説明

エネルギー貯蔵デバイス

【課題】容量密度の大きなエネルギー貯蔵デバイスを提供する。
【解決手段】多孔質状または/および繊維状の炭素を含む正極2、四級アンモニウム塩またはリチウム塩、および0.2M以上2.4M以下の濃度で電解液中に溶解したラジカル化合物、イオン交換膜セパレータ4、負極5からなるエネルギー貯蔵デバイスとする。負極をリチウムイオンがプリドープされたグラファイト電極、または活性炭電極とする。ラジカル化合物は、酸素原子上、窒素原子上、炭素原子上のいずれかにラジカルを有する化合物であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエネルギー貯蔵デバイスに関し、特に電解液に溶解したラジカル化合物の酸化・還元反応によりエネルギーを貯蔵する機構を備えた、新規なエネルギー貯蔵デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、民生用電子機器のポータブル化、コードレス化等が進んでおり、これら電子機器の駆動用電源を担う小型、軽量で大容量を有するキャパシタ、電池への要望が高まっている。また、ハイブリッド自動車(HEV)や燃料電池自動車(FCEV)等の用途でも大容量のエネルギー貯蔵デバイスが必要とされている。
【0003】
エネルギー貯蔵用小型デバイスとして最も大きな市場を形成しているのがリチウムイオン二次電池である。正極にリチウム含有遷移金属酸化物、負極に層状炭素材料を利用するリチウムイオン二次電池は大容量であり、すでに広い用途に使用されている。リチウムイオン二次電池の研究は盛んに行われており、正極、負極のみならず電解液に関する改良研究も行われている(特許文献1)。しかし近年の民生用ポータブル電子機器等の小型化、軽量化が強く求められる中で、現在のリチウムイオン二次電池の容量には、さらなる向上が求められている。
【0004】
一方で、高速充放電可能なエネルギー貯蔵デバイスとして、電気二重層キャパシタが実用化されている。電気二重層キャパシタは、電圧を加えたときに電極と電解質との界面に生じる電気二重層容量を利用したエネルギー貯蔵デバイスである。電気二重層容量による蓄電は、電気化学反応を伴う前記リチウムイオン二次電池と比較して、より早い充放電が可能であり、充放電の繰り返し寿命特性にも優れているという特徴を有している。しかし、電気二重層キャパシタは容量が小さいことが欠点であり、大容量化が強く求められている。
【0005】
その他の提案として電極に金属酸化物や導電性高分子あるいはラジカル化合物を付与し、これらの擬似容量を用いたレドックスキャパシタが提案されている(特許文献2、3、4、5)。擬似容量は例えば導電性高分子やラジカル化合物の酸化・還元反応、すなわちドープ・脱ドープ反応によって発現する。このような導電性高分子材料としてはポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンやこれらの誘導体等のパイ共役高分子が知られているが、やはり容量向上が課題である。またラジカル化合物としては、ラジカルを有するポリマー(ラジカルポリマー)を電極に用いたラジカル電池が提案されている。これまでに種々のラジカルポリマーが開発されラジカル電池が試作されているが、必ずしもポリマー中の全てのラジカルが充放電に関与するわけではなく想定通りの容量が得られない、安定なn−型のラジカル化合物が開発されていないなど多くの課題を有する。また、電解液中にラジカルポリマーが溶出すると容量低下を引き起こすため、理想的には電解液に完全に不溶のラジカルポリマーを使用する必要がある。しかしながら、ポリマー故に通常の低分子化合物ほどの合成上の自由度がなく、上記課題に加え溶解性の問題を解決することが難しく、実用的なラジカル電池は未だ開発されていない。
【0006】
また、リチウムイオンキャパシタと呼ばれるエネルギー貯蔵デバイスが提案されている(特許文献6)。これは、正極側に活性炭表面の電気二重層容量、負極側に層状炭素材料へのリチウムイオンのインターカレーション容量を利用して蓄電するものであり、大容量と高速充放電性能をバランスよく実現しようとするエネルギー貯蔵デバイスである。しかし正極側で利用している電気二重層容量は小さいので、デバイス全体の大容量化には限界がある。
【0007】
以上のキャパシタおよび電池はいずれもエネルギー貯蔵手段として固体電極自体の酸化・還元反応または固体電極近傍の電気二重層容量を利用したエネルギー貯蔵デバイスである。すなわち電気エネルギーの貯蔵および放出は、電極材料自体の酸化・還元や固体電極表面でのイオンの吸脱着等の、電極自体または電極のごく近傍に関わる部位のみを利用して行われるため、得られる蓄電の容量には限界がある。
【0008】
これに対して、電解液に溶解した活物質自体にエネルギーを蓄える別の方式によるエネルギー貯蔵デバイスが提案されている。これはレドックスフロー電池として知られており、実用化検討が進んでいる。例えば、正極側の電解液としてFe3+/Fe2+塩水溶液、負極側の液としてCr2+/Cr3+塩水溶液を用いたシステム(特許文献7)や、正極側の液にVO2+/VO水溶液、負極液にV2+/V3+水溶液を用いたシステム(特許文献8)などが提案されている。この電池は、電極表面において酸化及び還元された電解液中の活物質を循環させて、それぞれ別のタンクに貯め、大容量の蓄電を行なうもので、ポンプを使って活物質を流動させて充放電する所に特徴がある。この方式にはポンプやタンクが必要であり、広い設置場所も必要などの欠点があるため、小型のエネルギー貯蔵デバイスとしては適当でない。
【0009】
また、過充電防止を目的として、ニトロキシラジカル化合物を電解液に溶かしたリチウムイオン二次電池の提案がある。これはニトロキシラジカル化合物の酸化・還元反応によるレドックスシャトルを利用して、電池が所定の電圧以上になるのを防ぐものである。ここではニトロキシラジカル化合物は活物質としてではなく過充電防止と言う特殊な役割で添加されるもので、エネルギー貯蔵デバイス自体の容量は向上させない(特許文献9)。
【0010】
また、電解液に少量のラジカル化合物を添加し、リチウムイオン二次電池のサイクル特性を向上させることが提案されている。しかし、ここで電解液中のラジカル化合物はごく低濃度であり、電解液中に発生するラジカル分子を抑えることにより悪質なSEIの生成による電池の出力低下を抑制することでサイクル特性を向上させるのみであり、活物質としての役割は果たしておらず、したがってエネルギー貯蔵デバイス自体の容量を向上させる訳ではない(特許文献10、11)。
【0011】
我々は以上の点に着目し、電解液に活物質としてラジカル化合物を溶解させ、溶解したラジカル化合物の酸化・還元反応を用いた全く新しい方式のエネルギー貯蔵を検討し、大容量のエネルギー貯蔵デバイスを実現する事を検討した。
【特許文献1】特開2003−338318号広報
【特許文献2】特開2005−223089号広報
【特許文献3】特表2007−529586号広報
【特許文献4】特開2004−207249号広報
【特許文献5】特開2002−117853号広報
【特許文献6】特開2006−286919号広報
【特許文献7】特開平1−60967号広報
【特許文献8】特開平8−138716広報
【特許文献9】特開2006−252917号広報
【特許文献10】特開2001−283920号広報
【特許文献11】特開2000−268861号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、小型で大容量のエネルギー貯蔵手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは鋭意研究の結果、繰り返し酸化・還元反応可能なラジカル化合物活物質を溶解した電解液中に大容量のエネルギー貯蔵が可能であることを発見し、さらにこのような電解液中の活物質の拡散を防ぎ、そのエネルギーを有効に取り出すデバイス構成を検討し、本発明を成すに至った。本発明の方式は従来のレドックスフロー電池とは全く異なるもので、電解液中に溶解した活物質を流動させる事無く、従って活物質を貯蔵するための別のタンク等も必要としないために、小型のエネルギー貯蔵デバイスとして極めて有効な方式である。
【0014】
すなわち本発明は、少なくとも正極、負極、静止電解液、酸化・還元可能な活物質、及びセパレータが一つの密閉された筐体内に内蔵された形態で機能するエネルギー貯蔵デバイスであって、前記活物質がラジカル化合物であり、活物質が電解液中に0.2モル/リットル以上2.5モル/リットル以下の濃度で溶解している事を特徴とするエネルギー貯蔵デバイスに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、大容量のエネルギー貯蔵デバイスを得ることが可能となる。例えば、本発明のエネルギー貯蔵手段を正極側として用い、負極として電気二重層キャパシタ用の負極、レドックスキャパシタ用の負極、リチウムイオン型キャパシタ用の負極、リチウムイオン電池用の負極、等を用いる事により、各種の新規な構成のエネルギー貯蔵デバイスを構築する事ができる。これらの新規エネルギー貯蔵デバイスでは、従来デバイスの出力特性や充放電効率、サイクル寿命特性などを損なうことなく、充放電容量を大幅に改善する事ができる。
【0016】
例えば本発明のエネルギー貯蔵手段を正極側に用い、負極にリチウムイオン二次電池のグラファイト電極を用いる事により、通常のリチウムイオンキャパシタより容量を向上させた新規なエネルギー貯蔵デバイスを構築する事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、これまで小型エネルギー貯蔵デバイスのエネルギー貯蔵手段としては利用されて来なかった電解液領域をエネルギー貯蔵手段として利用できることを発見して成されたものである。
【0018】
本発明のデバイスはエネルギー貯蔵可能なラジカル化合物を溶解させた電解液と正極、負極、および正極と負極を分離するためのセパレータが一つの密閉された筐体内に内蔵された形態からなる。本発明のエネルギー貯蔵方式は原理的には正極にも負極にも用いられるが、例えば活物質としてp−型のラジカル化合物を用いた場合には、正極に好ましく用いられる。以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下に限定されるものではない。
【0019】
<電解液>
本発明の電解液はエネルギー貯蔵デバイス内で静止させて使用する。電解液を静止させて使用する理由は、エネルギー貯蔵デバイスが充電状態の時に電解液が流動して電解液中の活物質が電極から離れてしまい放電の際に有効にエネルギーが取り出せなかったり、電解液中の活物質が反対側の電極に移動して短絡してしまったりするのを防ぐためである。
【0020】
電解液には溶媒および、溶媒に溶解した支持塩の他に、酸化・還元によるエネルギー貯蔵が可能な活物質である前記ラジカル化合物の少なくとも一部が溶解状態で含まれる事が特徴である。酸化・還元の定義ついては後述の活物質の説明の部分で詳細を述べる。原理的には本発明のラジカル化合物は電解液に溶解していても分散していても良いが、分散状態を長期間安定に維持することや、分散状態では溶解している場合に比べて十分な容量を取り出す事が困難なため、本発明のラジカル化合物は電解液中に溶解していることが好ましい。また、後述する様に本発明では電極として繊維状電極や多孔質電極などが用いられるが、電極の微細構造の隙間に活物質が入り易くするためにも、活物質は電解液に溶解しているほうが好ましい。
【0021】
なお、ここでいう活物質とは、それ自体が繰り返し安定な酸化・還元反応を起こすことにより、エネルギー貯蔵デバイスにおいて直接的にエネルギーの貯蔵、放出を行うものであり、エネルギー貯蔵デバイスにおいて中心的な役割を果たす物質のことを意味する。
【0022】
また、支持塩や、支持塩を溶解させた溶媒の代わりとして、常温でイオンのみから構成される液体であるイオン性液体(常温溶融塩)を利用することが可能である。
【0023】
溶媒、支持塩(および/またはイオン性液体)、活物質の組み合わせは、支持塩(および/またはイオン性液体)、活物質の溶解度によって決定されるが、溶媒に対する活物質の溶解度が高いほど貯蔵されるエネルギーは大きくなるので好ましい。活物質の溶解度は0.2M以上である事が好ましく、0.5M、1.1M以上であればさらに好ましく、1.5M以上2.5M以下であれば最も好ましい。2.5Mより高濃度である場合には、電解液の粘度が大きくなり、電気抵抗が増大するのでエネルギー貯蔵デバイスに適用するには好ましくない。支持塩は電解液の伝導度を高めイオンを運ぶ目的以外に、ドーパントとして作用し、電解液中に溶解した活物質を安定に酸化状態に保つ役割も果たすので、支持塩濃度は活物質濃度よりも高いことが好ましい。
【0024】
<電解液の溶媒>
電解液の溶媒としては例えば通常の有機溶媒を使用可能であるが、高濃度で支持塩を溶解でき、電位窓が広いものが好ましい。具体的にはアセトニトリル(以下ANと略す)、γ−ブチロラクトン(以下GBLと略す)、プロピレンカーボネート(以下PCと略す)、エチレンカーボネート(以下ECと略す)、ブチレンカーボネート(以下BCと略す)、ビニレンカーボネート(以下VCと略す)、ジエチルカーボネート(以下DECと略す)、ジメチルカーボネート(以下DMCと略す)、エチルメチルカーボネート(以下EMCと略す)、スルホラン(以下SLと略す)等が例示され、これらは単独で用いても二種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
<電解液の支持塩>
これらの電解液に溶解される支持塩としては、常温において固体であるLiPF、LiBF等のLi塩、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、を例示できる。これらの支持塩は電解液の伝導度を高めイオンを運ぶ目的以外に、ドーパントとして作用し、電解液中に溶解した活物質を安定に酸化状態に保つ役割も果たす。このため支持塩濃度は活物質濃度よりも高いことが好ましい。これら電解質のカチオン成分としては、リチウム、エチルトリメチルアンモ二ウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム等を例示できる。また、アニオン成分としてはBFアニオン、ClOアニオン、PFアニオン、AsFアニオン、CFSOアニオン、(CFSOアニオンなどを例示できる。
【0026】
支持塩や、支持塩を溶解させた溶媒の代わりに、常温でイオンのみから構成される液体であるイオン性液体(常温溶融塩)を利用することも可能である。また、イオン性液体と通常の溶媒との混合液を利用することも可能である。イオン性液体は、常温で液体状態の塩であって、カチオン成分としてイミダゾリウムカチオン、四級アンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、四級ホスホニウムカチオン等を挙げることができる。また、アニオン成分として、BF、PF等のフッ素を含むアニオン、スルホン酸アニオン(−SO)、カルボン酸アニオン(−COO)等が知られている。これらのイオン性液体は、高いイオン伝導性を示し、イオン濃度を通常の電解液よりも高くすることができる。
【0027】
<活物質>
本発明では、活物質を電解液に溶解させて用いる。ここで溶解とは、分子レベルで溶媒と均一な混合物になっていることを意味する。電解液に溶解させて用いる活物質としては、酸化・還元可能な化合物を用いる。本発明において酸化とは、原子あるいは分子が電子を喪失する過程を意味し、還元とは原子あるいは分子が電子を獲得する過程を意味する。また本発明において酸化・還元はドーピングの意味も含む。すなわちドーピングにはp−型とn−型があるが、p−型は電子を喪失するため酸化であり、n−型は電子を獲得するため還元である。したがって酸化・還元可能とは、原子あるいは分子が電子の喪失と獲得を繰り返し安定に行うことが可能であるということを意味する。これはドープ・脱ドープを安定に繰り返すことが可能であるということも意味する。本発明のラジカル化合物とは、酸素原子上、窒素原子上、炭素原子上のいずれかにラジカルを有する化合物である。これらのラジカル化合物は、活物質として用いられるためには、少なくとも溶解した状態で安定であることが好ましい。
【0028】
これらのラジカル化合物はp−型、n−型あるいはp,n−型によって正極として用いるか、負極として用いるか、あるいは正負両極で用いることができるかが決まる。例えば典型的な安定ラジカル化合物である2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシ(以下TEMPOと略す)ラジカルは、p−型であり正極側でのエネルギー貯蔵に利用される。これに対してガルビノキシルラジカルはn−型であることが知られており、負極側のエネルギー貯蔵に利用される。またニトロニルニトロキシラジカルはp,n−型であり正負両極での利用が可能である。
【0029】
以下に本発明において活物質として用いられるラジカル化合物について詳細に説明する。
【0030】
まず一般式(1);
【0031】
【化11】

で表されるニトロキシラジカル化合物について説明する。式中、RおよびRは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基、ホルミル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ヘテロ原子、ハロゲン原子もしくは水素原子を表し、互いに同じであっても異なっていてもよい。またRおよびRが脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基である場合には、これらが置換基を有していてもよい。さらにRおよびRが脂肪族炭化水素基の場合には、脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく、鎖状、環状または分岐状であってもよく、一緒になって環を形成していてもよい。
【0032】
なお、本発明において「置換基を有していてもよい」とは、他の原子あるいは置換基によって置換されていてもよいことを示す。「置換基」とは、反応に悪影響を与えない限り特に限定されるものではなく、具体的には、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ニトロ基、ニトロキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子などが挙げられる。
【0033】
このようなニトロキシラジカル化合物としては、例えば化学式(11)のような化合物が挙げられる。
【0034】
【化12】

さらに、一般式(12);
【0035】
【化13】

で表されるニトロキシラジカル化合物を例示することができる。式中、RおよびRは前述の通りであり、R、R、R、Rは、鎖状、環状または分岐状のアルキル基であり、無置換でも置換基を有していてもよく、それぞれ異なっていても同じでもよく、一緒になって環を形成していてもよい。このような化合物としては、例えば化学式(13)〜(21)に示すようなニトロキシラジカル化合物を挙げることができる。
【0036】
【化14】

【0037】
【化15】

【0038】
【化16】

【0039】
【化17】

【0040】
【化18】

【0041】
【化19】

【0042】
【化20】

【0043】
【化21】

【0044】
【化22】


また、一般式(22);
【0045】
【化23】

で表されるニトロキシラジカル化合物も例示される。式中、R、R、R、R、R、Rは、前述の通りである。このような化合物としては、例えば化学式(23)〜(32)に示すようなニトロキシラジカル化合物を挙げることができる。
【0046】
【化24】

【0047】
【化25】

【0048】
【化26】

【0049】
【化27】

【0050】
【化28】

【0051】
【化29】

【0052】
【化30】

【0053】
【化31】

【0054】
【化32】

【0055】
【化33】

また、活物質が一般式(33);
【0056】
【化34】

で表されるニトロキシラジカル化合物も例示することができる。式中、R、R、R、R、R、Rは、前述の通りである。Rは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基、ホルミル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ヘテロ原子、ハロゲン原子もしくは水素原子を表し、互いに同じであっても異なっていてもよい。またRが脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基である場合には、これらが置換基を有していてもよい。さらにRが脂肪族炭化水素基の場合には、脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく、鎖状、環状または分岐状であってもよく、一緒になって環を形成していてもよい。このような化合物としては、例えば化学式(34)〜(42)に示すようなニトロキシラジカル化合物を挙げることができる。
【0057】
【化35】

【0058】
【化36】

【0059】
【化37】

【0060】
【化38】

【0061】
【化39】

【0062】
【化40】

【0063】
【化41】

【0064】
【化42】

【0065】
【化43】


また、一般式(1)において、少なくともRまたはRのいずれか一方が置換または無置換の芳香族炭化水素基であるニトロキシラジカル化合物も本発明の活物質に用いることができる。このようなニトロキシラジカル化合物の例としては、化学式(43)〜(57)に示される化合物が挙げられる。
【0066】
【化44】

【0067】
【化45】

【0068】
【化46】

【0069】
【化47】

【0070】
【化48】

【0071】
【化49】

【0072】
【化50】

【0073】
【化51】

【0074】
【化52】

【0075】
【化53】

【0076】
【化54】

【0077】
【化55】

【0078】
【化56】

【0079】
【化57】

【0080】
【化58】

また、活物質として一般式(58);
【0081】
【化59】

で表される化合物も例示される。式中、R、R、Rは前述の通りである。
【0082】
より具体的には、例えば一般式(59);
【0083】
【化60】

で表される化合物が挙げられる。式中、Rは水素原子、置換または無置換のフェニル基を表す。このような化合物としては、化学式(60)〜(63)で表される化合物が例示される。
【0084】
【化61】

【0085】
【化62】

【0086】
【化63】

【0087】
【化64】

またこれらのラジカル化合物は、1分子中に2個以上のラジカルを有していてもよく、そのような化合物としては化学式(64)〜(88)で示される化合物が例示される。化学式(64)、(65)、(70)、(71)、(76)、(77)においてnは1以上の整数であり、特に制限されるものではないが、溶解度の観点からは1以上8以下程度が好ましい範囲である。
【0088】
【化65】

【0089】
【化66】

【0090】
【化67】

【0091】
【化68】

【0092】
【化69】

【0093】
【化70】

【0094】
【化71】

【0095】
【化72】

【0096】
【化73】

【0097】
【化74】

【0098】
【化75】

【0099】
【化76】

【0100】
【化77】

【0101】
【化78】

【0102】
【化79】

【0103】
【化80】

【0104】
【化81】

【0105】
【化82】

【0106】
【化83】

【0107】
【化84】

【0108】
【化85】

【0109】
【化86】

【0110】
【化87】

【0111】
【化88】

【0112】
【化89】


これらニトロキシラジカル化合物においては、安定に酸化・還元を繰り返すことおよび電解液への溶解度の観点からは、化学式(11)、(13)、(14)、(15)、(16)、(17)、(18)、(23)、(24)、(26)、(27)、(34)、(35)、(36)、(37)、(39)、(41)、(43)、(55)、(56)、(60)、(61)、(62)、(63)、(66)、(67)、(72)、(73)、(78)、(79)、(82)、(83)で示される化合物が好ましく、入手容易さや化合物の安定性の観点からは化学式(11)、(13)、(14)、(34)、(35)、(36)、(37)、(39)、(41)、(55)、(61)、(62)、(63)、(82)、(83)で示される化合物が特に好ましい。
【0113】
次に、一般式(2);
【0114】
【化90】

で表される化合物について説明する。式中、Rは置換または無置換の芳香族炭化水素基を表す。安定性の観点からは、一般式(89);
【0115】
【化91】

で表される構造の化合物が好ましい。式中、R20、R21、R22は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、これらは置換基を有していてもよい。さらにR20、R21、R22が脂肪族炭化水素基の場合には、脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく、鎖状、環状または分岐状であってもよく、一緒になって環を形成していてもよい。
【0116】
より具体的には、化学式(90)〜(94)で示される化合物が例として挙げられる。
【0117】
【化92】

【0118】
【化93】

【0119】
【化94】

【0120】
【化95】

【0121】
【化96】

これらオキシラジカル化合物において、安定して酸化・還元を繰り返すことおよび電解液への溶解度の観点からは、化学式(90)、(91)、(93)、(94)で示される化合物が好ましい。
【0122】
また、一般式(95);
【0123】
【化97】

で表される化合物も活物質として利用できる。式中、R23、R24、R25は水素原子、ヘテロ原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。さらにR23、R24、R25が脂肪族炭化水素基の場合には、脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく、鎖状、環状または分岐状であってもよく、一緒になって環を形成していてもよい。溶解度及び安定性の観点からは、R23、R24、R25が全てt−ブチル基であることが好ましい。
【0124】
また、1分子中に2個以上のオキシラジカルを有する化合物としては、化学式(96)、(97)で示される化合物を例示される。
【0125】
【化98】

【0126】
【化99】

さらに一般式(3);
【0127】
【化100】

で表される炭素ラジカル化合物について説明する。式中、R、R、Rは脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基、ホルミル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ヘテロ原子、ハロゲン原子もしくは水素原子を表し、互いに同じであっても異なっていてもよい。またR、R、Rが脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基である場合には、これらが置換基を有していてもよい。さらにR、R、Rが脂肪族炭化水素基の場合には、脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく、鎖状、環状または分岐状であってもよく、一緒になって環を形成していてもよい。
【0128】
ラジカルの安定性の観点からはR、R、Rのうち少なくともひとつが、置換または無置換のアルケニル基または置換または無置換の芳香族炭化水素基であることが好ましく、そのような化合物としては化学式(98)〜(102)で示される化合物が挙げられる。
【0129】
【化101】

【0130】
【化102】

【0131】
【化103】

【0132】
【化104】

【0133】
【化105】

1分子中に2個以上の炭素ラジカルを有する化合物としては、化学式(103)〜(105)で示されるものを例示することができる。
【0134】
【化106】

【0135】
【化107】

【0136】
【化108】


これらの炭素ラジカル化合物においては、電解液への溶解度および化合物の安定性の観点から、化学式(98)、(102)、(103)が好ましい。
【0137】
また、一般式(4);
【0138】
【化109】

で表される化合物について説明する。式中、R、R、R、R10は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基、ホルミル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ヘテロ原子、ハロゲン原子もしくは水素原子を表し、互いに同じであっても異なっていてもよい。またR、R、R、R10が脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基である場合には、これらが置換基を有していてもよい。さらにR、R、R、R10が脂肪族炭化水素基の場合には、脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく、鎖状、環状または分岐状であってもよく、一緒になって環を形成していてもよい。
【0139】
安定性の観点からは、R、R、R10がそれぞれ独立に置換または無置換のフェニル基あるいは置換または無置換のアルキル基であることが好ましく、これらは互いに異なっていても同じでもよい。さらにR21は置換または無置換のアルキル基あるいは水素原子であることが好ましい。このような化合物の例としては、化学式(106)〜(109)で示されるものを挙げることができる。
【0140】
【化110】

【0141】
【化111】

【0142】
【化112】

【0143】
【化113】

また1分子中に2個以上のラジカルを有する化合物としては、化学式(110)および(111)で示されるものが例示される。化学式(110)および(111)において、nは特に制限されるものではないが、溶解度の観点からは1〜8が好ましい範囲である。
【0144】
【化114】

【0145】
【化115】

また一般式(5);
【0146】
【化116】

で表されるラジカル化合物について説明する。式中、R11、R12、R13は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基、ホルミル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ヘテロ原子、ハロゲン原子もしくは水素原子を表し、互いに同じであっても異なっていてもよい。またR11、R12、R13が脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基である場合には、これらが置換基を有していてもよい。さらにR11、R12、R13が脂肪族炭化水素基の場合には、脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく、鎖状、環状または分岐状であってもよく、一緒になって環を形成していてもよい。
【0147】
より具体的には、化学式(112)〜(114)で示される化合物が挙げられる。
【0148】
【化117】

【0149】
【化118】

【0150】
【化119】

1分子中にラジカルを有するヒドラジル基を2個以上有する化合物としては、化学式(115)、(116)で示される化合物が挙げられる。
【0151】
【化120】

【0152】
【化121】

これらヒドラジル基を有する化合物においては、安定性および電解液への溶解度の観点からは化学式(112)で示されるジフェニルピクリルヒドラジル(以下DPPHと略す)が好ましい。
【0153】
また、一般式(6);
【0154】
【化122】

で表されるアミノトリアジン化合物についても説明する。式中、R14、R15、R16は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基、ホルミル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ヘテロ原子、ハロゲン原子もしくは水素原子を表し、互いに同じであっても異なっていてもよい。またR14、R15、R16が脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基である場合には、これらが置換基を有していてもよい。さらにR14、R15、R16が脂肪族炭化水素基の場合には、脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく、鎖状、環状または分岐状であってもよく、一緒になって環を形成していてもよい。
【0155】
このような化合物としては、化学式(117)〜(119)で示されるものを例示することができる。
【0156】
【化123】

【0157】
【化124】

【0158】
【化125】

アミノトリアジン構造を1分子中に2個以上有する化合物の例としては、化学式(120)、(121)で示されるものが挙げられる。なお化学式(120)、(121)においてnは1以上の整数を表し、特に制限されるものではないが、溶解度の観点からは1以上8以下程度が好ましい範囲である。
【0159】
【化126】

【0160】
【化127】

これらアミノトリアジン骨格を有する化合物において、安定性および
電解液への溶解度の観点からは、化学式(118)および(119)で示される化合物が好ましい。
【0161】
さらに活物質として、一般式(7)〜(10);
【0162】
【化128】

【0163】
【化129】

【0164】
【化130】

【0165】
【化131】

で表されるラジカル化合物が例示される。式中、R17、R18、R19は水素原子、ヘテロ原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。さらにR17、R18、R19が脂肪族炭化水素基の場合には、脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく、鎖状、環状または分岐状であってもよく、一緒になって環を形成していてもよい。ラジカルの安定性の観点からは、R17、R18、R19が全てt−ブチル基であることが好ましい。
【0166】
これらのラジカル化合物は、酸化還元反応の安定性に優れ、電圧の印加に対しても分解などの副反応を起こしにくく、本発明の目的に好ましく用いられる。我々は種々検討の結果、これらのラジカル化合物が優れた酸化・還元反応を示す事を見つけた。図1にTEMPO(0.1M)のサイクリックボルタモグラム(溶媒:GBL、支持塩:テトラエチルアンモ二ウム・テトラフルオロボレート(TEA・BF)1M)、および図2に2−(4−ニトロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチルイミダゾリン−3−オキシド−1−オキシル(以下NTIOと略す)(0.1M)のサイクリックボルタモグラム(溶媒:GBL、支持塩:TEA・BF 1M)を示す。サイクリックボルタンメトリー(CV)測定においては、作用電極は直径1.6mmの白金円盤電極、対極は直径0.5mm、長さ1.0cmの白金ワイヤー、参照極はBAS株式会社製RE−5参照極(Ag/Ag、標準水素電極と比較して+490mV)を用いた。電位スイープは自然電位からスタートし、20mV/sの速さで、初めプラス側に向かって+1.5〜−3.0V(vs.RE−5参照極)の範囲で3サイクル行った。CV測定には、Solartron社製1470Eマルチスタットを使用した。図1および図2のいずれにおいても明確な酸化・還元(ドープ・脱ドープ)反応に起因するピークが認められ、TEMPOはp−型として正極で、NTIOはp,n−型として正負両極でエネルギー貯蔵に使用可能である事が分かる。
【0167】
上記の酸化・還元が可能なラジカル化合物は1種類のみを電解液に添加しても良く、複数種類を添加しても良い。上記のラジカル化合物は分子の大きさや置換基によって溶解度、安定性などの特性が異なるので、適切に複数種類を電解液に添加すれば、バランスの良い特性を比較的容易に発現できる。
【0168】
<電解液中の活物質濃度>
電解液中で酸化・還元を行うラジカル化合物は溶解濃度が高いほどエネルギー密度を向上させる事ができる。このためエネルギー貯蔵デバイスの使用目的にもよるが、必要な濃度が存在する。本発明で好ましい溶解度の下限を電気二重層キャパシタの正極容量と同程度であると仮定すると、溶解濃度は0.2M以上である事が好ましい。さらにリチウムイオンキャパシタ型のデバイスを想定すると、ラジカル化合物の溶解度はさらに大きい事が好ましく、活物質の溶解度は0.2M以上である事が好ましく、0.5M、1.1M以上であればさらに好ましく、1.5M以上2.5M以下であれば最も好ましい。2.5Mより高濃度である場合には、電解液の粘度が大きくなり、電気抵抗が増大するのでエネルギー貯蔵デバイスに適用するには好ましくない。
【0169】
<電極構造>
本発明のエネルギー貯蔵方式は原理的には正極側にも負極側にも用いられるが、例えばp−型であるラジカル化合物を正極側に用いた場合について説明する。
【0170】
本発明のエネルギー貯蔵であるp−型ラジカル化合物の酸化は、正極、負極間に電位差を持たせることにより行なわれるが、電極表面で酸化されて充電状態となったp−型ラジカル化合物が電解液中を拡散して正極近傍から離れたり、負極まで移動して還元されてしまうと、その貯蔵した電荷を放電エネルギーとして取り出せなくなる。このため、本発明の電極には溶解されたp−型ラジカル化合物の拡散を抑制する手段、および/または拡散しても放電エネルギーを取り出せる手段が必要である。
【0171】
図3にはTEMPO(濃度:1.0M)を用いて、電極表面からどの程度離れた距離にある電解液までが有効に充放電に利用できるか検討した結果を示す。
【0172】
この実験では、溶媒はGBL、支持塩はTEA・BF(濃度1M)を用い電解液を作製した。作用極は幅1cm、長さ3cm、厚さ0.5mmの白金板、対極は幅3cm、長さ4cm、厚さ0.5mmの白金板とし、ともに1cm電解液に浸した。参照極はBAS株式会社製RE−5参照極(Ag/Ag、標準水素電極と比較して+490mV)を用いた。それぞれの電解液に対して、初めはプラスの電流(充電)を流し、参照極に対して−0.6V〜+1.0Vの範囲で3サイクルの定電流充放電を行った。充放電の電流値はそれぞれの電解液に対して数種類異なる値にて行った。定電流充放電測定には、Solartron社製1470Eマルチスタットを使用した。
【0173】
図3は3サイクル目の放電電荷と電解液の活物質濃度から計算した、放電に有効に利用された電解液の電極からの距離(μm)を示している。ここでは電極から最近接の電解液部分が100%放電に使用されたと仮定している。すなわち考えられる最少の、放電に有効に利用された電解液の電極からの距離を示す。この結果から、電極からほぼ10μmの距離にある電解液(中の活物質)から放電エネルギーが取り出せている事がわかる。
【0174】
電極として活性炭のような細孔構造が発達したものや、カーボンファイバーのような繊維状のものを積み重ねたようなものを使用することにより、活物質が常に電極表面から10μm以上離れない様な電極構造を実現すれば、活物質が電解液中を拡散したとしても、セパレータより正極側にある限り、常に放電エネルギーを有効に取り出すことが可能と考えられる。例えば円筒状の穴からなる多孔質炭素電極を考えると、その穴の半径が10μm以内であれば、電解液中の活物質に蓄えられたエネルギーを効果的に取り出せる事になる。すなわち、本発明のエネルギー貯蔵デバイスは電極に多孔質電極、または繊維状電極を用い、その電極で形成される空隙の距離が20μm以内になる様にする事が好ましい。高速でのエネルギー取り出しを考えると、より好ましくは10μm以内、最も好ましくは5μm以内である。
【0175】
また、多孔質電極、または繊維状電極を用いることは、活物質の拡散自体を抑制するという意味でも効果がある。
【0176】
<炭素電極>
本発明の目的に良好に使用可能な構造の電極を実現する最も簡易な方法が、炭素・グラファイト電極を使用する事である。炭素電極は、単独で用いても良く、適当なバインダーとの複合電極としても良い。原料に多孔質の高分子材料を用いて炭素化・グラファイト化する手法、原料炭素を各種の方法で発泡させて穴を形成する方法、賦活により穴を形成する方法、鋳型炭素法と呼ばれる手法、キセロゲル法、など多様な手法で多孔質炭素を作製する事が出来、本発明のエネルギー貯蔵デバイス用の電極として好ましく使用可能であり、その作製方法は限定されない。
【0177】
多孔質高分子材料を用いて多孔質炭素・グラファイト電極を作製する例として、ポリイミド多孔質膜を用いる方法、メラミン樹脂多孔質材料を用いる方法等を例示できる。これらの高分子は溶融する事無く炭素化・グラファイト化するために、孔を有する炭素・グラファイト電極の作製ができる。原料であるメラミン樹脂多孔体は市販のスポンジ樹脂として容易に入手が可能であり、ポリイミド多孔体は例えば宇部興産(株)等からの入手が可能である。
【0178】
また、カーボンナノチューブに代表される微細炭素繊維や微細グラファイト繊維を用いて電極を作製し、実質的に本発明に好ましい構造の電極を作製する事も可能である。
【0179】
例えば、得られた多孔質活性炭やカーボンナノチューブなどの微細炭素繊維を電極とするには、電極形状の形成・保持に必要な最低量のバインダーと混合し、その後これを圧縮成型することで作製する事が出来る。バインダーとしては、例えばポリビニリデンフルオライド(以下PVdFと略す)あるいはポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと略す)あるいはエチレンプロピレンゴム(以下EPDMと略す)、カルボキシメチルセルロース(以下CMCと略す)、ポリプロピレン、ポリエチレンがあるが、特にこれらに限られるものではない。バインダーの使用量としては、特に制限はないが、バインダー量が少なければ電極強度が十分でなく、多すぎると電極の電気伝導度が低くなったり、電極中の多孔質炭素や炭素繊維の含有率が低くなるため、電極重量あたりの容量が小さくなるなどの問題が生じてくる。このため電極材料中に占めるバインダーの重量比は例えば0.5〜30%が好ましい。
【0180】
この時、必要に応じて集電体や導電補助剤を用いても良い。集電体は熱力学的、電気化学的に安定な材料で導電性が高ければ良く、通常アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス、タンタル、銅等の金属が用いられる。これらの金属は、圧延箔、電解箔、エッチド箔、メッシュ箔、エキスパンドメタル箔またはパンチングメタル箔の形態で用いることができる。
【0181】
導電補助剤は電極バルクの導電性を向上させ、大容量のエネルギー貯蔵デバイスを作製するのに効果がある。例えばカーボンブラックやアセチレンブラックなどが用いられる。使用量としては、特に制限はないが、少なければ電極の電気伝導度が十分でなく、多すぎると電極中の多孔質炭素や炭素繊維の含有量率が低くなるため、電極重量あたりの容量が小さくなるなどの問題が生じてくる。このため例えば電極材料中に占める導電補助材の重量比が1〜30%程度が好ましい。
【0182】
作製方法としては、例えば微細炭素繊維、導電補助剤、及びバインダーを、重量比で微細炭素繊維:導電補助剤:バインダー=100〜50:0〜50:0〜50の割合で加えて溶媒と共に混練しペーストを作製する。得られたペーストを集電体に圧着または塗布し、40℃から300℃で乾燥して溶媒を除去することにより電極を作製する。溶媒としては、1−メチル−2−ピロリドンやエタノール、メタノール等のアルコール系溶媒が用いられる。
【0183】
本発明では電極に活物質を含む電解液が含浸されるので、より大量の電解液を含浸する目的のためには電極の嵩密度は1.8g/cm以下である事が好ましく、1.5g/cm以下である事はより好ましく、1.2g/cm以下である事は最も好ましい。炭素とバインダーからなる複合電極の場合、通常圧延処理して電極を作製するが、本発明の様な低密度の電極を実現するためには圧延工程を省くか、通常より低い圧力の圧延処理を行なう事が好ましい。
【0184】
<セパレータ>
通常のエネルギー貯蔵デバイスでは正極、負極間の短絡を防止する目的でセパレータを介在させる事が一般的に行われる。しかし、本発明の構成のエネルギー貯蔵デバイスではセパレータは、より積極的な意味を持つ重要な構成要素となる。p−型のラジカル化合物を例に説明する。すなわち、本発明では電解液中に活物質が溶解しているために、正極で充電状態(酸化状態)となった活物質が電解液中を拡散によって移動して、負極に到達しそのまま放電する(中性状態に戻る)と言う現象が起き易い。この現象はレドックスシャトル効果として知られ、電池やキャパシタの自己放電の原因となるが、本発明の方式ではこの自己放電を如何に防止するかが重要である。
【0185】
この様な問題点を解決するために我々は鋭意検討を重ねた。その結果、セパレータとして通常用いられるガラス繊維フィルタ、ポリポロピレン(以下PPと略す)多孔質フィルタ、セルロースセパレータ、などを用いても自己放電を完全には防止する事は難しいが、イオン交換樹脂膜をセパレータとして用いる事により、自己放電を効果的に防止できる事を見出した。活物質の移動はイオン交換樹脂膜で効果的にブロックされるが、支持電解質はイオン交換樹脂膜中を移動することができる。
【0186】
本発明のエネルギー貯蔵デバイスに用いられるイオン交換膜は、そのインピーダンスが出来るだけ小さい事が求められる。このため、イオン交換容量が大きく、薄膜を形成するものである事が望ましい。この様な目的に使用されるイオン交換膜としてフルオロカーボン系イオン交換膜、炭化水素系イオン交換膜を例示する事が出来る。
【0187】
フルオロカーボン系イオン交換膜はパーフルオロアルキルを主骨格とし、一部のパーフルオロエーテル側鎖の末端にスルホン酸基、カルボン酸基等のイオン交換基を有するフッ素系膜である。この様なフッ素系膜としては、Nafion(登録商標) 膜(Du Pont社)、Dow膜(Dow Chemical社)、Aciplex(登録商標) 膜(旭化成工業(株))、Selemion(登録商標) 膜(旭硝子(株))等が知られており、これらは本発明の目的に好ましく用いる事ができる。
【0188】
例えばNafion(登録商標)は市販のフィルムをそのまま使用しても良く、溶媒に溶解または分散させたNafion(登録商標)含有液をポリプロピレンフィルタやガラスフィルタなどの素材に含浸、あるいは塗布して乾燥させたて作製した複合セパレータを使用しても良い。本発明のセパレータは可能な限り薄いものが好ましいので、複合セパレータとする事で薄膜化と機械的な強度との両立を図る事は好ましい。具体的なNafion膜としてはNafion(登録商標)112(膜厚51μm)、Nafion(登録商標)212(膜厚51μm)、Nafion(登録商標)1135(膜厚89μm)、Nafion(登録商標)115(膜厚127μm)、Nafion(登録商標)117(膜厚183μm)を例示できる。また、複合セパレータ作製用の溶液タイプとしてNafion(登録商標)5wt%溶液、Nafion(登録商標)10wt%水分散液、Nafion(登録商標)20wt%溶液を例示できる。
【0189】
炭化水素系イオン交換膜としてはスチレン−ジビニルベンゼン共重合体や芳香族系高分子系材料がある。後者はポリベンズイミダゾール、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン等の芳香族系高分子材料に直接スルホン酸基、カルボン酸基などを導入したものである。これらの炭化水素系イオン交換膜も本発明の目的に好ましく用いられる。
【0190】
一方、無機材料が添加された高分子フィルムも本発明の目的に用いる事が出来る。例えば、加水分解性シリル化合物中に種々の酸を添加することにより得られるプロトン伝導性の無機材料を高分子フィルムに分散したもの、プロトン伝導性の無機材料をエラストマーと混合したもの、スルホン酸基含有高分子と混合したもの等が挙げられる。
【0191】
<エネルギー貯蔵デバイスの構成>
図4に、p−型ラジカル化合物を用いた場合を例に本発明のエネルギー貯蔵デバイスの概念図を示す。2は前述の多孔質の正極を示し例えば活性炭などを用いる。正極の内部には、セパレータや負極の内部と同様に、電解液3が含浸されている。
【0192】
通常のエネルギー貯蔵デバイスにおいては、正極の空隙にある電解液の領域は直接エネルギー貯蔵に関与しないため、無駄な空間になっている。本発明のエネルギー貯蔵デバイスでは、電解液3に例えばTEMPO等のラジカル化合物である活物質が溶解させてあり、この活物質の酸化・還元反応を利用してエネルギー貯蔵を行う。このため正極の空隙を使って効果的にエネルギー貯蔵が行える。これにより通常のエネルギー貯蔵デバイスに比べて正極側の容量を大きくすることができ、エネルギー貯蔵デバイス全体としても容量を増大させることが可能である。
【0193】
電解液中の活物質は、電極からある程度(10μm程度)離れてしまうと、効率的にエネルギー貯蔵に利用できない。そこで図4に模式的に示すように、正極を多孔質または繊維状構造とし正極内部に含まれる電解液が、常に正極から10μm以上離れないようにする事が好ましい。
【0194】
4はセパレータであり、通常のエネルギー貯蔵デバイスにおいては、単に正極と負極が接触して短絡することを防ぐためだけに用いられる。しかし本発明においては、電解液中の酸化状態(充電状態)の活物質が拡散によって、正極側からセパレータを通り過ぎて負極側に移動してしまうと短絡を起こし、エネルギー貯蔵の効率が悪くなってしまう。また、長期間のエネルギー貯蔵も難しくなってしまう。そこで、本発明ではセパレータに、活物資が正極側から負極側に移動しないようにする機能を持たせることが重要である。具体的には、例えばセパレータとしてNafion(登録商標)等のイオン交換膜を使用する。これにより電解液中の活物質が正極側から負極側に移動するのを防止し、電解液中の活物質を効率良く充放電に活用することができる。
【0195】
5は負極であり、必要に応じて電気二重層キャパシタ用の活性炭電極やリチウムイオンが挿入・脱離可能なグラファイト電極等を用いることができるが、容量が大きな負極を用いるほうが、デバイス全体の容量を大きくできるので好ましい。
【0196】
なお、図4は簡略化された模式図であり、本発明のデバイス形状はこれに限定されるものではない。例えば薄型、円筒型、コイン型、ボタン型、シート型、積層型等の様々な形状のものや、電気自動車等に用いる車載タイプにも適用可能である。また添加する活物質の種類により、負極側の容量を向上させる事が可能である。この場合は、負極を多孔質または繊維状とすることが好ましい。また、添加する活物質が多段階の酸化・還元反応を起こす物質であれば、正極、負極両方の容量を同時に向上させることも可能である。この場合には、正極、負極ともに多孔質または繊維状構造とすることが望ましい。
【0197】
<デバイス構成例−1>
このデバイスは本発明の電解液を電気二重層キャパシタの正極側の蓄電用として用い、電気二重層キャパシタの容量を向上させたものである。ここでは正極、負極に活性炭電極を用いる。このデバイスの最も典型的な電極は、活性炭とバインダーおよび電気伝導度向上のための導電補助剤から作製される。電気二重層容量は概ね電極の表面積に比例して増加するので、電極材料として比表面積が大きい活性炭が用いられるが、これにアセチレンブラックなどの導電補助剤を添加し、さらにPVdF等のバインダーで固形化して電極を作製する。電解液としては、例えばPCやGBLなどを用い、支持塩としては四級アンモニウム塩、例えばトリエチルメチルアンモニウム・テトラフルオロボレート(EtMeNBF)などを用いる。
【0198】
このデバイスでは、この様な電解液に酸化・還元が可能なラジカル化合物を溶解させることで、通常の電気二重層容量によるエネルギー貯蔵に加えて、電解液中のラジカル化合物の酸化・還元反応によるエネルギー貯蔵が起こる。本発明のp−型のラジカル化合物は正極表面で酸化される事でエネルギー貯蔵がなされるので、正極の容量向上に寄与する。電気二重層キャパシタの全体の容量(C)は、1/C=1/Cc+1/Caなる式で表され(ここでCaは正極容量、Ccは負極容量である)、正極容量の向上がそのまま電気二重層キャパシタの全体の容量に反映される訳ではない。しかし、例えば正極の容量を2倍に増加させられたとすると、全体として1.33倍の容量向上が実現でき、正極の容量5倍に増加させられたとすると全体として1.67倍の容量向上が実現する。電気二重層キャパシタにおける活性炭電極重量あたりの容量を約6〜9mAh/g・V程度とすれば、本発明により、容量密度を約8〜15mAh/g・Vまで向上できる事になる。
【0199】
また、一定体積の電気二重層キャパシタを仮定すると、正極の容量を向上させれば正極の体積を小さくする事が出来、相対的に負極の体積を増大させる事が出来るので、この様な方法でも電気二重層キャパシタ全体の容量密度を向上させる事が出来る。
【0200】
電気二重層容量によるエネルギー貯蔵は充放電速度が速いため、電解液中の鉄錯体の酸化・還元反応によるエネルギー貯蔵と組み合わせることにより、充放電速度に優れ、エネルギー貯蔵量の大きいデバイスを作ることができる。
【0201】
さらに本発明では、電解液に溶解したラジカル化合物の拡散を防止するために、セパレータとしてイオン交換膜を設ける。通常の電気二重層キャパシタのセパレータとして用いられる多孔性のポリプロピレン(以下PPと略す)やセルロースセパレータでは活物質の自己拡散を防止する事はできない。
【0202】
<デバイス構成例−2>
このデバイスはリチウムイオンキャパシタと呼ばれるデバイスを改善した新規なデバイスである。
【0203】
リチウムイオンキャパシタはリチウムイオン電池の出力密度向上を目指したものであり、正極側は活性炭電極と電解液の界面の電気二重層を利用して電荷を貯蔵し、負極側はグラファイトへのリチウムイオンのインターカレーションを利用して電荷を貯蔵する。ここで負極のグラファイトには、リチウムイオンを予めドープ(プリドープ)してある。こうすることにより、負極の電位を常に低く保ち、電気伝導度も高くすることができる。グラファイトへのリチウムイオンのプリドープ方法としては、リチウムイオンとグラファイトを電解液中で物理的に接触させる方法や、リチウムイオンを含む電解液中でグラファイト電極に負の電位を印加する方法が挙げられる。電解液にはリチウム塩が溶解させてある。リチウムイオンキャパシタは負極の電位が低いために、正極と負極の電位差を大きくする事ができ(使用電圧:3.6〜4.2V)、高電圧での充放電が可能である。このため蓄積できる電荷量が同じであっても、電気二重層キャパシタに比べエネルギー密度を高くできる利点がある。しかし、正極の容量は基本的に活性炭表面の電気二重層容量であり、負極の容量に比べて小さい。このためリチウムイオンキャパシタの容量向上には限界があった。
【0204】
本発明のデバイスでは、リチウムイオンキャパシタと同様に、正極には活性炭電極、負極にはリチウムイオンを予めドープ(プリドープ)したグラファイトを用いる。電解液の溶媒としては例えば、PC、GBL、EC、DEC、及びこれらの混合液が用いられ、これらは支持塩や活物質の溶解度を考慮して選択される。電解液には支持塩としてリチウム塩(例えばLiPF)、活物質としてp−型のラジカル化合物が溶解させてある。電解液中の鉄錯体は正極表面で酸化・還元反応を起こし、これにより正極の容量を向上させる。リチウムイオンキャパシタは、負極容量が正極容量に比べて非常に大きいので、正極の容量を向上させれば比較的そのままデバイス全体の容量を増加させられる。また、本発明のデバイスでは、電解液に溶解したラジカル化合物の拡散を防止するために、セパレータとしてイオン交換膜を正極、負極の間に挟みこむ。
【0205】
このデバイスはリチウムイオンキャパシタの容量を改善したものであるが、リチウムイオン二次電池の構成とは基本的に異なる物である。リチウムイオン二次電池は正極にコバルト等の高価な金属を含む金属酸化物電極(コバルト酸リチウム等)を使用するが、本発明の正極側に用いられるのは安価な鉄錯体であり価格的に圧倒的優位である。また本発明の正極側は高出力密度であり、出力密度が小さいと言うリチウムイオン電池の欠点も改良している。
【実施例】
【0206】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<電解液の調製>
GBLに活物質としてTEMPOを0.5M、指示塩としてTEA・BFを1.0M溶解させ、電解液とした。
【0207】
<電極、セパレータの調製>
正極は直径13mm、厚さ0.5mmの活性炭シート電極、負極は直径15mm、厚さ0.5mmの活性炭シート電極を用いた。活性炭シート電極は、賦活処理した活性炭粉末(平均粒径5〜20μm)に導電助剤としてアセチレンブラックを添加し、PTFEをバインダーとしてシート状に成形したものである。このシート電極の密度は0.45〜0.55g/cmであり、比表面積は1700〜2200m/gである。セパレータはNafion(登録商標)212(膜厚49〜53μm)を直径19mmの円形に打ち抜いたものを用いた。これらの正極、負極、セパレータを、3時間、真空状態で120℃に保ち、乾燥させた。次に乾燥後の正極、負極、セパレータを電解液に浸漬し、10分間真空状態にして電解液を含浸させ、常圧に戻した。この真空含浸をさらに2回行い、合計3回電解液の含浸を行った。
【0208】
<セルの組み立て>
作製した負極、セパレータ、正極を、下から順に同心円状に重なるようにして宝泉社製HSセルに入れ、蓋をして、測定用のキャパシタモデルセルとした。大気中の水分の混入を防ぐために、電解液の調製および、電極、セパレータへの電解液の含浸、セルの組み立ては、すべて高純度アルゴンで置換した露点−70℃以下のグローブボックス中で行った。
【0209】
<充放電測定>
作製したキャパシタモデルセルを、1mAの一定電流で3サイクル充放電させた。充放電の電圧範囲は0〜1.23Vとし、測定の最初は、自然電位から充電を開始した。充放電測定にはSolartron社製1470Eマルチスタットを使用した。3サイクル目の充放電の充電電荷、放電電荷、クーロン効率はそれぞれ5.51C、5.36C、97.3%であった。
(実施例2〜20)
活物質としてTEMPOの代わりに表1に示した化学式で示される化合物を表中に記載の濃度で電解液に添加した以外は、実施例1と同様の実験を行った。得られたモデルセルの3サイクル目の充放電の充電電荷、放電電化、クーロン効率を表1にまとめた。
【0210】
【表1】


実施例1〜20の結果と下記の比較例1の結果との比較から、電解液に活物質であるラジカル化合物を添加することにより、電気二重層キャパシタ型のエネルギー貯蔵デバイスの容量を増大させられることが分かる。
【0211】

(実施例21)
<電解液の調製>
ECとGBLを体積比で1:1の割合で混合した混合溶媒に、活物質としてTEMPOを0.5M、指示塩としてLiBFを1.0M溶解させ、電解液とした。
【0212】
<正極の作製>
クラレケミカル社製RP−20活性炭、アセチレンブラック、PVdFを重量比で80:12:8の割合で混合したものに1−メチル−2−ピロリドンを添加し、電極用スラリーとした。得られたスラリーを厚さ25μmのアルミニウム箔の片面に塗布した後、真空状態で15時間150℃に保持し乾燥させた。乾燥させた正極を、アルミニウム箔ごとロールプレス機で圧延し、アルミニウム箔を除く正極の厚さを82〜87μm、密度を0.5〜0.55g/cmにした。圧延して得られた電極を幅1.75cm、長さ1.6cmの長方形に打ち抜き、スラリーを塗布していない面に幅6mm、長さ5cmのアルミニウムタブを超音波溶接機で溶接し、リチウムイオンキャパシタ型モデルセル用のリード付き正極とした。
【0213】
<負極の作製>
大阪ガスケミカル社製MCMB負極用炭素、アセチレンブラック、PVdFを重量比で90:3:7の割合で混合したものに1−メチル−2−ピロリドンを添加し、電極用スラリーとした。得られたスラリーを厚さ22μmの銅箔の片面に塗布した後、真空状態で15時間150℃に保持し乾燥させた。乾燥させた負極を、銅箔ごとロールプレス機で圧延し、銅箔を除く負極の厚さを33〜38μm、密度を1.4〜1.5g/cmにした。圧延して得られた電極を幅1.75cm、長さ1.6cmの長方形に打ち抜き、スラリーを塗布していない面に幅6mm、長さ5cmのニッケルタブを超音波溶接機で溶接し、プリドープ用のリード付き負極とした。
【0214】
<負極のプリドープ>
上記で作製したプリドープ用のリード付き負極と、ポリプロピレン不織布セパレータ(膜厚82〜88μm、空孔率68−72%、幅2.5cm、長さ2.5cmの正方形)と、リチウム金属箔(幅2.5cm、長さ2.5cmの正方形、厚さ0.5mm)にニッケルタブを押し当てて固定したものを、この順に重ね合わせた。これを、幅5cm、長さ4cmの封筒型にしたラミネートセル用のシート(樹脂コーティングしたアルミニウムシート)内に配置し、真空状態にしながら支持塩LiPFの1M溶液(溶媒:ECとDECを体積比1:1で混合した混合溶媒)を注入した後、ラミネートパックの蓋をし、プリドープ用のラミネートセルとした。次に、負極に含まれているMCMB負極用炭素1gあたりの電流値がマイナス100mAになるようにプリドープ用ラミネートセルに一定の電流を流した。MCMB負極用炭素1gあたりに流れた電荷量が300mAhになるまでプリドープを行った。この処理で得られたリード付き負極を、リチウムイオンキャパシタ型モデルセル用のリード付き負極とした。
【0215】
<セパレータ>
厚さ22−26μmのポリプロピレン不織布(空孔率68−74%)を幅3.0cm、長さ3.0cmの長方形に打ち抜いたものを2枚作り、その間にNafion212(膜厚49〜53μm)を幅2.5cm、長さ2.5cmの正方形に打ち抜いたものを挟み込み、リチウムイオンキャパシタ型モデルセル用のセパレータとした。
【0216】
<電極、セパレータの乾燥>
作製した正極、負極、セパレータを、3時間、真空状態で120℃に保ち、乾燥させた。
【0217】
<セルの組み立て>
乾燥させた負極、セパレータ、正極を、この順に重なるようにして、幅5cm、長さ4cmの封筒型にしたラミネートセル用のシート(樹脂コーティングしたアルミニウムシート)内に配置し、真空状態にしながら電解液を注入した後、ラミネートパックの蓋をし、測定用のリチウムイオンキャパシタ型モデルセルとした。ラミネートセルの模式図を図5に示す。大気中の水分の混入を防ぐために、電解液の調製は高純度アルゴンで置換した露点−70℃以下のグローブボックス中、セルの組み立ては露点−40℃以下のドライルーム中で行った。
【0218】
<充放電測定>
作製したリチウムイオンキャパシタ型モデルセルを、1Cの電流でセルの電圧が4.0Vになるまで充電し、そのまま1時間4.0Vに保持した。次に1Cの電流で、セルの電圧が2.5Vになるまで放電した。この充放電を3サイクル繰り返した。充放電測定にはSolartron社製1470Eマルチスタットを使用した。3サイクル目の充放電の充電電荷、放電電荷、クーロン効率はそれぞれ2.61C、2.53C、96.9%であった。
【0219】

実施例21の実験条件、結果を、表2にまとめた。
【0220】

(実施例22〜38)
実施例21〜38の結果と下記の比較例2の結果との比較から、電解液に活物質であるラジカル化合物を添加することにより、リチウムイオンキャパシタ型のエネルギー貯蔵デバイスの容量を増大させられることが分かる。実施例22〜38の実験条件、結果を、表2にまとめた。
【0221】

(実施例39)
<正極の作製>
カーボンナノチューブ(平均直径40〜50nm、平均長さ16〜24μm)、PTFEを91:9の重量比で混合し、圧延して厚さ490〜510μm、密度0.50〜0.60g/cmのシート状に成形した。このシート電極を直径13mmの円形に打ち抜き、正極とした。
【0222】
<充放電測定>
作製したカーボンナノチューブ電極を正極として用いた他は、実施例1と同様の実験を行った。その結果、モデルセルの3サイクル目の充放電の充電電荷、放電電化、クーロン効率はそれぞれ5.49C、5.23C、95.3%であった。本結果を下記の比較例3の結果と比較すると、カーボンナノチューブ電極を用いた場合にも、電解液への活物質であるTEMPOの添加により大きく容量が増大していることがわかる。
(実施例40)
<正極の作製>
カーボンナノチューブ(平均直径40〜50nm、平均長さ16〜24μm)、PVdFを重量比で94:6の割合で混合したものに1−メチル−2−ピロリドンを添加し、電極用スラリーとした。得られたスラリーを厚さ25μmのアルミニウム箔の片面に塗布した後、真空状態で15時間150℃に保持し乾燥させた。乾燥させた正極を、アルミニウム箔ごとロールプレス機で圧延し、アルミニウム箔を除く正極の厚さを85〜90μm、密度を0.55〜0.60g/cmにした。圧延して得られた電極を幅1.75cm、長さ1.6cmの長方形に打ち抜き、スラリーを塗布していない面に幅6mm、長さ5cmのアルミニウムタブを超音波溶接機で溶接し、リチウムイオンキャパシタ型モデルセル用のリード付き正極とした。
【0223】
<充放電測定>
作製したカーボンナノチューブ電極を正極として用いた他は、実施例21と同様の実験を行った。その結果、モデルセルの3サイクル目の充放電の充電電荷、放電電化、クーロン効率はそれぞれ2.58C、2.51C、97.3%であった。本結果を下記の比較例4の結果と比較すると、カーボンナノチューブ電極を用いた場合にも、電解液への活物質であるTEMPOの添加により大きく容量が増大していることがわかる。
(実施例41)
Nafion(登録商標)212の代わりにNafion(登録商標)115(膜厚125〜129μm)をセパレータとして用いた他は、実施例1と同様の実験を行った。その結果、モデルセルの3サイクル目の充放電の充電電荷、放電電化、クーロン効率はそれぞれ5.45C、5.33C、97.8%であった。このように厚さの異なるイオン交換膜をセパレータに用いた場合にも、電解液への活物質であるTEMPOの添加により、比較例5に比べて大きく容量が増大している。
(実施例42)
Nafion(登録商標)212の代わりにNafion(登録商標)115(膜厚125〜129μm)をセパレータとして用いた他は、実施例21と同様の実験を行った。その結果、モデルセルの3サイクル目の充放電の充電電荷、放電電化、クーロン効率はそれぞれ2.55C、2.44C、95.7%であった。このように厚さの異なるイオン交換膜をセパレータに用いた場合にも、電解液への活物質であるTEMPOの添加により、比較例6に比べて大きく容量が増大している。
【0224】
実施例39〜42の実験条件、結果を、表2にまとめた。
(比較例1)
ラジカル化合物である活物質を電解液に添加しなかった以外は、実施例1と同様の実験を行った。その結果、モデルセルの3サイクル目の充放電の充電電荷、放電電化、クーロン効率はそれぞれ3.21C、3.11C、96.9%であった。
(比較例2)
ラジカル化合物である活物質を電解液に添加しなかった以外は、実施例21と同様の実験を行った。その結果、モデルセルの3サイクル目の充放電の充電電荷、放電電化、クーロン効率はそれぞれ1.79C、1.76C、98.3%であった。
(比較例3)
ラジカル化合物である活物質を電解液に添加しなかった以外は、実施例39と同様の実験を行った。その結果、モデルセルの3サイクル目の充放電の充電電荷、放電電化、クーロン効率はそれぞれ3.19C、3.11C、97.5%であった。
(比較例4)
ラジカル化合物である活物質を電解液に添加しなかった以外は、実施例40と同様の実験を行った。その結果、モデルセルの3サイクル目の充放電の充電電荷、放電電化、クーロン効率はそれぞれ1.82C、1.77C、97.3%であった。
(比較例5)
ラジカル化合物である活物質を電解液に添加しなかった以外は、実施例41と同様の実験を行った。その結果、モデルセルの3サイクル目の充放電の充電電荷、放電電化、クーロン効率はそれぞれ3.09C、2.98C、96.4%であった。
(比較例6)
ラジカル化合物である活物質を電解液に添加しなかった以外は、実施例42と同様の実験を行った。その結果、モデルセルの3サイクル目の充放電の充電電荷、放電電化、クーロン効率はそれぞれ1.77C、1.69C、95.5%であった。
【0225】
比較例1〜6の実験条件、結果を、表2にまとめた。
【0226】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0227】
【図1】TEMPOのサイクリックボルタモグラム
【図2】NTIOのサイクリックボルタモグラム
【図3】放電電荷と電解液濃度から計算した、充放電に有効に利用された電解液の電極からの距離(μm)
【図4】本発明のエネルギー貯蔵デバイス概念図
【図5】ラミネートセルの構造模式図
【符号の説明】
【0228】
1.正極終電体
2.正極(多孔質(繊維状)電極)
3.電解液
4.セパレータ(イオン交換膜)
5.負極
6.負極集電体
7.正極
8.アルミニウムタブ
9.負極
10.ニッケルタブ
11.セパレータ
12.ラミネート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも正極、負極、電解液、酸化・還元可能な活物質、及びセパレータが一つの密閉された筐体内にあるエネルギー貯蔵デバイスであって、前記活物質がラジカル化合物であり、活物質が電解液中に0.2モル/リットル以上2.5モル/リットル以下の濃度で溶解している事を特徴とするエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項2】
セパレータがイオン交換膜である請求項1に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項3】
活物質が、少なくとも酸素原子上、窒素原子上、炭素原子上のいずれかにラジカルを有する化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項4】
活物質が、一般式(1);
【化1】

(式中、RおよびRは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基、ホルミル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ヘテロ原子、ハロゲン原子もしくは水素原子を表し、互いに同じであっても異なっていてもよい。またRおよびRが脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基である場合には、これらが置換基を有していてもよい。さらにRおよびRが脂肪族炭化水素基の場合には、脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく、鎖状、環状または分岐状であってもよく、一緒になって環を形成していてもよい。)で表されるニトロキシラジカル化合物であることを特徴とする請求項3に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項5】
少なくともR、Rのいずれかひとつまたはいずれもが、それぞれ独立にひとつまたはそれ以上の他分子のR、Rのいずれかひとつまたはいずれもと結合して、1分子中に2個以上のニトロキシラジカルを有することを特徴とする請求項4に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項6】
、Rの少なくともいずれかひとつまたはいずれもが、ラジカルを有することにより、1分子中に2個以上のラジカルを有することを特徴とする請求項4に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項7】
活物質が一般式(2);
【化2】

(式中、Rは置換または無置換の芳香族炭化水素基を表す。)で表される化合物であることを特徴とする請求項3に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項8】
が、ひとつまたはそれ以上の他分子のRと結合して、1分子中に2個以上のオキシラジカルを有することを特徴とする請求項7に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項9】
が、ラジカルを有することにより、1分子中に2個以上のラジカルを有することを特徴とする請求項7に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項10】
活物質が一般式(3);
【化3】

(式中、R、R、Rは脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基、ホルミル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ヘテロ原子、ハロゲン原子もしくは水素原子を表し、互いに同じであっても異なっていてもよい。またR、R、Rが脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基である場合には、これらが置換基を有していてもよい。さらにR、R、Rが脂肪族炭化水素基の場合には、脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく、鎖状、環状または分岐状であってもよく、一緒になって環を形成していてもよい。)で表される炭素ラジカル化合物であることを特徴とする請求項3に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項11】
少なくともR、R、Rのいずれかひとつまたはそれ以上が、それぞれ独立にひとつまたはそれ以上の他分子のR、R、Rと結合して、1分子中に2個以上の炭素ラジカルを有することを特徴とする請求項10に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項12】
、R、Rの少なくともいずれかひとつまたはそれ以上が、ラジカルを有することにより、1分子中に2個以上のラジカルを有することを特徴とする請求項10に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項13】
活物質が一般式(4);
【化4】

(式中、R、R、R、R10は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基、ホルミル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ヘテロ原子、ハロゲン原子もしくは水素原子を表し、互いに同じであっても異なっていてもよい。またR、R、R、R10が脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基である場合には、これらが置換基を有していてもよい。さらにR、R、R、R10が脂肪族炭化水素基の場合には、脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく、鎖状、環状または分岐状であってもよく、一緒になって環を形成していてもよい。)で表されるフェルダジル基上にラジカルを有する化合物であることを特徴とする請求項3に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項14】
少なくともR、R、R、R10のいずれかひとつまたはそれ以上が、それぞれ独立にひとつまたはそれ以上の他分子のR、R、R、R10と結合して、1分子中にラジカルを有するフェルダジル基を2個以上有することを特徴とする請求項13に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項15】
、R、R、R10の少なくともいずれかひとつまたはそれ以上が、ラジカルを有することにより、1分子中に2個以上のラジカルを有することを特徴とする請求項13に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項16】
活物質が一般式(5);
【化5】

(式中、R11、R12、R13は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基、ホルミル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ヘテロ原子、ハロゲン原子もしくは水素原子を表し、互いに同じであっても異なっていてもよい。またR11、R12、R13が脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基である場合には、これらが置換基を有していてもよい。さらにR11、R12、R13が脂肪族炭化水素基の場合には、脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく、鎖状、環状または分岐状であってもよく、一緒になって環を形成していてもよい。)で表されるヒドラジル基上にラジカルを有する化合物であることを特徴とする請求項3に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項17】
少なくともR11、R12、R13のいずれかひとつまたはそれ以上が、それぞれ独立にひとつまたはそれ以上の他分子のR11、R12、R13と結合して、1分子中にラジカルを有するヒドラジル基を2個以上有することを特徴とする請求項16に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項18】
11、R12、R13の少なくともいずれかひとつまたはそれ以上が、ラジカルを有することにより、1分子中に2個以上のラジカルを有することを特徴とする請求項16に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項19】
活物質が一般式(6);
【化6】

(式中、R14、R15、R16は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基、ホルミル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ヘテロ原子、ハロゲン原子もしくは水素原子を表し、互いに同じであっても異なっていてもよい。またR14、R15、R16が脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基である場合には、これらが置換基を有していてもよい。さらにR14、R15、R16が脂肪族炭化水素基の場合には、脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく、鎖状、環状または分岐状であってもよく、一緒になって環を形成していてもよい。)で表されるアミノトリアジン構造を有する化合物であることを特徴とする請求項3に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項20】
少なくともR14、R15、R16のいずれかひとつまたはそれ以上が、それぞれ独立にひとつまたはそれ以上の他分子のR14、R15、R16と結合して、前記式(6)で表されるラジカルを有するアミノトリアジン構造を1分子中に2個以上有することを特徴とする請求項19に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項21】
14、R15、R16の少なくともいずれかひとつまたはそれ以上が、ラジカルを有することにより、1分子中に2個以上のラジカルを有することを特徴とする請求項19に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項22】
活物質が一般式(7);
【化7】

(式中、R17、R18、R19は水素原子、ヘテロ原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。さらにR17、R18、R19が脂肪族炭化水素基の場合には、脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく、鎖状、環状または分岐状であってもよく、一緒になって環を形成していてもよい。)で表されるラジカル化合物であることを特徴とする請求項3に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項23】
活物質が一般式(8);
【化8】

(式中、R17、R18、R19は水素原子、ヘテロ原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。さらにR17、R18、R19が脂肪族炭化水素基の場合には、脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく、鎖状、環状または分岐状であってもよく、一緒になって環を形成していてもよい。)で表されるラジカル化合物であることを特徴とする請求項3に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項24】
活物質が一般式(9);
【化9】

(式中、R17、R18、R19は水素原子、ヘテロ原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。さらにR17、R18、R19が脂肪族炭化水素基の場合には、脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく、鎖状、環状または分岐状であってもよく、一緒になって環を形成していてもよい。)で表されるラジカル化合物であることを特徴とする請求項3に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項25】
活物質が一般式(10);
【化10】

(式中、R17、R18、R19は水素原子、ヘテロ原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。さらにR17、R18、R19が脂肪族炭化水素基の場合には、脂肪族炭化水素基は飽和であっても不飽和であってもよく、鎖状、環状または分岐状であってもよく、一緒になって環を形成していてもよい。)で表されるラジカル化合物であることを特徴とする請求項3に記載のエネルギー貯蔵デバイス。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−295881(P2009−295881A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149687(P2008−149687)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】