説明

エアバッグ装置

【課題】自動車の座席の乗員の側方に展開するサイドエアバッグ装置の展開特性を容易に向上する。
【解決手段】インフレータ12のガス供給部22の下側部に、ガス案内体18の案内板部33を対向させる。ガス供給部22の上側部の前側は、開口部34に臨ませる。ガス供給部22の下側部から噴射されたガスを、ガス案内体18の案内板部33に当接して上下に分配し、下部分室52に向かう下側ガス流G1と、上部分室51に向かう上側ガス流G2とを生成する。ガス供給部22の上側部から噴射されたガスは、案内板部33に当接せず、開口部34から隔壁47の上側に沿って直接前側に向かう中央ガス流G3となる。乗員の腹部を保護する部分を迅速に展開できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の乗員の側方に展開するエアバッグを備えたエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車の乗員の側方にエアバッグを展開し、側面衝突時に乗員を保護する側突用のエアバッグ装置が知られている。
【0003】
そして、この種のエアバッグ装置として、座席の側部に収納され、乗員とドアとの間に展開して、乗員の胸部、腹部、及び胴部を保護するいわゆるサイドエアバッグと呼ばれるエアバッグ装置が知られている。このエアバッグ装置は、袋状のエアバッグと、このエアバッグの後側部に収納されてガスを供給するインフレータを備えている。
【0004】
このようなエアバッグとして、エアバッグの内側を1カ所の隔壁で区画して上室及び下室を形成するとともに、インフレータに円筒状の分配器を被せ、分配器の上下の端部に設けた流出口からそれぞれ直接的に上室と下室とにガスを供給する構成が知られている。また、エアバッグの内側を2カ所の隔壁で区画し、上室、中室、及び下室を形成し、インフレータに円筒状の分配器を被せるとともに、この分配器の側面に円孔状の流出口を形成し、各流出口からそれぞれ直接的に上室と下室とにガスを供給する構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−210048号公報 (図1、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のように、インフレータに円筒状の分配器を被せ、この分配器の上下の端部の流出口からそれぞれ上室と下室とにガスを供給する構成では、分配器が大型化し、エアバッグ装置が大型化するとともに、上下方向の中間位置の隔壁の近傍へのガスの供給が相対的に遅くなり、所望の展開特性を得にくい問題を有している。また、エアバッグの内側を2カ所の隔壁で区画し、上室、中室、及び下室を形成し、インフレータに円筒状の分配器を被せるとともに、この分配器の側面に円孔状の流出口を形成し、各流出口からそれぞれ直接的に上室と下室とにガスを供給する構成では、構成が複雑になり、製造コストが上昇する問題を有している。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、簡略な構成で展開特性の良好なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のエアバッグ装置は、ガスが導入されて膨張展開する膨出部、この膨出部を上下に区画して上部分室と下部分室とを区画形成する隔壁、及びこの隔壁の端部に臨むガス導入部を備えたエアバッグと、前記ガス導入部に位置しガスを供給するガス供給部を備えたインフレータと、前記ガス供給部の一部に対向し上部分室の上端側及び下部分室の下端側に向かってガスを案内する案内板部、及び前記ガス供給部に臨み前記ガス供給部から直接に前記隔壁に沿って前方に向かうガスの流れを許容する開口部を備えたガス案内体とを具備したものである。
【0008】
そして、この構成では、インフレータのガス供給部から供給されたガスは、ガス案内体の案内板部で上下に案内され、上下の分室が所望の特性で展開する。インフレータのガス供給部から供給されたガスの一部は、開口部から直接に隔壁に沿って前方に向かうため、隔壁に沿った部分が迅速に展開する。エアバッグ及びガス案内体の構成は簡略で、製造コストが低減される。
【0009】
請求項2記載のエアバッグ装置は、請求項1記載のエアバッグ装置において、エアバッグは、着席した乗員の側方に展開し、このエアバッグの展開状態で、上部分室は着席した乗員の胸部の側方に位置するとともに、下部分室は着席した乗員の腰部の側方に位置し、ガス案内体の開口部は、隔壁に沿って上部分室に供給されるガスの流れを許容し、前記ガス案内体は、この開口部によるガスの流れを含め、上部分室よりも下部分室により多くのガスを案内するものである。
【0010】
そして、この構成では、隔壁に沿った部分が迅速に展開し、乗員の腹部が保護されるとともに、下部分室に十分なガスが供給され、腰部が安定して保護される。
【0011】
請求項3記載のエアバッグ装置は、請求項1または2記載のエアバッグ装置において、ガス案内体は、開口部を挟み、上部分室にガスを案内する上部案内板と、下部分室にガスを案内する下部案内板とを備えたものである。
【0012】
そして、この構成では、上部案内板と下部案内板とを備えたガス案内体により、上部分室と下部分室とに容易に所望の特性でガスが分配される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエアバッグ装置によれば、インフレータのガス供給部から供給されたガスを、ガス案内体の案内板部で上下に案内し、上下の分室を所望の特性で展開できるとともに、インフレータのガス供給部から供給されたガスの一部は、開口部から直接に隔壁に沿って前方に向かうため、隔壁に沿った部分を迅速に展開できるという良好な展開特性を実現できる。エアバッグ及びガス案内体の構成は簡略で、製造コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のエアバッグ装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1ないし図3において、11はエアバッグ装置で、このエアバッグ装置11は、被取付部材である自動車の車室の座席(シート)Sに取り付けられて、座席Sに着座した被保護物である乗員と対向物である車体のドアDとの間に膨張展開して乗員を保護するいわゆるサイドエアバッグ装置を構成している。なお、乗員はダミーAにより示し、このダミーAは、腰部A1、胸部A2、及び腹部A3を備えている。また、前後、両側、上下などの方向は、自動車の直進方向を基準とし、図1におけるFが前方、Uが上方、図3におけるWが側方である。
【0016】
そして、このエアバッグ装置11は、ガスを発生させ噴射するインフレータ12と、このインフレータ12が供給するガスにより膨張展開する袋状のエアバッグ14と、これらインフレータ12とエアバッグ14とを連結して座席に固定する固定具16と、この固定具16に一体に形成されたガス案内体18と、これら部材を収納するカバーである図示しない樹脂製のケース体となどを備えている。
【0017】
そして、インフレータ12は、図1、図2及び図4に示すように、略円柱状の本体部21と、この本体部21の一端部から突設されたガス供給部22とを備えている。また、本体部21の他端部には、このインフレータ12を動作させるための端子部23が設けられている。そして、ガス供給部22は、ディフューザとも呼ばれるもので、本体部21の一端部から、本体部21より径寸法の小さいあるいは本体部21と略同じ径寸法の円柱状に突設され、周面には、ガス吐出口となる複数の円孔が形成されている。すなわち、このガス供給部22は、インフレータ12の一端部に設けられているものであるが、若干の長さ寸法を有している。また、このインフレータ12は、例えばいわゆるハイブリッドタイプで、端子部23に点火信号が流れることにより、本体部21の内部に充填した推進薬を反応させるとともに、本体部21の内部のボンベに貯留したガスを開放して、ガス供給部22から比較的低い温度のガスを噴射する。
【0018】
また、固定具16は、リテーナとも呼び得るもので、図4に示すように、板金を折曲形成したリテーナ本体部25と、取付手段である図示しないボルトとを備えている。そして、リテーナ本体部25は、略平板状の基板部27と、この基板部27から一体に延設されたインフレータ保持部28と、同じく基板部27から一体に延設されたガス案内体18とを備えている。そして、インフレータ保持部28は、基板部27の後端部から前側に向かってインフレータ12の本体部21を挿入可能な略円筒状に湾曲され、このインフレータ保持部28の中間位置にインフレータ12に弾性的に当接して位置決め保持する支持部29が設けられているとともに、このインフレータ保持部28の先端部に基板部27に対向する固定部30が設けられている。そして、この固定部30及び基板部27の固定部30に対向する位置には、円孔状の取付孔31が形成されている。そして、インフレータ保持部28にインフレータ12の本体部21を挿入した状態で、固定部30の取付孔31に挿入したボルトをリテーナ本体部25及びエアバッグ14に貫通させ、さらに座席を構成する部材に挿入し、ナットを螺合して締め付けることにより、固定具16、インフレータ12及びエアバッグ14の後端部が座席Sに固定されている。
【0019】
また、ガス案内体18は、ガスを分配するもので、リテーナ本体部25の下端部から一体に延設され、すなわち金属板により断面円弧状の円筒状などをなす案内板部33と、この案内板部33の前側部の上側に位置する開口部34とを備えている。そして、案内板部33は、インフレータ12及びガス供給部22よりも径寸法の大きい円筒状をなし、インフレータ12のガス供給部22の下側の一部のみを囲み、すなわち、ガス供給部22の上側の一部を除いた部分に対向して形成されている。また、開口部34は、ガス供給部22の前側部の上側に位置し、言い換えれば、ガス供給部22の前側部の上部を矩形状に切り欠くようにして形成され、すなわち、ガス供給部22の前側部を前方に露出させている。また、開口部34の後側は、案内板部33とリテーナ本体部25の基板部27あるいはインフレータ保持部28とを一体に連接する連接部36となっている。
【0020】
また、エアバッグ14は、1枚あるいは複数枚のパネルとも呼ばれる基布を縫合して構成されている。本実施の形態では、互いに略同型の2枚の内外側の基布39,40を重ね合わせ、部品挿入部となる後端の開口部41の部分を除いて外周部近傍を縫合部42で縫い合わせることにより、偏平な袋体の外殻が構成されている。そして、この袋体の内側が、膨出部44となるとともに、この膨出部44の後端部の下側部に、ガス導入部45が設定されている。そして、この後側のガス導入部45が、エアバッグ14の展開方向後方の端末部となる。さらに、エアバッグ14の内側には、基布による隔壁47が設けられ、膨出部44が上下に区画されている。この隔壁47は、例えば、矩形状の基布の長手方向に沿った両側部を、外殻を構成する基布に縫合線48に沿って縫合して形成されている。そして、この隔壁47は、後端部である基端部47aをガス導入部45に臨ませて、前側に向かって下がるように傾斜し、先端部は縫合部42で縫い合わされている。より詳細には、図2に示すように、隔壁47の基端部は、ガス案内体18の案内板部33と開口部34との境界部分に位置するように配置されている。さらに、この隔壁47には、ガスが挿通可能な連通口49が形成されている。
【0021】
そして、この隔壁47により、エアバッグ14は、所定の幅寸法で偏平に展開するとともに、エアバッグ14の膨出部44は、上側に位置する第1の分室である上部分室51と、下側に位置する第2の分室である下部分室52とに区画されている。そして、上部分室51は、いわば胸腹用チャンバーであり、エアバッグ14の展開時には、乗員の肩部、胸部、腹部に対向して展開する。そして、下部分室52は、いわば腰用チャンバーであり、エアバッグ14の展開時には、乗員の腰部に対向して展開するようになっている。また、下部分室52の容積は、上部分室51の容積より小さく形成されている。
【0022】
また、図示しないが、エアバッグ14の後端部近傍には、折り重ねた状態で互いに連通する上下2対の取付孔が形成されている。また、膨出部44には、必要に応じて展開時の幅寸法を規制する規制部が、例えば基布39,40同士を縫着して形成されている。さらに、これら基布39,40には、必要に応じて防炎布などとも呼ばれる補強布が重ねて縫い合わされている。
【0023】
そして、このエアバッグ装置11は、インフレータ12と固定具16とを組み合わせた組立体を構成し、この組立体をエアバッグ14に挿入するとともに、固定具16のボルトを折り重ねたエアバッグ14の取付孔から外部に引き出し、適宜の状態にエアバッグ14を折り畳んで組み立てられる。この状態で、上記のように、インフレータ12のガス供給部22は、固定具16の案内板部33と開口部34とに対向し、エアバッグ14のガス導入部45に配置されている。そして、このエアバッグ装置11は、必要に応じて図示しないケースに収納した上で、座席Sの側部に収納し、ナットなどを用いて、固定具16のボルトを座席Sのフレームなどに固定することにより、エアバッグ装置11が自動車の座席に取り付けられる。さらに、このエアバッグ装置11のインフレータ12の端子部23は、ハーネス23aを介して、車両側に備えられた制御手段としての制御装置に接続される。この制御装置は、CPUを備えるとともに、単数あるいは複数のセンサが接続され、乗員や衝突の状態に応じてインフレータ12を起動させる点火信号を送る。そして、センサは、必要に応じて、乗員の体型や姿勢を検知するものとして、CCDカメラ、シートに内蔵された体重(ウェイト)センサ、及びシートの前後位置やリクライニング状態を検出するシートスライドリクライニングセンサなどを備えている。また、センサは、衝突の状態を検知するものとして、車体側面に衝突検知センサを備えている。
【0024】
そこで、車両が側面衝突などの衝撃を受けると、各センサのセンシング信号に基づき、制御手段は、乗員の保護に適切な状態でインフレータ12を起動し、ガス供給部22からガスを噴射する。すると、このガスの圧力により、エアバッグ14はカバーを開いて座席から突出し、乗員とドアパネルDとの間に膨張展開する。
【0025】
そして、図1及び図2に示すように、インフレータ12のガス供給部22から外周側に噴射されるガスのうち、ガス供給部22の下側部から噴射されたガスは、ガス案内体18の案内板部33に当接して上下に分配して案内され、下部分室52の高さ方向の先端部である下端部に向かう下側ガス流G1と、上部分室51の高さ方向の先端部である上端部に向かう上側ガス流G2とが生じる。同時に、ガス供給部22の上側部から噴射されたガスは、案内板部33に当接せず、開口部34から隔壁47の上側に沿って直接前側に向かう中央ガス流G3となる。ここで、各ガス流の分配率については、下側ガス流G1の分配率が、上側ガス流G2と中央ガス流G3との分配率の和よりも大きくなるように設定されており、下側ガス流G1が、ガスの流量が最大の主流となり、上側ガス流G2が続く流量の副流となり、中央ガス流G3が最も流量の小さい副副流となっている。一方、ガス流の速度については、ガス案内体18の案内板部33に遮られずにエアバッグ14内に直接供給される中央ガス流G3が、他のガス流G1,G2よりも速くなっている。このようにして、下側ガス流G1により、下部分室52が膨張展開するとともに、上側ガス流G2及び中央ガス流G3により上部分室51が膨張展開し、エアバッグ14の膨張部44の全域を扁平に展開させ、乗員を保護する。
【0026】
このように、本実施の形態によれば、乗員の側方に展開して胸部から腰部を保護するいわゆるサイドエアバッグ装置において、インフレータ12のガス供給部22から供給されたガスを固定具16のガス案内体18で上下に分配し、上下の分室51,52を所望の特性で展開させ、乗員を保護できる。ここで、ガス案内体18は、隔壁47の部分に案内板部33を備えてガスを分配するとともに、ガス案内体18は、案内板部33でガス供給部22の一部のみを覆い、他の部分を前方に直接に露出させる開口部34としたため、開口部34から直接に隔壁47に沿って前方Fに向かう速いガス流を生成し、エアバッグ14を上下のみならず前方Fにもバランス良く迅速に展開させることができる。
【0027】
そして、案内板部33で干渉されずに開口部34から直接供給されるガスは、胸部及び腹部を保護する上部分室51の隔壁47に沿った部分に供給されるため、ドアDのトリムが車室に張り出すなどして寸法の余裕(クリアランス)が小さい腹部に対向する部分について、腰部を保護する下部分室52に続き、あるいは、下部分室52と同時に、安定して迅速に展開させ、着席した乗員の腹部を保護できる好ましい展開特性を容易に実現できる。
【0028】
また、ガス案内体18は、この開口部34によるガスの流れを含め、上部分室51よりも下部分室52により多くのガスを分配し、かつ、下部分室52は上部分室51よりも容積が小さいため、下部分室52を迅速に大きな反力を有して展開させ、比較的に質量の大きい腰部を迅速かつ確実に支え、乗員を安定して保護できる。
【0029】
また、ガス案内体18により、ガス流を下側、上側、前側と大きく3方に分散させて、偏ることなくエアバッグ14を広く円滑に展開でき、保護エリアを安定して広く確保できる好ましい展開特性を実現できる。
【0030】
また、ガス案内体18は、インフレータ12の全体を覆わず、さらにはガス供給部22の全周を覆わないとともに、エアバッグ14も1カ所の隔壁47を設けるのみで良いため、構造を簡略化して、製造コストを低減できるとともに、エアバッグ装置11の軽量化が可能になる。特に、1カ所のみにガス供給部22を有する1個のインフレータ12のみを用いる構成について、構造を簡略化して、製造コストを低減できるとともに、エアバッグ装置11の軽量化が可能になる。
【0031】
また、ガス案内体18の案内板部33の位置、面積、あるいは形状の調整により、ガスを分配する特性を容易に調整でき、容易に展開特性を向上できる。
【0032】
そして、このように容易にエアバッグ14の展開特性を向上できるため、特殊な特性や構造のインフレータやエアバッグを用いる必要がなく、製造コストを低減できる。
【0033】
図5に、本実施の形態のエアバッグ装置11の実験結果を示す。図5(a)は、図5(c)に模式的に示す第1の実施の形態のエアバッグ装置11を座席Sを模した架台65に装着し、エアバッグ装置11を作動させた0.0074秒後のエアバッグ14の状態である。また、図5(b)は、図5(d)に模式的に示す比較例のエアバッグ装置71を座席Sを模した架台65に装着し、このエアバッグ装置71を作動させた0.0074秒後のエアバッグ14の状態である。この実験の結果、ガス案内体18に開口部34を設けない部分のみを変更した比較例のエアバッグ装置71に対し、ガス案内体18に開口部34を設けた本実施の形態のエアバッグ装置11は、隔壁47の上側部、すなわち乗員の腹部に対向する部分P1で、エアバッグ14が迅速かつ円滑に展開することが確認された。
【0034】
なお、上記の実施の形態では、ガス案内体18の案内板部33は、インフレータ12のガス供給部22の下側部のみに対向させたが、この構成に限られず、案内板部33をガス供給部22の上部のみに対向させて下側部に開口部34を臨ませることもできる。また、案内板部33をガス供給部22の上部のみに対向させて下側部に開口部34を臨ませることもできる。また、案内板部33をガス供給部22の高さ方向の中央部のみに対向させ、ガス供給部22の上下の端部の部分に開口部34を臨ませることもできる。さらに、案内板部33を複数の部分とし、例えば図6に示すように、案内板部33を、開口部34を上下に挟むように配置し、開口部34の上側に位置する上部案内板部61と、開口部34の下側に地位する下部案内板部62とで構成し、上部案内板部61で上部分室51にガスを案内し、下部案内板部62で下部分室52にガスを案内することもできる。さらに、このように上部案内板部61と下部案内板部62とを備える構成では、図7に示すように、これら上部案内板部61と下部案内板部62との位置の設定を変更することで、ガスを分配する特性のみならず開口部34から前方Fに向かう中央ガス流G3の方向を調整でき、隔壁47の形状などに応じて好ましい特性を容易に実現できる。
【0035】
また、上記の各実施の形態では、開口部34から直接供給されるガスは、隔壁47の上側に供給されるものとしたが、この構成に限られず、隔壁47の下側に沿って供給する構成、あるいは、隔壁の上下両方に沿って供給する構成としても、エアバッグ14を前方に迅速に展開する好ましい特性を実現できる。
【0036】
また、ガス案内体18の案内板部33は、円筒状の他、角筒状とし、また、平板状とし、あるいは、ガス供給部22からガスが供給される方向に対して傾斜して設けることもできる。
【0037】
また、隔壁47は、別体の基布を用いる他、外殻を構成する基布39,40同士を縫い合わせた縫製により形成することもできる。
【0038】
また、エアバッグ14は、2室の構成に限られず、3室以上の複数の分室を設けることもできる。
【0039】
また、インフレータ12、エアバッグ14、固定具16の形状や構成は上記のものに限られず、種々の構成のものを用いることができる。例えば、インフレータは、燃焼によりガスを供給するいわゆるパイロ式の構成を採ることもできる。また、エアバッグには、供給されたガスを排気可能な排気口を設けることもできる。
【0040】
また、複数のガス供給部を備えたインフレータを用いる場合、あるいは複数のインフレータを用いる場合に、各ガス供給部について、上記のガス案内体18の構成を適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、例えば、自動車の座席の側部に収納され、乗員とドアとの間に展開して、乗員を保護するいわゆるサイドエアバッグとして用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のエアバッグ装置の一実施の形態を示す側方からみた説明図である。
【図2】同上エアバッグ装置の一部を拡大した説明図である。
【図3】同上エアバッグ装置の展開状態の前方から見た説明図である。
【図4】同上エアバッグ装置のインフレータと固定具とを組み合わせた状態の側面図である。
【図5】同上エアバッグ装置の実験結果を示す説明図である。
【図6】本発明のエアバッグ装置の他の実施の形態を示す一部の説明図である。
【図7】本発明のエアバッグ装置のさらに他の実施の形態を示す一部の説明図である。
【符号の説明】
【0043】
11 エアバッグ装置
12 インフレータ
14 エアバッグ
18 ガス案内体
22 ガス供給部
33 案内板部
34 開口部
44 膨出部
45 ガス導入部
47 隔壁
51 上部分室
52 下部分室
61 上部案内板部
62 下部案内板部
F 前方
W 側方

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが導入されて膨張展開する膨出部、この膨出部を上下に区画して上部分室と下部分室とを区画形成する隔壁、及びこの隔壁の端部に臨むガス導入部を備えたエアバッグと、
前記ガス導入部に位置しガスを供給するガス供給部を備えたインフレータと、
前記ガス供給部の一部に対向し上部分室の上端側及び下部分室の下端側に向かってガスを案内する案内板部、及び前記ガス供給部に臨み前記ガス供給部から直接に前記隔壁に沿って前方に向かうガスの流れを許容する開口部を備えたガス案内体と
を具備したことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
エアバッグは、着席した乗員の側方に展開し、このエアバッグの展開状態で、上部分室は着席した乗員の胸部の側方に位置するとともに、下部分室は着席した乗員の腰部の側方に位置し、
ガス案内体の開口部は、隔壁に沿って上部分室に供給されるガスの流れを許容し、
前記ガス案内体は、この開口部によるガスの流れを含め、上部分室よりも下部分室により多くのガスを案内する
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
ガス案内体は、開口部を挟み、上部分室にガスを案内する上部案内板部と、下部分室にガスを案内する下部案内板部とを備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載のエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−247373(P2008−247373A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95246(P2007−95246)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】