説明

エストロゲン受容体モジュレーター

本発明は式(I)のギバン誘導体、その合成、及びエストロゲン受容体モジュレーターとしてのその使用に関する。本発明の化合物はエストロゲン受容体のリガンドであり、従って、骨量減少、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、パジェット病、歯周病、軟骨変性、子宮内膜症、子宮筋腫、ホットフラッシュ、LDLコレステロール値上昇、心臓血管疾患、認知機能障害、加齢による軽度認知障害、脳変性疾患、再狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満症、失禁、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、性機能不全、高血圧、網膜変性及び癌、特に乳癌、子宮癌及び前立腺癌等のエストロゲン機能に関連する各種症状の治療又は予防に有用であると思われる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
天然及び合成エストロゲンは更年期症候群の緩和、座瘡の治療、月経困難症及び不正子宮出血の治療、骨粗鬆症の治療、多毛症の治療、前立腺癌の治療、ホットフラッシュの治療並びに心臓血管疾患の治療等の広範な治療用途がある。エストロゲンは治療価値が非常に高いため、エストロゲン応答組織でエストロゲン様作用に似た作用をもつ化合物の発見に多大な関心が寄せられている。
【0002】
エストロゲン受容体はERα及びERβの2形態があることが分かっている。リガンドはこれらの2形態と別々に結合し、各形態は結合するリガンドに対して異なる組織特異性をもつ。従って、ERα又はERβに選択的な化合物が得られるため、特定リガンドに対してある程度の組織特異性を付与することが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
副作用なしにエストロゲン代替療法と同一のプラスの応答を生じることができる化合物が当分野で必要とされている。身体の各種組織に対して選択的効果を発揮するエストロゲン様化合物も必要とされている。
【0004】
本発明の化合物はエストロゲン受容体のリガンドであり、従って、骨量減少、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、パジェット病、歯周病、軟骨変性、子宮内膜症、子宮筋腫、ホットフラッシュ、LDLコレステロール値上昇、心臓血管疾患、認知機能障害、加齢による軽度認知障害、脳変性疾患、再狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満症、失禁、不安症、エストロゲン欠乏による鬱病、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、性機能不全、高血圧、網膜変性及び癌、特に乳癌、子宮癌及び前立腺癌等のエストロゲン機能に関連する各種症状の治療又は予防に有用であると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
本発明はエストロゲン機能に関連する各種症状の治療又は予防に有用な化合物及び医薬組成物に関する。本発明の1実施形態は下式:
【0006】
【化2】

の化合物とその医薬的に許容可能な塩及び立体異性体によるエストロゲン関連障害の治療又は予防である。
【0007】
(発明の詳細な説明)
本発明はエストロゲン機能に関連する各種症状の治療又は予防に有用な化合物及び医薬組成物に関する。本発明の1実施形態は下式:
【0008】
【化3】

[式中、XはO、N−OR、N−N(R、又はC1−6アルキリデンであり、前記アルキリデン基は場合によりヒドロキシル、アミノ、O(C1−4アルキル)、NH(C1−4アルキル)又はN(C1−4アルキル)で置換されており;
はフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C3−6シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール及びヘテロアリール基は場合によりフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ及びORから構成される群から選択される1、2又は3個の基で置換されており;
は水素、R、(C=O)R又は(C=O)ORであり;
は水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1−2アルキル、シアノ又はORであり;
は水素、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヒドロキシルであり;
は水素、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヒドロキシルであるか;
あるいはRとRは一緒になってそれらが結合している炭素原子と共にカルボニル基を形成し;
は水素、フルオロ、クロロ又はC1−5アルキルであり、前記アルキル基は場合によりクロロ、ブロモ、ヨード、OR及び1〜5個のフルオロから構成される群から選択される基で置換されており;
は水素、C1−4アルキル又はフェニルであり、前記アルキル及びフェニル基は場合によりヒドロキシル、アミノ、O(C1−4アルキル)、NH(C1−4アルキル)、N(C1−4アルキル)、クロロ、ブロモ、1〜5個のフルオロ、ヨード、シアノ及びORから構成される群から選択される基で置換されており;2個以上のR基が存在する場合には、独立して選択される]の化合物とその医薬的に許容可能な塩及び立体異性体又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体である。
【0009】
前記実施形態の1クラスにおいて、XはOである。
【0010】
前記実施形態の1クラスにおいて、Rはフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ、C1−4アルキル又はフェニルであり、前記アルキル及びフェニル基は場合によりフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ及びORから構成される群から選択される1、2又は3個の基で置換されている。前記実施形態のサブクラスにおいて、Rはクロロ、ブロモ、シアノ、メチル、エチル又はフェニルであり、前記メチル及びフェニル基は場合によりフルオロ、クロロ及びブロモから構成される群から選択される1、2又は3個の基で置換されている。
【0011】
前記実施形態の1クラスにおいて、Rは水素である。
【0012】
前記実施形態の1クラスにおいて、Rは水素、フルオロ、クロロ、ブロモ又はメチルである。
【0013】
前記実施形態の1クラスにおいて、Rは水素である。
【0014】
前記実施形態の1クラスにおいて、Rは水素である。
【0015】
前記実施形態の1クラスにおいて、Rは水素又はC1−4アルキルである。
【0016】
前記実施形態の1クラスにおいて、Rは水素である。
【0017】
本発明の非限定的な例としては限定されないが、
1,5−ジクロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
2−ヒドロキシ−5−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
2−ヒドロキシ−5−(トリフルオロメチル)ギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
2−ヒドロキシ−6−オキソギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−5−カルボニトリル;
5−クロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
5−ブロモ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
5−クロロ−2−ヒドロキシ−1−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
5−ブロモ−2−ヒドロキシ−1−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
5−クロロ−1−フルオロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
5−ブロモ−1−フルオロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
5−ブロモ−1−クロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
1−クロロ−2−ヒドロキシ−5−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
1−クロロ−5−エチル−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
1−クロロ−2−ヒドロキシ−6−オキソギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−5−カルボニトリル;
1−クロロ−2−ヒドロキシ−5−フェニルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
1−ブロモ−5−クロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
1,5−ジブロモ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
2−ヒドロキシ−5−メチル−9−プロピルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
1,5−ジクロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6,10−ジオン;
1−クロロ−5−エチル−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6,10−ジオン;
1,5−ジクロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オンオキシム;
(7β,9aβ)−1,5−ジクロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−2−ヒドロキシ−5−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−2−ヒドロキシ−5−(トリフルオロメチル)ギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−2−ヒドロキシ−6−オキソギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−5−カルボニトリル;
(7β,9aβ)−5−クロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−5−ブロモ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−5−クロロ−2−ヒドロキシ−1−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−5−ブロモ−2−ヒドロキシ−1−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−5−クロロ−1−フルオロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−5−ブロモ−1−フルオロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−5−ブロモ−1−クロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−1−クロロ−2−ヒドロキシ−5−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−1−クロロ−5−エチル−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−1−クロロ−2−ヒドロキシ−6−オキソギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−5−カルボニトリル;
(7β,9aβ)−1−クロロ−2−ヒドロキシ−5−フェニルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−1−ブロモ−5−クロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−1,5−ジブロモ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9β,9aβ)−2−ヒドロキシ−5−メチル−9−プロピルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−1,5−ジクロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6,10−ジオン;
(7β,9aβ)−1−クロロ−5−エチル−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6,10−ジオン;
(7β,9aβ)−1,5−ジクロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オンオキシム;
及びその医薬的に許容可能な塩が挙げられる。
【0018】
上記化合物と医薬的に許容可能なキャリヤーから構成される医薬組成物も本発明の範囲に含まれる。本発明は許容可能なキャリヤーと本明細書に具体的に開示する任意化合物から構成される医薬組成物も含むものとする。本発明は本発明の医薬組成物の製造方法にも関する。本発明は本発明の化合物及び医薬組成物の製造に有用な方法と中間体にも関する。本発明のこれら及び他の態様は本明細書の教示から明らかにされる。
【0019】
(用途)
本発明の化合物はエストロゲン受容体の選択的モジュレーターであるため、哺乳動物、好ましくはヒトにおけるエストロゲン受容体機能に関連する各種疾患又は症状を治療又は予防するために有用である。
【0020】
本発明の化合物は当分野で公知の同様の化合物よりも望ましい代謝プロフィルをもつという利点がある。薬物代謝はヒト肝ミクロソームアッセイでin vitro測定することができる。例えば、Regina W.Wang,“Validation of(−)−N−3−benzyl−phenobarbital as a selective inhibitor of CYP2C19 in human liver microsomes,”DMD 32:584−586,2004参照。
【0021】
エストロゲン受容体機能に関連する各種疾患及び症状としては限定されないが、骨量減少、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、パジェット病、歯周病、軟骨変性、子宮内膜症、子宮筋腫、ホットフラッシュ、LDLコレステロール値上昇、心臓血管疾患、認知機能障害、加齢による軽度認知障害、脳変性疾患、再狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満症、失禁、不安症、エストロゲン欠乏による鬱病、閉経周辺期鬱病、出産後鬱病、月経前症候群、躁鬱病、痴呆症、強迫行為、注意欠陥障害、睡眠障害、神経過敏、衝動性、アンガーマネージメント、多発性硬化症及びパーキンソン病、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、性機能不全、高血圧、網膜変性並びに癌、特に乳癌、子宮癌及び前立腺癌が挙げられる。このような症状を本発明の化合物で治療する場合、治療に必要な量は特定疾患により異なり、当業者が容易に確認することができる。治療と予防の両者が本発明の範囲に含まれるが、これらの症状の治療が好ましい用途である。
【0022】
本発明は更に本発明の化合物及び医薬組成物を投与することにより、処置を必要とする哺乳動物にエストロゲン受容体調節作用を誘起する方法に関する。
【0023】
本発明は更に本発明の化合物及び医薬組成物を投与することにより、処置を必要とする哺乳動物にエストロゲン受容体アンタゴニスト作用を誘起する方法に関する。エストロゲン受容体アンタゴニスト作用はERαアンタゴニスト作用、ERβアンタゴニスト作用、又はERα及びERβ混合アンタゴニスト作用のいずれでもよい。
【0024】
本発明は更に本発明の化合物及び医薬組成物を投与することにより、処置を必要とする哺乳動物にエストロゲン受容体アゴニスト作用を誘起する方法に関する。エストロゲン受容体アゴニスト作用はERαアゴニスト作用、ERβアゴニスト作用、又はERα及びERβ混合アゴニスト作用のいずれでもよい。本発明の好ましい方法はERβアゴニスト作用を誘起する。
【0025】
本発明は更に本発明の化合物及び医薬組成物を投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における骨量減少、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、パジェット病、歯周病、軟骨変性、子宮内膜症、子宮筋腫、ホットフラッシュ、LDLコレステロール値上昇、心臓血管疾患、認知機能障害、加齢による軽度認知障害、脳変性疾患、再狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満症、失禁、不安症、エストロゲン欠乏による鬱病、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、性機能不全、高血圧、網膜変性及び癌、特に乳癌、子宮癌及び前立腺癌等のエストロゲン機能に関連する障害を治療又は予防する方法に関する。本発明の具体例は鬱病の治療又は予防方法である。本発明の具体例は不安症の治療又は予防方法である。本発明の具体例はホットフラッシュの治療又は予防方法である。本発明の具体例は癌、特に乳癌、子宮癌及び前立腺癌の治療又は予防方法である。本発明の具体例は心臓血管疾患の治療又は予防方法である。
【0026】
本発明の1実施形態は本発明の化合物及び医薬組成物を投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における癌、特に乳癌、子宮癌及び前立腺癌を治療又は予防する方法である。乳癌、子宮癌又は前立腺癌を治療するためにSERMが有用であることは文献公知である。T.J.Powles,“Breast cancer prevention,”Oncologist 2002;7(1):60−4;Park,W.C.and Jordan,V.C.,“Selective estrogen receptor modulators(SERMS)and their roles in breast cancer prevention,”Trends Mol Med.2002 Feb;8(2):82−8;Wolff,A.C.ら,“Use of SERMs for the adjuvant therapy of early−stage breast cancer,”Ann N Y Acad Sci.2001 Dec;949:80−8;Hou,Y.F.ら,“ERbeta exerts multiple stimulative ffects on human breast carcinoma cells,”Oncogene 2004 Jul 29;23(34):5799−806;Steiner,M.S.ら,“Selective estrogen receptor modulators for the chemoprevention of prostate cancer,”Urology 2001 Apr;57(4 Suppl 1):68−72;Lai,J.S.ら,“Metastases of prostate cancer express estrogen receptor beta,”Urology 2004 Oct;64(4):814−20;Imamov,O.ら,“Estrogen receptor β in prostate cancer,”N Engl J Med 351;26,2773−2274;Koehler,Kら,“Reflections on the Discovery and Significance of Estrogen Receptor β,”Endocrine Reviews,May 2005,26(3):465−478;Neubauerら,“The Selective Estrogen Receptor Modulator Trioxifene(LY33314)Inhibitis Metastasis and Extends Survival in the PAIII Rat Prostatic Carcinoma Model,”Cancer Research 63,6056−6062,September 15,2003参照。
【0027】
本発明の別の実施形態は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における転移性骨疾患を治療又は予防する方法である。転移性骨疾患の治療におけるSERMの有用性は文献公知である。Campisi,C.ら,“Complete resoultion of breast cancer bone metastasis through the use of beta−interferon and tamoxifen,”Eur J Gynaecol Oncol 1993;14(6):479−83参照。
【0028】
本発明の別の実施形態は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物におけるホットフラッシュを治療又は予防する方法である。ホットフラッシュの治療におけるSERMの有用性は文献に記載されている。Seidlova−Wuttke D.ら,“Belamcanda chinensis and the thereof purified tectorigenin have selective estrogen receptor modulator activities,”Phytomedicine.2004 Jul;11(5):392−403参照。
【0029】
本発明の別の実施形態は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における女性化乳房を治療又は予防する方法である。女性化乳房の治療におけるSERMの有用性は文献公知である。Ribeiro,G.and Swindell R.,“Adjuvant tamoxifen for male breast cancer.”Br J Cancer 1992;65:252−254;Donegan,W.,“Cancer of the Male Breast,”JGSM Vol.3,Issue 4,2000参照。
【0030】
本発明の別の実施形態は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における閉経後骨粗鬆症、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、悪性腫瘍による高カルシウム血症、骨量減少及び骨折を治療又は予防する方法である。骨粗鬆症、悪性腫瘍による高カルシウム血症、骨量減少又は骨折を治療又は予防するためにSERMが有用であることは文献公知である。Jordan,V.C.ら,“Selective estrogen receptor modulation and reduction in risk of breast cancer,osteoporosis and coronary heart disease,”Natl Cancer Inst 2001 Oct;93(19):1449−57;Bjarnason,NHら,“Six and twelve month changes in bone turnover are realted to reduction in vertebral fracture risk during 3 years of raloxifene treatment in postmenopausal osteoporosis,”Osteoporosis Int 2001;12(11):922−3;Fentiman,I.S.,“Tamoxifen protects against steroid−induced bone loss,”Eur J Cancer 28:684−685(1992);Rodan,G.A.ら,“Therapeutic Approaches to Bone Diseases,”Science Vol 289,1 Sept.2000参照。
【0031】
本発明の別の実施形態は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における歯周病又は歯の喪失を治療又は予防する方法である。哺乳動物における歯周病又は歯の喪失を治療するためにSERMを使用することは文献公知である。Rodan,G.A.ら,“Therapeutic Approaches to Bone Diseases,”Science Vol 289,1 Sept.2000 pp.1508−14参照。
【0032】
本発明の別の実施形態は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物におけるパジェット病を治療又は予防する方法である。哺乳動物におけるパジェット病を治療するためにSERMを使用することは文献公知である。Rodan,G.A.ら,“Therapeutic Approaches to Bone Diseases,”Science Vol 289,1 Sept.2000 pp.1508−14参照。
【0033】
本発明の別の実施形態は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における子宮筋腫を治療又は予防する方法である。子宮筋腫又は子宮平滑筋腫を治療するためにSERMを使用することは文献公知である。Palomba,S.ら,“Effects of raloxifene treatment on uterine leiomyomas in postmenopausal women,”Fertil Steril.2001 Jul;76(1):38−43参照。
【0034】
本発明の別の実施形態は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における肥満症を治療又は予防する方法である。肥満症を治療するためにSERMを使用することは文献公知である。Picard,F.ら,“Effects of the estrogen antagonist EM−652.HCl on energy balance and lipid metabolism in ovariectomized rats,”Int J Obes Relat Metab Disord.2000 Jul;24(7):830−40参照。
【0035】
本発明の別の実施形態は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における軟骨変性、関節リウマチ又は変形性関節症を治療又は予防する方法である。軟骨変性、関節リウマチ又は変形性関節症を治療するためにSERMを使用することは文献公知である。Badger,A.M.ら,“Idoxifene,a novel selective estrogen receptor modulator,is effective in a rat model of adjuvant−induced arthritis.”J Pharmacol Exp Ther.1999 Dec;291(3):1380−6参照。
【0036】
本発明の別の実施形態は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における子宮内膜症を治療又は予防する方法である。子宮内膜症を治療するためにSERMを使用することは文献公知である。Steven R.Goldstein,“The Effect of SERMs on the Endometrium,”Annals of the New York Academy of Sciences 949:237−242(2001)参照。
【0037】
本発明の別の実施形態は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における尿失禁を治療又は予防する方法である。尿失禁を治療するためにSERMを使用することは文献公知である。Goldstein,S.R.,“Raloxifene effect on frequency of surgery for pelvic floor relaxation,”Obstet Gynecol.2001 Jul;98(1):91−6参照。
【0038】
本発明の別の実施形態は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における心臓血管疾患、再狭窄症を治療又は予防し、LDLコレステロール値を低下させ、血管平滑筋細胞増殖を抑制する方法である。エストロゲンはコレステロールの生合成と心臓血管系の健康に作用すると思われる。統計的に、心臓血管疾患の発生率は閉経後の女性と男性でほぼ等しいが、閉経前の女性は男性よりも心臓血管疾患の発生率が著しく低い。閉経後の女性はエストロゲンが欠乏しているため、エストロゲンは心臓血管疾患の予防に有益な役割を果たすと考えられる。機序は十分に解明されていないが、エストロゲンは肝臓で低密度脂質(LDL)コレステロール受容体をアップレギュレートし、過剰のコレステロールを除去することが立証されている。臓血管疾患、再狭窄症の治療又は予防、LDLコレステロール値の低下及び血管平滑筋細胞増殖の抑制にSERMが有用であることは文献公知である。Nuttall,MEら,“Idoxifene:a novel selective estrogen receptor modulator prevents bone loss and lowers cholesterol levels in ovariectomized rats and decreases uterine weight in intact rats,”Endocrinology 1998 Dec;139(12):5224−34;Jordan,V.C.ら,“Selective estrogen receptor modulation and reduction in risk of breast cancer,osteoporosis and coronary heart disease,”Natl Cancer Inst 2001 Oct;93(19):1449−57;Guzzo JA.,“Selective estrogen receptor modulators−a new age of estrogens in cardiovascular disease?,”Clin Cardiol 2000 Jan;23(1):15−7;Simoncini T,Genazzani AR.,“Direct vascular effects of estrogens and selective estrogen receptor modulators,”Curr Opin Obstet Gynecol 2000 Jun;12(3):181−7参照。
【0039】
本発明の別の実施形態は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における認知機能障害、加齢による軽度認知障害、又は脳変性疾患を治療又は予防する方法である。モデルにおいて、エストロゲンは認知機能に有益な効果があることが示されている(例えば不安症や鬱病の緩和及びアルツハイマー病の治療又は予防)。エストロゲンはコリン作動性機能、ニューロトロフィン及びニューロトロフィン受容体発現を増加することにより中枢神経系に作用する。エストロゲンは更にグルタミン作動性シナプス伝達を増加し、アミロイド前駆体蛋白質プロセシングを変化させ、神経保護作用を生じる。従って、本発明のエストロゲン受容体モジュレーターは認知機能を改善するか又は加齢による軽度認知障害、注意欠陥障害、睡眠障害、神経過敏、衝動性、アンガーマネージメント、多発性硬化症及びパーキンソン病を治療するのに有益であると思われる。その開示内容全体を参照により本明細書に組込むSawada,H and Shimohama,S,“Estrogens and Parkinson disease:novel approach for neuroprotection,”Endocrine.2003 Jun;21(1):77−9;McCullough LD,and Hum,PD,“Estrogen and ischemic neuroprotection:an integrated view,”Trends Endocrinol Metab.2003 Jul;14(5):228−35参照。認知機能障害を予防するためにSERMが有用であることは文献公知である。Yaffe,K.,K.Krueger,S.Sarkarら2001,“Cognitive function in postmenopausal women treated with raloxifene,”N.Eng.J.Med.344:1207−1213参照。
【0040】
本発明の別の実施形態は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における鬱病を治療又は予防する方法である。鬱病を予防するためにSERMが有用であることは文献に記載されている。Carranza−Liram S.,Valentino−Figueroa ML,“Estrogen therapy for depression in postmenopausal women,”Int J Gynnaecol Obstet 1999 Apr;65(1):35−8参照。具体的に、エストロゲン受容体β(ERβ)選択的アゴニストは鬱病、閉経周辺期鬱病、出産後鬱病、月経前症候群、躁鬱病、不安症、痴呆症、及び強迫行為等の不安又は抑鬱性障害の治療に単剤又は他の薬剤との併用剤として有用である。各種抑鬱性障害の治療に天然エストロゲンである17β−エストラジオールが有効であることは臨床試験により実証されている。参照により本明細書に組込むSchmidt PJ,Nieman L,Danaceau MA,Tobin MB,Roca CA,Murphy JH,Rubinow DR,“Estrogen replacement in perimenopause−related depression:a preliminary report,”Am J Obstet Gynecol 183:414−20,2000;及びSoares CN,Almeida OP,Joffe H,Cohen LS,“Efficacy of estradiol for the treatment of depressive disorders in perimenopausal women:a double−blind,randomized,placebo−controlled trial,”Arch Gen Psychiatry.58:537−8,2001参照。参照により本明細書に組込むBetheaら(Lu NZ,Shlaes TA,Gundlah C,Dziennis SE,Lyle RE,Bethea CL,“Ovarian steroid action on tryptophan hydroxylase protein and serotonin compared to localization of ovarian steroid receptors in midbrain of guinea pigs,”Endocrine 11:257−67,1999はエストロゲンの抗鬱活性が背側縫線核に集中したセロトニン含有細胞におけるセロトニン合成の調節により媒介されることを示唆している。
【0041】
本発明の別の実施形態は治療有効量の上記化合物又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することにより、処置を必要とする哺乳動物における不安症を治療又は予防する方法である。不安症等の感情プロセスの調節にエストロゲン受容体が関与していることは文献に記載されている。Krezel,W.ら,“Increased anxiety and synaptic plasticity in estrogen receptor beta−deficient mice,”Proc Natl Acad Sci USA 2001 Oct 9;98(21):12278−82参照。
【0042】
本発明の別の実施形態は炎症、炎症性腸疾患又は過敏性腸症候群の治療又は予防方法である。クローン病や潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患は腸(腸管)が炎症する慢性疾患であり、再発性腹部痙攣及び下痢を生じることが多い。炎症及び炎症性腸疾患を治療するためにエストロゲン受容体モジュレーターを使用することは文献に記載されている。Harris,H.A.ら,“Evaluation of an Estrogen Receptor−β Agonist in Animal Models of Human Disease,”Endocrinology,Vol.144,No.10 4241−4249参照。
【0043】
本発明の別の実施形態は高血圧の治療又は予防方法である。エストロゲン受容体βは血管機能及び血圧の調節に役割を果たすことが報告されている。Zhuら,“Abnormal Vacular Function and Hypertension in Mice Deficient in Estrgoen Receptor β,”Science,Vol 295,Issue 5554,505−508,18 January 2002参照。
【0044】
本発明の別の実施形態は男性又は女性における性機能不全の治療又は予防方法である。性機能不全を治療するためにエストロゲン受容体モジュレーターを使用することは文献に記載されている。Baulieu,E.ら,,“Dehydroepiandrosterone(DHEA),DHEA sulfate,and aging:Contribution of the DHEAge Study to a scociobiomedical issue,”PNAS,April 11,2000,Vol.97,No.8,4279−4282;Spark,Richard F.,“Dehydroepiandrosterone:a springboard hormone for female sexuality,”Fertility and Sterility,Vol.77,No.4,Suppl 4,April 2002,S19−25参照。
【0045】
本発明の別の実施形態は網膜変性の治療又は予防方法である。エストロゲンは進行型加齢黄斑変性症の危険を低減するのに有益な効果があることが示されている。Snow,K.K.ら,“Association between reproductive and hormonal factors and age−related maculopathy in postmenopausal women,”American Journal of Ophthalmology,Vol.134,Issue 6,December 2002,pp.842−48参照。
【0046】
本発明の具体例は処置を必要とする哺乳動物における骨量減少、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、パジェット病、歯周病、軟骨変性、子宮内膜症、子宮筋腫、ホットフラッシュ、心臓血管疾患、認知機能障害、加齢による軽度認知障害、脳変性疾患、再狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満症、失禁、不安症、鬱病、閉経周辺期鬱病、出産後鬱病、月経前症候群、躁鬱病、痴呆症、強迫行為、注意欠陥障害、睡眠障害、神経過敏、衝動性、アンガーマネージメント、多発性硬化症及びパーキンソン病、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、性機能不全、高血圧、網膜変性、エストロゲン依存性癌又は前立腺癌の治療又は予防用医薬の製造における任意化合物のいずれかの使用である。
【0047】
本発明の化合物は標準的な製薬法に従って単独又は、好ましくは医薬的に許容可能なキャリヤーもしくは希釈剤と、場合によりミョウバン等の公知アジュバントと共に医薬組成物として哺乳動物、好ましくはヒトに投与することができる。化合物は経口又は静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸内及び局所投与経路等で非経口投与することができる。
【0048】
経口用錠剤の場合には、一般に使用されるキャリヤーとしてはラクトース及びコーンスターチが挙げられ、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤を一般に添加する。カプセル形態の経口投与には、有用な希釈剤としてはラクトースとドライコーンスターチが挙げられる。本発明の治療用化合物の経口使用には、選択された化合物を例えば錠剤もしくはカプセル剤、又は水溶液もしくは水性懸濁液の形態で投与することができる。錠剤又はカプセル剤の形態で投与する場合には、活性薬剤成分をラクトース、澱粉、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸2カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール等の医薬的に許容可能な非毒性不活性経口キャリヤーと配合することができ、液体形態で投与する場合には、経口薬剤成分をエタノール、グリセロール、水等の任意の医薬的に許容可能な非毒性不活性経口キャリヤーと配合することができる。更に、所望又は必要に応じて適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤及び着色剤を混合物に添加してもよい。適切な結合剤としては澱粉、ゼラチン、天然糖類(例えばグルコース又はβ−ラクトース、コーン甘味料)、天然及び合成ガム(例えばアラビアガム、トラガカントガム又はアルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ロウ等が挙げられる。これらの剤形で使用される滑沢剤としてはオレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。崩壊剤としては限定されないが、澱粉、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム等が挙げられる。水性懸濁液が経口使用に必要な場合には、活性成分を乳化剤及び懸濁剤と配合する。所望により、所定甘味剤又は香味剤を添加してもよい。筋肉内、腹腔内、皮下及び静脈内用には、一般に活性成分の滅菌溶液を調製し、溶液のpHを適切に調整及び緩衝する必要がある。静脈内用では、製剤を等張にするように溶質の総濃度を調節する必要がある。
【0049】
本発明の化合物は小さな一枚膜リポソーム、大きな一枚膜リポソーム及び多重膜リポソーム等のリポソーム送達システムの形態で投与することもできる。リポソームはコレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリン等の各種リン脂質から形成することができる。
【0050】
本発明の化合物は化合物分子を結合する個々のキャリヤーとしてモノクローナル抗体を使用することにより送達することもできる。本発明の化合物は標的可能な薬剤キャリヤーとしての可溶性ポリマーと結合することもできる。このようなポリマーとしてはポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロプルメタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシ−エチルアスパルトアミド−フェノール、又はパルミトイル基で置換したポリエチレンオキシド−ポリリジンが挙げられる。更に、本発明の化合物は薬剤の制御放出を実施するのに有用な類の生分解性ポリマー(例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロックコポリマー)と結合することもできる。
【0051】
本発明の化合物は骨量減少、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、パジェット病、歯周病、軟骨変性、子宮内膜症、子宮筋腫、ホットフラッシュ、LDLコレステロール値上昇、心臓血管疾患、認知機能障害、加齢による軽度認知障害、脳変性疾患、再狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満症、失禁、不安症、エストロゲン欠乏による鬱病、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、性機能不全、高血圧、網膜変性並びに癌、特に乳癌、子宮癌及び前立腺癌の治療又は予防に有用な公知物質と併用しても有用である。本明細書に開示する障害の治療又は予防に有用な他の物質と本明細書に開示する化合物の併用も本発明の範囲に含まれる。当業者は該当薬剤及び疾患の特徴に基づいてどの薬剤の組み合わせが有用であるかを判断することができる。このような物質としては、有機ビスホスホネート;カテプシンK阻害剤;エストロゲン又はエストロゲン受容体モジュレーター;アンドロゲン受容体モジュレーター;破骨細胞プロトンATPase阻害剤;HMG−CoAレダクターゼ阻害剤;インテグリン受容体アンタゴニスト;骨芽細胞同化剤(例えばPTH);カルシトニン;ビタミンD又は合成ビタミンDアナログ;選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI);アロマターゼ阻害剤;並びにその医薬的に許容可能な塩及び混合物が挙げられる。好ましい組み合わせは本発明の化合物と有機ビスホスホネートである。別の好ましい組み合わせは本発明の化合物とカテプシンK阻害剤である。別の好ましい組み合わせは本発明の化合物とエストロゲンである。別の好ましい組み合わせは本発明の化合物とアンドロゲン受容体モジュレーターである。別の好ましい組み合わせは本発明の化合物と骨芽細胞同化剤である。
【0052】
「有機ビスホスホネート」としては限定されないが、化学式:
【0053】
【化4】

(式中、nは0〜7の整数であり、AとXはH、OH、ハロゲン、NH、SH、フェニル、C1−30アルキル、C3−30分岐鎖又はシクロアルキル、2又は3個のNを含む2環式環構造、C1−30置換アルキル、C1−10アルキル置換NH、C3−10分岐鎖又はシクロアルキル置換NH、C1−10ジアルキル置換NH、C1−10アルコキシ、C1−10アルキル置換チオ、チオフェニル、ハロフェニルチオ、C1−10アルキル置換フェニル、ピリジル、フラニル、ピロリジニル、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、及びベンジルから構成される群から独立して選択され、但しnが0であるときにはAとXは同時にH又はOHから選択されず;あるいはAとXは一緒になってそれらが結合している1又は複数の炭素原子と共にC3−10環を形成する)の化合物が挙げられる。
【0054】
上記化学式において、十分な原子が化学式に選択される限り、アルキル基は直鎖、分岐鎖、又は環状のいずれでもよい。C1−30置換アルキルとしては広範な置換基が挙げられ、非限定的な例としてはフェニル、ピリジル、フラニル、ピロリジニル、イミダゾニル、NH、C1−10アルキル又はジアルキル置換NH、OH、SH、及びC1−10アルコキシから構成される群から選択されるものが挙げられる。
【0055】
上記化学式はA又はX置換基に複雑な炭素環、芳香族及びヘテロ原子構造も含み、非限定的な例としてはナフチル、キノリル、イソキノリル、アダマンチル、及びクロロフェニルチオが挙げられる。
【0056】
本発明ではビスホスホネートの医薬的に許容可能な塩及び誘導体も有用である。塩の非限定的な例としてはアルカリ金属、アルカリ性金属、アンモニウム、及びモノ−、ジ−、トリ−、又はテトラ−C1−30−アルキル置換アンモニウムから構成される群から選択されるものが挙げられる。好ましい塩はナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアンモニウム塩から構成される群から選択されるものである。ナトリウム塩がより好ましい。誘導体の非限定的な例としてはエステル、水和物及びアミドから構成される群から選択されるものが挙げられる。
【0057】
なお、本発明の治療剤に関して本明細書で使用する「ビスホスホネート」なる用語はジホスホネート、ビホスホン酸、及びジホスホン酸と、これらの材料の塩及び誘導体も含むものとする。ビスホスホネートに関する特定学名の使用は特に指定しない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0058】
ビスホスホネートの非限定的な例としてはアレンドロネート、シマドロネート、クロドロネート、エチドロネート、イバンドロネート、インカドロネート、ミノドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、パミドロネート、ピリドロネート、リセドロネート、チルドロネート、及びゾレンドロネートとその医薬的に許容可能な塩及びエステルが挙げられる。特に好ましいビスホスホネートはアレンドロネートであり、特にアレンドロン酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム又はアンモニウム塩である。好ましいビスホスホネートの例はアレンドロン酸のナトリウム塩、特にアレンドロン酸の水和ナトリウム塩である。塩は自然数モルの水又は非自然数モルの水で水和することができる。好ましいビスホスホネートの別の例は、特に水和塩がアレンドロン酸一ナトリウム三水和物である場合のアレンドロン酸の水和ナトリウム塩である。
【0059】
有機ビスホスホネートの厳密な用量は投薬スケジュール、選択する特定ビスホスホネート、哺乳動物又はヒトの年齢、寸法、性別及び状態、治療する障害の種類と重篤度、並びに他の関連医学的及び物理的因子により異なる。ヒトの場合には、ビスホスホネートの有効経口用量は一般に約1.5〜約6000μg/kg体重、好ましくは約10〜約2000μg/kg体重である。代替投薬レジメンでは、毎日以外の間隔、例えば週1回、週2回、隔週、月2回の間隔でビスホスホネートを投与することができる。週1回投薬レジメンではアレンドロン酸一ナトリウム三水和物35mg/週又は70mg/週を投与する。ビスホスホネートは月1回、半年に1回、1年に1回あるいは更に低頻度で投与してもよい。WO01/97788(公開日2001年12月27日)及びWO01/89494(公開日2001年11月29日)参照。
【0060】
「エストロゲン」としては限定されないが、天然エストロゲン[7−エストラジオール(E)、エストロン(E)、及びエストリオール(E)]、合成結合型エストロゲン、経口避妊薬及びエストロゲン硫酸が挙げられる。Gruber CJ,Tschugguel W,Schneeberger C,Huber JC,“Production and actions of estrogens”N Engl J Med 2002 Jan 31;346(5):340−52参照。
【0061】
「エストロゲン受容体モジュレーター」とはメカニズムに関係なく、エストロゲンと受容体の結合を妨害又は阻害する化合物を意味する。エストロゲン受容体モジュレーターの例としては限定されないが、エストロゲン、プロゲストゲン、エストラジオール、ドロロキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、TSE−424、タモキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノエート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾン、及びSH646が挙げられる。
【0062】
「カテプシンK阻害剤」とはシステインプロテアーゼカテプシンKの活性を妨害する化合物を意味する。カテプシンK阻害剤の非限定的な例はPCT公開WO00/55126(Axys Pharmaceuticals)及びWO01/49288(Merck Frosst Canada & Co.及びAxys Pharmaceuticals)に記載されている。
【0063】
「アンドロゲン受容体モジュレーター」とはメカニズムに関係なく、アンドロゲンと受容体の結合を妨害又は阻害する化合物を意味する。アンドロゲン受容体モジュレーターの例としてはフィナステリド及び他の5αレダクターゼ阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾール、並びに酢酸アビラテロンが挙げられる。
【0064】
「破骨細胞プロトンATPアーゼ阻害剤」とは破骨細胞の頂端膜に存在しており、骨吸収プロセスに重要な役割を果たすことが報告されているプロトンATPアーゼの阻害剤を意味する。このプロトンポンプは骨粗鬆症及び関連代謝疾患の治療及び予防に潜在的に有用な骨吸収抑制剤の設計の魅力的なターゲットである。その開示内容全体を参照により本明細書に組込むC.Farinaら,“Selective inhibitors of the osteoclast vacuolar proton ATPase as novel bone antiresorptive agents,”DDT,4:163−172(1999))参照。
【0065】
「HMG−CoAレダクターゼ阻害剤」とは3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼの阻害剤を意味する。HMG−CoAレダクターゼに対して阻害活性をもつ化合物は当分野で周知のアッセイを使用することにより容易に確認することができる。例えば、米国特許第4,231,938号の6欄、及びWO84/02131の30−33頁に記載又は引用されているアッセイ参照。「HMG−CoAレダクターゼ阻害剤」と「HMG−CoAレダクターゼの阻害剤」なる用語は本明細書で使用する場合には同義である。
【0066】
使用可能なHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の例としては限定されないが、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標);米国特許第4,231,938号、4,294,926号及び4,319,039号参照)、シンバスタチン(ZOCOR(登録商標);米国特許第4,444,784号、4,820,850号及び4,916,239号参照)、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標);米国特許第4,346,227号、4,537,859号、4,410,629号、5,030,447号及び5,180,589号参照)、フルバスタチン(LESCOL(登録商標);米国特許第5,354,772号、4,911,165号、4,929,437号、5,189,164号、5,118,853号、5,290,946号及び5,356,896号参照)、アトルバスタチン(LIPITOR(登録商標);米国特許第5,273,995号、4,681,893号、5,489,691号及び5,342,952号参照)及びセリバスタチン(リバスタチン及びBAYCHOL(登録商標)とも言う;米国特許第5,177,080号参照)が挙げられる。これら及び本発明の方法で使用することができる他のHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の構造式はM.Yalpani,“Cholesterol Lowering Drugs”,Chemistry & Industry,pp.85−89(5 February 1996)の87頁と米国特許第4,782,084号及び4,885,314号に記載されている。本明細書で使用するHMG−CoAレダクターゼ阻害剤なる用語は医薬的に許容可能な全ラクトン及び開環酸形態(即ちラクトン環を開環して遊離酸を形成する場合)とHMG−CoAレダクターゼ阻害活性をもつ化合物の塩及びエステル形態を含み、従って、このような塩、エステル、開環酸及びラクトン形態の使用が本発明の範囲に含まれる。ラクトン部分とその対応する開環酸形態の1例を構造I及びIIとして下記に示す。
【0067】
【化5】

【0068】
開環酸(open acid)形態が存在し得るHMG−CoAレダクターゼ阻害剤では、開環酸から塩及びエステル形態を形成できることが好ましく、このような全形態が本明細書で使用する「HMG−CoAレダクターゼ阻害剤」なる用語の意味に含まれる。好ましくはHMG−CoAレダクターゼ阻害剤はロバスタチン及びシンバスタチンから選択され、シンバスタチンが最も好ましい。本明細書においてHMG−CoAレダクターゼ阻害剤に関して「医薬的に許容可能な塩」なる用語は一般に遊離酸を適切な有機又は無機塩基と反応させることにより製造される本発明で使用される化合物の非毒性塩を意味し、特にナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛及びテトラメチルアンモニウム等のカチオンから形成される塩と、アンモニア、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、1−p−クロロベンジル−2−ピロリジン−1’−イル−メチルベンズ−イミダゾール、ジエチルアミン、ピペラジン、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等のアミンから形成される塩が挙げられる。HMG−CoAレダクターゼ阻害剤の塩形態のその他の例としては限定されないが、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、硼酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、蓚酸塩、パモ酸塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、亜酢酸塩、琥珀酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド及び吉草酸塩が挙げられる。
【0069】
記載するHMG−CoAレダクターゼ阻害剤化合物のエステル誘導体は温血動物の血流に吸収されると分解して薬剤形を放出し、改善された治療効果を薬剤に発揮させるプロドラッグとして作用することができる。
【0070】
上記に使用した「インテグリン受容体アンタゴニスト」とは生理的リガンドがαβインテグリンと結合するのを選択的に阻害、抑制ないし妨害する化合物、生理的リガンドがαβインテグリンと結合するのを選択的に阻害、抑制ないし妨害する化合物、生理的リガンドがαβインテグリン及びαβインテグリンの両者と結合するのを阻害、抑制ないし妨害する化合物、並びに毛細血管内皮細胞で発現される特定インテグリンの活性を阻害、抑制ないし妨害する化合物を意味する。この用語は更にαβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ及びαβインテグリンのアンタゴニストも意味する。この用語は更にαβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ及びαβインテグリンの任意組み合わせのアンタゴニストも意味する。H.N.Lodeら,PNAS USA 96:1591−1596(1999)は自然腫瘍転移の根治における抗血管新生αvインテグリンアンタゴニストと腫瘍特異的抗体−サイトカイン(インターロイキン−2)融合蛋白質の相乗作用について検討している。その結果、この組み合わせは癌及び転移性腫瘍増殖の治療に潜在的に有効であることが示唆された。αβインテグリン受容体アンタゴニストは現在入手可能な全薬剤と異なる新規メカニズムにより骨吸収を抑制する。インテグリンは細胞−細胞及び細胞−マトリックス相互作用を媒介するヘテロダイマートランスメンブレン接着受容体である。α及びβインテグリンサブユニットは非共有的に相互作用し、2価カチオン依存的に細胞外マトリックスリガンドと結合する。破骨細胞に最も多量に存在するインテグリンはαβ(>10/破骨細胞)であり、細胞移動及び分極に重要な細胞骨格構成で律速機能を果たすと思われる。αβアンタゴニスト作用は骨吸収の抑制、再狭窄の抑制、黄斑変性の抑制、関節炎の抑制、並びに癌及び転移性増殖の抑制から選択される。
【0071】
「骨芽細胞同化剤」とはPTH等の骨を形成する物質を意味する。副甲状腺ホルモン(PTH)又はそのアミノ末端フラグメント及び類似体を断続投与すると、骨量減少を予防、阻止、部分的に逆行させ、骨形成を刺激することが動物及びヒトで判明した。詳細については、D.W.Dempsterら,“Anabolic actions of parathyroid hormone on bone,”Endocr Rev 14:690−709(1993)参照。副甲状腺ホルモンは骨形成を刺激することにより骨量及び強度を増加する臨床効果があることが立証されている。結果はRM Neerら,New Eng J Med 344 1434−1441(2001)に報告されている。
【0072】
更に、PTHrP−(1−36)等の副甲状腺ホルモン関連蛋白質フラグメント又は類似体は強力なカルシウム尿症治療薬であることが立証されており[M.A.Syedら,“Parathyroid hormone−related protein−(1−36)stimulates renal tubular calcium reabsorption in normal human volunteers:implications for the pathogenesis of humoral hypercalcemia of malignancy,”JCEM 86:1525−1531(2001)参照]、骨粗鬆症の治療用同化剤としても潜在効果があると考えられる。
【0073】
カルシトニンは主に甲状腺で産生される32アミノ酸ペブチドであり、カルシウムとリンの代謝に関与することが知られている。カルシトニンは破骨細胞の活性を阻害することにより骨吸収を抑制する。従って、カルシトニンは骨芽細胞をより有効に機能させ、骨を形成させることができる。
【0074】
「ビタミンD」としては限定されないが、天然に存在しており、ビタミンDの生物学的に活性な水酸化代謝産物(1α−ヒドロキシビタミンD;25−ヒドロキシビタミンD、及び1α,25−ジヒドロキシビタミンD)の生物学的に不活性な前駆体であるビタミンD(コレカルシフェロール)及びビタミンD(エルゴカルシフェロール)が挙げられる。ビタミンDとビタミンDはヒトで同一生物効果をもつ。ビタミンD又はDが循環に流入すると、シトクロムP450−ビタミンD−25−ヒドロキシラーゼにより水酸化され、25−ヒドロキシビタミンDとなる。25−ヒドロキシビタミンD代謝産物は生物学的に不活性であり、腎臓でシトクロムP450−モノオキシゲナーゼ25(OH)D−1α−ヒドロキシラーゼにより更に水酸化され、1,25−ジヒドロキシビタミンDとなる。血清カルシウムが減少すると、カルシウム恒常性を調節し、25−ヒドロキシビタミンDから1,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換を増加することにより血漿カルシウム値を増加する副甲状腺ホルモン(PTH)の産生が増加する。
【0075】
1,25−ジヒドロキシビタミンDはカルシウム及び骨代謝に及ぼすビタミンDの作用に関与していると考えられる。1,25−ジヒドロキシ代謝産物はカルシウム吸収と骨格完全性を維持するために必要な活性ホルモンである。カルシウム恒常性は単球幹細胞を破骨細胞に分化するように誘導すると共にカルシウムを正常範囲に維持することにより1,25−ジヒドロキシビタミンDにより維持され、その結果、カルシウムヒドロキシアパタイトが骨表面に沈着することにより骨石灰化を生じる。Holick,MF,“Vitamin D photobiology,metabolism,and clinical applications,”in Endocrinology,第3版,990−1013(1995),DeGroot Lら編参照。しかし、1α,25−ジヒドロキシビタミンD値が増加すると、血中カルシウム濃度が増加し、骨代謝によるカルシウム濃度の制御に異常をきたし、高カルシウム血症となる可能性がある。1α,25−ジヒドロキシビタミンDは更に骨代謝における破骨細胞活性を間接的に調節することができ、濃度が上昇すると、骨粗鬆症の過剰な骨吸収を増加すると予想される。
【0076】
「合成ビタミンDナアログ」としてはビタミンDと同様に作用する非天然化合物が挙げられる。
【0077】
選択的セロトニン再取込み阻害剤は脳内セロトニン量を増加することにより作用する。SSRIは米国で10年間にわたって鬱病の治療に使用され、成果を上げている。SSRIの非限定的な例としてはフルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、及びフルボキサミンが挙げられる。SSRIは月経前症候群や月経前不機嫌性障害等のエストロゲン機能に関連する障害の治療にも使用されている。Sundstrom−Poromaa I,Bixo M,Bjorn I,Nordh O.,“Compliance to antidepressant drug therapy for treatment of premenstrual syndrome,”J Psychosom Obstet Gynaecol,2000 Dec;21(4):205−11参照。
【0078】
本明細書で使用する「アロマターゼ阻害剤」なる用語はアロマターゼを阻害することが可能な化合物が挙げられ、例えばアミノグルテミド(CYTANDREN(登録商標))、アナストラゾール(ARMIDEX(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))、フォルメスタン(LENATRON(登録商標))、エクセメスタン(AROMASIN(登録商標))、アタメスタン(1−メチルアンドロスタ−1,4−ジエン−3,17−ジオン)、フェドロゾール(4−(5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン−5−イル)−ベンゾニトリル,一塩酸塩)、フィンロゾール(4−(3−(4−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−プロピル)−ベンゾニトリル)、ボロゾール(6−[(4−クロロフェニル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル]−1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール)、YM−511(4−[N−(4−ブロモペンジル)−N−(4−シアノフェニル)アミノ]−4H−1,2,4−トリアゾール)等の市販阻害剤が挙げられる。
【0079】
一定用量として製剤化する場合、このような併用製剤は下記用量範囲内の本発明の化合物と、その許容用量範囲内の他の医薬活性剤を使用する。あるいは、併用製剤が不適切な場合には本発明の化合物を医薬的に許容可能な公知物質と逐次使用することができる。
【0080】
本発明の化合物に関して「投与」なる用語とその活用形(例えば、化合物を「投与する」)は治療を必要とする動物の系に化合物又は化合物のプロドラッグを導入することを意味する。本発明の化合物又はそのプロドラッグを1種以上の他の活性剤(例えばビスホスホネート等)と併用する場合には、「投与」とその活用形は各々化合物又はそのプロドラッグと他の物質の同時及び逐次導入を含むものとする。本発明は本発明の化合物のプロドラッグをその範囲に含む。一般に、このようなプロドラッグは必要な化合物に容易にin vivo変換可能な本発明の化合物の機能的誘導体である。従って、本発明の治療方法において、「投与する」なる用語は具体的に開示する化合物又は具体的に開示しないとしても、患者に投与後に特定化合物にin vivo変換する化合物で各種記載症状を治療することを意味する。従来の適切なプロドラッグ誘導体の選択及び製造法は例えば参照によりその開示内容全体を本明細書に組込む“Design of Prodrugs,”H.Bundgaard編,Elsevier,1985に記載されている。これらの化合物の代謝産物としては、本発明の化合物を生体環境に導入後に生産される活性種が挙げられる。
【0081】
本発明は更に医薬的に許容可能なキャリヤー又は希釈剤の存在下又は不在下で治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む、本明細書に記載する疾患の治療に有用な医薬組成物にも関する。本発明の適切な組成物としては、本発明の化合物と薬理的に許容可能なキャリヤー(例えばpHレベルが例えば7.4の食塩水)を含む水溶液が挙げられる。溶液は局所ボーラス注射により患者の血流に導入することができる。
【0082】
本発明の化合物をヒト対象に投与する場合には、1日用量は一般に処方医により決定され、一般に個々の患者の年齢、体重、及び応答と、患者の症状の重篤度により異なる。
【0083】
1適用例では、治療中の哺乳動物に適量の化合物を投与する。指定効果のために使用する場合、本発明の経口用量は約0.01mg/kg体重/日(mg/kg/日)〜約100mg/kg/日、好ましくは0.01〜10mg/kg/日、最も好ましくは0.1〜5.0mg/kg/日である。経口投与の場合、組成物は治療する患者の症状に合わせて活性成分0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100及び500mgを含有する錠剤とすることが好ましい。薬剤は一般に活性成分約0.01mg〜約500mg、好ましくは活性成分約1mg〜約100mgを含有する。静脈内投与に最適な用量は定速輸液中に約0.1〜約10mg/kg/分である。本発明の化合物は1日1回投与してもよいし、合計1日用量を1日2回、3回又は4回に分けて投与してもよいという利点がある。更に、本発明の好ましい化合物は適切な鼻腔内ビークルの局所使用により鼻腔内形態で投与してもよいし、当業者に周知の経皮パッチ形態を使用して経皮経路で投与してもよい。経皮送達システムの形態で投与するには、当然のことながら投薬期間を通して断続的でなく連続的に投与する。
【0084】
本発明の化合物はエストロゲンに媒介される症状の治療に有用な他の物質と併用することができる。このような併用剤の個々の成分は治療期間中の異なる時点で別々に投与することもできるし、分割又は単回併用形態で同時投与することもできる。従って、本発明はこのような全同時又は交互投与レジメンを含むものであり、「投与」なる用語は相応に解釈すべきである。当然のことながら、本発明の化合物とカテプシンに媒介される症状の治療に有用な他の物質の併用の範囲は原則としてエストロゲン機能に関連する障害の治療に有用な任意医薬組成物との任意併用を含む。
【0085】
従って、本発明の範囲は本発明の化合物と、有機ビスホスホネート;カテプシンK阻害剤;エストロゲン;エストロゲン受容体モジュレーター;アンドロゲン受容体モジュレーター;破骨細胞プロトンATPase阻害剤;HMG−CoAレダクターゼ阻害剤;インテグリン受容体アンタゴニスト;骨芽細胞同化剤;カルシトニン;ビタミンD;合成ビタミンDアナログ;選択的セロトニン再取込み阻害剤;アロマターゼ阻害剤;並びにその医薬的に許容可能な塩及び混合物から選択される第2の物質の併用を含む。
【0086】
本発明のこれら及び他の態様は本明細書の教示から明らかにされる。
【0087】
(定義)
本明細書で使用する「組成物」なる用語は特定量の特定成分を含有する製剤と、特定量の特定成分の組み合わせにより直接又は間接的に得られる任意製剤を意味する。
【0088】
本明細書で使用する「治療有効量」なる用語は研究者、獣医、医師又は他の臨床技術者により求められる生物又は医学的応答を組織、系、動物又はヒトに誘発する活性化合物又は薬剤の量を意味する。
【0089】
本明細書で使用する疾患「を治療する」又は「の治療」なる用語は疾患の予防、即ち疾患になる危険又は素因があるが、まだ疾患の症状を発現していない哺乳動物に疾患の臨床症状が生じないようにすること;疾患の抑制、即ち疾患又はその臨床症状の発生を阻止又は低減すること;あるいは疾患の緩和、即ち疾患又はその臨床症状を逆行させることを含む。
【0090】
本明細書で使用する「骨吸収」なる用語は破骨細胞が骨を分解するプロセスを意味する。
【0091】
「アルキル」なる用語は直鎖又は分岐鎖非環式飽和炭化水素から水素原子1個を形式的に除去することにより誘導される一価置換基を意味する(即ち−CH、−CHCH、−CHCHCH、−CH(CH、−CHCHCHCH、−CHCH(CH、−C(CH等)。
【0092】
「アルケニル」なる用語は直鎖又は分岐鎖非環式不飽和炭化水素から水素原子1個を形式的に除去することにより誘導される一価置換基を意味する(即ち−CH=CH、−CH=CHCH、−C=C(CH、−CHCH=CH等)。
【0093】
「アルキニル」なる用語は炭素−炭素三重結合を含む直鎖又は分岐鎖非環式不飽和炭化水素から水素原子1個を形式的に除去することにより誘導される一価置換基を意味する(即ち−C≡CH、−C≡CCH、−C≡CCH(CH、−CHC≡CH等)。
【0094】
「アルキリデン」なる用語は同一炭素原子から水素原子2個を形式的に除去することにより直鎖又は分岐鎖非環式飽和炭化水素から誘導される二価置換基を意味する(即ち=CH、=CHCH、=C(CH等)。
【0095】
「シクロアルキル」なる用語は飽和単環式炭化水素から水素原子1個を形式的に除去することにより誘導される一価置換基を意味する(即ちシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、又はシクロヘプチル)。
【0096】
本明細書で使用する「アリール」なる用語は単環式又は二環式芳香族炭化水素から水素原子1個を形式的に除去することにより誘導される一価置換基を意味する。アリール基の例としてはフェニル、インデニル、及びナフチルが挙げられる。
【0097】
本明細書で使用する「ヘテロアリール」なる用語はN、O、又はSから選択される1、2、3、又は4個のヘテロ原子を含む単環式又は二環式芳香族環系から水素原子1個を形式的に除去することにより誘導される一価置換基を意味する。ヘテロアリール基の例としては限定されないが、ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ベンズイミダゾリル、インドリル、及びプリニルが挙げられる。ヘテロアリール置換基は炭素原子に結合してもよいし、ヘテロ原子を介して結合してもよい。
【0098】
「ハロ」なる用語はヨード、ブロモ、クロロ及びフルオロを含む。
【0099】
「置換」なる用語は指定置換基による置換の多重度を含むものとする。複数の置換基部分を開示又は請求の範囲に記載する場合には、置換される化合物は単数形又は複数形で開示又は請求の範囲に記載する置換基部分の1種以上で独立して置換することができる。独立して置換とは、(2個以上の)置換基が同一でも異なっていてもよいことを意味する。
【0100】
本発明は本明細書に開示する化合物の保護誘導体も含む。例えば、本発明の化合物がヒドロキシル又はカルボニル等の基を含む場合には、これらの基を適切な保護基で保護することができる。適切な保護基の包括的リストは参照によりその開示内容全体を本明細書に組込むT.W.Greene,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,Inc.1981に記載されている。本発明の化合物の保護誘導体は当分野で周知の方法により製造することができる。
【0101】
本発明の化合物は(E.L.Eliel and S.H.Wilen,Stereochemistry of Carbon Compounds,John Wiley & Sons,New York,1994,1119−1190頁に記載されているように)不斉中心、キラル軸、及びキラル面をもつことができ、ラセミ化合物、ラセミ混合物、及び個々のジアステレオマーとして存在することができ、光学異性体を含むその可能な全異性体及び混合物が本発明に含まれる。更に、本明細書に開示する化合物は互変異性体として存在することができ、一方の互変異性体構造しか図示していない場合にも両方の互変異性形態を本発明の範囲に含むものとする。例えば、下記化合物Aに関する任意記載は互変異性体構造Bとその混合物も含み、その逆も同様である。
【0102】
【化6】

【0103】
任意変数(例えばR,R,R等)が任意成分中に2回以上出現する場合には、出現毎のその定義は各々独立している。また、置換基と変数の組み合わせはこのような組み合わせにより安定な化合物が得られる場合のみに許容可能である。置換基から環系の内側に引いた線は指定する結合が置換可能な任意環原子に結合できることを意味する。環系が多環式である場合には、結合は近接環上のみの適切な任意炭素原子と結合するものとする。
【0104】
当然のことながら、本発明の化合物上の置換基及び置換パターンは容易に入手可能な出発材料から当分野で公知の技術及び下記方法により容易に合成可能な化学的に安定な化合物が得られるように当業者が選択することができる。置換基自体が2個以上の基で置換されている場合には、当然のことながら、これらの複数の基は安定な構造が得られる限り、同一炭素上にあってもよいし、異なる炭素上にあってもよい。「場合により1個以上の置換基で置換された」なる表現は「場合により少なくとも1個の置換基で置換された」なる表現と同義であり、このような場合には、好ましい実施形態は0〜3個の置換基をもつ。
【0105】
本発明の化合物を選択する際には、当業者に自明の通り、各種置換基、即ちR,R,Rは化学構造結合性の周知原理に従って選択すべきである。
【0106】
本発明の代表的な化合物は一般にα及び/又はβエストロゲン受容体に対してマイクロモル未満の結合親和性を示し、好ましくはβエストロゲン受容体のアゴニストとして作用する。従って、本発明の化合物はエストロゲン機能に関連する障害をもつ哺乳動物の治療に有用である。
【0107】
本発明の化合物はラセミ形でも個々のエナンチオマーとしても入手可能である。便宜上、構造によっては単一エナンチオマーとして図式的に示す場合もあるが、特に指定しない限り、ラセミ形と純エナンチオマー形の両者を含むものとする。本発明の化合物のシス−トランス立体配置を指定する場合には、特に指定しない限り、立体配置は相対的であると解釈すべきであることに留意されたい。例えば、(+)又は(−)の表記は指定するような絶対立体配置をもつ指定化合物を表すと解釈すべきである。
【0108】
ラセミ混合物は多数の慣用方法の任意のものによりその個々のエナンチオマーに分離することができる。これらの方法としてはキラルクロマトグラフィー、キラル助剤による誘導体化後にクロマトグラフィー又は結晶化により分離する方法、及びジアステレオマー塩の分別結晶化が挙げられる。プロキラル中間体アニオン等のエナンチオマープロトン化等の脱ラセミ化も利用することができる。
【0109】
本発明の化合物はエストロゲンに媒介される症状の治療に有用な他の物質と併用することができる。このような併用剤の個々の成分は治療期間中の異なる時点で別々に投与することもできるし、分割又は単回併用形態で同時投与することもできる。従って、本発明はこのような全同時又は交互投与レジメンを含むものであり、「投与」なる用語は相応に解釈すべきである。当然のことながら、本発明の化合物とエストロゲンに媒介される症状の治療に有用な他の物質の併用の範囲は原則としてエストロゲン機能に関連する障害の治療に有用な任意医薬組成物との任意併用を含む。
【0110】
本発明の組成物を使用する投薬レジメンは患者の型、種、年齢、体重、性別及び病態、治療する症状の重篤度、投与経路、患者の腎及び肝機能、並びに使用する特定化合物又はその塩等の種々の因子に従って選択される。通常の技術をもつ医師、獣医又は臨床医は疾患の進行を予防、抑制又は阻止するために必要な薬剤の有効量を容易に決定及び処方することができる。
【0111】
本発明の方法では、本明細書に詳細に記載する化合物は活性成分を形成することができ、所期投与形態(即ち経口錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、シロップ等)に関して適切に選択され、従来の医薬プラクティスと整合する適切な医薬希釈剤、賦形剤又はキャリヤー(本明細書では「キャリヤー」材料と総称する)と混合して一般に投与される。
【0112】
本発明の化合物の医薬的に許容可能な塩としては無機又は有機酸から形成されるような本発明の化合物の慣用非毒性塩が挙げられる。例えば、慣用非毒性塩としては塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等の無機酸から誘導される塩と、酢酸、プロピオン酸、琥珀酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、蓚酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸から製造される塩が挙げられる。上記医薬的に許容可能な塩及び他の典型的な医薬的に許容可能な塩の製造は参照により本明細書に組込むBergら,“Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.,1977:66:1−19に詳細に記載されている。本発明の化合物の医薬的に許容可能な塩は塩基性又は酸性部分を含む本発明の化合物から従来の化学的方法により合成することができる。一般に、塩基性化合物の塩はイオン交換クロマトグラフィーにより製造されるか、あるいは適切な溶媒又は各種併用溶媒中で遊離塩基を化学量論的量又は過剰の所望塩形成無機又は有機酸と反応させることにより製造される。同様に、酸性化合物の塩は適切な無機又は有機塩基との反応により形成される。
【0113】
下記スキーム及び実施例において、各種試薬記号及び略語は以下の意味をもつ。
AlCl:塩化アルミニウム
BBr:三臭化ホウ素
BrCHCHF:1−ブロモ−2−フルオロエタン
BrCHCHOBn:1−ブロモ−2−ベンジルオキシエタン
CHCl:ジクロロメタン
DBN:1,5−ジアゾビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン
DMAC:N,N−ジメチルアセトアミド
DMF:ジメチルホルムアミド
EtOH:エタノール
EtN:トリエチルアミン
EtSH:エタンチオール
EVK:エチルビニルケトン
HCl:塩酸
HOAc:酢酸
CO:炭酸カリウム
KI:ヨウ化カリウム
KN(TMS):カリウムビス(トリメチルシリル)アミド
LiCl:塩化リチウム
LDA:リチウムジメチルアミド
LiN(TMS):リチウムビス(トリメチルシリル)アミド
MeCO:炭酸メチル
MeCN:シアン化メチル
MeOH:メタノール
MsCl:塩化メシル
MVK:メチルビニルケトン
NaH:水素化ナトリウム
NaI:ヨウ化ナトリウム
NaOH:水酸化ナトリウム
NaOMe:ナトリウムメチラート
NCCOEt:シアノギ酸エチル
NBS:N−ブロモスクシンイミド
NCS:N−クロロスクシンイミド
PdCl(PPh:塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)
Pd(PPh:テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)
PhB(OH):水素化ホウ素フェニル
PhCH:メチルフェニル
PhH:水素化フェニル
PhMe:メチルフェニル
SnMe:テトラメチル錫
THF:テトラヒドロフラン。
【0114】
本発明の新規化合物は適当な材料を使用して下記スキーム及び実施例の手順に従って製造することができ、下記特定実施例により更に例証する。しかし、実施例に例証する化合物が本発明としてみなされる唯一の類を形成すると解釈すべきではない。下記実施例は本発明の化合物の製造の詳細を更に例証する。当業者に容易に理解されるように、以下の製造手順の条件及び工程の公知変形を使用してこれらの化合物を使用することができる。全温度は特に指定しない限り、摂氏である。
【0115】
本発明の化合物はスキームI〜Vに要約する一般方法により製造される。これらのスキームにおいて、RはR又はその前駆体を表し;RIIはR又はその前駆体を表し;RIIIはR又はその前駆体を表し;RIVa及びRIVbは水素以外のR及び/又はRを表し;RはOR及びNRを表し;RVIは水素又はC1−5アルキル基を表し;RはR又はフェノールヒドロキシルの脱離可能な保護基(例えばメチル、メトキシメチル又はベンジル)を表し;Rはカルボキシルエステル化基(例えばメチル、エチル、アリル又はベンジル)を表し;Yは置換可能な脱離基(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード;メタンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ、トリフルオロメチルスルホニルオキシ又はその前駆体(例えばベンジルオキシ又はアセトキシ))を表す。
【0116】
スキームIの合成の出発材料は5−アルコキシ−1−インダノン(1)であり、公知化合物であるか、又は当分野で公知の従来方法により製造することができる。スキームIのステップ1では、5−アルコキシ−1−インダノン(1)を塩基の存在下でシアノギ酸エチルやクロロギ酸エチル等のカルボキシル化剤と反応させ、β−ケトエステル(2)を得る。ステップ2では、β−ケトエステル(2)を次に塩基の存在下でアルキル化剤Z−CHCH−Y(式中、Zは置換可能な脱離基を表す)と反応させ、中間体(3)を得る。Yも置換可能な脱離基を表す場合には、Zがより容易に置換される基となるようにこれらの2個の基の相対反応性を適宜選択する。ステップ3では、適切な求電子試薬を利用する求電子芳香族置換反応によりインダノンの4位にR置換基を導入する。所定のR基の導入では、この初期求電子芳香族置換反応後に遷移金属触媒交差カップリング反応を実施してもよい。あるいは、ステップ3を後に回し、ステップ4の後又はステップ6の後に実施してもよい。ステップ4では、エステルの加水分解又は他の分解後に脱カルボキシル化することにより中間体(4)のカルボキシル基を除去し、(5)を得る。ステップ5では、塩基の存在下で2−置換インダノン(5)をメチルビニルケトンと反応させ、ジケトン(6)を得る。ジケトンを次に塩基性又は酸性条件下で環化(ステップ6)するとテトラヒドロフルオレノン生成物(7)が得られる。ステップ7では、塩基の存在下及び/又は加熱下で内部アルキル化反応によりエチリデン架橋を形成する。この段階の前又はこの段階と同時にYを反応性脱離基に変換することが必要な場合がある。ステップ8では、RII置換基をエノン二重結合に導入する。一般に、これはハロゲン化反応により実施され、その後、置換反応を実施し、例えばアルキル基やアリール基等の他の各種置換基を導入してもよい。選択したR保護基によっては、最終化合物(10)を生成するために最終脱保護段階が必要な場合もある。
【0117】
【化7】

【0118】
スキームIにステップ1〜8として示す代表的試薬及び反応条件は以下の通りである。
ステップ1
i)LiN(TMS),THF,−78〜40℃
ii)NCCOEt,−78℃〜室温,R=Et
MeCO,NaH,PhH,60℃,R=Me
ステップ2
BrCHCHF,KCO,KI,DMAC,65℃,Y=F
BrCHCHOBn,KCO,KI,DMAC,60〜100℃,Y=OBn
ステップ3
NCS,DMF,50℃,R=Cl
NBS,DMF,室温〜50℃,R=Br
Accufluor(登録商標)NFTh,MeCN,50〜80℃,R=F
i)NBS,DMF,室温〜50℃
ii)SnMe,PdCl(PPh,DMF,室温〜120℃,R=Me
ステップ4
NaOH,HO,MeOH,THF,0〜40℃又は
6N HCl,HOAc,90〜100℃,
ステップ5
MVK,NaOMe,MeOH,室温〜60℃又は
MVK,DBN,THF,室温〜60℃
ステップ6
ピロリジン,HOAc,THF又はPhMe,60〜85℃又は
NaOH,HO,MeOH又はEtOH,室温〜85℃又は
6N HCl,HOAc,90〜100℃
ステップ7
LiCl,DMF,150℃,Y=F
i)BBr,CHCl,−78℃
ii)KN(TMS),THF,−78℃〜0℃,Y=F
ピリジン−HCl,190℃,Y=OBn
i)NaOMe,MeOH
ii)MsCl,EtN,CHCl
iii)LDA,THF,−78℃〜室温,Y=OAc
ステップ8
NCS,DMF,50℃,RII=Cl
NBS,DMF,室温〜50℃,RRII=Br
i)NBS,DMF,室温〜50℃
ii)PhB(OH),CsCO,PdCl(PPh,DMF,室温〜100℃,RII=Ph。
【0119】
スキームIIはスキームIに示した合成の変形例を例証する。この変形例では、出発インダノン(1a)は既に4位をR置換基で置換されている。インダノン(1a)は公知化合物であるか又は当分野で公知の従来方法により製造することができる。スキームIIのステップ1では、インダノン(1a)の2位を−CHCH−Y部分で置換する。これは還元アルキル化反応により実施することができ、(1a)を塩基性条件下で置換アルデヒドY−CHCHOと反応させた後に得られたアルキリデン中間体を水素化する。この場合には、Yは置換可能な脱離基に変換することができる前駆体基であることが最も好ましい。あるいは、−CHCH−Y部分の導入はインダノン(1a)を塩基の存在下でアルキル化剤Z−CHCH−Y(式中、Zは置換可能な脱離基を表す)と反応させて中間体(2)を得ることにより実施することもできる。Yも置換可能な脱離基を表す場合には、Zがより容易に置換される基となるようにこれらの2個の基の相対反応性を適宜選択する。スキームIIのステップ2はメチルビニルケトンの代わりに置換ビニルケトンCHCHCOCHIIを使用する以外はスキームIのステップ5と同様である。RII置換基はスキームIIのステップ2で導入されるのでこの基を導入するために別個の段階が不要である点を除き、スキームIで上述した手順により次にジケトン(11)を(10a)に変換する。
【0120】
【化8】

【0121】
スキームIIにステップ1〜2として示す代表的試薬及び反応条件は以下の通りである。
ステップ1
BnOCHCHO,NaOMe,MeOH,H,Pd/C,Y=OBn
(HOCHCHO),NaOMe,MeOH,H,Pd/C,Y=OH
ステップ2
CH=CHC(O)CHII,NaOMe,MeOH,室温〜60℃又は
CH=CHC(O)CHII,DBN,THF,室温〜60℃。
【0122】
スキームIIIはスキームIIに示した合成の変形例であり、RIII置換基を導入する場合を例証する。スキームIIIのステップ1は還元段階を省略し、アルキリデン中間体(13)を得る以外はスキームIIのステップ1と同様である。RIII置換基の導入はステップ2で(13)を適当な有機金属種と反応させて1,4−共役付加反応により(14)を得ることにより実施される。次にスキームIに上述した手順によりインダノン(14)を(10b)に変換する。
【0123】
【化9】

【0124】
スキームIIIにステップ1〜2として示す代表的試薬及び反応条件は以下の通りである。
ステップ1
BnOCHCHO,KOH,MeOH,Y=OBn又は
i)LiN(TMS),THF,−78℃〜−40℃
ii)BnOCHCHO,−78℃〜室温
iii)MsCl,EtN,CHCl
ステップ2
IIIMgBr,CuBr−SMe,THF−78℃〜室温又は
IIICuLi,THF−78℃〜室温。
【0125】
10位に置換基をもつ最終化合物はスキームIVに要約する方法により製造される。中間体(9)をN−ハロスクシンイミド試薬等により酸化し、10−ハロ生成物(16)を得る。その後、必要に応じて最終脱保護を行うと、最終化合物(17)が得られる。10−ハロ化合物(16)を適切な求核試薬と置換反応させる(ステップ2)と、付加生成物(16a)が得られる。その後、必要に応じて最終脱保護を行うと、最終化合物(17a)が得られる。所望により、10,10−ジ置換物の製造までこの方法を延長することができる。(9)の過硫酸カリウム酸化により10−オキソ生成物(18)が得られる。(18)を還元すると、10−ヒドロキシ化合物(16a,RIVb=OH)が得られる。必要に応じて(18)の最終脱保護を行うと、最終化合物(19)が得られる。
【0126】
【化10】

【0127】
スキームIVにステップ1〜4として示す代表的試薬及び反応条件は以下の通りである。
ステップ1
NCS,AIBN又は(PhCO),CCl,室温〜80℃,RIVa=Cl
NBS,AIBN又は(PhCO),CCl,室温〜80℃,RIVa=Br
ステップ2
ピリジン−HF,AgOTf,室温〜50℃,RIVb=F
AgOAc,HOAc,HO,室温〜100℃,RIVb=OAc
i)AgOAc,DMF,室温〜100℃
ii)NaOH,HO,MeOH,RIVb=OH
ステップ3
,HO,MeCN,室温〜80℃
ステップ4
NaBH,MeOH,0℃〜室温,RIVb=OH。
【0128】
(9)のC−6ケトンの修飾をスキームVに要約する。ステップ1では、ケトンをヒドロキシルアミン、アルコキシルアミン又はヒドラジン試薬と反応させ、6−イミノ生成物(20)を得る。ケトン(9)を更にイリド試薬と反応させ(ステップ2)、6−アルキリデン誘導体(22)を得る。必要に応じて脱保護すると、最終生成物(21)及び(23)が得られる。
【0129】
【化11】

【0130】
スキームVにステップ1及び2として示す代表的試薬及び反応条件は以下の通りである。
ステップ1
NHOR−HCl,ピリジン,室温〜60℃,R=OR
NHNR,EtOH,室温,R=NR
ステップ2
PhCHVIBr,BuLi,THF,0〜50℃。
【0131】
スキームI〜Vにおいて、多くの場合に各種R基は従来方法によりデブロッキングされる保護官能基を含む。デブロッキング手順は合成シーケンスの最終段階に実施してもよいし、中間段階に実施してもよい。例えば、ORがメトキシル基である場合には、多数の方法の任意のものによりヒドロキシル基に変換することができる。これらの方法としては−78℃〜室温でCHCl中、BBrと接触させる方法、DMF中、塩化リチウムを加えて150℃に加熱する方法、塩酸ピリジンを加えて190〜200℃に加熱する方法、又は0℃〜室温にてCHCl中、EtSH及びAlClで処理する方法が挙げられる。別例としてはアルコール及びフェノールのメトキシメチル(MOM)保護の使用が挙げられる。メタノール水溶液中、塩酸と接触させることによりMOM基を従来通りに除去する。他の周知保護−脱保護スキームを使用して各種R置換基に含まれる官能基の望ましくない反応を防ぐこともできる。
【0132】
スキームI〜Vに従って製造された最終化合物はキラル中心をもち、公知方法(例えばキラルHPLC)により個々のエナンチオマーに分割することができる。個々のエナンチオマーへの分離は合成の多数の中間段階でも実施することができる。例えば、スキームIでは、個々のエナンチオマーへの分離は化合物(6)、(7)、(8)、(9)、又は(10)の段階で実施することができる。
【実施例】
【0133】
以下、特定実施例により本発明の化合物の製造方法を例証するが、これらの実施例により限定するものではない。
【0134】
(実施例1)
(7β,9aβ)−1,5−ジクロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オンの合成
【0135】
【化12】

【0136】
ステップ1:5−メトキシ−1―オキソインダン―2−カルボン酸エチル
−78℃の5−メトキシインダン−1−オン(15.0g,92.5mmol)のTHF(370mL)溶液にリチウムビス(トリメチルシリル)アミドの1.0M THF(200mL,200mmol)溶液を滴下漏斗で15分間で加えた。40分後にシアノギ酸エチル(14.0mL,142mmol)を数分間で加え、反応混合物を徐々に昇温させた。30分後に反応混合物をEtOAcと希HCl水溶液に分配し、有機相を水とブラインで洗浄し、NaSOで乾燥した。濾過し、溶媒を減圧除去すると、5−メトキシ−1−オキソインダン−2−カルボン酸エチルが茶色固体として得られ、精製せずに次段階で使用した。
【0137】
5−メトキシインダン−1−オン15.82g(97.5mmol)から出発して反応を繰返し、更に粗5−メトキシ−1−オキソインダン−2−カルボン酸エチルを得た。
【0138】
ステップ2:2−(2−フルオロエチル)−5−メトキシ−1−オキソインダン−2−カルボン酸エチル
無水ジメチルアセトアミド(792mL)中の5−メトキシ−1−オキソインダン−2−カルボン酸エチル(前の2反応からの粗生成物,〜190mmol)、KCO(53.8g,389mmol)及びKI(64.7g,390mmol)の混合物に1−ブロモ−2−フルオロエタン(18.4mL,247mmol)を加え、混合物を65℃で加熱撹拌した。20時間後にアリコートのNMR分析により、反応は完了したことが判明した。室温まで冷却後、ジメチルアセトアミドの大部分を減圧蒸発により除去した。残渣をEtOAcと水に分配し、有機相を水(4回)とブラインで洗浄し、NaSOで乾燥した。濾過し、溶媒を減圧除去すると、粗2−(2−フルオロエチル)−5−メトキシ−1−オキソインダン−2−カルボン酸エチルが得られ、精製せずに次段階で使用した。
【0139】
ステップ3:4−クロロ−2−(2−フルオロエチル)−5−メトキシ−1−オキソインダン−2−カルボン酸エチル
2−(2−フルオロエチル)−5−メトキシ−1−オキソインダン−2−カルボン酸エチル(44.6g,159mmol)のDMF(159mL)溶液にN−クロロスクシンイミド(23.4g,175mmol)を少量ずつ加えた。溶液を50℃に加熱し、反応をアリコートのNMR分析により周期的にモニターした。6時間後にNMR分析によると反応は約80%完了した。反応混合物を室温まで放冷させ、一晩放置した。50℃まで再加熱後、更にN−クロロスクシンイミド(2.12g,15.9mmol)を加えた。NMRによるモニターを続け、4.5時間後に更にN−クロロスクシンイミド(2.12g,15.9mmol)を加えた。更に3時間後に反応混合物を室温まで放冷させ、一晩放置した。DMFの大部分を減圧蒸発により除去し、残渣をEtOAcと水に分配した。有機相を水(4回)とブラインで洗浄し、NaSOで乾燥した。濾過し、溶媒を減圧除去すると、粗4−クロロ−2−(2−フルオロエチル)−5−メトキシ−1−オキソインダン−2−カルボン酸エチルが得られた。この材料を精製せずに次段階で使用した。
【0140】
ステップ4:4−クロロ−2−(2−フルオロエチル)−5−メトキシインダン−1−オン
4−クロロ−2−(2−フルオロエチル)−5−メトキシ−1−オキソインダン−2−カルボン酸エチル(前の反応からの粗生成物56.4g)のTHF(330mL)溶液にメタノール(50mL)を加えた後、メタノール(116mL)/水(166mL)を加えた。得られた透明赤−オレンジ色溶液に5N NaOH水溶液(55.7mL,279mmol)を9分間かけて徐々に加えると黒色溶液となった。3.5時間後に12N HCl水溶液(30ml,360mmol)を加えて反応をクエンチし、THFとメタノールの大部分を減圧回転蒸発により除去した。残渣をEtOAcと水に分配し、有機相を飽和NaHCO水溶液とブラインで洗浄し、MgSOで乾燥した。濾過し、溶媒を減圧除去すると、粗生成物が得られた。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(溶離液CHCl)により精製すると、生成物が得られた。混合フラクションを再精製すると、更に生成物が得られた。生成物は4−クロロ−2−(2−フルオロエチル)−5−メトキシインダン−1−オンであり、NMRによると、全体で望ましくない6−クロロ−2−(2−フルオロエチル)−5−メトキシインダン−1−オン位置異性体を約4%含有していた。
【0141】
ステップ5:8−クロロ−9a−(2−フルオロエチル)−7−メトキシ−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オン
4−クロロ−2−(2−フルオロエチル)−5−メトキシインダン−1−オン(18.0g,74.2mmol)のメタノール(250mL)懸濁液にメチルビニルケトン(7.7mL,92mmol)を2分間加えた後、ナトリウムメトキシドの0.5Mメタノール溶液(74.2ml,37.1mmol)を加えた。室温で3時間後にアリコートのNMR及びLC/MS分析により、反応は完了したことが判明した。暗色反応混合物を減圧回転蒸発により濃縮した。残留油状物をトルエン(980mL)に溶かし、酢酸(6.4mL,112mmol)を加えた後にピロリジン(6.2mL,74.2mmol)を加えた。得られた溶液を80℃に3.25時間加熱した後、室温まで放冷させ、一晩放置した。反応混合物をEtOAcと水に分配し、有機相を希HCl水溶液、希NaHCO水溶液及びブラインで順次洗浄した。MgSOで乾燥後に、濾過及び蒸発させると、粗生成物が得られた。シリカゲル400gのカラムでフラッシュクロマトグラフィー(溶離液5%EtOAc/CHCl)により精製すると、生成物が得られた。多少の不純物フラクションを再精製すると、更に生成物が得られた。生成物は8−クロロ−9a−(2−フルオロエチル)−7−メトキシ−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オンであり、NMRによると、全体で望ましくない6−クロロ−9a−(2−フルオロエチル)−7−メトキシ−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オン位置異性体を約4%含有していた。
【0142】
ステップ6:キラルHPLCによるラセミ8−クロロ−9a−(2−フルオロエチル)−7−メトキシ−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オンの分割
ラセミ8−クロロ−9a−(2−フルオロエチル)−7−メトキシ−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オン(17g)をDaicel Chiralcel ODカラムでキラルHPLCにより分割した(溶離液15%EtOH:ヘプタン,フラクションを220nmでモニター)。最初に溶出するエナンチオマーを含む純フラクションを合わせて濃縮すると、(9aR)−8−クロロ−9a−(2−フルオロエチル)−7−メトキシ−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オンが(+)回転方向をもつ油状物として得られた。2番目に溶出するエナンチオマーを含むフラクションを合わせて濃縮すると、(9aS)−8−クロロ−9a−(2−フルオロエチル)−7−メトキシ−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オンが(−)回転方向をもつ油状物として得られた。
【0143】
ステップ7:(7β,9aβ)−1−クロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン
(9aS)−8−クロロ−9a−(2−フルオロエチル)−7−メトキシ−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オン(5.34g,18.1mmol)と塩化リチウム(7.68g,181mmol)の混合物にDMF(102mL)を加え、懸濁液を撹拌下に150℃まで加熱すると、黄色溶液となった。21時間後に溶液を室温まで冷却し、EtOAcと0.2N HCl水溶液に分配した。有機相を水(4回)とブラインで洗浄し、MgSOで乾燥した。濾過及び蒸発させると、粗生成物が得られた。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(溶離液20%EtOAc/CHCl)により精製すると、(7β,9aβ)−1−クロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オンが得られた。
【0144】
ステップ8:(7β,9aβ)−1,5−ジクロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン
(7β,9aβ)−1−クロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン(3.51g,13.5mmol)のDMF(54mL)溶液にN−クロロスクシンイミド(1.8g,13.5mmol)を加え、反応混合物を50℃まで加熱した。3時間後にアリコートのNMR分析により、反応は完了したことが判明した。反応混合物を室温まで冷却し、EtOAcと希HCl水溶液に分配した。有機相を水(4回)とブラインで洗浄し、MgSOで乾燥した。濾過及び蒸発させると、粗生成物が得られた。粗生成物のMeOH/CHCl溶液をシリカゲルに予め吸着させることによりフラッシュクロマトグラフィーによる精製を実施した。カラムを20%→35%EtOAc/CHClで溶出させると、生成物が固体として得られ、エタノールに溶かし、水で沈殿させた。濾過及び減圧蒸発させると、(7β,9aβ)−1,5−ジクロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オンが薄黄色粉末として得られた。
【0145】
H NMR(CDCl,500MHz):δ1.74−1.80(m,1H),1.96−1.99(m,2H),2.03(dd,1H),2.13(d,1H),2.33−2.40(m,1H),3.17(d,1H),3.25−3.30(m,1H),3.32(d,1H),6.01(s,1H),7.09(d,1H),8.25(d,1H)。
【0146】
質量スペクトル:(ESI)m/z=295(M+H)。
【0147】
(実施例2)
2−ヒドロキシ−5−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オンの合成
【0148】
【化13】

【0149】
ステップ1:2−(2−ヒドロキシエチル)−5−メトキシ−1−インダノン
5−メトキシ−1−インダノン(500mg,3.08mmol)のメタノール(10mL)溶液を炭素担持10%パラジウム(53mg)で処理した後にグリコアルデヒドダイマー(370mg,3.08mmol)とナトリウムメトキシドの0.5Mメタノール溶液(1.3mL,0.65mmol)で処理した。混合物を水素雰囲気(バルーン)下におき、室温で65時間激しく撹拌した。窒素パージ後に混合物を0.45μm Acrodiscで濾過し、ディスクをメタノール(2mL)でリンスした。濾液をEtOAc(25mL)で希釈し、0.1N HCl(15mL)とブライン(15mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧蒸発させて固体を得た。この材料をLC−MS分析すると、出発材料(主成分)と生成物の混合物であることが判明した。
【0150】
混合物をBiotage Flash 12M KP−Silカラム(12mm×15cm)でクロマトグラフィーにより精製した。カラムを3:2EtOAc−ヘキサンで溶出させ、6mLフラクションを30秒毎に採取した。フラクション20−36を減圧濃縮し、ベンゼンでフラッシュすると、2−(2−ヒドロキシエチル)−5−メトキシ−1−インダノンが油状物として得られた。
【0151】
H NMR(CDCl,500MHz)δ1.80及び2.05(2m,CHCHOH),2.79及び3.35(2dd,3−CH),2.83(m,H−2),3.77−3.90(m,CHCHOH),3.87(s,OCH),6.86(d,H−4),6.89(dd,H−6),及び7.67(d,H−7)。
【0152】
ステップ2:2−(2−ヒドロキシエチル)−5−メトキシ−2−(3−オキソペンチル)−1−インダノン
室温の2−(2−ヒドロキシエチル)−5−メトキシ−1−インダノン(105mg,0.51mmol)のメタノール(2.0mL)溶液をエチルビニルケトン(EVK,0.102mL)とナトリウムメトキシドの0.5Mメタノール溶液(0.204mL,0.1mmol)で処理した。混合物を蓋付きフラスコで撹拌し、60℃の油浴で8時間加熱した。冷却後に反応混合物をEtOAc(25mL)で希釈し、0.2N HCl(15mL)、水(15mL)、及びブライン(15mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧蒸発させると、2−(2−ヒドロキシエチル)−5−メトキシ−2−(3−オキソペンチル)−1−インダノンが油状物として得られた。
【0153】
H NMR(CDCl,500MHz)δ0.99(t,COCHCH),1.84−2.00(m,CHCHOH及びCHCHCO),2.28(m,CHCHCO),2.33(m,COCHCH),2.92及び3.11(2d,3−CH),3.63及び3.72(2m,CHCHOH),3.87(s,OCH),6.86(d,H−4),6.91(dd,H−6),及び7.67(d,H−7)。
【0154】
ステップ3:9a−(2−ヒドロキシエチル)−7−メトキシ−4−メチル−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オン及び9a−(2−アセトキシエチル)−7−メトキシ−4−メチル−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オン
2−(2−ヒドロキシエチル)−5−メトキシ−2−(3−オキソペンチル)−1−インダノン(138mg,0.475mmol)の酢酸(3.0mL)溶液を6N HCl水溶液(3.0mL)で希釈し、得られた混合物を撹拌し、80℃の油浴で90分間加熱した。室温まで冷却後、反応混合物をEtOAc(20mL)で希釈し、水(10mL)、1M pH7リン酸緩衝液(15ml)、水(15mL)及びブライン(15mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧蒸発させると、油状物が得られた。LC−MSによると、9a−(2−ヒドロキシエチル)−7−メトキシ−4−メチル−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オンとそのO−アセチル誘導体9a−(2−アセトキシエチル)−7−メトキシ−4−メチル−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オンの混合物であることが判明した。
【0155】
ステップ4:9a−(2−ヒドロキシエチル)−7−メトキシ−4−メチル−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オン
ステップ3からの生成物の混合物をメタノール(5mL)に溶かし、溶液をナトリウムメトキシドの0.5Mメタノール(4.5mL)溶液で処理した。混合物を室温で15分間撹拌した後、2N HCl水溶液で酸性化し、減圧濃縮した。残渣をEtOAc(25mL)に取り、ブライン(20mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧蒸発させた。粗生成物をBiotage Flash−12 M KP−Silカラム(12mm×15cm)でクロマトグラフィーにより精製した。カラムを3:2 EtOAc−ヘキサン(145mL)→100% EtOAcで溶出させ、4mLフラクションを30秒毎に採取した。フラクション30−50を合わせて減圧蒸発させると、生成物が油状物として得られた。この材料をEtOで処理すると、生成物9a−(2−ヒドロキシエチル)−7−メトキシ−4−メチル−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オンが固体として得られた。
【0156】
H NMR(CDCl,500MHz)δ1.72−1.86(m,CHCHOH),1.99及び2.21(2ddd,1−CH),2.04(s,4−CH),2.45及び2.63(2ddd,2−CH),2.76及び3.05(2d,9−CH),3.47−3.62(m,CHCHOH),3.82(s,OCH),6.81−8.85(m,H−6及びH−8),及び7.61(d,H−5)。
【0157】
ステップ5:9a−[2−(メタンスルホニルオキシ)エチル]−7−メトキシ−4−メチル−1,2,9.9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オン
9a−(2−ヒドロキシエチル)−7−メトキシ−4−メチル−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オン(39mg,0.14mmol)とトリエチルアミン(0.030mL,0.21mmol)の無水ジクロロメタン(1.5ml)氷冷溶液を塩化メタンスルホニル(0.014mL,0.18mmol)で処理し、得られた溶液を0℃で30分間撹拌した。混合物をEtOAc(10mL)で希釈し、水(5mL)、0.2N HCl(5mL)、及びブライン(5mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧蒸発させると、9a−[2−(メタンスルホニルオキシ)エチル]−7−メトキシ−4−メチル−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オンが油状物として得られた。
【0158】
H NMR(CDCl,500MHz)δ2.03(m,CHCHO),2.08(s,4−CH),2.09及び2.22(2ddd,1−CH),2.53及び2.61(2ddd,2−CH),2.85及び3.03(2d,9−CH),2.89(s,SOCH),3.85(s,OCH),4.03−4.17(m,CHCHO),6.86(s,H−8),6.87(dd,H−6),及び7.64(d,H−5)。
【0159】
ステップ6:9a−(2−ヨードエチル)−7−メトキシ−4−メチル−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オン
メタンスルホン酸2−(2−メトキシ−5−メチル−6−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−8aH−フルオレン−8a−イル)エチル(49.7mg,0.142mmol)のアセトン(2.0mL)溶液をヨウ化ナトリウム(85mg,0.57mmol)で処理し、得られた混合物を撹拌し、60℃の油浴で16時間加熱した。冷却後に混合物をアセトン(2mL)で希釈し、0.45μm Acrodiscフィルターで濾過した。濾液を減圧蒸発させ、残渣をCHCl(3mL)に取り、再び濾過した。濾液をBiotage Flash 12M KP−Silカラム(12mm×15cm)でクロマトグラフィーにより精製し、カラムを4:1ヘキサン−EtOAcで溶出させ、6mLフラクションを30秒毎に採取した。フラクション9−11から9a−(2−ヨードエチル)−7−メトキシ−4−メチル−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オンが油状物として得られた。
【0160】
H NMR(CDCl,500MHz)δ2.03及び2.20(2ddd,1−CH),2.08(s,4−CH),2.24(m,CHCHI),2.51及び2.61(2ddd,2−CH),2.80及び2.97(2d,9−CH),2.85及び2.95(2m,CHCHI),3.86(s,OCH),6.86(br s,H−8),6.87(dd,H−6),及び7.64(d,H−5)。
【0161】
ステップ7:2−メトキシ−5−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン
N,N−ジイソプロピルアミン(0.015mL,0.107mmol)の無水テトラヒドロ(THF,1.0mL)溶液を窒素雰囲気下におき、氷浴で冷却し、n−ブチルリチウムの1.6Mヘキサン溶液(0.061mL,0.098mmol)で処理した。溶液を0℃で35分間撹拌した後、ドライアイス−アセトン浴で冷却し、5分間エージングした後、9a−(2−ヨードエチル)−7−メトキシ−4−メチル−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オン(34mg,0.089mmol)のTHF(1.0mL)溶液で処理した。反応混合物を−78℃から室温まで4時間かけて昇温させ、室温で21時間撹拌した後、2N HCl水溶液(0.5mL)でクエンチし、EtOAc(10mL)で希釈した。有機相を水(5mL)とブライン(5mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧蒸発させると油状物が得られた。この材料をBiotage Flash 12M KP−Silカラム(12mm×15cm)でクロマトグラフィーにより精製し、カラムを6:1ヘキサン−EtOAcで溶出させ、7mLフラクションを30秒毎に採取した。フラクション16−20を合わせて減圧蒸発させると、2−メトキシ−5−メチルギバーl(10a),2,4,4b−テトラエン−6−オンと出発材料9a−(2−ヨードエチル)−7−メトキシ−4−メチル−1,2,9,9a−テトラヒドロ−3H−フルオレン−3−オンの混合物が油状物として得られた。
【0162】
ステップ8:2−ヒドロキシ−5−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン
ステップ7からの生成物混合物(21.7mg,約0.1mmol)の無水ジクロロメタン(1.0mL)溶液を室温で塩化アルミニウム(75mg,0.56mmol)とエタンチオール(0.032mL,0.43mmol)で処理した。室温で58分間撹拌後、黄色溶液を2N HCl水溶液(1mL)とEtOAc(9ml)で処理し、水(4mL)とブライン(5mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、減圧蒸発させると、固体膜が得られた。固体を温EtOH(1mL)に取り、0.1×20×20cmシリカゲルGFプレート2枚にアプライし、1:1−ヘキサン−EtOAcで展開した。2本のUV可視バンドを採取し、EtOAcで溶出させ、減圧濃縮し、多少のアセトンを含有するベンゼンから残渣を凍結乾燥した。R0.47−0.57のバンドから主に2−ヒドロキシ−5−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オンが非晶質固体として得られた(副生成物9a−ヨードエチルを約16%含有)。
【0163】
H NMR(CDCl,500MHz):δ1.63−1.71(m,1H),1.78−1.89(m,2H),1.91(dd,1H),1.98(d,1H),2.09(s,3H),2.24−2.33(m,1H),3.00(d,1H),3.10(dd,1H),3.25(d,1H),5.90(bs,1H),6.86(dd,1H),6.89(bs,1H),7.67(d,1H)。
【0164】
(実施例3−21)
上記実施例に記載したと同様の方法を使用して以下の化合物を製造した。
【0165】
【表1】

【0166】
【表2】



【0167】
【表3】

【0168】
【表4】

【0169】
【表5】

【0170】
エストロゲン受容体結合アッセイ
エストロゲン受容体リガンド結合アッセイはトリチウム化エストラジオールと組換え発現させたエストロゲン受容体の使用を利用するシンチレーション近接アッセイとして設計する。全長組換えヒトER−α及びER−β蛋白質をバキュロウイルス発現システムで生産する。6mM α−モノチオグリセロールを加えたリン酸緩衝食塩水でER−α又はER−β抽出液を400倍に希釈する。希釈した受容体調製液の200μLアリコートを96−ウェルFlashplateの各ウェルに加える。プレートをサランラップで覆い、4℃で一晩インキュベートする。
【0171】
翌朝、10%ウシ血清アルブミンを加えたリン酸緩衝食塩水の20ulアリコートを96ウェルプレートの各ウェルに加え、4℃で2時間インキュベートする。次に、20mM Tris(pH7.2)、1mM EDTA、10%グリセロール、50mM KCl、及び6mM α−モノチオグリセロールを加えた緩衝液200ulでプレートを洗浄する。これらの受容体を被覆したプレートでアッセイを開始するために、96ウェルプレートの各ウェルに同一緩衝液178ulを加える。H−エストラジオールの10nM溶液20ulをプレートの各ウェルに加える。
【0172】
0.01nM〜1000nMの濃度範囲で試験化合物を評価する。試験化合物ストック溶液はアッセイでの試験に所望される最終濃度の100倍の100%DMSO溶液とする。96ウェルプレートの試験ウェル中のDMSOの量は1%を越えるべきでない。アッセイプレートへの最終添加は100%DMSOで調製した試験化合物の2ulアリコートとする。プレートを密閉し、室温で3時間平衡化する。96ウェルプレートをカウントするように装備したシンチレーションカウンターでプレートをカウントする。
【0173】
実施例1〜21の化合物はエストロゲン受容体αサブタイプに対してIC50=54〜>1000nm、エストロゲン受容体βサブタイプに対してIC50=1〜33nmの結合親和性を示す。
【0174】
医薬組成物
本発明の特定実施形態として、合計量580〜590mgとするために十分な微粉状ラクトースと実施例1の化合物25mgを配合し、サイズ0ハードゼラチンカプセルに充填する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

[式中、XはO、N−OR、N−N(R、又はC1−6アルキリデンであり、前記アルキリデン基は場合によりヒドロキシル、アミノ、O(C1−4アルキル)、NH(C1−4アルキル)又はN(C1−4アルキル)で置換されており;
はフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C3−6シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール及びヘテロアリール基は場合によりフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ及びORから構成される群から選択される1、2又は3個の基で置換されており;
は水素、R、(C=O)R又は(C=O)ORであり;
は水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1−2アルキル、シアノ又はORであり;
は水素、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヒドロキシルであり;
は水素、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヒドロキシルであるか;
あるいはRとRは一緒になってそれらが結合している炭素原子と共にカルボニル基を形成し;
は水素、フルオロ、クロロ又はC1−5アルキルであり、前記アルキル基は場合によりクロロ、ブロモ、ヨード、OR及び1〜5個のフルオロから構成される群から選択される基で置換されており;
は水素、C1−4アルキル又はフェニルであり、前記アルキル及びフェニル基は場合によりヒドロキシル、アミノ、O(C1−4アルキル)、NH(C1−4アルキル)、N(C1−4アルキル)、クロロ、ブロモ、1〜5個のフルオロ、ヨード、シアノ及びORから構成される群から選択される基で置換されており;2個以上のR基が存在する場合には、独立して選択される]の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。
【請求項2】
XがOである請求項1の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。
【請求項3】
がフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ、C1−4アルキル又はフェニルであり、前記アルキル及びフェニル基は場合によりフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ及びORから構成される群から選択される1、2又は3個の基で置換されている請求項2の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。
【請求項4】
が水素であり;Rが水素であり;Rが水素である請求項3の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。
【請求項5】
が水素又はC1−4アルキルである請求項4の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。
【請求項6】
1,5−ジクロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
2−ヒドロキシ−5−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
2−ヒドロキシ−5−(トリフルオロメチル)ギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
2−ヒドロキシ−6−オキソギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−5−カルボニトリル;
5−クロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
5−ブロモ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
5−クロロ−2−ヒドロキシ−1−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
5−ブロモ−2−ヒドロキシ−1−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
5−クロロ−1−フルオロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
5−ブロモ−1−フルオロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
5−ブロモ−1−クロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
1−クロロ−2−ヒドロキシ−5−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
1−クロロ−5−エチル−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
1−クロロ−2−ヒドロキシ−6−オキソギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−5−カルボニトリル;
1−クロロ−2−ヒドロキシ−5−フェニルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
1−ブロモ−5−クロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
1,5−ジブロモ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
2−ヒドロキシ−5−メチル−9−プロピルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
1,5−ジクロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6,10−ジオン;
1−クロロ−5−エチル−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6,10−ジオン;
1,5−ジクロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オンオキシムである請求項1の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。
【請求項7】
(7β,9aβ)−1,5−ジクロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−2−ヒドロキシ−5−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−2−ヒドロキシ−5−(トリフルオロメチル)ギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−2−ヒドロキシ−6−オキソギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−5−カルボニトリル;
(7β,9aβ)−5−クロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−5−ブロモ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−5−クロロ−2−ヒドロキシ−1−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−5−ブロモ−2−ヒドロキシ−1−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−5−クロロ−1−フルオロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−5−ブロモ−1−フルオロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−5−ブロモ−1−クロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−1−クロロ−2−ヒドロキシ−5−メチルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−1−クロロ−5−エチル−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−1−クロロ−2−ヒドロキシ−6−オキソギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−5−カルボニトリル;
(7β,9aβ)−1−クロロ−2−ヒドロキシ−5−フェニルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−1−ブロモ−5−クロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−1,5−ジブロモ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9β,9aβ)−2−ヒドロキシ−5−メチル−9−プロピルギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オン;
(7β,9aβ)−1,5−ジクロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6,10−ジオン;
(7β,9aβ)−1−クロロ−5−エチル−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6,10−ジオン;
(7β,9aβ)−1,5−ジクロロ−2−ヒドロキシギバー1,3,4a(10a),4b−テトラエン−6−オンオキシムである請求項6の化合物又はその医薬的に許容可能な塩もしくは立体異性体。
【請求項8】
請求項1の化合物を含有する医薬組成物。
【請求項9】
請求項1の化合物と、有機ビスホスホネート;カテプシンK阻害剤;エストロゲン;エストロゲン受容体モジュレーター;アンドロゲン受容体モジュレーター;破骨細胞プロトンATPase阻害剤;HMG−CoAレダクターゼ阻害剤;インテグリン受容体アンタゴニスト;骨芽細胞同化剤;カルシトニン;ビタミンD;合成ビタミンDアナログ;選択的セロトニン再取込み阻害剤;アロマターゼ阻害剤;又はその医薬的に許容可能な塩もしくは混合物から構成される群から選択される別の物質を含有する医薬組成物。
【請求項10】
骨量減少、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、パジェット病、歯周病、軟骨変性、子宮内膜症、子宮筋腫、ホットフラッシュ、心臓血管疾患、認知機能障害、加齢による軽度認知障害、脳変性疾患、再狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満症、失禁、不安症、鬱病、閉経周辺期鬱病、出産後鬱病、月経前症候群、躁鬱病、痴呆症、強迫行動、注意欠陥障害、睡眠障害、神経過敏、衝動性、アンガーマネージメント、多発性硬化症及びパーキンソン病、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、性機能不全、高血圧、網膜変性、エストロゲン依存性癌又は前立腺癌の治療に有用な医薬の製造における請求項1の化合物の使用。
【請求項11】
骨量減少、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、パジェット病、歯周病、軟骨変性、子宮内膜症、子宮筋腫、ホットフラッシュ、心臓血管疾患、認知機能障害、加齢による軽度認知障害、脳変性疾患、再狭窄症、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満症、失禁、不安症、鬱病、閉経周辺期鬱病、出産後鬱病、月経前症候群、躁鬱病、痴呆症、強迫行動、注意欠陥障害、睡眠障害、神経過敏、衝動性、アンガーマネージメント、多発性硬化症及びパーキンソン病、炎症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、性機能不全、高血圧、網膜変性、エストロゲン依存性癌又は前立腺癌の治療に有用な医薬の製造における請求項9の組成物の使用。

【公表番号】特表2008−518960(P2008−518960A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539314(P2007−539314)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/039578
【国際公開番号】WO2006/050402
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】