説明

エッチング液及びエッチング方法

本発明は、比誘電率が8以上の膜(High−k膜)とシリコン酸化膜とが表面に形成されたものをエッチング処理するのに好適なエッチング液であって、High−k膜のエッチングレートが2Å/分以上であり、熱酸化膜(THOX)とHigh−k膜のエッチングレートの比が50以下であるものを提供する。前記エッチング液としては、フッ化水素(HF)と種々のエーテル系有機溶媒とを混合したものが好ましく使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、エッチング液、エッチング処理物の製造方法及び該方法により得ることができるエッチング処理物に関する。
【背景技術】
近年、半導体デバイスの微細化に伴いゲートの幅を狭めることが必要となっているので、スケーリング則に従いゲート絶縁膜の実効膜厚を薄くする必要が生じている。しかしながら、シリコンデバイスにおいてゲート絶縁膜として現在用いられているSiO膜をさらに薄くすると、リーク電流の増加や信頼性の低下といった問題が生じる。これに対して高誘電体材料(High−k材料)をゲート絶縁膜に用いることで物理膜厚を増加する方法が提案されている。かかる高誘電体材料としては、酸化ハフニウム等、酸化ジルコニウム膜等があるが、これらHigh−k膜は、一般に耐エッチング性が非常に高い。また、High−k膜をエッチングできるようなエッチング液であっても、High−k膜のエッチングプロセス前にSi基板上に成膜、形成されたTHOX、TEOS等のSi酸化膜に対するエッチング速度があまりにも速いと、これらのSi酸化膜の機能が発揮できない程度までエッチングされてしまうので好ましくない。従って、High−k膜をエッチングでき、且つシリコン酸化膜のエッチング速度が抑えられたエッチング液が求められている(例えば、Experimental observation of the thermal stability of High−k gate dielectric material on silicon,P.S.Lysaght et al,Journal of Non−Crystmlline Solids,303(2002)54−63;Integration of High−k Gate stack systems into planar CMOS process flows,H.R.Huff et al,IWGI 2001,Tokyo;Selective & Non−Selective Wet Etching,M.Itano et al,Wafer Clean & Surface Prep Workshop,International Sematechを参照。)。
本発明は、High−k膜をエッチングでき、且つシリコン酸化膜のエッチング速度が抑えられたエッチング液を提供することを主な目的とする。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の被処理物の一例の模式図を示す。
【発明の開示】
即ち、本発明は下記の各項に示す発明に係る。
項1. 比誘電率が8以上の膜(High−k膜)のエッチングレートが2Å/分以上であり、熱酸化膜(THOX)とHigh−k膜のエッチングレートの比([THOXのエッチングレート]/[High−k膜のエッチングレート])が50以下であるエッチング液。
項2. High−k膜の比誘電率が15以上である項1に記載のエッチング液。
項3. High−k膜が、酸化ハフニウム膜、酸化ジルコニウム膜又は酸化ランタン膜である項1に記載のエッチング液。
項4. High−k膜が、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、ハフニウムアルミネート(HfAlO)、HfSiON、HfAlON、ZrSiO、ZrAlO、ZrSiON、ZrAlON、アルミナ(Al2O3)、HfON、ZrONおよびPr2O3からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む項1に記載のエッチング液。
項5. 熱酸化膜のエッチング速度が、100Å/分以下である項1に記載のエッチング液。
項6. フッ化水素(HF)を含む、項1に記載のエッチング液。
項7. フッ化水素濃度が3mass%以上である項1に記載のエッチング液。
項8. フッ化水素及びヘテロ原子を有する有機溶媒を含む項1に記載のエッチング液。
項9. ヘテロ原子を有する有機溶媒が、エーテル系化合物、ケトン系化合物、含硫黄複素環化合物である項8に記載のエッチング液。
項10. ヘテロ原子を有する有機溶媒が、エーテル系化合物である項9に記載のエッチング液。
項11. エーテル系化合物が、一般式(1)
−O−(CHCH−O)−R (1)
[式中、nは1,2、3または4を示し、R及びRは同一または異なって水素原子、低級アルキル基又は低級アルキルカルボニル基を示す(但し、RとRは同時に水素原子となることはない。)。]で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である項10に記載のエッチング液。
項12. エーテル系化合物の比誘電率が、30以下である項10に記載のエッチング液。
項13. ヘテロ原子を有する有機溶媒が、分子内に少なくとも1つのカルボニル基を含む項8に記載のエッチング液。
項14. ヘテロ原子を有する有機溶媒が、分子内に少なくとも1つの水酸基を含む項8に記載のエッチング液。
項15. エーテル系化合物が、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、フラン、フルフラール、γ−ブチロラクトン、モノグライム、ジグライム及びジオキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種である項10に記載のエッチング液。
項16. エーテル系化合物が、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である項10に記載のエッチング液。
項17. エーテル系化合物が、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびトリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートからなる群より少なくとも1種である項10に記載のエッチング液
項18. エーテル系化合物がエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルおよびプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる郡より選ばれる少なくとも1種である項10に記載のエッチング液。
項19. 含硫黄複素環化合物が、スルホラン及びプロパンスルトンより選ばれる少なくとも1種である項9に記載のエッチング液。
項20. フッ化水素(HF)、ヘテロ原子を含む有機溶媒及び水を含み、HF:ヘテロ原子を含む有機溶媒:水=3mass%以上:50〜97mass%:10mass%以下である項1に記載のエッチング液。
項21. 項1に記載のエッチング液を用いて、シリコン酸化膜及び比誘電率が8以上の膜を有し、比誘電率が8以上の膜の上にゲート電極が形成された被エッチング物をエッチング処理するエッチング処理物の製造方法。
項22. 項21の方法により得ることができるエッチング処理物。
本発明のエッチング液は、熱酸化膜(THOX)と比誘電率の高い膜(High−k膜)のエッチングレートの比([THOXのエッチングレート]/[High−k膜のエッチングレート])が50以下である。本発明の好ましい実施形態によれば、本発明のエッチング液はHigh−k膜のエッチングレートが2Å/分以上、好ましくは約5Å/分以上、より好ましくは10〜30Å/分程度である。
比誘電率の高い膜(High−k膜)として、比誘電率が8以上程度、好ましくは15程度以上、より好ましくは20〜40程度の膜が用いられる。比誘電率の上限は50程度である。このようなHigh−k膜の材料として、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、ハフニウムアルミネート(HfAlOx)、HfSiON、HfAlON、ZrSiO、ZrAlO、ZrSiON、ZrAlON、アルミナ(Al2O3)、HfON、ZrON、Pr2O3などが挙げられる。これらの材料の比誘電率は、アルミナ=8.5〜10、アルミネート類(HfAlO、HfAlON、ZrAlO、ZrAlON)=10〜20、シリケート(HfSiO、HfSiON、ZrSiO、ZrSiON)類=10−20、酸化ハフニウム=24、酸化ジルコニウム=11〜20である。
本発明のエッチング液は、THOXとHigh−k膜のエッチングレートの比(THOXのエッチングレート/High−k膜のエッチングレート)が50以下であり、好ましくは20程度以下、より好ましくは10程度以下、さらに好ましくは5程度以下、特に好ましくは1以下程度である。さらに好ましくは、1/10以下程度である。
High−k膜とTHOXのエッチングレートの比が上記の範囲であると、以下の理由から好ましい。
半導体素子の製造工程において、High−kゲート酸化膜のエッチングプロセス時には、Si基板上には、STI(Shallow Trench isolation)等のICの素子間分離に、Si酸化膜が成膜されており、また、ゲート酸化膜においても、High−k酸化層とSi基板間に、Si酸化膜の中間層が薄く形成されている(図1参照)。High−kゲート酸化膜のエッチングプロセスにおいて、High−k膜がオーバーエッチした際、これらの下地の膜がエッチングされると、これら膜の機能に支障をきたし、問題となる。従って、Si酸化膜がエッチされず、High−k膜のみをエッチングできるようなエッチング液が理想的であるが、High−k膜の膜厚、及びエッチング速度の均一性が高く、かつジャストエッチがなされれば、これらのSi酸化膜はエッチされないため問題ない。選択比が上記のような範囲であれば、エッチング時間を調整するなどしてSi酸化膜をエッチしないように制御できる範囲であるので好ましい。上記の選択比であれば、High−k膜をオーバーエッチした場合であっても、Si酸化膜の機能に支障をきたさないオーバーエッチの範囲に制御することが可能である。或いは、中間層のSi酸化膜は、サイドからエッチされるので、エッチされるのに時間がかかり、上記したような選択比であれば、問題のない範囲内でのエッチングに制御することが可能となる。
本発明のエッチング液は、High−k膜のエッチングレートが、約2Å/分以上、好ましくは約5Å/分以上程度、より好ましくは約10Å/分以上である。
High−kゲート酸化膜ウェットエッチングプロセスにおける、スループットの観点から、2Å/分以上が望ましい。
High−k膜のエッチングレートが2Å/分以上であり、High−k膜と熱酸化膜(THOX)のエッチングレートの比が50以下であるという条件は、当該エッチング液がエッチング可能な温度範囲内であれば、いずれかの温度で満たせばよく、本発明のエッチング液は、所望の温度で上記2つの条件を満たすようなエッチング液であればよい。好ましくは、20℃以上のいずれかの温度で上記2つの要件を満たすようなエッチング液であればよく、より好ましくは20℃〜溶媒の沸点のいずれかの温度、さらに好ましくは20〜90℃のいずれかの温度、さらに好ましくは、20〜60℃のいずれかの温度、好ましくは、20〜30℃で上記用件を満たすようなエッチング液であればよい。
本発明のエッチング液は、THOXのエッチングレートが、100Å/分以下程度、好ましくは50Å/分以下程度、より好ましくは20Å/分以下程度である。より好ましくは、1Å/分以下程度である。この場合の液温は、エッチング液の種類に応じて異なり、当該エッチング液がエッチング可能な温度範囲内であればいずれの温度であってもよく、好ましくは、20℃以上のいずれかの温度、より好ましくは20℃〜溶媒の沸点以下の温度範囲のいずれかの温度、さらに好ましくは、20〜60℃のいずれかの温度、好ましくは、20〜30℃で上記要件を満たすようなエッチング液であればよい。
熱酸化膜(THOX)に対して、High−k膜を上記したような比でエッチングすることができれば、TEOSなどの他のシリコン酸化膜に対しても、同様な比率でエッチングすることができる。
本発明のエッチング液のエッチングレートは、本発明のエッチング液を用いて各膜(High−k膜、THOX、TEOS等のシリコン酸化膜など)をエッチングし、エッチング前後での膜厚の差をエッチング時間で割って計算することにより求めることができる。
本発明のエッチング液としては、フッ化水素(HF)を含むエッチング液、好ましくはフッ化水素、及びヘテロ原子を有する有機溶媒を含むエッチング液が例示される。
HFの含有量は、好ましくは3mass%以上程度、より好ましくは10mass%以上程度が好ましい。HFの含有量の上限値については、特に限定されるものではないが、好ましくは50mass%程度、より好ましくは35mass%程度、さらに好ましくは25mass%程度である。一般に、HFの含有量が多いと、High−k膜のエッチングレートが高くなる傾向にある。一方、HFの含有量が少ないと、THOXとHigh−k膜のエッチングレートの比([THOXのエッチングレート]/[High−k膜のエッチングレート])が小さくなる傾向にある。従って、HFの濃度は、所望のHigh−k膜のエッチングレートと、所望のTHOXとHigh−k膜のエッチングレートの比とに応じて、適宜設定することができる。
HFとしては、conc.フッ酸(50mass%水溶液)を通常用いるが、水を含まないエッチング液が好ましい場合には、100%HFを用いることもできる。
フッ化水素(HF)を含むエッチング液の作成方法は、conc.フッ酸を用いる場合は、ヘテロ原子を有する有機溶媒にconc.フッ酸水を混合する。100%HFを用いる場合は、100%HFを液で混合するか、100%HFを希釈する。これらの混合、希釈の際は発熱に注意する。
ヘテロ原子を有する有機溶媒としては、エーテル系化合物、ケトン系化合物、含硫黄化合物などが好ましい。
これらの中でも、エーテル系化合物が好ましい。
エーテル系化合物としては、鎖状又は環状のいずれであってもよく、例えば、下記式(1)で表されるような化合物が好ましく例示される。
−O−(CHCH−O)−R (1)
[式中、nは1,2、3または4を示し、R及びRは同一または異なって水素原子、低級アルキル基又は低級アルキルカルボニル基を示す(但し、RとRは同時に水素原子となることはない。)。]
低級アルキル基としては、炭素数1〜3程度のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
低級アルキル基カルボニル基の低級アルキル基としては、炭素数1〜3のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)が好ましく例示され、低級アルキル基カルボニル基としては、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリルが例示される。
一般式(1)で表される好ましい化合物としてはモノグライム(n=1);ジグライム、ジエチレングリコールジエチルエーテル(n=2);トリエチレングリコールジメチルエーテル(n=3);テトラエチレングリコールジメチルエーテル(n=4)が挙げられる。
他のエーテル系化合物としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、フラン、フルフラール、γ−ブチロラクトン、ジオキサン等が挙げられる。
これらエーテル化合物の中でも、モノグライム、ジグライム、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、γ−ブチロラクトンが好ましく、モノグライムが特に好ましい。
また、エーテル系化合物としては、比誘電率が30以下のものを好ましく用いることができる。比誘電率が30以下のエーテル系化合物としては、モノグライム、ジグライム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
ケトン系化合物としては、γ−ブチロラクトンなどの環状化合物が挙げられる。
含硫黄化合物としては、スルホラン、プロパンスルトンなどの環状化合物が挙げられる。
本発明のエッチング液は水を含んでいてもよい。水を含む場合の含有量は、10mass%以下、好ましくは5mass%以下、より好ましくは3mass%程度である。ただし、本発明のエッチング液としては、水を含まないものの方が好ましい。
本発明の好ましいエッチング液としては、
・HF:ヘテロ原子を含む有機溶媒(好ましくは、エーテル系化合物):水=3mass%以上:50〜97mass%:10mass%以下
が例示される。
より具体的には、下記のようなエッチング液が挙げられる。
・HF:モノグライム:水=3〜50mass%:50〜97mass%:0〜10mass%
・HF:ジグライム:水=3〜50mass%:50〜97mass%:0〜10mass%
・HF:ジオキサン:水=3〜50mass%:50〜97mass%:0〜10mass%
・HF:テトラヒドロフラン:水=3〜50mass%:50〜97mass%:0〜10mass%
・HF:ジエチレングリコールジエチルエーテル:水=1〜20mass%:70〜99mass%:0〜10mass%
・HF:トリエチレングリコールジメチルエーテル:水=1〜20mass%:70〜99mass%:0〜10mass%
・HF:テトラエチレングリコールジメチルエーテル:水=1〜20mass%:70〜99mass%:0〜10mass%
本発明のエッチング液は、シリコン基板上にHigh−k膜と、THOXやTEOS等のシリコン酸化膜とが表面に形成されたものを被エッチング物としてエッチング処理するのに好適に使用できる。
例えば、半導体製造プロセスにおいて、シリコン基板上に、THOXやTEOS等のシリコン酸化物をトレンチに埋め込んで素子分離領域を形成し、High−k膜を形成した後、ゲート電極を形成し、次いで、例えばゲート電極をマスクとして、High−k膜をエッチングしてゲート絶縁膜を形成する際に用いることができる。
なお、本発明のエッチング液を用いてエッチングする前に、少しだけHigh−k膜を残すようにしてドライエッチングを行ってもよい。即ち、2段階のエッチングによりHigh−k膜のエッチングを行う際、ドライエッチングによりHigh−k膜の上部をエッチングし、残ったHigh−k膜を除去するためにウェットエッチを行う場合があり、本発明のエッチング液を当該ウェットエッチに用いることができる。
本発明のエッチング方法において、エッチング液の温度は、所望のエッチング速度及び選択比でHigh−k膜とTHOXをエッチングできる限り特に限定されるものではなく、High−k膜の種類、エッチング液の種類などに応じて適宜設定することができる。例えば、フッ化水素を含むエッチング液であればフッ化水素濃度が高い場合は比較的低い温度で「High−k膜のエッチングレートが2Å/分以上である」という要件を満たすが、フッ化水素濃度が低い場合は、当該要件を満たすためには比較的高い温度でエッチングする必要がある。このように、エッチング液の成分の種類及び成分の配合割合に応じて、本発明の要件を満たすような温度に適宜設定すればよい。エッチング液の温度は、通常、20〜90℃程度、好ましくは20〜60℃程度である。
エッチング処理は、常法に従って行えばよく、例えば、被エッチング物を、エッチング液に浸漬させればよい。浸漬させる場合の時間は、所望のエッチング速度及び選択比でHigh−k膜とTHOXを所望の厚さエッチングできる限り特に限定されるものではなく、High−k膜の種類、エッチング液の種類、エッチング液の液温などに応じて適宜設定することができるが、通常、1〜30分間程度、好ましくは1〜10分間程度浸漬すればよい。
本発明のエッチング液を用いてエッチングを行った半導体基板は、慣用されている方法、(例えば、Atlas of IC Technologies:An Introduction to VLSI Processes by W.Maly,1987 by The Benjamin/Cummings Publishing Company Inc.に記載された方法)に従って、様々な種類の半導体素子へと加工することができる。
本発明によれば、High−k膜をエッチングでき、且つシリコン酸化膜のエッチング速度が抑えられたエッチング液が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の実施例について記述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜13及び比較例1〜10
下記表1,2,3,4に示す組成でHF及び溶媒を含むエッチング液を調製した。シリコン基板上に、MOCVD法によって成膜した酸化ハフニウム膜(MOCVD HfOAsdep)、その成膜後にアニール処理した酸化ハフニウム膜(MOCVD HfO2 Anneal)、MOCVD法によって成膜してアニール処理したハフニウムシリケート膜(HfSiO)、MOCVD法によって成膜してアニール処理したアルミナ(Al2O3)、及び熱酸化膜(THOX)をそれぞれ形成した試験基板に対するエッチングレート及び選択比を求めた。
エッチングレートは、エッチング前後での膜厚の差をエッチング時間で割って計算したものである。
膜厚は、Rudolf Research社Auto EL−IIIエリプリメータを用いて測定した。
エッチングは、エッチング液に試験基板を10分間浸漬することにより行った。
エッチング温度50℃の各エッチング液での、MOCVD HfOAsdep、MOCVD HfO2 Anneal、及び熱酸化膜(THOX)に対するエッチング速度及びこれら膜に対するエッチングの選択比を実施例1〜6及び比較例1〜6として表1に示す。
同HF濃度、同水濃度(0%)、及び同エッチング温度(60℃)における請求項9で述べたエーテル系化合物溶媒での、MOCVD HfOAsdep、MOCVD HfO2 Anneal、及び熱酸化膜(THOX)に対するエッチング速度及びこれら膜に対するエッチングの選択比を実施例7〜11及び比較例7〜8として表2に示す。
モノグライムとHFの無水フッ酸混合液での、MOCVD HfSiO Anneal膜、MOCVD Al2OAnneal膜、及び熱酸化膜(THOX)に対するエッチング速度及びこれら膜に対するエッチング選択比を実施例12〜13及び比較例9〜10として表3,4に各々示す。




【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
比誘電率が8以上の膜(High−k膜)のエッチングレートが2Å/分以上であり、熱酸化膜(THOX)とHigh−k膜のエッチングレートの比([THOXのエッチングレート]/[High−k膜のエッチングレート])が50以下であるエッチング液。
【請求項2】
High−k膜の比誘電率が15以上である請求項1に記載のエッチング液。
【請求項3】
High−k膜が、酸化ハフニウム膜、酸化ジルコニウム膜又は酸化ランタン膜である請求項1に記載のエッチング液。
【請求項4】
High−k膜が、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、ハフニウムアルミネート(HfAlO)、HfSiON、HfAlON、ZrSiO、ZrAlO、ZrSiON、ZrAlON、アルミナ(Al2O3)、HfON、ZrONおよびPr2O3からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載のエッチング液。
【請求項5】
熱酸化膜のエッチング速度が、100Å/分以下である請求項1に記載のエッチング液。
【請求項6】
フッ化水素(HF)を含む、請求項1に記載のエッチング液。
【請求項7】
フッ化水素濃度が3mass%以上である請求項1に記載のエッチング液。
【請求項8】
フッ化水素及びヘテロ原子を有する有機溶媒を含む請求項1に記載のエッチング液。
【請求項9】
ヘテロ原子を有する有機溶媒が、エーテル系化合物、ケトン系化合物、含硫黄複素環化合物である請求項8に記載のエッチング液。
【請求項10】
ヘテロ原子を有する有機溶媒が、エーテル系化合物である請求項9に記載のエッチング液。
【請求項11】
エーテル系化合物が、一般式(1)
−O−(CHCH−O)−R (1)
[式中、nは1,2、3または4を示し、R及びRは同一または異なって水素原子、低級アルキル基又は低級アルキルカルボニル基を示す(但し、RとRは同時に水素原子となることはない。)。]で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項10に記載のエッチング液。
【請求項12】
エーテル系化合物の比誘電率が、30以下である請求項10に記載のエッチング液。
【請求項13】
ヘテロ原子を有する有機溶媒が、分子内に少なくとも1つのカルボニル基を含む請求項8に記載のエッチング液。
【請求項14】
ヘテロ原子を有する有機溶媒が、分子内に少なくとも1つの水酸基を含む請求項8に記載のエッチング液。
【請求項15】
エーテル系化合物が、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、フラン、フルフラール、γ−ブチロラクトン、モノグライム、ジグライム及びジオキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項10に記載のエッチング液。
【請求項16】
エーテル系化合物が、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項10に記載のエッチング液。
【請求項17】
エーテル系化合物が、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびトリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートからなる群より少なくとも1種である請求項10に記載のエッチング液
【請求項18】
エーテル系化合物がエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルおよびプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる郡より選ばれる少なくとも1種である請求項10に記載のエッチング液。
【請求項19】
含硫黄複素環化合物が、スルホラン及びプロパンスルトンより選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載のエッチング液。
【請求項20】
フッ化水素(HF)、ヘテロ原子を含む有機溶媒及び水を含み、HF:ヘテロ原子を含む有機溶媒:水=3mass%以上:50〜97mass%:10mass%以下である請求項1に記載のエッチング液。
【請求項21】
請求項1に記載のエッチング液を用いて、シリコン酸化膜及び比誘電率が8以上の膜を有し、比誘電率が8以上の膜の上にゲート電極が形成された被エッチング物をエッチング処理するエッチング処理物の製造方法。
【請求項22】
請求項21の方法により得ることができるエッチング処理物。

【国際公開番号】WO2004/025718
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【発行日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535866(P2004−535866)
【国際出願番号】PCT/JP2003/009848
【国際出願日】平成15年8月4日(2003.8.4)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】