説明

エネルギ回生システム

【課題】機器の異常を検出するセンサを設けることなく、システムの異常を診断できるエネルギ回生システムを提供すること。
【解決手段】回生モータによって電動機が回転駆動されるエネルギ回生システムであって、回生モータに供給される作動油の圧力Pを検出する圧力検出手段91と、回生弁の開度Aを検出する回生弁開度検出手段92と、検出される作動油の圧力Pと回生弁の開度Aとに応じて回生モータに発生するトルクの理論値Ttmax、Ttminを算出するトルク理論値算出手段94と、回生モータの発生トルクTを検出する発生トルク検出手段93と、検出される回生モータの発生トルクTを理論値Ttmax、Ttminと比べて発生トルクの異常を判定する発生トルク異常判定手段95と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータから流出する作動流体の圧力エネルギを回生するエネルギ回生システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたエネルギ回生システムは、アクチュエータから流出する作動油圧によって回転作動する回生モータと、この回生モータによって駆動される電動機(ジェネレータ)とを備え、この電動機によって発電される電力がバッテリに充電される。
【0003】
このエネルギ回生システムは、回生モータに対する作動油の供給量を調節する回生弁を備え、運転状態に応じて回生弁の開度が制御されることによって、回生モータの発生トルク、回転速度が調節される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−263157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のエネルギ回生システムにあっては、例えば、回生弁、回生モータ、電動機等で構成されるシステムに異常が生じた場合、これらに異常が発生したままエネルギ回生システムの運転が続けられると、二次故障を招く可能性があった。
【0006】
また、回生弁、回生モータ、電動機毎にそれぞれの異常を検出するセンサを設けると、構造の複雑化を招くという問題点が生じる。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、機器の異常を検出するセンサを設けることなく、システムの異常を診断できるエネルギ回生システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アクチュエータから流出する作動流体の圧力によって回転作動する回生モータと、この回生モータに対する作動流体の供給量を調節する回生弁と、回生モータによって回転駆動される電動機と、を備えるエネルギ回生システムを前提とする。
【0009】
そして、回生モータに供給される作動油の圧力を検出する圧力検出手段と、回生弁の開度を検出する回生弁開度検出手段と、圧力検出手段によって検出された作動油の圧力と回生弁開度検出手段によって検出された回生弁の開度とに応じて回生モータに発生するトルクの理論値を算出するトルク理論値算出手段と、回生モータの発生トルクを検出する発生トルク検出手段と、この発生トルク検出手段によって検出された回生モータの発生トルクをトルク理論値算出手段によって算出された理論値と比べて発生トルクの異常を判定する発生トルク異常判定手段と、を備えるものとした。
【0010】
また、回生モータに供給される作動油の圧力を検出する圧力検出手段と、回生弁の開度を検出する回生弁開度検出手段と、圧力検出手段によって検出される作動油の圧力と回生弁開度検出手段によって検出される回生弁の開度とに応じて回生モータに発生する回転速度の理論値を算出する回転速度理論値算出手段と、回生モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、この回転速度検出手段によって検出される回生モータの回転速度を回転速度理論値算出手段によって算出される理論値と比べて回転速度の異常を判定する回転速度異常判定手段と、を備えるものとした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、回生モータの発生トルクまたは回転速度を理論値と比べることにより、回生弁、回生モータ、電動機等に異常の可能性があることが判定され、エネルギ回生システムの運転を停止することができる。これにより、回生弁、回生モータ、電動機毎にそれぞれの異常を検出するセンサを設ける必要がなく、構造の簡素化がはかれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態を示す掘削アタッチメントの概略側面図。
【図2】同じく流体圧制御装置の概略構成図。
【図3】同じくエネルギ回生システムにおけるフェイルセーフ制御のフローチャート。
【図4】同じく回生システムの異常を判定する構成を示すブロック図。
【図5】同じく回生システムの異常を判定する構成を示すブロック図。
【図6】本発明の他の実施形態を示す流体圧制御装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、油圧ショベルの掘削アタッチメント100の構成を示す概略側面図である。
【0015】
掘削アタッチメント100は、掘削作業等を行うためのブーム101、アーム102及びバケット103を備え、これらをアクチュエータであるブームシリンダ110、アームシリンダ105及びバケットシリンダ106によってそれぞれ駆動する。ブームシリンダ110、アームシリンダ105及びバケットシリンダ106は、それぞれ油圧シリンダである。
【0016】
ブームシリンダ110は、そのピストンロッド107がブーム101に連結されており、ピストンロッド107が移動して伸縮することによってブーム101を駆動する。
【0017】
図2は、油圧ショベルの動作を制御する流体圧制御装置1の概略構成図である。以下、ブームシリンダ110の作動を制御する構成について説明する。
【0018】
ブームシリンダ110は、そのピストン108によってロッド側圧力室111とボトム側圧力室112とに区画される。
【0019】
油圧源であるメインポンプ30及びサブポンプ80は、油圧ショベルに搭載されたエンジン(図示せず)によって駆動され、加圧した作動油(作動流体)をそれぞれ吐出する。エンジンは、運転効率の良い所定の回転速度、負荷で運転される。
【0020】
なお、作動油としてオイルの代わりに例えば水溶性代替液等の作動流体を用いても良い。
【0021】
メインポンプ30から吐出される作動油は、メイン制御弁40を介してブームシリンダ110のロッド側圧力室111またはボトム側圧力室112に供給される。
【0022】
メイン制御弁40は、ポンプポート41、タンクポート42、第一負荷ポート43、第二負荷ポート44を有する。ポンプポート41は、メインポンプ30の吐出口に接続される。タンクポート42は、タンク59に接続される。第一負荷ポート43は、第一負荷通路51を介してブームシリンダ110のロッド側圧力室111に連通される。第二負荷ポート44は、第二負荷通路52を介してブームシリンダ110のボトム側圧力室112に連通される。
【0023】
メイン制御弁40は、ブームシリンダ110を伸長させる伸長ポジションa、ブームシリンダ110を収縮させる収縮ポジションb及びブームシリンダ110の負荷を保持する停止ポジションcを有する。
【0024】
メイン制御弁40は、一対のパイロット室63、64と一対のスプリング61、62を備える。このスプリング61、62の付勢力によって図示のように停止ポジションcに保持された状態では、各ポート41〜44のすべてが閉ざされ、ブームシリンダ110の負荷が保持される。
【0025】
メイン制御弁40は、一方のパイロット室63にパイロット圧が導かれると、スプリング61、62の付勢力に抗して図にて左側の伸長ポジションaに切換わる。この伸長ポジションaにて、ポンプポート41と第二負荷ポート44とが連通し、タンクポート42と第一負荷ポート43とが連通する。これによりメインポンプ30から吐出される吐出油が第二負荷通路52を通ってボトム側圧力室112に供給され、ロッド側圧力室111の作動油が第一負荷通路51を通ってタンク59に戻され、ブームシリンダ110が伸長する。
【0026】
メイン制御弁40は、他方のパイロット室64にパイロット圧が導かれると、スプリング61、62の付勢力に抗して図にて右側の収縮ポジションbに切換わる。この収縮ポジションbにて、ポンプポート41と第一負荷ポート43とが連通し、第二負荷ポート44とタンクポート42とが連通する。これにより、メインポンプ30から吐出される吐出油が第一負荷通路51を通ってロッド側圧力室111に供給され、ボトム側圧力室112の作動油が第二負荷通路52を通ってタンク59に戻され、ブームシリンダ110が収縮する。
【0027】
収縮ポジションbにて、第二負荷ポート44とタンクポート42と連通する連通路には絞り45が介装される。
【0028】
サブポンプ80から吐出される作動油は、サブ制御弁81を介してブームシリンダ110のボトム側圧力室112に供給される。
【0029】
サブ制御弁81は、ポンプポート82、負荷ポート83を有する。ポンプポート82は、サブポンプ80の吐出口に接続される。負荷ポート83は、第三負荷通路53を介してブームシリンダ110のボトム側圧力室112に連通される。
【0030】
サブ制御弁81は、ブームシリンダ110を伸長させる増速ポジションd及びブームシリンダ110の負荷を保持する中立ポジションeを有する。
【0031】
サブ制御弁81は、一つのパイロット室84と一つのスプリング85を備える。このスプリング85の付勢力によって図示のように中立ポジションeに保持される状態では、各ポート82、83が閉ざされる。
【0032】
サブ制御弁81は、パイロット室84にパイロット圧が導かれると、増速ポジションdに切換わる。この増速ポジションdにて、ポンプポート82と負荷ポート83とが連通し、サブポンプ80から吐出される吐出油が第三負荷通路53、第二負荷通路52を通ってボトム側圧力室112に供給される。
【0033】
メイン制御弁40及びサブ制御弁81のパイロット圧を制御する操作機構2が設けられる。
【0034】
この操作機構2は、オペレータによって操作されるレバー3を備える。オペレータがレバー3を図にて左側に倒す操作をすることによって、メイン制御弁40のパイロット室63にパイロット圧が導かれ、このパイロット圧によってメイン制御弁40が伸長ポジションaに切り換わる。レバー3の操作量(レバー開度)Dが大きくなるのに伴ってメイン制御弁40の開度が増やされる。これにより、レバー3の操作量Dが増すのに応じてメイン制御弁40を通過する作動油の流量が増え、ブームシリンダ110の伸長速度が高められる。
【0035】
オペレータがレバー3を図にて左側に倒す操作量Dが所定値を超えて増えるのに伴って、サブ制御弁81のパイロット室84にパイロット圧が導かれ、このパイロット圧によってサブ制御弁81が増速ポジションdに切り換わる。レバー3の操作量Dが大きくなるのに伴ってサブ制御弁81の開度が増やされる。これにより、レバー3の操作量Dが所定値を超えて増すのに応じてサブ制御弁81を通過する作動油の流量分が追加され、ブームシリンダ110の伸長速度が段階的に高められる。
【0036】
オペレータがレバー3を図にて右側に倒す操作をすることによって、メイン制御弁40のパイロット室64にパイロット圧が導かれる。このパイロット圧によってメイン制御弁40が収縮ポジションbに切り換わり、その操作量Dが大きくなるのに伴ってメイン制御弁40の開度が増やされる。これにより、レバー3の操作量Dが増すのに応じてメイン制御弁40を通過する作動油の流量が増え、ブームシリンダ110の収縮速度が高められる。
【0037】
操作機構2は、レバー3の操作方向、操作量Dを検出するレバー操作量検出器(図示せず)を備え、レバー3の操作方向や操作量Dがこのレバー操作量検出器から電気信号としてコントローラ4に出力される。
【0038】
流体圧制御装置1は、ブームシリンダ110から流出する作動油の圧力エネルギを回収するエネルギ回生システム10を備える。
【0039】
エネルギ回生システム10は、ブームシリンダ110のボトム側圧力室112から流出する作動油圧によって回転作動する回生モータ11と、この回生モータ11に対する作動油の供給量を調節する回生弁20とを備える。ボトム側圧力室112から流出する作動油が、回生弁20を介して回生モータ11に供給されることにより、回生モータ11が回転作動して電動機(ジェネレータ)12を駆動し、この電動機12によって発電される電力がインバータ13を介してバッテリ14に充電される。
【0040】
回生モータ11は、図示しない複数の容積室と、この容積室に連通するモータ入口ポート17、モータ出口ポート18とを有する。回生モータ11は、加圧作動油がモータ入口ポート17からこの容積室に供給されると、容積室の容積が拡大するのに伴って回転作動し、容積が縮小する容積室から流出する作動油がモータ出口ポート18を通って排出される。
【0041】
回生弁20は、供給ポート21、戻しポート22、バルブ入口ポート23、バルブ出口ポート24を有する。
【0042】
供給ポート21は、回生通路25を介してボトム側圧力室112に連通される。
【0043】
戻しポート22は、戻し通路26を介してタンク59に連通される。
【0044】
バルブ入口ポート23は、回生モータ11のモータ入口ポート17に連通され、容積室に流入する作動油を導く。
【0045】
バルブ出口ポート24は、回生モータ11のモータ出口ポート18に連通され、容積室から流出する作動油を導く。
【0046】
回生弁20は、ボトム側圧力室112から流出する作動油を回生モータ11に対して遮断する閉ポジションfと、ボトム側圧力室112から流出する作動油を回生モータ11に供給する開ポジションgを有する。
【0047】
回生弁20は、パイロット室27とスプリング28を備え、このスプリング28の付勢力によって図示のように閉ポジションfに保持され、供給ポート21、バルブ入口ポート23が閉ざされ、回生モータ11に対する作動油の供給が停止される。
【0048】
回生弁20が閉ポジションfに保持される状態では、バルブ出口ポート24と戻しポート22とが絞り29を介して連通する。
【0049】
バルブ入口ポート23とバルブ出口ポート24の間には、両者を短絡する第一短絡流路37が設けられ、この第一短絡流路37に第一チェック弁32が介装される。
【0050】
さらに、バルブ入口ポート23と戻し通路26を短絡する第二短絡流路34が設けられ、この第二短絡流路34に第二チェック弁33が介装される。
【0051】
例えば、回生弁20が後述する開ポジションgから閉ポジションfに切換わり、バルブ入口ポート23が閉ざされた状態で、回生モータ11が慣性力によって回転するとき、容積室からバルブ出口ポート24に吐出される作動油は、第一チェック弁32を介してバルブ入口ポート23に流入するとともに、不足分の作動油が第二チェック弁33を介してバルブ入口ポート23に流入し、回生モータ11が円滑に停止するようになっている。
【0052】
回生弁20は、パイロット室27にパイロット圧が導かれると、図にて下側の開ポジションgに切換わる。この開ポジションgにて、供給ポート21とバルブ入口ポート23とが連通し、バルブ出口ポート24と戻しポート22とが連通する。これにより、ブームシリンダ110が収縮するのに伴って、ボトム側圧力室112から流出する作動油は、回生通路25、供給ポート21、バルブ入口ポート23、モータ入口ポート17を通って回生モータ11の容積室に供給され、この作動油の圧力エネルギによって回生モータ11が回転作動する。こうして回生モータ11が回転作動するのに伴って、容積室から流出する作動油は、モータ出口ポート18、バルブ出口ポート24、戻しポート22、戻し通路26を通ってタンク59に戻される。
【0053】
エネルギ回生システム10は、回生弁20のパイロット室27に導かれるパイロット圧を調節するパイロット電磁弁31と、このパイロット電磁弁31の開度をレバー3を図にて右側に倒す操作量Dに応じて制御するコントローラ4とを備える。コントローラ4は、レバー3を図にて右側に倒す操作量Dが大きくなるのに伴ってパイロット電磁弁31の開度を大きく調節する。これにより、レバー3を図にて右側に倒す操作量Dが大きくなるのに伴って、パイロット電磁弁31を介してパイロット室27に導かれるパイロット圧が高められ、回生弁20の開度Aが大きく調節され、回生モータ11に供給される作動油の流量が増える。
【0054】
第二負荷通路52にはアンチドリフト弁35が介装され、回生通路25にはアンチドリフト弁38が介装される。アンチドリフト弁35、38は、ブームシリンダ110が収縮する作動時に、操作機構2を介して導かれるパイロット圧によってスプリングに抗して開弁する、パイロットチェック弁として作動する。
【0055】
エネルギ回生システム10は、回生モータ11及び電動機12が同一軸上に設けられ、これらが互いに連動して同一速度で回転作動する。
【0056】
なお、これに限らず、エネルギ回生システム10は、回生モータ11と電動機12との間に歯車等によって構成される動力伝達機構が設けられ、回生モータ11と電動機12が互いに異なる速度で回転作動する構成としてもよい。
【0057】
電動機12は、その回転作動によって交流電流を発電する交流機が用いられる。電動機12には、インバータ13が接続され、このインバータ13によって電動機12が発電する交流電流が直流電流に変換され、インバータ13を介して出力される直流電流がバッテリ14に充電される。インバータ13に備えられるコントローラ(図示せず)は、バッテリ14に充電される電力を制御する。インバータ13に備えられるコントローラは、インバータ13の出力に応じて電動機12の駆動トルクTjに換算されるトルク換算値の信号をコントローラ4に出力する。
【0058】
なお、電動機12は交流機に限らず直流電動機を用いることもできる。
【0059】
バッテリ14の蓄電圧を検出する蓄電圧検出器15が設けられる。コントローラ4は、蓄電圧検出器15の検出信号と操作機構2からの信号を入力し、バッテリ14が満充電に達しておらず、かつブームシリンダ110が収縮する作動時をエネルギ回生時と判定し、パイロット電磁弁31を開弁させる制御を行う。これにより、パイロット室27に導かれるパイロット圧が高められ、回生弁20が開ポジションgに切換えられ、ブームシリンダ110から流出する作動油が回生モータ11に供給され、エネルギ回生が行われる。
【0060】
一方、コントローラ4は、バッテリ14が満充電に達していると判定される場合、パイロット電磁弁31の通電を停止する制御を行う。これにより、回生弁20が閉ポジションfに切換えられ、ブームシリンダ110から流出する作動油の全量が第二負荷通路52、メイン制御弁40、戻し通路26を介してタンク59に戻され、エネルギ回生が行われない。
【0061】
エネルギ回生システム10は、コントローラ4が、圧力検出器9、回転検出器8、レバー操作量検出器、インバータ13等からの検出信号を入力し、エネルギ回生システム10の運転状態に異常があるか否かを判定し、エネルギ回生システム10の作動に異常があると判定された場合に、回生弁20を閉ポジションfに切換えて、エネルギ回生を停止するフェイルセーフ制御を行う。
【0062】
以下、このフェイルセーフ制御が行われる構成について説明する。図4、図5は、回生システム10の異常を判定する構成を示すブロック図である。
【0063】
回生モータ11に供給される作動油の圧力Pを検出する圧力検出手段91として、回生通路25の圧力を検出する圧力検出器9が設けられる。圧力検出器9は回生弁20より上流側にて作動油の圧力を検出する。
【0064】
なお、これに限らず、圧力検出手段91は、圧力検出器が回生弁20より下流側にて回生モータ11に供給される作動油の圧力を検出する構成としてもよい。
【0065】
回生モータ11の回転速度Nを検出する回転速度検出手段96として、電動機12の回転速度を検出する回転検出器8が設けられる。
【0066】
回生弁20の開度Aを検出する回生弁開度検出手段92として、コントローラ4は、操作機構2に備えられるレバー操作量検出器から出力されるレバー3の操作量Dの検出信号を入力する。回生弁20の開度Aは、コントローラ4によってレバー3の操作量Dに基づいて検出(算出)される。
【0067】
なお、これに限らず、回生弁20の開度Aを検出する回生弁開度検出手段92として、回生弁20のパイロット室27に導かれるパイロット圧に応動するスプール(図示せず)の位置を検出するストローク検出器を設け、このストローク検出器の信号に基づいて回生弁20の開度Aを算出してもよい。
【0068】
回生モータ11の発生トルクTを検出する発生トルク検出手段93として、コントローラ4は、インバータ13の出力に基づいて電動機12の駆動トルクTを算出し、電動機12の駆動トルクTjに基づいて回生モータ11の発生トルクTを算出する。エネルギ回生システム10は、回生モータ11及び電動機12が同一軸上に設けられているため、回生モータ11の発生トルクTは、電動機12の駆動トルクTjと等しく、インバータ13に備えられるコントローラから出力されるトルク換算値の信号に基づいて求められる。
【0069】
なお、これに限らず、エネルギ回生システム10が、回生モータ11の回転が歯車等によって構成される動力伝達機構を介して増速して電動機12に伝えられる構成とした場合、回生モータ11の発生トルクTは、電動機12の駆動トルクTjと動力伝達機構の変速比及び伝達効率に基づいて算出される。
【0070】
コントローラ4は、図4に示すように、回生モータ11の発生トルクの理論値Ttmax、Ttminを算出するトルク理論値算出手段94と、算出される回生モータ11の発生トルクTを理論値Ttmax、Ttminと比べて発生トルクの異常を判定する発生トルク異常判定手段95とを備える。
【0071】
トルク理論値算出手段94として、コントローラ4は、検出される圧力Pと回生弁20の開度Aに応じて発生トルクの理論最大値Ttmax、理論最小値Ttminを設定したマップが予め記憶され、このマップに基づいて圧力Pと回生弁20の開度Aに応じて発生トルクの理論最大値Ttmax、理論最小値Ttminがそれぞれが求められる構成とする。
【0072】
すなわち、発生トルクの理論値Ttmax、Ttminは、圧力検出器9によって検出されるブームシリンダ110から導かれる圧力Pと、レバー3の操作量Dに基づく回生弁20の開度Aとに応じて算出される。
【0073】
コントローラ4は、算出される回生モータ11の発生トルクTを理論値Ttmax、Ttminと比べて発生トルクの異常を判定する発生トルク異常判定手段95を備える。
【0074】
または、コントローラ4は、図5に示すように、回生モータ11の回転速度の理論値Ntmax、Ntminを算出する回転速度理論値算出手段97と、検出される回生モータ11の回転速度Nを理論値Ntmax、Ntminと比べて回転速度の異常を判定する回転速度異常判定手段98とを備える。
【0075】
回転速度理論値算出手段97として、コントローラ4は、検出される圧力Pと回生弁20の開度Aに応じて回転速度の理論最大値Ntmax、理論最小値Ntminを設定したマップが予め記憶され、このマップに基づいて圧力Pと回生弁20の開度Aから回転速度の理論最大値Ntmax、理論最小値Ntminがそれぞれ求められる構成とする。
【0076】
すなわち、回転速度の理論最大値Ntmax、Ntminは、圧力検出器9によって検出されるブームシリンダ110から導かれる圧力Pと、レバー3の操作量Dに基づく回生弁20の開度Aとに応じて算出される。
【0077】
次に、コントローラ4で実行されるこの制御動作を図3のフローチャートにしたがって、さらに詳しく説明する。
【0078】
まず、ステップ1にて、回生弁20を開弁させるエネルギ回生時か否かを判定する。
【0079】
ステップ1にて、エネルギ回生時でないと判定された場合に、ステップ12に進み、回生弁20を閉弁させ、エネルギ回生を停止する。
【0080】
一方、ステップ1にて、エネルギ回生時であると判定された場合に、ステップ2に進み、回生弁20が開弁しているか否かを判定する。この判定は、パイロット電磁弁31の作動状態に基づいて行われる。なお、これに限らず、パイロット室27に導かれるパイロット圧に応動するスプールの位置を検出するストローク検出器を設け、このストローク検出器の信号に基づいて回生弁20が開弁しているか否かを判定してもよい。
【0081】
ステップ2にて、エネルギ回生時でないと判定された場合に、ステップ7に進み、図示しない表示器(ディスプレー)に回生弁20に異常の可能性があることを表示する。続いて、ステップ12に進み、回生弁20を閉弁させ、エネルギ回生を停止する。
【0082】
一方、ステップ2にて、回生弁20が正常に作動していると判定された場合に、ステップ3に進み、電動機12の回転検出器8が正常に作動しているか否かを判定する。
【0083】
ステップ3にて、回転検出器8が正常に作動していないと判定された場合に、ステップ8に進み、回転検出器8、回生弁20、電動機12に異常の可能性があることを表示する。続いて、ステップ12に進み、回生弁20を閉弁させ、エネルギ回生を停止する。
【0084】
一方、ステップ3にて、回生弁20が正常に作動していると判定された場合に、ステップ4に進み、電動機12が次の(1)、(2)の条件を満たす定格範囲内で作動しているか否かを判定する。
【0085】
(1)電動機12の回転速度Nがしきい値Nmax以下であること。しきい値Nmaxは、電動機12の定格範囲内を規定する最大回転速度である。
【0086】
(2)電動機12の駆動トルクTがしきい値Tmax以下であること。しきい値Tmaxは、電動機12の定格範囲内を規定する最大駆動トルクである。
【0087】
なお、電動機12の駆動トルクTは、インバータ13から出力されるトルク換算値の信号に基づいて求められる。
【0088】
ステップ4にて、電動機12が(1)または(2)の条件を満たさない定格範囲外で作動している逸走時と判定された場合に、ステップ9に進み、回転検出器8、回生弁20、電動機12に異常の可能性があることを表示する。続いて、ステップ12に進み、回生弁20を閉弁させ、エネルギ回生を停止する。
【0089】
一方、ステップ4にて、電動機12が定格範囲内で作動していると判定された場合に、ステップ5に進み、回生モータ11が次の(3)、(4)のいずれかの条件を満たすシステム正常時か否かを判定する。
【0090】
(3)回生モータ11の発生トルクTが運転状態に応じて算出される発生トルクの理論最大値Ttmax以下であること。
【0091】
(4)回生モータ11の回転速度Nが運転状態に応じて算出される回転速度の理論最大値Ntmax以下であること。
【0092】
ステップ5にて、回生モータ11が(3)または(4)の条件を満たさない理論値の範囲を上回るシステム異常時と判定された場合に、ステップ10に進み、回転検出器8、回生弁20に異常の可能性があることを表示する。続いて、ステップ12に進み、回生弁20を閉弁させ、エネルギ回生を停止する。
【0093】
一方、ステップ5にて、回生モータ11が(3)、(4)の条件を満たす範囲内で作動していると判定された場合に、ステップ6に進み、回生モータ11が次の(5)または(6)のいずれかの条件を満たすシステム正常時か否かを判定する。
【0094】
(5)回生モータ11の発生トルクTが運転状態に応じて算出される発生トルクの理論最小値Ttmin以上であること。
【0095】
(6)回生モータ11の回転速度Nが運転状態に応じて算出される回転速度の理論最小値Ntmin以上であること。
【0096】
ステップ6にて、回生モータ11が(5)または(6)のいずれかの条件を満たさない理論値の範囲を下回るシステム異常時と判定された場合に、ステップ11に進み、回転検出器8、回生弁20、回生モータ11、電動機12に異常の可能性があることを表示器に表示する。続いて、ステップ12に進み、回生弁20を閉弁させ、エネルギ回生を停止する。
【0097】
一方、ステップ6にて、回生モータ11が(5)または(6)のいずれかの条件を満たす範囲内で作動していると判定された場合に、本ルーチンを終了する。
【0098】
こうして、システムの異常が判定されると、エネルギ回生システム10の運転が停止されることにより、異常が発生したままエネルギ回生システム10の運転が続けられることが回避され、二次故障を防止できる。
【0099】
前記ステップ5、6にて行われる処理が、発生トルク異常判定手段95と回転速度異常判定手段98に相当する。
【0100】
以上のように、本実施形態では、アクチュエータ(ブームシリンダ110)から流出する作動油の圧力によって回転作動する回生モータ11と、この回生モータ11に対する作動油の供給量を調節する回生弁20と、回生モータ11によって回転駆動される電動機12と、を備えるエネルギ回生システム10であって、回生モータ11に供給される作動油の圧力Pを検出する圧力検出手段91と、回生弁20の開度Aを検出する回生弁開度検出手段92と、圧力検出手段91によって検出された作動油の圧力Pと回生弁開度検出手段92によって検出された回生弁20の開度Aとに応じて回生モータ11に発生するトルクの理論値Ttmax、Ttminを算出するトルク理論値算出手段94と、回生モータ11の発生トルクTを検出する発生トルク検出手段93と、この発生トルク検出手段93によって検出された回生モータ11の発生トルクTをトルク理論値算出手段94によって算出された理論値Ttmax、Ttminと比べて発生トルクの異常を判定する発生トルク異常判定手段95と、を備える構成とした。
【0101】
上記構成に基づき、回生モータ11の発生トルクTを理論値Ttmax、Ttminと比べることにより、回生弁20、回生モータ11、電動機12等に異常の可能性があることが判定される。これにより、回生弁20、回生モータ11、電動機12等にそれぞれの異常を検出するセンサ等を設ける必要がなく、構造の簡素化がはかれる。
【0102】
本実施形態では、アクチュエータ(ブームシリンダ110)と回生弁20の作動を指令する操作機構2を備え、回生弁開度検出手段92は回生弁20の開度Aを操作機構2の操作量Dに基づいて検出する構成とした。
【0103】
上記構成に基づき、回生弁20の開度Aを検出するストロークセンサ等を用いることなく、回生弁20の開度Aを検出することが可能となり、構造の簡素化がはかれる。
【0104】
本実施形態では、電動機12によって発電される交流電流を直流電流に変換するインバータ13を備え、発生トルク検出手段93はインバータ13の出力に基づいて回生モータ11の発生トルクTを検出する構成とした。
【0105】
上記構成に基づき、回生モータ11の発生トルクTを検出するトルクセンサ等をを用いることなく、回生モータ11の発生トルクTを検出することが可能となり、構造の簡素化がはかれる。
【0106】
本実施形態では、回生モータ11に供給される作動油の圧力Pを検出する圧力検出手段91と、回生弁20の開度Aを検出する回生弁開度検出手段92と、圧力検出手段91によって検出される作動油の圧力Pと回生弁開度検出手段92によって検出される回生弁20の開度Aとに応じて回生モータ11に発生する回転速度の理論値Ntmax、Ntminを算出する回転速度理論値算出手段97と、回生モータ11の回転速度Nを検出する回転速度検出手段96と、この回転速度検出手段96によって検出される回生モータ11の回転速度Nを回転速度理論値算出手段97によって算出される理論値Ntmax、Ntminと比べて回転速度の異常を判定する回転速度異常判定手段98と、を備える構成とした。
【0107】
上記構成に基づき、回生モータ11の回転速度Nを理論値Ntmax、Ntminと比べることにより、回生弁20、回生モータ11、電動機12、回転検出器8等に異常の可能性があることが判定され、エネルギ回生システム10の運転を停止することができる。これにより、回生弁20、回生モータ11、電動機12等にそれぞれの異常を検出するセンサ等を設ける必要がなく、構造の簡素化がはかれる。
【0108】
(第2実施形態)
次に図6に示す他の実施形態を説明する。図6は、油圧ショベルの動作を制御する流体圧制御装置1の概略構成図である。これは基本的に図1〜5の実施形態と同じ構成を有し、相違する部分のみ説明する。なお、前記実施形態と同一構成部には同一符号を付す。
【0109】
回生モータ11の発生トルクTを検出する発生トルク検出手段93として、回生モータ11の前後差圧力を検出する圧力検出器74、75が設けられ、コントローラ4は、検出される回生モータ11の前後差圧力に基づいて回生モータ11の発生トルクTを算出する構成とする。
【0110】
本実施形態にて、発生トルク検出手段93は回生モータ11の発生トルクTを圧力検出器74、75によって検出される回生モータ11の上流側と下流側に生じる前後差圧力に基づいて算出する構成としたため、回生モータ11の発生トルクTを検出するトルクセンサ等を設ける必要がなく、構造の簡素化がはかれる。
【0111】
本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【符号の説明】
【0112】
1 流体圧制御装置
2 操作機構
4 コントローラ
8 回転検出器
9 圧力検出器
10 エネルギ回生システム
11 回生モータ
12 電動機
13 インバータ
14 バッテリ
15 蓄電圧検出器
17 モータ入口ポート
18 モータ出口ポート
20 回生弁
74、75 圧力検出器
91 圧力検出手段
92 回生弁開度検出手段
93 発生トルク検出手段
94 トルク理論値算出手段
95 発生トルク異常判定手段
96 回転速度検出手段
97 回転速度理論値算出手段
98 回転速度異常判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータから流出する作動油の圧力によって回転作動する回生モータと、この回生モータに対する作動油の供給量を調節する回生弁と、前記回生モータによって回転駆動される電動機と、を備えるエネルギ回生システムであって、
前記回生モータに供給される作動油の圧力を検出する圧力検出手段と、前記回生弁の開度を検出する回生弁開度検出手段と、前記圧力検出手段によって検出された作動油の圧力と前記回生弁開度検出手段によって検出された回生弁の開度とに応じて前記回生モータに発生するトルクの理論値を算出するトルク理論値算出手段と、前記回生モータの発生トルクを検出する発生トルク検出手段と、この発生トルク検出手段によって検出された前記回生モータの発生トルクを前記トルク理論値算出手段によって算出された理論値と比べて発生トルクの異常を判定する発生トルク異常判定手段と、を備えたことを特徴とするエネルギ回生システム。
【請求項2】
前記電動機によって発電される交流電流を直流電流に変換するインバータを備え、前記発生トルク検出手段は、前記インバータの出力に基づいて前記回生モータの発生トルクを検出することを特徴とする請求項1に記載のエネルギ回生システム。
【請求項3】
前記回生モータの上流側と下流側に生じる前後差圧力を検出する圧力検出器を備え、前記発生トルク検出手段は、前記圧力検出器の出力に基づいて前記回生モータの発生トルクを算出することを特徴とする請求項1に記載のエネルギ回生システム。
【請求項4】
アクチュエータから流出する作動油の圧力によって回転作動する回生モータと、この回生モータに対する作動油の供給量を調節する回生弁と、前記回生モータによって回転駆動される電動機と、を備えるエネルギ回生システムであって、
前記回生モータに供給される作動油の圧力を検出する圧力検出手段と、前記回生弁の開度を検出する回生弁開度検出手段と、前記圧力検出手段によって検出される作動油の圧力と前記回生弁開度検出手段によって検出される前記回生弁の開度とに応じて前記回生モータに発生する回転速度の理論値を算出する回転速度理論値算出手段と、前記回生モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、この回転速度検出手段によって検出される前記回生モータの回転速度を前記回転速度理論値算出手段によって算出される理論値と比べて回転速度の異常を判定する回転速度異常判定手段と、を備える構成としたことを特徴とするエネルギ回生システム。
【請求項5】
操作量に応じて前記アクチュエータを作動させる操作機構を備え、前記回生弁開度検出手段は、前記操作機構の操作量に基づいて前記回生弁の開度を検出することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のエネルギ回生システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−13160(P2012−13160A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150974(P2010−150974)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】