説明

エゼチミブ組成物、並びにコレステロールに関連した良性および悪性の腫瘍を治療する方法

コレステロールに関連した腫瘍が発症する危険性のある患者、または既にコレステロールに関連した腫瘍を示す患者に対して、治療有効量のアゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤、好ましくはエゼチミブ(SCH58235)および/またはそのフェノール性グルクロニド、あるいは少なくとも1つのエゼチミブ類似体、例えば、SCH48461およびSCH58053を投与することを含む、コレステロールに関連した腫瘍を予防または治療する方法が提供される。少なくとも1つの他の抗癌剤をさらに含む、コレステロールに関連した腫瘍を予防または治療するためのエゼチミブの製剤もまた、提供される。容器、指示書、および組成物を含む製品もまた提供され、この際、前記組成物は、治療上有効量のアゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤、好ましくはエゼチミブまたはそのフェノール性グルクロニドを含み、前記指示書は、コレステロールに関連した腫瘍を予防または治療するために前記組成物を投与するためのものである。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の分野
本発明は、アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤を投与することによる、コレステロールに関連した腫瘍の予防および/または治療に関する。特に、治療有効量の、例えばエゼチミブ、またはそのフェノール性グルクロニドの経口投与により、前立腺組織、乳房組織、子宮内膜組織、および結腸組織の肥大が制御される。コレステロールに関連した腫瘍の予防または治療を目的として、コレステロールの吸収の制御に有効なエゼチミブおよび/または少なくとも1つのその誘導体と、(ステロイド性抗アンドロゲン剤、非ステロイド性抗アンドロゲン剤、エストロゲン、ジエチルスチルベストロール、共役エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)、タキサン、およびLHRH類似体)からなる群から選択される少なくとも1つの他の抗癌剤との組み合わせが提供される。
【0002】
発明の背景
ヒトおよび実験動物の肝および腸管においてコレステロール代謝は大規模に研究がなされているが、正常な状態および疾患状態の双方において、オスの前立腺やメスの乳腺におけるコレステロール代謝はほとんど注目されていなかった。これらの腺の良性および悪性の腫瘍の病因や発症は、未だに多くが謎のままである。ヒトの種々の癌疾患に対して、高コレステロールの食事が疫学的に有意な関連性を示している。特に、前立腺および乳腺の癌、並びに結腸の癌は、動物由来の脂肪の摂取を伴う「西洋的な」高脂肪食と関連している。Kolonel, et al., 1999, J. NatI. Cancer Inst., 91:414−428; Willett, 1989, Nature, 338:389 394。しかしながら、食事の脂肪に関連して、これらの癌が発生および進行するメカニズムはほとんどわかっていない。
【0003】
ポリエンマクロライド、特に芳香族ヘプタエンマクロライド、カンジシジンが、いくつかの国で長年の間、ヒトの良性の前立腺肥大の治療用に臨床で用いられている。胃腸管におけるコレステロールの吸収および再吸収を妨害する種々の他のコレステロール低下薬もまた、同様の前立腺疾患用に臨床で用いられている。Schaffner, 1983, in: ”Benign Prostatic Hypertrophy”, Frank Hinman, Jr. ed. Springer−Velag, New York, pp.280−307は、カンジシジンおよび他のポリエンマクロライドを用いた臨床研究をレビューした。長期間にわたるラットでの研究で、カンジシジンは非処置のコントロールと比較して、腫瘍の発生および進行を阻害することが示されている。Haditirto, 1974, Ph.D. Dissertation, Rutgers University。コレステロール吸収−再吸収の他の阻害剤としては、コレスチラミン(Cholestyramine)(登録商標)やコレスチポール(Cholestipol)(登録商標)のような、胆汁酸を排泄させる陰イオン交換樹脂が挙げられる。これらはまた、動物およびヒトにおいて前立腺疾患の経過を変化させることが示されている。コレスチポール(登録商標)は、ハムスターにおいて良性の前立腺肥大を阻害した。Wang. et al., 1976, Investigative Urol. 14:66−71。コレスチラミン(登録商標)は、前立腺癌を有するある患者においては有効であることが示されている。Addleman, 1972, N. England J. Med., 287:1047。コレステロール低下薬としては、例えばフィトステロール、ベータ−シトステロール、およびスチグマステロールもまた、高用量を必要とする質量作用の効果によりコレステロールの吸収および再吸収を阻害する能力が知られている。二重盲検対照試験において、ベータ−シトステロールは良性の前立腺肥大の治療に有効であることがわかった。Ebbinghaus et al., 1977, Z. Allg.Med., 53:1054−1058。これはヨーロッパにおいてヒトでの使用が承認されている。フィトステロールもまた、前立腺疾患の治療用に処方される種々の漢方薬の成分である。植物であるノコギリパルメットの液果のエキス、およびタデナン(Tadenan)としても知られているノコギリヤシ(Pygeum africanum)の樹皮は、かなりの量のベータ−シトステロールを含有する。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
本発明は、コレステロールに関連した腫瘍が発症する危険性のある患者、または既にコレステロールに関連した腫瘍を示す患者に対して、治療有効量のアゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤、特にエゼチミブ、その類似体の1つ、またはそのフェノール性グルクロニドを投与することを含む、コレステロールに関連した腫瘍を予防または治療する方法に関する。
【0005】
さらに、本発明は、前立腺、乳房、子宮内膜および結腸の、良性または悪性のいずれかの腫瘍からなる群から選択されるコレステロールに関連した腫瘍を予防または治療するためにエゼチミブを使用する方法に関する。
【0006】
本発明はさらに、コレステロールに関連した腫瘍を予防または治療するために、エゼチミブと、ステロイド性抗アンドロゲン剤、非ステロイド性抗アンドロゲン剤、エストロゲン、ジエチルスチルベストロール、共役エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)、タキサン、およびLHRH類似体からなる群から選択される少なくとも1つの他の抗癌剤とを一緒に投与するための方法および組成物に関する。
【0007】
さらに、本発明は、指示ラベルを含む製品;特に、容器と、指示書と、組成物と、を含む製品であって、前記組成物が治療有効量のアゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤、好ましくはエゼチミブを含み、前記指示書が、コレステロールに関連した腫瘍の予防または治療のために前記組成物を投与するためのものである、製品に関する。
【0008】
発明の詳細な説明
特記しない限り、本明細書で用いられる全ての技術および科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者により一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書で参照される全ての文献および特許は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0009】
疾患状態のコレステロールによる媒介
例えばエポキシコレステロールは、長い間、有糸分裂誘発性、変異原性、発癌性、および細胞毒性を有しているとされてきた。例えば、オスの前立腺およびメスの乳腺におけるコレステロールの酸化代謝物としてのエポキシコレステロールのインビボでのレベルは、コレステロール含量の直接の結果である。特に、コレステロール並びに、コレステロールエポキシド(エポキシコレステロール)、例えば、コレステロール5βおよび6β−エポキシドのようなその代謝物は、疾患プロセス、特に良性および/または悪性のコレステロールに関連した腫瘍、あるいは、以下に制限されないが、前立腺、乳房、子宮内膜、および結腸の組織に関連した腫瘍を含む、コレステロールに関連した異常なまたは癌性の細胞増殖または細胞塊に関連し、そして疾患プロセスを媒介している。これらの組織において、エポキシコレステロールはまた、良性および悪性の疾患のマーカーとしても作用する。
【0010】
前立腺
例えばヒトの前立腺組織のコレステロール含量は、前立腺腫瘍が出現すると2倍になる。Swyer, 1942, Cancer Res., 2:372−375; Schaffner, C.P., et al., Cancer Detect. Prevent., 1980, vol.3, p 143。さらに、ヒトの前立腺肥大や前立腺癌の診断により、組織中のコレステロール含量の倍増やかなりの量のエポキシコレステロールが確認され、ヒトの病気になった前立腺の組織や分泌物中にコレステロールエポキシドが存在することが報告された。Sporer et al., 1982, Urology, 6:244−250。
【0011】
乳房および子宮内膜
ヒトの女性の乳腺を用いた研究もまた、乳汁の吸引液中のコレステロールの有意な増加と同時に、例えば年老いたヒトの女性の乳腺におけるエポキシコレステロールの出現を報告している。特に、異性体のエポキシコレステロール、例えばベータ−エポキシコレステロールの出現は、良性および悪性の乳房腫瘍と相関している。Petrakis, et al., 1981, Cancer Res., 41:2563−2565; Wrench et al., 1989, Cancer Res., 49:2168−2174。上昇したベータ−エポキシコレステロールは、例えば子宮内膜癌患者の血漿においても検出される。Kucuk, et al., 1994, Can Epidemiol. Biomark. Prevention, 3:57 1−574。エポキシコレステロール、例えばベータ−エポキシコレステロールの出現は、体液および組織におけるコレステロールの増加と直接関連している。
【0012】
アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤
本発明は、インビボでコレステロールレベルを減少させ、エポキシコレステロールの生成並びに良性および悪性の腫瘍の発生および進行を抑制するための、アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤、例えばエゼチミブおよびそのグルクロニド並びにその類似体の組成物、並びにその使用方法に関する。本発明の組成物および方法は、特に、以下に制限されないが、前立腺、結腸、子宮内膜、もしくは乳房の組織に関連した腫瘍、または、前立腺、結腸、乳房、または子宮内膜の癌を含む、良性または悪性の、コレステロールに関連した腫瘍またはコレステロールに関連した細胞増殖もしくは細胞塊の予防または制御または治療のためのものである。胃腸管におけるコレステロールの吸収および再吸収の阻害により、コレステロールに関連した腫瘍の発生および進行を阻害することによって、前記腫瘍を予防および治療する方法が提供される。例えば、本明細書に開示されたエゼチミブ組成物の経口投与は、良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳房、子宮内膜もしくは結腸の組織に関連した、他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍を治療および/または予防するための本発明の好ましい実施形態である。
【0013】
例えば経口経路によるエゼチミブは、例えば実験動物において、前立腺疾患および他のコレステロールに関連した腫瘍の発生および進行に対して有意な効果を示す。BIO87.20のオスのゴールデンハムスターは、加齢に伴って、遺伝的に嚢胞性前立腺肥大を自発的に発症する近交系としてよく知られており、本技術分野においてはヒト前立腺疾患の優れたモデルとしてみなされている。後述する実施例I〜IIIを参照。経口経路によるエゼチミブは、BIO87.20のオスのゴールデンハムスターにおける嚢胞性前立腺肥大の発症を阻害する。エゼチミブはまた、この動物疾患モデルにおける他のコレステロールに関連した腫瘍の形成をも阻害する。エゼチミブを用いたBIO87.20のオスのゴールデンハムスターの治療は、6月齢において開始すると前立腺の肥大を阻害する。12月齢(前立腺の肥大が既に発症しているとき)で開始し、エゼチミブを用いて治療されたBIO87.20のオスのゴールデンハムスターでは、前立腺の質量または体積が減少した。例えば100g/kg体重といったより高用量のエゼチミブは、BIO87.20ハムスターの前立腺の肥大の阻害および逆転について、より強い効果を示す。さらに、例えば、エゼチミブで処置されたBIO87.20ハムスターの前立腺の組織病気学的検査によれば、BIO1.5ハムスターの前立腺切片において見られるようなより正常な組織像が示される。このBIO87.20のオスのゴールデンハムスターでは、18月齢以降に、体全体に腫瘍が発生することが知られている。18月齢では、このBIO87.20ハムスターは、前立腺の腫瘍に加えて、コレステロールに関連した腫瘍が存在することが明らかとなっている。本明細書の実施例IIのBIO87.20コントロール動物は、例えば、実験終了時には、種々の異なる腫瘍を発現する;これに対し、エゼチミブ処置されたBIO87.20の同年齢の動物では、腫瘍は発現しなかった。
【0014】
前立腺癌は、北米における男性の主要な死因であり、アメリカ合衆国では年間30,000〜40,000人が死亡している。前立腺癌の治療に化学療法はあまり有効ではなく、別のアプローチは、前立腺癌細胞の生存経路、特に、PCaおよび他の癌における細胞の重要な生存メカニズムとして同定されているPI3キナーゼ/Akt/PTENシグナル経路を標的としている。近年、膜コレステロールが、生存シグナルを細胞外からAkt1セリン−スレオニンキナーゼへ伝達するメカニズムの重要な成分であることが解明されている。また、血清コレステロールが上昇すると、マウスの前立腺癌モデル内の前立腺腫瘍において、増殖が促進され、細胞のアポトーシス量が減り、そしてAktの活性化レベルが上昇するということが近年示されている。知見によれば、アポトーシス刺激に対する前立腺癌細胞の抵抗能においては、コレステロールが重要な役割を果たしていることが示される。前立腺癌細胞の生存におけるコレステロールの役割はとても重要であることから、コレステロールを結合する薬物(ポリエンマクロライド)、膜からコレステロールを引き抜く薬物(シクロデキストリン)、またはコレステロール合成を阻害する薬物(スタチン)は全て、重要な膜(リピッドラフト(lipid rafts))を変化させ、膜が細胞シグナルを調節する能力を低下させる。コレステロールは、前立腺癌の増殖および生存を特異的調節する際に、重要な役割を果たしている。これらの研究においては、単一の前立腺マウスモデル系が用いられている。このモデルは、HB−EGFをトランスフェクトした、ヒト前立腺の腺癌細胞系であるLNCaPの特徴を有する。LNCaP細胞は、その通常の形態、PSAの産生、およびPTENがないという点で、典型的な前立腺腫瘍細胞と類似する。HB−EGFの安定なトランスフェクション、生理学的に関連する前立腺基質由来のEGFRリガンドにより、LNCaP細胞は、インビボでアンドロゲンに依存して腫瘍を形成することができる。これらのLNCaP細胞を、SCIDマウスの1/4区に皮下移植すると、その結果として、8週間にわたって、無傷の去勢されたマウスにおいて急速に腫瘍が増殖する。エゼチミブ並びに関連化合物であるSCH48461およびSCH58053は、低コレステロール食を与えたマウスの血清コレステロールレベルに対して通常は影響を及ぼさないが、高コレステロール食による誘導で上昇させた血清コレステロールレベルを低下させる。腫瘍の移植の4週間前に高コレステロール食を与えたマウスに対して、腫瘍の移植の2週間後に30mg/kg体重のエゼチミブおよびSCH48461を開始した。12週間後に、各マウスにおける腫瘍の体積を非処置コントロールと比較して評価したところ、薬物処置により、移植された腫瘍の発症および増殖が有意に阻害されることが明らかとなった。
【0015】
本明細書で用いる場合、コレステロールに関連した腫瘍は、良性もしくは悪性の腫瘍、そうでなければ、以下に制限されないが、前立腺(例えば、前立腺肥大)組織、結腸組織、乳房組織、または子宮内膜組織に関連した腫瘍、あるいは前立腺癌、結腸癌、乳癌、または子宮内膜癌を含む、コレステロールに関連した異常なまたは癌性の細胞増殖または細胞塊を意味する。
【0016】
アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤は、例えば、Rosenblum, S.B., et al., J. Med. Chem., 41(6):973−80 (1998))に記載されている。アゼチジノンベースの化合物は、強力な、経口で活性なコレステロール吸収の阻害剤である。Bioorg. Med. Chem., 7(10):2199−202 (1999)。本発明の組成物および方法に用いるための特に好ましいアゼチジノンベースの化合物は、エゼチミブ(1−(4−フルオロフェニル)−(3R)−[3−(4−フルオロフェニル)−(3S)−ヒドロキシプロピル]−(45)−(4−ヒドロキシフェニル)−2−アゼチジノン)(文献中ではSCH58235またはゼチア(ZETIA)(登録商標)とも称される)およびそのフェノール性グルクロニドであるSCH60663である。Br. J. Pharmacol., 129(8):1748−54 (2000)。本発明の組成物および方法に用いるための、エゼチミブに関連した2つの他の類似体およびコレステロール吸収阻害剤は、文献中で1)SCH58053または、(+)−7−(4−クロロフェニル)−2−(4−フルオロフェニル)−7−ヒドロキシ−3R−(4−ヒドロキシフェニル)−2−アザスピロ[3,5]ノナン−1−オン)、J. Lipid Res 43:1864−1873(2002)、および、2)SCH48461または、(3R)−3フェニルプロピル)−1(4S)−ビス(4−メトキシフェニル)−2−アゼチジノン、J Med. Chem., 41:973−980 (1998)として称される。
【0017】
エゼチミブの作用形式は、腸管中でのコレステロールの吸収および再吸収の阻害を伴うものである。この作用機構はまた、コレステロールおよび腸管にて生成するその代謝物の糞便としての排出を増加させることをも伴う。エゼチミブのこの効果によって、体内のコレステロールレベルが低下してコレステロール合成が増加し、トリグリセリド合成が減少する。コレステロール合成の増加により当初は循環系においてコレステロールレベルが維持されるが、コレステロールの吸収および再吸収の阻害が持続するにつれて、このレベルは最終的に低下する。薬物作用の全体的な効果は、循環系および体の組織におけるコレステロールレベルの低下である。
【0018】
本発明の組成物および方法に用いるための好ましいアゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤は、エゼチミブもしくはその立体異性混合物、エゼチミブのジアステレオマーリッチな異性体、純粋なジアステレオマー異性体、エナンチオマーリッチな異性体もしくは純粋なエナンチオマーの異性体、またはこれらの化合物、混合物もしくは異性体のプロドラッグ、あるいはこれらの化合物、混合物、異性体またはプロドラッグの製薬上許容されうる塩である。
【0019】
好ましい他のアゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤は、エゼチミブのフェノール性グルクロニド(Br. J. Pharmacol., 129(8): 1748−54 (2000))もしくはその立体異性混合物、エゼチミブのフェノール性グルクロニドのジアステレオマーリッチな異性体、純粋なジアステレオマー異性体、エナンチオマーリッチな異性体もしくは純粋なエナンチオマーの異性体、またはこれらの化合物、混合物もしくは異性体のプロドラッグ、あるいはこれらの化合物、混合物、異性体またはプロドラッグの製薬上許容されうる塩である。
【0020】
本明細書で用いる場合、「プロドラッグ」という表現は、投与後に、化学的または生理学的プロセスを経由して(例えば、プロドラッグは生理的pHにさらされると薬物の所望の形態に転換される)インビボで薬物を放出する、薬物前駆体の化合物を意味する。切断によるプロドラッグは、例えば対応する遊離酸を放出する。例えば、化合物の、加水分解可能なエステルの形態の残基による。
【0021】
本発明の組成物は、良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳腺、子宮内膜、もしくは結腸の組織に関連した他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍の増殖を阻害もしくは調節し、またはそのサイズを縮小させることを目的として、基本的に、有効用量の、もしくは製薬上有効量の、もしくは治療上有効量の、アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤、好ましくはエゼチミブおよび/またはそのフェノール性グルクロニド、あるいは少なくとも1つの薬理学的に活性なエゼチミブの類似体を含む。
【0022】
本明細書中に記載の組成物は、アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤、好ましくはエゼチミブ、そのフェノール性グルクロニド、またはその類似体を含み、少なくとも1つの他の抗癌剤をさらに含んでもよい。これらの組成物は、好ましくは経口投与される。経口投与用の固体状の剤形としては、カプセル、錠剤、ピル、粉末、および顆粒が挙げられ、ペット用の固体状の剤形としては、餌との混合物およびチュアブルの形態が挙げられる。かような固体状の剤形において、活性化合物は、ショ糖、乳糖、またはデンプンのような少なくとも1つの不活性な製薬上許容されうる担体と混合される。かような剤形はまた、一般的な実務のように、例えば、ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤などの上記の不活性な賦形剤以外の追加の物質を含んでもよい。カプセル、錠剤、およびピルの場合、これらの剤形は緩衝剤をも含みうる。錠剤およびピルは、さらに腸溶性コーティングされて調製されてもよい。チュアブルの形態の場合、かような剤形は着香剤や芳香剤を含んでもよい。
【0023】
本発明の組成物中の活性成分の量は変化しうる;しかしながら、活性成分の量は適当な用量の剤形が得られるようなものである必要がある。所望の用量は所望の治療効果、投与経路、および治療の期間に依存する。一般的に、本明細書中に記載の方法のためにエゼチミブを有効に放出させるためには、1日あたり約100μg〜約200μg/kg体重の用量レベルが、ヒトに対して、および他の動物、例えば哺乳動物に対して投与される。
【0024】
エゼチミブを経口投与すると、例えば、腸管において食事由来のコレステロールおよび胆汁のコレステロールの双方の吸収および再吸収が阻害され、これにより、低密度リポタンパク質(LDL)レベルの低下および高密度リポタンパク質(HDL)レベルの上昇に関連して、血清コレステロールレベルが低下する。本明細書中に記載の阻害または治療を必要とする患者に投与するための組成物中のエゼチミブの好ましい用量範囲は、1日あたり約5mg〜約150mgである。より好ましい範囲は、1日あたり約5mg〜約100mgである。さらにより好ましい範囲は、1日あたり約8mg〜約50mgである。最も好ましい範囲は、1日あたり約10mg〜約25mgである。本発明の特に好ましい実施形態は、1日1回服用のために約10mgのエゼチミブを含み、良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳腺、子宮内膜、もしくは結腸の組織に関連した他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍の増殖を阻害もしくは調節し、またはそのサイズを縮小させることを目的とする経口投与用組成物である。本発明の他の好ましい実施形態は、1日1回服用のために約15mgのエゼチミブを含み、良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳腺、子宮内膜、もしくは結腸の組織に関連した他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍の増殖を阻害もしくは調節し、またはそのサイズを縮小させることを目的とする経口投与用組成物である。本発明の他の好ましい実施形態は、1日1回服用のために約20mgのエゼチミブを含み、良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳腺、子宮内膜、もしくは結腸の組織に関連した他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍の増殖を阻害もしくは調節し、またはそのサイズを縮小させることを目的とする経口投与用組成物である。本発明の他の好ましい実施形態は、1日1回服用のために約25mgのエゼチミブを含み、良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳腺、子宮内膜、もしくは結腸の組織に関連した他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍の増殖を阻害もしくは調節し、またはそのサイズを縮小させることを目的とする経口投与用組成物である。本発明の他の好ましい実施形態は、1日1回服用のために約30mgのエゼチミブを含み、良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳腺、子宮内膜、もしくは結腸の組織に関連した他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍の増殖を阻害もしくは調節し、またはそのサイズを縮小させることを目的とする経口投与用組成物である。本発明の他の好ましい実施形態は、1日1回服用のために約35mgのエゼチミブを含み、良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳腺、子宮内膜、もしくは結腸の組織に関連した他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍の増殖を阻害もしくは調節し、またはそのサイズを縮小させることを目的とする経口投与用組成物である。本発明の他の好ましい実施形態は、1日1回服用のために約40mgのエゼチミブを含み、良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳腺、子宮内膜、もしくは結腸の組織に関連した他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍の増殖を阻害もしくは調節し、またはそのサイズを縮小させることを目的とする経口投与用組成物である。本発明の他の好ましい実施形態は、1日1回服用のために約45mgのエゼチミブを含み、良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳腺、子宮内膜、もしくは結腸の組織に関連した他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍の増殖を阻害もしくは調節し、またはそのサイズを縮小させることを目的とする経口投与用組成物である。
【0025】
これらの化合物は、本技術分野において周知の任意の手段により投与されうる。かような形態としては、経口投与、直腸投与、鼻腔投与、局所投与(口腔投与および舌下投与など)、または非経口投与(皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、および皮内投与など)が挙げられる。
【0026】
患者にとって簡単にするためには、経口投与が好ましい。しかしながら、当業者により実施されているように、他の投与経路もまた必要でありうる。よって、状況に応じて、特定の場合においていずれの投与形態が最善であるかを熟練した職人が決定すべきであり、必要とされる用量と1月あたりの投与回数とのバランスをとることが必要である。
【0027】
併用療法
本発明の組成物は、良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳房、子宮内膜もしくは結腸の組織に関連した、他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍を治療または予防するために、有効用量の、または製薬上有効量の、または治療上有効量の、アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤、好ましくはエゼチミブまたはそのフェノール性グルクロニド、および少なくとも1つの他の抗癌剤を含む。本明細書中に記載の発明の組成物および方法に用いるための薬剤の例としては、以下に制限されないが、ステロイド性または非ステロイド性抗アンドロゲン剤(例えば、フィナステリド(プロスカー(登録商標))、酢酸シプロテロン(CPA)、フルタミド(4’−ニトロ−3’−トリフルオロメチルイソブチルアニリド)、ビカルタミド(カソデックス(登録商標))、およびニルタミド)、エストロゲン、ジエチルスチルベストロール(DES)、共役エストロゲン(例えば、プレマリン(PREMARIN)(登録商標))、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)化合物(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、イドキシフェン)、タキサン(例えば、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、ドセタキセル(タキソテール(登録商標)))、LHRII類似体(例えば、酢酸ゴセレリン(ゾラデックス(登録商標))、酢酸リュープロリド(リュープロン(登録商標)))が挙げられる。
【0028】
タキサン
ドセタキセル(タキソテール(登録商標))ベースの投薬計画は、例えば、進行性のアンドロゲン非依存性前立腺癌の患者の管理のための治療オプションとして報告されている。例えば、ドセタキセルをエゼチミブと組み合わせると、ある程度の疾患を有する患者での、良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳房、子宮内膜もしくは結腸の組織に関連した、他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍の治療または予防において、有意な応答を達成するはずである。例えば、Oncology (Huntingt.), 16(6 Suppl. 6):63−72 (2002)を参照。本発明の組成物および方法で使用するための抗癌剤としては、任意のタキサンが採用されうる。
【0029】
従って本発明の好ましい方法は、良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳房、子宮内膜もしくは結腸の組織に関連した、他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍を治療または予防するために、治療上有効量のアゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤、好ましくはエゼチミブ、および、好ましくは実質的に(パクリタキセルおよびドセタキセル)からなる群から選択されるタキサンまたはその有効な誘導体もしくは類似体を、治療を必要とする患者に対して同時に経口的に投与することを含む。例えば、米国特許第6,395,770号、ヒト患者に対してタキサンを経口的に投与するための方法および組成物、2002年5月28日;米国特許第6,380,405号、タキサンプロドラッグ、2002年4月30日;米国特許第6,239,167号、タキサン誘導体含有抗腫瘍組成物、2001年5月29日を参照。
【0030】
SERM
良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳腺、子宮内膜、もしくは結腸の組織に関連した他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍の増殖を阻害もしくは調節し、またはそのサイズを縮小させるために、アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤、好ましくはエゼチミブは、哺乳動物選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)と組み合わされうる。本発明の組成物および方法で使用するための抗癌剤としては、任意のSERMが採用されうる。選択的エストロゲン受容体モジュレータの語は、エストロゲンアゴニストおよびエストロゲンアンタゴニストの双方を含み、エストロゲン受容体と結合し、骨の代謝回転を阻害して、骨の減少を防止する化合物を意味する。特にエストロゲンアゴニストは、本明細書において、哺乳動物の組織のエストロゲン受容体部位に結合でき、1以上の組織においてエストロゲンの作用を模倣しうる化合物として定義される。エストロゲンアンタゴニストは、本明細書において、哺乳動物の組織のエストロゲン受容体部位に結合でき、1以上の組織においてエストロゲンの作用を阻害しうる化合物として定義される。好ましいSERMは、タモキシフェン:(エタンアミン,2−[−4−(1,2−ジフェニル−1−ブテニル)フェノキシ]−N,N−ジメチル,(Z)−2,2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリ−カルボキシレート(1:1))および、その開示が参照により本明細書中に組み込まれる、米国特許第4,536,516号に開示されている関連化合物である。他の関連化合物は、その開示が参照により本明細書中に組み込まれる、米国特許第4,623,660号に開示されている、4−ヒドロキシタモキシフェンである。他の好ましいSERMは、ラロキシフェン:(メタノン,[6−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゾ[b]チエン−3−イル][4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−,塩酸塩)および、その開示が参照により本明細書中に組み込まれる、米国特許第4,418,068号に開示されている関連化合物である。他の好ましいSERMは、イドキシフェン:ピロリジン,1−1−[4−[−1−(4−ヨードフェニル)−2−フェニル−1−ブテニル]フェノキシ]エチル]および、その開示が参照により本明細書中に組み込まれる、米国特許第4,839,155号に開示されている関連化合物である。
【0031】
特に、ドロロキシフェンの有効用量は、0.1〜40mg/kg/日、好ましくは0.1〜5mg/kg/日の範囲である。特に、ラロキシフェンの有効用量は、0.1〜100mg/kg/日、好ましくは0.1〜10mg/kg/日の範囲である。特に、タモキシフェンの有効用量は、0.1〜100mg/kg/日、好ましくは0.1〜5mg/kg/日の範囲である。特に、4−ヒドロキシタモキシフェンの有効用量は、0.0001〜100mg/kg/日、好ましくは0.001〜10mg/kg/日の範囲である。
【0032】
従って本発明の好ましい方法は、良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳房、子宮内膜もしくは結腸の組織に関連した、他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍を治療または予防するために、治療上有効量のアゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤、好ましくはエゼチミブ、および、好ましくは実質的に(タモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、およびイドキシフェン)からなる群から選択されるSERMまたはその有効な誘導体もしくは類似体を、治療を必要とする患者に対して同時に経口的に投与することを含む。例えば、その開示が参照により本明細書中に組み込まれる、米国特許第5,047,431号、米国特許第6,245,352号、および米国特許第5,972,383号を参照。
【0033】
ステロイド性または非ステロイド性抗アンドロゲン剤
良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳腺、子宮内膜、もしくは結腸の組織に関連した他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍の増殖を阻害もしくは調節し、またはそのサイズを縮小させるために、アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤、好ましくはエゼチミブは、ステロイド性または非ステロイド性抗アンドロゲン剤と組み合わされうる。本発明の第2の化合物としては、任意のステロイド性または非ステロイド性抗アンドロゲン剤が採用されうる。例えば、米国特許第5,610,150号、米国特許第6,015,806号を参照。
【0034】
従って本発明の好ましい方法は、良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳房、子宮内膜もしくは結腸の組織に関連した、他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍を治療または予防するために、治療上有効量のアゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤、好ましくはエゼチミブ、および、好ましくは実質的に(フィナステリド(プロスカー(登録商標))、酢酸シプロテロン(CPA)、フルタミド(4’−ニトロ−3’−トリフルオロメチルイソブチルアニリド)、ビカルタミド(カソデックス(登録商標))、およびニルタミド)からなる群から選択されるステロイド性もしくは非ステロイド性抗アンドロゲン剤またはその有効な誘導体もしくは類似体を、治療を必要とする患者に対して同時に経口的に投与することを含む。
【0035】
良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳腺、子宮内膜、もしくは結腸の組織に関連した他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍の増殖を阻害もしくは調節し、またはそのサイズを縮小させるために、約1mg〜約10mg、好ましくは約5mgの量のフィナステリド(プロスカー(登録商標))が、例えば、1日1回服用のために約10mgのエゼチミブをさらに含む医薬組成物中で同時に経口投与されてもよい。
【0036】
黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)の類似体またはアゴニスト
良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳腺、子宮内膜、もしくは結腸の組織に関連した他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍の増殖を阻害もしくは調節し、またはそのサイズを縮小させるために、アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤、好ましくはエゼチミブは、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)の類似体またはアゴニストと同時に投与されてもよい。本発明の第2の化合物としては、任意のLHRH類似体またはアゴニストが採用されうる。
【0037】
従って本発明の好ましい方法は、良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳房、子宮内膜もしくは結腸の組織に関連した、他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍を治療または予防するために、治療上有効量のアゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤、好ましくはエゼチミブ、および、好ましくは実質的に(酢酸ゴセレリン(ゾラデックス(登録商標))および酢酸リュープロリド(リュープロン(登録商標)))からなる群から選択されるLHRHの類似体もしくはアゴニストまたはその有効な誘導体もしくは類似体を、治療を必要とする患者に対して同時に経口的に投与することを含む。
【0038】
エストロゲン、ジエチルスチルベストロール(DES)、共役エストロゲン(例えば、プレマリン(登録商標))
良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳腺、子宮内膜、もしくは結腸の組織に関連した他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍の増殖を阻害もしくは調節し、またはそのサイズを縮小させるために、アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤、好ましくはエゼチミブは、エストロゲン、ジエチルスチルベストロール(DES)、または共役エストロゲンと同時に投与されてもよい。
【0039】
従って本発明の好ましい方法は、良性の前立腺肥大または、例えば前立腺、乳房、子宮内膜もしくは結腸の組織に関連した、他のコレステロールに関連した良性もしくは悪性の腫瘍を治療または予防するために、治療上有効量のアゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤、好ましくはエゼチミブ、および、エストロゲン、ジエチルスチルベストロール(DES)、もしくは共役エストロゲン(例えば、プレマリン(登録商標))またはその有効な誘導体もしくは類似体を、治療を必要とする患者に対して同時に経口的に投与することを含む。
【0040】
製品
容器、例えば、バイアル、指示書、および配合された組成物を含む製品が提供され、この際、前記組成物は治療上有効量のアゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤を含み、前記指示は、コレステロールに関連した腫瘍、例えば、前立腺腫瘍、乳房腫瘍、子宮内膜腫瘍、および/または結腸腫瘍の予防または治療用の組成物の投与のためであるか、または投与を指示する。好ましい製品は、アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤として、エゼチミブを含む。上記の他の好ましい製品は、少なくとも1つの他の抗癌剤、例えば、ステロイド性抗アンドロゲン剤、非ステロイド性抗アンドロゲン剤、エストロゲン、ジエチルスチルベストロール、共役エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)、タキサン、および/またはLHRH類似体、をさらに含む。
【実施例】
【0041】
実施例
実施例I
実験動物群
BIO87.20のオスのゴールデンハムスターは、加齢に伴って、遺伝的に嚢胞性前立腺肥大を自発的に発症する近交系としてよく知られており、本技術分野においてはヒト前立腺疾患の優れたモデルとしてみなされている。例えば、Homburger et al., 1970, Proc. Soc. Exptl. Biol. Med., 134:284−286; Homburger, 1972, Health Lab Sci., 9:103−111; Wang et al., 1976, Invest. Urol., 14:66−71を参照。このBIO87.20ハムスター系では、12月齢後に複数の腫瘍を発症する。
【0042】
BIO87.20のオスのゴールデンハムスターの肥大した前立腺を組織病理学検査すると、一般的に、好酸性の無形性物質で満たされた前立腺の小胞の嚢状拡張が見られる。顕微鏡検査によれば、間質性過形成および上皮細胞の変化もまた観察される。BIO1.5系のようなコントロールのオスのゴールデンハムスターでは一般的に、12月齢またはそれ以上でも腫瘍を発症することはない。本明細書中に記載のエゼチミブの研究では、BIO87.20およびBIO1.5系のオスのゴールデンハムスターを用いた。コレステロールリッチな餌で飼育したBIO87.20ハムスターは、剖検により、動物を死に至らしめる、コレステロールの肝臓への顕著な蓄積および高コレステロール血症を示した。さらに、正常なハムスターにおける肝臓でのコレステロール合成は食事由来のコレステロールによる負のフィードバック制御を受けるのに対し、BIO87.20ハムスターにおける肝臓でのコレステロール合成はかようなフィードバック制御を受けないことが、研究により明確に明らかとなった。Schaffner et al., Lipids 16:835−840 (1981)。BIO87.20のオスのハムスターでは、コレステロール合成の異常と嚢胞性前立腺肥大とが関連している。
【0043】
16匹のBIO1.5、および48匹のBIO87.20のオスのゴールデンハムスターを、バイオブリーダーズ,インコーポレイテッド(Bio Breeders,Inc. Boston, Massachusetts)から得た。これらの動物のうち、8匹のBIO1.5および24匹のBIO87.20のハムスターは6月齢であり、これに対して、6匹のBIO1.5および24匹の87.20のハムスターからなる残りは、12月齢である。動物は個々のかごの中で飼育する。全ての動物に適宜水を与え、12時間の人工光および12時間の暗闇の自動レジメの下で飼育する。
【0044】
全ての動物において同等の摂取を保証するために、食料の消費をモニターする。薬物であるエゼチミブを粉末状にし、粉末状のプリナ(PURINA)(登録商標)ハムスターチュー中に混合する。食料中のエゼチミブの濃度を、1日あたりのハムスターの食料摂取量に従って調節し、1日あたり体重あたりのエゼチミブの平均μgとして示す。
【0045】
動物を、それぞれ8匹の動物からなる8つの実験群に分ける。この群は、以下のように特徴付けられうる。
【0046】
【表1】

【0047】
コントロールのBIO1.5、並びにコントロールおよび処置BIO87.20のオスの、6月齢および12月齢双方のゴールデンハムスターを、以下のように用いる。BIO87.20のオスのゴールデンハムスターの処置群では、エゼチミブが粉末として食料中に投与される。BIO87.20動物の100および1000μg/kg体重のエゼチミブの用量を用いる処置を、6ヶ月間継続する。コントロールのBIO1.5およびBIO87.20動物は、エゼチミブを服用しない。同程度の食料摂取を保証するために、全ての群の食料の消費をモニターする。処置の6ヶ月後に動物を屠殺し、前立腺を摘出し、秤量して、組織病理学検査用に保存する。
【0048】
6ヶ月後の実験終了時には、全てのコントロールのBIO87.20ハムスターで明らかに前立腺が肥大している。このことは、下方表面側の前立腺を切除して秤量するとさらに明らかとなる。これとは全く逆に、BIO1.5ハムスターは12または18月齢においても、前立腺の肥大を示さない。BIO87.20のコントロール群では、12月齢よりも18月齢において腺の肥大はより顕著である。このコントロール群において、前立腺肥大の発症は時間とともに促進される。12月齢および18月齢でのBIO87.20ハムスターの調製切片の検査により、このハムスター系にはよく知られている嚢胞性前立腺肥大が組織学的に明らかとなる。さらに、顕微鏡検査によれば、BIO1.5ハムスターの前立腺切片検査では見られない小胞の膨張が見られる。
【0049】
実施例II
6月齢のBIO87.20ハムスターのエゼチミブ処置
6月齢から開始したBIO87.20のオスのゴールデンハムスターの6ヶ月のエゼチミブ処置により、未処置のコントロールBIO87.20ハムスターと比較して、前立腺の体積に対する顕著な阻害効果が見られる。1000μgエゼチミブ/kg体重の効果は、前立腺のサイズの増加に対して、薬物エゼチミブ/kg体重の用量を用いる場合よりもより大きな阻害効果を示す。さらに、組織病理学検査を行うと、エゼチミブ処置の6ヶ月後には、未処置のコントロールBIO87.20動物と比較した場合に処置動物では嚢胞性前立腺肥大の顕著な縮小が明らかに見られる。エゼチミブ処置の6ヶ月後には、BIO87.20動物の下方表面側の前立腺の重量は、同齢のBIO1.5(コントロール)ハムスター(ここで、嚢胞性前立腺肥大の発症は見られない)の重量と同等になる。
【0050】
実施例III
12月齢のBIO87.20ハムスターのエゼチミブ処置
嚢胞性前立腺肥大は、12月齢のBIO87.20のオスのゴールデンハムスターにおいては一般に、よく確立している。全てのオスのゴールデンハムスター、すなわち、コントロールおよび処置BIO87.20、並びにコントロールBIO1.5は、実験の開始時に12月齢である。100および1000μg/kg体重のエゼチミブの量を用いたBIO87.20動物の処置は、6ヶ月間継続する。処置後、摘出した下方表面側の前立腺の重量は、未処置のBIO87.20コントロールと比較して顕著に減少している。さらに、効果のレベルはまたしても高用量のエゼチミブで有意に大きい。従って、これらの結果によれば、エゼチミブは、一度生じた前立腺の肥大を回復させもすることが示される。
【0051】
未処置のBIO87.20コントロールハムスターの検査においては、前立腺の腫瘍以外の種々の腫瘍が観察される。これに対し、1000μg/kg体重の経口用量を投与するエゼチミブ処置BIO87.20動物では、腫瘍はほとんど観察されない。
【0052】
実施例IV
HB−EGFでトランスフェクションされたLNCaP細胞を移植されたSCIDマウスのエゼチミブ処置
SCIDマウスの1/4区にLNCaP細胞を皮下移植する(注射部位あたり150μLのマトリゲル中に2×10細胞)と、8週間にわたって、高コレステロール食で無傷のおよび去勢された宿主において急速に腫瘍が増殖する。腫瘍細胞の移植の2週間後に、動物は、10mg/kg体重で餌中にエゼチミブを与えられる。無傷のおよび去勢されている動物双方について、処置の6〜12週間後に検査すると、未処置のコントロールと比較して、腫瘍の増殖および進行の顕著な阻害が明らかとなる。
【0053】
実施例V
HB−EGFでトランスフェクションされたLNCaP細胞を移植されたSCIDマウスのSCH48461処置
実施例IVにおけるのと同様に設計された研究において、動物は、10mg/kg体重で餌中にSCH48461を与えられる。無傷のおよび去勢されている動物双方について、処置の6〜12週間後に検査すると、未処置のコントロールと比較して、腫瘍の増殖および進行の有意な阻害が明らかとなる。
【0054】
上記の明細書中で言及した全ての文献および特許は、参照により本明細書中に組み込まれる。記載された本発明の組成物および方法の種々の修飾および変更は、当業者にとっては、本発明の範囲および思想を逸脱することなく明白であろう。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して記載されているものの、特許請求の範囲に記載の発明は特定の実施形態に過度に限定されるべきではないと理解されるべきである。実際に、本技術分野または関連する分野の当業者にとって明白な、記載の組成物および本発明を実施するための形態の種々の修飾は、請求項の範囲内のものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレステロールに関連した腫瘍が発症する危険性のある患者、または既にコレステロールに関連した腫瘍を示す患者に対して、治療有効量のアゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤を投与することを含む、コレステロールに関連した腫瘍を予防または治療する方法。
【請求項2】
前記アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤が、実質的にエゼチミブ、SCH48461、およびSCH58053からなる群から選択される、請求項1に記載のコレステロールに関連した腫瘍を予防または治療する方法。
【請求項3】
前記アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤が、エゼチミブもしくはその立体異性混合物、エゼチミブのジアステレオマーリッチな異性体、純粋なジアステレオマー異性体、エナンチオマーリッチな異性体もしくは純粋なエナンチオマーの異性体、またはこれらの化合物、混合物もしくは異性体のプロドラッグ、あるいはこれらの化合物、混合物、異性体またはプロドラッグの製薬上許容されうる塩である、請求項2に記載のコレステロールに関連した腫瘍を予防または治療する方法。
【請求項4】
前記アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤が、実質的にエゼチミブ、エゼチミブのフェノール性グルクロニド、SCH48461、およびSCH58053からなる群から選択される、請求項1に記載のコレステロールに関連した腫瘍を予防または治療する方法。
【請求項5】
前記コレステロールに関連した腫瘍が、実質的に(良性の前立腺肥大、良性の乳房腫瘍、良性の子宮内膜腫瘍、および良性の結腸腫瘍)からなる群から選択される、請求項1に記載のコレステロールに関連した腫瘍を予防または治療する方法。
【請求項6】
前記コレステロールに関連した腫瘍が、実質的に(悪性の前立腺腫瘍、乳癌、子宮内膜癌、および結腸癌)からなる群から選択される、請求項1に記載のコレステロールに関連した腫瘍を予防または治療する方法。
【請求項7】
アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤が、エゼチミブおよび/または少なくとも1つの薬理学的に活性なエゼチミブの類似体である、請求項5に記載のコレステロールに関連した腫瘍を予防または治療する方法。
【請求項8】
アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤が、エゼチミブおよび/または少なくとも1つの薬理学的に活性なエゼチミブの類似体である、請求項6に記載のコレステロールに関連した腫瘍を予防または治療する方法。
【請求項9】
治療有効量が、1日あたり約0.1〜約30mg/kg体重である、請求項7に記載のコレステロールに関連した腫瘍を予防または治療する方法。
【請求項10】
治療有効量が、1日あたり約0.1〜約30mg/kg体重である、請求項8に記載のコレステロールに関連した腫瘍を予防または治療する方法。
【請求項11】
コレステロールに関連した腫瘍が発症する危険性のある患者、または既にコレステロールに関連した腫瘍を示す患者に対して、治療有効量のアゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤と、少なくとも1つの他の抗癌剤とを一緒に投与することを含む、コレステロールに関連した腫瘍を予防または治療する方法。
【請求項12】
前記アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤が、エゼチミブおよびその類似体である、請求項11に記載の予防または治療する方法。
【請求項13】
少なくとも1つの他の抗癌剤が、(ステロイド性抗アンドロゲン剤、非ステロイド性抗アンドロゲン剤、エストロゲン、ジエチルスチルベストロール、共役エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)、タキサン、およびLHRH類似体)からなる群から選択される、請求項12に記載の予防または治療する方法。
【請求項14】
前記非ステロイド性抗アンドロゲン剤が、実質的に(フィナステリド(プロスカー(PROSCAR)(登録商標))、フルタミド(4’−ニトロ−3’−トリフルオロメチルイソブチルアニリド)、ビカルタミド(カソデックス(CASODEX)(登録商標))、およびニルタミド)からなる群から選択される、請求項13に記載の予防または治療する方法。
【請求項15】
前記SERMが、実質的に(タモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、おおよびイドキシフェン)からなる群から選択される、請求項13に記載の予防または治療する方法。
【請求項16】
前記タキサンが、実質的に(パクリタキセル(タキソール(TAXOLE)(登録商標))、およびドセタキセル(タキソテール(TAXOTERE)(登録商標))からなる群から選択される、請求項13に記載の予防または治療する方法。
【請求項17】
前記LHRH類似体が、実質的に(酢酸ゴセレリン(ゾラデックス(ZOLADEX)(登録商標))、および酢酸リュープロリド(リュープロン(LUPRON)(登録商標)))からなる群から選択される、請求項13に記載の予防または治療する方法。
【請求項18】
治療有効量のアゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤、および少なくとも1つの他の抗癌剤を含む、コレステロールに関連した腫瘍の予防または治療のための組成物。
【請求項19】
前記アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤がエゼチミブである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
少なくとも1つの他の抗癌剤が、(ステロイド性抗アンドロゲン剤、非ステロイド性抗アンドロゲン剤、エストロゲン、ジエチルスチルベストロール、共役エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)、タキサン、およびLHRH類似体)からなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記非ステロイド性抗アンドロゲン剤が、実質的に(フィナステリド(プロスカー(PROSCAR)(登録商標))、フルタミド(4’−ニトロ−3’−トリフルオロメチルイソブチルアニリド)、ビカルタミド(カソデックス(CASODEX)(登録商標))、およびニルタミド)からなる群から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記SERMが、実質的に(タモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、おおよびイドキシフェン)からなる群から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
前記タキサンが、実質的に(パクリタキセル(タキソール(TAXOLE)(登録商標))、およびドセタキセル(タキソテール(TAXOTERE)(登録商標))からなる群から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
前記LHRH類似体が、実質的に(酢酸ゴセレリン(ゾラデックス(ZOLADEX)(登録商標))、および酢酸リュープロリド(リュープロン(LUPRON)(登録商標)))からなる群から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項25】
容器と、指示書と、組成物と、を含む製品であって、前記組成物が治療有効量のアゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤を含み、前記指示書が、コレステロールに関連した腫瘍の予防または治療のために前記組成物を投与するためのものである、製品。
【請求項26】
前記アゼチジノンベースのコレステロール吸収阻害剤が、エゼチミブおよび/または少なくとも1つのエゼチミブの薬理学的に活性な類似体である、請求項25に記載の製品。
【請求項27】
前記指示書が、(前立腺肥大(前立腺腫瘍)、乳房腫瘍、子宮内膜腫瘍、および結腸腫瘍)からなる群から選択される腫瘍の予防または治療のために前記組成物を投与するためのものである、請求項26に記載の製品。
【請求項28】
前記組成物が、少なくとも1つの他の抗癌剤をさらに含む、請求項26に記載の製品。
【請求項29】
少なくとも1つの他の抗癌剤が、(ステロイド性抗アンドロゲン剤、非ステロイド性抗アンドロゲン剤、エストロゲン、ジエチルスチルベストロール、共役エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)、タキサン、およびLHRH類似体)からなる群から選択される、請求項28に記載の製品。

【公表番号】特表2006−501205(P2006−501205A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−525042(P2004−525042)
【出願日】平成15年7月30日(2003.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/023764
【国際公開番号】WO2004/010948
【国際公開日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願人】(505030214)カリキオン インコーポレイテッド (1)
【出願人】(501475701)チルドレンズ メディカル センター コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】