説明

エアバッグ及びエアバッグ装置

【課題】製造時の手間を大幅に低減することができるエアバッグ及びこれを備えたエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】乗員を拘束するエアバッグ14と、エアバッグ14内に収納されガスを噴出してエアバッグ14を膨張させるガス発生器15とを有している。エアバッグ14は、所要平面形状のウエブよりなり、このウエブ14Aをガス発生器を包むように折り曲げて閉じ合せてほぼ密閉する空間を形成しかつガス発生器のスタッドボルトをこのウエブ14Aの閉じ合せ位置に重なる部分に設けた挿通孔146に挿通して閉じ合せ状態を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に装備されるエアバッグ及びこれを備えたエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エアバッグ装置は、乗員の身体を受け止めるエアバッグと、このエアバッグ内に収納されガスを噴出してエアバッグを膨張させるガス発生器等を有している。このようなエアバッグ装置の1つに、自動車等の車両の側面衝突時や車体横転時等に車両のボディサイド部に所定値以上の衝撃が加わったとき、車室内の座席シートに着座している乗員とボディサイド部との間においてガス発生器によりガスを発生して側突用エアバッグを乗員の側部に膨張させ、乗員の身体を拘束する側突用エアバッグ装置がある(例えば特許文献1等参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−029073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の側突用エアバッグ装置のエアバッグは、所定の形状に裁断した複数の基布の周縁部を縫合することにより、袋体として構成されている。しかしながら、このように基布を縫合することによりエアバッグを袋体として構成すると、製造時に複雑な縫合工程が必要となるため手間を要していた。
【0005】
本発明の目的は、製造時の手間を大幅に低減することができるエアバッグ及びこれを備えたエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、第1の発明は、乗員の身体を拘束するエアバッグであって、所定の形状に裁断した基布を、前記エアバッグを膨張させるガス発生器を包むように折り曲げ、その端部を重ね合わせて綴じることによりほぼ密閉する空間を内部に形成したことを特徴とする。
【0007】
自動車等が衝突等を起こすと、ガス発生器が作動してガスを噴出し、この噴出ガスが折り畳まれたエアバッグに供給されてエアバッグが膨張する。そして、この膨張によりリッドが開き、リッドより膨出したエアバッグが乗員の身体の所要部位を拘束する。
【0008】
このとき、本願第1発明では、所定の形状に裁断した基布を折り曲げてガス発生器を包み込み、その端部の重ね合わせ位置を、例えば当該重ね合わせ位置に設けた挿通孔にガス発生器を支持する支持部材を挿通することによって綴じることにより、ガス発生器の収容空間をほぼ密閉状態に維持できるエアバッグを構成することが可能となる。これにより、縫合による結合部を大幅に減縮することができ、製造時の縫合工程を大幅に縮減することができる。したがって、製造時の手間を大幅に低減することができる。またその結果、製造コストを低減することができる。
【0009】
第2の発明は、前記基布は一枚であることを特徴とする。
【0010】
これにより、縫合による結合部を最小限にすることができるので、製造時の手間をさらに低減することができる。
【0011】
第3の発明は、前記基布の重ね合わせ位置に前記ガス発生器を支持する支持部材を挿通させるための挿通孔を設け、この挿通孔に前記支持部材を挿通することにより前記基布の端部を綴じることを特徴とする。
【0012】
本願第3発明では、所定の形状に裁断した基布を折り曲げてガス発生器を包み込み、その端部の重ね合わせ位置を、当該重ね合わせ位置に設けた挿通孔にガス発生器を支持する支持部材を挿通することによって綴じることにより、ガス発生器の収容空間をほぼ密閉状態に維持できるエアバッグを構成することができる。これにより、縫合による結合部を大幅に減縮することができるので、製造時の手間を大幅に低減することができる。
【0013】
第4の発明は、前記基布は、展開時に主に前記乗員の身体に対向する正面部と、この正面部の対向する2辺より延在され、前記ガス発生器を内側に包むように折り曲げて端縁同士を重ね合わせて綴じる第1及び第2の包み片部と、少なくとも前記正面部の残り1辺より延在され、前記第1及び第2の包み片部で閉じられない開口を閉じ、前記第1及び第2の包み片部の重ね合わせ位置に重ね合わせて綴じる第3の包み片部とを備えたことを特徴とする。
【0014】
本願第4発明においては、展開時に主に乗員の身体に対向する正面部にガス発生器の正面部を配置し、第1ないし第3の包み片部をガス発生器を包み込むように折り曲げ、第1ないし第3の包み片部に設けた挿通孔にガス発生器の支持部材を挿通することにより、これら包み片部の端部を綴じる。これにより、第1ないし第3の包み片部の縫合による結合を行わずに、ガス発生器を内部に収納したほぼ密閉した空間を形成することができる。したがって、製造時の手間を大幅に低減することができる。
【0015】
また、対向片である第1及び第2の包み片部は例えばバンド掛けすることができる形状であればよく、第3の包み片部は第1及び第2の包み片部がバンド掛けするときに開いてしまう両側開口を閉じて第1及び第2の包み片部から外れない形状であればよく、エアバッグを構成する基布の形状としては種々のバリエーションを採用可能である。その結果、基布裁断時の切れ端を有効に利用できて無駄の出る量が少なく、製作コストをさらに安く抑えることができる。
【0016】
前記目的を達成するために、第5の発明は、前記第1乃至第4の発明のいずれかのエアバッグと、前記エアバッグ内に収納されガスを噴出して前記エアバッグを膨張させるガス発生器とを有することを特徴とする。
【0017】
これにより、エアバッグ製造時の手間を大幅に低減することができると共に、製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、製造時の手間を大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。まず、本発明を側突用エアバッグ装置に適用した第1の実施の形態について説明する。
【0020】
図1(a)は、第1の実施の形態である側突用エアバッグ装置SABの装着位置を示す車両の運転席付近の側面図であり、図1(b)は、側突用エアバッグ装置SABのエアバッグ膨張時を示す側面図である。また、図2(a)は膨張時のエアバッグを固定側から見た斜視図、図2(b)は図2(a)におけるIIb−IIb断面図、図3(a)はエアバッグの内面側から見た平面展開図、図3(b)は先に折り曲げる2つの包み片部を折り曲げた状態を示すエアバッグの組み立て途中の斜視図である。
【0021】
図1に示す側突用エアバッグ装置SABは、図1(a)に示す車室内の座席シート11の背もたれ12に収容設置され、自動車等のボディサイド部に所定値以上の衝撃が加わったとき、図1(b)に示すように、座席シート11に着座している乗員Mとボディサイド部との間にてガス発生器15によりガスを発生してエアバッグ14を乗員Mの側部に膨張させ、乗員Mの上半身を拘束するエアバッグ装置である。
【0022】
図1(a)に示すように、エアバッグ14は、平常時にはリテーナ13内に折り畳まれた状態でシート11の背もたれ12の内部に収納されている。一方、例えば自動車が側面衝突した場合等には、インフレータ制御回路(図示せず)により側突用エアバッグ装置SABのガス発生器15のイニシエータ(図示せず)が起動され、点火したガス発生器15からのガスがエアバッグ14の内部に供給される。これにより、ガスの供給を受けたエアバッグ14は、図1(b)に示すように、例えば背もたれ12の横面の布地に設けられた図示しない縫製ラインを開裂してシート11から飛び出し、自動車等のボディサイド部に沿って展開してシート11に着座した乗員Mとの間に展開する。
【0023】
上記側突用エアバッグ装置SABのエアバッグ14は、基布を図3(a)に示す平面形状に裁断した一枚のウエブ(基布)14Aよりなる。なお、ウエブ14Aを複数枚に裁断して溶着により図3(a)に示す平面形状となるように継ぎ足したものでもよい。このウエブ14Aは、展開時に主に乗員の身体(この場合は上半身)に対向する正面部141と、この正面部141の対向する2辺、ここでは正面部141の上辺と下辺より上下に延在されていて前記ガス発生器15を内側に包むように折り曲げて端縁同士を重ね合わせて綴じる第1の包み片部142及び第2の包み片部143と、前記正面部141の残り2辺、ここでは正面部141の右辺と左辺より延在されていて第1の包み片部142及び第2の包み片部143で閉じられない両側開口を閉じ、前記の第1の包み片部142及び第2の包み片部143の重ね合わせ部に重ね合わせて綴じる第3の包み片部144及び第4の包み片部145とを備えた形状である。なお、図3(a),(b)中、破線で示す符号147は折り曲げ線を示す。
【0024】
そして、第1ないし第4の包み片部142〜145は、ガス発生器15を収容する空間を直方体となるように折り曲げ線147より折り曲げる。最初に第3の包み片部144を折り曲げ、次に第4の包み片部145を折り曲げると図3(b)に示す形態になり、続いて、第1の包み片部142を折り曲げて端縁を、最後に折り曲げる第2の包み片部143の端縁と合掌させてから、この合掌させた端縁を第1の包み片部142側へ折り返すと、合掌させた端縁に一致して設けた挿通孔(円孔)146がその内側に重なる第3の包み片部144と第4の包み片部145と第1の包み片部142のそれぞれに設けた挿通孔(円孔)146と一致する。すなわち、挿通孔146は、ガス膨張する空間を形成するように第1ないし第4の包み片部142〜145を折り曲げた際に、正面部141と対向する第1ないし第4の包み片部142〜145の重ね合わせ側である裏面位置であって、内部に収容するガス発生器15を支持するための2つのスタッドボルト15aに対応する位置に存在するように、ウエブ14Aが開いた状態において設けられる。
【0025】
前記挿通孔146は、丸穴形状に加工されるとともに、その開口面積はガス発生器15の前記スタッドボルト15aの断面積よりも小さく設定されていて、スタッドボルト15aを挿通孔146に挿通させた際にはスタッドボルト15aが挿通孔146に対し締り嵌め状態となるのが良い。さらに、挿通孔146の丸穴の周囲(内周縁)の強化のために、円形縫製してもよい。
【0026】
ガス発生器15は、火薬を点火して熱を利用してガス発生剤を反応させることによりガスを噴出させるものであり、その点火制御は、ガス発生器15にコネクタ(図示しない)とケーブル(図示しない)を介して接続された制御ユニット(図示しない)により行われる。図2(b)に示すように、このガス発生器15は、ガス発生器保持部材151により保持され、ガス発生器保持部材151の側面からは、スタッドボルト(支持部材)15aが突設されている。このスタッドボルト15aは、挿通孔(円孔)146に挿通され、このスタッドボルト15aにナット15bが締め込まれることにより、ガス発生器保持部材151がリテーナ13に固定されている(図2(b)参照)。
【0027】
従って、エアバッグ14を構成する一枚のウエブ14Aは、ガス発生器15を正面部141の上(内面)に横長に置いてから、上側の第3の包み片部144と下側の第4の包み片部145と右側の第1の包み片部142の順にそれぞれに2つずつ設けた挿通孔146をガス発生器15のスタッドボルト15aに被嵌し(図3(b)参照)、最後に第2の包み片部143を立ち上げてこの端縁と、第1の包み片部142の端縁を合掌させ端縁部に設けた挿通孔146を合わせてガス発生器15のスタッドボルト15aに被嵌すると、第1ないし第4の包み片部142〜145は、ガス発生器15を収容する空間が略直方体となるように折り曲がる。第1の包み片部142は、一対2個の挿通孔146を二対有し折り返してガス発生器15のスタッドボルト15aに被嵌する(図2(a)及び図3参照)。なお、このウエブ14Aにヘム(折り筋)を特に形成する必要はないので、ガス発生器15を収容する空間(ガス膨張空間)は図に示すようにタイトな稜線とはならず、丸みを持つことになる。こうして組み付けるだけで、エアバッグ14は、ガス発生器15を収容した状態に組み立てを完成したことになり、ガス発生器15から急激に噴出するガスによる膨脹がしやすいように適宜の折り畳み方で折り畳まれて(図示しない)図1に示すリテーナ13内に収納され固定され、リテーナ13の内側に仕舞い込まれる。
【0028】
以上のような構成である側突用エアバッグ装置SABによれば、エアバッグ14がリッドの内側に折り畳み状態で仕舞われた状態において、自動車等が正面衝突すると、ガス発生器15が作動してガスを噴出し、この噴出ガスが正面部及び第1ないし第4の包み片部142〜145で折り畳まれた空間内に勢い良く流入する。
【0029】
このとき、本実施形態においては、所定の形状に裁断したウエブ14Aを折り曲げてガス発生器15を包み込み、その端部の重ね合わせ位置を、当該重ね合わせ位置に設けた挿通孔146にガス発生器15を支持するスタッドボルト15aを挿通することによって綴じることにより、ガス発生器15の収容空間をほぼ密閉状態に維持できるエアバッグ14を構成することができる。これにより、縫合による結合部を大幅に減縮することができ、製造時の縫合工程を大幅に縮減することができる。したがって、製造時の手間を大幅に低減することができる。またその結果、製造コストを低減することができる。
【0030】
また本実施形態では特に、一枚のウエブ14Aでエアバッグ14を構成する。これにより、縫合による結合部を最小限にすることができるので、製造時の手間をさらに低減することができる。
【0031】
またさらに、この実施の形態の側突用エアバッグ装置によれば、平面状のウエブを折り曲げて綴じ合せてなるエアバッグなので、基布をプレスで裁断するだけでウエブを形成でき構成を単純化できる。また、複数のウエブを用いる場合であっても、立体的でなく平面的に継ぎ合わせることができるので、縫合又は溶着が容易である。さらに、後述するようエアバッグを構成する基布の形状としては種々のバリエーションを採用可能であり、その結果、基布裁断時の切れ端を有効に利用できて無駄の出る量が少なく、製作コストをさらに安く抑えることができる。
【0032】
また、この側突用エアバッグ装置によれば、平面状のウエブを折り曲げて綴じ合せてなるエアバッグなので、エアバッグの内部のガスが外部へ向かって適度に流出する隙間が形成され、エアバッグによる乗員の受止め時に、エアバッグの展開初期の内圧を確保するとともに、乗員に作用する反力が低減するようにエアバッグにおける所定の膨張空間の内圧を低減する圧力調整手段として機能させることができる。この結果、エアバッグが高圧でパンパンに膨れてクッション性がないものとならず、側突用エアバッグとして適度のクッション性を保有させることが可能である。
【0033】
本発明は、前記第1の実施形態に限られるものではなく、その趣旨と技術思想の範囲を逸脱しない範囲で以下に示すような種々の変形が可能である。
【0034】
第4図(a)は、本発明のエアバッグ装置の第1の変形例である側突用エアバッグ装置に係るエアバッグの内面側から見た平面展開図、第4図(b)は先に折り曲げる1つの包み片部を折り曲げた状態を示すエアバッグの組み立て途中の斜視図である。
【0035】
この側突用エアバッグ装置は、図示しないが図1と同様に、容器状のリテーナと、エアバッグと、ガス発生器を備えている。エアバッグは、基布を図4(a)に示す平面形状に裁断した一枚のウエブ14Bよりなる。
【0036】
このウエブ14Bは、展開時に主に乗員の身体(この場合は上半身)に対向する正面部141’と、この正面部141’の上辺と下辺より上下に延在されていてガス発生器を内側に包むように折り曲げて端縁同士を重ね合わせて綴じる第1の包み片部142’及び第2の包み片部143’と、前記正面部141’の右辺に延在されていて第1の包み片部142’及び第2の包み片部143’で閉じられない両側開口を閉じて前記の第1の包み片部142’及び第2の包み片部143’の綴じ合せ片部と重ね合わせて綴じる第3の包み片部144’を備えた形状である。
【0037】
なお、図4(a),(b)中破線で示す符号147は折り曲げ線を示す。また、ウエブ14Bは、裁断時に半端(廃棄部分)が出ないように複数枚に裁断して溶着により図4(a)に示す平面形状となるように継ぎ足してなるものでもよい。
【0038】
最初に第3の包み片部144’を一巻き以上させて折り曲げると、第3の包み片部144’に設けた一対2個で二対有する挿通孔146が一致し図4(b)に示す形態になり、続いて、第1の包み片部142’を折り曲げて端縁を、最後に折り曲げる第2の包み片部143’の端縁と合掌させてから、この合掌させた端縁を第1の包み片部142’へ重ねて折り返し、合掌させた端縁にそれぞれ設けた挿通孔146が一致する。
【0039】
従って、ウエブ14Bは、ガス発生器を正面部141’の上(内面)に置いてから、上側の第3の包み片部144’を図4(b)に示すように一巻き以上させて折り曲げ、このとき第3の包み片部144’に一対2個で二対有する挿通孔146をガス発生器のスタッドボルト15aに被嵌し、次いで上側の第1の包み片部142’を折り曲げて第1の包み片部142’に設けた挿通孔146をガス発生器のスタッドボルト15aに被嵌し、最後に第2の包み片部143’を立ち上げてこの端縁と、右側の第1の包み片部142’の端縁を合掌させ端縁部に設けた挿通孔146を合わせてガス発生器のスタッドボルト15aに被嵌すると、第1ないし第3の包み片部142’,143’,144’は、ガス発生器15を収容して略直方体となる空間を形成することになる。
【0040】
以上のような構成である第1の変形例においても、前記第1の実施形態と同様に製造時の手間を大幅に低減できるという効果を得る。
【0041】
図5(a)は、本発明のエアバッグ装置の第2の変形例である側突用エアバッグ装置に係るエアバッグの内面側から見た平面展開図、図5(b)は先に折り曲げる2つの包み片部を折り曲げた状態を示すエアバッグの組み立て途中の斜視図である。
【0042】
エアバッグ装置は、図示しないが図1と同様に、容器状のリテーナと、エアバッグと、ガス発生器を備えている。エアバッグは、基布を図5(a)に示す平面形状に裁断した一枚のウエブ14Cよりなる。
【0043】
このウエブ14Cは、車両前後方向に対して垂直な方向に展開し、展開時に主に乗員の身体(この場合は膝部)に対向する正面部141”と、この正面部141”の上辺と下辺より上下に延在されていてガス発生器15を内側に包むように折り曲げて端縁同士を重ね合わせて綴じる第1の包み片部142”及び第2の包み片部143”と、前記正面部141”の右辺と左辺より左右に延在されていて第1の包み片部142”及び第2の包み片部143”で閉じられない両側開口を閉じて前記の第1の包み片部142”及び第2の包み片部143”の綴じ合せ片部と重ね合わせて綴じる第3の包み片部144”及び第4の包み片部145”を備えた形状である。なお、前記第1の包み片部142”は、内巻き部142a,142aを有している点が、図3のウエブ14Aと異なる。
【0044】
なお、図5(a),(b)中破線で示す符号147は折り曲げ線を示す。また、ウエブ14Cは、裁断時に半端(廃棄部分)が出ないように複数枚に裁断して溶着により図5(a)に示す平面形状となるように継ぎ足してなるものでもよい。
【0045】
最初に第1の包み片部142”を直角に折り曲げ、この状態で内巻き部142a,142aを折り曲げて正面部141”を囲い、次に第2の包み片部143”を直角に折り曲げると図5(b)に示す形態になり、続いて、第3の包み片部144”と第4の包み片部145”を折り曲げて、第3及び第4の包み片部に設けた挿通孔をガス発生器15のスタッドボルト15aに被嵌し、次いで第1の包み片部142”を折り曲げ、その端縁を、最後に折り曲げる第2の包み片部143”の端縁と合掌させてから、この合掌させた端縁を第1の包み片部142”へ重ねて折り返し、合掌させた端縁にそれぞれ設けられていて一致する挿通孔146をガス発生器15のスタッドボルト15aに被嵌する(図示しない)。
【0046】
これにより、第1ないし第4の包み片部142”,143”,144”,145”は、ガス発生器15を収容して略直方体となる空間を形成することになる。
【0047】
以上のような構成である第2の変形例においても、前記第1の実施形態と同様に製造時の手間を大幅に低減できるという効果を得る。
【0048】
図6(a)は、本発明のエアバッグ装置の第3の変形例である側突用エアバッグ装置に係るエアバッグの内面側から見た平面展開図、図6(b)は先に折り曲げる2つの包み片部を折り曲げた状態を示すエアバッグの組み立て途中の斜視図である。
【0049】
この側突用エアバッグ装置は、図示しないが図1と同様に、容器状のリテーナと、エアバッグと、ガス発生器を備えている。エアバッグは、基布を図6(a)に示す平面形状に裁断した一枚のウエブ14Dよりなる。
【0050】
このウエブ14Dは、展開時に主に乗員の身体(この場合は上半身)に対向する正面部141”’と、この正面部141”’の上辺と下辺より上下に延在されていてガス発生器15を内側に包むように折り曲げて端縁同士を重ね合わせて綴じる第1の包み片部142”’及び第2の包み片部143”’と、前記正面部141”’の右辺と左辺より左右に延在されていて第1の包み片部142”’及び第2の包み片部143”’で閉じられない両側開口を閉じて前記の第1の包み片部142”’及び第2の包み片部143”’の綴じ合せ片部と重ね合わせて綴じる第3の包み片部144”’及び第4の包み片部145”’を備えた形状である。なお、第3の包み片部144”’及び第4の包み片部145”’は、内巻き部144d,145dを有している点が、図3のウエブ14Aと異なる。
【0051】
なお、図6(a),(b)中破線で示す符号147は折り曲げ線を示す。また、ウエブ14Dは、裁断時に半端(廃棄部分)が出ないように複数枚に裁断して溶着により図6(a)に示す平面形状となるように継ぎ足してなるものでもよい。
【0052】
最初に第3の包み片部144”’と第4の包み片部145”’を折り曲げて第3及び第4の包み片部に設けた挿通孔146をガス発生器15のスタッドボルト15aに被嵌するとともに、内巻き部144d,145dを直角に折り曲げて正面部141”’を囲うと、図6(b)に示す形態になり、続いて、第1の包み片部142”’を折り曲げて、第1の包み片部142”’に設けた挿通孔146をガス発生器15のスタッドボルト15aに被嵌し余ったその端縁を、最後に折り曲げる第2の包み片部143”’の端縁と合掌させてから、この合掌させた端縁を第1の包み片部142”’へ重ねて折り返し、合掌させた端縁にそれぞれ設けられていて一致する挿通孔146をガス発生器15のスタッドボルト15aに被嵌する(図示しない)。
【0053】
以上のような構成である第3の変形例においても、前記第1の実施形態と同様に製造時の手間を大幅に低減できるという効果を得る。
【0054】
続いて、本発明を、衝突時に乗員の脚部の前方に膨張するエアバッグを有する脚部用エアバッグ装置に適用した第2の実施形態について図面を参照して説明する。
【0055】
図7は、脚部用エアバッグ装置のエアバッグ膨張時を示す車両の座席シート前方付近の断面図であり、図8(a)はエアバッグの内装パネル側からの斜視図(平面図)、図8(b)は図8(a)におけるVIIIb−VIIIb断面図である。脚部用エアバッグ装置のエアバッグの展開した状態は、図3(a)、(b)に示す側突用エアバッグ装置のエアバッグと同様の構成であるので図を省略する。
【0056】
図8に示す脚部用エアバッグ装置NABは、平常時はリテーナ13””内に折り畳まれて収容設置され、衝突等により自動車等のボディに所定値以上の衝撃が加わったとき、ガス発生器15””によりガスを発生してエアバッグ14””を乗員の脚部前方に膨張させ、乗員の身体を拘束するエアバッグ装置である。
【0057】
図8に示す脚部用エアバッグ装置NABは、図7に示すように、座席シート11の前方の車室部材としての内装パネル16にガス発生装置の長手方向を略水平にして設置される。
【0058】
この脚部用エアバッグ装置NABは、容器状のリテーナ13””と、このリテーナ13””内に収納され衝突時に膨張して乗員を拘束するエアバッグ14””と、このエアバッグ14””内に収納され衝突時にガスを噴出して前記エアバッグ14””を膨張させるガス発生器15””を備えている。リテーナ13””は、内装パネル16に設けられた開口16aに配置されている。この実施の形態では、開口16aは座席シート11””の座面付近の高さと同等か又はそれよりも下位となる高さに設けられている。平常時には、前記エアバッグ14””は折り畳まれてリテーナ13””内に収納されガス発生器15””を支持するスタッドボルト(支持部材)15a””とナット15b””とで内装パネル16に固定されており、このエアバッグ14””を覆うようにリテーナ13””の前面にリッド(図示しない)が装着されている。リッドは、平常時には前記内装パネル16の略内側となるように配置されており、エアバッグ14””が膨張するときには、その下端側を支端として該内装パネル16の表側に開き出す。エアバッグ14””は、展開時にはこの開口から内装パネル16の前面(乗員側の面)に沿って下から上に膨張するようになっている。
【0059】
このような構成である脚部用エアバッグ装置NABは、平常時にはエアバッグ14””が折り畳まれた状態でパネルの内部に配置されており、このエアバッグの折り畳み体を覆うようにリッドが取り付けられている。そして、自動車等の車両の衝突時等に自動車等のボディに所定値以上の衝撃が加わったとき、ガス発生器15””によりガスを発生して、この噴出ガスがエアバッグ14””に供給されてエアバッグ14””の膨張に伴ってリッドが開き出し、これにより、エアバッグ14””はパネルの外部への膨出が許容されて内装パネルと乗員の下脚との間に膨張展開し、乗員の下脚が内装パネルに衝突することを抑制する。
【0060】
以上のような構成である本発明の第2の実施形態の脚部用エアバッグ装置においても、所定の形状に裁断したウエブ14””を折り曲げてガス発生器15””を包み込み、その端部の重ね合わせ位置を、当該重ね合わせ位置に設けた挿通孔146””にガス発生器15””を支持するスタッドボルト15a””を挿通することによって綴じることにより、ガス発生器15””の収容空間をほぼ密閉状態に維持できるエアバッグ14””を構成することができる。これにより、縫合による結合部を大幅に減縮することができ、製造時の縫合工程を大幅に縮減することができる。したがって、製造時の手間を大幅に低減することができる。またその結果、製造コストを低減することができる。
【0061】
なお、以上の実施の形態では、本発明を側突用エアバッグ装置及び脚部用エアバッグ装置に適用した場合を説明したが、これに限られず、例えば運転席においてハンドルの回転中心から運転者側に膨張展開する運転席用エアバッグ装置や、インストルメントパネルから助手席側に膨張展開する助手席用エアバッグ、側突時等に車両のボディサイド部と乗員の間に膨張展開するカーテンエアバッグ、乗員の頭上に膨張展開するルーフエアバッグ、又は後部座席用エアバッグ等、自動車の衝突時に乗員の身体を拘束するための各種エアバッグ装置に適用可能である。また、第1実施形態の図4乃至図6に示す変形例にかかる側突用エアバッグ装置のエアバッグは、第2実施形態の脚部用エアバッグ装置のエアバッグにも適用可能であり、それぞれの実施形態において、前記第1の実施形態と同様に製造時の手間を大幅に低減できるという効果を得る。
【0062】
また、以上では、基布を折り曲げて端部を綴じ合わせることにより縫製を全く行わない構成であるエアバッグを例にとって説明したが、これに限られず、折り曲げて端部を綴じ合わせるとともに部分的に縫製を行うことにより形成したエアバッグを用いるようにしてもよい。この場合にも製造時の手間を低減できるという同様の効果を得る。
【0063】
さらに、以上では、本発明を、火薬を用いて高温のガスを噴出させるガス発生器を用いたエアバッグ装置に適用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、例えばアルゴン等の高圧ガスを噴出させるガス発生器を用いたエアバッグ装置に対して本発明を適用してもよい。この場合にも、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る側突用エアバッグ装置のエアバッグ膨張時を示す車両の座席シート前方付近の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る側突用エアバッグ装置のエアバッグに係り、エアバッグを内装パネル側から見た斜視図、及び図2(a)中IIb−IIb断面図である。
【図3】側突用エアバッグ装置のエアバッグの内面側から見た平面展開図、及び先に折り曲げる2つの包み片部を折り曲げた状態を示すエアバッグの組み立て途中の斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態の第1の変形例に係る側突用エアバッグ装置のエアバッグの内面側から見た平面展開図、及び先に折り曲げる1つの包み片部を折り曲げた状態を示すエアバッグの組み立て途中の斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態の第2の変形例に係る側突用エアバッグ装置のエアバッグの内面側から見た平面展開図、及び先に折り曲げる2つの包み片部を折り曲げた状態を示すエアバッグの組み立て途中の斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態の第3の変形例に係る側突用エアバッグ装置のエアバッグの内面側から見た平面展開図、及び先に折り曲げる2つの包み片部を折り曲げた状態を示すエアバッグの組み立て途中の斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る脚部用エアバッグ装置のエアバッグ膨張時を示す車両の座席シート前方付近の断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る脚部用エアバッグ装置のエアバッグに係り、エアバッグを内装パネル側から見た斜視図、及び図8(a)中VIIIb−VIIIb断面図である。
【符号の説明】
【0065】
SAB 側突用エアバッグ装置(エアバッグ装置)
11 座席シート
12 背もたれ
13、13”” リテーナ
14 エアバッグ(エアバッグ)
14A〜14D ウエブ(基布)
141、141”” 正面部
142,142’、142”、142”’、142”” 第1の包み片部
143,143’、143”、143”’、143”” 第2の包み片部
144,144’、144”、144”’、144”” 第3の包み片部
145,145”、145”’、145”” 第4の包み片部
146、146”” 挿通孔
15 ガス発生器
15a スタッドボルト(支持部材)
NAB 脚部用エアバッグ装置(エアバッグ装置)
16 内装パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の身体を拘束するエアバッグであって、
所定の形状に裁断した基布を、前記エアバッグを膨張させるガス発生器を包むように折り曲げ、その端部を重ね合わせて綴じることによりほぼ密閉する空間を内部に形成した
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
請求項1記載のエアバッグにおいて、
前記基布は一枚である
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のエアバッグにおいて、
前記基布の重ね合わせ位置に前記ガス発生器を支持する支持部材を挿通させるための挿通孔を設け、この挿通孔に前記支持部材を挿通することにより前記基布の端部を綴じる
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項4】
請求項3記載のエアバッグにおいて、
前記基布は、
展開時に主に前記乗員の身体に対向する正面部と、
この正面部の対向する2辺より延在され、前記ガス発生器を内側に包むように折り曲げて端縁同士を重ね合わせて綴じる第1及び第2の包み片部と、
少なくとも前記正面部の残り1辺より延在され、前記第1及び第2の包み片部で閉じられない開口を閉じ、前記第1及び第2の包み片部の重ね合わせ位置に重ね合わせて綴じる第3の包み片部と
を備えたことを特徴とするエアバッグ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のエアバッグと、
前記エアバッグ内に収納されガスを噴出して前記エアバッグを膨張させるガス発生器と
を有することを特徴とするエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−105446(P2008−105446A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287370(P2006−287370)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】