説明

エネルギー吸収装置

本発明は、弾性材料から形成された空気充填状の弾性芯部および、少なくとも1つの通気装置を伴い前記弾性芯部を閉囲する被覆材から構成され、前記通気装置を通って、前記弾性芯部に含まれる前記空気は、前記弾性芯部を圧縮する際、前記被覆材の外側空間に流出し、前記弾性芯部が膨張する際、前記被覆材を包囲する空間から流入する。本発明に基づき、前記被覆材(2)は、柔軟性、非伸縮性素材から形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部分に基づくエネルギー吸収装置、および、請求項15の前段部分に基づく自動車座席に関する。
【背景技術】
【0002】
クッションの形状のエネルギー吸収装置は、例えばDE4333499A1号によって公知とされている。同クッションは、プレストレス下で被覆部に支持されるバネ要素から構成される。この場合被覆部は、所定の通気性を有する柔軟性素材から構成される。バネ要素が圧縮されると、圧縮以前にバネ要素内に含まれていた空気が被覆部を通ってクッションの外部に流出する。
【特許文献1】DE4333499A1号
【0003】
前記クッションを包囲する柔軟性ケース材は、力を受けていないクッション箇所での圧縮されたクッションの広がりを防ぐため、クッションが極力広範囲にわたり力を受けねば成らないという不利益を有する。従って、このようなクッションは、局地的または小領域のエネルギー吸収には適していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、吸収されるべきエネルギーが、局地的な方法で、またはエネルギー吸収装置の小領域にて当該装置に作用する場合でも、効果的にエネルギーを吸収するエネルギー吸収装置を構成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴を有するエネルギー吸収装置によって解決される。このような装置は、弾性材料から構成される弾性芯部と、当該弾性芯部を閉囲する被覆部を有し、当該装置において、被覆部は、柔軟性、耐膨張性材料から構成され、少なくとも1つの通気装置を有し、当該通気装置を通って、弾性芯部に含まれる空気が、弾性芯部が圧縮される際に流出し、弾性芯部が膨張する際に弾性芯部に流入する。
【0006】
当発明の内容において、耐膨張性は、膨張に関してほとんど弾性が無く、好ましくは少なくとも3GPaの弾性係数有する材料を意味する。
【0007】
高負荷下での当該材料の破断を防ぐため、被覆部の材料は、高引張強さを有することが好ましい。この引張強さは、特に、約70N/mm2(ニュートン/平方ミリメートル)以上の材料の許容引張応力と表される。
【0008】
エネルギー吸収装置の被覆部の耐膨張性材料は、当該装置の個々の領域におけるエネルギー作用が、吸収されるべきエネルギーが作用しない装置の他領域にて、弾性芯部の膨張を引き起こさないことを意味する。従って、当該装置は、人体によって付与されるエネルギーを、少なくとも部分的に吸収することに特に適している。このようなエネルギーは、例えば、車両乗員に作用する加速エネルギーまたは制動エネルギーであってもよい。当該装置は、従って、車両内への取り付けに適しているように構成されていることが好ましい。
【0009】
当該装置は、車両座席に取り付け可能であるような寸法に構成さていることが好ましい。エネルギー吸収装置は、特に車両座席の座席表面、サイドレストおよび/またはバックレストにて、従来的なクッションに替わり、またはこれらを補ってもよい。この場合には、弾性芯部を閉囲する被覆部に加え、更なる被覆部を有するエネルギー吸収装置を設けることが相応しい。この更なる被覆部は、例えば、通常の車両座席材料であってもよい。
【0010】
本発明の好ましい変更例では、当該装置はチャイルド・シートに取り付けられ、座席表面、サイドレストおよび/またはバックレストの領域では、チャイルド・シートに存在する従来的なクッションの代替となり、またはこれを増補する。
【0011】
被覆材のための本発明に基づく要求は、例えば、ポリアミド繊維から成る柔軟性、耐膨張性織布によって満たされる。同織布は、特に、コーティング材としてはシリコンが適しているが、コーティングの有無には係らない。他の耐膨張性材料として、例えば、ポリエステル織布もまた概ね使用可能である。
【0012】
被覆部は、単一部材構造、または複数部材構造であってもよい。複数部材構造の場合、個々の被覆部または被覆要素は、縫着、接着接合または溶接によって互いに連結可能である。
【0013】
弾性芯部を閉囲する被覆部は、単一部材の被覆要素から構成されることが好ましいが、複数部材構造であってもよい。取り付けに追加の作業工程を要せずに、通気装置を被覆部内に取り付けるために、通気装置は、被覆部のサブ領域間の少なくとも1つの連結点にて構成されることが好ましい。このような連結点は、被覆部が単一部材構造の場合にも、複数部材構造の場合にも生じる。被覆部が複数部材構造の場合、連結点は、例えば、2体の被覆部材の間に構成される。被覆部材が単一部材構造の場合、連結点は、特に被覆要素の相互連結された端部に構成される。このような連結点は、特に、被覆部のサブ領域間の縫着部であってもよい。
【0014】
本発明の更なる変更例では、通気装置は、被覆部にて少なくとも1つのカット・アウト部(切り欠き部とも称呼)によって形成される。このようなカット・アウト部は、例えば、被覆材のパンチ・アウト部、穴部または他の開口部であってもよい。
【0015】
本発明の更なる有利な変更例では、通気装置は、被覆材自体によって、詳細には被覆材の通気性によって形成される。即ち、被覆材自体が通気性を有すれば、通気性連結点または通気性カット・アウト部を被覆部に形成する必要が無い。
【0016】
例えば、被覆材が通気可能な細孔を有するならば、被覆材は通気性を有する。
【0017】
通気装置に関する前述の変更例、および更なる可能な変更例を1つ以上組み合わせることも考えられる。
【0018】
通気装置は、所定の時間内に当該通気装置を通過可能な空気量を制御可能であるように構成されていることが好ましい。このような制御は、例えば、所定量の空気を処理可能であり、被覆部のカット・アウト部に配置されるバルブによって実行できる。
【0019】
本発明はまた、エネルギー吸収装置を有する車両座席を構成する。この場合、エネルギー吸収装置は、座席表面、サイドレストおよび/またはバックレストの領域のクッションとして車両座席内に取り付けられることが好ましい。
【0020】
本発明の変更例では、車両座席は、チャイルド・シートによって構成される。この場合、座席表面、サイドレストおよび/またはバックレストの領域での前述の構成オプションに加え、エネルギー吸収装置が、チャイルド・シートのサイド・クッションとして使用されることも同様に可能である。
【0021】
本発明の更なる優位性、および詳細は、2つの実施例の図を参照しつつ、より詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、弾性芯部として発泡芯材1と、当該発泡芯材を囲む被覆部2を有するエネルギー吸収装置としての緩衝要素の、模式的断面図を示す。緩衝要素は、自動車座席の一部である。またこの緩衝要素は、車両座席のバックレスト、サイドレストおよび/または座席表面の少なくとも主要部分を形成する。緩衝要素は、車両座席の単一クッション、または車両座席のバックレスト、サイドレストの従来的なクッション、および/または座席表面を補完してもよい。
【0023】
被覆部2は、連結領域3にて互いに平坦に押圧する、被覆部2の被覆要素を互いに構成する平面状第一区分2aと平面状第二区分2bから構成される。連結領域3では、被覆部2の平面状第一区分2aと平面状第二区分2bが、連結点を構成する縫着部4aによって互いに連結されている。
【0024】
被覆部の前記区分2aおよび区分2bは、エアバッグ用織布としても使用されるポリアミド繊維(ポリアミド織布)製のシリコン・コーティング加工された織布から形成される。この被覆材は、柔軟性には優れているが、膨張に関しほとんど弾力性がない。ポリアミド織布の弾性係数は、3GPa以上である。類似の性質を有する他の素材も、同様に被覆材として適している。例えば、非コーティング状のポリアミド織布またはポリエステル織布性の素材も使用可能である。使用される素材が高引張強さを有すれば有利である。
【0025】
縫着部4aの連結機能に加え、縫着部4a、は被覆部2の内部と被覆部2の外部との間の通気性連結部を構成する。発泡芯部1が圧縮されると、発泡芯部1から流出する空気は、縫着部4aを通って緩衝要素から外部へ流出可能である。
【0026】
緩衝要素の内部と緩衝要素の外部との間の空気を均一化するため、縫着部4aの形状にて通気装置を設けることが可能であることに加え、図1はまた、通気装置に関する更に2つの可能な形状を示している。被覆部2は、空気が緩衝要素の内部から周囲に同様に流出可能であるような円形通気口4bを有する。1つの開口部4bに加え、他の複数の開口部もまた、被覆部に設けることが可能である。
【0027】
通気装置の更に可能な形状には、被覆部2用の材料として通気性材料を用いることが含まれる。この形状は、図1では摸式的に描かれた細孔4cによって示される。
【0028】
図1は、通気装置形状の3つの異なる可能性が、言わば被覆材における縫着部4a、開口部4bおよび細孔4cの形状で示されている一方、本発明に係るエネルギー吸収装置が、これら図示された通気装置のうち1つを有するのみであることもまた可能である。2つの異なる通気装置のいかなる組み合わせも同様に考えられる。
【0029】
例えば、ある変更例においては、気密状の縫着部が、2つの被覆部区分2aと2bとの間に形成されることが可能であり、または、2つの被覆部区分2aと2bにおいて異なる密状連結が行われることも可能である。複数の被覆部区分2a、2bから構成されるよりはむしろ、単一部材として被覆部が構成されることも可能である。
【0030】
図1に示される緩衝要素の快適性は、容易に調節可能である。例えば、発泡芯部1に、異なる発泡材を使用することが可能である。
【0031】
緩衝材のエネルギー吸収容量(この容量は発泡芯部1から放出される空気に依存する)を調節するため、通気装置は、様々な様式に構成可能であり、各場合に所望の緩衝要素特性に応ずることが可能である。
【0032】
発泡芯部1の芯材の完全に可逆性のある弾性復元により、前記発泡芯部1が圧縮される際に、空気が、発泡芯部1および緩衝要素から、縫着部4a、開口部4bおよび/または細孔4cを通って被覆材内に流れ、また当該発泡芯部1が負荷から開放される際、空気が、被覆材の縫着部4a、開口部4bおよび/または細孔4cを通って、発泡芯部1内に再度導かれる。
【0033】
図2は、チャイルド・シート6のサイド・クッション5として、図1に図示された、本発明に係るエネルギー吸収装置の使用例を示す。説明のため、図2は、エネルギー吸収装置の発泡芯部1のみを示す一方、発泡芯部1を囲む被覆部2は示されていない。とはいえ、被覆部2は、エネルギー吸収装置がサイド・クッション5または他の緩衝要素として使用される際に使用される。即ち、被覆部2無しでの使用は行われない。
【0034】
さらに図2では、チャイルド・シート6は、右側サイドレスト7内部にサイド・クッション5を有する構成のみが示されているが、これは単なる例示として理解されるべきである。すなわち、チャイルド・シート6の左側サイドレスト8内部においても、サイド・クッションとしての本発明に係るエネルギー吸収装置の構成が好適に設定できる。
【0035】
さらに、チャイルド・シート6のサイドレスト7、8の構成に加え、またはサイドレスト7、8の構成の代わりに、本発明に係るエネルギー吸収装置は、チャイルド・シート6のバックレスト9の領域および/または座席表面10の領域にも配設される。このことによって、チャイルド・シート6に着座中の子供に作用し、例えばチャイルド・シートが設置されている車両の、ブレーキや通常運行の急な方向変化等の結果として生じるエネルギーは、チャイルド・シート6の多数の点で吸収可能である。その結果、よりクッションの少ない他の例や、より不利なエネルギー吸収性を有するクッションに比較して、チャイルド・シート6の着座快適性は増大する。
【0036】
サイドレスト7、8、バックレスト9および/または座席表面10が単一部材または複数部材の形状であるかどうかは、エネルギー吸収装置の効果に対し、二次的な問題である。前記形状は、人間工学的および/または審美的見地に鑑みて適宜設定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るエネルギー吸収装置の実施例の断面図を示す。
【図2】本発明に係るチャイルド・シートを示す。当該チャイルド・シートの側部表面は、エネルギー吸収装置によるクッションが施されている。
【符号の説明】
【0038】
1 発泡芯部
2 被覆部
2a 被覆部の第一区分
2b 被覆部の第二区分
3 連結領域
4a 縫着部
4b 開口部
4c 細孔
5 サイド・クッション
6 チャイルド・シート
7 右側サイドレスト
8 左側サイドレスト
9 バックレスト
10 座席表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を含み弾性材から構成される弾性芯部と、前記弾性芯部を閉囲し少なくとも1つの通気装置を有する被覆部とを有するエネルギー吸収装置であって、前記弾性芯部の空気は、前記通気装置を通過して、前記弾性芯部が圧縮される際には前記被覆部の外側空間に流出し、前記弾性芯部が膨張する際には前記被覆部によって閉囲された前記空間に流入する構成とされ、
前記被覆部(2)が柔軟性、耐膨張性の材料から構成されることを特徴とするエネルギー吸収装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエネルギー吸収装置であって、前記被覆部(2)の前記材料が、3GPa以上の弾性係数を有することを特徴とするエネルギー吸収装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエネルギー吸収装置であって、前記被覆部(2)の前記材料が、少なくとも70N/mm2(ニュートン/平方ミリメートル)の許容引張応力を有することを特徴とするエネルギー吸収装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のエネルギー吸収装置であって、当該装置が自動車搭載用に設けられ、加速度が車両乗員に作用することにより、少なくとも1人の乗員によって与えられるエネルギーを、少なくとも部分的に吸収するように構成されていることを特徴とするエネルギー吸収装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のエネルギー吸収装置であって、当該装置が車両座席内に組み込まれていることを特徴とするエネルギー吸収装置。
【請求項6】
請求項5に記載のエネルギー吸収装置であって、前記車両座席が、チャイルドシート(6)であることを特徴とするエネルギー吸収装置。
【請求項7】
請求項5に記載のエネルギー吸収装置であって、当該装置が、前記車両座席の前記座席表面(10)、前記座席サイドレスト(7)および/または前記座席バックレスト(9)の領域に組み込まれていることを特徴とするエネルギー吸収装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のエネルギー吸収装置であって、前記被覆部(2)の前記材料が、ポリアミド織布であることを特徴とするエネルギー吸収装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のエネルギー吸収装置であって、前記被覆部(2)が、少なくとも1つの被覆要素から構成されることを特徴とするエネルギー吸収装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のエネルギー吸収装置であって、前記通気装置(4a、4b、4c)は、前記被覆部(2)の当該被覆要素(2a、2b)間の少なくとも1つの連結点(4a)にて形成され、前記連結点(4a)を通って空気が前記弾性芯部(1)内外に流出入可能であることを特徴とするエネルギー吸収装置。
【請求項11】
請求項10に記載のエネルギー吸収装置であって、前記連結点(4a)が縫着部によって構成されていることを特徴とするエネルギー吸収装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のエネルギー吸収装置であって、前記通気装置(4a、4b、4c)は、前記被覆部(2)の少なくとも1つの開口部(4b)によって形成され、当該開口部を経て空気が前記弾性芯部(1)内外に流通可能とされていることを特徴とするエネルギー吸収装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のエネルギー吸収装置であって、前記通気装置(4a、4b、4c)は、前記被覆部(2)の前記材料の通気可能な特性によって、前記被覆部(2)の前記材料を通って空気が前記弾性芯部(1)内外に流出入可能であるように、前記被覆部(2)によって形成されていることを特徴とするエネルギー吸収装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のエネルギー吸収装置であって、前記通気装置(4a、4b、4c)は、前記通気装置(4a、4b、4c)を通過可能な単位時間あたりの空気の体積が制御可に構成されていることを特徴とするエネルギー吸収装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のエネルギー吸収装置を有する自動車用座席。
【請求項16】
請求項15に記載の自動車用座席であって、前記自動車用座席がチャイルド・シート(6)として構成されていることを特徴とする自動車用座席。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−543000(P2009−543000A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518815(P2009−518815)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055929
【国際公開番号】WO2008/006664
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(594101503)タカタ・ペトリ アーゲー (146)
【Fターム(参考)】