曲し、そこから下方に向って徐々に車両後方側となるように斜めに延在し、凹部１３の下部では、開口９２の後縁に沿って車両後方側へ突出するように湾曲している。即ち、この縫目９０Ｓの車両後方側の上下方向延在部は、凹部１３の中間部において、略７字形（第２５図においては左右逆向きの略７字形）に延設されている。これにより、凹部１３は、その上部の下側（即ち前記範囲Ｌの上端近傍）において急に深くなり、そこから下方に向って徐々に浅くなっている。
【０１１８】
このエアバッグ１０Ｊにおける前記範囲Ｌの上端から凹部１３の最深部１３ｂまでの間隔ｑは、０〜２５０ｍｍ特に０〜１５０ｍｍであることが好ましい。
【０１１９】
このエアバッグ１０Ｊにおける該エアバッグ１０Ｊの乗員対向面からの凹部１３の最深部１３ｂの深さｄ２’は、２５〜４００ｍｍ特に５０〜３５０ｍｍであることが好ましい。
【０１２０】
縫目９０Ｓのうち、凹部１３の最深部１３ｂよりも下部側の下方且つ車両後方側へ斜めに延在した部分の水平面に対する仰角θは、２５〜５０°特に３０〜４５°程度であることが好ましい。
【０１２１】
第２５図のその他の構成は第３図と同一であり、第２５図において第３図と同一符号は同一部分を示している。
【０１２２】
このエアバッグ１０Ｊにあっては、凹部１３の中間部は、上部側ほど深くなっているので、第２５図のように、前傾姿勢にて凹部１３に進入してきた小柄乗員Ｐの頭部がこの凹部１３に深く入り込むようになる。これにより、小柄乗員Ｐの頭部が左右にずれ動くことなく、しっかりと凹部１３内に保持される。また、この凹部１３の最深部１３ｂよりも下部側においては、この凹部１３の最奥面が車両前方に向って傾斜しているので、小柄乗員Ｐの顔面が該最奥面に達したときに、この顔面が該最奥面と略々合致する。これにより、乗員の首に対する負荷が最小化される。
【０１２３】
なお、第１２〜２４図の変更例は、第２５図にも適用可能である。
【０１２４】
第２６図は、さらに別の実施の形態に係るエアバッグ１０Ｋの第３図と同様部分の縦断面図である。
【０１２５】
このエアバッグ１０Ｋにおいては、右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４との対峙面同士を縫合した縫目は、該対峙面の上部同士を縫合した上部縫目９０Ｓｕと、該対峙面の下部同士を縫合した下部縫目９０Ｓｂと、該対峙面の中間部同士を縫合した中間部縫目９０Ｓｍとからなる。
【０１２６】
上部縫目９０Ｓｕは、凹部１３の上部側において環状に延在している。下部縫目９０Ｓｂは、凹部１３の下部側において環状に延在している。中間部縫目９０Ｓｍは、凹部１３の中間部において略上下方向に延在している。なお、この実施の形態では、凹部１３の上部側及び下部側の開口９１，９２が省略されているが、開口９１，９２が設けられている場合には、該上部縫目９０Ｓｕ及び下部縫目９０Ｓｂは、それぞれ、この開口９１，９２を取り巻くように延設されてもよい。第２６図の通り、これらの縫目９０Ｓｕ，９０Ｓｂ，９０Ｓｍ同士は不連続となっている。中間部縫目９０Ｓｍは、上部縫目９０Ｓｕ及び下部縫目９０Ｓｂよりも車両前方側に位置している。なお、この実施の形態では、該中間部縫目９０Ｓｍの上端側は、上部縫目９０Ｓｕの車両前方側を通ってエアバッグ１０Ｋの上端付近まで延在しており、該中間部縫目９０Ｓｍの下端側は、下部縫目９０Ｓｂの車両前方側を通ってエアバッグ１０Ｋの下端付近まで延在している。
【０１２７】
このエアバッグ１０Ｋにおいては、これらの上部縫目９０Ｓｕ、中間部縫目９０Ｓｍ及び下部縫目９０Ｓｂがそれぞれ凹部１３の上部、中間部及び下部の最奥部となっている。
【０１２８】
この実施の形態では、該中間部縫目９０Ｓｍは、全体として、車両後方側へ突出するように湾曲している。ただし、この中間部縫目９０Ｓｍは、エアバッグ１０Ｋの乗員対向面に最も接近した部分にあっても、該上部縫目９０Ｓｕ及び下部縫目９０Ｓｂの双方に車両後方側から接する接線Ｔ３よりも車両前方側に位置している。従って、このように中間部縫目９０Ｓｍが車両後方側へ突出するように湾曲していても、凹部１３は、中間部の深さが上部及び下部よりも深くなっている。
【０１２９】
この実施の形態では、上部縫目９０Ｓｕと下部縫目９０Ｓｂとの中間付近における該中間部縫目９０Ｓｍの凸曲線に接する接線Ｔ４は、車両前方に向って傾斜している。この接線Ｔ４の水平面に対する仰角θは２５〜５０°特に３０〜４５°程度であることが好ましい。
【０１３０】
第２６図のその他の構成は第３図と同一であり、第２６図において第３図と同一符号は同一部分を示している。
【０１３１】
このエアバッグ１０Ｋにあっても、第１〜７図のエアバッグ１０と同様の作用効果が奏される。
【０１３２】
なお、第２６図においても、中間部縫目９０Ｓｍは、車両前方側へ突出するように湾曲していてもよい。また、中間部縫目９０Ｓｍは、略一直線状に延在していてもよい。
【０１３３】
第２７図は、さらに別の実施の形態に係るエアバッグ１０Ｌの第３図と同様部分の縦断面図である。
【０１３４】
このエアバッグ１０Ｌにおいては、右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４との対峙面同士を縫合した縫目は、該対峙面同士をその上部から下部まで連続して縫合した主縫目９０Ｓｍ’と、該対峙面の上部同士を縫合した上部縫目９０Ｓｕとからなる。
【０１３５】
この実施の形態でも、該上部縫目９０Ｓｕは、凹部１３の上部側において環状に延在している。主縫目９０Ｓｍ’は、凹部１３の上部から下部にかけて略上下方向に延在している。なお、この実施の形態でも、凹部１３の上部側及び下部側の開口９１，９２が省略されているが、開口９１が設けられている場合には、該上部縫目９０Ｓｕは、この開口９１を取り巻くように延設されてもよい。第２７図の通り、これらの縫目９０Ｓｕ，９０Ｓｍ’同士は不連続となっている。主縫目９０Ｓｍ’は、凹部１３の中間部においては、上部縫目９０Ｓｕよりも車両前方側に位置している。なお、この実施の形態でも、該主縫目９０Ｓｍ’の上端側は、上部縫目９０Ｓｕの車両前方側を通ってエアバッグ１０Ｌの上端付近まで延在している。
【０１３６】
凹部１３の中間部においては、該主縫目９０Ｓｍ’は、上部側ほど車両前方側となるように斜めに略一直線状に延在している。この部分の水平面に対する仰角θは、２５〜５０°特に３０〜４５°程度であることが好ましい。該主縫目９０Ｓｍ’の上端側及び下端側は、それぞれ、車両前方側に向うように略円弧状に湾曲している。この主縫目９０Ｓｍ’は、第２６図における中間部縫目９０Ｓｍと下部縫目９０Ｓｂとを一続きに形成した如きものとなっている。なお、該主縫目９０Ｓｍ’の下端側は、第２６図における下部縫目９０Ｓｂと同様に、環状となっていてもよい。凹部１３の下部側に開口９２が設けられている場合には、主縫目９０Ｓｍ’の下端側は、この開口９２を取り巻くように延設されてもよい。
【０１３７】
このエアバッグ１０Ｌにおいては、該上部縫目９０Ｓｕが凹部１３の上部の最奥部となっており、主縫目９０Ｓｍ’が凹部１３の中間部及び下部の最奥部となっている。該主縫目９０Ｓｍ’は、上端側が上部縫目９０Ｓｕよりも車両前方側に位置し、且つ下端側ほど車両後方側となるように斜めに延在しているので、凹部１３は、中間部の深さが上部及び下部よりも深くなっている。
【０１３８】
第２７図のその他の構成は第３図と同一であり、第２７図において第３図と同一符号は同一部分を示している。
【０１３９】
このエアバッグ１０Ｌにあっても、第１〜７図のエアバッグ１０と同様の作用効果が奏される。
【０１４０】
なお、第２７図においても、主縫目９０Ｓｍ’は、車両前方側へ突出するように湾曲していてもよく、あるいは車両後方側へ突出するように湾曲していてもよく、直線状であってもよい。上部縫目９０Ｓｕは省略されてもよい。
【０１４１】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態をもとりうる。
【０１４２】
上記のインサイドパネル２０及びアウトサイドパネル８０は、左右対称であることが好ましい。即ち、第２８図（ａ），（ｂ）のように、インサイドパネル２０を左右に長くかつ平たく平面上に広げた状態において、インサイドパネル２０のレフトサイド２０Ｌとライトサイド２０Ｒの糸目（基布組織糸の延在方向）は、該インサイドパネル２０のセンターライン（インサイドパネル２０の左右方向の中間を通る鉛直方向の線分）ＣＬ１に対し０°及び９０°とする（第２８図（ａ））か、あるいは４５°とする（第２８図（ｂ））。
【０１４３】
同様に、アウトサイドパネル８０についても、第２９図（ａ），（ｂ）の通り、左右に長く且つ平たく平面上に広げた状態において、該アウトサイドパネル８０のパネルの糸目は、該アウトサイドパネル８０のセンターライン（アウトサイドパネル８０の左右方向の中間を通る鉛直方向の線分）ＣＬ２に対し０°及び９０°（第２９図（ａ））とするか、あるいは４５°（第２９図（ｂ））とする。
【０１４４】
このように各パネル２０，８０の糸目を左右対称とすることにより、左半側エアバッグ１４と右半側エアバッグ１２とで強度が等しいものとなる。
【０１４５】
なお、仮に、双方のパネル２０，８０を、糸目が各々のセンターラインＣＬ１，ＣＬ２に対し同一方向（好ましくは０°及び９０°）となるように構成した場合には、両パネル２０，８０を第２８図（ａ）及び第２９図（ａ）の如く平たく広げて重ね合わせると、両パネル２０，８０の糸目は互いに平行となる。
【０１４６】
これに対し、上記の実施の形態においては、第３０図（ａ）の通り、エアバッグ１０を製作するに当り、インサイドパネル２０は、センターラインＣＬ１に沿って二つ折りされるのに対し、アウトサイドパネル８０は、その基端側のマウス面５０が、底面５０Ｂ、左右サイド面５０Ａ，５０Ｃ及び上面（フラップ５０Ｄ，５０Ｅ）を有し、且つエアバッグ先端側に向って開放した立体的な形状となるように折られる。
【０１４７】
このように一方のパネル２０を平面折りし、他方のパネル８０を立体折りして該パネル２０，８０同士を合体させた場合には、仮に両パネル２０，８０の糸目方向が各々のセンターラインＣＬ１，ＣＬ２に対し同一方向であっても、第３０図（ｂ）の通り、これらのパネル２０，８０の外周縁同士は、糸目が互いに異なる方向（非平行方向）を指向した状態で重なり合う。このように、パネル２０，８０同士を、糸目を非平行方向として縫合した場合には、糸目を平行にして縫合した場合に比べて、両パネル２０，８０同士の縫合強度が高くなる。
【０１４８】
なお、糸目を前記センターラインＣＬ１，ＣＬ２に対して０°及び９０°としたパネル２０又は８０にあっては、織布の反物からの基布取り効率が向上する。すなわち、単位長さの反物から切り出すことができるパネル２０又は８０の数が多くなる。
【符号の説明】
【０１４９】
１０，１０Ｂ〜１０Ｌ エアバッグ
１２ 右半側エアバッグ
１３ 凹部
１４ 左半側エアバッグ
１６ 基端室
２０，２０Ａ，２０Ｂ，２０Ｃ インサイドパネル
３０ 右アウト面
４０ 左アウト面
５０ マウス面
８０ アウトサイドパネル
９０Ｓ，９０Ｓ’，９０Ｓ’’，９１Ｓ，９２Ｓ，９３Ｓ，９４Ｓ，９５Ｓ，９６ａ，９６ｂ，９６Ｓ，９７ｃ，９０Ｓｕ，９０Ｓｍ，９０Ｓｂ，９０Ｓｍ’ 縫目
９１，９２，９４ 開口
９３，９４ 左右テザー
９５，９６，９７ 小パネルよりなる前後テザー
【技術分野】
【０００１】
本発明は、車両衝突時等に乗員を拘束するためのエアバッグ及びエアバッグ装置に係り、特に、膨張した状態において、エアバッグの乗員対向面に、上下方向の凹部が形成されるエアバッグ及びエアバッグ装置に関する。また、本発明はこのエアバッグ装置を備えた車両に関する。
【背景技術】
【０００２】
車両衝突時等に乗員を拘束するためのエアバッグとして、膨張した状態において、エアバッグの乗員対向面に、上下方向の凹部が形成されるエアバッグが特開２００６−１０３６５４に記載されている。同公報の００３９段落には、車両の前突時に、膨張したエアバッグの該凹部の両側の肩拘束部によって乗員の肩部が拘束され、乗員の頭部は、凹部に進入しつつ拘束される旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００６−１０３６５４号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
上記特開２００６−１０３６５４号のエアバッグにあっては、同号公報の図４の通り、凹部は上下方向の中間部が最も浅く、該中間部から上方及び下方に向って次第に深くなっている。
【０００５】
本発明は、車両の前突時に小柄な乗員を受け止めるのに好適なエアバッグ及びエアバッグ装置と、このエアバッグ装置を備えた車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明（請求項１）のエアバッグは、助手席乗員の前方に膨張するエアバッグであって、膨張した状態において乗員に対面して上下方向に延在した凹部が形成されるエアバッグにおいて、該凹部の上下方向の中間部における深さは、上部及び下部における該凹部の深さよりも大きいことを特徴とするものである。
【０００７】
請求項２のエアバッグは、請求項１において、該エアバッグは、車両前方側に配置された基端室と、該基端室に連なり、乗員前方の左側において膨張する左半側エアバッグと、該基端室に連なり、乗員前方の右側において膨張する右半側エアバッグとを有し、該左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分同士が結合されることにより前記凹部が形成されていることを特徴とするものである。
【０００８】
請求項３のエアバッグは、請求項２において、前記左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分同士が縫合によって結合されていることを特徴とするものである。
【０００９】
請求項４のエアバッグは、請求項３において、該縫合の縫目は、前記対面部分の上部同士を縫合した縫目（以下、上部縫目と称する。）と、該対面部分の中間部同士を縫合した縫目（以下、中間部縫目と称する。）と、該対面部分の下部同士を縫合した縫目（以下、下部縫目と称する。）とを有しており、エアバッグ膨張状態において、該中間部縫目は、少なくとも部分的に、該上部縫目及び下部縫目よりも、該エアバッグの乗員対向面から車両前方側に離隔していることを特徴とするものである。
【００１０】
請求項５のエアバッグは、請求項４において、該上部縫目、中間部縫目及び下部縫目は、略上下方向に延在した、連続した縫目であり、該中間部縫目は、少なくとも一部が前記乗員対向面から遠ざかるように湾曲していることを特徴とするものである。
【００１１】
請求項６のエアバッグは、請求項４において、少なくとも該上部縫目と中間部縫目とは不連続となっており、該中間部縫目の上端側は、該上部縫目よりも車両前方側に位置していることを特徴とするものである。
【００１２】
請求項７のエアバッグは、請求項３ないし６のいずれか１項において、前記凹部の前記中間部よりも車両前方側にあっては、エアバッグ膨張状態において左半側エアバッグと右半側エアバッグとが押し付け合わされたものとなるように構成されていることを特徴とするものである。
【００１３】
請求項８のエアバッグは、請求項３ないし７のいずれか１項において、該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの膨張時における左右幅を小さくするための左右テザーが設けられており、該左右テザーが前記縫合の縫目によって左半側エアバッグ又は右半側エアバッグに縫着されていることを特徴とするものである。
【００１４】
請求項９のエアバッグは、請求項１ないし８のいずれか１項において、エアバッグが膨張した状態において、凹部の上部における該エアバッグの乗員対向面からの該凹部の深さｄ１は５〜２００ｍｍであり、凹部の中間部における該乗員対向面からの該凹部の深さｄ２は２５〜４００ｍｍであり、凹部の下部における該乗員対向面からの該凹部の深さｄ３は５〜２００ｍｍであり、該凹部の上部及び下部の最奥部同士に接する接線からの該凹部の中間部の深さｄ４は、０〜２００ｍｍであることを特徴とするものである。
【００１５】
請求項１０のエアバッグは、請求項９において、前記中間部の凹部は、深さが２５〜４００ｍｍの部分であり、上下方向に１５０〜４００ｍｍ延在していることを特徴とするものである。
【００１６】
請求項１１のエアバッグは、請求項１１において、前記中間部の凹部においては、上部側ほど該凹部の深さが深くなっていることを特徴とするものである。
【００１７】
請求項１２のエアバッグは、請求項９ないし１１のいずれか１項において、前記中間部の凹部においては、少なくとも部分的に、その最奥部の鉛直面内における接線方向が車両前方に向って前傾していることを特徴とするものである。
【００１８】
請求項１３のエアバッグは、請求項１ないし１２のいずれか１項において、前記中間部の凹部を車両前方へ引っ張るための前後テザーが設けられていることを特徴とするものである。
【００１９】
本発明（請求項１４）のエアバッグは、助手席乗員の前方に膨張するエアバッグであって、膨張した状態において乗員に対面して上下方向に延在した凹部が形成されるエアバッグにおいて、該エアバッグは、車両前方側に配置された基端室と、該基端室に連なり、乗員前方の左側において膨張する左半側エアバッグと、該基端室に連なり、乗員前方の右側において膨張する右半側エアバッグとを有し、該左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分同士が縫合によって結合されることにより前記凹部が形成されており、該縫合の縫目は、該対面部分同士を下部から上部まで連続して縫合した縫目（以下、主縫目と称する。）を有しており、該主縫目は、上部側ほど車両前方側となるように延在していることを特徴とするものである。
【００２０】
請求項１５のエアバッグは、請求項１４において、前記主縫目は、少なくとも前記凹部の上下方向の中間部において、上部側ほど車両前方側となるように前傾した略直線状に延在していることを特徴とするものである。
【００２１】
請求項１６のエアバッグは、請求項１４又は１５において、前記縫合の縫目は、さらに、前記左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分の上部同士を縫合した縫目（以下、上部縫目と称する。）を有しており、該エアバッグ膨張状態において、該上部縫目は、前記主縫目の上端側よりも車両後方に配置されていることを特徴とするものである。
【００２２】
請求項１７のエアバッグは、請求項１ないし１６のいずれか１項において、該エアバッグは、車両のインストルメントパネルから乗員に接近するように車両後方へ向って膨張するものであり、該エアバッグに、該エアバッグが膨張した状態において該エアバッグを略上下方向に貫通する空洞部が設けられており、該空洞部は、該エアバッグが膨張した状態において、その下端側が、少なくとも部分的に、インストルメントパネルの車両後方側の端部よりも車両後方に位置するように構成されていることを特徴とするものである。
【００２３】
本発明（請求項１８）のエアバッグ装置は、かかる本発明のエアバッグと、該エアバッグを膨張させるインフレータとを備えたものである。
【００２４】
本発明（請求項１９）の車両は、かかる本発明のエアバッグ装置を搭載してなるものである。
【発明の効果】
【００２５】
本発明（請求項１，１８）のエアバッグ及びエアバッグ装置にあっては、該エアバッグの乗員対向面に上下方向に延在する凹部が設けられており、この凹部の上下方向の中間部が上部及び下部よりも深いものとなっている。小柄な乗員が助手席に座っていたときに前突が生じた場合、この小柄な乗員の頭部が、凹部の両側部分に挟まれるようにして該凹部の中間部付近に入り込むので、頭部の前方移動速度が急激に減速することがない。乗員の左右の胸は、凹部の両側部分で受け止められる。
【００２６】
本発明の一態様に係るエアバッグは、乗員の左半身の前方において膨張する左半側エアバッグ及び右半身の前方において膨張する右半側エアバッグを有し、この左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分同士が結合されることにより凹部が形成されている。
【００２７】
自動車の前突時にこのエアバッグが膨張した場合、左半側エアバッグが乗員の左胸を受け止め、右半側エアバッグが乗員の右胸を受け止める。この左右の胸には硬くて強い肋骨が存在する。このエアバッグは、この肋骨を介して乗員を受承し、衝撃を吸収する。このエアバッグは、膨張した状態において左半側エアバッグと右半側エアバッグの先端部同士の間に谷間状の凹部が存在し、乗員の胸中央の胸骨付近は該凹部に対峙する。従って、乗員の身体がエアバッグに突っ込んでいった場合、胸の胸骨付近は、エアバッグからそれ程大きな反力を受けないようになり、この胸骨付近の負担が小さくなる。
【００２８】
本発明においては、左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分同士を縫合によって結合してもよい。
【００２９】
この縫合の縫目として、左半側エアバッグと右半側エアバッグとの対面部分の上部同士を縫合した上部縫目と、該対面部分の中間部同士を縫合した中間部縫目と、該対面部分の下部同士を縫合した下部縫目とを設け、この中間部縫目を、少なくとも部分的に、該上部縫目及び下部縫目よりもエアバッグの乗員対向面から車両前方側に離隔させた構成としてもよい。この場合、凹部の最奥部はこれらの縫目となる。また、中間部縫目が少なくとも部分的に上部縫目及び下部縫目よりもエアバッグの乗員対向面から車両前方側に離隔していることにより、凹部は、上部及び下部よりも中間部が深くなる。
【００３０】
これらの上部縫目、中間部縫目及び下部縫目を、略上下方向に延在した、連続した縫目としてもよい。この場合、該中間部縫目の少なくとも一部を乗員対向面から遠ざかるように湾曲させることにより、凹部は、上部及び下部よりも中間部が深くなる。
【００３１】
少なくとも上部縫目と中間部縫目とを不連続としてもよい。この場合、中間部縫目の上端側を上部縫目よりも車両前方側に位置させることにより、凹部は、上部よりも中間部が深くなる。
【００３２】
本発明の別の一態様にあっては、凹部の中間部よりも車両前方側にあっては、エアバッグ膨張状態において左半側エアバッグと右半側エアバッグとが押し付け合わされた状態となるように構成されている。車両衝突時に乗員の頭部がこの中間部に当ったときに、該頭部は、左半側エアバッグと右半側エアバッグとを押し分けるようにして左半側エアバッグと右半側エアバッグとの間に入り込み、この間に衝撃が吸収される。
【００３３】
本発明では、左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの膨張時における左右幅を小さくするように左右テザーを設けてもよい。このようにすると、膨張完了状態において左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの車両後方側が乗員に向って突き出した形状をとるようになり、前記凹部の左右幅を小さくすることができる。また、左半側エアバッグと右半側エアバッグとが押し付け合わされた領域の車両前後方向長さを大きくすることも可能である。
【００３４】
本発明においては、凹部の上部におけるエアバッグの乗員対向面からの該凹部の深さｄ１は５〜２００ｍｍであり、凹部の中間部における該乗員対向面からの該凹部の深さｄ２は２５〜４００ｍｍであり、凹部の下部における該乗員対向面からの該凹部の深さｄ３は５〜２００ｍｍであり、該凹部の上部及び下部の最奥部同士に接する接線からの該凹部の中間部の深さｄ４は、０〜２００ｍｍであることが好ましい。このように構成することにより、小柄な乗員の頭部を該凹部の中間部付近に深く入り込ませることができる。
【００３５】
本発明の一態様にあっては、中間部の凹部は、深さが２５〜４００ｍｍの部分であり、上下方向に１５０〜４００ｍｍ延在している。
【００３６】
本発明の一態様にあっては、中間部の凹部においては、上部側ほど該凹部の深さが深くなっている。このように構成することにより、前傾姿勢にて凹部に進入してきた小柄乗員の頭部がこの凹部に深く入り込むようになる。これにより、小柄乗員の頭部が左右にずれ動くことなく、しっかりと凹部内に保持される。
【００３７】
本発明においては、凹部の中間部においては、少なくとも部分的に、その最奥部の鉛直面内における接線方向が車両前方に向って前傾するものとなっていることが好ましい。この場合、小柄乗員の顔面が凹部の最奥部に達したときに、顔面がこの接線方向と略々合致するため、小柄乗員の首に対する負荷が最小化される。
【００３８】
助手席に大柄な乗員が座っている状態で前突が生じた場合、乗員の頭部はエアバッグ上部の凹部で受け止められ、左右の胸は凹部の両側部分で受け止められる。
【００３９】
本発明では、中間部の凹部を前後テザーで車両前方に引っ張ることにより、凹部の上下方向中間部を凹部の上部及び下部よりも深くするように構成してもよい。
【００４０】
本発明（請求項１４，１８）のエアバッグ及びエアバッグ装置にあっては、該エアバッグは、乗員の左半身の前方において膨張する左半側エアバッグ及び右半身の前方において膨張する右半側エアバッグを有し、この左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分同士が縫合によって結合されることにより、該エアバッグの膨張時に乗員に対面して上下方向に延在した凹部が形成されるように構成されている。この縫合の縫目は、該対面部分同士を下部から上部まで連続して縫合した主縫目を有しており、該主縫目は、上部側ほど車両前方側となるように延在したものとなっている。即ち、このエアバッグが膨張した場合には、凹部の深さは、該凹部の上部側ほど深くなる。小柄な乗員が助手席に座っていたときに前突が生じた場合、この小柄な乗員の頭部が、凹部の両側部分に挟まれるようにして該凹部の中間部付近に入り込むので、頭部の前方移動速度が急激に減速することがない。乗員の左右の胸は、凹部の両側部分で受け止められる。
【００４１】
本発明の一態様に係るエアバッグにおいては、前記主縫目は、少なくとも凹部の上下方向の中間部において、上部側ほど車両前方側となるように前傾した略直線状に延在している。このエアバッグにあっては、凹部の中間部においては、その最奥部は、該主縫目に沿って前傾したものとなっているので、小柄乗員の顔面が凹部の最奥部に達したときに、顔面がこの最奥部の延在方向と略々合致するため、小柄乗員の首に対する負荷が最小化される。また、この凹部の中間部においては、上部側ほど該凹部の深さが深くなっているので、前傾姿勢にて凹部に進入してきた小柄乗員の頭部がこの凹部に深く入り込むようになる。これにより、小柄乗員の頭部が左右にずれ動くことなく、しっかりと凹部内に保持される。
【００４２】
この縫合の縫目は、さらに、該主縫目の上端側よりも車両後方において左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分の上部同士を縫合した上部縫目を有していてもよい。この場合、凹部の上部は中間部よりも浅くなる。助手席に大柄な乗員が座っている状態で前突が生じた場合、乗員の頭部はエアバッグ上部の凹部で受け止められ、左右の胸は凹部の両側部分で受け止められる。このようにエアバッグ上部において凹部が浅くなっていることにより、大柄な乗員の頭部を拘束するのに必要なエアバッグの前後ストロークを確保することができる。
【００４３】
本発明では、エアバッグに、膨張した該エアバッグを略上下方向に貫通する空洞部を設け、エアバッグが膨張した状態において、該空洞部の下端側が少なくとも部分的にインストルメントパネル（以下、インパネと略すことがある。）の車両後方側の端部よりも車両後方に位置するように構成してもよい。これにより、エアバッグが膨張するときに、インパネの近傍に物体が存在していても、この物体が空洞部に呑み込まれるようになる。
【図面の簡単な説明】
【００４４】
【図１】実施の形態に係るエアバッグの斜視図である。
【図２】図１のエアバッグの水平断面図である。
【図３】図２のIII−III線断面図である。
【図４】図３のIV−IV線断面図である。
【図５】図３のＶ−Ｖ線断面図である。
【図６】図３のVI−VI線断面図である。
【図７】図１のエアバッグの側面図である。
【図８】インサイドパネルの平面図である。
【図９】アウトサイドパネルの平面図である。
【図１０】図１のエアバッグの分解斜視図である。
【図１１】図１のエアバッグの分解斜視図である。
【図１２】インサイドパネルの構成図である。
【図１３】インサイドパネルの構成図である。
【図１４】インサイドパネルの構成図である。
【図１５】図１のエアバッグの膨張時の側面図である。
【図１６】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図１７】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図１８】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図１９】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図２０】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図２１】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図２２】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の水平方向の断面図である。
【図２３】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図２４】図２３のXXIV−XXIV断面図である。
【図２５】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図２６】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図２７】別の実施の形態に係るエアバッグの膨張時の前後方向の縦断面図である。
【図２８】インサイドパネルの糸目方向を示す平面図である。
【図２９】アウトサイドパネルの糸目方向を示す平面図である。
【図３０】インサイドパネルとアウトサイドパネルとの分解斜視図及びインサイドパネル及びアウトサイドパネルの外周縁同士の縫合部付近の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【００４５】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【００４６】
第１図は本発明の実施の形態に係るエアバッグの膨張状態における上方からの斜視図、第２図はこのエアバッグの水平断面図、第３図は第２図のIII−III線断面図、第４，５，６図は第３図のIV−IV線、Ｖ−Ｖ線、VI−VI線断面図、第７図は膨張したエアバッグの側面図、第８図はインサイドパネルの平面図、第９図はアウトサイドパネルの平面図、第１０図、第１１図はこのエアバッグの分解斜視図である。
【００４７】
このエアバッグ１０は、乗員前方の右側において膨張する右半側エアバッグ１２と、乗員前方の左側において膨張する左半側エアバッグ１４と、該右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の基端側に連通する基端室１６とを有する。左半側エアバッグ１４と右半側エアバッグ１２とは、それらの対峙面同士が縫目９０Ｓによって縫合されている。
【００４８】
右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４とは、各々の対峙面に設けられた第１の開口９１及び第２の開口９２によって連通している。第１の開口９１はエアバッグ１０の上部に設けられ、第２の開口９２は下部に設けられている。開口９１の開口面積は７５００〜５００００ｍｍ２特に２００００〜４００００ｍｍ２程度が好適であり、開口９２の開口面積は１２００〜３２０００ｍｍ２特に１９００〜２００００ｍｍ２程度が好適である。縫目９０Ｓは、開口９１，９２を取り巻くように延在している。
【００４９】
このエアバッグ１０が膨張した状態にあっては、右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４の先端部同士の間にタイパネルなどの架渡部材は存在せず、両バッグ１２，１４の先端部同士に間に上下方向に延在する凹部１３が形成される。この凹部１３は、乗員に向って（即ち、第１図〜第７図において右方に向って）開放している。凹部１３の最奥部は上記の縫目９０Ｓである。
【００５０】
このエアバッグ１０が膨張完了した状態にあっては、第２図の通り、右半側エアバッグ１２の最先端１２ｔと左半側エアバッグ１４の最先端１４ｔとの間隔Ｗは１５０〜４５０ｍｍ特に１７０〜４３０ｍｍであることが好ましい。
【００５１】
第３図の通り、前記縫目９０Ｓは、凹部１３の上部付近（開口９１の後縁側）においては車両後方側へ突出するように湾曲し、凹部１３の中間部付近（開口９１，９２同士の中間付近）においては車両前方側へ突出するように湾曲し、凹部１３の下部付近（開口９１の後縁側）においては車両後方側へ突出するように湾曲している。即ち、この実施の形態では、該縫目９０Ｓは、略上下方向に延在しており、且つ該凹部１３の中間部において一部が乗員対向面から遠ざかるように湾曲したものとなっている。符号Ｔ１は、この凹部１３の上部側における縫目９０Ｓの凸曲線と、凹部１３の下部側における縫目９０Ｓの凸曲線との双方に接する（即ち、凹部１３の上部及び下部の最奥部同士に接する）接線を示している。
【００５２】
この実施の形態では、縫目９０Ｓがこのように延在していることにより、凹部１３は、上下方向の中間部で最も深く、それから上方及び下方に向って徐々に浅くなっている。
【００５３】
第４〜６図の通り、エアバッグ１０の膨張完了状態において、凹部１３の上部における右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の最先端１２ｔ，１４ｔからの凹部１３の深さｄ１は５〜２００ｍｍ特に３０〜１７０ｍｍが好適であり、凹部１３の中間部における該最先端１２ｔ，１４ｔからの該凹部１３の深さｄ２は２５〜４００ｍｍ特に５０〜３５０ｍｍが好適であり、凹部１３の下部における該最先端１２ｔ，１４ｔからの該凹部１３の深さｄ３は５〜２００ｍｍ特に３０〜１７０ｍｍが好適である。
【００５４】
また、第３図の通り、凹部１３の中間部における前記接線Ｔ１からの該凹部１３の深さｄ４は、０〜２００ｍｍ特に４０〜１７０ｍｍであることが好ましい。
【００５５】
凹部１３の中間部においては、深さが２５〜４００ｍｍである範囲Ｌ（第７図）が上下方向に１５０〜４００ｍｍ特に２００〜３００ｍｍ延在することが好ましい。なお、この範囲を示す長さＬは、乗員対向面に沿う長さである。この範囲Ｌの下端の位置と、ＦＭＶＳＳのＡＦ０５タイル（アメリカ合衆国Federal Motor Vehicle Safety Standardに規定するアメリカ成人女性の小さい方から５％の体格）の小柄な乗員ダミーのヒップポイントＨＰとの高低差ｈ１が２４０〜４６０ｍｍであることが好ましい。また、この範囲Ｌの上端と、該ヒップポイントＨＰとの高低差ｈ２が４６０〜６７０ｍｍであることが好ましい。
【００５６】
この実施の形態では、上記範囲Ｌの上下方向の中間においては、該凹部１３の最奥部の鉛直面内における接線方向Ｔ２（第３図）は、車両前方に向って傾斜している。この接線方向Ｔ２の傾斜角度（水平面に対する仰角）θは２５〜５０°特に３０〜４５°程度であることが好ましい。
【００５７】
なお、第３，７図においては、縫目９０Ｓは、上記範囲Ｌの上端付近から下端付近にかけて全体的に車両前方側へ凸の略円弧状に湾曲しており、これにより、凹部１３は、上下方向の中間部で最も深く、それから上方及び下方に向って徐々に浅くなっているが、縫目９０Ｓの形状及び凹部１３の最深部の位置はこれに限定されない。例えば、縫目９０Ｓは、略く字形や略７字形（第３，５図においては左右逆向きの略７字形）等の形状に延設されてもよい。また、凹部１３は、例えばその上部の下側（即ち上記範囲Ｌの上端近傍）において急に深くなり、そこから下部側に向って徐々に浅くなる形状、即ち凹部１３が中間部において上部側ほど深くなる形状であってもよい。縫目９０Ｓは、凹部１３の上部、中間部及び下部にわたって連続していなくてもよい。即ち、例えばこの凹部１３の上部と中間部との間、及び中間部と下部との間の少なくとも一方で縫目９０Ｓが不連続となっていてもよい。また、この凹部１３の中間部において、縫目９０Ｓは、必ずしも乗員対向面から遠ざかるように湾曲していなくてもよい。即ち、この凹部１３の中間部の深さが凹部１３の上部及び下部よりも深くなっていれば、該中間部において、縫目９０Ｓは、少なくとも一部が乗員対向面に接近するように湾曲していてもよく、一直線状に延在していてもよい。このように構成されたエアバッグの一例を第２５〜２７図に示し、後で詳しく説明する。
【００５８】
この実施の形態では、右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の上下方向の中間付近かつ前後方向の中間付近に、それぞれ、エアバッグ１０の左右方向に延在する左右テザー９３，９４が設けられている。この左右テザー９３，９４によって右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の膨張時の左右幅を規制することにより、各バッグ１２，１４の乗員側の先端部分を乗員方向に、より長く突出させ、凹部１３をより深くすることができる。また、右半側エアバッグ１２の最先端部１２ｔと左半側エアバッグ１４の最先端部１４ｔとの間隔Ｗを規制することにより、確実に乗員の肋骨をこれらのエアバッグ１２，１４によって拘束することができ、胸骨への負担が小さくなる。
【００５９】
右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の外側面、即ち右アウト面４０及び左アウト面３０にはベントホール１８が設けられている。
【００６０】
このエアバッグ１０のパネル構成について第８図〜第１１図を参照して以下に説明する。なお、第１０，１１図は、このエアバッグ１０を各パネルに分解した分解斜視図である。
【００６１】
このエアバッグ１０の外殻は、インサイドパネル２０とアウトサイドパネル８０とで構成されている。
【００６２】
インサイドパネル２０は、略瓢箪形の細長いパネルであり、第１０，１１図の通り、中央で２つ折りされることによりライトサイド２０Ｒとレフトサイド２０Ｌが形成される。このインサイドパネル２０は、ライトサイド２０Ｒが右半側エアバッグ１２の内側面を構成し、レフトサイド２０Ｌが左半側エアバッグ１４の内側面を構成する。インサイドパネル２０は、レフトサイド２０Ｌの下辺２８、先端辺２１、上辺２２、折り返し部付近の上辺２３、ライトサイド２０Ｒの上辺２４、先端辺２５、下辺２６、及び、該折り返し部付近の下辺２７によって全周の辺部が構成されている。
【００６３】
第９図〜第１１図の通り、アウトサイドパネル８０は、右半側エアバッグ１２の外側面を構成する右アウト面４０と、左半側エアバッグ１４の外側面を構成する左アウト面３０と、基端室１６を構成するためのマウス面５０とを有している。
【００６４】
該左アウト面３０及び右アウト面４０は、それぞれ、先端辺３１，４１、上辺３２，４２、及び下辺３４，４４によって外周の辺縁が構成されている。
【００６５】
マウス面５０は、左サイド面５０Ａ、底面５０Ｂ、右サイド面５０Ｃ、上面左サイドを構成する左フラップ５０Ｄ、上面右サイドを構成する右フラップ５０Ｅを有している。前記左アウト面３０の基端側は該左サイド面５０Ａに連なり、右アウト面４０の基端側は該右サイド面５０Ｃに連なっている。このマウス面５０は、各サイド面５０Ａ，５０Ｃが略三角形となるように折られ、且つ、エアバッグ先端側に向って開放している。
【００６６】
このマウス面５０は、略長方形状のフラップ５０Ｄ，５０Ｅ同士の対向辺５１，５２、フラップ５０Ｄ，５０Ｅの後側辺（フラップ後側辺）５３，５４、フラップ５０Ｄ，５０Ｅの前側辺５５，５６、該前側辺５５，５６に対向する前辺５７、及び底面５０Ｂの後側辺（底部後側辺）６０によって外縁が構成されている。
【００６７】
該フラップ後側辺５３，５４は、それぞれ左アウト面３０及び右アウト面４０の上辺３２，４２に連なり、底部後側辺６０の両端側は、それぞれ左アウト面３０及び右アウト面４０の下辺３４，４４に連なっている。
【００６８】
インサイドパネル２０のレフトサイド２０Ｌ及びライトサイド２０Ｒの上部には、それぞれ、左半側エアバッグ１４内と右半側エアバッグ１２内とを連通するための開口９１が設けられている。また、レフトサイド２０Ｌ及びライトサイド２０Ｒの下部にも、それぞれ、左半側エアバッグ１４内と右半側エアバッグ１２内とを連通するための開口９２が設けられている。
【００６９】
レフトサイド２０Ｌ及びライトサイド２０Ｒの各開口９１，９２同士の間には、それぞれ左右テザー９４の基端が縫目９４Ｓによって縫着されている。
【００７０】
アウトサイドパネル８０には、左右テザー９４に対峙する位置に左右テザー９３の基端が縫目９３Ｓによって縫着されている。
【００７１】
なお、第１０，１１図では、図面を明瞭とするために左右テザー９３，９４は図示が省略されている。
【００７２】
アウトサイドパネル８０の左右方向の中央部にはインフレータ１１５（第７図）からのガス導入用の開口であるマウス７０が設けられている。
【００７３】
このエアバッグ１０を製作するには、第１０，１１図のように、まずマウス面５０のフラップ５０Ｄ，５０Ｅの対向辺５１，５２同士を縫合する。第１１図の５１Ｓはこの縫合の縫目を示している。
【００７４】
次に、インサイドパネル２０のレフトサイド２０Ｌとライトサイド２０Ｒとを重ね合わせるようにインサイドパネル２０を二ツ折りにし、開口９１，９２を取り巻く縫目９０Ｓによって両サイド２０Ｌ，２０Ｒを縫合する。次いでアウトサイドパネル８０の左アウト面３０とインサイドパネル２０のレフトサイド２０Ｌとを対面させ、先端辺２１，３１同士、上辺２２，３２同士、下辺２８，３４同士をそれぞれ縫合すると共に、アウトサイドパネル８０の右アウト面４０とインサイドパネル２０のライトサイド２０Ｒとを対面させ、先端辺２５，４１同士、上辺２４，４２同士、下辺２６，４４同士を縫合する。また、アウトサイドパネル８０のマウス面５０のフラップ後側辺５３，５４をインサイドパネル２０の折り返し部付近の上辺２３付近と縫合し、該マウス面５０の底部後側辺６０を折り返し部付近の下辺２７付近と縫合する。
【００７５】
次いで、左右テザー９３，９４の先端同士を縫目９５Ｓ（第２，５図）によって縫合する。
【００７６】
これらの縫合により、エアバッグ１０（第１図）を表裏逆にした状態、即ち、縫い合せ代がエアバッグの表側に露出した状態となる。第１１図の通り、マウス面５０のフラップ前側辺５５，５６と前辺５７とは、まだ縫合されておらず、この状態では開放口Ｍとなっている。
【００７７】
そこで、この開放口Ｍを通してエアバッグを表裏反転させる。この開放口Ｍを縫目５０Ｓ（第１，２図）で縫合することにより、第１図のエアバッグ１０となる。
【００７８】
なお、第２図の通り、基端室１６の底面５０Ｂに、インフレータ１１５（第７図）からのガス導入用の開口（マウス）７０が配置される。
【００７９】
このエアバッグ１０は、２枚のパネル２０，８０により外殻が構成されるため、縫合の手間が容易である。
【００８０】
このエアバッグ１０は、車両衝突時に自動車の助手席乗員を拘束するために、助手席用エアバッグ装置に装着される。
【００８１】
第７図の通り、該助手席用エアバッグ装置は、インストルメントパネル１１０のトップ面に設置された、エアバッグ１０を収容するための容器状のケース（コンテナ）１１４と、エアバッグ１０を膨張させるためのインフレータ１１５等を備えている。該インフレータ１１５はケース１１４に配置されている。エアバッグ１０が折り畳まれてこのケース１１４内に収容されている。そして、このエアバッグ１０の折り畳み体を覆うようにケースにリッドが装着されている。該リッドは、エアバッグ１０が膨張するときに該エアバッグ１０からの押圧力によって開裂するようになっている。第７図の符号１２０はウィンドウシールドを示す。
【００８２】
このエアバッグ装置の作動は次の通りである。
【００８３】
このエアバッグ装置を搭載した自動車が衝突した場合、インフレータ１１５がガス噴出作動する。このインフレータ１１５からのガスは、まず基端室１６を膨張させ、次いで右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４内に流入してこれらを膨張させる。
【００８４】
このエアバッグ１０にあっては、先に膨張した基端室１６は、インストルメントパネル１１０の上面に接し、姿勢が安定する。このため、右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４は、膨張完了時だけでなく膨張途中時でも姿勢が安定する。
【００８５】
また、膨張した基端室１６から右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４にガスが略均等に供給されると共に、右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４の先端側同士が開口９１，９２によって連通されているので、該右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４の双方が膨張初期の段階からスムーズに且つ左右略均等に膨張するようになる。例えば、開口９１，９２が設けられていないと、右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の内圧が不均一となることで該右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の膨張が不均一となり、これによってエアバッグ１０の展開挙動が不安定になる可能性があるが、開口９１，９２を設けることにより、右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の不均一な展開及び膨張時の暴れが抑制される。
【００８６】
エアバッグ１０が膨張完了した状態において、乗員対向面の左右方向の中央に、上下方向に延在した凹部１３が形成される。即ち、右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４の先端部同士の間に、上下方向に延在した谷間状の凹部１３が形成され、この凹部１３が乗員に向って開放している。
【００８７】
このエアバッグ１０では、前記の通り、左右テザー９３，９４が設けられており、右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の膨張完了時の左右幅が小さい。また、エアバッグ１０の膨張完了時に、右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の乗員側の最先端１２ｔ，１４ｔ付近が乗員に向って突き出した形状となる。これにより、凹部１３の深さｄ１〜ｄ３が大きなものとなる。また、凹部１３の左右幅を小さくすることができる。
【００８８】
膨張したエアバッグ１０に乗員が突っ込んできた場合、膨張した右半側エアバッグ１２が、助手席の左右方向の中央に座っている乗員Ｐの右胸を受け止め、膨張した左半側エアバッグ１４が左胸を受け止め、胸骨付近は凹部１３に対峙する。このため、胸骨付近に加えられるエアバッグ受承時の反力が小さなものとなる。頭部は、凹部１３に入り込んで受け止められる。
【００８９】
このエアバッグ１０にあっては、凹部１３の上下方向の中間部の深さｄ２が上部の深さｄ１及び下部の深さｄ３よりも大きいものとなっている。ＦＭＶＳＳのＡＦ０５タイル程度の小柄な乗員が助手席に座っていたときに前突が生じた場合、この小柄な乗員の頭部が中間部の深い凹部１３に受け止められる。乗員の左右の胸や肩付近は、上記の通り右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４の下部に受け止められる。小柄な乗員の場合、質量が小さいので、シートベルト着用時には、該シートベルトのショルダーウェビングの拘束力が作用することにより、胸の前方移動速度は比較的小さい。小柄な乗員の頭部は胸に比べて相対的に大きな速度で前方に移動する。この頭部が、両側から右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４とに挟まれるようにして凹部１３の中間部付近に入り込むので、この頭部の前方移動速度が急激に減速することがなく、胸と頭部がほぼ同挙動にて前方移動し、エアバッグ１０を押し縮める。これにより、小柄な乗員の首に加えられる入力が最小化される。
【００９０】
なお、凹部１３の最奥部の接線方向Ｔ２が前傾していると、ＡＦ０５タイル程度の小柄乗員の顔面が凹部１３の最奥部に達したときに、顔面が接線方向Ｔ２と略々合致するため、乗員の首に対する負荷が最小化される。
【００９１】
助手席にＦＭＶＳＳのＡＭ５０タイル（アメリカ成人男性の平均的体格）程度の大柄な乗員が座っている状態で前突が生じた場合、乗員の頭部はエアバッグ１０の乗員対向面の上部で受け止められ、胸や肩はエアバッグ１０の上下方向中間部で受け止められる。大柄な乗員は、質量が大きいので、小柄乗員の場合よりも大きなエネルギーにて前方移動する。このエアバッグ１０の上部では、凹部１３が浅くなっており、頭部が凹部１３に入り込んだときに、ほぼ同時に左右の胸、肩も右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４に当接する。そして、頭部と胸、肩とが一体的に、エアバッグ１０を押し縮めながら前方移動する。エアバッグ１０の上部において凹部１３が浅くなっていることにより、頭部を拘束するのに必要なエアバッグ１０の前後ストロークを確保することができるため、大柄な乗員に加えられる衝撃が吸収される。
【００９２】
なお、この実施の形態においては、第３図の通り、シーム９０Ｓと基端室１６との間における右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４との間に、上下方向に貫通する空洞部９０Ｖが存在する。この空洞部９０Ｖは、エアバッグ１０の膨張完了状態において、その下端側が少なくとも部分的にインパネ１１０の最後端部１１０ａよりも車両後方側に位置するように形成されている。即ち、エアバッグ１０の膨張完了状態においては、この空洞部９０Ｖの下端側の開口部が、少なくとも部分的に、インパネ１１０の最後端部１１０ａよりも車両後方において該エアバッグ１０の下面に露呈する。従って、第１５図のように、エアバッグ１０が膨張するときに、インパネ１１０の近傍に物体Ｃが存在していても、この物体Ｃが空洞部９０Ｖに呑み込まれるようになる。
【００９３】
上記実施の形態では、右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４とは対称形状となっているが、非対称形状であってもよい。また、右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４の容積は同一であってもよく、異なってもよい。
【００９４】
上記実施の形態のエアバッグ１０では２個の開口９１，９２が設けられているが、１個又は３個以上の開口が設けられてもよく、開口は省略されてもよい。また、開口の大きさを上記説明以外としてもよい。
【００９５】
第１６図〜第２７図を参照してさらに別の実施の形態について説明する。
【００９６】
第１６図は、下部の開口９２を省略し、上部の開口９１のみを設けた実施の形態に係るエアバッグ１０Ｂの第３図と同様部分の縦断面図である。
【００９７】
第１７図は、上部の開口９１を省略し、下部の開口９２のみを設けた実施の形態に係るエアバッグ１０Ｃの第３図と同様部分の縦断面図である。
【００９８】
第１８図は、上部の開口９１と下部の開口９２との間に中間の開口９１ｍを設けた実施の形態に係るエアバッグ１０Ｄの第３図と同様部分の縦断面図である。
【００９９】
第１９図は、上部及び下部の開口９１，９２を省略した実施の形態に係るエアバッグ１０Ｅの第３図と同様部分の縦断面図である。
【０１００】
第１６図〜第１９図のその他の構成は第３図と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【０１０１】
本発明では、縫目９０Ｓは、閉じたループ形ではなく、途中で途切れたものであってもよい。第２０図及び第２１図は、このような実施の形態に係るエアバッグの第３図と同様部分の縦断面図である。
【０１０２】
第２０図のエアバッグ１０Ｆでは、縫目９０Ｓ’は、前記縫目９０Ｓから車両前方側の上下方向延在部を部分的に省略したものである。このエアバッグ１０Ｆは、上記エアバッグ１０Ｅと同じく開口９１，９２のいずれもが省略されている。その他の構成は第３図と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【０１０３】
第２１図のエアバッグ１０Ｇでは、上部の開口９１が設けられている。縫目９０Ｓ’’は、第２０図の縫目９０Ｓ’の上部側を延長し、開口９１を周回して取り巻くように構成されている。その他の構成は第２０図と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【０１０４】
本発明では、右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４が、凹部１３の中間部の奥側において、エアバッグ膨張状態において押し付け合わされるように構成してもよい。
【０１０５】
第２２図は、かかる実施の形態に係るエアバッグ１０Ｈの膨張状態における乗員側の略々水平方向の断面図であり、前記第５図と同様部分の断面を示している。
【０１０６】
この実施の形態では、縫目９０Ｓのうち乗員側の部分が、凹部１３の中間部において、前記第５図よりも若干奥側（車両前方側）に位置している。この縫目９０Ｓよりも乗員側にあっては、凹部１３の中間部の奥側領域Ｋにおいて、膨張した右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４とが押し付け合わされている。乗員Ｐの頭部は、車両前突時に該奥側領域Ｋに入り込み、右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４とを押し分けるようにして前方に移動し、この間に衝撃が吸収される。
【０１０７】
本発明では、左右テザーを縫目９０Ｓによって右半側エアバッグ１２及び左半側エアバッグ１４に縫合してもよい。第２３図は、かかるエアバッグ１０Ｉの第３図と同様部分の縦断面図である。第２４図は、第２３図のXXIV−XXIV線に沿う断面図である。このエアバッグ１０Ｉでは、左右テザー９４が縫目９０Ｓによってインサイドパネル２０に縫合されている。このように縫目９０Ｓによって左右テザー９４を縫合することにより、縫目９４Ｓを省略できる。
【０１０８】
なお、本発明では、左右テザー９３，９４は、インサイドパネル２０及びアウトサイドパネル８０と同様に、ナイロン等の合成繊維の織布よりなる基布の一方の面にシリコーン樹脂等のコーティングを施したコート布にて構成されることが好ましい。
【０１０９】
このようなコート布にて左右テザー９３，９４を構成した場合、左右テザー９３，９４の樹脂コーティング面が車両前方を向くようにするのが好ましい。これにより、インフレータからの熱いガスが左右テザー９３，９４に当る場合でも、左右テザー９３，９４の耐熱性が高いものとなる。
【０１１０】
上記第１図〜第１５図等の実施の形態では開口９１，９２が独立して離隔して設けられているが、第１２図〜第１４図のインサイドパネル２０Ａ，２０Ｂ，２０Ｃのように、開口９１，９２を繋げた形状の細長い開口９４を設け、この開口９４を横断する小パネルよりなる前後テザーを設けてもよい。
【０１１１】
第１２図（ａ），（ｂ）のインサイドパネル２０Ａの開口９４は、途中がくびれた瓢箪形である。この開口９４のくびれた部分を小パネルよりなる前後テザー９５が横断し、第１２図（ｂ）の通り、開口９４の車両前側及び車両後側の縁部にそれぞれ縫目９５Ｓによって縫着されている。
【０１１２】
第１３図（ａ）のインサイドパネル２０Ｂは、この開口９４のくびれた部分の車両前側及び車両後側の縁部にそれぞれ小パネル９６の基端側が縫目９６ａによって縫着されている。第１３図（ｂ）のように、この小パネル９６，９６の先端側同士が縫目９６ｂによって縫着されている。即ち、小パネル９６，９６を連結した小パネル連結体よりなる前後テザーが開口９４を横断している。
【０１１３】
第１４図のインサイドパネル２０Ｃでは、開口９４のくびれた部分の車両後側の縁部及び車両前側の縁部からそれぞれ小パネル９７ａ，９７ｂが突設されている。小パネル９７ａ，９７ｂは、インサイドパネル２０Ｃの基布と一連一体に設けられている。第１４図（ｂ）のように、この小パネル９７ａ，９７ｂの先端同士が縫目９７ｃによって縫着されている。即ち、小パネル９７ａ，９７ｂの連結体よりなる前後テザーが開口９４を横断している。
【０１１４】
これらのインサイドパネル２０Ａ〜２０Ｃを用いて製作されたエアバッグも、上記実施の形態のエアバッグと同様の作用効果を奏する。なお、インサイドパネル２０Ａ〜２０Ｃの前後テザー９５や、小パネル９６又は９７の連結体よりなる前後テザーの開口横断方向の長さを短くすることにより、凹部１３の中間部の深さｄ２を大きくすることができる。
【０１１５】
第２５図は、さらに別の実施の形態に係るエアバッグ１０Ｊの第３図と同様部分の縦断面図である。
【０１１６】
このエアバッグ１０Ｊにおいては、凹部１３の中間部は、上部側ほど深くなっている。
【０１１７】
即ち、この実施の形態では、前記縫目９０Ｓの車両後方側の上下方向延在部は、凹部１３の上部では、開口９１の後縁に沿って車両後方側へ突出するように湾曲しており、凹部１３の中間部（即ち前記範囲Ｌ）では、該開口９１の近傍（即ち前記範囲Ｌの上端近傍）において該開口９１の下縁に沿うようにして車両後方側へ突出するように湾曲し、そこから下方に向って徐々に車両後方側となるように斜めに延在し、凹部１３の下部では、開口９２の後縁に沿って車両後方側へ突出するように湾曲している。即ち、この縫目９０Ｓの車両後方側の上下方向延在部は、凹部１３の中間部において、略７字形（第２５図においては左右逆向きの略７字形）に延設されている。これにより、凹部１３は、その上部の下側（即ち前記範囲Ｌの上端近傍）において急に深くなり、そこから下方に向って徐々に浅くなっている。
【０１１８】
このエアバッグ１０Ｊにおける前記範囲Ｌの上端から凹部１３の最深部１３ｂまでの間隔ｑは、０〜２５０ｍｍ特に０〜１５０ｍｍであることが好ましい。
【０１１９】
このエアバッグ１０Ｊにおける該エアバッグ１０Ｊの乗員対向面からの凹部１３の最深部１３ｂの深さｄ２’は、２５〜４００ｍｍ特に５０〜３５０ｍｍであることが好ましい。
【０１２０】
縫目９０Ｓのうち、凹部１３の最深部１３ｂよりも下部側の下方且つ車両後方側へ斜めに延在した部分の水平面に対する仰角θは、２５〜５０°特に３０〜４５°程度であることが好ましい。
【０１２１】
第２５図のその他の構成は第３図と同一であり、第２５図において第３図と同一符号は同一部分を示している。
【０１２２】
このエアバッグ１０Ｊにあっては、凹部１３の中間部は、上部側ほど深くなっているので、第２５図のように、前傾姿勢にて凹部１３に進入してきた小柄乗員Ｐの頭部がこの凹部１３に深く入り込むようになる。これにより、小柄乗員Ｐの頭部が左右にずれ動くことなく、しっかりと凹部１３内に保持される。また、この凹部１３の最深部１３ｂよりも下部側においては、この凹部１３の最奥面が車両前方に向って傾斜しているので、小柄乗員Ｐの顔面が該最奥面に達したときに、この顔面が該最奥面と略々合致する。これにより、乗員の首に対する負荷が最小化される。
【０１２３】
なお、第１２〜２４図の変更例は、第２５図にも適用可能である。
【０１２４】
第２６図は、さらに別の実施の形態に係るエアバッグ１０Ｋの第３図と同様部分の縦断面図である。
【０１２５】
このエアバッグ１０Ｋにおいては、右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４との対峙面同士を縫合した縫目は、該対峙面の上部同士を縫合した上部縫目９０Ｓｕと、該対峙面の下部同士を縫合した下部縫目９０Ｓｂと、該対峙面の中間部同士を縫合した中間部縫目９０Ｓｍとからなる。
【０１２６】
上部縫目９０Ｓｕは、凹部１３の上部側において環状に延在している。下部縫目９０Ｓｂは、凹部１３の下部側において環状に延在している。中間部縫目９０Ｓｍは、凹部１３の中間部において略上下方向に延在している。なお、この実施の形態では、凹部１３の上部側及び下部側の開口９１，９２が省略されているが、開口９１，９２が設けられている場合には、該上部縫目９０Ｓｕ及び下部縫目９０Ｓｂは、それぞれ、この開口９１，９２を取り巻くように延設されてもよい。第２６図の通り、これらの縫目９０Ｓｕ，９０Ｓｂ，９０Ｓｍ同士は不連続となっている。中間部縫目９０Ｓｍは、上部縫目９０Ｓｕ及び下部縫目９０Ｓｂよりも車両前方側に位置している。なお、この実施の形態では、該中間部縫目９０Ｓｍの上端側は、上部縫目９０Ｓｕの車両前方側を通ってエアバッグ１０Ｋの上端付近まで延在しており、該中間部縫目９０Ｓｍの下端側は、下部縫目９０Ｓｂの車両前方側を通ってエアバッグ１０Ｋの下端付近まで延在している。
【０１２７】
このエアバッグ１０Ｋにおいては、これらの上部縫目９０Ｓｕ、中間部縫目９０Ｓｍ及び下部縫目９０Ｓｂがそれぞれ凹部１３の上部、中間部及び下部の最奥部となっている。
【０１２８】
この実施の形態では、該中間部縫目９０Ｓｍは、全体として、車両後方側へ突出するように湾曲している。ただし、この中間部縫目９０Ｓｍは、エアバッグ１０Ｋの乗員対向面に最も接近した部分にあっても、該上部縫目９０Ｓｕ及び下部縫目９０Ｓｂの双方に車両後方側から接する接線Ｔ３よりも車両前方側に位置している。従って、このように中間部縫目９０Ｓｍが車両後方側へ突出するように湾曲していても、凹部１３は、中間部の深さが上部及び下部よりも深くなっている。
【０１２９】
この実施の形態では、上部縫目９０Ｓｕと下部縫目９０Ｓｂとの中間付近における該中間部縫目９０Ｓｍの凸曲線に接する接線Ｔ４は、車両前方に向って傾斜している。この接線Ｔ４の水平面に対する仰角θは２５〜５０°特に３０〜４５°程度であることが好ましい。
【０１３０】
第２６図のその他の構成は第３図と同一であり、第２６図において第３図と同一符号は同一部分を示している。
【０１３１】
このエアバッグ１０Ｋにあっても、第１〜７図のエアバッグ１０と同様の作用効果が奏される。
【０１３２】
なお、第２６図においても、中間部縫目９０Ｓｍは、車両前方側へ突出するように湾曲していてもよい。また、中間部縫目９０Ｓｍは、略一直線状に延在していてもよい。
【０１３３】
第２７図は、さらに別の実施の形態に係るエアバッグ１０Ｌの第３図と同様部分の縦断面図である。
【０１３４】
このエアバッグ１０Ｌにおいては、右半側エアバッグ１２と左半側エアバッグ１４との対峙面同士を縫合した縫目は、該対峙面同士をその上部から下部まで連続して縫合した主縫目９０Ｓｍ’と、該対峙面の上部同士を縫合した上部縫目９０Ｓｕとからなる。
【０１３５】
この実施の形態でも、該上部縫目９０Ｓｕは、凹部１３の上部側において環状に延在している。主縫目９０Ｓｍ’は、凹部１３の上部から下部にかけて略上下方向に延在している。なお、この実施の形態でも、凹部１３の上部側及び下部側の開口９１，９２が省略されているが、開口９１が設けられている場合には、該上部縫目９０Ｓｕは、この開口９１を取り巻くように延設されてもよい。第２７図の通り、これらの縫目９０Ｓｕ，９０Ｓｍ’同士は不連続となっている。主縫目９０Ｓｍ’は、凹部１３の中間部においては、上部縫目９０Ｓｕよりも車両前方側に位置している。なお、この実施の形態でも、該主縫目９０Ｓｍ’の上端側は、上部縫目９０Ｓｕの車両前方側を通ってエアバッグ１０Ｌの上端付近まで延在している。
【０１３６】
凹部１３の中間部においては、該主縫目９０Ｓｍ’は、上部側ほど車両前方側となるように斜めに略一直線状に延在している。この部分の水平面に対する仰角θは、２５〜５０°特に３０〜４５°程度であることが好ましい。該主縫目９０Ｓｍ’の上端側及び下端側は、それぞれ、車両前方側に向うように略円弧状に湾曲している。この主縫目９０Ｓｍ’は、第２６図における中間部縫目９０Ｓｍと下部縫目９０Ｓｂとを一続きに形成した如きものとなっている。なお、該主縫目９０Ｓｍ’の下端側は、第２６図における下部縫目９０Ｓｂと同様に、環状となっていてもよい。凹部１３の下部側に開口９２が設けられている場合には、主縫目９０Ｓｍ’の下端側は、この開口９２を取り巻くように延設されてもよい。
【０１３７】
このエアバッグ１０Ｌにおいては、該上部縫目９０Ｓｕが凹部１３の上部の最奥部となっており、主縫目９０Ｓｍ’が凹部１３の中間部及び下部の最奥部となっている。該主縫目９０Ｓｍ’は、上端側が上部縫目９０Ｓｕよりも車両前方側に位置し、且つ下端側ほど車両後方側となるように斜めに延在しているので、凹部１３は、中間部の深さが上部及び下部よりも深くなっている。
【０１３８】
第２７図のその他の構成は第３図と同一であり、第２７図において第３図と同一符号は同一部分を示している。
【０１３９】
このエアバッグ１０Ｌにあっても、第１〜７図のエアバッグ１０と同様の作用効果が奏される。
【０１４０】
なお、第２７図においても、主縫目９０Ｓｍ’は、車両前方側へ突出するように湾曲していてもよく、あるいは車両後方側へ突出するように湾曲していてもよく、直線状であってもよい。上部縫目９０Ｓｕは省略されてもよい。
【０１４１】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態をもとりうる。
【０１４２】
上記のインサイドパネル２０及びアウトサイドパネル８０は、左右対称であることが好ましい。即ち、第２８図（ａ），（ｂ）のように、インサイドパネル２０を左右に長くかつ平たく平面上に広げた状態において、インサイドパネル２０のレフトサイド２０Ｌとライトサイド２０Ｒの糸目（基布組織糸の延在方向）は、該インサイドパネル２０のセンターライン（インサイドパネル２０の左右方向の中間を通る鉛直方向の線分）ＣＬ１に対し０°及び９０°とする（第２８図（ａ））か、あるいは４５°とする（第２８図（ｂ））。
【０１４３】
同様に、アウトサイドパネル８０についても、第２９図（ａ），（ｂ）の通り、左右に長く且つ平たく平面上に広げた状態において、該アウトサイドパネル８０のパネルの糸目は、該アウトサイドパネル８０のセンターライン（アウトサイドパネル８０の左右方向の中間を通る鉛直方向の線分）ＣＬ２に対し０°及び９０°（第２９図（ａ））とするか、あるいは４５°（第２９図（ｂ））とする。
【０１４４】
このように各パネル２０，８０の糸目を左右対称とすることにより、左半側エアバッグ１４と右半側エアバッグ１２とで強度が等しいものとなる。
【０１４５】
なお、仮に、双方のパネル２０，８０を、糸目が各々のセンターラインＣＬ１，ＣＬ２に対し同一方向（好ましくは０°及び９０°）となるように構成した場合には、両パネル２０，８０を第２８図（ａ）及び第２９図（ａ）の如く平たく広げて重ね合わせると、両パネル２０，８０の糸目は互いに平行となる。
【０１４６】
これに対し、上記の実施の形態においては、第３０図（ａ）の通り、エアバッグ１０を製作するに当り、インサイドパネル２０は、センターラインＣＬ１に沿って二つ折りされるのに対し、アウトサイドパネル８０は、その基端側のマウス面５０が、底面５０Ｂ、左右サイド面５０Ａ，５０Ｃ及び上面（フラップ５０Ｄ，５０Ｅ）を有し、且つエアバッグ先端側に向って開放した立体的な形状となるように折られる。
【０１４７】
このように一方のパネル２０を平面折りし、他方のパネル８０を立体折りして該パネル２０，８０同士を合体させた場合には、仮に両パネル２０，８０の糸目方向が各々のセンターラインＣＬ１，ＣＬ２に対し同一方向であっても、第３０図（ｂ）の通り、これらのパネル２０，８０の外周縁同士は、糸目が互いに異なる方向（非平行方向）を指向した状態で重なり合う。このように、パネル２０，８０同士を、糸目を非平行方向として縫合した場合には、糸目を平行にして縫合した場合に比べて、両パネル２０，８０同士の縫合強度が高くなる。
【０１４８】
なお、糸目を前記センターラインＣＬ１，ＣＬ２に対して０°及び９０°としたパネル２０又は８０にあっては、織布の反物からの基布取り効率が向上する。すなわち、単位長さの反物から切り出すことができるパネル２０又は８０の数が多くなる。
【符号の説明】
【０１４９】
１０，１０Ｂ〜１０Ｌ エアバッグ
１２ 右半側エアバッグ
１３ 凹部
１４ 左半側エアバッグ
１６ 基端室
２０，２０Ａ，２０Ｂ，２０Ｃ インサイドパネル
３０ 右アウト面
４０ 左アウト面
５０ マウス面
８０ アウトサイドパネル
９０Ｓ，９０Ｓ’，９０Ｓ’’，９１Ｓ，９２Ｓ，９３Ｓ，９４Ｓ，９５Ｓ，９６ａ，９６ｂ，９６Ｓ，９７ｃ，９０Ｓｕ，９０Ｓｍ，９０Ｓｂ，９０Ｓｍ’ 縫目
９１，９２，９４ 開口
９３，９４ 左右テザー
９５，９６，９７ 小パネルよりなる前後テザー
【特許請求の範囲】
【請求項１】
助手席乗員の前方に膨張するエアバッグであって、
膨張した状態において乗員に対面して上下方向に延在した凹部が形成されるエアバッグにおいて、
該凹部の上下方向の中間部における深さは、上部及び下部における該凹部の深さよりも大きいことを特徴とするエアバッグ。
【請求項２】
請求項１において、該エアバッグは、車両前方側に配置された基端室と、
該基端室に連なり、乗員前方の左側において膨張する左半側エアバッグと、
該基端室に連なり、乗員前方の右側において膨張する右半側エアバッグと
を有し、
該左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分同士が結合されることにより前記凹部が形成されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項３】
請求項２において、前記左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分同士が縫合によって結合されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項４】
請求項３において、該縫合の縫目は、前記対面部分の上部同士を縫合した縫目（以下、上部縫目と称する。）と、該対面部分の中間部同士を縫合した縫目（以下、中間部縫目と称する。）と、該対面部分の下部同士を縫合した縫目（以下、下部縫目と称する。）とを有しており、
該エアバッグ膨張状態において、該中間部縫目は、少なくとも部分的に、該上部縫目及び下部縫目よりも、該エアバッグの乗員対向面から車両前方側に離隔していることを特徴とするエアバッグ。
【請求項５】
請求項４において、該上部縫目、中間部縫目及び下部縫目は、略上下方向に延在した、連続した縫目であり、該中間部縫目は、少なくとも一部が前記乗員対向面から遠ざかるように湾曲していることを特徴とするエアバッグ。
【請求項６】
請求項４において、少なくとも該上部縫目と中間部縫目とは不連続となっており、該中間部縫目の上端側は、該上部縫目よりも車両前方側に位置していることを特徴とするエアバッグ。
【請求項７】
請求項３ないし６のいずれか１項において、前記凹部の前記中間部よりも車両前方側にあっては、エアバッグ膨張状態において左半側エアバッグと右半側エアバッグとが押し付け合わされたものとなるように構成されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項８】
請求項３ないし７のいずれか１項において、該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの膨張時における左右幅を小さくするための左右テザーが設けられており、該左右テザーが前記縫合の縫目によって左半側エアバッグ又は右半側エアバッグに縫着されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項９】
請求項１ないし８のいずれか１項において、
エアバッグが膨張した状態において、
凹部の上部における該エアバッグの乗員対向面からの該凹部の深さｄ１は５〜２００ｍｍであり、
凹部の中間部における該乗員対向面からの該凹部の深さｄ２は２５〜４００ｍｍであり、
凹部の下部における該乗員対向面からの該凹部の深さｄ３は５〜２００ｍｍであり、
該凹部の上部及び下部の最奥部同士に接する接線からの該凹部の中間部の深さｄ４は、０〜２００ｍｍであることを特徴とするエアバッグ。
【請求項１０】
請求項９において、前記中間部の凹部は、深さが２５〜４００ｍｍの部分であり、上下方向に１５０〜４００ｍｍ延在していることを特徴とするエアバッグ。
【請求項１１】
請求項１１において、前記中間部の凹部においては、上部側ほど該凹部の深さが深くなっていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項１２】
請求項９ないし１１のいずれか１項において、前記中間部の凹部においては、少なくとも部分的に、その最奥部の鉛直面内における接線方向が車両前方に向って前傾していることを特徴とするエアバッグ。
【請求項１３】
請求項１ないし１２のいずれか１項において、前記中間部の凹部を車両前方へ引っ張るための前後テザーが設けられていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項１４】
助手席乗員の前方に膨張するエアバッグであって、
膨張した状態において乗員に対面して上下方向に延在した凹部が形成されるエアバッグにおいて、
該エアバッグは、車両前方側に配置された基端室と、
該基端室に連なり、乗員前方の左側において膨張する左半側エアバッグと、
該基端室に連なり、乗員前方の右側において膨張する右半側エアバッグと
を有し、
該左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分同士が縫合によって結合されることにより前記凹部が形成されており、
該縫合の縫目は、該対面部分同士を下部から上部まで連続して縫合した縫目（以下、主縫目と称する。）を有しており、
該主縫目は、上部側ほど車両前方側となるように延在していることを特徴とするエアバッグ。
【請求項１５】
請求項１４において、前記主縫目は、少なくとも前記凹部の上下方向の中間部において、上部側ほど車両前方側となるように前傾した略直線状に延在していることを特徴とするエアバッグ。
【請求項１６】
請求項１４又は１５において、前記縫合の縫目は、さらに、前記左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分の上部同士を縫合した縫目（以下、上部縫目と称する。）を有しており、
該エアバッグ膨張状態において、該上部縫目は、前記主縫目の上端側よりも車両後方に配置されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項１７】
請求項１ないし１６のいずれか１項において、該エアバッグは、車両のインストルメントパネルから乗員に接近するように車両後方へ向って膨張するものであり、
該エアバッグに、該エアバッグが膨張した状態において該エアバッグを略上下方向に貫通する空洞部が設けられており、
該空洞部は、該エアバッグが膨張した状態において、その下端側が、少なくとも部分的に、インストルメントパネルの車両後方側の端部よりも車両後方に位置するように構成されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項１８】
請求項１ないし１７のいずれか１項に記載のエアバッグと、該エアバッグを膨張させるインフレータとを備えたエアバッグ装置。
【請求項１９】
請求項１８に記載のエアバッグ装置を搭載してなる車両。
【請求項１】
助手席乗員の前方に膨張するエアバッグであって、
膨張した状態において乗員に対面して上下方向に延在した凹部が形成されるエアバッグにおいて、
該凹部の上下方向の中間部における深さは、上部及び下部における該凹部の深さよりも大きいことを特徴とするエアバッグ。
【請求項２】
請求項１において、該エアバッグは、車両前方側に配置された基端室と、
該基端室に連なり、乗員前方の左側において膨張する左半側エアバッグと、
該基端室に連なり、乗員前方の右側において膨張する右半側エアバッグと
を有し、
該左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分同士が結合されることにより前記凹部が形成されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項３】
請求項２において、前記左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分同士が縫合によって結合されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項４】
請求項３において、該縫合の縫目は、前記対面部分の上部同士を縫合した縫目（以下、上部縫目と称する。）と、該対面部分の中間部同士を縫合した縫目（以下、中間部縫目と称する。）と、該対面部分の下部同士を縫合した縫目（以下、下部縫目と称する。）とを有しており、
該エアバッグ膨張状態において、該中間部縫目は、少なくとも部分的に、該上部縫目及び下部縫目よりも、該エアバッグの乗員対向面から車両前方側に離隔していることを特徴とするエアバッグ。
【請求項５】
請求項４において、該上部縫目、中間部縫目及び下部縫目は、略上下方向に延在した、連続した縫目であり、該中間部縫目は、少なくとも一部が前記乗員対向面から遠ざかるように湾曲していることを特徴とするエアバッグ。
【請求項６】
請求項４において、少なくとも該上部縫目と中間部縫目とは不連続となっており、該中間部縫目の上端側は、該上部縫目よりも車両前方側に位置していることを特徴とするエアバッグ。
【請求項７】
請求項３ないし６のいずれか１項において、前記凹部の前記中間部よりも車両前方側にあっては、エアバッグ膨張状態において左半側エアバッグと右半側エアバッグとが押し付け合わされたものとなるように構成されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項８】
請求項３ないし７のいずれか１項において、該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの膨張時における左右幅を小さくするための左右テザーが設けられており、該左右テザーが前記縫合の縫目によって左半側エアバッグ又は右半側エアバッグに縫着されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項９】
請求項１ないし８のいずれか１項において、
エアバッグが膨張した状態において、
凹部の上部における該エアバッグの乗員対向面からの該凹部の深さｄ１は５〜２００ｍｍであり、
凹部の中間部における該乗員対向面からの該凹部の深さｄ２は２５〜４００ｍｍであり、
凹部の下部における該乗員対向面からの該凹部の深さｄ３は５〜２００ｍｍであり、
該凹部の上部及び下部の最奥部同士に接する接線からの該凹部の中間部の深さｄ４は、０〜２００ｍｍであることを特徴とするエアバッグ。
【請求項１０】
請求項９において、前記中間部の凹部は、深さが２５〜４００ｍｍの部分であり、上下方向に１５０〜４００ｍｍ延在していることを特徴とするエアバッグ。
【請求項１１】
請求項１１において、前記中間部の凹部においては、上部側ほど該凹部の深さが深くなっていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項１２】
請求項９ないし１１のいずれか１項において、前記中間部の凹部においては、少なくとも部分的に、その最奥部の鉛直面内における接線方向が車両前方に向って前傾していることを特徴とするエアバッグ。
【請求項１３】
請求項１ないし１２のいずれか１項において、前記中間部の凹部を車両前方へ引っ張るための前後テザーが設けられていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項１４】
助手席乗員の前方に膨張するエアバッグであって、
膨張した状態において乗員に対面して上下方向に延在した凹部が形成されるエアバッグにおいて、
該エアバッグは、車両前方側に配置された基端室と、
該基端室に連なり、乗員前方の左側において膨張する左半側エアバッグと、
該基端室に連なり、乗員前方の右側において膨張する右半側エアバッグと
を有し、
該左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分同士が縫合によって結合されることにより前記凹部が形成されており、
該縫合の縫目は、該対面部分同士を下部から上部まで連続して縫合した縫目（以下、主縫目と称する。）を有しており、
該主縫目は、上部側ほど車両前方側となるように延在していることを特徴とするエアバッグ。
【請求項１５】
請求項１４において、前記主縫目は、少なくとも前記凹部の上下方向の中間部において、上部側ほど車両前方側となるように前傾した略直線状に延在していることを特徴とするエアバッグ。
【請求項１６】
請求項１４又は１５において、前記縫合の縫目は、さらに、前記左半側エアバッグと右半側エアバッグの対面部分の上部同士を縫合した縫目（以下、上部縫目と称する。）を有しており、
該エアバッグ膨張状態において、該上部縫目は、前記主縫目の上端側よりも車両後方に配置されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項１７】
請求項１ないし１６のいずれか１項において、該エアバッグは、車両のインストルメントパネルから乗員に接近するように車両後方へ向って膨張するものであり、
該エアバッグに、該エアバッグが膨張した状態において該エアバッグを略上下方向に貫通する空洞部が設けられており、
該空洞部は、該エアバッグが膨張した状態において、その下端側が、少なくとも部分的に、インストルメントパネルの車両後方側の端部よりも車両後方に位置するように構成されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項１８】
請求項１ないし１７のいずれか１項に記載のエアバッグと、該エアバッグを膨張させるインフレータとを備えたエアバッグ装置。
【請求項１９】
請求項１８に記載のエアバッグ装置を搭載してなる車両。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図１５】
【図１６】
【図１７】
【図１８】
【図１９】
【図２０】
【図２１】
【図２２】
【図２３】
【図２４】
【図２５】
【図２６】
【図２７】
【図２８】
【図２９】
【図３０】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図１５】
【図１６】
【図１７】
【図１８】
【図１９】
【図２０】
【図２１】
【図２２】
【図２３】
【図２４】
【図２５】
【図２６】
【図２７】
【図２８】
【図２９】
【図３０】
【公開番号】特開２０１０−１６３１５２（Ｐ２０１０−１６３１５２Ａ）
【公開日】平成２２年７月２９日（２０１０．７．２９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−１０９４５３（Ｐ２００９−１０９４５３）
【出願日】平成２１年４月２８日（２００９．４．２８）
【出願人】（３０６００９５８１）タカタ株式会社 (812)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年７月２９日（２０１０．７．２９）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年４月２８日（２００９．４．２８）
【出願人】（３０６００９５８１）タカタ株式会社 (812)
【Ｆターム（参考）】
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